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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.39
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〜前回までのあらすじ、あるいはイェシカの日記より抜粋〜
深夜、闇の賢人の仲立ちで、呪いをかけられた冒険者と出会った。
今朝、気まぐれな雨で足止めを食らい、束の間の安らぎを得る。
午前、穢れなき泉のほとりの神の樹が、古代の神槍をもたらす。
正午、廃墟で目覚めた鎧騎士と長剣が、いにしえの使命を守るべく刃を振るう。
〈ヴィンドランダ遺跡群〉は、〈太古の森〉という名の箱の中の猫。
クワニャウマは、〈太古の森〉の蝶のはばたき。思いがけない竜巻を巻き起こす。
蓋を開けようが開けまいが、生死は混然一体紙一重。
午後、そんな先のことはわからない——。
皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も、よろしくお願いいたしますm(__)m
前回までのあらすじに遊び心を込めようと、今回は某最低野郎アニメ風にしてみました。何はともあれ、『汝、獣となれ人となれ』リプレイその3です。
前回、〈ヴィンドランダ遺跡群〉に到着したクワニャウマ一行は、今回から本格的に遺跡群の探索に入ります。
さらに、ここからクリスティが正式参戦してきます^^ 関西弁の盗賊娘という想像のし甲斐がある魅力の塊のようなキャラクターなので、クワニャウマとのやりとりがはかどりました♪
ただ一つ、気になるのは、私が関東出身者なので、クリスティの言葉遣いが怪しいことです。これはアランツァ世界ということで、どうか御容赦下さいませf^^;
戦闘では、不意打ちをする敵とまたもや遭遇。【不意打ち】を阻止できる猟犬たちを従者にしていたおかげで、大いに助かりました!
一方、斬撃の武器と相性の悪い敵相手に苦戦しました。すると、たまたま拝読したFT新聞のローグライクハーフの遊び方に、「従者に太刀持ちがいれば、戦闘中に武器を交換できる」とあり、自分の戦略のたりなさに気がつけました。毎度のことながら、この遊び方シリーズはたいへん勉強になり、助かりますm(__)m
それにしても、アランツァ世界は冒険をすればするほど謎が増え、「この世界の真実を知りたい!」という気分にさせてくれるので面白いです^^b
最後になりますが、このたび『歌人探偵定家』の2巻がこの春発売予定となりました!
ここまでたどり着けたのは、皆様のおかげです。厚く御礼申し上げますm(__)m♪
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
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ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その3
齊藤(羽生)飛鳥
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6:かえる人の旅商人
廃墟の外へ出ると、かえる人の旅商人の一団と鉢合わせをした。
「やぁやぁ、コンニチハ! それともグッドイブニング?」
ひどく陽気な挨拶が遙か頭上から投げかけられる。大がえるの背に跨がっているのは、商人風のかえる人の一団だ。後ろには、荷物を満載にした大がえるがのっそりと何匹も続いている。
「こんな荒れ果てた遺跡の中でも、ワタクシドモはお客様に便利なものをたーくさんご提供デキマスヨ!」
「ありがたいわ! じゃあ、治療のポーションを一つお願い!」
「まいどあり! ところで、〈エール酒の大瓶〉や〈フィザック〉とか持っている? それなら、1回分あたり金貨10枚で買い取るよ」
〈エール酒の大瓶〉かぁ……。
黄昏の騎士退治の冒険で買ったけど、その冒険中に全部使いきったから、持ち合わせがないんだよね……。
もしも、今ここで持っていたら治療のポーションを金貨10枚分安く上がったのに、何たる痛恨のミス!
〈クワニャウマ、すごい顔になってる〉
ふと見ると、イェシカが石板にそう書いていた。周りをよく見れば、かえる人たちが、愛想笑いを保ちながらもおびえが見え隠れした表情になっていた。
「お酒は持ってないから、治療のポーションは通常のお値段で買うわ」
「通常の値段で買えるのに、なんでこの世の終わりを迎えたような顔で買い物されルンデスカ……」
かえる人の旅商人は、おびえた顔をしたものの、ちゃんと治療のポーションを売ってくれた。プロだ。
7:蕃神の領域
「しまった! よくよく考えたら、斧は置いていかないで、かえる人の旅商人たちに下取りしてもらえば、もっとお得だったわ!」
かえる人の旅商人の一団と別れた後、わたしはハッとする。
〈下取りしないタイプの旅商人かもしれないから、損はしてないと思う〉
イェシカが、石板にそうメッセージを書く。
「そっか。イェシカは冷静ね」
すると、静謐な空気を湛えた一帯に出た。たちまち、ミソサザイ姿のクリスティがうるさく囀る。
「どうしたの? 見覚えがあるの?」
その時、視界の端にある石像が身じろぎをしたように思えた。
「ワンッ!!」
またも猟犬がわたしに体当たりをしてきた。
よろけたところで、石像の拳が空を切る!
「こいつは、ガーゴイル! 助けてくれてありがとう、月光!」
〈その子は、飛燕〉
「見分けがつくとは、さすがイェシカ! でも、言い直すのは後にさせてね!」
わたしは、ガーゴイルへ古代の神槍で斬りかかる。
しかし、斬撃ではなかなかダメージを与えられない!
こんなことなら、打撃系の武器だった斧を置いていくんじゃなかった!
泥仕合の様相を呈してきたところで、猟犬の1頭がガーゴイルに殴り飛ばされた。
「キャウンッ!!」
「しっかりして、飛燕! 今すぐ〈身代わりの依代〉を使うから!」
〈その子は雷電だけど〈身代わりの依代〉は使って〉
イェシカの石板を横目にわたしが〈身代わりの依代〉で猟犬の手当てをしている間、残り2頭の猟犬がガーゴイルと戦う。
2頭が決死の突進攻撃をすると、ガーゴイルが砕け散る。
「やった!」
わたしは大声で喜ぶ。
が、それもつかの間、ガーゴイルの欠片が小さなガーゴイルたちになっていく。その数、3体!!
「なんて厄介な……!!」
「グルルル……」
苛立つわたしに同意するように、猟犬たちも不満気にうなり声を上げる。
「仕切り直して、戦闘継続よ!」
「ワンッ!!」
「もしかして、これが効くかも……」
わたしは、分裂後の小さなガーゴイルへ聖フランチェスコ市で購入した聖水をかける。
「グガガガ……!!」
小さなガーゴイルのうち、2体が消えていく。
残り1体は、猟犬たちが倒す。
「よかった……死者を出さずに勝てた……」
わたしは、テュルニを食べて自分の体力を回復させてから、ガーゴイルの欠片の中にお宝がないか、目を皿のようにして探し始める。
あんなに苦戦させられたのに、金貨1枚見つからない。
ため息一つついてから、わたしは周囲を見回す。
すると、少し離れた所に古びた石碑や彫像が建ち並び、古代語と文様が一面に描かれている巨大な石壁があることに気づいた。
「何らかの神に関する宗教画みたいだけど……これ、今回の冒険の〈手がかり〉になりそう?」
ミソサザイに訊ねてはみたものの、返事は囀りだけだった。
これは、本腰入れて見てみるか。
8:中間イベント
わたしは、目の前に広がる巨大な壁画を埋め尽くす古代語と異様な文様の判読に取りかかった。
意味ありげに石碑が鎮座していることと言い、絶対に何か重要なことが書かれているはず!
わたしが首を捻っている間、イェシカが手際よく野営の支度を始める。石壁の傍らには都合よく泉が湧いているので、野営にもってこいと判断したらしい。イェシカ、つくづくできる子だ。こんないい子に育ててくれたイェシカのお兄さん、ありがとう。
今夜は野営とわかると、いくら長丁場になってもいい安心感が出てきた。
わたしは、冷静さを取り戻して判読を続けた。
壁画は、何となく絵からして、たくさんの少数種族に崇拝されているのでおなじみの獣神セリオンに関する宗教画というのは見て取れた。
問題は、古代語の方だ。
「んーと、石碑には《いだいなるあたらしきおうへのきとう》とあるのかな?」
ようやく意味が通る文章が読み解けた。
イェシカと会話できるように、古代語の勉強をしていたことが、思いがけないところで役に立った。ありがとう、イェシカ。
これを基準にして、ほかの単語を見ていけば判読できそうだ!
わたしは、そこら辺に落ちていた小枝を拾って、読み解けた古代語を地面に書き出していく。
《けもののなまがわをいきながらはぎ、それをまとうことでけもののちからをみにやどせる》
《みずからのにくをじゅうしんにささげることでえいえんのけもののちからをえるぎしき》
……地面には、猟犬たちが文字を読めたらあっという間に地の果てまで逃げていきそうな内容と、著しく特定の人物が思い当たる内容が書き上がっていた。
あれ? あれれ? ヴィド、あなた、もしかして???
困惑するわたしのそばで、日が暮れる。すると、わたしの肩に止まっていたミソサザイが元の女コビットのクリスティの姿に戻った。
「よかった! クリスティ、ようやく会話できるわ! この遺跡のことを教えて! お宝について書かれているところはない?」
「ウチは、ここと同じような壁画を何度も見たけど、今あんたが解読した内容以外のことは書かれてなかったよ」
「そんな……」
クリスティが肩を落としたけど、私はその二倍は落とした。
イェシカが、そんなわたしたちを励ますように夕食を持って来てくれた。天使か!!
〈……忌まわしき祭祀が再び行われたか〉
「誰!?」
わたしたちは弾かれたように立ち上がって、辺りを見回す。
〈彼奴は贄を欲しておるのだ〉
微かな水音にクリスティが反応し、わたしたちも遅れて振り返る。
水辺に奇妙な影が頭を覗かせている。
つるりとした頭に長い首。巨大な甲羅。大亀だ。しかしどうやら人語を解するらしい。
亀の声は、不思議なことにわたしたちの頭の中に直接響きわたる。
年古りた亀は焚き火の灯りに照らされた壁画をまじろぎもせず見つめながら、静かに語り始めた。
それは遠い昔の、よくある悲劇。
信仰していた神が、ケツを拭く紙ほどにも役に立たないと絶望したくせに、新たに依存する神を求めた人間どもがもたらした悲劇だった。
異形の神像を新たな神として迎えた連中は、血生臭い儀式を執り行なって獣の力を見に宿していった。反対者は獣に姿を変えていく。もはや、彼らを止める者はいなかった。
そして、彼らを虐げた敵との戦いに身を投じていき、散り散りとなった。
老いた亀は、悲劇を語り終えると静かにすすり泣く。
「神に依存しすぎたがゆえの悲劇ね。神様は、どんなに大変な時もただで見守ってくれているだけで、すでに十二分にお得な存在なんだから、さらに自分の都合を押しつけるのは贅沢ってものよ。『神様! 俺達の戦いを見守っていてくれよな!』のスタンスで、侵略者を効果的に血祭りに上げる計画を練っていけば、一族散り散りの大損をせずにすんだのに」
〈その通り。愚かなことだ。だが儂ごときが今更何を言えるだろうか。若者たちを諫めることも咎めることもできず、ましてや我が身可愛さに彼らの言いなりに異形の力をこの身に宿した儂に。このように醜い身体を晒して、今でも生き長らえておるこの儂に、何の資格があるだろうか〉
「大丈夫。こちらにお得な話をしてくれたんで、あなたの醜さなんて眼中にないわ。むしろ、今まで会って来た中で最高のイケガメに見える」
〈やっぱり、儂は亀なのか……〉
老いた亀は、恥じ入ったようにゆっくりと泉の中に沈み込んでゆく。思ったより、繊細か!
〈我らが獣の王と呼んでいた"あれ"は、果たして本当は"なに"であったのだろうか……〉
それは、衝撃以外の何物でもなかった。
「えっ!? わたし、てっきり獣神セリオンの別解釈による信仰だから、獣神セリオンの別の側面程度に理解していたんだけど、まったくの別神の可能性があるの!? もうちょっと情報をちょうだい!! ねえってば!!」
わたしは、亀が沈んでいった水面めがけて叫んだけど、返事はあぶく一つだけだった。
「もう堪忍してやりぃや。それより、ウチが元の姿に戻っているうちに探索しよう」
クリスティは、口の周りにイェシカが用意した夕食のカスをつけたまま、わたしの肩に手を置く。イケガメの話を聞きながら、夕食を食べていたのは明白だ。
「ちゃっかりさんか。嫌いじゃないわ。では、食休みを終えたら出発しましょう。イェシカ、無理をさせてしまってごめんね」
イェシカは、健気にも頷く。天使だ。
この天使に甘えすぎないよう、この冒険が終わったらイェシカが楽しめるように、イェシカ強化月間にしよう。
9:泥棒カササギ
そう思いながら、夕食を取ろうとしたのが迂闊だった。
上空から獲物を狙って急降下してきたカササギが、目ざとく夕食のおかずを見つけ出し、嘴でくわえて飛び去ろうとする。
「貴様ごときに、イェシカの手料理をただで食わせてやるものか!!」
わたしはそこら辺に転がっていた石を投げつける。見事にカササギに命中し、奴は咥えていたおかずを落として飛び去って行く。
わたしは、すかさずお皿でそれを受け止める。
「ちっ……あのカササギを始末して夕食のおかずに追加しようと思ったけど、仕損じたか……」
「泥棒カササギを食うつもりだったんか!?」
クリスティが、ツッコミを入れる。元の姿の方が動きのキレがいい。
「食料を盗むのは、自分が食料になってもいい覚悟がある者がやることよ。少なくとも、わたしの故郷の村ではそうだったわ」
「……あんたの故郷の村、食料泥棒は一人もおらんかったやろ? そうやろ?」
「うーん、どうだったかなぁ。あれは、三年前……」
「頼むから、おらんかったと言ってー! 」
そんな雑談を交わしながら、わたしたちは夕食をすませたのだった。
(続く)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
2025年現在、『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を6巻まで刊行中。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)が刊行決定。同年春には『歌人探偵定家 弐』(仮)が刊行予定。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信
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