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2021年5月23日日曜日

T&T読者参加企画『カザン帝国辺境開拓記』 エピローグ FT新聞 No.3042

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T&T読者参加企画『カザン帝国辺境開拓記』 エピローグ

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from 水波流
トンネルズ&トロールズを使った読者参加企画をやってみよう。
なぜそう思ったかは、今となっては覚えていません。
しかしこの2年半で、参加者の皆さんのキャラクターは、GMである僕自身にもとても愛着のあるものになりました。
このキャンペーンでは本家T&Tの設定と、それと同じくらい多くのオリジナルの設定を使いました。
T&Tに詳しい方にはおやこれは、と思ってもらえていれば嬉しいですが、
どれが正史でどれがオリジナルかは気にせずに、どうか我々だけのカザン帝国を楽しんで貰えたなら幸いです。

また今回のエピローグには、これまで以上に各プレイヤーの皆さんからご投稿頂いたエピソードを多く採用させて頂きました。
文章を私がアレンジしたものもありますが、ほとんどそのまま採用させて頂いたものもあります。(特にエミリアのエピソードなどはご本人ともやり取りしつつ仕上げさせて頂きました)
最後まで本当に皆さんと一緒につくりあげた読者参加ゲームだったと実感しております。
ありがとうございました。

せっかくですので、最後に我々のカザン帝国年表を掲載いたします。
T&T完全版BOOK3に掲載されている年表から主要な出来事を抜粋したものに、『カザン帝国辺境開拓記』のオリジナル要素を記載したものになります。
なおこちらの年表については、ヴェルサリウス27世さんに寄稿頂いたものを大いに参考にさせて頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。
願わくば、皆さんがT&Tを遊ぶ際にお使い頂ければ、GMとしてこの上なく嬉しく思います。

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スラムグリオン魔法学校所蔵
『カザン帝国暦』より抜粋

 *BK=Before Khazan
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【100000BK】 トロール、唯一の知的生命体として大いに栄える。
【99000BK】 ドラゴンに追われたエルフがトロールワールドに入ってくる。竜の大魔術師シャンインシン=シンインシャンがドラゴン大陸ルールフを創造する。
【97000BK】 《トロール=ドラゴン戦争》勃発。
【92000BK】 《エルフ=トロール戦争》勃発。
【57000BK】 エルフ最古の大魔術師ニン=ドゥルジエル=ニンにより、最後のトロール都市が壊滅する。
【50000BK】 《魔術師戦争》始まる。
【46020BK】 古代帝国ティグリアの覇王ガイウス、麾下にそれぞれ特異な力を持つ近衛騎士を5人従え、太古の街道《グレート・ロード》一帯の近隣諸国を平定し、《虎の王》と称される。
【46010BK】 覇王ガイウス、宮廷魔術師ルーポの進言に従い、天まで届かせるために自らの国の中央に巨大な塔を建造する。王と宮廷魔術師を含めた《七英雄》が国を挙げて天に向けて派遣される。民衆は心待ちにするもついに王たちは帰還せず。
【46000BK】 国は乱れ、人々が王の存在を忘れかけた頃、塔から不気味な悪鬼の軍勢が現れる。《狂える魔法使い》ルーポがエルフを魔法で変異させた、歪んだ存在ウルクである。
【45900BK】 白の大魔術師ニン=ドゥルジエル=ニンがミラードールの大軍を率い、激しい戦いの末に悪鬼の軍勢を打ち負かし、この世界から追放する。古代帝国の塔、封印される。
【35000BK】 魔術師グリッスルグリムがドワーフをトロールワールドに呼び寄せる。
【15000BK】 魔術師カルバン・アダムトが人間をトロールワールドに呼び寄せる。
【12000BK】 竜の大魔術師シャンインシン=シンインシャンがドラゴン大陸の東方に逃れ《魔術師戦争》から撤退する。
【8500BK】 グリッスルグリムがニン=ドゥルジエル=ニンをトロールワールドから追放する。
【5244BK】 《魔術師戦争》が遂に終結する。この時、世界に残った《神の如き力を持つ魔術師》は829人と言われる。
【3000BK】 邪悪なる不死者《不死身のコシチェイ》が暴虐の限りを尽くす。シャンキナルの森を治めるエルフの長老たちでさえ、コシチェイの前には為す術もなかった。
【2500BK】 時のエルフ王、偉大なる英雄ベリエンベールが西方エルフの従者とともに、大冒険の末についにコシチェイの秘密を突き止める。ベリエンベール王は不死者の魂をシャンキナルの森の守り神、《聖なる鳥》七頭神セマルグルに捧げる。セマルグルはその魂を7つに分けて森に封印し、自らも眠りにつく。
【1233BK】 《ドワーフ=エルフ戦争》勃発。
【1104BK】 太古の故郷《ホーラ・ルー・ヤー》よりこの地に降り立った《古き森》の主たちの子孫として、エルフの魔術師カザン=オータリエル=カザン生まれる。
【500BK】 へローム王国時代。《神の如き力を持つ魔術師》の1人、ダルゴンが《大断崖》付近に大図書館を設立する。更に《四つの闇の道》と呼ばれる迷宮をも作り上げ、数多くの遺跡荒らしがその迷宮に挑む。
【313BK】 炎の大地と称されるイーグル大陸ゾルで、もっとも偉大な人間の魔術師カーラ・カーンが生まれる。
【150BK】 エルフ王ベリエンベールと、人間の王《ウルク殺し》ソールの連合軍がナーガ連邦に攻め入って敗退する。
【114BK】 カザンとカーラ・カーンの魔術師対決。カザンは彼を弟子にする。
【 0 】 魔術師カザンが都市国家へロームの帝位に就任し、カザン帝国とカザン暦が始まる。
【200】 ユランタウと呼ばれる丘に蛇たちの王である邪悪な黒竜が巣食う。黒竜はたびたび《大断崖》を越えて北の大都市タリーマークを襲い、人々をさらっては貪り食らう。その圧倒的な力にはカザン帝国の騎士団でさえ歯が立たず、人々は黒竜を《カザンの悪夢》と呼び恐れた。
【250】 大魔術師カザン、《カザンの悪夢》の討伐に向かうも数度となく失敗し、親友であるシャンキナルの森の偉大なるエルフ王、ベリエンベールに助力を請う。
【255】 エルフ王ベリエンベール、《聖地シャンス》に伝わる三種の聖遺物を手に、配下の西方エルフの精鋭を率い、カザン帝国の魔術師たちともに黒竜討伐に遠征する。黒竜はベリエンベール王と一騎打ちとなり、三日三晩にわたる戦いの末に6つの肉片にされ退治される。黒竜の死骸は、丘の麓に建立された修道院に祀られ、以後この地は《竜塚》と呼ばれるようになる。
【595】 ウルクの呪術師ロトラー、北方の偉大な魔術師ハル=エニオン=ハルの娘、ラ=フリンジャ=ラ王女を誘拐する。
【597】 ロトラーの娘として後に《死の女神》と称されるレロトラーが生まれる。
【640】 レロトラー、エルフに宣戦布告。ドラゴン大陸の最果てで力を蓄え、仲間を増やす。
【654】 人とモンスターが共に暮らす世界を望んだカーラ・カーンはカザンと袂を分かち、レロトラーと手を結ぶ。
【661】 エルフの女戦士エレーラ、その身を大山猫の姿に変え、レロトラーに反旗を翻す。
【664】 レロトラーとカーラ・カーンによる《猫狩り》により、捕らえられたエレーラは服従を強いられ、獣の姿から二度と戻れぬ呪いをかけられる。
【666】 大魔術師カザンが降伏し、レロトラーとカーラ・カーンがカザン帝国の統治を開始する。カザンは1年に1日しか現れない島の墓所に追放される。
【780】 正気を失ったエレーラが獣人のための新たな宗教を広め始める。以後、エレーラは神の如き力を自在に操る存在《神獣》として獣人たちに崇められる。ドラゴン大陸全土から数々の獣人が馳せ参じ、《大断崖》山間の《精霊の祭壇》は獣人たちの聖地として大いに栄える。
【1049】 死の女神レロトラーに対抗する反乱勢力として《偉大なる熊神の教団》ことベアカルトが誕生する。
【1066】 《カザンの戦士たち》がカザンを目覚めさせる。
【1085】 レロトラーがカザンを侍祭テレヴォールの小迷宮に封印する。
【1100】 《神の如き力を持つ魔術師》の1人、黒のモンゴーが太古の街道《グレート・ロード》付近に研究室を設け、活発に活動する。《黒の使徒》として、漆黒の手のイーゼルヴァン、黒檀のメメコレオウスをはじめ優秀な弟子を多数排出する。
【1101】 第3代オーバーキル城城主、屍人使いマリオナルシスがオーバーキル城の戦いでカザン帝国の《死の軍団》の暗殺部隊に敗北し、西方エルフの手によって封印される。
【1195】 黒のモンゴー、赤の魔術師より塔を購入し移り住む。塔の地下調査のため《傭兵剣士》を雇う。
【1199】 女冒険者フレイミング・チェリーがストームガルドのローズの力を借りてテレヴォールを殺し、カザンを解放する。

【1200】(現在)
・レックス砦にて辺境開拓軍が編成され、各地から傭兵が集まる。
・《大沼地》のゴブリン山賊団によって、ナルン村の青カブトムシ寺院より祭器が盗まれる。
・《偉大なる熊神の教団》の活動が活発化する。
・《不死身のコシチェイ》こと屍人使いマリオナルシスの封印が解かれ、弟子である屍人使いエレファバ、エルファニ、エリファスたちが屍者の帝国を再興させるべく暗躍を始める。
・《カザンの悪夢》ことユランタウの黒竜の封印が解かれる。
・古代帝国ティグリアの塔が発見され、《七英雄》が復活を遂げる。
・《大断崖》風の峡谷にて、魔術師ダルゴンの大図書館が発見される。


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エピローグ

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『今回ばかりは本当に死ぬかと思った』
 私はレックス砦の机の引出しから日記帳を取り出すと、数日前の冒険を振り返りながらそう書き加えた。
 砦の窓から中庭を眺めると、慌ただしく行き来する砦の傭兵たちの姿が見受けられた。カザン市へ帰還するための撤収作業が行われているのだ。私もそろそろ荷物をまとめなくてはならない。
 私はため息を付くと日記帳を取り上げ、背負い袋に仕舞い込んだ。
 そしてそっと目を閉じ、既にこの砦から離れていった仲間たちの事を思い浮かべた。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

 レックス砦の城門前に旅支度の一団が立ち尽くし、名残惜しそうに砦を振り返っていた。
 東洋風の修行着を身に纏った青年が、棍棒を2本腰から下げた男と話している。
「へーざぶろーさんは、本当にカザン市へは行かれないんですか」
「ああ、故郷に戻るにはちょうど潮時かなと思ってな」
 へーざぶろーはそう答えながら、腰のトゲ棍棒をジャラジャラと弄んだ。
「……お前こそ、カンダック師に弟子入り志願したんだって?」
「押忍。古代帝国の塔でカンダック師が使われた《魔法破り》、あれこそ強大な魔を滅す空手の道への光明と感じたのです……山に籠らずとも、修行の道はどこにでも転がっている。いい世界です、ここは!」
 その横では新人の男女が退屈そうな様子で荷物を直していた。
「アァ〜、ふかふかなベッドで寝たいぜ。火蜥蜴にはこってり焼かれそうになるしワイバーンには掻き乱されるしで、とんだ冒険だったなァ……」
「やれやれ、あたしゃ引退して玉の輿に乗るつもりだったんだがねぇ。金持ちのいい男はいまだ現れず……か」
 ガーランドとジェニファーは互いに不景気そうな顔を見合わせた。しばらくはまた傭兵か遺跡探索でもして稼ぐのも悪くない。
「ヘルト殿! 貴殿からお預かりしたシュバイツァーサーベル、確かにお返しもうした! 拙者を守ってくれたこの剣と貴殿に、感謝申し上げますぞ!」
 最後に城門から姿を表した禿頭の男は、大きな声とともに礼をしてから、一行の方に向き直った。
「ふぉふぉふぉ。皆様も素晴らしい御活躍でしたぞ。いざ、さらば。しかしまたいつの日かお会いしましょうぞ!」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
へーざぶろー(緒方直人)
 故郷のオーシオ村に帰った彼を、弟たちが手荒い歓迎で出迎える。
 へーしろー「おっ、英雄さまのご帰還だぞ!」
 へーごろー「よく生きて帰ってきやがったなコノヤロー!」
 へーろくろー「いつくたばるかとずっと待ってたんだぞ!」
 へーしちろー「チクショー、第二部こそは!」
 へーはちろー「絶対活躍してやるからなー!」
 ボコッ! バキッ! ドカボカベシャン! ………(終劇)

ナカダンジョウ・ケン(シュウ友生)
 強大な魔と対する為には、魔力を破ると同時に魔獣の反射神経を超える速度を身につけねばならない。
 魔力を感じ、それを破る事に特化しての魔法習得を決意し、カンダックに師事を乞う。魔法破りと空手の融合という、前代未聞の荒業を目指して。
 それらを会得した暁には、彼は自らの空手をこう名付けるだろう。<魔破(マッハ)空手>と!

ガーランド
 離ればなれになってしまった弟ケインを探すため、また旅を続ける事に。
 いつか一緒に冒険する事を夢見て、彼は弟を探し続けている。

ジェニファー
 商家の娘として地元に戻ることもできたが、結局遺跡探索を続けている。
 後に、念願の玉の輿にのったとかのらなかったとか。

バルベル
 ヘルトから譲り受けた「シュバイツァーサーベル」を返却し、勝利に沸く峡谷の山猫亭の仲間たちに微笑んで、静かに立ち去る。
 故郷の剣竜亭へ帰還し、そこでまた別な冒険を繰り広げたと言われている。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

 森の外れに位置する小さな村は、ちょうど昼どきを過ぎ、畑仕事から戻ってくる男たちの喧騒と、女たちが煮炊きをする生活音に包まれていた。
 村で唯一の雑貨店の店頭で、暇そうにあくびをしながら、若い店員が手紙に目を通していた。
「しっかし、アイツがまさかガガック兵長の元に残るとはねえ」
 若者は小さく笑いながら、かつての仲間である赤毛の盗賊の事を思い出していた。
 そこへ大きな物音を立てながら扉を押し開け、青年が駆け込んできた。
「あ、兄貴、大変だ!」
 青年は血相を変えて言葉を続ける。
「西方エルフの森林警備隊から苦情が来てる!」
「ガキどもめ。また丸々獣に夢中で境界を踏み越えやがったな」
 ニンツはカウンター越しにカーモネーギーに答えると、エプロンを外して釘にかけながら独りごちた。
「仕方ねえ。ギルサリオンの野郎に頭を下げに行くとするか……」
 畳んだ手紙を懐に入れ、すれ違いざまにカーモネーギーの肩を軽く叩いた。
「行くぞ、カーモネーギー」
「はい、兄貴!」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
指導者のニンツ(忍者福島)
 村の復興に尽力した事で村長に推されるが、柄でもないと断る。
 カーモネーギーの雑貨屋を手伝いつつ、自警団の団長を務めている。
 西方エルフのギルサリオン隊長とは何かとやり合いつつも、仲はまんざら悪くもなさそうである。

カーモネーギー(鏡 有規)
 村で雑貨屋を営み、平和に暮らしている。
 ニンツに言われると断りきれず、自警団の人手が足りないときには駆り出されるらしい。
 最近子供が生まれたようだ。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

『……マロウズ、元気にしているか。生まれ故郷の森へ帰ったと聞いていたのに、またどこかに旅に出たそうじゃないか。ギルサリオン隊長が遺跡の浄化が一人で大変だとこぼしていたぞ』
 手紙を読みながら、エルフの青年は小さく苦笑する。そんな彼の後ろから、物静かなエルフの女性が覗き込んだ。古傷の覗く右耳に長い髪が触れる。どうしたの、楽しそうじゃないとでも言うような表情で彼女は優しく微笑んでいた。
「ああ、古い友人からの手紙なんだ」
 マロウズはイアヴァスリルにそう声をかけると、手紙の続きに目を通した。
『……それとヘルトの姿を最近見かけないとニンツたちが心配していた。もし顔を合わせることがあれば、よろしく伝えてくれ』
「おい、マロウズ。どうする」
 暗い口を開ける遺跡を見据えながら、女剣士ゲルダが尋ねかけた。
「ああ、準備はできてる。行こう」
 マロウズは腰を上げると、手紙を畳んで懐に入れた。
 と、その時、一行の背後から繁みをかき分ける音と足音が聞こえた。ゲルダは素早く振り返ると、剣に手をかけ音もなく引き抜いた。イアヴァスリルはマロウズの傍に寄り添うと、そっと魔法の杖を構える。マロウズも低く構えたまま、油断のない目つきで藪を見据えた。
 足音が近づいてくる。やがて藪から人影が姿を表した。すると、腰の短剣を握る手がふっと緩み、マロウズの顔に笑みが浮かんだ。
「へえ、まさかこんな異郷の地で会うとはな」
「……」
「久々に共同戦線と行こうか、ヘルト」
 マロウズの言葉に、寡黙な戦士はにこりと微笑した。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
"片耳の"マロウズ(うぐい)
 生まれ故郷であるシャンキナルの都に帰郷するも、復興が落ち着いた頃に誰にも告げず旅に出る。
 はるか遠い炎の大地ゾルで、褐色の肌の女剣士と物静かなエルフの女術士を伴って、遺跡を探索する彼の姿を見たと言われている。

ヘルト(英霧生)
 かつての仲間リディアとともに各地で冒険を続けており、たまにニンツたちの村に顔を出すらしい。
 多くは語らない彼の話を聞くために、村の若者で酒場は満席になる。
 ある日、屍者の帝国との戦いで失った剣の新たな刀身を求め、炎の大地ゾルに渡ると言い残して姿を消した。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

「……こうしてワシらは見事、竜を倒し、屍者どもを滅ぼした英雄となったんじゃ」
 街道の宿場の片隅で、枯れ枝のような老人が槍を杖代わりに身振り手振りで大げさな語りをしていた。
「じゃが、引退してゆっくりすごそうと村に帰ったワシを待っておったのは、焼け落ちて離散した故郷の姿じゃった。さすがのワシもすっかり気落ちして、あとはお迎えを待つばかり……」
 聴衆の輪がぐっと話に引き込まれる。
「……そんなときに出会ったのが、本日紹介するこちら、緑皇ミドリ汁! 厳選された天然野草と有機薬草と脱法ハーブを秘伝のバランスで調合、毎日一包を水に溶かして飲めば、たちまちあふれる神秘の力! 通常価格で1月分金貨500枚のところ、今なら5日分の特別お試しセットを金貨10枚でお届け! ……っておーいみなの衆、どこへ行くんじゃ! 話はまだ終わっとらんぞー!」
 呆れ顔で離れていく人々を尻目に、ポル・ポタリアは含み笑いを隠そうともせずにメックリンガーの肩を叩いていた。
「やれやれ、また失敗か。うまくいかんのう」
 やがて気を取り直した老人は、先ほどまで二人で目を通していた戦友からの手紙に目をやった。
「にしてもあやつめ、意外に筆まめなところがあったんじゃのう……で。お主はこれからどうするんじゃ?」
「僕ぁね……これまで色々な【お仕事】やってきたけど、教師は未経験なんだよね。教え子たちに囲まれて河原を走るなんてすてきじゃなーい? それに昔から人を見る目には自信があったんだ」
 ポルはそういうと遠い目で遥か彼方を眺めやった。その目に不思議な、それでいて怪しげな光が宿っていた事にメックリンガーは最後まで気づくことはなかった。
 二人はカザン市への返事の手紙を宿場に預けると、軽く握手をして別れた。
 メックリンガーはポルの飄々とした後ろ姿を見送ると、背中の凝った装飾の魔法の杖を小突いて話しかけながら、歩き出した。
「こりゃダーヴィドよ、ちったぁ路銀稼ぎに協力せんか。早々にダルゴン師のもとに返されたくはなかろうて。老い先短いワシの亡き後、お主を託せる勇士を探しておるんじゃからの」
 後にエミリアの元へ届いた手紙にはこう記されていた。
『まぁそんなわけで、ワシの旅も、もうちっとだけ続くんじゃ』

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
ポル・ポタリア
 人知れず彼は姿を消した。その後彼の姿を見たものは誰もいない。
 十数年後「教室」という名の犯罪組織が確認される。構成員は「生徒」と呼ばれ、それぞれの素質に応じた活動を行い、各地に混乱をまき散らした。
 ……不思議なことに殺人はタブーとされていたようだ。

メックリンガー老(めくり たまえ)
 ポルと別れ、一人で放浪の旅に出た。きっと各地で槍を振り回しては、大騒ぎを巻き起こしているのだろう。
 後に、背中に魔法の杖を背負った口の減らない老人がドラゴン大陸の東の果てからユニコーン大陸に渡って大冒険を繰り広げているとの噂が流れた。

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 コースト市、スラムグリオン魔法学校の近くにある酒場で二人の男が酒を酌み交わしていた。テーブルの上には一通の手紙が広げてある。
「……噂には聞いていましたが、恐怖の街から戻っているとは思いませんでしたよ。それで、最近どうしていたんです?」
 穏やかな笑みを絶やさぬまま、片方の男が傍らに大剣を置いた男に語りかけた。
「ああ。戻ったはいいが、レックス砦ももう引き払われているし、また迷宮探索にでも出かけようかと思ってるんだ。万太郎たちと一緒に行くことも考えたんだけどな……お前さんの方はどうなんだ?」
 男は話を区切ると相手に水を向けた。
「私は宝石の街バモラ、フルロスガールの小屋、城塞都市ノールゲートを巡っていました。各地で手に入れた宝石や芸術の知識をまとめ、新たな本としてダルゴンの大図書館に寄贈する事ができればと思っているんです。今はちょうど、路銀を稼ぐため……そして素晴らしい宝飾品、財宝に触れるため、大図書館で手に入れた写本に書かれた情報をもとに遺跡探索に向かおうかと思っていたところです」
 ソーグの目に鋭い眼光が輝いた。
「詳しく話をしようじゃないか」
「ええ。いい話がありますよ」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
ソーグ(ふろふき大根)
 故郷フォロン島のガル市に戻り、蔓延していたイカサマ賭博を一掃する。
 健全な賭博場を楽しむ傍ら、本人はまたカザン帝国に舞い戻っているらしい。
 いつか凶悪と名高い〈熊の迷宮〉に挑むため、仲間を探しているそうだ。

アンドレア
 芸術家(宝飾細工師)となるために、技術と審美眼を鍛える旅に出た。「魂の籠った本物」の作品を作ることを目的に過ごしているそうだ。
 ダルゴンの大図書館にも足繁く通い、知識を探求しており、いずれは図書館長の座を譲られるのではないかとも言われている。
 後年、或る魔術師と共作し「魂を込められる(封じる)」作品を作ったと噂される。

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 〈大断崖〉を越えた北の大都市タリーマークの宿屋。様々な国々の旅人たちがごった返す中でも、ひときわ奇妙な風体の三人組がテーブルについていた。東洋風の装束の目付きの鋭い男に、左腕がねじれたグレムリンの腕のドワーフ、そして最後の一人はカエル人の戦士ときている。人々は関わり合いはごめんとばかりに遠巻きにしつつも、目立つ三人組にちらちらと視線を送っていた。
「……で、まだアンタの左腕を治せる癒し手は見つからないってわけか」
 東洋風の装束の男が酒の小瓶を片手に口を開いた。問われたドワーフは不機嫌そうに頷く。その横ではカエル人がゲロゲロと面白そうに喉を鳴らしていた。
「オレは傭兵として稼げれば文句は無いゾ」
「わかっとるわ。じゃから相応の報酬を払っとるじゃろが」
 クリフは憮然とした表情でサマにやり返すと、デュラルの方に目をやり、話題を変えた。
「お前さんの方はどうしとるんじゃ。確かガガック兵長と共に、カザン市に向かったと聞いておったが……」
 クリフはデュラルの胸元に鈍く光る、見慣れぬ記章に目をやりながら尋ねかけた。
「ああ、兵長の口利きで宰相カーラ・カーン殿に謁見が叶ってね。レックス砦での功績を認めて頂き、レロトラー陛下直属の密偵に召し抱えてもらったというわけさ」
 〈エージェント・オブ・デス〉……泣く子も黙るカザン帝国の親衛隊である。クリフはその悪名を思い出し、背筋を震わせた。そう言えば、テーブルの上に広げられている手紙の差出し主である赤毛の盗賊も、いまはガガック兵長の元で密偵を務めているというが……。
「意外ダナ。お前が宮仕えを選ぶとはネ」
 サマが訝しげな様子を隠そうともせずに口にした。
「なぁに、熊野郎どもや屍人使いの連中とケリをつけるには、これまで以上の力が必要になるしな。それにカザン帝国は寛大だ。力さえあれば、誰でも平等に道は開ける」
 デュラルの明快な答えに、クリフとサマは顔を見合わせた。
「それでだ。旧交を温めるついでに、ひとつお前らに仕事の依頼があるんだがね……」
 デュラルはテーブルの上に身を乗り出して話し始めた。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
デュラル・アフサラール(ジャラル・アフサラール)
 マリオナルシスの隠し財宝から、強い魔力を持つ『ロキのブーツ』を入手したのを天命として、カザン帝国〈エージェント・オブ・デス〉に名乗りを上げる。
 レロトラー陛下より勅命を受け、カザン帝国のために数々のミッションを成し遂げ、後に"魔眼"と呼ばれる帝国の密偵になったとか、ならなかったとか。

クリフ(中山将平)
 グレムリンの左手を治せる癒し手を求めて、北の大都市タリーマークを拠点に探索を続けている。
 噂では《荒れ野》に向かって帰ってこなかったとも、両腕ともグレムリンの腕になった姿を見たとも言われている。

サマ
 傭兵として、クリフと共にタリーマークを拠点に探索を続けている。
 長い時を経て、カエル人の中でも名の通った戦士として、後々まで語り継がれたという。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

 念願の我が家に帰って来て、はや3年。スパイディは妻と二人の子どもと共に平和な日々を過ごしていた。
 彼の妻エレインは意識を取り戻したものの、〈偉大なる熊神の教団〉で過ごした記憶は全て失っていた。
 今も教団の脅威は存在する。それは友人としてときおり家に尋ねてくる密偵がもたらす断片的な情報からも明らかであった。
「そらよ。赤毛の嬢ちゃんからの定期連絡だ」
 イェスタフがエミリアからの手紙を手渡してくれる。
「ありがとうございます。……ナミ、ハル。食後のお茶をお出ししなさい」
「はーい、おとうさん」
 家族との時間を何よりも大事に思う彼は、復讐などは愚かなことと考えているのだった。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

スパイディ
 妻を取り戻し、すっぱりと冒険から足を洗い、家族で平和に暮らしている。
 しかし教団の影をまた感じる事が多くなり、遠くの自身の故郷に移り住むことも考えている。
 果たして彼らに安住の地は見つかるのであろうか。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

「またこの塔を登るのか」
 万太郎とヴェルサリウス27世は、かつて冒険を繰り広げた古代帝国ティグリアの塔を見上げていた。
 あれから数年。ようやくドワーフの職人たちによって、第五階層へ向かう崩れた大階段の修復が終わったという報告が入ったのだ。
「万太郎隊長。準備は整ってますよ」
 塔の入口から姿を表したドワーフの青年は、数年で随分精悍な風貌になった様子だ。
「兄さん、忘れ物よ」
 ヤスヒロンの後ろから、幼さの残るエルフの娘がそっと声をかけた。
「お、おう。すまん、ディニエル」
 その様子を見守りながら、万太郎は顔をほころばせた。
「それじゃあ会えたんだな、ヤスヒロン」
 足早に二人に近づくと、万太郎はヤスヒロンの肩を叩いた。彼は照れたように頬を緩ませ、生き別れていた義理の妹を紹介した。
 と、そこに咳払いの音が聞こえた。
「私に声をかけないとは水くさいではないかね、万太郎くん」
 聞き覚えのある声を耳にして振り返ると、いつの間にかヴェルサリウスの横に二人の男女が控えていた。
「カンダック師、クリスティも」
「ヴェルサリウスくんが呼んでくれなければ、せっかくの上階を見損ねるところだったよ」
「あーあ。ウチは正直、もう怖い目には会いとうないんやけどなぁ」
 どうやらヴェルサリウスが探索の仲間として雇ってくれたらしい。当の本人は淡々と荷物をまとめると、ひょいと立ち上がった。
「さて、行くゾ」
《はい、我があるじ》
 そして彼らの後ろには二体のドールが付き従っている。
「我々はようやく登り始めたばかりだからナ。このはてしなく遠い塔の階段を……」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
無敵の万太郎(岡和田晃)
 ドラゴン大陸の各地で冒険を続けながら、古代帝国の塔への挑戦を続けている。
 いつしか転移装置や時間操作、転生魔法などの強大な力を得て、生涯を賭してこの塔に関わり続けることを誓ったとされる。
 彼の挑戦がその後どうなったか、知るものはいない。

ヴェルサリウス27世(ヴェルサリウス27世)
 ドワーフ職人の一団により階段が修復された後、ハンター・ドールと雇い人のカンダック、クリスティを連れて再び塔に戻ったとされる。
 その後、幾度となく探索に向かう彼の姿が目撃されるが、晩年にはその消息はようとして知られぬままであったという。

ヤスヒロン(Miriam@orc_lord)
 旅路の果てに生き別れの義妹ディニエルと再開する。
 やがて冒険で貯めた資金を元手に、探索に挑む探検家向けの店をカザン市で開き、腰を落ち着けたらしい。新米に厳しい頑固親父として引退後も後進の指導に当たっている。
 冒険家仲間の居場所として、元レックス砦の戦士たちもよく訪れるようだ。

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 伝書鳩が旧友の消息を知らせる手紙を私の部屋に届けてくれる。
 私はかつての仲間たちの事に思いを馳せた。
 最近ではすっかり返事がなくなってしまった連中だが、どこでどうしているのだろうか……。

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《冬の嶺の炎》バラク=ヘルムハート
 流行り病の後遺症でしばらく静養していたが、また戦いを求めてどこかへ姿を消した。
 つい先日カザンの闘技場で異例の10人抜きをした赤毛の戦士のサーガを吟遊詩人が歌っているのを耳にしたが、それが彼のことかはわからずじまいだった。

シャオリン
 思うところがあったのかソナン・イエに帰ったようだ。
 木製人形の「睡蓮」が、レックス砦の跡地に残されていたらしい。

ゲディス
 ガガック兵長の元で、傭兵として力を奮っている。
 最近では後輩たちが増え、頼もしい先輩として雄叫びを上げているらしい。 

イールギット
 祖父母と両親を食わせるため、ガガック兵長の元で傭兵として出稼ぎを続ける。
 一攫千金が成った暁には除隊したいと思いつつ、機会を伺っている。

アクロス
 スラムグリオン魔法学校で司書として働き始める。
 カンダック師から無理難題を言い付かっては苦労を重ねているようだ。

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 木漏れ日が差し込む森の広場で、赤毛の娘は手に持ったシャベルを使って懸命に穴を掘り続けていた。
「そもそも、知り合いじゃないし……」
 エミリアは少し息を切らしながら喘ぐように口にする。
「それに、私を殺そうとした相手を弔う義理なんて、本当はないんだけどさ……」
 やがて穴を掘り終えた彼女はシャベルを脇に置くと、額の汗を拭い、軽く息をついた。
「レックス砦を後にした時、たぶん私は戦いの中で死ぬんだろうなと思ってた。実際にそうなったとしても、そんなに悔いはなかったんじゃないかな。最初からその覚悟はできていたから」
 誰に言うともなしにそこまで呟くと、彼女はまるで興味がないかのように小首を傾げながら少しの間だけ自分の髪をいじり、それから再び墓穴の方を見て言葉を続ける。
「でもあんたの《死の九番》の魔法を喰らった時、ほんの一瞬だけど、自分の全てが消えて無くなるような感じがして凄く怖かった。私がこの世界にいたって痕跡は、砦の中に残してきたはずなのに、それなのに怖くて仕方がなかった。あの戦いで、皆の中で本当に死にかけたのは私一人だけだったから、ちょっぴりだけ分かるんだ。自分自身がいなくなってしまう事が怖かった、あんたの気持ちがさ」
 森は陽の光に照らされ、静寂を守っている。
 エミリアは再び髪をいじると、ふぅと息をついた。そしてバックパックの中から真紅のローブの残骸と一冊の書物を取り出すとボロボロの布地で丁寧に包み込んでから、それを静かに穴の底に置く。
「この世に一冊だけの、替えがきかない私だけの宝物だ。栞を挟んだ所から、私の子供の頃の夢とか、結構時間かけて書いた詩とか、お菓子の作り方とか、他人が見たらつまらない事がいろいろ書いてある。それを読んだら、あんたも一つぐらいはやってみたい事が見つかるんじゃないかと思ったんだ。他人に迷惑かけたりしない自分なりの人生の楽しみ方がさ。ただ誰にも見せたりはするんじゃないぞ」
 そこで一旦言葉を切ると、エミリアは左手の指にはめた煌く指輪を外し、それから穴の中に片手を伸ばして、折り畳んだ包みの中に指輪を無理矢理ねじ込んだ。
「この指輪は返しておくよ」
 エミリアは側に置いたシャベルを手に取ると、自分が掘った穴を埋め直す作業を始める。
 やがて遺品の埋葬を済ませると、墓標代わりに近くに転がっていた大きな石を置き、その表面に習い立てのエルフのルーン文字を刻む。エミリア自身は『私はあなたの事を決して忘れたりはしない』と書いたつもりだったが、その文法はことごとく間違っており、実際には『覚えた、そっちは私』としか読みようがない稚拙な一節だった。
 しかし、たとえ意味がつながらない言葉でも、自分が何をしようとしたのか、その誠意ぐらいは相手に伝わるだろうと彼女は思った。
 次に持ってきた小袋から花の種を取り出し、それを墓標の手前に埋めると、水筒に入れた水を半分だけ地面に撒く。
「こんな辺鄙な所まで、定期的に墓参りに来れるほど私は暇じゃないからな。上手い具合に花が咲いたら、自分で管理しろよ。それから弔ってやったんだから、私の夢の中に出てきたりはするな。……それじゃあな」
 立ち上がったエミリアは、片手を上げて別れの言葉を述べると森の空き地を後にした。
 彼女がその場所を振り返る事はなかった。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
エミリア
 屍者の帝国との戦いが終結した後、その功績にふさわしい報酬を手にして新たな人生を送るかと思いきや、今でもカザン帝国辺境開拓軍に身を置いている。
 正式に斥候の訓練を受けた彼女は、任務に赴いた仲間たちが無事に帰還を果たせるように、敵地の偵察や潜入などといった過酷な役目を進んで引き受けているようだ。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

カザン暦1200年ストームライトの月22日
カザン帝国辺境開拓軍
レックス砦所属傭兵
エミリア・イアハートここに記す


 本を閉じた。

 ここは当時、レックス砦と言われていた遺跡の近くの森の広場である。
 数百年が過ぎた今となってはそこに砦があった事など誰も信じぬような、穏やかな色とりどりの花が咲き乱れる場所になっていた。
 魔術師風のローブの男は小さな紅い実をつける背の高い巨木のうろから見出した、古びた書物の閉じた表紙を改めて眺めた。
 そこには『カザン帝国辺境開拓記 第一部』と飾り文字で記されていた。
「さて、この旅もようやく終わる……」
 森を見回しながら一息をついた。野鳥が数羽、紅い実をついばみに枝に止まる。
 静かな光景を眺めるともなく目をやっていた男の脳裏に、不意に衝撃が走った。
「いや待て……第一部?……第一部だと。つまり……」
 彼は苦虫を噛み潰したような顔を取らざるを得なかった。
 それはつまり、第二部以降も存在する可能性があるという事。
「ええい、忌々しい。……ダルゴン師にご報告せねば。ダルゴンの大図書館には完璧な蔵書が必要なのだ」
 男は苛立ちを隠せず、書物を背嚢に放り込むと荒々しく立ち上がった。
 せっかく自由の身を取り戻したというのに、もう愚か者呼ばわりは御免こうむる。小さく舌打ちをすると彼は足を踏み出した。

 そうして、私の探索の旅は再びはじまったのである。


『カザン帝国辺境開拓記』第一部
〜完〜



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2021年2月28日日曜日

T&T読者参加企画『カザン帝国辺境開拓記』 ep.15 No.2958

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T&T読者参加企画『カザン帝国辺境開拓記』 ep.15

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from 水波流
2018年12月9日より2年以上に渡ってお送りしてきました、読者参加企画。
いよいよ最終回となります。
今回もまた総勢21名のご参加を頂いております。

ここまでくれば前置きも無粋でしょう。
さっそく本文に参ります。

毎度の長文ですのでパソコンでご覧頂くのを推奨いたします。
もし携帯電話などで受信し、途中で切れたりしている場合は、下記バックナンバー保管庫からご確認をお願いいたします。
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事件の結末

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■事件A:1名出撃
自由行動。
これまで手がけてきた事件や出会った人物などで、もし君が気になっている事があるならば、行動を起こしても良い。
何をしたいのか、具体的に申告するように。
脅威予測)?
報酬)?

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(……エレイン……エレイン)
「おい、静かにしろ」
「えっ……す、すいません」
 物思いに耽りながらつい妻の名前を口にしていた事に気づき、剣士スパイデイは気恥ずかしさに頬を赤らめた。血が滲むほどに噛みしめていた唇をそっと緩める。
 盗賊イェスタフはその様子を横目に小さくため息をつくと、潜んでいる木立から半身を返し、木々を抜けた先を指差す。
 《洗礼の洞穴》……〈偉大なる熊神の教団〉において上級教団員になるための儀式を行うとされている聖地である。己の心を熊と同化するために、三日三晩、聖域たる洞穴の中で、野生の熊と同じ生活を営む。そして儀式の最後に洞穴の奥にあるという滝の水に身体を浸し、大いなる熊神にその身を委ねる事で、熊の御子として新たな生命を与えられるのだという。
 スパイデイはイェスタフから聞いた話を思い返しながら、その異様さに身震いをした。
(エレインが、あそこに……)
 不安げな視線は山腹の洞穴に注がれていた。洞穴は暗闇をたたえ、その口を開けている。
「グズグズしている時間はねえぞ。儀式とやらは今日が三日目。洗礼を行うために本部から導師が来やがるはずだ。上級教団員が単独で動く機会はあまり無いからな。身柄を押さえちまえば、こっちのもんだ」
 イェスタフは視線を外さずにそう口にする。スパイデイは神妙な表情で頷いた。


 静謐な空気を湛える洞穴の奥。しっとりと濡れた岩肌からは肌寒さすら感じる。
(……見えるか)
 イェスタフが小声で囁く。潜入行に不慣れなスパイデイの目にも、緩やかな曲がり角の先から灯りが差し込んでいるのが見えた。二人は小さく頷き合うと、岩肌に張り付きながら歩を進めた。
 開けた視界の先には、地下水脈の小さな滝が拡がっており、そこには線の細い女性の人影が見えた。
「エレイン……!」
 スパイデイがぽつりと呟く。
「時間がない。早くしろよ」
 イェスタフは顎で指し示すと、背後を警戒して岩肌に身を潜めた。
 スパイデイはそっと足音を忍ばせながら、水辺に近づく。彼の妻たるその女性は、水に濡れて身体にぴったりと張り付いた白い法衣を纏い、目を閉じて一心に何かを唱えている。
 岸に置かれたランプの灯りに照らされ、3年ぶりに間近で見る妻の姿は、少しやつれた様子ではあったが、変わらず美しかった。しかしその胸元には冷たい光を放つ熊神教団の聖印が輝いている。
 スパイデイははっとして首を振ると、手の届く距離にいる妻にそっと声をかけた。
「エレイン」
 返事はない。
「エレイン、帰りましょう。ナミとハルが家で待っています」
 依然、返事はない。
「エレイン!」
 業を煮やしたスパイデイは水辺に足を踏み入れると、妻の肩に手をかけ強く揺さぶった。灯りに照らされた黒い影が岩肌を踊る。視線の先の彼女はぼんやりと虚ろな目で彼を見つめ返すだけであった。
「……まずい、もう来やがった」
 イェスタフが舌打ちをすると、ランプに駆け寄り、一息に吹き消した。
「シスター・エレイン、灯りを消してどうしたというのです」
 年嵩の男性の声が洞穴に木霊した。
 スパイデイは引きずるように妻の手を引き、岸辺に上がるとイェスタフの隠れている場所を探った。しかし夜目の利かない彼にはその姿を捉えることはできなかった。
「シスター・エレイン……?」
 また男の柔和な声が響き渡る。直後、その声が豹変した。
「……ふん、まぁ良いわ。どうせもはや意識もない傀儡人形よ。せいぜい間抜けな信者どもへの御飾りとして我らの役に立つが良いわ」
 《鬼火》と苛立たしげな調子のがなり声が響くと、あたりがぱっと明るくなった。
(しまった……!)
「誰だ、貴様は」
 灰色の法衣姿の男が驚いた顔で目を見開いた。スパイデイは妻の手を引き慌てて駆け出した。
「待てい。……《千鳥足》!」
 急に足がもつれ、まるで夢の中で足踏みするかのように身体が進まなくなった。
 その間に法衣の男は悠々と歩を進めると、スパイデイの頭を掴んで首の向きを変えた。
「ほう、見覚えのある鼠だの。どこから入り込んだ」
「……妻を、妻を返してもらう」
「これは面白いことを抜かす鼠だ」
 導師クリストフはスパイデイの頬を張り飛ばすと、ペッと唾を吐き捨てた。
「貴様も大いなる熊神に捧げてくれるわ」
 胸元から掲げられた吠え猛る熊を象った聖印が妖しい光を発した。小さな波動を感じたのち、スパイデイの頭が割れるように痛み出す。
「おい気狂い坊主、そこまでにしとけや」
 不意に背後から声が響いた。
 どこからか、瞬く間に移動したイェスタフが、クリストフに背後から蹴りを入れた。
「レプラコーンの野郎に頭を下げて習った術が役に立ったぜ」
 言うが早いか、イェスタフはスパイデイにエレインの手を繋がせると急き立てた。
「行き掛けの駄賃だ。そらよっ《ボンボン爆弾》!」
 倒れ伏したクリストフに小さな魔力の球をいくつも投げつけるとすぐさま爆裂四散する。導師はたまらず呻き声を上げて転げ回る。
 その隙に三人は真暗闇へと走り出した。
「おのれ、異教徒ども。熊神に捧げられた魂を奪ってただで済むと思うなよ」
 背後から呪怨の叫びが追いかけた。叫びは岩壁に何度も木霊し、やがて熊の咆哮のような意味をなさぬ反響になり消えていった。
 

 三人は暗闇を走り続けていた。そう遠くないところに出口の光が見えた。
「あ……な……た……」
 その時、スパイデイの耳に微かに妻の声が聞こえた。
「エレイン? エレイン気づいたのですか」
「ええ、あなた」「いいえ、あなた」
 奇妙な二つの声が耳に届いた。
「ねえあなた、こっちを向いてくださる?」「いいえ、振り返ってはなりません」
「どうしたというんです、エレイン」
 捻じ曲がったように聞こえる妻の声。しかしどちらが?
 不意にスパイデイの頭に、先ほど感じた痛みが戻ってくる。頭の奥底がギリギリと鋭く痛む。
「あなた、戻りましょうよ」
 優しい妻の声が頭の中をぐるぐると回る。それではこれが妻の声なのだろうか。
「二人で水浴びをしましょう」
 ああ、そうすればこの痛みも和らぐというのか。
「そうよ。そして何も考えずに幸せに暮らしましょう。二人で」
 二人で?
 不意にスパイデイの意識の奥底に、奇妙な違和感が湧き上がった。
 二人で?
「……いいや、二人なんかじゃない。四人……四人ですよ」
 そう口にすると、傍らの妻の胸元からむっとする不快な臭気が放たれた。
「お前は誰だ。私の妻を返せ」
 スパイデイは毅然とした口調で問いかけた。すると妻の胸元の鈍い輝きから、ねっとりとした闇が湧き出した。闇はスパイデイの全身に纏わり付き、目や鼻や口すべてを塞ごうと蠢いた。いまや出口の光はおろか、傍らにいるはずの妻の姿すら見えない。
 スパイデイは目を閉じた。もはやここには生きとし生けるもの気配は感じられなかった。
(ここまでですか……)
 全身をぬるぬるとしたものが這い回る感覚。それらはスパイデイの身体の中に、今にも入り込まんとしていた。
(ナミ、ハル、すいません。お父さんは帰ることができなさそうです……)
(……おとうさん……おかあさん……)
 スパイデイの脳裏に、家で待っている娘と息子の顔が浮かんだ。
(ああ、最期にあの子たちの声を聞いて逝けるなら、それもまた……)
「おとうさん! おかあさん!」
 思いのほか近くで、その声は響いた気がした。
 スパイデイはその声に導かれるように無我夢中で手を差し出した。そして手に触れた何かを力ずくで引き千切り、遠くへ投げ捨てる。
 すると、背後からさっと光が差し込み、するりと泥から抜け出るように、妻の身体がスパイデイの方へ預けられた。たまらず倒れ込むと、その拍子にどこか広い場所へ転げ出た。
 見えぬ目が暖かい日差しを額に受け、その背に柔らかな大地を感じる。
 纏わり付いていた闇は、なおも粘液のように蠢いていたが、やがて名残惜しそうに洞穴の奥へと波が引くように押し戻されていった。


「おい、しっかりしろ、スパイデイ!」
「おとうさん! おかあさん!」
 盗賊イェスタフと、愛する子供たちの声を耳に感じながら、緊張の糸が切れたスパイデイの意識は漆黒の闇の中に落ちていく。
 二度とこの手は離さない。そう心に願いながら。


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
☆戦果
スパイデイ
→あなたは妻と子供たちとともに念願の我が家へ帰ることになります。
しかし気をつけてください。〈偉大なる熊神の教団〉の脅威はまだ身近にあるのです。
そこに背を向けて安住の地を探すか、あくまで立ち向かうか。
それはまた別のあなたの物語です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
■事件B:10名出撃
諸君、竜塚での働き、見事であった。
既に聞き及んでいるだろうが、屍者の帝国の本拠地が割り出せた。
これが屍人使いどもとの最後の戦になろう。
ギルサリオン隊長もシャンキナルの都へ伝令を出したようだが、西方エルフの増援が間に合うかはわからん。
最悪は我々だけの手で片を付ける必要がある。
それとこの戦を最後に、我がレックス砦の部隊はカザン市に帰還することが決まった。
活躍目覚ましい者については、必ずやレロトラー陛下に報告する事を約束しよう。
諸君の奮闘に期待する!
脅威予測)大
報酬)大

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

「ば、馬鹿な。これは……」
「オーバーキル城……」
 霧たちこめる森の奥にそびえ立つは、100年前の戦で落城したとされる幻の城。
 城門にはためく軍旗にはマリオナルシスの紋章が確と記されていた。
 不意に響く鴉の鳴き声。
 斥候たちはガタガタと震えながら脱兎のごとく駆け出した。


 鬨の声が響き渡る中、丘の上から眼下を一望しつつ、ガガック兵長とギルサリオン隊長は、曇った顔をどちらともなく見合わせた。
 崖下に拡がるのは迷路と化した庭園。剪定樹木のそこかしこから飛び出してくる屍人兵に立ち向かうレックス砦の軍勢。
「右翼のサザーランド、左翼のシェーンベルグ、正面のマクニールもよくやっている」
「しかし決め手に欠ける、か」
「ああ。どれだけ数を減らそうと所詮は雑兵。しかも何度でも黄泉帰ってくると来ている」
「これでは消耗戦。我が方が持ちませぬ」
 傍らに控える参謀ヴォーゼル卿がそっと口を挟んだ。
「カルドゥニアの連中はどうしたよ」
 背後からニンツが短剣の握りを確かめながら呟いた。
「術士隊には城から出てくる屍人は全て調伏するよう命じてある」
「そうか。それでこの調子じゃあ、厳しいな」
 ニンツは淡々とした様子で答えた。
「じゃから言うとるじゃろ。ワシに任せとかんかい。なんせワシは……」
「はいはい、わかってるますよ、おジイちゃん。"第4次オーバーキル城攻防戦の勇者メックリンガーである"でしょー」
 ポル・ポタリアが宥めるようにメックリンガーの両肩をぽんぽんと叩いた。
「ええい、この右膝さえ言うことを聞けば。オーバーキル城のことなら知り尽くしておるというのに」
 メックリンガーは悔しそうに右膝を抱えた。あれ、でも前は左膝って言ってなかったっけ、と傍らのカーモネーギーは心の中で呟いた。
「都からの援軍が間に合いさえすれば……」
 エルフの青年マロウズが思案げな表情で口を開いた。クリフやバルベルも追従するように頷く。
「そう上手くいけばいいがな」
 前髪を弄りながらエミリアが辛辣な調子で吐き捨てた。一同の顔に不安な表情がよぎる。
「……ギルサリオンさま。シャンキナルの都より伝令が参りました」
 後方に控えていた術士アルヴェルディアが静かに声をかけた。
「通せ」
 ギルサリオンはそう答えると、以前の戦いで傷ついたままの足を引きずりながら、ガガック兵長とともに天幕に向かった。全身に白い包帯を何重にも厚く巻いたままの姿がなんとも痛々しい。
 天幕にはやや疲れた表情の女エルフが跪いており、太陽の長アノーリオンからの伝言を告げた。ギルサリオンは苦虫を噛み潰したような表情を崩さず、無言で頷くと片手を振って退出を告げた。
 女エルフは天幕を出ると、ふうと一息をついた。これで今回の仕事は終わりだ。少し休ませてもらったあとはシャンキナルへ戻るか、それともどこか人間の街へ向かうか。少なくとも、間もなく戦場になるここからは早く離れたい。手近な兵に休憩場所を尋ねようと周囲を見回した時、彼女の視界に知己の姿が掠めた。
「……ヘルト、お前どうしてこんなところに」
 振り返った戦士ヘルトは、寡黙なことで知られるこの男にしては珍しく笑みをたたえ、かつての傭兵仲間であった西方エルフを出迎えた。
「ずっと探していたんだぞ。いまはここに雇われていたのか」
 彼女とはとある事件があって以来、別れ別れになったままだった。確か引退すると言って生まれ故郷の西方エルフの都に帰っていたはずだが、この様子では復帰したのだろうか。お互いに戦場に身を置くしかできない性分と言うことか、とヘルトは胸の内で独り言ちた。
 旧交を温めるように言葉を重ねる彼女の話が途切れたときに、ヘルトは小さく口を挟んだ。
「……また力を貸してくれないか。今の俺にはお前の援護が必要だ」
 女魔術師リディアはまじまじとその顔を見つめた。正直、戦況は五分五分といったところ。それは伝令を務めた彼女が一番よくわかっていた。しかし……。
「わかった、いいよ。ただしこの戦が終わったら、もう一度私と組んでもらう。それでどうだい」
「そうだな……まぁそれもいいかもしれんな」
 ヘルトは遠い目で森の彼方を見つめた。
「交渉成立だね」
 リディアはそう言うと旧友の肩を軽く叩いた。


「城門が開いた、だと?」
 マロウズが息せき切って駆けつけ、集まっている者に尋ねかけた。
 クリフが無言で、奇妙に捻れたグレムリンの左腕で城を指し示した。
「……誘っているのか? しかし」
 ガガック兵長が判断つきかねると言った顔で言葉を探した。
「兵長。悩んでいる時間は無さそうだ。私が行こう」
 ギルサリオンが一歩前に出た。
「ボロボロの身体のくせに何を偉そうに言ってやがる」
 ニンツが飄々とした調子で後に続いた。既に準備は整っている様子だった。
 ギルサリオンは面白くなさそうに目を反らすと、崖を下る道へと足を運んだ。
 その後ろからは当然と言った調子で臨戦態勢のレックス砦の一行が続いていった。


 城門から続く回廊を抜けると、薄闇の広間が見え始めた。
 あたりはしんと静まり返り、針の落ちる音すら響かんとする静寂を保っていた。誰かがゴクリとつばを飲む音が聞こえる。
 甲高い金属音と共に、一行の背後で鉄格子が下りた。
「まったく諸君らの奮闘には頭が下がる」
 気づくと正面の踊り場に、二人の人影が揺らめいていた。
 片眼鏡をかけ、顎に薄い山羊鬚を蓄えた焦げ茶色のローブの男と、片目片腕で足をひきずる真紅のローブの女。一行の仇敵、屍人使いエレファバとエルファニであった。
 男が片手を一振りすると床に転がる骸がゆっくりと起き上がり、一行の周りを取り囲んだ。その横で女が残された右手を掲げ、魔法語を詠唱した。
「天を統べる御使いたる竜の息吹、煉獄より木霊する呪詛の声、現し世と隠り世の狭間より放たれよ……《地獄の爆発》!」
 爆煙が轟音を上げて飛来する。しかし一行の眼前で掻き消えるように霧散した。
「《ないことに》……もうその手は食わんぜ」
 ニンツが右手を振り払いつつ、静かに言い放った。いつになく落ち着いているようだ。
「兄者、ここはアタシに任せてくださいよ」
 憎々しげな表情で一行を睨みつけながら、エルファニが傍らの魔術師をちらりと眺め、続けて詠唱を始めんと構えた。
 屍人使いエレファバは、消え失せたクレムの残照を眺めながら、ふんと鼻を鳴らす。
「なるほど、しぶといものだ」
 屍人使いエレファバは片手をあげてエルファニを制した。
 その視線が一行に注がれる。
「諸君に一つ提案がある」
 全員が沈黙のまま、横目で顔を見合わせた。
「……どうだね。マリオナルシス卿のお側に仕える気はないか。さすれば、我らと同じ屍人として永劫の時をも約束されよう」
「なに……?」
 デュラルが呆気にとられたように問い返す。 
「我ら屍人は悠久にして不滅。無論、誰しもがそうなれるわけではない。心の弱き者の末路は諸君らも知っての通りだ。だが諸君らのように強靭な精神力を持つものならば、間違いはない。……言わば、選ばれし者だ」
 そう言うとエレファバは両手を広げ、一行を見回した。
「既に我らがこの地でやるべき事は終わった。新たな子供たちも見つけたことだしね。マリオナルシス卿にも、いましばらくゆっくりとお休み頂かねばなるまい。そこで今こそ諸君らに問おう。我らと共に……」
「断る」
 ニンツが一歩前に踏み出して即答した。
「ほう。良いのかね」
「俺は親兄弟に恥じぬ生き方をしたいね」
「私もごめんだ。特にお前らのような下衆と永劫の時を過ごすのは尚更な」
 ニンツの答えにエミリアが続く。
「屍人の勇者など聞いたこともないわ。英雄たるもの限られた人生のうちにこそ武勲をうち立てるものなんじゃ!」
 メックリンガーが槍を突きつけながら激しい口調で続いた。
「ボクはちょっと興味あるけどなぁ〜。だって世界中の可愛い子ちゃんたちと永劫の時を過ごすのって悪くないと思うんだよねぇ。あ、いや、冗談だよ、冗談。ナハハ……」
 ポルは周囲の冷ややかな目に慌てて口をつぐんだ。
 後方に控える者たちも一様に賛同の意を表していた。エレファバは含み笑いを絶やさずにその様子を見つめている。
「所詮、価値観が違うか……よろしい」
 エレファバは肩をすくめると一歩後方に下がった。
「エルファニ、やれ。皆殺しにせよ」
「はっ」
 嬉しそうに舌なめずりをしながらエルファニが答えた。
「アンタらにはこんな身体にされた借りを返させてもらわないとねえ」
 その言葉と共に、周囲の骸の兵が一斉に飛びかかってきた。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
【戦闘】
PC:クリフMR65防5魔防5、ヘルトMR55防5、マロウズMR45防5魔防10、デュラルMR40防5、ニンツMR40防5、カーモネーギーMR35防10、ポル・ポタリアMR35防5魔防10、エミリアMR30防5、メックリンガーMR30防5、バルベルMR30防5、隊長ギルサリオンMR60防5、エルフ魔術師リディアMR35
敵:屍人使いエルファニMR120防10魔防10、屍人兵MR80*3、骸骨兵MR50*3

 *屍人使いエルファニ《地獄の爆発》詠唱
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。エルファニの《地獄の爆発》を無効化

1ラウンド:PC【458】 VS 敵【460】 /PC側に2ダメージ!(クリフ65、ヘルト55、マロウズ45、デュラル40、ニンツ40、カーモネーギー35、ポル35、エミリア30、メックリンガー30、バルベル30、ギルサリオン60、リディア35)

 *屍人使いエルファニ《地獄の爆発》詠唱
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。エルファニの《地獄の爆発》を無効化

2ラウンド:PC【477】 VS 敵【472】 /敵側に5ダメージ!(エルファニ120、屍人兵A80、B79、C79、骸骨兵A49、B49、C49)

 *屍人使いエルファニ《地獄の爆発》詠唱
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。エルファニの《地獄の爆発》を無効化

3ラウンド:PC【444】 VS 敵【474】 /PC側に30ダメージ!(クリフ65、ヘルト55、マロウズ45、デュラル40、ニンツ40、カーモネーギー35、ポル35、エミリア30、メックリンガー30、バルベル30、ギルサリオン60、リディア35)

 両軍入り乱れての攻防の最中、窓を突き破って屍の猟犬が飛び出してきた。
 *増援:アンデッドハウンドMR60*3

 前線の戦士たちは迎撃体制を取りつつ、口早に魔法語を詠唱した。
 *マロウズ、デュラル、ポル《いだてん》詠唱。2回行動。
 *魔術師リディア《いだてん》詠唱。ヘルト、2回行動。
 *クリフ、竜の牙使用。MR30スパルトイ召喚。
 *ニンツ、神像を模した人形を使用。MR40守護獣召喚。

4ラウンド:PC【672】 VS 敵【631】 /敵側に41ダメージ!(エルファニ120、屍人兵A75、B75、C75、骸骨兵A45、B45、C45、アンデッドハウンドA56、B56、C56)

 *屍人使いエルファニ《地獄の爆発》詠唱
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。エルファニの《地獄の爆発》を無効化

 エルファニはぜいぜいと肩で息をつきながら、憎らしげにエミリアを睨みつけた。一体この小娘はいくつ呪文石を懐に隠しているというのか。
 エミリアは焦りの見えたエルファニを冷たい目で眺めるとフンと鼻を鳴らした。
「この程度か。屍人使い」

 *ヘルト、マロウズ、隊長ギルサリオン《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *魔術師リディア《炎の嵐》詠唱。屍人兵たちに20魔法ダメージ!

5ラウンド:PC【901】 VS 敵【529】 /敵側に372ダメージ!(エルファニ91、屍人兵A18、B18、C18、骸骨兵A0、B0、C0、アンデッドハウンドA0、B0、C0)

「どうした、苦戦しているではないか」
 にやにや笑いを浮かべながらエレファバが口を挟む。
 エルファニは小さく舌打ちをすると、落ち着かない様子で鋭く口笛を吹き鳴らした。
 呼応して、左右の回廊から屍の猟犬を伴った巨体の怪物がなだれ込んできた。

 *増援:オーガ屍人兵MR100*2
 *増援:アンデッドハウンドMR60*4

「ここだ、ここで決める!」
「行くぞい!」

 *カーモネーギー《L3これでもくらえ!》の呪文石を使用。屍人使いエルファニ60魔法ダメージ!(エルファニ41)
 *メックリンガー《L2これでもくらえ!》の呪文石を使用。屍人使いエルファニに40魔法ダメージ!(エルファニ11)

「ぎゃっ」
 屍人使いエルファニは魔力の集中砲火を浴びてくぐもった叫びをあげて膝をつく。
 小さく治癒の魔法語を詠唱しながら、憎々しげに一行を睨みつけた。

 *屍人使いエルファニ《L3まあ、気の毒に》詠唱。30回復。

6ラウンド:PC【684】 VS 敵【597】 /敵側に87ダメージ!(エルファニ41、屍人兵A9、B9、C9、オーガ屍人兵A91、B91、アンデッドハウンドD51、E51、F51、G51)

 *屍人使いエレファバ《氷の嵐》詠唱。全員に20魔法ダメージ!

 突如巻き起こった氷の旋風に、その場にいる者すべての肌が切り裂かれる。
 エルファニたち屍人もお構いなしに放たれたその魔術に、額から鮮血を流しながらエルファニが叫ぶ。
「あ、兄者! 何を」
「その身体では辛かろう。そろそろ次のエルファニに働いてもらった方が良さそうだ」
 屍人使いエレファバは壇上から冷たい目で見下ろしながら言葉を紡いだ。
「たとえ幾度滅びたとて、マリオナルシス卿にいま一度作り直して頂けばよいだけのこと」
 エルファニはその言葉に冷や汗を浮かべた。
「い、嫌です。アタシは……この身体のアタシは、アタシだけなんですよ?」
「私にとっては、今のお前も、前のお前も、次のお前も、みんな可愛いお前だよ、エルファニ」
 エレファバは優しい笑顔を浮かべると、まるで抱擁するかのように両手を広げた。
「お前は本当によくやってくれた。そしてまた次のお前が我らのために働いてくれるだろう。だから……」
 エレファバは慈愛に満ちた目で言葉を続けた。
「だから安心して役目を終えるがよい」
 話し終えたエレファバが手にしたワンドを軽く振ると、左右に人影が現れた。
「最後の手向けだ。エリファスを3体置いていってやろう。出来損ないゆえ、力押しぐらいにしか役には立たぬだろうがな」
 四つ足で這い、端正な顔を醜悪に歪め牙を剥く獣の如きその姿は、一行もよく知る屍人使いエリファスのものであった。
「嫌だ、嫌だ。この記憶は、この生命はアタシだけのものだァァ」
 獣如きの姿が歯をむき出しにして飛びかかるのと、絶望の叫びを上げたエルファニが魔法語を詠唱し始めるのは、ほぼ同時だった。
 鉄格子が降りる音が響き渡り、正面の通路の奥へとエレファバは姿を消した。

 *増援:エリファス?MR120魔防5*3
 *屍人使いエルファニ《L3死の九番》詠唱
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。しかし高レベル呪文のため無効化できない!(エミリアMR0)

 全身を濁った光に包まれ、エミリアは糸の切れた人形のようにどうと倒れ込む。居並ぶ戦士たちに戦慄が走った。
「こっちだ! こっちに来い!」
 後方からわざとらしく音を立ててカーモネーギーが屍人兵を牽制する。
 その様子を横目に、前線の3人が素早く左右に展開し、魔法語を詠唱する。

 *カーモネーギー《耐えよ》詠唱。5ターンのあいだ防御点2倍。
 *デュラル、ヘルト、ニンツ《炎の嵐》詠唱。屍人兵たちに20魔法ダメージ*3!(屍人兵A0、B0、C0、オーガ屍人兵A11、B11、アンデッドハウンドD0、E0、F0、G0、エリファス?A75、B75、C75)

7ラウンド:PC【380】 VS 敵【399】 /PC側に19ダメージ!(クリフ50、ヘルト35、マロウズ35、デュラル20、ニンツ20、カーモネーギー15、ポル25、エミリア0、メックリンガー10、バルベル10、ギルサリオン40、リディア15、スパルトイ10、守護獣20)

8ラウンド:PC【369】 VS 敵【424】 /PC側に55ダメージ!(クリフ50、ヘルト35、マロウズ35、デュラル20、ニンツ20、カーモネーギー15、ポル25、エミリア0、メックリンガー10、バルベル10、ギルサリオン40、リディア15、スパルトイ10、守護獣20)

9ラウンド:PC【392】 VS 敵【398】 /PC側に6ダメージ!(クリフ50、ヘルト35、マロウズ35、デュラル20、ニンツ20、カーモネーギー15、ポル25、エミリア0、メックリンガー10、バルベル10、ギルサリオン40、リディア15、スパルトイ10、守護獣20)

「これでようやく互角だというのか……」
「やれやれ、どうしたもんかね」
 マロウズとニンツが目配せをしながら呟く。カーモネーギーを中心とした守りの堅い者たちがなんとか敵の猛攻を食い止めてくれていたが、このままでは消耗戦。となれば、屍人兵たちが圧倒的に有利であった。
 後方ではバルベルが倒れ伏したエミリアを介抱していた。
「エミリア殿! しっかりなされい!! あと少しですぞ!!!」
 壇上からその様子を眺めていたエルファニが、余裕を取り戻した表情で魔法語を詠唱し始めた。
「天を統べる御使いたる竜の息吹、煉獄より木霊する呪詛の声、現し世と隠り世の……」
 刹那。どこからか飛翔した信じられないほど邪悪な形をした投げナイフがエルファニの頬を切り裂いた。
「すまない、遅くなった」
 猟犬の突入で破壊された窓から、褐色の肌に縮れた毛をドレッドヘアに編み込んだ女戦士の顔が覗いていた。
「少し手こずったが、外の戦いも雌雄が決した。手があいた者から城内に攻め込んでくるはずだ」
 女戦士ゲルダは窓から飛び降りると、旧友たるマロウズの隣に歩を進めた。
「総力戦だ」

 *魔術師リディア《凶眼》詠唱。ヘルト、攻撃力*3
 *デュラル、ポル、ニンツ、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *カーモネーギー、メックリンガー、神の如き回復薬を使用。30回復。
 *隊長ギルサリオン《まあ、気の毒に》詠唱。10回復。

10ラウンド:PC【515】 VS 敵【391】 /敵側に124ダメージ!(エルファニ21、オーガ屍人兵A0、B0、エリファス?A55、B55、C55)

「畜生、畜生……」
 *屍人使いエルファニ《L2炎の嵐》詠唱
 *ヘルト《ないことに》の呪文石を使用。しかし高レベル呪文のため無効化できない!

「くそ、間に合ってくれ!」
 カーモネーギーたちが急いで防護呪文を詠唱する。
 *カーモネーギー《わたしを守って、あなたを守って》詠唱。魔法防御+15。
 *ニンツ《わたしを守って、あなたを守って》詠唱。魔法防御+15。
 *マロウズ《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石を使用。メックリンガーの魔法防御+15。
 *デュラル《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石を使用。魔法防御+15。
 *隊長ギルサリオン《わたしを守って、あなたを守って》詠唱。魔法防御+15。
 *魔術師リディア《わたしを守って、あなたを守って》詠唱。ヘルトの魔法防御+15。

 *全員に40魔法ダメージ!
(クリフ15、ヘルト10、マロウズ5、デュラル5、ニンツ5、カーモネーギー10、ポル5、エミリア0、メックリンガー5、バルベル10、ギルサリオン25、リディア15、ゲルダ20、スパルトイ0、守護獣0)*バルベル、リディアは後方のため範囲外

 *バルベル、奇跡的な回復薬を使用。エミリア10回復。

11ラウンド:PC【283】 VS 敵【262】 /敵側に21ダメージ!(エルファニ21、エリファス?A50、B50、C50)

 *エミリア、屍人使いエルファニの指輪を使用。《L3これでもくらえ!》発動! エリファスAに60魔法ダメージ!(エリファスA死亡)
 *デュラル、屍人使いエリファスの杖を使用。《L2これでもくらえ!》発動! エリファスBに40魔法ダメージ!(エリファスB15)
 *カーモネーギー、星のメダリオンを使用。流星招来。エリファスBに30魔法ダメージ!(エリファスB死亡)
 *魔術師リディア《L3これでもくらえ!》詠唱。エリファスCに60魔法ダメージ!(エリファスC死亡)

 *屍人使いエルファニ《地獄の爆発》詠唱
 *ニンツ《ないことに》詠唱。エルファニの《地獄の爆発》を無効化

戦闘終了:クリフMR15/65防5魔防5、ヘルトMR10/55防5、マロウズMR5/45防5魔防10、デュラルMR5/40防5、ニンツMR5/40防5、カーモネーギーMR10/35防10、ポル・ポタリアMR5/35防5魔防10、エミリアMR10/30防5、メックリンガーMR5/30防5、バルベルMR10/30防5、隊長ギルサリオンMR25/60防5、エルフ魔術師リディアMR15/35、ゾルの女剣士ゲルダMR20/60防5

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「シニタクタイ……シニタク……ナイ」
 石畳に拡がる血溜まりの中を、這うようにエルファニが藻掻いていた。
「哀れだなエルファニ。そこまでして偽りの生にしがみつくのかよ」
 全身傷だらけになったニンツが、右手に短剣を握り直し、ゆっくりと近づいた。そして足下を見下ろすと小さくため息をついた。
「お前の事は好きじゃなかったが、それでも最期となると寂しいもんだな……」
 ニンツはじゃあな、と短く呟くと短剣を一閃しその首を跳ねた。
 首を両断された身体は、しばらくの間もぞもぞと蠢いていたが、やがて力なく動きを止めると砂のごとく崩れ去っていった。
 その場の誰もが重いため息をつくと、沈黙が辺りを支配した。
 しかしそれも束の間。倒したはずの屍人兵たちの骸が再び蠢き出すと、やがてゆっくりと起き上がろうとしていた。
「……くそっ、きりがない」
「ここはそれだけ奴らの魔力が強いという事か」
 顔を見合わせた一行は、新たな戦いを覚悟し、身を堅くした。
 と、その時、土煙と共に城門が破壊された音が広間に響き渡った。時を置かずなだれ込んできた一群の先頭には一行の見慣れた顔が並んでいた。
「いよう、待たせたな」
 赤髪の傭兵がにやりと笑いかけ、屍人兵の群れに飛び込んでいく。
「ここはアタシたちにお任せネ」
 斧と剣を振るう傭兵の横に、東洋風の少女が軽やかに舞い降りた。その後ろからも次々と砦の戦士たちが続いていた。
「先輩がたのために頑張るズラ〜」
 心強い援軍を得た一行は、目線を交わし合うと左右の通路に分かれて走り出した。
 背にした広間には新たな剣戟の音が響き渡る……。


「聖遺物の力は借りられねえのか」
 薄暗がりの通路を足早に進みながら、ニンツは傍らのギルサリオンに話しかけた。
「無理だ。幾星霜を経て、月と星の力をその身に宿した器。次にまたその御力を振るうまではお休み頂かねばならぬ」
 ギルサリオンは前を見据えたまま淡々と答えを返した。
「へっ、そうそう便利使いはできねえか」
 ニンツはあっさりと聞き入れると肩越しに一行の具合を顧みた。全員が傷だらけで肩で息をしている。体勢の立て直しが必要なのは間違いなかった。
「此度は人の力のみで戦わねばなるまい」
 彼らは小さく頷きあうと、沈黙を保ちながら歩を進めた。
 やがて一行の目の前の回廊に何かが立ち並んでいるのが見えた。
「なんだ、こいつは」
 足を止めたヘルトは不審そうな表情で眺め渡した。
 ガラスでできた水槽のようなものが回廊の先までいくつも置かれている。中は深緑の液体に満たされ、何か大きな物体が浮いていた。
「エ、エルファニ……?」
 カーモネーギーが驚愕の声を上げる。
 チューブに全身を繋がれ、培養液の中に漂っているのは、先ほどまで死闘を繰り広げた屍人使いの姿であった。慌てて見回すとそれぞれの水槽の中には、エルファニだけでなく、エリファスらしき男、そして二人の面影のある小柄な少年少女の姿が浮かんでいる。
 マロウズはその意味を悟ると小さく舌打ちをして顔を背けた。一行の胸に重苦しい感情が渦巻く。
 そのとき突如、警報が鳴り響いた。
 不安げに顔を見合わせる中、水槽から培養液が排出されると、虚ろな目をした男女がのそりと這い出し、首をこちらへ向けた……。

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【戦闘】
PC:ヘルトMR10/55防5、マロウズMR5/45防5魔防10、ニンツMR5/40防5、カーモネーギーMR10/35防10、隊長ギルサリオンMR25/60防5、エルフ魔術師リディアMR15/35、ゾルの女剣士ゲルダMR20/60防5
敵:エルファニ?MR60/120、エリファス?MR50/100、子供エルファニ?MR30/60、子供エリファス?30/60

 *マロウズ、ニンツ、女剣士ゲルダ、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *隊長ギルサリオン《まあ、気の毒に》詠唱。カーモネーギー10回復。
 *魔術師リディア《まあ、気の毒に》詠唱。ヘルト10回復。

1ラウンド:PC【205】 VS 敵【219】 /PC側に14ダメージ!(ヘルト20、マロウズ15、ニンツ15、カーモネーギー20、ギルサリオン25、リディア15、ゲルダ30)

「……見てらんねえよ」
 ニンツが絞り出すような声でぽつりと呟いた。

 *ニンツ《これでもくらえ!》詠唱。エルファニ?に20魔法ダメージ!
 *カーモネーギー《死の刃》の呪文石を使用。攻撃力*2。
 *隊長ギルサリオン《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *魔術師リディア《炎の嵐》詠唱。敵全員に20魔法ダメージ!

2ラウンド:PC【268】 VS 敵【164】 /敵側に104ダメージ!(敵全滅)

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 ニンツは足下に転がる醜悪な亡骸を一瞥すらせず、前を向いて歩き出した。皆も無言でその背を追う。
 一方その頃……。
 左手の通路を進んでいた集団も、同じような状況に遭遇していた。

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【戦闘】
PC:クリフMR15/65防5魔防5、デュラルMR5/40防5、ポル・ポタリアMR5/35防5魔防10、エミリアMR10/30防5、メックリンガーMR5/30防5、バルベルMR10/30防5
敵:エリファス?MR50/100*3

 *エミリア、デュラル、ポル、メックリンガー、神の如き回復薬を使用。30回復。
 *バルベル、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *クリフ《イーゼルヴァンの黒き手》詠唱。エリファス?Aに10魔法ダメージ!クリフ10回復。

1ラウンド:PC【211】 VS 敵【182】 /敵側に29ダメージ!(エリファス?A30、B40、C41)
2ラウンド:PC【197】 VS 敵【166】 /敵側に31ダメージ!(エリファス?A20、B30、C30)

「ボクの元カノにアリスちゃんて娘がいてねえ。なんでも屍人相手には減らない武器が有効なんだってさ……だから新調しちゃったよ。名付けてライドルスティック!」
 ポルは涎を垂らしながら襲いかかる獣化エリファスの攻撃をひらひらとかわしながら、懐から金属製の棒状の武器を取り出し、振り回しながら敵に電撃を流し込んだ。

3ラウンド:PC【208】 VS 敵【155】 /敵側に53ダメージ!(エリファス?A2、B12、C13)
4ラウンド:PC【188】 VS 敵【116】 /敵側に72ダメージ!(敵全滅)

「若いモンは元気じゃのう……」
 メックリンガーはいよいよ最終決戦に向かうというのに、激戦の疲れか今一つ意気があがらぬ様子で呟いた。
「無事に親玉を倒したら、ワシもそろそろ引退して再婚しようかのう……」

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「ようやく追いついたぜ」
 しんと静まり返った大広間にニンツの声が響き渡った。別経路から来た者たちも後ろから姿を見せ合流する。
 左右には水槽が立ち並び、これまで通り抜けてきた通路と同様に男女の裸体が浮かんでいた。最奥の玉座があるべきところには、巨大な水槽が鎮座しており、その前に焦げ茶色のローブを纏った屍人使いエレファバの姿が窺えた。
「ここまで辿り着くとは本当にしぶといものだな。しかし限りある生を無駄にすることもあるまいに」
 傍らに巨体のトロール屍人兵を従えたエレファバは、駆け込んできた一同を眺め渡すと、口元に歪んだ笑いを浮かべながら声をかけてきた。
「もう一度言おう。マリオナルシス卿に仕えよ」
「断る」
「ふむ。では、君たちの生もここで終わりだ」
 エレファバの言葉に重ねるようにトロールが雄叫びを上げて突進してくる。一行は重心低く身構えた。すると、ヘルトが無造作に一歩前に出ると小さく《厄払い》と呟き、右手を前に突き出した。その手がトロールに触れるや否や、その身体はまるで砂細工のように粉々に崩れ去った。ヘルトの手から呪文石の破片が零れ落ちる。
 エレファバはその様子を冷たい目で眺めていた。そして改めて顔を上げ一行の顔を見渡したのと、立ち並ぶ水槽から妖しい光が放たれたのはほぼ同時であった。水槽から這い出した少年少女が、焦点の定まらぬ目とゆらゆらとした動きで歩き出す。
「これでもくらえ……」
「これでもくらえ……」
 少年の一人が指先をポルに向け、クレムが放出される。隣のカーモネーギーが息を呑む。
 幸いにも弱い魔術だったようで、ポルの魔除けのメダリオンが青い光とともに弾き飛ばした。しかしその後ろから次々と人影が続いている。壊れた自動人形のように独り言を繰り返しながら近づく子供たちの姿に、カーモネーギーは背に冷たいものを覚えた。
「ええい気色の悪い! そっちこそ、これでもくらわんかーい!」
 メックリンガーが背中から下ろした杖を振り回す。周囲に閃光が走り、辺りの水槽が砕け散り、撒き散らされた培養液がしゅうしゅうと煙を上げる。
 閃光の一つが正面の巨大な水槽に飛ぶと、不意にエレファバの顔色が変わり、慌てた様子で《ないことに》と唱え、クレムを消滅させた。
「……くだらぬ遊びはそこまでにしてもらおうか」
 マロウズの目に遠目に映る水槽の内に、その巨大さとは不釣り合いなほどに華奢な身体が浮かんでいるのが見えた。
(なんだ……?)
 エレファバは低い声で魔法語を詠唱し始めた。周囲の空気がビリビリと振動する。呪文は幾重にも反響するように耳元に木霊し、その場の誰もが信じられぬほど強大な魔力が集中していることを肌で感じ取った。
「天を統べる御使いたる竜の息吹、煉獄より木霊する呪詛の声、現し世と隠り世の狭間より放たれよ……《地獄の爆発》!」

 *屍人使いエレファバ《L7地獄の爆発》詠唱。

 轟音を上げて魔力が周囲に渦巻く。一行は目配せすると背中合わせに円陣を組み、口早に魔法語を唱えた。

 *ヘルト《ないことに》詠唱。
 *カーモネーギー《ないことに》詠唱。
 *デュラル《ないことに》詠唱。
 *ポル・ポタリア《ないことに》詠唱。
 *メックリンガー《ないことに》詠唱。
 *マロウズ《ないことに》の呪文石を使用。
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。

  →エレファバの《L7地獄の爆発》を無効化

 まばゆい閃光は一行の眼前で急に立ち消えた。
「ええい、忌々しい愚か者どもめ」

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【戦闘】
PC:クリフMR25/65防5魔防5、ヘルトMR20/55防5、マロウズMR18/45防5魔防10、デュラルMR35/40防5、ニンツMR15/40防5、カーモネーギーMR20/35防10、ポル・ポタリアMR35/35防5魔防10、エミリアMR30/30防5、メックリンガーMR30/30防5、バルベルMR20/30防5、隊長ギルサリオンMR25/60防5、エルフ魔術師リディアMR15/35、女剣士ゲルダMR30/60防5
敵:屍人使いエレファバMR200防20魔防20、子供たちMR30/60*10

 *屍人使いエレファバ《思いのまま撃て》詠唱。火球召喚。3ターンのあいだ1体に15魔法ダメージ。
 *子供たち《まあ、気の毒に》詠唱。それぞれ10回復。

「守りの薄い者は俺の後ろに! 魔力の加護ある者はあの火球を頼む!」
 *マロウズ《耐えよ》の呪文石を使用。5ターンのあいだ防御点2倍。
 *エミリア、竜の牙使用。MR30スパルトイ召喚。
 *カーモネーギー《いだてん》詠唱。2回行動。
 *メックリンガー《いだてん》の呪文石を使用。2回行動。
 *ポル《メメコレオウスの黒き礫》詠唱。子供たちABCDEに6魔法ダメージ!
 *魔術師リディア《いだてん》詠唱。ヘルト、2回行動。
 
1ラウンド:PC【507】 VS 敵【566】 /PC側に59ダメージ!(クリフ25、ヘルト20、マロウズ18、デュラル35、ニンツ15、カーモネーギー20、ポル35、エミリア30、メックリンガー30、バルベル20、ギルサリオン25、リディア15、ゲルダ30、スパルトイ30)

 *《思いのまま撃て》ポルに15魔法ダメージ!(1/3)
 *屍人使いエレファバ《のろま》詠唱。ヘルトの《いだてん》の効果消滅。
 *子供たち《まあ、気の毒に》詠唱。それぞれ10回復。

「数的有利をひっくり返す必要があるからな」
 *エミリア《炎の嵐》詠唱。子供たちに20魔法ダメージ!
 *魔術師リディア《炎の嵐》詠唱。子供たちに20魔法ダメージ!

2ラウンド:PC【489】 VS 敵【565】 /PC側に76ダメージ!(クリフ25、ヘルト20、マロウズ18、デュラル35、ニンツ15、カーモネーギー20、ポル30、エミリア30、メックリンガー30、バルベル20、ギルサリオン25、リディア15、ゲルダ30、スパルトイ29)

 *《思いのまま撃て》マロウズに15魔法ダメージ!(2/3)
 *子供たち《まあ、気の毒に》詠唱。それぞれ10回復。
 *屍人使いエレファバ《地獄の爆発》詠唱。
 *エミリア《ないことに》の呪文石を使用。エレファバの《地獄の爆発》を無効化

 エレファバは小さく舌打ちをする。エミリアは呪文石の破片を投げ捨てると、嘲りの笑みを浮かべ言葉を返した。
「ふん、愚か者はどっちだか。何度やっても魔力の無駄だぞ」
(これで石も打ち止め……果たしてこのまま騙されてくれるか)

 *隊長ギルサリオン《まあ、気の毒に》詠唱。マロウズ10回復
 *魔術師リディア《耐えよ》詠唱。ヘルト、5ターンのあいだ防御点2倍。

3ラウンド:PC【477】 VS 敵【496】 /PC側に19ダメージ!(クリフ25、ヘルト20、マロウズ23、デュラル35、ニンツ15、カーモネーギー20、ポル35、エミリア30、メックリンガー30、バルベル20、ギルサリオン25、リディア15、ゲルダ30、スパルトイ29)

 *《思いのまま撃て》クリフに15魔法ダメージ!(3/3)
 *子供たち《まあ、気の毒に》詠唱。それぞれ10回復。
 *屍人使いエレファバ《召喚》詠唱

 呼び掛けに応じ中空に漆黒の渦巻が生じると、異界の悪魔が這い出してきた。
 *増援:グレーターデーモンMR300

 *デュラル《凶眼》詠唱。攻撃力*3
 *カーモネーギー《死の刃》の呪文石を使用。攻撃力*2。
 *隊長ギルサリオン《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *エミリア《L2これでもくらえ!》の呪文石を使用。子供たちJに40魔法ダメージ!(子供たちJ死亡)
 *魔術師リディア《L3これでもくらえ!》詠唱。子供たちIに60魔法ダメージ!(子供たちI死亡)

4ラウンド:PC【527】 VS 敵【700】 /PC側に173ダメージ!(クリフ8、ヘルト13、マロウズ16、デュラル28、ニンツ8、カーモネーギー12、ポル28、エミリア23、メックリンガー23、バルベル13、ギルサリオン17、リディア8、ゲルダ23、スパルトイ22)

「クリフ!」
「おう」
 デュラルの叫びに応じ、二人は声を合わせ古めかしい魔法語を詠唱した。
「……古の大魔術師ダルゴンの名において命ずる《我に平伏せ》!」

「古代の禁呪か……だがそうはさせんよ」
 *屍人使いエレファバ《ないことに》詠唱
「リディア!」
 ヘルトが後方に目配せをした。
 *魔術師リディア《ないことに》詠唱。エレファバの《ないことに》を無効化

 *デュラル《ダルゴンの暗き眼差し》詠唱。グレーターデーモンMR300→150
 *クリフ《ダルゴンの暗き眼差し》詠唱。グレーターデーモンMR150→75

 異界の悪魔は苦悶の咆哮を上げて身もだえし、そこかしこの壁にその巨体を打ちつけて暴れ回った。石壁が崩れ、外の光が差し込んでくる。

 *ポル《凶眼》詠唱。攻撃力*3
 *エミリア《L2これでもくらえ!》の呪文石を使用。子供たちHに40魔法ダメージ!(子供たちH死亡)

5ラウンド:PC【443】 VS 敵【503】 /PC側に60ダメージ!(クリフ8、ヘルト13、マロウズ16、デュラル28、ニンツ8、カーモネーギー12、ポル28、エミリア23、メックリンガー23、バルベル13、ギルサリオン17、リディア8、ゲルダ23、スパルトイ22)

「おのれ……おのれ」
 *屍人使いエレファバ《死の九番》詠唱
 *デュラル《ないことに》の呪文石を使用。エレファバの《死の九番》を無効化

「ダーヴィド! あのデカブツをなんとかせい!」
 *メックリンガー、特別製の魔法の杖《愚かなダーヴィド》を使用。《L4これでもくらえ!》発動! グレーターデーモンに80魔法ダメージ!(グレーターデーモン消滅)
 *エミリア《いだてん》の呪文石を使用。2回行動。
 *ポル、スパイダー・ベノムの瓶を使用。(麻痺毒3ターン有効)
 *魔術師リディア《凶眼》詠唱。ヘルト、攻撃力*3

6ラウンド:PC【421】 VS 敵【405】 /敵側に16ダメージ!(エレファバ200→100、子供たちA22、B22、C22、D22、E22、F28、G28、H0、I0、J0)

「悪いねぇ」
 いつの間にか背後から忍び寄ったポルが、毒を塗ったナイフで薄く切りつける。エレファバにとってはかすり傷にもならぬその傷口から、蜘蛛の麻痺毒が急速に全身に巡る。
「く、貴様……キサマ……」
 エレファバはガクガクと笑う膝を押さえつけながら、呂律の回らない様子で口を痙攣させた。

7ラウンド:PC【371】 VS 敵【318】 /敵側に53ダメージ!(エレファバ100/200、子供たちA15、B15、C15、D15、E15、F21、G21、H0、I0、J0)

 屍人使いエレファバは震える手で胸元から首飾りを引き千切ると足下に叩きつけた。

 *屍人使いエレファバ、《結界》発動。すべての攻撃、魔術が無効。

「おそらくこれが最後。やれることは、今やるんだ。出し惜しみなぞしない」
 古代エルフの短剣を握り直したマロウズの呟きに、ヘルトの脳裏に砦の参謀ヴォーゼル卿の言葉が思い起こされた。戦いの前に西方エルフの聖地で手に入れた七星剣を調べてもらった際の事だ。
(……どうもこの剣には刀身と引き換えに発動する秘められた力があるようだ。しかし力を解放するのはよくよく注意したまえ。戦士にとって前線で剣を失うことほど恐ろしいことはなかろうからね)
 ヘルトは異界の悪魔が暴れ回った際にできた石壁の亀裂をちらりと眺めた。
「安心しろ。お前たちの背中は私が守ってやる」
 隣に立つ女戦士ゲルダがそっと口を挟んだ。
 マロウズは小さく頷くと短剣の魔力でその身を銀狼と化し、エレファバの喉笛に食らいつかんと飛びかかる。
 ヘルトは小さく息を整えると、七星剣の刀身に刻まれた上位エルフ語を読み上げ始めた。

宙空の住者
七つの星々の子らよ
我はこの地に汝らを招かん
疾く集い来たりて
我が敵を撃つ礫となれ

 刹那、ヘルトの手元の刀身が粉々に砕け散った。
「なんじゃ……なんの音じゃこれは」
 全員が目の前の敵に立ち向かいながら怪訝な顔を見合わせる。遠くから何かが飛来する物音が近づいていた。
 やがて轟音を上げて、玉座の間の石壁が破壊されると、流星が次々と降り注いだ。
 その場の何もかもを粉砕するが如き勢いで、際限なく叩きつける小隕石の群れに、子供たちは悲鳴を上げて倒れ潰されてゆく。
 エレファバはその様子に慌てて周囲の魔力の壁を強化する。しかし長くは持ちこたえられず、押しつぶされるように結界が消滅すると、全身を小さな流れ星たちが貫き続け、やがて糸が切れるように力なく倒れ伏した。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 流星によって崩れ落ちた石壁の外から、歓声が聞こえてきた。
 カーモネーギーが壁際で聞き耳を立て、嬉しそうな表情で叫んだ。
「援軍だ! 西方エルフの軍隊が来たんだよ!」
 ギルサリオンとマロウズも壁際に近づくと、外では術士隊カルドゥニアを中心に陣形が組まれ、大規模な祓いの言霊が唱えられ始めていた。
 逃げ惑う屍人兵たちの身体が脆くも崩れ落ち、城内にも清浄な空気が満ち始めているのが感じられた。

《天にありては星……》

「マロウズ、同調しろ。外と内で呼応して、奴らを封じ込めるぞ」
 術士隊の詠唱の声を耳にしたギルサリオンが、小さく言霊を唱え始める。

《地にありては花……》

 マロウズは言霊を唱えながら、育ての親である悠久の長イズレンディアの事を思い返していた。思えば俺はあの人の期待に添えないばかりの人生を過ごしていた。エルダーリーフ氏族のこと……イアヴァスリルのこと……何よりも自分自身のこと。

「野郎、まだ動くかよ」
 ニンツの声に皆がはっと振り返った。
 血まみれの肉塊と化した屍人使いエレファバが、這い進むように奥の水槽に取りついていた。
「……シスさま……マリオ……ナルシスさま……」
 水槽はひび割れ、亀裂から培養液が流れ出していた。その中に浮かぶ少年の身体は透き通るほどに白く美しいままであった。
「年貢の納め時だぜ、屍人使い」
 近づいたニンツが短剣を振り上げた。
「お逃げくださいませ、マリオナルシスさま」

 刹那。辺り一帯を底冷えする冷気が包んだ。
 全員の目が水槽に集まると、華奢な少年はうっすらとその眼を開いた。そしてその口が言葉にならぬ言葉を紡いだ。

《わたしをどこかへ》

 瞬時にその場を暗黒が支配する。
 やがて一行が目を開いたときには、空になった水槽と事切れた焦げ茶色の肉塊が転がるだけであった。


「昔滞在してた国の風習で、死者は炎とともに弔うってのがあってさ」
 ポルはバルベルにそう語りながら、辺り一帯に油を撒いて火を放って回っていた。
「なんだかハンバーグが食べたくなってくるよねえ。ハハハッ……うっぷ」
 自分で軽口を叩いておきながら、ポルは肉の焼ける匂いにたまらずむせ返った。
 一行は丘の上から、砂上の楼閣がごとく崩れ落ちてゆくオーバーキル城の様子を眺めていた。
 すべてが灰燼に帰し、城門のマリオナルシスの紋章を記した軍旗も風に飛ばされてゆく。
「屍者の帝国もこれで最期か」
 エミリアがぽつりと呟いた。
「やれやれ、死にそびれたかのう」
 メックリンガーが槍を杖代わりに身体を預けながら、少し寂しそうな調子で口にした。
「死ぬには早いぞ、爺さん」
「なにおう」
 デュラルが肩を叩きながら元気づけるように声をかけた。その隣ではクリフが笑顔を浮かべて深く頷いていた。
「死は決して悲しいことじゃない。ただ森に還るだけなんだから」
 マロウズは誰に言うともなく呟きながら、吹っ切れたような微笑みを浮かべていた。
「さて……帰るぞ、カーモネーギー。これから忙しくなりそうだ」
 ニンツが荷物をまとめ、立ち上がった。
「兄貴、忙しくなるってなにが?」
 振り返ったニンツは落ち着いた笑顔を浮かべながら、皆の顔を見回した。
「決まってるだろ。この辺りの村を復興させるのさ」

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
☆戦果
"片耳の"マロウズ →《ないことに》の呪文石、《耐えよ》の呪文石、《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石、奇跡的な回復薬を使用した。
熟練兵のニンツ →《ないことに》の呪文石、奇跡的な回復薬*2を使用した。神像を模した人形を失った。
エミリア →《L2これでもくらえ!》の呪文石*2、《ないことに》の呪文石*7、《いだてん》の呪文石、神の如き回復薬を使用した。竜の牙を失った。
カーモネーギー →《L3これでもくらえ!》の呪文石、《死の刃》の呪文石*2、神の如き回復薬を使用した。
クリフ →竜の牙を失った。
デュラル・アフサラール →撤収前に《そこにあり》の呪文石*2を使用。マリオナルシスの財宝を入手した。奇跡的な回復薬、神の如き回復薬、《ないことに》の呪文石、《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石を使用した。
バルベル →奇跡的な回復薬*2を使用した。
ヘルト →《ないことに》の呪文石、《厄払い》の呪文石を使用した。
ポル・ポタリア →奇跡的な回復薬、神の如き回復薬、スパイダー・ベノム1瓶(残2)、燃えやすい油*4を使用した。
メックリンガー老 →《L2これでもくらえ!》の呪文石、《いだてん》の呪文石、神の如き回復薬*2を使用した。


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■事件C:10名出撃
〈大断崖〉手前の盆地の古代帝国時代の塔について、探索を継続する。
第四階層の石造りの迷宮の探索もいよいよ最後の部屋を残すのみである。
無敵の万太郎隊の報告にもある通り、荒野の幻影の先に何があるのかは不明である。
細心の注意を払い、探索に望むように。
脅威予測)未知数
報酬)莫大・金貨よりも魔法の物品の入手可能性が高い

■現在の攻略状況(MAP)
https://ftbooks.xyz/ftnews/KhazanEmpire/4F_MAP4.png

攻略済み
【#6】町の幻影
【#1】レッドドラゴンの幻影
【#9】酒場の幻影
【#13】バラクたちの幻影
【#11】何もない小部屋
【#10】トゲの大穴の幻影
【#8】賭博場の幻影
【#3】肖像画の間
【#2】魔獣たちの幻影
【#12】吊り天井の小部屋
【#4】クリストフォルスの研究室
【#5】回転床の小部屋

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 一陣の風が吹き抜けた。
 その場の誰もが、肌寒さを感じ外套や上着の前をかき合わせた。
 不安げな顔で周囲を見回す者、俯いてじっと大地を見つめる者、投げやりに天を仰ぐ者。
 誰しもが感じていた。一体ここはどこだと言うんだ……?
「……本当に、閉めていいのか。万太郎」
 一同の背後からソーグが声をかける。扉を押さえる彼の手に全員の視線が集中する。
「ああ、構わない。それしか道はないんだからな」
 先頭の万太郎が揺るぎない表情で言い渡した。
 ソーグの手が扉を離れる。やがて低い音を立てて閉まりきると、そのまま扉は姿を消した。傍に控えるガーランドとジェニファーはぎょっとした表情を見せたが、自分たち新人以外の周囲の者が落ち着いた様子なのを見て取ると、口をつぐんだ。
「壮観な眺望だな、万太郎くん」
 同行する魔術師カンダックは不遜な態度を隠そうともせずに口を開いた。
 四方どちらを見回しても、広大な荒野の地平線が続いていた。
「果たして、ここはどこなのだろうナ。ヴェルサリウス卿」
「ふむ。見えたものだけで何かを判断するのは早計というものダ」
 二人のカエル人、サマとヴェルサリウスが同じ方向を見つめながら会話を交わす。

 再び風が吹きすさぶ。ケンの耳に遠くから何かが微かに聞こえた気がした。
「な、なんやあれ!」
 女盗賊クリスティが左手の上空を指差しながら、叫び声を上げた。
 遙か上空を風を切り飛翔する巨大な真紅の魔獣の群れが、恐るべき速さでこちらに向かってくる。一行の耳に炎混じりの吐息と共に咆哮が轟く。叫び声は次々と響き渡り、大地をびりびりと振動させた。
「り、竜……」
 へーざぶろーはトゲ棍棒を握る手に無意識に力を込めながら、呆然とした表情で呟いた。
「まさか、あんなに沢山……」
「馬鹿な。太古のトロール=ドラゴン戦争の頃ならいざ知らず……」
 あんぐりと口を開けるヤスヒロンを嗜めようとしたカンダックの言葉が途中で飲み込まれ、そのまま顎に手を当てぶつぶつとした独り言に取って代わった。
 誰もが息を呑む中、飛翔する竜の編隊は一同の頭上を越え、東の空へと飛び去っていった。やがて誰からともなく安堵の吐息が漏れる。
「魔術師戦争よりも遙か昔の時代……」
 カンダックの声に皆が振り返った。
「……6と6と6の悠久の時が流れたのち、終末をもたらすとされた黙示録の魔獣……」
「俺の故郷、ソナン・イエに古い言い伝えが残っている。東方に逃れた竜の大魔術師シャンインシン=シンインシャンに率いられた、十本の角と七つの頭を持つ赤き古竜ども……」
 万太郎が言葉を続けた。周囲からごくりと喉を鳴らす音が響いた。カンダックが毅然とした表情を取り戻して一同を見回す。
「そのようなものが我らの時代に生き残っているはずがない。……つまりこれは太古の風景。幻影だ」
「ま、まさか。これが全て幻影だと言うのですか」
「だとすれば一体、参の騎士はどれほどのクレムを持っているのダ」
 ケンに続いて、珍しく慌てた様子でヴェルサリウスが口にした。
「自身のクレムだけでこれだけの幻影を維持しているとは思えませんね。おそらくは何かの源泉を利用しているはずです。……でなければ、本当に化け物だ」
 アンドレアが冷静な口調で言葉を挟んだ。
「カンダック師、クレムを辿れますか」
 万太郎が傍らの魔術師を見つめながら依頼した。
「やってみよう。ヴェルナーくん、君もあちらを頼めるか」
「承知」
 二人の魔術師が背中合わせに杖に集中する。
 一同が見守る中、やがて魔術師ヴェルナーは額に汗をかきはじめた。
「前にも後ろにも強いクレムを感じる……」
「奇妙なものだが、私も同じ見解だ」
 カンダックがこちらは涼しげな顔を崩さず言葉を続けた。
 集中を解くとヴェルナーは疲労しきった様子で荒い息をついた。
「二手に別れるか」
 へーざぶろーが提案する。万太郎は少し不安な表情を浮かべ悩む様子を見せた。
「ソーグ、お前はどう思う」
 万太郎は後方に控えるソーグに相談の声をかけた。しかし返事はない。不審に思い、傍らに足を運ぶ。
「……おい、ソーグ」
「あ、ああ、すまん。何だった?」
 ソーグはいま気づいたという調子で言葉を返した。今ごろ屍人使いと戦っているであろう別働隊の事が気になって堪らず、ついそちらに頭が行ってしまっていたのだ。
 万太郎は気もそぞろな彼の様子を目にして小さくため息をつくと、言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「二匹のウサギを同時に追いかけては一匹も取れないぜ」
「ウサギ? 何のことだ。こんな迷宮の中で……」
「ソナン・イエに古くから伝わる戒めさ。悩んでも必ずどちらかに決めろってな」
「すまん。しかし、俺は……」
 ソーグは俯いて口ごもる。
「仲間を信じろ。お前が選ばなかった方は、誰かが必ず責任を果たしてくれる。……だから俺たちはやってこれたんだ。そうだろ?」
 そう言い残すと、万太郎は振り返り、手早く隊を分ける指示を出した。
 ソーグはその背中を見つめると、小さく頷く。
 そして二隊は背中合わせに出発した。


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【ヤスヒロン隊・隊列】
前衛:ヤスヒロン、ソーグ、アンドレア
中衛:ケン、サマ
後衛:ガーランド、ジェニファー、魔術師ヴェルナー
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 ヤスヒロンを先頭にした一行は、曇天の続く荒野を歩き続けていた。
 遠くまで見通せるが故に、何も目標がないまま歩く徒労は思いのほか彼らの背にのし掛かっていた。
「おい、あれをミロ」
 サマが前方を指さした。遠くに狼煙のような細い煙が上がっていた。
「なんだかわからんが、何もないよりはマシだよ」
「そうさな」
 眼前を見つめるジェニファーにガーランドが頷き返した。
 一行は足早に歩を進めた。

 やがて見えてきたそれは、何者かによって火を放たれた集落の焼け跡であった。
 まだ火の手も消えやらぬ様子で、一同は周囲を警戒しながら足を踏み入れた。
 破壊された農家の柵のところで、ソーグが唇に指を当て後衛を制した。そのまま傍らのヤスヒロンに耳打ちする。
(中になにかいる……数は多くない)
 ヤスヒロンは頷き、片手をあげて合図すると同時に柵を蹴破り、中に飛び込んだ。
 中では家畜を食い散らかす悪鬼の姿が認められた。一行がなだれ込むと、ウルクどもは慌てて奥の出口から逃げ去った。
「山賊どもめ。おおかた食料と財宝目当ての略奪と言ったところか」
「……それにしては、妙にきれいな鎧兜を身につけていましたがね」
 アンドレアがウルクたちが逃げていった出口を見つめながら口にした。確かに山賊家業の輩が持つには美しすぎる、光沢ある一揃いの鎧を全員が身に纏っていた。
「おい! 母屋から火が」
 ケンは叫ぶと、ガーランドとジェニファーを伴って飛び出していった。しかし火の手の周りは早く、既にそこかしこで首を刎ねられた住人たちの死体が焼けただれた姿を晒していた。
「ひどいもんだな……」
 ヤスヒロンは苦虫を噛み潰したような表情でその様子を眺めていた。彼の脳裏には、故郷のドワーフの小さな村の光景が思い出されていた。怪物の群れの襲撃で焼け落ちた我が家、命を落とした両親、そして生き別れた妹ディニエル……。
(もう二度と、こんな光景は見たくないと思っていたが)
 そんな時、遠くから戦いの鬨の声が耳に届いた。

 広場は逃げ惑う子連れの家族と、それを襲う悪鬼の一団で見る影もない有様だった。次々に斬り殺される青年たち、長い髪を掴んで殴り倒される婦人、馬に蹂躙される子供たち。
 一行の目に映る悪鬼たちはまるで騎士団のように整然と、紋章の入った鎧兜に身を包み、隊長格の者は騎乗し、軍旗を掲げた従者を従えていた。
 牙を剥いた虎と放たれた矢を意匠化したその紋章は、この塔のそこかしこで見かけられるものだということに、アンドレアは気づいた。
「古代帝国《ティグリア》の紋章……」
 悪鬼の騎士団はやがて集落を制圧し尽くすと馬の首を反転させ、堂々たる様で帰還の途につくようであった。
 一行の眼前の光景が歪み始めた。

 ふと気がつくと、一行はまた元の荒野に立ち尽くしていた。


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【万太郎隊・隊列】
前衛:万太郎、へーざぶろー、女盗賊クリスティ
中衛:魔術師カンダック
後衛:ヴェルサリウス、ハンタードール、バードドール
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 一方その頃……万太郎たちは荒野に立ち並ぶ環状列石を調査していた。
 7つの石碑はそれぞれに上位エルフ語が刻まれており、魔術師カンダックがひとつずつ読み解いていった。
「壱の騎士は力自慢のアンブロシウス。弐の騎士は人形遣いベルナルドゥス。そして参の騎士は幻影遣いクリストフォルス……」
 一同の知ったる名前が並ぶ。カンダックはその先の石碑を指し示しながら続けた。
「その先は肆の騎士ドミニクス、伍の騎士エラスムスとある」
「後の二つは?」
 ヴェルサリウスが興味深げな顔で尋ねかけた。
「大賢者フランシスクス・ルーポ。そして、覇王ガイウス……」
 肩を竦めながら答えたカンダックの言葉に、へーざぶろーが舌打ちをして吐き捨てる。
「何が大賢者だ。《狂える魔法使い》と後世に渾名された分際で」
「七英雄ね……皮肉な異名だ。禁忌とされた邪悪な古代魔術を駆使し、従わぬ近隣諸国に毒と呪いを蔓延させ、忌み嫌われた《狂える魔法使い》……しかし、ティグリアの国民に取っては、国を繁栄に導いた英雄であったのだろう」
 カンダックの言葉に、一行の元に沈黙の帳が降りた。

 背後から、また一陣の風が吹きつける。
 振り返った一同の眼前に、天まで届かんとする巨大な塔の姿が忽然と現れたのであった。
 遠くから戦太鼓の打ち鳴らされる音と、戦士たちの鬨の声が聞こえてくる。
 遠目に映る塔のふもとで、悪鬼の大軍と真正面からぶつかっているのは、古代エルフの軍勢のようだった。
 ひときわ目立つ白竜の背に、白のローブを身に纏った老人の姿が見えた。おそらく彼の者が指揮を執っているのだろう。老人が杖を振るうたびに、悪鬼の軍勢の中で地獄のような爆発が何度も起こり、軍勢が吹き飛び、蹴散らされる。そこへ竜を駆る隊長格の戦士たちが突撃を繰り返していた。

 上空から轟く魔獣の咆哮にへーざぶろーははっと気を取り直した。
 背筋が凍る感覚。飛竜の一群が一行目がけて急降下してくるところだった。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
【戦闘】
PC:へーざぶろーMR60防5、無敵の万太郎MR35防5、ヴェルサリウス27世MR30防10魔防5、女盗賊クリスティMR55、魔術師カンダックMR35、ハンタードールMR35、バードドールMR30
敵:ワイヴァーンMR120防10魔防10*3

 *女盗賊クリスティ《いだてん》詠唱。万太郎、2回行動。
 *魔術師カンダック《いだてん》詠唱。ヴェルサリウス、2回行動。
 *先制射撃:ハンタードール【30】/ワイヴァーンAに30ダメージ!(ワイヴァーンA100)

1ラウンド:PC【296】 VS 敵【314】 /PC側に18ダメージ!(へーざぶろー60、万太郎35、ヴェルサリウス30、クリスティ55、カンダック35、ハンタードール35、バードドール30)

 *ワイヴァーンA、特殊能力/急降下。へーざぶろーに10物理ダメージ(へーざぶろー55)
 *ワイヴァーンB、特殊能力/わしづかみ。万太郎に10物理ダメージ(万太郎30)
 *ワイヴァーンC、特殊能力/咆哮。クリスティ行動不能

 *ヴェルサリウス27世《イーゼルヴァンの黒き夢》詠唱。ワイヴァーンC、昏睡。
 *魔術師カンダック《炎の嵐》詠唱。敵全てに20魔法ダメージ!

2ラウンド:PC【244】 VS 敵【198】 /敵側に46ダメージ!(ワイヴァーンA85、B105、C105(昏睡))

 *ワイヴァーンA、特殊能力/咆哮。ヴェルサリウスは咄嗟に黄色い耳栓を耳に詰め込んだ! 咆哮を無効化。
 *ワイヴァーンB、特殊能力/わしづかみ。へーざぶろーに10物理ダメージ(へーざぶろー50)

 *女盗賊クリスティ《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *魔術師カンダック《L3これでもくらえ!》詠唱。ワイヴァーンAに60魔法ダメージ!(ワイヴァーンA35)

3ラウンド:PC【356】 VS 敵【164】 /敵側に192ダメージ!(ワイヴァーンA0、B51、C51(昏睡))

 *ワイヴァーンB、特殊能力/わしづかみ。万太郎に10物理ダメージ(万太郎25)

4ラウンド:PC【271】 VS 敵【72】 /敵側に199ダメージ!(ワイヴァーン全滅)

戦闘終了:へーざぶろーMR50/60防5、無敵の万太郎MR25/35防5、ヴェルサリウス27世MR30防10魔防5、女盗賊クリスティMR55、魔術師カンダックMR35、ハンタードールMR35、バードドールMR30
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 万太郎たちが飛竜と一戦交えている折、ヤスヒロン隊もまた古代の赤竜に行く手を阻まれていた。
「やれやれ、竜殺しの異名は一度で十分なんだがな……」
 ソーグは額の汗を拭いながら呟いた。万太郎隊と合流するためにはここを切り抜けねばならない。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
【戦闘】
PC:アンドレアMR80防5、ソーグMR55防5、ヤスヒロンMR55防10、ナカダンジョウ・ケンMR30、サマMR20防5、ジェニファーMR20防5、ガーランドMR20防5、魔術師ヴェルナーMR25
敵:レッドドラゴンMR350防20魔防10

「臆するな……相手を己と同じ土俵に引きずり出す。そこからの生き死には己自身の問題だ……!」
 ケンが自分に言い聞かせるように呟いた。

 *レッドドラゴン、特殊能力/炎のブレス。前衛3人に10魔法ダメージ(アンドレア70、ソーグ45、ヤスヒロン45)
 *棒手裏剣:ソーグ【42】/レッドドラゴンに42ダメージ!(レッドドラゴン328)
 *アンドレア《いだてん》詠唱。2回行動。
 *ヤスヒロン、古代帝国の杖を使用。《L3これでもくらえ!》発動! レッドドラゴンに60魔法ダメージ!(レッドドラゴン278)
 *サマ《イーゼルヴァンの黒き夢》詠唱。レッドドラゴンには通じない!
 *魔術師ヴェルナー《凶眼》詠唱。アンドレア、攻撃力*3

1ラウンド:PC【409】 VS 敵【277】 /敵側に132ダメージ!(レッドドラゴン166)

「畜生、アタシはこの冒険が終わったら引退して金持ちと結婚するんだよぉ」
 ジェニファーが竜の返り血を浴びながら叫んだ。

 *ソーグ《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石を使用。魔法防御+15。
 *レッドドラゴン、特殊能力/炎のブレス。前衛3人に10魔法ダメージ(アンドレア62、ソーグ45、ヤスヒロン35)
 *魔術師ヴェルナー《L2これでもくらえ!》詠唱。レッドドラゴンに40魔法ダメージ!(レッドドラゴン136)

2ラウンド:PC【299】 VS 敵【191】 /敵側に108ダメージ!(レッドドラゴン48)

 *レッドドラゴン、特殊能力/炎のブレス。前衛3人に10魔法ダメージ(アンドレア54、ソーグ45、ヤスヒロン25)
 *アンドレア、奇跡的な回復薬を使用。10回復。  

3ラウンド:PC【316】 VS 敵【154】 /敵側に162ダメージ!(レッドドラゴン死亡)

戦闘終了:アンドレアMR66/80防5、ソーグMR45/55防5、ヤスヒロンMR25/55防10、ナカダンジョウ・ケンMR30、サマMR20防5、ジェニファーMR20防5、ガーランドMR20防5、魔術師ヴェルナーMR25
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 赤竜をなんとか撃退したヤスヒロン隊は、一息をつこうと周囲を見回した。
 すると不意に目の前に巨大な塔と戦場の様子が姿を現した。まさかこれほどのものを見落とすはずはない。彼らは一様に、夢の中で光景が切り替わるときと同じようなあやふやさを感じていた。
(これもまた幻影か……我々になにか見せたいものでもあるというのか……?)
 アンドレアはそこまで思案すると、小さく呟いた。
「……なんにせよ不愉快ですね」
「おい、あれ」
 ソーグが横に並ぶヤスヒロンに指し示した。その先には飛竜の群れとの戦いを終えた万太郎隊の姿があった。

「クカカカ。どうだ。まるで絵巻物の中に紛れ込んだかのようだろう」
 頭上から耳障りな嘲弄の声が響くと、一行の眼前に塵芥が舞い降り、醜悪な妖魔の姿に像を結んだ。
「《狂える魔法使い》本人ならまだしも、たかが参の騎士風情の、更に使い魔ごときがえらく尊大な物言いをするではないですか」
 アンドレアがわざとらしく肩を竦めて侮蔑の言葉を吐き返す。
「馬鹿めらが。これから1番の見せ場の始まりだ! 参の騎士さまの快進撃! 如何に白の大魔法使いといえども、ただではすまぬのだ」
 歴史上最古の大魔術師と称される、白の魔法使いニン=ドゥルジエル=ニン。ミラードールをはじめ、数々の魔法の遺物を創造した伝説上の存在である。それでは、あの老人が……?
「そう言えば……悪鬼を打ち負かし、この塔を封印したのは、かの白の大魔法使いの偉業とされていたな」
 ソーグがこの塔の一階で目にした壁画に刻まれていた伝承を思い出しながら口にした。
「カカカ。果たしてそれは真実かな? まぁとくと見てゆくが良いわ」
 塵悪魔はあざ笑うようにそう言い放つと、上空へ舞い上がった。

 竜を駆る戦士たちが悪鬼の軍勢をなぎ倒すも束の間、塔から巨大な妖獣が放たれた。日に千の山に生える草を食べ、大河の流れをひと息で飲み干すと噂された、伝説の獣王。大地の妖獣ベヒモスである。
 悪鬼の将軍がその背に乗り、陣頭で指揮を執ると、古代エルフの竜乗りたちは押され始めた。
 その様子を目にした白の魔法使いは、一喝すると白竜の背で大きく杖を振るった。
 すると軍が二つに割れ、後方から人形の一軍が整然と歩を進めてきた。
「ミラードール……あんなにも沢山……」
 武装する様々な種類のミラードールと、ベヒモスを先頭にした悪鬼の軍勢が睨み合う。
 そのとき、塔の上階から光が差し、辺り一帯にしわがれた声が響き渡った。
《覇王ガイウス陛下と大賢者ルーポ様に楯突く愚か者め。五体満足では帰れると思うな、ニン=ドゥルジエル=ニンよ》
 その声に呼応し、白の魔法使いは頭上を見上げ、轟くような鋭い口調で語り返した。
「我らエルフと《善なる種族》に仇なす悪鬼の騎士め。ルーポに伝えよ。必ずや貴様らをこの世界から追放するとな」
《くくく、貴様らエルフの身体は大賢者様の良き研究材料となってくれた。歪んだ世界には歪んだ身体がもっとも似合う。こやつらウルクはやがてこの世界中に拡がるであろう。貴様が如何に《神の如き力を持つ魔術師》と呼ばれようとも、こやつらを根絶やしにすることはもはやかなわぬ》
 塔の扉が開き、更に多くの悪鬼の軍勢が吐き出される。
 白の魔法使いと古代エルフの竜乗りたちは魔法語を詠唱し、辺り一帯には地獄のような爆発に加え炎と氷の嵐が吹き荒れた。
 戦が再開した。
 万太郎たちも傍観者で居ることは許されず、獅子と山羊と毒蛇の頭を持つ巨大な魔獣キマイラが三匹、群れを離れてこちらに向かってきた。
「こいつが……万太郎隊長たちを苦しめたという……しかも三匹も」
 ヤスヒロンは懐から取り出した木の実を噛み砕いて回復薬で流し込みながら、慌ててモーニングスターを構えた。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
【戦闘】
PC:アンドレアMR66/80防5、へーざぶろーMR50/60防5、ソーグMR45/55防5、ヤスヒロンMR45/55防10、無敵の万太郎MR25/35防5、ヴェルサリウス27世MR30防10魔防5、ナカダンジョウ・ケンMR30、サマMR20防5、ジェニファーMR20防5、ガーランドMR20防5、女盗賊クリスティMR55、魔術師ヴェルナーMR25、魔術師カンダックMR35、ハンタードールMR35、バードドールMR30
敵:キマイラMR360防20魔防10*3 【(獅子頭)MR120(山羊頭)MR120(蛇頭)MR120】

「散開しろ!毒のブレスにやられるぞ」
「体力に自信の無いものは後ろへ! 魔術に心得のあるものは援護を頼む!」

 *アンドレア《ダルゴンの暗き残像》詠唱。2体の分身が現れた。
 *へーざぶろー《凶眼》詠唱。攻撃力*3
 *ソーグ《いだてん》詠唱。2回行動。
 *ヤスヒロン《小鬼の口笛》詠唱。MR50の翼あるインプを召喚。
 *万太郎《小鬼の口笛》の呪文石を使用。MR50の翼あるインプを召喚。
 *ヴェルサリウス《小鬼の口笛》の呪文石を使用。MR50の翼あるインプを召喚。
 *サマ《魔神の剣》の呪文石を使用。5ターンの間、攻撃力3倍
 *女盗賊クリスティ《いだてん》詠唱。万太郎、2回行動。
 *魔術師ヴェルナー《凶眼》詠唱。アンドレア、攻撃力*3
 *魔術師カンダック《いだてん》詠唱。ヴェルサリウス、2回行動。
 *先制射撃:ハンタードール【29】/キマイラA【獅子頭】に29ダメージ!(キマイラA獅子頭111)

 ヤスヒロンの甲高い口笛で呼び出された小鬼は、にやにや笑いを浮かべた仲間を二匹従えている。
「はいはいはい、旦那ぁ。今日はワイの友達も連れてきてまっせ〜。名付けてヤス、ヒロ。ありゃ、ほなワイは差し詰め「ン」か。ほい皆の衆、頼んだでえ!」
 主人を小馬鹿にしたような態度の小鬼に不機嫌そうな顔を隠そうともせず、ヤスヒロンはモーニングスターを振りかぶって魔獣に飛びかかっていった。

1ラウンド:PC【1023】 VS 敵【944】 /敵側に79ダメージ!(キマイラA獅子頭111、山羊頭120、蛇頭120、B獅子頭120、山羊頭120、蛇頭120、C獅子頭120、山羊頭120、蛇頭120)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復
 *キマイラA獅子頭 特殊能力/噛みつき。アンドレアに15物理ダメージ。(アンドレア/残像消滅)
 *キマイラB獅子頭 特殊能力/噛みつき。アンドレアに15物理ダメージ。(アンドレア/残像消滅)
 *キマイラC獅子頭 特殊能力/噛みつき。ヤスヒロンに15物理ダメージ。(ヤスヒロン40)

「こ、攻撃がまったく効いていない!」
 ジェニファーがうわずった叫びを上げる。
「そこで魔法の出番というわけだ。前回の応用だよ、へーざぶろーくん!」
 魔術師カンダックが魔法語を唱えながら杖を振りかざした。
 アンドレアは二匹の獅子頭の噛みつきを残像を囮にすり抜けると、懐から取り出した油瓶を魔獣の群れに投げつけ、手にした赤の剣を握りしめ鋭く魔法語を唱える。

 *魔術師カンダック《炎の嵐》詠唱。敵全てに20魔法ダメージ!
 *へーざぶろー《炎の嵐》詠唱。敵全てに20魔法ダメージ!
 *アンドレア、ファイアブランドを使用。《炎の嵐》発動! 敵全員に20魔法ダメージ!
 *油に着火し、敵側全員に毎ターン防御無視3ダメージ。
(キマイラA獅子頭81、山羊頭90、蛇頭90、B獅子頭90、山羊頭90、蛇頭90、C獅子頭90、山羊頭90、蛇頭90)

「ほう。やるね、君も」
「熊の騎士から教わった戦法です」

 *ソーグ《凶眼》詠唱。攻撃力*3
 *ヤスヒロン《魔神の盾》の呪文石を使用。5ターンの間、防御点3倍
 *万太郎、古代帝国の指輪を使用。《凶眼》発動! 攻撃力*3
 *サマ《これでもくらえ!》詠唱。キマイラA獅子頭に20魔法ダメージ!(キマイラA獅子頭71)
 *女盗賊クリスティ《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *魔術師ヴェルナー《L2これでもくらえ!》詠唱。キマイラA獅子頭に40魔法ダメージ!(キマイラA獅子頭41)

2ラウンド:PC【1077】 VS 敵【792】 /敵側に285ダメージ!(キマイラA獅子頭30、山羊頭79、蛇頭79、B獅子頭78、山羊頭78、蛇頭78、C獅子頭78、山羊頭78、蛇頭78)
 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)
 *キマイラA山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(アンドレア65、へーざぶろー45、ソーグ40)

「旦那、危ない!」
 万太郎が両横から角に脇腹をえぐられるようとした瞬間、クリスティが魔法の加護を唱える。
 その横からふらりと前に出たサマが、光を放つ呪文石を握った手で角を掴むとそのまま力尽くで振り払った。
 *サマ《魔神の盾》の呪文石を使用。5ターンの間、防御点3倍
 *女盗賊クリスティ《耐えよ》詠唱。万太郎、5ターンのあいだ防御点2倍。

 *キマイラB山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(ヤスヒロン40、万太郎25、サマ20)
 *キマイラC山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(ヤスヒロン40、万太郎25、サマ20)

「本当は参の騎士相手に取っておくつもりでしたが……奥の手です」
 角の突進を辛くも切り抜けたアンドレアは懐から巻物を取り出し、魔獣を睨みつけながら朗々と読み上げた。

 *アンドレア《ダルゴンの暗き眼差し》の巻物を使用。キマイラC MR360→180
 *へーざぶろー《死の刃》詠唱。攻撃力*2。
 *ヤスヒロン、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *万太郎、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *魔術師カンダック《L3これでもくらえ!》詠唱。キマイラA獅子頭に60魔法ダメージ!(キマイラA獅子頭0)

3ラウンド:PC【811】 VS 敵【581】 /敵側に230ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭72、蛇頭72、B獅子頭71、山羊頭71、蛇頭71、C獅子頭31、山羊頭32、蛇頭32)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)
 *キマイラA蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側前衛に防御無視10ダメージ(アンドレア57、へーざぶろー35、ソーグ30、ヤスヒロン40、万太郎25、サマ10)
 *キマイラB蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側中衛に防御無視10ダメージ(女盗賊クリスティ45、ケン20、ヴェルサリウス(反射)、小鬼A40、B40、C40)
 *キマイラC蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側後衛に防御無視10ダメージ(ガーランド10、ジェニファー10、ハンタードール25、バードドール20、魔術師ヴェルナー15、魔術師カンダック25)

 *ヴェルサリウス、紋章の盾使用。毒のブレスを反射。

 ヴェルサリウスがかざした盾で毒を防ぎながら、その背後からアンドレアと万太郎が飛び出し、それぞれ蛇頭に向けて魔法を放った。

 *アンドレア《これでもくらえ!》詠唱。キマイラC蛇頭に20魔法ダメージ!(キマイラC蛇頭24)
 *万太郎《大まぬけ》の呪文石を使用。キマイラA蛇頭を3ターンの間、混乱させ行動不可

「いまのうちに回復しろ!」
 ソーグは後ろの仲間にそう叫ぶと呪文石を握りしめて、残った蛇頭に飛びかかる。

 *ソーグ《いだてん》の呪文石を使用。2回行動。
 *ヤスヒロン、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *ケン、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *サマ、奇跡的な回復薬を使用。10回復。
 *魔術師カンダック《耐えよ》詠唱。5ターンのあいだヴェルサリウスの防御点2倍。

4ラウンド:PC【640】 VS 敵【462】 /敵側に178ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭71、蛇頭71(混乱)、B獅子頭71、山羊頭71、蛇頭71、C獅子頭31、山羊頭32、蛇頭22)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)

「下がれ、私に任せろ」
 ヴェルサリウスが紋章の盾を掲げたままじりじりと前進し、傷ついたへーざぶろーと交代し、同じく大きなスパイクのついた盾を構えるヤスヒロンに並ぶ。
 そこへ獅子頭が咆哮を上げて襲いかかってきた。

 *キマイラB獅子頭 特殊能力/噛みつき。ヤスヒロンに15物理ダメージ。(ヤスヒロン50(ダメージ無効))
 *キマイラC獅子頭 特殊能力/噛みつき。ヴェルサリウスに15物理ダメージ。(ヴェルサリウス30(ダメージ無効))

5ラウンド:PC【632】 VS 敵【444】 /敵側に188ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭69、蛇頭69(混乱)、B獅子頭69、山羊頭69、蛇頭70、C獅子頭30、山羊頭31、蛇頭21)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)

 *キマイラA山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(ヤスヒロン50、ヴェルサリウス30)
 *キマイラB山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(万太郎25、サマ20)
 *キマイラC山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(アンドレア54、へーざぶろー30、ソーグ25)

 *サマ《魔神の剣》の呪文石を使用。5ターンの間、攻撃力3倍
 *魔術師カンダック《凶眼》詠唱。ヴェルサリウス、攻撃力*3

6ラウンド:PC【704】 VS 敵【455】 /敵側に249ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭60、蛇頭59(混乱)、B獅子頭60、山羊頭60、蛇頭61、C獅子頭21、山羊頭22、蛇頭12)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)
 *キマイラB蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側前衛に防御無視10ダメージ(アンドレア46、へーざぶろー20、ソーグ15、ヤスヒロン40、万太郎15、ヴェルサリウス20、サマ10)
 *キマイラC蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側中衛に防御無視10ダメージ(女盗賊クリスティ35、ケン20、小鬼A30、B30、C30)

「このままじゃジリ貧だ……」
 ケンが焦った様子で呟いた。魔獣は恐るべき回復能力を有しており、炎にその肉体を焼かれながらも、ゆっくりと傷を治し続けていた。
 横でその呟きを耳にした万太郎は、一つ小さく頷くと、ソナン・イエの槍を真っ直ぐに掲げた。そしてその場の全員に聞こえる凜とした声で言い放った。
「一点突破だ。左右は捨てる。正面のやつに全員でかかるぞ!」

 *ヤスヒロン、回復の指輪を使用。10回復。
 *ケン、奇跡的な回復薬を使用。10回復。

7ラウンド:PC【597】 VS 敵【394】 /敵側に203ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭0、蛇頭0、B獅子頭62、山羊頭62、蛇頭63、C獅子頭23、山羊頭24、蛇頭14)

 全員の集中攻撃を浴びた魔獣の巨体が、どうと倒れた。残る二匹が左右から迫る。
「ヤスヒロン! 左をしとめろ」
 万太郎はそう叫ぶと右の魔獣に向かって槍を構えて走り出した。
「万太郎隊長!」
「ウォーーー」

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)
 *キマイラB獅子頭 特殊能力/噛みつき。万太郎に15物理ダメージ。(万太郎10)
 *キマイラC獅子頭 特殊能力/噛みつき。ヤスヒロンに15物理ダメージ。(ヤスヒロン50(ダメージ無効))

 *サマ《耐えよ》詠唱。万太郎、5ターンのあいだ防御点2倍。
 *ヤスヒロン《魔神の盾》の呪文石を使用。5ターンの間、防御点3倍

8ラウンド:PC【561】 VS 敵【345】 /敵側に216ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭0、蛇頭0、B獅子頭48、山羊頭48、蛇頭49、C獅子頭9、山羊頭10、蛇頭0)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)
 *キマイラB山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(万太郎10(ダメージ無効))
 *キマイラC山羊頭 特殊能力/角の突進。PC側前衛に10物理ダメージ。(ヤスヒロン50(ダメージ無効))

 万太郎は目にもとまらぬ動きで槍を何度も振り回し、魔獣の猛攻を一人で防ぎ続けた。
 その隙に、仲間たちはヤスヒロンの相手取る手負いの魔獣に殺到し、その身体をずたずたに切り裂く。
 断末魔の咆哮が辺りに木霊する。

9ラウンド:PC【543】 VS 敵【278】 /敵側に265ダメージ!(キマイラA獅子頭0、山羊頭0、蛇頭0、B獅子頭17、山羊頭17、蛇頭18、C獅子頭0、山羊頭0、蛇頭0)

 *キマイラ 特殊能力/再生 各5回復(炎継続ダメージ3)

 最後の魔獣の蛇頭が、万太郎に向けて毒の息を吐きかけようと大きく息を吸い込んだ。さすがの万太郎も傷つききったこの身体では耐えられそうにないことは明らかだった。
(ここで終わりか……)
 万太郎はやりきったという顔で槍を持つ手を緩めた。
「諦めるな、万太郎!」
 鋭い声と共に、仲間全員が万太郎と魔獣の間に割り込み、身体を張って毒のブレスを受け止めた。

 *キマイラB蛇頭 特殊能力/毒のブレス。PC側前衛に防御無視10ダメージ(アンドレア38、へーざぶろー10、ソーグ5、ヤスヒロン40、ヴェルサリウス10)

 万太郎は最後の力を振り絞り跳躍一閃、魔獣の三つ首をいちどきに薙ぎ払った。

10ラウンド:PC【535】 VS 敵【168】 /敵側に367ダメージ!(キマイラ全滅)

戦闘終了:アンドレアMR38/80防5、へーざぶろーMR10/60防5、ソーグMR5/55防5、ヤスヒロンMR40/55防10、無敵の万太郎MR10/35防5、ヴェルサリウス27世MR10/30防10魔防5、ナカダンジョウ・ケンMR30、サマMR10/20防5、ジェニファーMR10/20防5、ガーランドMR10/20防5、女盗賊クリスティMR35/55、魔術師ヴェルナーMR15/25、魔術師カンダックMR25/35、ハンタードールMR25/35、バードドールMR20/30、小鬼A30/50(送還)、B30/50(送還)、C30/50(送還)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 辺りは静まりかえっており、戦士たちの荒い息づかいだけが聞こえていた。
 やがて周りを見回す余裕が生まれたとき、先ほどまでの戦場の光景は既に遠くに離れていた。見上げれば天まで届かんとする塔の姿が遠目に映る。
 そして西の空に青白く透き通る、おぼろげなローブ姿の人物が浮かび上がっていた。
《……貴様らか。塔に入り込んだ虫けらと言うのは。大方、荒野に住み着いた蛮族の類いであろうが、偉大なる陛下のお心を騒がす輩は、なんであれ排除させてもらう》
 一行の頭に直接しわがれた声が響き渡った。先ほど白の魔法使いとやり合っていた声に相違なかった。
「我らはカザン帝国開拓軍の者だ。蛮族などではない」
 ヴェルサリウスが表情を崩さず冷静に答えた。
《カザン? なんだそれは……》
 老人は思案するように目を閉じた。しばしの沈黙ののち、やがて得心がいったような様子で口を開いた。
《……ほう、我らが不在にしているうちにこの地に蛮族どもめが蔓延り、王国気取りか》
「貴様らこそ、数千年前に滅んでいるのだ。亡霊め」
 ソーグが吐き捨てるように言い返した。
《愚か者どもめ。この世界は未来永劫、全て陛下のものであるのだ》
「参の騎士、幻影遣いクリストフォルス……それが貴殿の名ですね」
 振り返ると後方から、アンドレアが思案げな様子で立ち上がっていた。
「その異名の通り、幻影を遣い、時には人の心を映し、その脆さを利用するという点は合理的だといえます。そんな合理的な思考の持ち主が、なぜあのキマイラのような幻獣を作り上げたのか、それが疑問でした」
 アンドレアは話しながら、前に進み出た。
「だってそうでしょう。幻影で何でも生み出せるのであれば、わざわざ実体をもった幻獣など生み出す必要はない。……ではなぜか?」
 大げさとも言える身振りで肩を竦めながら、アンドレアはちらりとソーグに目をやる。ソーグははっとすると小さく頷き返した。
「つまり、幻影には限界があり、貴殿の目的は幻影だけでは叶えられないということ。結局実体に頼るのなら、人形を生み出せる弐の騎士の方が貴殿よりも優れていますよ」
 馬鹿にしたように言葉を紡ぎながら、嘲るように参の騎士へ向けて指を突きつけた。
 その直後、不意にソーグが背中越しに棒手裏剣を投げつけた。しかし飛来した手裏剣はクリストフォルスのおぼろげな身体を通り抜ける。
「……あれは死霊の類だな」
 ヴェルサリウスの呟きに、アンドレアが頷き返した。
「なるほど肉の身体を持たぬが故に、幻影だけでなく幻獣に固執したか」
《ええい、黙れ。下賤の者》
 クリストフォルスは苛立たしげな口調とともに片手を振り上げた。
 すると辺りに魔獣の咆哮が轟き、上空からは飛竜の群れ、大地からはキマイラと赤竜を率い、獣王ベヒモスが姿を現す。
《死して詫びるが良いわ》
 満身創痍の一同の顔に恐怖と絶望の表情が浮かぶ。
「いいえ、もう通じませんよ」
 アンドレアは冷静さを崩さずにそう答えた。
「カンダック師!」
 アンドレアが鋭く叫ぶと、後方で魔術師カンダックはにやりと笑みを浮かべた。
 アンドレアが話し続けている間に、時間をかけてクレムを集中させ、大きな魔術の準備をしていたのだ。
「この世を形作る万物の根源。如何なる強き命でさえも、従うことあたわず。汝が真の姿を思い出せ……《魔法破り》!」
 カンダックが額にあてていた杖を大きく振るうと、魔術師を中心に辺り一帯に強い衝撃波が放たれた。
 びりびりと空気が振動し、とても目を開けていられない。一同はその場にとどまらんと足を踏ん張り続けた。
 やがて、周囲がしんと静まりかえった。
 ようやく一行が目を開けたときには、その眼前には伽藍とした石畳の大広間が拡がっていた。
「まさか……この階層のすべてが幻影だったとでも言うのか……」
 唖然とした表情でへーざぶろーが呟いた。
《……おのれ蛮族ども……しかしこれ以上……上の階層に足を踏み入れることは……許さぬ……》
 空虚な大広間に微かに呪詛の声が響き渡り、そして辺りを沈黙が支配した。

「こいつを登れるようにするには、ドワーフ職人の一団が必要だろうなぁ」
 ヤスヒロンが呆然とした様子で口にした。疲れ切った一行の前には、崩れ落ちた大階段の姿があった。第五階層へと向かう道はこれしかないようだった。
「何にせよ、今すぐは無理ダ」
 サマが呆れた調子で口にした。後方からため息をつく声が重なる。
「伝説を紐解くにはまだまだ時間がかかるということか……ま、それが探索の面白いところさ」
 ソーグが吹っ切れたような様子で呟いた。
「これまで幾多数多の人々がこの塔に挑んできたはずだ。俺たちと同じようにな」
 万太郎が帰り支度をしながら言葉を紡いだ。
「俺たちの代だけで全てを終わらせようなんて、虫が良すぎる話さ」
 ヴェルサリウスが隣で小さく頷いた。
「俺たちは歴史に残る大英雄なんかじゃない……だが、一人一人の力は小さくとも、諦めずに挑んでいれば、いつか誰かが、受け継いだ思いを叶えてくれる」
 万太郎は立ち上がり、仲間たちを見回した。
「そう信じよう」
 一同は深く頷くと、帰るべき場所への一歩を進み出した。


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
☆戦果
無敵の万太郎 →《大まぬけ》の呪文石、《小鬼の口笛》の呪文石、奇跡的な回復薬を使用した。
アンドレア →《ダルゴンの暗き眼差し》の巻物、油の瓶、奇跡的な回復薬を使用した。
ヴェルサリウス27世 →《小鬼の口笛》の呪文石を使用した。
ガーランド
サマ →《魔神の剣》の呪文石*2、《魔神の盾》の呪文石、奇跡的な回復薬を使用した。
ジェニファー
ソーグ →《いだてん》の呪文石、《わたしを守って、あなたを守って》の呪文石を使用した。
ナカダンジョウ・ケン →奇跡的な回復薬*2を使用した。
へーざぶろー
ヤスヒロン →《魔神の盾》の呪文石*2、奇跡的な回復薬*3、ボンバの実を使用した。


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☆キャラクターステータス
*最終回は順位をつけるのが難しかったため、50音順に最終ステータスのみ公開致します。
しかし最初は誰しも「MR20、装備なし、金貨0枚」で始めたというのに、全員強くなりましたねえ。


アンドレア/MR80防5+++
→(所持品:金貨0枚。黒き剣、ファイアブランドMR+15(《炎の嵐》を発動/1事件に1回使用可能)、高品質な武器【鞭】、高品質な防具【革鎧】、《開け》の呪文石*2、《そこにあり》の呪文石*2、《ないことに》の呪文石、モンゴーのしるし、写本(宝飾および工芸品について)、呪文:《これでもくらえ!》《いだてん》《ダルゴンの暗き残像》)
・雇い人(魔術師ヴェルナーL2) 金貨60枚 MR25・《L2これでもくらえ!》《ないことに》《凶眼》/1事件限り

ヴェルサリウス27世/MR30防10魔防5+
→(所持品:金貨5枚。高品質な武器【超小型単弓】、高品質な防具【キルテッド・シルク】、?たて=紋章の盾(魔法を跳ね返す/1事件に1回使用可能)、古代帝国の首飾り、古代帝国の宝珠(《開け》《そこにあり》《ないことに》のうち、1つを選んで使用可能/1事件に1回使用可能)、幸福の黄色い耳栓、呪文:《イーゼルヴァンの黒き夢》、ハンタードール(MR35、先制攻撃可能))
・雇い人(魔術師カンダックL3) 金貨100枚 MR35・《L3これでもくらえ!》《ないことに》《いだてん》《凶眼》《炎の嵐》《耐えよ》《わたしを守って、あなたを守って》/1事件限り

エミリア/MR30防5
→(所持品:金貨0枚。ベアクロー、高品質な防具【ブレストプレート】、《開け》の呪文石*2、《そこにあり》の呪文石*4、奇跡的な回復薬、屍人使いエルファニの指輪(《L3これでもくらえ!》/1事件に1回使用可能)、呪文:《炎の嵐》)

"片耳の"マロウズ/MR45防5魔防10
→(所持品:金貨5枚。黒き短剣、エルブンダガーMR+10(使用すると銀狼化MR+20/1事件に1回使用可能)、クリス・アカラベス(MR+10/魔法防御+10)、高品質な武器+2【チェーン・ソード】、高品質な防具【レザージャケット】、呪文:《死の刃》《そこにあり》《いだてん》)
・雇い人(ゾルの女剣士ゲルダL2) 金貨60枚 MR60防5/1事件限り

カーモネーギー/MR35防10
→(所持品:金貨0枚。高品質な武器+2【魔弓・イチイバル】、高品質な防具【革鎧】、高品質な防具【籠手に付けれる小型盾】、《開け》の呪文石、星のメダリオン(流星招来・敵単体に魔法ダメージ30/1事件に1回使用可能)、呪文:《そこにあり》《ないことに》《いだてん》《耐えよ》《わたしを守って、あなたを守って》)

ガーランド/MR20防5
→(所持品:金貨0枚。高品質な防具 【???】)

クリフ/MR65防5魔防5+++
→(所持品:金貨5枚。高品質な武器+2【斧】、高品質な防具 【???】、魔封じの首飾り(魔防+5)、《開け》の呪文石、呪文:《イーゼルヴァンの黒き手》《ダルゴンの暗き眼差し》)

サマ/MR20防5
→(所持品:金貨40枚。高品質な防具【スケイル・アーマー】、《開け》の呪文石、《ないことに》の呪文石、呪文:《これでもくらえ!》《そこにあり》《耐えよ》《イーゼルヴァンの黒き夢》)

ジェニファー/MR20防5
→(所持品:金貨0枚。高品質な防具【レザー・アーマー】)

熟練兵のニンツ/MR40防5
→(所持品:金貨5枚。高品質な武器【良い短剣】&【鋭い短剣】、高品質な防具【硬い皮鎧】、《開け》の呪文石、呪文:《これでもくらえ!》《そこにあり》《ないことに》《炎の嵐》《わたしを守って、あなたを守って》)

スパイデイ/MR40防5+
→(所持品:金貨5枚。高品質な武器【細身の剣(レイピア)】、高品質な防具 【鋼の鎧、楯セット】、《開け》の呪文石*2、《そこにあり》の呪文石*2、《凶眼》の呪文石、奇跡的な回復薬、スパイダーベノム1瓶、呪文:《いだてん》《ダルゴンの暗き雷鳴》)

ソーグ/MR55防5++
→(所持品:金貨10枚。高品質な武器+2【グレートソード】、高品質な防具【レザーアーマー】、《開け》の呪文石*2、《そこにあり》の呪文石、《ないことに》の呪文石、棒手裏剣(狙撃)、呪文:《ないことに》《いだてん》《凶眼》)

デュラル・アフサラール/MR40防5+
 +マリオナルシスの財宝
→(所持品:金貨5枚。高品質な武器【弓】、灰色熊の毛皮、《開け》の呪文石、屍人使いエリファスの杖(《L2これでもくらえ!》/1事件に1回使用可能)、呪文:《ないことに》《いだてん》《凶眼》《炎の嵐》《ダルゴンの暗き眼差し》)

ナカダンジョウ・ケン/MR30
→(所持品:金貨35枚。高品質な武器【鋼の先鋭トンファー・抜塞(バッサイ)】、《ないことに》の呪文石)

バルベル/MR30防5
(所持品:金貨0枚。高品質な武器【シュヴァイツァー・サーベル】、高品質な防具【魔術師タイプのローブ】)

へーざぶろー/MR60防5+
→(所持品:金貨10枚、高品質な武器+2【トゲこん棒】&【トゲこん棒】、高品質な防具【レザーアーマー】、呪文:《死の刃》《そこにあり》《凶眼》《炎の嵐》《メメコレオウスの黒き礫》)

ヘルト/MR55防5
→(所持品:金貨0枚。高品質な武器+2【マクアウィトル】&七星剣(MR+20)、(予備)高品質な武器【カッツバルゲル】、高品質な防具【メイル・アーマー】、保存食*1、《開け》の呪文石、呪文:《死の刃》《そこにあり》《ないことに》《炎の嵐》)
・雇い人(エルフ魔術師リディアL3) 金貨100枚 MR35・《L3これでもくらえ!》《ないことに》《いだてん》《凶眼》《炎の嵐》《耐えよ》《わたしを守って、あなたを守って》/1事件限り

ポル・ポタリア/MR35防5魔防10
→(所持品:金貨0枚。高品質な武器+2【振り回しやすい金属棒】、高品質な防具【飛来物除けの護符を織り込んだジャケット(緑色)と足になじむ靴】、魔除けのメダリオン(魔法防御+10)、《開け》の呪文石、《そこにあり》の呪文石*2、奇跡的な回復薬、スパイダー・ベノム1瓶(残2)、呪文:《そこにあり》《ないことに》《いだてん》《凶眼》《メメコレオウスの黒き礫》)

無敵の万太郎/MR35防5
→(所持品:金貨0枚。高品質な武器+2【ソナン・イエの槍】、高品質な防具【アーミング・ダブレット】、古代帝国の指輪(《凶眼》《耐えよ》《わたしを守って、あなたを守って》のうち、1つを選んで使用可能/1事件に1回使用可能)、《そこにあり》の呪文石*3、バードドール(MR30、飛行可能))
・雇い人(女盗賊クリスティL3) 金貨100枚 MR55防2・《死の刃》《開け》《そこにあり》《いだてん》《耐えよ》/1事件限り

メックリンガー老/MR30防5
→(所持品:金貨0枚。高品質な武器【槍】、いにしえの胸当て、《そこにあり》の呪文石、特別製の魔法の杖《愚かなダーヴィド》(一通りの魔法を習得しているが、気が向いたときにしか発動しない)、呪文:《ないことに》)

ヤスヒロン/MR55防10+
→(所持品:金貨55枚。高品質な武器+2【鍛冶師の弟子考案、自作の:飛び出せ!くん【モーニングスター】壱号くん+2】、高品質な武器防具【バイキングスパイクシールド】、高品質な武器【ヘヴィーメイス】、高品質な防具【首、腕など急所を部分的に鉄板で覆った鎖帷子】、古代帝国の杖(《L3これでもくらえ!》《炎の嵐》のうち、1つを選んで使用可能/1事件に1回使用可能)、回復の指輪(ダメージ10点回復/1事件に1回使用可能)、《開け》の呪文石、《ないことに》の呪文石、呪文:《小鬼の口笛》)

■砦にて待機(今回投稿無し)
《冬の嶺の炎》バラク=ヘルムハート/MR50防5
→(所持品:金貨110枚。黒き大斧、高品質な武器【バスタードソード】、高品質な防具【革鎧】、《開け》の呪文石、奇跡的な回復薬*1、身代わりの依り代、呪文:《そこにあり》《ないことに》《いだてん》《メメコレオウスの黒き礫》)

シャオリン/MR45防5魔防5
→(所持品:金貨215枚。高品質な武器+2【ヒョウ】、高品質な武器【鉄扇】、高品質な防具 【火鼠の皮衣】、カザン帝国勲章、《開け》の呪文石、《そこにあり》の呪文石、《粉みじん》の呪文石、奇跡的な回復薬、炎のガントレット(《炎の嵐》《炎の壁》のうち、1つを選んで使用可能/1事件に1回使用可能)、木製自作ドール「睡蓮」、呪文:《死の刃》《ないことに》《炎の嵐》)

ゲディス/MR20 →(所持品:金貨35枚)
イールギット/MR30 →(所持品:金貨40枚。いにしえの短剣)
アクロス/MR20 →(所持品:金貨50枚)

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【エピローグ回へむけて】
冒険はこれで終わりますが、それぞれのキャラクターの人生はこれからも続きます。
そこで後日談として、最終回を経て、それぞれのキャラクターがその後どうしたいかをお送り頂いて、簡単なエピローグ回を書かせて頂こうと思います。

なお第二部については以前もお話しましたように、今はまだ具体的には考えておりません。
読者参加企画としてこんなゲームを遊びたい!など、ご意見・ご感想がございましたら、ぜひお便りフォームの方に頂ければ嬉しく思います。

【エピローグ投稿方法】
https://jp.surveymonkey.com/r/TQMDL32

フォームに下記を記入し、送信して下さい。
・キャラクター名
・プレイヤー名(公表しても良い方のみ)
・キャラクターのその後

【参加締切】
配信日の2週間後を締切とします。

■今回の締切:3/14(日)24時まで
 *エピローグ配信予定:4月下旬〜5月上旬

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これまでの振り返りはバックナンバーでご確認下さい。

【カザン帝国辺境開拓記/バックナンバー】
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/blog-page.html

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【作戦会議室・峡谷の山猫亭】
https://www1.x-feeder.info/FTGAME/

出撃前に相談をしたり、雑談や交流ができるチャットルームです。
ぜひ感想などもお寄せ下さい。
PC・スマホ・携帯から閲覧/書き込みできますので、ぜひご活用下さい!


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