第4回【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ ※ここから先はゲームブック【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。 ぜろです。 「クトゥルフ深話」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。 主人公グレイハッカー、キサラギは、世界各地で起きる天変地異に対応するため、各地の友人知人と連絡を取り合い、対処しています。 徐々に世界各地の異変は進行しつつあり、同時に何に使えるかはわからないけれど、邪神に対抗できそうな書物や道具も集まりつつあります。 とはいえ、すでにアメリカ以外の災害レベルは2になっています。あと1レベル上がればその都市は滅んでしまいます。 いったいどうしたらよいのでしょうか。 【災害レベル】 日本:2 アメリカ:1 モンゴル:2 イースター島:2 【持ち物】 ・書物「黄衣の王」 ・旧き印 ・覗きガラス ●アタック01-9 レムリア大陸と世界の滅亡 6日目。 世界の異常の進行に合わせて、アイテムを入手していっている。 となれば、次に何かを手に入れられるとしたら、アメリカだろう。 私はアメリカのマーカスに連絡を取ってみた。 アメリカは災害レベルが1だったが、この連絡で2に上がる。 そして2に上がったことで収穫があった。 アーカムシティから帰還したマーカスは書物「ネクロノミコン」を入手してきていたのだ。 この本のおかげで、私は様々なことを知ることができた。 これまで漠然と動いてきたことの裏付けのようなものだ。 東京、アメリカ、モンゴル、イースター島の4か所を頂点としたひし形を描くことで、太古に存在したレムリア大陸を蘇らせることができるという。 今この4地点で起きている異変は、レムリア大陸の復活に向けて収束していくということか。 アメリカ、とか国土が広大すぎるんだが、まあ、そこは今突っ込むべきところではないだろう。 データを送ってもらった。 書物「ネクロノミコン」を手に入れた。 午後だ。 まだ何も得ていないのは、イースター島だ。 私はイースター島のアブドルに連絡を取った。 アブドルは、海上の調査船にいた。 なんでも、海底ですごい発見があったのだと。 発見したものは2つ。 生物の化石らしきものと、船とともに沈んだと思われる書物類だという。 どちらも一緒にサルベージはできないので、どちらを優先した方が良いだろうかと、助言を求められた。 書物類などは、通常なら海中でダメになっていそうなものだ。 しかし、魔導書の類ならば、それでもそのまま残っている可能性がある。 あと、生物の化石はきっと危険なので引き上げない方がいいやつだ。 私はそう伝える。 アブドルは、私の助言に従い、書物の方をサルベージした。 そこで発見されたのは、なんと書物「ルルイエ異本」だった! クトゥルフ関連の本の本命みたいなやつではないか。 これもデータで送ってもらい、私は書物「ルルイエ異本」を入手した。 これってもしかして、かなり順調に対策アイテムが集まっているのではないだろうか。 こうして、6日目は終わった。 さて、6日目の世界情勢の変化を確認しよう。 ここでは、世界の災害レベルが、現実世界とリンクして上がるかどうかの判定をすることとなる。 まず日本。現実世界の時刻が丑三つ時(午前2時頃)であれば、災害レベルが1上がるという。 これは上がらずに済んだ。 次はモンゴル。空を見上げても太陽が見えない時間帯や天候なら、災害レベルが1上がるという。 モンゴルの災害レベルは上がってしまった。これで3になった。モンゴル……滅んだか。 続いてアメリカ。私が昨晩夢を見たなら、災害レベルが1上がるという。 夢は見ていないか覚えていない。セーフだ。 最後にイースター島だ。ここは、現実世界で雨が降っていれば、災害レベルが上がるという。 雨は降っていない。災害レベルは上がらなかった。 これにより、モンゴルだけは滅びを迎えてしまったことになる。 混乱がどういう形で滅びに繋がったのか。そしてそれが世界に何をもたらすのか、それを確認するため、次のパラグラフへ進む。 そこには、モンゴルの混乱を皮切りに、世界滅亡へと向かっていく人類の姿があった。 世界の混乱の中、恐るべき兵器が使用され……そして、モンゴルだけでなく、世界が滅びを迎えてしまったのだった。 なんと、ここでゲームオーバーだ。 いろいろアイテムを入手し、これからというところで! ●感想 いつもであれば、クリアするまでアタックを重ねるところです。 しかし今回は、ここで区切りにさせていただこうと思います。 感想では、ここまでの感想と、この先をチラ見してしまった部分を含めての感想を書かせていただきます。 この作品は、クトゥルフ神話に詳しい人の方がより楽しめる作品なのではないか、と思います。 クトゥルフ神話で超メジャーな存在たちが、ひしめきあっている作品です。 その存在の影が少し出てきただけで、よく訓練されたクトゥルフ信者たちはきっと、「おお」「あれが来たか」とうなることでしょう。 作品の構成としては、大きく三部構成になっています。 闇に呑まれた主人公が脱出し、自分を取り戻すまでが第一部。 主人公が世界各地の友人知人と連絡を取り合い、世界の異変を確認しながら対抗するアイテムを集めていく第二部。 そしてその時が来て、主人公が仲間と協力し、世界各地の邪神に対抗する第三部。 「その時」は、7日目に設定されていました。 つまり、あと1日を無事に乗り切れば、邪神たちとの対決の場面へと進めたことになります。 登場する存在は、ダゴン、アザトース、クトゥルフ、ヨグ=ソトース。 あと、トラペゾヘドロンに関連して、ナイアーラトテップも。 クトゥルフ世界の重鎮がそろいもそろっております。 それらの存在に対し、これまで手に入れて来たアイテムを、誰に対して何を使うのかを適切に選択し、対応し、切り抜けていく。 これがこの作品の醍醐味の部分になります。 いやこれどう考えても短編でやる内容じゃないでしょ。 こんなクトゥルフオールスターに人類が対抗する物語とか。 オールライダーものの映画とか、スーパー戦隊199ヒーロー大決戦とか、そういうノリですよこれもう。 最初の、闇から生還するまでの部分は、いかにもゲームブック的なギミックが仕掛けられておりました。 キーワードでパラグラフジャンプ。ジャンプするべきキーワードを、ワード入手のパラグラフにも仕掛けてあるというのが、いいひっかけになっていました。 第二部の、世界情勢とアイテム集めの段は、ジョンズシステム。 同じパラグラフから行動を選び、1行動につき時間が経過していくシステム。 そのため、行動できる総数は決まってきます。 また、行き先によっては災害レベルによる段階イベントにもなっており、物語の進展によって展開が変化するようにできています。 この部分のシステムまわりは、感動を覚えるレベルでよくできています。 私はゲームブックは作るのではなく読む方ですが、作るのならば、このシステムを生かした何かを作りたい、と強く思いました。 たとえば、ローグライクハーフにこの段階イベントを組み込んだりしたら、すごいものができそうな……。 ただ、短編の中で巨大な存在と対決していくというストーリーのためか、第二部以降全般にわたって、ダイジェスト感を強く感じてしまったのは残念なところではありました。 様々な超重要アイテムが短時間に次から次へと発見、発掘されていきます。 スピーディでさくさくと進んでいきますが、逆にクトゥルフでそれでいいのかと。 こう、その、なんですね。「クトゥルフってのはもっと殺伐としているべきなんだよ」みたいな講釈を垂れたくなってしまう感じといいますか。 さくさく感とクトゥルフの相性って言いますか。 せっかくスピーディに伝説級のアイテムを登場するカタルシスを与えてくれているのに、失礼極まりないですね私。 あと、これもダイジェスト感の弊害かもしれませんが、アイテムの入手方法が一部、なんというか……雑? これは、私が最初に入手したのが書物「黄衣の王」だったせいかもしれません。 何も情報のない中、なんとなく福井に行ったら、なんとなく九頭竜川流域を進み、なんとなく劇場跡に行ったら、なんとなく見つけました。 見つけた私がポカーンとしてしまいました。 他のアイテムは、ふさわしい雰囲気や場所で手に入るものもありますが……。でも展開の唐突さは否めません。 プレイヤー目線からなら、「ネクロノミコン」が手に入った。やった! って感じはわかるんですけど、作中の登場人物たちの立場で考えると、それらが世界の異変とどう繋がってくるのかの情報に乏しい。 論理的に根拠立てなくても、主人公が直感力に優れていて、そこから何かを感じ取るとか、もう少し描写が欲しかったと思います。 現実世界とリンクさせるのは、これまた独特なギミックを入れてきたなと思いました。 これは、読んだ最初はちょっと否定的だったんですよ。この物語を現実世界の自分の行動とリンクさせる意味ってそもそも何?なんて思ってました。 でも違うんですよ。 この作品の主人公はグレイハッカー。 今私がこのリプレイを書いているパソコンを用いて世界中と繋がり、情報を得て、対処していきます。 たまには車に乗って自ら移動し現場に行きます。 これってつまり、今の私そのものじゃないですか。 机に向かってネットをしている私。そんな私の存在そのものを、この作品の中に取り込んでしまうということ。 こうして、作者が現実世界の行動をリンクさせた意図が理解できました。 でも、そういう理解の仕方をしたら、次にひとつだけ不満が出てきて。 現実世界とのリンクは基本的に、私の普段の生活習慣がマイナスに作用して、災害レベルを上げるペナルティとして発現します。 でも、作中でグレイハッカーは、各地と連絡を取り合い、異変に対処しているんです。 現実世界とリンクするのだったら、私もそのグレイハッカーに協力する行動を取りたい。 私が現実世界で起こした何らかの行動が、作中での災害レベルを1下げるとか、本当は進行すべきところを止めるとか、そういう要素は入れてほしかったところです。 やはり、これだけのスーパー邪神大戦は、短編に収まるような器じゃありません。 もちろんそうは言っても超大作にする必要はないですし、パラグラフ数をいたずらに増やせばいいというものでもありません。 でも、読んでいて、もったいないと思う部分が多かったのも事実です。題材がよすぎるだけに、期待値も高まってしまったのかも。 そんなわけで、良いところや工夫が凝らされているところ、面白いギミックがてんこ盛りの作品でありながら、まだまだ上を目指せる作品でもありました。 あ、ちなみに再アタックをしないのは、ですね。 本作を有利に展開するためには、現実世界での私が、 「誰かがいるところでこの作品を読み」 「丑三つ時ではなく」 「太陽が見える時間で」 「昨晩夢を見ておらず」 「雨が降っておらず」 「体調不良ではなく」 「8時間以上睡眠を取っている」 ことが必要だとわかったからです。 全部完全にこなさなきゃいけないわけではないみたいですが。 それにそんなの、別にズルしちゃえばいいんですけどね。 でもでも、1プレイだけとはいえ、楽しんだことは間違いありません。 著者の山田賢治さんは、いつもこれでもかというほどにアイディアを惜しみなく投入してくるので、また、他の作品も期待してプレイしたいと思います。 それでは、以上で「クトゥルフ深話」のリプレイを終わります。 また別作品のリプレイでお会いしましょう。 ■作品情報 作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「クトゥルフ深話」 著者:山田 賢治 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら ・書籍版(現在、通販品切。委託店舗在庫のみ) https://booth.pm/ja/items/2484141 ・電子書籍版 https://www.amazon.co.jp/dp/B09Z22RJQY ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
FT新聞・保管庫
*2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
SPAM注意
(編集・水波)最近SPAM投稿が増えておりますが、見つけ次第手動で削除いたしますので、決してクリックなどされないよう、ご注意下さい。
2026年5月13日水曜日
2026年5月12日火曜日
Re:インセンティブ(後)@20代からのゲームブック123 FT新聞 No.4857
FT新聞編集長の水波流です。 本日は、Reシリーズ・丹野佑氏による『20代からのゲームブック』 元は丹野氏が20代のとき、約3年に渡って書き綴られた名コラムの再録です。 (2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412) (編註:文中のコメントは全て当時のものとなっております) ☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆ おはようございます。丹野です。 これを読んでいるあなたは夏バテしていないでしょうか。丹野はできるだけ寝る時間をとって、一応いまのところは元気にやっています。 8月に配信予定のクトゥルフゲームブックを準備しています。調べれば調べるほど、クトゥルフ神話作品群の「なんでもあり」ぶりに驚かされています。 各執筆人がそれぞれどんな球を投げてくるか、こうご期待です。 ■インセンティブの話 前回は、ゲームブックにおいてはキャラクターの動機とは別に、読者に対するインセンティブが必要だという話をしました。 この作者の作品なら面白くなるはずだ、という信頼があれば問題ないですが、読者にインセンティブを与える工夫が必要です。 基本的には、主人公に強い動機を与えることが読者のインセンティブにもつながります。そうはいっても、たとえば主人公のキャラクターが気に入らないとか、あまり最初から話を進められないとか、そういった事情もあると思います。というわけで、読者へインセンティブを与える方法を具体的に考えていきましょう。 ■約束をする ストーリーの上で読者を引き付けるためには、大きなフックになる要素が必要です。 ゲームなので目標を示すのが一般的ですが、ほかにも早めに大きな謎を突きつける、行先にこんな場所があるという噂を聞かせる、など、この先の展開を示す要素を入れ込みます。 こうすることで、この先の展開について一種の約束をすることができます。約束をすることで、読者に「じゃあ、それが実際に描かれるまではやってみようかな」と、小さな目標に向けてのインセンティブが生まれます。 あるいは、いっそ何が起きるのか教えてしまう手もあります。予言というやつですね。「おぬしはこれこれこういう運命なのだ」と先に言ってしまうことで、この先の展開をはっきり約束することになります。 ゲームブックは主人公のキャラクターでひきつけるのが難しいので、「約束」を積極的に行うことで、読者にインセンティブを与えることが重要です。 ■ゲームの約束 ゲームブックはゲームですから、約束するのはシナリオだけとは限りません。 この作品ではこういう風に遊びますよ、というルール説明をしておくことが一種の約束となります。 今月まで連載していた『VRMMOからの脱出』では、マクロを使った半自動ゲームブックを楽しんでもらえるよう、ストーリーが大きく動くよりも前にルール説明を置きました。 このように、特徴的なルールを使っているなら、こちらのほうがより効果的かもしれません。 ■ゲームブックならではの また、ゲームブックなら必然的に発生する「約束」もあります。 あなたも経験があることだと思いますが、パラグラフを移動するときにちらっと見える文章やイラストが、一種のネタバレ、言い換えれば「約束」として機能しています。 知らない名前の登場人物がちらっと見えたり、奇妙なイラストが目に留まったりして、「これ、どういう状況だろう?」と感じたりすること、あるのではないでしょうか。 ほかの媒体ではなかなか発生しない状況ですから、あえて目につきやすい場所に、読者の注目しやすいパラグラフを置いておく……なんてテクニックも、あるかもしれませんね。 それでは、また来週。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月11日月曜日
「アランツァへのいざない」第3回 アランツァ世界の紙事情 FT新聞 No.4856
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆ 実は半年ほど前に左手首を傷めてしまったので、今はクライミングは「ゆっくりと、長く」やることを心がけています。 強度を上げるのではなく、それほど高くない強度で確実な動きを続けること。 全力を出せない残念さはありますが、それはそれで楽しくもあります。 治ったときにはひとつ上の段階へと進んでいることを目指して、やっていきます。 さて、本日のお話は「紙と識字率」についてです。 ◆アランツァ世界には紙はあるのか? アランツァ世界には大きく分けて2種類の紙が存在します。 ひとつは「獣皮紙」で、もうひとつは「植物紙」です。 ◆獣皮紙の話。 「獣皮紙って何だろう? 羊皮紙なら聞いたことがあるんだけど……。」 そう思われたあなた、ご安心ください。 獣皮紙とは造語です。 といっても、私が初めて造った言葉というわけではありません。 そのあたりから、説明してまいります☆ ◆羊皮紙とは? 羊皮紙(parchment、パーチメント)とはそもそも、獣の皮を加工して製作された紙です。 細かい説明は省きますが、山羊や仔牛の皮を使うこともあります。山羊の場合にはペルガモン、仔牛の場合にはヴェラムと、異なる名称で特に区別することもあります。 そうなんです。 羊皮紙は、実は羊の皮だけとは限らないのです。 獣の皮を「極限まで薄く伸ばしたもの」が羊皮紙であるとするのが、一般的な定義のようです。 ◆アランツァ世界への「輸入」を考える。 ヨーロッパ世界では羊が多く飼われていたので、この「紙」に羊皮紙という名称がついたのは納得しやすいものです。 しかし、アランツァ世界においては、羊は(十分に存在する家畜であるものの)素材としてメインとするほどに多くはありません。 アランツァは気候が多様です、雪の地域もあれば砂漠もある。 さまざまな動物が紙の素材になる可能性がある。 だから、羊皮紙というよりも「獣皮紙」と呼ぶほうが、より適しているわけです☆ 仔オストリッチや仔丸々獣、あるいは田畑を荒らす鹿や、まだ登場していない害獣が素材になっていることもあり、豊富なバリエーションがあります。 ◆「植物紙」。 アランツァ世界には植物製の紙もあります。 しかし、これはいわゆる、現代の技術を使用したようなものではありません。 かといって、パピルスのような古い技術を使ったものでもありません。 寒い地方の白樺の樹皮をはがして、そのまま紙として利用するというものです☆ この紙は基本的に、片面だけが使えます。 もう片方の面は、ザラザラした木の表皮そのもので、ものを書くには適しません。 この「白樺紙」(私がつけた名称です)は、サン・サレンやフーウェイといった大陸北部(ともに豪雪地帯)において有名です。 太古の森のどこかにはトレント(樹人)たちが管理する白樺の森があり、そこから採取されて、大陸全土へと広がっていきます。 これはかなり大規模なものですが、正確な森の範囲は一部の、最も歳とったトレントたちしか把握していません。 ◆この「紙」が何を意味するのか。 トレントは(貨幣経済を理解してはいますが)、森の外からお金を獲得するためにこの「樹皮園」を営んでいるわけではありません。 これは、直接取引の手段として使われます。 つまりは物々交換です。 トレントたちはこの紙を他の種族に売っていくことで、生活必需品を入手します。 彼らにとってはこの白い紙が、ちょうど「お金」の役割を果たしているといえます。 確実に他のものと交換できるものは、お金と同じように扱われることがあります。 かつての日本において「米」がお金の役割を果たしていたのと同じですね。 まとめると、トレントの世界では「白紙」がお金として機能している、というわけです。 ◆白樺たちのその後。 彼らは白樺の樹皮を「苦しみを与えない範囲」で収穫していきますが、一度か二度ほど皮を得ると、その後は状態のいい皮が得られません。 トレントたちはそうした(経済的な視点から見れば「用済み」の)白樺のお世話を、ずっと続けます。 彼らにとって植物は友であって、人間と家畜のような関係性とは少し異なります。 人間であれば、樹皮を得た後の白樺の樹を、建築物等に活用することでしょう。 しかし、トレントたちはそうしないのです。 ◆より高価な紙。 トレントたちが住まう太古の森には、もうひとつ、もっと高価な皮があります。 それは、彼ら自身の皮を使った「トレント皮紙(樹人皮紙)」です。 こちらは非常に頑丈で、とても重要な(あるいは、神聖な)事柄を記すために使われます。 もっとも一般的な使い方は、魔法のスクロール(巻物)の素材です。 アランツァの世界では「生命を持つもの」は魔力を持っているため、魔法を使うトレントから得た生皮(あるいは、亡くなったばかりのトレントの皮)には魔力が宿っています。 この魔力は時間の経過とともに、(抜けた歯から水分がゆっくりと抜けていくように)少しずつ「死んで」いきます。 ◆識字率は? アランツァの主たる大陸であるラドリドは、紙は比較的手に入りやすい土地といえます。 いっぽう、それを読む側はどうでしょうか? 「アランツァへのいざない」第1回でご説明したとおり、冒険者は「最低限の読み書きと、商人と取引できる程度の計算」能力を身につけています。 言い換えると、冒険者の識字率は100%です。 もし、冒険者の識字率が100%でなかったとすると……冒険の途中で文字情報を得るたびに、それをちゃんと読めるかどうかの(【魔術ロール】のような)判定が必要になってしまいます。 それは、ゲームの本筋を面白くしてはくれない気がしました。 ですので、冒険者の識字率は100%です。 ◆まとめ。 アランツァの世界には「獣皮紙」と「白樺紙」が普及しており、特に魔法の巻物には「トレント紙」がよく使われます。 アランツァ世界の人々は文字を読めたり読めなかったりしますが、冒険者に関しては100%の識字率を誇ります(断言)。 「アランツァへのいざない」第3回でした。 それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月10日日曜日
Re:オレニアックス生物学 Vol.3 『マンドラゴン』 FT新聞 No.4855
(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメント等は全て当時のものとなっております) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ オレニアックス生物学 Vol.3 『マンドラゴン』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 生物学の授業は非常に重要な科目だった。 アランツァの地での戦いは、戦争となるとまた話は別だが、人間以外の生き物と交戦することも少なくなかった。 聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラントは生物学の権威。 そんな彼の授業は生き物の外見、性質、そして対処方法を教えてくれる。 生徒たちを生き残る道へと導く、確かな灯火だ。 今日もカメルの授業が始まる……。 授業が始まる前に黒板大きな羊皮紙を貼り付ける。その羊皮紙にはあるモンスターが描かれていた。 そこには背中に木を生やした大きなトカゲに抱きつく裸の女性が描かれていた。 裸の女性はスタイル抜群で、頭についてる禍々しい花飾りが妖艶という言葉をイメージさせる。 それを見た瞬間、講義室に主に男性の歓喜とざわめきの声が響く。 「あー。静粛に。別に研究資料として隠していたご禁制の絵を披露しているわけではない。これは今日の講義の題材なのだ。この絵は『マンドラゴン』という生物を描いた物。さて! 生徒諸君! これのどっちがマンドラゴンかわかるかな?」 その言葉に生徒たちは互いを見たりざわめく。どっちというのはどういうことだろう? 『マンドラゴン』という名前からしてドラゴン、もしくはドラゴンに似た生物なはずだ。 となれば裸の女性ではなく大きなトカゲの方が正解なはずだ。実際ほとんどの生徒がトカゲの方が正解に手を上げた。 だが、2人の生徒は違った。 「ほう。アヴィオンとニナは違うようだ。君たちが女性の方だというその根拠は?」 カメルの問いかけにニナは立ち上がって答える。 「私は、マンドラゴラという植物の亜種だと予想しました。人の姿をして引っこ抜く際の声で害をなすという……。想像ですが、マンドラゴンというのはドラゴンに寄生し背中から生えてくるマンドラゴラなのではないでしょうか?」 二ナの答えにカメルはうなずく。そしてアヴィオンの方に視線を向けた。 「え……えっと。僕は匂いなどでオスの生物を操る森の妖精的な感じの生き物ではないかと……。『森で裸の女性を見たら逃げろ。正体がなんであれ酷い目にあう』という言い伝えも聞いてますし……」 自信の無そうな答えを聞いて、無言でうなずき再び、全体を見回す。 「それでは、皆に正解を教えよう。正解は……どちらも間違いだ。『マンドラゴン』というのはこの絵の通り。このドラゴンと女性が合わさった生物がそうなのだ」 その回答に何人かの生徒は崩れ、または抗議の視線を浴びせる。 「ははは。これは教訓だよ。問いかけはいつも親切とは限らない。最初から相手をだまそうとしているときだってある。さて……講義を続けようか。このマンドラゴン。とても珍しい共生生物なのだ」 そういって黒板に貼り付けてある絵を教鞭で叩く。 「共生? 混合生物ではないんですか? キマイラみたいな……」 レムレスの問いにカメルは嬉しそうに返答した。 「ああ。ちがう。キマイラは違う生物が魔術的にかけ合わさって生まれるが、マンドラゴンは特殊なマンドラゴラとツリードラゴンという種が百竜の森という特殊な環境で手を取り合って生まれた生物なのだ」 そういって、講義室にある地図を教鞭で指す。その先には白い大きな繭が描かれていた。 「百竜の森とはな、カオスドラゴンという生物が生み出した繭の中にある。この繭は年に一度。しかも一日しか開かない。そのとき以外は外界とは接触が無い隔離された場所なのだ。その特殊な環境が生み出した生物の一つがマンドラゴンだ」 今度は教鞭をトカゲの方に指す。 「マンドラゴンのドラゴン部分は普段は地面に埋まっている。つまり!見た目は大きな木に裸の女性が抱きついている!さあ、レムレス。君ならその光景を見たらどうする?」 「え?! あ! たぶん駆け寄るかと。近くで確認するために……は!」 レムレスはとっさに答えた後、自らの間違いに気付いた。 女生徒の視線が厳しい。決してそういうつもりで言ったわけではない! 「ははは。その答えは男性としては正しいな。だが、それはマンドラゴンの思う壺だ。女性に気を取られて近づいたところに地面の中からドラゴンが襲い掛かる。待ち伏せタイプの狩猟を行う生物なのだ」 続いて、女性の部分に教鞭を指す。 「さらに恐ろしいことに、ドラゴンの攻撃で獲物がしとめ切れなかった場合、この女性の部分が大きな金切り声を上げて、獲物の鼓膜にダメージを与え弱らせる。獲物はそれで気絶し、その後ゆっくりドラゴンに食べられるというわけだ。良くできているだろう?」 そこまで言ってカメルは生徒達を見渡す。 「このマンドラゴン、女性部分の大きさは我々と同じくらいなのだが、百竜の森にいる亜種の『マンドラゴラ』と『ツリードラゴン』はもっと小さい。マンドラゴラにいたっては、このような成人した女性ではなく子どもにそっくりで、声も人を気絶させるほどには大きくない。まあこれは百竜の森だけにいる個体だけなのだが……一部の好事家は『マンドラタン』という名前で呼び、とても高価で取引してるほどかわいらしいと。話がそれたな」 セキを一つして話し続ける。 「しかし、ツリードラゴン……背中に木をはやしたトカゲなのだがその木にとりついた時、話が変わってくる。ツリードラゴンはマンドラゴラのおかげで普段より簡単に沢山の獲物を捕らえられるため、図体が大きくなりやすい。一方、マンドラゴラは普通に木に生えるより栄養を多くもらえる上、ドラゴンに水や光がある所に連れて行ってもらえるため、大きく発育する。声の大きさや体のいろんなところがな」 教鞭の先は確かに、大きく発育した箇所を指している。 「つまり、これは、どちらかが一方的に利用する寄生ではなく、互いに利益を与え、協力し繁栄する共生なのだ。今日の授業のテーマは『協力とは人間だけの武器ではない』ということだ。弱肉強食で自分達の種だけ生き残ればいいという単純な生物だけではない。環境が変われば生物も変わる。そのことを良く覚えておくように」 そういって、カメルは教鞭をしまう。 「さて、最後にマンドラゴンの対処法だな。これは簡単。マンドラゴンの攻撃範囲外からの攻撃が一番だ。つまり遠距離攻撃だな。アヴィオンやニナの出番というわけだ。また、音に対する対策をしておくのも有効だ。不意打ちさえされなければ、ただの大きなトカゲなのだから」 終業の鐘が鳴る。 博士はピンと背すじを伸ばしたまま、教室の扉を開ける。ありがとうございました!と声が響く。 若い生徒たちに教えることのうち、どれが役立ち、どれが無駄になるかは分からない。 だが、いくつかはきっと、彼らの命を永らえさせてくれるだろう。そう信じて博士は今日も教鞭をとる。 (From:ロア=スペイダー) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 『マンドラゴン』 ロア=スペイダー著【百竜の森】に登場。 *【100パラグラフゲームブック集1】に収録。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月9日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第691号 FT新聞 No.4854
From:水波流 散歩がてら、徒歩30分ほどの最寄りの図書館へ行っては、アストリッド・リンドグレーンの未読本を借りて読み続けたら、1ヶ月の読書冊数が30冊と結構な数に。 邦訳されている絵本だけでもかなりあるんですよねえ。 ちなみに『長くつ下のピッピ』よりも『名探偵カッレくん』『やかまし村の子どもたち』のほうが好きです。 From:葉山海月 「間違ったダイエット」「間違った筋トレ」に注意! ってな煽り文句を見かけるのが多いんですが、 「ダイエット」も「筋トレ」も、一種の拷問だと思うんです…… From:天狗ろむ 毎月初めの1ウィークに、挨拶を載せさせて頂くようにしていたのですが、先週ウッカリしておりました! 花見の時期も過ぎ、若葉の眩しい季節になってきましたね。田畑に囲まれている所で暮らしているので、カエルの合唱が聞こえてくると、5月だなぁと感じます。 そんな5月におススメな公式シナリオは、迷いましたが『巨大樹の迷宮』でしょうか。みどりの日(4日)は過ぎてしまったんですが、全体的に緑っぽいし…という、少し理由は安易ですが、面白さはバッチリですので是非! From:明日槇悠 X(旧Twitter)上にて【女子向けのゲームブックについて】の話題が持ち上がっているようです。ゲームブックに親しんでこられた方でも、「こんなの初めて見た」という反応が多く、一方で主婦の方などの「わあ、これ持っていた!」という声もあったり。ブームの盲点を見るようでたいへん興味深く、当事者のお話をお聞きしてみたいものです。 From:中山将平 僕ら、明日5月10日(日)「北海道コミティア23」にサークル参加します。 開催地は『札幌コンベンションセンター大ホール』、配置は【G27】です。 扱うのは、ゲームブックや1人用TRPG等々! ぜひ遊びにお越しいただけましたら。 さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (明)=明日槇悠 (葉)=葉山海月 (く)=くろやなぎ (天)=天狗ろむ (水)=水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■5/3(日)~5/8(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年5月3日(日)水波流 FT新聞 No.4848 ローグライクハーフd33シナリオ『九つの樹の道』 ・フーウェイキャンペーンの次のシナリオを構想中に水波氏が、杉本=ヨハネ氏より提案を受け、全く新規で考えた入門編のシナリオです。 この物語のモチーフは、森の中のいろいろな樹木や草花。そこを順番に巡り、成人の儀式とする蛮族の若者をあなたは見届けることになります。 底知れぬ《太古の森》に、ハシバミの杖を携えた若者が乗り込んでいくにつれ、明るかった世界はだんだん厳しい実相をさらけ出していきます。 春らしく新しいことを始める物語に、どうぞ作成したばかりの初級レベルの主人公で冒険に出てみましょう! ぜひプレイされたご感想をお聞かせください。 (明) 2026年5月4日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4849 ☆モンスター!モンスター!TRPG 新刊のお知らせ☆ ・今回ご紹介するのはM!M!のサプリメント『ヒューマンズ!ヒューマンズ!」です!! これまでさまざまなモンスターを展開してきたM!M!ですが、このサプリメントでは「人間、エルフ、ドワーフ/ドウォン」というモンスター・タイプを中心に扱っています。 キャラクターには職業(お金を稼いでいなくても、毎日そのことに関わっていればそうとして扱われます)があり、それぞれの種族の文化の香りがしっかりと伝わってきます。 また、「アヴァター」と称しまして、「神々の干渉、魔法や呪い、異種交雑、あるいは突然変異などによって変化した、様々な人間のようなキャラクター」を扱うことができます。 吸血鬼、スーパーヒーロー、四次元立方体テッセラクトの化身の例とともに、能力値への係数や扱い方に関するアドバイスが載せられています。 また、「ズィムララのモンスターラリー」で登場した種族に登場した「人間と共存可能な種族」についてもしっかりと掘り下げられ、サプリメントどうしの互換性を高めています。 加えて、なんとまた! 他のTRPGを遊んだことがあるのであれば、1冊だけで遊ぶことができます。 そして、ちょっと話変わりますが、冒頭で紹介される蕨之介さんから「ローグライクハーフ」の新シナリオも見逃せません! 詳しくは本記事を! (葉) *編集部註* 本記事の配信時の通し番号が誤っておりました。「No.4549」→「No.4849」が正しい番号となります。 訂正してお詫び申し上げます。 2026年5月5日(火)丹野佑 FT新聞 No.4850 Re:インセンティブ(前)@20代からのゲームブック122 ・『戦場の風』『きみへ贈る詩』などの著者である丹野佑氏による、10年ほど前にFT新聞で連載されていたコラムの再録シリーズです。今回は「インセンティブ」をテーマとして、ゲームブックの読者が作品を読み進める際の「動機」についての考察が展開されています。 物語の中での主人公の動機と、それを読み進める読者の動機は、重なることもありますが、重ならないこともあります。では、主人公と読者の動機がうまく重ならない場合は、具体的にどんな方法で読者へのインセンティブを与えられるのでしょうか。 丹野氏による答えは来週の火曜日に掲載しますので、それまで皆さんもご一緒に考えてみてください! (く) 2026年5月6日(水)ぜろ FT新聞 No.4851 第3回【クトゥルフ深話(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第490回。現在は、山田賢治氏の短編ゲームブック『クトゥルフ深話』に挑戦しています。 主人公が友人たちと連絡を取り調査を進めるうちに、世界各地の「災害レベル」は最初の「0」から「1」や「2」へと上昇。これが「3」になるとその都市は滅びてしまうと予告されているので、もうあまり猶予はなさそうです。 重要そうなアイテムをいくつか入手でき、邪神に対抗できそうな雰囲気も出てきましたが、事態の全貌は未だ見えないまま。決定的な破滅を迎える前に、グレイハッカー・キサラギは世界を救うことができるのでしょうか? (く) 2026年5月7日(木)東洋夏 FT新聞 No.4852 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.2 ・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、東洋夏氏による「怨霊列車は夜笛を鳴らす」のリプレイ第2回目をお届けしました。 前回の『写身の殺人者』リプレイと同様に、主人公の一人は従騎士の少年・シグナス。そして二人目の主人公は、剣型ゴーレム「おどる剣」クロ。 人をさらう怪物〈怨霊列車〉なる、夜空を走る面妖な列車に乗り込んだ二人。客車から人の話し声が聞こえてきましたが、どうやら様子がおかしいようで……? シグナスの騎士としての振る舞いが、今後どんな影響を与えていくのでしょうか……! (天) 2026年5月8日(金) かなでひびき FT新聞 No.4853 読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第12回(出題編) ・かなでひびき氏による企画。かなで氏が集めた奇妙で結末がない物語の断片。この前半部に、読者の皆様がオチに当たるストーリーを考えるという企画です。 今回のお話は、「立ち止まって、じっと空を凝視する男。そのうちに一人、二人と町の人が集まり始めて、ついには街のみんなが空を見上げはじめた!? 男はどうして、空を見上げっぱなしなままなのか? あるいは空に本当に何かが浮かんでいたのか?」 今回の出題編はここまで! 皆様の名解答! お待ちしております! (葉) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今週の読者様の声のご紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。 紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。 すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。 ↓↓ (匿名希望さん) 2026 年 5 月 6 日 水曜日 付 クトゥルフ深話リプレイ 第 3 回 >海底の誓 なんという意味深な誤字! 用語として、実際にありそうですね。 (お返事:ぜろ) これだけのスーパー邪神大戦への感想に匿名で臨むのは賢明かと思います。名だたる邪神たちがどこから覗いているか、わかったものではないですからね。 海底の「誓」はホントにわからなくて、この連載に際して編集から指摘があって初めてわかった次第です。海底の栓の誤字だったら別の方向に妄想が広がって面白かったかもしれません。 感想ありがとうございました。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月8日金曜日
読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第12回出題編 FT新聞 No.4853
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第12回(出題編) かなでひびき ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● はろにちわー! 初めての方は、はじめまして! おなじみの方は、毎度! 火曜日の記事『これはゲームブックなのですか?』にて、掲載させていただいてる、ヴァーチャル図書委員長かなでひびきですぅ! 「としょいんちょー」なんてものを長年やってますと、中には奇妙な話をいただくことがあります。 何が奇妙か? っていうと、謎かけの部分だけあって、答えがプッツン尻切れトンボなお話。 推理小説の結末がどうしても知りたくなるように、かなでもいろいろ頭をひねっておりますが、どうも、イマイチ腑に落ちるオチがない。 というわけで、FT書房の読者様、皆様のお知恵を貸していただけませんか? これから紹介いたしますショートストーリー。 謎だけのお話に、オチを付けていただけませんか? 「物語で遊ぶ」のがゲームブックでしたら、これも「ゲームブック」!? 世界で一つだけ、あなただけの結末がつけられる! もしも、この謎かけにピピぴと琴線が響きましたら、解答編のご応募、よろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『何かが空を飛んでいる』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ うだるように暑い日、その男は街中の交差点で一人、顔を空に向けて立っていた。 そして、しばらく動かない。 それを見て不思議そうに空を見上げる人。 そこには、蜃気楼のようにうだる空気の中、雲ひとつない空が広がっている。 二人を見つけた人も、空を見上げた。 やがて、人が一人、二人と増えていき、人々は空を差して何か言っている。 信号が変わり、その一団に進路を妨害されているドライバーも、やがて空を見始めた。 交通の邪魔になると、注意しに来たポリスメンもしかし、空を吸い込まれるように見た。 事の起こりとなった男も、顔から首筋に汗が無数に這い始める。 さぞ気持ち悪いと思うが、男は微動だにせず空を見続ける。 そのうちに、街の皆が空を見始めた。 ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 出題編のお話はここまで。 皆さんに解答編で書いて頂きたいのは「男はどうして、空を見上げっぱなしなままなのか? あるいは空に本当に何かが浮かんでいたのか?」ということ。 なるべくフレッシュなものを考えて欲しい! まことに勝手ながら、期限は1週後の5/17日曜24時までとさせていただきます。 発表はその2週後の5/31日曜記事にて! もちろんワタクシ、かなでひびきも1本書かせていただきます。 また、答えに限らず、皆様が思いついた謎。そちらも大募集しております! 日常を題材にしたミステリー。SF。そしてクトゥルフ神話ネタから剣と魔法のファンタジーまで! あなたの思いついた「出題編」をご投稿下さい! 喜んでここで出題させていただきます。 そして、読者のみなさんも、それにアンサーよろしくお願いいたしますうっ! かなでの方も、マジでマジでお返事ならぬマジ解答いたします! (つまんなかったらごめんなさい) あなただけの謎かけに、あなただけの答え! FT書房オンリーワンのショートショートを作り上げるのは、アナタですぅ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 「今回の解答編」及び「オリジナル出題編」 ご投稿はコチラより↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report *リドルストーリー投稿と文頭に追記下さい。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。
2026年5月7日木曜日
ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.2 FT新聞 No.4852
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.2 (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆様、こんにちは! 東洋 夏(とうよう なつ)と申します。 光栄にも木曜日の枠を再び頂戴し、ローグライクハーフのリプレイ小説を連載させていただくこととなりました。 いちファンの拙い作ではございますが、最後まで楽しんでいただけましたら幸いです。 今回の連載ではサン・サレンを舞台にした『怨霊列車は夜笛を鳴らす』を取り上げます。主役はナリクの従騎士(見習いの騎士)シグナスと相棒の〈おどる剣〉クロ。 同じくサン・サレンを舞台にした『写身の殺人者』のリプレイと同じコンビですが、本作から読んでいただいても、全く問題はございません。 vol.1では人をさらう怪物〈怨霊列車〉の調査依頼を請けたふたりが、列車に乗り込むところまでをお届けしました。 師匠と離れ離れになってしまったシグナス。今まで調査から帰還した者はいないという危険な列車の正体に辿り着き、事件を解決に導くことはできるのでしょうか!? なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。 ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。 前口上はこれでおしまい。 さあ、冒険の始まりです! ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:8 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨21枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、2食分の食料、ランタン 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:7 ・器用点:6 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし ◇ [1号車]23:気が狂った兵士たち 客車側の扉を、その内側から何かが叩いている。 「だっ、誰かいるってことだよね? ここ開けたら」 「だったら帰るか」 「クロの意地悪!」 「ぐだぐだ言うな。腹を括れ。騎士になるんだろ?」 列車の傾きが収まると共に、扉を叩く音も間遠になった。完全に静かになるのを待ってから、シグナスは意を決して慎重に扉を横へ滑らせた。 (※さて、中にいるのは正気を失ったサン・サレンの兵士たち。幸いにも主人公すら認識できていない状態で、襲われはしないようです。何人いるのか1d3で判定して……「三人」と出ました) 何の引っかかりもなくするすると開いた扉の内側を、ランタンの光で照らす。人がいた。話し声も聞こえる。シグナスの目に写るのは三人。彼らの揃いの鎧には見覚えがある。領主の私兵が着るものだ。 先に入った兵士たちも無事なのだったら、解決の糸口はきっとすぐに見つかるだろう。シグナスはほっとして、呼びかける。 「あの、サン・サレンの方ですよね!」 しかしシグナスの呼び掛けには誰も反応しない。それもそのはず、良く良く耳をそばだてれば、彼らは会話などしていなかった。三人ともあらぬ方を向いて独り言を呟いている。 「補給物資はまだ届かんのか! これでは如何に頑健なドワーフでも戦えぬ! そうだ、補給物資の話をしている! お前だ! お前に言っているんだ、どんな面の皮をしているのか!」 「そこに鶏がいるよお、本当だよお。ほら鶏鶏鶏鶏鶏、おもろだねえ、ヘイ、ご自身で羽をむしって丸焼きになるご予定は?」 「お母さんのスープなんて何年ぶりだろう。家に帰れて良かったよ。そろそろ兵士は辞めようかと思ってて」 シグナスは狼狽えた。 対して〈おどる剣〉のクロは冷静である。空中で四十五度傾き、言った。 「共通項が分かるか」 「へ?」 「全員、食い物の話をしている。腹が減ってるんだ」 「……長く閉じ込められてるのかな。可哀想だ」 (※兵士たちに〈食料〉を与えるなら、彼らを正気に戻すことができるようです。食料一個あたり、二人の兵士を救うことができます。救われた兵士たちは「戦う従者」となって冒険に加わってくれるようです。今までの事情を知っているかもしれませんし、是非ここは仲間になってもらいたいところ。 シグナスの従者点は9、クロの従者点は7ですから、主人公ふたりプレイですが従者を二人連れて行けます。さて。冷静に考えれば食料を一個使って二人を正気に戻すのが効率的でしょう。しかし聖騎士たるもの、残りの一人を救わないという選択肢があるのでしょうか? ない。そう思いますので、食料を二つ……つまりシグナスがもつすべての食料を消費し、三人全員を救うこととします) シグナスは携帯食料を道具袋から取り出す。 「おいおい、まさか、おい」 今回は歩きながらでも食べられるように、木の実を練りこんだクッキーをナリクから持ってきた。それを三人の口に押し込んでいくと独り言は止み、夢中で咀嚼する音だけになる。 「なあお前、自分の食料を全部くれてやったのか?」 「だって苦しんでるんだよ。助けなきゃ。騎士でしょ、僕たちは」 「ああもう……」 そのように密やかに従騎士と〈おどる剣〉が囁きを交わしていると、客車の片隅から、 「ねえ、あなたたち」 弱々しい呼びかけがあった。 勢い込んで振り向くと、先程まで母親のシチューを幻視していた赤髪の女性兵士が、壁によりかかって立っている。疲れた様子だが目はしっかりとシグナスを見ていて、狂気の影は見当たらない。 「僕はシグナス、ナリクの従騎士です。こっちは〈おどる剣〉のクロ。この怨霊列車の調査を任されてます」 「もしかして、悪夢殺人事件を解決した、あのシグナス?」 「そうですけど……」 女性兵士は、痛ましいものを見る顔をした。 「聞いた、ヨン、アルゴット?」 また別の隅から、ヨンとアルゴットと呼ばれた兵士たちがそれぞれに返事をする。 ヨンはもじゃもじゃ髪のコビットで、身長はシグナスの半分くらい。アルゴットは口髭を三つ編みにした体格の良いドワーフで、縦にも横にもシグナスの倍近くありそうだ。 「恩は返さなきゃいけないと思う。どう、二人とも」 女性兵士の言葉に、コビットのヨンは目をまん丸に見開いて、 「そんな楽しそうな話、逃す手は無いだろ」 と言い、ドワーフのアルゴットは、 「求められんでも着いて行く。恥を雪がねばならん」 と頷く。 三人組のリーダーである女性兵士はトーヴァと名乗った。彼女はシグナスと同じく人間だ。サレンの領主の命で〈怨霊列車〉が好む種族や年齢や性別の傾向を調べるべく送り込まれたが、見事に全員さらわれたと言う。列車に好き嫌いはないのだ。 「従騎士どの、それから剣どの。そんなわけで、我らには付き従う用意があります」 「ぜひ、お願いします」 シグナスが頭を下げると、兵士三人も頭を下げた。 「しかし、誰か一人は残らねばならん」 空中を漂う〈おどる剣〉のクロが、三人の頭上から言う。 「最悪の場合、生き証人がいなくては後続も同じことを繰り返すだけだ。人選は好きにするが良い」 三人組は、態度の大きい〈おどる剣〉をじっと不信の目で見た。 「早くしろ」 「あの、ごめんなさい、クロは騎士なんです──」 「黙ってろシグナス。そっちは早く決めろ」 (※兵士Aとか言ってしまうのも味気ないですので、名前をつけてみました。生命点1の従者に名前を付けることがどれだけプレイヤーの精神にプレッシャーをかけるか承知の上で、やってみます。誰と冒険をするかは、1d6でダイスに問うことにします。1か2が出ればコビットの男性ヨン。3か4が出ればドワーフの男性アルゴット。5か6が出れば人間の女性トーヴァ。結果は二回振って2と3になりましたので、ヨンとアルゴットですね) 三人組は密やかに話し合い、最後はヨンが持っていたサイコロを転がして運命を決めさせたようだった。トーヴァが肩を落とし、ヨンとアルゴットが胸を張る。 「全員で戻ってきてよ」 トーヴァが言って、三人は拳をコツンと突き合わせた。 その様子を羨望の眼差しで眺めていたシグナスに、 「あまり思い入れるなよ。友達など少ない方が良い。そこは師匠を見習え」 と逆さになった〈おどる剣〉のクロは忠告する。 「それって寂しくない?」 「見送る方が寂しいんだ。お前にはまだ分かるまいし、分からん方が良いがな」 「……ねえクロ、記憶が戻ったの?」 「いや……いいや。そのような記録が蓄積されているだけだ」 「ごめん」 「謝るな」 〈おどる剣〉のクロは、元々は人間だったという。さる国の女王に仕える騎士であった。それだけ覚えているのだが、どこの国の何という女王に仕えたのか、それから自分の本名も思い出せないのである。 コビットのヨンが近づいてきて言った。シグナスの身長の半分くらいのところに、頭の天辺がある。 「ねえ。君のことはサー・シグナスって呼べばいいのかい?」 「いえ、僕はまだ従騎士ですから。シグナスと呼んでください」 「謙虚ボーイだ」 「け、けんきょぼーい!?」 こちらはシグナスより背の高い、大柄なドワーフのアルゴットが重々しい声で言った。 「謙虚は美徳だ。しかし、我らの長はお主である。故に堂々と振舞って良い。先に言っておくが、そのヨンは頭のネジが壊れておるから、真面目に相手をしてはならん」 ヨンは目をぐるりと回して、否定とも肯定ともつかぬリアクションでシグナスをけむに巻いたのであった。 ◇ 今回のリプレイは、ここまでです。 コビットのヨンとドワーフのアルゴット。新たな仲間を加えて賑やかなチームになりましたね。彼らは技量点0、生命点1の「戦う従者」として扱われます。敵の攻撃が一撃当たれば死、という過酷な条件ではありますが、どうか最後まで一緒にいて欲しいと願っています。 そして聖騎士らしい振る舞いをした結果、シグナス&クロの持ち合わせる回復アイテムはゼロになってしまいました。シグナスは回復技【癒しの光】を有するとはいえ、使えるのは一回きり。プレイヤーにタイミングを見極める眼力が要求されますね。緊張……。 それではまた、次の車両でお目にかかりましょう。 良きローグライクハーフを! ◇ (登場人物) ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。今回は良いところを見せたい。 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。 ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。 ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。 ・トーヴァ…人間の女性兵士で、ヨンとアルゴットと共に〈怨霊列車〉の調査をしていた。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。