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2026年10月1日木曜日

D&D第4版リプレイ〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 第8回 FT新聞 No.4999

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜(ドラゴン)の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 連載第8回 岡和田晃 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ▼はじめに 本作は、かつてD&D日本語版公式サイトに掲載されていた、エベロン世界が舞台の『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版』リプレイ「竜の予言に選ばれし者たち」の続編です。 当時のサイトは閉鎖されていますが、前日譚の「トレイルブレイザーズを探せ!」と「竜の予言を解放せよ!」はウェブアーカイブで閲覧可能です。D&D第4版や舞台の世界観そのものの解説にもなっておりますので、未読の方は以下よりご覧ください。 https://web.archive.org/web/20110520091921/http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/web_replay_eb/index.html うまく繋がらない方は以下もあわせてご利用ください。 https://www.dropbox.com/scl/fi/hfckq3h4rglyer10ycaj4/1_.pdf?rlkey=xzasih78fdhbqoikbr98kovkl&dl=0 https://www.dropbox.com/scl/fi/nluo5nzotbnpeanc1zh0r/2_.pdf?rlkey=f49qwu5pxzhc4flzcw7kj1v5y&dl=0 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ DM:ダンジョンマスター(岡和田晃) ネディア:ヒューマンのレンジャー(PL:中山葵) ヘルメス:ヒューマンのアーティフィサー(PL:カナイセイジ) クシュタリ:カラシュターのパラディン(PL:見田航介) ベック:ウォーフォージドのファイター(PL:高橋志行) ジュス:ティーフリングのウィザード(PL:ノダソル) ●予言の洞窟へ DM:それでは君たちは、長老ヴァロンほか、エラドリンの精鋭たちに連れられ、地下にある防壁のもとへ連れて行かれます。周囲はぼんやりとした魔法の明かりに照らされ、特に困るほどのものでもありません。やがて、防壁が見えてきました。 DM/長老ヴァロン:「この防壁は、フェイスパイアとカイバーとを分かつもの。この先に、偉大なる竜の力が封じ込められた“竜の予言”がある。竜の予言者に選ばれた者のみが、この先、道を拓くことができるだろう」 ベック:片道切符となる可能性があるというわけですね。 ジュス:俺様がいる限り、そうはさせん。常に道は分岐するぞ、ガハハ! ヘルメス:その根拠のない自信はどこから来るんだ……。 ベック:データ・バンクから“炭鉱のカナリア”という言葉が出てきました(笑) DM:長老が何やら、竜語で呪文を唱えると、防壁はするりと通り抜けられるようになった。ネディア:では、尖塔に立って歩いていきます。 ベック:それはさすがに付き添いますよ。防衛役の勤めを果たします。 ヘルメス:“乗りかかった泥船”というか……。 DM:では、しばらく降りていくと、途端に瘴気が漲ってきます。全員、〈持久力〉で判定を。難易度は15。 ヘルメス:(ころころ)4。 クシュタリ:(ころころ)1を振ってしまった。 ベック:(ころころ)20を振りました。 ネディア:(ころころ)こちらは、達成値が20です。 ジュス:(ころころ)13しか行かなかったぜ。 DM:瘴気にあてられて、ヘルメス、クシュタリ、ジュスは回復力が1減ります。 クシュタリ:こ、小癪な……。じゃが、これしきで悪しき者には破れんぞ! DM:瘴気の中を歩き続け、下りに下ると、やがて道が、T字路状になります。突き当りにはイオカリック文字(竜語の文字)で、何か書かれています。不思議なことに、竜語を解さない者でも、そこのプレートには何が書かれているかわかりました。  真に賢き者は、定められた道をただ辿る者ではない。  現在を見据え、正しき道筋を見出すだろう。 ネディア:これだけ? DM:そう。でも、この「正しき道筋を“見出す”だろう」というのは、竜語ではダブルミーニングになっていて、「正しき道筋を“創り出す”だろう」という意味にも取ることができるようになっています。 ネディア:「“見出す”と“創り出す”……?」 DM:そう。それらは同じ言葉なんだ。 クシュタリ:ふむ、謎めいているな。ほかに手がかりはないのか? DM:T字路の左手側には“予見”、右手には“反省”と、これもまたイオカリック文字で記されています。 ジュス:うさん臭いな〜。 ヘルメス:(何かが閃いたように)ここはオレの出番だな。隠し扉、もしくは、それに類するものを探そう。 DM:それでは、〈知覚〉で判定してください。 ヘルメス:(ころころ)ふっふっふ。達成値30! DM:正面の壁、プレートのかかっている場所に隠し扉があるとわかりました。鍵も罠もないようです。チロリロリロリン♪ 一同:おおお〜! ベック/高橋:『ゼルダの伝説』的な(笑) ヘルメス:(即断)では、その扉へ行こう! 一同:おいおいおい! DM:では、荘重な竜語で「そなたは正しき道を選んだ」と。 一同:おお〜(驚嘆する) ネディア:どうしてわかったんですか(不思議そうに)? ヘルメス:左手の“予見”は「未来」の光景を見ることだろ。右手の“反省”は「過去」の経験を思い返し、修正の材料とすることだ。だとしたら、真ん中にあるのは「現在」っきゃないだろう。 DM:ご名答。 ネディア:なるほど〜。  第2話で登場したのは仕掛けは、古典的パズル「ハノイの塔」だったが、今回のギミックは、ずばり「リドル」(謎かけ)である。D&Dに多大な影響を与え、映画化も予定されている古典ファンタジー小説の名作『ホビットの冒険』(岩波少年文庫)では、たくさんのリドルが実際に登場するので、ぜひ読んでみてほしい。  なお、ヒントがやや素っ気ないが、左右両方の道に、別の手がかりは用意しておいてあった。「リドル」も、ヒラメキがないと、行き詰まりやすいギミックなので、簡単すぎるくらいがちょうどよいだろう。 ●ドラゴンの予言者 DM:隠し扉の先は細い道が続いていました。そこをしばらく下っていくと、洞窟を刳り抜いたような広大な空間が広がっています。……よく見るとわかるのですが、巨大なドラゴンシャードの鉱床になっているようですね。シベイ・ドラゴンシャード、エベロン・ドラゴンシャード、カイバー・ドラゴンシャード。それらが混在している一種異様な光景です。 ヘルメス:おおお、それはすごい。皆を呼び寄せよう。 DM:では、パーティは、その広大な洞窟を歩いています。静謐で、善とも悪とも付かない、それでいて張り詰めたような空気が流れています。 クシュタリ:おかしいな、もっと妨害的なものがあるかと思ったが、そうでもなさそうじゃ。 DM:やがて、洞窟の奥に、大きなモノリスのようなものがあることがわかりました。そのモノリスは、ドラゴンの姿をしています。見方によっては、ドラゴンの化石のようにも見えます。その前に、修行者を思わせる謹厳な顔をした禿頭の男が立っています。右の二の腕には、既存のいかなるドラゴンマークにも似ていないドラゴンマークが刻まれています。 ヘルメス:噂に聞く特異型ドラゴンマークか? DM:微妙に違う。特異型ドラゴンマークは、13の主要ドラゴンマークの突然変異として登場したものと言われているが、彼のドラゴンマークは、あらゆるドラゴンマークの根源に近いもの。彼はネディアを見て……。 謎の男:「久しぶりだな。待ちわびておったぞ」 ネディア:誰でしょう? ベック:知り合いだったのですか? 謎の男:「わしのことを憶えてはおらんのか……ならば、思い出させて見せよう」 ジュス:「おっ、闘うのか?」 DM:男は、全身に闘気を漲らせました。二の腕のドラゴンマークが熱を帯びて輝きます。すると、それに共鳴するかのように、ネディアとヘルメスのドラゴンマークが共鳴し、同時に、クシュタリ、ベック、ジュスの記憶に刻まれた“竜の予言”が共鳴し、燃え盛るように熱を帯びます。 ネディア:「あなたに見覚えはありませんが……だけど、このドラゴンマークはあなたを知っているみたい」 イェスリン・リーン:「わしは“ドラゴンの予言者”イェスリン・リーン、かつて、そなたと共に戦った者だ」 一同:ええーっ!? ネディア:「どういうことですか?」  イェスリン・リーン:「急いてはならぬ、よく聞け。世界のあらゆる神秘は、所詮は各々の様相に過ぎぬ。その様相を代表する存在こそが、ドラゴンというものなのだ。ゆえにドラゴンは、世界の過去、現在、未来、そのすべての意味を心得ている」 ベック/高橋:そうか、エベロン世界でのドラゴンは、単なるクリーチャーではなかったんでしたね。 イェスリン・リーン:「だが、彼らは語らぬ。ただ“予言”という形で記録するのみ。つまり、{竜/ドラゴン}の予言”とは、彼らが幻視した世界の記録なのだ。世界の神秘——そのすべてはある様式の一部にすぎない。すべての事物は、大きなものも小さきものも、“竜の予言”に仕えているのだ」 ジュス:「わかるような、わからないような……」 ●“竜の予言”の正体 イェスリン・リーン:「劫初の時より、定命の者には想像もつかぬ永きにわたり、ドラゴンは、世界の{相/かたち}を見据えてきた。だが、そのことについて語る際、彼らは“予言”という形を取らざるをえない。ドラゴンでさえ、自らが体現する世界の時間を、言葉にすることは、かなわない」 ベック:「だから“竜の予言”は、さまざまな解釈が可能であったり、その位置づけも多様なのですね」 イェスリン・リーン:「さよう。“竜の予言”とはすなわち、空間を、時間を、そして歴史を超えるもの。だが“予言”を記したドラゴンは、それを超えることができぬのだ。ここに“予言”の秘密がある」 DM:そうして、彼は無限の彼方を見据えるような眼差しで、滔々と語り始めた。  シベイが虚無に舞い踊り、ひとつ、またひとつと星ぼしを配置していった。  そのうしろをカイバーがついてまわり、シベイが星を置くが早いか平らげてゆく。  エベロンだけが離れたところで歌をうたい、それに合わせるように何もない空間に生命が芽生えていった。  シベイとカイバーは絡み合い、互いに互いを貪り合う。両者はやがて、散り散りになって星々の彼方へと掻き消えてゆく。  残るエベロンは、彼らの遺骸をかき集め、哀しみの歌を歌いながら、生まれた生命を新たにシベイ、カイバーと名指した。シベイは未来を示し、カイバーは過去を表す。 ヘルメス:この創世神話は……。ゴッドフォージドのサロ(第2話参照)から聞いたものとは、違うようだな。 ジュス:わけがわからん。どっちが正しいんだ? イェスリン・リーン:「どちらが正しいのか、ということはさして重要ではない。問題なのは、わしが吟じた創世神話も、また、ひとつの“ありえた創世神話”だということじゃ」 ジュス:嘘なのかよっ! イェスリン・リーン:「そうではない。歴史も神話も、{畢竟/ひっきょう}、物語の一つにすぎぬ、とわしは言っておるのだ。そして、それを体現するドラゴンもまた、然り。すなわちドラゴンが体現しているものは、過去であり、現在であり、同時に未来でもある。ドラゴンとはひとつの“可能性”が具象化した存在なのだ」 ジュス:さっぱりわからーん! ベック/高橋:「シュレーディンガーの猫」みたいな話ですよね? DM:確かに、イェスリン・リーンの言っていることは「シュレーディンガーの猫」の例を出せば、しっくりと来るものがあるな。  「シュレーディンガーの猫」とは、有名な量子論の確率実験のこと。物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーの実験に由来する。密閉された箱の中に猫を入れ、50%の確率で条件が満たされて毒ガスが発生し、猫は死んでしまうとする。  さて、この猫は、箱に入れられた状態において、生きているのか、死んでいるのか?  答えは、生きても死んでもいない。猫の生死を決めるためには、第三者が箱の中を観測する必要がある。つまり、猫は生きている可能性もあれば、すでに死んでいる可能性もあるが、実際に観測するまで、そのどちらになるのかはわからない。この観測する以前の猫の状態は、いわば生きてもいるし死んでもいる「可能性の猫」なのだ。 ネディア:「(ベックの説明を聞き)つまり、未来は私たち次第だと……?」 イェスリン・リーン:「然り。森羅万象を知悉する者は誰もない。いわんや、理解することなど夢のまた夢。しかしそれは、我らが挑戦を妨げるものではないのだ」 ネディア:「それが“予言”の本質なのですか……」 イェスリン・リーン:「そのように言い切ってしまうことはできない。しかしながら、そなたらのように“竜の予言”に選ばれた者ということは、すなわち、未来を切り拓く「可能性」を、その身に宿しているということを意味するのだ」 DM:ドラゴンの予言者がそう言うと、君たちの脳裏に刻まれた“竜の予言”が鮮明に蘇ってくる。 ベック:偉大なるゴッドフォージド、サロに敬意を捧げましょう。 イェスリン・リーン:「“竜の予言”に選ばれたそなたらは、未来を体現すると同時に、過去をその身に宿す者でもある」 ネディア:「どういうこと?」 イェスリン・リーン「思い出せ。そなたはかつて、わしとともに戦ったことがあるはずだ」 一同:えええっ! DM:そう、ネディアはエターナル・チャンピオンのような存在だったのさ。 クシュタリ:転生を繰り返しながら永遠の戦いを続ける、ムアコックの小説に出てくるヒーローのことですね。 DM:それでは、ネディアは、転生前の自分がどんな姿だったか、考えてみてください。 ネディア:いきなり、そんな無茶振りされても……。 DM:確かに無茶振りだけど、RPGは無茶振りに応えるゲームなのだ。ここはストーリー的に大事な場所だから、がんばってちょうだい。君はまだまだ駆け出しの英雄だったけれども、かつては伝説級(10レベル以上)、あるいは神話級(20レベル以上)の存在で、数々の苦難を乗り越え、イェスリン・リーンとパーティを組み、ドラゴンやジャイアント、あるいはデーモンやデヴィルをバッサバッサと薙ぎ倒していたに違いない。その頃のことを想像してみてほしい。 ネディア:アマゾネス系かな。それも男で……。  こうして、PCはそれぞれ、かつての自分がどうだったのかを語り始めた。DMはそれをどこまで拾うべきかを考慮しつつ、次のセッションを準備する。この先は、もっと規模の大きな戦いが待つに相違ない。しかし、その前に、少しばかりの休息を……。 【了】 “『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜” is unofficial Fan Content permitted under the Fan Content Policy.Not approved/endorsed by Wizards. 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2026年9月30日水曜日

第2回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4998

第2回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「あなたに弟子がやってきた」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフリプレイ「あなたに弟子がやってきた」をお送りしております。 本シナリオは師匠視点のシナリオですが、弟子視点で描いているため、タイトルは内容に合わせて変更しております。 「エメラルド海の探索」の続編にして過去編にあたります。 ハルトは、大ヤギの魔獣から呪いを移され、生死の境をさまよい、ヴァルグに命を救われました。 そこから生きる術を身につけ、今、ヴァルグに弟子入りを志願したところです。 ヴァルグは、ハルトを諦めさせるため、高難度の遺跡調査への同行を課したのですが、果たしてどうなりますか。 過去編ですからもちろん、このあと一緒に旅しているのは前作をお読みの方にはわかっていることですが、その経過も含めて楽しんでください。 【ハルト レベル6 技量点:1 生命点:5 副能力値:2 従者点:8】 弟子スキル:【心優しき勇者の素質】 ・自分以外のキャラクターが【防御ロール】に失敗した際、その生命点へのダメージを身代わりとして自分に受ける。発動は任意。 【ヴァルグ レベル16 技量点:2 生命点:9 筋力点:4 従者点:8】 【従者:火吹き獣(技量点:1)】炎耐性。特定のクリーチャーに2点ダメージ。0ラウンド攻撃に引き続き1ラウンド攻撃が可能。 ●04 遺跡入口 「ここだ」 「ギャウ」 オレ、ヴァルグ、火吹き獣は遺跡の入口前に立つ。 ヴァルグの示す「遺跡」は森の奥深くにあった。 それは、石造りのドームのような建造物だった。 半分以上は地面に埋もれ、残りの部分は森に飲み込まれている。 ドームの表面には蔦が絡みつき、刻まれた紋様や文字を隠している。 入口は半分埋もれ、建物の入口というより穴のようになっており、奥は階段状になって地下へと降りていた。 オレ、これからこの穴に入って行くんだ。 こんなの、初めてだ。 タイガと洞窟探検ごっこをしたことはあるけど、ホンモノの洞窟なんて村の近くにはなかった。 ヴァルグの方を見ると、黙ってオレの方を見つめている。 そうか。もう始まってるんだ。 オレはまずなにをしたらいいのか考える。 そうか。明かりだ。 ヴァルグから預かっていたランタンに火を灯すところからだ。 火口箱を使って火を起こすのは問題なかった。 家でもやったことがある。 ランタンの芯にはしっかり灯油がしみ込んでいて、種火を近づけるとすぐに灯った。 「ほう。できるんだな」 ヴァルグが感心したように声を上げる。 「けどな」 ヴァルグは自分のランタンを取り出す。 「ほれ、火」 「ギャウ」 火吹き獣が小さな火を吹き、簡単にランタンに明かりが灯った。 「こうすりゃ楽だ」 「ギャウ」 「なんだよそれ、ずりぃな」 「うっせぇな。便利なモンがあったら使やいいんだ」 さらにヴァルグは、荷物入れから小さな棒のようなものを取り出した。 「こんなのもある。先端に乾燥して固めた火薬がついていて、こすると火がつく。ノームの発明品だ」 「へぇ〜」 オレがどうなるのか興味津々で見ていると、ヴァルグはそれを片づけた。 「見せてくれるんじゃないの?」 「高価な使い捨ての道具だ。お試しに使うなんてできねェよ」 オレは右手にランタンを持つと、遺跡の入口から内部に踏み込んだ。 ●05 初めての魔物 内部は比較的広い空間になっており、一本道で奥へと続いていた。 左右に部屋になっていたらしいアーチがあるが、崩れて埋もれてしまっている。 ランタンの明かりに照らされていない先の方で、ちらちらと光が見えた。 近づくと、光の球がひとつ、ふらふらとおぼつかない感じで漂っている。 なんだろ、これ。 「クリーチャーだ。気をつけろよ」 これが……魔物なの? 魔物っていったら、ゴブリンとか狼みたいなのを想像してた。 こんなのもいるんだ。 でも、これはオレの力を示すチャンスだ。 オレはハンマーを手に取り、呪われた方の腕で光の球めがけてなぐりつけた。 「あっバカッ」 ふらふらと当てづらい標的にも、一撃で当てられるところを見せてやる。 ばしゅん。 「よけろ!!」 ハンマーが当たった瞬間、光の球が爆ぜた。 オレはとっさに体を低くし、左腕で顔をかばった。 ギリギリでかわせた。ヴァルグの警告がなければ反応できなかった。 「目は! 目ェ閉じてたか?!」 「え? う、うん。腕で守ったから……」 ヴァルグにすごい勢いで詰められ、オレは戸惑う。 「アレに目ェ焼かれると取り返しがつかねェからな」 オレが無事とわかると、ヴァルグは心底ほっとした様子を見せた。 そして次の瞬間、思いっきり怒鳴りつけられた。 「こンのバカ野郎。やみくもに手ェ出すヤツがいるか!」 光球は接触すると爆ぜるから、可能な限り遠くから倒すのが基本だという。 オレに知識がないのはわかってるから先走るなと、かなりキツく言われた。 「探索に必要なンは無謀でも無鉄砲でもねェ」 ヴァルグは、およそヴァルグのイメージからかけ離れたことを言っていた。 「にしても光球か。だとしたらここにはノードがある可能性が高い。当たりかもしれねェな」 ノード? 聞きなれない言葉だった。 「ノードを知らんか。魔力のたまり場のことだ。遺跡調査の目的は、ノードの存在を確認すること。あの光球はノードがあるところに発生すると言われているからな」 ●06 初めての宝箱 遺跡内部の空間を進む。 左右にあるアーチの奥はほとんど崩れていたが、ひとつ、奥に光が届かないところがあった。 ランタンを照らしてみると、そこは崩れずに残っている部屋だった。 片隅に、蓋の閉じた大きな箱が置かれている。 中心には金具と、大きな鍵穴がついている。 なにか大事なものが保管されていたんだろうか。 部屋に入る。 箱に手を出そうとして、ヴァルグに止められた。 「まあ待て。ここは俺がやろう」 ヴァルグによれば、侵入者対策になんらかの罠がしかけられているのは珍しくないという。 オレはそういう知識はまったくないから、しかけを外すことなんてできない。 まずは見て覚えろ、と言われた。 ヴァルグは箱を注意深く観察する。剣で強めにつついたりしている。 「ちょっとそこ、どいてろ」 ヴァルグはオレを箱の正面から移動させる。 すると、鍵穴を金具ごと、がつんと豪快に叩き壊した。 その瞬間、鍵穴から太い針が飛び出し、さっきまでオレが立っていたところを通過していった。 「やっぱりな」 ヴァルグが予想通りといった様子で大きくうなずいた。 「うかつに鍵穴を覗こうものなら、今の針にやられるやつだ」 ワナを警戒して詳しく調べようとして、逆にやられてしまうこともあるという。 「あとな、箱をむやみにぶっ壊すと爆発するようなヤツもあるからな」 え。今ヴァルグぶっ壊してたよね。 どうやって見分けてるの? 「なんとかくわかンだろ?」 わかんないよ! 箱を開ける。中身は空だった。 あ、違う。底に金貨を発見した。それも、一枚だけ。 一枚だけ? 「チッ。ハズレか。ま、そういうこともあらァ」 ヴァルグはそんな感じで気にした様子もない。 「え? おかしくない? ワナしかけてるのに金貨一枚って」 「宝があると見せかけて、よくばりをワナにハメようとしてんだ。おかしくねェだろ」 「だったら中身カラッポでいいだろ? なんで金貨一枚なんて入れとくんだよ」 「あー……」 ヴァルグが返答に窮した。 でも、そうだろ? 金貨一枚って、普通に生活してればまあまあいろいろ買える金額だし。 「ワナを突破したヤツへのご褒美とかか? 治療費かもしれん」 ヴァルグがまぬけなことを言い出したので、オレは思わず笑ってしまった。 「何がおかしい! ンなことよりワナの見破り方や外し方を覚えとけよ!!」 ヴァルグの声が大きくなった。照れ隠しかな。 でも、ワナの発見は勘だし、ワナごと叩き壊してるんだから、まったく参考にならないよ。 爆発と針のワナの区別だってわかんないし。 オレが覚えたのは、「宝箱にはワナがある」ってだけだった。 ●07 初めての隠し通路 やがて通路は少し大きな部屋で行き止まった。 中央に巨大な石碑が建てられている。 石碑には、なにやら碑文が刻まれている。 これ、なんて書いてあるんだろう? 村育ちのオレは、文字に接する機会なんてほとんどなかった。 でも、この文字は、この文字だけは、はっきりと読むことができる。 「神に……祈りを捧げる……場所」 「ほう、読めるのか」 ヴァルグが感心した風に声を上げた。 「古い文法に今じゃ使われていない単語。俺にも手こずるものを」 村にこれに似たものがあった。 そこに書かれていたものと同じ。だから読めるんだ。 なんでだろ。村がこの遺跡と関係あるのかな? 「祈りを捧げる、か。やってみるか? 無駄かもしれんが」 ヴァルグがそんなことを言った。 呪いを解いてくださいって神さまにお祈りするってことか。 「祈り方なんてわかんないよ」 「ンなもんテキトーでいいだろ」 オレは、石碑に向かって祈りを捧げてみた。 しかし、なにも起きなかった。 ヴァルグは提案しておきながら、オレが祈りを捧げているのに興味を示さず、部屋の隅々まで調査をしている。 「なにやってるの?」 「目的のモノが見つかってねェ。まだこの先があるはずなんだ」 ヴァルグは、この先にも遺跡が続いていると見込んでいた。 オレも一緒に探す。けれど、なにも見つからなかった。 「奥に行く道は、これまでに崩れてた場所のどっかだったんじゃ?」 そんなことを言いながらヴァルグを見ると、彼は床の一点を注意深く見つめていた。 「そこか」 顎をくいっとやって示す。 注意深く見ると、そこの床だけ、やけにきれいだ。 ヴァルグが床を指でなぞりながら、隠された扉の形を暴いていく。 「お。あったぞ」 そして取っ手を見つけると、引き上げた。 暗く湿った入口と下り階段が見え、同時にひんやりとした空気が流れてきた。 じゃあ、まだ探索は続くんだ。 ここまではぜんぜんいいとこ見せられなかった。次こそは、ちゃんとできるってとこを見せてやる。 オレがそう決意する一方で、ヴァルグは眉間にシワを寄せていた。 「ここだけホコリがなかった……あんまりいい事態じゃないかもしれねェな」 そんなことをつぶやきながら、階段を下りていく。 「ギャウ」 火吹き獣が一声鳴くと、その後についていく。 「早く来て前を照らせ。見えないだろうが」 「あ、うん」 オレも慌てて後を追った。 次回、遺跡の最深部に目的のものはあるのか? [プレイログ] 【入口】 ランタンの火を起こす場面はオリジナル展開です。 【31 光球】 【光球 レベル3】死ぬまで戦う ・出現数1d6-1(最低1体)→1体出現 ・このクリーチャーは衝撃を受けるとスパークして魔力をまき散らしてきます。倒した時点で【幸運ロール:目標値3】をし、失敗したら生命点に1点のダメージを負います。 【1ラウンド】 ・ハルトの攻撃が命中。幸運ロールもサイコロの出目5で成功しました。ヴァルグの警告によってギリギリかわしたという演出にしました。 【21 トラップの仕掛けられた宝箱】 ・師匠キャラが【器用ロール:目標値4】でワナの解除を試みます。 ・ヴァルグはサイコロの出目5で成功。しかし宝物斑点の出目が奮わず、得られたものは金貨1枚だけでした。 【13 屹立する石碑】 ・部屋の真ん中に巨大な石碑が建てられています。碑文を読めるか、弟子が【判定ロール:目標値6】を行います。 ・ハルトはサイコロの出目5に技量点を加え成功。 ・成功したので、最終イベント内の判定ロールにて、「プラス1」の効果が得られます。 ・作劇の都合上、次の「中間イベント」と同じ場所の出来事にしました。 【中間イベント:隠し扉】 ・行き止まりの部屋で隠し扉を探します。弟子が【判定ロール:目標値5】で判定し、失敗したら師匠が見つけるという流れです。 ・ハルトのサイコロの出目は1でファンブル。完全に失敗です。そのため、ヴァルグが隠し扉を発見しました。 ■ステイタス 【ハルト レベル6 技量点:1 生命点:5 副能力値:2 従者点:8】 弟子スキル:【心優しき勇者の素質】 ・自分以外のキャラクターが【防御ロール】に失敗した際、その生命点へのダメージを身代わりとして自分に受ける。発動は任意。 【ヴァルグ レベル16 技量点:2 生命点:9 筋力点:4 従者点:8】 【従者:火吹き獣(技量点:1)】炎耐性。特定のクリーチャーに2点ダメージ。0ラウンド攻撃に引き続き1ラウンド攻撃が可能。 ■登場人物 ヴァルグ 冒険者。依頼を受けて遺跡調査に来たところ、偶然瀕死のハルトを発見した。 ハルト 大ヤギの魔獣の黒角にやられ、崖下に転落したところをヴァルグに助けられた。左腕に厄介な呪いを受けている。 タイガ ハルトの弟。大ヤギの魔獣の出現の恐怖で動けなくなった。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 著者:東洋夏 イラスト:骨盤 編集:緋色朱音 発行者:東洋夏 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 冊子版 ローグライクハーフ個人製作シナリオ集『主人公は一日にして成らず』 https://booth.pm/ja/items/8063646 ※本作品が収録されています。 ネット閲覧可 ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 https://talto.cc/projects/FoEKXdyD2KdpaLHU1_siE 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月29日火曜日

カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第52回 FT新聞 No.4997

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第52回 「ダンジョン」 (中山将平) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■  おはようございます。  イラストレーターの中山将平です。  僕ら10月17日(土)と18日(日)の両日、「ゲームマーケット2026秋」にサークル参加します。  配置は【S006】です。  現地には僕も行く予定ですので、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。  さて、今日は冒険の舞台として好まれるあの場所……ダンジョンについてお話したいと思います。  これを読んでくださっているあなたは、もしかしてダンジョンがお好きではないでしょうか。  僕は大好きです。  それはそうとして、まずはなぜこれをテーマにもってきたのかという点から始めましょう。 ◆ ダンジョンは、なぜ好まれるのか  ダンジョンについて語りたい理由。  それは、一にも二にも「ダンジョンが舞台の冒険は好まれやすい」という個人的な実感があるためです。  もしファンタジー作品を創作したいと考えられている方がいる場合、その舞台として「ダンジョン」はかなり強力な選択肢となるはずです。  実際、「〜の迷宮」や「〜の地下ダンジョン」というタイトルの作品って、手に取りたくなる方も多いのではないでしょうか。  実は長年、そういう作品が持つ謎の「ワクワク感」について、正体は何だろうと考えていました。  作品を作るうち、自分の中で一種の答えが固まってきたので、今日はそれをお伝えしたいと思います。  「僕が考えたこと」がどなたかのお役に立つ機会があれば幸いです。  さて、お伝えしたいその「答え」を、2つのシンプルな言葉にまとめてみました。  いきなり結論を申し上げると、「分かりやすさ」と「閉塞感」の2つです。  ただ、まとめた言葉ではやはり意図が抜け落ちますね。  具体的にそれぞれを見ていきましょう。 ◆ 分かりやすさ  一つ目の理由である「分かりやすさ」について触れてみます。  お伝えしたい「分かりやすさ」とは、「舞台として何が用意されている場所か分かりやすい」という意味ではありません。  「作品の楽しさが一目で分かりやすい」というお話です。  例えば舞台が「森」である場合、確かにテーマとしては分かりやすいのですが、その作品の面白さを伝えるという点ではダンジョンほど強くないと感じます。  それは、「森」をどのような舞台として描いてある作品なのか、更に情報を追加する必要があると感じるためです。  じめじめしていて、昼なお暗い「魔女が住んでいそうな、西洋の怖い森」なのか、エルフが集落を築いていると噂される神秘的な森なのか。  危険な場所なのか、不思議な場所なのか。  そもそもそれはホラーなのか、ファンタジーなのか、現代ものなのか。  その点で、ダンジョンという舞台は「未知の空間で、いかなる脅威も現れうる」「ファンタジー作品の舞台である」と明確に伝わる度合いが高いのではないでしょうか。  主人公たちは半ば自動的に「ファンタジー世界における冒険者であり、探索者でもある」という前提に立ちますし、「未知の脅威にドキドキしながら対処していく」という物語の筋すらも見えてくるように感じます。  今年既に30日以上同人誌やアナログゲームの即売会の売り場に立ってきた経験から、この「分かりやすさ」がどの程度「作品の魅力」にとって影響の大きいものなのか、痛いほど感じています。  正直、分かりやすさというのは面白さや感動よりも重要なものなのではないでしょうか。  どれほど素晴らしい作品も、読んでもらえないとその「真の良さ」は伝わりようがありません。  「分かりやすさ」は、作品を読む動機となりうるものです。   ◆ 閉塞感  もう一つの理由である「閉塞感」について、続いてお話ししましょう。  これは、単純に「閉じた空間なので進む方向の選択肢がはっきりしている」というお話です。    選択肢がはっきりしているということは、物語の筋や主人公の心情・キャラクター性が浮き彫りになることでもあるのではないでしょうか。  ある意味これも、分かりやすさの一種と感じています。    ちなみに、この「閉塞感」は「予測不能な脅威に対して逃げ道が少ない」という意味でドキドキ感を引き立てるものでもあるように思います。 ◆ まとめ  長々と書いてみましたが、ダンジョンがとにかく好きなので書いてみた文章だといえるかもしれません。  (既にシナリオの作成は完了している)僕自身の創作作品、カエル人の冒険の第一話も、舞台はダンジョンとしました。  僕自身、おおいに魅力を表現したいと思います。  では、今日はそろそろこのあたりで。  よきファンタジー・ライフを。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月28日月曜日

☆アランツァへのいざない☆ 補足回 FT新聞 No.4996

おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆ 「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」の最新作「ガルアーダの塔」の通販サイトが開かれました! 正式な刊行日は10月17日(土)です……ゲームマーケット2026秋「S-006」にてお披露目となります! 価格をいつもどおりに収められなくて申し訳ないです……内容でお応えできればと考えております。 今回はB5版134ページで、通常サプリメントの2.5倍にまで文量が達しました。 イラストは50点。すべてカワラベ先生によるものです☆ ↓『ガルアーダの塔』ローグライクハーフ版はこちら! https://ftbooks.booth.pm/items/8752965 ◆コメントを、ひとつ。 だいぶ前の記事の話ですが、「アランツァへのいざない」の記事で、アランツァ世界の男女には性差が小さい、という話を書きました。 この記事を読まれたとき、これがとても「現代風」で、配慮に富んだ姿勢であるという解釈をされたかもしれません。 実を言いますと、この事実を定めたのは最近ではなく、コンプライアンスや多様性の追求が原因/目的でもありません。 今から5年ほど前、私はFT書房から刊行するTRPGをこしらえるために、苦闘の日々を過ごしておりました。 「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」の前に、「60ミニッツオブサバイバル(SoS)」「パイレーツオブエメラルドシー」「アランツァTRPG」など、合計4作品を作り、ボツにしてきたわけですけども。 FT書房の共通世界である「アランツァ」を舞台にしたTRPG「アランツァTRPG」のキャラクター作成部分を、あるメンバーに確認してもらっている際に、言われたのです。 「アランツァの世界では男性に筋力があり、女性に魔法の才があるって、ハッキリと決まっているんですね。でも、私は男性の魔法使いを創りたいんだけどなぁ」 この言葉をキッカケに、私は色んなことを検討しはじめました。 ◆なぜ、そうしたか。 「アランツァTRPG」で私が「女性のキャラクター」に対して優遇したのは、1点の能力値でした。 確率でいうと、5%ぐらいのイメージです。 どうしてそうしたかというと、アランツァ世界には、「戦士は男性が多めで、魔法使い(僧侶や魔術師)は女性が多めである」という事実があるからです。 プレイヤーキャラクターを「アランツァ世界の一部」として捉えるとき、同じような傾斜が生まれるように、ルール部分に傾斜をつけたかったわけです☆ 「男性の冒険者は筋力(戦士に必要な能力)に恵まれていて、女性のキャラクターは魅力(僧侶に必要な能力)に恵まれている」という設定も、感覚的に自然であると感じました。 しかし……です。 ◆「設定」という名の「檻」。 その後、私はテストプレイならぬテストビルドとして、10人のテストプレイヤーに、キャラクターを作ってもらいました。 するとですね、魔法使い(魔術師や僧侶)はすべて女性となり、肉体系職業(戦士や盗賊)はすべて男性となる、という結果になったのです。 どうしてそうなったのか、私は思案しました。 これは極端な、偏りのある結果だったのでしょうか? キャラクターを作成する際、私は通常、「最も強いキャラクターのビルド方法」を下調べします。 これは、基本的にTRPGが、複数のプレイヤーで遊ぶことを前提としているからです。 最強のキャラクターで遊びたいからではなく、他のプレイヤーの足を引っ張ることになるのがこわいから、十分な強さのあるキャラクターを作りたいのです。 また、テストビルドに参加してくれたプレイヤーに尋ねたところ、こういう答えをもらいました。 「明確に得なほうがあればそちらを選ぶし、それに逆らって役に立たないキャラクターを作るのもこわい。セッションの間じゅうヒマになってしまうのはイヤだ」 このテストビルダーの意見は、私と言い方は異なるものの、根本にあるのは私と同じだと受け止めました。 この件を通じて、能力によって「世界観に沿った傾斜」を与えようという試みは、機能しない可能性が十分にあると感じました。 それがたった1%の差であっても、有利は有利なわけで……プレイヤーからしたらそちらを「選ばない理由がない」のです。 ◆なら、どうするの? 実を言いますと「アランツァTRPG」では、この他にも「有利と不利」がいくつかありました。 年齢が若ければ肉体的に有利ですし、歳を重ねていれば知識量として有利です。 ドワーフは戦いに有利で、エルフは魔法を使う存在として有利です。 その結果、戦士系のキャラクターは若いドワーフの男、魔法使い系のキャラクターは歳老いたエルフの女性ばかりという、極端な偏りが起こってしまいました。 これは違うな……そう感じました。 それで、「ローグライクハーフ」では「すべてを自由にしよう」と決めました。 「ルールを最軽量にする」という方針が決まっていたこともあって、どんな種族/性別/年齢であっても、能力値等に一切の影響はないと定めたのです。 定めてみて、「これはとてもいいな」と感じました。 私がTRPGのキャラクタービルドで大事にしてほしいのは「自分が望むキャラクターを作って、楽しく遊ぶ」ことだからです。 ◆TRPG「らしさ」をどう受け止める? TRPGのキャラクターが、たとえばある程度の年齢だとして、「若い頃のようには動けない」というルールは、あっていいものかもしれません。 しかし、そのような実装は寡聞にして聞いたことがありません。 あるかもしれませんが、多くのTRPGでは採用されていません。 それはおそらく、そうしたルールが生む能力値への変化が、プレイヤーにとってあまりにも大きな影響を与えるからだと、私は結論づけました。 ほんの小さな違いでも、それは大きな「束縛」となるのです。 これは、私の望むところではありません。 プレイヤーは自由にキャラクターをデザインしていいし、できるべきなのです。 世界を表現する大枠として何を省き、何を残すのか。 私は「ロールプレイングゲーム(役割を演じるゲーム)」であるTRPGには、【職業】だけがあればいいと考えて、「ローグライクハーフ」を作りました。 もちろん、これが唯一の答えだとは思いません。 ファンタジーの文脈からすれば「種族」を省くのはかなりの勇気が要りました。 ほとんどのオールドスクールファンタジーでは、種族を選べるようになっています。 後に【悪の種族】をプレイできる「ヒーローズオブダークネス」を作ってしまいもしました。 しかし、それを【悪の種族】限定にした(【善の種族】によるオプションルールは作らなかった)のは、種族がプレイ上の制約=能力値的な有利不利を生むことが、少なくとも「ローグライクハーフ」が目指す遊び方と異なっていると感じたからです。 「役割を遊ぶ」というシンプルさが、「ローグライクハーフ」の目指すところです。 ◆まとめ。 そのような理由から、私は「アランツァ」における冒険者は、役割以外の影響を受けることが基本的にないという設定を置くようになりました。 性差だけでなく、年齢における有利不利もないという設定があります。 現役でいられる以上は、どの冒険者も十分に強いと考えています。 種族に関しても、たとえば、「エルフの里で暮らすエルフ」と「冒険者としてのエルフ」の間に線を引いて考えています。 全体としてアランツァ世界の冒険者は都会的な感覚を持っていて、結果的にそれは、たとえばエルフが持つ神秘性のようなものとの距離が存在することを意味しています。 だから、プレイヤーが【善の種族】からエルフやドワーフやコビットやノーム(ときにはもっとかけ離れた種族でも)を選んだとしても、それは自由であり……ゲームに影響を与えません。 今回はそのあたりで。 それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月27日日曜日

Re:アランツァワールドガイドVol.12 蛮族都市フーウェイ FT新聞 No.4995

おはようございます、編集長の水波流です。 10月第1日曜は、私の新作d33シナリオ『蟲宿り』を配信いたします。 そこで本日はその舞台となる「アランツァワールドガイド『蛮族都市フーウェイ』を再配信。 今回のシナリオは、フーウェイの蛮族の中でも少数氏族にスポットを当てた物語となります。 氏族ごとに文化や考え方には違いがあり、相手の全てを認めるわけではない。しかしお互いを尊重し、共存しているという蛮族社会をもう少し掘り下げていければと思っています。 シナリオ配信まで、ワールドガイドでぜひフーウェイの雰囲気を感じて頂ければ幸いです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 日差しは決して弱くはないが、雪が深く、しばしば吹雪になる。 ラクダ人であるカメル教授が蛮族都市フーウェイにたどり着いたのは、冬のはじまりの頃だった。 カメル・グラント教授はいま、この大陸を旅してまわっている。 混沌都市ゴーブの城塞めいた堅牢な街壁を見た後であったため、木材でできたこの街の壁はいささか頼りないもののように見えた。 ◆街門にて。 狼にも似た〈魔犬獣〉の毛皮をまとった衛兵たちが、カメル・グラントの都市通行証をいぶかしげに眺めている。 外の世界から人が来るのは珍しいことではない。 北の端にあるとはいえ、フーウェイは街である。 しかし、文字が読めない兵士たちには、通行証が本物かどうか、このラクダの獣人を通していいかどうかを、確信をもって判断できないのだ。 結局、兵士たちのリーダーがカメルを通すことに決める。 紳士的なカメルの態度は彼らの価値観にそぐう「立派な大人」ではないが、危険を感じる存在という結論には至らなかったらしい。 ◆トレント材の街壁。 門をくぐりながら、珍しい街壁の素材をまじまじと眺める。 衛兵の1人が「トレント材だ」と、いささか誇らしげにつぶやく。 この街の主な外敵のひとつは、動きまわる大きな樹木、〈トレント〉と呼ばれるクリーチャーである。 このクリーチャーから採れたもの(特にトレント樫)を使っているのであれば、石にも似た堅さと燃えづらさを持った街壁といえよう。 しかし……と、カメルは街壁を見渡しながら思う。 街をぐるりと囲む、高い城壁。 そのすべてがトレント樫を素材としているのなら……この街はどれだけの歳月を〈トレント〉たちとの対決に費やし、彼らを狩ってきたのだろう? ◆毛皮でつながった家々。 街といっても大きくはない。 家々は何軒かごとにまとまっており、壁の一部を共有している。 氏族ごとにまとまって生活しているのだ。 壁がつながっているのは、こうすることで暖房の熱が壁づたいに伝わりあい、冬の寒さを軽減する工夫である。 屋根の部分には、木材の上に毛皮が使われている。 つながった家々と毛皮の屋根……火事に弱そうだなと、カメルは思った。 ◆想像と異なる人々。 そうはいっても、フーウェイは街である。小さな蛮族の集落とは違う。 「外の人間」との交流はあるし、店屋も開いている。 カメルはメイン通りを歩き、開いている何軒かの店のひとつに入ってみる。 店とはいっても丸太を切って造った小さな家で、床はなくむき出しの地面だが……店屋は店屋である。 汚れた毛皮をはおった店主が、切株を引っこ抜いただけの椅子に座っている。 暗い店内には食料と毛皮などの生活必需品が並んでいる。 別の店に入ってみる。 店がまえに大きな違いはないが、店内には木の枠でピンと張った状態の脱脂した皮や、緑のにおいが残った樹木の幹が転がっている。 〈魔犬獣〉の皮だと、ひと目で分かる。 魔獣皮革だ。 ◆魔獣皮革。 〈魔犬獣〉の外見は狼に似ている。大きさもそう変わらない。 発達した犬歯をもち、知能が高い。 {ルビ:よつあし}四足の生きものだが、文化を持つひとつの「種族」である。 掟に従って行動し、契約を守る。 堕落都市ネルドでは、いち市民として街を歩いていたのを覚えている。 それが、皮だけになって、地面がむき出しの店の片隅に転がっているのである。 形容しがたい感情が心を駆けめぐって、カメルはしばしその場にたたずむ。 〈魔犬獣〉や、魔獣と呼ばれる強力な獣たちの皮をはがしてなめすと、魔獣皮革と呼ばれる素材になる。 これが使われている製品は、いわゆる「上モノ」である。 高級品の部類として扱われる、頑丈で長持ちする優秀な製品である。 ◆街を歩く人々。 街を歩きながら、目に入る人々をそれとなく観察する。 武器を持った人々が、他の街よりもずっと多い。 皮を使った簡素な衣服をまとい、上半身は裸である。 その上半身には、いろいろな{ルビ:タトゥー}刺青が彫られている。 フーウェイの戦士は、あまり鎧を着ない。 その主な理由は、彼らが持つ「鉄」の力があまり強くないからだと言われている。 領土からはあまり鉄が採れないため、鉄は主に泥炭を燃やすことで獲得される。 ウイスキーの香りつけにも使われるこの泥炭だが、そこから作られる武器は端的に言ってもろく、いい武器とは言えない。 そこで、鎧の代わりに発達したのが刺青文化である。 力のある彫り師が入れた刺青には、彼らが信仰する「獅子顔のセリオン」こと獣神セリオンの力が宿ると考えられている。 しかし、その力を発現するには、自らの肌を露出し、外気にさらさなければならない。 だから、彼らは鎧を脱ぎ捨てて戦うのだ。 そのさまを見た「外の人間」は、彼らを蛮勇の持ち主であるとみなした。 彼らのほうも、それを強く否定をすることはなかった。 そんな風に、カメルは推察した。 ◆集団での営み。 街の中央に大きな広場があり、外から来た人々が泊まる宿の他に、石造りの大きな建物がそこに面している。 石の建造物には大きなアーチ型の扉がある……そこは開いていて、中を覗くことができる。 そこでは女性たちが、{ルビ:はたお}機織りをし、動物の皮を縫っている。 男性が集団で狩りを行うように、女性はひとつの大きな建物にまとまって、仕事をする。 それがフーウェイの流儀なのだと、聞いたことがある。 カメルは集団をつぶさに観察する。 女性のなかに男性が少し、混じっている。 これもフーウェイの特徴である。 フーウェイの民は成人するときに、「男」になるか「女」になるかを自分の意思で選ぶ。 「男」「女」という訳がそのまま当てはまるかは言語学的に難しいところだが、勇敢さに自信を持てない男性は、女性とともに手仕事をする人生を選ぶのだ。 「女」の仕事には、他の街であれば男仕事と呼ばれるようなものも含まれる。武器づくりのような鍛治や、荷物の上げ下ろし。 「男」の仕事と呼ばれるものは、命の危険があるものを指しているように見える。狩り。戦い。護衛。冒険者。 「女」であることを選んだ男性は伴侶を見つける上で不利になりそうなものだが、実際にはそこまでの差はない。 女性たちに混じって仕事をするぶん、仲良くなりやすいのだろうか。 ◆フーウェイの収穫人。 広場に目を戻すと、狩りから帰ってきたであろう集団が目に入る。 街の衛兵たちの格好と少し異なる、自然に似た服を着た集団だ。 森のなかに溶け込むための服装というのか……上半身は濃い緑色、下半身は茶色の服を着ている。 木の棒を組んで造ったそりに、大きな樹の幹を載せている。 そりで引かれている樹が、うめくような低い声をあげる。 〈トレント〉だ! 地鳴りのようなその声を聞いても、フーウェイの人々は振り返りもしない。 彼らは〈フーウェイの収穫人〉と呼ばれる集団だ。 太古の森から押し寄せてくる「動く植物」と戦い、トレントの身体を生活の糧とする。 〈魔犬獣〉や、ときどき出現する〈巨人〉のような【巨大生物】と戦うための戦士集団とは別に形成された、対植物の専門家である。 フードを目深にかぶり、彼らは他者と目を合わさない。 誰も口をきかず、2人で使う大型のノコギリで、〈トレント〉の身体を寸断していく。 カメルはその手ぎわをしばらく眺めた後に、広場から離れることにした。 ◆家畜厩舎。 朝のうちに門をくぐったカメルは、広場で少し時間を費やした後に、反対側の街壁まで歩く。 フーウェイはそれほど大きな街ではない。 街の東の端にたどり着いたのは昼すぎで、厩舎めいた建物がいくつか見える。 馬を飼っている厩舎の横に、奇妙なものが見えた。 鎖でつながれた「切株」が、牧草地に放置されているのだ。 足を止めてよく見ると、切株は少しずつ動いている。 なんだこれは? ピッチフォークで馬のエサを持ち上げている男を呼び止めて、カメルは尋ねる。 「〈切株トレント〉だよ。〈トレント〉を倒した後で完全に死んでいなかったら、俺らはその身体の根っこを残して、上の部分を切り落とす」 男が言うには、数分の1のサイズになった〈トレント〉は知能が下がり、従順になるのだという。 「すると、根だけになっても、すぐには死なないで何年か生きる。だんだん枯れて、しまいには死んじまうが、それまでは役に立つってわけよ」 男に礼を言って、カメルはもう少し奥まで歩く。 そこにも厩舎がある。 【騎乗生物】を飼っているのだろう……そう思ったカメルは、確認のつもりでその屋根の下を確認した。 ◆奴隷厩舎。 それが何なのかを理解するのに、少し時間がかかった。 屋根の下の暗い部分で、何かが動いている。 黒い肌の人間型生物。エルフのように耳が尖っていて、エルフよりもずっと目つきが悪い。 闇エルフだ! ここは奴隷厩舎なのだ。 ここフーウェイの北西部には「太古の森」と呼ばれる、古い時代から続く森がある。 そこには「動く植物」トレントの他に、邪神を信仰するエルフである闇エルフたちが生息している。 生きたまま捕まった闇エルフは【捕虜】として生かされ、奴隷として飼われるのだ。 カメルは来た道を急ぎ戻る。 先ほどの男が、しかめ面で立っている。 カメルからすると、彼が何も言わないので奥へと進んだのだが……男のほうは単に自分の馬のほうに気がいっていただけだったらしい。 あまりいい行動ではなかったようだ……カメルは軽率な行動を謝ると、足早に「牧場」をあとにする。 ◆仕事の後に。 引き返して宿に着くまでに、少しずつあたりが暗くなる。 夜空に星が見える頃、先ほどの石造りの建物の前にやってくる。 カメルの宿に面した広場である。 女性たちの集団が、建物の前の広場に出ている。 広場の中心で焚き火をたき、1人が月に似た楽器(ムーンハープというらしい)を弾いている。 静かな声で残りの女性たちが歌いながら、空へと昇っていく煙を眺めている。 広場に続く道から、男たちの太い歌声が呼応するように返ってくる。 日暮れとともに、狩りから戻ってきたのだろう。 枝にくくりつけられた数匹の〈魔犬獣〉を、皆でかついでいる。 今日の狩り──あるいは戦いと言ったほうがいいのだろうか──は、上々の首尾だったらしい。 宿に入り、2階の個室に上がっても、その心地よい音楽は鳴り続けていた。 カメルはその旋律と歌声を、焚き火の前で笑い合う人々を、部屋の窓からずっと眺めていた。 ◆その他の話。 毛皮などの動物素材と石材を中心とした独自の文化は、より南方の都市民に「野蛮」との印象を与え、未開の部族のように思われることもある。 しかしながら、実際の彼らは(我々の基準とは違うものの)おしゃれ好きで、戦闘や鍛冶のみならず、航海術や占星術に発達した洗練された部族である。 彼らは集団で行動するが、それはひとつには厳しい寒冷地方に住んでいるためである。 日中の燃料消費を抑えるための最適な方法は、個別に暮らさないことだ。 街にはいくつかの部族がまとまって暮らしている。 とはいえ、そのすべてが集団行動を行うわけではない点にも注意が必要だ。 店を営む者や、少人数で行う仕事をなりわいとする者たちもいるのである。 ◆北方の2つの街。 エドワルド・フォン・ハルト3世は「ドラゴンごろし」の異名を持つエドワルド・フォン・ハルト1世の孫である。 しかしながら、フーウェイの統治は世襲ではない。 1世が実力でこの街のリーダー(「長」と呼ばれる)の地位を勝ち取ったように、3世もまた戦いのなかで周囲に認められ、長となった。 フーウェイのなかでも彼らハルトの一族は代々、特に武勇に秀でていた。 エドワルド1世がこの街の長となるずっと前に、彼の先祖の一部はフーウェイの街を出て、危険なスォードヘイルの雪山を越え、新たな街をつくった。 街は北方都市サン・サレンと呼ばれた。 サン・サレンは「聖なるサレン」という意味であり、サレンという名称は彼らが信仰する獅子の顔を持つ神、獣神セリオンを由来とすると言われている。 ◆旅は続く。 翌朝早くにカメルは街を出る。 西の端にあるハルト川に面した港から、船旅をはじめるのだ。 盗賊都市ネグラレーナへと向けて。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月26日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第711号 FT新聞 No.4994

From:水波流 長らく途中脱落していたハリーポッターの小説をちゃんと読み通すべく、いま第5部まで読了。 「これどこで出てきた誰だっけ?」と思って登場人物名でうっかりググると、最終巻までにその人物に起こる出来事が目に入ってしまうので、なかなか難しい。 From:葉山海月 先週の答え 「けものへん」に「おう」で「狂」という漢字が出てくるペンネーム。 この辺の遊び心というか筋の通し方に敗北! From:中山将平 10月4日(日)、僕ら「ボドゲガレージダンジョン2026秋」というイベントにサークル参加します。 開催地は『東京たま未来メッセ3階(八王子駅前)』 配置は【E26】です。 お近くの方、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。 さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (天)=天狗ろむ (く)=くろやなぎ (明)=明日槇悠 (葉)=葉山海月 (水)=水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■9/20(日)~9/25(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年9月20日(日)天狗ろむ FT新聞 No.4988 ローグライクハーフシナリオソムリエ その8『踊る二枚貝』 ・編集部員・天狗ろむがお送りする、個人制作シナリオ紹介の第8弾をお届けしました。 ローグライクハーフのd66シナリオなどは基本3回まで遊べるデザインが多く、この時点で既にキャンペーンのような遊び方が出来ますが、今回のシナリオは明確にキャンペーンシナリオとして作られた中の1つです! 是非この『踊る二枚貝』を含めて、全部楽しんでみてください。 今回の話では、トラップまみれの洋館で盗まれた至宝の探す事になりますが……果たして無事に取り戻せるでしょうか! プレイ報告やご感想、そしてシナリオ紹介記事の寄稿はいつでもお待ちしております〜! (天) 2026年9月21日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4989 アランツァへのいざない 移動集落もっさもさの話 ・FT書房代表の杉本=ヨハネ氏による月曜の記事、今週は謎のクリーチャー〈もっさもさ〉のご紹介でした。 クリーチャーとしてのステータスやおおまかな生態については、これまで「アランツァクリーチャー事典」や「オレニアックス生物学」でも明らかにされてきましたが、今回はさらにその来歴や住民(?)などについて深掘りします。 魔法都市/天空都市ジョルクという気になる固有名詞も登場し、ますますアランツァ世界への興味が深まりますね! (く) 2026年9月22日(火)かなでひびき FT新聞 No.4990 これはゲームブックなのですか!? vol.139 ・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。 今回紹介する作品は『ドラゴンの洞窟』(J・H・ブレナン著 大久保寛訳)! ゲームブックブームの原点というべき、昭和六十年発行の「ドラゴン・ファンタジー」(「グレイルクエスト」)シリーズ第二作。 お話は、大魔術師マーリンが読者のあなたに「電話」しているシーンから始まる。 が、法螺貝に向けて話しかけているので、周囲からは「ついにイッちゃったか!?」と思われているマーリン……弁明によると「この時代は電話機が発明されてなかったから」 冒頭から、このユーモアのセンス! まさに魔法にかかったように、この世界へ飛び込めてしまう。 システムはシンプル、なおかつ読者に親切で、始終マーリン先生がユーモアたっぷりに教えてくれます。 そのかわり、罠が満載! けれど、何回もトライする意欲を促そうとしている風で、意地悪なトラップやパラグラフジャンプはありません。 あなたに親しげに話しかけるような、「泥臭い」けれど「黄金」の「読書体験」を探しに出かけませんか? (明) 2026年9月23日(水)ぜろ FT新聞 No.4991 第1回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ  ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第512回をお届けします。 今回のリプレイ対象の作品は、東洋夏氏のローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 あれ?本リプレイと名前が違う?と思った方。 実は、前回に引き続き、『エメラルド海の探索』と地続きの世界として、その主人公ハルトを弟子とした視点で描きます。 ぜろ氏独特の『エメラルド海の探索』その続編にして過去編としても楽しめる一本。 大ヤギの呪いを受けてしまったハルト。偶然その場に出会ったヴァルグは、彼を助け、そこから新たな冒険が始まる! 前回のリプレイが気に入った方は必見! (葉) 2026年9月24日(木)東洋夏 FT新聞 No.4992 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.11 ・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、東洋夏氏による「怨霊列車は夜笛を鳴らす」のリプレイ第11回目をお届けしました。 前作の『写身の殺人者』リプレイと同様に、主人公の一人は従騎士の少年・シグナス。そして二人目の主人公は、剣型ゴーレム「おどる剣」クロ。 人をさらう怪物〈怨霊列車〉なる、夜空を走る面妖な列車に乗り込んだ二人は、とうとう先頭車両に辿り着き、黒幕ダゲン・ラ・バーゲズを追い詰めたかに思えましたが、不死性を見せるバーゲズは余裕綽々。そこへ戦況を覆す、大いなる一撃が! シグナスの主人ノックスの大活躍、シグナスとクロの過去、そして「七人会」と名乗る者たち……続きが気になる所ですが、今回の冒険は最終回です! どうぞお見逃しなく! (天) 2026年9月25日(金)休刊日 FT新聞 No.4993 休刊日のお知らせ  ・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。 あなたの記事を、お待ちしております! (葉) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今週の読者様の声のご紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。 紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。 すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。 ↓↓ (忍者福島さん) けものへん・おうさんは、ホラー作家志望という事なので、クトゥルフ神話ホラーでの狂気を書き表したかったからでしょうか? (お返事:葉山改月) お返事ありがとうございます。そうなんですよー。 クトゥルフに限定されないホラー書きを目指しているそうですが、「くるまへん」に「おう」で狂いになります! よくぞ見破っていただきました(笑) (ジャラル アフサラールさん) 当時はアーサー王伝説は日本ではゲームファンとファンタジーファン以外にはTVアニメ『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』*1ぐらいでしか知られいませんでしたが、現在ではゲーム『Fate/stay night』*2やそのスマートフォン専用ロールプレイングゲーム『Fate/Grand Order』で有名になりましたね。 *1『アーサー王物語』を基にしたテレビアニメ。アーサー役がロボットアニメの大御所声優の神谷明さんなので「エックスカリバァー!」というのがスーパーロボットの必殺技のような(笑)。 *2 伝奇活劇ビジュアルノベルで「実は女性だった」アーサー王が登場。聖剣エクスカリバーは巨大妖魔も一撃で葬るビーム兵器(笑)。マーリンも美男子で登場。 (お返事:かなでひびき) ありがとうございます。 なるほどねー。時代変われば知名度も変わる、ってやつですねー。 しかし、『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』が出てくるとは! 通ですね! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月25日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4993

おはようございます。 本日は、タイトルのとおり休刊日です。 毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。 あなたの記事を、お待ちしております! FT新聞編集部一同 ■FT新聞へのご投稿はコチラ! こんな記事はどうかな?というご相談からでもぜひご連絡ください。 ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月24日木曜日

ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.11 FT新聞 No.4992

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.11  (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!  本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。  ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。  冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロが主役です。  前回vol.10では〈怨霊列車〉の主ダゲン・ラ・バーゲズとの対決の模様をお届けいたしました。躯を操るバーゲズが繰り出した魔術王の腕と傭兵兄弟の腕を退けたシグナスとクロ。しかし再生力を持つバーゲズは余裕の気配を崩さず、次はアラネアの躯と融合してふたりを追い詰めようとします。  その〈怨霊列車〉の外ではバーゲズの不死性を消し去るため、シグナスの主人ノックスが必殺の一矢を放ちますが……。さて、最終決戦の結末をお楽しみください。  なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。  ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。    前口上はこれでおしまい。  さあ〈怨霊列車〉の冒険、ラストフライトに参りましょう!  ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:0 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨14枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料1食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:5 ・器用点:1 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし    ◇ [先頭車両]最終イベント (承前)  バーゲズの八本の手が蠢動する。その爪先から落ちた水滴が傭兵兄弟の剣に落ちると、じゅっと泡立って刃が溶けた。クロに当たったら……。シグナスはぞっとした。 「さて、第二幕だ。題名は〈蹂躙〉とつける」  シグナスとクロは迎え撃つ構え。八本の手はカチカチと音を立てて、開きゆく花弁の如く襲撃の陣を整える。  その時、何か凄まじい質量を持ったものが、下方から列車に激突した。衝撃で、どすんと先頭車両が跳ね上がった。壁の向こうで連鎖的な爆発音が轟き、玉座の主は憤怒の形相で振り返って走り出す。 「ええい、機関手は何をやっている!」  主は自身の玉座をアラネアの手で引きちぎる。その奥には、煙突から出ていた煙と同じ蛍光緑の炎が渦巻いていた。 「機関——」  再爆発が起こる。緑の炎が玉座の主に引火した。アラネアの手が次々に燃え落ち、玉座の主は絶叫しながら狂ったように胴体の飛び火を叩き消そうとするが、まったく効果がない。 「このダゲン・ラ・バーゲズの命の火が! おお、我が命が漏れていく! この高貴なる劇場が燃えてしまう! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な! 誰も知り得ぬはずだ、我が糧の在処など! まさか裏切ったか、羨望故に。そうだろう……写身の!」  玉座の主は壁から躯を引き出し、乗り替えようと試みるも、その前にすべて緑の炎に飲み込まれていく。バーゲズの体はどんどん縮み、シグナスより小さくなって、鼠ほどになって、それでも止まらず豆のようになって、最終的には何も無くなってしまった。  その間に〈怨霊列車〉自体がもう分解し始めている。躯の壁に炎が燃え移って結合が緩み、軋む。斜めに傾き始めた客車は、その重さのかかったところから外に向けてたわみ始めている。 「あ、ヨンさんが!」  コビットの遺体が、客車の隅に開いた穴に吸い寄せられるように、傾いた床の上を転がっていく。シグナスが駆け寄ろうとしたところを、クロが制止した。 「諦めろ」 「でも」 「手遅れだ。シグナス、落ちる前に脱出するぞ!」 「嫌だ!」  ヨンの小さな体は、重力に引かれてぼろぼろと地面に向かってこぼれていく躯の壁の、その隙間から滑り落ちようとしている。 「ヨンさん──」 「いい加減にしろ! 早く! お前は生きなきゃならないんだ!」  クロが体を張って、閉まりかけた扉のつっかえ棒になっていた。シグナスは呆然とした悲しみに心の半分を握られながらも、体だけ動かしてクロの下を潜り抜ける。連結部はまだ無事だ。後ろの客車の方が動揺は少なそうである。しかしそれも時間の問題だった。客車がまっすぐ並んでいない。軌道が歪みつつある。〈怨霊列車〉を飛ばす力が破壊されたなら、後は落ちるしかない。  徐々に高度は下がってきているようだが、まだ雪原は遠い。振り返ればスウォードヘイル山脈の山肌がすぐ近くに見えた。雪原に落ちるより、コントロールを失った〈怨霊列車〉が激突する未来の方が近いだろう。  そこでシグナスは躊躇した。 (もし僕が向こうに渡った重さで連結が解けて、すぐに落ちちゃったらどうしよう。シスターやトーヴァさんがまだいる……)  がくん、と右足が落ちる。 「うわあああっ」  悩んでいる間に、今まで踏んでいたデッキ部分にも、分解が及んで来ていた。踏み抜いた右足を抜こうとすると、今度は左足が怪しい。 「俺を掴め、シグナス!」  クロの柄を握りしめた。しかし〈おどる剣〉の中でも小柄なクロの浮力だけで人間を引き上げるのは困難を極める。ばたつかせた右足が、ついにデッキの床になっていた躯を蹴り落としてしまった。シグナスの体が宙に放り出される。 「あ……」  クロは上昇しようとする。だが足りない。出力が絶対的に足りない。落ちる。 「駄目……」  下降に転じたシグナスのすぐそばで、力強い羽ばたきが聞こえた。一瞬のうちに首根っこを掴まれ、予想外の方向へ振り回されて、最後は鞍の上に尻が着地する。 「ふぇっ!?」  シグナスが現実に追いつく前に、体は急速に斜めに傾いた。ずり落ちそうになったところを、大きめの舌打ちと共に抱き寄せられる。シグナスは慌ててクロを鞘に戻すと、体を捩って振り向いた。 「サー」 「黙れ!」  転回するグリフォンの真横を〈怨霊列車〉が雷鳴の如き轟音を立てて通過する。主人ノックスはシグナスを救うため、機関部を失った〈怨霊列車〉が描き始めた破滅的な螺旋軌道の只中に突っ込んで来たのだ。  龍の頭蓋の真裏からバーゲズの客車を繋ぐ細長い部分に大穴が開き、そこから蛍光緑の炎が噴き出している。あれが、あの穴を開けたものが、バーゲズの不死性を撃ち破ったのだ。  しかし何が?  シグナスは、そこではっと思い出して、風に負けないように声を張り上げる。 「サー・ノックス! まだ生存者がいます! 最後尾に兵士一名、それと後ろから三番目にシスターが! あそこ!」  横倒しになって飛んでいる最後尾の車両の窓から、トーヴァが懸命に這い出そうとしていた。アルゴットとヨンと共に調査に訪れたサン・サレンの兵士だ。 「手綱」 「は、はい!」  シグナスはグリフォンの手綱を預かり、最後尾車両をめがけて飛ぶように指示する。途端、がくんと体が跳ねた。グリフォンが嫌がっている。翼が乱暴に車体の破片を叩いて、ますます飛行姿勢が乱れた。主人ノックスから手綱を渡されて数秒で台無し。 「言うこと聞いて!」  シグナスが懸命に手綱を引くが、グリフォンは収まらない。猛々しい苛立ちのまま空中を跳ね回る。拒否、拒否、拒否。小山のような車輪がすぐ目の前を擦るように通過し、客車同士が激突し始めた衝撃で落ちて来た金属片がシグナスの鼻先をかすめた。時間がない。 「お前の体が曲がっているからだ」  主人の冷静な声に、シグナスは恥ずかしさのあまり消えてしまいたくなった。基本中の基本すら、パニックで忘れてしまっている。なんと青い従騎士だろう。少し剣の腕が上がって誇らしかったのが、まっさらに吹き飛んでしまう。  苛立って鳴くグリフォンの背中で、シグナスは深呼吸して背筋を伸ばした。主人ノックスと一体化するくらい、真っ直ぐに、ぴったりと角度を寄せて。するとグリフォンは嘘のように鎮まった。 「行きます!」  グリフォンは矢のように最後尾車両を目掛けて飛んで行く。ぐんぐんと客車がシグナスの視界のなかで大きくなり、トーヴァが呆気に取られた顔でこちらを見ているのが分かった。背後で主人ノックスがハーネスを外す音が聞こえ、意を察したシグナスは体を低くする。  数秒後、グリフォンが少し沈んで、鐙に立ち上がった主人ノックスがトーヴァを抱き留めたのが分かった。シグナスはほっとする間もなくグリフォンを穏やかな上昇に転じさせ、主人ノックスがトーヴァを背後に座らせるまでの安定飛行を守る。 「脱出する」 「まだシスターが」  手綱を渡しながら、シグナスは言った。それはほとんど無理な祈りだと分かりつつ、そして無責任な言葉だと知りつつ言った。グリフォンの背にこれ以上の人間を乗せて、毎秒崩壊しつつある〈怨霊列車〉の破片の間を飛ばせるのは、どだい無理な注文である。 (それを主人に求めることで僕は責任逃れを……)  シグナスが罪悪感に突き刺されたその時、 「わたくしのことはお構いなく〜♪ 逞しい殿方に助けていただくプランも考えましたが、きちんとお布施を頂戴しましたので、今回は自力脱出プランにいたしました」  振り仰げば、そのシスターが見たこともない四つ足の怪物の背に優雅に腰掛けて宙に浮かんでいる。つぎはぎの怪物の毛皮は、椅子の上で寝ていた子供達の服の色を連想させた。 「さて、親切心から忠告しておきましょう。貴方たち、厄介なものに目をつけられておりましてよ。七人会と紳士淑女は名乗っておられるようでして、明かす前に六人に減ってしまった訳では御座いますけれど。きっと神への信仰が足りなかったのでしょうね。それではご機嫌よう、〈猟犬〉様に、取り替え子たち♪」 「待ってください、取り替え子ってなんですか!?」  動揺するシグナスに向かって優雅に手を振るシスターの姿がブレたと思った瞬間、グリフォンは最高速度で急降下に入って〈怨霊列車〉の渦を突き抜けて行く。サー・ノックスの手綱捌きは本人の気性と同じく容赦がない。シグナスとトーヴァの悲鳴を背後に吹き流しながら、グリフォンは縦横無尽に空を縫う。  急降下開始のコンマ何秒後のことであったろうか。  先頭車両がスウォードヘイルの山肌に激突し、蛍光緑の怪炎をこれが最期と高く撒き散らしながら爆発大破した。炎は次々と後続の車両に燃え移り、連結部が壊れた箇所からぼろぼろと墜落していく。車両が落下する衝撃で雪原には次々と巨大な雪の壁が立ち上がった。  三人を乗せたグリフォンは、雪壁による死の迷路を突破すべく、極低空を滑るように弧を描いて飛行する。一度でも判断を誤れば雪に飲まれて一巻の終わりだ。  最後の墜落の振動が鎮まった頃、固唾を飲んで事態を見守っていたサン・サレンの兵士たちの前に、雪煙を突き破ってグリフォンが現れた。大歓声が三人と一振りと一頭を迎える。  駆け寄ってきた兵士たちによって、グリフォンの背からまずトーヴァが下ろされた。次いで、シグナスを小脇に抱えたノックスがひらりと鞍を跨いで着地する。雪の地面を踏み締めるなりノックスはシグナスを離したので、情けなくもすっかり腰が抜けていたシグナスは、そのまますとんと雪原に座り込むこととなった。  トーヴァが命の恩人サー・ノックス・オ・リエンスの顔を見てあんぐりと口を開け、その一秒後に真っ赤な顔になる。流石にシグナスにも、トーヴァがどう思ったかは分かった。  主人ノックスは乙女心を無視して、へたりこんだシグナスを見下ろす。慌てて立ち上がろうとジタバタするシグナスの頭に、ぽんと置かれた主人の大きな手のひらの感触。 「うひゃっ!?」 「……良く戻った」  緊張の糸がぷつりと切れる。シグナスは誰はばかることなく、大きな声を上げて泣き出した。 ◇  聖堂には、出棺と共に鳴らされた鐘の余韻がまだ残っているようだった。アルゴットとヨンの棺は空のまま、ただ「死」という記号になって、これから冷たい土の下で眠るのである。埋葬の儀式にシグナスは招待されなかった。余所者であり、ふたりはシグナスのために──本当は怨霊列車の主がすべて悪いのだと誰もが知ってはいたけれど──命を散らせたのだから、悪感情を抱く者がいないとも限らない。そして聖騎士だと分かれば、蘇らせてくれと泣きつかれるかもしれなかった。確かに聖騎士には、善なる高潔な魂を呼び戻す秘技がある。ただし今回のように魂が戻ってくる体が喪われてしまえば、シグナスの技量では如何ともしがたい。ということで主人ノックスに不許可だと言われたのだ。主人ノックスは葬儀の代金を全額出して、後はだんまりを決め込んでいる。トーヴァは残念そうだった。会いたかったのだろう。  シグナスは他に誰もいない信徒席に座って、ぼんやりとドーム型の天井を見上げている。長い冬の雪に耐える頑丈なドルツ石造りの聖堂には様々な神の絵や像が集って、敬虔な民にそれぞれの形で祝福を与えていた。ナリクでは唯一の神として崇められるセルウェー神は、ここでは大勢のうちのひとりでしかない。シグナスには、それが心細かった。世界はどうやら、自分が知っているよりもずっと広いらしい。 「ねえ、クロ」 「どうした」 「今回はさ、色んな人に会ったね」 「寂しいのか」 「……うん」  〈おどる剣〉は無言のまま空中で一回転する。何と言うべきか悩んでいるようだ。  トーヴァ、アルゴット、ヨン。帰ってこられたのはたった一人。  女騎士グロリアは、何とシグナスの主人に自身の剣と、シグナスへの伝言を託して去ったという。主人ノックスの曰く、「国は違えど騎士として恥ずかしい背中を見せてしまった。恨んでほしい。許さないでくれ」と。その言葉を今はどう捉えて良いのか分からない。けれど大人になれば、きっと理解できるのだろう。シグナスはそう思うことにした。  まだいる。空飛ぶ謎のシスターに、車掌さん。  それからダゲン・ラ・バーゲズ。  列車に囚われた躯(むくろ)たち。彼らの魂が相応しい場所に導かれたことを祈り……。  シグナスは何かの気配を感じて、周りを見渡した。 「どうした、シグナス?」 「ねえ、誰かに見られてない? あっ!」  祭壇に飾られた大鏡に目が吸い寄せられる。その中で、写るはずもないシグナスが、こちらを指さしてニヤニヤ笑っているではないか。鮮烈に記憶が蘇る。 「写身の……!」  クロが剣の身を唸らせ、鏡に向かって猛禽のように襲いかかったその時、偽シグナスは急に心の底から驚いたような顔をして逃げ腰になった。次の瞬間、鏡に写ったのはクロ──ではない! シグナスは信徒席から立ち上がった。 (あの人、スプリンガルを踊ってた人だ!)  〈怨霊列車〉で亡霊の輪の中で踊っていた青年騎士そっくりの人物が、クロに代わって写りこんでいる。鏡の中で青年騎士が剣を突き入れると、偽シグナスは憎々しげな顔をしてひょいと避け、そのまま鏡面からいなくなった。 (もしかしてクロなの……?)  鏡面に激突する寸前で急停止したクロが、とんぼ返りしてシグナスの手元まで戻ってくる。 「ええい、忌々しい。一刻も早くお前の主人に報告せねばならん。どうしたシグナス」 「ねえ、クロが人間だった時の顔、わかっちゃったかも!」 「何だと! お前、絵心はあるか? いやそれよりもだな、その……」 「?」 「さ、さ、さぞかし二枚目だったんだろうなあと思ってだな」 「それは高望みなんじゃない」 「何だとおーーー!」  ぶんぶんと怒れる蜂のように聖堂内を飛び回るクロを見て、シグナスは久々に腹の底から笑ったのであった。まあその陽気も、笑い声を聞きつけて飛んできた司祭にこってりとお説教されるまでの命ではあったけれど……。 [完] ◆  これにて『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイは完結です。  語りたいことは多々あれど何だか不粋な蛇足になってしまうような気もしますので、余韻だけを残して作者はお別れを申し上げることといたします。  長の列車旅にお付き合いいただき、誠にありがとうございました!  読者の皆様、FT書房の皆様に心より御礼申し上げます。  それでは、良きローグライクハーフを!   ◇    (登場人物)  ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。  ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。  ・ノックス・オ・リエンス…ロング・ナリクの聖騎士。シグナスの師匠。〈猟犬〉の異名を持ち、主命を受けて暗殺などの仕事もこなしているともっぱらの噂。  ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。グロリアとの最後の対決にて落命。  ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。  ・トーヴァ…ヨンとアルゴットと共に〈怨霊列車〉の調査に来ていた「人間」の兵士。  ・グロリア…サン・サレンの誇り高い女騎士。躯になってもバーゲズに操られ、最後には爆発させられた。魂となってノックスの元を訪れバーゲズの情報を提供する。  ・ダゲン・ラ・バーゲズ…〈怨霊列車〉の主。役者と称して躯(むくろ)を蒐集する、最悪の手合い。  ・シスター…〈怨霊列車〉に乗っていた謎のシスター。最後まで謎であった。  ・〈写身の殺人者〉…前回の冒険でシグナスにより倒されたと思われていたが……!? ◇ (付記) なお、9回目の記事に名前が登場しました「ハボリーム」、そして10回目の記事でノックスが引いている砂クジラの弓は、天狗ろむ様による『賞金首を狙え—隠密任務編—』(https://talto.cc/projects/mjMKe3Lgaz58zl4sg5LdE)に登場するものです。ノックスで挑んだ際に獲得したアイテムや関係性を引き継ぎたいと思い、作品をまたいで登場いただきました。暗殺がテーマというかなり刺激的で独創的なシナリオですので、皆様も是非チャレンジを! ※『賞金首を狙え—隠密任務編—』リプレイ:https://x.com/summer_east/status/2003597509038678525?s=20) ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月23日水曜日

第1回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4991

第1回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「あなたに弟子がやってきた」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ●思い出す、あの日 そのとき、オレは弟のタイガと一緒に森で探検ごっこをして遊んでいた。 タイガはオレの四歳年下の弟だ。あのとき、あいつは七歳くらいだったと思う。 オレはいい感じの木の枝を剣に見立てて、タイガを引っ張って森の奥へと遊びに出かけた。 森といっても、子どもの遊び場だ。村のすぐそばの、森の入口付近で奥に行った気になっていただけだ。 オレは剣士、タイガは魔法使いの役だ。 「大丈夫。どんな敵が来てもオレが守ってやるからな。タイガは安心して魔法を放て」 オレはそんな風に得意になりながら、タイガを引っ張っていった。 その生き物の気配には、オレとタイガ、同時に気づいた。 それほどに、まがまがしい気配を放っていたからだ。 茂みからこっそり覗くと、それは巨大なヤギの姿をした魔獣だった。 頭頂から生える二本の長い漆黒の角は、まるで悪魔のよう。 タイガが震えている。オレも怖い。けど、オレがしっかりしなきゃ。 オレは大ヤギの魔獣を鋭く観察した。森の奥からのっそりとやってきたそれは、森の出口を目指しているように見えた。 その先にあるのは、村だ。 「まずいな。あれ、村の方に向かってないか」 魔獣が森のこんなところまで出てくることは、まずない。 少なくともオレは見たことがない。 だから村の大人たちも、オレたちが森の入口で遊ぶことを問題にしていなかった。 けれど魔獣はここにいる。このままでは、村が襲われてしまう。 どうしよう。どうしたらいい? 「早く、村のみんなに知らせないと」 オレにはそれしか考えつかなかった。 とにかく早く、動きの遅いヤギの魔獣より先回りして、魔獣の襲来を村に知らせる。 けれど、タイガは完全に足がすくんでしまっていた。 「ハルト……。僕、動けない」 タイガは、兄のオレのことを名前で呼ぶ。 最初からその呼び方で慣れてしまったからだ。 「オレも一緒に行くから、がんばれ」 「できない」 タイガは、その場から一歩も動けそうになかった。 「じゃあ、オレが村に知らせに行ってくるから、ここで待ってろ」 「できない」 「大人の力が必要だ。きっと迎えに来るから」 「できない、できない、できない」 自分でも無茶な要求をしていることはわかっていた。 タイガをここに残して村に行ったら、タイガが魔獣の餌食になるかもしれない。 だったらもう、オレに取れる手段はひとつしかなかった。 「……わかった。じゃあオレがあいつを、森の奥へ引きつける」 「……え?」 ここに魔獣がいなくなれば、タイガは安全だ。 村の方向に行ったら、村が襲われる。 だったらオレが、森の奥へ魔獣を誘導するしかない。 「アイツがいなくなれば、村までは安全だ。そうしたら、動けるだろ。タイガが村まで行って、大人に知らせるんだ」 「え? え?」 タイガが間違ってもオレの後を追わないように、村に伝えるという仕事を与えた。 行けなくてもいい。動けなくてもいい。とにかく、無事でいてくれれば。 「頼んだぞ、タイガ」 オレは、まだ混乱しているタイガを置いて、茂みから飛び出した。 まだ手に持っていた木の枝の剣で、辺りの幹をばしばしと叩く。 大ヤギの魔獣は、のっそりとこちらを向いた。 感情が読み取れない無機質な視線が、オレを貫いた。 オレは精一杯の虚勢を張って、木の枝の剣を構えた。 「こっちだ! クソデカヤギ野郎」 大ヤギの魔獣がオレに注意を向けたのを確信すると、オレはそのまま森の奥へ向けて駆け出した。 後ろを振り返ると、魔獣は間違いなく、オレを追ってきていた。 よし。それでいい。そのままオレを追ってこい。そうしたら、タイガは助かる。 オレは走った。全力で。 息が切れても、まだ走り続けた。 大ヤギの魔獣はどこまでも追ってくる。 どうやってやり過ごすかなんて、考えてなかった。考えられなかった。 けどおかしい。 動物の足の速さって、こんなもんじゃないはずだ。 子どものオレに追いつけないなんてこと、あるのか? もしかしてオレ、完全にもてあそばれている? 疲れてきて少し速度が落ちる。それでも追いつかれることなく、一定の距離を保って追って来る魔獣。 やっぱりそうだ。オレはいつでも狩れる獲物なんだ。 オレは絶望的な気持ちで、それでも走り続けた。 そしてとうとう、崖に追いつめられた。 もう、後がない。 大ヤギの魔獣はゆったりとした動きで、オレとの距離を詰めてくる。 崖から落ちて、助かるとは思えなかった。 それなら……。 オレは呼吸を整え、魔獣の脇をすり抜けようとダッシュした。 しかし、無駄だった。 「ぐうっ!」 左腕に鋭い痛みが走る。見ると、オレの左腕を、大ヤギの漆黒の角が貫いていた。 大ヤギの魔獣が首を振ると、オレはそのまま体ごと持ち上げられた。 ぶうんっ。 大ヤギはオレを振り回し、腕から角が抜けてオレは飛ばされた。 助かるとは思えない崖下へと。 オレにとってまだしも幸いだったのは、角が引き抜かれるときの激痛のため、空中で意識を失ったことだったかもしれない。 ■ローグライクハーフとは ——想像の、旅に出よう。 ローグライクハーフのリプレイへようこそ! 「ローグライクハーフ」は、TRPGのように遊ぶこともでき、ゲームブックのように遊ぶこともできるという両者の中間のような位置づけのルールです。 1人でもプレイできますし、3人まででTRPGのように遊ぶこともできます。 その内容はランダムダンジョン。サイコロを振ってイベントを決め、起きた出来事に対処します。 同じイベントに行き当たらないような工夫がされているのもポイント高いですね。 簡単に遊ぶには、とても良くできたシステムなのです。 そしてリプレイは、そんなローグライクハーフのシナリオを実際にプレイした様子を物語風に記述したもの。 自分がプレイした様子を、想像力のおもむくまま、冒険小説として仕立てています。 さらに、実際にどんなプレイをしたのかの[プレイログ]もついています。 プレイ風景を知りたい方、自分のプレイとの違いを楽しみたい方、純粋に物語を楽しみたい方、いろんな楽しみ方ができる、それがリプレイの魅力です。 ●作品紹介 ぜろです。 今回挑むのは、ローグライクハーフ「あなたに弟子がやってきた」になります。 本編タイトルが違うって? はい。良いところに気づかれましたね。 このリプレイは、弟子視点で描かれています。 そのため、タイトルと内容に不一致が生じてしまい、リプレイタイトルを変更させていただきました。 内容は間違いなく「あなたに弟子がやってきた」のシナリオになります。 d33シナリオで、作者は東洋夏さん。FT新聞では、シグナスくんとクロのリプレイでおなじみですね。 私と同じくローグライクハーフのリプレイを多数執筆している方です。 本作品の元となるシナリオ集は、以下で冊子版とダウンロード版を入手できます。 ローグライクハーフ個人製作シナリオ集『主人公は一日にして成らず』 https://booth.pm/ja/items/8063646 ※本作品が収録されています。 ネット閲覧可 ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 https://talto.cc/projects/FoEKXdyD2KdpaLHU1_siE そして主人公は、「エメラルド海の探索」の主人公ハルト。 本リプレイは、「エメラルド海の探索」の続編にして過去編という位置づけになります。 また、導入を読んでお気づきの方もいるように、「巨大樹の迷宮」から始まる主人公タイガのシリーズとの、明確なリンクが張られた構成になっています。 「あなたに弟子がやってきた」のリプレイとして単体で楽しむことはできますが、繋がりのある作品を読んでいれば、なおのこと楽しめるのは間違いありません。 「巨大樹の迷宮」「蜂竜の森」「エメラルド海の探索」、そして本作「あなたに弟子がやってきた」ですね。 さあ、それではここから、新たな冒険をお届けしましょう。 さて、私はうっかりさんなので、基本的なところで根本的な勘違いをしたまま、あるいは堂々と間違った解釈をして突き進んでしまうことがあるかもしれません。 だから、私のプレイにとらわれず、みなさんはみなさんのローグライクハーフライフを送ってください。 リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。 あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。 また、本リプレイではランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めながら冒険を進めていきます。 イベント番号と簡単な内容については、本編の後に補足されている[プレイログ]をご覧ください。 彼らの織りなす冒険を、ぜひ楽しんでください。 ●01 魔獣と巨漢 ぼんやりと目を開く。 視界が安定しない。薄暗い。 目の前に、誰か、いる。 徐々に目が慣れてきた。 目の前に、獣の顔があった。 炎のように真っ赤な直毛で毛の長い、犬のような馬のような顔。 影がゆらめいて、本当に燃えているようだ。 「ギャウ」 魔獣!? オレははっとして動こうとし、全身に激痛が走った。 「ぐ……ああ……!」 たまらず悲鳴を上げる。 「なんだ。生きてたのか」 オレの悲鳴に反応してか、でかい声が降ってきた。 それは目の前の魔獣が喋ったのかと驚いたが、違う。 全身の痛みに耐えながら、首だけをどうにか動かす。 どうやらここは、洞窟の中みたいだ。 ぼんやりと照らされているのは、焚火の火が揺らめいているからだ。 焚火のゆらめきが、目の前の魔獣の炎の赤毛をゆらめかせていた。 「目を覚まさないまま死んじまうかと思ったぜ」 焚火のそばに、がっしりした巨漢が見えた。 ゆらめく炎に照らされたその顔と体は傷だらけだ。 よくわからないけど、このガラの悪そうなおじさんがオレを助けてくれたってことなのか? じゃあ、目の前のこの魔獣は、この男が飼ってるのか? 喋ろうと思ったが、口から出るのはうめき声だけだった。 「ああ、そいつは火吹き獣。顔は怖ェが取って食ったりはしねェから安心しな」 どう見ても男の顔の方がはるかに怖い。 そんなことを思いながら、オレの意識はまた闇に呑まれた。 ●02 大ヤギと呪い それから、意識のある時間がだんだん延びていった。 全身の痛みはあるが、それでも少しずつ体も動かせるようになってきた。 喋れるようにもなってきたので、巨漢の男にお礼を言った。 「オレのこと、助けてくれたんでしょ。ありがと」 「たまたま見つけちまったからな。目の前で人に死なれるのにガマンならなかっただけだ」 男の口調はいつも雑で乱暴で、しかも声がデカかった。 そんな日々を過ごすうちに、少しずつ今置かれている状況がわかってきた。 男の名前はヴァルグ。全身傷だらけの巨漢だ。 二本の剣を携えているから、剣士かなにか、武器を持って戦う人なのは間違いない。 ここは浅い洞穴で、ヴァルグが根城に使っているみたい。 ヴァルグはいつも、何かの用事で出て行っては、日暮れに戻ってくる。 食べ物は、野草とか、狩ったウサギとかを持ち帰ってくる。 たまに、帰ってこない日があって不安になった。 ヴァルグが不在の間、火吹き獣が留守番をしている。 一度狼が近寄ってきたとき、追い払ってくれた。たぶん、オレのために置いてってくれてる。 ヴァルグはオレの事情を聞いてこなかった。 だからオレは何も話してない。 逆に自分のことも何も話してこなかった。 何日か経って、体を起こせるようになった。 そのことに、ヴァルグは驚いていた。 ヴァルグ曰く、とても元の状態に戻るとは思えなかったとのこと。 オレ、よっぽどひどい状態で倒れてたみたいだ。 そしてその頃になってオレは、左腕にある明確な違和感を自覚した。 左腕が熱い。 ヴァルグは、オレの全身に薬草汁を塗りたくり、雑に布を巻いていたが、左腕だけはやけに念入りに巻いてあった。 「オレの左腕、どうなっちまったんだ?」 「あー……」 ヴァルグが珍しく、言いよどんでる。 オレは左腕の包帯を解く。 「な……なんだよこれ!」 これが、オレの左腕……なのか?! 左腕は、パンパンに膨れ上がっていた。 それだけじゃない。得体の知れない黒い体毛のようなものに、覆われていたんだ。 「俺がテメエを拾った時は、左腕が一番ヒドかった。だが、みるみる傷がふさがり、こうなった」 ヴァルグの説明は、簡単すぎた。 「大ヤギの魔獣の真っ黒な角に、刺されたんだ。そのまま崖下に放り投げられたんだ……と思う」 オレは経緯を伝えることにした。 ふむう、とヴァルグは思案する。やがて言った。 「そいつァ、たぶん『呪い』だな」 「『呪い』?」 「ああ。だが、テメエが会ったっていう大ヤギの魔獣にゃそんな力はねェ。大ヤギの角に呪いをかけた変人がいるんだな。その呪いが刺されたことでテメエにうつった」 「……そう、なのか」 「どんな『呪い』なのかは、さっぱりわからねェがな」 そう言ってヴァルグはガハハと笑った。 「ま、死ぬような呪いじゃなかったんだからいいじゃねェか」 いいのか? オレには、よくわからなかった。 ●03 弟子志願 体が動かせるようになると、驚くほどに回復は早かった。 ヴァルグは、オレが動けるようになったら、手近な町や村に連れてくつもりでいたみたいだ。 オレは「帰るとこなんてない」と嘘をついた。 この呪われた腕のまま、村に帰ろうとは、どうしても思えなかった。 「だったら、テメエ一人で生きてくんだな」 ヴァルグはそう突き放した。 けど、空いてる時間で、オレに生きるための術を叩きこんでくれた。 生活のこと、獲物の捕り方。解体のやり方。武器の扱い方。 ヴァルグの言葉は感覚的でよくわからなかったけど、見よう見まねでやった。 武器を手にした時の勢いは凄まじく、気合も迫力も半端なかった。 ヴァルグは、獣のようにどう猛に剣を振るった。 そうして気づいた。 最初は左腕をかばって動かしていたのが、何も支障なく動かせること。 むしろ力がみなぎっている。 ためしに大岩を動かそうと力をこめると、簡単に動かせた。かなりの怪力だ。 「その怪力を生かすなら、剣よりもこっちだな」 ヴァルグは作業用のハンマーをよこした。 それをオレは、軽々と使いこなした。 ヴァルグと打ち合ううちに、わけのわからない衝動がオレを動かそうとしてきた。 戦いたい。暴れたい。 闘争本能がかきたてられる。 ヴァルグはオレの上達と、戦いになると人が変わる様に驚いていた。 オレは、湧き上がる衝動のことを正直に伝えた。 「『呪い』の影響だろうさ」 「なんとかできないの?」 「僧侶や解呪師ンとこに行って解呪してもらう、だな」 だが、とヴァルグは言葉を切った。 「テメエの呪いは厄介そうだ。その手の奴ァ、術者を探して解いてもらわねェと。この場合、大ヤギの魔獣に呪いをかけたアホンダラだな」 「そうなのか」 そんなの、雲をつかむような話だ。解けないって言われてるのと同じじゃないか。 オレの回復に合わせるように、ヴァルグがここでやっていた仕事もそろそろ終わるらしい。 別れのときが、近づいていた。 オレは、ヴァルグに頼み込んだ。一緒に行きたいって。 「弟子なんてまっぴらゴメンだ」 ヴァルグの返事はそっけなかった。 けど、オレはあきらめなかった。 「冒険者になりたい」みたいな漠然とした夢では、ヴァルグは決して受け入れない。 オレは、呪いを解くための旅がしたいと伝えた。 見つかるかわからない術者を探す、あてのない旅だ。 そのために、もっと力をつけたい。 これはヴァルグに師事する理由づけではなく、本心でもあった。 「師匠」 「うるせえ。俺を師匠なんて、ぜってェ呼ばせねェ」 オレがぎこちなく師匠呼びをすると、ヴァルグは全否定した。 そして提案してきた。 ヴァルグはいわゆる、冒険者とか傭兵とかをなりわいとしている。 今、この周辺の遺跡群の調査依頼を受けているという。 八つの遺跡があるため、調査は長期にわたっていた。 残りはひとつ。その遺跡に、オレを同行させるというのだ。 それは、オレに現実の厳しさを教えて、あきらめさせようとしているに違いなかった。 だったら話は簡単だ。 この調査を絶対に成功させて、ヴァルグにオレを認めさせればいいんだからな! [プレイログ] 「あなたに弟子がやってきた」では、ここで弟子のステイタスを決めます。 弟子のスタート時のレベルは6。副能力値はまだ決定していません。 そのため、副能力値を使った技能は使えませんが、その代わり「弟子スキル」をひとつだけ持って行くことができます。 こうしてルールに沿って作成された弟子、ハルトの能力値は、以下のようになりました。 【ハルト レベル6 技量点:1 生命点:5 副能力値:2 従者点:8】 弟子スキル:【心優しき勇者の素質】 ・自分以外のキャラクターが【防御ロール】に失敗した際、その生命点へのダメージを身代わりとして自分に受けます。このスキルの発動は任意です。 また、ヴァルグは2回のd66シナリオをクリアしているため、レベルは16になります。 【ヴァルグ レベル16 技量点:2 生命点:9 筋力点:4 従者点:8】 【従者:火吹き獣(技量点:1)】炎耐性。特定のクリーチャーに2点ダメージ。0ラウンド攻撃に引き続き1ラウンド攻撃が可能。 装備や持ち物、所持金等のデータは省略します。 なお、「あなたに弟子がやってきた」は本来、師匠の立場から弟子入り志願者に試験を課すのが本来の流れです。 そのため、本作品には「弟子プロフィール表」がついています。 これを使えば、サイコロを振って弟子の特徴を決めることができるのです。 その中身は、「弟子になりたい理由」「性格」「特徴的な持ち物」「種族」になります。 ハルトの場合最初から設定がある程度固まっていたため利用しませんでした。 フリーなプレイの場合、この「弟子プロフィール表」を利用したら、きっと思いもよらない弟子が現れて面白いことになると思いますよ。 ちなみにためしにサイコロを振ってみたところ 「あなたに憧れ」「負けず嫌いな」「書状(紹介状)を持ってきた」「ドワーフ」 になりました。ストーリーが根幹から変わってしまいますね。 なお、ヴァルグがここに長期滞在する理由づけとして、「遺跡調査」を「遺跡群の調査」に設定変更しております。 では、次回から遺跡探索の冒険に入りましょう。 ■登場人物 ヴァルグ 冒険者。依頼を受けて遺跡調査に来たところ、偶然瀕死のハルトを発見した。 ハルト 大ヤギの魔獣の黒角にやられ、崖下に転落したところをヴァルグに助けられた。左腕に厄介な呪いを受けている。 タイガ ハルトの弟。大ヤギの魔獣の出現の恐怖で動けなくなった。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 著者:東洋夏 イラスト:骨盤 編集:緋色朱音 発行者:東洋夏 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 冊子版 ローグライクハーフ個人製作シナリオ集『主人公は一日にして成らず』 https://booth.pm/ja/items/8063646 ※本作品が収録されています。 ネット閲覧可 ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 https://talto.cc/projects/FoEKXdyD2KdpaLHU1_siE 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月22日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.139 FT新聞 No.4990

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『これはゲームブックなのですか!?』vol.139  かなでひびき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■  近所に24時間体制の本屋ができたんだけど、夜間は店サイド無人。  つまり全自動で機械がやってくるはるんですって。  ということは、ちょっとはサイバーでパンクな風景が見られるのかしら?  どんどん近代化機械化が進む世の中、アナログなネタをお一つ! 『これはゲームブックなのですか!?』と謳っているのに、ちっとも「ゲームブック」の話をしない!ってんでお嘆きのアナタ! というか、かなで自身お嘆きなので、今回はゲームブックのお話をしてみようと思うの。  しかも、ど直球な原点。 『ドラゴンの洞窟』(J・H・ブレナン著 大久保寛訳)よ!  それ相応にセピア色な本書は、まるで羊皮紙のような貫禄を持つわ!  どれどれ、見てみると……。  発行は昭和六十年!  まさに、ゲームブックブームが、産声を上げるその黎明期のお宝じゃあーりませんか!?  表紙帯にデカデカと踊る「ロール・プレインゲームの王様」プレイングの(グ)が抜けているとこに、時代を感じますぅ! 「読みだしたら止まらない本格の味!」  さらに「見てはいけないマップ付!」豪華仕様!  迷わずゲットして、読んでみましたら……  話は、大魔術師のマーリンが、読者であるあなたに「電話」しているところから始まる。  で、マーリンは「いま現場にいる周りの人からは、ついにイッちゃったか!?」と思われている。  というのは、彼は電話機ではなく、法螺貝に向けて話しかけているから!  マーリン自身の弁明によると「この時代は電話機が発明されてなかったから」  どうです!?  この冒頭!  このユーモアのセンスに、一発で引きずられました!  彼自身の弁によると「この本自体が魔法であり、あなたはこっちの時代へ飛んでこられる」とのことなんだけど。  この冒頭の文が、センスいいユーモアで彩られているので、まさに魔法にかかったように、この世界へ飛び込めたわ!  で、この本でのあなた自身の役割。  そして、ここへ至るまでの経緯が話される。  八月はドラゴンの繁殖の季節。で、そこで暴れまわるドラゴンに、皆は悩まされているけど、今年はサイアク! 「地獄から生まれた」ともあだ名される最強最悪のドラゴン。「真鍮のドラゴン」からこの地を守るために、いえ、このままだと、奴に対して決定的な対処を立てられなかったおかげで賃金カットされそうなマーリンのために、あなたは旅立つ……。  で、戦闘システムは基本のキ、「サイコロを二つ用意して、それを転がして出た数をもとに、生命力や攻撃力、防御力を決める」というものなんだけど、かなりシンプルにまとめられている。  今時のゲームブックだと「あなたの生命値は……」と、ここだけなんか取り扱い説明書みたいなテイストでしらけるんだけど、この本はそういうことがないわ。  始終、物語と同じテイストで、マーリン先生がユーモアたっぷりに懇切丁寧教えてくれる。  この気の使いように、ものすごくかなで共感いたしました!  本書の最後にも、冒険記録用紙とともに戦闘のやり方まとめが載っている。  さらに、「開けるな!」と言っているページにも、大雑把にエンディングまでの道しるべ=パラグラフが載っている。この親切丁寧さ!  それもそうでしょ。  当時は「ゲームブック」そのものが「海のものとも山のものともつかない」。さらには「本のすごろく」とまで評する方もおられた時代。  途中で投げ出さないために、例えば直接マップからバラグラフへ飛ぶ仕掛けがしてあったり、暗号があったり、本当に親切丁寧にできているよ!  この辺、「RPGという概念が浅い日本人に、どうやったらその楽しさが伝わるか?」試行錯誤して出来た『ドラゴンクエスト』を彷彿させますぅ!  そのかわり、罠が満載!   この手のゲームの定番「その場所をよく調べて」みたら何もないのはいいほう。即死トラップが待っているってことも多く思える。  森であったウサギさえ牙を向いて襲ってくる!  さらには「眠りで休息を取る」ための「夢時間」というパラグラフがあるのに、そこで体力を削られまくるってどういう仕様(涙)  だけど、この辺は「初見殺し」ランダムなポイントが少ないので、一回かかったら二回目は回避できる。  何回もトライする意欲を促そうとしているんでしょうね。  まさに「死んで覚えろ」的な厳しさがコンティニューなしで最後まで突っ走った初期のファミコンゲーム感が出ていて、かなでキュンキュン!  で、長さもちょうど良く、例えば休憩時間、電車などの移動時間を使ってこつこつとやっていけば、誰にでもエンディングを迎えられるはず。  あなたに親しげに話しかけるような、センス溢れたユーモアのある文に惹かれていると、最後まで読み通せるはず!  ジョークやギャグは、はやりものの一過性であることも少なくないと思うけど、この文に流れるギャグは「今読んでも面白い!」、時をこえた色あせない名文!  意地悪なトラップやパラグラフジャンプもない。  本当に、この「読書体験」は「黄金」!  悪く言うと「泥臭い」  だけど、本当に読者のそばに作者、あるいはゲームマスターがいる感覚におちいらせてくれるこの文体は、もっともゲームブックが輝いていた時代だからこそだと思うの!  ゲームブック好きな方にも、面白い本を探しているあなたにも、まさに教科書な一冊!  見逃せば後悔することウケアイ! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 『ドラゴンの洞窟』  著:J・H・ブレナン 訳:大久保寛  出版社:二見書房 1985/8/20  文庫 690円(絶版) 新訳版 『ドラゴンの洞窟』  著:ハービー・ブレナン 翻訳:日向禅 翻訳監修:フーゴ・ハル  出版社:創土社 2006/4/1  単行本(ソフトカバー) 1,320円(絶版) ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月21日月曜日

アランツァへのいざない 移動集落もっさもさの話 FT新聞 No.4989

おはようございます、自宅の書斎から杉本です。 ローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』の刊行を目指して、やっております。 つい先日、FT新聞で「オレニアックス生物学」の過去記事が再配信されました。 対象となったクリーチャーは「もっさもさ」です。 本日の記事は「アランツァワールドガイド」として、〈もっさもさ〉をご紹介いたします☆ ◆〈もっさもさ〉とは?  その大きさは全長1km、体重は不明。年齢は推定800歳。長い4本の脚を持ち、1日に20時間睡眠する。全身はほぼ鉱物でできていて、顔には口めいた亀裂が走っている。食事はしない。冬場を除いて全身に緑の草花が生えていて、鳥や昆虫などが住みついている。   ──「アランツァクリーチャー事典」より抜粋  もっさもさはゴーレムの一種です。全長1kmというとんでもない大きさがあり、毎日移動します。世界で1体しか存在しないクリーチャー、いわゆる「ユニーク・クリーチャー」です(※この場合の「ユニーク」は「唯一の」という意味)。  「オレニアックス生物学」や「アランツァワールドガイド」の記事を見れば、〈もっさもさ〉がどのようなクリーチャーであるかは分かります。興味があれば、下記URLを参照してください。 https://x.gd/RaX9E  しかし、この情報を見ても「もっさもさ」がアランツァという世界でどういう存在なのかは見えてきません。今回の記事は、そこにスポットを当てるものです☆ ◆古森について。  もっさもさの話をする前に、アランツァの地図に載っていない地名をひとつ、ご紹介します。大陸中央南部には桜森と呼ばれる森があるのですが、この森の北西部にかえる沼という沼地があります。この沼地の西側にはアリクララ湖という大きな湖があるのですが、この湖と沼の間に、それほど大きくない森があります。それが「古森(ふるもり)」です。  古森は小さな森です。沼地と湖に挟まれていることからも明らかなとおり、ここいら一帯はいわゆる低湿地帯です。苔や藪の多い場所で、泥炭を多く含む地形です。この古森が、〈もっさもさ〉が拠点とする土地です。 ◆誰が、なんのために?  〈もっさもさ〉はもともと、古森の東側にあるアリクララ湖が平地だった時代に造られたものでした。この湖にはもともと魔法都市ジョルクと呼ばれる、アランツァで最も魔法が盛んな都市が存在しました。ある時期にこのジョルクが浮遊して天空都市ジョルクとなり、その際にできた穴に水が流れ込んでアリクララ湖となります。  魔法都市ジョルクは最終的に「都市ごと浮かぶ」という選択を選びますが、その計画の前に立案されたのが「移動都市ジョルク」でした。都市民が暮らすことのできる大きさのゴーレムを移動都市として建造して、そこに避難するというものです。  計画は壮大でしたが、実現困難なものでした。「移動都市ジョルク」の立案者である博士は王の承認を得て、本来必要な大きさの10の1以下のゴーレムを造りました。博士は都市民すべてが入居できる巨大なゴーレムよりも、コンパクトな1kmサイズのものを必要な数だけ造ることを提案したかったのです。この最初のひとつ目のゴーレムが後の〈もっさもさ〉です。この計画は最終的に王の気に入られることはなく、複数のゴーレムが造られることはありませんでした。 ◆新たな住居、新たな人生。  さて、話は古森に戻ります。この森は昔からぬかるんだ地面にあって、ここに住む人々は貧しい暮らしを営んできました。この土地の住人は自分たちをモッサ・モッサと呼んでいました。彼らは赤錆川を利用して、近隣の都市である「からくり都市チャマイ」や「水上都市聖フランチェスコ市」と交易をしていました。しかし、この時期になると、チャマイの近隣にあるトカゲ人たちの街シァアレが大きな発展を遂げて、モッサ・モッサの民を誘拐するようになります。  ジョルクの王は自都市の人々の安全と発展のために、用途のなくなったゴーレムを利用できないかと考えます。その内部に彼らが住むという案はモッサ・モッサの長と民に受け入れられ、ゴーレムは〈もっさもさ〉と呼ばれるようになります。 ◆イスト博士の話。  それから200年ほどが経過しました。ジョルクが天空都市となった今も〈もっさもさ〉は地上を歩き、交易を行っています。かつてとは異なり陸路が中心で、聖フランチェスコと商業都市ナゴールを行き来して取引を行なっています。  さて、〈もっさもさ〉を熱心に研究しているイスト博士という人物の名前が、「オレニアックス生物学」や「アランツァクリーチャー事典」に登場しました。この人物はかつて、魔法都市ジョルクで「移動都市ジョルク」を発案した博士の子孫なのです。「アランツァクリーチャー事典」の執筆者であるカメル・グラント教授とも親交があり、今はからくり都市チャマイの大学に所属しています。 ◆移動迷宮〈もっさもさ〉。  実はモッサ・モッサは、〈もっさもさ〉の体内のごく一部のみを、居住空間として利用しているに過ぎません。〈もっさもさ〉は何層にも分かれていますが、彼らが住んでいるのは第1層のみです。それも、すべての空間を占めているわけではありません。  残りの空間は、200年の間に他の生物が住むようになってしまいました。植物がまずはびこり、次に鳥類や昆虫類が、そして四つ足の動物やモンスターたちが入り込みました。今やこの未知の空間は迷宮も同然です。また、今のモッサ・モッサたちは、〈もっさもさ〉の体内にある機能をすべて把握できていません。彼らは生活に必要なこと以外をあまりしようとせず、〈もっさもさ〉によく使う道を歩いてもらい、都市間を往復するばかりです。 ◆モッサ・モッサとその長。  現在のモッサ・モッサの長はフーマ・モッサ。不健康な生活から顔色が悪く、「だりぃ」が口ぐせの、色白で痩身な女性です。肉体改造の性癖を持ち合わせていて、耳、唇、舌、それからあまり言えないところに穴を開けて、そこにエメラルドやサファイアといった色つきの宝石のピアスを着けるのが好きな人物です。舌がふたつに割れていて、考えごとをしているときにふたつの舌先が絡み合うように動きます。髪の色はもともと白色ですが、ドレッドヘア状に結わえた髪を束ごとに異なる色で染めており、全体としては虹色をしています。  モッサ・モッサは種族としては人間です。先天的に色素が薄く、瞳の色が青色というよりは水色に近いのが特徴です。髪は銀色あるいは白色。肌の色は例外なく抜けるような白色です。そして、魔法都市ジョルクの民たちと同じく、優れた魔法使いとしての資質を持っています。その資質は【魔術師】というよりは【僧侶】に近く、自然神ヴェルディアを信仰しています。  現在のモッサ・モッサ族が、どのぐらいの規模なのかは分かっていません。 今回はこのあたりで。 それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月20日日曜日

ローグライクハーフシナリオソムリエ その8『踊る二枚貝』 FT新聞 No.4988

◇◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ローグライクハーフのシナリオソムリエ(自称)の本日のおススメシナリオ その8『踊る二枚貝』 天狗ろむ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇◆  おはようございます! 「1人用TRPGローグライクハーフ」の楽しさに魅せられ、ローグライクハーフのシナリオソムリエ(※)を目指す編集部員、天狗(あまく)ろむです。 (※ワイン専門の給仕人ソムリエのように、皆様のローグライクハーフのシナリオ選びの際の手助けが出来る人になりたいな、くらいの意味です)  さてこちらは、特に「個人制作シナリオの周知」を目的としたローグライクハーフのシナリオの紹介記事です。  ローグライクハーフのシナリオは、d66ですと同じ主人公で基本は3回まで遊べるようにデザインされているものが多いです。この時点で既に、キャンペーン(同じ主人公で連続、継続的に遊ぶことを前提としたもの)のように遊ぶことができ、個人的にはとても楽しいです。同じ作者さん、同じ舞台のお話をキャンペーンとして遊ぶのも良いですね。公式シナリオですと……水波流氏のフーウェイ舞台作品群(『九つの樹の道』『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』『汝、獣となれ人となれ』)、ロア・スペイダー氏によるサン・サレン4部作(『雪剣の頂 勇者の轍』『写身の殺人者』『怨霊列車は夜笛を鳴らす』『吹雪の慟哭 氷獄の囚人』)、火呂居美智氏によるポロメイア舞台作品群(『蛇禍の悪魔』『失楽園奇譚』『生霊姫狂騒曲』『刻の悪魔のピラミッド』)などが特に繋がりを持たせやすく、キャンペーンとして遊ぶのには適しているかなと思います。これらのシナリオはキャンペーンとして作られている訳ではなく個々で完結しますから、主人公を変えてそれぞれ挑んでも大丈夫です。お好みの遊び方で遊んでみてください!  おっと、公式シナリオでもソムリエを目指す天狗ろむの悪い癖、少し前置きが長くなってしまいました。  今回のシナリオ紹介記事の第8弾は、むしろ「キャンペーンシナリオ」として作られた作品群の1つになります。天狗ろむの主催した企画内企画、というややこしい位置づけですが、それは後ほど所感の方で説明させていただきましょう。  こちらはtsukiさんより頂きました。ありがとうございます!  まずはご本人から紹介して頂きましょう! ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自己紹介: FT新聞読者の皆様、初めまして。tsuki(月)と申します。ふだんはひっそりとRLHを楽しませていただいている者です。 この場をお借りして、FT書房様へ心より深く御礼申し上げます! 今回紹介する作品タイトル『踊る二枚貝』 ジャンル:ファンタジー 形式:シナリオ(d33) 世界観:共通世界(アランツァ) 難易度:Normal プレイ時間:10〜15分 適正レベル:初級 対象年齢:10歳〜 シナリオの公開場所: https://privatter.me/page/6a28bd7d49fa0 シナリオのあらすじ: 異郷都市キョウの古物商店主、藤煤より依頼を受けた君は、自治都市トーンへと向かう。————トラップまみれの廃館で、命懸けの宝探しが今、始まる! このシナリオを作ったきっかけ、コンセプト: 洋館探索シナリオを作ってみたかったのです。 こんな人におススメ!: ※完全にギャグに振り切ったシナリオです。愉快な物語が好きな方へおすすめ! シナリオを作っていて楽しかった点、難しかった点: ギャグシナリオはノリノリで書かせていただきました。一方、難易度調整はいつものことながら頭を悩ませています。 作者から一言: キャンペーンシナリオということで、ぜひ他の皆様のシナリオもあわせてお楽しみいただけたらと思います! ◇◆◇◆◇  ご紹介ありがとうございました!  こちらの作品は、天狗ろむが主催する非公式イベントとして開催した、ローグライクハーフアンソロジー企画「ビブリオメイズ」内企画「みんなでキャンペーンシナリオ作ろうぜ!」の参加作となっています。 「ビブリオメイズ」自体も、ローグライクハーフのファンメイドd33シナリオを集めたアンソロジー書籍を作ろうぜ! という企画なんですが、その中で更に、「キャンペーンシナリオ」を連作作品として作ろう、という企画になっています。何ともまぁ企画まみれです。  今回は「キャンペーンシナリオ」とするにあたり、全体の流れやモチーフなどは主催(天狗ろむ)が考えたものをベースにしつつ企画参加者の皆様で知恵を出し合い、作品自体はそれぞれ自由に作っていただく方針としました。  キャンペーンシナリオとしてのタイトルは「盗まれた五つの至宝」。タイトル通り、盗賊団に盗まれてしまった「五つの至宝」を依頼人の元に取り返すため、盗賊たちの後を追ってラドリド大陸東部の都市を巡るキャンペーンとなっています。  そんな大筋のキャンペーンの、第2話にあたるのが、今回のtsukiさん作『踊る二枚貝』です。  あらすじといたしましては……舞台は自治都市トーンの郊外。至宝の一つ「飛翔騎士(スカイナイト)の護り貝」を奪った「赤目盗賊団」の団員・ゴブリンのゴヤが逃げ込んだのは廃墟となった洋館です。そこは既に、機械じかけを得意とするゴヤによって、トラップまみれの危険な館に変わっておりました。  しかも、ゴヤ曰く「ゴヤお得意の機械じかけがそれはも〜う捗りに捗って、しまいには宝の隠し場所を忘れちまったゴブ。むしろ探してほしいゴブ」とのこと。彼を倒しておしまい、という訳にはいかないようです。  思わずくすっとしてしまいつつ、「至宝」を探すために貴方は館へと足を踏み入れることになります。  tsukiさんが仰るにはギャグシナリオとのことで、確かにゴヤの立ち振る舞いはチャーミングなのですが……道中のトラップまみれの〈できごと〉たちは、ギャグとは言えないくらいの殺傷能力を秘めています。決してご油断なきように!  基本的にシンプルイズベストといったシナリオの雰囲気の中、道中の「手がかり」のゲット方法に工夫があります。上手く見つけられれば、最後に有利になれるのですが……もし見つけられなかった場合、かなり苦戦することになるかもしれません。天狗ろむのプレイ中には、主人公の一人が危うく倒れるところでした。回復を怠ったのもあったりするのですが……とにかく、ゴヤの可愛さに騙されてはなりません!(※天狗ろむはゴブリンが可愛い生き物だと思っています)  トラップって色々あるんだなぁと思わされる作品です。d66でいうところの、40番台の〈できごと〉が目白押し……! 【察知】したとしてもまたトラップ! なんて場合も多々ありそうですので、気を引き締めて進みましょう。  他のキャンペーンシナリオも、作者さんの個性の光る、様々な工夫の凝らされたd33シナリオが待ち受けておりますので、気になる方はこちらから見てみてくださいね。 https://x.gd/mZDm8  推奨順番はありますが、天狗ろむ作の最終話(第5話)以外は自由な順番で遊んでいただいて構いません。キャンペーンとして全5話をクリアしていただくと特典もあったりするので、是非全話クリアを目指してみてください!  プレイしてみた感想は、FT新聞の感想フォームからでも、作者さん自身に直接でも、どうぞお気軽にお寄せください!  それでは、今回はここまで。次回のシナリオ紹介記事にてお会いしましょう。  貴方に良き冒険のあらんことを!  天狗ろむでした! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月19日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第710号 FT新聞 No.4987

From:水波流 ずっと積読だった『ヘンダーズ・ルインの領主』を読了。 TRPG小説のアンソロジーで、収録はルーンクエスト(水野良)、トラベラー(山本弘)、トンネルズ&トロールズ(清松みゆき)、クトゥルフの呼び声(山本弘)、アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(下村家惠子)、ウィザードリィRPG(高井信)、GURPSルナル(友野詳)という綺羅星のごとき作品と作家陣。 これだけ出版元を横断してのアンソロジーというのも、いまでは見ることができないだろうなぁ。 From:葉山海月 けものへん・おう。 私の友達のホラー作家志望の方のペンネームです。 さて、このペンネームの由来というか意味を知って「負けたな」と思いました。(笑) なぜでしょう? From:中山将平 僕ら明日9月20日(日)以下の2つのイベントに出展します。 ・「ゲームレジェンド42」!! 開催地:埼玉県川口市キュポ・ラ本館4階フレンディア 配置:【05b】 ・「さっぽろ卓ゲっと2026」!! 開催地:TKPガーデンシティPREMIUM札幌大通 配置:【C16】 ぜひ遊びにお越しいただけましたら。 また僕自身は個人サークル「ギルド黄金の蛙」で 今日9月19日(土)大阪のATCホールにて「大阪アート&手作りバザール52」に参加しています。 配置は【T-30】です。 さらに、9月22日(火・祝)マイドーム大阪にて「そうさくマーケット4」に参加します。 こちらの配置は【か15a】です。 このサークルにもぜひ是非お立ち寄りを。 さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。 紹介文の執筆者は、以下の通りです。 (明)=明日槇悠 (天)=天狗ろむ (く)=くろやなぎ (葉)=葉山海月 (水)=水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■9/13(日)~9/18(金)の記事一覧 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2026年9月13日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4981 Re:オレニアックス生物学 Vol.7 『もっさもさ』  ・過去の人気記事の再配信として、聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラント教授による、アランツァ世界のクリーチャーたちに関する「生物学」の講義をお届けしました。 今回の講義のテーマは「もっさもさ」。世界に1匹しかいないという謎の生物です。ちなみに、ローグライクハーフのデータとしては【ゴーレム】【巨大生物】のタグをもち、生命点はなんと「40」! 詳細なデータが気になる方は、ぜひローグライクハーフwikiまたは『アランツァクリーチャー事典』もご覧ください。 また、講義の中での生徒たちの会話にもご注目。近刊予定の『ガルアーダの塔』(ローグライクハーフ版)で、この個性豊かな生徒たちが【仲間】としてどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみに待ちましょう! (く) 2026年9月14日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4982 ・「ガルアーダの塔」の書籍版のお話です! ビジュアル面と遊びやすさでアナログゲームはデジタルゲームに押されがちですが、だからこそ「体験」で勝負したいという杉本氏。 今回の【新職業】では、主人公が手に入れる装備品や、遭遇した〈できごと〉によって、なれる【職業】の選択肢が変化します。 【仲間】システムにおいても、今回は単なる「能力値や判定時へのボーナス」ではなく、「幼少期からの時間をともに過ごしてきた、特別な存在」なのです。 また、イラストレーターであるカワラベ氏による描き下ろしイラストをふんだんにご用意いたしました! すべては冒険が読者のものであり、「ローグライクハーフ」をドラマと冒険のランダマイザーとして提供するために。 あなただけの冒険を、体験してみませんか? (明) 2026年9月15日(火)かなでひびき FT新聞 No.4983 これはゲームブックなのですか!? vol.138 ・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。 今回紹介する作品は、『実験小説 ぬ』(著:浅暮三文/光文社文庫) 例えば、自動車標識によって、江戸の判じ絵のように奇想天外な発想で紡がれる物語、『帽子の男』を始めとした、奇妙な美しさで彩られるお話がいっぱい! ゲームブック好きには、分岐がある物語、『カヴス・カヴス』『お薬師様』はいかがでしょうか? 奇想の遊園地とも呼べる作品が目白押し! 機会がございましたら、ぜひ! (葉) 2026年9月16日(水)ぜろ FT新聞 No.4984 第8回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第510回。 今回の主人公は筋骨隆々な傭兵・ヴァルグ。そして、彼を師匠と呼び、赤い毛並みを持つ大型犬を連れ、「獣の腕」を宿す少年・ハルトの冒険の最終回! 二人は「クラーケンぶっ殺し号」に乗って、今回の冒険の最終目的であるクラーケン討伐のため、船の仲間と共に激闘を繰り広げます! 巨大なクラーケンを相手に、怯む事なく戦いを挑む彼らの勇姿を見逃す事なかれ! ヴァルグの過去にも触れる話も出てきますので、どうぞ最後までしっかりお楽しみくださいね。 (天) 2026年9月17日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4985 D&D第4版リプレイ〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 第7回 ・本作は、かつてD&D日本語版公式サイトに掲載されていた、エベロン世界が舞台の『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版』リプレイ「竜の予言に選ばれし者たち」の続編。そのリプレイ7回目をお届けします。 すべての疑惑を解くために、エラドリンたちの砦に行くことに。 驚くほどのスピードで“冬の砦”ティラー・シラエンに到着しましたが、待っていたものはエラドリンの精鋭監視隊! それに投降する一行。 やがて、彼らの前に姿を現した長老は言います。 「ネディアの妹、サラに穢れが見られるようになった」 穢れの拡大感染を恐れる長老は、その原因を狂気の次元界ゾリアッドの者が有する穢れだと判断し、パーティにそれを問いただすのですが!? 一行に突きつけられるクエストとは? サラの穢れを落とす方法は!? 運命が絡みつき、回転するお話! どうぞご一読を! (葉) 2026年9月18日(金)ぜろ FT新聞 No.4986 感想回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ ・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第511回は、16日に無事完結した【エメラルド海の探索】の感想回をお届けします。 今回のリプレイは船の上での戦いの描写に苦戦したとの事ですが、「でもそのぶん、いいものをお届けできたのではないか」と確信しておられる様子です。工夫した点などを知った上で、作品を改めて読み直すと色んな発見がありそうですね。リプレイを書いてみたい方の、書き方の参考になるかもしれません! 今作の感想や、次回作への期待など、ぜろさん宛のお便りもお待ちしております! (天) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今週の読者様の声のご紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。 紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。 すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。 ↓↓ (ジャラル アフサラールさん) 浅暮三文さんは『石の中の蜘蛛』で日本推理作家協会賞を受賞したり、短編が中学校向け国語の教科書に採用されたりという異才作家で海外にも作品が翻訳されていますが、今回紹介された作品の翻訳は困難でしょうね(笑)。 (お返事:かなでひびき) おたよりありがとうございます。 「翻訳が難しい」ということで、かなでは、ジェイムズ・ジョイス先生の『フィネガンズ・ウェイク』を思い出しましたよ! だけど、びっくりです! 教科書に掲載されていたとは! センセイに効いてみねば! 今回も面白い情報ありがとうございました。 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ■FT書房作品の通販はこちらから☆ FT書房 - BOOTH https://ftbooks.booth.pm ■FT書房YouTubeチャンネルはこちら! https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■FT新聞が届かない日があった場合 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。 未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。 もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。 このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。 未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。 https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html *10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。 また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。 ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月18日金曜日

感想回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4986

【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ蛇足な感想 ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「エメラルド海の探索」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 や。完結までこぎつけました! 今回のリプレイは苦戦しました。でもそのぶん、いいものをお届けできたのではないかと確信しております。 ○作品について とにかく、海の伝説の魔物クラーケン退治に正面から取り組む骨太のストーリー。ガチガチの王道です。 奇をてらうことなく、真正面から挑みます。 巨大なクリーチャーの脅威がよく表現されていて、本当に素晴らしい。 3回の冒険の理由にも説得力がありました。 また、成田芋虫さんによるイラストも素晴らしいですね。 表紙のトロピカルさも素晴らしいですし、本文中のイラスト群もたまらないです。 ○主人公のこと 今回の主人公は、ヴァルグとハルトですね。 でも、語り手は、ハルトと、従者枠のひとり、ポールです。 これを入れ替える構造にすることで、主人公視点と、主人公や船を外側から見る視点で、物語が立体的に描き出せるのではないかというこころみです。 はたして、狙ったとおりの効果は出ているでしょうか。 ヴァルグからの視点の話は、意図的に外しています。 ○リプレイのこと リプレイの書き方って書く人の数だけあって、書く人が同じでもアプローチの仕方は違ったりするわけです。 私はこれまで、海洋冒険もののリプレイを2作品書いています。 ひとつは「マドレーンの海域」。まさにこの「エメラルド海の探索」と同じビストフ周辺を舞台とした作品でした。 もうひとつは「大真珠の探索」。こちらは、作中の描写にある風景の美しさに心を奪われました。 で、アプローチの仕方に話は戻ります。 「マドレーンの海域」は、ゲームブックリプレイらしさを前面に出して、ゲーム的な処理や本文中の描写をメインに組み立てました。 「大真珠の探索」も同様ですが、こちらは本文でも描写に力を入れていたため、本文に沿って書いていくだけでいい感じに仕上がっていきました。 今回「エメラルド海の探索」は、「巨大樹の迷宮」「蜂竜の森」に繋がる物語です。 そのため、ゲーム的な側面よりも、物語に力を入れています。 となると、これまでのようにゲーム的な語りで誤魔化すことが難しく、最小限ではありますが、海洋冒険の知識を仕入れる必要が出てきました。 海でクリーチャーと出会った際にはどういうシチュエーションで対決まで持っていくのか。 船の甲板ってけっこう海から高いところにあるので、敵をどうやって甲板まで上げるのか、甲板に上がらない敵とはどう対峙するのか。 ルール上は全部普通に戦えてしまうのを、表現上はどのような動きをしている形をとるのか。 海戦の場合、船はどのような動きをするのか。 もちろん、単にリアルを追及するだけでは面白くありませんので、それをぶち破る超人的な活躍の表現はどうしたらいいのか。 巨大なクラーケンと戦う時に、ルール上は脚に1点ダメージで落ちますが、その1点をいかにして与えるのかの工夫として、火薬樽への火の玉発射を考えたりとか。 ない知恵を絞って、原作にはない描写や展開をひねり出していきました。 その甲斐もあって、最後のクラーケン戦などは、かなりの迫力バトルが描けたのではないかと自画自賛しております。 あれ、実際のプレイログ見ていただくとわかるのですが、完封、圧勝なんですよね。 船全体が一丸となって戦っているように描きたくて、プレイログだけでは表現できないところも多く入れております。 たとえば3回目の冒険の中間イベントに登場したノームの三銃士などは、従者にはできなかったのですが、あの場面で乗船させないというのも考えにくかったので、従者ではないが、乗組員にする、という扱いにしました。 そうしたらやはり活躍の場は与えたくなってしまい、生命点のやりとりがない範囲で描写させていただきました。 クラーケンの脚は切り離されない限りダメージは入りませんが、それ以外の手段で1点に達しないダメージを積み重ねることは重要な役割です。 そういったお助けキャラの最たるものは、東洋 夏さんのリプレイから拝借させていただいた白奴ですね。 このコビットのおじさんは、東洋 夏さんの描いたリプレイ「エメラルド海の探索」に登場するキャラクターです。 しかも2人目の主人公キャラクターなんですよ。だからちゃんと技量点もあれば生命点もあるのです。 人様のキャラクターなので、イメージどおりに描けたか不安はありますが、だいぶ好き勝手やらせていただきました。 腰痛で戦力外通告ってことにしてプレイヤーキャラクターとして動かない理由づけをしてみましたが、そんなのおかまいなしに暴れ回ってくれましたね。 途中でこのキャラ、主役食ってしまうんじゃ? と不安になったものです。 なお、同じ「エメラルド海の探索」のクラーケン退治の冒険なので、東洋 夏さんのリプレイとはパラレル展開ということになりますね。 でもエピソードは違えど白奴は、東洋 夏さんバージョンの「エメラルド海の探索」のもう一人の主人公ソール君とはちゃんと知り合っているようなので、話は広がりそうです。 ちなみに東洋 夏さんバージョンの「エメラルド海の探索」と、イベントのかぶりはけっこう多くあります。 読み比べてみると違いがわかって面白いかも。 かぶったイベントについては、特に向こうの描写に近づかないようにとかを意識することなく、自然に書いたらちゃんと別展開になっていてよかったです。 ハルトの物語はご覧のとおり、タイガたちの物語とは別のもう一本の主軸として展開していくことになります。 今後この二人がどのような軌跡をたどるのか、展開を楽しみにお待ちいただけたらと思います。 完全に蛇足な感想になりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございます。 次のリプレイにも、ご期待ください。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 著者:杉本=ヨハネ 監修:紫隠ねこ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 https://ftbooks.booth.pm/items/4941872 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月17日木曜日

D&D第4版リプレイ〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 第7回 FT新聞 No.4985

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜(ドラゴン)の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 連載第7回 岡和田晃 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ▼はじめに 本作は、かつてD&D日本語版公式サイトに掲載されていた、エベロン世界が舞台の『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版』リプレイ「竜の予言に選ばれし者たち」の続編です。 当時のサイトは閉鎖されていますが、前日譚の「トレイルブレイザーズを探せ!」と「竜の予言を解放せよ!」はウェブアーカイブで閲覧可能です。D&D第4版や舞台の世界観そのものの解説にもなっておりますので、未読の方は以下よりご覧ください。 https://web.archive.org/web/20110520091921/http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/web_replay_eb/index.html うまく繋がらない方は以下もあわせてご利用ください。 https://www.dropbox.com/scl/fi/hfckq3h4rglyer10ycaj4/1_.pdf?rlkey=xzasih78fdhbqoikbr98kovkl&dl=0 https://www.dropbox.com/scl/fi/nluo5nzotbnpeanc1zh0r/2_.pdf?rlkey=f49qwu5pxzhc4flzcw7kj1v5y&dl=0 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ DM:ダンジョンマスター(岡和田晃) ネディア:ヒューマンのレンジャー(PL:中山葵) ヘルメス:ヒューマンのアーティフィサー(PL:カナイセイジ) クシュタリ:カラシュターのパラディン(PL:見田航介) ベック:ウォーフォージドのファイター(PL:高橋志行) ジュス:ティーフリングのウィザード(PL:ノダソル) ◆遭遇3:ドラゴンの予言者 ●“冬の砦”にて DM:では、途中、特に目立った遭遇もなく、驚くほどのスピードで“冬の砦”ティラー・シラエンに到着しました。 一同:早っ! ベック/高橋:乗り物を使えば、大幅な時間短縮が可能になるところが、エベロン世界ならではですね〜。 ジュス:で、俺様たちはいったいどこに現れたんだ! DM:(ころころ)えーっと、これがティラー・シラエンの中庭に登場した次第でして(笑)、周りのエラドリンたちが目を白黒してます。 一同:(爆笑) DM:すぐさま、ティラー・シラエンの中心にある、奥魔砦に設定されていた破幻球が作動します。爆発20の振動警報だと思いねえ。全員〈魔法学〉で判定をどうぞ。 ヘルメス:「誰だよ、ここに出ろって言ったのは!(笑)」  “冬の砦”ティラー・シラエンは、詳細な公式設定が存在しないので、DMは『ドラゴン・マガジン年鑑』所収の「フェイワイルドの城塞都市、ミスレンダイン」を参考にしつつ、一部設定を踏襲する形で自作している。  サプリメントに記載されているこのような情報は、そのまま使用するだけではなく、ちょっとした工夫によって、あなたのセッションを何倍も面白くしてくれるのだ。 ベック:(ころころ)達成値9ですね。 クシュタリ:(ころころ)うわー、1振った。 ネディア:(ころころ)わたしは13です。 ヘルメス:(ころころ)俺も16しか行かんなあ。 ジュス:(ころころ)俺様は12。 DM:それでは、全員、回復力を1消費してください。で、警報の結果、エラドリンたちが集まってきます。 ヘルメス:そりゃあ、岩石が突然現れたんじゃあ、びっくりもするよな(笑) ベック:とりあえず、ハッチを開けてエレメンタル式岩石掘削機から降ります。「私たちは怪しいものではありません」と身ぶりでアピールしましょう。 DM:“冬の砦”に集うエラドリンたちは、呆気に取られた様子で君たちを見ていますね。 ネディア:これはまずいですね。「私はネディア・ド=オリエン、妹のサナがこちらにいるとお聞きしましたが」と叫びましょう。 ベック:「カルナス軍の悪しき計画をお伝えするためでもあります」 DM:すると、エラドリンたちの態度が変化してしまいます。各々、怪訝な顔つきで剣や槍を構えて君たちを取り囲みますね。 ネディア:「えええっ、どうして?」 ベック:「私たちは怪しいものではありませんよ!」 クシュタリ:「そうじゃ、シルヴァー・フレイムの名にかけて!」 ヘルメス:困った、何人くらいいる? DM:だいたい20人くらいはいますね。君たちを監視しているのは「砦の監視隊」という、エラドリンの精鋭です。指令官らしい男性の指揮のもとに、君たち“侵入者”を見つけて取り囲みました。「おとなしく、武器を我々に預けなさい!」 ベック:ダイナミック・ウェポンをパワーでとても小さなサイズにまで縮小し……。「これは、椅子の脚ですよ(笑)危なくないですよ」 DM/監視隊隊長:「ウォーフォージドは戦のために造られた、自然ならざる存在だ。すなわち武器と同じですらある。そのウォーフォージドも引き渡してもらおうか」 ベック:「これは聞き捨てなりませんね。スローンホールド条約の結果、ウォーフォージドにも人権はあるという規定がなされました。そうした条約の姿勢を軽んじるのですか?」 クシュタリ:待て、さすがに、エラドリンのような種族と事を荒立てるのは得策ではない。何らかの誤解がありそうじゃの。 ベック:シルヴァー・フレイムとエラドリンの仲はどうなんでしょう。 クシュタリ:シルヴァー・フレイムを信仰しないのは問題じゃが、悪しき種族ではないからの。私の鎧はサモンド・プレート・アーマーのパワーにて異次元に隠してあるから、いざというときも鎧をつけられる。 ヘルメス:気乗りがしないが……戦うか? DM:長老格のエラドリンが、戦士たちの後ろで、君たちをためつすがめつしながら、何やら話しているようですね。 ネディア:サナ……いったいどこにいるの。 ベック:では、ここは武器を捨てて投降しましょうか。 ジュス:俺様は不本意だ。なぜエラドリンなんぞに……。 クシュタリ:じゃあ、お主一人で戦うのか? ジュス:それはもっと不本意だ…(ワンドを捨てる)。 ●エラドリン長老との面会 DM:では、とりあえず投降ということでいいのかな。エレメンタル式岩石掘削機は押収され、君たちは個室へと隔離されてしまいます。若いエラドリンが番をしていますね。もちろん帯剣しています。 ジュス:この際に大休憩を取ろうか。 DM:だーめ。そんなにリラックスできませんよーだ。で、しばらく待っていると、何かイベントが起きるかもしれません。ネディア、1d10をロールしてみて。1か2なら、愉快ならざるイベントが起こります(笑) ネディア:(ころころ)2! 一同:(声を合わせて)さすがネディア! ネディア:うっ、嬉しくないッ! DM:すると、先程の長老格のエラドリンが、衛兵を連れて君たちの部屋を訪れ……。 DM/長老ヴァロン:「ネディア、とか言ったな……そなたの妹のことでちょっと見てもらいたいものがある」 ベック:ダイナミック・ウェポンを大きくさせて、阻止することも可能ですが? ネディア:(首を振って)サナのことだから、ここは見ておきたいです。「妹のことでしたら、もちろんご一緒します」 DM:それでは、ネディアが向かった先は、奥魔砦の謁見の間のような場所ですね。サナの姿はありませんが、替りにエラドリンの長老たちが集まっています。彼らは互いに怪訝な顔つきで何かを相談しているように見えるが、ネディアがやってきたのを確認すると……。 DM/長老ヴァロン:「実は、事件が起こった。そなたの言う“妹”のことだ」 ネディア:「サナに何があったの?」 DM/長老ヴァロン:「さよう、突如、そのサナとやらに“穢れ”が見られるようになったのだ。その“穢れ”は拡がりを見せ、我らの仲間にも感染する始末」 ネディア:「“穢れ”?」 ベック/高橋:『銃・病原菌・鉄』を思い出しますね! DM/長老ヴァロン:「さよう。我々はの“穢れ”を異形のもの、つまり狂気の次元界ゾリアッドの者が有する穢れだと確認した。そこで、そなたに問いたい。そなたらは異形どもと関わりがあるのか? 返答次第では、この清き砦から帰すことはできなくなるが……」 ネディア:「わたしたちは、異形とは無関係です。わたしと仲間たちは、長きにわたって、むしろ異形の存在と戦ってきました」と、これまでの冒険を、かくかくしかじかと、ひと通り話します。  会話型RPGでは、これまでに起こったものごとを、仲間や新しく出逢ったNPCに話して聞かせなければならないことが往々にしてある。その際には、こうした「かくかくしかじか」が便利だ。 DM/長老ヴァロン:「……そなたの話を総合しよう。どうやら、サナとやらが“穢れ”を身に宿すこととなったのは、アンデッドを率いる忌まわしき連中と無関係ではないようじゃな」 ネディア:「……わかりませんが、サナが穢されているとしたら、それは悪しき連中の仕業に違いありません。サナと、サナと会わせてください!」 DM/長老ヴァロン:「それはできない。“穢れ”を広めてはならんからな」 ネディア:「じゃあ、どうすればいいんですか!」 DM/長老ヴァロン:「……そなたは、“竜の予言”に選ばれし者だと言ったな。我々はまだ、そなたらの言葉を、そのまま信用するわけにはいかん。カルナス軍の進行は由々しき事態だが、誤情報の可能性もあるからな」 ネディア:「な、なんですって?」 DM/長老ヴァロン:「憤るではない。ヒューマンは行き急ぐがゆえ、早急に生命を落としてしまうのだ。そなたらの措置は“ドラゴンの予言者”様に委ねようと思っている」 ネディア:「“ドラゴンの予言者”?」 DM/長老ヴァロン:「さよう。ここ“冬の砦”ティラー・シラエンがフェイスパイアとして、エベロン世界とフェイワイルドの均衡を維持していられるのは、“竜の予言”と、それを護る予言者様の献身的なお力あってのこと。“穢れ”の蔓延からもわかるとおり、近年、我らの聖地を守る破幻珠の効果は弱まっておる。よいかな?」 ネディア:「……わかりました。やってみます。ただ、サナが大変なことになっているのに、おちおちとそんな人に会っている時間など……」 DM/長老ヴァロン:「そこは心配せんでよい。“ドラゴンの予言者”様がおられる“予言の洞窟”は、自然世界の時間を超越した空間じゃ。予言者様が認めてからで遅くない。しかし……もしお眼鏡に敵わなければ、そなたはもはや、自然世界に戻っては来られぬ。アンダーダーク、カイバーの化物どもの餌食になるやもしれぬ。それでも、やるか?」 ネディア:「やります!」 DM/長老ヴァロン:「うむ、その心意気やよし。じゃが、“試練の洞窟”へは一人で入ることはできん。猶予をやろう。仲間とじっくり相談し、またここへ来るがよい」 DM:ネディアは部屋へ戻ったよ。 ネディア:「(長老ヴァロンとの会見を説明し)お願い、みんな、力を貸して!」 クシュタリ:「シルヴァー・フレイムの信徒として“穢れ”を認めるわけにはいかんな。ネディアよ、もちろん、力になるぞ。神の試練と思って引き受けよう」 ジュス:「(軽薄に)ヤバそうだったら、逃げればいいしな!」 ネディア:「クシュタリ、ジュス、ありがとう!」 ベック:「むろん同行しますが、エラストレル・イル・ワイナーン卿が、“穢れ”をもたらしたのでしょうか?」 ヘルメス:「フィッツギボンの手の者、あるいはハルデン卿という可能性もあるな」 ネディア:「……きっと、この先に行けば、何かわかりそうな気がします」 ヘルメス:「そうだな、行ってみよう……」 (つづく) “『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜” is unofficial Fan Content permitted under the Fan Content Policy.Not approved/endorsed by Wizards. 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2026年9月16日水曜日

第8回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4984

第8回【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「エメラルド海の探索」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフ「エメラルド海の探索」の冒険譚です。 今回の主人公たちは、元剣闘士で熟練の傭兵ヴァルグと、彼と行動をともにする、左腕に「獣の腕」を宿す少年ハルト。 貿易都市ビストフの領主マキシミリアンから受けた依頼はクラーケンの討伐。 海神ホリィドゥーンの加護、クラーケンの居所を見通す遠見師エラ・シエロの同行を得て、クラーケンぶっ殺し号は、航海を続けます。 そしていよいよクラーケンの出現場所へ。最終決戦の幕開けです! 【ヴァルグ レベル20 技量点2 生命点9 筋力点4 従者点9】剣闘士(元) 【ハルト レベル10 技量点1 生命点7 筋力点4 従者点8】獣使い 「クラーケンぶっ殺し」号 技量点1 生命点9 攻撃回数2 【砲撃】ダメージ2点 ●アタック03-6 決戦! クラーケン 【ハルト】 そのときは、突然やってきた。 遠見師のエラが、不意にビクッと体を震わせた。 すぐに見張り台から大声が響いた。 「左舷前方に巨大な影! 急速に接近してきます!」 船に緊張が走る。 「本船はこれより、クラーケンの討伐を開始する!!」 ハーツデイル船長が高らかに宣言する。 「よォしやっときたな! 気合を入れろ! テメエら!」 師匠がバカでかい声で鼓舞する。 その声に押されるように、コビットたちが慌ただしく動き出した。 次から次へ、左舷の船側から火薬入りの樽を投下していく。 オレはヒースをともない、前方の甲板に立つ。 投げ込まれた樽は波に揺られ、船から少しずつ離れてゆく。 「近いのは狙うなよ。船を傷つけてしまうからな」 船長の言葉にオレはうなずいて、その時を待つ。 まわりは騒がしいのに、不思議と、心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。 巨大な影が、樽の下にさしかかった。 今だっ。 「ヒース、火の玉!!」 「ギャウ!」 ヒースが火の玉を放つ。 それは波間に揺られる樽に命中した。 ドォン!! 爆発とともに水柱が上がる。 続けざまに狙い撃つ。 水上にいくつもの水柱が咲いた。 水柱が消えた海上には、千切れた触手が浮かんでいた。 よし、効いている! 「よくやったヒース!」 「ギャウ!」 【ポール】 樽に火薬を入れて、ヒースの火の玉で爆発させる。 単純な作戦だったけど、効果はあった。 そのとき、海そのものが盛り上がり、クラーケンの巨大な頭が顔を出した。 かなりの至近距離だ。まるで目の前に巨大な壁が現れたよう。 これなら狙わずとも当たる。 ニーナが砲撃する。弾はクラーケンの巨大な頭部に命中したが、簡単にはじかれてしまった。 ダメだ。これじゃあ分厚い城壁に素手でパンチするようなものだ。 ヴァルグは「狙わなくても当たる」くらいなことを言っていたけど、当てるだけじゃ意味ない。 どうしたらいい。 そうか! 私は砲台を斜め下に向ける。 分厚い頭にいくら撃っても無駄だ。 狙うのなら、たくさんの触手に繋がるつけねの部分。 「そこだあ!」 透明感のある海の浅いところに見える、クラーケンの器官が密集しているところに向けて、続けざまに砲撃を叩きこむ。 エメラルドの海が黒く染まっていく。どうやら、墨を吐く部位を傷つけたらしい。 しまった。これでは海の下が見えなくなってしまう。狙えない。 「大丈夫。だいたいわかったから」 ニーナも私にならって狙いを変更し、黒い水面に砲撃を叩きこむ。 たしかな手ごたえを感じているようだ。さすがはニーナ。もうコツをつかんでいる。 いける。いけるぞ! 【ハルト】 クラーケンぶっ殺し号の砲撃が始まった。 ポールさんもニーナさんもがんばっている。 クラーケンは巨大な二本の触腕を持ち上げ、怒り心頭のようだ。 クラーケンは二本の巨大な触腕と、八本の吸盤のついた触手を持つ。 狙いは触手の方だ。 「鉤つきロープをおろせ!!」 珍しく大声を張り上げる白奴の号令で、次々と鉤つきロープが海に投下されてゆく。 それらは海中にあるクラーケンの触手にひっかかり、あるいは巻きつかれてゆく。 「いよおおぉし。引けーーい!!」 コビットの乗組員たちが、並んでロープを持ち、全力のかけ声とともに必死に引っ張る。 「えいさっ! よいさっ! えいさっ! ほらさっ!」 船が大きく傾き始めるが、おかまいなしだ。 やがて海中から、クラーケンの触手が吊り上げられてきた。 ずるずると重い音を立てながら、ぬめぬめとした太い触手が甲板まで引きずり上げられる。 「銃士隊、前へ!」 激しく揺れる甲板で三人のノームの銃士が膝をつき、体を固定して銃を構える。 「撃てっ!」 銃声が連続して響き、触手を深く傷つける。触手は黒っぽい体液を飛び散らせながら激しくのたうった。 そのとき、二本の巨大な触腕が、船に向けて叩きつけられた。 しかしそれは船をかすめ、海面を叩く。船はさらに激しく揺れる。 そうか。海面が黒く変色しているせいで、クラーケンも視界がきかないんだ。 するとクラーケンは、船に吊り上げられた触手を起点に、船に巻きつきはじめた。 これまで隠れていた触手のつけねにあたる部分もすべてむき出しだ。 それを逃すポールさんたちじゃない。連続して砲撃を叩きこむ。 それでもクラーケンは船本体への巻きつきを強めていく。 船がギシギシと嫌な音を立てて軋む。船体はいつまでもつのか? 「いいかハルト。巻きついている触手をぜんぶぶった切るぜ」 師匠が動く。傾いた足場をものともせずに、人の胴体より太い触手に斬りつけ、あっさりと切り裂いた。 オレも一本の触手に向かう。鉤で吊り上げられ、銃士の攻撃で傷つきのたうつそれに当てるのは容易だ。 オレは獣の腕を振り上げ、槌を渾身の力で叩きつけた。 巨大な触手がぐにゃりとへこむ。オレは甲板をまな板がわりに、触手の同じ場所を繰り返し叩き続ける。 獣の腕は、全力を奮える機会にうち震え、オレは無我夢中になっていた。 やがて触手は、まるで鍛冶師が剣を鍛えるように、完全に平たくなった。 それでも先端の触手はまだ動き続けている。なんて執念深いんだ。 「もういいハルトちゃん! その触手は切り離されたも同然だ。心配はいらん!」 白奴の声が聞こえ、はっとした。オレは次の触手を求めて周囲を見渡した。 それはまさに総力戦だった。 いつまで続くのかわからない激闘。 巨大な触手に巻きつかれ、激しく揺れる船。 響く砲撃音。とどろく銃声。 白奴の指示。コビットたちのかけ声。師匠の怒号。 火薬の臭い。ヒースの鳴き声とあぶったイカの臭い。 オレも必死に戦った。 うなりを上げて飛んでくる触手をかわし、全力で槌を振りぬいた。 戦いの高揚感に、獣の血が全身を駆け巡り、まるで疲れを感じない。 終わりは唐突に来た。 船に巻きついていた巨大な触手が、不意に力なくほどけ始めた。 頭上にそびえていたクラーケンの壁が、少しずつ低くなってゆく。 海に、沈んでゆくんだ。 そのとき、船ががくん、と大きく傾いた。オレはとっさに欄干をつかみ、落下を防ぐ。 「いかん!」 ハーツデイル船長が叫ぶ。 「触手にからむロープを切り離せ! 船ごとクラーケンに引きずり込まれるぞ!」 その声を受け、師匠がすぐに動く。斜めになった甲板を、欄干伝いに移動する。 気合の声を上げながら、ピンと張られた三つ編みの太いロープを分断していく。 コビットの船員たちも、めいめいのナイフやノコギリで、ロープを切り離しにかかる。 が、がっしり太くしたロープががちがちに張られていては、簡単に切ることはできない。 「はいちょいとどいてな〜」 白奴がカタナを抜き、素早い一閃でロープを断ち切った。 チィン、という金属音を立てながら、洗練された所作で鞘に収める。 白奴は師匠とは反対側の端からロープを切り離しにかかった。 その間にも船はみるみる傾いてゆく。 「だりゃああ!」 やがて師匠が、クラーケンと船を繋ぐ最後の一本を切り離した。 「反動に備えろ!」 船長の叫びと船の動きは同時だった。 ざばああん! 限界まで傾いていた船は、反動で大きく跳ね上がり、激しく揺れ戻った。 オレは欄干を必死につかんだまま、滅茶苦茶に体を揺さぶられた。 なんの支えもなかった師匠が空中に投げ出されたが、目の前のロープをつかみ、ギリギリ甲板に落下して転がったのが見えた。 突然の沈黙が訪れた。 波音しかしない。 さっきまでの激戦が、嘘のように。 ポールさんとニーナさんが、甲板に上がってきた。 コビットの乗組員も集まってくる。不安げに海面を見つめる船員もいる。 「クラーケンは力なく沈んでゆきました。……脅威は完全に去りました」 遠見師エラ・シエロが、厳かに宣言した。 それでも、現実感がない。 師匠が船長の隣に立ち、小突いた。 「おい、なんか言ってやれよ。締まらねェだろ」 はっとした船長が、皆に向かい宣言する。 「本船は見事クラーケンを打ち倒した! 我々の勝利だ!」 「おおおおおーーーー!!」 それとともに、乗組員全員の勝どきが一斉に上がる。 本当に、オレたち全員で、あのとんでもない海の魔物を倒したんだ。 オレにもようやくじんわりと、その実感がわいてきた。 「あれ、食えるのかなあ」 甲板に残され、なおもうねる触手の端っこを見ながら、白奴がつぶやいていた。 ●アタック03-7 余韻【ポール】 激戦の爪痕を残す「クラーケンぶっ殺し号」。 点検をしてみたところ、損傷は軽微だった。 点呼をかけたが、誰一人欠けている者はいなかった。 クラーケン討伐自体が奇跡のようなものなのに、犠牲者が一人も出ていないなんて、もう奇跡のレベルを超えている。 この所業はきっと英雄譚として、後世まで語り伝えられるものになるに違いない。 その中にわずかでも名を連ねられるかもしれないと思うと、私の心はうち震えた。 これから船は、行きと同じくらいの時間をかけて、ビストフへと帰還する。 航海には危険がつきものだ。帰路にもなにが起きるかわからない。 しかし今は、この高揚感に身を委ねていたい。 そう思った。 エメラルド色を取り戻した海のかなたに小さく、白いイルカが跳ねるのが見えた。 [プレイログ] 【最終イベント】 【クラーケン レベル4 生命点8 攻撃2回 ダメージ2点 防御1点】 【クラーケンの脚 8体 レベル3】 ※本体にダメージが1点入ると脚1本破壊。脚が0になれば勝利。 【0ラウンド】 ヒースの攻撃 サイコロの出目4 脚8→7 ニーナの砲撃 サイコロの出目2 外れ ポールの砲撃 サイコロの出目6 本体の生命点8→7 脚7→6 ポールの追加砲撃 サイコロの出目3+技量点1 本体の生命点7→6 脚6→5 【1ラウンド】 ヒースの攻撃 サイコロの出目5 脚5→4 ヴァルグの攻撃 サイコロの出目1 外れ ハルトの攻撃 サイコロの出目3 脚4→3 クラーケンの攻撃2回 ・船の回避 サイコロの出目4 回避 ・船の回避 サイコロの出目6 回避 クラーケンの脚の攻撃3回 ・ヴァルグの回避 サイコロの出目5 回避 ・ハルトの回避 サイコロの出目4 回避 ・ヒースの回避 サイコロの出目5 回避 【2ラウンド】 ポールの砲撃 サイコロの出目6 本体の生命点6→5 脚3→2 ポールの追加砲撃 サイコロの出目2 外れ ニーナの砲撃 サイコロの出目5 本体の生命点5→4 脚2→1 ヴァルグの攻撃 サイコロの出目5 脚1→0 勝利 【宝物判定】 サイコロの出目1+修正2 2d6枚の金貨 サイコロの出目2と3 金貨5枚入手 【ヴァルグ レベル20→21 技量点2 生命点9 筋力点4 従者点9】剣闘士(元) 【装備】 片手剣(高品質) 初撃のみ攻撃ロールにプラス1 聖剣(片手武器) 【アンデッド】【悪魔】に攻撃ロールプラス1 魔法の鎖鎧(生命点+2 防御ロール+1) 【食料】2 【金貨】25→30 【持ち物】 ランタン 魔法の大盾(従者の飛び道具防御+1) ハチミツの塊1(生命点+1) 魔法のつるはし 2回分 精巧なアクセサリー(金貨120枚) アクセサリー(金貨30枚) 宝石(金貨30枚) 【格闘術】【十字剣】【不屈の一撃】【神眼】 【未使用経験点】2→3 【従者】 ポール(砲兵) ニーナ(砲兵) 【備考】呪いのため攻撃ロールにマイナス1 【ハルト レベル10→11 技量点1 生命点7 筋力点4 従者点8】獣使い 【装備】 槌(打撃/高品質) 初撃のみ攻撃ロールにプラス1 革鎧(生命+2 器用ロール+1) 【食料】2 【金貨】45 【持ち物】 ランタン 蟹座の彫刻(金貨300枚、持ち物欄2消費) ボロボロのペンダント(金貨1枚) →売却 浮力の胴着(水中ペナルティを無視。泳ぎの判定+2) 狼の刻印の腕輪(金貨12枚) エメラルド(金貨30枚) 【獣血】【凶暴化】【騎馬防御】 【未使用経験点】1→2 【従者】 ヒース(火吹き獣/技1)炎耐性 ・0ラウンド攻撃からすみやかに1ラウンド攻撃が可能 ・特定のクリーチャーに2点ダメージ ●船 クラーケンぶっ殺し号 技量点1 生命点9 攻撃回数2 【砲撃】ダメージ2点 船の強化 【船体補強】生命点+2 【煙霧放出器】巨大クリーチャーからの防御ロール+1 3ラウンドまで ■登場人物 ヴァルグ 元剣闘士の傭兵。悪名は知れ渡っているが、危険な依頼は後を絶たない。 ハルト 自称ヴァルグの弟子の少年。左腕に「獣の腕」を持つ。 ヒース ハルトが連れている火吹き獣。火を吹く。騎乗生物のため乗ることも可能。 ポール クラーケンぶっ殺し号の砲撃手。砲撃手になりたての青年船員。 ニーナ クラーケンぶっ殺し号の砲撃手。ポールとは知り合いの女性船員。 ヴィルヘルム・マクシミリアン ビストフを治める領主。ネグラレーナを統治するマクシミリアン家と名を連ねる者。 ハーツデイル クラーケンぶっ殺し号の船長にしてビストフの貴族。 エラ・シエロ 遠見師。クラーケンの居場所を探るのに必要な人材。 白奴 コビット乗組員たちをまとめるチーフ。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 著者:杉本=ヨハネ 監修:紫隠ねこ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 ローグライクハーフd66シナリオ「エメラルド海の探索」 https://ftbooks.booth.pm/items/4941872 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●エンディング01 領主との対話【ハルト】 貿易都市ビストフの宮殿の謁見の間。 オレは領主マキシミリアンと一対一で対面していた。 「ハルトといったか。褒美が私とこうして話すこととは、いささか変わった申し出をするものだな」 ハーツデイル船長、師匠、遠見師エラ、そしてオレの四人で、クラーケン退治の報告にきた時のこと。 報告が終わり、領主から歓喜の言葉と褒賞の話が出た。 そこで問われた時にオレは迷った末にこう答えたのだ。 「領主様と二人きりで話がしたい」と。 領主はその発言をたいそう面白がり、他の三名を退出させ、オレだけを残した。 そして今。 領主はオレが何を言うのかを、興味深く見守っている。 オレは言葉を絞り出し、どうしても聞きたかった質問をぶつけた。 「なんで師匠は、『味方殺し』だの『全滅野郎』だの呼ばれているんだ?」 それを聞いた領主は、目を細め、ゆっくりと頷いた。 「おまえはヴァルグの弟子なのか。てっきりあいつの武器持ちかと思っていたが。なるほど、そうか……」 領主はなにやら勝手に納得している。そんなことより、早く教えてくれよ。 「本人に直接聞いてはみなかったのか?」 「聞いたさ。……あ。聞きました。けど、『事実だ』としか答えてくれなくて」 「なるほど。あいつらしいな……」 領主は、少し思案していた。 「ハルトよ。私からそれを聞き出すということは、ヴァルグ本人が望んでいないことかもしれない。それでもおまえはその答えを求めるのか?」 オレは一瞬言葉に詰まった。 でも、オレは知らなきゃならない。 そんな気がした。だからはっきりこう答えた。 「はい。お願いします」 領主は、オレの決意の固さを感じ取ったのだろう。ゆっくりと話し出した。 「不名誉な異名のことなら噂で聞いている。あいつと組んだ者たちは、必ずと言っていいほど命を落とす。使命は果たすが、一人だけ生き残る。……それでついた二つ名だと。私としては剣闘士時代の二つ名『千の傷を持つ男』の方があいつらしいと思うのだがな」 「じゃあ、本当に味方を殺したなんてことは」 「あるわけがないだろう。あいつに限って」 オレは心底ほっとした。けれど領主の話には、まだ続きがあった。 「それから、あいつは誰とも組まなくなった。一人で、誰をも寄せつけない強さを持つ。それがあの男ヴァルグだ。だからお前が弟子と聞いて、私も驚いたのだぞ」 「そんな、大げさな」 「大げさなものか。一緒に組んだ者が死ぬ。一人だけ生き残る。初見の者も、大切な者も。そんな経験を繰り返したらどうだ。組んだら、そいつが死ぬかもしれない。それに耐えられるか? だからあいつは孤独を選んだ」 オレは胸が詰まって、何も言うことができなくなってしまった。 領主は続けた。 「今回のクラーケン退治は一人ではこなせない依頼だった。そして一人の犠牲者も出さなかったと聞く。この出来事が、あいつが変わるきっかけになってくれれば、と思うが」 領主はそこで一旦言葉を切り。 「いや、おまえがそばにいるということは、もう変わり始めているのかもしれないな」 そう言った。 オレは目を伏せた。師匠のこと、ほんとうになにもわかってなかったんだな、って。 黙ってしまったオレを気遣ってか、領主はさらに言葉を続けた。 「だからな。今のヴァルグにとって、おまえは必要な存在かもしれん。……いや、今の言葉は忘れてくれ」 謁見は終わった。オレは無言のまま、謁見の間をあとにした。 「知りたかったことは聞けたか?」 「……うん。まあ」 外で待っていた師匠の問いに、ぶっきらぼうに答えると、そのまま通過して厩舎へ向かう。 どうしても、師匠の顔を直視できなかった。 不用意に、師匠の過去を覗いてしまった。 少しの後ろめたさはある。けど、後悔はしていない。 師匠を信じたい気持ちを裏づけるには、必要なことだった。 明日になれば、オレはまた師匠とともに旅立つんだろう。 「ギャウ?」 オレはヒースを、無言で抱きしめた。 今は、今だけは、誰とも顔を合わせたくない気分だった。 ●エンディング02 別れの日【ポール】 ビストフの一号桟橋には「クラーケンぶっ殺し号」が停泊している。 契約は今日でおしまいだ。いよいよこの船ともお別れとなる。 私は桟橋から船を見上げて、感傷的な気持ちになっていた。 船長以下、かつての乗組員の多くが、ここに集まっていた。 「いよいよこの船ともお別れなのね」 ニーナが感慨深げにつぶやく。 そこにヴァルグと、ヒースを連れたハルトが現れた。 彼らは、旅装束に身を包んでいる。船にお別れをして、そのまま旅立つつもりらしい。 「なんでェ。船名、変更しないのかよ。『エメラルドのなんちゃら』によ」 ヴァルグが茶化してくる。 「しない」 船長は端的に答える。 「下品な船名なンだろ」 「栄誉ある名称だ。現実となったのだからな」 そう言って船長はひとしきり笑った。ヴァルグも笑っていた。 「なあヴァルグ。この航海で私は、ばく大な財宝を得た。けれどな、一番の財宝は、……この船だ」 船長は、誇らしげな表情で大きくうなずいた。私たち乗組員を見渡す。 その瞳は、厳粛だった船長がこれまで見せたことがないほどに柔らかだった。 「船だけじゃない。ここにいる船員たちひとりひとりが、な」 「そうかよ」 ヴァルグは短く、それだけを返した。 「行き先は決まっているのか?」 「ああ。次はロング・ナリクだ。国じきじきのご指名だ。きっとまたデカいヤマだろうぜ」 すると船長のそばにいた白奴が割って入った。 「ロング・ナリクか。もしかしたらおじさんの知り合いがいるかもしれん。ソールって貴族の若者なんだが」 「貴族の知り合いがいたのか」 「なに、海賊退治で同じ船の飯を食った仲だ。もし会ったらおじさんは元気だって伝えといてくれや」 めんどくせぇな、と答えるヴァルグの横で、ハルトがうなずいていた。 私も、ヴァルグにもハルトにもずいぶん世話になった。 何度も命を助けられた。お別れとお礼を言っとこうかな。 そう思っていたんだけれど。 「あ、ポールさん。海に落ちたとき、助けてくれてありがと」 先にハルトからお礼を言われてしまった。 「ハルトくん旅立っちゃうのね」 ニーナが残念そうにつぶやく。 「はい。ニーナさんにもお世話になりました。買い物のときとか」 「うんうん。お姉さん寂しくなるなー」 私も、ヴァルグとハルトにそれぞれお礼を言った。 ほんの少し、ハルトの表情が固いのが気になった。なにか、あったのかな? 「じゃあな。あばよ」 ヴァルグは、最後までヴァルグらしい態度で、もう歩き出しながら後ろ手に手をひらひらと振った。 ハルトとヒースも後に続く。 私とニーナは、その二人と一匹が去っていくのを見送った。 「行っちゃったね」 彼らの姿が小さくなってきた頃、ニーナがそう言ってきた。 「うん」 私はそう返しつつ、あることを切り出した。 「なあニーナ。もしよかったらだけど、……次の船も一緒に乗らないか?」 ニーナはほんの少しだけ思案し、返事をくれた。 「いいね。あなたとならいい仕事ができそう」 「ありがとう、じゃあ、よろしく」 私は小躍りしたくなる喜びを抑えながら、ニーナと握手した。 今はこれが精いっぱいの誘いだ。けど、いつかきっと。 ヴァルグたちの姿は、もう見えなくなっていた。 【エメラルド海の探索】ローグライクハーフリプレイ 完 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月15日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.138 FT新聞 No.4983

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『これはゲームブックなのですか!?』vol.138  かなでひびき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■  世の中、「ホラー」「推理」と、ジャンルわけしてあるものが多いよね。  しかし、それでは収まりきらない「作品」も、綺羅星のようにあるのも事実。  今回紹介するのは、まさにそれ! 『実験小説 ぬ』(著:浅暮三文/光文社文庫)よ。  で、ページめくってみると、 「彼のことを教えよう。運転免許を持っている人なら、おそらく自動車教習所で彼のことを知っているはずだから」  と、奇妙な紹介文で始まる『帽子の男』  で、実際に、本の上を使って、自動車標識のオンパレードが出てくる。  うまいのが、この標識を使って物語を語るんだけど、それが、まるで江戸の判じ絵みたいに、実に思いもよらない視点から、物語は進む。  同様に、奇妙な→を駆使したロードムービー? 『遠い』  主に線だけで証言される『線によるハムレット』など。  絵との融合な作品だけではなく、例えば、本来ならあとがきに当たるところまで小説だったりする。その名も『これはあとがきではない』  こんなふうに、文字だけの話でも仰天させるところがいっぱい!  ゲームブックフリークな、本誌の愛読者なら『カヴス・カヴス』なんてどう?  夜、リラックスして部屋にいる「あなた」がふと手にとったものは、「まるで身に覚えのない」本。  どうも、一昔前のレトロテイストな冒険小説らしいけど……。  手にとったあなたを襲う恐怖とは!?  これも、途中でページの上の段、下の段に分かれて、それぞれ違う物語、さらにはエンディングを楽しめる一本!  さらには『お薬師様』なんていかが?  山の川瀬で釣りに洒落こもうとした男に待ち受ける運命とは?  これまた、分岐があって、一回目、二回目とやり込むことが分岐条件。  だんだんと広がっていく物語は、さながらゲームブック!  というわけで、この世のどんなジャンルにも分け難い短編集の登場!  自ら「実験小説」とジャンルわけしているだけあって、一度口にしたら、やめられなくなる奇想の展覧会になっているわ!  あの手この手で真摯に読者と遊ぼうとするその姿は、まさに「大人向けの絵本!」  あなたの本棚にも、この奇妙な宝石を!  見逃せば後悔することウケアイ! ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 『実験小説 ぬ』  著:浅暮三文  出版社:光文社 2006/7/20  文庫 495円(税別) ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。

2026年9月14日月曜日

 FT新聞 No.4982

おはようございます、松井山手のパン屋さん(イートイン)から杉本です。 松井山手にあるクライミングジムに行く前に、朝ごはんがてら仕事をしております。 最近はずっと忙しいですが、そのぶん楽しくやれています☆ 今日の話題は「ガルアーダの塔」の書籍版のお話です! ◆【新職業】の実装。 私がいつもやりたいことのひとつに、「ゲーム性と物語性の融合」があります。 唐突ですが、デジタルゲームに対してアナログゲームは、いつも後手を取る傾向にあります。 遊びやすさはいつの世も重要な要素で、ビジュアル面と遊びやすさでアナログゲームはデジタルゲームに押されがちと、私は思っています。 だから、「体験」で勝負したいんです。 今回の【新職業】では、主人公が手に入れる装備品や、遭遇した〈できごと〉によって、なれる【職業】の選択肢が変化します。 そういうのが面白いと感じるのはもちろんです。それに加えて、主人公が「この道を選んだから、こうなれた」という出会いや選択があることが、私が作品を通じて届けたいことにマッチしているので、このシステムを導入しました。 それは、冒険が読者のものであり、私は「ローグライクハーフ」を、ドラマと冒険のランダマイザーとして提供したいと考えていることにつながっています。 あなただけの冒険を、体験してほしい。 がんばっています。 ◆【仲間】システムの掘り下げ。 私はゲームブック「かえる沼を抜けて」で、さまざまな仲間を「能力値や判定時へのボーナス」というカタチで表現しました。 それはひとつのあり方だったと思っています。 しかしながら、今回の「ガルアーダの塔」において、仲間は「幼少期からの時間をともに過ごしてきた、特別な存在」です。 文字どおり、名前のある存在なわけです。 そんな彼らを表現するには彼らの個性を示す描写と、強みを活かした活躍の場面を描ききる必要があります。 彼らの中には独自の目的を持つ者もいるし、主人公とは距離のある者もいます。 しかし、それでも彼らは、悪魔ガルアーダを討ち取るという共通の目的のために結束するのです。 私が真に描きたかった「ガルアーダの塔」の姿が、そこにあります☆ ◆豊富なイラスト。 今回、イラストレーターであるカワラベ氏による描き下ろしイラストをふんだんにご用意いたしました! ゲームブック版「ガルアーダの塔」からのイラストも、いくつか再録されております……楽しみにしていただけましたらさいわいです! それではまた! ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。