SPAM注意

(編集・水波)最近SPAM投稿が増えておりますが、見つけ次第手動で削除いたしますので、決してクリックなどされないよう、ご注意下さい。

2026年8月16日日曜日

読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第13回解答編 FT新聞 No.4953

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第13回(解答編) かなでひびき ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●  はろにちわー!  初めての方は、はじめまして!  おなじみの方は、毎度!  火曜日の記事『これはゲームブックなのですか?』にて、掲載させていただいてる、ヴァーチャル図書委員長かなでひびきですぅ!  かなでが集めてきた「謎だけ」で答えのないお話に、オチを付けていただくというこの企画!  今回のお話は、 「行きずりでついカッとなって殺人を犯してしまった犯人! 死体を埋めているところを女の子に目撃されそうになり、くまのフリをして彼女を追っ払った犯人。この後、彼に降りかかった運命は?」  って話だったよねー!  そして、応募していただいた皆様、ありがとうございます!  早速、紹介していっちゃうね! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『くまだ! 熊が出たぞ!』(解答編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (忍者福島さん) そうして寝る前に男が呟いたってえ一言が「ああ、くまったくまった」 お後がよろしいようで。 (次の演者、もとい筆者の出囃子が鳴る。ジャラル・アフサラールさんの出囃子かな?) 以上、フランチェスコ末廣亭での一席でした。 +++++++++++++ (かなでコメント) ありがとうございます。 ダジャレに全ブリしたスガスガしさ! たまりません! かなでも、こういう生き方をしたいです! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (ジャラル アフサラールさん) 男は逮捕されるかとビクビクしておりましたが、地方の事件のせいか報道もされないので安心しておりました。近所の果樹園で盗難があったので、その犯人の犯行と誤認されたのか、あるいは本物のクマの仕業と誤認されてるんだろう!と安心した男は調子に乗って近郊のカラオケ大会でロックを歌って準優勝したりしておりました。 しかし、男のアパートにある日訪問者が来ました「え〜あなた! 2、3お伺いしたい事があるんですけど〜」と少し影のある二枚目の年配男性は「申し遅れました。私、警視庁刑事部捜査一課の〜」黒のスーツにノーネクタイの年配男性の提示した警察手帳にパニックになった男は年配男性の名乗りも聞こえなかった。 警部補らしい年配男性はS市で行われた殺人について男に鋭い質問を幾つかした。男は「大丈夫だ。殺人の目撃者はいない。」と思いつつ、警部補の質問に答えた。 警部補は最後におでこに指先をあてて 「え〜あなたが犯人です。」 男は反論した。 「目撃者でもいるのか!」 警部補は 「いや〜目撃者はいないんですがね。これを聞いてください。」 警部補はスマホを取り出すと音声を再生した。 「ウゴォォォォ! うがァァァ」 男が女の子を脅かす時に叫んだ怪獣みたいな低い声が再生された。 「犯行現場の近くに果樹園があったでしょう?    果樹園に盗難防止用のカメラと集音マイクがセットされていましてね。殺人がクマの仕業なら大変ですから、警察や地元の猟友会や役場の人も交えて分単位で映像をチェックしまして、この音声を拾えたわけですよ。それに加えて…ピカさ〜ん!」 オデコの広い部下らしき刑事がタブレットを持ってきた。刑事がタブレットを操作するとカラオケ大会でロックを歌っている男の映像が映し出され、男がシャウトしている所で映像がストップされた。 「ここのあなたの叫び、現場にいた女性によると完全にあの夜の『クマ』の唸り声と同じだそうで、SNSにあげられたカラオケ大会の映像を見て警察に通報されたんです。鑑識さんによるとシャウトとクマモドキの唸り声の声紋は完全に一致するそうです。」 男は手錠をかけられながら 「ウゴォォォォ! うがァァァ」 というクマならぬアクマのような唸り声をあげたそうです。 <END> オカルトやSFは他の方が書くと思いましたのでミステリで行きました。名探偵にはプリキュ〇と最近共演した「見た目は子ども、頭脳は大人」の探偵モドキか最近の続編漫画でパパになった「名探偵の孫」探偵モドキにしようかと思いましたが、SMA〇もイチ〇ーも逮捕したあの警部補モドキにしましたwww +++++++++++++ (かなでコメント) ありがとうございます! というわけで、忍者福島さんのご氏名を受けて、真打!?ジャラルさん登場(ドンドンパフパフー) なるほどねー。 見事に倒叙ミステリに仕上がりましたねー。 原作に書かれていないことをうまく逆手にとって、証拠を作っていくのがなんとも! 加えて、それがさりげなく配置されているのもグッド! ラストの唸り声のオチには、かなでもうなり声をあげてしまいました。 ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (緒方直人さん) 次の日の日曜、男は都会におもむき趣味の100均ショップ巡りにいそしんでいた。今日こそ、今日こそはアレに巡り会えますように。。。。。うぉおッッ!あった!あったアッッ!! 男が何か月も探し求めていたロボットプラモホビー「MECHA ART(メカアーツ)」のBOX版がそこにはあった。300円という低価格ながら驚きのディティール、そして抜群の低重心フォルムがロボマニアの心を存分にくすぐり上げる珠玉の逸品だ。配色はシンプルにグレー単色のシール無し。だがそれが良いそこが良い。いくつも買って思うがままに雑に塗り上げたい。基本の迷彩柄はもちろん、今の気分はクリーム色ベースで差し色にライムグリーンだ。こないだ見た建物の塗り分けが凄くオシャレで良かったんだ。ぜひあれを真似したい。あぁようやくそれが現実に。。。。。 夢にまで見たその商品を、震える手で掴み取ろうとしたその刹那。 ドタドタドタッ!ギャーギャー!ワーワーワー!! 背後から猛烈な勢いで突進してきた無数の夏休みチビっ子ギャングどもが男を押しのけて「MECHA ART(メカアーツ)」に群がりはじめた。あっという間に棚がカラになる。 「あ、あの、、、お客様もお求めでしたか? 申し訳ございません。今のが最後の在庫でして、入荷はまたいつになるか、、、、」 その声! 男は瞬時にパカッと両耳をかっ開いて脳内でお得意の声紋分析を開始した。その時間、僅かゼロコンマ一秒。間違いない、この店員、昨晩、俺がクマの真似をして追い払ったあの女の子だ! 歩く声優名鑑カッコ女性声優限定カッコ閉じと謳われたこの俺、聞き間違えなど決してしないッ! 「あのぅ、お客様、、、、?」 「あ、あぁスミマセン。いえ良いんです。また来ます。。。。」 「もし宜しければあの悪ガキどもを引っ叩いて、ひとつくらいは取り返してさし上げますが」 「物騒な物言いをなさるんですね。でも本当に良いんですよ。私もオトナの端くれ、いたいけな子供たちの楽しみを奪うようなヤボな真似はしません。オモチャはお子様にこそ遊ばれてナンボですよ、ハハ、ハ」 「いえあの、アイツラまたどうせ砂場に埋めたりとかザリガニと戦わせたりとかロクな扱いしないですよ。100均の安オモチャだと思って」 「!?ぐ、グゥゥッ!! でも、それでも僕は、、、、自分の矜持を曲げたりはしません!サヨナラ!」 涙をこらえ男は店を後にした。夢にまで見た「MECHA ART(メカアーツ)」が悪ガキどもに砂場に埋められるのかと思うと悔しさで胸がいっぱいだったが、そういや俺ももっとヤバいものを埋めてきたんだっけなと思い返して、何だか腹が減った。そうだ、昼は深川飯にしよう。(完) +++++++++++++ (かなでコメント) ありがとうございます! すっとぼけた味が前半のブラックユーモア気味の文体と相乗効果をなして、いい味を出してますねー。 声優ネタと100円ショップネタというニッチ!?なネタも、面白く味あわせていただきました。 しかし、こと「声優」さんになると、神のような聴覚をお持ちの方もいますねー。 かく言うかなでは、小池朝雄さんと、石田太郎さん。コロンボの声優がわかりません(笑) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (ヴェルサリウス28世さん) >読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第13回(出題編) 回答1はめちゃくちゃ短く、回答2はめちゃくちゃ長いので、そのつもりでお読みください。 回答1  女の子は驚いて村に帰り、「熊が出た!」と村人に言う。村人が驚き慌てるのを見て、女の子は思わず笑ってしまう。  翌日。女の子はほんのいたずら心から「熊が出た!」と村人に言う。村人は驚き慌て、女の子は笑った。  3日目。女の子が本当に熊に会い、村人に必死に警告したが、もはや女の子の言葉を信じる村人はいなかった。 ============== アイソーポス(−619−−564頃)『イソップ寓話集』の「嘘をつく子供」(オオカミ少年)より。   回答2  あるとき、美形英雄エルフ・ザ・ピンチは用事があって夜中のうちに山を越えることになった。ドルチ一族が経営する剣竜亭の支店もなく、コンビニ一族が経営し、その名を冠した、冒険帰りの冒険者にも優しい原則24時間営業のチェーン店の雑貨屋も深夜営業をしていないような辺鄙なところで、あるのは村人向けの酒場くらい。  夜に山を越そうとするエルフ・ザ・ピンチに対し、酒場の主人が言うことには、これから先の道は、夜には熊が出る、ゆえに旅人も白昼でなければ通れない、とのことであった。  エルフ・ザ・ピンチは急いでいたので、主人が止めるのも聞かずに出発すると、果たして、月夜の山道に1匹の熊が襲ってきた。  熊の爪を受けて、仮面が割れて地に落ちる。  ーーーーその刹那。満月がたちまち雲に覆われていく。  彼の特技は『美貌』。日月すら彼の素顔を見ると、己のあばた面を恥じるのだ。 「そのお姿は、もしや、エルフ・ザ・ピンチ様ではありませんか?  申し訳ございません。以前にお見掛けした時とはお姿も仮面の顔も異なっていらしたので、めぐり会ってもそれと分からないままでしたが、仮面が外れると雲が夜半の月を隠したので、すぐそれと分かりました。どうかお許しください」  足下から聞こえてきた人の声にエルフが目をやると、熊の姿はどこにもなく、裸の男が頭を地面に向けて土下座をしていた。 「その上で、もしよろしければ、私のばかばかしくつまらない話を聞いていただけませんでしょうか。  私は、かつて冒険者をしておりました。かたわらひそかに詩作を趣味としておりましたが、進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしませんでした。かといってまた、俗物の間に伍(ご)することも潔しとせず、内心では無教養な冒険者仲間を軽蔑しておりました。  この臆病な自尊心と尊大な羞恥心とのせいで、冒険者仲間ともうまくいかず、冒険者をやめ、山村で暮らしていましたが、つまらないことで人を殺し、死体を埋めているところを人に見られ、とっさに熊の鳴きまねをして追い払い、家に帰って眠りに落ちました。  その夜、月の光にふと目を覚ますと、私の体は1匹の熊へと変じておりました。家を出て山道を歩くうち、兎が目の前を横切るのを見ると目の前が真っ赤になり、気が付くとあたりには兎の血が散らばっておりました。  私は狂乱しました。まるで陸奥(みちのく)の「しのぶもじずり」(模様のある石に忍ぶ草の汁を塗り、その上に布を石で擦り付け、石の模様を転写したという衣)という擦り衣の乱れ模様のように。いったい誰のせいでこうなったのかと」 (ミチノク? シノブモジズリ? 何それ。こんな言い方をしてたのなら、冒険者仲間から疎んじられていたのもうなずける)  エルフはこう思ったが、黙って男の話を聞き続けた。 「こうなってはもはや村人とともには過ごせません。私は昼は人、夜は熊の姿となり、都の東南に小さな庵を作って隠れ住んでいると、世の人々は世を憂いて住む隠者だと思い、この山も「世を憂し」の山などと呼んでいますが、そうではないのです。  私がそんな隠者であれば、浮世の民を(東方の大僧正が着る)墨染めの袈裟で覆って救済しようという身分不相応な大望を抱けたのでしょうが。  たまたま不運にもワーベアの身となったと知り、世の中にこの悲しみから逃れる方法もないのかと思い悩んで山道に入ると、山の奥で紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声が聞こえ、悲しみがつのりました。  御垣守(みかきもり)の衛士(えじ。宮中を警護する衛門府に勤める兵士)が焚く火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の心は、夜ワーベアとなっている間には人を食べたくなる燃えるような本能に埋め尽くされ、昼は人間の姿となって物事を思い悩みます。  伊吹山のさしも草(灸に使用されるよもぎの異名。もぐさ。滋賀県と岐阜県の県境にある伊吹山で取れた。)の「さしも」ではないですが、さしものあなたでも知らないでしょう。私の心の中に燃える、人を食べたいという熱い思いを。  これを止めている人間としての理性を夜も忘れないでいたいものですが、将来どうなるかは分かりません。今日を限りに命が尽きてしまえばいいのに。  この命が絶えるなら絶えてほしいと思いました。このまま生き永らえると、人を食べるのを耐え忍ぶことができなくなるだろうから。  心ならずも浮き世に生き永らえると、人間だった頃に見た夜半の月が恋しくなりました。今や月の出る夜には人間の心でいることはできませんから。  生き永らえると、つまらないと思っていた人間だった頃の世の中も今は恋しいです。  思い悩んでも、自ら命を絶つこともできず、命はあるのに、悲しさに堪えられないのは涙だけでした」  男は涙を流しながら話し続けた。 「夜には私を熊に変える月が、昼には私に「嘆け」と命じているのでしょうか。そのように託(かこつ)けたくなるほど涙が流れました。  私の涙を拭う袖は、引き潮のときでも海中で見えない沖の石のように、人は知らないでしょうが乾く間もありません。  見せたいものです。雄島(宮城県の松島にある島)の蜑(あま。漁師。海女と違い男女どちらも指す。)の袖でさえ、いくら濡れても私の袖のように色は変わらないでしょう。  まるで、秋の田の近くに建てた仮庵(農作業のために臨時に建てる仮の小屋)の屋根の苫(とま。菅(すげ)や茅(かや)などを菰(こも)のように編み、屋根の覆いに使用したもの)の編み目が粗いので、夜露が落ちてきてびしょ濡れになった袖のように。噂に聞く高師(たかし。大阪府の高石付近にあった海岸)の浜の、むなしく寄せ返す波に濡れた袖のように。  人を恨む気力も失い、私の袖は涙に濡れて干す暇もありません。人恋しさに負けて人里に出て行ったりしたら、人食い熊の悪名があがるだけでしょう。  春の夜に、少女が落とした貝殻のイヤリングを届けに行ったら、お礼に一緒に踊ることになり、踊り疲れた少女の頭に、この手の肉球を枕に差し出す。そんなことを夢想したりしましたが、実際そんなことをしたら人食い熊の悪名が立つだけでしょう」  男は少し笑うと涙を止めた。 「曇りや新月で月の出ない夜には熊にならずにいられるのですが、独りで寝ていると孤独に耐えられなくなりそうでした。まるで山鳥の枝垂れた尾のように長い夜も、キリギリスが鳴く霜の下りた夜も、私は独りで夜を明かしました。  孤独を嘆きつつ独りで寝る夜が明けるまでの時間がどんなに長く感じるかよく知っています。  夜通し物を考えていると夜がなかなか明けず、寝室の隙間さえつれなく感じられました。  もう夢で昔の知り合いを見ることもなくなりました。住の江(大阪府の住吉付近の海岸)の岸に寄る波の「よる」ではないですが、夜に私の夢の中に出てくるのさえ人目を避けているのでしょうか。  瓶原(みかのはら。京都府の加茂の木津川の北の地域)から湧き出て流れる泉川(いずみがわ。京都の木津川の異名)の「いつみ」ではないですが、人を最後に見たのはいつのことだったでしょうか。それほど人と会っていないのにどうしてこんなに人恋しいのでしょうか。  有馬山の猪名の笹原(兵庫県にある有馬山の近くの猪名川に沿った、笹の生えた平原)に風が吹けば笹がそよそよと鳴るように、そう、どうして人の交わりを忘れることができましょうか。  誰も来ないとは知っていながら、人が訪ねて来るのを、松帆の浦(淡路島の海岸。海藻を焼いて塩を作る製塩法を行っていた。)で夕凪に焼いて作る藻塩のように身を焦がして待ったこともありました。  浅茅生の小野の篠原(まばらに茅(ちがや)の生えている小さな野で篠竹(しのたけ)が生えている平原)の「しの」ではないですが、いくら耐え忍んでも、余りに人が恋しい。  人が愛おしい。また人が恨めしい。つまらない世の中のことをいろいろと思い返して物思いにふけってしまいます。  いっそ人と人が会うということがなければ、人をも自分をも恨まないで済んだものを。  もう私のことを哀れと言ってくれる人もいるとは思えません。これは自身の行いによるものとしてあきらめるべきでしょう。  一緒に哀れと思ってくれるのは山桜だけです。もうこの辺りの桜以外に私を知っている人もいないのですから。  こうなった今、誰を知人にできましょうか。高砂の松(兵庫県の高砂の浜辺に生えた松)も昔からの友ではないのに。  人の心ももう分からなくなりましたが、春に咲く梅の花の香りだけは、ふるさとで嗅いだ昔の香りと同じです。  桜の花の色はむなしく色あせていき、それを眺めている私も年老いていきます。  花を誘って散らす嵐の吹く庭に、雪のように花びらが降ってくるように、老いて古くなっていくのは私自身です。  名古曽の滝(なこそのたき。京都の大覚寺にあった滝。)は、水源が涸れ滝の音もしなくなって久しいですが、その名前だけは今に伝わっています。  いま思い残すのは、私が作った歌のことです。私が作りためた歌が百首ばかりあります。これをなんとかして世に残していただけないでしょうか。私の名前は出さなくても構いません。ただ、このような身になっても作り続けた私の歌をどうしても世に伝えなくては、死んでも死にきれないのです」  涙を流して懇願する男の話を聞き、エルフも同情して泣きながら答えた。 「分かった。君が今後人を襲わないと誓うなら、僕もこの歌をなんとかして世に出すことを、エルフの崇める自然神ヴェルディアに懸けて誓おう」 「誓いますとも! ヴェルディアに懸けて誓います! どんなことがあっても、この誓いを守ります!  お互いに涙で袖を絞りつつ誓いました。この上は、末の松山(宮城県多賀城市にあった小丘陵。貞観津波で波が越さなかったことから、詠み人知らずだが「君をおきて あだし心を わが持たば 末の松山 波も越えなむ」と詠まれた。)を波が越すようなあり得ないことが起きないことを祈ります。あなたが約束してくださったことを、させも草の上の露のようにありがたく大切にして、哀れにも何もなく今年の秋が過ぎ去ってしまわないことを祈ります。  ああ、あなたに会った後の、私の歌が世に出るのを待ち望んでいる今の心に比べれば、思い悩んでいた昔の思いなど何も思っていなかったも同じです。  私のことは忘れられても何とも思いません。先ほどの誓いを破ってあなたが神罰で命を失うことだけが心配です。  あなたが私の歌を世に出してくれるのを見届けるため、少し前まで惜しくなかった命さえ、少しでも永らえようと思ってしまいます」  男はエルフに百首の歌を書き付けた紙束を渡し、エルフの素顔から目をそらしたままかたわらの叢(くさむら)に分け入ると、再びその姿を見なかった。  エルフはこの歌をおもちゃ業者に持ち込み、真の作者を秘して、歌の作者として創作された100人の姫や坊主といったキャラクターの姿絵を絵師に描いてもらい、カードゲームとして発売したところ、飛ぶように売れた。 =========================== そのお姿は、もしや、エルフ・ザ・ピンチ様ではありませんか?:本作の元ネタは、全体として中島敦(1909−1942)『山月記』(著作権消滅済み)より。その元ネタは唐の李景亮の伝奇小説『人虎伝』(清の陳蓮塘の選の『唐人説薈(とうじんせつわい)』等に収載)であり、さらにその元ネタは唐の張読(883−889)の選の伝奇小説『宣室志』の一遍「李徴」とされている。 お姿も仮面の顔も異なっていらしたので:言い回しは吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(連載2016−2020)の、平伏した零余子(むかご)の台詞「お姿も気配も異なっていらしたので」から。エルフ・ザ・ピンチは素顔を隠すために常に仮面を着けているが、日によって仮面を変え、仮面に合わせて衣装も振る舞いも変えており、女性に扮することもあった。 めぐり会っても:以下、男の言葉は、後に百人一首となる設定である。盛り込めるだけ盛り込んだが、43首を盛り込むにとどまった。 第11話、第12話の作中解釈とは矛盾するのだが、まあ作中でも歌の解釈には諸説あるということで。 小倉百人一首は、藤原定家(1162−1241)が宇都宮頼綱(うつのみやよりつな。1178−1259)の別荘小倉山荘の襖に描く和歌100首を選んだものとされている。歌がるたとしてゲームに使用されるようになったのは江戸時代からと考えられている。歌人の絵が描かれるようになったのも歌がるたになってからである。 本作で、「なんでエルフ・ザ・ピンチの世界に百人一首があったのか」は明らかになったが、今度は「じゃあエルフ・ザ・ピンチの世界に陸奥の国や伊吹山があるの?」という新たな疑問が生まれてしまった。 もっとも、こうした歌に詠まれる地名は「歌枕」と呼ばれ、シチュエーションに合わせて歌に詠みこむもので、多くは現地を一度も見たこともない京都の貴族が詠みこんだものである。なので、歌枕を集めた歌道の本さえあれば、日本の地名を知らないファンタジー世界の住人であっても歌に詠みこむことは可能である。 ばかばかしくつまらない話:言い回しは吾峠呼世晴『鬼滅の刃』の狛治の独白「なんとまあ惨めで 滑稽で つまらない話だ」から。Aパート冒頭の「バカバカしい話を一席」を受けたもの。元ネタの『山月記』が高尚すぎて、バカバカしい落ちにならなかった。 不運にもワーベアの身となった:『山月記』及びその元ネタの『人虎伝』にある詩に「偶(たまたま)狂疾(きょうしつ)に因って殊類と成る」とあることから、人がたまたまワーベア化することもあるという設定である。ワーベアといえば熊神を崇めるベア・カルト(熊神教団)であり、熊神ゆかりのマジックアイテムには人をワーベア化するものがよくあったが、本件も熊神の恩寵だったのであろうか。男には教団員として生きる道もあったのかもしれないが、エルフ・ザ・ピンチが紹介してやれるほど友好的な関係にはなかった。 私の名前は出さなくても構いません:万葉集の時代から、官位を持たない身分の低い者や政争に敗れた罪人であっても、優れた歌は「詠み人知らず」として勅撰和歌集に採録されることがあった。平忠度(たいらのただのり。1144−1184)が平家一門と都落ちした際、歌の師であった藤原俊成(ふじわらのとしなり。1114−1204)の屋敷を訪れて自分の歌百余首を収めた巻物を託し、後に俊成は勅撰和歌集である『千載和歌集』に平忠度の歌を「詠み人知らず」として収録したというエピソードがあり、羽生飛鳥『歌人探偵定家 弐』(2026)でも触れられている。 誓いますとも!:言い回しは手塚治虫『ブラック・ジャック』の「おばあちゃん」に出てくる男の台詞「い、いいですとも! 一生かかっても どんなことをしても払います! きっと払いますとも!」から。それを聞きたかった。「かたみに(お互いに)袖を絞りつつ」から互いに誓い合った設定とした。 +++++++++++++ (かなでコメント) 今回も気合の入った作品をありがとうございます。 しかも二本立てとは! 最初の一本。いかにもショートショートにふさわしい脱力(いい意味で) 二作も、いつもと変わらない、造詣たっぷりなストーリー、ありがとうございます。 まさかホラーミステリーみたいな発端がこのような叙事詩へ!? なんか、もう、エルフ・ザ・ピンチ専属作家みたくなってきましたねー。 で、「いい話か!?」と思わせつつ、ラストのオチ。 かなで、本気でこの手の、「先立つものはお金」系のネタ、大好きです。 どんなことがあっても、やっぱり人間(エルフ・ザ・ピンチ君はエルフかな?)お金ですよお金! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (クレイジーケンナオコさん) 「ふぅー」 やっとここまで書き上げた小学生のタナカ君。 面白い小説を読み、「これならボクも書けるかも」AIの力を借りてここまで書き上げたのですが。 うーん。先が思いつきません。 AIが挙げてくれたオチも、たくさんありすぎて迷います。 そうこうしているうちに、その時に「おやつよー」の声。 こうして未完の短編は忘却の彼方に! +++++++++++++ (かなでコメント) ありがとうございます! なんというメタ物語っ! 物語自体をこんな異次元空間と化して、そのまんまオチにしているっ! 子どもの無邪気さという残酷さに!? 一面を当てたオチもいいですね! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (アガサ・ターナーさん) KABOOOON! そのとき、世界を焼き尽くす白い閃光が! そうです。どこぞの国が核戦争を始めたのです! 隠して死体も、犯人も、いえ事件そのものもなかったことに! 平和って大事だね! +++++++++++++ (かなでコメント) なんて力ずくなオチなんでしょうか! 子どもじみたイノセンスじみた狂喜、もとい狂気! ここまで来ると、かえって爽快な気が!? ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴   (葉山海月さん)  しかし、悪いことはできないもんだねー。  次の日、早速「熊狩り」のための自警団が組まれ、山の捜索が行われたんでさ。  で、調査隊が見たものは、掘り返されて食い荒らされた死体のかけら。  そう、結果として、死体が腹を好かせた熊を呼び寄せちゃったんだね。  で、人の味を覚えた熊。早速山から降りて人を食い始めましたとさ。  しかし、真っ先に熊の胃の中に収まったのが、犯人ってぇのが洒落てるねー。 +++++++++++++ (かなでコメント) ジャラルさんに引き続いて、これまた頭脳系のオチ! 前半の物語に出てきたギミックを、うまく活用しているその巧さ! 夏らしく、ホラーっポイ落ちも秀逸ですね! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  (かなでひびきさん)  次の日男は、テレビのニュースを見て真っ青になった。  というのが、その番組でテロップ付きで「山中の遺体遺棄! 殺人の線が濃厚」とでかでかと出てきたからだ。  第一発見者の駐在さんは語る。 「いやー、この子が『熊が出た』って言ってきたんで、話一部始終聞いてみたら、『熊が低い声でウゴォォォォ!』って鳴いた。ってとこに引っかかったんだなー。 熊の声ってのは、結構甲高いし、結構猪、あるいは豚の鳴き声に聞こえなくもないんだよ。 ですからね、コイツも熊のことをよく知らない奴が偽装したんじゃないかなと……」 +++++++++++++ (かなでコメント) 最後は、不肖かなでひびきの作品で〆させていただきました。 熊の鳴き声って聞いたことないな。そこから生まれたアイデアなんですが、動画見てみたら、予想外な鳴き声もいっぱい出してて、びっくりです! 勉強になりました! ・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴  改めて、皆さん! たくさんのご応募ありがとうございます!  みんなで考えたショートリドルストーリーの、お味はいかがだったかな?  今回は七編だったけど、ピリリとおいしい短編が詰まっていると思うの。  まず、今回のは「ミステリ」タイプと、ギャグタイプに分けられるわね。  ミステリタイプで筆頭なのが、ジャラル アフサラールさん。  手の込んだ伏線。それを生かした倒叙推理ものとして「日本一有名な!?」警部補が出てくる名作は、ミステリ好きの心をキャッチすると思うんですぅ。  葉山海月さんは、いかにもブラックユーモアで、不肖かなでのは、「前編」で提示された「証拠」にこだわったわ。  で、ギャグタイプ!  やっぱり忍者福島さん。ここまで勢いで、よくぞ乗り切ってくれました!  同じく。アガサ・ターナーさん。  うぉぉぉぉ! 本気で力技というか……  緒方直人さんも、結構手の込んだネタで、全力で盛り上げていただいてありがとうございますぅ!  作者冥利につきますねー。  で、どのジャンルにもちょっと分けがたい作品。  クレイジーケンナオコさん。まさかそんなメタ視点で! っていうオチは、頭脳系でもありギャグ系でもあり……  まさに思考のびっくり箱!  古典への造詣がいっぱいつまった、もはやオリジナル!? ともいえる、ヴェルサリウス28世さんの『エルフ・ザ・ピンチ』譚。  古典だけじゃなく、今はやりのあの作品までネタに盛り込んでるのはスゴイ!   今回も勉強になりましたっ!  というわけで、きっとあなたの心に刺さる作品がある!? 今回の特集、いかがだったでしょうか?  締め切りは終わったけど、ここに応募された答えにこだわらず、みんなでご自由に謎の続きを考えて欲しいの。  魅力的な謎は、それだけで一つの物語。  それでは、次回の「問題編」  あなただけのオリジナルストーリー、ご応募お待ちしております!  どうぞよろしくお願いいたしますぅ! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月15日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第705号 FT新聞 No.4952

From:水波流 先日は大阪・TGFFにてFT書房ブースの売り子として参加してきました。 合間に聞きに行ったトークショーは、内山靖二郎先生、河嶋陶一朗先生のホラーTRPGについて。 システムから語るホラー、シナリオから語るホラーとそれぞれの切口から貴重なお話を聞かせて頂きました。 TRPGは対面しているからこそ、恐怖を主観的に感じれるように、敢えて文字情報で渡すのが良いとの話を聞き、会話と文字の媒体の違いを改めて意識しました。 From:葉山海月 実写をAI作品と勘違いされる。 これが技術の進歩だ! From:中山将平 僕ら8月15日(土)に東京ビッグサイトで開催の「コミックマーケット108(1日目)」にサークル参加します。 配置は【東2ホール ソ49ab】です。 新刊であるモンスター!モンスター!TRPGソロアドベンチャー「廃都脱出」を刊行します! この作品の詳細情報は僕たちのホームページで公開していまして、次のURLにてご覧いただけます! https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/haito ぜひチェックしていただけましたら。 さらに、8月16日(日)「コミックマーケット108(2日目)」に、僕の個人サークル「ギルド黄金の蛙」が初サークル参加します。 配置は【西1ホール ま36a】です。 当日刊行のカエル人の新刊、「創作・RPG・ファンタジー汎用異種族設定集 カエル人の全て(衣食住編)」と既刊(魔法と儀式編)等を持って行きます。 どちらも僕が現地にいますので、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。 さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (く)=くろやなぎ (明)=明日槇悠 (葉)=葉山海月 (天)=天狗ろむ (水)=水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■8/9(日)~8/14(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年8月9日(日)清水龍之介 FT新聞 No.4946 Re:オレニアックス生物学 Vol.6 『ウルフドッグ』 ・過去の人気記事の再配信として、聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラント教授による、アランツァ世界のクリーチャーたちに関する「生物学」の講義をお届けしました。今回の講義のテーマは「ウルフドッグ」です。 アランツァのウルフドッグは、錬金術の生み出した生物兵器。犬よりも狼よりもずっと大きく、全身が筋肉の塊のような猛獣です。そんなウルフドッグに出会ったときの対処法について、生徒たちのひとり、狩人アヴィオンが語ります。お調子者ガリィの「撃退」エピソードにもご注目! (く) 2026年8月10日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4947 カタログ、作っています☆ ・「油断するとすぐに新作を出す」ことで知られる集団、FT書房は2019年に成果物を紹介したPDFを無償公開しています。いわば作品カタログです☆ 「以前のイベントで何を買ったのか、忘れてしまった」ときでも持っている作品を把握しやすくなるとのことで、カタログは好評でした。でも、これ、7年も前のものなんです★ 新たに「ローグライクハーフ」や「モンスター!モンスター!TRPG」の紹介カタログを、作品サイズに合わせたB5版でお届けするべく動いております! 素晴らしいことに、ファンメイドの「ローグライクハーフ」のシナリオとリプレイを合わせると、今や200作品にも到達する勢いなのだそう。 国産TRPGの快挙、200作品すべての紹介はかなわないとしても、せめてFT書房の公式作品が網羅的に把握できるカタログにするべく、地道な取り組みが進んでおります。 蕨之介氏による「モンスター!モンスター!TRPG」シナリオ「希望の小惑星」、「月の秘密」の新作案内もございます。こちらも無償公開ですので、ぜひご覧ください! (明) 2026年8月11日(火)葉山海月 FT新聞 No.4948  『Monkey business 2』-斥候の犬-  ・先週の日曜日に、齊藤飛鳥先生による「ローグライクハーフ」としての作品、『霊廟館の悪夢』がリリースされたのが記憶に新しい方も多いと思います。 その、本格ミステリっぷりに、感銘を受けた不肖葉山海月が、その後日談を書いてみました。 『霊廟館の悪夢』事件から時は離れ、立派な冒険者となった主人公である君。 ふらりと立ち寄った酒場に、あの少女、クワニャウマが! 酒も進む中、彼女が語りだしたのは、ある斥候と、その忠犬にまつわる奇妙な疑惑だった……。 今回は探偵役に、われらがクワニャウマ姐さんを迎え、謎解きが進みます。 つたない作品ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 (快く二次創作の許可を出していただいた齊藤先生に、心より感謝いたします) (葉) 2026年8月12日(水)ぜろ FT新聞 No.4949 第3回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第505回。 今回の主人公は筋骨隆々な傭兵・ヴァルグ。そして、彼を師匠と呼び、赤い毛並みを持つ大型犬を連れ、「獣の腕」を宿す少年・ハルト。 二人は「クラーケンぶっ殺し号」に乗って、まずは海域を荒らす海賊退治に出ています。 今回は戦闘回! アクアデーモン戦では新米砲撃手のポールが海に引きずり込まれかけ、彼を助ける為に飛び込んだハルトは何と泳げない!?  更に畳みかけるように、海賊船も襲来! 元剣闘士だというヴァルグの大暴れ具合にも目が離せません! (天) 2026年8月13日(木)東洋夏 FT新聞 No.4950 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.8 ・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、東洋夏氏による「怨霊列車は夜笛を鳴らす」のリプレイ第8回目をお届けしました。 前作の『写身の殺人者』リプレイと同様に、主人公の一人は従騎士の少年・シグナス。そして二人目の主人公は、剣型ゴーレム「おどる剣」クロ。 人をさらう怪物〈怨霊列車〉なる、夜空を走る面妖な列車に乗り込んだ二人は、途中で同行者となったドワーフ・アルゴットを喪いながらも、もう一人の同行者のコビット・ヨンと共に先頭車両を目指します。 アンデッドになっていた乗客を退け、とうとう先頭車両へ到達! そこで待っていたのは、二人の人物。悪趣味な黒幕にまたもや目をつけられてしまったシグナスは、果たして無事に生還できるでしょうか? (天) 2026年8月14日(金)市川大賀 FT新聞 No.4951 『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』作品紹介  ・今回は、SF Prologue Waveコラボレーション企画でも『僕と光の国のおじさん』という作品をご寄稿頂いたことのある、市川大賀先生から新作のご紹介を頂きました。 そのタイトルは、新作長編小説『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』 本シリーズは、とある民俗学ゼミの教授、折口裕一郎と、おっちょこちょいだがサポート力の強い助手とゼミの女生徒との三人組が、行く先々で怪奇な事件に遭遇するというのですが……。 折口先生、超能力も退魔術の心得もございません。そんな彼の武器は、「推理力」です! この一風変わった探偵冒険譚を、市川先生自ら語ります! 奇譚と推理が絡み合う頭脳の迷宮なこの一本! 読まなければ後悔することウケアイ(かなで風) (葉) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今週の読者様の声のご紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。 紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。 すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。 ↓↓ (核通さん) いつもFT新聞を愛読しております、核通という者です。 このたびの「ローグライクハーフ」シナリオ、「霊廟館の悪夢」には特に感銘を受けましたので、初めて投稿しました。 高度なミステリー要素と、アランツァというファンタジー世界の舞台が見事に融合していると感じました。 今後とも、御社の製品(『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』を購入したところです)ともども、愛読させていただきます。 (お返事:齊藤飛鳥) 初めまして。このたびは拙作『霊廟館の悪夢』に感想を下さり、まことにありがとうございますm(_ _)m♪ 初めて書いたローグライクハーフのシナリオを、豪華執筆陣による『ヒューマンズ! ヒューマンズ!』と並べて愛読していただけるとは、たいへん嬉しいです^^ ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月14日金曜日

『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』作品紹介 FT新聞 No.4950

おはようございます。 FT新聞編集長の水波流です。 今回は、SF Prologue Waveコラボレーション企画でもご寄稿頂いたことのある、市川大賀さんから新作のご紹介を頂きました。 前作『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』は実は、私は2年ほど前に拝読しておりました。 奈良葛城山の土蜘蛛伝説や、"村の亡霊"の謎を追ううちに和歌山の徐福伝説を紐解く……という私の大好きな諸星大二郎の稗田礼二郎シリーズを彷彿とさせる古代史・民俗学もので、続編をぜひ読みたいなと思っておりました。 新作のモチーフは「河童」しかも「純粋な退魔綺譚に仕上げています」とお伺いし、さっそく注文しこちらも読み終えたところです。 今回は星野之宣の宗像教授シリーズのように緻密な考察を積み上げつつ、荻野真の孔雀王を彷彿とさせるダイナミックな展開が待ち受けています。 伝奇ロマン、古代史ミステリーがお好きな方にはオススメの作品です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』  (市川大賀) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆さん。 以前『僕と光の国のおじさん』を連載させていただいた市川大賀です。 実はこの度新作長編小説『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』を上梓出版いたしました。今回はその簡単な紹介を水波編集長からのオファーを受けてしたためた次第でございます。 この小説は僕の作品群の中では『折口裕一郎教授の怪異譚』シリーズ第二弾にあたります。 『折口裕一郎教授の怪異譚』シリーズとは、とある民俗学ゼミの教授、折口裕一郎が、おっちょこちょいだがサポート力の強い助手とゼミの女生徒との三人で、行く先々で怪奇な事件に遭遇し事件の傍観者になるという、よくあるハコ(タイトルも)のシリーズなのですが、折口君が他の諸先生方の作品の主人公たちとは違うのは、折口君は超能力も退魔術も使えず「徹頭徹尾謎を解いて傍観者に徹する」というのが特徴です。 第一作『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』をお読みくださった方々からはご好評をいただいたので、この度の続刊発行と相成りました。 先ほどのプロットをお読みになった方でピンときた方もいるかとは思いますが、このシリーズのキャラクター構造は往年のテレビ特撮ドラマ『ウルトラQ』(1966年)リスペクトで成り立っています。 今回の新作は、構想自体は10年以上前からありました。日本のエネルギー産業と戦後復興を支え続けてきた炭鉱とその成り立ち。傍目からは光り輝いた「戦後日本の繁栄」。その前期戦前戦時中から日本を支え続けてきた「燃料・石炭」は、どのような犠牲の果てで掘り起こされたものであったのか。そして「それ」を得るための犠牲はどう生まれどうその声は消し去られたのか。そしてその「声」を現代を生きる日本人に突き付けることはできないか。ずっと僕はそれを考えていました。 それには、ペンの力、すなわち「Speculative Fictionの力(SF=寓話)」しかないのではないかと思うようになりました。「僕たちが生きる現実」を表、「『日本書紀』『古事記』に書かれた記述」を「為政者が自己正当化のためのプロパガンダに書き換え続けた裏」ととらえ、その狭間で闇に葬られた「声なき声」を「第三界」として、毎回シリーズは続いていきます。 そして本作は、前作を読まれた読者皆様からの反応への反省を含めた構成をとっているつもりであります。曰く「クライマックスの盛り上がりが物足りない」「『古事記』『日本書紀』の読み取りばかりにウェイトを置きすぎる」などなど。あからさまな中傷やアンチ罵倒をノイズとすれば、他はどれもどれも頷けるご意見だったので、「ヒット作家」を目指している僕としては(笑)今回は前回よりも素直にエンタメに仕上げたつもりであります。 結果「市川大賀らしさが薄れた」「よくある既存の退魔物ジャンルになり下がった」等の「新たな苦言」を頂く覚悟は承知していますが、現実の日本国家が招いた惨劇と問題を、より多くの人達に共有してもらうためにはあえてステレオタイプの箱を用いることも一つの手段だと判断、今回の上梓に至ったというわけです。 本作はもちろん前作に続く『折口裕一郎教授の怪異譚』シリーズ第二弾であります。前刊で「葛城山」で「土蜘蛛」と、「紀伊新宮」で「地之龍」と遭遇して事件を解決に導いた折口君以下三人が、今度は「北九州」を舞台にして長らく民話伝承では「愛くるしい妖怪」とされてきた「河童」の抱く怨念と慚愧と相まみえるというのが今回のメインストーリーになります。 僕は初単著『スマホ・SNS時代の多事争論 令和日本のゆくえ』からも訴え続けているように、この国の発展・繁栄は、決してよくあるノスタルジィ漫画のような「日本のお父さんたちが頑張ってきたから」などというお花畑夢想で語り尽くせるものではないと思っています。 無謀で愚かな大東亜戦争含め、近代国家・日本を支えてきたのは、他ならない「大東亜共栄圏思想」に巻き込まれて植民地と奴隷化を余儀なくされた亜細亜諸国の犠牲の上に成り立った「繁栄」なのです。 「そこで圧殺されてきた声」が、この物語の主役なのです。 そこには深い悲しみと怨嗟の響きだけが残されています。今回の物語の主題は「恐怖の事件の謎を追え。怪奇な事件を暴け」でありました。 だからでしょう。前作からのレギュラーの三人は、先ほども書いたように『ウルトラQ』の主役トリオがモチーフですが、今回ゲストで登場する「民俗学者の的矢忠」も「警察庁刑事局広域捜査特別班警部に所属する牧史郎」も「久留米市の産業振興課課長、野村洋」も、その名前(特に牧は人物造形も)は同じ円谷プロが1968年に制作した特撮ドラマ『怪奇大作戦』から拝借しています。 FT新聞をお読みの皆さん、どうかこの謎解きと知的ゲームと「この国の真実」と、楽しみながら向き合ってみいませんか? 二冊ともAmazonで書籍、kindle版ともに絶賛発売中です。よろしくお願いいたします。 『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』 https://www.amazon.co.jp/dp/B0BFJRB9Z4 『折口裕一郎教授の怪異譚 佐賀 福岡 水底の声』 https://www.amazon.co.jp/dp/4824611857 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月13日木曜日

ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.8 FT新聞 No.4950

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.8  (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!  本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。  ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。  冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロ。そして従者に「面白いこと」を愛するコビット族のヨンという布陣で進んでいきます。  前回vol.7では、〈怨霊列車〉の車掌が登場。切符を切るはさみで人体に「パッチン♪」と刻印することが大好き、という特殊な癖をお持ちのお方でした。シグナスくんに興味津々の車掌さんに対し、勇気ある十二歳は刻印を承諾。耳たぶを「パッチン♪」とされることで事なきを得ました。  先頭車両まで残すは一両。  次の車両では何が待ち受けているのでしょうか?  なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。  ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。    前口上はこれでおしまい。  いざ出発と参りましょう!  ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨14枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料1食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:6 ・器用点:3 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし    ◇ [8号車]31:アンデッドになった乗客  残すところ、車両はあとふたつ。  次の車両を過ぎれば、〈怨霊列車〉の主に行き着くはずだ。車掌に切られて熱を持った耳に、夜風が気持ちよかった。シスターから買ったワインで洗って簡単な手当は施したものの、どんどん腫れてきている気がする。  列車の目的地は何処なのだろうか。車掌に聞いてみれば良かったのかもしれない。攻略の手がかりになった可能性もあるのに、迂闊だった。  先に連結部を跳んだヨンが、異常なしと手招きする。  シグナスも慎重に渡って行く。  古城の跡を発して如何ほどの時が過ぎたのだろう。長い夜であることに違いないが、まだ明ける気配は無さそうだ。シグナスはがっかりした。怨霊と名乗るくらいだから、朝の光には弱そうなものなのに。  扉を開けて、車両に踏み込む。今度の車両は拍子抜けするほど静かだった。それでも警戒してクロを鞘から引き抜くと、恐ろしいほど不機嫌かつ乱暴に〈おどる剣〉はシグナスの手のひらを振り解く。 「見せてみろ、シグナス」  クロの声には紛れもない怒りがこもっている。 「全然どうってこと……」 「見せてみろ!」  宙に浮いたクロから切先を突きつけられ、シグナスはぎくりとした。ゆっくりと顔を横にして切られた耳たぶを向けると、クロはシグナスが切先で突いて見聞し、 「腐れ落ちないことを祈るんだな」 「やめてよ」 「そうやって体が腐った奴を、俺はそれこそ腐るほど知ってるんだぞ」  そこでシグナスの背中に隠れていたヨンがひょいと顔を出して、取りなすように口を開いた。 「いやあ、でもねえ剣どん」 「誰が〈剣どん〉だ」 「剣どんは剣どんでしょうよう。そんな調子でシグにもカッコいい二つ名は必要じゃございませんか、え、剣の旦那。おたくの国の大立者といったら〈黒真珠〉で〈歌養いの騎士〉ブラークなんぞと申しますでしょう。ですからよう、〈耳欠〉のシグナスとかなんとか」 「みみかけ」 「良い感じじゃね、シグ? どうよ」 「馬鹿馬鹿しい。シグナスも喜ぶんじゃない、おい!」 「良いじゃんかクロ、ひとつくらい勲章があったってさ。僕だってブラーク様みたいに〈黒真珠〉とか言われたいし、サー・ノックスだって〈王女様の猟犬〉って言われてるんでしょ」  〈おどる剣〉は苛立ちも隠さずに空中でスピンした。 「クロ!」 「くそ、浮かれるのは勝手だがな、せいぜい生きて帰れるように気を引き締めておけ。分かったなシグナス」 「うん」 「ああ、子守りは疲れる」  クロは空中に横たわり、まるでやる気の失せた修道女めいた怠惰な空気を漂わせる。シグナスは苦笑して、中扉を開けた。そしてむせた。客室から噴き出す匂いの酷さにである。刺激臭を吸い込んだ途端に、視界が涙で霞む。 「うげぇーっ」  ヨンが鼻を摘んで言った。 「何だい、こいつぁ」 「来るぞ、構えろ、不死者だ!」  こんなときは鼻のないクロが羨ましくなる。座席に腰掛けていた人々が立ち上がってこちらを向いた。顔の造作がおかしい。それで言うなら体もだ。腐って半分ずり落ちた顔に引きずられるように、半身が傾いている。それがよたよたとこちらに近づいて来ていた。相手の人数は多く、狭い客車内では囲まれて潰される恐れがある。    (※お出でになりましたのはその名もずばり〈アンデッドになった乗客〉。出現数5と出まして、かつ反応は「常に死ぬまで戦う」。しかしレベルは3と低い上に特殊能力も無いので、落ち着いて切り抜ければいけるでしょう。クロの技能は温存して、1ラウンドの接近戦から。シグナスがクリティカルからの成功、クロもヨンも成功して、一挙に4体を撃破。防御も無難に成功しました。よしよし!)   「シグ、こっちの扉を開けるよ!」  びょうびょうと背後で風が叫んだ。ヨンの作戦を理解したシグナスはあえて中扉から先には入らず、不死者たちを待ち受ける。クロも異は唱えない。 「やったれ、耳欠のシグ!」 「はいっ!」  どっと殺到して来た不死者の腹を、シグナスは剣で刺し貫いた。ずくずくとした柔らかな手応えに肌が粟だったが、そんなことは気にしていられない。ぐっと体重をかけてくる相手の力を誘導し、互いの立ち位置を入れ替えるように勢いをつけて背後へ斬り抜けた。足元の覚束ない不死者は停止できず前進を続け、夜空に続く後扉から落下する。同じ手法でもう一体をシグナスは突き落とし、続けてクロが、おまけにヨンまで調子良く不死者を車外に厄介払いした。    (※2ラウンド。シグナスは攻撃失敗ですがクロが成功したため、すべての敵を倒すことに成功。勝利です)    最後の一体は体格の良い剣士のもので、これはやや苦戦したが、シグナスが剣を押し止める間に背後に回り込んだクロが突き飛ばすと、夜空に消えていった。  新手の気配はないと判断して、客席に挟まれた通路に足を踏み入れる。腐臭がこびりついていた。彼らはいつからここにいたのだろう。自分たちと同じように、物申すために先頭車両を目指していたのかもしれない。 (順番待ちしながら死んじゃったとか)  と、不吉かつ不謹慎な想像がよぎり、シグナスは頭を振って追い払った。 (別のこと考えよ。例えば車掌さんの……あれ?)  車掌との一幕を思い出したところで、引っ掛かりを覚えてシグナスは足を止める。 「シグナス、どうした?」 「ねえクロ。車掌さんの言ったこと覚えてる?」  ふむん、と〈おどる剣〉は曖昧な返事をした。怒り狂ってろくに聞いていなかったのかもしれない。その怒りがペット呼ばわりされたことに端を発しているのか、それともシグナスが進んで傷つけられたことに対してなのかは、シグナスにはよく分からなかった。 「車掌さんがさ、確か〈久しぶりのお客様〉って言ったんだ」 「それがどうした」 「や、だって、僕たちの少し前に骸骨遣いのサー・グロリアが乗車したんじゃないの?」 「うむ……」 「サー・グロリアはさ、僕たちよりも先に進んでるはずじゃん。ここまで会わなかったんだから」 「そうか、車掌が会っていなかったのは不思議だとお前は言うんだな、シグナス」 「うん。だよね?」 「いっぱしの探偵みたいになってきたじゃないか。その路線で詩を作ってもらえ」 「からかわないでったら! ねえヨンさ……」  その時、いたずら者のコビットが腐臭も腐肉もものともせず座席によじ登り、シグナスの間近ながら死角になる位置に陣取って、 「ぶぉあわわー!」  と迫真の演技で不死者の真似事をしたものだから、シグナスは肝を潰して尻餅を突いてしまった。 「よよよ、ヨンさぁん」  情けない悲鳴を上げるシグナスに、コビットのヨンは、 「うけけけけ」  と愉快極まりないという様子で笑い、車両前方へ意気揚々と駆けていく。 「今のとこも歌ってもらうんだーぜ、シグ!」 「……シグナス、分かっただろう。イカれてる。だから俺はコビットなんぞ嫌いなんだ」  十二歳のいたいけなる従騎士は、正体不明のものでネチョネチョした床から尻を引き剥がし、大きく溜め息を吐いた。しかしそれであっても、シグナスはヨンのことを憎めない。面白い仲間と思っているのである。    ◆   [先頭車両]最終イベント  シグナスは、間近に見る先頭車両の姿に度肝を抜かれた。巨大な龍の頭骨と車両とが、金属のからくりを通じて一体化している。チャマイの匠であれば、あるいはこのように途方もない機械も創造できようか。彼の地の匠は、クロの如き〈おどる剣〉すら製作するのだと聞くから。しかしシグナスには、やはり人の手が生み出せるような代物ではないと感じられるのだった。  ぽうーっ、と高く汽笛が鳴る。龍の頭骨の天辺につけられた煙突から、毒々しい蛍光緑の煙が激しく噴き出して夜空に流れた。まるでシグナスたちの到着を歓迎、あるいは警告するようである。  先頭車両の客車部分は、今まで過ぎてきたものに比べてやや背が高い。やはり主人の居所となれば、城であれば玉座の間という場所であろうから、一際豪華なのも頷ける。その先に細長い円筒状の空間があり、頭骨の裏と接続している。  加えて龍の頭骨そのものの巨大さにも、シグナスは畏怖の気持ちを抱いた。主人ノックスの父であるブラーク様が倒したという、ローレンシアの龍。それも、このような大きさだったのではないだろうか。事の善悪は横に置いて、巨大な生物が生きていた証にシグナスは胸が高鳴った。 「行けるか、シグナス」  クロの声に我に返って、シグナスは頷く。すっかり魅了されていた。 「ヨンさんは? あれヨ……うそ、もう渡ってる!?」 「ほっほーい、おもろは一番乗りでこそさ!」  コビットはいつの間にか先頭車両の扉に取り付いて、ガチャガチャやっている。 「シグナス、慎重に進め。いかれコビットに影響されてはならん」 「うん」  連結部を渡った。扉は不具合があるのか、シグナスとヨンが力を合わせてようやく開く。 「ボスの寝床にしちゃあ、ちょいとショボいね」  ヨンがウィンクしてみせた。それくらいショボい相手だったら良いのだけど、と思ってシグナスは少し肩の力が抜けたように感じる。笑いにしてしまうことも、大事だ。 ところが足を踏み入れた途端、さしものヨンも顔を曇らせる。シグナスは即座にクロを鞘から解放した。  客車の内張は、躯(むくろ)であった。壁は大小様々な、種族も性別も職業も異なる躯の羅列で出来ている。細部を観察すれば、ひどく古めかしい鎧の持ち主も並んでいた。 「何これ……」 「最悪の収集癖を患っているらしいな」 「おもろではある」 「ではない! このイカれコビットが。シグナスの教育に悪いだろうが」 「分かったよシグのママン」 「おい!」  その時、誰も触れていないのに、内扉が速やかに開いた。三人は顔を見合わせる。危険であると誰もが思ったからだ。 「控室は静かに使うものではないかね、演者諸君。その程度のわきまえはあると思っていたが、所詮は田舎役者であったか。まあ入りたまえ。オーディションの時間だ」 低く落ち着いた男の声である。権威あるものの尊大さが骨の髄まで染み付いている感じがした。  シグナスを先頭に客車の内側へ踏み込む。ふたりの人間が、一行を待ち構えていた。ひとりは玉座に腰掛けた男。これが先ほどの声を発したのだろう。ほの暗い照明のせいだろうか、その顔の肌艶からは血の気が感じられない。玉座は、案の定というべきかもしれない。内装と同じく無数の躯で出来ている。 もうひとりは——。  シグナスは反射的に剣を抜いて構えた。因縁の女騎士グロリアが立っていたからである。  しかし様子がさらにおかしかった。表情がない。シグナスたちを見ようともしない。いや、瞬きすらしていないのだ。 「そなたが、ロング・ナリクのシグナスだな」  シグナスは女騎士から視線を引き剥がし、玉座の主に向き直る。 「良い目をしておる。怒り、恐怖、それにも勝る使命感。それは写身のも欲しがるわけだ」 「……写身の……?」 「黙れ! 口を開いて良いと、いつ許可した! このダゲン・ラ・バーゲズに従騎士ずれが質問するなど無礼千万。お前の主人は礼儀すら教えんかったと見える」  玉座の肘掛けをどんと叩くと、肘掛けの材料にされていた人間の手が、許しを乞うように指を開いてわなないた。  シグナスは二の句が継げない。これ以上は彼を怒らせない方が良いと思ったのと、後は「身分が高い者には礼儀正しく接さねばならぬ」という従騎士たる者の心得が制止したからであった。 「とまれ、歓迎しようナリクの従騎士よ。幾年待ったことか。三十年ぶり、いやもっとか? 悲しいかな、我が目にかなう役者は少ない。ナリクに原石がおるとは考えもしなかったが、持つべきものは友と時だ。良い報せだったと後で返礼をせねばならんな。さて、無駄話はこれくらいで良い。オーディションをせねばならぬ。見目がよろしくても大根役者ではつまらん。分かったか? 分からんのであれば質問のひとつでも許す。くるしゅうないぞ」  鷹揚に手を振ってシグナスに質問を許可すると、男は玉座の奥深くにどっかりと座り直した。 「バーゲズ卿」  シグナスは慎重に口を開く。 「役者とは、何をお求めなのです」  玉座の男が哄笑した。 「飲み込みの悪い子供だ! いいぞ、お前くらい鈍い方が釣り餌にはよかろうて。ほれよう見てみい」  躯の並ぶ壁を、躯の玉座に身を預けた男は指差す。ずらりと並ぶ躯の中に、ぽっかりと一人分空いているところがある。シグナスは理解した。このダゲン・ラ・バーゲズなる男は、この空白にシグナスを詰め込もうとしている。 「理解は成ったか? 不合格の場合はそこに並ぶ栄誉は与えられんぞ。必死で演ずるが良い。では始めよう」  男がパチンと指を鳴らすと、それまで棒立ちしていた女騎士グロリアが突然動き出した。先だって対峙した時とは全く違う、ぎくしゃくとした不自然な身のこなしである。ただ目だけには生気が宿っており、戸惑いに瞳が揺れ動いていた。 「サー・グロリア!」  シグナスが呼びかけると、女騎士はがくがくと口を震わせながら、言葉を紡ごうとする。 「にに、ににげ、ろろ、しょう、ねねねん」 (逃げろ、だって……?) 「ここにいい、ては、いいいいいいけな」 「演者が台本以外のセリフをしゃべるな!」  男が怒鳴って玉座を叩くと、グロリアの口がガチンと音を立てて閉じ、その目から最後に残った理性が失われた。腕利きの騎士らしい凄まじい速さで剣を抜くと、あっという間に距離を詰めてくる。    ◇  今回のリプレイはここまでです。  ついに〈怨霊列車〉の主ダゲン・ラ・バーゲズと対面。  「写身の」は前回『写身の殺人者』から繋がっています。『写身の殺人者』では真犯人を成敗したはずなのに、最後の最後に鏡の中から笑いかけてくる謎の存在が示されました。ですからきっと、シグナスくんが倒した写身の殺人者だとされた人物すら「真の」殺人者ではなかったのでしょう。ということで、人外の黒幕同士のつながりを匂わせてみました。さあ、こちらの因果の糸もどう紡がれていきますか!  それでは、次の車両でお目にかかりましょう。  良きローグライクハーフを!   ◇    (登場人物)  ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。  ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。  ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。  ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。  ・グロリア…サン・サレンの女騎士。バーゲズの命令でシグナスに襲い掛かるが……。  ・ダゲン・ラ・バーゲズ…〈怨霊列車〉の主。役者と称して躯(むくろ)を蒐集する、最悪の手合い。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月12日水曜日

第3回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4949

第3回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「エメラルド海の探索」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフ「エメラルド海の探索」の冒険譚です。 今回の主人公たちは、元剣闘士で熟練の傭兵ヴァルグと、彼と行動をともにする、左腕に「獣の腕」を宿す少年ハルト。 貿易都市ビストフの領主マキシミリアンから受けた依頼はクラーケンの討伐。 討伐船を賜った貴族ハーツデイルを船長に、まずは海域を封じる海賊の討伐に向かいます。 コビットの船員たちに、熟練の女性砲撃手ニーナと、新米砲撃手のポール青年を加え、「クラーケンぶっ殺し号」の航海は続きます。 【ヴァルグ レベル18 技量点2 生命点9 筋力点4 従者点9】剣闘士(元) 【ハルト レベル8 技量点1 生命点7 筋力点3 従者点8】獣使い 「クラーケンぶっ殺し」号 技量点1 生命点9 攻撃回数2 【砲撃】ダメージ2点 ●アタック01-6 アクアデーモンの襲撃【ポール】 マーフォークとの遭遇のあとは、また落ち着いた航海が続いている。 一度輝石の鱗鳥が、マストを止まり木がわりにしたくらいだ。 ウロコに覆われた奇妙で巨大な鳥で、爬虫類を思わせる外見をしている。 戦いになれば、あまりの強さに手がつけられない。 だから、魚以外の肉が欲しい船員も、あの鳥には手を出さない。 刺激しなければそうそう襲われることはないからだ。 ヴァルグが餌がわりに食料を置くと、それを脚でつかんで飛び去っていった。 やがてマドレーン海域を抜ける。 潮流の関係で海の色が変わってきたらそこがエメラルド海だ。 私は海に詳しくないハルトに、そんなふうに説明した。 ハーツデイル船長の予測では、エメラルド海に出る前に海賊船の襲撃があるだろうとのことだった。 だから、コビットの見張りも厳重に警戒していた。海賊船の出現を。 でも、そのせいで違う怪物の接近を許してしまった。 そいつらは、飛びあがるようにして、突然甲板に降り立った。 「アクアデーモン!」 誰かが叫ぶ。 見た目は人型。青緑色のウロコに覆われている。 末裔やマーフォーク。似たような海の住人には出会ってきたけれど、そのいずれとも違う。 やつらは、海中を潜航するように船に接近し、吸盤のついた手で船の側面をよじ登る。 だから発見されにくいのだ。 アクアデーモンの戦法は、一撃離脱。 船に上がるなり人をさらい、海に飛び込む。そうしたら後はやつらの思うがままだ。 すでに複数のアクアデーモンの侵入を許してしまっている。 「チイッ! 数が多い!!」 「ヒース!」 「ギャウ!」 戦いはヴァルグたちの領分だ。 火吹き獣がハルトの指示に従い、炎の舌を伸ばしながら火の玉を吐き出す。 それは船側から上がったばかりのアクアデーモン二体に命中し、たちまち海へと落とした。 アクアデーモン、海の魔物だけに、やはり炎が弱点なのか。 二体を落としたくらいでは、すでに甲板に上がったアクアデーモンたちは止まらない。 それぞれが目標を定めると、対象を海中に沈めようとタックルを仕かけてくる。 ヴァルグは二本の片手剣でしっかりと防ぎきる。 ハルトは巨大な槌を甲板に降ろし、回避する。 火吹き獣は炎の舌でけん制する。 捕獲に失敗したアクアデーモンたちは、成果はなくとも海に飛び込んでゆく。 そして最後の一体が狙いをつけたのは……私だった!? 私はなす術なくアクアデーモンにがっしりとつかまれ、そのまま海へと死のダイブを敢行されてしまった。 視界に入る甲板の距離が徐々に遠のく。そこにハルトの姿が急に大映しになった。 ハルトは、すでに甲板から私目がけて飛び出していたんだ。私を助けるために。 飛び込む勢いのまま大振りした「獣の腕」をアクアデーモンめがけて振り下ろす。 アクアデーモンが殴り飛ばされると同時に、私はぐいっとハルトの方に引き寄せられた。 そしてそのまま海へと落下した。 「テメェはバカか! 泳げねェくせによ!!」 船からヴァルグの叫びが聞こえる。 ハルトは、泳げない? 見るとハルトはすでに水を飲んで、ぐったりしている。 私は慌ててハルトを支え、顔が上になるように、あお向けの体勢にした。 同じくあお向けになった私の胸のあたりにハルトの顔がくるようにして支える。 厚手のマントは水を吸って重い。隠そうとしている腕が皆の目にさらされてしまうが、外さざるを得なかった。 「なんとかなんねェか! 浮くものを!」 「ヴァルグ落ちつけ、今用意させている」 「これが落ちついていられるか!!」 やがて甲板から、ロープのついた樽が投げ込まれた。 私は波にあおられながらゆっくりと接近し、どうにか樽につかまって浮力を確保した。 アクアデーモンの追撃がないのは幸いだった。 一度捕獲に失敗したらすみやかに去る。 それがやつらの流儀であり、習性なのだろう。 私は、私の腕の中の少年を見る。獣の腕の大きさのせいか、とても小さく見える。 彼に救われたのは、これで二度目だ。 一度目はクラーケンの触腕に襲われたとき、そして今。 彼は命の危険もかえりみずに、船外に飛び出した。よく知りもしない私なんかを助けるために。 この少年を死なせるものか。 そうして、救命艇によって助けられるまで、なんとか持ちこたえることができた。 [プレイログ] 【65 輝石の鱗鳥】 【輝石の鱗鳥 レベル6 生命点3 攻撃回数2】 反応 サイコロの出目5 ワイロ(食料2個) ヴァルグが食料2個を与え、終了。 【54 アクアデーモン】 【アクアデーモン レベル3 6体】 反応 サイコロの出目5 敵対的 【0ラウンド】 ヒースの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル アクアデーモン6→5  追加攻撃 サイコロの出目3 クリティカル アクアデーモン5→4 アクアデーモンの引きずり込み(目標値3) ヴァルグ サイコロの出目4 回避 ハルト サイコロの出目2+技量点1=3 回避 ヒース サイコロの出目2+技量点1=3 回避 ポール サイコロの出目1 引きずり込まれる 【1ラウンド】 ヴァルグの攻撃 サイコロの出目1 外れ ハルトの攻撃 サイコロの出目4 アクアデーモン4→3 アクアデーモンは半減したため逃走。宝物判定なし。 ●アタック01-7 海賊船「鮮血号」【ポール】 ハルトをひとまず甲板に寝かせる。 マントがないから、黒毛に覆われた「獣の腕」がむき出しだ。 船の乗組員たちは、そのハルトの姿に息を呑んだ。 「この腕がなんなのか、説明を求めてもいいか?」 ハーツデイル船長が代表して、ヴァルグに問いかけた。 「俺も詳しくはわからねェが、厄介な呪いにやられてる。そこらの解呪師にゃ解けなかった」 「そう……なのか」 「霊廟の財宝を守る霊に呪われたとき、俺はやられたがコイツはなんともなかっただろ? ありゃ多分、より強力な呪いを受けてるせいではじかれたんだな」 「……」 「戦いになるとヤベェ力を出すが、今ンとこ他に影響はねェ。だから気にすんな」 「気にするなと言われてもな……」 そのとき、ハルトが小さなうめき声とともに、目を開けた。 私はたまらずハルトにとびついた。 「ハルト、私だ。ポールだ。私がわかるか?」 「あ……、ポールさん、無事だったんすね」 「ああ、ああ。君のおかげで助かったよ」 そこにヴァルグのドでかい声が降ってきた。 「テメエはバカか! 泳げもしねェクセに海に飛び込むなんざ」 「夢中だったんだ。ごめんなさい」 「ヴァルグ……さん、私は彼のおかげで命拾いしたんです。だからそれ以上は」 「俺ァな、テメエの命を大事にしろって言ってんの! 怒っちゃいねェよ!!」 どう見ても怒っているようにしか見えない。 ハルトは、自分がマントを身につけていないことに気がついたようだ。 「ハルト、すまない。海に浮かせるために外さないわけにはいかなかったんだ」 「大丈夫。どの道戦いになれば見せるモノ。師匠からも、『そンときゃためらわず使え』って言われてたし」 「そうそう、早ェか遅ェかの違いでしかねェのよ」 ハルトが意識を取り戻し、船内に安堵の空気が流れたそのときに、見張りの声が高らかに響いた。 「見えました! 海賊船『鮮血号』です! 右舷前方! まっすぐこっちに向かってきます」 「最悪なタイミングだな! クソが」 「……やれます。オレの武器をください」 「武器って、これのこと?」 ニーナが巨大な槌を両手で引きずりながら持ってきた。 「そう。ありがとう」 ハルトは荒い息を吐きつつも身体を起こし、「獣の腕」で槌を軽々と受け取る。 その腕は、恐ろしいものというよりも、頼もしいものとして私の目には映った。 「いけるか?」 「もちろん」 そうしてハルトは、師であるヴァルグの横に並び立った。 「ニーナ、ポール、砲撃準備急げ。全船員、武器を取れ」 ハーツデイル船長がてきぱきと指示を飛ばす。 私とニーナは砲座へと向かう。 そうしている間にも、海賊船「鮮血号」は、みるみる距離を詰めてくる。 船同士の戦いでは、位置取りが重要だ。 砲門は横腹についている。そのため、敵船に対しどのように有利に側面を向けられるかが重要となる。 「海賊船の馬鹿げた突貫にはつきあっておれん。舵を切れ。迂回して並走、接舷するぞ」 正面から突っ込んでくる無謀な鮮血号に対し、巧みな操舵で迂回する。 操船技術は明らかにこちらが上だ。 「撃て!」 迂回の軌道に乗ったことで、砲門が敵船を捉えた。 すかさず砲撃を仕かける。 ニーナの砲撃は鮮血号の船側に命中。木片が飛び散る。 私の砲撃はマストのやや上方に当たった。鮮血号の船速が削がれた。 「いいぞ、よくやった」 クラーケンぶっ殺し号は、鮮血号を後背から捕捉、並走に移行した。 鮮血号はガレー船だ。こちらよりも船体がやや低い。 鮮血号から、次から次へと鉤縄が飛んでくる。 鈎が舷側にがっちりと食い込み、ロープがピンと張って二隻を引き寄せる。 船腹がこすれ合い、木が軋む耳障りな音が響いた。 船が大きくよろめいた。 そこに鮮血号側から渡板が幾本もかけられる。 「あたいらの船を傷モノにした罰だ。あんたらの船をまるごといただくよ!」 鮮血号の甲板では、血のように赤い長コートを羽織った女船長が号令をかけている。 海賊船の船員の多くはオークだ。渡板を渡ってくる。 「白兵戦だ。気を引き締めろ!」 私とニーナも砲座を離れ、それぞれ武器を取った。 ●アタック01-8 海賊船の戦い【ハルト】 オレの目の前では、今まさに海賊と船員との戦いが繰り広げられていた。 「一対一では戦うな。海賊どもを囲い込め!」 白奴が右へ左へと、細かな指示を飛ばす。 こんな、敵味方が入り乱れての戦いは始めてだ。 白奴は、味方の手が薄いところを見るや、援護に回る。 カタナをすらりと抜き放ち一閃。たちまち海賊オークが次々と斬り倒されていく。 なにが戦力外通告だよ。もしかして、オレより強いんじゃないか? 「俺たちのやることはひとつだけだ。わかってるなハルト」 「ああ。もちろん。親玉をぶっ潰す」 「そのとおりだ。いくぜェ!」 オレは敵が敷設した渡板から、鮮血号へと乗り込んだ。すぐにヒースが続く。 師匠は豪快にも渡板を使わず、そのまま鮮血号へと飛び降りた。 甲板の女船長と対峙する。周囲には海賊オークども。その数は十体以上。 「おやおや、そんな少人数で乗り込んでくるなんて勇敢なおバカさん」 女船長から漂ってくるのは、ものすごい臭気だ。肉が腐った臭い。 近くで見て気づく。女船長の服は汚れきっており、ボロボロだった。 頬肉も一部そげており、ひゅーひゅーと音がもれていた。 「アイツはもう、死んでいる。『アンデッド』ってやつだ」 師匠はニヤリと笑った。 「俺の得意分野だ」 師匠の持つ剣の一本は、悪魔や不死の敵に絶大な威力を発揮する聖剣なのだ。 「死んでも宝を欲しがる強欲ババアにゃ、お仕置きが必要だな!」 「言わせておけばあ! やっておしまい!」 海賊オークどもがオレたちを取り囲む。 「獣の腕」に熱がこもる。戦いたい、という衝動がオレを蝕む。 師匠は目の前の甲板に、二本の剣を突き刺した。 素手で身構える。 「なめてんのかい?」 「見せてやるよ。大勢相手にするときの戦い方ってヤツをよ!」 ヒースが火の玉を放ち、海賊オークの顔面を燃やした。 それが開戦の合図だった。 師匠は素早い動きで海賊オークに接近すると、顔面目がけて剛腕を叩きこむ。 後背の敵めがけて鋭い蹴りを放つと、次の瞬間には身体を沈め、下から突き上げる拳でまた一体を倒す。 オークはたちまちその数を減らしてゆく。 「な、なんて強さだい」 「チッ。ウゼェ呪いを食らったせいで動きにキレがねえな」 「これでまだ全力じゃないってのかい」 いつもは武器を手にして戦っている師匠だけど、素手での戦いの方が動きがいいように見えた。 もしかしてこれが、闘技場の剣闘士の戦い方なのかな。 オレも負けてはいられない。 獣の腕を振るい、力まかせの槌の一撃で、海賊オークを叩き潰す。 しかし横から別のオークに体当たりをかまされ、大きくよろめき、片膝をついてしまった。 いけない。獣の腕の闘争本能に身を委ねすぎてしまった。しずまれ、オレの左腕よ。 「敵は目の前だけじゃねェ。常に周囲に気を配れ」 そう言う師匠は同時に何体を相手にしているのか。 オレとヒースがそれぞれ一体ずつを倒す頃、師匠は四体を甲板にはいつくばらせていた。 残りは四体。師匠がにらみを利かせると、たちまち逃げ去ってしまった。 「置いて逃げられるとか、船長のクセに人望ねェのな、テメエ」 「あんたの強さがデタラメすぎんだよ」 「言ったろ。俺は調子悪りい。だりィんだよっ!」 師匠は甲板に突き刺した二本の剣を抜き、構えた。 「とっとと終わらせる。テメエにはきっちり聖剣を叩きこんでやるからよ!」 そして師匠の連撃が決まり、たちまち女船長を追いつめていく。 「ヒース、火を!」 「ギャウ!」 ヒースに指示して、オレも隙を見て殴りかかる。 ヒースの火の息は女船長にダメージを与えたが、そのためにオレの接近に気づかれ、あっさりかわされてしまった。 女船長がきつい目でオレをにらみつける。 「ハン。卑怯とでも言いたげだな。下っ端を大量にぶつけといて、テメェは一対一で戦うつもりだったか」 師匠が挑発した。 女船長は、そんな師匠の安い挑発に乗り、オレと師匠へ同時にしかけた。 師匠の狙いは敵を怒らせ、集中力を乱すことにある……と思う。ただの素かもしれない。 けれども、女船長の激高ぶりは、予想の上をいった。 オレは攻撃を受けそこね、防いだ獣の腕を浅く傷つけられてしまう。しかしその血は、逆に、オレの闘争心をかきたてた。 そして師匠の方も、女船長の剣をかわしきれずに傷を増やしていた。 女船長は愉悦の表情を浮かべたが、すぐ次の瞬間、驚愕に目が見開かれた。 師匠の動きは傷を負わせられながらも止まらず、まっすぐ女船長を切り裂いたからだ。 自身が傷つくのをまったく恐れない、常人にはなしえない動きだった。 「俺の体の傷はすべて、反撃の証だッ!」 師匠が吼える。女船長はうろたえる。 その隙を逃さず、師匠、オレ、ヒースが追撃する。 女船長は防戦一方だ。 そのとき、女船長が苦しまぎれに放った一撃が、師匠にヒットした。 反撃におびえ、警戒する女船長。 しかしその反撃がないと知るやほっとしたような表情を浮かべ、……そのまま固まった。 傷を負いながらも、師匠が笑っていたからだ。 女船長が、誘い込まれたと悟ったときにはもう遅かった。 オレは背後から、動きを止めた女船長の脳天に、容赦なくトドメの一撃を振り下ろした。 「ハッ。俺の動きに気ィ取られ過ぎたな」 女船長は、何も言わずに倒れ伏した。 師匠は女船長が身につけていたボロボロのペンダントを取り、オレに投げてよこした。 「戦利品だ、とっとけ」 船長を失い、戦いの趨勢は決した。 海賊たちは、ある者は投降し、ある者は逃亡の望みを賭けて海へと飛び込んでいった。 オレたちは意気揚々と、「クラーケンぶっ殺し号」へ帰還した。 次回、ビストフへ一旦帰還し、次なる航海へ。 [プレイログ] 【最終イベント『鮮血号の女船長』】 【鮮血号の女船長 レベル5 生命点5 攻撃回数2】 【部下×11 レベル3】 【0ラウンド】 ・ヒースの攻撃 サイコロの出目4 命中 部下11→10 【1ラウンド】 ヴァルグは武器を置いており、【格闘術】使用。 【格闘術】〈弱いクリーチャー〉に対して素手攻撃の【攻撃ロール】を行ったさい、サイコロの目が4以上かつ攻撃が命中した場合はクリティカルが発生します。 ・ヴァルグの攻撃 サイコロの出目3 命中 部下10→9 ・ハルトの攻撃 サイコロの出目3 命中 部下9→8 ・ヒースの攻撃 サイコロの出目3 命中 部下8→7 部下7人の攻撃 ・ヴァルグの回避 サイコロの出目3、3、6で3回とも回避 ・ハルトの回避 サイコロの出目4、1で一回ダメージ ハルトの生命点7→6 ・ヒースの回避 サイコロの出目5、6で2回とも回避 【2ラウンド】 ・ヴァルグの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル命中 部下7→6  追加攻撃 サイコロの出目4 【格闘術】クリティカル命中 部下6→5  追加攻撃 サイコロの出目5 【格闘術】クリティカル命中 部下5→4  追加攻撃 サイコロの出目2+修正0 外れ 残る部下4人は逃走。 【3ラウンド】 ・ヴァルグは素手から武器の持ち替え。 ・ハルトの攻撃 サイコロの出目2+技量点1 外れ ・ヒースの攻撃 サイコロの出目3+技量点1 外れ 女船長の攻撃 ・ヴァルグの回避 サイコロの出目3+修正2 回避 ・ハルトの回避 サイコロの出目6 回避 【4ラウンド】 ・ヴァルグの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル命中 女船長の生命点5→4  追加攻撃 サイコロの出目3+技量点1 外れ ・ハルトの攻撃 サイコロの出目2+技量点1 外れ ・ヒースの攻撃 サイコロの出目4+技量点1 命中 女船長の生命点4→3 女船長の攻撃 ・ヴァルグの回避 サイコロの出目1 命中 ヴァルグの生命点9→8  ヴァルグの【不屈の一撃】 サイコロの出目4+修正2 命中 女船長の生命点3→2 ヴァルグの筋力点4→3 【不屈の一撃】斬撃ダメージを負った際、即座に修正+1で反撃できる。筋力点消費1 ・ハルトの回避 サイコロの出目2 ハルトの生命点6→5 【5ラウンド】 ・ヴァルグの攻撃 サイコロの出目3+修正1 外れ ・ハルトの攻撃 サイコロの出目5 命中 女船長の生命点2→1 ・ヒースの攻撃 サイコロの出目3+技量点1 外れ 女船長の攻撃 ・ヴァルグの回避 サイコロの出目2 命中 ヴァルグの生命点8→7  ヴァルグの【不屈の一撃】 サイコロの出目1 外れ ヴァルグの筋力点3→2 ・ハルトの攻撃 サイコロの出目4+技量点1 命中 女船長の生命点1→0 戦闘終了。 【宝物判定】 ・サイコロの出目3+1 1d6×1d6のアクセサリー サイコロの出目1、1 金貨1枚相当のアクセサリー ●ボロボロのペンダント(金貨1枚)入手 【ヴァルグ レベル18 技量点2 生命点9→7 筋力点4→2 従者点9】剣闘士(元) 【装備】 片手剣(高品質) 初撃のみ攻撃ロールにプラス1 聖剣(片手武器) 【アンデッド】【悪魔】に攻撃ロールプラス1 魔法の鎖鎧(生命点+2 防御ロール+1) 【食料】2 【金貨】20 【持ち物】 ランタン 魔法の大盾(従者の飛び道具防御+1) ハチミツの塊1(生命点+1) ハチミツの塊2(生命点+1) 魔法のつるはし 2回分 【格闘術】【十字剣】【不屈の一撃】【神眼】 【未使用経験点】0 【従者】 ポール(砲兵) ニーナ(砲兵) 【備考】呪いのため攻撃ロールにマイナス1 【ハルト レベル8 技量点1 生命点7→5 筋力点3 従者点8】獣使い 【装備】 槌(打撃/高品質) 初撃のみ攻撃ロールにプラス1 革鎧(生命+2 器用ロール+1) 【食料】2 【金貨】43 【持ち物】 ランタン 蟹座の彫刻(金貨300枚、持ち物欄2消費) 平穏のポーション(船酔い回復、対魔法ロール+2) ボロボロのペンダント(金貨1枚) 【獣血】【凶暴化】【騎馬防御】 【未使用経験点】0 【従者】 ヒース(火吹き獣/技1)炎耐性 ・0ラウンド攻撃からすみやかに1ラウンド攻撃が可能 ・特定のクリーチャーに2点ダメージ ●船 クラーケンぶっ殺し号 技量点1 生命点9 攻撃回数2 【砲撃】ダメージ2点 船の強化 【船体補強】生命点+2 【煙霧放出器】巨大クリーチャーからの防御ロール+1 3ラウンドまで ■登場人物 ヴァルグ 元剣闘士の傭兵。悪名は知れ渡っているが、危険な依頼は後を絶たない。 ハルト 自称ヴァルグの弟子の少年。左腕に「獣の腕」を持つ。 ヒース ハルトが連れている火吹き獣。火を吹く。騎乗生物のため乗ることも可能。 ポール クラーケンぶっ殺し号の砲撃手。砲撃手になりたての青年船員。 ニーナ クラーケンぶっ殺し号の砲撃手。ポールとは知り合いの女性船員。 ヴィルヘルム・マクシミリアン ビストフを治める領主。ネグラレーナを統治するマクシミリアン家と名を連ねる者。 ハーツデイル クラーケンぶっ殺し号の船長にしてビストフの貴族。 白奴 ホビット乗組員たちをまとめるチーフ。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 著者:杉本=ヨハネ 監修:紫隠ねこ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 https://ftbooks.booth.pm/items/4941872 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月11日火曜日

『Monkey business 2』-斥候の犬- FT新聞 No.4948

 挨拶に代えて。  ついに、齊藤飛鳥先生による「ミステリ」としての、しかも「ローグライクハーフ」しての作品、『霊廟館の悪夢』登場!  これでミステリ作家としての先生の味を十二分に楽しめる!  その手ごたえは、本格推理ものとして、あそびごたえがある一本でした!  あまりの喜びに、ついに一本書いてしまいました。  拙作の二次創作に、快く許可を出していただけた齊藤先生に、大いなる感謝を込めて!  つたない作品ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『Monkey business 2』  -斥候の犬-  著:葉山海月 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    冒険者として、やっと独り立ちして十ン年。  君は、今日も殺人的なミッションをタフにこなし、「ああ、今日も忙しい野良犬な一日だった」と、場末の酒場に足を運ぶ。  店内に流れる甘ったるい音楽が、心をマッサージする。  これで、疲れを吹き飛ばすような「彼女」がいればなぁ、と夢想していた。  しかし、思い出すのは、かつて出会った女吸血鬼の館『霊廟館』の事件。  事件自体も、複雑な条件が絡み合い、不可能犯罪に見えた。  しかし、その中でも、ひときわ異様だった一人の少女。  その名はクワニャウマ。  「かわいい」というよりも「たくましい」(特に商魂)という顔をしていた彼女。  にやけているヤマネコのような印象の少女。  何よりも犯人を適当に指摘した時の、みぞおちに入れられた一撃が忘れられない!  あれのおかげで、全身にスパークが走り、犯人を指摘できたのだ。  「高嶺の華」というよりか「高くつくそのへんの花」みたいな彼女を、どうして思い出したのだろう?  不思議に首をかしげていると、「わたしのこと、呼んだ?」と声をかけられた。  見て見ると、あのトンでも少女の面影が残る、「おねえさん」じゃないか? 「なぜ? ここに?」 「あんたはわたしを探せないかもしれないけど、わたしは呼ばれたら飛び出すのがモットー。あんたの居所なんて教えてくれなくても横に立つ」  そういえばこの店の名前が『泥酔の泥沼亭』。流れる曲が『覚えてますか? 愛しい時を』だったことを思い出す。 「へぇ。あんたもお酒、飲めるトシになったんだ」  こちらに運ばれてきた酒は、そう弱くないのを見て、クワニャウマが揶揄する。 「あんたがお酒をたしなむ歳になったくらいには」    当然ながら、話はいつしかあの事件について飛ぶ。  というのが、お互い共通した体験が、それしかないから。 「しっかしねぇ。よくもあんなに細かいところから手がかりを見つけて、組み立てたもんだねぇ」  クワニャウマは「青い月」という、いわゆるかき氷に柑橘系のお酒をまぶしたもの、(この店だけで出す特注品)を注文したところで、語りだす。 「まぁ。たまたま運がよかっただけだよ」  君も注文を終えたので、謙遜しつつまんざらでもない顔で言う。 「わたしも年食った間にいろいろあってね。じゃあね。この謎は解けるかな? 最近、旅先でわたしが『弁護』した事件なんだけど」  ……はは、これが無いと夏がはじまんないんだってばさ。  クワニャウマは、愛しそうに自分の前に置かれた、皿にフルーツが盛られたフローズンカクテルを愛でる。  夜も、君に来た酒も、序の口。  君は早速クワニャウマを促す。  隣国との関係がちょっとキナ臭い国……「T国」とでもしておく……では、建国100周年を祝って「王家の犬」を、広く一般市民からも募集していた。  生まれも育ちも関係無い。とにかく「これは王家にふさわしい!」と思われる逸話を残したワンちゃんを集め、その中で一番優秀な一頭を王家の犬として公式に迎え入れようとしたのだ。 「で、その時に面白いエピソードがあるんだヨ」  彼女は、氷を匙で一口すると、切り出し始めた。  ナンバーワンのエピソードがこれ。  その国が独立戦争を始めたとき、ある斥候がいた。  彼には、いつも一緒にいる家族同然の犬がいて、いっつも行動をともにしていた。  で、切り込み部隊の先導として、敵地に偵察に行き、もしも何かまずいことが起こったら、ぎりぎりまで自分の陣地へ戻って赤い旗を振っていたのさ。  彼は全力を持って期待に応え、部隊からの信頼も厚かった。  そんなある日、敵の一団が、罠をはった。  先もってその部隊の行くところを待ち伏せして、一気に叩こうとしたわけ。  もちろん、その斥候は異常に気づき、仲間のところへかけ戻ろうとしたけど、追っ手にやられて大怪我をした。喉を深く傷つけられ、もはやこれまでか!  そいつが覚悟を決めたとき、その犬が大活躍!  彼は、自分の主人の血で赤く染まった上着を引きちぎって脱がせ、仲間のところへ駆け寄って、それを振るように走り暴れまわった。  その犬の異常さ。そして赤い布を見て、仲間は進撃を中断した。  一部隊の命を救ったのさ。 「いい話じゃないか」  君は正直なところを述べた。  クワニャウマは、皮肉な笑みで答えた。 「ところがね。そううまく世の中が転がるんだったら、わたしは今頃一国の大臣になってる」  それに異議を申し立てた者がある。  自称、「犬の研究家」さ。  そいつが言うことには。 「恐れながら陛下、この話は真っ赤な嘘と思われます。  というのが、犬は目が悪く、白黒なぼんやりとした視界しかございません。色が識別できないのに、どうして「赤い」布を認識できたのでしょうか?」 「この話を聞いて、その斥候の評判は一夜にしてひっくり返った。 『自分の名誉のためだけに、大嘘をついた大悪党』ってなもんね。  喉をやられて、一命をとりとめたやっこさんも、声が潰れていてろくに弁護ができない。かわいそうに、王家を騙した罪で、辺境の地へ流されるとこだったよ」 「それで?」 「そこで、名うての弁護士、クワニャウマ様のご登場」   彼女はニコリ、と向日葵が咲いたような笑顔を繰り出す。  そして、指を三本出した。 「何それ? 3杯おごれってこと?」 「いや、金貨3枚」 「高すぎるよ。せめて3杯おごれ、にしてくれよ」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・作者からの挑戦状。    私は犬でないのでよくわかりませんが、「犬は色を感知できない」ということを前提にします。  それならば、どうしてこのワンちゃんは、「赤い色」を識別できたのでしょうか?  「偶然それを取った」という答えは、面白いですがそれはなしにします。  クワニャウマと、「君」がもめている間に、答えをどうぞ!  制限時間は1分!  どうぞよろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  結局は、この店で一番高い酒を「正解」の代金にするということでお互いの利益は一致したらしい。  クワニャウマ切り出し始めた。  結論から言うと、その斥候が振り回していた布。  そいつには血が染み込んでいたんだな。  なんでも、初陣で斥候をやった時に、自身も大怪我をしたそうで、しかも、あたりに目立つようなものは無い。  そこで、自分の血で染めた下着を振り回して、仲間に危機を知らせた。  それ以来、「初心忘れるなかれ」という意味も込めて、その記念の布を使ってた。  つまり、布には「そいつの血と汗の匂い」が染み付いていたんだな。  で、今回の事案。  色はわからなくても「自分の主人が危機になると振り回している」血と汗にまみれた布がある。  お利口な犬は、咄嗟に機転を利かせて、血まみれの上着を使った。  これが事件の真相だよ。  彼は再び一転して、莫大な名誉と地位を得たよ。  わたしに弁護料を払えるくらいに」 「さぁて、まだまだ夜は長いよ。あんたに話がなくっても、こっちにはつもる話が、たっぷりあるの。なくってもでっちあげるケド。まぁ、その前に乾杯と行こうよ」  クワニャウマは、真顔になって聞く。 「ところで、この勘定は、あんた持ちだろうね」  なんで彼女を思い出したか、それがわかった。  永遠のとてつもなくフリーダムな女、それがクワニャウマだからだ。   ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 本作に登場した酒場『泥酔の泥沼亭』のイメージミニチュア(制作:葉山海月) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/bar1.JPG https://ftbooks.xyz/ftnews/article/bar2.JPG ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年8月10日月曜日

カタログ、作っています☆ FT新聞 No.4946

おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆ 今年は去年よりも、イベントによく出ています。 そこにはそこでしか会えない、FT書房の作品を買ってくださる方と会うことができて、話をすることができて嬉しいです。 また、メール等でいただくおたよりとはまた違った角度の考えを知ることができて、参考になります。 さて、今日の記事に入る前に、蕨之介さんから「モンスター!モンスター!TRPG」のシナリオ公開について、ご連絡をいただきました。 ありがとうございます☆ 油断しているうちに2作品分のメッセージをいただいておりました……失礼しましたm(__)m ☆蕨之介さんからいただいたメッセージ抜粋☆ 今回はギリシャと宇宙を舞台にしたものです。 以前からやってみたかった「聖闘士星矢」チックなギミックを入れた、調子に乗った一作です。 ご笑覧いただけますと幸いです。 「希望の小惑星」 https://kakinokishokai.booth.pm/items/8689846  BOOTHさんにてシナリオを無償公開いたしましたこと、御報告いたします。  クリスさんのキャラクター、ブラックハートとエリカ・アメリカを使わせていただいております。  もちろん、クリスさんには了承をいただいています。 「月の秘密」 https://kakinokishokai.booth.pm/items/8693387 ☆ここまで☆ ◆最近、はじめたこと。 やることが多いのでゆっくりと進めていることがいくつかあるのですが、そのうちのひとつをご紹介します☆ 実は2019年に、FT書房の作品を紹介したPDFを作って、無償公開しました。 作品カタログみたいなもんです☆ ↓FT書房作品紹介 https://ftbooks.booth.pm/items/323032 FT書房は「油断するとすぐに新作を出す」ことで知られている集団です。 イベントでお会いしたファンの方はしばしば、「以前のイベントで何を買ったのか、忘れてしまった」とおっしゃります。 作品紹介のカタログがあれば持っている作品を把握しやすくなるとのことで、この作品紹介は好評でした☆ でも、これ、7年も前のものなんです★ ◆「ローグライクハーフ」「モンスター!モンスター!TRPG」の作品紹介、したいねえ☆ この7年前に作った本を更新したいなあと、最近、思っています。 そう思っていたのですが、ふと「いや、ちょっと違うぞ」と気づきました。 この2019年度版の作品紹介本は、FT書房作品のほとんどが文庫本サイズだったときのもので、それだから文庫本のカタチをしています。 今は「ローグライクハーフ」や「モンスター!モンスター!TRPG」など、B5サイズの書籍が増えています。 B5サイズの作品を紹介するなら、その紹介本もB5サイズにしたい。 つまり……「ローグライクハーフ」や「モンスター!モンスター!TRPG」を紹介する本を作るなら、別のものとして作るのが適切だと、感じたわけです。 そこで私は紫隠ねこさんのご協力のもと、「ローグライクハーフ」の作品情報を確認しました。 公式で書籍化したものだけで16作品、電子書籍も含めると20作品に及ぶことが分かりました。 「ローグライクハーフ」の入り口に最近立ったというファンのためにも、作品紹介を作らないと! そう思い、コツコツ取り組んでおります☆ 「モンスター!モンスター!TRPG」も同様で、どんなものかをまとめています☆ ◆水波流編集長と話したこと。 2026年8月9日(日)に、北澤慶先生が主催するTRPGイベント「TGFF(テーブルゲームファンフェスタ)」に、FT書房も物販として参加してまいりました☆ 古い知り合いやファンの方とたくさんお会いすることができて大満足なイベントだったのですが、そこで水波編集長と顔を合わせて、いろんなお話をしました。 ファンメイドの「ローグライクハーフ」のシナリオとリプレイを合わせると、今や200作品にも到達する勢いなのだそうです☆ しみじみ嬉しいナァと思いました……200作品が公開されている国産TRPGって、そんなに多くはないと感じます。 ◆せめて、公式だけでも! 200作品すべての作品紹介を私が作ることはあたわないのですが、せめて公式作品については、FT書房作品が網羅的に把握できるカタログを作りたい。 今、そう思っています。 FT新聞で配信するシナリオづくりや、ゲームブック制作なども並行してやっていくので、完成するのはだいぶん後になると思いますが……地道に進めてまいりますので、楽しみにしていただけましたらさいわいです! それではまた☆ ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。