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2025年11月12日水曜日

第13回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4676

第13回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。


ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
ミナの旅はしかし成就せず、姉のひとりエナは吸血鬼にされてしまっていました。
エナは、ミナの身を案じながら、ゴルジュの激流に身を投じます。
吸血鬼の弱点である清らかな水にさらされ、エナの身体は崩れ去り、あとを追って飛び込んだミナも、濁流に呑まれていったのでした。


【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7/7】
金貨 7枚
歯車 3枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。


●アタック03-1 闇からの目覚め

闇。
冷たく、深い闇に沈んでいる。
ボクは、死んだ。
姉を、助けられずに。

ボクはこの闇に、覚えがあった。
前にもここに来たことがある。

声が聞こえる。
それは、深淵から響いてくるような、昏くねばついた声。
その声とともに、意識が闇から浮かび上がるのを感じ……。

ボクは、跳ね起きた。
全身がぐっしょり濡れている。
濁流に呑まれたせい? 違う。全身、汗まみれになっていた。

ボクは、ボクは……!
寝床から上半身を起こし、全身を震わせる。
拳に力がこもる。
歯ぎしりをする。

ボクは今まで、何回死んだ? 何回殺された?

ボクは、間違いなく、濁流に呑まれ死んだ。
はっきりと覚えている。夢なんかじゃ、ない。

闇の中で聞こえたあの声は、闇神オスクリード様のものだ。
その言葉は、しっかり耳に残っていた。

「稀有なる力の使い手よ。いましばし、我を楽しませよ……」

ボクは理解した。

闇神は、ボクを観察している。
世界で唯一の時の魔法の使い手だから。

闇神は、時の魔法に興味がある。だから、ボクが死ぬたびに、時間を巻き戻している。
ボクが時の魔法をどう使うのか、もっと見たいから。
それは、魔法の時計の力を越えた、神にしかできないみわざ。
闇の神の戯れだ。

ボクはこれまで、時の魔法の力の影響で、未来に起きるかもしれないことを、ほんの少しだけ見ることができるって思っていた。
未来の記憶。未来のことを、思い出のように思い出すって。
でも、違っていた。それは全部、ほかならないボク自身が経験してきたことだったんだ。
未来のことなのに、思い出みたいにぼんやり思い出すのは、本当に思い出だったから。

ボクは幾度となく死に、殺され、姉を助けられずに絶望し、そしてまた、すべてを忘れて時をさかのぼっていた。
吸血鬼に何度も殺された。濁流に巻かれて溺死した。闇エルフの里で、ひどい拷問の果てに命を落とした。
ボクの未来の記憶にある、ボク自身のむごたらしい死に方も、全部、全部。

「ボクは、神のオモチャだった……!」

ボクは、慟哭した。
何度も、何度も、吐いた。何も出なくなっても、繰り返しえずいた。
心を、保っていられない。
ただただ、泣きわめいた。

でも、手をさしのべてくれる人はいない。
闇の神の声ももう、聞こえない。

ボクにはわかっている。
ここは、森の外れだ。
これから外縁の村を訪れ、それから森へと入っていく。
エナ姉とティナ姉を助けるために。

ボクは、のろのろと立ち上がった。

「行かなきゃ。ボクが、姉さんたちを、助けないと……」

ぼそりとつぶやく。
そうしてボクは、枷をはめられたように重い足取りで歩きだした。外縁の村を目指して。


●アタック03-2 外縁の村のボラミー

悪夢袋は、ぜんぶいっぱいになっていた。
魔法の時計も、修理前の状態に戻っている。歯車が3枚あって、修理に使える。
これだけは、準備しておかないと。

ボクは、もたもたと歯車を取り出し、地味な作業を始める。
<速撃の戦時計>と<時もどしの回復時計>を修理した。

自分の身に起きていることは理解したけれど、未来の記憶はあいかわらず断片的だ。
激流に呑まれて溺れ死んだことだけは、はっきりと思い出せる。
大切なひとが腕の中で崩れていく喪失感も。

けど、それより前のぼんやりした思い出が鮮明になったわけではない。
そのおかげで、なんとか正気を保てているのかも。それともボク、もう壊れちゃってるのかな。

やがて、外縁の村が見えてきた。
ボクは立ち止まる。

このまま村に行くと、ひどい目に遭う予感があった。
ここで<うたかたの齢時計>を使って見た目を変えるのが良い選択だという感覚もあった。
けれど、ボクは、あえてそのまま進むことを選んだ。そうでないと、ボクの心にあるあの人には会えない気がしたから。

村へと入る。
村人たちの、意味ありげな視線に気づいたけれど、かまわず歩く。

村の中心あたりまで来たときだ。
ボクは、いつの間にか、村人たちに遠巻きに囲まれていることに気がついた。

こつん、と小石がボクの肩に当たった。
誰かが、石を投げたんだ。
それが合図だったかのように、周囲の人たちが、ボクに向かって石を投げつけてくる。
避けようとしたけど、当たってしまう。

「出て行け!」「闇エルフは森へ帰れ!」「今度は何を奪う気だ」

ボクはまわりから向けられる強い敵意に、立ち尽くした。
石が額に当たり、少し切れて出血している。

どうして? ボクは何もしていないのに。
やめて! やめてよ!

「卑怯なふるまいはよせ。たとえ相手が闇エルフであっても」

その時、女性の鋭い声が、村人たちを制した。
投石が止む。そこに村人を割って、金髪の女性が進み出た。
女性は、冒険者風のいでたちをしていた。
力強く、そして美しい。

どこかで見た、少年と並ぶお姉さんの絵と、印象がかぶった。

しかしその女性はボクに、きっぱりと言い放った。

「慈悲のある死を遂げさせるべきだ。村人の代表として、私が戦う。我々の縄張りに入ったのだ。逃げるなよ」

別にボクを助けようとしたわけじゃなかった。
それどころか女性は、銀色に輝く剣を、すらりと抜き放った。

「我が名はボラミー。決闘の作法だ。そちらも名乗るが良い」

村人たちからいわれのない敵意を向けられ、今またボラミーから殺意を向けられている。

もう、限界だった。
意地だけで、必死にせき止めてきたものが、一気にあふれてしまった。
ボクはその場にへたりこむと、ただただ、思いのたけをぶちまけた。

「どうして?! ボクは森に連れ去られた姉さんたちを助けたいだけなのに! 闇エルフなんて知らない! 力の代償で、こんな姿にされただけ!!」

その声は涙でぐしょぐしょで、ほとんど聞き取れる言葉になっていなかった。
いつしか、周囲はしんと静まり返っていた。その中で、うつむいてしゃくりあげる、ボクの声だけが響いた。
肩に、そっと手がかけられる。顔を上げると、ボラミーだった。剣はすでに鞘に収められている。

「ひどいことをしてしまったね。森から来た闇エルフと決めつけてしまった。私たちは君のことを何も知らないのに」

ボラミーは、優しい声で言った。

「少し前、闇エルフの一団が2人のエルフを森へと連れて行った。それが姉だというのなら、闇エルフであるはずがない」

そうして、今度は村人全員に向け、たくましい声で宣言した。

「皆、私はこの少女をわが家に泊まらせる。意見のある者はいるか!」

誰も、何も言わなかった。

「さ、いこうか」

ボラミーに促されるまま、ボクは立ち上がった。
そして幼い少女のようにボラミーに手を引かれ、とぼとぼとついていった。


●アタック03-3 ボラミーとの旅路

朝。
ボクはボラミーのベッドで目を覚ました。
泣き疲れて、眠ってしまったみたい。
枕が、泣きぬれていた。夢は、見なかった。
闇神オスクリードの声も、もう聞こえない。

ゆっくり起き出すと、朝食の支度ができていた。
具のたくさん入ったスープとパンをいただく。

見るとボラミーは、旅支度をしていた。
ボクが怪訝な表情をしているのに気づいたのだろう。ボラミーは言った。

「君はこれから、あの森に入るんだろう? 私も一緒に行こう」

その申し出に、ボクは戸惑った。

「どうして?」
「昨日の君は感情を爆発させて、すべて投げ出したように見えた。けど、君の心はまだ折れていない。違うかな?」

……違わない。
ボクの中には『誓い』がある。

たとえどれだけ罪を重ねても、愛を裏切らない。

「あの森は本当に危険なんだ。君なんかが行けば、すぐに殺されてしまう。だから私が手を貸そう」
「だから、どうして?」
「友だちを助けるのに、理由はいらないだろう?」

ボラミーのその言葉に、ボクはまた泣けてしまった。

「はは。君は泣き虫だな。そういえば、まだ名前を聞いてなかったね」
「……ミナ」
「じゃ、ミナ。これからよろしく」

ボラミーは革鎧に身を包み、長剣を背負っていた。
そして、木製の瓶を首にかける。

「……それは?」

ペンダントのように首にかけるにしては、少し変わっている。
ボラミーは答えた。

「お守りみたいなものかな。私の宝物だ」

私の宝物。

『あなたが来てくれたことが、私の宝物だから』

エナ姉の最期の言葉が、頭の中にリフレインした。

ボラミーは、ボクの支度が終わるのをゆっくり待ってくれた。

家を出ると、ボラミーが先行し、すたすたと歩いていく。
ボクはついていくことで、自然と歩みが力強くなっていった。

外縁の村を出てからの旅は順調だった。
森の入口の空き地で焚火をしているねこ人に既視感を覚えながら、森への小道を歩いていく。

吸血獣に襲われた時は、対策不足に苦しんだけど、協力して倒した。
ボクは<速撃の戦時計>をボラミーに初披露した。
時計の回転に合わせて速度を増すボクの動きに、ボラミーは感心していた。

「ミナの魔法はすごいな。その速度、私でも手を焼きそうだ」

ほめられ慣れていないボクは、それだけで照れてしまう。
心が弱っているボクは、ボラミーに依存的になっている。
ボラミーはそんなボクにも、温かく接してくれた。

やがて、森の小道が分岐しているところについた。
ボラミーは思案する様子もなく、左の道へとすたすたと歩いていこうとする。
ボクは、おずおずとボラミーの袖をつかんで立ち止まった。

「ん? どうした」
「……ボク、こっちの道へ行きたい」
「やめときな。そっちは闇エルフの領域だ。入ったら、生きては戻れない」

そう言われても、ボクはあきらめきれない。
ボクは「知って」いたからだ。闇エルフの里で聞ける話が、姉たちを助けるためには絶対に必要だってこと。
それがどんな話だったかまでは思い出せない。だから、確認に行かないといけない。

「闇エルフのとこなら、エナ姉とティナ姉のこと、聞けるかもしれない」
「ダメだ。命には代えられない」
「ボクが不思議な魔法を持っているのは知ってるでしょ?」
「ダメだ。それでも危険すぎる」
「ボクだけなら、闇エルフのふりして行ける」
「ダメだ。ミナは目立つんだ。隠し通せるわけない」

ボラミーがボクのこと、心配してるのはわかる。
ボクも、ボラミーと離れることに不安がある。

それでも、ここは譲れないんだ。

「……っ。ボラミー、ごめん!」
「あっ」

ボクは駆けだした。闇エルフの隠れ里の方向へと。

「必ず戻るから! きっと戻るから!」

ボクは全力で走った。ボラミーが追いかけようと思わないように。
でも、闇エルフの里が近づくと、ぴた、と立ち止まった。
足がすくんでいる。小刻みに震えている。

心の中に、恐怖心がよみがえったんだ。
闇エルフたちにされた残酷な仕打ちの記憶が、ボクの足を止めてしまった。

でも、それでも。
ボクは動きたがらない足を奮い立たせ、強引に一歩一歩、前に動かす。

<枝分かれの未来時計>、頼んだよ。
ボクは、動きたそうにしている時計に、そっと声をかけた。
時計に彫られた、別々の方向を指す双子が、ボクに頷いたように見えた。


●アタック03-4 ともだちのきずな

そして……。

ボクは、闇エルフの隠れ里の外に立っていた。
大きく息を吐く。ズタズタになりそうなほど、心が疲弊していた。

「ミナ!」

声をかけられてビクッとする。
ボラミーだった。

ボラミー、まさかここまで追いかけてきたの?
危険だって言ってたのに。

「危険だからだよ。ミナをひとりでなんて、行かせられない」

ボラミーはその時、ボクの腰にある悪夢袋がひとつ、しぼんでいるのに気づいたようだった。

「もう、行ったんだな。闇エルフの里に」

ボクは黙ってうなずく。

「得られるものは、あった?」

ボクは黙ってうなずく。
ボラミーはボクをぎゅうっと抱きしめた。

「無事で、よかった……」
「苦しい、苦しいよボラミー」
「ああ、ごめんごめん。さあ、ここはまだ闇エルフの領域だ。早く離れよう」

分岐まで歩を進める間に、ボラミーが話しかけてきた。

「ミナ、君が強いんだか弱いんだか、わからなくなるよ。儚げで脆くて泣き虫なのに、決してあきらめない芯の強さがある。ミナみたいなタイプは初めてだ」
「ボラミーこそ、闇エルフの里まで来てボクが見つからなかったら、どうしてたの?」
「それを言わせるのかい? 闇エルフどもと切り結んででも、ミナを助け出すつもりだったさ」

今度はボクが、ボラミーに抱きついた。

「おいおい、歩けないだろう。やっぱり、甘えん坊さんだな」

いい。それでもいい。
ボクは、ボラミーが一緒に来てくれて、本当によかったと思った。
ボクひとりだったら、きっともう、潰れていたから。

次回、マイトレーヤ登場。その正体は意外なアイツ。


【ミナ 体力点4→3→4→3/4 悪夢袋7→5/7】
金貨 7枚
歯車 3→0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。

※体力点
村人から石を投げられ-1
ボラミー宅で休み+1
吸血獣戦で-1

※悪夢袋
吸血獣戦で<速撃の戦時計>使用し-1
闇エルフの里で<枝分かれの未来時計>使用し-1


■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。


■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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