2020年5月25日月曜日

ソロアドベンチャーのつくり方 第3回 No.2679

こんにちは、自宅の寝所から杉本です。
最近、ネコの攻撃が増してきました。
作品づくり以外の時間はスポーツ(ボルダリングやボクシング)やゲームをしていることが多いんですが、うちのネコと遊ぶ時間が減っていて……私が寝静まったところを見計らって、報復措置を仕掛けてくるようになりました。
カーテンレールの上部まで登ってからのフライングボディプレスなど……不意打ちとしてはおおぎょうすぎて、心臓に悪いです。

今日は「ソロアドベンチャーのつくり方」の第3回、いったんの最終回です。
今日の記事は「図面化」です。


◆図面化とは。
ソロアドベンチャーを執筆するさい、その構造をパラグラフマップにする行為を指します。
これをやらずに一気に書き上げる人もいますが、ソロアドベンチャー執筆の経験が浅い人ほど、図面化は必須だと私は考えます。

では、図面化とは何なのか。
別の言葉で言えば、フローチャートを作ることです。
ソロアドベンチャーを文章として縦1列にする前に、図面という2次元で書き上げるわけです。


◆図面化が有用な理由。その1。
図面化が有用な第1の理由は、「パラグラフの総量を読み間違えない」ことです。
図面化にともなって、その作品の項目数がいくつになるか、事前に把握することができます。

これは、作品作りに慣れていない初期のころに身に着けるべき、特に大切なことです。
パラグラフの数と文章量は別ですが、パラグラフ数が多い作品はどうしても、文章の総量が増えます。
そうなるとページ数が増えて、予算が上がってしまいます。
印刷代、ページごとの編集費などに影響しますからね。

ソロアドベンチャーをつくるさい、やる気が勝りすぎて、推奨されるページ数を大幅に上まわってしまうかもしれません。
気をつけてください……相手が指定してきた範囲の文字数を上まわることは、書き手が考えているよりもはるかに罪深い行為です!
ページ数が1ページ増えただけでも、数千部〜数万部を扱う商業誌では、かかる費用にとても大きな差が生まれます。
だから、編集さんは、「予定(台割)よりもページ数が大きい作品」に対して、非常に厳しいのが実情です。
何を隠そう、私自身が「やる気が勝りすぎて文字数が多くなりすぎる人」でした。
周囲には「文字数オーバー王(キング)」と呼ばれていて、関わる編集さんに何度も厳しい指導をいただいてきました。

コンテストで最優秀になるほど素晴らしい作品でも、文字数がオーバーしているという理由で掲載してもらえない可能性は十分にあります。

図面を引けば、自分の作品のパラグラフ数が、本文執筆に先立って判明します。
判明すると同時に、どこかを削り、どこかを足すという行為がその場で行えます。


◆図面化が有用な理由。その2。
図面化が有用な第2の理由は、「未然に防げるバグがたくさんある」ことです。
そのなかで、もっとも役立つのは「ルートの合流」がひと目で把握できることです。
ソロアドベンチャー制作でよくあるミスは、Aのルートで知った情報(たとえば、ケラーツヴェルグ城という名称)があったとして、Bのルートと合流した後で「ケラーツヴェルグ城」を書く、といった状況で起こります。
ルートとして合流した後では、「ケラーツヴェルグ城」を既知のものとして書いても、未知のものとして書いても間違い、ミスになります。
既知のものとして書くと、Bルートから来た人には「?」となります。
未知のものとして書くと、Aルートから来た人に「?」となります。
だから、どちらとして書くこともできないのです。

図面化を行うことで、このようなミスに気づく可能性が上昇します。


◆図面化が有用な理由、その3。
図面化が有用な第3の理由は、「他者との共有をしやすい」ことです。
実際の話なのですが、私のところには「ゲームブックを書いたのですが、感想をいただけないでしょうか」といったメールが、1年に数件ほど舞い込んできます。
本当はそれらひとつひとつにお答え(お応え)したいところなのですが、丸々ひとつの作品を読む時間というのは、作家かつ編集かつ社長である私には、なかなかとることができないのです。

そういうときに、チャートが書かれた1枚の図面を渡されて「これでいけてる?」と訊かれたなら、どうでしょうか?
パッと見るだけで構造が分かりますから、アドバイスもしやすくなります。
これが文章化されてしまうと、その時点で、一直線の動きのなかでしか作品の情報を処理できなくなり、とても時間がかかるようになります。
図面化されていると、2次元的なため、短い時間で把握することができるわけです。

じっさい、FT書房でお願いしているバグチェッカーのドロシー! さんは、チェックのさいにフローチャートを必ず作成するそうです。
もっとも、氏はふつうにソロアドベンチャーをクリアするさいにも作成されるというウワサもありますが……。
すごいことです。

話を戻しますが、第3者の意見を取り入れながら作品をつくりたいなら、作家は図面化を行うべきでしょう。


◆図面化が有用な理由、その4。
図面化が有用な第4の理由は、「制作の再開が容易になる」ことです。
作品を作るとき、思うように時間が取れないことがあります。
100パラグラフの作品のうち50パラグラフまで書いたけれども、仕事が忙しくなって1週間、作品に手をつけることができなかった。
そんな事態も考えられるでしょう。
そんな事態に陥ったとき、再開するにはエネルギーが必要になります。
前に書いていた記憶を呼び戻す必要があるからです。
そんなとき、図面があれば、記憶を呼び戻すのがラクになります。
図面で全体図を把握してから本文を読めば、消費するエネルギーが少なくて済むわけです。
コンテストに応募される方の多くが、他に仕事を持っていると推察します。
仕事を終えて気持ちを切り替えて、作品づくりに戻る……その瞬間のエネルギーを少なくすることで、作品づくりをよりスムーズにするわけです。


◆図面化が有用な理由、その5。
図面化が有用な第5の理由は、「時間が経っても修正がラク」なことです。
ここまでに挙げてきた理由だけだと、こんなご意見をもらうことになるでしょう。
「でも、短い作品だったら、頭に入れて一気に仕上げることができるから、いいんじゃない?」
それはそのとおりです。
しかし、そうではないんです。

短い作品であっても、図面化をしない場合、自分の作品にバグが見つかったときに、困ることがあります。
バグが見つかって、修正をするべき事態に陥ったときです。
バグというのは、初版刊行時や発売前に見つかることばかりではありません。
自分が執筆を終えて、何年も経ってから読者の指摘を受けて、修正を入れることもあります。
そのときに見つかったバグが、単なる漢字間違いのような誤植レベルの範囲だったなら、問題はありません。
しかし、そのバグが、作品の構造に関わるものだった場合はどうでしょうか?

読者の指摘が正しいかどうかを確認するのは、作家としての良心があるかぎり、するべきことだと私は思います。
しかし、作者本人といえど、自分が作ったものの内容すべてを暗記しているわけではありません。
書いてから数年が経っているとなれば、なおさらでしょう。
そんなとき、作品の図面があれば、その確認作業が格段にラクになります。


◆反論もあるでしょう。
「そうはいっても、図面化なんて、面倒くさいんじゃない?」
そんな反論が、あるかと思います。
たしかに、図面化は少し面倒な面があります。
パラグラフごとに四角で囲んだ範囲に書き込みを行っていきますから。
しかし、そのいっぽうで、図面化したからこそラクになることもあります。
体感では、ラクになるほうがより大きいと感じています。

では、何がラクになるかというと、それは「パラグラフ番号の割り振り」です。
ソロアドベンチャーで面倒なのは、番号をバラバラに割り振って、作品を作る必要がある点です。
制作中に起こる、割り振り番号の変更も容易です。
図面化を行っている場合、図面の四角に割り振られている番号をドラッグしてずらすだけでいいため、この作業に時間を取られることがありません。
割り振りを変えると同時に行う必要がある、飛びもとの番号変更も、図面を見ながら容易に行うことができます。
すでに本文化した後だと、番号をずらした後、その本文そのものを動かす必要があります。
飛びもとにある番号を変更するのも、飛びもとがいくつ存在するのかを注意深く確かめながら行う必要があって、作業に神経を使います。


◆ツールのご紹介。
図面化を行うさい、手書きでやるよりもパソコン上でやるほうが、効率的ではあります。
ただ、手を使ってノートに書いたほうが、いいアイディアが出るという人もいるので、ベストスタイルは人それぞれでしょう。
パソコンで図面を引くという方のために、私がふだん使用しているソフトをふたつご紹介いたします。
Windowsをお使いの場合、私がベストだと思うのはExcelです。
ええ、はい、あのExcelです、一覧表をつくるときなどに使うやつです。
汎用性が高いソフトですが、そのぶん特化された使いやすさはありません。

Macの場合、omnigraffle(オムニグラフ)というチャート作成がオススメです。
これはフローチャート図をつくるためのソフトで、購入して1時間以内に使いこなすことができるようになる、分かりやすいものです。
このソフトが使いやすすぎて、私はWindowsからMacに乗り換えました。
高いソフトですが、役立ちます。
無料お試し期間がありますので、利用してみるのがいいでしょう。


◆図面化とは、ラフや下描き。
私にとって図面化とは、イラストを描くさいに行う「ラフスケッチ」や「下描き」にあたるものです。
下描きをせずにイラストが描ける絵描きさんもいますが、そういった方は「脳内で下描きをしている」のだそうです。

じっさいのところ、ソロアドベンチャー作家でも、図面化を行わずに制作する人もいます。
FT書房のメンバーでは、山田賢治さんが該当します……山田さんはゲームブック作家ですが、図面化という点では同じですので。
私は、図面化をせずに作品をつくるのは、ソロアドベンチャーやゲームブックを何回か書いたことがあって、脳内で図面を引く力がある人に限られると思います。


以上、3回にわたって、「ソロアドベンチャーのつくり方」をご紹介いたしました。
少しでもお役に立てれば、さいわいです。
コンテストであなたが素晴らしい成績を残せることを願っております☆

今回はこれにて!



それでは、また。


↓omnigraffleを入手できるURL
https://www.omnigroup.com/omnigraffle/


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2020年5月24日日曜日

あなたの葉山海月度チェック No.2678

おはようございます!
編集人、水波流です。
今回の記事では、先週『ライク・ア・ペーパーバック』を書いてくださった、作者の葉山海月さんをご紹介いたします。

今回は、ご本人が一風変わったゲームブック方式での自己紹介を書いて下さいました。
果たしてあなたはゴール(葉山さん)に辿り着けるのか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
「はじめまして!」

(葉山海月)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

はじめまして! 
先週、5月13日(日)のFT新聞で『ライク・ア・ペーパーバック』というミニゲームブックを書いた、葉山海月です。
デビュー雑誌は18禁雑誌。以後ずるずると、タウン誌からおもちゃ話まで、雑多なことを書いておま。
しかし、もっとディープなことを知ってもらうため、「あなたの葉山海月度チェック」を用意してみました!
あなたが作者にどれくらい似ているかチェック。
YesかNoかで分岐を選んでね!
もちろん、無限ループの罠も牙をむいて待ち構えている! 気を付けてね(はぁと)

1 年収は一千万以上
  Yes→5
  No→2

2 スマホ中毒以前から活字中毒
  Yes→3
  No→5
 
3 コメント返しにイイネやスタンプは邪道! 必ずコメントで返す
  Yes→4
  No→7

4 半径30センチ以内に本がぐるり囲んでないと不安で不安で。
  Yes→5
  No→10

5 30歳をこのまま超えたら、魔法使いになりそうだ。
  Yes→6
  No→3

6 コンパで必殺芸をやって、アゴに全治二週間の怪我を負ったことがある
  Yes→7
  No→4

7 現在、連載を抱えている
『ストーリーズガジェット』https://storiesgadget.jp/
  Yes→8
  No→6

8 実は、別名義で動画なんか作っている
 https://www.youtube.com/channel/UCdJ56eWL34Iv8HJEO783lOQ?view_as=subscriber
  Yes→9
  No→2

9 特撮番組はヒーローより怪人目当てで見ている。
  Yes→10
  No→2

10 将来の夢はカブキノイドだ。
  Yes→12
  No→11

11 残念ながら、あなたの選択肢は間違っていたようです。あなたの冒険はここで終わります。

12 おめでとう! あなたは本物の葉山海月だ。これからも第二の葉山海月として、人生を歩んでいって欲しい!


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
 いかがだったでしょうか?
 あたくしの恥ずかしいとこ、たくさん詰め込んだフローチャート?
 でも、これが俺だ!
 これが俺なんだぁあぁぁあぁぁぁぁっ!(慟哭)


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2020年5月23日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第375号 No.2677

From:緒方直人
おはようございます。
とうとう牛乳でお腹がゆるくなるようになりました。トシですねぇ。

さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。


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■5/17(日)〜5/22(金)の記事一覧
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2020年5月17日(日)葉山海月 FT新聞第2671号

Ψライク・ア・ペーパーバック 日曜ゲームブック
・ゲームブック界にまたも期待の新星が現れました。文芸に秀でたその知識と、ウィットとペーソスに溢れた巧みな文章力で独自のワールドを切り開く、葉山海月氏のご登場です。ある日の古本屋を舞台に世にも奇妙な本をめぐって紡がれていくショートストーリー。簡単な分岐小説形式になってますのでメモ要らずで遊べますよ。ぜひ読んでみてくださいね。


2020年5月18日(月)杉本=ヨハネ FT新聞第2672号

ソロアドベンチャーのつくり方 第2回
・FT書房リーダー・杉本=ヨハネ氏による定例記事をお届けしました。現在、雑誌「ウォーロック・マガジン」では次代の作家を探すべくソロアドベンチャー作品のコンテストが開催中。前任の編集長であり作家代表でもあった杉本氏本人が、コンテストに通るためには欠かせない秘密の制作ポイントを余すことなく披露してまいります。皆さん受賞コメントの際には「FT新聞読んでました!」の一言をぜひお忘れなく(笑


2020年5月19日(火)紫隠ねこ FT新聞第2673号

AFF『ソーサリー・キャンペーン』第13回・番外編『戦闘に関するハウスルール』
・紫隠ねこ氏による『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』のシナリオ集『ソーサリー・キャンペーン』に関連するシナリオプロットをご紹介していきます。今回は戦闘ルールをアレンジして楽しむための様々なレシピをご紹介。各種武器の特殊技能やダメージ結果への追加補正、はたまた運だめしに関する追加ルール等々、自由な組み合わせで次のあなたのディレクションを多彩に演出してみてはいかがでしょうか。


2020年5月20日(水)ぜろ FT新聞第2674号

第1回【ネイキッドウォリアー】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第179回をお届けしました。今回はFT書房作品からは少し離れまして、Kindleにて個人刊行されているちゃな氏の作品を取り上げてみました。「あなたは全裸のまま衆人環視の前に放り出された。」衝撃のオープニングで始まる名も無き女戦士が挑む鉄人レースの行方や如何に。ポロリどころか、全裸だヨ!


2020年5月21日(木)海ガメラ FT新聞第2675号

私のTRPG随想・第1回
・再度のご登場となりますファンタジーファンの海ガメラ氏から、好きなTRPGについて考えられたことをエッセイとしてまとめていただきました。日本のTRPGシーンを「自壊」という名の怪物が襲っている、TRPG界においてGMはプレイヤーかデザイナーか、などなど。読んでなるほどと思われた方も多いのではないでしょうか。次の更新が待ち遠しいですね。


2020年5月22日(金)ジャラル FT新聞第2676号

神サー!@みんなの本棚124
・本棚に並んでいるもので「これ、知ってる?」と言いたくなる作品をあなたに紹介する記事。第124回はジャラル氏からのオススメ本でした。ひょんな事から主人公の前に現れた女神・バステト。彼女の失われた神力を復活させるカギ、それは魂を熱く揺さぶるアニメ・特撮の名作鑑賞であった! 読んでるこちらも激しく揺さぶられそうな期待のオタク漫画をご紹介しました。


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☆現在募集中の日曜読者参加企画
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みんなのファンタジー(随時募集中) ⇒
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★☆お題☆★
・戦士
・魔法使い
・武器(刀剣類)
・モンスター(コボルド)
・ラスボス
・鉄板のシチュエーション
・読者参加ゲームの思い出
・美味しそうだった食事(食べ物)

カザン帝国辺境開拓記(ep.12受付終了 次回更新をお楽しみに) ⇒
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【作戦会議室・峡谷の山猫亭】 ⇒
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ジャラル・アフサラールさん)
自分はどちらかと言うとGBもシナリオも受け狙い(BLではない(笑))で書くので予選選考落ちやな〜と思っております。今度ソロアドベンチャーコンテストに出す予定の作品も大有名作品のパロディ入っているので。

(お返事:杉本=ヨハネ)
需要とマッチするタイミングが来る(来ている)ことも可能性としてはありますので、トライしてみるのはアリだと思います☆
ファイトです!


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2020年5月22日金曜日

神サー!@みんなの本棚124 No.2676

「みんなの本棚」のコンセプトは「読者参加+シンプルな本紹介」です。
FT新聞読者が蔵書のなかから、FT新聞をお読みいただいているあなたの関心をひきそうな作品をピックアップし、簡単にご紹介してくださるというものです。
第124回は、ジャラルさんからのご紹介です。
よろしくおねがいします!

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◆まえがき
 こんにちは。オジサンファンタジーファンのジャラルといいます。
 今回、蔵書をご紹介させていただく機会をもらえました。
 今回は、今は懐かしい時代になった1990年代を舞台にオタクと女神が出会う漫画となります。どうぞご一読を。

◆『神サー!~僕と女神の芸大生活~』原作:上江洲誠, 漫画:黒山メッキ

 コロナのせいで公開予定だった映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』完結編が延期になったり、その代わりにYoutubeで新劇場版の1〜3部が無償公開されたりしていますが、そんな『エヴァンゲリオン』がTV放映されて間もなくの時代の漫画です。

 1996年の4月。バブルが崩壊し、インターネット前夜の時代、「大阪芸事学園」(*1)に入学、憧れのアニメサークルMAGIに入部するため、部室を訪れたオタク青年の浅倉水貴は、すでにそのサークルがなくなっていることをその場で知る。失意のまま帰宅し備蓄していたカップ麺を食べようとお湯を注いだところ、出てきたのは麺ではなく、古代エジプトの豊穣の女神・バステトだった——! 

 バステトは数千年前、乱心した太陽神ラーの人類絶滅命令を実行しようとする復讐と破壊の女神セクメトから人類を守ったものの、神の力である「神力」がすっかりなくなって、はるか未来・遠い異国の日本で蘇ってしまったのである。サークルを復活させたい水貴。神力を復活させたいバステトと共闘し、それぞれの願いを成就させるため動き出す……!

 まあ最初は北欧神話の女神様が工業大学の学生の所にやって来る漫画(*2)の二番煎じと思って読んでおったのですが、エヴァを見て使徒とセカンドインパクトに敵愾心燃やしたりする(笑)バステト様の天然ボケと水貴が何回も登場人物に投げかけられる「お前は何がしたいんだ?」というアニメファンの心臓えぐるような(苦笑)の問いと水貴の葛藤、そして集められるアイドルオタク・特撮+アクションオタク・挫折した漫画家という連中が集って……と今後の展開が楽しみな漫画です。

 バステト様は神力を失っていますが、精神的に高揚させる作品、ここではアニメ・特撮の名作を見ると神力が一時復活するという設定ですので、水貴が次に何の作品を見せるかも楽しみです。コミックNewtype等で無償公開されている回もありますのでまずはご一読を。


*1 モデルはおそらく「大阪芸術大学」、日本有数の規模を誇る芸術大学で、芸術、文学、映画、漫画、アニメ、ゲーム、音楽、芸能などの分野に多くのオタク(笑)じゃない人材を輩出している。島本和彦の「アオイホノオ」の舞台になっている大学で庵野秀明も卒業生。

*2 OVAやテレビアニメ、劇場版として度々アニメ化されて、永遠に17歳の女性声優がヒロインをしていたアレです(笑)。


◆書誌情報
『神サー!~僕と女神の芸大生活~ 1』
 上江洲誠(原作) 黒山メッキ (作画)
 KADOKAWA(角川コミックス・エース) − 2019/11/9
 ¥682 Kindle価格:¥341


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◆次回予告(編集部より)
 コンセプトにあるとおり、次はこれを読んでいるあなたの出番です☆
 今、本棚に並んでいる蔵書から、「紹介したいなぁ」と思うものをとりだしてみてください。
 あとは感想欄から「この本を紹介したい」とご連絡いただければOKです。
 おってこちらからコンタクトをとらせていただきます。

 ちなみに本棚に並んでいるならジャンルは問いません。
 マンガ、雑誌、画集、写真集、小説でも学術書でも、なんでもござれです☆

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2020年5月21日木曜日

私のTRPG随想・第1回 No.2675

ごあいさつ
おはようございます。ファンタジーファンの海ガメラといいます。
何度か、FT新聞の「みんなの本棚」で記事を書かせていただいたことがあります。
今回は私の好きなTRPGについて、自分なりにいろいろ考えたことをまとめてみました。全部で5回に分けてお送りいたします。今日はその第1回です。
朝のひととき、あなたに数分の時間をついやす余裕があるならおつきあいください。
なお、本文のあちこちにある注釈は、気になる場合だけ末尾のリンク先でお読みいただければよいかと思います。


はじめに

ある怪物が日本のTRPGシーンにあらわれている、━━「自壊」という名の怪物が(1)。
それなりの年月、趣味のひとつとしてTRPGを楽しんできた(2)。どちらかといえばクラシックな海外の翻訳ものが中心で、『ルーンクエスト』(1987年、ホビージャパン)や『ウォーハンマー』(1991年、社会思想社)が好きだ。
最近、懐かしいタイトルを再び目にする機会も増えてきた。だが正直なところ、私はTRPGが全盛期の勢いを失ったままだと感じている。この状況について経済的視点を手がかりとして分析し、私なりのTRPG未来予想図を描いてみようというのがこのエッセイだ(3)。


第1話:ユーザーとデザイナーの正体、そしてTRPG市場の「自壊」

TRPGで遊ぶにあたって、あなたは自分自身をおそらく「ユーザー」ととらえているのではなかろうか。
一般に、ユーザーとはモノやサービスの利用者をさす。ゲームショップや書店、ECサイトなどでTRPG製品を購入し、仲間をつのって遊ぶのが典型的なパターンと考えれば、自分をユーザーととらえてもおかしくはなさそうだ。そしてあなたにTRPGという遊びを提供してくれるのは誰かと問われれば、おそらく答えは「デザイナー」となるだろう(4)。
しかし本当にそうだろうか。
TRPGがかかえる課題のひとつは、このユーザーとデザイナーの関係にあると私は感じている。


TRPGで遊ぶには、おおまかに次のような手順をふむ。
1.遊びたいTRPG製品を購入する。
2.ゲームマスター(以下GM)がシナリオを準備する。
3.メンバーが集まって遊ぶ。
こうしてみるとTRPGは3つめの手順、すなわちセッションが実際に遊ぶ場面であり、そこまではすべて準備といえるだろう。

例えばカードでポーカーをするにせよ、雪山でスキーをするにせよ、実際に遊ぶ場面までは準備だ。
カード一組を印刷し、チップを成型し、ポーカーのルールを作るのはユーザーの役割ではない。雪原を圧雪し、リフトを用意し、スキー道具やスキーウェアを作るのもユーザーの役割ではない。ユーザーの役割とは、準備されたものを利用して遊ぶことにある。ポーカーなら、カードとチップを使ってルールに従って遊ぶこと。スキーなら、スキー道具を使ってゲレンデを滑ること。これがユーザーの役割だ。
同様に「TRPGをする」というとき、ユーザーはセッションの場面でようやく登場することになる。

では、TRPGのユーザーとは誰をさすことになるだろう。
私の答えはプレイヤー(以下PL)である。
なぜならTRPG製品を作る行為はもちろん、それを購入してシナリオを準備する行為までは、すべてセッションの準備にあたるからだ。

では、シナリオを準備するGMとは何者か。
私の答えはデザイナー、つまりTRPGという遊びの提供者である。
GMをユーザーに分類したくなるかも知れないが、それはGMがTRPG製品を購入することが多いためではなかろうか。ポーカーにしてもスキーにしても、道具を購入すればユーザーとなる割合が高いため、GMをユーザーに分類してしまうのはわからなくもない。しかしモノやサービスの購入者と、その利用者が同じとは限らないのだ(5)。
役割に注目すれば、私にとってGMはユーザーではなくデザイナーとなる(6)。

そうするとTRPGとは、デザイナーの役割を分業することで成り立っている遊びといえる。
製作部分はメーカー側の人、つまり開発デザイナーが担い、セッション部分はGM、つまり運用デザイナーが担うという分業体制だ。この体制はTRPGが世に出回りはじめたときから埋めこまれており、TRPGのDNAといってもよい要素になる。そしてTRPGとは、ユーザーたるPLが登場するセッションではじめて完成する遊びといえる。別のいいかたをすると、TRPG製品は「未完成の状態で市場に出回っているゲーム」である(7)。


現代日本において、つまりお金が循環することで維持されている消費社会において、これは何を意味しうるのだろうか。
私の答えは冒頭にあげたTRPGの「自壊」である。
平たくいえば、TRPGはそれ自身が持つ性質によって市場から消えてしまう運命にあるのかも知れない、ということだ(8)。

その理由は、TRPGがユーザーにとって基本的に追加費用なしで遊び続けられるゲームだからだ(9)。
PLがTRPGを遊ぶたびに、開発デザイナーへお金が支払われるのであれば、「自壊」することは当面避けられると思う。しかし現状はどうだろう。運用デザイナーたるGMが、PLにTRPGというサービスを提供しており、GMとPLの間に金銭取引はほとんど発生していないと思われる(10)。有料セッションもあるにはあるが、全国で積み重ねられた膨大なセッション数に対してあくまで一部にとどまるだろう。そして、セッションのたびにGMから開発デザイナーへお金が支払われることもまずない。
あるプレイグループで、セッションが1回行われようが100回行われようが、PLから開発デザイナーに対する支払い額はあまり変わらないのだ。少なくとも100倍にはならない(11)。

私が思うに、こうなっている原因は、TRPG製品が「未完成の状態で市場に出回っているゲーム」だからだ。
「設計図を売るから、あとは自由に仕上げて遊んでほしい」といっているようなものである(12)。TRPGの運用実態を考えれば「太っ腹だね」という評価になってしまう(13)。そして開発デザイナーは、追加の収入をどう得るか知恵をしぼることになる。私が知っている手法は次の通りだ。
・サプリメント(追加ルール、ワールド設定集、シナリオ、サポートグッズ)の販売。
・プレイガイド(リプレイ、解説本、雑誌)の販売。
・イベントなどでの有料セッションの開催(14)。

しかし、ひとつのTRPG製品だけではこれらの手法にも限界がある。遊ぶメンバーが慣れないうちはサプリメントやプレイガイドを購入するかも知れないが、そのうちあまり必要としなくなるだろう(15)。そうなると、開発デザイナーが追加の収入を得るには新規ファンを獲得するしかない。
その結果、ベテラン層へのサポートが手薄となり、ベテラン層は開発デザイナーへの支払いを減らしてしまう(16)。一方新規ファンは、複数の選択肢があるとどうしても分散してしまう(17)。そしてジリ貧になった開発デザイナーは、とうとう別のTRPG製品を作ることになる(18)。
これがTRPG市場にどのような影響を与えるだろうか。容易に想像できることだが、ひとつのTRPG製品がより「短命」になっていく。すると開発デザイナーは開発コストを回収できなくなる。そうなれば、自然と新製品は生まれなくなり、TRPG市場の活力が徐々に失われてゆく(19)。
私はこれを、いわゆる「TRPG冬の時代」が訪れた原因のひとつだと感じている(20)。


一旦、ここまでの内容を整理しよう。
TRPG製品は「未完成の状態で市場に出回っているゲーム」である。そのため、時間の経過とともにお金が回らなくなってしまい、市場が活力を失ってしまったのではないか。
TRPGは、誕生の際に刻印されたデザイナーの分業という性質ゆえに、市場価値を失うという「自壊」に追いこまれているようにみえる。これを、TRPGのかかえる課題のひとつとして指摘しておきたい。
次回から、この課題を2つの消費行動の分析を通じて掘りさげていく予定である。


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2020年5月20日水曜日

第1回【ネイキッドウォリアー】ゲームブックリプレイ No.2674

第1回【ネイキッドウォリアー】ゲームブックリプレイ

※ここから先はミニゲームブック【ネイキッドウォリアー】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。

****

「あなたは全裸のまま衆人環視の前に放り出された。」
衝撃のオープニングで始まる名も無き女戦士の挑戦。
あなたはこの過酷な戦いを勝ち抜けるか?
100パラグラフに5つのエンディングと無数の罠が詰め込まれた、筆記用具要らずのミニゲームブック。

****


●作品紹介

ぜろです。
今回はこちらの作品【ネイキッドウォリアー】をプレイさせていただきます。

ちゃなさんの作品で、電子書籍デビュー作になります。

ちゃなさんは、電子書籍でコンスタントにゲームブックの発表を続けている方です。
先日はFT新聞金曜日の「わたしの本棚」にも投稿されていましたね。
本作【ネイキッドウォリアー】から始まる同一世界観の作品を多数発行しております。
本作には登場しませんが、フラグワードシステムという、キャラクターの状態を1つの単語で管理するシステムは秀逸で、プレイングの軽さを追求していて、電子書籍との相性は抜群です。

あらすじにもあるとおり、衝撃の全裸スタート! しかも主人公は女性! そして表紙の主人公は全裸! 文章の最後にすべて「全裸で」とつけたくなるような作品です。

電子書籍でゲームブックを探したときに、これほど注意を引きつける存在がありますでしょうか。つかみはOK。完璧です。あとは内容ですね。

イラストに描かれる女性は全裸ですが、ふんわりとした優しいタッチで描かれています。
主観的にはエロさを強調したものではないところに好感が持てる魅力的な女性です。
少年漫画風のテクニックで、髪やら剣やらで、いろんなところも巧みに隠してます。

この女性が私の分身、主人公でしょう。
どんな事情か、これから全裸スタートすることになるという。

100パラグラフの小作品となっております。
しかも、特筆すべきルールもなし。その時の装備だけ覚えておけば良いという簡単なもの。パラグラフジャンプ等の仕掛けもないと明言されています。

つまり、お手軽さが売りになっているということですね。
ここのところガッツリと重めの作品ばかりプレイしていた私にとって、ちょうど良い、軽めなノリで遊べる作品かと思います。

さらにこの作品、100パラグラフでありながら、4つのグッドエンドに、1つの真エンドがあるとのこと。これだけで5パラグラフの消費です。100パラグラフにどれだけ詰め込んでるんだよ!

ページをめくると、内容に入る前に地図があります。

周囲を壁に囲まれた城塞都市です。「コンギット」というのが都市名でしょう。
三方に門があり、南は港。
中心に公城があり、北部は貴族区なのか「伯爵の邸宅」とあります。魔術師ギルドもあります。
あとはコロシアム、市場通りに商業ホール、スラムに庭園。そしてピンポイントな宿屋。

いわゆるファンタジー系異世界と理解しておけば良さそう。
大雑把な位置関係だけ頭に入れてておきます。

主人公は、「名も無き女戦士」とのことなので、名前をつけましょう。
私はゲームブックに挑戦する時には、いつも名前だけつけます。特に詳細な背景や設定を考えるわけでもありませんし、リプレイ上に名前が登場することも滅多にありません。
単に、自分の気分の問題だったりします。
だからいつも、「アルス→イルス→ウルス」といった感じの適当具合なのです。

今回は女性主人公なので、アから始めて……アイナで!
イイナ、ウイナと続けるつもりではないですが。

リプレイの文中は、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。ある時にはキャラクターの心情になりながら、ある時にはメタ視点から眺めつつ進めていきます。

それでは、作品に入りましょう!



●アタック01-1 トライアル!

私はアイナ。まさにたった今、全裸で衆人監視の前に放り出されたところだ。
ここはコンギットの闘技場。地図で「コロシアム」と表示されていた場所だろう。

私は東の入場口からフィールドに入った。全裸で。
私の周りには私と同様に、全裸の男が十数人。女性は私だけだ。

これだけだと、集団で××なAV撮影みたいに誤解されそうだが、男性陣は全裸な私に見向きもしない。それぞれ独自の方法で神経を研ぎ澄まし、集中している。
私に魅力がないわけではない、はず。それどころではないのだ。

私を含め、ここにいる人たちは皆、通称「トライアル」と呼ばれる競技の参加者たちなのだ。

この競技はかなり特殊だ。
知らない人はあえて置いてきぼりにするが、ファングの街の迷宮探検競技にひけを取らないほど特殊だ。

あっちはほぼ帰還できない迷宮に人を放り込む瞬間を楽しむ祭りなのに対して、こちらは街中を使った全裸競技なのだから、恥ずかしい姿を見られまくることになる。
どっちも悪趣味だが、こっちの方が羞恥心による競技者への心理的負担は大きい。

コンギットの領主ミザール公は、ファングの領主サカムビット公なみの変態なのかもしれない。人を全裸にしといて「ミザール」とか、名前からしてふざけている。きっと弟に「イワザール」「キカザール」がいるに違いない。

さてこの「トライアル」についてだ。
何故全裸なのか。それは、この競技に参加するためにはすべての財産を公に寄進しなければならないからだ。それこそ衣類の1枚に至るまで。

トライアルは、バトルではない。レースだ。しかも舞台は街中。
この闘技場をスタートし、街外れのチェックポイントを経由し、指定されたゴールに向かう。最初にゴールした者が優勝となる。
施しを受けることは禁止。市民に対して犯罪行為を行うことも禁止。
参加者同士の行動には一切の制限なし。殺してもかまわない。

栄光をつかむのは1人だけ。敗ければ転落。
そんな過酷すぎる、人生を賭けた競技なのだ。

もちろん、まともな神経でこんな競技に参加する者はいない。
自分から参加しようなんて、よほど食い詰めて先がない者くらいのものだろう。でなければ、本気でぶっ飛んだギャンブラーと言ったところだ。
どんな人物だったにせよ、優勝したらしたで、いろんな意味が顔が知れてしまうので、この街で目立った行動は取りづらくなる。
結果として、トライアルが開催されるようになってから、街の治安が良くなるという皮肉な現象も起きている。

私は食い詰めてこの競技に参加するわけではない。
剣の腕を磨き、ダンジョンを攻略し、賞金首を上げたこともある。
そうして稼いだ財産を投げ打ち、自らの意思で参加したのだ。

何のために?
富と名声のため? ミザール公に拝謁するため? 近衛隊へ入るため?
ここでは明言されていない。疑問形が並んでいるだけだ。
これは……プレイヤーが自由に設定していいってことなのだろうか。
それとも、キャラクターの思惑が現時点ではプレイヤーにも秘匿されているということなのだろうか。

少し迷うが、現段階ではそれほど深く考えることもないだろう。必要があれば考えれば良い。いずれにせよ、トライアルに優勝するしか、私の未来はないのだから。

とはいえ、私はそこまで悲観していない。

現実世界のマラソンのような万単位の人数だと優勝などおぼつかないだろうが、トライアル出場者は、十数人程度。
しかも精鋭でもなんでもなく、ほとんどは腕に覚えのない食い詰め者ばかり。
これなら私にも、十分に勝利の可能性があると見て良いだろう。


●アタック01-2 スタート先制!

高らかにラッパが鳴る。
公のお抱えの魔導師、サー・デレクが開始を宣言しようとしている。

なんと、こんなところにデレクが!
こんな悪趣味な競技の主催者側とか、何やってるんだ。

実はこのデレク、ちゃなさんの後発作品の主人公だったりする。
「デレクの選んだ魔法」というタイトルの作品だ。
私は未プレイだが、そちらの作品では、表紙イラストの若者がデレクっぽいので、今より過去の物語なのだろう。

スタート直前に、私の隣に並ぶ選手の顔が目に入った。
黒髪の巨漢。それは、知っている顔だった。ガンツォだ!

このガンツォ。評判の悪い冒険者だ。トラブルメーカーで誰も組みたがらない。それで窮したか? それが大会参加の理由か?
腕力。タフネス。狡猾。能力的には秀でている。優勝候補と言っていいだろう。

だが、私がガンツォを知るのはそれだけではない。
かつて私の妹が、ガンツォとパーティを組んで出かけ、ガンツォひとりが帰還したことがあった。

真相は不明だが、ガンツォの性格からして「見捨てる」か「助かるために差し出す」かはしたのではないか、というのが私の推測だ。
根拠はないが、可能性は高い。だからコイツが妹の仇だと決めた。私が決めた。

トライアルに参加するという噂は聞いていたが、本当に出場していたとはな。

ん? もしかして私がトライアルに参加した目的って、どさくさに紛れて妹の仇を討つことなのかも?

そうこうするうちに、開始のゴングが打ち鳴らされた。
競技スタートだ!

ここでいきなり最初の選択肢だ。

・全力で西の出口へと走る
・ガンツォに不意打ちを仕掛ける

そんなの決まってる。私は不意を突いて、ガンツォの顔面に拳を突きだした。全裸で。

次回、とりあえず服を着ろ。話はそれからだ。

【アイナ:全裸】

■登場人物
アイナ 最初の挑戦者。全裸。
ミザール公 コンラッドの街の領主。見て見ぬふり。
デレク 別作品で主役を張っている魔導師。
ガンツォ アイナに妹の仇認定されたゴロツキ。


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2020年5月19日火曜日

AFF『ソーサリー・キャンペーン』第13回・番外編『戦闘に関するハウスール』 No.2673

■AFF2用『ソーサリー・キャンペーン』追加シナリオプロット 第13回■

おはようございます。紫隠ねこです。
これまで『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』用のシナリオプロット『マンパンの双蛇』と、
ゲームブック版の最終巻とは異なる展開のシナリオプロット『虚構の王』を紹介いたしました。
今回は番外編として、戦闘に関するハウスルールの参考例を紹介いたします。


■AFF2用シナリオプロット番外編『戦闘に関するハウスール』■ 

◆戦闘に関するハウスルール
以下に記すのは『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』用の戦闘に関するハウスルールです。また申し訳程度ですが、戦闘以外の場面のルールも含んでいます。あくまでハウスルールの参考例であるため、実際のゲームに適用した場合、思わぬ不具合が生じるかも知れません。これらのルールを導入するべきかどうかは、ディレクターが自由に判断してください。また、ルールの内容に変更を加えたり、必要のないものを省略しても構いません。


◆新しい戦闘系技能
このハウスルールでは、新たな戦闘系技能として【鎖鞭】と【大鎌】が追加されます。【鎖鞭】の特殊技能は『モーニングスター』を攻撃力のペナルティなしに扱う事ができるようになります。また【大鎌】の特殊技能は『デスサイズ』を攻撃力のペナルティなしに扱う事ができるようになります。これらの特殊技能は、ヒーローを作成する時でも習得が可能になっています。


◆武器に対応する特殊技能について
戦闘において、ヒーローたちが攻撃力を求める際には【技術点】の能力値が基準となりますが、さらに習得した戦闘系の技能に対応している主武器を用いる事で、その技能のランクと同じ値だけ、攻撃力にボーナスを得る事ができます。それぞれの武器が、どの特殊技能に対応しているのか、それを以下に記しておきます。

 ・【剣】の特殊技能に対応している武器は、『ダガー』『ショートソード』『ソード(剣)』『グレートソード』『クレイモア』『シルバーレイン』です。『グレートソード』と『クレイモア』を扱うには両手が必要になります。

 ・【斧】の特殊技能に対応している武器は、『ハンドアックス』『バトルアックス』です。『バトルアックス』を扱うには両手が必要になります。

 ・【棍棒】の特殊技能に対応している武器は、『クラブ』『メイス』『ウォーハンマー』です。『ウォーハンマー』を扱うには両手が必要になります。

 ・【竿状武器】の特殊技能に対応している武器は、『ジャベリン』『スピア』『ポールアーム』です。『スピア』と『ポールアーム』を扱うには両手が必要になります。

 ・【杖】の特殊技能に対応している武器は、『クォータースタッフ』です。『クォータースタッフ』を扱うには両手が必要になります。

 ・【鎖鞭】の特殊技能に対応している武器は、『モーニングスター』です。『モーニングスター』を扱うには両手が必要になります。

 ・【大鎌】の特殊技能に対応している武器は、『デスサイズ』です。『デスサイズ』を扱うには両手が必要になります。

 ・【騎乗戦闘】の特殊技能に対応している武器は、『ランス』です。乗用生物に騎乗さえしていれば『ランス』を扱うには、片手があれば十分です。

 ・【弓】の特殊技能に対応している武器は、『ショートボウ』『ロングボウ』『クロスボウ』です。これらの射撃武器を扱うには両手が必要になります。ただし、すでに矢が装填されている『クロスボウ』だけは、片手で扱う事が可能です(※片手での保持は安定して構える事ができないため、そのヒーローの攻撃力は1点減ってしまいます)

 ・【投擲】の特殊技能に対応している武器は、『スローイング・ダガー』『ジャベリン』『スリング』『チャクラム』です。『スリング』を扱うには両手が必要になります。


◆両手用の武器について
【弓】や【投擲】などの射撃武器を除き、ヒーローたちが、戦闘で両手用の武器を扱う場合、武器に対応した特殊技能のランクが2以上でなければ、それを効果的に扱う事ができません。もし、扱い慣れない両手用の武器を使用している場合、そのヒーローの攻撃力は1点減ってしまいます。また武器の扱いに慣れているかどうかに関わらず、両手用の武器を装備しているヒーローは、シールドによる防御効果を得る事はできません(※ただし、所持している装備としてシールドを持ち運ぶ事は可能です)

両手用の武器は、持ち運ぶのに難があるため、このような武器をヒーローが所持する場合は、装備品のスロットを2つ必要とします。それとは別に『グレートソード』あるいは『デスサイズ』を主武器にしている場合、装備の重量が体の動きに影響を与えるため、防具を効果的に装備するのに必要となる点数が1点増えてしまいます。


◆装備品の性能について
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』のルールブックの記述とは異なり、一部の装備品の性能が変更されます。ダメージ・ロール(あるいは防具ロール)の変更箇所を以下に記しておきます。

 ・武器『ウォーハンマー』でダメージ・ロールを行った際、出目が5〜6の場合は4点、出目が7以上の場合は5点のダメージとして処理してください。

 ・武器『スピア』でダメージ・ロールを行った際、出目が2の場合は、3点のダメージとして処理してください。

 ・武器『ジャベリン』を接近戦で用いる時にダメージ・ロールを行った際、出目が2〜3の場合は、2点のダメージとして処理してください。

 ・武器『モーニングスター』でダメージ・ロールを行った際、出目が3の場合は、3点のダメージとして処理してください。

 ・防具『レザー・キィラス』で防具ロールを行った際、出目が4以上の場合は、ダメージを1点軽減できるものとして処理してください。


◆武器の種別
それぞれの武器には【斬撃】【刺突】【打撃】の種別が設定されています。武器の種別によっては、特定の防具を持つ相手に対して、効果的な一撃を加える事ができます。防具に関しては、チェインメイルは『チェインメイル・キィラス』と『チェインメイル・ホバーク』が、プレートは『タクティカル・プレート』と『ブレストプレート』と『プレートアーマー』が該当します。

【斬撃】
剣や斧などの刃を持った武器は【斬撃】として扱われます。防具が『モンスターのアーマー(三種類とも)』に設定されている相手に対して、この武器の攻撃が命中した場合、ダメージ・ロールの出目が5以上であれば、最終的なダメージとは別に、相手の体力点を1点だけ減らす事ができます。ただし生身ではない頑丈なモンスター(体が強固な外殻に覆われていたり、あるいは石材や金属で作られている)や、攻撃の回避によって最終的なダメージを0点以下に軽減した相手に対しては、このボーナスを得る事はできません。

【刺突】
槍や投擲用のダガー、あるいは弓から放たれた矢などの突き刺す武器は【刺突】として扱われます。防具が『チェインメイル』あるいは『モンスターのミディアム・アーマー』に設定されている相手に対して、この武器の攻撃が命中した場合、最終的なダメージとは別に、相手の体力点を1点だけ減らす事ができます(※『クロスボウの太矢』が命中した場合は2点)
ただし生身ではない頑丈なモンスター(体が強固な外殻に覆われていたり、あるいは石材で作られている)や、攻撃の回避によって最終的なダメージを0点以下に軽減した相手に対しては、このボーナスを得る事はできません。
また『ショートソード』や『ソード(剣)』も【刺突】による攻撃は可能ですが、その場合は、そのラウンドにおける攻撃力を1点減らさなければなりません。

【打撃】
メイスやウォーハンマーなどの殴りつける事に特化した武器、あるいはスリングから放たれた石は【打撃】として扱われます。防具が『プレート』に設定されている相手、あるいは頑丈なモンスター(強固な外殻に覆われていたり、体が石材や金属から作られている)に対して、この武器の攻撃が命中した場合、最終的なダメージとは別に、相手の体力点を1点だけ減らす事ができます。
ただし、攻撃の回避によって最終的なダメージを0点以下に軽減した相手に対しては、このボーナスを得る事はできません。


◆特殊な武器について
以下に記すのは「戦闘に関するハウスルール」を適用する場合の特殊な武器です。また一部の武器は『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』の記述とは性能が異なります。なお、ハウスルールで追加された武器に関しては、都市で購入した時の価格を記してあります(※価格の「ソーサリー」は、『ソーサリー・キャンペーン』用の価格です)

【レイピア】(都市の価格:30GP ソーサリー:金貨4枚)
刺突に向いた細身の刀身を持つ片手用の剣です。当然ながら、この武器は【剣】として扱われます。レイピアを主武器にした場合、モンスターに対して【刺突】を行っても、攻撃力にペナルティを受ける事はありません。ただし『ダガー』『ショートソード』『レイピア』『シルバーレイン』以外の武器を持った相手と戦った際、お互いの攻撃力が引き分けだった場合は、レイピアで攻撃していたヒーローが手傷を負わされた事になってしまいます。
またレイピアの中には『幸運のレイピア』と呼ばれる魔法の品が存在します。この特別なレイピアを主武器にしている状態で、対戦相手との攻撃力が引き分けだった場合、ヒーローが望むのなら「運だめし」をしてください。これに失敗した場合は、通常のレイピアと同様にヒーロー側が手傷を負わされてしまいます。しかし、成功した場合は、攻撃を受け流すと同時に敵に見事なカウンターアタックが決まるので、ダメージ・ロールで7以上が出た時のダメージを対戦相手に与える事ができます。

【クレイモア】(都市の価格:70GP ソーサリー:金貨7枚)
グレートソードよりも刀身の厚みが薄く、刃の切断力を重視した両手用の大剣です。この武器は【剣】として扱われ、使用するには両手が必要になります。グレートソードとは異なり、この剣を主武器にしても、防具を効果的に装備するための点数にペナルティを受ける事はありません。クレイモアのダメージ・ロールは『グレートソード』の欄を使用しますが、出目が4の場合は、3点のダメージとして処理してください。武器の種別は【斬撃】として扱われます。
またクレイモアの刀身は薄刃であるため、頑丈なモンスター(強固な外殻に覆われていたり、体が石材や金属から作られている)に命中した場合、それを主武器にしていたヒーローは「運だめし」を行わなければなりません。これに失敗した場合、クレイモアの刀身が折れてしまうため、ダメージ・ロールにマイナス1点のペナルティを負う事になってしまいます。このペナルティは累積していき、鍛冶屋に持っていったとしても修理する事はできません(※防具が『チェインメイル』あるいは『プレート』に設定されている相手に対してクレイモアで攻撃した場合、武器の破損をチェックするための「運だめし」を行う必要はありません)

【シルバーレイン】(都市の価格:10GP ソーサリー:金貨2枚)
刀身が波打った銀製のナイフです。この武器は【剣】として扱われます。アランシアと旧世界に生息する怪物をまとめた学術書『奈落の底から』の内容が、冒険者たちに知られるようになると、彼らが思っている以上に、普通の武器が通用しない怪物がタイタンに多く存在する事が明らかとなりました。そのため、死を超越した存在であるアンデッドとの戦いに備えて銀製のフォークを所持する冒険者が増えるようになり、これに目をつけた銀細工職人が、戦闘用に加工された『シルバーレイン』を製造するようになりました。今では、都市の銀細工店に立ち寄れば、この武器を簡単に入手する事ができます。波打った刀身は、魔術的な儀式に用いるナイフを意識しているのですが、これが強力なデーモンに対して効果的な武器になるかどうかは、実際に試してみない限りは分かりません。
シルバーレインのダメージ・ロールは『ダガー』と同様で、分類が『アンデット』に設定されているモンスターに対して、この武器が命中した場合、最終的なダメージとは別に、相手の体力点を1点だけ減らす事ができます。さらに50GP(ソーサリー:金貨5枚)を支払う余裕があれば、善に属するタイタンの神々を奉る神殿で、この武器に「善」を示すルーン文字を刻んでもらう事もできます。ルーンが刻まれたシルバーレインは、分類が『デーモン』に設定されているモンスターに対しても、アンデットに用いた時と同様の特殊効果を得る事ができるようになり、また恐るべき悪霊『ガンジー』を退けるお守りとして機能するようになります。
なおシルバーレインは、鋼鉄製の武器ほど強度が高くないので、特殊効果を発揮できるモンスター以外に対して用いた場合、ダメージ・ロールにマイナス1のペナルティを受けてしまいます。また刃を持った武器ですが【斬撃】の特性は持っていません。

【ポールアーム】
約2〜3メートルほどの長さがある柄を備えた戦槍です。この武器は【竿状武器】として扱われ、使用するには両手が必要になります。武器の種別は【斬撃】と【刺突】の両方の特性を持っていますが、特殊効果によるダメージは重複する事はなく1点だけです。開けた場所での戦場において、兵士が騎兵を迎え討つには効果的な武器ですが、屋内や洞窟など狭い場所では、その真価を発揮する事はできません。しかし、見栄を張って、この戦槍を背中に担いで冒険をする戦士たちも少なからずいます。たとえ別の武器を用いる状況になったとしても、彼らにとってステータスシンボルとなるからです。
ポールアームを主武器にした場合、乗用生物に騎乗した戦士と戦う際に、攻撃力に1点のボーナスを得る事ができます。ただしポールアームは、敵に間合いを詰められると対処しづらい欠点も持ち合わせています。そのため、対戦相手と攻撃力を比較した結果が引き分けなら、ポールアームを使用していたヒーローは、敵から手傷を負わされる事になってしまいます。

【クォータースタッフ】
槍から穂先を無くしたような感じの長い硬木の杖です。この武器は【杖】として扱われ、使用するには両手が必要になります。魔術師や妖術師が好む武器で、剣や戦斧といった戦士のシンボルとなる武器と比べると、見劣りするかも知れませんが、熟練者によるクォータースタッフの棍術を目にすれば、それが油断のならない手強さを秘めている事が分かるはずです。クォータースタッフを主武器にしており、さらに【杖】の特殊技能がランク2以上のヒーローが【防御専念】のオプションを使った場合、この武器は『ラージ・シールド』相当の防具として扱う事ができます。
またクォータースタッフで矢を叩き落す事も可能ですが、さらに棍術の技を磨く必要があります。【杖】の特殊技能がランク3なら、サイコロの出目が6なら矢を叩き落せます。【杖】の特殊技能がランク4以上なら、サイコロの出目が5以上なら矢を叩き落せます。ただし、攻撃魔法を叩き落す事はできません。クォータースタッフは【耐久点】を持っていませんが、一度に5点以上のダメージを受け止めた場合は、武器を叩き落されてしまうので、それを拾い直すまでは素手で戦わなくなりません(※射撃攻撃に対する防御については、後述の『シールドの扱いについて』を参照してください)
なおクォータースタッフは、殴りつけて攻撃する武器ですが【打撃】の特性は持っていません。

【モーニングスター】
長い鎖の片側の端に、スパイク付きの鉄球が取り付けられた特殊な鞭です。この武器は【鎖鞭】として扱われ、使用するには両手が必要になります。扱いは非常に困難で、通常は攻撃力にマイナス2の修正が加わってしまうのですが、訓練を積んで【鎖鞭】の特殊技能を習得したヒーローなら、攻撃力のペナルティを受ける事なく使いこなせるようになります。武器の種別は【打撃】として扱われます。この武器による攻撃が対戦相手に命中した場合、与えたダメージに関わらず、対戦相手に【ノックバック】の判定を行わせてください。
また攻撃の成否に関わらず、モーニングスターで攻撃したヒーローは、技術点に【鎖鞭】のランクを合計した値を基準として、技術点チェックを行わなければなりません。成功すれば、次のラウンドも問題なく戦う事ができます。失敗した場合は、鉄球の回収に手間取ってしまうため、次のラウンドで攻撃を行う時に攻撃力を2点減らさなければなりません。
なおモーニングスターを主武器にした場合、戦闘において【防御専念】のオプションは使用できなくなってしまいますが、その代わりに【旋風】のオプションを使用する事が可能になります。

【八幡刀】(都市での価格:100GP ソーサリー:金貨10枚)
八幡独自の製法によって鍛え上げられた、反りのある刀身と刃の波模様が特徴的な片刃の剣です。八幡では、刀身の長さによって剣の名称が異なるのですが、八幡以外の土地では全種が「八幡刀」と呼ばれます。ここで扱われるのは、標準的な長剣と変わらない長さの刀身を持つ八幡刀になります。この武器は【剣】として扱われ、片手と両手のどちらでも使用する事ができます。
八幡刀は切断力と強度に優れた武器ですが、その性能に関しては、通常の長剣と変わりません。ただし、名門の武家の生まれである者が携行している上質な刀であれば、戦闘において【刺突】を行っても攻撃力が減る事はなく、さらに八幡刀を両手で扱った時にダメージ・ロールにプラス1の修正が加わるようになります。
冒険を始めるにあたって、八幡出身で【剣】の特殊技能を習得しているヒーローは、初期装備として必ず『八幡刀』を所持しています。これは『ソード(剣)』と性能は変わりません。また、社会階級の高い武家の生まれであれば、これに加えて『脇差し(ショート・ソードに相当)』を予備の武器として所持しています。
なお八幡刀は、八幡以外の土地では入手が非常に困難であり、さらに八幡出身の者でなければ八幡刀固有の特徴を一目で判別する事が難しいため、武具を取り扱う商人たちの間で、本物とは似ても似つかない偽物が出回っています。それを商品として扱っている商人自身が、刀が偽物である事に気付いていないケースも珍しくはありません。
偽の八幡刀を造るためのベースとして好まれるのは、アランシア南部の戦士たちが扱っている曲剣で、鍔の部分だけ八幡刀を意識したデザインに変えています。柄と柄巻の間に八幡で普及している装飾品(カンザシなど)が挟み込んであったり、刀身に見栄えのする装飾が施されているなどバリエーションも豊富で、本物だと思い込んで購入に踏み切ってしまう者は数知れずです。くれぐれも大金と引き換えに偽物をつかまないようにしましょう。

【チャクラム】(都市の価格:15GP ソーサリー:金貨3枚)
研ぎ澄まされた薄い刃を円状にした風変わりな投擲用の武器で、接近戦ではなく【投擲】するための武器として扱われます。チャクラムは、まるで意志を持っているかのように狙いを定めたターゲットへと正確に飛んでいくため、それなりに命中精度が高く、熟練者でない者でも扱いやすくなっています。通常の手順で攻撃力を求めた後、それとは別にサイコロを1個振り、その出目の半分(端数は切り上げ)だけ攻撃力にボーナスが加わります。またチャクラムの射程距離とダメージ・ロールは『スローイング・ダガー』と同様ですが、武器の種別は【斬撃】として扱われます。
射撃武器としては使い勝手が良いのですが、その強度には問題があり、防具が『チェインメイル』あるいは『プレート』に設定されている相手、もしくは頑丈なモンスター(強固な外殻に覆われていたり、体が石材や金属から作られている)に命中した場合、チャクラムを投擲したヒーローは「運だめし」を行わなければなりません。これに失敗した場合、チャクラムは壊れてしまうので、装備の一覧から消さなければなりません。判定に成功した場合は、チャクラムは無傷のまま地面に落下するだけで済み、ヒーローが拾い直す事さえできれば、再び使用する事ができます。

【デスサイズ】(都市の価格:90GP ソーサリー:金貨9枚)
長柄で扱う大型の鎌です。農夫が作物を刈り取る時に用いる大鎌とは異なり、戦闘で用いる事を前提として作られているため、重量にさえ目をつぶれば、武器自体のバランスは取れています。この武器は【大鎌】として扱われ、使用するには両手が必要になります。扱いは非常に困難で、通常は攻撃力にマイナス3の修正が加わってしまうのですが、然るべき訓練を積んで【大鎌】の特殊技能を習得した者に限り、攻撃力のペナルティを受ける事なく使いこなす事ができます。ポールアームと同様に、武器の大きさが欠点であり、屋内や洞窟など狭い場所では、その真価を発揮する事はできません。デスサイズのダメージ・ロールは『グレートソード』と同様で、武器の種別は【斬撃】として扱われます。この武器は【旋風】のオプションを使用する事も可能です。
また攻撃の成否に関わらず、デスサイズで攻撃したヒーローは、技術点に【大鎌】のランクを合計した値を基準として、技術点チェックを行わなければなりません。成功すれば、次のラウンドも問題なく戦う事ができます。失敗した場合は、体のバランスを崩してしまうため、次のラウンドに限り、ノックバック(※後述の『ノックバック』を参照)が発生した時と同様のペナルティを受ける事になってしまいます。
この武器は、タイタンの神話の時代に終わりを告げた『死』を連想させるため、主武器として用いる戦士は滅多にいませんが、暗黒の魔術を極めて『死』の力に迫ろうとする者は、この相手の生命を断ち切る目的で鍛え上げられた凶刃を好んで使います。デスサイズの使い手として代表的なのは、アランシアで「闇の王者」の異名で知られる悪の魔術師ザンバー・ボーンです。


◆特殊な防具について
以下に記すのは「戦闘に関するハウスルール」を適用する場合の特殊な防具です。なお、ハウスルールで追加された防具に関しては、都市で購入した時の価格を記してあります(※価格の「ソーサリー」は、『ソーサリー・キャンペーン』用の価格です)

【タクティカル・プレート】(都市の価格:50GP ソーサリー:金貨5枚)
胸部だけを覆う軽量のブレストプレートと脚甲をセットにした、フットワークを生かして戦う軽戦士向けの鎧です。背面にバックプレートを装着する必要がないので、従来のブレストプレートよりも扱いやすくなっていますが、それと引き換えに、本来の防御効果が半減しています。これは『プレート』に属する防具ですが、肉体を使った行動判定をする場合は「チェインアーマーを着ている」ものとして処理してください。タクティカル・プレートを効果的に扱うには、ヒーローの技術点に【防具】の特殊技能のランクを加えた合計が8以上でなければなりません。鎧を効果的に扱えない場合、そのヒーローは足りない点数の分だけ、肉体を使った行動判定と戦闘での攻撃力にペナルティを負う事になってしまいます。タクティカル・プレートの防具ロールの結果は、出目が5なら1点、出目が6なら2点、出目が7以上なら3点のダメージを軽減する事ができます。
またタクティカル・プレートは【回避】の特殊技能で防具ロールを行った際に、受けたダメージの軽減を行える唯一の防具です。ただし【回避】でダメージの軽減をする場合は、シールドと同様に個別で防具ロールを行う(※後述の『シールドの扱い方』を参照)事になり、さらに防具ロールの結果も通常とは異なります。回避時の防具ロールの結果は、出目が6なら1点、出目が7以上なら2点のダメージを軽減する事ができます。
タクティカル・プレートは、フットワークを中心にした戦闘技術が各大陸に伝わるようになってから生み出された防具です。この新たな戦いの技は、旧世界の戦闘国家ブライスが発祥の地であり、理論上は「攻撃と回避のタイミングを見極めれば、いかなる相手に対しても苦戦を強いられる事なく勝利できる」とされていますが、戦場における防具の重要性を熟知している歴戦の戦士たちは、この極端な考え方に対して懐疑的です。
タクティカル・プレート用の胸当てには、女性用の水着に似た感じの物もあります。実際には、皮製の胸部サポーターに金属板を取り付けたもので、近くで見ると水着とは別物である事がすぐに分かります。この鎧の着用者が、若い娘の姿をした海の精霊ナイアードを連想させるため「ナイアード・プレート」と呼ばれていますが、鎧の性能自体はタクティカル・プレートと変わりません。

【地龍のクローク】(都市の価格:120GP ソーサリー:金貨12枚)
地龍の皮を素材にした白いクロークです。ドラゴンの眷属である怪物は、強靭な皮膚を持っているため、それを素材にした装備品は補助的な防具として扱う事ができます。しかし、意外にかさばるので、完全鎧である『プレートアーマー』の上に重ねて身につける事はできません。
このクロークを身につけている限り、ヒーローが装備した鎧の防具ロールに記されている「0」の値のうち、一番右のものを「1」に変更する事ができます。さらに防具ロールの出目が6あるいは7以上の時の結果を、1点ずつ増やす事ができます。何も鎧を装備していない状態で、地龍のクロークを身につけている場合は、防具ロールの出目が1〜5なら0点、出目が6なら1点、出目が7以上なら2点のダメージを軽減できるものとして処理してください。
また地龍のクロークは、シールドやそれに相当する防具、あるいは【回避】の特殊技能によるダメージの軽減に対しては、クロークの防御効果を適用する事はできません。このクロークは、体に身につける防具ですが、所持するには装備品のスロットを2つ必要とします。さらに、これを身につけている間は、防具を効果的に装備するのに必要となる点数が1点増えてしまいます。


◆新たな戦闘オプション
ヒーローたちが扱う装備によっては、特殊な戦闘オプションを使用する事ができます。以下に、それらの追加の戦闘オプションを記しておきます。

【突進(Lunge)】
主武器が『スピア』あるいは『クォータースタッフ』である時に選択できる戦闘オプションです。地面を強く踏み込んで、防御を捨てた必殺の一撃を繰り出す事ができます。これにより最終的なダメージを1点増やす事ができますが、逆に敵から手傷を負わされた場合、受けたダメージとは別に【突進】を仕掛けたヒーローの体力点を1点減らさなければなりません。突進の戦闘オプションを使用した時に、お互いの攻撃力が引き分けになった場合、そのヒーローが自分の対戦相手からターゲットにされていたなら、【突進】を仕掛けた者の方が負傷してしまいます。また【突進】を試みた場合、大きな隙が生まれてしまうため、次のラウンドでは【突進】が使えないうえ、攻撃力も1点減ってしまいます。
また【突進】に用いた武器が『クォータースタッフ』であれば、それによって手傷を負わされた対戦相手は、受けたダメージの値に関わらず【ノックバック】の判定を行わなければなりません。

【旋風(Whirl Wind)】
主武器が『ポールアーム』『クォータースタッフ』『モーニングスター』『デスサイズ』のいずれかである時に選択できる戦闘オプションです。武器を大きく薙ぎ払って、複数の敵を攻撃しようと試みます。そのラウンドにおける、ヒーローの攻撃体数を2に増やす事ができますが、攻撃力にマイナス1の修正を加えなければなりません。このオプションを行った際に、対戦相手から手傷を負わされた場合、そのヒーローはバランスが安定していない状態なので、手傷を負った回数だけ【ノックバック】の判定を行わなければなりません。また【旋風】を試みた場合、大きな隙が生まれてしまうため、次のラウンドでは【旋風】が使えないうえ、攻撃力も1点減ってしまいます。

【防御専念(Parry)】
この戦闘オプションによる効果は『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』の記述と同様ですが、さらに防御専念していた者が、敵から手傷を負わされた場合、防具ロールにプラス1の修正を加える事ができます。

【制圧防御(Field Block)】
防御専念していた時に『ラージ・シールド』を装備していれば、シールドを間に合わせの打撃武器として用いる事で、相手を牽制しながら防御が可能になります。そのため、攻撃体数が2に設定されているモンスターの攻撃を一人で受け持つ事ができます。この時、そのモンスターを引きつけた者は、相手の攻撃を二回受ける事になり、防具ロールに【防御専念】による修正を加える事はできなくなります。そのラウンドでのモンスターの攻撃力を新たに決定し、シールドを構えていたヒーローと攻撃力を比較してください。攻撃体数が3以上のモンスターに対して、この戦闘オプションを使用した場合、二人分の範囲まではモンスターの攻撃を引きつける事が可能です。
また、攻撃体数が1に設定されているモンスター二体を【制圧防御】で引きつける場合、モンスター側の「数による優勢」のボーナスを無効にする事ができます(※ただし、三体目からは人数差によるボーナスが加算される)

【盾強打(Shield Smash)】
どのモンスターからもターゲットにされていないヒーローが『ラージ・シールド』を装備していた場合、正面にシールドを構えた状態で助走をつけ、注意力に欠けたモンスターに強烈な体当たりを仕掛ける事ができます。体当たりを仕掛けた場合は、技術点による対抗判定を行い、判定に敗れた方はバランスを崩してしまうため、次のラウンドに限り、ノックバック(※後述の『ノックバック』を参照)が発生した時と同様のペナルティを受ける事になります。もし、判定に敗れた者が【盾強打】を受けた側であれば、さらに『間に合わせの武器』によるダメージ・ロールの結果の分だけ体力点を減らさなければなりません。このダメージを、シールドで軽減する事はできません。
ヒーローが【盾強打】を行う場合、両者は【体力】の特殊技能のランクと同じ値をボーナスに加える事ができます。また【盾強打】を行った側は、さらに体格や重量の差などによる修正が加わります。体格差による修正は、相手よりも体格が大きい者にはプラス2の修正が加わります。また重量差による修正は、相手の1.5倍の重量がある者にはプラス2、相手の2倍以上の重量がある者にはプラス4の修正が加わります。さらに【盾強打】による判定を行った場合、四足以上の生物であるなら、その者にはプラス2の修正が加えられます。
なお【盾防御】を行ったヒーローが判定に敗れた場合、【軽業】の判定に成功さえすればバランスを崩さずに済みます。その時の判定の際には、相手がヒーローの1.5倍の重量であればプラス2、ヒーローの2倍以上の重量であればプラス4の修正が加わります。

【二刀流(Dual Weapon)】
ヒーローが片手用の武器を装備していた場合、空いた手に『ショートソード』あるいは『脇差し』を受け流し用の武器として持つ事で、二刀流で戦う事が可能です。ただし、少なくとも【剣】と【防具】の特殊技能がランク3以上でなければ、二刀流を扱いこなす事はできません。
二刀流による攻撃が成功した場合、ダメージ・ロールの結果が6以上であれば、最終的なダメージを1点増やす事ができます。ただし【両手利き】のタレントを使用した時とは違い、受け流し用の武器でダメージ・ロールを行う事はできません。
また受け流し用の武器は『スモール・シールド』として扱う事ができます。これは魔法を受け止める事はできませんが、自分に向かって射られた矢を叩き落す事は可能で、射撃を受けた時にサイコロを1個振り、出目が5以上であれば矢によるダメージを無効化できます。この受け流し用の武器は【耐久点】を持っていませんが、一度に5点以上のダメージを受け止めた場合は、受け流し用の武器を叩き落されてしまい、それを拾い直すまでは二刀流で戦う事はできなくなります(※射撃攻撃に対する防御については、後述の『シールドの扱いについて』を参照してください)


◆シールドの扱いについて
『スモール・シールド』と『ラージ・シールド』の性能は、身につけた鎧の性能には加算せず、戦闘で負傷を受けた時の防具ロールは、個別に行う事になります。シールドでダメージを軽減できた場合、その攻撃を「シールドでも受けている」ものとして扱われます。シールドは、扱いが難しい防具について学ばずとも、自分の打たれ強さを高めるのにうってつけの装備ですが、戦闘の状況によっては破壊される恐れもあります。それぞれのシールドには【耐久点】が設定されており、『スモール・シールド』は3点、『ラージ・シールド』は5点の耐久点を持っています。

戦闘において、矢ではない攻撃をシールドで受け止めた場合、その一撃によるダメージが5点以上(※『打撃』を用いた武器を受けた時は4点以上)であれば、シールドの【耐久点】が1点減少します。もし、その一撃がクリティカルヒットであれば、シールドの【耐久点】は3点減少します。シールドの損傷が回復する事はなく、もし【耐久点】がゼロ以下になれば、そのシールドは破壊された事になり、装備品から失われる事になります。

また【防具】の特殊技能を習得しているヒーローなら、シールドで射撃による攻撃を防ぐ事が可能になります。そのような者がシールドを装備しており、相手から矢を射られた場合、一回の射撃につきサイコロを1個振ってください。『スモール・シールド』なら出目が6、『ラージ・シールド』なら出目が5以上なら、その射撃によるダメージを体力点に受ける事はありませんが、一度に5点以上のダメージを受けたならシールドの【耐久点】を1点減らしてください。ただし、これはあくまで「体の正面から射撃を受ける」状況での処理です。死角から矢を射られるような事があれば、それに対しては防御の判定を行う事はできません。なお射撃による攻撃をシールドで受け止める事に失敗した場合、そのヒーローは、シールドの防具ロールを用いる事はできません。

射撃による攻撃に対するシールド防御の判定は、魔法に対しても有効ですが、攻撃魔法をシールドで受け止めた場合、そのダメージの結果が4点以上のダメージであれば【耐久点】が1点減少します。ただし【電撃破】やZAPの魔法を受け止めた場合、シールドに稲妻に対する耐性がなければ一撃で破壊されてしまいます。なお、攻撃魔法によってシールドが破壊された場合は、シールドを扱っていた者は無傷で済みます。


◆ノックバック
戦闘の中で【ノックバック】の効果を持つ攻撃で手傷を負わされるか、あるいはHOTの魔法による直撃を受けた者は、ただちに【軽業】による判定を行わなければなりません。判定に失敗した場合、その者は体のバランスを崩してしまうため、次のラウンドでの攻撃力が2点減らされるうえ、ダメージ・ロールと防具ロールにマイナス1の修正を加えなければなりません(※ロールの結果が0以下なら、1の目が出たものとして処理してください)
また、ノックバックによる【軽業】の判定を行う際、四足以上の生物ならサイコロの出目にマイナス2の修正が加えられます。


◆戦闘時の「運だめし」について
ヒーローが、モンスターから受けたダメージを軽減するために防具ロールを行う場合、その被害を最小限にするために「運だめし」を行う事ができます。この判定に成功した場合、そのヒーローは防具ロールで「出目が7以上」の結果が出たものとして扱ってください。もし、その時のヒーローが一切の防具を身につけていない状態であれば、ダメージを1点だけ軽減したものとして処理されます。
もしヒーローが「シールドと鎧」によるダメージ軽減の際に「運だめし」を行う場合、判定は一括ではなく、それぞれの防御手段に対して「運だめし」を使用するか否かヒーローが選択する事になります。また「タクティカル・プレートと【回避】の特殊技能」によるダメージ軽減を行う場合、ヒーローが「運だめし」を使用できるのは『タクティカル・プレート』の防御ロールのみとなります。
なお、このハウスルールを導入する場合は『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』のルールブックの記述にある「自動的に敵のダメージ・ロールの結果が1になる」という効果を得る事はできません。


◆魔法に対する抵抗力
ヒーローたちと違って【運点】を持ち合わせていないモンスターは、【技術点】を用いる事で、魔法に抵抗を試みる事ができます。これは一見すると、公平なシステムに思えますが、『どれだけ魔法を受けても、魔法に抵抗できる確率が減少しない』事と、さらに『持ち前の【技術点】が高いモンスターに対しては、そもそも魔法が通用しない』という欠点を持ち合わせています。そのため、腕力に物を言わせるタイプのモンスターが、タイタン世界のあらゆる魔術師を制するという不可思議な状況が起きる事もあります。これがまかり通るのであれば、有名な悪の魔術師であるマンパンの大魔王やオルドラン・ザゴールは、自分に戦いを挑んできた獰猛なピット・フィーンドに対して、平謝りしながら許しを請う事しかできなくなってしまうでしょう(※これは非常に『マジありえねぇ』状況と言えます)

これを解決するために、モンスターに【抵抗力】という新しい能力値を導入します。【抵抗力】の扱いは【運点】と同様ですが、モンスターが魔法の対象にされた時にだけ用いられます。ヒーローたちから魔法をかけられた時に、サイコロを2個振り、出目が【抵抗力】以下であれば、そのモンスターは魔法に抵抗する事できます。そして判定が終わったら、現在の【抵抗力】を1点減らします。

【抵抗力】は、取るに足らないモンスターであれば4〜5点、一度ぐらいは魔法に耐える手強いモンスターであれば6〜8点、魔法に対して強い耐性を持つモンスターであれば9点以上が妥当かと思われます。それぞれのモンスターに【抵抗力】を何点与えるかに関しては、ディレクターが自由に決めてください。
【技術点】と【抵抗力】を分ける事で、接近戦に強い代わりに、魔法が弱点となっているモンスターを登場させる事ができます。シナリオのボスキャラは【抵抗力】を固定値にしても構いませんが、どんなにそれが高くても11点を上限に設定しておくと、思わぬドラマが生まれる事があるかも知れません(※6のゾロ目が出た場合、魔法の抵抗に失敗した事になります)

戦闘を行う全てのモンスターに【抵抗力】のハウスルールを適用すると、ディレクターが管理しなければならない能力値が増えてしまいます。処理を簡略化するのであれば、モンスターの技術点から3点引いた値を【抵抗力】として、魔法に抵抗するための判定を何度行っても【抵抗力】は減らない事にしても構いません(※ただし、その場合の【抵抗力】の下限は4点です。少し手強い難易度のゲームにするなら【抵抗力】の下限は5点が妥当でしょう)


◆武器を持たない状態でのファンブル
以下に記すのは、素手の状態のヒーロー、あるいは格闘戦を行うモンスターがファンブルを発生させた時のサポートとなる新しいファンブルの結果です。ファンブル表の【6】と【9】の結果に対応しています。

ファンブルの結果が【6】だった場合、その者は思わぬ一撃を受けた事で動揺してしまい、少しの間だけですが、冷静な戦い方ができなくなってしまいます。このファンブルが発生したラウンドと次のラウンドでは、ダメージ・ロールあるいは防具ロールを行う際に、マイナス2のペナルティを受けてしまいます。この状態に陥っている間は【防御専念】の戦闘オプションが選択できないうえ、さらにファンブルした側が防具ロールでダメージを0点に軽減したとしても、体力点に1点のダメージを受ける事になってしまいます(※どちらのロールも結果が0以下だった場合は、1の目が出たものとして処理してください)

ファンブルの結果が【9】だった場合、その者は攻撃の狙いを外した事によって、勢いあまって体の側面(あるいは背面)を相手に向けてしまいます。このファンブルが発生したラウンドと次のラウンドでは、防具ロールを行う際に、マイナス2のペナルティを受けてしまいます。この状態に陥っている間は【防御専念】の戦闘オプションが選択できないうえ、さらにラウンドに敗北した時に「運だめし」でダメージを最小限に抑える事もできなくなってしまいます。(※防具ロールの結果が0以下だった場合は、ダメージが軽減できなかったものとして処理してください)

お互いにファンブルを出した場合、その者は攻撃の狙いを外した事で、勢いあまって自分から相手の攻撃にぶつかってしまいます。そのため、通常と違って防具ロールを行う事ができないうえ、対戦相手に選んだ敵のダメージ・ロールにプラス3の修正が加わり、さらに最終的に敵から受けるダメージも2点増えてしまいます。また、この状況においては「運だめし」でダメージを最小限に抑える事はできません。


◆重い物体の移動
冒険の中でヒーローたちが、石棺の蓋をどかしたり、本がぎっしり並べられた書棚を押すなどの力仕事を必要とする場合、それらの試みは、通常の行動判定によって処理されます。これには【体力】の特殊技能のランクがプラス修正となりますが、判定に成功した場合は、その成功度(判定の成功に必要な基準値を下回った値)に1点を加えた値を書き留めていってください。この値は【力点】として扱い、それは同じ物体をどかそうと試みるたびに累積していきます。
また、移動の対象となる物体には、ヒーローたちの力技で十分な距離を移動させるのに最低限必要となる【重量点】が設定されています。書き留めた【力点】の合計が【重量点】以上であれば、その物体を必要な分だけどかす事に成功します。なお、一人でも多少無理をすれば移動させられる重い物体の【重量点】は2点です(※引き出しを空っぽにした机は1点、その全ての引き出しが一杯になるまで物を入れた状態なら2点といった感じです)

重い物体の移動は、何度でも試みる事ができます。ただし同じ物体に対する行動判定が、連続して失敗したヒーローは、疲労によって体力点を1点減らさなければなりません。通常のヒーローは、二回連続で失敗すると体力点を失ってしまいますが、【体力】の特殊技能を習得している場合、技能のランクの半分(※端数は切り上げ)の回数だけ疲れずに頑張る事ができます。例えば【体力】がランク3のヒーローは、ランクの半分を切り上げた値が2点になるため、四回連続で失敗(通常の2回+ランク補正の2回)した時に、体力点を1点失う事になります。

また行動判定によって疲労したヒーローが、同じ物体を動かそうとする場合、それ以上は体力点を失う事はありませんが、行動判定にマイナス2点のペナルティを受ける事になってしまいます。


◆扉や宝箱の開錠について
冒険の中で、ヒーローたちが施錠された扉や宝箱を発見した場合、開錠に必要となる道具さえあれば、合い鍵がなくても、それらを開こうと試みる事ができます。この試みは、通常の行動判定によって処理されます。開錠を試みようとするヒーローは、技術点による判定を行います。これには【開錠】の特殊技能のランクがプラス修正となり、錠前に設定された【鍵の難易度(0〜5点の範囲内)】がマイナスの修正となります。もし【開錠】の特殊技能を習得していない場合、そのヒーローは、開錠の判定にマイナス3点のペナルティを受けてしまいます。

施錠された錠前には【ロック・レベル】が設定されており、開錠を試みたヒーローは、錠前の【ロック・レベル】と等しい回数だけ【開錠】の判定に成功しなければ、その錠前を開錠する事はできません。通常の施錠された錠前は【ロック・レベル】が1点に設定されていますが、複雑な構造の錠前であれば、少なくとも3回は成功しなければ開錠する事はできません。なお、一人のヒーローにつき、一つの錠前の開錠を試みるチャンスは一度きりです。

また、施錠された扉や宝箱に罠が仕掛けられているのであれば、開錠を試みたヒーローは、それに仕掛けられた罠を誤って作動させてしまうかも知れません。そのような扉や宝箱には【罠の感度】という値が設定されています。ヒーローが【開錠】の判定に失敗した場合、判定の成功となる値から、どれだけ不足していたのかを確認してください。不足した値が【罠の感度】以上であれば、ヒーローたちにとっては残念な事ですが、防犯のために設置された罠が作動してしまいます。

隠された財宝に狙いを定めるトレジャーハンターたちにとっては恐ろしい事に、このタイタン世界には【ロック・レベル】ごとに別の罠が仕掛けられていたり、【罠の感度】が0点以下に設定されている扉や宝箱も存在します。その代表的なものとなるのが、旧世界のスローベン出身の魔術師が制作した『スローベン・ドア』です。この両開きの扉は、真の合い鍵でなければ安全に開ける事ができず、重要な場所に侵入しようとする者たちに対して、完璧な防御を誇っています。
この難攻不落とされる扉は【鍵の難易度】が5点、【ロック・レベル】が4点で、さらに致命的な罠を仕掛けた場合は【罠の感度】がマイナス2点に設定されます。もはや悪魔的頭脳の持ち主が、侵入者に対する嫌がらせで作ったとしか思えない防犯扉ですが、その完璧さが仇となり、何か不備があった場合に『スローベン・ドア』のメンテナンスができる職人が、タイタン世界には僅かにしか存在しないという欠点を持ち合わせています。


◆施錠された宝箱の破壊
冒険の中で、ヒーローたちが施錠された宝箱を発見した場合、開錠に必要となる技術や道具が無かったとしても、刃のある武器や重い鈍器を叩きつける事によって、宝箱の破壊を試みる事ができます。この試みは「対抗判定」で処理されますが、一人のヒーローにつき、宝箱の破壊を試みるチャンスは一度きりです。なお、ダガーなどの短い武器、矢や投擲用の武器、刺突に特化したスピアは、物体の破壊に不向きな道具であるため、それらを用いて宝箱の破壊を試みる事はできません。

宝箱の破壊を試みたヒーローは、扱っている主武器に対応した特殊技能のランクと、【体力】の特殊技能のランクを判定のボーナスとして加える事ができます。宝箱の破壊に用いた武器が『バトルアックス』『ウォーハンマー』『モーニングスター』のいずれかであれば、それらは物体の破壊に効果的な道具となるため、さらに判定に1点のボーナスを得る事ができます。
相手となる宝箱の方は、対抗判定の基準となる値が定まっており、標準的な宝箱は15点として扱われますが、木材の頑丈さによってプラス1〜5の修正が加わります。また宝箱が鉄帯によって補強されているようであれば、材質とは別に1点のボーナスが加わります。

この対抗判定にヒーローが勝ったなら、宝箱を破壊する事ができますが、その中に壊れやすい物が収まっていた場合は、宝箱を破壊しようとしたヒーローは「運だめし」を行わなければなりません。判定に成功すれば事なきを得ますが、失敗した場合は、瓶などの割れやすい物体は、ことごとく壊れてしまいます。また対抗判定の結果、ヒーローが5点差以上の差をつけて勝ってしまうか、あるいはサイコロの出目が6のゾロ目だった場合は「運だめし」をする事なく、宝箱の中にある割れやすい物体は全て壊れてしまいます。

宝箱を力ずくで破壊するのはリスクが伴うもので、もし宝箱に罠が仕掛けられていたのであれば、それは自動的に作動してしまいます。また宝箱の破壊による「対抗判定」の結果、破壊を試みたヒーローが3点以上の差をつけられて対決に負けてしまうか、あるいはサイコロの出目が1のゾロ目だった場合、その時に用いた武器が刃のある物であれば、刃こぼれを起こしてしまうため、その武器のダメージ・ロールと宝箱を破壊する際の判定にマイナス1のペナルティを負う事になってしまいます。このペナルティは累積していきますが、鍛冶屋に修理してもらえば完全に回復する事ができます。ただし、それには幾らかの金貨が必要となるでしょう。

また武器が損傷する結果になった場合、その時に用いた武器が『クォータースタッフ』『ポールアーム』のいずれかあるなら、長柄が無残に折れてしまうため、今後の戦いにおいて、その武器を使用した時の攻撃力が2点減ってしまう事になります。さらに『旋風』の戦闘オプションも使用できなくなってしまいます。『ポールアーム』が破損した場合、鍛冶屋に修理を依頼すれば、穂先の部分を新しい長柄に取り付けてくれるので、このペナルティを回復する事ができます。しかし『クォータースタッフ』の場合は手の施しようがないので、それまで愛用していた杖を壊してしまったヒーローは、新品の杖を買う事を考えた方が良いでしょう。

魔法の技に自信があるヒーローは【電撃破】やZAPなどの攻撃魔法によって、宝箱の破壊を試みる事ができます。このようなヒーローたちの手に負えない状況を解決するには、魔法の力は絶大なパワーとなります。魔法で破壊を試みる場合は、通常の手順に従ってサイコロを振り、最終的なダメージに8点を加えた合計で、破壊の対象となる宝箱と「対抗判定」を行ってください。この対抗判定にヒーローが勝ったなら、宝箱を破壊する事ができますが、その中に壊れやすい物が収まっていた場合は、武器で破壊を試みた時と同様の処理をします。ただし対抗判定の結果、ヒーローが5点差以上の差をつけて勝ってしまった場合は「運だめし」をする事なく、宝箱の中にある割れやすい物体は全て壊れてしまい、それ以外の収納された品も破壊の影響を受ける事になります(※その場合、どの品が無傷であったかは、ディレクターが自由に決めてください)


◆施錠された南京錠の破壊
冒険の中で、ヒーローたちが施錠された錠前を発見した場合、それが南京錠であれば、開錠に必要となる技術や道具が無かったとしても、刃のある武器や重い鈍器を叩きつける事によって、錠前の破壊を試みる事ができます。その手順は、前述の『施錠された宝箱の破壊』と同様ですが、宝箱の中身を気にする必要がないので、魔法の力がとても頼りになる事でしょう。錠前には、対抗判定の基準となる値が定まっており、標準的な金属製の錠前は16点として扱われますが、材質の頑丈さによってプラス1〜5の修正が加わります。『施錠された宝箱の破壊』と同様に、破壊に用いた武器が『バトルアックス』『ウォーハンマー』『モーニングスター』のいずれかであれば、それは効果的な道具となるため、錠前の破壊を試みるヒーローは、判定の際に1点のボーナスを得る事ができます。
また宝箱を破壊する時とは異なり、刃のある武器で南京錠の破壊を試みた場合、そのヒーローは試みの成否に関わらず、必ず「運だめし」をしなければなりません。成功すれば何事も起きませんが、失敗した場合は、錠前の破壊に用いた武器が破損してしまいます。そのペナルティも、前述の『施錠された宝箱の破壊』と同様です。


◆あとがき
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』のルールブック巻末には、ディレクターが作成したハウスルールを書き込むためのページが用意されています。これによってルールブックに記述がない状況に対しても、柔軟に対処できるようになっています。とは言え、どこから手をつけて良いのか分からない人もいるでしょう。そこで今回は、アイデアのヒントとなるような追加ルールを思いつくままに書き記しました。新たなゲームのルールを模索している方は、今回紹介したハウスルールを何かの参考にしていただければ幸いです。


◆謝辞
AFF2用「戦闘に関するハウスルール」を作成するにあたって、フライング・バッファローの対戦型ゲームブック「Lost Worlds(アルフレッド・レオナルディ/ゲームデザイン)」、東京創元社の「魔王の地下要塞(ポール・ヴァーノン/著、マジカルゲーマー/訳)」、Wizard Booksの「Stormslayer(ジョナサン・グリーン/著)」、トミー(現タカラトミー)制作のプレイステーション用ソフト「ガンホーブリゲイド」を参考にしました。本当にありがとうございました。


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2020年5月18日月曜日

ソロアドベンチャーのつくり方 第2回 No.2672

おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
家でネコと遊んだり、指懸垂にチャレンジしたりする日々です。
今回の記事は「ソロアドベンチャーのつくり方」の第2回。
「コンテストに通用するソロアドベンチャー」についてです。


◆第1回のおさらい。
第1回で書いたのは、「間違いのない」ソロアドベンチャーをつくる方法についてです。
第2回である今回は、もう一歩踏み込んで……コンテストに通用するソロアドベンチャーをつくる方法について、書いてまいります。

第1回では、おもしろいソロアドベンチャーの土台となるのは、「間違いのない」ソロアドベンチャーである、という話をしました。
ソロアドベンチャーはゲームですが、電源系のゲームと異なり、プレイヤーが手作業で処理を行わなければならないものです。
ですから、その処理の方法が、分かりやすい必要があります。
そのために、紛らわしさを取り除いて、プログラミングを書くように書いていこう、みたいな話をしました。

それでは、第1回の内容を的確に実践できれば、コンテストに通るのでしょうか?
私は、まだ不足があると思います。
じゃあ、ちょっとそのあたりも教えてよ!
てな要望があると予想して、第2回を書いていきます。
例によってゴリゴリの私見に溢れた記事ですが、参考になりましたらさいわいです。


◆コンテストに通るには、最初に読者のほうを向いてはならない。
まず、いちばん大切なことは、コンテストに通るには、誰のための作品を書く必要があるのか、という点です。
あなた自身? 違います。
読者? いえいえ。
答えは、審査員です。

コンテストに通るもの、それは現場で必要とされている作品です。
「審査員が読んだときに、選びたくなるもの」であれば、選ばれる。
あまりにも当たり前の話です。


◆なぜ、ソロアドベンチャーなのか?
それでは、審査員が気にいる作品とは、どんなものなのでしょうか?
それを考察するには、「なぜ、ソロアドベンチャーが求められているのか?」という点を考える必要があります。
「ウォーロックマガジン」誌上で、必要だから?
イエス。でも、もう少し掘り下げていきましょう。
答えは「1人でも遊べるから」です。
「ソロ」アドベンチャーですからね。


◆基本的な部分から。
いちばん忘れられそうな基本の話をすると、「ソロアドベンチャー」は「ゲームブック」とは違います。
違うというのは、その目的が違うという意味です。
「ゲームブック」はその本を売ることが目的ですが、「ソロアドベンチャー」には別の目的があります。
リック・ルーミスがT&Tのソロアドベンチャー「バッファロー・キャッスル」を執筆したとき以来、ずっと決まっていることです……ソロアドベンチャーはそのTRPGのルールブックを売るために必要なのです!
現在ではソロアドベンチャーそのものを売ることも目的となっていますが、ルールブックを売って、そのゲームを世に広めるために作品があるという構造は、今に至るまで綿々と受け継がれています。
だから、ソロアドベンチャーは、そのゲームのルールブックを買いたくなるようなものであるのが吉です。
あなたがどのような立ち位置であれ、審査する側からしたらこれは経済活動なのです……!

では、次に、私がソロアドベンチャーを執筆していたふたつの雑誌に関する「需要」を、記述していきます。


◆「ゲームマスタリーマガジン」のとき。
グループSNEから刊行されている「ゲームマスタリーマガジン」誌で、私は主にソード・ワールド(2.0や2.5)のソロアドベンチャーを書いてきました。
そのさい、編集長から「初めてソード・ワールドをプレイする人が、プレイできる『チュートリアル』を強く意識して書いて欲しい」と頼まれて、ほとんどすべての作品を、そのようなデザインで仕上げました。
ルールが分からなくても遊べるように、丁寧さを意識して書いて、死亡率は低め低めに。
仲間を集めてTRPGのセッションを行えない、ソロの未経験者にターゲットを絞った冒険。
そんなものをつくって欲しいという、要望だったわけです。
「ルールブックを売るために」ソロアドベンチャーがあるという、分かりやすい例だと思います。


◆「ウォーロック・マガジン」のとき。
「ウォーロック・マガジン」におけるトンネルズ&トロールズ完全版(T&T)のときは、「海外のソロアドベンチャー作家」の作品が誌上に掲載されるという環境のなかで書くことになりました。
T&Tのソロアドベンチャー数が不足しているはずはありませんから、私に望まれていたのは「ゲームとしておおらかな作風の多いアメリカ産ソロアドベンチャーの足りない部分を埋める作品」なのだと、解釈しました。
だから、「タイトに調整した緻密な作風」を基本スタイルとして選びました。
冒険慣れした読者が多いと考えて、難易度は少し高めに。
(でも、難易度はもう少し低めでもよかったなと、後から思いました……新規参入者を得づらくなってしまうからです。)


◆なぜ、「情熱的な夜」なのか?(完全な余談)
私はT&Tのソロアドベンチャーで、登場したキャラクターと仲良くなって「情熱的な夜を過ごした」という表現、場面を何回か入れました。
これは一夜をともにしたことを示すオリジナルな表現ですが、「情熱的な夜」というワード感が気に入っていたことに加えて、登場させた明確な理由がありました。
それは、仲間と複数で行うTRPGのセッションにおいて、「異性と一夜をともにする」というシチュエーションが、(ご時世を考えると特に)コンプライアンス的に導入しづらい環境にあるプレイヤーやゲームマスターも多いのではないかという、読みでした。
「ソロ」アドベンチャーだから、プレイする側は1人。
1人だから、性的なことも気兼ねなく行動として選べるため、解放感があっておもしろいかなと思ったわけです。


◆本題に戻って。
話が逸れましたが、今回のコンテストでは、なにが望まれているでしょうか?
私は「オーソドックスな作品を引き続き生産できることを示す、奇をてらわない作品」だと思います。
前提として考慮しておきたいのは、ソロアドベンチャーをつくるのは実に骨の折れる仕事だということです。
時間がかかりますし、ルーチンで仕上げることもできません。
いっぽうで、ソロアドベンチャーの作家というものは、状況に応じた作品づくりが求められます。
「魔法の呪文」に関連するサプリメントが発売になったら、「魔法学校もの」を書くことを求められたり。
「フィールドアドベンチャー」に関するサプリが出たら、「オープンフィールドもの」を書くことを求められたり。
だから、必要とされているのは、基礎力のある書き手だと思います。
それで、第1回では「間違いのない作品をつくる」ことが大事だというお話をしたわけです。

また、「ウォーロック・マガジン」は、メインの日本人作家であった私が抜けた後です。
その穴を埋める人員も必要ですから、オーソドックスな力を持ったソロアドベンチャー作家が今必要なのではないかと推察しています。


◆求められているのは作品か、人か。
いまソロアドベンチャーを投稿しようと考えているあなたは、コンテストで求められているのが自分の「作品」なのだと、思ってしまうかもしれません。
私は違うと読んでいます。
求められているのは「人」、つまりはソロアドベンチャーを書ける作家そのものだと、私は思います。
コンテストは作品ではなくて、作品をつくる作家を見つけるためのもの。
出版社が開く小説やマンガのコンテストを考えると、これはごく当たり前のことだと思います。
あなたは1回こっきりのおつき合いと考えているかもしれませんが、審査する側は、今後も作品をつくれる人がより望ましいと考えているというのが、私の読みです。
そのあたりを踏まえて、あなたは作品を通じて、ミスの少なさ、文章の分かりやすさなど、あなたという「作家」のオーソドックスな実力を示すことが大切だと、私は考えております。
また、作品そのものに全力を尽くすのは自然なことですが……次の作品、次の次の作品のことも、うっすらと頭に思い描きつつ、今の作品を仕上げることをオススメします。


◆まとめ。
以上、ゴリゴリと私見を述べました。
当たっているかもしれませんが、外れているかもしれません。
「こちらの事情は気にせず、のびのびと書いてほしい」と、審査側が思っている可能性も十分にあります。
もと編集長ではあるものの、現在の「ウォーロック・マガジン」の内部事情には触れておりませんし、あくまで私見であることは、ご留意ください。
それでも、参考になる点があることを願いつつ。


今回はこのあたりで。
それではまた!


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2020年5月17日日曜日

Ψライク・ア・ペーパーバック 日曜ゲームブック No.2671

「君はあのミステリ、徹夜して読んだじゃないか。」
「ものすごくつまらん本だったよ。徹夜して何度も読み直さなければ元がとれん。」
(匿名希望のミステリマニア)

『ライク・ア・ペーパーバック』
 著:葉山海月

1
「世界は既視感に満ちている。」
 そう冒頭に記された本が、かすかに記憶に残っているが、その本を思い出せない。
 雑然としていて、昼間の活気の余韻が、古いジャズのエンディングのように残る、ありふれた昼下がり。この店『鏡の館』は、古本を提供するだけではなく、ちゃんと読書スペースを設けてくれている。ちょっとした図書館だ。
 本以外にも、例えば歯車式コンピューターやら、ピケの時計やら、一癖ある骨董も並べているのが楽しい。
 そういえば、初めてここに来た時も、私はここで本を読んでたんだっけ?
 ありふれた場所。ありふれた時間。時間が流れいくのもわからない平穏。
 こんな昼下がりを、何回繰り返したんだっけ?
 そんなことを考えていると、バックに本の感触が。
 見ると、パッと見覚えのない本。
 しかし、私は思い出す。確か『僧正殺人事件』を読み終えたから、古本屋オークションで新品をゲットしたんだ。
「あれ? 今日は何読んでるの? マーロウ? ハマー? 」
 整理する本を脇に挟み、フィオが近づいてくる。フリフリのメイド服。この店の店員。可愛い子猿のような顔をしているのがチャームポイントであり、彼のコンプレックスだ。
 そう、彼は男の娘、という奴。女の私でもちょっと惚れるくらい。
 だけど、本気でこの子は、ピストルをパンパンやって、腕っ節が強いヒーローが好きなんだな。
「いえ。今日の本は……無名の作家が書いた……」
 あたしは、本の表紙を見せる。
「『永遠の謎』。」

 午前中に通称「のみの市」で行われた古本オークション。
 街の人がいっぱいになる、ということもない。だけど知る人ぞ知るそのオークションには、本を語らせたら、この人の右に出る者はいない、国立図書館館長。そして古本マニアにして映画監督のJ・J。そうそうたるメンツが並ぶ。
 今回も面白そうな本ばかり。
 目に飛び込んでくる、鮮やかな原書の山。
 とりあえずそれを……手に取る→2
 もっと面白い本があるかも。山をかき分ける→3


2
 本を手に取る。『火吹山の魔法使い!?』
 私はそれを手に取り、読み進める。
 吸い付けられたように、それをめくり始める。
 かなりの時間がたったようだ。しかしそれを忘れるほど、読みふけってしまう。
 ふと、目を上げると、あたりは薄闇に包まれている。
 いつの間にか、露天は閉まったのか、あたりにもう人影はない。
 と、薄闇に蠢く影。最初は野犬かなんかと思って見ていたけど、それは……人面犬などという生易しいものではなかった。れっきとした人狼だった。
「くくく。ヤンバル魔王様にあだなすものは、何人たりとも容赦しねぇ!」
 牙を向いて襲いかかる狼男。
 えっ? これ!? どういうこと!?
 まさか、ゲームブックの「剣と魔法の世界」に閉じ込められた!?
 しかし、その考えを吟味する間もなく、私の喉へ冷たい牙が。
 吹き出す生暖かい鮮血。
 END

3
 そして、その本が出てきた。

 その本は、ガリ版で印刷したような、手書き本だった。
 著者名はアビコ・アビス。
 知らない名だ。
 怪しげな八の字髭の痩身オーナーの話によると、「不出世のミステリ作家」。
 その作品は、ついに世に出ることはなかったが、彼自身、いわゆるミステリ会のご意見番とあだ名され、例えば彼の影響は、ディクスン・カーのオカルティズムを決定し、そして、ヴァン・ダインの『グリーン家』の衒学主義も、彼がいなければ始まらなかったろう。とのこと。
 先日、ついに自分のアパートで、なくなっているのが確認されたが、彼の手元にしかと握りしめられていた万年筆。
 このミステリ界のヘンリー・ダガーの遺作。それがこの本だ! というのだ。
 いかにも胡散臭そうな彼のプロフィール。
「ともかく、読んでみればわかります。
 今までのミステリの致命的な弱点っ! 
 それは、一度読んだら、もう一度読み直そうという意欲がそがれること。
 なぜか!? 一度タネを明かされた手品は、もう魔法が効かない。それと同じことが、ミステリにも言えます。
 謎解きはミステリの命! それを奪われたミステリには、もう一度読み返す気力がなえてしまう。
 しかし、この本に限ってそんなことはございません!
 なぜなら、この謎の真実には、永遠に触れることができないから。何なら私の命、いえ、全財産をかけても構いません! これは、読者への 挑戦などという枠を超えた『ミステリ』への挑戦でもあります! 」
 要するに、この売り手は、あたしたちミステリ・マニアへ挑戦している。
 しかし、時期が悪かった。今日は四月一日。
 おまけにこの本の胡散臭さ。
 タイトルが「永遠の謎」なのだ! 今どきこの小学生でももっとましなタイトルを思いつく!
 その怪しげなところも手伝って、結局買手は付かないままだった。
 キワものを愛してやまない私と、競り合った老人、二人を除いては。

 三々五々、客も散らばり始め、私も午後のささやかな楽しい時間のために、帰路に就くことにする。
 愛用のヨタハチのドアを開ける。
 すると、まるで長い時間そこに立っていた、いや、老木のように「存在していた」と錯覚させるそいつが立っていた。

 ティアドロップの眼鏡の底に隠れる落ちくぼんだ眼。
 コーディロイのコートに、マフラー。
 さっき、私と競り合ったおじいさんだった。
 足が悪いのか、ステッキに体重を乗せて、右に左に動くところが、やじろべいを思わせた。
 彼は、開口一番こういった。
「なぁ、まことに申し訳ないんだが、今は準備できないが、金ならいくらでも出す。その本を譲ってくれたまえ。」
「これは手付けね。」そう言いつつ、彼は穴の開いた財布を取り出す。
 私は困惑した。というのが、彼の「この本は俺のものとなるべくして生まれてきたんだ。」みたいな態度。
 それはちょっと、強引で傲慢じゃないか?
 私は。
 無視して岐路へ向かう→6
 なんとか平和的提案をしてみる→5
 決闘を申し込む→4


4
「人がせっかく手に入れたものを無礼な!」
 私は手袋を投げつけ、決闘を申し込む。
 次の瞬間、老人の手にはベレッタM935が!
 そして、対するあたしの手には……。何も無かった。
 そりゃそうでしょ。あたしは警察でも、私立探偵でもないし、裏稼業のエージェントでもない。
 頭と心臓、同時に血のバラが咲いたのは、ただ痛みを感じずに天国への階段を上れてよかったとしかいいようが無かった。
 END

5
「えーと、失礼ですが……。じゃ、こういうのはいかがですか? この本を読み終わったら、あなたにお譲りいたしますよ。もちろんお代はいりません。私はただ、午後の時間を楽しい物語で過ごせたら……。」
「そんな上品な言葉でカタが付くもんじゃあない! 」
 軍用銃を突きつけるように、彼はステッキを振った。
「貴様、ジャポネの三大奇書も知らんようなツラしやがって。いや、それが今や五大奇書になっていることも、そのタイトルも知らんくせに! ケツの青い小娘が、御大層に抱え込むしろもんじゃない。さぁ、早くこっちへ。」
「『失楽』と『寄寓』なら、もう読みました。」
 私はさっさとヨタハチのシートに体を滑り込ませる。人一人にジャストなコンパクトさ、アナログさが心地よい。
 彼の傲慢な態度が鼻もちならなくなってきた。
 実際、決定的なことは、彼が振り上げたステッキの泥。それが顔についたことだった。
 私は
 決闘を申し込む→4
 無視する→6


6
 ヨタハチの軽快なステアリング。軽快なエンジン音で、『鏡の館』につながるワインディングをクリアしていくうちに、気分も晴れる。
 いつもの時間、いつもの場所。
 私のアジトであり、現在の心の故郷でもある古本屋に入る。
 小一時間前の、不愉快な記憶を忘れようと、私は『永遠の謎』の一ページを開ける。

「世界は既視感に満ちている。」
 そう冒頭に記された本が、かすかに記憶に残っているが、その本を思い出せない。
 雑然としていて、昼間の活気の余韻が、古いジャズのエンディングのように残る、ありふれたカフェの昼下がり。
 そういえば、初めてここに来た時も、私はここで本を読んでたんだっけ?
 ありふれた場所。ありふれた時間。時間が流れいくのもわからない平穏。
 こんな昼下がりを、何回繰り返したんだっけ?
 そんなことを考えていると、バックに本の感触が。
 見ると、パッと見覚えのない本。
 しかし、私は思い出す。確か『僧正殺人事件』を読み終えたから、古本屋オークションで新品をゲットしたんだ。

 ぎょっとなる。
 私が、この本を開ける前に思っていたこと、直前の体験が、ここにはある!
 そして、
「あれ? 今日は何読んでるの? マーロウ? ハマー? 」
 整理する本を脇に挟み、フィオが近づいてくる。フリフリのメイド服。この店の店員。可愛い子猿のような顔をしているのがチャームポイントであり、彼のコンプレックスだ。
 そう、彼は男の娘、という奴。女の私でもちょっと惚れるくらい。
「いえ。今日の本は……無名の作家が書いた……」
 あたしは、本の表紙を見せる。
「『永遠の謎』。」

 食い入るようにページをめくる。
 何もかも同じだ。
 もはや、ページに視線が食い込んで離れない。
 しかし、やがて妙なことに気づく。
 というのが、この本、まだ事件が起きてない。
 あくまで「推理小説」の体裁をとるのなら、このへんで何か魅力的な謎が提示されてもいいのに、その鱗片さえ見当たらない。
 このままいくと「読書する一市民」を延々描いた作品になる!
 もともと、5mmも幅がいかない、同人誌なみの「薄い本」残りページ数も少ない。
 と、唐突に、次のような文が。

「警告状
 さて、敬愛なる読者の皆様。ここまで読み進められて、首を傾げられたと思います。
 推理小説のパンドラボックスにしてブラックホール。
 肝心かなめの『謎』が提示されていないのでは? と。
 しかし、もうすでに事件は起こりました。
 謎は提示されて、あなたの目の前にあります。
 ついでに言わせていただきますと、真相にたどり着く手がかりもすべてあなたの目の前に提示されたはず。
 気づかないのは、残念ながら、あなたがいかに注意力散漫な生活を送っているかの証明にしかなりません。

 さて、あなたはこの謎が解けますか?
 だけど、本作品に限って、それは無駄な努力といえましょう。
 なぜなら、本作は、文字通り私の血肉を注ぎ込んだ、ミステリというちんけな枠にとらわれない謎が提示されております。
 おそらく、あなたの頭脳精神は、真相にかすりもせずに永久に迷路をさまよいます。
 解かれぬ謎こそ一番美しい。
 その美しい残像が消えぬ間に、ページをそっと閉じることをお勧めいたします。」

 私は、ひどく悪い予感がした。
 「挑戦状」じゃなくて「警告状」
 この話はふざけている。この挑戦的な文自体が挑発しているし、けっして安くない金を払って、えんえんと「カフェの平穏な午後の一幕」を、物語的に盛り上げる筆力も、作者にはない。
 しかし、確実にこの物語は進んでいる。
「謎は提示されたし、手がかりはすべて提示されている。」
 それが何かは、はっきりと指示することはできないけど、何となくそういう悪い予感がする。
 先を読むべきか、忠告に従うべきか……。
 迷いながら、目を上げると、そこには例の老人がいた。

「ついにここまで来たか……。お嬢ちゃん。それは君に扱えるものじゃない。わしも、数十年前にその謎を聞かされて、ついに結末を見ないまま迎えてしまった。
 まるで恋人同士がひかれあうように、わしはそれに……その結末に虜にされてしまった。
 わしが今まで、この年になるまで生きながらえてきたのは、その本のせいだといっていい。
 わかったらおとなしく、そいつを渡すんじゃ。」
 そして、テーブルの下から、蛇の下のようにちらと覗く黒鈍色のそれは、ベレッタM935だった。
 おもちゃみたいな銃だけど、私は9mmの穴を開けられて、生きのこる自信がない。
 おまけにサイレンサー付きだ。
 私は……。
 飛びかかる→7
 黙って本を渡す→8


7
 おとなしく本を渡す……。テーブルの上に、老人へ向けて本を滑らせた。
 ほくそ笑む老人。しかし、その一瞬の隙を見逃さなかった。
 全身をバネにして老人に飛びかかり、ベレッタを持つ手をひねり上げる。
 耳元に響く激しい息遣い。そしてベレッタが落ちる。
「くそっ……だがこれで終わったと思うな……。それを狙って、第二、第三の刺客が……。」
 しかし、それを最後まで聞くことはできなかった。
 突如、胸から血を吹き出す老人。
 見ると、グロック18を乱射しながら、こっちへ黒服の男が迫ってきているではないか!
 老人の体に、次々と血のバラが乱れ咲く。
 一通り乱射が終わる。あたしは使い終わったヒューマンシールドとなった老人の体を投げ捨て、奪ったベレッタM935を乱射した。
 これで、もう平穏な日常とはおさらばね。というか、コージーミステリ物からアクション活劇へジャンルが変わってしまってる。
 物語が逸脱してしまった以上、あなたの「ぼうけん」はこれで終わる。
 END


8
 だけど、そんな剣呑なものを出さないでもよかった。
 私は「警告状」の脅迫に負け、あっさりと本を差し出したからだ。
 ところで……。
 あなたは、この謎が解けただろうか?
 Yes→9
 No→10


9
 異変が起こったのは、その夜だった。
 そろそろ夕餉の買い出しに行かなければ、と、その場を一時離れた私。
 その夜、いつも行く『鏡の館』の閉店の手伝いに行こうと思った私を迎えたのは、「あのお客さん、あそこから離れないのよぉ。」という泣き声。
 みると、あの老人が、熱心にページを繰っているではないか!
 まるで、魂が開いたページに吸い込まれたように、人形と化した目で、指で、ページを繰っている。
 私も、おもわず彼のように、彼の動作に引き込まれる。
 と、不審な点が目に飛び込んできた。
 ついに、じいさまが最後のページを読み終えた。と、まるで、ビデオテープを逆再生するように、すさまじい速さで老人の指が、本のページが戻っていくではないか! 
 あるいは、再び最後のページにたどり着こうとすると、まるで無理にフィルムを編集したように、一ページから突然やり直しになってしまう。
 なるほど! 『この謎は絶対解けない』わけだ。
 読み終わる。つまり謎を解き終わると、彼の時間は逆行し、振り出しに戻る。
 同時に記憶もリセットされ、永遠に真実にはたどり着けない。
 なるほど! これは推理史上類を見ない「トリック」……「トラップ」だ!

 というわけで、我が古本屋に新しいオブジェが増えた。
 別に悪さをするわけでもなく、ただひっそりと奥の席で本を読んでいる。ぱっと見はまさに「平和な風景」なんだけど……
 あなたが「ミステリー」や「推理小説」が、「悪魔に魂を売るほど好き」なら、訪ねてみてもいいかもしれない。
 これは愛の形。ミステリに裏切られながらも、生涯をかけて全身全霊で愛し続けた愛の形。
 呪いなどでは、断じてない!
 (と、思うよ!?)

 ある春の日、『黒死館殺人事件』を読みながら……。


10
 残念ながら、謎が解けていない時点で、あなたはこの本の罠に引っかかりました。
 心行くまで無限ループをお楽しみください→1


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

初めまして。葉山海月と申します。
BGMはピカソ『SHOUT』愛銃はMGCコルトローマン。
こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします。


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2020年5月16日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第374号 No.2670

From:水波流

おはようございます、編集人水波です。
先日、ついにTRPGオンラインセッションを初体験しました。
GMは杉本=ヨハネ氏で、FT書房のメンバーとともに、T&Tをプレイ。チャクラム装備のエルフの盗賊を遊びました。
そしてコロナ禍でなかなか集まれない中山将平氏と祈月透子氏と三人で、今流行のZOOM飲み会ならぬZOOMクトゥルフ会も行いました。これまた2時間余があっという間で、今度は読者の方にもご参加頂いてこういうざっくばらんに話せる場を作れたらなぁと思った次第です。
今更ですが、便利な世の中になったものですねえ。

さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事を紹介します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/10(日)〜5/15(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2020年5月10日(日)かなでひびき FT新聞第2664号

これはゲームブックなのですか!?
・バーチャル図書委員長、かなでひびき氏による、ゲームブックに関係ありそうでなさそうでありそうな周辺のよもやま話。「ゲームブック」というジャンルにこだわらず「頭を使って物語が膨らむ」ゲームブックの楽しみを満載したよろずのものを紹介していきます。今回は山口雅也 (著)『13人目の探偵士』。途中で「ゲームオーバー」の概念がある小説とは!?


2020年5月11日(月)杉本=ヨハネ FT新聞第2665号

ソロアドベンチャーの作り方
・FT書房リーダー・杉本=ヨハネ氏による定例記事。今週の記事は、ウォーロック・マガジン最新号で、T&Tソロアドベンチャーコンテストが行われる事にあわせての、ソロアドベンチャーの作り方のアドバイス記事。執筆上の疑問、つまずきなどがある方は、ぜひお便り下さい。


2020年5月12日(火)紫隠ねこ FT新聞第2666号

AFFソーサリー第12回:番外編・スログの追加メニュー(後編)
・紫隠ねこ氏によるAFF2用『ソーサリー・キャンペーン』追加シナリオプロット。今回は番外編として、ホブゴブリン料理人スログの厨房での意外な人物との遭遇について。マンパンの大魔王の影武者の意外な正体、ゲームブック版を遊んだ方ならなるほどという展開ではなかったでしょうか。


2020年5月13日(水)ぜろ FT新聞第2667号

第37回【魔の国の王女】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第178回をお届けしました。今回はプレイ後の感想戦の2回目。ここまで遊び尽くして頂けるゲームブックもなかなか無いのではないでしょうか。清水龍之介氏が執筆中の第三部もますます気になりますね。そして次回からはFT書房の作品から少し離れ、ちゃな氏の作品【ネイキッドウォリアー】のリプレイが登場です!


2020年5月14日(木)中山将平 FT新聞第2668号

クトゥルフとゲームブック第32回
・FT書房のイラストレーター・中山将平氏の連載・第32回をお送りしました。今回は「クトゥルフ神話を友人に紹介するとしたら」というお話でした。「謎解き要素」推しの場合、僕は「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を推しますねぇ。これぞ推理ホラーという感じで好きです。クトゥルフTRPGの正統イメージは僕の中でアレです。


2020年5月15日(金)ジャラル FT新聞第2669号

クトゥルフ神話TRPGノベル オレの正気度が低すぎる@みんなの本棚123
・本棚に並んでいるもので「これ、知ってる?」と言いたくなる作品をあなたに紹介する記事。第123回はジャラル氏からのオススメ本の紹介でした。作者の内山靖二郎氏は、メジャー作品で表舞台に出られる前、いわゆるTRPG冬の時代に、ご自身のサイト「ひきだしの中身」に魅力的なクトゥルフシナリオをどんどん公開されており、大学時代TRPGサークルで、なんどもプレイさせてもらったものです。「其は何を映す瞳」という地方の奇祭を扱ったシナリオが秀逸でした。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆現在募集中の日曜読者参加企画
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

みんなのファンタジー(随時募集中) ⇒ https://jp.surveymonkey.com/r/FBK5WL9

★☆お題☆★
・戦士
・魔法使い
・武器(刀剣類)
・モンスター(コボルド)
・ラスボス
・鉄板のシチュエーション
・読者参加ゲームの思い出
・美味しそうだった食事(食べ物)

カザン帝国辺境開拓記(ep.12受付終了。次回更新をお楽しみに) ⇒ https://jp.surveymonkey.com/r/QYYZPZ8

【作戦会議室・峡谷の山猫亭】 ⇒ https://www1.x-feeder.info/FTGAME/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓
(ジャラル・アフサラールさん)
カダスはニャル子さんが「地球本来の神々」を保護している地だそうで…何やっているんだニャル子さんは(笑)。小説ではシャンタク鳥の卵が人気食材として商取引されているそうで訳の分からん所ですなあ。取りあえず猫が異常に強いそうなのでカダスを舞台にしたTRPGセッションする時はキーパーに「猫飼っていいか」許可貰わないとwww

(お返事:中山将平)
ニャル子さんはなにをやってるんでしょうね……!(笑)
「未知なるカダスを夢に求めて」で猫の強さは異常ですよね。
ラヴクラフトが猫好きだったとはいえ、なんという贔屓設定。
カダスには是非一匹といわず連れて行きたいものです。


(ジャラル・アフサラールさん)
確か三上達矢さんの絵で漫画になっていますね。この方が「三上 龍哉」名義で描かれた「極道一直線」というギャグ漫画大好きだったので、このギャップが何ともイイデス。

(お返事:ちゃな)
ジャラルさん、お便りありがとうございます!
漫画版は未読ですが、表紙だけ見る限り原作の雰囲気がよく出ていそうな感じですね。是非実写映画化してほしかった!


(ジャラル・アフサラールさん)
出てくる3人の名探偵の元ネタがミステリーファンなら即座に判明するのが面白い所ですね。
まあ元々古典的なミステリー小説はゲームブック的な側面ありまして、エラリークィーンの作品のように「読者への挑戦状」が付いていて、最終章の謎ときまでに犯人とトリックを暴く証拠が全て小説内で提示されたいるから名探偵と同様に読者に謎を全て解いてみろ!という作者からの挑戦が付いているのもありますから。

(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます。その通りです! 作者山口先生のお話は、あっちこっちにミステリー好きのツボをくすぐる小ネタ満載ですよね。『キッド・ピストルズ』シリーズなんか、遊び心満載です。
そうそう。『古典ミステリー』は「知的なゲームにいざなう」ブックでしたよね。エラリー・クイーン(だったっけ? ちょっと失念!)なんか、メモ書きの余白まで発行した本につけていた、って話聞きました。で、「新本格」で、有栖川有栖先生、法月綸太郎先生たち、ちゃんとガチガチのパズラー小説も受け継がれているのが、うれしいですよね。
バーチャル図書委員長、かなでひびきでしたー。


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2020年5月15日金曜日

クトゥルフ神話TRPGノベル オレの正気度が低すぎる@みんなの本棚123 No.2669

「みんなの本棚」のコンセプトは「読者参加+シンプルな本紹介」です。
FT新聞読者が蔵書のなかから、FT新聞をお読みいただいているあなたの関心をひきそうな作品をピックアップし、簡単にご紹介してくださるというものです。
第123回は、ジャラルさんからのご紹介です。
よろしくおねがいします!

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◆まえがき
 こんにちは。オジサンファンタジーファンのジャラルといいます。
 今回も蔵書をご紹介させていただく機会をもらえました。
 今回紹介するのは初の『クトゥルフ神話TRPG』小説です。

◆『クトゥルフ神話TRPGノベル オレの正気度が低すぎる』
内山靖二郎/アーカム メンバーズ(著)

 内山靖二郎氏は以前ご紹介した『クトゥルフ神話TPRG入門 るるいえびぎなーず』や人気リプレイシリーズ『るるいえあんてぃーく』等を書かれ、今や日本のクトゥルフ関係の第一人者となりつつある方ですが、ライトノベル作家としての顔もお持ちで、『神様のおきにいり』(*1)や『わるぷるキス!』(*2)等の作品でMF文庫Jを中心に活躍されています。その内山氏が「クトゥルフ神話TRPG」を題材にして書かれた小説を今回ご紹介します。

 オンラインで『クトゥルフ神話TRPG』を楽しんでいる普通の社会人ゲーマーの「オレ」が新規キーパーの「プレイヤー募集」のお誘いをSNSで見つけてシナリオに参加すると、突然世界は変動し、『クトゥルフ神話TRPG』の世界に探索者(プレイヤー)として転生してしまった! しかも悪ノリでネタキャラ(*3)を作ったせいでキャラクターの『クトゥルフ神話TRPG』で大事な正気度は低すぎる始末……果たして狂気に陥らずにTRPGのルール(お約束)に支配された世界で、中の人のTRPG知識を駆使して黒幕(キーパー)に勝ち生還することは出来るのか!?

 あくまで『クトゥルフ神話TRPG』の世界なので頻繁にコロコロ……とTRPGファンに聞き覚えのある音と共に(笑)透明のダイスが目前に現れて主人公の行動を判定したりします。正気度チェックへの失敗の危険を恐れつつ、主人公は自分のリアルクトゥルフ知識とTRPG経験を頼りに探索を続けます。クトゥルフ神話TRPGあるある状況やメタ知識がふんだんに使われているクトゥルフ神話TRPGプレイヤー向けのライトノベルと言えます。

 実際「あの技能はこういう時に使えるのか便利だな〜」と思わせる所もありまして、アマゾンレビューで「プレイヤーなら勉強にもなる」と書かれてあるのは当然でしょう。私もあるアイテム?が「強い!」と思いましたので、もし今度セッションをする機会があれば、キーパーが許可すれば「アイテム?」(*4)持ち込もうと思いました。

 あとがきによると作者の内山氏は『クトゥルフ神話TRPG』では犯罪者の探索者をプレイする事が多いそうで、ヤクザやギャングを作るのが大好きな私なので共感してしまいました(笑)。

*1 メディアファクトリー主催の第2回MF文庫Jライトノベル新人賞で佳作を受賞した作品(全4巻)。人ならざる物との交流を描く。

*2 先天的に魔法が使える女の子たちのために整備された魔女特区、通称「セイラム」という女の子ばかりの高校に転入した少年が主人公の小説(既刊3巻)。

*3 ここではウケ狙いや元ネタキャラクター再現のみに全リソースを費やした役立たずプレイヤーキャラクターの意味。ニコ動のセッションなんかでは「元ネタ "○○××"の▽▽◆◆」というキャラクターが溢れんばかりにいます(笑)。ちなみに小説のキャラクターはダイスで出た数値を元にウケ狙いキャラ作ったみたいで元ネタは無いようですが、似たような設定の主人公が出る漫画二本ほど知っています(笑)。

*4 ラヴクラフトの『闇にささやくもの』で某クリーチャーを撃退したアイテム?

◆書誌情報
『クトゥルフ神話TRPGノベル オレの正気度が低すぎる』
 内山靖二郎/アーカム メンバーズ (著) ttl (イラスト)
 KADOKAWA(ドラゴンノベルス) − 2019/2/5
 単行本 ¥1,430  Kindle版 ¥1,287

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◆次回予告(編集部より)
 コンセプトにあるとおり、次はこれを読んでいるあなたの出番です☆
 今、本棚に並んでいる蔵書から、「紹介したいなぁ」と思うものをとりだしてみてください。
 あとは感想欄から「この本を紹介したい」とご連絡いただければOKです。
 おってこちらからコンタクトをとらせていただきます。

 ちなみに本棚に並んでいるならジャンルは問いません。
 マンガ、雑誌、画集、写真集、小説でも学術書でも、なんでもござれです☆

 ご連絡はコチラから(メールアドレスの記載をお忘れなく)↓
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2020年5月14日木曜日

クトゥルフとゲームブック第32回 No.2668

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クトゥルフとゲームブック 第32回
(中山将平)

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「どのように、クトゥルフ神話を友人に紹介するか」
 これはクトゥルフ神話に魅力を感じた者の悩む、究極のテーマの一つではないでしょうか。
 ラヴクラフトやダーレス、クラーク・アシュトン・スミス他様々な書き手によって紡がれてきた暗黒神話。
 この記事を読んでくださっている方は、まさにいま興味を深められているのではないかと思っています。

 興味が深まれば、友人に紹介したくもなろうというもの。(必ずしもそうとは限りませんが、それはそれとして……)
 しかし、熱く語っても友人はいまいちピンとこない……なんてこともあるいはあるかもしれません。

 そこで今日は、「クトゥルフ神話を友人に紹介するとしたら」をテーマに、僕なりに「紹介したい小説作品」と「オススメしたい楽しみ方」を書いてみようかなと思います。
 「紹介の仕方」を考えることは、「作品へのアプローチの仕方」や「自分の興味の整理」について考えることでもあります。もしかすると、これ自体興味を深める一助にしていただけるかもしれません。そうだったらいいな……と願いつつ、お話していきたいと思います。

 あらためまして、おはようございます。
「最近FT書房のTWITTERとBOOTHでの動きが激アツ!」と感じているイラストレーターの中山将平です。

 前回ご紹介した「100パラグラフゲームブック集1」の発売。
 それに加えて、エアコミケに参加して、新作ゲームブック「怪物狩猟」も発表。
 さらにさらに既刊作品でありながら半ば幻と化しつつあった「サイドショー」「バーグルへの復讐」「宝石島の脱出(ソロアド版)」の補充も完了。
 おまけおまけに、実はこっそりもう在庫切れと思われていた「夏のおもいで」と「TtTマガジンvol.1」、「大魔導城のワナ」も杉本=ヨハネ氏の家で数冊発見され、入荷!

 ほんの数か月の間にかなり変化があったので、ワクワクしながら僕も一読者として作品を楽しんでいます。

 「なんだそれ、チェックしてみるか……」という方は下のURLからどうぞ。

 https://ftbooks.booth.pm/

 それでは、本題に移りたいと思います。

■ 大前提:相手にとって興味のある要素はあるのか?
 友人にクトゥルフ神話を紹介する。
 それは楽しいことですが、友人が話に「共感」を抱いてくれるとさらに嬉しいですよね。
 つまり、「それ面白そうだな」って言ってくれると。
 せっかく紹介するからには、そう思ってもらえるような要素を友人に提示したいなぁと考える方は少なくないのではないでしょうか。
 僕もそう思う方でして、今日はこの「共感」ってやつを引き出すのに考えていることをまとめた記事でもあります。

 さて、この場合、友人の性格というのがどうしても大切になってくると思います。
 邪神の造形が大好きな僕が、描かれたクトゥルフの造形について延々と美学を語ったとしても、それは自分の特殊な趣味を伝えているだけになってしまいますよね。
 もちろん、現実的にはそんなコミュニケーションって少なくないと思うのですが、今日は前述の「共感」を主眼に考えたいと思います。

 紹介したいご友人は、どんなことに興味を持たれているでしょうか。
 A.「ミステリー的な謎解きの要素」
 B.「ゴジラやウルトラマン・仮面ライダーのような怪獣・怪人が活躍する要素」
 C.「残酷描写を含む・含まないに関わらず、背筋が冷たくなるホラー要素」
 D.「超常現象や、異世界の存在等など、冒険ファンタジー的な要素」

 記事の長さも無限ではありませんので、今日はこの4つに的を絞りたいと思います。
 それぞれの相手に合わせて、「紹介したい小説作品」と「オススメしたい楽しみ方」をご紹介する形式でのお届けです。

■ A.「ミステリー的な謎解きの要素」に興味のある友人に紹介する
 謎解き。それは、クトゥルフ作品の一つの要素です。
 忘れ去られた古代の謎を解くこと。
 知ってしまったら人生を覆されるような秘密を、あばいてしまう危険な好奇心。
 謎の答えはすっきりと理解できるようなものではない場合も多々ありますが、それも含めてクトゥルフ神話は深淵への挑戦とも感じられます。
 そういうのが好きな方に紹介する場合、僕は小説作品としてはズバリ「クトゥルフの呼び声」をあげます。謎を解きたいという好奇心が、主人公を知ってはいけない真実に向かわせる作品です。
 楽しみ方としてはオススメしたいのは「TRPG」。特に「探索系のシナリオ」はミステリー欲に刺さるものがあると信じています。

■ B.「怪獣・怪人が活躍する要素」に興味のある友人に紹介する
 怪獣とクトゥルフは違う……いえ、そうと決めるには早いですよね。
 実際、邪神たちの姿形は魅力的ですし、それは多くのイラスト・立体作品等などが裏付けていると思います。
 ボードゲーム「新キング・オブ・トーキョー」は怪獣バトルがテーマですが、拡張でクトゥルフが出ています。更にマニアックな「モンスターアポカリプス」(日本語版はなし)という怪獣バトルミニチュアゲームでは、なみいる怪獣たちの中でクトゥルー(らしきもの)が一つの勢力を作っています。
 クトゥルフ神話のそういう面が好きな方に小説作品を紹介するなら「ダゴン」でしょうか。
 短い作品の中で、主人公が目撃する怪物「ダゴン」の描写。胸を射抜かれます。
 楽しみ方としてオススメしたいのは前述の「ボードゲーム」、それから「カードゲーム」「立体作品や画集」「テレビゲーム」「アニメ」です。なぜかたくさん出てきてしまいました。
 「クトゥルフ神話」そのものではなく、「クトゥルフ神話のオマージュ」も十二分に楽しまれる可能性がある方々だと思いますので、クトゥルフ要素のあるアニメやテレビゲーム、カードゲームも興味を持たれることかと。

■ C.「残酷描写を含む・含まないに関わらず、背筋が冷たくなるホラー要素」
 クトゥルフ神話といえば、ジャンルはコズミックホラー。そう思われる方も多いことと思います。
 実際、ホラーとしてのクトゥルフ作品は面白いものぞろいですので、素養のある方に紹介するのは楽しいものです。
 特に小説を一作紹介するなら、僕は「宇宙からの色(異次元の色彩とも)」を挙げます。
 僕自身、読んだとき本当にドキドキして引き込まれました。
 「小説」以外にオススメの楽しみ方は「漫画」と「映画」。
 好みに合わせて手軽に触れられるものをチョイスされるのが良いと思います。
 ただ、「漫画」はともかく「映画」は意外と知られていないかもですね。
 「ダゴン」(インスマスの影の映画版)や「ダンウィッチの怪」など、ズバリクトゥルフ神話作品を映像化した映画もあります。それもオススメですが、クトゥルフ神話が影響を与えたと言われる作品も見逃せません。有名どころで、「エイリアン」シリーズ等が挙げられると聞いたことがあります。実際、楽しさは似ている部分もあるかな……と思います。

■ D.「超常現象や、異世界の存在等など、冒険ファンタジー的な要素」
 クトゥルフはファンタジーではない?……いいえ、そうとも言い切れません。ファンタジー色が強い作品は、生みの親のラグクラフトでも描いています。
 多くの魔導書、邪神、神話生物が登場するクトゥルフ神話は、見方によってはかなりファンタジーと親和性が高いものなのではないでしょうか。
 一作品、小説を紹介するなら「未知なるカダスを夢に求めて」。
 この作品かなり好きなのですが、僕自身は完全にファンタジーだと思っています。冒険もので、ピンチあり、さまざまな脅威あり、味方あり、目標あり……と、大変ワクワクする作品です。
 ともあれ、ちょっと長い作品ですので、もし小説が苦手な方が相手でしたら別の楽しみ方をオススメするかなとも思います。例えば「ゲームブック」。
 そう、手前味噌ながらFT書房の「クトゥルフのいざない」は冒険好きの方にもかなりマッチする内容だと思っていますので、そういうのが好きな方に特にオススメします。
 ちなみにもう一作FT書房が出している「クトゥルー短編集」はよりホラー好きの方に刺さりやすい内容寄りかなと僕個人は思っています。

■ どうしてこう考えたか
 一言でクトゥルフ神話といっても、さまざまな面がありますよね。
 友人に紹介するとき、僕自身いつも悩みながらしているので、今回はこんな記事を作ってみました。
 クトゥルフ神話は、「知ってないと楽しめないジャンル」では決してないと思います。
 実際、昨今気軽に楽しめる環境は広がり続けているかと。
 その中で、気軽に共感しあえる仲間が増えるといいなぁとつぶやきつつ、今日はそろそろこのあたりにしておこうかなと思います。
 それでは、良きクトゥルフ・ライフを!


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2020年5月13日水曜日

第37回【魔の国の王女】ゲームブックリプレイ No.2667

第37回【魔の国の王女】ゲームブックリプレイ(感想その2)


さて、今回は【魔の国の王女】の感想記事の続きになります。いろいろツッコミを入れていきますよ。
さらに最後にはバグ報告も。お手元に本作がある方は、プレイ前にぜひ修正を。
もちろん今回もネタバレ全開ですので、ご注意願います。


●アグリアの気絶からの回復について

仲間がいて、時間を管理するシステムである今作は、どうしても内部処理が複雑にならざるを得ません。
そのため、特に「仲間」と「時間」に関して整合性に問題があると感じるところが数多くありました。

この作品の冒頭で、アグリアは無茶な召喚をして気絶してしまいます。
その後、ムンフェイスの街中では、行動によっては、アグリアはまだ気絶したままという描写があります。
しかしそこまでで、アグリアが意識を取り戻したという描写はどこにもありません。
かなり騒がしいキャラクターとしてキャラ立てしてきているので、意識を取り戻した場面で主人公との間でなんらかのやりとりがあるに違いありません。
この描写がないのはちょっと片手落ちに感じました。
私は最初にエメランダ鉱山に寄ったとき、気絶していたはずのアグリアが元気にトロッコに乗り込んでしまったのには面食らいましたよ。

これを解決するための手法としては、タイムカウンターが1になった時に、指定のパラグラフに飛んでイベントを起こす、というやり方があると思います。
タイムカウンターが1になる前に起きている場面がないかのバグチェックは必要ですが。


●アグリアの修行について

アグリアの修行の場面。
パラグラフ351で、アグリアがムーラダーラのもとで修行をお願いする場面で、アグリアは「1週間で仙人コース」をお願いします。ここには選択肢はなく、アグリアは必ずこの修行をお願いすることになります。たとえ制限時間が7日を切っていたとしても、です。
ソロモン王救出を第一に考えているアグリアが決して取るはずのない行動です。
ただ、それではアグリアが「時間が足りない」と断れば良いかというと、ことはそう単純ではありません。
たとえ一見間に合わなくても、サッボスの砂時計で時間をスキップして間に合わせたり、エメランダ鉱山で悪魔サッボスの力を借りて、時を巻き戻すことが可能だからです。
なのでここの処理は、もう少し気を配る必要があったと感じます。


●18日経過後のアグリア在籍問題について

上記に関連した整合性の不具合です。
この作品ではタイムカウンターが18を迎えた時点でパラグラフ444に進むと、ソロモン王処刑のイベントが進むようになっています。
パラグラフ444では、主人公が現在ムンフェイスにいるか、それ以外の場所にいるかを問われます。もちろん、処刑が実施されるムンフェイスにいなければ、間に合わずにゲームオーバーになります。
間に合った場合には、主人公は、アグリア、ミスレンとともにソロモン王救出作戦を始めることになります。
でもちょっと待って。実は主人公がムンフェイスにいても、アグリアはいないパターンがあります。そう、上記の修行中の場合です。
それでも普通にストーリーは進行し、アグリアも当たり前のようにムンフェイスに登場してしまうのです。
ここはパラグラフ444の選択肢で、

・あなた、アグリア、ミスレンの3人がムンフェイスにいるなら
・誰か1人でも欠けているなら

と修正し、誰か1人でも欠けているパターンの文面を、状況に合わせて修正するのが良いのではないかと思います。
または、修行中のアグリアが修行をほっぽり出して参戦する描写にするとかね。


●鳥の羽根問題について

この作品では移動手段として、悪魔デュラハンとイカロスは重宝します。タイムカウンターを進めずに高速移動ができます。
イカロス召喚には鳥の羽根が必要ですが、本作中では私がプレイする限り、鳥の羽根を手に入れられる場面を見つけられませんでした。
本当は使いにくい悪魔をさりげなく配置しておくのもゲームブックの手法のひとつと思いますので、そこに文句をつけるつもりはありません。
私が問題に感じたのは、逆に、明らかに鳥の羽根が手に入ってしかるべき場面が作中に少なくとも3か所あるのに、そのいずれでも鳥の羽根についての言及がない点です。
3か所というのは、「鳥女と戦う場面」「ロック鳥が羽を休めている場面」「凶暴な鶏が老人を木の上に追いやっている場面」のことです。
そのうちロック鳥は、羽が大きすぎて持って行けないという可能性もありますが、他の場面では、鳥の羽根が手に入らない方が不自然です。
特にパラグラフ53の鳥女との戦闘では、イラストで鳥の羽根が舞い散っているくらいなのですから。
気持ちよくプレイするためには、読者目線から「手に入って当たり前」と思う場面では、きっちり手に入るか、あるいは手に入れられない合理的な説明をきちんと入れておく必要がありますね。
この「鳥の羽根」が作中で手に入るかどうかで、ナシル湖を渡る難度が激変することになります。イカロスなら余裕で渡れますので。
しかし正解ルートである聖魚シェラの助力のことを考えると、他に楽な手段を取りやすくても良しとするかどうかは、作者の意図次第かもしれません。


●混沌宮への移動問題

伝承地のひとつ混沌宮は、徒歩なら6日、馬なら3日の距離にあります。
あまりに遠すぎるためか、移動時の悪魔召喚では、デュラハンを呼んでも混沌宮に行く選択肢は出ません。
より高性能な移動手段である。フルフルの角を使った瞬間移動か、緑の庭から繋がる次元の門を通れば移動可能になっています。
そんな混沌宮ですが、パラグラフ395で、ソロモン王はデュラハンを召喚し、その日のうちに混沌宮に移動しているのです。
なぜその日のうちと断言できるかというと、この日が制限時間のリミットで、悪魔との約束の期限だからです。
なので、真面目にプレイしていた人ほど気づいて「なんでソロモン王はデュラハンで混沌宮に行けるんだよ!」というツッコミ必至。
可能なら、今までのデュラハン移動の選択肢には混沌宮がなくてはおかしいですし、不可能ならば、ソロモン王にはデュラハンにかわる別の移動手段で混沌宮に向かって欲しいものです。

混沌宮への移動問題にもうひとつ加えるなら、ゴーレムの移動時間問題があります。
ムンフェイス近郊、疾走族のイベントで、ファウストを召喚し、ゴーレムを創ると、ゴーレムは混沌宮の守りに向かいます。
このゴーレムが、何日かかって混沌宮にたどり着けるのか、魔天での戦いに間に合うのか、というのは気になります。
特にタイムカウンターが18になる直前にこのイベントが起きたとしたら、ゴーレム、間に合うの? と思ってしまいます。


●エメランダ鉱山の隠し部屋問題

ネズミのジェルズの情報で、エメランダ鉱山の最深部に隠し部屋があるという情報を手に入れ、パラグラフジャンプが可能になります。
しかしこのパラグラフジャンプは、初めてエメランダ鉱山に入ったときにしか行けない場所に設定されているのです。
これでは、隠し部屋の情報を手に入れて潜り直しても、決して見つけられません。
ここは確実に修正が必要なポイントかと思います。
ちなみに初めて行ったときのパラグラフは「151」で、2回目以降に行くパラグラフは「192」です。
「151」にだけパラグラフジャンプが仕込んであります。


●バグ報告

それでは本作品のバグ報告になります。

P29 「王女」→「少女」
(誤)エルフが王女を抱えてその風景に飛び込みます。
(正)エルフが少女を抱えてその風景に飛び込みます。
※たしかにアグリアは王女ですが、本人がまだ正体を明かしていません。誤字でネタバレw

P30
(誤)エルフ青年=ミスレンと説明する場面がないのに唐突にミスレンの名前が地の文に登場。
(正)この場面以前に、ミスレンが名乗る、またはアグリアがミスレンを紹介する場面を挿入する。

5、6、7、8 パラグラフ番号を太字に修正

5 「329」を太字に修正

7 「250」「300」「402」を太字に修正

8 「13」を太字に修正

36 (推測)
(誤)細い道を進むなら157へ はっきりした道を進むなら126へ
(正)細い道を進むなら126へ はっきりした道を進むなら157へ
※157の冒頭には「はっきりした獣道を〜」とあり、126は「道を進んでいくと〜」で始まります。
 ただここの場合、「獣道」という表現が曲者なのです。
 「はっきりした道」=「道」で、「細い道」=「はっきりした獣道」である可能性もあるので、間違っていないのかもしれません。
 それでもはっきり言えることは、「表現が紛らわしいためわかりにくい」です。表現ははっきりと!

173 大きな鳥が羽を休めている。→251313632
※ここでジェルズ情報のパラグラフジャンプが可能ですが、「大きな鳥の巣」という記述がないので判断しがたいです。
 そしてパラグラフジャンプ先の2513133632について。
 ここではジェルズがチーズを拾ってくる描写になっています。
 しかしジェルズはここに来る前に、緑の庭ですでに別れている可能性があるため、展開がおかしくなる可能性があります。
 たとえばジェルズを登場させず、ジェルズの情報に基づいて発見するような描写に変更すればすっきりするかもしれません。

193 酒場で客に話しかける場面
(追記)やはり話しかけないことにしたのなら162へ戻る

281 「に」→「の」
(誤)ミスレンをお目付け役にしたのも彼女に仕業だという。
(正)ミスレンをお目付け役にしたのも彼女の仕業だという。

354→611 ナシル湖から帰る場面
611 デュラハンを呼んだのにテスカトリポカのメッセージ。完全なジャンプミス。ジャンプ先は、竜巻女に対するテスカトリポカの忠告の場面。
※正しくは「デュラハンには湖を渡れない」として無駄打ちになるか、イカロスと同様に湖を渡りきるか、かと思われます。
 ただ、デュラハンでも湖は渡れる、ということになると、行きの悪魔召喚の選択肢にデュラハンがいないのはおかしい、という話にもなってしまいます。

462 エピローグ
※主人公はアルフィニオンのもと「皇子」として迎えられたとあるが、作品が「魔の国の王女」なのでアグリアは王女。それに対応する「おうじ」は、「皇子」ではなく「王子」が正しいはず。そもそも王国なので。
と、思っていた時代が私にもありました。
しかし遡ると、【魔の王の少年】作中、パラグラフ398には「イラジエル三代皇帝アグリアの手記」という文言が。さらに376をはじめとする随所で主人公を「皇子」と呼ぶ面々が。バグラーが登場するたび「皇子」と呼びかけています。【魔の王の少年】は、「悪魔を総べる王」という意味に取れば、イラジエルが帝国だろうと王国だろうと問題ないとは思います。でも今作は【魔の国の王女】なのですから、「国」は王国です。
「王国」なら「国王」で「王子」「王女」。「帝国」なら「皇帝」で「皇子」「皇女」。本筋には関係しないとはいえ、統治形態の違いであり、タイトルにも関わってくることがらなので、ここの表記のゆらぎは、はっきり統一しておく必要があります。

489 ルーシーの庭
※クリア後に4個の時の果実を渡すと、移動先の選択になってしまい、クリア前の世界に戻されてしまうバグが発生します。


●おわりに

これだけツッコミばかりを書き散らかしていると、誤解されそうなのではっきり言っておきますが、私はこの作品が大好きです。
だからこそ「惜しかった!」と思ってしまうところが多くて、ついついいろいろ言ってしまいました。
これだけ突っ込んでいるにもかかわらず、むしろすっごく楽しんだ自分がいるので、本当に、もったいなかったなあ、と思います。
ただ、突っ込まれる=すべて悪とは私は思っていません。
整合性バグは修正するべきだと思いますが、それ以外の、思わず突っ込みたくなってしまう部分というのは、作品にインパクトを残す部分でもあります。
なのでもっと仕込んでおいて、私に突っ込ませて欲しいとさえ思います。

この作品の凄いところは、高難度にもかかわらず、比較的低い技術点でも切り抜けられる方策を用意してあるところ。
さすがに全ステイタスが最弱だと厳しいとは思います。技術点が低いかわりに体力点や運点でカバーができる、というバランスにはなっています。
強くても弱くても楽しめる作品というのは本当に面白い作品なのだと思います。

ところで、ここまでリプレイを書かせていただきまして、すっごくムズムズしていることがあります。
この「悪魔召喚シリーズ」って、今流行の、というかやや流行を過ぎた感のある「異世界転生もの」「俺TUEEEE作品」との親和性がものすごく高いと思うんですよね。
伝説の悪魔召喚士であり初代イラジエル国王であるソロモン王でさえ5体の悪魔しか従えられなかったという伝承があったところに、主人公は48の悪魔(ゲーム上では48だけど、本当は72かも)を使役できる設定とか、桁違いもいいところです。それに、ゲームブックのプレイヤーとキャラクターの関係は、異世界転生ものにも落とし込みやすいです。
この主人公を転生者にするのは抵抗がありますが、悪魔の元ネタにはツッコミを入れたい。そうだテスカトリポカに異世界の知識を教え込まれたことにしようw
この作品を原作にして、悪魔たちにラノベ風テイストや性格づけをして出番も増やして小説投稿サイトで連載したら、けっこうヒットするんじゃないかなあ。許可もらえたら書いてみたいなあ。時間的な余裕もないのに、そんな妄想までしてしまう私でした。

以上で、【魔の国の王女】のリプレイを終わります。
次回作は、成長した主人公が無双する完結編です。もう、楽しみにするしかない!
清水龍之介先生、期待しています!


●追記
すべてのプレイを終えた後に、FT書房のホームページから、誤植のお詫びと訂正を発見しました。
https://blog.goo.ne.jp/ftbooks/e/7a1cf1fc423191e3253aa0658f66f7c1
ミスレンが自ら名乗る文面の追記と、エメランダ鉱山の最奥部を2度目以降に調査できるような修正がありました。
最初に見つけていればしなくても良い回り道がたくさん!
もうひとつ、「初期アイテムにフルフルの角を加える」とあったのですが、冒険中にも入手可能ですから、これが最初からあると、探索がものすごく楽になってしまいそうです。


【次回予告】
次からは、FT書房の作品から少し離れ、ちゃなさんの作品【ネイキッドウォリアー】に挑戦させていただきます。
ちゃなさんは、2018.12.16のFT新聞2165号にて紹介されたこともある方で、読みやすい文章、プレイしやすさを重視したシステム、人を惹きこむ導入と三拍子そろったゲームブック作家さんです。
その後は、杉本=ヨハネ氏の大作【サルダザールの城塞】のリプレイも控えています。お楽しみに!


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2020年5月12日火曜日

AFF『ソーサリー・キャンペーン』第12回・番外編『スログの追加メニュー(後編)』 No.2666

■AFF2用『ソーサリー・キャンペーン』追加シナリオプロット 第12回■

おはようございます。紫隠ねこです。
これまで『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』用のシナリオプロット『マンパンの双蛇』と、
ゲームブック版の最終巻とは異なる展開のシナリオプロット『虚構の王』を紹介いたしました。
今回は、前回の記事『スログの追加メニュー』の内容を若干拡張するためのオプションを紹介いたします。


■AFF2用シナリオプロット番外編『スログの追加メニュー(後編)』■ 

◆思わぬ客人(※ブロンウィンが同行しており、ヒーローたちが厨房で食事をした場合)
砦の厨房に立ち寄るのは、ヒーローたちだけではありません。マンパンにおいて地位の高い部隊に所属している衛兵たちも、特別なオーダーをするために厨房を訪れる事があります。ヒーローたちが、自分たちが注文した風変わりな料理が出来上がるのを待っている間、そのような者が食事スペースにやって来るかも知れません。この『思わぬ客人』が誰なのかは、サイコロを1個振った出目によって決定されます。ただし『思わぬ客人』の判定は、一回のシナリオで一度しか行いません。

 出目が1:誰も来ない(※食事の間、衛兵に遭遇する事はありません)
 出目が2:サイ人の槍使い
 出目が3:トカゲ人の女戦士
 出目が4:ハイタカの鳥人
 出目が5:真紅の騎士
 出目が6:謎めいた人物


●サイ人の槍使い
厨房の西側に見える扉が開いたかと思うと、黒塗りのレザー・ホバークを身につけたサイ人の男が姿を現します。頭部には、鼻先の一本角と上に突き出した耳を穴に通して装着する皮製のヘッドギアを付けていて、それは鎧と同様に黒く塗られています。彼は左耳に真鍮のピアスをしており、厨房の天井から吊るされたランタンの灯りを受けた事で、それはキラキラと輝いています。右手に戦槍を持っており、腰に巻いた剣帯には、その右側に短剣が収まった鞘を吊るしているだけでなく、帯の左側に取り付けられた皮製の輪に柄を通すようにして、手斧を携行しています。また彼の左腕には、マンパンの紋章である黒いユニコーンの頭部が描かれた腕章が付けられています。

サイ人は迷う事なく、ヒーローたちがいる食事スペースの方へと真っ直ぐに歩いてきます。ヒーローたちは、自分たちがアナランドの密偵である事に気付かれたのではないか思うかも知れませんが、彼は特に気にする事なく、食事スペース近くの壁に自分の槍を立て掛けると、隣の机の席に腰を下ろし、それから深くため息をつきます。この新たな客人に気付いたオシミノーグが、オーダーを受けるために、小走りで食事スペースの方へとやって来ます。そして、サイ人の渋面を目にしたフレイヤーの料理人は、彼にその理由を尋ねます。

「何か嫌な事でもあったんですか」

「テン・アップの賭け勝負で、フォージに負けた」

「フォージ……ああ、よくつまみ食いをしようとして、料理長に怒鳴られているレッド・アイですか。規律をいい加減に守っている男に負けたとなれば、それは悔しいでしょうね」

「いや、そうではない。フォージは、品性にやや欠ける男だが、テン・アップに関しては優れた才能の持ち主だ。あいつと勝負して、1ラウンドでも勝利を収めた者は誰一人いない。だが、俺はその勝負の2ラウンド目で、あいつに僅差で勝った。そして最終ラウンドも、ほぼ互角の勝負だった。お互いに、あと一度だけ正確なショットをこなせばゲームの勝利を収められる状況になった時、俺は思わず『もしかしたら、無敗のフォージに勝てるんじゃないか』と考えてしまった。それが間違いだった。気の緩みから手が僅かに震えて、最後の一投でミスショットをやらかした。そしてフォージは狙いを外さなかった。彼は俺の健闘を称えてくれたが、俺にとっては、あれが最後の勝負だった。本当に残念だ……」

オシミノーグは、自分の顎と思わしき箇所に触手の先端を当てながら「まさか彼が、テン・アップのプロだったとはねぇ……」と小声で呟いた後、サイ人に向かって「賭け事は、もうおやめになるつもりで?」と尋ねます。

「まぁ、そんなところだ。仕事が忙しくなりそうなんでな。仲間内で遊んでいる時ではなくなった。それよりシム、いつものサーペント・パイとスープを頼む」

オシミノーグは「分かりました」と一言述べると、すぐに調理台の方へと戻っていきます。少し経つと、彼はヒーローたちよりも後からやって来た、サイ人がオーダーした料理を運んできます。彼は料理を載せた盆を、サイ人の前に置くと「それでは、どうぞごゆっくり」と声をかけた後、ヒーローたちの方に向き直ってから「衛兵たちの夕食と時間が重なってしまったとは言え、調理に遅れが生じていて申し訳ありません。出来上がった順に運びますので、今しばらくお待ちください」と謝り、再び調理台の方に向かいます。サイ人は、ヒーローたちに顔を向けると「済まないな。急ぎの用事があるので融通してもらった。だから、シムの事を責めないでやってくれ」と言って、少し急ぐように料理を食べ始めます。

やがて食事を終えたサイ人は、自分の席から立ち上がると、予備の武器が剣帯にしっかり固定されているか確認します。それから壁に立て掛けた自分の槍を手にして、西側の扉から厨房を後にします。ちなみにヒーローたちの注文が運ばれてくるのは、このサイ人が、厨房を立ち去ってから数分後の事になります。

なお、ヒーローたちは知る事はありませんが、このサイ人は、マンパンにおいて実力者の集団である「キアラ隊」の主力メンバーの一人、"角竜"のウェインです。彼は、今夜中に自分の部隊が反乱を起こす事を知っています。


●トカゲ人の女戦士
厨房の東側にある戸口の方から、赤い髪を長く伸ばした、紫色の肌をしたトカゲ人の女戦士が姿を現すと、食事スペースの方へと歩いてきます。彼女は、ふくよかな胸にサラシを巻き、その上に黒塗りのブレスト・プレートを着込んでいます。下半身は、前垂れのある腰布を巻いており、ブーツの類は履いていません。肌の露出した両腕と太腿には、染料によって戦化粧が施されていて、左腕にはマンパンの紋章が描かれた腕章を付けています。衛兵と言うよりは、蛮人を思わせるような格好です。また彼女は両脚に金属製の脛当てを付けていて、剣帯には、鞘に収められた幅広の曲剣が吊るしてあります。背中には射撃武器として、女族サチュロスの戦士団が携行していた『乱れ打ち』と呼ばれる三連発式のクロスボウを担いでいます。

彼女は爬虫類の頭部と尻尾を持ち、そして鱗に覆われた肌をしていますが、抜群のプロポーションの持ち主で、異形でありながらも独特の美しさを感じさせます。このトカゲ人の女戦士の姿を目にしたブロンウィンは、緊張した面持ちになります。それが両者のプロポーションの差が理由でない事は、他のヒーローたちの目から見ても明らかです。その程度の事で、ブロンウィンが与えられた任務から注意をそらすような人物でない事は、これまでの旅でヒーローたちも良く分かっています。こちらの姿にトカゲ人が気付く前に、ブロンウィンがヒーローたちに忠告します。

「……気を付けろ。おそらく彼女は、女将が口にした『あの部隊の方々』の一人だ。仲間と一緒ではないからといって、全員でかかれば打ち倒せるとか考えたりはするな。誰だって、防戦しながら応援を求める事はできる。人の多い厨房で、そのような事をすれば、新手の衛兵を呼ばれて私たちはおしまいだ。自分がマンパンに身を置く古参兵だと思い込んで、ごく自然に振舞うんだ。相手が疑ってくるようだったらシラを切り通せ」

ヒーローたちは頷くと、敵が近付いてきた事に対する動揺を心の内に隠し、注文した食事がいつ運ばれるのか待ちぼうけをしている振りを決め込みます。やがてトカゲ人が、食事スペースへとやって来ると、ヒーローたちがいる机の前で立ち止まってから「二週間ほど前、彼の部隊に新入りが何人か加わったと聞いていたけど、あなたたちだったの」と声をかけてきます。それからトカゲ人は机の上に少し身を乗り出すと、ブロンウィン、そしてパーティの中に女性のヒーローがいれば、彼女たちの顔を眺め回します。これに対してブロンウィンは、うろたえる事なく、何食わぬ顔で偽名を名乗ります。

「私は、トルーブレイドだ。作物の収穫を祝う祭での、部族の仲間たちとの力比べにも飽きてしまってな。ここでなら、もっと自分の戦いの技を生かせるのではないかと思ったんだ。私たちは、今の部隊に配属されたばかりなので、戦いの経験豊かな貴方たちの足を引っ張ってしまう事もあるかも知れないが、その時は、ご指導をお願いしたい」

そう言ってブロンウィンが手を差し出すと、トカゲ人は彼女の握手に応じると、にっこりと微笑みます。

「あたしは、キアラっていうんだ。マンパンで、女でも実力を示せる強者が増えてくれたのは嬉しいねぇ。ここの女将さんは、皆の料理を作ってくれているから相当の実力者と言えるけど、戦いの技に関しては、銀星とミリム、そしてあたしを合わせて三人しか腕の立つ者はいなかった。アナランドがちょっかいを出してくるような事さえなければ、あなたも一緒に、女だけで世間話をしながら食事というのも悪くはなかったんだけどね。……だけど、それはもう叶わない。≪冠≫がマンパンを変えてしまった。運命の日が訪れるのを、早めてしまった……」

言葉の最後の方になると、キアラはヒーローたちから少し視線をそらし、過去を懐かしむような言い方になります。それから彼女は「あの男も、タイタンを去ってしまった」と小声で寂しそうに呟いた後、再びヒーローたちの方に視線を戻します。

「それよりも、あなたたちは、配属されて間もないうちに重要な任務を与えられたから、てっきりプレッシャーに押し潰されているんじゃないかと思い込んでいたよ。でも、その分だと問題はなさそうだね。食事が済んだら、いつでも戦場に向かえるように準備を整えておくんだね。もう、あまりゆっくりしている時間はないんだから」

やがて、トカゲ人の姿に気付いたオシミノーグが、食事スペースの方へやって来ます。キアラは彼に「急ぎなの。ウィルム・バイターをお願い」と言った後、自分の席につき、背中に担いでいたクロスボウを下ろして、誰も腰かけていない椅子に立て掛けます。フレイヤーの料理人は「かしこまりました」と答えて頭を下げた後、ヒーローたちに「申し訳ありませんが、この方の注文を優先しなければなりませんので、今しばらくお待ちください」と言うと、足早に調理台の方に戻っていきます。これ以降、食事が運ばれるまでの間に、ヒーローたちはキアラに話しかけたくなるかも知れませんが、その事を察したブロンウィンは「上手くやり過ごしたんだから、相手に勘ぐられるような発言は控えた方がいい」と言いたげに首を横に振ります。

少し経つと、食事を載せた盆を手にしたオシミノーグが、再び食事スペースの方へとやって来て、キアラの前に注文のメニューを置きます。彼が「それでは、どうぞごゆっくり」と声をかけた時には、もう彼女は肉料理を食べ始めています。やがて食事を終えたキアラは、椅子に立て掛けたクロスボウを背中に担ぐと、ヒーローたちの方に向き直ってから「そちらも気を抜かないようにね」と一声かけ、そして東側の戸口から厨房を後にします。ちなみにヒーローたちの注文が運ばれてくるのは、彼女が厨房から去った数分後の事になります。

なお、ヒーローたちは知る事はありませんが、このトカゲ人の女戦士は、マンパンにおいて実力者の集団である「キアラ隊」の隊長、キアラ・ナイトフォールです。キアラは、彼女の部隊が反乱に起こした時に、オークの猛者バロウズが率いる部隊と交戦する事を予想していました。そして彼と剣を交えるのは、同期でマンパンに雇われた自分以外にはありえないと考えていました。外輪門の戦いでバロウズが戦死した事により、反乱の成功率は高まりましたが、どちらが強者であるか決着をつける機会を永久に失った事で、彼女はその事を素直に喜べずにいます。


●ハイタカの鳥人
厨房の西側にある扉が開いたかと思うと、鳥人の戦士が姿を現します。彼は、腰の辺りまで覆う胴着の上に、黒塗りのレザー・ホバークを着込んでおり、鉤爪のついた足指が露出するように作られた厚手のブーツを履いています。腰に巻いた剣帯には、鞘に収まった状態の剣が吊るされていて、左腕にはマンパンの紋章が描かれた腕章だけではなく、腕にベルトを通してから手で保持する五角形の盾を装備しています。盾には、翼を大きく広げた鷹の模様が描かれています。そして猛禽を思わせる頭部に目を向けると、その額には金属製の鉢金を締めています。

鳥人戦士は、きびきびとした足取りで食事スペースにやって来ると、ヒーローたちには構う事なく隣の机の席に腰かけてから、左腕の盾を外し、それを誰も座っていない椅子に立て掛けます。新たな客人の姿に気付いたオシミノーグが足早にやって来ると、厨房に向かう途中でメニューを決めていたのか、鳥人戦士は即答するように注文を口にします。

「大針ミミズのハンバーグと、マグソコガネムシのピクルスのセットを頼む」

フレイヤーの料理人は「かしこまりました」と答えて頭を下げると、足早に調理台の方へと戻っていきます。鳥人は腕を組んだ状態のまま、明後日の方に顔を向けて、何かを考え込んでいます。その様子を横目で見ていたブロンウィンは、声を潜めると「アランシアの月岩山地に定住する原始的な鳥人たちとは違い、ザンズヌ連邦の鳥人は文明的で、私たちと同様に武具の扱いに慣れていると聞き及んでいる。これはガーランド隊長から聞いた話だが、例の品が鳥人たちに奪われた時、逃走する賊を追撃していた兵士たちが、上空から弓矢で射られて次々と殺されたそうだ。それも急所から寸分の狂いもない正確なショットで。……手強い戦士たちではあるが、そこにいる彼が、私たちに関心がないのは好都合だ。このような人の多い場所で、相手から密偵ではないかと疑われたくはない。迂闊に話しかけたりするなよ」と言います。

ヒーローたちの方が、先にメニューを注文したにも関わらず、オシミノーグは鳥人戦士の注文の方を優先したらしく、今さっき出来上がった料理を彼の前に置きます。これはヒーローたちにとっては面白くない事ですが、文句を言って騒動を引き起こすのは得策ではなので、この場は我慢するしかありません。やがて食事を終えた鳥人は、椅子に立て掛けた盾を再び身につけると、椅子から立ち上がります。そのまま帰ってくれるかと思いきや、彼は急にヒーローたちの方に向き直ると「君たち!」と言いながら机の表面を平手で打ち、厳しい口調で説教をしてきます。

「この食事スペースは、新入りが利用する場所ではない。地位の高い部隊に所属している者が、急ぎの用事がある時か、あるいは特別なオーダーを必要とした時に利用する場所だ! だから、本来なら君たちは、兵舎の方にある食堂に向かわなければならない。相手が私で良かったな。他の者だったら、その場で殴り倒されたとしても文句は言えないぞ」

鳥人はそう言った後、唐突に柔らかい表情を浮かべると「だが、君たちは見込みがありそうだ。私が説教をすると、大抵の新入りは尻込みしてしまうが、君たちは震え上がったりする様子がない。その度胸があれば、すぐに私がいる座まで追いつく事ができるだろう」

そして鳥人戦士は、ヒーローたちに向かって「頑張れよ」と言いながら、親しげに片目をつぶると、最初に来た時のように、きびきびとした足取りで西側の扉から厨房を去ります。ちなみにヒーローたちの注文が運ばれてくるのは、彼が厨房から去った数分後の事になります。

なお、この時点でヒーローたちは知る事はありませんが、この鳥人戦士は、大魔王の野望を阻止するために行動している一団『シンのサマリタン』のメンバーの一人、"白樺"のトリスタンです。彼は、自分がシンの鳥人である事を隠し、表向きはマンパンにおいて実力者の集団である「オズワルド隊」の一員として行動しています。そして彼は、手配書を入念にチェックしていたので、食事スペースで顔を合わせたヒーローたちの事を、自分たちと共通の目的を持つ「アナランドの密偵」ではないかと考えています。ただし、まだ確信には至っていないため、彼が自分の正体を打ち明ける事はありません。


●真紅の騎士
ヒーローたちが食事をしていると、厨房の東側に見える戸口の方から、肩当ての鋭いスパイクと角の生えたフルヘルムが特徴的な、真紅のプレートアーマーに身を包んだ人物が姿を現します。その人物は、ガチャガチャと金属の音を鳴らしながら、足早に食事スペースの方に向かい、ヒーローたちとは別の机の席に乱暴に腰かけます。その左腕には、マンパンの紋章が描かれた腕章を付けています。彼はヒーローたちに構う事なく、頭部を完全に覆う角兜を脱ぎ、それから両腕の小手を外して机の上に置きます。甲冑を着込んでいたのは、黒い髪をオールバックにした男で、顔には過去の戦いで受けた刀傷がついています。彼に気付いたオシミノーグが机の側にやって来ると、男はフレイヤーの料理人に注文を出します。

「シム、何でもいいから手早く食べられるものを頼む」

「軽く味付けしただけのウサギの肉料理と、蜂蜜をかけただけのパンなら、すぐにお出しできますが、本当にそれでよろしいのですか?」

「ああ、それで構わん。相棒を待たせているので、本当は食事を取る時間も惜しいのだが、少なくとも一食は食べないと、その日を乗り切る事はできないからな。混沌の戦士であろうと、信仰心だけで飢えをしのぐ訳にはいかない」

オシミノーグは「それでは、少しお待ちを」と言って、調理台の方へと戻っていきます。その様子を横目で見ていたブロンウィンは、声を潜めると「マンパンが、混沌の戦士まで雇っているとは思わなかった。黄泉の魔王子を崇拝する恐るべき戦士だ。何を心の支えとするのかは個人の自由だが、できれば関わり合いになりたくない。珍しい鎧を着ているからといって、ジロジロ見ない方がいいぞ。彼から因縁をつけられて斬り合いになるような事があれば、ここまで上手くやっていたのが全て台無しになってしまう」とヒーローたちに言います。

それから彼女は、相手に疑われないように「……良い案だとは思わないか。アイツの誕生日のサプライズとしては、これぐらいやった方がいいだろう」と普通に喋り、にこやかな表情を浮かべます。男は、ほんの一瞬だけヒーローたちの方に目を向けますが、警戒心を抱くような事はなく、注文した料理が来るまでの間、顎に手を当てながら何かを考え込んでいます。

少し経つと、再びオシミノーグがやって来て、真紅の騎士の机の上にシンプルな料理が載せられた盆を置くと「お待たせしました」と声をかけます。男は頷き、ナイフとフォークを手に取ると、簡素な肉料理から食べ始めます。彼はヒーローたちよりも後に来たにも関わらず、先に食べ終えると、再び小手を身につけてから、ねじくれた角が取り付けられたフルヘルムを頭にかぶります。そして彼は、自分の席から立ち上がると、オシミノーグに「シム、肉料理は良い味だった。シンプルなメニューだからこそ、料理人としての技量の高さがよく分かる。今後も精進しろよ」と一言だけ述べると、片手で相手の肩を親しげに軽く叩きます。フレイヤーは「まるで、今日でお別れみたいな事を言いますね」と声をかけますが、真紅の騎士は、無言のまま東側の戸口から厨房を後にします。

なお、ヒーローたちは知る事はありませんが、この重武装した男は、マンパンにおいて実力者の集団である「オズワルド隊」の主力メンバーの一人、混沌の戦士クラッシュです。彼は、自分が所属している部隊が反乱を起こせば、もう二度と今のマンパンには戻らない事を知っています。


●謎めいた人物
注文した料理が運ばれてくるのを持っていると、厨房の西側に見える扉の方から、黒い髪を持つ細身の若い男が姿を現して、堂々とした足取りで食事スペースの方へやって来ます。彼は胴着の上に黒塗りのチェインメイル・ホバークを着込んでおり、さらに邪悪な竜の刺繍が施された暗い紫色のクロークを羽織っています。左腕にマンパンの紋章が描かれた腕章を付けている事から、地位の高い部隊に所属する衛兵の一人だと思われますが、奇妙な事に武器は携行していません。厨房にいる者たちは、男の姿に気が付くと、手に持った物を慎重に置いてから、彼に畏敬の念を向けるかのように頭を下げ始めます。

ヒーローたちが、その異様な光景に唖然としていると、女将のスログが足早にやって来て「ぼんやりしていないで、アンタたちも、すぐに頭を下げるんだよ。あの方を誰だと思っているんだい!」と怒鳴り、それぞれのヒーローたちの後頭部を手で押して強引に頭を下げさせます。少なくとも一人は、彼女の馬鹿力のせいで机に額をぶつける事になります。やがて男は、食事スペースの近くに来ると足を止めて、ホブゴブリンの女将に声をかけます。

「そこまでせずとも良い。忍びで砦の中を見て回っているだけに過ぎん。一部の者を除けば、誰もが私の事を、与えられた仕事を放棄していないか監視に来た親衛隊としか思っていない。先ほど中庭の方で、それと間違えられて状況の報告を受けたばかりだ。私室に戻る前に、お前が手がけた料理の味を堪能しておこうと思い、ここに立ち寄った。本来の私の立場の事は忘れて、普段と変わらぬ振舞いをして欲しい。この場所を利用できない衛兵たちには、私が親衛隊を装って、このような事をしているとは極力気付かれたくないのでな」

「ありがとうございます」

男の言葉を聞いたスログは、深々と頭を下げると、ヒーローたちの隣にある机の席へと男を案内します。彼女がオーダーを尋ねると、その男は右手の人差し指を立ててから「『スリザーガックの吐息』で軽くスパイスを利かせたヴィトルと薬草茶を」と言います。スログが「忙しい私たちを気遣って質素な料理を選ばれたのかも知れませんが、お腹一杯になるまで食事を楽しんでもらっても構わないんですよ」と声をかけると、彼は「大食は、数多の勇敢な戦士たちの敗北の原因となっている。怪物ではなく、不摂生な食生活が猛者を打ち倒してしまう事も、このタイタンでは決して珍しい出来事ではない」と答えます。それに対して、スログは「確かに、その通りでございます。お食事は腹八分目までと言いますからね」と言った後、彼に向かって「それでは、料理が出来上がるまでお待ちください」と声をかけてから、足早で調理台の方へと戻っていきます。

ヒーローたちの中に女性の冒険者がいるなら、二人の様子を横目で見ていたブロンウィンは、口を結んだまま自分の腹回りの状態を確認した後で「他人事とは思えないな。お互いに、スタイルの維持には気を付けよう」と女性の冒険者に言います。少し経つと、スログが料理を載せた盆を持って、再び食事スペースの方へと戻ってきます。それが謎めいた男の注文した料理である事は明らかです。ホブゴブリンの女将は、男の前に盆を置くと「お口に合えば宜しいのですが……」と言います。彼は「スログよ、もっと自分に自信を持つ事だ。特別なゲストをもてなすのは、私が初めてという訳ではあるまい」と声をかけた後、手振りで彼女に下がるように指示を出します。スログは一度だけ頭を下げてから、食事スペースを離れていきます。

注文したのが軽食という事もあって、男はすぐに食事を終えると、薬草茶の最後の一口を飲んで一息ついた後、自分の席から立ち上がります。そしてヒーローたちがいる机の側を通り過ぎようとしている時に、たまたまブロンウィンと目が合い、その場で立ち止まります。相手から密偵だと疑われないように、彼女が軽く頷いて無言の挨拶をすると、男は「砦の外で騒ぎがあったようだが、案ずる事はない。ここには、数多くの味方がいる事を忘れるな。そして、あのハイダナとグランタンカに匹敵するだけの力を持つ、心強い援軍がいる事もな……」と一言述べますが、彼から話しかけられている間、ブロンウィンの表情が、目に見えて強張ったものに変化していきます。

それから男はヒーローたちの事には構わずに、西側の扉へと向かいます。扉の脇で待っていたスログが男に向かって会釈をすると、彼は一旦立ち止まってから彼女に向かって軽く頷き、そして厨房を後にします。ホブゴブリンの女将は、彼の姿が自分の視界から消えてしまうまで、その後ろ姿を見送っています。謎めいた男が立ち去った後、ブロンウィンは、まるで体の力が抜けたかのように机の上に両肘をつくと、目を見開きながら、喘ぐように言います。

「……女将も含めて、厨房にいる使用人たちの慌てぶりを見たか? 最初のうちは、私は、あの男が砦の主に仕える側近だろうと思い込んでいた。だが、そうではなかった。……おそらく、あの男が、マンパンの大魔王だ。外輪門に配備された防衛部隊を突破したのが私たちである事も、一目で見抜いていたに違いない。精鋭を失ったにも関わらず、まったく動じている様子がなかった。そして、その気になれば、この場で私たちを始末できたはずなのに、それをしようとさえしなかった。もしかしたら、私たちの実力を試そうとしているのかも知れない。自分が侵入者に暗殺される可能性があるというのに、それすらも勝負として楽しんでいるように見えた。本当に、恐ろしい男だ」

ヒーローたちの誰もが、この衝撃的な事実には驚かざるを得ませんが、男が口にした『心強い援軍』には心当たりがありません。もし、そのような存在がいたとすれば、外輪門の戦いで、挟撃を受けた防衛部隊を援護するために駆けつけて来ないのは妙な話です。本当にそのような援軍がいるのでしょうか? そして何故、彼は『七匹の大蛇』のうち二匹の名しか出さなかったのでしょうか? そもそも彼は"本当に"大魔王なのでしょうか? どれだけヒーローたちが考え込んでも、その答えは出てきません。皆が緊張した面持ちで思い悩んでいるうちに、注文したメニューを盆に載せたオシミノーグが、ヒーローたちがいる食事スペースへと戻ってきます……。


◆探索の再開
束の間の休息をしたヒーローたちは、スログや彼女の下で働いている使用人たちが、自分たちに割り当てられた仕事をこなすのに手一杯で、ヒーローたちの方まで気が回ってない事に気付きます。この分だと、彼らは手配書に目を通す事はもちろん、外輪門で戦いが起きた事さえ知らないに違いありません。ヒーローたちは、このまま静かに食事スペースを離れても、彼らにメニューを振舞ってくれた礼を述べても構いません。西側の扉か、あるいは東側に見える戸口から厨房を後にしたヒーローたちは、再び砦の探索を開始する事になります。

ブロンウィンが同行している場合、砦の厨房で食事を済ませたヒーローたちは、この場で少し休息したい気持ちにかられますが、ブロンウィンが「厨房の食事スペースは、まるで衛兵の詰所そのものだ。戦い慣れた者たちが立ち寄る事を考えれば、長居をするのは危険かも知れない。作業的に砦を警備をしている連中と違って、手配書にある私たちの人相書きを確認している可能性は高い。確か女将は、東の戸口の先に、衛兵たちの兵舎があると言っていたな。特に行く用事がなければ、私たちが入ってきた扉から引き返した方が良いだろう」と言います。
ヒーローたちが、ブロンウィンにパーティの指揮を任せた(※第1回『マンパンの双蛇(前編)』を参照)場合、彼女の指示に従ったヒーローたちは、厨房に入る時に利用した扉に向かう事になります。そうでなければ、どちらの戸口から厨房を後にするのかは、ヒーローたちの自由です。


◆探索の再開(※砦の厨房で「謎めいた人物」に会った場合)
食事スペースを離れたヒーローたちが、西側の扉から奥の中庭(28番の場面)へと戻った場合、戸口から少し離れた場所で、先ほどの謎めいた男が、長身で茶色の肌をした剣士と立ち話をしている場面に出くわします。剣士は、胴着の上に黒塗りのチェインメイル・ホバークを着込んでおり、両腕に肩当て付きの小手、厚手のズボンの上には脚甲を身につけていて、左上腕にマンパンの紋章が描かれた腕章を付けています。彼が腰に巻いている剣帯の右側には、長剣を収めた鞘が吊るされていて、その反対側には、予備の武器として短剣が吊るしてあります。ヒーローたちの中に、アランシア出身の冒険者がいる場合、その者はすぐに、長身の剣士がアランシア南部出身の南方人である事に気付きます。

二人が、扉から出てきたヒーローたちの方に少しの間だけ目を向けた時、ブロンウィンがヒーローたちに向かって「今は自然に振舞うんだ。慌てて厨房に引き返したりすれば、かえって相手に疑われる」と小声で言います。彼らは、他の者には聞かれたくない話題をしているのか、ヒーローたちの行く先とは真逆の方向へと移動を始めます。ヒーローたちが、中庭の南側(16番の場面)に向かった場合、彼らは北側に見える第二のスローベン・ドアの前で何かを呟くと、左右にスライドするように開いた扉をくぐっていきます。
ヒーローたちが、第二のスローベン・ドアの方に向かった場合、彼らは中庭の南側へと立ち去っていきます。そちらの方では、別の衛兵の一団も歩き回っているため、とても射撃武器や攻撃魔法で狙いをつけられるような状況ではありません。どちらに向かったにせよ、すれ違い様に、ヒーローたちは二人の会話を少しだけ聞き取る事ができます。これには【感知】の判定をする必要はありません。

「……によって戦力は分断されます。連絡通路も、すぐに封鎖されるでしょう。おそらくメインホールが主戦場になるのではないかと」

そう言った南方人の剣士は、ちょうど近付いてきたヒーローたちの方を顎で軽く指すと「それよりも、彼らは例の……」と言葉を付け加えます。それに対して謎めいた男が言葉を切り出した時、ヒーローたちは、二人とすれ違う事になります。

「構うな、もう少し泳がせておけ。最も厄介な相手は、カートゥームだ。あの男の動き次第で、事が上手く運ぶかどうかが決まると言っても良いだろう。いいか、取り巻き連中と羊に対しては『剣』を使え。さもなければ、我々に勝機は無い」

これ以上は、彼らの会話の内容をヒーローたちが知る事はできません。ブロンウィンは、自分の顎に手を当てながら考え込み、彼らが口にした情報を頭の中でまとめているようですが、それに対する結論は出そうにありません。

「あの男は『カートゥーム』という名を口にしたが、誰の事だろうか? 私たちの知らないアナランドの密偵が、砦に潜入しているのか? それに羊と剣は、一体何を指している? 外輪門を守る精鋭を打ち倒したばかりの私たちが、厄介者扱いされていなかったのも妙な話だ。防衛部隊の指揮官だったバロウズは、私たちが『七匹の大蛇』を殺した事を知っていたからこそ、それぞれの主力メンバーで一騎打ちをする状況に持ち込み、私たちが連携する事を極力封じて、手の空いている衛兵で各個撃破する戦術を取っていた。それだけ私たちの存在が危険であると判断していたのだろう」

「だが、あの男は、私たちがマンパンの脅威となる可能性が高いのに、それほど関心を示していないようだ。こちらは、すでに砦の中に潜り込んでいるんだぞ。いくら援軍が控えているとは言え、あまりに楽観的すぎる。私は先ほど、彼が大魔王ではないかと推測したが、本当にそうであるのか、今は少し疑わしく感じている。分からない事だらけだ、あの男の何もかもが……。しかし、今は砦の奥へと向かうしかない。彼らの言葉を信じるのであれば、私たちはメインホールを急いで通り過ぎる必要がありそうだな」

謎めいた人物の正体は気になりますが、確かにブロンウィンの言う通りです。束の間の休息を終えたヒーローたちは、気を引き締めると、再び砦の探索へと戻ります。

なお、ヒーローたちは知る事はありませんが、この時に目にした南方人の剣士は、マンパンにおいて実力者の集団である「オズワルド隊」の隊長、オズワルド・ロアーウルフです。両手利きの剣士であるオズワルドは、八幡の女サムライ銀星とは違った攻撃的な二刀剣術の使い手でもあります。


◆新たな疑問(※砦の厨房で「謎めいた人物」に出会っており、ブロンウィンが同行している場合)
これは『ソーサリー・キャンペーン』第4章の48番の場面に対応するイベントです。シナリオ展開は通常と同様(※第6回『虚構の王(Vol.3)を参照)ですが、ヒーローたちが、砦の恐るべき守護者である『眠れぬラム』が配備された広間を突破した後、ブロンウィンが彼について話し始めます。

「まさかカートゥームが、私たちと同じアナランドの密偵ではなく、親衛隊の隊長を務める人物だったとは……。私たちが砦の厨房で会った謎の人物は、親衛隊に謀反の兆しがあると疑っていたのか? だが、彼らは大魔王に忠誠を誓っているように見えた」

ブロンウィンは、謎めいた人物について考え込みますが、本来の任務が≪王たちの冠≫を取り戻す事であるのを思い出すと、軽く首を横に振り、余計な事に意識を集中させないように気を引き締めます。

「……まぁ、あの男の正体が何であれ、今はどうでも良い事だ。彼の正体を突き止める事が、私たちの目的ではない。砦の中において、最も守りが厳重な場所を突破する事ができた。私たちの旅のゴールまで、あともう一息だ」


◆反乱軍の指揮官(※砦の厨房で「謎めいた人物」に出会った場合)
これは『ソーサリー・キャンペーン』第4章の54番の場面に対応するイベントです。シナリオ展開は通常と同様(※第8回『虚構の王(Vol.5)を参照)ですが、砦の方から最初の爆発音が聞こえた後、ヒーローたちに【感知】の判定を行わせてください。この判定に成功した場合、そのヒーローは、大魔王が窓の外へと視線を向けて「然るべき時が訪れるのを待ちきれず、血筋ではなく野心に重きを置いたか。あの愚か者め……」と小声で呟いた事が明らかとなります。しかし、砦で反乱を起こしたのが何者であるのかをヒーローたちが尋ねる事はできません。その後に続く大魔王の言葉を聞き、ヒーローたちは彼との戦いが避けられない事を察します。今、≪王たちの冠≫をめぐる最後の戦いが始まろうとしていました……。

これはヒーローたちが決して知る事のない情報ですが、砦の厨房で出会った謎の人物は、マンパンの大魔王の実の息子であり、大魔王に代わって定期的に砦の内情を視察しています。彼は自ら影武者の役目を引き受けていますが、大魔王は自身の身代わりとなる存在は必要ないと考えています。しかし、カーカバード統一の妨げとなるような行動は慎む事を条件に、彼の気が済むようにさせています。(※ゲームブック版『ソーサリー』の最終巻では、ある場所で大魔王と思わしき人物が登場しますが、彼の正体については一切の説明がありません。またシナリオ集『ソーサリー・キャンペーン』の中では、彼に「大魔王に仕える妖術師の一人」という新たな設定が追加されましたが、優れた妖術の使い手である彼が、どのような理由で大魔王に付き従っているのか、その核心に触れる情報は記されていません)

シナリオプロット『虚構の王』本編において、この事実を知っているのは、新鋭隊を束ねるカートゥーム隊長と、マンパンの精鋭部隊の隊長を務めるオークの猛者バロウズ、南方人の剣士オズワルド、トカゲ人の女戦士キアラの四名だけです。スログなどの一部の者は、大魔王が正体を隠して砦を視察している事は知っていますが、それが本人から影武者に変わった事には気付いていません。彼は大魔王の血を受け継いでいるため、統治者の面影が残っているのは当然であり、彼の事を大魔王その人だと勘違いをするのも無理は無いと言えるでしょう。
彼の正体を知っている数少ない者たちは、いつの日か大魔王の後継者となる彼に敬意を払って、彼の事を『ダークロード』あるいは『マンパンの大魔導士』と呼んでいます。また彼は、アストガルが征服者について調べ回っている事を知っているため、自分の秘密を守るために、この詮索好きな黒エルフの魔剣士を積極的に避けています。

前述の『思わぬ客人』でキアラが述べていた通り、≪王たちの冠≫が大魔王の手中に収まった事が、マンパンの運命を徐々に狂わせていく事になります。大魔王の密偵である『七匹の大蛇』の報告により、ブライスがアナランドに対して戦争の準備を始めている事を知った若きダークロードは、ブライスの征服欲を煽る事で、大魔王が手を焼いているフェンフリィ同盟を内から切り崩す事ができるのではないかと考えるようになります。しかし、この事を進言しても、大魔王は「今になってフェンフリィ同盟を崩壊させるのは、旧世界そのものを荒廃させるだけに過ぎない」と言って、彼の意見を聞き入れようとはしませんでした。

【悪の勢力】に属する者たちが【善の勢力】によって駆逐される前に、カーカバード全土を統一し、マンパンがフェンフリィ同盟と対等の力を持つ事が重要だと大魔王が考える一方で、ダークロードは、フェンフリィ同盟の結束を引き裂いて、旧世界における【善の勢力】の力を≪王たちの冠≫が発見される以前の状態に戻す事で、善の台頭を抑えられると考えていました。これまでも、その意見の違いで幾度か衝突する事があった二人ですが、これが反旗をひるがえす大きなきっかけとなりました。若きダークロードは、マンパンの統治者の座を奪った後、≪王たちの冠≫の魔力を借りてフェンフリィ同盟を内側から切り崩し、自身の考えが正しい事を証明しようとしています。

ダークロードは野心家ではありますが、力を増していくフェンフリィ同盟から【悪の勢力】を守ろうとする点においては、大魔王と変わりありません。マンパンがフェンフリィ同盟と和平を結んだ時も、砦は甚大な被害を受けますが、彼が起こした反乱は鎮圧される事になります。その後の彼はどうなったのでしょうか? 越えてはならない一線を踏み越えたため処罰されたのか、あるいはフェンフリィ同盟との衝突が回避されたので、大魔王が寛大な心で彼の事を許してやったのか、それは定かではありません。しかし、彼がどちらの運命を迎えたにせよ、フェンフリィ同盟に加わったマンパンは、これまでとは違う道を歩んでいく事になります。


◆マンパンの大魔導士(※ヒーローたちが、マンパンの大魔王を倒した場合)
ヒーローたちの活躍により大魔王は倒され、フェンフリィ同盟にとって、マンパンは脅威の存在ではなくなりました。反乱によってマンパンは甚大な被害を受け、その激しい戦いの中で、反乱軍を率いていた指揮官と、その者に付き従っていた実力者たちも命を落としたに違いありません。≪王たちの冠≫をめぐる戦いには終止符が打たれましたが、万が一にも反乱者たちが生存していた場合、それは新たな脅威を生み出す事になります。もしディレクターが、本編の続きとなる冒険を望むのなら、以下にそのシナリオフックを記しておきます。

反乱によってマンパンは崩壊したかのように思われますが、大魔王の血を継ぐダークロードが新たな統治者となった事で、ヒーローたちが思っている以上に早く再興を果たします。戦力の大半を失ったとは言え、組織自体は機能しており、さらに驚異的な威力を誇る秘密兵器『シスの剣』の設計図を保有しているのです。その兵器が抱え込んでいた致命的な欠陥も、すでに取り除かれています。またダークロードの腹心の部下として、南方人の剣士オズワルドを隊長とする新たな親衛隊が編成されています。大魔王が倒された事で、旧世界の脅威がなくなったとフェンフリィ同盟が安心しているうちに、彼らは砦が受けたダメージを回復させ、大魔王統治下と変わらない状態まで軍備を整えてしまうでしょう。
カーカバードが『地の果ての吹き溜まり』と呼ばれる無法の地という事もあって、フェンフリィ同盟の監視の目は行き届かず、アナランドの密偵たちも反乱の騒ぎに乗じて砦から脱出してしまったため、大魔王を失った以降のマンパンに関する情報はほとんど入手できていません。

またヒーローたちが潜入した時とは異なり、砦の防御はさらに厳重になっています。外輪門は落とし格子で封鎖できるようになっており、その上に設けられた胸壁では、衛兵たちが侵入者に対して目を光らせています。以前のように外輪門を強行突破しようとすれば、すぐにでも他の者たちにヒーローたちの存在が知られてしまうでしょう。とは言え、それまでの時代と同様に『シンのサマリタン』だけが、この新たな征服者の動向をうかがっています。幸いにも、シンの鳥人戦士である"白樺"のトリスタンと彼の仲間たちが、ダークロードの配下として砦の中に潜り込んでいる状態なのです。ヒーローたちが、マンパンの砦に潜入を果たすには、サマリタンのメンバーや、以前よりも厳しい統治を行うようになったマンパンに対して不満を抱いている部族の協力が不可欠となります。

そして『虚構の王』本編では、≪王たちの冠≫をめぐる戦いのきっかけとなったブライス王国ですが、その民の全てが好戦的な者であるとは限りません。祖国がダークロードの野望の足がかりにされようとしている事、あるいは他国から「ブライスはフェンフリィ同盟の汚点である」と少なからず思われている事に対して、心を痛めている者もいるでしょう。もしブライスの領土内に、マンパンに魂を売り渡し、フェンフリィ同盟の結束を引き裂こうと画策を練る者がいれば、彼らは自分たちの祖国を守るために、そのような裏切り者に敢然と立ち向かいます。新たな戦いに挑むヒーローたちにとって、強い意志を持った彼らは頼もしい味方となるはずです。


◆二つの勢力
(※以下に記すイベントは、『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版』用のシナリオプロット『虚構の王』を、読み物として楽しんでいる人に向けた内容になっています。また本シナリオのテーマである「タイタン世界における善と悪」に対するエピローグとして設定しているため、イベントの発生条件に「キャンペーンシナリオで完璧な成功を収める」事から遠ざかるフラグが意図的に含まれています。ご了承のうえで、お読みください)

これは『ソーサリー・キャンペーン』第4章の29番の場面に対応したイベントです。シナリオ『マンパンの双蛇』から引き続き冒険をしており、これまでの旅の中で「パーティを指揮する役目をブロンウィンに押し付けなかった」「沼ゴブリンたちと会話を交わした」「シ・ハーザにシ・ヒンブリの事を尋ねた」「女族サチュロスたちに任務の事を打ち明けた」「外輪門の戦いでシ・ハーザが死亡した」「外輪門の戦いでアストガル(あるいは銀星)が力尽きる時の言葉を聞いた」「レッド・アイの傭兵フォージにカーレの事を尋ねた」「バーバ・ライの同行を断った」時の全てのイベントを見た状態で、砦の厨房でブロンウィンに、フレイヤーをどこで見かけたのか尋ねた時に限り、このイベントが発生します。

ブロンウィンが、タコの頭部を持つ奇妙な種族を目にしても驚く様子がないので、ヒーローたちが「以前にも会った事があるのか」と尋ねると、彼女はその理由を答えます。そして彼女は、これまでタイタンの【善の勢力】に属する者たちから「邪悪と混沌の一員」だと扱われていた【悪の勢力】に属する者たちに対しての自分の意見を語り始めます……。

「巡視船の食堂にいる時に気付かなかったのか? あの船には、フレイヤーの料理人も乗船しているんだ。彼らは恐ろしい外見をしているかも知れないが、攻撃的な種族ではないし、祭りの時に頭に被り物をしている人間だと思えば、そのうち気にならなくなる。兵士たちも、配属されたばかりの新人じゃない限りは、誰も気に留めていない。潔癖症なサラモニスの知識人はとやかく言うかも知れないが、善と悪の二つの勢力の区別は、種族によって定められるようなものではなく、その者が成そうとしている事に共感できるか否か、それが相反する二つの勢力を生み出しているのではないかと私は思っている。世界の知識をまとめた学術書『タイタン』が世に発表されてから、長い年月が経っている。当時は『タイタンにおける善と悪の勢力の違いが明確に説明されている』と評価されたそうだが、種族と行動理念をイコールで結びつけるのは、もう古い考え方なのかも知れない……」

「……とは言え、私も、このような偉そうな事を言える立場ではないのだがな。君たちと出会う以前、フレイヤー以外の【悪の勢力】は、油断のならない連中だと考えていた。たとえ敵対的な相手でなかったとしても、レプラコーンのように『自覚なき悪意』をナイフのように隠し持っているものだと警戒を怠らなかった。しかし、あのフォージという男は違った。彼は、私が知っているような、出会った相手に因縁をつけてくる典型的なレッド・アイではなかった。私たちの事を仲間として認め、他の衛兵に自分の正体が気付かれるリスクを承知で、貴重な情報を提供してくれた。そして彼の両親が、二つの勢力の関係にこだわる事なく、共存の道を歩んでいた事にも衝撃を受けた。その時、私は今までレッド・アイの危険な一面しか見ていなかった事に気付かされた」

ブロンウィンは、使用人たちに指示を出しているスログの方を指差し、言葉を続けます。

「あそこで指揮をとっているスログという女将にしてもそうだ。私たち【善の勢力】の立場から見て、ホブゴブリンは悪辣な異形で、無用心な旅人を目的なく殺して喜ぶ連中と扱われているが、彼女の姿は、大都市の食堂を切り盛りする料理人とまったく変わらない。使用人たちも、あの女将の事は『血に飢えた女頭目』ではなく、厳しいが信頼の置ける料理長としてしか見ていないようだ」

「異形と言えば、ザメン高地で出会ったシ・ハーザたち女族サチュロスもそうだったな。私たちとは、体の作りだけでなく物事のとらえ方も大きく異なっていたにも関わらず、私たちが外輪門に潜入するために力を貸してくれた。彼女たちが、防衛部隊の戦力を分断してくれなければ、あの地が私たちの死に場所となっていただろう。シ・ハーザは、私たちのために自らの命を投げ出した事を、誇りに思いながら死んでいったのだろうか? それとも、もっと生き延びたいと思ったのだろうか? シ・ハーザは、私の体に、この戦化粧を施してくれた。背中に染料を塗られた時に、私が思わず『くすぐったい』と言ったら、彼女は軽く笑いながら『少しの間だけ、我慢してくれ』と言葉を返してきた。つい数時間前の出来事だ。彼女がタイタンを去った事を、私は、まだ実感できずにいる……」

「運と偶然の気まぐれが、彼女の運命を定めたとは思いたくない。そのように考えたら、私にとって、彼女の死が非常に軽い物となってしまう。仲間に倒れる者が出る事のない、もっと上手い戦い方もできたはずだ。……しかし、私にはそれができなかった。私が、少しでも早く敵を打ち倒していれば、君たちが、劣勢に立たされているサチュロス戦士たちの加勢に向かう事もできた。複雑な気分だ。シ・ハーザたちの助けによって砦に潜入できたのに、私たちの都合で、彼女たちを戦いに巻き込んでしまったのではないかと思う気持ちも少なからずある。この旅を終えたとしても、私は、女族サチュロスの戦士団の事を決して忘れはしないだろう……」

「そして、ヴィシュラミ沼の沼ゴブリンたちの事も忘れてはならない。たまたま【善の勢力】に好意的な部族だったのかも知れないが、彼らは【悪の勢力】に属する者たちでありながら、悪の巣窟とされるマンパンには脅威を抱いていた。そして私たちが『水の蛇』と『陽の蛇』を倒した事を告げた時、彼らは心の底から感謝してくれた。不思議な事もあるものだ。この敵地で、種族で善悪を区別する事が、いかに誤った行いであるのかを考えさせられるとはな」

「種族だけではない。外輪門で戦った防衛部隊、あれは私が経験してきた戦いの中で、最も激しいものだった。部隊を率いていたオークの指揮官バロウズ、そして彼と共に戦った歴戦の傭兵たち。私たちにとっては、砦への侵入を阻む敵に過ぎなかったが、彼らはマンパンを守るために、自分たちの命を賭して戦いに身を投じていた。大魔王の配下とは言え、打ち倒しても誰も困らない、毛むくじゃらの粗野な獣めいた連中ではなかった。強い信念を持って戦う姿は、私たちと変わらなかった……」

ヒーローたちが、ブロンウィンに対して「マンパンの住人たちの姿を見ているうちに、≪王たちの冠≫を取り戻すという任務に対して、心が揺らいでいるのではないか」と尋ねた場合、彼女はこう答えます。

「……その事なら大丈夫だ。彼らにも、彼らなりの事情があったとしても、フェンフリィ同盟の危機を救うという私の信念は揺るがない。彼らから敵意を向けられる恐怖に耐えかねて、共感を得ようと自分の信念を曲げる訳にはいかない。≪王たちの冠≫を取り戻す任務は、必ずやり遂げる。そのために、私たちはマンパンに来たのだから。結論付ける事が難しい話は、この辺りで切り上げるとして、今は何を注文するか決めるとしよう」

そう言うとブロンウィンは、ヒーローたちに向かって微笑みかけます。彼女の【悪の勢力】に対する考え方は、明らかにこれまでのタイタンの常識とは異なります。邪悪と混沌の代表者として扱われるような者たちに、幾度となくタイタンが脅かされた事を考えれば、もしかしたら彼女は間違った事を言っているのかも知れません。しかし、新たな道を進もうとしている彼女の言葉には、太陽の光を受けた曇りのない剣の刃のように輝く意志の強さが感じ取れます。


◆あとがき
当初は、本編と関わりが薄いオプションとして執筆していたのですが、最終的には、本編でヒーローたちが顔を合わせる事がなかった反乱軍メンバーのエピソードに仕上がりました。

シナリオプロット『虚構の王』のテーマである「タイタン世界における善と悪」に関しては、現実の社会問題を取り扱った訳ではなく、ファイティング・ファンタジー・シリーズのゲームブックの内容と設定資料を照らし合わせた時に生じる矛盾点をベースとしています。タイタン世界を舞台にしたゲームブックでは「善が悪を打ち倒す」シナリオが多くを占めていますが、その一方で、設定資料『タイタン』の著者であるマーク・ガスコインは「タイタン世界には、善と悪のバランスを重んじる勢力が存在する」事を記しています。悪の勢力の代表者としてあげられる人物は、どれもヒーローたちにとって恐るべき敵となりますが、不思議な事に、そのような者たちを全て滅ぼす事が、必ずしもタイタンに良いとは言えない世界観として設定されているのです。

シナリオ本編においてヒーローたちは、アナランドの密偵としてマンパンの砦に潜入する事になりますが、マンパンの衛兵である事を示す腕章が、その立ち位置を曖昧なものに変化させます。ヒーローたちが手配中の人物である事に気付かれない限り、衛兵たちは単にパーティの側を通り過ぎていくだけではなく、ヒーローたちの事を「自分たちの仲間」だと思って接してくるようになり、そして探索が進むにつれて、ヒーローたちはマンパンに与している者たちの事情を知る事になるのです。私がゲームブック版『レリクス』や、その原作ゲームのリメイク版にあたる『RINNE』の影響を強く受けている事もあるのですが、今回のシナリオプロットを執筆するにあたって、それまで『ファイティング・ファンタジー』では定番だった巨悪を打ち倒す物語ではなく、敵側の立場を見せる物語として描く事に焦点を当てる事にしました。

またヒーローたちの仲間であるブロンウィンは、ウィザード・ブックス版ファイティング・ファンタジーの『Bloodbones』に収録されたサンプルキャラクターがモデルとなっていますが、この作品は最初期のパフィン・ブックス版のシリーズ展開において、刊行される事がなかった幻の第60巻として扱われていました。彼女がサンプルキャラクターとして登場する頃には、パフィン・ブックス版ファイティング・ファンタジーが完結してから十五年の年月が経過している事になります。そのためメタ的な要素になってしまうのですが、ブロンウィンだけが、他のヒーローたちとは違う視点でタイタン世界を眺めているという位置付けにしています。

原作の展開に大きくアレンジを加えている事、また冒険の達成感がある勧善懲悪のシナリオではないため、私の作風が合わなかった方も決して少なくはなかったと感じています。それでも「ゲームブックをシナリオ化するにあたって、内容を大胆にアレンジする事もできる」という参考例にしていただけたのなら幸いです。そして『マンパンの双蛇』からヒーローたちの冒険を見守ってくれた方に感謝しています。シナリオプロットを最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


◆謝辞
『スログの追加メニュー』を作成するにあたって、東京創元社の「王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/著、高田恵子/訳)」、社会思想社の「タイタン(マーク・ガスコイン/著、安田均/訳)」「モンスター事典(マーク・ガスコイン/著、浅羽莢子/訳)」「仮面の破壊者(ロビン・ウォーターフィールド/著、坂井星之/訳)」、創土社の「諸王の冠(スティーブ・ジャクソン/著、浅羽莢子/訳)」、書苑新社の「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第二版・シナリオブック『火吹山の魔法使い』(ブレット・ショウフィールド/著、安田均・他/訳)」、Scholasticの「The Port of Peril(イアン・リビングストン/著)」、渡瀬おおっとさんのホームページ「夢見るカボチャ計画」のコンテンツより「カーカバードの歩き方」を参考にいたしました。
また『スログの追加メニュー』の内容について、様々な意見やアイデアを提供してくれた水波流さんには心から感謝しています。本当にありがとうございました。


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