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『これはゲームブックなのですか!?』vol.122
かなでひびき
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「犯人はあなたですね? ズギュンバキューン」的な鑑賞ライフを送ってるかなでですが、久々に「これぞゲームブック!」って作品にであったわ!
やっぱりいくら名作でも『コロンボ』『あぶない刑事』づけになってたらダメね。アンテナが低くなっちゃう。
というわけで、今回紹介する作品は『展覧会の絵』(著:森山安雄/創土社)っていう、久々に「ゲームブック」だよっ!
あなたは、にぎやかな、リモージュの市場を歩いている。
平和そのものの皆と違って、あなたは「記憶をなくしている」
たった一つわかっているのは、「自分が吟遊詩人」ということだけ。
あなたが、さて、一曲爪弾こうか、と考えていると、ふと描かれている油絵に目がいった。
「この絵は、確かに見たことがある」
しかし、いつ? どこで?
一向に紐解けない記憶を紐解いていると、商人がやってきて「あっ? お前は!」と来るじゃない?
「見つけた! とうとう見つけたぞ!」と狂喜乱舞する彼が渡したものは、一個のガーネット。
彼は、あなたの記憶を教えてくれるわけではないが、たどり着く方法は知っていた!
彼に促されて、あなたは油絵の中に。
それは、「自分の過去」を探すための、長い長い旅の始まりだった。
名曲『展覧会の絵』をオマージュした本作は、「侏儒—地の精」からはじまり、楽章にちなんだ九つの世界を回って、魔女「バーバ・ヤーガ」に会いに行かねばならない。
で、各章も、ファンタジー的な世界かと思ったら、近未来的な荒廃した土地に行ったり、挙句にケダモノライフまで楽しめる多彩な世界になっていて、読んでいるあなたを飽きさせない!
なにせ、かなで、こういう長編は3日ぐらいかけてゆっくり読むんだけど、一日で一気読みしたくらいよ!
で、この展覧会の絵っていう作品。
ライフポイントがない。
だから、基本的に、死亡してゲームオーバーっていうことが端的にはない。
だけど、注意して欲しいのが、琴。
これは「和解」「戦い」「魔除け」の旋律という、魔法の効果が現れる曲を演奏できるんだけど、使用回数が限られているわ。
つまり、一回使うごとにどんどん減っていく。
これが、ライフポイントの代わりをしている。
これがなくなったらゲームオーバー。
で、「自分の身」ならば、例えば「危険な場所には近づかない」「戦闘はなるべく避ける」という風に、「自己防衛案」がいくつも思い浮かぶと思うわ。
だけど、そこは魔法の弦。どういうきっかけで、ふと鳴り出すかわからない。
分岐メモは必須よ!
そして、その引っかけ。
「あれ? これ失敗分岐かな?」と思いつつ先を読んでいくと、かえってそれが意外な展開をして、得したり。
あるいは逆のパターンもありうる。
この辺がうまい塩梅で散りばめられているので、心地よい緊張感の中、プレイできるのは職人芸よ!
攻略のヒントと言えば、そうねー。強いて言えば、「和解の旋律」がめちゃ役に立つので、これが出るまでサイコロを振りまくることかな?
最後近くのダンジョン「地下墓地」は、マッピング必須!
また、謎解きも、易しすぎることもなく、立派な「オトナのクイズ」になっているのもいい塩梅!
それに物語の求心力が拍車をかけて、「分岐を飛び飛びでたぐる」っていう煩わしさも楽しみになってくるこの不思議さ!
「いいゲームブック」=「いい物語」という図式はなかなか成り立たないけど、これはその両立に成功してる。
特に、今までファンタジーの世界を旅していたことが、伏線となって戻ってくるところに、この物語のうまさを感じます!
名作ファンタジーは「行って戻る」物語と聞いたことがあるけど、これなんかまさにそう!
適度に難しい謎解きと相まって、まるで上質の児童文学を読みきったような感動が!
実際に、何回も復刻されているみたいだし、割高価格で古本屋に売られているのを見たときは、ちょっとした感動を覚えたわ!
また、読みながら、かの名曲『展覧会の絵』のウンチクも学べ、読み終わったら、聞きたくなることウケアイ!
「そういや、最近ゲームブックやってないなー」って方、オススメです!
見逃せば人生後悔することウケアイ。
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『展覧会の絵』
著:森山安雄
東京創元社・創元推理文庫 1987/10/1 500円+税・絶版
創土社・新書 2002/7/25 1160円+税・絶版
幻想迷宮書店・電子書籍(Kindle) 2016/3/11 Kindle Unlimitedまたは400円(税込)
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