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2024年12月4日水曜日

第3回【白い小屋、赤い絶望】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4333

第3回【白い小屋、赤い絶望(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ


※ここから先はゲームブック【白い小屋、赤い絶望(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


ぜろです。
「白い小屋、赤い絶望」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
主人公、サクタロウは登山中に吹雪に見舞われ、山小屋へ避難します。
しかしその山小屋は異様な状況になっていました。
火の入ったままの暖炉。壁一面の赤い文字。床一面の赤い紋様。そして生臭さ。
あちこちに散らばるヒントから、なんとなく異星の怪物を召喚する儀式が行われたことがわかります。
しかしそこでトラブルがあり、人はいなくなり、おそらく見えない異星の怪物が存在しています。
逼迫している状況ですが、それはそれとしてあと1時間で薪を見つけないと、ゲームオーバーです。
調査と薪探しの同時進行。はたして。

【現在の時間:午後9時】


●アタック02-5 薪と遺体

いよいよ残る調査項目は、上げ板だけだ。
ひとつひとつ潰していく感が、昔の総当たり式のアドベンチャーゲームを彷彿とさせる。

さあ、真相が明らかになるのか、薪が見つかるのか。
俺は上げ板を上げた。
そこは床下収納ではなく、ちゃんと地下に通じていた。
梯子がついている。
明かりはない。懐中電灯が必要だ。
大丈夫。持っている。
よかった。俺の調査の順番は間違っていなかったようだ。

俺は懐中電灯を持ち、梯子を下っていく。
懐中電灯を構えてまわりを見回す。
真っ暗な中に、棚や木箱がある。
一角には、薪が積み上げられていた。
よし。薪ゲット。

しかし梯子で上り下りする地下室に薪を置くのはちょっとどうなのか。
普通に考えてここを保管場所にするのは間違っている。
不便なことこのうえない。ぜったいに背負子がほしい。

薪を確認しホッとして、別の方向に懐中電灯を向けた瞬間、目を大きく見開いた女が見えた。
ホラーにありがちなビビる効果音とともにドアップシチュエーションだ。
あやうく悲鳴を上げるところだ。

女はすでに死んでいた。
壁に身体を預けている。
首から下が、赤黒く染まっている。
首を切られている。

俺は、リュックの中にあった血濡れのナイフによるものだろうと思った。

・薪を取りに行く
・女の死体を調べる

薪の補充までの制限時間はあと1時間だ。
でも、そこに薪はあるのだ。今は確認を優先した方がいい。

俺は、女の死体を調べることにした。一歩一歩安全を確認する。これが今の俺に必要なことだ。

女は、鋭利な刃物で首を切られているようだった。
やはり、あのナイフだろう。
血は乾ききっていない。

女は、1冊のノートを手に持っていた。
これは?

俺は、そのノートを手に取った。
一見したところ、彼女の日記のようだ。
読むのなら、いつでも読んで良いというが、おそらく時間がかかるだろうと注釈がついていた。
それなりのボリュームがありそうだ。

なら、まずは薪の補充をし、それからじっくり読んだ方が良いだろう。

俺は薪を手に入れ、上のフロアに戻った。
追加の薪を暖炉にくべる。
火かき棒で中をかき回していると、奇妙なものに気がついた。

暖炉の中で、燃え残っているものがある。
俺は火かき棒でそれをたぐり寄せた。

どうやら、それは書物のようだった。

タイトルは、こうあった。

『妖蛆の秘密』

火の中に何時間もさらされながら、焦げ目ひとつついていない。
なんとも奇妙な現象だ。

俺には見当がついた。
おそらくこれが「魔導書」というものだろう。
決して燃やすことも絶やすこともできない。禁断の書。

そしてここに登場するということは、あの謎の異星からの怪物の、召喚の儀式に使う書物。

プレイヤーの俺は、最初から超常的な物語であることを知っているから、さまざまな予測を立てることができた。
キャラクターのサクタロウにしてみたら、妄想ではないかと疑っていたものが、現実となって目の前に現れた瞬間だろう。
今この瞬間、プレイヤーの考察とキャラクターの現実がシンクロしたと言っても良い。

俺はこの本を、手に取って読むことができる。

でもちょっと待って。
この本を確認する前に、読んでおかなければいけないものがあるだろう。

俺は、地下の女の遺体が持っていた日記に、先に目を通しておくことにした。


●アタック02-6 日記はそこで終わっている

女の日記を読む。時間が経過する。
しかしもう、薪は補充した。時間の経過を気にする必要はない。

女は、異星の神を信奉する邪教の一員だったようだ。
彼女たちは、調査の果てに、冒涜的な魔導書を手に入れた。
俺は、『妖蛆の秘密』に目をやる。おそらく、これのことだ。
やがて、魔導書の記述に沿って、「人目につかない場所」で「儀式」を行う計画を立て始めた。

だが、彼女はこのことを、後悔し始めていたようだ。
彼女の記述によれば、この魔導書は写本。
内容に誤りがあるかもしれないとのこと。
彼女の調査結果によれば、この版の写本での成功例はなかったとのこと。
写本に誤植があり、儀式にミスがあれば、破滅的な結果をもたらすこともあり得る。
しかし、儀式の準備はもう始まっている。
今さら中止などと、言えるはずもない。

そこで彼女は、リーダーと2人きりになる機会に説得を試みようと考えた。
日記はそこで終わっている。

なるほど。
つまり彼女は、リーダーの説得に失敗したということだ。
そしてその結果、殺されることとなった。

5人連れのうち、リーダーとこの女、あと3人いたはずだ。
2人きりになったということは、だ。
ほかの3人は、生贄として異星送りになったと考えるのが妥当だろう。
同じ教団だったのだから、自ら運命を受け入れたのか、それともそんな結果になるなど思いもよらぬことだったのか、それはわからない。

ここから先は推測の域を出ない。
だが、想像はできる。
まず、暖炉の中に投げ込まれていた魔導書。
これは、儀式を止めるために女が投げ込んだ。
回収されていないところを見ると、リーダーは、魔導書は失われたと思い込んだに違いない。
そして、女はリーダーにナイフで首を切られ、殺された。

リーダーはナイフをリュックにしまい、しまい……。

あれ?
リーダーはそれからどうなったんだ?

リーダーが消える理由がまったくわからない。
魔導書はもう失われたと思い込んでいるはずだから、自分の名前を異星送りの方に間違えて追記するなんてこともないはずだ。
儀式がもう行えないことに絶望し、荷物も持たずに吹雪の中に消えて行った?

うーん。
女の日記の記述を探ると、仮定の話がある。

「もし写本に誤りがあれば、召喚した『あれ』は、契約を無視して襲いかかってくるかもしれない。あるいは、『あれ』と体が入れ替わるかも」

あるとしたら、ここだろうか。『あれ』と体が入れ替わる。
原理はまったく不明だが、リーダーは、異界の怪物、■の精、『あれ』と体が入れ替わってしまった。
だからここには、目に見えない異界の怪物だけが存在している。

推測に推測を重ねた結論だから、確信を持てないことこのうえない。
とにかく、リーダーに関してのみ、行く末が謎なのだ。用心に越したことはない。

そうして俺はいよいよ、魔導書の写本を手に取った。


●アタック02-7 めくるめくる魔導書

魔導書をめくる。
表紙裏に、名前を書く欄がある。

■■■:(空欄)
▲▲▲:アレックス・ボトム/クリスチャン・ディオン/エイイチ・フジタ

■とか▲とかいうのは、知らない言語で解読不明なところだ。
だが、この並びを見るだけで、俺にはピンときた。
▲の後に並んでいるのは3人。これは生贄として、異星送りになった3人だ。
つまりこっちに書くのは犠牲になる者。
空欄になっている■の欄。
こちらこそが、例の怪物を使役する者の名前を記すべき場所だ。

だが、写本ゆえに誤植の可能性が指摘されている。
怪物を使役できるとは限らない。むしろ襲ってこられる可能性だってある。

魔導書の中身は、これ以上読むことはできないようだった。
俺には読めない文字で書かれているのかもしれない。

■のほうは、リーダーか、リーダーとあの女が名前を書く予定だったのではないか。
おあつらえ向けに、ペンがある。俺はこの写本に、名前を書き込むことが可能だ。

そしてそれが、この儀式を完了させる唯一の手段なのだろう。
儀式が中途半端なところで終わっているからこその、この猛吹雪に違いないからだ。

儀式を、終わらせなければならない。

ここで選択肢が出ている。
どこかに名前を書くか、何もしないか。
書くのなら、どこに名前を書くか。

儀式を終わらせるために、俺はどこに名前を書けばいいのか。
まあだいたいわかる。間違えてはならない。
▲の方に書いたら、たちまち異星送りだろうからな。

俺は、■の方の欄に、「丸井サクタロウ」と書こうとして、ふと動きを止めた。
この署名、自署でなければならないのだろうか。
たとえば、全然知らない誰かの名前を書いたらどうなるのだろう。
▲の方に名前を書いた人たちは、自署だったのだろうか。

いろんな考えがよぎったが、思考を中断した。
検証できないことを考えても仕方がないし、それを試みるほどの危険も冒せないからだ。
自分の名前を自署するしかないな、やっぱ。

■に名前をかきかき。

儀式は完成した。
壁の文字列や、床の図形がうごめくように見えた。
なにか、目に見えない力が発揮されていることが、感じ取れた。
同時に悪臭も強まっていく。
儀式によって、俺の感覚は研ぎ澄まされている。
部屋の一角。荷物の山の上あたりに、何か目に見えない存在が、浮かんだ状態でとどまっているのが知覚できた。
それは俺に敵意を向けて、今にも襲いかかろうとしていた。

俺は理解した。
さっきまでは、門は開いていたが、召喚は完了していなかった。
だからこの存在は、実体化できず、気配だけを飛ばしてきていたのだ。
せいぜい便所の扉を閉めるくらいの力しか発揮できなかった。
それが、儀式が完了したことで、今こそ実体化してしまったのだ。

・火かき棒をつかんで戦う
・便所に逃げ込む

目に見えない存在に、物理的な攻撃が効くとも思えない。
たぶん、こいつに効果があるのは、送り返す呪文だろう。
星図の裏に書かれていた、呼び出す呪文と送り返す呪文だ。

俺は便所に逃げ込んだ。
扉に強い衝撃が加わり、はじけ飛ぶ。
その向こうには何も見えない。しかしそこに、目に見えない怪物がいることは明らかだった。
あっという間に追い詰められた。

そしてここに、俺が待ち焦がれていた選択肢が現れた。
頭の中に浮かんだ言葉を、とっさに唱えるというもの。

そこには2つの言葉が並ぶ。
いっぽうは、召喚の呪文。
もういっぽうは、送り返す呪文。

俺は、送り返すほうの呪文を、唱えた。
まる暗記しているバスタードの七鍵守護神(ハーロイーン)の呪文と間違えないで良かったぜ。

小屋の中に突風が吹き荒れた。
小屋の壁の一部が吹っ飛び、そこから突風が吹き上がってゆく。
おそろしい存在が、まるごとその気流に乗って小屋の外へ飛び出してゆくのがわかった。

その存在が、異星へと送り返されたことを、俺は確信した。

そのとき、暖炉の火が風に巻かれて火柱のようになった。
それはたちまち、小屋の壁に燃え移った。
火事だ!

俺は慌てて小屋を飛び出した。
外の吹雪は、もう止んでいた。
異星との接続が切れたのだ。

小屋は炎に包まれている。

そこに選択肢が出た。
俺は今、その手に魔導書『妖蛆の秘密』を持っている。
この魔導書を、炎の中に投げ込むか、持ち帰るか、というものだ。

おそらくだが、これが最後の選択肢だろう。
俺は選ぶ。それは——。

次回最終回。俺の選んだ結末を見届けよ。


■登場人物
丸井サクタロウ 主人公。登山中に吹雪に見舞われ、山小屋に避難する。しかしその山小屋は異様な状況だった。
5人の先客 ここで異星から、■の精を召喚するための儀式を行ったとみられる。しかし誰もいなくなった。


■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「白い小屋、赤い絶望」
著者:丹野 佑
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/2484141


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