◇◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ローグライクハーフのシナリオソムリエ(自称)の本日のおススメシナリオ その4『我ら、その速さに命運を賭す』 天狗ろむ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇◆ おはようございます! 「1人用TRPGローグライクハーフ」の楽しさに魅せられ、ローグライクハーフのシナリオソムリエ(※)を目指す編集部員、天狗(あまく)ろむです。 (※ワイン専門の給仕人ソムリエのように、皆様のローグライクハーフのシナリオ選びの際の手助けが出来る人になりたいな、くらいの意味です) さてこちらは、特に「個人制作シナリオの周知」を目的としたローグライクハーフのシナリオの紹介記事です。 ローグライクハーフのシナリオには「特殊ルール」が設けられることがあります。たとえば公式シナリオであれば、ぜろさんによるリプレイが連載されていた『巨大樹の迷宮』。こちらは巨大樹を登っていくにつれ、【高度】が上がるルールになっています。【高度】が上がると敵のレベルやトラップの難易度も上がる代わりに、宝物などもより高価なものになる可能性が上がる……という、ハイリスクハイリターンな「特殊ルール」となっています。上に向かう程に冒険の厳しさを増す巨大樹を登っていく感覚が「特殊ルール」に含まれているので、その点でもとても楽しくスリリングなシナリオです。 そんな、シナリオの楽しさの肝にもなる「特殊ルール」を、自作シナリオに取り入れてみるのはいかがでしょう? ローグライクハーフは基本ルール自体が軽めなので、「特殊ルール」を設けてもそれほどにはプレイヤーの負担になりません。勿論、限度はありますし、ルールの簡略化などは必要かと思われますが、自作シナリオのオリジナリティは各段に上がると思いますので、ぜひ試してみてください! 今回のシナリオ紹介記事の第4弾は、そんな「特殊ルール」が上手く組み込まれた、午年の今年にピッタリのシナリオです。FT新聞にて「写身の殺人者」「怨霊列車は夜笛を鳴らす」のリプレイ連載もされている、東洋夏さんより頂きました。ありがとうございます! まずはご本人から紹介して頂きましょう! ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは。 東洋 夏(とうよう なつ)と申します。主にXにて、ローグライクハーフのリプレイを書いて楽しんでいるものです。現在リプレイ掲載中ですので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません(ありがとうございます)。 さて、最近はリプレイのみならずシナリオ執筆にも力を入れています。 今回紹介する作品タイトルは『我ら、その速さに命運を賭す』。 ジャンルはずばり「レース」! 主人公は、ナリクの草原から王都まで駆け抜ける命懸けのレースに挑み、一位を狙います。 障害物あり、クリーチャーあり、ハプニングありのサバイバルレース。 果たしてあなたの主人公は、〈速さ〉の頂点に立つことができるでしょうか? ・形式:d33 ・世界観:アランツァ ・難易度:普通 ・プレイ時間:10ー15分 ・適正レベル:10〜 ・対象年齢:10歳以上 ・シナリオの公開場所:TALTO talto.cc/projects/3MuY9FBe8_BJpJ6xuakLO 作者が競馬好きなので、仲間と協力するのではなく、個としての真剣勝負を表現できるシナリオを作ってみたいと考え、制作に取り組みました。 チームの中での順位を表す【順位点】、ライバルとの一騎打ち【競り合い】、走者として目覚める素質【レーススキル】というオリジナル要素を組み込み、スリリングなレース表現を追求しました。 d33ながら、このシナリオでしか味わえない冒険を体験していただけるはず。 もちろん競馬をご存知なくても、問題なく楽しめます。駆けて競うことの楽しさや熱さ、ひりつく感じが少しでも伝われば、作者冥利に尽きるというものです! また、このレースシナリオの各種ギミックは、参考文献にこのシナリオ名とTALTOのURLを明記していただけましたら、どなた様でも利用可能です。 アランツァ世界各地でレースが開催されたら楽しいだろうなと思いますので、お気に召したら、是非シナリオ制作にも挑戦してみてくださいね。 利用の際は基本的に報告不要ですが、教えてくださると大変嬉しいです。私も走りに行きたいものですから! ◇◆◇◆◇ ご紹介ありがとうございました! 『我ら、その速さに命運を賭す』のあらすじとしては、ラドリド大陸の〈神聖都市ロング・ナリク〉西端に位置する、貴族リエンス家の領地の地下で墳墓が発見されたことから始まります。そこに眠っていたのは、〈ロング・ナリク〉の主要な信仰であるセルウェー教勢力に追い立てられた騎馬民族の王クル・レン・ミロティン。【アンデッド】として蘇った王とその配下の戦士たちは、リエンス家に宣戦布告をします……この地の正当な支配者は自分たちである、と。 譲る気など毛頭ないリエンス家の当主ブラークが戦闘を避けるべく交渉をした結果、〈ロング・ナリク〉の王都までの「速さ比べ」で勝負をすることになったのでした……つまり「レース」ですね! 主人公は、リエンス家側の助っ人として「レース」に参加することになります。ですので、馬などの【騎乗生物】を所持しているか、自分自身が【騎乗生物】タグを持つ主人公でなければ、参加資格がありませんのでご注意ください。 通常の主人公であれば、拡張ルールの職業【獣使い】の特殊技能の1つ【竹馬の友】を選べば、【騎乗生物】である「軍馬」「乗用馬」「オストリッチ」のいずれかを無料で入手できます。また、「種族」で遊べるサプリメント『ヒーローズオブダークネス』の「ケンタウロス」は【騎乗生物】のタグを持つ主人公です。 天狗ろむ調べになりますが、最も安く買える(今回の参加条件に一致する)【騎乗生物】は『ヒーローズオブダークネス』の【悪の種族】である「オーク」や「ゴブリン」、「吸血鬼」などが購入可能な「魔犬獣」で金貨20枚。次に安かったのは、『混沌迷宮の試練』の舞台〈混沌都市ゴーブ〉や『雪剣の頂 勇者の轍』などの舞台〈北方都市サン・サレン〉、『エメラルド海の探索』の舞台〈貿易都市ビストフ〉の都市サプリメントにある、「ポルルポルル」(これは「オストリッチ」の別名で、いわゆるダチョウ)で金貨35枚でした。金貨200枚もする象のような「エレファス」などと比べるとお手頃価格とはいえ、どちらも初期装備(大抵は金貨10枚)では買えないため、さくっと遊びたい方は上述の「獣使い(【竹馬の友】が必須)」か「ケンタウロス」の主人公で挑むのが良さそうですね。 冒険を経た上で【騎乗生物】をゲットしたい! という方は、他の冒険で金貨を稼いでいただいて、各種都市サプリメントの飛行能力のない【騎乗生物】を購入してから挑んでもらうか……『混沌迷宮の試練』での冒険中、あるいは電子書籍で販売中の『戦場の風』冒険開始時に、それぞれ【騎乗生物】を金貨不要で入手可能ですので、そちらから始めてみるのも良いかもしれません。 (あと冒険中に【騎乗生物】を入手できる可能性があるのは『常闇の伴侶』、他の都市サプリメントですと『蛇禍の悪魔』『失楽園奇譚』の舞台〈ポロメイア小国家連合〉で「ポルルポルル」の別名の「オストリッチ」、『炎の王墓』の舞台〈山岳都市カザド・ディルノー〉で「ポルルポルル」と同額の「ドゥルドゥル」がいますが、現時点では書籍化されていません。FT新聞での配信時のデータを持っているのであれば見てみてくださいね)。 【騎乗生物】を用意出来たら、あとは【レーススキル】をダイスで決めます。「闘魂着火」や「豪脚一閃」など格好いい名前のものが用意してあり、それぞれレースに有利になるスキルとなっていますので、よく読んでおくことをおススメします。スキルによっては使いどころが大事になってくるので、これもまた面白いポイントの一つ。ここぞ! という時に使って優勝を目指しましょう。 そして、このシナリオの肝が【競り合い】のルール。それぞれの思惑を持ったライバルたちとの「戦闘」はこのルールで勝敗を決めます。要するに【判定ロール】の達成値を比べて、高い方が勝ち……なのですが、ローグライクハーフの戦闘とはまた異なり、1回だけのダイスロールで決まることも多く、ダイスを振るときに特に緊張感があります。この【競り合い】に勝つと、【順位点】が下がり(【順位点】=順位なので、低い方が良いのです。勿論最小値は1(位)!)、かなりレースに有利になりますが、負けた時は引き離されて【順位点】が上がり、優勝が遠のいてしまいます。 ライバルの中には、FT新聞読者の貴方なら見覚えのあるであろうキャラクターたちも登場しますよ。会えたときは是非、正々堂々と【競り合い】勝負してみてくださいね。 これら【順位点】【レーススキル】【競り合い】の「特殊ルール」は、本来のシナリオ制作の規約ですと使えないのですが、今回は東洋さんのご厚意で利用可能とのことですので、「特殊ルール」を自分で思いつくのは難しいけれど、「特殊ルール」を使ったシナリオは作ってみたい……という方は、これらを使わせていただいてシナリオを考えてみるのも楽しいかと! もし制作なさいましたら、「シナリオ紹介記事」にて是非紹介させてください! ご連絡をお待ちしております! そしてこちらは余談ですが……ローグライクハーフは基本的にはPC2人までの遊びとなっています。なのですが、私はPC3人で遊ばせていただきました。【騎乗生物】の「軍馬」に乗った聖騎士、「相棒」ルールで【騎乗生物】を相棒にしている獣使い、そして自身が【騎乗生物】であるケンタウロス、とそれぞれ変化をつけてのプレイ。何せローグライクハーフは1人用TRPGですので、この辺りは自由なのです!(データ管理がちょこっと大変になりますがね!) 今回のシナリオでの遊び方も記しておきますので、ご参考までに。 まず、【順位点】の低い順に、キャラクターごとに〈できごと〉をめくり、処理を行います。1枚目の〈できごと〉として3人全員がそれぞれ別の〈できごと〉を体験したら、また【順位点】の低い順に〈できごと〉をめくっていきます。このサイクルで、一本道モードを進めていきます。この時、たとえば1人目が出目12をめくっていて、2人目が同じく出目12を出したら、出目を1つ足した出目13をめくります(出目13もめくられていたら出目21とします)。固定イベントは3人それぞれで処理をします。 〈できごと〉の結果、【順位点】が同値になった場合は、そのキャラクター同士ですぐに【競り合い】を行い、負けた方の【順位点】に+1します。たとえば【順位点】2同士で【競り合い】をした場合、負けた方が順位点3になる形です。この結果で更に他のキャラクターと【順位点】が同値になった場合、再び【競り合い】を行い、【順位点】が同値のキャラクターがいなくなったら次に進みます。 自分の作った主人公キャラクター同士が(戦闘によらない)バトルを繰り広げてくれるので、安心かつ新鮮な気持ちでとても楽しく遊ばせて頂きました。主人公キャラクターが多い方は、こんな遊び方もおススメかもしれません。 中央競馬のクラシック三冠とされる、皐月賞では「最も速い馬が勝つ」、日本ダービーでは「最も運のいい馬が勝つ」、菊花賞では「最も強い馬が勝つ」……という昔の格言があるそうですが、こちらのレースではどれもが重要かもしれません。最終イベントまでに【順位点】を1にしなければならないので速さは言うまでもなく、【競り合い】などはダイスで決めるので【運】も大事。通常の戦闘も無い訳ではないので、そもそも弱いと負けてしまいますからね。 そんな激闘になるであろうレースの最後に待ち受ける騎馬民族の王に、「速さ」のみで勝つことが出来れば、格好いい【称号】もゲット出来ますよ。私は何度か(しかもPC3人投入して)遊ばせてもらっているのですが、未だにゲットならずで悔しい限りです……! (こちらのシナリオをお気に召した方には、更に難易度の高くなった、『我ら、その速さに命運を賭すDX』もおススメしておきます。より手強くなったライバルたちに、貴方は勝てるでしょうか!) プレイしてみた感想は、FT新聞の感想フォームからでも、作者さん自身に直接でも、どうぞお気軽にお寄せください! それでは、今回はここまで。次回のシナリオ紹介記事にてお会いしましょう。 貴方に良き冒険のあらんことを! 天狗ろむでした! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
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2026年5月17日日曜日
2026年5月16日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第692号 FT新聞 No.4861
From:水波流 TRPG『ストームブリンガー』の事を考えていたら、久々にプレイをしたくなりました。なんだかんだで中高生の時に一番遊んだシステムなんですよね。 そういえばGoodman Gamesがエルリックの権利を取得して、5eと Dungeon Crawl Classics で展開するという記事を読みました。 日本語化もされるといいなぁと思いつつ。 From:葉山海月 今やその効果について賛否両論な「サブリミナル効果」ですが、ある方の意見によると「そもそもサブリミナル効果」がどのようなモノかわからないと効果がない。んだそうです。 この辺「呪い」とよく似てるなと思うんですが…… From:中山将平 5/17(日)に僕ら、インテックス大阪で開催の「関西コミティア76」にサークル参加します。配置は【C-11】。 僕自身はその隣の【C-12】にて、「ギルド黄金の蛙」というサークルで現地にいます。 また、5/23,24(土日両日)には僕ら、幕張メッセで開催の「ゲームマーケット2026春」にサークル参加予定です。 こちらの配置は【に42】です。 当日発売の新刊は2冊。「ロ—グライクハーフ 常闇の伴侶」と「ヒューマンズ!ヒューマンズ!」。 僕自身も現地に行きます!(カエル人の本も扱う予定です) ぜひ遊びにお越しいただけましたら! さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (天)=天狗ろむ (明)=明日槇悠 (く)=くろやなぎ (水)=水波流 (葉)=葉山海月 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■5/10(日)~5/15(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年5月10日(日)ロア=スペイダー FT新聞 No.4855 Re:オレニアックス生物学 Vol.3 『マンドラゴン』 ・過去の人気記事を再配信するReシリーズとして、聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラント教授による、アランツァ世界のクリーチャーたちに関する「生物学」の講義をお届けしました。 第3回目は『マンドラゴン』。名前からするとドラゴンのような、マンドラゴラのようなクリーチャーですが、見た目は背中に木を生やした大きなトカゲに抱きつく裸の女性……さて、カメル教授は「どっちがマンドラゴンか?」と問いかけてきます。百竜の森のドラゴンは、ユニークな生態が多くてワクワクしますね。問いかけの答えは、是非記事にて! (天) 2026年5月11日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4856 「アランツァへのいざない」第3回 アランツァ世界の紙事情 ・FT書房が展開するファンタジー世界「アランツァ」について深掘りする本連載、今回のお話は「紙と識字率」についてです。 アランツァ世界の紙は大きく分けて2種類。ひとつは「獣皮紙」で、もうひとつは「植物紙」です。 「獣皮紙」は造語。なぜヨーロッパ世界における「羊皮紙」ではないのか? そこには知的探究心に裏打ちされた納得の説明が! 「植物紙」における「植物」も「紙」も、現代で私たちが手に触れられる形そのままではありません。 高価なものには、主に魔法のスクロール(巻物)の素材として使われる「トレント皮紙(樹人皮紙)」という代物さえあります! アランツァには文字を読める人も読めない人もいますが、冒険者の識字率は驚異の100%! 大いに読みましょう! (明) 2026年5月12日(火)丹野佑 FT新聞 No.4857 Re:インセンティブ(後)@20代からのゲームブック123 ・『戦場の風』『きみへ贈る詩』などの著者である丹野佑氏による、10年ほど前にFT新聞で連載されていたコラムの再録シリーズです。 先週配信された前編に引き続き、今回のテーマは「インセンティブ」。読者に先を読み進めてもらうための動機付けとして、作品の中で「約束」を行うことが効果的だと丹野氏は考えます。 これらの「約束」の中には、文学作品やゲーム全般に共通する要素もありますが、ゲームブックならではの、先の展開などが「ちらっと見えて」しまうことも「約束」として機能する、という着眼点が興味深いですね。そのような「約束」の発生にあたっては、作品の媒体やレイアウト、イラストなどによる影響も大きく、ゲームブックが文章やルール以外にもたくさんの要素から成り立っていることにも改めて気付かされました。 (く) 2026年5月13日(水)ぜろ FT新聞 No.4858 第4回【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第491回。今回は、山田賢治氏の短編ゲームブック『クトゥルフ深話』の最終回と感想です。この作品には、クトゥルフものでありながら超重要アイテムがサクサク入手できるスピード感や、読者自身の現実世界での行動とのリンクなど、意欲的ゆえに賛否両論分かれそうでもある試みが盛り込まれていましたが、皆さんの感想はいかがでしょうか。 ちなみに、ぜろ氏の感想内の「ジョンズシステム」とは、杉本=ヨハネ氏の考案による、ゲームブック『盗賊剣士』で採用されているシステムです(「ジョン」は「ヨハネ」の英語読み)。杉本氏曰く、ジョンズシステムは「安定した世界(昼間・探索・双方向)と不安定な冒険の世界(夜・冒険・一方向)が交互に起こる場合」に十全に機能するシステムとのことなので、このような観点から『クトゥルフ深話』とジョンズシステムとの相性を考えてみるのも面白いかもしれません。[参考:FT新聞 2013/07/23(No.182)、2013/07/27(No.186)] (く) 2026年5月14日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4859 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は問いかける——人間とは何か、と。 ・岡和田晃氏による、ゲームマーケット2026春で先行発売となる『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』日本語版の紹介記事です。 トンネルズ&トロールズのデザイナーである、ケン・セント・アンドレによって、本作に込められた思いを読み解きます。例えば、人種差別(racism)に直結しないよう「種族(race)」という言葉を使わず「species(種)」としていたり、職業には「階級」や「階層」を想起させる「クラス」ではなく「プロフェッション」という言葉を採用しています。 一方で、どの職業につくかは一概に等しいチャンスが在るわけではなく、2d6でもっとも出やすい7にあるのは農民。ケンがイメージする世界観では、社会は本質的には平等であるべきだが、実際にはそうなってはいない、という矛盾をも表現しえているわけです。 ケン・セント・アンドレがデザインした「ストームブリンガー」でも、ランダムダイスで職業表を振るのですが、農民や乞食など、ヒーローらしからぬ職業になりがちな事に対し、ケンは「俺や君が暮らすこの世界も、平等でも公平でもない。だからいいんじゃないか!俺たちはどの世界でも、渡されたもので頑張るしかないんだ。それが冒険なんだよ」とコメントしていたのを思い出しました。 (水) 2026年5月15日(金) ぜろ FT新聞 No.4860 第2回 水曜ゲームブックリプレイの思い出 ・FT新聞にて驚異の連載回数を誇る、ぜろ氏のゲームブック(+ローグライクハーフ)リプレイ。 今回も、そのリプレイの中に詰まった思い出を、熱く語ります。 作品名は、『断頭台の迷宮』 リプレイの裏話はもちろん、作者である清水龍之介氏のことまで。 さらには、その当時のゲームブックの背景の香りさえただよってきます。 当時の「熱さ」を知る方には、まさに宝石箱! な一本です! (葉) ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月15日金曜日
第2回 水曜ゲームブックリプレイの思い出 FT新聞 No.4860
第2回 水曜ゲームブックリプレイの思い出 FT新聞、水曜ゲームブックリプレイ担当のぜろです。 金曜日枠が空いているので、ふらふらっとたまに来ては記事を置いていこうかと思っております。 ここでは、自分自身がFT新聞で連載したリプレイを振り返りながら、思い出語りができればと思っております。 第1回は、2026年1月2日に掲載させていただき、「宝石島の脱出」と、その当時のFT新聞について語らせていただきました。 今回は第2回。「断頭台の迷宮」についてお話します。 ●その2 断頭台の迷宮 さて「宝石島の脱出」の次の連載は「断頭台の迷宮」にしないかと、杉本=ヨハネさんから提案されました。 ちょうどこの頃に、「断頭台の迷宮」のスマホプレイ版が出るという話があって、それに合わせてのリプレイ掲載ということでした。 「断頭台の迷宮」も、FT新聞が始まる前、2012年にプレイして、すでにmixiにて掲載していたものを流用するという形でした。 連載用に少し修正を入れる程度でしたので、この頃はかなり楽をさせてもらっていましたね。 作者は清水龍之介さん。 旧来のゲームブックの様式にとらわれない斬新なアイディアを多く持ち、その成功失敗を問わずに次から次へと投入する、才気あふれる方です。 後に超大作「魔の王の少年」「魔の国の王女」を執筆し、FT新聞連載開始時から「剣闘士ユーグ」を書いています。 「魔の王の少年」シリーズは3部で完結という話で、3巻が出そう、という話も聞いたことはあったのですが、その後音沙汰がないので気になっております。 商業的な事情であるとか、タイミング的なことであるとか、理由はいろいろあるかと思いますが、シリーズものとして始めたものは完結まで追いかけたいというのは、読者の切なる願いではあります。 だからね、「ガルアーダの塔」もね、ローグライクハーフ版もいいけどゲームブック版の続きも、と思うところがないでもないです。 が、やっぱりタイミングとやりたいことを優先するのが一番いいってのもわかってますので、願望だけ垂れ流しておきます。 この「断頭台の迷宮」は、FT書房の初期作品の中では、屈指の出来だと私は個人的に思っています。 ただし、高難度の作品ですので、あまりの難しさが肌に合わない方もあるかもしれません。 この作品の優れたところは、序盤はすごく簡単にコロコロとゲームオーバーを連発してしまいがちにもかかわらず、徐々に全体の把握ができると、きちんと攻略ができるような作りになっていることですね。 そんなふうに、試行錯誤をしながらきちんと考えて進めば、攻略できる、ただ難しいだけではないところがとても魅力的に映りました。 また、この作品は導入も引き込まれるものがありました。 主人公は記憶を失って、ダンジョンの奥、しかも奈落のような裂け目のふちで目が覚めるのです。 ちなみに最初のちょっとしたネタバレになりますが、目覚める前に寝返りでもうとうものなら、最速のゲームオーバーが待っています。 スーパーマリオブラザーズで最初のクリボーに当たって死ぬのといい勝負です。 そこからダンジョンを探索し、自分が覚えていない知人との出会いがあり、別れがあります。 難敵「ギロチンハンズ」との因縁めいた遭遇があります。 そうして、緊張感が増す中でダンジョンからの脱出を目指すのです。 ダンジョンは双方向のつくりになっています。 場面によっては、どちらから来たかによって展開が変化する要素も加えられています。 ラストには、宿敵ギロチンハンズも含めた、ちょっと意外な結末が待っています。 自身が記憶を失った事情とか、記憶を取り戻したらすごい設定が明らかになるとか、スタート時点ではそういう妄想もしていました。 でもどちらかというと、あくまで高難度ダンジョンの突破に重点が置かれたつくりになっています。 当時の私には、ゲームブックといえば400パラグラフ、という根拠不明の刷り込みがありました。 なので、100パラグラフでもこれだけ濃密な内容を詰め込める、ということに感動すら覚えました。 同じ作者が次に「見捨てられた財宝」という作品も書いておりまして、そちらはこの作品と対極でした。 冒険の達成値ごとにエンディングが分岐する形になっており、1回の冒険は短めに終わるようになっています。 この作品の次にプレイしたので、逆にもの足りなさを感じてしまったのを覚えています。 しかし、今にして思えば、それは作品コンセプトそのものの違いなわけで。 「見捨てられた財宝」の方も、クリアランクを導入するという面白い試みがされていて、ものすごい意欲作でした。 こうして「断頭台の迷宮」は、いつまでたっても私の中のゲームブックランキングで、常に上位をキープする作品になりました。 「断頭台の迷宮」リプレイは、FT新聞2013年版から2014年版で読むことができます。 FT新聞2013年版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B354RFVS FT新聞2014年版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B6BKZDNS 連載期間 2013年8月から2014年1月(全20回) 自分のリプレイの思い出語りをするだけのつもりだったのですが、周辺の記事が気になり、いろいろ目を通してしまいました。 こうしてみると、創刊当時の熱意すごい。 2013年の創刊当時は、清水龍之介さんの「剣闘士ユーグ」ですね。創刊と同時に配信するコンテンツでした。 これもメモ程度のリプレイは書きましたが、もっとちゃんと書きたい気持ちがあります。 丹野佑さんの「戦場の風」も2013年の終わりには登場しています。ちょうど「断頭台の迷宮」リプレイを連載していた頃ですね。 ほかにも、配信のみのゲームブック作品が多数登場しています。 最初の頃のFT新聞は、毎週日曜日にはミニゲームブックをお届けするという、今思えばそうとう無茶な挑戦をしていました。 そんな短距離走のような全力疾走な配信だったのに、こんなに長く続くなんて、つくづくどうかしていますね。 そして、FT新聞は、挑戦的な作品や短編を公開する場として機能していたんだなと思います。 挑戦作を、成功失敗を問わず世に出すことができる稀有な場所なのだと思います。 「断頭台の迷宮」リプレイは、私のmixiでも読むことができます。 ゲームブックリプレイ【断頭台の迷宮】目次 https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=7076225&id=1941236433 ■作品情報 作品名:断頭台の迷宮 著者:清水龍之介 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら 100パラグラフゲームブック集2 https://booth.pm/ja/items/2483162 ●おわりに さて、いかがでしたでしょうか。第1回の時には次は「断頭台の迷宮」と「大魔導城のワナ」についてお話すると言っていましたがすまん。ありゃウソでした。 「大魔導城のワナ」リプレイについては次回まわしにさせていただこうと思います。 不定期なので次はいつになるかはわかりませんが、たまに金曜記事を埋めに来ますので、よろしくお願いします。 みなさま方も、軽い気持ちで金曜日に記事を置いてくださいますと、私がうれしい気持ちになります。みんなで埋めよう金曜日。 では次は水曜リプレイでお会いしましょう。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月14日木曜日
『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は問いかける——人間とは何か、と。 FT新聞 No.4859
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は問いかける——人間とは何か、と。 岡和田晃 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 2026年5月23日、ゲームマーケット2026春での先行発売といたしまして、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』日本語版がFT書房のブースでお目見えします。この作品に関しては、すでに杉本=ヨハネさんが「☆モンスター!モンスター!TRPG 新刊のお知らせ☆」(「FT新聞」No.4549)で紹介をしておられますが、屋上屋を架すことになるのも恐れず、私なりに、その読みどころを掘り下げてみたいと思います。 そもそも『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』とは何か? これは世界で2番目に古いTRPGと互換性のあるTRPGルールブックです。さらには、『モンスター!モンスター!TRPG』のサプリメントでもあります。 商業的なRPGの歴史は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に始まる、というのが通説ですが、D&Dはあくまでも「中世ウォーゲーム」と銘打っていました。自覚的にRPGを名乗ったのは『モンスター!モンスター!』初版(1976)が最初だと言いますから、それくらい記念すべき作品であるわけです。 ところが『モンスター!モンスター!』は、その名の通り、モンスターをプレイして人間たちへ復讐を仕掛ける、というのが基本コンセプト。そうした「逆転の発想」からスタートし、現行、ズィムララ世界で展開されている『モンスター!モンスター!TRPG』——『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー』二分冊をご参照あれ——においては、人間中心主義が完全に転回された世界が再構築されています。 いわば、その文脈で人間をはじめとするおなじみのヒューマノイドたちは、どういう位置づけなのかを解説するというのが、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』なのです。歴史的には、著者のケン・セント・アンドレは『トンネルズ&トロールズ』のデザイナーとして知られますが、T&Tの権利は現状、ケンのもとにはなく、Rebellion Unplugged社が『Tunnels & Trolls : A New Age』を開発中(現在、β版まで出来ています)。その状況で、T&T的な冒険を行うための裏ワザを——という安直なコンセプトなのではないかと、私としても当初は疑う部分がないではありませんでした。 けれども蓋を開けたら、そうではなく、新しい世界観のなかに、どう人間たちを再定位させるのか、というSF的というほかない問題意識による作品だということが、よくわかった次第なのです。 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は、「ケン、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』を大いに語る」と題したおもしろコラムより幕を開けます。このコラムにおいては、〈小さき者ら〉が、モンスターだらけの世界で、どう生き延びるべきかが滔々と語られているのです。〈小さき者ら〉と言われれば、それこそホビットやハーフリングのような存在を意識してしまいますが、ここでは、モンスターから見た人間、エルフ、ドワーフらが、まとめて〈小さき者ら〉になっているのですね。 魑魅魍魎が蠢く、弱肉強食のズィムララ世界においては、〈小さき者ら〉は、頭を使い、戦略を練らねば、生存すらおぼつきません。様々な戦略が紹介されるなか、とりわけ大事になってくるのが、奇策(スタント)を駆使すること。 本コラムでは、『モンスター!モンスター!TRPG』第2.7版基本ルールブック(未訳)に出てくる奇策のルールを改めて紹介し、導入可能にすることで、スタンドアローンなヴァリアントとしての価値をもたらすことに成功しています。 そして本作においては、『モンスター!モンスター!TRPG』の根幹に関わる、大きな明確化がなされています。それは、原則的に「種族(race)」という言葉を使わない、ということです。raceという言葉は、それこそ人種差別(racism)に直結するから……というのが、その理由です。 自然科学的に言えば、それこそ人種という概念は架構されたフィクションにすぎません。肌の色や骨格といった、見た目にわかりやすい違いについては、人間の遺伝子の0.1%にも満たない差異にすぎないというのに、そこをクローズアップすることで「マイノリティを殺すこと」を正当化するというのが、昨今、社会問題になっているレイシズムの話ですが、ゲームタームのうえとはいえ、それを反復するのはやめてみよう、というスタンスなのですね。 かわりにケンが用いるのが、species(種)という概念です。例えば、ヴィーガニズム(菜食主義)のようなアニマル・ライツ(動物の権利)を守るための運動は、種差別に抗う営み、などという日本語で紹介されたりするわけです。 余談ですが、私の暮らすアルゼンチンでは新鮮な野菜や果物があちこちで売られているため、ヴィーガンとして生活するのは、そう難しいことでもありません。 他方で日本においては、ヴィーガンとしての生活を徹底させようとするのは、なかなか骨です。私も試みようとしたことはありますが、すぐに挫折してしまいました。 日本ではコンビニやスーパーで売っているお弁当やお惣菜の多くに、肉や卵が入っています。そうした肉や卵が、充分に動物福祉(アニマル・ウェルフェア)の保全された状態で生産されているのか、という点については、議論の分かれるところにもなっています。 ゆえに、ケンの「種」に関する問題意識は、大げさではなく、日本社会の現状へ一石を投じるものにもなりえているのですが……。ただ、日本語のゲーム上で「種族」を「種」に置き換えたからといって、その差分はわかりづらいですね。 そこで『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』では、「種族」の代わりに「モンスター・タイプ」という訳語を用い、クリーチャーごとの差異を表現することにしました。人間も、エルフも、ドワーフもモンスターの一種であり、個々の違いはタイプの違いにすぎない、と。こう表現すると、著者の意図するところを、日本の読者へより正確に伝えることができるのではないかと考えた次第です。何より、どことなくユーモラスな響きがあり、「お説教臭さ」も感じません。 多くのファンタジーRPGでは、人間という存在がどんなものかということは、当たり前のことすぎて(あるいは大きな問題にすぎるのか)、紹介が簡単に飛ばされるのが常です……それでも、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第3.5版のサプリメント『宿命の種族』(ホビージャパン、日本語版2006年)という専門のサプリメントはありましたが。 ズィムララ世界の人間は、私たちのお馴染みの人間であることもできれば、もっと別なタイプにすることもできます。この点については、すでに『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』でサポートされているとおりです。 では『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』においては、人間というのはどういう具合に説明されるのかというと——職業(プロフェッション)、技能(スキル)、特殊能力(アビリティ)の3つを介して決まります。 ケンのデザインした他のシステムだと、『トンネルズ&トロールズ』第5版において、他のRPGにおける「キャラクター・クラス」に相当するものには「キャラクター・タイプ」という訳語が充てられていました。 私は、どうしてそうなのか、常々不思議に思っていたのですが、これもまた意図的だと、このたびわかりました。『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』では、「クラス」という言葉が使われず、「プロフェッション」が職業だと明記されていたからです。 察するに、どうしても「階級」や「階層」を想起させるからでしょう。ケンのおためごかしではない平等主義が、まさしく徹底されています。 そして面白いのは、この職業(プロフェッション)が、それで生計を立てておらずともかまわない、とさらりと書かれていること。多くのファンタジーRPGは——ファンタジー社会なのに——資本主義の論理とは無縁でいられないばかりか、かえってそうした要素が強調されていたりするのですが、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』では、半ばそれが相対化されているわけです。 ただし、社会に存在する格差の問題に、本作は目をつぶっているわけではありません。どの職業につくかは一概に等しいチャンスではなく、わざわざ釣鐘状の確率曲線を描く2d6で決まります。2d6の期待値は7ですが、7にあるのは農民。いちばん出づらい2と12は、それぞれ錬金術師と探検家、ということになっています。それくらい、これらの職業は稀少なものとして位置づけられているわけですね。 むろん、GMが認めれば、任意に職業を選んでもかまわないとあるわけですが、つまり、ケンがイメージする世界観では、社会は本質的には平等であるべきだが、実際にはそうなってはいない、という矛盾をも表現しえているわけです。 技能(スキル)は、なんと、この職業に必ずしも紐付けなくてもよい、というものになっています。クラス・システムを取るRPGでは、多くの場合、職業ごとに推奨・制限されている技能を取るものですが、本作においてはゲーム的な軽さが優先されているのでしょう。2d6を振って技能を取得すると、その技能のレベル(1レベルから開始)だけ、セービング・ロールに数値的なボーナスが入るというのですから、実に単純明快です。 一方、特殊能力(アビリティ)は、各キャラクターを他から際立たせる、それこそスペシャルな能力であり、2d6で決定されますが、関連能力値の10の位に応じて、自動的にレベルアップしていきます。その記法は、意図してファジーなものになっていて、セービング・ロールの柔軟性、奇策(タレント)の応用性に、うまく見合うものが目指されているようです。 実際、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』でサポートされている——人間に限らず——各種族の職業、技能、特殊能力を概観していくと、ケン自身が携わった『ストームブリンガー』はもとより、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、『ウォーハンマーRPG』、『シャドウラン』などを彷彿させるものが、ちらほらあります。それらへのアンサーも兼ねていると思えば、シンプルなようで、あなどれない。 初心者でもスタンドアローンでプレイできながら、深読みしていけば、いっそう楽しくなってくる。それが『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』なのではないかと思います。 ■書誌情報 TRPGルールブック&『モンスター!モンスター!TRPG』用サプリメント 『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』日本語版 著 ケン・セント・アンドレ 訳 岡和田晃 絵 スティーブ・クロンプトン 印刷版 2,200円 ゲームマーケット2026春で先行発売予定 通販は以下(6月発送予定) https://ftbooks.booth.pm/items/8232648 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! 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2026年5月13日水曜日
第4回【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4858
第4回【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ ※ここから先はゲームブック【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。 ぜろです。 「クトゥルフ深話」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。 主人公グレイハッカー、キサラギは、世界各地で起きる天変地異に対応するため、各地の友人知人と連絡を取り合い、対処しています。 徐々に世界各地の異変は進行しつつあり、同時に何に使えるかはわからないけれど、邪神に対抗できそうな書物や道具も集まりつつあります。 とはいえ、すでにアメリカ以外の災害レベルは2になっています。あと1レベル上がればその都市は滅んでしまいます。 いったいどうしたらよいのでしょうか。 【災害レベル】 日本:2 アメリカ:1 モンゴル:2 イースター島:2 【持ち物】 ・書物「黄衣の王」 ・旧き印 ・覗きガラス ●アタック01-9 レムリア大陸と世界の滅亡 6日目。 世界の異常の進行に合わせて、アイテムを入手していっている。 となれば、次に何かを手に入れられるとしたら、アメリカだろう。 私はアメリカのマーカスに連絡を取ってみた。 アメリカは災害レベルが1だったが、この連絡で2に上がる。 そして2に上がったことで収穫があった。 アーカムシティから帰還したマーカスは書物「ネクロノミコン」を入手してきていたのだ。 この本のおかげで、私は様々なことを知ることができた。 これまで漠然と動いてきたことの裏付けのようなものだ。 東京、アメリカ、モンゴル、イースター島の4か所を頂点としたひし形を描くことで、太古に存在したレムリア大陸を蘇らせることができるという。 今この4地点で起きている異変は、レムリア大陸の復活に向けて収束していくということか。 アメリカ、とか国土が広大すぎるんだが、まあ、そこは今突っ込むべきところではないだろう。 データを送ってもらった。 書物「ネクロノミコン」を手に入れた。 午後だ。 まだ何も得ていないのは、イースター島だ。 私はイースター島のアブドルに連絡を取った。 アブドルは、海上の調査船にいた。 なんでも、海底ですごい発見があったのだと。 発見したものは2つ。 生物の化石らしきものと、船とともに沈んだと思われる書物類だという。 どちらも一緒にサルベージはできないので、どちらを優先した方が良いだろうかと、助言を求められた。 書物類などは、通常なら海中でダメになっていそうなものだ。 しかし、魔導書の類ならば、それでもそのまま残っている可能性がある。 あと、生物の化石はきっと危険なので引き上げない方がいいやつだ。 私はそう伝える。 アブドルは、私の助言に従い、書物の方をサルベージした。 そこで発見されたのは、なんと書物「ルルイエ異本」だった! クトゥルフ関連の本の本命みたいなやつではないか。 これもデータで送ってもらい、私は書物「ルルイエ異本」を入手した。 これってもしかして、かなり順調に対策アイテムが集まっているのではないだろうか。 こうして、6日目は終わった。 さて、6日目の世界情勢の変化を確認しよう。 ここでは、世界の災害レベルが、現実世界とリンクして上がるかどうかの判定をすることとなる。 まず日本。現実世界の時刻が丑三つ時(午前2時頃)であれば、災害レベルが1上がるという。 これは上がらずに済んだ。 次はモンゴル。空を見上げても太陽が見えない時間帯や天候なら、災害レベルが1上がるという。 モンゴルの災害レベルは上がってしまった。これで3になった。モンゴル……滅んだか。 続いてアメリカ。私が昨晩夢を見たなら、災害レベルが1上がるという。 夢は見ていないか覚えていない。セーフだ。 最後にイースター島だ。ここは、現実世界で雨が降っていれば、災害レベルが上がるという。 雨は降っていない。災害レベルは上がらなかった。 これにより、モンゴルだけは滅びを迎えてしまったことになる。 混乱がどういう形で滅びに繋がったのか。そしてそれが世界に何をもたらすのか、それを確認するため、次のパラグラフへ進む。 そこには、モンゴルの混乱を皮切りに、世界滅亡へと向かっていく人類の姿があった。 世界の混乱の中、恐るべき兵器が使用され……そして、モンゴルだけでなく、世界が滅びを迎えてしまったのだった。 なんと、ここでゲームオーバーだ。 いろいろアイテムを入手し、これからというところで! ●感想 いつもであれば、クリアするまでアタックを重ねるところです。 しかし今回は、ここで区切りにさせていただこうと思います。 感想では、ここまでの感想と、この先をチラ見してしまった部分を含めての感想を書かせていただきます。 この作品は、クトゥルフ神話に詳しい人の方がより楽しめる作品なのではないか、と思います。 クトゥルフ神話で超メジャーな存在たちが、ひしめきあっている作品です。 その存在の影が少し出てきただけで、よく訓練されたクトゥルフ信者たちはきっと、「おお」「あれが来たか」とうなることでしょう。 作品の構成としては、大きく三部構成になっています。 闇に呑まれた主人公が脱出し、自分を取り戻すまでが第一部。 主人公が世界各地の友人知人と連絡を取り合い、世界の異変を確認しながら対抗するアイテムを集めていく第二部。 そしてその時が来て、主人公が仲間と協力し、世界各地の邪神に対抗する第三部。 「その時」は、7日目に設定されていました。 つまり、あと1日を無事に乗り切れば、邪神たちとの対決の場面へと進めたことになります。 登場する存在は、ダゴン、アザトース、クトゥルフ、ヨグ=ソトース。 あと、トラペゾヘドロンに関連して、ナイアーラトテップも。 クトゥルフ世界の重鎮がそろいもそろっております。 それらの存在に対し、これまで手に入れて来たアイテムを、誰に対して何を使うのかを適切に選択し、対応し、切り抜けていく。 これがこの作品の醍醐味の部分になります。 いやこれどう考えても短編でやる内容じゃないでしょ。 こんなクトゥルフオールスターに人類が対抗する物語とか。 オールライダーものの映画とか、スーパー戦隊199ヒーロー大決戦とか、そういうノリですよこれもう。 最初の、闇から生還するまでの部分は、いかにもゲームブック的なギミックが仕掛けられておりました。 キーワードでパラグラフジャンプ。ジャンプするべきキーワードを、ワード入手のパラグラフにも仕掛けてあるというのが、いいひっかけになっていました。 第二部の、世界情勢とアイテム集めの段は、ジョンズシステム。 同じパラグラフから行動を選び、1行動につき時間が経過していくシステム。 そのため、行動できる総数は決まってきます。 また、行き先によっては災害レベルによる段階イベントにもなっており、物語の進展によって展開が変化するようにできています。 この部分のシステムまわりは、感動を覚えるレベルでよくできています。 私はゲームブックは作るのではなく読む方ですが、作るのならば、このシステムを生かした何かを作りたい、と強く思いました。 たとえば、ローグライクハーフにこの段階イベントを組み込んだりしたら、すごいものができそうな……。 ただ、短編の中で巨大な存在と対決していくというストーリーのためか、第二部以降全般にわたって、ダイジェスト感を強く感じてしまったのは残念なところではありました。 様々な超重要アイテムが短時間に次から次へと発見、発掘されていきます。 スピーディでさくさくと進んでいきますが、逆にクトゥルフでそれでいいのかと。 こう、その、なんですね。「クトゥルフってのはもっと殺伐としているべきなんだよ」みたいな講釈を垂れたくなってしまう感じといいますか。 さくさく感とクトゥルフの相性って言いますか。 せっかくスピーディに伝説級のアイテムを登場するカタルシスを与えてくれているのに、失礼極まりないですね私。 あと、これもダイジェスト感の弊害かもしれませんが、アイテムの入手方法が一部、なんというか……雑? これは、私が最初に入手したのが書物「黄衣の王」だったせいかもしれません。 何も情報のない中、なんとなく福井に行ったら、なんとなく九頭竜川流域を進み、なんとなく劇場跡に行ったら、なんとなく見つけました。 見つけた私がポカーンとしてしまいました。 他のアイテムは、ふさわしい雰囲気や場所で手に入るものもありますが……。でも展開の唐突さは否めません。 プレイヤー目線からなら、「ネクロノミコン」が手に入った。やった! って感じはわかるんですけど、作中の登場人物たちの立場で考えると、それらが世界の異変とどう繋がってくるのかの情報に乏しい。 論理的に根拠立てなくても、主人公が直感力に優れていて、そこから何かを感じ取るとか、もう少し描写が欲しかったと思います。 現実世界とリンクさせるのは、これまた独特なギミックを入れてきたなと思いました。 これは、読んだ最初はちょっと否定的だったんですよ。この物語を現実世界の自分の行動とリンクさせる意味ってそもそも何?なんて思ってました。 でも違うんですよ。 この作品の主人公はグレイハッカー。 今私がこのリプレイを書いているパソコンを用いて世界中と繋がり、情報を得て、対処していきます。 たまには車に乗って自ら移動し現場に行きます。 これってつまり、今の私そのものじゃないですか。 机に向かってネットをしている私。そんな私の存在そのものを、この作品の中に取り込んでしまうということ。 こうして、作者が現実世界の行動をリンクさせた意図が理解できました。 でも、そういう理解の仕方をしたら、次にひとつだけ不満が出てきて。 現実世界とのリンクは基本的に、私の普段の生活習慣がマイナスに作用して、災害レベルを上げるペナルティとして発現します。 でも、作中でグレイハッカーは、各地と連絡を取り合い、異変に対処しているんです。 現実世界とリンクするのだったら、私もそのグレイハッカーに協力する行動を取りたい。 私が現実世界で起こした何らかの行動が、作中での災害レベルを1下げるとか、本当は進行すべきところを止めるとか、そういう要素は入れてほしかったところです。 やはり、これだけのスーパー邪神大戦は、短編に収まるような器じゃありません。 もちろんそうは言っても超大作にする必要はないですし、パラグラフ数をいたずらに増やせばいいというものでもありません。 でも、読んでいて、もったいないと思う部分が多かったのも事実です。題材がよすぎるだけに、期待値も高まってしまったのかも。 そんなわけで、良いところや工夫が凝らされているところ、面白いギミックがてんこ盛りの作品でありながら、まだまだ上を目指せる作品でもありました。 あ、ちなみに再アタックをしないのは、ですね。 本作を有利に展開するためには、現実世界での私が、 「誰かがいるところでこの作品を読み」 「丑三つ時ではなく」 「太陽が見える時間で」 「昨晩夢を見ておらず」 「雨が降っておらず」 「体調不良ではなく」 「8時間以上睡眠を取っている」 ことが必要だとわかったからです。 全部完全にこなさなきゃいけないわけではないみたいですが。 それにそんなの、別にズルしちゃえばいいんですけどね。 でもでも、1プレイだけとはいえ、楽しんだことは間違いありません。 著者の山田賢治さんは、いつもこれでもかというほどにアイディアを惜しみなく投入してくるので、また、他の作品も期待してプレイしたいと思います。 それでは、以上で「クトゥルフ深話」のリプレイを終わります。 また別作品のリプレイでお会いしましょう。 ■作品情報 作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「クトゥルフ深話」 著者:山田 賢治 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら ・書籍版(現在、通販品切。委託店舗在庫のみ) https://booth.pm/ja/items/2484141 ・電子書籍版 https://www.amazon.co.jp/dp/B09Z22RJQY ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月12日火曜日
Re:インセンティブ(後)@20代からのゲームブック123 FT新聞 No.4857
FT新聞編集長の水波流です。 本日は、Reシリーズ・丹野佑氏による『20代からのゲームブック』 元は丹野氏が20代のとき、約3年に渡って書き綴られた名コラムの再録です。 (2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412) (編註:文中のコメントは全て当時のものとなっております) ☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆ おはようございます。丹野です。 これを読んでいるあなたは夏バテしていないでしょうか。丹野はできるだけ寝る時間をとって、一応いまのところは元気にやっています。 8月に配信予定のクトゥルフゲームブックを準備しています。調べれば調べるほど、クトゥルフ神話作品群の「なんでもあり」ぶりに驚かされています。 各執筆人がそれぞれどんな球を投げてくるか、こうご期待です。 ■インセンティブの話 前回は、ゲームブックにおいてはキャラクターの動機とは別に、読者に対するインセンティブが必要だという話をしました。 この作者の作品なら面白くなるはずだ、という信頼があれば問題ないですが、読者にインセンティブを与える工夫が必要です。 基本的には、主人公に強い動機を与えることが読者のインセンティブにもつながります。そうはいっても、たとえば主人公のキャラクターが気に入らないとか、あまり最初から話を進められないとか、そういった事情もあると思います。というわけで、読者へインセンティブを与える方法を具体的に考えていきましょう。 ■約束をする ストーリーの上で読者を引き付けるためには、大きなフックになる要素が必要です。 ゲームなので目標を示すのが一般的ですが、ほかにも早めに大きな謎を突きつける、行先にこんな場所があるという噂を聞かせる、など、この先の展開を示す要素を入れ込みます。 こうすることで、この先の展開について一種の約束をすることができます。約束をすることで、読者に「じゃあ、それが実際に描かれるまではやってみようかな」と、小さな目標に向けてのインセンティブが生まれます。 あるいは、いっそ何が起きるのか教えてしまう手もあります。予言というやつですね。「おぬしはこれこれこういう運命なのだ」と先に言ってしまうことで、この先の展開をはっきり約束することになります。 ゲームブックは主人公のキャラクターでひきつけるのが難しいので、「約束」を積極的に行うことで、読者にインセンティブを与えることが重要です。 ■ゲームの約束 ゲームブックはゲームですから、約束するのはシナリオだけとは限りません。 この作品ではこういう風に遊びますよ、というルール説明をしておくことが一種の約束となります。 今月まで連載していた『VRMMOからの脱出』では、マクロを使った半自動ゲームブックを楽しんでもらえるよう、ストーリーが大きく動くよりも前にルール説明を置きました。 このように、特徴的なルールを使っているなら、こちらのほうがより効果的かもしれません。 ■ゲームブックならではの また、ゲームブックなら必然的に発生する「約束」もあります。 あなたも経験があることだと思いますが、パラグラフを移動するときにちらっと見える文章やイラストが、一種のネタバレ、言い換えれば「約束」として機能しています。 知らない名前の登場人物がちらっと見えたり、奇妙なイラストが目に留まったりして、「これ、どういう状況だろう?」と感じたりすること、あるのではないでしょうか。 ほかの媒体ではなかなか発生しない状況ですから、あえて目につきやすい場所に、読者の注目しやすいパラグラフを置いておく……なんてテクニックも、あるかもしれませんね。 それでは、また来週。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月11日月曜日
「アランツァへのいざない」第3回 アランツァ世界の紙事情 FT新聞 No.4856
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆ 実は半年ほど前に左手首を傷めてしまったので、今はクライミングは「ゆっくりと、長く」やることを心がけています。 強度を上げるのではなく、それほど高くない強度で確実な動きを続けること。 全力を出せない残念さはありますが、それはそれで楽しくもあります。 治ったときにはひとつ上の段階へと進んでいることを目指して、やっていきます。 さて、本日のお話は「紙と識字率」についてです。 ◆アランツァ世界には紙はあるのか? アランツァ世界には大きく分けて2種類の紙が存在します。 ひとつは「獣皮紙」で、もうひとつは「植物紙」です。 ◆獣皮紙の話。 「獣皮紙って何だろう? 羊皮紙なら聞いたことがあるんだけど……。」 そう思われたあなた、ご安心ください。 獣皮紙とは造語です。 といっても、私が初めて造った言葉というわけではありません。 そのあたりから、説明してまいります☆ ◆羊皮紙とは? 羊皮紙(parchment、パーチメント)とはそもそも、獣の皮を加工して製作された紙です。 細かい説明は省きますが、山羊や仔牛の皮を使うこともあります。山羊の場合にはペルガモン、仔牛の場合にはヴェラムと、異なる名称で特に区別することもあります。 そうなんです。 羊皮紙は、実は羊の皮だけとは限らないのです。 獣の皮を「極限まで薄く伸ばしたもの」が羊皮紙であるとするのが、一般的な定義のようです。 ◆アランツァ世界への「輸入」を考える。 ヨーロッパ世界では羊が多く飼われていたので、この「紙」に羊皮紙という名称がついたのは納得しやすいものです。 しかし、アランツァ世界においては、羊は(十分に存在する家畜であるものの)素材としてメインとするほどに多くはありません。 アランツァは気候が多様です、雪の地域もあれば砂漠もある。 さまざまな動物が紙の素材になる可能性がある。 だから、羊皮紙というよりも「獣皮紙」と呼ぶほうが、より適しているわけです☆ 仔オストリッチや仔丸々獣、あるいは田畑を荒らす鹿や、まだ登場していない害獣が素材になっていることもあり、豊富なバリエーションがあります。 ◆「植物紙」。 アランツァ世界には植物製の紙もあります。 しかし、これはいわゆる、現代の技術を使用したようなものではありません。 かといって、パピルスのような古い技術を使ったものでもありません。 寒い地方の白樺の樹皮をはがして、そのまま紙として利用するというものです☆ この紙は基本的に、片面だけが使えます。 もう片方の面は、ザラザラした木の表皮そのもので、ものを書くには適しません。 この「白樺紙」(私がつけた名称です)は、サン・サレンやフーウェイといった大陸北部(ともに豪雪地帯)において有名です。 太古の森のどこかにはトレント(樹人)たちが管理する白樺の森があり、そこから採取されて、大陸全土へと広がっていきます。 これはかなり大規模なものですが、正確な森の範囲は一部の、最も歳とったトレントたちしか把握していません。 ◆この「紙」が何を意味するのか。 トレントは(貨幣経済を理解してはいますが)、森の外からお金を獲得するためにこの「樹皮園」を営んでいるわけではありません。 これは、直接取引の手段として使われます。 つまりは物々交換です。 トレントたちはこの紙を他の種族に売っていくことで、生活必需品を入手します。 彼らにとってはこの白い紙が、ちょうど「お金」の役割を果たしているといえます。 確実に他のものと交換できるものは、お金と同じように扱われることがあります。 かつての日本において「米」がお金の役割を果たしていたのと同じですね。 まとめると、トレントの世界では「白紙」がお金として機能している、というわけです。 ◆白樺たちのその後。 彼らは白樺の樹皮を「苦しみを与えない範囲」で収穫していきますが、一度か二度ほど皮を得ると、その後は状態のいい皮が得られません。 トレントたちはそうした(経済的な視点から見れば「用済み」の)白樺のお世話を、ずっと続けます。 彼らにとって植物は友であって、人間と家畜のような関係性とは少し異なります。 人間であれば、樹皮を得た後の白樺の樹を、建築物等に活用することでしょう。 しかし、トレントたちはそうしないのです。 ◆より高価な紙。 トレントたちが住まう太古の森には、もうひとつ、もっと高価な皮があります。 それは、彼ら自身の皮を使った「トレント皮紙(樹人皮紙)」です。 こちらは非常に頑丈で、とても重要な(あるいは、神聖な)事柄を記すために使われます。 もっとも一般的な使い方は、魔法のスクロール(巻物)の素材です。 アランツァの世界では「生命を持つもの」は魔力を持っているため、魔法を使うトレントから得た生皮(あるいは、亡くなったばかりのトレントの皮)には魔力が宿っています。 この魔力は時間の経過とともに、(抜けた歯から水分がゆっくりと抜けていくように)少しずつ「死んで」いきます。 ◆識字率は? アランツァの主たる大陸であるラドリドは、紙は比較的手に入りやすい土地といえます。 いっぽう、それを読む側はどうでしょうか? 「アランツァへのいざない」第1回でご説明したとおり、冒険者は「最低限の読み書きと、商人と取引できる程度の計算」能力を身につけています。 言い換えると、冒険者の識字率は100%です。 もし、冒険者の識字率が100%でなかったとすると……冒険の途中で文字情報を得るたびに、それをちゃんと読めるかどうかの(【魔術ロール】のような)判定が必要になってしまいます。 それは、ゲームの本筋を面白くしてはくれない気がしました。 ですので、冒険者の識字率は100%です。 ◆まとめ。 アランツァの世界には「獣皮紙」と「白樺紙」が普及しており、特に魔法の巻物には「トレント紙」がよく使われます。 アランツァ世界の人々は文字を読めたり読めなかったりしますが、冒険者に関しては100%の識字率を誇ります(断言)。 「アランツァへのいざない」第3回でした。 それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。