━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.2 (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆様、こんにちは! 東洋 夏(とうよう なつ)と申します。 光栄にも木曜日の枠を再び頂戴し、ローグライクハーフのリプレイ小説を連載させていただくこととなりました。 いちファンの拙い作ではございますが、最後まで楽しんでいただけましたら幸いです。 今回の連載ではサン・サレンを舞台にした『怨霊列車は夜笛を鳴らす』を取り上げます。主役はナリクの従騎士(見習いの騎士)シグナスと相棒の〈おどる剣〉クロ。 同じくサン・サレンを舞台にした『写身の殺人者』のリプレイと同じコンビですが、本作から読んでいただいても、全く問題はございません。 vol.1では人をさらう怪物〈怨霊列車〉の調査依頼を請けたふたりが、列車に乗り込むところまでをお届けしました。 師匠と離れ離れになってしまったシグナス。今まで調査から帰還した者はいないという危険な列車の正体に辿り着き、事件を解決に導くことはできるのでしょうか!? なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。 ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。 前口上はこれでおしまい。 さあ、冒険の始まりです! ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:8 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨21枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、2食分の食料、ランタン 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:7 ・器用点:6 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし ◇ [1号車]23:気が狂った兵士たち 客車側の扉を、その内側から何かが叩いている。 「だっ、誰かいるってことだよね? ここ開けたら」 「だったら帰るか」 「クロの意地悪!」 「ぐだぐだ言うな。腹を括れ。騎士になるんだろ?」 列車の傾きが収まると共に、扉を叩く音も間遠になった。完全に静かになるのを待ってから、シグナスは意を決して慎重に扉を横へ滑らせた。 (※さて、中にいるのは正気を失ったサン・サレンの兵士たち。幸いにも主人公すら認識できていない状態で、襲われはしないようです。何人いるのか1d3で判定して……「三人」と出ました) 何の引っかかりもなくするすると開いた扉の内側を、ランタンの光で照らす。人がいた。話し声も聞こえる。シグナスの目に写るのは三人。彼らの揃いの鎧には見覚えがある。領主の私兵が着るものだ。 先に入った兵士たちも無事なのだったら、解決の糸口はきっとすぐに見つかるだろう。シグナスはほっとして、呼びかける。 「あの、サン・サレンの方ですよね!」 しかしシグナスの呼び掛けには誰も反応しない。それもそのはず、良く良く耳をそばだてれば、彼らは会話などしていなかった。三人ともあらぬ方を向いて独り言を呟いている。 「補給物資はまだ届かんのか! これでは如何に頑健なドワーフでも戦えぬ! そうだ、補給物資の話をしている! お前だ! お前に言っているんだ、どんな面の皮をしているのか!」 「そこに鶏がいるよお、本当だよお。ほら鶏鶏鶏鶏鶏、おもろだねえ、ヘイ、ご自身で羽をむしって丸焼きになるご予定は?」 「お母さんのスープなんて何年ぶりだろう。家に帰れて良かったよ。そろそろ兵士は辞めようかと思ってて」 シグナスは狼狽えた。 対して〈おどる剣〉のクロは冷静である。空中で四十五度傾き、言った。 「共通項が分かるか」 「へ?」 「全員、食い物の話をしている。腹が減ってるんだ」 「……長く閉じ込められてるのかな。可哀想だ」 (※兵士たちに〈食料〉を与えるなら、彼らを正気に戻すことができるようです。食料一個あたり、二人の兵士を救うことができます。救われた兵士たちは「戦う従者」となって冒険に加わってくれるようです。今までの事情を知っているかもしれませんし、是非ここは仲間になってもらいたいところ。 シグナスの従者点は9、クロの従者点は7ですから、主人公ふたりプレイですが従者を二人連れて行けます。さて。冷静に考えれば食料を一個使って二人を正気に戻すのが効率的でしょう。しかし聖騎士たるもの、残りの一人を救わないという選択肢があるのでしょうか? ない。そう思いますので、食料を二つ……つまりシグナスがもつすべての食料を消費し、三人全員を救うこととします) シグナスは携帯食料を道具袋から取り出す。 「おいおい、まさか、おい」 今回は歩きながらでも食べられるように、木の実を練りこんだクッキーをナリクから持ってきた。それを三人の口に押し込んでいくと独り言は止み、夢中で咀嚼する音だけになる。 「なあお前、自分の食料を全部くれてやったのか?」 「だって苦しんでるんだよ。助けなきゃ。騎士でしょ、僕たちは」 「ああもう……」 そのように密やかに従騎士と〈おどる剣〉が囁きを交わしていると、客車の片隅から、 「ねえ、あなたたち」 弱々しい呼びかけがあった。 勢い込んで振り向くと、先程まで母親のシチューを幻視していた赤髪の女性兵士が、壁によりかかって立っている。疲れた様子だが目はしっかりとシグナスを見ていて、狂気の影は見当たらない。 「僕はシグナス、ナリクの従騎士です。こっちは〈おどる剣〉のクロ。この怨霊列車の調査を任されてます」 「もしかして、悪夢殺人事件を解決した、あのシグナス?」 「そうですけど……」 女性兵士は、痛ましいものを見る顔をした。 「聞いた、ヨン、アルゴット?」 また別の隅から、ヨンとアルゴットと呼ばれた兵士たちがそれぞれに返事をする。 ヨンはもじゃもじゃ髪のコビットで、身長はシグナスの半分くらい。アルゴットは口髭を三つ編みにした体格の良いドワーフで、縦にも横にもシグナスの倍近くありそうだ。 「恩は返さなきゃいけないと思う。どう、二人とも」 女性兵士の言葉に、コビットのヨンは目をまん丸に見開いて、 「そんな楽しそうな話、逃す手は無いだろ」 と言い、ドワーフのアルゴットは、 「求められんでも着いて行く。恥を雪がねばならん」 と頷く。 三人組のリーダーである女性兵士はトーヴァと名乗った。彼女はシグナスと同じく人間だ。サレンの領主の命で〈怨霊列車〉が好む種族や年齢や性別の傾向を調べるべく送り込まれたが、見事に全員さらわれたと言う。列車に好き嫌いはないのだ。 「従騎士どの、それから剣どの。そんなわけで、我らには付き従う用意があります」 「ぜひ、お願いします」 シグナスが頭を下げると、兵士三人も頭を下げた。 「しかし、誰か一人は残らねばならん」 空中を漂う〈おどる剣〉のクロが、三人の頭上から言う。 「最悪の場合、生き証人がいなくては後続も同じことを繰り返すだけだ。人選は好きにするが良い」 三人組は、態度の大きい〈おどる剣〉をじっと不信の目で見た。 「早くしろ」 「あの、ごめんなさい、クロは騎士なんです──」 「黙ってろシグナス。そっちは早く決めろ」 (※兵士Aとか言ってしまうのも味気ないですので、名前をつけてみました。生命点1の従者に名前を付けることがどれだけプレイヤーの精神にプレッシャーをかけるか承知の上で、やってみます。誰と冒険をするかは、1d6でダイスに問うことにします。1か2が出ればコビットの男性ヨン。3か4が出ればドワーフの男性アルゴット。5か6が出れば人間の女性トーヴァ。結果は二回振って2と3になりましたので、ヨンとアルゴットですね) 三人組は密やかに話し合い、最後はヨンが持っていたサイコロを転がして運命を決めさせたようだった。トーヴァが肩を落とし、ヨンとアルゴットが胸を張る。 「全員で戻ってきてよ」 トーヴァが言って、三人は拳をコツンと突き合わせた。 その様子を羨望の眼差しで眺めていたシグナスに、 「あまり思い入れるなよ。友達など少ない方が良い。そこは師匠を見習え」 と逆さになった〈おどる剣〉のクロは忠告する。 「それって寂しくない?」 「見送る方が寂しいんだ。お前にはまだ分かるまいし、分からん方が良いがな」 「……ねえクロ、記憶が戻ったの?」 「いや……いいや。そのような記録が蓄積されているだけだ」 「ごめん」 「謝るな」 〈おどる剣〉のクロは、元々は人間だったという。さる国の女王に仕える騎士であった。それだけ覚えているのだが、どこの国の何という女王に仕えたのか、それから自分の本名も思い出せないのである。 コビットのヨンが近づいてきて言った。シグナスの身長の半分くらいのところに、頭の天辺がある。 「ねえ。君のことはサー・シグナスって呼べばいいのかい?」 「いえ、僕はまだ従騎士ですから。シグナスと呼んでください」 「謙虚ボーイだ」 「け、けんきょぼーい!?」 こちらはシグナスより背の高い、大柄なドワーフのアルゴットが重々しい声で言った。 「謙虚は美徳だ。しかし、我らの長はお主である。故に堂々と振舞って良い。先に言っておくが、そのヨンは頭のネジが壊れておるから、真面目に相手をしてはならん」 ヨンは目をぐるりと回して、否定とも肯定ともつかぬリアクションでシグナスをけむに巻いたのであった。 ◇ 今回のリプレイは、ここまでです。 コビットのヨンとドワーフのアルゴット。新たな仲間を加えて賑やかなチームになりましたね。彼らは技量点0、生命点1の「戦う従者」として扱われます。敵の攻撃が一撃当たれば死、という過酷な条件ではありますが、どうか最後まで一緒にいて欲しいと願っています。 そして聖騎士らしい振る舞いをした結果、シグナス&クロの持ち合わせる回復アイテムはゼロになってしまいました。シグナスは回復技【癒しの光】を有するとはいえ、使えるのは一回きり。プレイヤーにタイミングを見極める眼力が要求されますね。緊張……。 それではまた、次の車両でお目にかかりましょう。 良きローグライクハーフを! ◇ (登場人物) ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。今回は良いところを見せたい。 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。 ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。 ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。 ・トーヴァ…人間の女性兵士で、ヨンとアルゴットと共に〈怨霊列車〉の調査をしていた。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。