2026年4月19日日曜日

Re:オレニアックス生物学 Vol.2 『竜巻女』 FT新聞 No.4834

(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメント等は全て当時のものとなっております) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ オレニアックス生物学 Vol.2 『竜巻女』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 美女の形をした空気のうず。 しかしご用心。 美しいものにはトゲがある。 危険な美女、「竜巻女」についての授業の はじまり、はじまり、、、。 * 生物学の授業は非常に重要な科目だった。 アランツァの地での戦いは、戦争となるとまた話は別だが、人間以外の生き物と交戦することも少なくなかった。 聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラントは生物学の権威。 そんな彼の授業は生き物の外見、性質、そして対処方法を教えてくれる。 生徒たちを生き残る道へと導く、確かな灯火だ。 今日もカメルの授業が始まる……。 * 「『つむじ風が成長すると、竜巻になる』。この定義は正しいか?」  グラント博士は口を開くなり、こう問うた。生徒たちは真面目に考えこむ。 「おっ! ウルトランクイズですか、先生? 重要区へ行きたいか〜! ってね」  一人だけどんな時でも真面目でない生徒、ガリィが叫ぶ。 「ブッ!」  思わず吹き出してしまった生徒たちはあわてて口をふさぐ。  ちなみに、ウルトランクイズ大会とは市民の主催する祭りで、知恵比べのようなものだ。  勝ち抜くとチャンピオンとなり、首都で豪華なディナーを楽しむことができる。  なお、ガリィは今年も一回戦で負けた。 「これは真面目な話だぞ、ガリィ。うむ。ちょうどいい。ガリィ、答えてみなさい」 「うっ!」  ガリィが思わずシャキッと立ち上がる。 「……へっ、こんなのカンタンだよ。いいか、みんな。ウルトランクイズ出場者の実力を見せてやる。行くぞ、答えは……『マル』!」 「不正解」 「えっ」  教室がドッ、と沸く。  グラント博士は、やれやれ、というように苦笑いしながら、手をひらひらと上下させ、『静まるように』というジェスチャーをした。 「まったく、型にはまらぬ生徒だな、君は。それが良い方向に働くことを祈ろう。それと、これも覚えておくといい。協調性もしばしば君を助けるだろう。すぐにでも、身につけることだ」 「ハイ」  ガリィは照れ笑いをしながら着席する。 「つむじ風は壁に風が当たってできたもの。竜巻は雲の異常によって発生する上昇気流だ。よって、この二つは別のものである」  博士は言い終えると、口の中のものをゴクリと飲み込んで反すうを終えた。  生徒たちはノートに羽根ペンを走らせる。  できれば最初から、飲み込んでから話してもらえると、もう少し聞き取りやすいのだが。 * 「さて、自然現象以外にも、竜巻が発生する条件がもう一つある。それは何か? ……レムレス」  指された最前列の生徒は即座に答える。 「魔法、ですね。正確には、ハッキリと実在するとされている魔法は3種。古代魔術の積乱雲生成。イラジエルの風神による竜巻召喚。最後に錬金術の……失礼。喋りすぎました」  彼はそれきり口を閉じた。  博士はまた、苦く笑わなければならなかった。 「見事だ。特に、異教の禁呪にまで言及できるのは誇り高きオレニアックス歴代の英雄たちの中でも君しかおるまい」  生徒たちの感嘆の溜息の中、レムレスは静かに、しかしはっきりとそれを否定した。 「いいえ、『愚賢者』がおります」  博士は真剣な表情に戻って、首を振る。 「レムレス。彼を賛美してはいけない」 「はい」 「うむ、よろしい」  レムレスが素直に首肯すると、博士は小さく微笑み、片目を瞑る。 「では、君が最後まで説明してしまわずに残してくれた最後の魔法、つまり錬金術の魔法生物生成、『生きる竜巻』について説明しよう」 * 「『生きる竜巻』。それは冒険者の前に立ちはだかる、女性の形をした暴風だ。『竜巻女』などと呼ばれることもある」  ラクダ人である博士は、もっしゃもっしゃと口を動かしながら続ける。 「困ったことに、彼女には意思がある。竜巻女は、人間を小馬鹿にして遊ぶのが好きなのだ。ならば、彼女にはどのような態度で接するべきか? ベルナデッタ」  指されたおとなしい生徒、ベルナデッタは、困ったような顔をして黙ってしまったが、すぐに意を決したように口を開いた。 「し、親切にすべきでないかと思います……」  それを受けて、博士はなお質問した。 「相手は人間を馬鹿にしているのだが、それでもかね?」 「はい。……いえ、『だからこそ』、親切にすべきです……」 「ふうむ」  博士は彼女の考えを肯定するように満足そうにうなずくが、他の者に水を向けた。 「他に考えのあるものは? では、同じ女性のニナ」  妖しげな雰囲気を持つエルフ、ニナは少し考えると、口を開く。 「仕事熱心な憲兵(警察)を見つけた時と同じね」  謎めいた答えに教室がざわつく。  これだから洒落者のいるクラスは退屈しない。 「何だって?」  博士が聞き返す。 「その心は?」  ヘイルがふざける。  ニナはかすかに微笑んで答える。 「見つけたら、一言も口をきかずに道を変えること」 「ヒュ〜!」  ガリィの口笛。教室はドッと色めき立つ。  博士はそれを静めながら、むしろ爽快、という顔をしていたが、彼は便宜的にニナをたしなめてみせた。 「正解、と言いたいところだが、少々盛り上げすぎたようだな。この生物学は君たちの命を救う授業であるから、もう少し謹まねばな」  かく言う彼も、言葉を続けながら、もっしゃもっしゃと反すうをして、笑い顔をごまかしているようだった。 「憲兵も竜巻女も、勝ち目がないので逆らってはいけないというのは本当だな。さらに、こちらが親切にした所で、それを素直に受けとる相手でないということも一致している。ふむ!」  博士は顔をくしゃくしゃにしながら、1つ咳払いをした。 「竜巻女の存在は、人格と捉えぬほうがいい。『現象』のようなものだ。竜巻そのもの、吹き付ける暴風そのものだと考えるのだ。彼女には意思があるが、それは人間の及び知る所ではない。何のためにいるのか、何がしたいのかと考えてはいけない。天災に良心を期待しないように、竜巻女にも良心を期待してはいけない。ただ、彼女のもとを去るのだ」  生徒たちは顔を上げ、身を乗り出して聞いている。 「最後に、このオレニアックスの英雄候補にしか教えぬことを告げよう。竜巻についてだ」  博士は心持ち、ゆっくりした口調で言った。 * 「アランツァでは竜巻は特別な存在だ。竜巻は自然現象というものの範疇から逸脱している。竜巻は障害の化身だ。害そのものだ。どんな状況でも、竜巻に関わること自体が不利益を生む。関わるだけ損なのだ。また、竜巻に出会ってしまったということ自体が、間違った選択をしたという意味を持つこともある」  終業の鐘がなる。 「本日の授業を少ない言葉でまとめることができるかな、ヘイル?」  博士は学校一の人気者、ゴーレム剣士のヘイルを指す。  ヘイルはニヤリと笑って、よく響く声で答えた。 「憲兵と竜巻を見たら、すぐに道を変えろ」 「ブッ!」  とうとう博士も吹き出してしまった。  教室は笑いのうずに巻き込まれる。 「ま、それで良しとしよう。竜巻は天災だ。竜巻女もその例に漏れない。出会ったら、可及的速やかにその場を離れる。そのことをしっかり肝に銘じること。以上!」  博士はピンと背すじを伸ばしたまま、教室の扉を開ける。ありがとうございました! と声が響く。  若い生徒たちに教えることのうち、どれが役立ち、どれが無駄になるかは分からない。  だが、いくつかはきっと、彼らの命を永らえさせてくれるだろう。  そう信じて博士は今日も教鞭をとる。 (From:清水龍之介) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 『竜巻女』  突風が吹きつけ、仰向けに倒されてしまった。すぐに起きようとするが、突風にからかわれているかのように転ばされてしまう。何分も同じ場所に貼り付けられていた。もう我慢の限界だ。  いいかげんにしろ、と叫ぶと、正面からゲラゲラと女の下品な笑い声がした。それは異様な光景だった。風が目の前に集まって竜巻のように巻き上がっているが、それが人間の女のような形を作っているのだ。その竜巻の女は腹を抱えて笑っている。  竜巻を無視するならAへ、戦いを挑むならBへ。  また、悪魔を召喚することもできる、、、 【魔の国の王女】に登場。90ページを参照。  技術点不明 体力点不明 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。