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『これはゲームブックなのですか!?』vol.113
かなでひびき
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かなではドールハウス好きです。
それも、例えば引き出しの中にもきっちりモノが詰まっていたり、机の上に書きかけのメモ、読みかけのまま広がっている本なんかが残っていたりするような、「超」精密なもの。
ドールハウスというのは、「人が住まう」ものの縮小版。
言い換えれば、その人の人生観がみっちり詰まっている。
つまり、耳を傾けると、その「部屋」「建物」自体が語りかけてくる。
そんなものが大好き。
というかね、家が着々とドールハウスに侵食されているの(;_;)
うーん。このままだと、1/8人間ならぬ1/12人間になりたいわ。
いきなりの『ウルトラQ』ネタから始まる、外見はJK? JC?
だけど、中身はザ老害。
バーチャル図書委員長かなでひびきだよっ!
で、そんな「モノを語りかけるもの」満載な本が出ました。
『空想世界のもちもの』(著:るきち 日貿出版社)よ。
ページを開くと、ほのかにさす光に照らされた一枚の地図。
「三つの大陸の人々がたどり着けなかった『名前のない土地』は、広大すぎて詳細な地図がありません。
この地図は、幸運にもここに足を踏み入れたタリンが、もう一人の主人公エイシュンと旅をした成果を『世界地図(渡り図)』に新たに書き記したものなので、いまだ完成してません」
(本文より)
なんか、このページだけで、そう、まるで、童話、あるいは絵本の最初のページを開いたワクワク感がハンパありませんっ!
で、次のページにコンセプトが書かれているんだけど、背景コンセプトアーティスト、プロップデザイナーとして活躍されている著者のるきち先生が、中学、高校の時から温めていたものを書き溜めたものなの。
ざっと言うと、地理の学者を目指すタリン君が、商隊に同行。まだ「名前の付けられてない」土地を巡る、というバックストーリーなんですけど、何ですか? この緻密な世界観は!?
キャラクター紹介、その衣装から、その地域を代表する風景、そしてそこに住まう人々の家。食事。日用品なんかや小道具。紋章まで。
家も、高原地帯ならいかにも民族風。都市部ならいかにも都市風。とちゃんと色分けしている。
そして、その設定が細かいのよね。
たとえば、衣装ひとつにとっても、下着からどのように上着を着ているのか。どのように小道具をつけるのか、実に細かく書き込まれている。
特に、食事。
ごちそうはもちろん、その原材料や、屋台に並ぶ姿。「商人の携帯食とお茶」「行商人の品々」そして「アンズ油づくり」まで。
まさに宮崎アニメに出てくる「飯テロ」以上の素敵なサムシングが詰め込まれているわ!
あるいは「民族」
アジア系の香りがするんだけど、実在のどこの民族ともいえない、オリジナリティを確実に出している。
そう、この本に出てくるものの形は「これだからこう」という理由がある。
それが、この本のリアリティにつながっていってる。
その姿は、まるでひとつの図鑑のよう!
また、そのネタの出し方→つまりは岸辺露伴ライクに「全てものに目を通せ」ということなんだけど、具体的に出来るやり方で書いてあるし、パソコンを使った作画技術まで抑えてある。
私的な話だけど、ちょっと眉をひそめたらゴメンナサイ。
だけど、クリエーターを趣味としていても、あなたの周りにもいるんじゃないかなぁ?
設定ばかりやたら凝っているけど、肝心の物語が動かない、って方。
だけど、この本は違う。
設定しか書いていないのに、まるで「見えない物語」があるようにグイグイと引き込まれていく。
いわゆる「設定房」と、この本の違いは? と考えると、それは「根幹に物語がある」っていうことなんじゃないかなぁ?
例えば、この本の中に、「創作するときに気をつけていること」ってコーナーがあるけど、その中に「第三者に見てもらう、言葉で設定を解説する」「自分と他人の共通する部分を探す」
ってとこがあるわ。
結局「物語」が「もの」を「語る」なら、それは「第三者」に語らなきゃ意味がない。
一方で「全体を見る」「創作世界の設定がぶれていないかチェックする」
特に「一つ一つ絶対に完成させる」なんて言葉、なにか創作する方々にとって、基本だけど、もっとも厳しい難関かも?
150ページにわたる詳細な設定だけど、物語と直接関係ないところまで煮詰めてあるから、絵、つまり設定だけ見ても「物語は語られる」
逆に言えば、ここまで設定をつめてないと、物語は語りださない。
「設定だけ語って、後は読者が勝手に語ってくれる」などという言葉を吐くやからに限って「これだけじゃ何も浮かばないよ」ってうんざりするけど、この本はそういうことがない。
この本をお勧めしたい方は、もちろん、「異世界の小道具や背景」ってどうやって「具体的に」作るんだろう、としている人。
「世界観」を建物や小道具で詰めていこうとしている方にもオススメ。
この細かな設定から、二人の物語、いや、この世界にまつわる人たちのお話を空想してみる、ってのはどう?
まるで、小学校のころ、初めて出会った図鑑、そして絵本からどんどん空想が進んでいったように、これはまさに「大人の絵本」だと思うの。
「世界」から、物語を空想するのも、ひとつのゲームブックの形だと思わない?
見逃せば人生後悔することウケアイ。
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『空想世界のもちもの』
著 るきち
出版社:日貿出版社 単行本(ソフトカバー) 2024/2/15 2400円(+税)
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