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2026年8月9日日曜日

Re:オレニアックス生物学 Vol.6 『ウルフドッグ』 FT新聞 No.4946

(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメント等は全て当時のものとなっております) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ オレニアックス生物学 Vol.6 『ウルフドッグ』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 狼犬ウルフドッグ。 狼の戦闘力に犬の忠誠心を持つ、 ハイブリッドの危険な番犬。 アランツァのウルフドッグは、 どうやらそれだけではないようです。 あなたが冒険者として力をつけてきたなら、 よく調教されたウルフドッグは落とし穴。 本日の授業は聞き逃せません、、、 * 生物学の授業は非常に重要な科目だった。 アランツァの地での戦いは、戦争となるとまた話は別だが、人間以外の生き物と交戦することも少なくなかった。 聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラントは生物学の権威。 そんな彼の授業は生き物の外見、性質、そして対処方法を教えてくれる。 生徒たちを生き残る道へと導く、確かな灯火だ。 今日もカメルの授業が始まる……。 * 「さっそく聞くが、このなかにウルフドッグと戦ったことのあるものはおるかね?」   開口一番、グラント博士は英雄候補たちにこう問うた。   さすが、というべきか、ちらほらと手が挙がる。 「これは驚いた。アヴィオン、ニナ、そしてガリィか」   前の方に座っていたガリィが驚いて振り返る。君の隣に座るヘイルが目をそらし、君の脇を肘でつついた。ヘイルと二人で含み笑いをする。 「では、ガリィ」 「うわ」   当てられたガリィがなぜか参ったという声を上げる。彼の様子に、クスクスと笑い声が上がる。 「なにがうわかね。君はどうやってウルフドッグを撃退したのかな? その時の様子を聞かせて欲しいのだが」 「あ、えっと……いや、大したことないんで、俺はいいです」 「こらこら。この授業は君のためだけじゃない。君の経験が、クラスメイトを救うことにもなるんだぞ」 「うーっ……」   悩むガリィを見て、君とヘイルはこらえきれなくなってプッと吹き出す。 「あーくそ、どうにでもなれ!」   ガリィは観念したように話し始めた。 「礼拝堂の隣の宿舎に入ろうとしたら、噛み付かれたんです」 「ほう、興味深いな」   グラント博士は目を見開いた。 「ウルフドッグは番犬として居たわけだな。どうして宿舎の番犬に噛み付かれたんだね」 「それは……」 「入ろうとした、というより、忍び込もうとしたというわけかね」 「あ、はい」 「日が沈んでから?」 「あ、はい」 「なぜ」 「あ……それは、その……シ、シスターに会いに行ったというか……」 「ほう。シスターに忍んで会いに行って、番犬のウルフドッグに噛み付かれて、それで?」 「で、ゴロゴロ転げまわったら服が破れて自由になったんで、そのまま逃げました」 「ふうむ」   グラント博士は眉を寄せてため息をついた。 「それは、ウルフドッグを撃退したとは言わんな。君がウルフドッグに撃退されたのだ」   ドッ、と教室が沸く。   ガリィは顔を真っ赤にして言い訳する。 「いや、でも、俺だけじゃないんですよ!」 「言い訳は男らしくないぞ、ガリィ!」   ヘイルがそれを打ち消すように叫ぶ。また教室が沸いて、グラント博士は彼らを鎮めなければならなかった。 「分かった分かった。その話は、職員室でじっくり聞こうじゃないか」 「うへえ」   ガリィは情けない声をあげた。 「手ぇ上げるんじゃなかった……」   また教室からゲラゲラと笑い声が上がった。その笑い声の大半は、ガリィと一緒に忍び込んだ、君とヘイルのものであったが……。 * 「では、気を取り直して質問しよう。アヴィオン、ウルフドッグに出会ったら、どのように対処するのが正しいか?」   グラント博士は狩人のアヴィオンを指名する。   アヴィオンはいつもの静かな口調で、すぐに答えた。 「その前に一つ質問させて下さい」 「うむ」 「出会った場所は、森ですか? 洞窟ですか?」 「ううむ」   グラント博士は反すうしていた口をピタリと止め、ニッコリと笑った。 「的を射た質問だな。優れた質問は優れた答えよりも尊い。アヴィオン、では、狩人の君から、森で出会った時、洞窟で出会った時、それぞれの対応について教えてくれないか」 「はい」   彼は静かに微笑みながら、控えめに話し始めた。 「洞窟で出会ったなら、部屋を塞ぐように守っている事が多いはずです。引き返しても、追ってくることはないでしょう。十分な準備をしてから戦うべきだと思います」 「例えば?」   グラント博士の問いに、アヴィオンはすぐに答える。 「例えば、狼犬の鋭い嗅覚を逆手に取るために、刺激臭のする物を用意します。部屋の中にぶちまければ、ウルフドッグの強さを半減できるでしょう」 「なるほど。では、森で出会ったら?」 「森でウルフドッグに出会ったら——」   アヴィオンは首を振った。 「どうか天国にいけるよう、自分の信じる神に祈れ。……そう言われています」 *   穏健派のアヴィオンのこぼした意外な言葉に教室はざわつく。 「こらこら、静粛に。アヴィオン、それは一体どういう意味か、皆に説明してくれないかね?」   グラント博士はしばらく反すうをしていたが、この件は完全にアヴィオンに任せてしまったようで、彼に続きを促した。 「はい。森で出会った狼犬は非常に危険な存在です。灰色熊と出会うか、ウルフドッグと出会うかと問われたら、僕なら灰色熊と戦うことを選ぶでしょう。まだ、逃げきれるかも知れませんから」   アヴィオンは話し始める。 「彼らは、誤解されやすい種族です。狼よりも少し弱いくらいだろう、と高をくくる冒険者もいます。それは間違いです。銀色に輝く彼らと実際に向い合ってみればそれが分かります。全身の毛が逆立ちますよ。猛獣です。犬よりも、狼よりもずっと大きいのです。イノシシと同じ体重を持ち、全身は筋肉の塊です。頭は分厚い頭蓋骨と頸椎(けいつい:首の骨)に守られています。当たりそこねた刃など、ものともしません。鋭い牙を持ち、一度噛みついたら肉を引きちぎるまで離れません。脚力が強く、枝の上に隠れるヒョウなどにも飛びつく跳躍を見せます。森を駆ける姿は銀の風のようです。森の動物は誰も逃げられません。嗅覚も犬のように鋭いのです」   アヴィオンはとつとつと話すが、顔は少し紅潮しているようだった。   グラント博士はうなづいて、彼に質問した。 「逃げるのではなく戦うのなら、どうなるかな?」   アヴィオンは問い返す。 「森で戦うんですよね」 「戦うことはできないかね?」 「いいえ、どうしてもというならやります。森は彼ら獣の領域ですが——」   アヴィオンはキッパリと言った。 「僕の領域でもありますから」 * 「森の中なら、罠を仕掛けます」   アヴィオンは森に潜む一本の木のような佇まいだったが、狩人としての知識を披露する時には、そこにキラリと刃が輝いたようだった。 「効果的な罠はスネアとかトラバサミなど、動きを止めるものがいいでしょう。彼らの知能が高いとは言っても、しょせん獣ですから、人間の知恵にはかないません。いや、人間は、知恵でしか勝てない、というべきかな」   アヴィオンは慎重に言葉を選んでいるようだった。 「肉弾戦なら、分厚い金属鎧を装備しなければならないでしょう。ヘイルのような特別な身体であれば別ですが、我々の首には大事な血の管があります。ウルフドッグはそれを知っており、首を噛み付いてくることが多いのです」   アヴィオンの答えに、グラント博士は更に質問する。 「遠距離戦なら?」 「弓矢がいいと思います。狙うのは心臓です。ですが……」 「どうした?」 「ウルフドッグに気づかれずに矢を射ることができるなら、引き返して別の道を行くべきだと思います」 「なるほど」   グラント博士は彼の言葉に大きく頷いた。 「アヴィオンは大事なことを教えてくれたな。不要な戦闘をけしかけることは、勇気ではない。軽はずみなだけだ、と」 *   授業も終わりに近くなり、グラント博士は真面目な口調で話し始める。 「魔法による掛け合わせで生まれたウルフドッグは、魔法を使わねば調教が難しく、本物の狩人でなければ飼いならすことができない。ただ、一度飼い馴らせば、血よりも濃い絆で結ばれるという。以上のことから分かることは何か? さすがに優秀だな。よく手が挙がるクラスだ。では、マグス」   錬金術師のマグスは、コクリと頷いた。 「ウルフドッグは人間にしか扱えない、ということです。彼らは錬金術の生み出した生物兵器だからです。だから、錬金術を理解する知能を持った限られた種族、つまり、人間にしか扱えません」   その言葉を引き継いで、グラント博士はニナに水を向ける。 「過激だな、マグス。エルフはウルフドッグを使うことはないのかね? ニナ」 「使いません。恐らく人間だけでしょう」   エルフのニナは、微笑んで首を振る。 (「そんな不自然な掛けあわせ、自然を愛する森の民なら許しません」とでも答えられたら盛り上がるんでしょうけど、ネグラレーナの商売ではそういうのも取り扱ってたからね……)   ニナは笑顔の裏で、密かに舌を出した。彼女の複雑な胸中を察するものは、ほとんどいないだろう。   グラント博士は続ける。 「ウルフドッグから逃げ切ることは至難の業だ。推定最高速は時速100キロで、全力で30分だって駆けつづけることができる。速度を半分に落とせば、一晩中だって走れるという。やはりウルフドッグは、森で一番出会いたくない獣のうちの一つだといえるだろう。どうしても戦わなければならないなら、地形を利用した罠を仕掛けたり、網で捉えることや布を噛ませることで、動きを止めることを考えること」   終業の鐘がなる。 「もっとも、アヴィオンの教えてくれたとおり、ウルフドッグを扱うものと敵対せぬに越したことはない。もしそうなってしまったら、ウルフドッグは犬とも狼とも違う、一種の猛獣だと心得て、正面からでなく、知恵を絞って戦うこと。以上!」   博士はピンと背すじを伸ばしたまま、教室の扉を開ける。ありがとうございました! と声が響く。   若い生徒たちに教えることのうち、どれが役立ち、どれが無駄になるかは分からない。   だが、いくつかはきっと、彼らの命を永らえさせてくれるだろう。   そう信じて博士は今日も教鞭をとる。 (From:清水龍之介) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  ウルフドッグ  部屋に入ると大きくて凶暴そうな犬が吠え掛かってきた。狼犬ウルフドッグだ! 部屋の奥には綺麗な道が見える。戦わずに逃げるなら一度だけ噛み付かれるものの、それ以上は追ってこない。体力ポイントを2へらして明るい道へ逃げる(Aへ進む)。  戦うならあなたはウルフドッグは嗅覚が非常に強いことを思い出す。香水かスライムのしずくを持っているか? 持っていて使用するなら、ウルフドッグの技量ポイントを2へらして戦うことができる。使ったものをアドベンチャーシートから消しておくこと。 【断頭台の迷宮】に登場。 技術点8 体力点8 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。