●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる TRPG小説リプレイ Vol.45 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 御無沙汰しておりました、齊藤(羽生)飛鳥です。 先日、FT新聞様を拝読した折り、絶妙なタイミングでゲームブック『銀鼠の微睡』が掲載されていました。 大正時代を舞台にしているとのあらすじに、日本史好きかつ探偵小説好きの血が騒ぎ、さっそくプレイしました^^♪ 本当の主人公は書生風の青年なのですが、「主人公は自分と同性にする」という鋼鉄のマイルールにより、主人公は女学生になりました。 ところで、せっかく舞台が大正時代なので、雰囲気を出そうと、主人公は江戸川乱歩好きになりました。当時の自称良識ある紳士淑女からは「変態小説」と見做されていた探偵小説が好きな主人公は、クトゥルー世界に迷いこまずとも、すでに茨の道を歩んでいたことになります。 さらに大正の雰囲気を出そうと、似非旧字体な話し方を主人公にさせてみました。あくまで「似非」なので、表記や文法にミスがあると思いますので、その辺りは生暖かい目でお見守り下さいませm(_ _;)m 最後になりますが、今月6月22日に拙作『御成敗式目の殺人』(中央公論新社)が刊行されます!! 今回は、北条泰時と北条時房を探偵役に据え、彼らが御成敗式目作りと謎解きにいそしむ本格ミステリであり、なおかつ、私の作品タイトルで初めて「殺人」がつく作品です^^ ※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ゲームブック 『銀鼠の微睡』リプレイ 齊藤(羽生)飛鳥 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■序章 大正十五年、秋。 帝都・東京は、奇妙な色の霧に包まれてゐます。浅草の活動写真の帝國館も、寛永寺に保管されている頭のもげた上野大佛様も、何もかもあの霧の海の底に沈んでしまってゐるのでせう。 斯様な感慨に耽ったのち、わたし──下げ髪を白いリボンでまとめて紫の矢絣の小袖と海老茶袴の女学生・霧生千秋(きりう・ちあき)──は、有り得ないものを目の当たりにしてしまいました。 三年前の関東大震災で倒壊した浅草十二階……凌雲閣が、まるでもぎ取られた指先のやうに霧の海から突き出してゐるのです。 嗚呼、どうしたことでせう。 友人から今年の一月に出版された江戸川亂歩の『屋根裏の散歩者』を借りて、彼女の家を出ただけなのに、この奇妙かつ不可解な光景。胸騒ぎを覚ゑずにはゐられません。 早く家に帰ろうと、わたしは速足で歩き出しましたが、しばらくもしないうちに自分が何処を歩いているのか分からなくなってしまいました。 『屋根裏の散歩者』を胸に抱きながら、恐る恐る歩き続けると、カツン、カツンと自分の編み上げブーツの音だけが、不自然なほど明瞭に響きます。 ふと見れば、路地の角に一軒の古書店が佇んでゐます。看板には『星辰堂』と掠れた文字で書かれてゐました。店主と思わしき、顔に深い皺を刻んだ老翁が、店先で一冊の黒い装丁の書物を広げてゐます。表紙には忌まわしい星のやうな紋章が焼き付けられてゐました。 老翁は顔を上げず、掠れた声で呟いてゐます。 「……お若いのは、夢を探しておられるのかな。それとも、目覚めを……」 これは、亂歩がサインに書き添える「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」を踏まへてゐるのでせうか。 「あなたも亂歩がお好きなのですか。そちらも亂歩の本なのですか? 」 わたしが歩み寄り、その書物について問ふと、老人はニタリと不気味な笑みを浮かべました。 「これは、海の底に沈んだ都市の詩集さ。あるいは、星々が正しき位置に並んだ時にのみ読める地図、とも言える」 差し出された頁には、文字とも図形ともつかぬ、のたうつ触手のやうな紋様が蠢いてゐます。それを見た刹那、わたしの脳裏に、水死体のやうな青白い肌を持つ巨大な異形が、深海で微睡む光景が走馬灯のやうに駆け巡りました。 強烈な眩暈が、わたしに襲ひかかります。 わたしは心を削られるやうな思ひをしながらも、その書物に強い好奇心を抱いてしまいました。 「その詩集の作者はどなたなのですか?」 わたしが書物に手を伸ばすと、老人の姿は霧のやうに掻き消えてしまいました。 手元に残されたのは、冷たく湿った革表紙の感触だけです。表紙には、銀色の糸で『ルルイエ異本』と刺繍されてゐます。 耳鳴りのやうな、あるいは無数の羽虫が這い回るやうな低い声が聞こゑてきます。 「……開け……門を……」 わたしがその頁をめくると、周囲の景色が激変したではありませんか。関東大震災よりも激しく浅草の街並みは崩れ去り、垂直にそびえ立つ巨大な石柱と、非ユークリッド幾何学に基づいた歪な建築物が並ぶ、太古の都市へと変貌を遂げていきます。 空には、本来あるはずのない「二つの月」が浮かんでゐます。 わたしは理解しました。ここは帝都であって帝都ではない場所なのだ、と……。 わたしは、背筋に冷たいものを感じます。 背後で老翁の低い笑ひ声が聞こゑた気がしましたが、振り返る勇気はありませんでした。 霧はますます濃くなり、ついには数歩先も見ゑなくなりました。ふと、足元に違和感を覚ゑました。石畳だったはずの地面が、じっとりと湿り、まるで巨大な生物の舌の上を歩いてゐるやうな、厭な弾力を帯び始めてゐます。 どこからか、笛のやうな、しかし生き物の鳴き声のやうな、不協和音が聞こゑてきます。 「テケリ・リ、テケリ・リ……」 意識が覚醒した刹那、わたしの肺腑を突いたのは、沈殿した時間と微かな腐敗臭が混ざり合う、かの忌まわしき洋館の空気でありました。大正建築の粋を極めたはずのその広間は、しかし柱の角度がどこか狂っており、視神経を苛む非ユークリッド的な歪みを帯びてゐます。壁に掛けられた古時計は、心臓の鼓動を嘲笑うかのやうに逆行し、硝子窓の向こうには、この地上のものではない、悍ましき紫色の星辰が脈動してゐました。 わたしは、血のやうな赤の絨毯が暗い奥底へと続く、廊下を凝視しました。すると、かそけき光が見ゑます。 「無断でお邪魔して恐れ入ります。わたしは、高等女学校の学生・霧生千秋といふ者です。どなたかいらっしゃいますか?」 わたしは何度もこの館の住人へ呼びかけながら、光を頼りに廊下を進みました。 廊下の分厚い絨毯は、わたしの編み上げブーツの足音さえ吸収してしまいます。 この世界に、わたしという人間は実在してゐるのでせうか? そんな不安とも愚問ともつかない思ひがよぎりましたが、わたしは気を取り直し、お守りのやうに『屋根裏の散歩者』を抱きしめて廊下の彼方のかそけき光へ進み続けました。 ようやく光に到達すると、広大な食堂でした。 そこには、蝋燭の火が青白く揺らめいてゐます。食卓を囲む黒天鵞絨の燕尾服に身を包む紳士たちが見ゑました。ようやく出会えた館の住人たちです。わたしは安堵しました。 喜び勇んで食堂に入り、彼らへ声をかけやうとした刹那、彼らの襟元から覗く首筋が鱗に覆われていることに気がつきました。 「あなた方は、いったいどのやうな方々ですか?」 失礼かもしれませんが、わたしはさう問はずにはいられませんでした。 「我らは名もなき『モノ』たちです」 彼らの一人が答えてくれました。しかし、それきり貝のやうに黙りこんでしまいました。 彼らの前の皿には、煮えたぎる胆汁のやうな液体の中で、死んだ魚の眼球に似た何かが、不気味に明滅しながら蠢いてゐます。マグロの目玉でせうか。だとしたら、異国風な味付けを施されているのでせう。このやうな料理は、生まれて初めて見ます。 その時、これまで影のやうにテーブルのそばにゐた、感情を失ったやうな面構への給仕が、わたしをテーブルに導きます。 さうして、胃の腑を焼くやうな、冒涜的な芳香を放つ料理を口にするよう促してきました。 「サアサ、お嬢さん。召し上がれ」 名もなき『モノ』たちが、これまでの沈黙を破り、声をそろへて料理を勧めてきます。 招かれざる客であらうわたしへ、親切にも食事を勧められては、断るわけにはいきません。 「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えてさせていただきます」 わたしは、ナイフとフォークを手に取り、食事を始めました。 「いかがです。美味なものでしょう」 名もなき『モノ』たちが、わたしに問ひかけてきます。 「ええ。肉片を噛み締めた瞬間、わたしの脳髄は宇宙の深淵に投げ出されました。時空の壁が崩壊し、数億年前の地球を支配していた多頭の怪物の記憶が流れ込んでくるやうな味はひです」 まさか、せっかく振る舞っていただいた料理を不味いとは言へず、わたしは言葉を選んで取り繕ひました。 けれども、体は正直です。 あまりの不味さのためでせうか。喉元からは人間のものではない咆哮が漏れ、指先は急速に水掻きを伴う鉤爪へと変貌していきました。 沸き上がる破壊衝動に身を任せ、わたしは獣として覚醒しました。 もはや、わたしの骨格は人間の形状を保ってゐませんでした。背中を突き破って生えたのは、膜状の巨大な翼。視界は三基の色層を捉へ、思考は人類の言語を捨て去り、外なる神々の意志を直接受容し始めました。 いくら料理が不味かったとは言へ、我を忘れたにもほどがあります。 このままでは、せっかく友人から借りた『屋根裏の散歩者』を読めなくなってしまいます。 いいえ、これからも紡がれていくであらう江戸川亂歩の作品を読めなくなるなど、耐えられません。 わたしは最後の精神力を振り絞り、かつて「人間」であった自分の、消えゆく残影を追い求めました。 追い求めるうちに、わたしは雨に濡れた浅草の路地に立ってゐました。けど、そこにあるのは馴染み深い帝都ではありません。鏡合わせのやうに左右が反転し、人々の顔は溶け落ち、ガス燈からは黒い煙が立ち昇ってゐます。まるで、地獄絵図のパノラマのやうです。 これはわたしの脳が作り出した、最後の「現実の残骸」なのです。 誰に教わるともなく、わたしは直感でわかりました。 では、今のわたしは誰でせう? わたしは鏡の街の深奥へ、自己の正体を確かめに向かひました。 深海に揺らめく海藻のやうな街路樹。 異形の獣となったわたしさえ霞むやうな、冒涜的な容姿の通行人たちの間をすり抜け、二つの月に見下ろされながら、わたしはただひたすら街の深奥と思われる場所を目指して突き進みました。 コツッ、コツッと、編み上げブーツの音ばかりがわたしの耳に響きます。 やがて足音は、コォン、コォンに変わっていきました。 ふと足下を見れば、石畳の歩道は分厚いガラス道へと変わってゐるではありませんか。 ガラスの下には、橄欖石の色をした油めいた海中を、青銀色の背鰭を煌かせた赤い目をした魚の群れや、どす黒い血の色をした蛸が泳いでゐます。 悪夢のやうな光景を目の当たりにしたわたしは、我武者羅に走り続けました。 気がつくと、わたしは神田の古本屋の前で、『屋根裏の散歩者』だけでなく、手にしていたはずのない一冊の古書を抱えて立ってゐました。帝都のガス燈の光は相変わらず優しく、すべては幻覚だったかのやうに思へます。けれども、店頭にかけられた鏡を覗き込めば、そこにはわたしの皮を被った「何か」が、爛爛とした眼光でこちらを嘲笑ってゐました。 「恐怖を秘し、沈黙の中で余生を過ごす?」 わたしの皮をかぶった「何か」はさう問ひかけてきました。 「ええ。余生は絶対に欲しいです。わたしはここで死ぬわけにはいかないのです。だって、まだ、『屋根裏の散歩者』も、江戸川亂歩の本のすべてを読んでいないのですから」 わたしの願いを嘲笑うかのごとく、わたしの皮をかぶった「何か」は深いな嘲笑を続けました。 「何が可笑しいのですか? 単純な恐怖しか生み出せないあなた方より、複雑怪奇で極彩色、剰へ心を豊かにする恐怖を与へてくれる江戸川亂歩の物語の方がよほど偉大です」 わたしが正気を保とうと足掻き、叫び、わめくうちに、銀鼠の霧は深く、重く、わたしの肺腑を満たしていきます。 どの道を選ぼうとも、この帝都に蔓延る「這い寄る混沌」からは逃れられないのです。 しかし、『屋根裏の散歩者』を読む前に、死にたくありません。わたしは、渾身の力で古書を放り捨てました。 古書は虹色の放物線を描いて二つの月へと飛んでいき、それと同時に紫の星辰に水面のやうな波紋が広がっていきました。これに伴ひ、周りの景色が大きく揺らぎ出していきます。 わたしは、必死に『屋根裏の散歩者』を抱きしめました……。 『衛府帝新聞』大正十五年十月一日(金)の記事より抜粋 ●海老茶式部、一夜にして白髪に 『屋根裏の散歩者』が謎を解く鍵か 「九月三十日未明。浅草の路地裏で、『屋根裏の散歩者』を抱きしめた一人の女学生が倒れているのが発見された。 近隣に住む友人の証言で、彼女は骨董商霧生九太郎氏の次女で高等女学校の学生霧生千秋(十七)と判明した。 体には外傷一つなかったが、その髪は一夜にして銀鼠色に染まり、瞳からは光が失われていた。 彼女はうわ言のように、誰も知らない神の名を呼び続けているという。 ただ、その神の名に紛れ、ときどき「大亂歩、大亂歩」とかろうじて聞き取れる言葉があった。 我ら衛府帝新聞記者達は、作家江戸川亂歩氏と心霊学者森梟夫氏の二名に意見を聞きに行く所存である。……」 『銀鼠の微睡』リプレイ── 完 ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 齊藤飛鳥: 児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。 現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2025年までに6巻が刊行中。2026年春に、7巻が刊行。 大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)、同年5月29日『歌人探偵定家 弐』が刊行。同年6月22日には、『御成敗式目の殺人』(中央公論新社)が刊行予定。 初出: 本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。 ■書誌情報 日曜ゲームブック 『銀鼠の微睡』 著:森梟夫 監修:水波流 2026年3月22日FT新聞配信 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
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2026年6月18日木曜日
2026年6月17日水曜日
第1回【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4893
第1回【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「蜂竜の森」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ●蜂の騎士VS甲虫の騎士 人の身体ほどもある巨大な二匹の昆虫が、空中で激突を繰り返している。 二匹は円弧を描くように動き、体当たりをし、また離れる。 一匹は黄色と黒の特徴的な縞模様の、樽のごとき胴体を持つスズメバチ。 もう一匹は優雅に湾曲した二本の長いツノが特徴的なカブトムシだ。 僕たちはその状況を、地上から見守っている。 ここは森の中の開けた場所で、色とりどりの花が咲き乱れる花園のようになっている。 けどその花園は、ところどころから煙と火の手が上がっていた。 巨大なスズメバチが発射する赤熱化した針によるものだ。 やがて、巨大なスズメバチは、空中でなんと人型に「変形」した。 左腕に鋭い針が飛び出すシールドを構え、直線的なシルエットのそれは、さながら「蜂の騎士」だ。 「ジジ……ギギギギ……」 顎を軋ませるような叫び。 対する巨大なカブトムシもその動きに対応し、同様に人型に「変形」していた。 「チェーンジ! ヘラクレスナイト!!」 こちらは、僕たちにもわかる言葉で変身のかけ声を放っていた。 「かぁ〜っこいい!!」 僕と一緒にいる、夜空に星をちりばめたような艶やかな毛並みの子猫が、瞳をキラキラさせて感嘆の声をもらす。 僕も同じ思いだった。巨大な昆虫が人型に変形して戦うなんて、ロマンが過ぎる!! 戦いの危地にあることも忘れそうだ。 「タイガさま、危ない!」 僕と一緒にいるもう一匹、銀毛で三本尻尾の狐がそう警告する。 変形した蜂の騎士は、目の前のヘラクレスナイトではなく、地上にいる僕たちを狙ってきた。 僕たちの方に向かい、針のついた左腕を伸ばす。そこから、火炎が放射された。 「む。いかん」 ヘラクレスナイトの動きは素早かった。 僕の前に立ちはだかり、甲虫の盾でその炎を防ぎきる。 「平気か少年。安心したまえ。君は私が守る」 「ありがとうございます。フォルネ! ニャルラ!」 「いきます!」「アタイも!!」 僕の身の安全が確認できたところで、銀毛の狐フォルネと、星空色の子猫ニャルラは蜂の騎士に向かって突進していった。 「ふむ。ならば見せてもらおうか。君のお供たちの実力を」 僕の前で盾になりながら、ヘラクレスナイトは楽しげにそう言ったのだった。 ***** 僕はタイガ。銀毛の妖狐フォルネと、星空色の魔猫ニャルラを連れて旅をしている。 ここから、どうして僕たちが蜂の騎士と戦うことになったのか、そうして、その先にある今回の冒険の目的について、お話していくよ。 ■ローグライクハーフとは ——想像の、旅に出よう。 ローグライクハーフのリプレイへようこそ! 「ローグライクハーフ」は、TRPGのように遊ぶこともでき、ゲームブックのように遊ぶこともできるという両者の中間のような位置づけのルールです。 1人でもプレイできますし、3人まででTRPGのように遊ぶこともできます。 その内容はランダムダンジョン。サイコロを振ってイベントを決め、起きた出来事に対処します。 同じイベントに行き当たらないような工夫がされているのもポイント高いですね。 簡単に遊ぶには、とても良くできたシステムなのです。 そしてリプレイは、そんなローグライクハーフのシナリオを実際にプレイした様子を物語風に記述したもの。 自分がプレイした様子を、想像力のおもむくまま、冒険小説として仕立てています。 さらに、実際にどんなプレイをしたのかの[プレイログ]もついています。 プレイ風景を知りたい方、自分のプレイとの違いを楽しみたい方、純粋に物語を楽しみたい方、いろんな楽しみ方ができる、それがリプレイの魅力です。 ●作品紹介 ぜろです。 今回挑むのは、ローグライクハーフ「蜂竜の森 〜竜の蜜は危険なお味〜」になります。 「蜂竜の森」は、ローグライクハーフのサプリメント「巨大樹の迷宮」に収録されているd33シナリオです。 「蜂竜の森」と同じく、カラメールという都市の周辺を舞台にした作品ですね。 目的は、「蜂竜の王蜜」なる特別な食材を手に入れること! そこで、「巨大樹の迷宮」で活躍した、タイガ、フォルネ、ニャルラに再登場してもらうことにしました。 だって、こんなおいしそうな依頼、ニャルラが飛びつかないわけないですものね。 でも待って。その依頼、本当に受けて大丈夫なの? 蜂蜜は、人間の赤ちゃんには与えてはいけない食材のひとつ。 それは、人間の赤ちゃんは蜂蜜に含まれる可能性があるボツリヌス菌を無害化する力を持っておらず、健康を害するリスクがあるためです。 「蜂竜の王蜜」はもちろん、蜂蜜と同じではありませんが、同様の特性があることは字面から想定できます。 ちょっと調べたところ、猫に蜂蜜を与えるのは問題ないようです。 しかし、それには条件があって「子猫には与えてはいけない」とありました。 そしてニャルラはまだ子猫。 王蜜と蜂蜜、猫と魔猫の差異はあれど、与えるのはあまりよろしくないようですね。 プレイヤーはそんな予備知識を得ておりますが、それで止まるニャルラではありません。 さて、食材を求めるこの冒険がどのような経過をたどり、どのような結末を迎えるのか、皆さまと一緒に追いかけたいと思います。 その前に、私ぜろによる「巨大樹の迷宮」ローグライクハーフリプレイをお読みでない方のために、主人公たちのことをもう少し詳しく説明させていただきましょう。 まずは人間の少年タイガ。 この物語の主人公です。年齢は11歳になるかといったところ。 ただし、ローグライクハーフのルール上は、「戦わない従者」の「荷物持ち」という役割になります。 ハルトという人物の行方を追っているという目的がありますが、行方の手がかりはつかんでおらず、その理由はまだ明かされていません。 困りごとを抱えた人物を「ほっとけない」性格をしており、そのことでいろんな事件に首をつっこんでしまうタイプです。 続いて、フォルネ。 ヒーローズオブダークネスにて紹介される<妖狐>という種族です。妖力を持った狐のあやかし。 三本尻尾の銀毛の狐。和装の美少年に【変化】できますが、基本は狐モードです。 タイガのことを心底大事に思っており、彼のためなら命を差し出すこともいとわないという危うい側面もあります。 ルール上は、タイガはフォルネの従者ということになります。ストーリー上は逆転していますが。 そして最後はニャルラ。 ヒーローズオブダークネスにて紹介される<魔猫>という種族です。高い知能を持つ猫のクリーチャー。 いつも艶やかな毛並みを「星空」にたとえられています。 魔猫は本当は巨大な猫なのですが、このリプレイの方の世界観に寄せて、魔猫の子猫にしてしまいました。 ちっちゃな気まぐれ猫ちゃんです。 でもタフネスで、抜群の戦闘力を持っています。 このキャラクターたちの着想は「ポケモン」にあります。 そのためこのリプレイは、本来のアランツァのダークな世界観よりも、ややコミカルで明るい方向性を目指しています。 だからこんな少年が世界を旅していても、軽いツッコミしか入りません。 主人公たちだけでなく、その他の登場人物やクリーチャーたちも、ややアニメ調のノリや外見を意識していただけると良いですね。 それでもたまに、アランツァ世界の過酷さとか設定のシビアさが顔をのぞかせることもあるかもしれません。 このひとりと二匹の初登場は、「巨大樹の迷宮」リプレイ。 そこで彼らは、オウカンワシにさらわれた「コーネリアス商会」の当主の娘コンスタンサ(愛称はコニー)を、巨大樹を登りつめて助け出しました。 さらには頂上にて、巨大樹が枯死しかけている事態を発見し、対処したのでした。 この物語は、そんな彼らがカラメールのコーネリアス商会を尋ねたところから始まります。 さて、私はうっかりさんなので、基本的なところで根本的な勘違いをしたまま、あるいは堂々と間違った解釈をして突き進んでしまうことがあるかもしれません。 だから、私のプレイにとらわれず、みなさんはみなさんのローグライクハーフライフを送ってください。 リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。 あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。 また、本リプレイではランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めながら冒険を進めていきます。 サイコロを振ってイベントが決まったら、イベント番号と簡単な内容を示し、話を進めていくこととさせていただきます。 彼らの織りなす冒険を、ぜひ楽しんでください。 ●アタック01-1 ニャルラと蜂竜の王蜜 ここは冒険都市カラメール。 僕たちがコーネリアス商会にお世話になって、十日くらいが過ぎていた。 「ニャールちゃんっ」 コニーが呼びかけるとニャルラは、「アタイはそんなに安い女じゃないのよ」と言いながら、全力でじゃれついている。めちゃくちゃ楽しそうだ。 僕は小判を模したふっくらとした焼き菓子をいただきつつ、湯呑に注がれた熱いお茶をすすって、ほっと一息。フォルネは僕の膝の上ですっかりくつろいでいる。 僕たちは、さきの冒険でオウカンワシにさらわれたコニーさんを助け出した。 そのとき、別の用事があってすぐにカラメールに行けなかったから、後で行くねって約束していたんだ。 それで、巨大樹の冒険を終えたあと、ようやくコーネリアス商会を訪ねた。 コーネリアス商会の当主、ヴァンダービルドさんは僕たちを歓待してくれた。 コニーさんが学園に行っていて不在だとかで、会いたがっているから戻るまで待ってほしいと懇願され、そのまま滞在することになった。 コニーさんは一昨日戻って来たんだけど、今度はそのコニーさんから引き留められて、ずるずると居残っているって状況だ。 ヴァンダービルドさんが僕にお礼をしたいというので、僕は、僕の旅の目的である人探しのことをお願いした。 ハルトの特徴を伝えると、ヴァンダービルドさんは、商会の総力を挙げて探そうと約束してくれた。 けれど、今のところは有力な手がかりは得られていない。もしかしたら、この地方にはいないのかも。 そろそろ、次の場所に旅立つころあいかもしれない。 ヴァンダービルドさんは忙しく動き回っている人なので、いつもいるわけではない。 ここまでお世話になったのだから、勝手にいなくなるのも気が引ける。 そう思っていたら、ちょうどタイミングよく、ヴァンダービルドさんの方から僕のところに会いに来てくれた。 ヴァンダービルドさんは、もうひとり壮年の男性を連れていた。僕が知っている人だ。名前はクックロッドさん。 いつもおいしいお菓子を届けてくれる、コーネリアス商会お抱えの料理人。実はさっき食べてたお茶菓子も、クックロッドさんが持ってきてくれたものだ。 僕の方から、そろそろ出発しようと思うんです、と切り出したところ、ヴァンダービルドさんは「まあ、待ちなさい」と引き留めてきた。 でも、いつもの引き留め方とはちょっと違う。何か理由があるっぽい。 「実は今、カラメールに『非常事態宣言』が発令されていてね」 非常事態宣言?! それは、ただごとではない響きだ。 「いったいなにが起きているんです?」 「タイガくんは、『百竜の森』を知っているかな?」 そう尋ねられたけれど、僕にはわからない。 僕は旅人。ここで育ったわけじゃないからだ。 ヴァンダービルドさんは説明してくれた。 カラメールからやや離れたところにある白い繭に覆われた森。 そこが「百竜の森」だという。 その森の中には、未知で異形なクリーチャーが生み出され続けている。 特に竜の形態をしているものも多く、それでつけられた名が「百竜」というわけだ。 そして、ここからが肝心なところだ。 この「百竜の森」の繭は、年に一度、張り直しの時期を迎える。 それは繭の中にいる、未知なるクリーチャーたちが、外界に出てくるタイミングでもある。 「そうした未知のクリーチャーを狩るために発展したのがここ、冒険都市カラメールというわけだ」 そうだったんだ。 歴史を学んでいるみたい。 「今出ている非常事態宣言。これは『百竜の森』の繭が解けた際に、『蜂竜』が放たれたことによるものなのだ」 蜂竜? 「そう。スズメバチとドラゴン、両方の特性を合わせ持つ、巨大で恐ろしいクリーチャー……」 それが、カラメールと百竜の森の間の森林地帯にて巣作りをしているところが目撃されたのだという。 繁殖されると、このうえなく厄介な魔物。 「なるほど。それはたしかに非常事態ですね」 フォルネも深々と納得して頷いている。 「そんなわけで、君たちには安全のためにも、非常事態宣言の解除まではここにいてもらいたいのだよ」 内容については理解した。でも、僕の関心はそこではなかった。 その話をしに来たのなら、どうして料理人のクックロッドさんが一緒に来ているの? すると途端に、クックロッドさんの目が輝きだした。彼の興味を引くなにかがあるということが一目でわかる。 「実は『蜂竜』の巣で生成される『王蜜』は、極上の食材なのだ!」 「ごくじょ〜のしょくざい!?」 そこまで話もろくに聞かずにコニーさんとじゃれていたニャルラが、ここぞとばかりに食いついてきた。 「カラメールは蜂竜の討伐隊を組織するだろうけれど、我々商会としては『蜂竜の王蜜』の入手を目的とした冒険者を募るつもりでいるわけさ」 クックロッドさんの口調は明らかに熱を帯びている。 このチャンスを逃さずに、蜂竜の王蜜を手に入れたいというみなぎる強い意思を感じる。 そしてニャルラはそれに完全に同調していた。 「はちりゅ〜のおうみつ……味わってみた〜い」 「一口なめるだけで天にも昇るほどの、至高の甘味。それを用いられた料理はいずれも高級にして極上究極の一品となる」 「はわわ〜〜」 僕は、ニャルラが次になにを言うのか、予想がついてしまった。 きっと、蜂竜の王蜜を取りに行こうと……。 「たいが! いこ! アタイたちも、はちりゅ〜のお〜みつ、とりにいこっ!」 僕が予想しきるより早くニャルラが言い出した。 「お待ちなさいニャルラ。子猫のアナタは、蜂蜜をあまり食しては……」 フォルネがそんな豆知識を披露しかけるけれど、ニャルラのほしがりさんは留まるところを知らなかった。 「ハチミツじゃないもん。お〜みつだもんっ」 「実際には蜂蜜を用いたお菓子もお出ししています。調味料として少量使う程度なら問題ないのでは」 「ほらねっほらねっ」 じゃあ、次の冒険は、蜂竜の王蜜探しで決まりかな。 「待ちなさい。君たちの実力は娘の救出で十分理解しているつもりだが、それでも蜂竜はかなり危険な相手だ。倒すことが目的でなくとも、巣の中にある王蜜を手に入れるために、戦いになるリスクも」 「のぞむところなのだ」 「仕方ないですね。準備は万全にしていきましょう。私に少し考えがあります」 「じゃあ、ヴァンダービルドさん、クックロッドさん。僕たちも王蜜探索の冒険者として志願します」 「ううむ。そういうことなら。しかし十分注意するのだぞ。君たちになにかあれば、娘が悲しむ」 「コニー、おみやげにあま〜いお〜みつ、持ってくるのだ〜」 「ふふ。期待していいのかしら」 こうして僕たちは、「蜂竜の王蜜」を求めて森へと入ることになった。 [プレイログ] ・【蜂竜の王蜜】は食料にかけることで生命点を1点追加で回復させる効果がある。データ的にはニャルラが食しても問題ない。 ●アタック01-2 フォルネの事前準備 フォルネがカラメールの町の買い物で購入を強く主張したのは、蟷螂蜂毒という「毒」だ。 これは「蜂カマキリ」という、蜂竜と同じく蜂がベースの魔物から抽出された毒だという。 「毒をもって毒を制す、です」 「レンジュさんが使ってた『植物枯らし』みたいな、ってこと?」 「そうです。巨大なクリーチャーにこそ有効かと」 レンジュさんは怪物狩猟者。 先の巨大樹での戦いで、巨大な毒を吐く植物「ヤドリバナ」に対し「植物枯らし」で対抗していた。 僕たちは蟷螂蜂毒3回分を購入した。 ただ、この買い物は高くついて、巨大樹の冒険で得られたお金のほとんどをつぎ込まなければならなかった。 また、フォルネはしばらく少年の姿でどこかへ行っていた。戻ってきたときに尋ねると、なにやら新しい術を会得してきたという。 フォルネの郷里のものではなく、このあたりで使われている魔術とのこと。 フォルネは「西法術」と呼んでるけれど、僕にしてみたら、ここが西の方って感覚はない。 こうして僕たちは、カラメールの街で準備を整えていった。 今回は高所には行かないと思うけれど、やはりロープは買っておいた方がいいかな。 あとは保存食を買いなおして、と。 【フォルネ(妖狐) レベル13 技量点:2 生命点:5 魔術点:4 従者点:8】 【装備】(人間形態でのみ効果あり) 片手武器 木盾(生命点+1) 鎖鎧(生命点+1防御ロール+1) <スキル> 【変化】人間形態に変化する。 【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。 【西法術:氷槍】魔術ロール成功で2点ダメージ 【持ち物】 1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。 2草避けのお守り 植物によるアクシデントへの対応力を上げる。 【ニャルラ(魔猫) レベル13 技量点:1 生命点:10 器用点:8 従者点:5】 【装備】なし <スキル> 【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない 【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。 【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。 【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。 【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。 【温存経験点】1 【タイガ 従者 荷物持ち】 【持ち物】 食料2 金貨5 1 蟷螂蜂毒 3回分 追加ダメージ1 巨大樹の迷宮P56 2 ロープ 「ではニャルラ、蜂竜について少し復習しておきましょうか」 「えー。メンドい〜」 「森に入ったらどこで遭遇するかわからないのだから、ちゃんと頭に入れておいた方がいいですよ」 「ふ〜い」 フォルネとニャルラが蜂竜について、クックロッドさんに教えてもらったことを振り返っている。 ・巣の外に出ている蜂竜は兵隊で、凶暴。 ・巣の中にいる蜂竜は働き蜂で襲ってはこない。 ・巣は燃えやすいため火気厳禁。 ・蜂竜は赤熱化し、炎を操る個体もある。基本的に火に強い。 「じゃあ、森で会ったらとにかくやっつければい〜のね」 「ニャルラ、私の話聞いてた?」 「きょうぼ〜なのには、先制こ〜げきあるのみ!」 「……まあ、いいでしょう」 準備が整ったところで、いよいよ出発だ。 僕たちは、百竜の森へと繋がる森の小道へと第一歩を踏み出す。 [プレイログ] ・シナリオ導入の助言で【氷槍】があると良いとあった。フォルネは魔術点を伸ばし、新しい魔術として【西法術:氷槍】を取得した。 ■登場人物 タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。 フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。 ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。 コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。通称コニー。オウカンワシにさらわれたところをタイガたちに救われる。 ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。コニーの父親。 クックロッド コーネリアス商会の料理人。蜂竜の王蜜取得に情熱を燃やす。 ■作品情報 作品名:蜂竜の森「ローグライクハーフ」d33シナリオ 著者:ロア・スペイダー 監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ(「蜂竜の森」収録) https://ftbooks.booth.pm/items/5361362 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年6月16日火曜日
Re:ゲームブックとホラー(中)@20代からのゲームブック125 FT新聞 No.4892
FT新聞編集長の水波流です。 本日は、Reシリーズ・丹野佑氏による『20代からのゲームブック』 元は丹野氏が20代のとき、約3年に渡って書き綴られた名コラムの再録です。 (2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412) (編註:文中のコメントは全て当時のものとなっております) ☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆ おはようございます。丹野です。 そろそろお仕事が夏休みに入るという方もいらっしゃるでしょう。休みはいいですね。休みだけで生きていきたいです。 非常に日差しが強い時期ですので、外に少し出るだけでも水分補給は欠かせません。 のどが渇いたなと思った時にはすでに水分が足りてない状態ですので、のどが渇く前にちょくちょく水分を採るようにしていきましょう。 ■おさらい さて、前回に続いて、今回もゲームブックとホラーについてお話します。 前回お話しした中で特に重要なのは、ホラーは「これから起きること」がとても重要です。 実際に人が死んでしまうことよりも、むしろ「これから人が死ぬ」という部分をいかに読者に対して楽しませるかが腕の見せ所といえます。 とはいえ、ゲームブックは選択肢によってストーリーに広がりがあるメディアです。 選択によっては突然死を入れることができますから、「この選択肢を選んだらどうなるだろう?」という想像で、読者をドキドキさせられるわけです。 ■間 ゲームブックはある意味、不思議な媒体です。 ひとつの読み物として話の初めから終わりまで読むとき、ふつうなら順番に頭から読めばいいものを、ぶつ切りにして順番をバラバラにしています。 これはある意味、読者に対してストレスをかける構造になっています。先が読みたければ手を動かしたり、頭を働かせなければなりません。 需要者に上手にストレスをかけるのは、物語では大事です。ストレスがかかると、人間はそこから解放されたい、結末を知って楽になりたいと感じるものですから、先を読み進める原動力になります。 また、その「次のパラグラフを探している時間」が、「これから起きること」についてのジャンルであるホラーにはいい方向に作用することは、ご想像いただけると思います。 パラグラフを探し、読み進めるまでに「間」が生まれます。ホラー映画をご覧になったことがある方なら、間やタメが効果的に使われていると怖さが増すことはわかっていただけると思います。 その意味で、パラグラフを移動している時間は、読者にストレスをかける時間を増やすことになっているので、「間」としての働きをしているわけですね。 ■ストレス ホラーゲームブックは読者に対していかにストレスをかけるかが重要です。 もちろん、過剰にストレスをかければ読者は読むのをやめてしまいますから、適度に緊張をほぐしつつ、不安感を持続させる必要があります。 いつもなら問題を提示してその解決を読者に介入させるのが通常のゲームブックですが、ホラーではただ読者にご褒美を与えるだけではうまく怖がらせられません。 かといって、読者が何をしても結果がうまくいかないのでは当然、やる気がなくなってしまいます。 このバランスをとりつつ、展開は進んでいるけど恐怖は続いている、という状態でストレスをかけ続けるのが重要なわけですね。 さて、今回は中編。次回は、ゲームブックとホラーについて最も大事なポイントについてお話します。 それでは。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年6月15日月曜日
アランツァへのいざない アランツァ百氏族3 FT新聞 No.4891
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆ 今日はアランツァ百氏族と称しまして、FT書房が展開する世界アランツァに登場する氏族を紹介する記事の最終回です。 それでは、いってみましょう! ◆ティブロン家 拠点:冒険都市カラメール 主な種族:末裔 主な職業:なんでも ティブロン家は末裔の一族。ガサガサした肌と強い歯を持つ一族で、性格は荒っぽく直情的。戦士の家系で、自分が最強と信じている。大抵の魚人は個の意識に乏しいため、これは末裔には珍しい特徴といえる。 ◆トーマ家 拠点:冒険都市カラメール 主な種族:人間、エルフ、ドワーフ、コビット、ノーム、半巨人、ゴーレム、末裔 主な職業:【怪物狩猟者】 トーマ家は冒険者の家系。冒険者の館と呼ばれる大きな邸宅に集団で住む一族で、血のつながりはほとんどない。言うなれば生活をともにする運命共同体であり、最近ではひとつの館に住めないほど一族の規模が大きくなったため、隣接する土地に新しい邸宅を建造中である。同じ家に住んではいるものの、家計は同一ではない。一族のあるじは大抵の場合、冒険の経験が豊かな年長者がなる。 ◆ティンバー家 拠点:冒険都市カラメール 主な種族:人間、エルフ、ドワーフ、コビット、ノーム、ゴーレム、¥末裔 主な職業:【戦士】 ティンバー家は代々兵士を務める家系。斥候と呼ばれる、戦場や冒険の場において、単身で敵の状況を確認する危険な仕事を請け負ってきた。物静かで用心深く、おとなしく、必要なことしかしゃべらない。端正な顔立ちをしているため、集団内では密かに好意の対象になることもある。 ◆グアンカシュ家 拠点:混沌都市ゴーブ 主な種族:人間、ドワーフ 主な職業:【戦士】 グアンカシュ家はゴーブの支配階級だが、一族の規模は大きくその身分はまちまち。王侯貴族に所属していない者さえ存在する。戦士の家系で体格が大きく、オークの血が混じっていることもあって、あまり品がない。大きな声で笑い、なれなれしく、世界を自分の敵と味方に色分けする。痛みや恐怖に鈍感で、命に関わりがなければ気にしない「にぶさ」を強みとする。 ◆スネージの一族 拠点:混沌都市ゴーブ 主な種族:エルフ 主な職業:【盗賊】【魔術師】 スネージはエルフの血筋。何らかの理由で肌や髪などに色がついてしまった、黒エルフと呼ばれるエルフの一族(主人公の肌が黒い必要はない)。性格は辛らつで、家の誇りを汚す不届きものや、自分を軽んじる相手に対する怒りが激しい。目つきが悪く、エルフには珍しい一重まぶたをしている。手先が器用で、基本的にはものづくりや射手の家だが、魔法をたしなむこともある。 ◆ロランダス家 拠点:混沌都市ゴーブ 主な種族:人間、ドワーフ 主な職業:【戦士】 ロランダス家は陰鬱なゴーブの街にあって、混沌ごろしで名をあげた戦士の一族。北方人種で髪と瞳の色は黒。全体的に色白で筋肉質。魔法も使う。カタク教徒。性格は豪胆で、混沌に腕を噛みつかれたさい、仲間に自分の腕を叩き斬らせた先祖の逸話を持つ。一族の武勇には狂戦士の粉と呼ばれるドラッグが関係する。これは副作用のある麻薬の一種だが、後遺症に悩むほど長生きできた者は一族にいない。 ◆アルギルダス家 拠点:混沌都市ゴーブ 主な種族:人間、エルフ 主な職業:【魔術師】【僧侶】【錬金術師】 アルギルダス家はロランダス家の盟友と言える家柄で、ロランダスが戦士の家柄であるのに対して【奇跡】【魔術】【錬金術】などを駆使する一族。ロランダス家の魔法の師匠を務めると同時に、混沌と呼ばれるクリーチャーがはびこる「混沌の迷宮」では、ともに戦う朋友でもある。同じ北方人種だが髪の色は亜麻色の栗毛で、瞳の色も茶色がかっている。顔にそばかすがあることが多い。カタク教徒。性格は用心深く度胸が据わっており、大人しく見えるが負けん気が強い。 ◆エドワード家 拠点:堕落都市ネルド 主な種族:人間、エルフ、ドワーフ、コビット、ノーム 主な職業:【錬金術師】 エドワード家は【錬金術】の達人として知られる家系。人間との関わりを嫌い、堕落都市ネルドで怪物の製作に励む。金髪で青い眼、色白。色素が少ない。性格は神経質で几帳面。病弱な傾向がある。頭は良く、「盗賊都市ネグラレーナ」で大学教授を務める者もいる。 ◆ローザ家 拠点:堕落都市ネルド 主な種族:人間、エルフ、コビット 主な職業:【暗殺者】 ローザ家は【暗殺者】の家系で、暗殺能力は高いが雇い主への忠誠心は低いことで知られている。養子が多く「擬似家族」と揶揄する者も。一族のなかでは倍額を支払うと寝返る「鮮血のコルデ・ローザ」が特に悪名高い。 ◆シェザード家 拠点:堕落都市ネルド 主な種族:人間、エルフ、ドワーフ、コビット、ノーム 主な職業:【暗殺者】 シェザード家は対人暗殺に特化した訓練を積んだ暗殺者の家系。家業に従事することを拒否した場合には、冒険者になることが多い。ローザ家同様に「擬似家族」を形成する集団である。血縁でないため一族の特徴はまとまりを欠いている。ローザ家が腕の立つ暗殺者集団であるのに対して、シェザード家はいつわりの身分を用いてターゲットに近づき、油断したところを殺害する。 ◆アメリ家 拠点:堕落都市ネルド 主な種族:人間、ドワーフ、コビット 主な職業:【戦士】 アメリ家はハイランダー・オーク(高地に生息する優秀なオーク)の血が混じった戦士の家系。路上でのケンカ(というよりは殺し合い)をはじめ、暴力を振るうことに無上の喜びを感じる血が流れている。一族の典型的な顔立ちは、鼻が少しめくれていて目つきが悪い。長生きのできない家系なため、一族はみな若い。多産。アルコール中毒者が多い。 ◆スパロウホーク家 拠点:自治都市トーン 主な種族:鳥人 主な職業:【戦士】 スパロウホーク家は自治都市トーンに迎え入れられた鳥人の一族。ハイタカ。俊敏で勇敢な、飛翔騎士の代表的存在。 ◆ガリオン家 拠点:自治都市トーン 主な種族:鳥人 主な職業:【盗賊】 ガリオン家は自治都市トーンに迎え入れられた鳥人の一族。スズメ。体格ではスパロウホーク家に劣るものの、素早さでは上まわる。性格は臆病ないっぽう、勇敢さを見せることも。 ◆コルージャ家 拠点:自治都市トーン 主な種族:鳥人 主な職業:【魔術師】 コルージャ家は自治都市トーンに迎え入れられた鳥人の一族。フクロウ。魔法使いになる傾向が強い。性格は温和で思慮深い。 ◆アロンドラ家 拠点:神聖都市ロング・ナリク 主な種族:鳥人 主な職業:【僧侶】 アロンドラ家は神聖都市ロング・ナリクに迎え入れられた鳥人の一族。ヒバリ。 ◆アノマリア家 拠点:北方都市サン・サレン 主な種族:グレムリン 主な職業:【魔術師】 アノマリア家はグレムリンの一族。少数種族で、文化的なグレムリンの集団はサン・サレン以外ではほとんど見かけられない。アノマリア家のグレムリンは魔法使い的な気質を備えており、信心深く探究心に富む。 ◆デフェクト家 拠点:北方都市サン・サレン 主な種族:グレムリン 主な職業:なんでも デフェクト家はグレムリンの一族。少数種族で、文化的なグレムリンの集団はサン・サレン以外ではほとんど見かけられない。デフェクト家のグレムリンは芸術肌な気質を備えており、いたずらを好む。 ◆バステス王家(失われた一族) 拠点:商業都市ナゴール 主な種族:人間、コビット 主な職業:なんでも 商業都市ナゴールの前の時代に同地に存在した王国都市バステスの王家の血を引く一族。 ◆ハングー家(失われた一族) 拠点:冒険都市カラメール 主な種族:人間、エルフ 主な職業:なんでも 冒険都市カラメールが建国されるより以前に、同地で繁栄したハングー帝国の一族の生き残り。現在よりも強力で粗雑な魔術を使う。 ◆レラヴィリア王家(失われた一族) 拠点:城塞都市ドラッツェン 主な種族:人間、ドワーフ 主な職業:なんでも 前時代に滅ぼされたレラヴィリア国の末裔。ドラッツェン周辺に住む獣型の少数種族(豚人、犬人など)と関係が深い。 それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年6月14日日曜日
Re:オレニアックス生物学 Vol.4 『ウォードレイク』 FT新聞 No.4890
(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメント等は全て当時のものとなっております) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ オレニアックス生物学 Vol.4 『ウォードレイク』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 生物学の授業は非常に重要な科目だった。 アランツァの地での戦いは、戦争となるとまた話は別だが、人間以外の生き物と交戦することも少なくなかった。 聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラントは生物学の権威。 そんな彼の授業は生き物の外見、性質、そして対処方法を教えてくれる。 生徒たちを生き残る道へと導く、確かな灯火だ。 今日もカメルの授業が始まる……。 ラクダ人であるグラント博士は、年がら年中もっしゃもっしゃと口を動かし、授業する。 興奮するとつばが飛ぶので、博士の授業の際にはあまり前方に人がいなかった。 ヘイルとレムレスが平気な顔をして博士の授業を受けているのを、不思議な気持ちで君は観察していた。 今日の授業はウォードレイクについてだ。 「人間に扱うことのできる怪物はいない。そう考えるのが相場だった時代に、世界最大の都市ドラッツェンの王はその常識をくつがえした。☆年に勃発したトカゲ国との戦争で彼らが見せたその怪物は、その示した戦果以上に世界中に衝撃を与えた」 唇がラクダのように3枚(下唇、上右唇、上左唇)に割れたグラント博士は、いつも笑っているように見える。だが、このときの瞳は非常に真剣だった。 「人間に扱える生物といえば、せいぜい家畜のたぐいと決まっていた。ラクダ、馬、タケタケ、オストリッチ、大亀龍、トルケーブ、ポルルポルル……。怪物飼育の専門家でなければ、人間以上の大きさの餌を食べる怪物を飼い慣らすことは難しいとされていた。だが、ドラッツェンの軍事専門家たちはそれをやってのけた。その際に飼い慣らされたのはドレイクと呼ばれる、ドラゴンの親戚のような生き物だった」 「銀色に輝くウロコ。長いかぎ爪。大きく美しい翼。鋭い牙。ルビーのように赤い瞳。生き物の死骸にも似たにおいを撒き散らす。戦場では大トカゲに乗ったトカゲ人騎士を子ども扱いしたという」 「それだけの強大な軍事力でありながら、ウォードレイクは現在ドラッツェンにはいない。レムレス、どうしてか分かるか?」 眉間にしわを寄せながら、羽根ペンを器用に回しながらレムレスは考える。 「予算不足、ですか?」 満足そうに博士が笑う。 「そうだ。ドラッツェンは広大な領土を持っていたが、ウォードレイクによる世界覇権はならなかった。無敵の軍事力を誇ったウォードレイク1体を維持するために、1日約1頭の牛が必要だったのだ。皮肉でもなんでもなく、ドラッツェンからは牛が消えた。当時ウォードレイクはドラッツェンの象徴として庶民から愛されていたが、毎年少しずつその数は減らされた。軍事費が経済に与えた打撃は大きく、後にドラッツェンが植民地を失うキッカケのひとつとなった。だが、このクラスは生物学、歴史学ではない。話を戻そう。ドラッツェンは凶暴で、常に腹を空かせている。巨体にも関わらず飛ぶことができ、鋭い鈎爪で獲物を捕まえるが、炎は噴かない。彼らの弱点はどこだと思う? アヴィオン」 アヴィオンはマジメな顔をして答えた。 「目と鼻ですか」 博士は口をへの字にして応える。 「正解だ。ウロコが生えていない場所が弱点だ。戦いのさなかにこれを狙うのは簡単ではない。アヴィオンのような弓の名手でも、動いている15cmほどの的を射抜くのは至難の業だ。それでも、顔を射掛けるのは悪い案ではない。槍やパイクを持っているなら、もう少し楽に狙えるかもしれない。だが、ウォードレイクは軍事力に優れているから使われるようになった生き物だ。予算不足でいなくなったということは、つまり、未だに戦いでは攻略されていない生き物だということだ」 終業の鐘が鳴る。 「ウォードレイクと相対したときにどうしたらいいのかという問いは、戦車と出会ったらどうしたらいいのか、という問いに似ている。そのような事態に陥ってはならない。倒すには軍事的な連携が必要で、個人で相対するべき生物ではない。そのことをしっかりと肝に銘じること。以上!」 博士はピンと背すじを伸ばしたまま、教室の扉を開ける。ありがとうございました! と声が響く。 若い生徒たちに教えることのうち、どれが役立ち、どれが無駄になるかは分からない。 だが、いくつかはきっと、彼らの命を永らえさせてくれるだろう。 そう信じて博士は今日も教鞭をとる。 (From:清水龍之介) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ ウォードレイク 【盗賊剣士】に登場。48ページを参照。 技術点不明 体力点不明 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年6月13日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第696号 FT新聞 No.4889
From:水波流 先月に引続き、児童書と絵本を図書館で借りては読み続けていたら、5月も読書冊数が32冊に。 ここからはちょっと方針を変えて、本棚に積ん読のままのラノベを読んでいこうかなと。 まずは小説版パトレイバーを……。 From:葉山海月 リアルで拳銃持ち歩き、それを模型店内で抜くやつ初めて見ました! もちろん、トイガンです。 「大阪へ行くから、うちも何か身を守るものもたな」 知らなかった。いつから大阪はアメリカになったんでしょ? From:中山将平 光栄なことに僕、6月28日(日)に開催の『トロールコン1』にゲストとして参加させていただきます! 参加申込みは明日6月14日までとうかがっていますので、「気になっていた」という方にもう一度情報をチェックしていただけましたら。 https://gforms.app/r/jORZVgb さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (天)=天狗ろむ (明)=明日槇悠 (く)=くろやなぎ (葉)=葉山海月 (水)=水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■6/7(日)~6/12(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年6月7日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4883 『ガルアーダの塔』1-90階 ローグライクハーフd66シナリオ ・今年2月から配信が始まった、杉本=ヨハネ氏によるローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』d66シナリオ、いよいよ最終回!「7回目〜9回目の冒険」が追加され、1階から90階まで登れるようになりました。前回の配信を逃した方も安心!新たにダウンロードしてプレイしてみてくださいね。 舞台となる「水上都市聖フランチェスコ」都市サプリメント、「中級ルール」改訂版も再配信です。こちらで入念な準備をおススメいたします。 杉本氏曰く、14年前に「最後のエンディングのシーンからスタートした作品」だったとのこと。渾身の大作を、ガルアーダとの戦いを、どうぞ最後までお楽しみあれ! (天) 2026年6月8日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4884 アランツァへのいざない アランツァ百氏族2 ・FT書房が展開するファンタジー世界「アランツァ」について深掘りする本連載、今回のお話は前回に引き続き「氏族」について。 アランツァ百氏族と称して、冒険者を輩出してきた氏族を紹介して参りましたが……数えたところ89氏族しか存在しないことが判明しました。ムリに増量するのも違うので、このままお送りします★ ひとつの家系の中に人間、ノーム、ドワーフなど、複数の種族が主流となることもあるというのは、特に日本的な感覚からするとカルチャーギャップを覚えますね。 ゲームブック『大魔導城のワナ』などの著作で知られる冒険作家ロア・スペイダー氏も、からくり都市チャマイに拠点を置く百氏族スペイダー家の出であられます。 冒険者として功成り名遂げれば、新たに百氏族のひとつとして家の名が残されることもあるのかもしれません。さあ、冒険だ! (明) 2026年6月9日(火)丹野佑 FT新聞 No.4885 Re:ゲームブックとホラー(前)@20代からのゲームブック124 ・『巨大樹の迷宮』『きみへ贈る詩』などの著者である丹野佑氏による、10年ほど前にFT新聞で連載されていたコラムの再録シリーズ。今週からは「ゲームブックとホラー」をテーマとする回を、3週連続でお届けする予定です。「ゲームブックが構造的に持っている要素のいくらかは、そもそもホラー的である」という丹野氏の考察を、どうぞお楽しみください。 なお、記事の中で触れられている「夏のクトゥルフ・ゲームブック祭り」の諸作品は、FT新聞で配信された後、『ゲームブック クトゥルー短編集』としてまとめられています。BOOTH(紙書籍)またはAmazon(Kindle電子書籍、作品ごとに分冊)にて販売中ですので、興味のある方はこれを機会に遊んでみてください! (く) 2026年6月10日(水)ぜろ FT新聞 No.4886 第4回【可愛いあの子に最高のプレゼントを】ローグライクハーフリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第495回。寝子氏によるローグライクハーフシナリオ『可愛いあの子に最高のプレゼントを』の最終回です。 ウサギ使いのウサナギのお友達、りにゃの誕生日パーティー中に、招待客の連れていたゴーレムが大暴走! りにゃにお願いされたウサナギは、ファミリーのウサギたちと共にこれに対処します。パーティーの他の招待客を守りながらの戦いです、何とか出来るでしょうか…!? そして、ウサナギたちはりにゃに最高のプレゼントを渡すことができるかな? ぜろ氏による粋な計らいのサプライズもありますので、どうぞ最後までお楽しみくださいね。 (天) 2026年6月11日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4887 『覚悟(デテルミナシオン)』 ・来たる6月18日、錚々たる作家陣によるハヤカワ文庫JAのアンソロジー『ショートショートなSF』に、岡和田氏の小説「十四(カトルセ)」が掲載されます。 同作は「ナイトランド・クォータリー」Vol.40の「メリュジーヌ」、同Vol.42の「屍衣(モルタハ)」などとも共通する舞台を扱ったもの。今回はそのうちの一作をお披露目します。 「美し風」と呼ばれるこの街で、十六(ディエシセイス)のときから墓守として働いてきた彼は、なぜ自分のこめかみに回転式拳銃の引き金を引くに至ったのか? 夜番の際に現れる純白の屍衣(モルタハ)を身にまとったうら若き女性は、幽霊なのか、あるいは風に乗ってどこへでも行ける自由な存在なのか? 自由なんか欲しくない彼は、ひょんなことから手に入った大金によって、どのような「覚悟」を見せるのでしょうか? 神話の神々や怪物などを象った豪奢な彫像に囲まれた墓所の迷宮に、一瞬と永劫の狭間、あなたの心をご案内する一作です。 (明) 2026年6月12日(金)ふろふき大根 FT新聞 No.4888 『ズィムララ美食紀行』 ・T&Tのファンであるふろふき大根氏。 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』の発売など、盛り上がりを受けまして、今回、記事を寄せてくださいました。 題して 『ズィムララ美食紀行』 ! モンスター!モンスター!RPGの舞台である惑星ズィムララは、まだ金属器が広く普及する以前の世界。王侯貴族こそ鉄製の武具を手にしているものの、庶民の暮らしには鍋や農具ですら金属製品はほとんど行き渡っていません。 では——鍋も窯もない世界で、庶民はどうやって食事を作っていたのか? 本作は、その素朴な疑問に対する答えを示す一つの答えです。 実験考古学や古代の調理技術を踏まえ、架空世界の“食”をリアルに再構築することを試みた本編! 生き物の根幹(食)という行為に、あなたの想像力をかきたてること間違いなし! 詳しくは、是非本記事を! (葉) ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年6月12日金曜日
『ズィムララ美食紀行』 FT新聞 No.4888
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『ズィムララ美食紀行』 (ふろふき大根) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 初めまして。ふろふき大根と申します。 T&Tのファンでして、BOOTHの「ふろふき大根屋」(https://furofukidaikon.booth.pm/)にて、Tunnels & Trolls(T&T)や『モンスター!モンスター!』のソロアドベンチャーを松田洋平名義で公開しております。 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』の発売もあり、モンスター!モンスター!RPG全体がとても活気づいてきました。T&Tファンとして、この盛り上がりを心からうれしく感じています。 さらに、今月末6月28日(日)には愛知県名古屋市で「トロールコン名古屋」が開催されることも決まりました。かつてアメリカ・アリゾナで行われた“トロールの大祭”が日本で開催されるという事実は、まさに歴史的な瞬間と言えるでしょう。これからもT&T、そしてモンスター!モンスター!から目が離せません。 今回FT新聞に掲載させていただくのは、題して 『ズィムララ美食紀行』 です。 モンスター!モンスター!RPGの舞台である惑星ズィムララは、まだ金属器が広く普及する以前の世界。王侯貴族こそ鉄製の武具を手にしているものの、庶民の暮らしには鍋や農具ですら金属製品はほとんど行き渡っていません。 では——鍋も窯もない世界で、庶民はどうやって食事を作っていたのか? 本作は、その素朴な疑問に対する答えを示す一冊です。 結論はとてもシンプルです。 金属の鍋がなくても、料理はできる。 火・石・土・皮袋といった自然素材を組み合わせ、人々は驚くほど豊かな食文化を築いていました。 本書の調理体系はズィムララ世界の設定に基づきつつ、地球の古代エジプトや古代メソポタミアの考古学研究を参考文献として取り入れています。 実験考古学や古代の調理技術を踏まえ、架空世界の“食”をリアルに再構築することを試みました。 特に、熱した石を皮袋に投入して煮炊きを行う「焼き石調理」は、現代のアウトドアでも試してみたくなるほど合理的で魅力的な技法です。鉄鍋が普及し始めた後の時代でも、軽量化を重視する旅人たちは、この安価で軽い道具を好んで持ち歩いたのではないか——そんな想像も膨らみます。 なお、本作の制作にはAIツールのNotebookLMも活用し、古代技術の整理と再構築に役立てました。 ズィムララの大地に息づく知恵と食文化を、ぜひお楽しみください。本作が、過酷なズィムララの世界を旅する様々なクリーチャーたちの心の支えになるとすれば、これほどうれしいことはありません。 なお、本稿はAI技術を用いて生成された情報を含んでおります。 情報の正確性・妥当性には注意を払っておりますが、完全性を保証するものではありません。 万が一、記述に誤りや修正すべき点がございましたら、筆者までご連絡くださいますようお願い申し上げます。 『ズィムララ美食紀行』 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/ZimralaCulinaryJourney.pdf 『金属器なき世界の高度の調理体系(皮袋の焼き石煮)』 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/StoneBoilingScience.pdf ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。