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2026年2月13日金曜日
2026年2月12日木曜日
『Monkey business』-クワニャウマの新しいアジト- FT新聞 No.4768
小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』完結おめでとうございます!
その熱気に触れまして、番外編書いてみましたー!
すべての『汝、獣となれ人となれ』ファンに!
そして、齊藤飛鳥先生ファンに捧げます。
楽しんでいただければ幸いです!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『Monkey business』
-クワニャウマの新しいアジト-
葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
稀代の冒険家、(あるいは詐欺師とも口の悪い奴は言う)クワニャウマ氏。
この度、〈太古の森〉のヴィンドランダ遺跡群へ冒険、通称『汝、獣となれ人となれ』事件を解決に導き、その報酬で念願のアジトを手に入れたということで、FT書房の編集員である私が呼ばれた。
「本当は誰にも見せたくないけど」
クワニャウマ氏はそう言った。
「じゃあ。なぜ私なんかを?」
「あんた一番人畜無害……というか、ここのアジトの位置さえも忘れちゃううっかりさん系だから。秘密を守るにはちょうどいいの」
一歩入る。
部屋の中に咲き乱れる花。壁はツタでおおわれている。いたるところに植物が生い茂っている。
(p1) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p1.jpg
それが「廃墟」のようなイメージを保っているのは、「持ち主が丹精込めて手入れしているから」。
「クワニャウマさんが!? これを!?」
がさつなイメージに合わない。
「まあね。ある意味命に等しい財産だし」
「で、暇なときはこのデッキチェアで寝てるの。というか、デッキチェアで緑に囲まれてリフレッシュするのが目的。名付けて『緑の王座』」
(p2) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p2.jpg
「冒険でくたくたになったとき。汗やほこりなんかはこうして流す!」
クワニャウマ氏は、何か床のステップを操作。
すると、デッキチェアがひっくり返り、出てきたのは風呂桶!
「なんとなればそこのハーブを取って入れてもオケ。少なくとも、相棒にも知らせてない『秘密の天国』よ。ここがあるから、あたしは明日冒険に出られる。そう言っても過言じゃないけど」、
床下でデッキチェアが散乱する音が聞こえたのだけど、気のせいだろう。
(p3) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p3.jpg
まるでガラクタのように無造作に置かれているのは、これまでの「収穫」つまり、宝箱、何かの剣。
(p4) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p4.jpg
(p5) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p5.jpg
「これって曰く付きみたいですねー」
「うん。『選ばれたモノしか抜けない』なんてふざけたこと言うから、台座ごと奪ってきたよ」
(p6) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p6.jpg
そして、目につくのは……
「カメラ!」
(p7) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p7.jpg
古めかしいが、オーバーテクノロジーなカメラ。
「なんでこんなものがここに!?」
「いいところを指摘してくれました!
実は、チャマイで開発された最新技術の末。活動写真って知ってる!? ひそかにそれをはやらせるプロジェクトがあるの。
まだまだ産声を上げたばかりなんで、海のものとも山のものともとれないけど、これは、活動写真を撮るカメラ。
これからあたしの冒険譚を取って、アランツァ全土に感動の嵐を巻き起こすの。シリーズタイトルは『クワニャウマ。その愛と真実。そして』
ゆくゆくは、『クワニャウマ記念館』が建てられる予定よ」
目を輝かせて、一気にまくしたてるクワニャウマ氏。
そこには、少女、そして少年の心を持った大人がいた。
このアジトの弱点は、トイレは別室だということ。(そりゃそうだ)
二人して用をたして帰ってくる。
全財産盗まれていた!
「ああっ! あんまりにも気持ちいいんで、屋根もつけずにふきっさらしにしたのは、セキュリティ対策の大きな穴!」
(p8) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p8.jpg
「仕方ないわね。もう一度買うか」
クワニャウマさん! 今何と!?
「例えばね、この花は、香りだけで完全にその人の心に真のリラックスを与える。
ある宗教でも、瞑想の時にこれを使う。
百年に一度しか咲かない。ってんで、金貨1万枚出して買う人もいる。
この部屋に来たら、魂さえリフレッシュするのは、その効果のタマモノ。
この花もしかり。この花はある山脈にしか咲かない。しかも人食いモンスターがうようよしているところに咲く花で、食材としても、コレクションとしてもすさまじい額を誇るの。生えてるつただって、一口食べれば死者さえ生き返るシロモノ。通称『翠竜の鱗』まだほかにもヤバいものがあるけど、聞きたい?」
なるほど、無料で手に入る安全カミソリを使って剣を作る、など、涙ぐましい努力の末に、この財産を買ったんですね!
「目の前に無造作に堂々と置かれているものほど、賊は注意を払わないもの。おかげで目くらましの雑魚アイテムに手を出す奴らが多いこと多いこと」
「なるほど。最高のセキュリティかつ、宝物庫なんですね」
「あのカメル教授にも『このコレクションを一般公開しないことは人類の損失だ』とさえ言われた。けど、あたしのものはあたしのもの。名前も書いたしね。あたしが誰にも言わないわけ、わかってくれて?」
その時、ドアが開いて、そよ風とともに一人の少女が入ってきた。
イェシカだ。
彼女は、ここの花にもう一つ付け加えるように、花のような笑顔をはじけさせる。
そして、石板にこう書く。
「新しい花。咲いた?」
クワニャウマ氏は、笑ってこう答える。
「うん。この間、100年に一回しか咲かない『極楽花』が咲いたところ」
イェシカは早速、その前に座る。
そして、便箋を取り出し、スケッチを始めた。
つたないながらも、いきいきとしている絵。
「人はあたしのことを『度を過ぎたケチ』と言ってるのを知っている。
あたし自身『金は命より重い』と思っている」
そして、イェシカを眩しそうに見つめる。
「だけどね。それは、世の中に、命より重いモノを賭けるだけの価値がないことをよく知ってるだけ。
そして、この笑顔には、いくらかけたっていい。それだけの価値はある。そう思わない?」
一心に筆を走らせるものと、それを見守るもの。
書き終えたスケッチに「天国のクリスティさんへ」と書かれるのを見届ける。
イェシカは、デスクから何かの種を取り、そしてスケッチに置く。
一心不乱に、丁寧に、折りたたんだそれは、何か「羽のついた種子」にも見える紙飛行機になる。
立ち上がるイェシカ。
春から夏へ変わる香りがする風が、流れ込む。
彼女は、それめがけて、天にも届かんばかりにそれを放り投げる。
紙の羽が、あおられながら天空の点となって、見えなくなるまで見届ける。
私は、「どうして彼女が全財産を使ってここを建てた」か分かった。
EOF
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
あとがき。
ありがとうございます。
今回は「二人」の先生の前、ということで、力を入れて作ってみました。
私のつたない筆、そしてつたない工作の腕に、ありがたくも深く感銘していただいた 齊藤飛鳥先生。
そして、発表の場を与えていただいた水波流編集長。
ほんと、わたしなんかでいいのかな? という感じです。
今年の幸運、ここで使い果たしたかも!?(笑)
お二人に深い感謝を。
(葉山海月)
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楽しんでいただければ幸いです!
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『Monkey business』
-クワニャウマの新しいアジト-
葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
稀代の冒険家、(あるいは詐欺師とも口の悪い奴は言う)クワニャウマ氏。
この度、〈太古の森〉のヴィンドランダ遺跡群へ冒険、通称『汝、獣となれ人となれ』事件を解決に導き、その報酬で念願のアジトを手に入れたということで、FT書房の編集員である私が呼ばれた。
「本当は誰にも見せたくないけど」
クワニャウマ氏はそう言った。
「じゃあ。なぜ私なんかを?」
「あんた一番人畜無害……というか、ここのアジトの位置さえも忘れちゃううっかりさん系だから。秘密を守るにはちょうどいいの」
一歩入る。
部屋の中に咲き乱れる花。壁はツタでおおわれている。いたるところに植物が生い茂っている。
(p1) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p1.jpg
それが「廃墟」のようなイメージを保っているのは、「持ち主が丹精込めて手入れしているから」。
「クワニャウマさんが!? これを!?」
がさつなイメージに合わない。
「まあね。ある意味命に等しい財産だし」
「で、暇なときはこのデッキチェアで寝てるの。というか、デッキチェアで緑に囲まれてリフレッシュするのが目的。名付けて『緑の王座』」
(p2) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p2.jpg
「冒険でくたくたになったとき。汗やほこりなんかはこうして流す!」
クワニャウマ氏は、何か床のステップを操作。
すると、デッキチェアがひっくり返り、出てきたのは風呂桶!
「なんとなればそこのハーブを取って入れてもオケ。少なくとも、相棒にも知らせてない『秘密の天国』よ。ここがあるから、あたしは明日冒険に出られる。そう言っても過言じゃないけど」、
床下でデッキチェアが散乱する音が聞こえたのだけど、気のせいだろう。
(p3) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p3.jpg
まるでガラクタのように無造作に置かれているのは、これまでの「収穫」つまり、宝箱、何かの剣。
(p4) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p4.jpg
(p5) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p5.jpg
「これって曰く付きみたいですねー」
「うん。『選ばれたモノしか抜けない』なんてふざけたこと言うから、台座ごと奪ってきたよ」
(p6) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p6.jpg
そして、目につくのは……
「カメラ!」
(p7) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p7.jpg
古めかしいが、オーバーテクノロジーなカメラ。
「なんでこんなものがここに!?」
「いいところを指摘してくれました!
実は、チャマイで開発された最新技術の末。活動写真って知ってる!? ひそかにそれをはやらせるプロジェクトがあるの。
まだまだ産声を上げたばかりなんで、海のものとも山のものともとれないけど、これは、活動写真を撮るカメラ。
これからあたしの冒険譚を取って、アランツァ全土に感動の嵐を巻き起こすの。シリーズタイトルは『クワニャウマ。その愛と真実。そして』
ゆくゆくは、『クワニャウマ記念館』が建てられる予定よ」
目を輝かせて、一気にまくしたてるクワニャウマ氏。
そこには、少女、そして少年の心を持った大人がいた。
このアジトの弱点は、トイレは別室だということ。(そりゃそうだ)
二人して用をたして帰ってくる。
全財産盗まれていた!
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(p8) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p8.jpg
「仕方ないわね。もう一度買うか」
クワニャウマさん! 今何と!?
「例えばね、この花は、香りだけで完全にその人の心に真のリラックスを与える。
ある宗教でも、瞑想の時にこれを使う。
百年に一度しか咲かない。ってんで、金貨1万枚出して買う人もいる。
この部屋に来たら、魂さえリフレッシュするのは、その効果のタマモノ。
この花もしかり。この花はある山脈にしか咲かない。しかも人食いモンスターがうようよしているところに咲く花で、食材としても、コレクションとしてもすさまじい額を誇るの。生えてるつただって、一口食べれば死者さえ生き返るシロモノ。通称『翠竜の鱗』まだほかにもヤバいものがあるけど、聞きたい?」
なるほど、無料で手に入る安全カミソリを使って剣を作る、など、涙ぐましい努力の末に、この財産を買ったんですね!
「目の前に無造作に堂々と置かれているものほど、賊は注意を払わないもの。おかげで目くらましの雑魚アイテムに手を出す奴らが多いこと多いこと」
「なるほど。最高のセキュリティかつ、宝物庫なんですね」
「あのカメル教授にも『このコレクションを一般公開しないことは人類の損失だ』とさえ言われた。けど、あたしのものはあたしのもの。名前も書いたしね。あたしが誰にも言わないわけ、わかってくれて?」
その時、ドアが開いて、そよ風とともに一人の少女が入ってきた。
イェシカだ。
彼女は、ここの花にもう一つ付け加えるように、花のような笑顔をはじけさせる。
そして、石板にこう書く。
「新しい花。咲いた?」
クワニャウマ氏は、笑ってこう答える。
「うん。この間、100年に一回しか咲かない『極楽花』が咲いたところ」
イェシカは早速、その前に座る。
そして、便箋を取り出し、スケッチを始めた。
つたないながらも、いきいきとしている絵。
「人はあたしのことを『度を過ぎたケチ』と言ってるのを知っている。
あたし自身『金は命より重い』と思っている」
そして、イェシカを眩しそうに見つめる。
「だけどね。それは、世の中に、命より重いモノを賭けるだけの価値がないことをよく知ってるだけ。
そして、この笑顔には、いくらかけたっていい。それだけの価値はある。そう思わない?」
一心に筆を走らせるものと、それを見守るもの。
書き終えたスケッチに「天国のクリスティさんへ」と書かれるのを見届ける。
イェシカは、デスクから何かの種を取り、そしてスケッチに置く。
一心不乱に、丁寧に、折りたたんだそれは、何か「羽のついた種子」にも見える紙飛行機になる。
立ち上がるイェシカ。
春から夏へ変わる香りがする風が、流れ込む。
彼女は、それめがけて、天にも届かんばかりにそれを放り投げる。
紙の羽が、あおられながら天空の点となって、見えなくなるまで見届ける。
私は、「どうして彼女が全財産を使ってここを建てた」か分かった。
EOF
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
あとがき。
ありがとうございます。
今回は「二人」の先生の前、ということで、力を入れて作ってみました。
私のつたない筆、そしてつたない工作の腕に、ありがたくも深く感銘していただいた 齊藤飛鳥先生。
そして、発表の場を与えていただいた水波流編集長。
ほんと、わたしなんかでいいのかな? という感じです。
今年の幸運、ここで使い果たしたかも!?(笑)
お二人に深い感謝を。
(葉山海月)
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2026年2月11日水曜日
第5回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4767
第5回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」への挑戦。妖狐と魔猫、二匹のお供を連れたタイガの冒険です。
目の前でコーネリアス商会の令嬢コンスタンサがオウカンワシにさらわれるのを目撃したタイガたち。
助けるために巨大樹の中腹にてオウカンワシと対決しますが、そこに令嬢はいませんでした。
さらなる高度を目指し、タイガたちの冒険は続きます。
【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9/10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2ロープ
3古代の彫像(金貨25枚相当)
●アタック02-6 ニャルラと壁登り
僕たちは、巨大樹リベンジの真っ最中だ。
最初に登ったときは、中腹にあるオウカンワシの巣までたどりついたけれど、そこにはコーネリアス商会のお姉さんはいなかった。
それ以上上に行くには準備が足りないと思った僕たちは、一旦巨大
樹を降りた。
そして、ロープなど必要物品を買い足して今、再挑戦している。
もう、前の高度はとっくにクリアして、さらに高いところまで登っている。
空飛ぶ鮫に襲われたり、鈍器猿が復讐してきたり、いろいろあったよ。
そうして今、僕たちの前には、幹の壁が立ちふさがっていた。
【中間イベントB そそり立つ壁】
道は完全に行き止まり、でこぼこした樹皮につかまりながら、幹の壁を登るしかない。
この高さで、幹にへばりついて登るのは、それだけでかなりリスキーだ。
加えて、高高度特有の風も強い。横から殴りつけるように、下からなで上げるように、気まぐれに風向きを変えている。
「かんたんかんた〜ん」
ニャルラは少ない足場を跳ねるようにして、軽やかに駆け上がって行き……途中でふわっと身体が持ち上がり、ころころと転がり落ちてきた。
そして僕の前にぺたん、と止まり、四肢を伸ばして「ぷぎゅー」となった。
昨日も見たなあ、この光景。
「まったく。学習しない猫ですね」
フォルネは、ロープの端を口にくわえると、慎重かつ器用に登ってゆく。
ロープが風で左右にゆらぎ、かなり難しそうだ。
それでも、しばしの格闘の後、壁の上の広いところにたどり着いたようだった。
フォルネの姿が見えなくなる。多分、ロープをどこかに結わえようというのだろう。
「ぐるぐるする〜」
ニャルラが復帰した。その目の前で、ロープが風に揺られている。
右に左に、ゆらめくロープに合わせてニャルラの瞳が左右に揺れる。それに合わせて、ニャルラのからだがむずむずしてきた。
やがてたまらなくなったのか、ロープに思い切り飛びついた。
「あ! まって! まだ!」
上からフォルネの声とともに、ロープが降ってきた。
すぐに幹の壁の上から、銀髪の少年が顔だけをのぞかせた。
「もう! まだ縛ってないのに引っ張ったりするから」
「にゃはは。ごめんちゃい」
「しょうがないですね。そのロープはニャルラが持って上がって」
「うぇ〜?」
「当然でしょう。タイガさまが上がるのに必要なんだから」
なんだかんだ言いながらも、ニャルラはロープの端をくわえると、今度は慎重に上がってゆく。
風はあいかわらず強いが、先の失敗から学んで幹にしっかりと爪を立て、まったく動じなかった。
やがて、ニャルラも壁の上に到達した。
「やった! できたよ〜。アタイえらい?」
「ありがとう。さっきは『学習しない』なんて言ってごめん」
そんな声が降ってきて、僕は少しだけうれしい気分になった。
待つことしばし。やがて崖の上に、二匹の顔が並んで覗いた。
フォルネも狐の顔に戻っている。
「タイガさま、準備できました」
「のぼれるよ〜」
「フォルネ、ニャルラ、ありがとう」
おかげで僕は、危なげなく壁をのぼりきることができた。
フォルネとニャルラはこうやっていつも僕を支えてくれる。本当に頼りになる相棒たちだ。
幹壁の上は、またちゃんとした道が続いていた。
道は途切れているようでいて、ここにも、また誰かの営みがある。
ここまで登ってきて、僕は思うことがあった。
この巨大樹は、ひとつの世界だ。
いろんな生き物がここの環境の中で生きている。
猿たちのような群れの社会も、巨大樹の中で完結している。
そして、ここが樹の上ということを忘れてしまうほどの、様々な植生の植物。
ここの「地面」は巨大樹そのもの。これ以上生命力に満ちあふれた、肥沃な土地はない。
みんな、みずみずしい巨大樹の恩恵を受け、ここで生活している。
人間たちが外から来るのは、この巨大樹の恩恵にあずかるためだ。
かつてここで暮らした者の遺構や財宝が見つかることがある。
僕たちの前に現れた鈍器猿が、いくつもの樽を持っているのは、あの猿しか知らない遺構がどこかにあるに違いない。
そうして外から来る者たちは昇降機を作り、階段を整備し、長い年月で少しずつ手を加え利便性を向上させてきた。
「世界樹」という言葉が浮かんだ。
世界樹というと、この世界そのものを支え、世界に恩恵を与えるという伝説の巨大樹だ。
それとは少し違うけれど、ひとつの巨大な樹木の中で、ひとつの社会が形成されている。
この樹そのものがひとつの世界。
意味は少し違うけれど、これも「世界樹」と呼べる存在なのではないか。
そんなふうに思った。
[プレイログ]
登はんの目標値は3(高度3のため) ロープがあると判定に+1
ニャルラ サイコロの出目1 ファンブルで失敗。生命点9→8
フォルネ サイコロの出目5 成功
ニャルラの再挑戦 サイコロの出目6 クリティカルで成功
タイガは従者のため、判定の必要なく成功
※フォルネとニャルラにとってはロープは邪魔なものでしかありませんが、ルールにのっとって処理しています。タイガは判定なしで成功扱いです。そのため実際の判定と演出はだいぶ異なります。
●アタック02-7 フォルネと既視感
【16 草避けのお守り→15 落下防止の護符】
壁を登りきった場所は、思いがけず開けた空間だった。平地の面積が多い。
ロープは頑丈な枝にがっちり結ばれている。
僕は次に来た人のために、ロープはそのまま残していくことにした。
ロープはもう1本予備があるから大丈夫だ。
「それでも、先にここに来た人はいるみたいです。こんなものが落ちてました」
フォルネが持ってきたそれは、ペンダント状になったアクセサリーだった。
紛れもなく人の手によるものだ。
ただ、その意匠は少し奇抜だった。
乾かした植物の根っこのようなものがぶら下げられている。
それも、ただの根っこではない。植物なのに、目とか口とかがついているように見えた。
干からびた植物系の魔物の根っこ?
何かのお守りだろうか。
一応、荷物に入れておこう。帰ってから鑑定してもいいし、売ってもいい。
「アタイ先のほうみてくる〜」
ニャルラはさっさと先行してしまった。
ところでさっきから、フォルネの様子がおかしい。
周囲をぐるりと見回しては、記憶を掘り起こすように眉を寄せている。
「フォルネ、どうかした?」
「ええ……この場所、すこし見覚えがある気がして……」
記憶と照合させているらしい。
「たしか、こっちに……」
フォルネは広場の端の方に進むと、そこから幹の壁の下の方を覗き込んだ。
「あった。やっぱり」
そうしてフォルネは、怖がることなく幹の壁を降りていった。
僕はおそるおそる覗き込む。少し下に、人ひとりがかろうじて立てる足場があり、フォルネはそこへ向かって降りていく。
それはいいんだけど、下を見るたびに、枝と枝の間にのぞく、はるかに小さい地上の景色が見えてしまい、ドキドキしてしまう。
フォルネ、よく平気で降りられるな。
フォルネは足場まで到達すると、何かをくわえて戻ってきた。
それは古びた皮袋だった。
「フォルネ、これって……」
「前に来た人の落とし物でしょうね」
開けてみると、入っているのは……なにやら魔術的な文字で紋様が描かれているもの。護符?
「落下防止……」
「読めるの!?」
「一応、魔術は少したしなんでいるので。これを持っていると、落下した時のダメージを完全に無効化できるようです」
完全に無効化!?
それって、すごくない?
つまり、これ持ってここから飛び降りたら、ノーダメージで地上に降りられるってこと!?
「やめといた方がいいです。誰も限界を試したことないと思うので」
それはそうか。
限界を試した者がいたとしても、もうこの世にいないのだろう、きっと。
でも、落下防止の護符だったら、なんであんなところに?
「不思議です。一度しか使えないものなのに、使われずにあんな場所にあるなんて」
「おとしちゃったんじゃないの〜?」
戻って来たニャルラが不意に口を挟んできた。
たしかに、それが一番無難な考え方だよね。
何かに追われて、荷物と別々に落っこちちゃったとかじゃなければいいな。
僕は嫌な想像を振り払った。
「ところでフォルネはどうしてここを? 見覚えって」
「途中に建物があったの覚えてます? 望遠鏡があったところ」
「おぼえてる〜! とおくが見えておもしろかった〜」
「ニャルラには聞いてないですけど、まあいいでしょう。そこで行き先を確認した時に目にしていたんです」
「なるほど、それで」
「下から見上げてたので、こんなものが落ちてるとまでは見えなかったですけど、特徴的な地形だったので」
「こんないいものを手に入れられるなんて、フォルネの観察眼のおかげだね」
「フォルネすご〜い」
フォルネはそっぽを向いた。耳がぴくぴくしているから、照れ隠しだとわかる。
「これは、タイガさまが持っていてください」
「え、でも」
「私たちはちょっとくらい高いところから飛び降りても平気なので」
「そうそうへっちゃら〜」
「さっき高いところから転がり落ちたばっかりのニャルラが言うと説得力あるね」
「も〜、たいがひど〜い」
「あはは、ごめんごめん」
僕は皮袋から落下防止の護符だけ取り出すと、自分の荷物入れにしまった。
さあ、それじゃあ出発しようか。
すると、ニャルラが急に興奮して話し出した。
「そうだった! あのね、この先にね……!」
[プレイログ]
隠された何かの発見(目標値4:器用ロール)
16 フォルネ サイコロの出目6 成功 →草避けのお守り発見
ここで「手がかり」(観測所で入手)使用
15 フォルネ サイコロの出目2 +技量点2 成功 →落下防止の護符発見
●アタック02-8 タイガと虫・虫・虫
【最終イベント】
「オウカンワシがいたの! でも、なんだか様子がヘンなのよ。アタイを見ても、じっとしてるの」
ニャルラがオウカンワシに遭遇したという地点まで進む。
太い枝の上で、オウカンワシはじっとこちらを見つめていた。
襲いかかってくる様子はない。
まるで、僕たちが来るのを待ちわびていたみたい。そんな不思議な考えが頭をよぎった。
まさか、そんなことって、ある?
オウカンワシは、中腹で対決したものよりもさらに巨大で、圧倒的な雄大さが感じられた。
僕と目が合うと、その翼を大きく広げた。ライオンや熊のような巨大な猛獣も、その大きな翼で包み込んでしまえるほどだ。
オウカンワシは飛び立つと、もうひとつ上の枝に舞い降りた。
そしてまた、じっと僕たちを見つめるのだ。
「こっちに来い、って言ってるみたいに見えませんか?」
うん。そう見える。
「いってみるの〜」
ニャルラはためらうことなく上の枝へと先行する。
僕たちも後を追った。
幹のまわりをぐるりと回り、上の枝に到達する。
オウカンワシは、僕たちの到着を待ちわびていたかのようだ。
その目線は一点を見つめている。
僕たちはその視線の先を追った。
幹に、ぽっかりと黒ずんだ穴があき、周囲が不気味に枯れ果てていた。
穴は子ども、ちょうど僕が入れるくらいのサイズ。オウカンワシには大きすぎて入れなさそう。
『この巨大樹は、枯死しかけている』
この樹を研究していた闇エルフの妖術師の言葉が思い出された。
その、枯れた穴の上方に視線を向けると、オウカンワシの巣が見えた。
オウカンワシは、身じろぎひとつしない。
まるで、僕たちの答えを待っているかのよう。
「あの枯れているところを、見てほしいんでしょうね」
僕も、そう思った。
オウカンワシとは言葉は交わせないけれど、不思議と何を言っているのか、通じる気がした。
「あの枯れているところをなんとかして、巣を守りたい。そのために、僕たちの力を借りたい」
そういうことかな?
「じゃ、みてみましょ」
ニャルラはためらわずに枯れた穴に近づく。僕たちもすぐに追う。
中は空洞になっているみたい。僕たちは順番に潜り込んだ。
中はまっくらだ。そして僕たちはランタンを持っていない。
準備不足だと思うでしょ。でも、今回は違うんだな。
ニャルラの瞳が闇の中に輝いている。まるで満月のように周囲を優しく照らす。
ニャルラはこの【満月のような瞳】で、暗闇の中でも昼間と同じようにものを見ることができる。
そして、それだけではない。その優しい明るさの恩恵は、僕とフォルネにももたらされるんだ。
入口に比べて、中は広めの空間になっていた。
慎重に歩を進める。フォルネとニャルラが左右を警戒している。
「なにかの気配を感じます……」
「響いて、どっちにいるのかよくわかんない〜。ヘンなニオイもする〜」
やがて空洞は行き止まりになった。
突き当りの壁に手をつき、触り心地をたしかめる。
これは……ただ枯れたというより、何かに食い荒らされたような?
突然、ガサガサと這いずるような不快な音と、ギチギチと鋭い顎がきしむような甲高い響きが闇にこだました。
僕の太もものあたりを、何かがもぞもぞと這い進む感覚に、体中がぞぞっとなる。
振り返る。
上からにゅるりと、節くれ立った長い胴体の巨大な虫の頭部が垂れ下がり、僕の眼前でぴたりと止まった。
あまりの恐怖に、呼吸がひゅっとなって、一瞬止まる。
胴体にはたくさんの脚。僕と同じくらいの大きさの、ムカデみたいな虫。
それが僕の目の前に天井から頭を降ろし、顎をカチカチと鳴らした。
それだけじゃない。右にも、左にも。
僕は完全に、この虫たちに囲まれてしまっていた。
僕は確信した。
この虫たちが、幹を食い荒らし、ここの枯れた空洞を作っているのだと。
【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う
虫たちの向こうに、フォルネとニャルラの光る瞳が見える。
僕が完全に囲まれてしまっている状況に、戸惑っているのか、焦っているのか。
「タイガさま……!」
「いまっ、たすけるからっ!」
それは一瞬の出来事だった。
ニャルラは雷光のごときすばやさで、僕を囲む虫たちを次々と蹴散らしていった。
内壁を蹴り、反動で跳び、爪撃を浴びせ、かみ砕く。
五匹の虫が一瞬で倒され、その場でびちびちとうごめき、ぐるんと丸まる。
そして僕の眼前で、ぬうっと大顎をむき出しにして迫る最後の一匹に、フォルネが飛びつき、胴体をぐねりとねじ曲げ、地面にたたきつけた。
あっけないほどの一瞬で、戦いは終わった。
僕はほっと胸をなでおろし……そのままずるずると、地面に崩れてしまったのだった。
[プレイログ]
【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う
1ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 一匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 二匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 三匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目5 命中 四匹目倒す
【狩りの本能】発動。弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。サイコロの出目5 命中 五匹目倒す。(器用点7→6)
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 六匹目倒す
【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
2草避けのお守り
【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9→8/10 器用点:7→6/7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2古代の彫像(金貨25枚相当)
3落下防止の護符
ロープ →消費
次回、オウカンワシの思惑と、巨大樹の異変
■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
ドトール 闇エルフの妖術師。闇エルフの繁栄のため、巨大樹を調査している。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。
■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
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※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」への挑戦。妖狐と魔猫、二匹のお供を連れたタイガの冒険です。
目の前でコーネリアス商会の令嬢コンスタンサがオウカンワシにさらわれるのを目撃したタイガたち。
助けるために巨大樹の中腹にてオウカンワシと対決しますが、そこに令嬢はいませんでした。
さらなる高度を目指し、タイガたちの冒険は続きます。
【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9/10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2ロープ
3古代の彫像(金貨25枚相当)
●アタック02-6 ニャルラと壁登り
僕たちは、巨大樹リベンジの真っ最中だ。
最初に登ったときは、中腹にあるオウカンワシの巣までたどりついたけれど、そこにはコーネリアス商会のお姉さんはいなかった。
それ以上上に行くには準備が足りないと思った僕たちは、一旦巨大
樹を降りた。
そして、ロープなど必要物品を買い足して今、再挑戦している。
もう、前の高度はとっくにクリアして、さらに高いところまで登っている。
空飛ぶ鮫に襲われたり、鈍器猿が復讐してきたり、いろいろあったよ。
そうして今、僕たちの前には、幹の壁が立ちふさがっていた。
【中間イベントB そそり立つ壁】
道は完全に行き止まり、でこぼこした樹皮につかまりながら、幹の壁を登るしかない。
この高さで、幹にへばりついて登るのは、それだけでかなりリスキーだ。
加えて、高高度特有の風も強い。横から殴りつけるように、下からなで上げるように、気まぐれに風向きを変えている。
「かんたんかんた〜ん」
ニャルラは少ない足場を跳ねるようにして、軽やかに駆け上がって行き……途中でふわっと身体が持ち上がり、ころころと転がり落ちてきた。
そして僕の前にぺたん、と止まり、四肢を伸ばして「ぷぎゅー」となった。
昨日も見たなあ、この光景。
「まったく。学習しない猫ですね」
フォルネは、ロープの端を口にくわえると、慎重かつ器用に登ってゆく。
ロープが風で左右にゆらぎ、かなり難しそうだ。
それでも、しばしの格闘の後、壁の上の広いところにたどり着いたようだった。
フォルネの姿が見えなくなる。多分、ロープをどこかに結わえようというのだろう。
「ぐるぐるする〜」
ニャルラが復帰した。その目の前で、ロープが風に揺られている。
右に左に、ゆらめくロープに合わせてニャルラの瞳が左右に揺れる。それに合わせて、ニャルラのからだがむずむずしてきた。
やがてたまらなくなったのか、ロープに思い切り飛びついた。
「あ! まって! まだ!」
上からフォルネの声とともに、ロープが降ってきた。
すぐに幹の壁の上から、銀髪の少年が顔だけをのぞかせた。
「もう! まだ縛ってないのに引っ張ったりするから」
「にゃはは。ごめんちゃい」
「しょうがないですね。そのロープはニャルラが持って上がって」
「うぇ〜?」
「当然でしょう。タイガさまが上がるのに必要なんだから」
なんだかんだ言いながらも、ニャルラはロープの端をくわえると、今度は慎重に上がってゆく。
風はあいかわらず強いが、先の失敗から学んで幹にしっかりと爪を立て、まったく動じなかった。
やがて、ニャルラも壁の上に到達した。
「やった! できたよ〜。アタイえらい?」
「ありがとう。さっきは『学習しない』なんて言ってごめん」
そんな声が降ってきて、僕は少しだけうれしい気分になった。
待つことしばし。やがて崖の上に、二匹の顔が並んで覗いた。
フォルネも狐の顔に戻っている。
「タイガさま、準備できました」
「のぼれるよ〜」
「フォルネ、ニャルラ、ありがとう」
おかげで僕は、危なげなく壁をのぼりきることができた。
フォルネとニャルラはこうやっていつも僕を支えてくれる。本当に頼りになる相棒たちだ。
幹壁の上は、またちゃんとした道が続いていた。
道は途切れているようでいて、ここにも、また誰かの営みがある。
ここまで登ってきて、僕は思うことがあった。
この巨大樹は、ひとつの世界だ。
いろんな生き物がここの環境の中で生きている。
猿たちのような群れの社会も、巨大樹の中で完結している。
そして、ここが樹の上ということを忘れてしまうほどの、様々な植生の植物。
ここの「地面」は巨大樹そのもの。これ以上生命力に満ちあふれた、肥沃な土地はない。
みんな、みずみずしい巨大樹の恩恵を受け、ここで生活している。
人間たちが外から来るのは、この巨大樹の恩恵にあずかるためだ。
かつてここで暮らした者の遺構や財宝が見つかることがある。
僕たちの前に現れた鈍器猿が、いくつもの樽を持っているのは、あの猿しか知らない遺構がどこかにあるに違いない。
そうして外から来る者たちは昇降機を作り、階段を整備し、長い年月で少しずつ手を加え利便性を向上させてきた。
「世界樹」という言葉が浮かんだ。
世界樹というと、この世界そのものを支え、世界に恩恵を与えるという伝説の巨大樹だ。
それとは少し違うけれど、ひとつの巨大な樹木の中で、ひとつの社会が形成されている。
この樹そのものがひとつの世界。
意味は少し違うけれど、これも「世界樹」と呼べる存在なのではないか。
そんなふうに思った。
[プレイログ]
登はんの目標値は3(高度3のため) ロープがあると判定に+1
ニャルラ サイコロの出目1 ファンブルで失敗。生命点9→8
フォルネ サイコロの出目5 成功
ニャルラの再挑戦 サイコロの出目6 クリティカルで成功
タイガは従者のため、判定の必要なく成功
※フォルネとニャルラにとってはロープは邪魔なものでしかありませんが、ルールにのっとって処理しています。タイガは判定なしで成功扱いです。そのため実際の判定と演出はだいぶ異なります。
●アタック02-7 フォルネと既視感
【16 草避けのお守り→15 落下防止の護符】
壁を登りきった場所は、思いがけず開けた空間だった。平地の面積が多い。
ロープは頑丈な枝にがっちり結ばれている。
僕は次に来た人のために、ロープはそのまま残していくことにした。
ロープはもう1本予備があるから大丈夫だ。
「それでも、先にここに来た人はいるみたいです。こんなものが落ちてました」
フォルネが持ってきたそれは、ペンダント状になったアクセサリーだった。
紛れもなく人の手によるものだ。
ただ、その意匠は少し奇抜だった。
乾かした植物の根っこのようなものがぶら下げられている。
それも、ただの根っこではない。植物なのに、目とか口とかがついているように見えた。
干からびた植物系の魔物の根っこ?
何かのお守りだろうか。
一応、荷物に入れておこう。帰ってから鑑定してもいいし、売ってもいい。
「アタイ先のほうみてくる〜」
ニャルラはさっさと先行してしまった。
ところでさっきから、フォルネの様子がおかしい。
周囲をぐるりと見回しては、記憶を掘り起こすように眉を寄せている。
「フォルネ、どうかした?」
「ええ……この場所、すこし見覚えがある気がして……」
記憶と照合させているらしい。
「たしか、こっちに……」
フォルネは広場の端の方に進むと、そこから幹の壁の下の方を覗き込んだ。
「あった。やっぱり」
そうしてフォルネは、怖がることなく幹の壁を降りていった。
僕はおそるおそる覗き込む。少し下に、人ひとりがかろうじて立てる足場があり、フォルネはそこへ向かって降りていく。
それはいいんだけど、下を見るたびに、枝と枝の間にのぞく、はるかに小さい地上の景色が見えてしまい、ドキドキしてしまう。
フォルネ、よく平気で降りられるな。
フォルネは足場まで到達すると、何かをくわえて戻ってきた。
それは古びた皮袋だった。
「フォルネ、これって……」
「前に来た人の落とし物でしょうね」
開けてみると、入っているのは……なにやら魔術的な文字で紋様が描かれているもの。護符?
「落下防止……」
「読めるの!?」
「一応、魔術は少したしなんでいるので。これを持っていると、落下した時のダメージを完全に無効化できるようです」
完全に無効化!?
それって、すごくない?
つまり、これ持ってここから飛び降りたら、ノーダメージで地上に降りられるってこと!?
「やめといた方がいいです。誰も限界を試したことないと思うので」
それはそうか。
限界を試した者がいたとしても、もうこの世にいないのだろう、きっと。
でも、落下防止の護符だったら、なんであんなところに?
「不思議です。一度しか使えないものなのに、使われずにあんな場所にあるなんて」
「おとしちゃったんじゃないの〜?」
戻って来たニャルラが不意に口を挟んできた。
たしかに、それが一番無難な考え方だよね。
何かに追われて、荷物と別々に落っこちちゃったとかじゃなければいいな。
僕は嫌な想像を振り払った。
「ところでフォルネはどうしてここを? 見覚えって」
「途中に建物があったの覚えてます? 望遠鏡があったところ」
「おぼえてる〜! とおくが見えておもしろかった〜」
「ニャルラには聞いてないですけど、まあいいでしょう。そこで行き先を確認した時に目にしていたんです」
「なるほど、それで」
「下から見上げてたので、こんなものが落ちてるとまでは見えなかったですけど、特徴的な地形だったので」
「こんないいものを手に入れられるなんて、フォルネの観察眼のおかげだね」
「フォルネすご〜い」
フォルネはそっぽを向いた。耳がぴくぴくしているから、照れ隠しだとわかる。
「これは、タイガさまが持っていてください」
「え、でも」
「私たちはちょっとくらい高いところから飛び降りても平気なので」
「そうそうへっちゃら〜」
「さっき高いところから転がり落ちたばっかりのニャルラが言うと説得力あるね」
「も〜、たいがひど〜い」
「あはは、ごめんごめん」
僕は皮袋から落下防止の護符だけ取り出すと、自分の荷物入れにしまった。
さあ、それじゃあ出発しようか。
すると、ニャルラが急に興奮して話し出した。
「そうだった! あのね、この先にね……!」
[プレイログ]
隠された何かの発見(目標値4:器用ロール)
16 フォルネ サイコロの出目6 成功 →草避けのお守り発見
ここで「手がかり」(観測所で入手)使用
15 フォルネ サイコロの出目2 +技量点2 成功 →落下防止の護符発見
●アタック02-8 タイガと虫・虫・虫
【最終イベント】
「オウカンワシがいたの! でも、なんだか様子がヘンなのよ。アタイを見ても、じっとしてるの」
ニャルラがオウカンワシに遭遇したという地点まで進む。
太い枝の上で、オウカンワシはじっとこちらを見つめていた。
襲いかかってくる様子はない。
まるで、僕たちが来るのを待ちわびていたみたい。そんな不思議な考えが頭をよぎった。
まさか、そんなことって、ある?
オウカンワシは、中腹で対決したものよりもさらに巨大で、圧倒的な雄大さが感じられた。
僕と目が合うと、その翼を大きく広げた。ライオンや熊のような巨大な猛獣も、その大きな翼で包み込んでしまえるほどだ。
オウカンワシは飛び立つと、もうひとつ上の枝に舞い降りた。
そしてまた、じっと僕たちを見つめるのだ。
「こっちに来い、って言ってるみたいに見えませんか?」
うん。そう見える。
「いってみるの〜」
ニャルラはためらうことなく上の枝へと先行する。
僕たちも後を追った。
幹のまわりをぐるりと回り、上の枝に到達する。
オウカンワシは、僕たちの到着を待ちわびていたかのようだ。
その目線は一点を見つめている。
僕たちはその視線の先を追った。
幹に、ぽっかりと黒ずんだ穴があき、周囲が不気味に枯れ果てていた。
穴は子ども、ちょうど僕が入れるくらいのサイズ。オウカンワシには大きすぎて入れなさそう。
『この巨大樹は、枯死しかけている』
この樹を研究していた闇エルフの妖術師の言葉が思い出された。
その、枯れた穴の上方に視線を向けると、オウカンワシの巣が見えた。
オウカンワシは、身じろぎひとつしない。
まるで、僕たちの答えを待っているかのよう。
「あの枯れているところを、見てほしいんでしょうね」
僕も、そう思った。
オウカンワシとは言葉は交わせないけれど、不思議と何を言っているのか、通じる気がした。
「あの枯れているところをなんとかして、巣を守りたい。そのために、僕たちの力を借りたい」
そういうことかな?
「じゃ、みてみましょ」
ニャルラはためらわずに枯れた穴に近づく。僕たちもすぐに追う。
中は空洞になっているみたい。僕たちは順番に潜り込んだ。
中はまっくらだ。そして僕たちはランタンを持っていない。
準備不足だと思うでしょ。でも、今回は違うんだな。
ニャルラの瞳が闇の中に輝いている。まるで満月のように周囲を優しく照らす。
ニャルラはこの【満月のような瞳】で、暗闇の中でも昼間と同じようにものを見ることができる。
そして、それだけではない。その優しい明るさの恩恵は、僕とフォルネにももたらされるんだ。
入口に比べて、中は広めの空間になっていた。
慎重に歩を進める。フォルネとニャルラが左右を警戒している。
「なにかの気配を感じます……」
「響いて、どっちにいるのかよくわかんない〜。ヘンなニオイもする〜」
やがて空洞は行き止まりになった。
突き当りの壁に手をつき、触り心地をたしかめる。
これは……ただ枯れたというより、何かに食い荒らされたような?
突然、ガサガサと這いずるような不快な音と、ギチギチと鋭い顎がきしむような甲高い響きが闇にこだました。
僕の太もものあたりを、何かがもぞもぞと這い進む感覚に、体中がぞぞっとなる。
振り返る。
上からにゅるりと、節くれ立った長い胴体の巨大な虫の頭部が垂れ下がり、僕の眼前でぴたりと止まった。
あまりの恐怖に、呼吸がひゅっとなって、一瞬止まる。
胴体にはたくさんの脚。僕と同じくらいの大きさの、ムカデみたいな虫。
それが僕の目の前に天井から頭を降ろし、顎をカチカチと鳴らした。
それだけじゃない。右にも、左にも。
僕は完全に、この虫たちに囲まれてしまっていた。
僕は確信した。
この虫たちが、幹を食い荒らし、ここの枯れた空洞を作っているのだと。
【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う
虫たちの向こうに、フォルネとニャルラの光る瞳が見える。
僕が完全に囲まれてしまっている状況に、戸惑っているのか、焦っているのか。
「タイガさま……!」
「いまっ、たすけるからっ!」
それは一瞬の出来事だった。
ニャルラは雷光のごときすばやさで、僕を囲む虫たちを次々と蹴散らしていった。
内壁を蹴り、反動で跳び、爪撃を浴びせ、かみ砕く。
五匹の虫が一瞬で倒され、その場でびちびちとうごめき、ぐるんと丸まる。
そして僕の眼前で、ぬうっと大顎をむき出しにして迫る最後の一匹に、フォルネが飛びつき、胴体をぐねりとねじ曲げ、地面にたたきつけた。
あっけないほどの一瞬で、戦いは終わった。
僕はほっと胸をなでおろし……そのままずるずると、地面に崩れてしまったのだった。
[プレイログ]
【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う
1ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 一匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 二匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 三匹目倒す
追加攻撃 サイコロの出目5 命中 四匹目倒す
【狩りの本能】発動。弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。サイコロの出目5 命中 五匹目倒す。(器用点7→6)
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 六匹目倒す
【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
2草避けのお守り
【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9→8/10 器用点:7→6/7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2古代の彫像(金貨25枚相当)
3落下防止の護符
ロープ →消費
次回、オウカンワシの思惑と、巨大樹の異変
■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
ドトール 闇エルフの妖術師。闇エルフの繁栄のため、巨大樹を調査している。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。
■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
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巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
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2026年2月10日火曜日
ゲームブックにおける死と物語 第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語 FT新聞 No.4766
みなさん、こんにちは。編集部員のくろやなぎです。本日は、『ゲームブックにおける死と物語』の第4回をお届けします。
今回ご紹介する『豊穣の迷宮』(著:ちゃな、2020年、Kindle Direct Publishingによる個人出版)は、「豊穣神アバーティッサ」が封印された地下迷宮を探索する、全部でちょうど100のパラグラフから成る比較的コンパクトなゲームブックです。
ゲームとしてのルールはとてもシンプルで、いわゆるパラグラフジャンプ(特定の条件下で発動する、本文に指示されていないパラグラフへの転移)を除くと、各パラグラフの文章を読み、選択肢を選ぶだけで物語は進んでいき、冒険記録紙やサイコロは使用しません。ただし、複数の、それも2人や3人ではなく多数の「主人公候補」となる登場人物が用意されており、読者が誰を主人公として「担当する」かによって物語が大きく変化する、といった点では、特殊な仕掛けをもつゲームブックだとも言えるでしょう。
1回のプレイが10分以内で終わることも珍しくはありませんので、Kindle書籍の閲覧環境のある方は、ぜひいちどお気軽に(よろしければ、記事本体を読まれる前に)プレイしてみていただければと思います。
なお、作者のちゃな氏のブログでは、この作品の制作過程がリアルタイムで実況されていました。より正確に言えば、この作品は「ゲームブック制作をブログで実況中継する」という企画のもとで、ゼロから作り上げられたものなのです。そのブログもあわせて読まれると、作品についてもっと深く知ることができるでしょう(当然ながら、ブログには作品の詳細がしっかりと記述されていますので、ある程度は実際にプレイされた後で読む方がよいかもしれません)。
作品とちゃな氏のブログへは、下記のリンクからどうぞ。
『豊穣の迷宮』(Amazonの商品ページへ)https://www.amazon.co.jp/dp/B08FCL3KMF
『ちゃなのゲームブック』(2020/07/11の記事「ゲームブック制作を実況中継(1)」へ)https://chanagame.hateblo.jp/entry/2020/07/11/195800
以下の記事の中では、『豊穣の迷宮』の物語の設定や内容、ゲームとしての構造等について具体的に言及していますので、未読の方はご注意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
ゲームブックにおける死と物語
第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語
(くろやなぎ)
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■『豊穣の迷宮』の基本構造
それではまず、『豊穣の迷宮』の物語の基本設定と、ゲームブックとしての基本的な構造について確認しておきましょう。
『豊穣の迷宮』のプロローグは、「アバート教団」の教祖からのメッセージという形をとっており、そのメッセージの相手は「敬虔なるアバート教団の勇者達」となっています。
そこで提示される使命は、地下迷宮の深くに封じられた「豊穣神アバーティッサ」を復活させ、世界を飢餓から救うこと。教祖によれば、これまで迷宮に挑んだ信徒たちで生還できた者はおらず、しかも「帝国」からの弾圧によって教団は崩壊寸前。今回選ばれた7人に、最後のチャンスが託されたとのことです。
こうして、主人公候補である登場人物たちは、全員がひとつのチームとなって「豊穣神の復活」という使命を果たすべく迷宮に挑むわけですが、この表向きの使命とは別に、登場人物の多くは個人的な目的を抱えています。
たとえば、迷宮の中で財宝を手に入れ、それを換金して、貴族の側室となっている恋人を身請けすること。
あるいは、迷宮のコントロール機構を解き明かし、「豊穣神」というよりも「魔神」としてのアバーティッサのエナジーを掌握して、教団にも帝国にも干渉されない拠点を手に入れ、自立すること。
極端なところでは、教団と敵対する「帝国」側のエージェントもチームに紛れ込んでおり、その人物の目的は、迷宮の中で他の登場人物たちを「一網打尽に」することです。そしてまた、教祖の側でも「帝国のエージェントが紛れ込んだらしい」という情報をつかんでおり、登場人物のひとりは、そのエージェントが誰なのかを突き止めて「始末する」という密命を受けています。
このように多彩な背景や関係性を背負った登場人物たちの中から、読者は1人を主人公(あなた)として選択することになりますが、その選択にあたって、上記のような情報が最初から開示されているわけではありません。
パラグラフ1で、迷宮へ向かう一行の様子が描写された後、読者は、そこに登場した7人の中から1人を選んで担当するよう求められます。そして、読者が選んだ人物に割り当てられたパラグラフへ進むと、その人物(主人公となる「あなた」)が迷宮へ入ることになった経緯や事情が初めて明らかにされる、という流れになっています。
そのため、少なくとも初回のプレイでは、たまたま帝国のエージェントを(そうとは知らずに)主人公として選ばない限りは、読者は一行にそんな人物が紛れ込んでいるとは知らずに、迷宮の探索をはじめることになります。また、エージェントを「始末する」という密命を受けた主人公を選んだ場合も、一行の誰がエージェントなのかはわからない状態から、目的を果たすべく行動を開始することになります。
つまり、最初に誰を主人公として選ぶかによって、物語の見え方は大きく変わってくることになるのです。
背景の説明が終わると、選んだ主人公が誰であっても、「あなた」たちは迷宮の最初の分かれ道のパラグラフに辿り着きます。そこで一行は隊を分けて別々の道へ進むことになり、あなたの選択(率先していずれかの道へ進むか、あるいは周りの仲間に相談するか、それとも…)から、物語は本格的に動き出します。
地の文では、主人公は常に「あなた」という二人称のもとで描写され、そのときの「あなた」が誰であっても、同じパラグラフで同じ行動を選択すれば、同じように物語は進んでいきます。ただし、パラグラフの最後では、しばしばあなたは「さて、あなたは誰だろうか?」と地の文から問いかけられます。そこで、あなたが誰なのか、あるいは誰「ではない」かを答えることによっても、物語は分岐します。
すなわち、『豊穣の迷宮』においては、あなたが「誰なのか」(読者が主人公「を」選択した結果)と、あなたが「どうするか」(読者の分身としての主人公「が」選択した結果)、という2種類の問いが使い分けられているのです。
「あなたがどうするか」という問いは、ゲームブックではごくありふれたものですが、「あなたが誰なのか」という問いは、複数の主人公候補がいる『豊穣の迷宮』ならではのものだと言えるでしょう。以下では、この問いの意味について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
■『豊穣の迷宮』における物語の分岐
『豊穣の迷宮』における「さて、あなたは誰だろうか?」という問いが生み出す物語の分岐は、大きく2種類に分けることができるように思います。
ひとつは、主人公の「能力」による分岐。そしてもうひとつは、主人公の「物語上の立ち位置」による分岐です。
『豊穣の迷宮』の主人公たちは、「技術点」「体力点」のような能力値や、「特殊技能:△△」のような明示的なステータスをもっているわけではありません。しかし、それぞれの主人公には、迷宮の中のどのような危険に対処できるか、という設定が与えられています。
作者のちゃな氏のブログでは、主人公ごとに「戦闘NG、罠NG、魔法OK」のようなパターンが記載されており、これをもう少し詳しく言語化すると、たとえば「敵との肉弾戦は苦手で、物理的な罠も解除できないが、魔法による罠や仕掛けなら対応できる」といった感じになるでしょう。こうした主人公ごとの能力は、読者に明示こそされていないものの、物語上の設定と自然に結びついているため、推測することはさほど難しくありません。
『豊穣の迷宮』の「まえがき」には、「本編には各主人公につき一つずつエンディングがあり、他に隠しエンディングと無数のバッドエンドがあります」と書かれていますが、ここでいう「無数のバッドエンド」のいくつかは、「罠や敵の種類」と「主人公の能力」とのミスマッチの結果として辿り着くように作られています。
たとえば魔法の罠の部屋に入り込んでしまったとき、もしあなたが「魔法OK」の設定を付与された主人公であれば、その罠を見破って解除し、先へ進むことができるでしょう。しかし、あなたが「魔法NG」の主人公であれば、そこであなたは命を落とすことになります。
物理的な罠や、肉体的な戦闘が必要な敵についても同様に、あなたの能力がその状況に対応しているかどうかで、あなたの運命は決まります。
一方、外見上は同じく「あなたは誰だろうか?」という問いの形をとっていても、あなたの「能力」とは別の次元で分岐が発生する場合があります。
たとえば、迷宮の宝部屋やコントロールセンターを発見したとき、財貨の獲得や迷宮の掌握を目的とする主人公と、それ以外の主人公とでは、当然ながら反応は違うものになるでしょう。あるいは迷宮の奥深くで、ついに豊穣神アバーティッサの玄室にたどりついたとき、教団の敬虔な信徒と、帝国のエージェントとでは、そこで成すべきことは全く異なるはずです。
そこでの分岐の鍵となるのは、あなたの「能力」ではなく、まさにあなたが「誰」なのか、ということそのものであり、あなたの選んだ主人公の、物語上の立ち位置に他なりません。
さらに、この「能力」による分岐と「物語上の立ち位置」による分岐は、ひとつのパラグラフの、ひとつの問いの中に同居していることがあります。
たとえば宝部屋に入ったとき、あなたが財宝に特段の興味がなければ、自らの目的を優先させて、迷宮の探索を続けようとするでしょう。しかし、宝部屋に仕掛けられた罠を見抜き、あなたが無事に探索を再開できるかどうかは、あなたの能力(「罠OK」か「罠NG」か)にかかっています。
あなたが宝を抱えて迷宮から離脱するか、宝に構わず迷宮の奥へと進むか、あるいは宝部屋の中で命を落とすか。作品によっては、フラグの有無と能力値とで二重の判定を行うようなこうした状況について、『豊穣の迷宮』は、ひとつの汎用的な「あなたは誰だろうか?」というシンプルな問いを通じて、物語の分岐を生み出しているのです。
(もちろん、状況によっては、あなたがその場で「どうするか」という問いも物語を分岐させていきます。)
■『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語
こうした「能力」と「物語上の立ち位置」に基づく2種類の分岐のあり方に対応するような形で、『豊穣の迷宮』における「死」にも、大きく分けて2つの種類があるように思います。
ひとつは、先ほども述べたような、あなたの能力不足による死。
つまり、「戦闘」「罠」「魔法」のいずれかの能力を欠いているために、その能力を必要とする場面を切り抜けられず、死んでしまうパターンです。
このような死の場面は、しばしば複数の主人公が到達しうる汎用的なパラグラフになっており、あなたの物語上の役割にかかわらず、あなたがどのような能力を持たないために死に至るのか、ということが伝わる描写となっています。
もちろん、その「能力のなさ」自体がその主人公の特徴のひとつなので、それもまた、その主人公らしい死だとは言えるでしょう。それでも、こうした死は物語としては唐突になりがちであり、ひとつの物語が終わったというよりは、物語が中断された、あるいはゲームの途中でゲームオーバーになった、という印象を読者に残すもののように思います。
このような死を迎えた場合、つぎにその死を回避するための方策は、「同じ場面に、対処できそうな別の主人公でトライする」か、「同じ主人公で、その主人公が対処できそうな別のルートを探す」、のいずれかになるでしょう。どちらにしても、それは「迷宮の探索ルート」と「主人公の能力」とをうまく組み合わせるパズルを解くような試行であり、そこでの死は、作品の物語的な側面よりは、ゲーム的な側面をより強く感じさせるものだと言えるかもしれません。
一方、あなたの能力にかかわらず、あなたの物語上の立ち位置に応じて訪れる死の場面も存在します。それは、あなたが「あなたとして」そこにいたことによる死であり、いわば物語上の意味を伴う死です。
このような死として印象的なもののひとつは、迷宮の最奥、豊穣神アバーティッサの玄室に、他のメンバーと一緒にたどり着いたときのことでしょう。そこであなたには、お馴染みの「さて、あなたは誰だろうか?」という問いとともに3つの選択肢が示されるのですが、どの選択肢を選んでも(つまり、あなたが誰であっても)、つぎのパラグラフであなたは死んでしまいます。
能力による分岐の場合は、その結果は「あなたに能力がなければ死に、能力があれば生き延びて先へ進める」というものでしたが、ここでの分岐は、「あなたが誰に、何のために、どのようにして殺されるか」という、物語のひとつの結末のあり方を左右するものとして存在しているのです。
ここでの3通りの死の場面は、『豊穣の迷宮』の物語にとって、単に「死のバリエーションを豊富にする」という以上の重要な意味を持っています。
この作品は、フローチャートの図形的なイメージとしては、横幅は比較的広く、奥行きは(場所にもよりますが)比較的短い構造になっています。そのため、読者がいくつかの分岐でピンポイントにここに至る選択をすれば、初回のプレイでこの場面に遭遇することも十分考えられますし、逆に、何度もゲームオーバーになったり、何人かの主人公のエンディングを見た後で、ようやくこの場面に出会うこともありえます。さらに、「まえがき」で予告された「隠しエンディング」に到達するためには、この「死の三択」のパラグラフを最低2回は訪れる必要があるため、最初にここで死んでから、他のルートを踏破した上でここに戻ってくる場合もあるでしょう。
ここでの主人公たちの死の場面は、物語にとっては一種の「種明かし」のような側面も持っているのですが、プレイを繰り返す中でのどのタイミングで、どの「あなた」として、何をどこまで知った上で経験するかによって、読者が受ける印象は大きく変わってくるように思います。すでに関連する情報を持っている読者にとっては、「やはり」という答え合わせのような意味を持つでしょうし、逆に、初回や2回目のプレイでここに辿り着いた読者の場合は、その後のプレイは「そこで起きたできごとの意味を知る」という、倒叙的な趣向を帯びたものになるかもしれません。
このような死は、迷宮の構造とあなたの能力とのミスマッチに由来する死や、特定の場面での選択を誤ったことによる死とはまた別の形で、『豊穣の迷宮』の物語に対する洞察を深め、あるいは洞察の起点となるもののように思います。
読者ごとに違う視点や順序のもとで、迷宮内で起こるさまざまなできごとを経験しながら、主人公たちの意図と因果の絡み合いの全貌を知ること。それは、主人公としての「あなた」に与えられた使命や目的とは異なる、読者としての「あなた」に与えられたひとつの目的、あるいはひとつの楽しみであると言えるでしょう。
■おわりに
『豊穣の迷宮』の「あとがき」には、作品について「一回のプレイ時間はごく短いものですが、繰り返し挑戦していただくことで、物語の全容が明かされる仕掛けになっています。気に入った主人公、好みの物語が見つかったなら何よりです。」と書かれていますが、ここで2回出てくる「物語」という言葉には、それぞれ別の意味が与えられているように思います。
「物語の全容が明かされる」というときの「物語」は、『豊穣の迷宮』というゲームブック全体を構成する、100パラグラフすべてが織り成す集合的な物語を指すものとして解釈できます。これに対して、「気に入った主人公、好みの物語」というときの「物語」は、ひとりの「あなた」が迷宮に入ってからひとつの終わりを迎えるまでの、ひとつの物語を指すものとして受け取れます。
ここには、ゲームブックにおける「物語」の複数のあり方が表れており、そのどちらをどのように楽しみ味わうかは、個々の読者に委ねられていると言ってよいでしょう。
主人公がひとりだけである多くのゲームブックにも、もちろん同じように、こうした複数の「物語」のあり方を見て取ることができるはずです。
それでも、『豊穣の迷宮』における複数の主人公たちの存在と、「あなたが誰なのか」という問い、そしてそこから生まれる物語の分岐と死のあり方は、ゲームブックという形式のもとで書かれた物語の多層性とその魅力を、より鮮明に教えてくれるもののように思います。
【書誌情報】
ちゃな『豊穣の迷宮』(Kindle Direct Publishingによる個人出版、2020年)
ちゃな『ちゃなのゲームブック』 (ブログ)https://chanagame.hateblo.jp/
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1回のプレイが10分以内で終わることも珍しくはありませんので、Kindle書籍の閲覧環境のある方は、ぜひいちどお気軽に(よろしければ、記事本体を読まれる前に)プレイしてみていただければと思います。
なお、作者のちゃな氏のブログでは、この作品の制作過程がリアルタイムで実況されていました。より正確に言えば、この作品は「ゲームブック制作をブログで実況中継する」という企画のもとで、ゼロから作り上げられたものなのです。そのブログもあわせて読まれると、作品についてもっと深く知ることができるでしょう(当然ながら、ブログには作品の詳細がしっかりと記述されていますので、ある程度は実際にプレイされた後で読む方がよいかもしれません)。
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それではまず、『豊穣の迷宮』の物語の基本設定と、ゲームブックとしての基本的な構造について確認しておきましょう。
『豊穣の迷宮』のプロローグは、「アバート教団」の教祖からのメッセージという形をとっており、そのメッセージの相手は「敬虔なるアバート教団の勇者達」となっています。
そこで提示される使命は、地下迷宮の深くに封じられた「豊穣神アバーティッサ」を復活させ、世界を飢餓から救うこと。教祖によれば、これまで迷宮に挑んだ信徒たちで生還できた者はおらず、しかも「帝国」からの弾圧によって教団は崩壊寸前。今回選ばれた7人に、最後のチャンスが託されたとのことです。
こうして、主人公候補である登場人物たちは、全員がひとつのチームとなって「豊穣神の復活」という使命を果たすべく迷宮に挑むわけですが、この表向きの使命とは別に、登場人物の多くは個人的な目的を抱えています。
たとえば、迷宮の中で財宝を手に入れ、それを換金して、貴族の側室となっている恋人を身請けすること。
あるいは、迷宮のコントロール機構を解き明かし、「豊穣神」というよりも「魔神」としてのアバーティッサのエナジーを掌握して、教団にも帝国にも干渉されない拠点を手に入れ、自立すること。
極端なところでは、教団と敵対する「帝国」側のエージェントもチームに紛れ込んでおり、その人物の目的は、迷宮の中で他の登場人物たちを「一網打尽に」することです。そしてまた、教祖の側でも「帝国のエージェントが紛れ込んだらしい」という情報をつかんでおり、登場人物のひとりは、そのエージェントが誰なのかを突き止めて「始末する」という密命を受けています。
このように多彩な背景や関係性を背負った登場人物たちの中から、読者は1人を主人公(あなた)として選択することになりますが、その選択にあたって、上記のような情報が最初から開示されているわけではありません。
パラグラフ1で、迷宮へ向かう一行の様子が描写された後、読者は、そこに登場した7人の中から1人を選んで担当するよう求められます。そして、読者が選んだ人物に割り当てられたパラグラフへ進むと、その人物(主人公となる「あなた」)が迷宮へ入ることになった経緯や事情が初めて明らかにされる、という流れになっています。
そのため、少なくとも初回のプレイでは、たまたま帝国のエージェントを(そうとは知らずに)主人公として選ばない限りは、読者は一行にそんな人物が紛れ込んでいるとは知らずに、迷宮の探索をはじめることになります。また、エージェントを「始末する」という密命を受けた主人公を選んだ場合も、一行の誰がエージェントなのかはわからない状態から、目的を果たすべく行動を開始することになります。
つまり、最初に誰を主人公として選ぶかによって、物語の見え方は大きく変わってくることになるのです。
背景の説明が終わると、選んだ主人公が誰であっても、「あなた」たちは迷宮の最初の分かれ道のパラグラフに辿り着きます。そこで一行は隊を分けて別々の道へ進むことになり、あなたの選択(率先していずれかの道へ進むか、あるいは周りの仲間に相談するか、それとも…)から、物語は本格的に動き出します。
地の文では、主人公は常に「あなた」という二人称のもとで描写され、そのときの「あなた」が誰であっても、同じパラグラフで同じ行動を選択すれば、同じように物語は進んでいきます。ただし、パラグラフの最後では、しばしばあなたは「さて、あなたは誰だろうか?」と地の文から問いかけられます。そこで、あなたが誰なのか、あるいは誰「ではない」かを答えることによっても、物語は分岐します。
すなわち、『豊穣の迷宮』においては、あなたが「誰なのか」(読者が主人公「を」選択した結果)と、あなたが「どうするか」(読者の分身としての主人公「が」選択した結果)、という2種類の問いが使い分けられているのです。
「あなたがどうするか」という問いは、ゲームブックではごくありふれたものですが、「あなたが誰なのか」という問いは、複数の主人公候補がいる『豊穣の迷宮』ならではのものだと言えるでしょう。以下では、この問いの意味について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
■『豊穣の迷宮』における物語の分岐
『豊穣の迷宮』における「さて、あなたは誰だろうか?」という問いが生み出す物語の分岐は、大きく2種類に分けることができるように思います。
ひとつは、主人公の「能力」による分岐。そしてもうひとつは、主人公の「物語上の立ち位置」による分岐です。
『豊穣の迷宮』の主人公たちは、「技術点」「体力点」のような能力値や、「特殊技能:△△」のような明示的なステータスをもっているわけではありません。しかし、それぞれの主人公には、迷宮の中のどのような危険に対処できるか、という設定が与えられています。
作者のちゃな氏のブログでは、主人公ごとに「戦闘NG、罠NG、魔法OK」のようなパターンが記載されており、これをもう少し詳しく言語化すると、たとえば「敵との肉弾戦は苦手で、物理的な罠も解除できないが、魔法による罠や仕掛けなら対応できる」といった感じになるでしょう。こうした主人公ごとの能力は、読者に明示こそされていないものの、物語上の設定と自然に結びついているため、推測することはさほど難しくありません。
『豊穣の迷宮』の「まえがき」には、「本編には各主人公につき一つずつエンディングがあり、他に隠しエンディングと無数のバッドエンドがあります」と書かれていますが、ここでいう「無数のバッドエンド」のいくつかは、「罠や敵の種類」と「主人公の能力」とのミスマッチの結果として辿り着くように作られています。
たとえば魔法の罠の部屋に入り込んでしまったとき、もしあなたが「魔法OK」の設定を付与された主人公であれば、その罠を見破って解除し、先へ進むことができるでしょう。しかし、あなたが「魔法NG」の主人公であれば、そこであなたは命を落とすことになります。
物理的な罠や、肉体的な戦闘が必要な敵についても同様に、あなたの能力がその状況に対応しているかどうかで、あなたの運命は決まります。
一方、外見上は同じく「あなたは誰だろうか?」という問いの形をとっていても、あなたの「能力」とは別の次元で分岐が発生する場合があります。
たとえば、迷宮の宝部屋やコントロールセンターを発見したとき、財貨の獲得や迷宮の掌握を目的とする主人公と、それ以外の主人公とでは、当然ながら反応は違うものになるでしょう。あるいは迷宮の奥深くで、ついに豊穣神アバーティッサの玄室にたどりついたとき、教団の敬虔な信徒と、帝国のエージェントとでは、そこで成すべきことは全く異なるはずです。
そこでの分岐の鍵となるのは、あなたの「能力」ではなく、まさにあなたが「誰」なのか、ということそのものであり、あなたの選んだ主人公の、物語上の立ち位置に他なりません。
さらに、この「能力」による分岐と「物語上の立ち位置」による分岐は、ひとつのパラグラフの、ひとつの問いの中に同居していることがあります。
たとえば宝部屋に入ったとき、あなたが財宝に特段の興味がなければ、自らの目的を優先させて、迷宮の探索を続けようとするでしょう。しかし、宝部屋に仕掛けられた罠を見抜き、あなたが無事に探索を再開できるかどうかは、あなたの能力(「罠OK」か「罠NG」か)にかかっています。
あなたが宝を抱えて迷宮から離脱するか、宝に構わず迷宮の奥へと進むか、あるいは宝部屋の中で命を落とすか。作品によっては、フラグの有無と能力値とで二重の判定を行うようなこうした状況について、『豊穣の迷宮』は、ひとつの汎用的な「あなたは誰だろうか?」というシンプルな問いを通じて、物語の分岐を生み出しているのです。
(もちろん、状況によっては、あなたがその場で「どうするか」という問いも物語を分岐させていきます。)
■『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語
こうした「能力」と「物語上の立ち位置」に基づく2種類の分岐のあり方に対応するような形で、『豊穣の迷宮』における「死」にも、大きく分けて2つの種類があるように思います。
ひとつは、先ほども述べたような、あなたの能力不足による死。
つまり、「戦闘」「罠」「魔法」のいずれかの能力を欠いているために、その能力を必要とする場面を切り抜けられず、死んでしまうパターンです。
このような死の場面は、しばしば複数の主人公が到達しうる汎用的なパラグラフになっており、あなたの物語上の役割にかかわらず、あなたがどのような能力を持たないために死に至るのか、ということが伝わる描写となっています。
もちろん、その「能力のなさ」自体がその主人公の特徴のひとつなので、それもまた、その主人公らしい死だとは言えるでしょう。それでも、こうした死は物語としては唐突になりがちであり、ひとつの物語が終わったというよりは、物語が中断された、あるいはゲームの途中でゲームオーバーになった、という印象を読者に残すもののように思います。
このような死を迎えた場合、つぎにその死を回避するための方策は、「同じ場面に、対処できそうな別の主人公でトライする」か、「同じ主人公で、その主人公が対処できそうな別のルートを探す」、のいずれかになるでしょう。どちらにしても、それは「迷宮の探索ルート」と「主人公の能力」とをうまく組み合わせるパズルを解くような試行であり、そこでの死は、作品の物語的な側面よりは、ゲーム的な側面をより強く感じさせるものだと言えるかもしれません。
一方、あなたの能力にかかわらず、あなたの物語上の立ち位置に応じて訪れる死の場面も存在します。それは、あなたが「あなたとして」そこにいたことによる死であり、いわば物語上の意味を伴う死です。
このような死として印象的なもののひとつは、迷宮の最奥、豊穣神アバーティッサの玄室に、他のメンバーと一緒にたどり着いたときのことでしょう。そこであなたには、お馴染みの「さて、あなたは誰だろうか?」という問いとともに3つの選択肢が示されるのですが、どの選択肢を選んでも(つまり、あなたが誰であっても)、つぎのパラグラフであなたは死んでしまいます。
能力による分岐の場合は、その結果は「あなたに能力がなければ死に、能力があれば生き延びて先へ進める」というものでしたが、ここでの分岐は、「あなたが誰に、何のために、どのようにして殺されるか」という、物語のひとつの結末のあり方を左右するものとして存在しているのです。
ここでの3通りの死の場面は、『豊穣の迷宮』の物語にとって、単に「死のバリエーションを豊富にする」という以上の重要な意味を持っています。
この作品は、フローチャートの図形的なイメージとしては、横幅は比較的広く、奥行きは(場所にもよりますが)比較的短い構造になっています。そのため、読者がいくつかの分岐でピンポイントにここに至る選択をすれば、初回のプレイでこの場面に遭遇することも十分考えられますし、逆に、何度もゲームオーバーになったり、何人かの主人公のエンディングを見た後で、ようやくこの場面に出会うこともありえます。さらに、「まえがき」で予告された「隠しエンディング」に到達するためには、この「死の三択」のパラグラフを最低2回は訪れる必要があるため、最初にここで死んでから、他のルートを踏破した上でここに戻ってくる場合もあるでしょう。
ここでの主人公たちの死の場面は、物語にとっては一種の「種明かし」のような側面も持っているのですが、プレイを繰り返す中でのどのタイミングで、どの「あなた」として、何をどこまで知った上で経験するかによって、読者が受ける印象は大きく変わってくるように思います。すでに関連する情報を持っている読者にとっては、「やはり」という答え合わせのような意味を持つでしょうし、逆に、初回や2回目のプレイでここに辿り着いた読者の場合は、その後のプレイは「そこで起きたできごとの意味を知る」という、倒叙的な趣向を帯びたものになるかもしれません。
このような死は、迷宮の構造とあなたの能力とのミスマッチに由来する死や、特定の場面での選択を誤ったことによる死とはまた別の形で、『豊穣の迷宮』の物語に対する洞察を深め、あるいは洞察の起点となるもののように思います。
読者ごとに違う視点や順序のもとで、迷宮内で起こるさまざまなできごとを経験しながら、主人公たちの意図と因果の絡み合いの全貌を知ること。それは、主人公としての「あなた」に与えられた使命や目的とは異なる、読者としての「あなた」に与えられたひとつの目的、あるいはひとつの楽しみであると言えるでしょう。
■おわりに
『豊穣の迷宮』の「あとがき」には、作品について「一回のプレイ時間はごく短いものですが、繰り返し挑戦していただくことで、物語の全容が明かされる仕掛けになっています。気に入った主人公、好みの物語が見つかったなら何よりです。」と書かれていますが、ここで2回出てくる「物語」という言葉には、それぞれ別の意味が与えられているように思います。
「物語の全容が明かされる」というときの「物語」は、『豊穣の迷宮』というゲームブック全体を構成する、100パラグラフすべてが織り成す集合的な物語を指すものとして解釈できます。これに対して、「気に入った主人公、好みの物語」というときの「物語」は、ひとりの「あなた」が迷宮に入ってからひとつの終わりを迎えるまでの、ひとつの物語を指すものとして受け取れます。
ここには、ゲームブックにおける「物語」の複数のあり方が表れており、そのどちらをどのように楽しみ味わうかは、個々の読者に委ねられていると言ってよいでしょう。
主人公がひとりだけである多くのゲームブックにも、もちろん同じように、こうした複数の「物語」のあり方を見て取ることができるはずです。
それでも、『豊穣の迷宮』における複数の主人公たちの存在と、「あなたが誰なのか」という問い、そしてそこから生まれる物語の分岐と死のあり方は、ゲームブックという形式のもとで書かれた物語の多層性とその魅力を、より鮮明に教えてくれるもののように思います。
【書誌情報】
ちゃな『豊穣の迷宮』(Kindle Direct Publishingによる個人出版、2020年)
ちゃな『ちゃなのゲームブック』 (ブログ)https://chanagame.hateblo.jp/
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ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
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メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
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2026年2月9日月曜日
雑多なこと FT新聞 No.4765
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
寒いですね。
私が住む大阪の郊外では雪が降り、少し積もりました。
外の世界の音と色が減って、非日常が広がっていく。
そのさまを、暖かい家のなかから静かに眺める時間が無性に好きです。
◆『ドラゴンレディハーフ』の電子書籍が登場!
「ローグライクハーフ」関連の電子書籍化を進めておきたく思い、『ドラゴンレディハーフ』の電子版を刊行いたしました!
ファミコンゲームの名作「ドラゴンバスター」をリメイクしたゲームブック『竜の血を継ぐ者』を、作者である中河竜都先生の許可をいただいて書き起こした「ローグライクハーフ」のシナリオです☆
都市サプリメントとして「ローレンシア王国」、そして「中級ルール」も付属しています。
https://ftbooks.booth.pm/items/5138980
◆やることは多い!
「ローグライクハーフ」版の「ガルアーダの塔」を書きつつ、アランツァに関する資料をまとめたり、文章として起こしたりしています。
イベントに出たり、身体をちゃんと動かして健康を守ったりもして、アクティブに活動しているつもりです☆
冬が終わるまでは、アクティブになりすぎないように気をつけながらやっていきます。
去年よりもだいぶ調子がいいので、救われております☆
◆悩みに対する答え。
「モンスター!モンスター!TRPG」の楽しみ方について、最近は答えが見つかりつつあります☆
色々な方のシナリオやソロアドベンチャーに目を通すなかで、どの方も創作を楽しんでいらっしゃることを感じました。
アメリカン・ヒーローが登場する作品。
小さなゴブリンが主役を張るソロアドベンチャー。
自由闊達といいますか、思い思いの作品に目を通すなか、ふと気づいたのです。
何を書いたっていいんだな、と。
私はずっと、「巨大なモンスターが暴れる世界」を描かなければならないと考え、それが自分向きでないことに悩んできました。
私が書きたい世界から、かけ離れているように感じたからです。
しかし、考えてみたら、私は合わせるのが得意なわけではなく、望むままに世界を表現してきたのです。
他のTRPGに関しても、常にマイペースに作品を創作してきました。
私が書きたいのは、秩序と無秩序の境目にある世界です。
言うなれば地下迷宮、森、山林といったウィルダネス(荒れ野)での冒険です。
そうして書いたものは、他のTRPGの冒険に似ているかもしれません。
多くの人に好まれるものではなく、作品として世に出すことすらないかもしれません。
でも、それだったら書けるし、書いてみようという思いは芽生えました。
最近、ずっと『ズィムララのモンスターラリー』を読んでいます。
最初に読んだときは英語の電子書籍、次は日本語のテキストファイルでした。
完成したこの本を紙の書籍として読んで、しみじみと「いい本だなぁ」と感じます。
いま、ようやく、この世界と自分が触れ合っているなぁ。
そんな感覚が芽生えつつあります。
プロデューサーのポジションだというのに、出遅れて申し訳ないです。
今はとにかく、作品を読み込んでいこう。
そんな風に思っています☆
それではまた!!
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寒いですね。
私が住む大阪の郊外では雪が降り、少し積もりました。
外の世界の音と色が減って、非日常が広がっていく。
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◆『ドラゴンレディハーフ』の電子書籍が登場!
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ファミコンゲームの名作「ドラゴンバスター」をリメイクしたゲームブック『竜の血を継ぐ者』を、作者である中河竜都先生の許可をいただいて書き起こした「ローグライクハーフ」のシナリオです☆
都市サプリメントとして「ローレンシア王国」、そして「中級ルール」も付属しています。
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イベントに出たり、身体をちゃんと動かして健康を守ったりもして、アクティブに活動しているつもりです☆
冬が終わるまでは、アクティブになりすぎないように気をつけながらやっていきます。
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◆悩みに対する答え。
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色々な方のシナリオやソロアドベンチャーに目を通すなかで、どの方も創作を楽しんでいらっしゃることを感じました。
アメリカン・ヒーローが登場する作品。
小さなゴブリンが主役を張るソロアドベンチャー。
自由闊達といいますか、思い思いの作品に目を通すなか、ふと気づいたのです。
何を書いたっていいんだな、と。
私はずっと、「巨大なモンスターが暴れる世界」を描かなければならないと考え、それが自分向きでないことに悩んできました。
私が書きたい世界から、かけ離れているように感じたからです。
しかし、考えてみたら、私は合わせるのが得意なわけではなく、望むままに世界を表現してきたのです。
他のTRPGに関しても、常にマイペースに作品を創作してきました。
私が書きたいのは、秩序と無秩序の境目にある世界です。
言うなれば地下迷宮、森、山林といったウィルダネス(荒れ野)での冒険です。
そうして書いたものは、他のTRPGの冒険に似ているかもしれません。
多くの人に好まれるものではなく、作品として世に出すことすらないかもしれません。
でも、それだったら書けるし、書いてみようという思いは芽生えました。
最近、ずっと『ズィムララのモンスターラリー』を読んでいます。
最初に読んだときは英語の電子書籍、次は日本語のテキストファイルでした。
完成したこの本を紙の書籍として読んで、しみじみと「いい本だなぁ」と感じます。
いま、ようやく、この世界と自分が触れ合っているなぁ。
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2026年2月8日日曜日
アランツァクリーチャー事典 Vol.25 FT新聞 No.4764
おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。
本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
杉本=ヨハネから預かりました、アランツァクリーチャー事典の第25回です。
今回のジャンルは『兵器、建造物』!
戦車や船など、生き物ではない、ちょっと変わり種になります。
どうぞお楽しみ下さいませ。
アランツァクリーチャー事典『兵器、建造物』
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/AranciaMonsterEncyclopedia_vol.25.txt
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本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
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今回のジャンルは『兵器、建造物』!
戦車や船など、生き物ではない、ちょっと変わり種になります。
どうぞお楽しみ下さいませ。
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2026年2月7日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第678号 FT新聞 No.4763
From:水波流
本を読む速度より、本を買う速度の方が数倍(いや数十倍?)速いので、気を抜くと部屋の入口に買った本を帰ってきて積んだだけの山がすぐ出来てしまう。
山を崩して、読みたい順に並べ替えたり、布団の横の「次に読みたい山」と入れ替えたりするが、それは読書とも整理とも言わない……。
とは言っても、資料用以外は100円均一(最近は少なくなった)とか、高くても500円くらいまでの古本しか基本買わないので、出費の方はお酒を飲みに行く人とかよりは少ないと思うのですが。
From:葉山海月
夢うつつで考えた。
人類とじるんい
これは駄洒落なのか?
それとも何かの深淵なのか!?
From:天狗ろむ
2月と言えば……バレンタインでしょうか?
どちらかというと辛党なのであまりチョコを食べないのですが、チョコ売り場を見るのは好きです。包装やモチーフが魔術書のような雰囲気のもの、惑星イメージのチョコなど、形や色も様々で、趣向を凝らした可愛いものや綺麗なものが沢山。見てるだけでも何だかワクワクします。美味しく食べられる魔法の宝物、なのかもしれませんね。
From:中山将平
今月は、FT書房として参加する予定のイベントに、すでに全て参加してしまいました。
僕たちの作品にご興味の方は、ぜひ以下のURLよりBOOTH通販をご覧いただけましたら。
https://ftbooks.booth.pm/items
上記とは別に、僕個人としてカエルファンタジーな作品を出品している以下のBOOTH通販(「ギルド黄金の蛙」)も、ぜひご覧いただけましたら。
https://guildauricfrog.booth.pm/
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2/1(日)~2/6(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2026年2月1日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4757
『ガルアーダの塔』1-30階 ローグライクハーフd66シナリオ
・杉本=ヨハネ氏によるローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』d66シナリオ、舞台となる「水上都市聖フランチェスコ」都市サプリメント、「中級ルール」改訂版をお届けしました。
ゲームブックでの冒険が、ローグライクハーフ版となって新登場! 悪魔ガルアーダに占拠された「制天の塔」も60階から90階へと拡張を遂げており、今回は30階まで登ることができます。
過酷な塔内の冒険のため、1回の冒険が終わった後に完全回復が出来ないなど、いくつか特殊ルールがありますのでご注意ください。なおかつ中級(経験レベル16)以上推奨ですので、既に冒険をいくつか重ねた主人公で挑むもヨシ、先週配信された「道化師」などで16レベルから初期作成して挑むもヨシ……今回の記事で同時配信した中級ルールもよく読んで頂きつつ、ガルアーダの待ち受ける塔へ向かいましょう!
剣神エスパダと盾神エスクード、二人の神様があなたに微笑んでくれますように。
(天)
2026年2月2日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4758
☆休載代わりの雑談☆ FT新聞
比類なきタフネスさでFT書房をぐいぐい引っ張るヨハネ氏。
しかし、あまりの激務ぶりに、お願いです! 今は休ませてください!
とか言っている間に、またも「モンスター!モンスター!TRPG」の国産作品が爆誕しました!
松田洋平(ふろふき大根)さんによるソロアドベンチャー『沼をめぐる冒険』です!!
また中山将平氏が立ち上げた「ギルド黄金の蛙」に「かえる人」の汎用設定資料集が追加されました!
その辺をご紹介いたします!
(葉)
2026年2月3日(火)明日槇悠 FT新聞 No.4759
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(6)
・TPRG初心者4名が友人宅で気軽に遊んだ、GM不要のナラティブ・スタイルRPG『モンセギュール1244』のリプレイ、第6回をお届けしました。
モンセギュール城塞の防衛指揮官ピエール・ロジェは、お気楽な言動と戦況の劣勢により、誰からも嫌われ、命を狙われる存在になってしまっています。
前回に引き続き、八面六臂の暗躍を見せるベルトラン。ロジェ暗殺をガルニエに吹き込んでいましたが、レーモンがロジェの弾劾裁判を企てており、
ついては救慰礼《コンソラメンテ》を授けてほしがっていると知るや、その場では完徳者《ペルフェッチ》にすることを約束しますが、
その裏でアミエル少年に近づき、彼の拵えた小刀でレーモンを亡き者にするよう誘惑します。ベルトランの真意やいかに?
殺意の錯綜する閉鎖空間で葛藤するアミエルは、いかなる決断を下すのか? いよいよ正念場です。
(明)
2026年2月4日(水)ぜろ FT新聞 No.4760
第4回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第477回。「荷物持ち」の少年タイガが〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第4回です。
今回は、60番台のできごとが2回も発生。シナリオによっては高確率で戦闘になる出目ですが、【巨大樹の迷宮】の《反応表》は、【中立】や【ワイロ】の幅が比較的広めに取られているのが特徴です。果たしてタイガたちが出会った〈強いクリーチャー〉たちの反応はどうなるでしょうか?
【中間イベント】で再登場する鈍器猿の新たな装備と、戦利品にもご注目ください!
(く)
2026年2月5日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4761
「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する?
・岡和田氏による『モンスター!モンスター!TRPG』のプレイエイド記事。
『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』の付属シナリオ「ドウォンの秘密神殿の冒険」は、一定のセッティングを元に、ゲームマスターが独自にそれらをアレンジしてプレイすることが想定されている「半構築済みシナリオ」です。現在流行りの地の文やセリフが事細かに書かれているタイプのシナリオとは、ひと味違う遊び方が求められます。
でも、そんなのどうやったらプレイできるのさ!? そんな皆様に今回、様々なアプローチをご紹介。
「別の世界から転移してくる異世界往復ファンタジー」や「捕まった仲間の救出」あるいは「襲撃してくる強敵」などなど。
勿論、昔ながらに「おーい磯野、ダンジョン行こうぜ」と理由などあって無きが如くでも遊ぶことはできますが、ぜひここは一ひねりを加えて、参加プレイヤーと一緒に楽しんでみては如何でしょうか。
(水)
2026年2月6日(金)休刊日 FT新聞 No.4762
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(忍者福島さん)
鈍器猿、今度は亀の甲羅を持って登場するとは!
今度はカートに乗って登場したりして?
あとは、ロープを伝って渡って行くシーンで、スペランカーを思い出してしまいました(笑)
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。ああ、スペランカーとか、非常に近しい世代の香りがします。わずかな段差で死んじゃう探検家さんですね。脳内でBGM再生余裕です。そして今止まらなくなっています。
ノコノコと現れた鈍器猿、ノコノコが二重の意味になっていることを読み取っていただけたら幸いです。ここまで来れば予想はつくと思いますが、鈍器猿さんは3回目の冒険でも再々登場します。その時には一体どんな形態をとってくるのか? 対するフォルネとニャルラは? お楽しみにです。
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■FT新聞が届かない日があった場合
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未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
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*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
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山を崩して、読みたい順に並べ替えたり、布団の横の「次に読みたい山」と入れ替えたりするが、それは読書とも整理とも言わない……。
とは言っても、資料用以外は100円均一(最近は少なくなった)とか、高くても500円くらいまでの古本しか基本買わないので、出費の方はお酒を飲みに行く人とかよりは少ないと思うのですが。
From:葉山海月
夢うつつで考えた。
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どちらかというと辛党なのであまりチョコを食べないのですが、チョコ売り場を見るのは好きです。包装やモチーフが魔術書のような雰囲気のもの、惑星イメージのチョコなど、形や色も様々で、趣向を凝らした可愛いものや綺麗なものが沢山。見てるだけでも何だかワクワクします。美味しく食べられる魔法の宝物、なのかもしれませんね。
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今月は、FT書房として参加する予定のイベントに、すでに全て参加してしまいました。
僕たちの作品にご興味の方は、ぜひ以下のURLよりBOOTH通販をご覧いただけましたら。
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さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
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■2/1(日)~2/6(金)の記事一覧
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2026年2月1日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4757
『ガルアーダの塔』1-30階 ローグライクハーフd66シナリオ
・杉本=ヨハネ氏によるローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』d66シナリオ、舞台となる「水上都市聖フランチェスコ」都市サプリメント、「中級ルール」改訂版をお届けしました。
ゲームブックでの冒険が、ローグライクハーフ版となって新登場! 悪魔ガルアーダに占拠された「制天の塔」も60階から90階へと拡張を遂げており、今回は30階まで登ることができます。
過酷な塔内の冒険のため、1回の冒険が終わった後に完全回復が出来ないなど、いくつか特殊ルールがありますのでご注意ください。なおかつ中級(経験レベル16)以上推奨ですので、既に冒険をいくつか重ねた主人公で挑むもヨシ、先週配信された「道化師」などで16レベルから初期作成して挑むもヨシ……今回の記事で同時配信した中級ルールもよく読んで頂きつつ、ガルアーダの待ち受ける塔へ向かいましょう!
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(天)
2026年2月2日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4758
☆休載代わりの雑談☆ FT新聞
比類なきタフネスさでFT書房をぐいぐい引っ張るヨハネ氏。
しかし、あまりの激務ぶりに、お願いです! 今は休ませてください!
とか言っている間に、またも「モンスター!モンスター!TRPG」の国産作品が爆誕しました!
松田洋平(ふろふき大根)さんによるソロアドベンチャー『沼をめぐる冒険』です!!
また中山将平氏が立ち上げた「ギルド黄金の蛙」に「かえる人」の汎用設定資料集が追加されました!
その辺をご紹介いたします!
(葉)
2026年2月3日(火)明日槇悠 FT新聞 No.4759
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(6)
・TPRG初心者4名が友人宅で気軽に遊んだ、GM不要のナラティブ・スタイルRPG『モンセギュール1244』のリプレイ、第6回をお届けしました。
モンセギュール城塞の防衛指揮官ピエール・ロジェは、お気楽な言動と戦況の劣勢により、誰からも嫌われ、命を狙われる存在になってしまっています。
前回に引き続き、八面六臂の暗躍を見せるベルトラン。ロジェ暗殺をガルニエに吹き込んでいましたが、レーモンがロジェの弾劾裁判を企てており、
ついては救慰礼《コンソラメンテ》を授けてほしがっていると知るや、その場では完徳者《ペルフェッチ》にすることを約束しますが、
その裏でアミエル少年に近づき、彼の拵えた小刀でレーモンを亡き者にするよう誘惑します。ベルトランの真意やいかに?
殺意の錯綜する閉鎖空間で葛藤するアミエルは、いかなる決断を下すのか? いよいよ正念場です。
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2026年2月4日(水)ぜろ FT新聞 No.4760
第4回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第477回。「荷物持ち」の少年タイガが〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第4回です。
今回は、60番台のできごとが2回も発生。シナリオによっては高確率で戦闘になる出目ですが、【巨大樹の迷宮】の《反応表》は、【中立】や【ワイロ】の幅が比較的広めに取られているのが特徴です。果たしてタイガたちが出会った〈強いクリーチャー〉たちの反応はどうなるでしょうか?
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2026年2月5日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4761
「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する?
・岡和田氏による『モンスター!モンスター!TRPG』のプレイエイド記事。
『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』の付属シナリオ「ドウォンの秘密神殿の冒険」は、一定のセッティングを元に、ゲームマスターが独自にそれらをアレンジしてプレイすることが想定されている「半構築済みシナリオ」です。現在流行りの地の文やセリフが事細かに書かれているタイプのシナリオとは、ひと味違う遊び方が求められます。
でも、そんなのどうやったらプレイできるのさ!? そんな皆様に今回、様々なアプローチをご紹介。
「別の世界から転移してくる異世界往復ファンタジー」や「捕まった仲間の救出」あるいは「襲撃してくる強敵」などなど。
勿論、昔ながらに「おーい磯野、ダンジョン行こうぜ」と理由などあって無きが如くでも遊ぶことはできますが、ぜひここは一ひねりを加えて、参加プレイヤーと一緒に楽しんでみては如何でしょうか。
(水)
2026年2月6日(金)休刊日 FT新聞 No.4762
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
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■今週の読者様の声のご紹介
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(忍者福島さん)
鈍器猿、今度は亀の甲羅を持って登場するとは!
今度はカートに乗って登場したりして?
あとは、ロープを伝って渡って行くシーンで、スペランカーを思い出してしまいました(笑)
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。ああ、スペランカーとか、非常に近しい世代の香りがします。わずかな段差で死んじゃう探検家さんですね。脳内でBGM再生余裕です。そして今止まらなくなっています。
ノコノコと現れた鈍器猿、ノコノコが二重の意味になっていることを読み取っていただけたら幸いです。ここまで来れば予想はつくと思いますが、鈍器猿さんは3回目の冒険でも再々登場します。その時には一体どんな形態をとってくるのか? 対するフォルネとニャルラは? お楽しみにです。
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