From:水波流
1月28日発売のTH(トーキングヘッズ叢書) No.105「ハルシネーション・パラダイス〜偽りの王国へようこそ」(アトリエサード)
今回も特集記事へ寄稿しております。
『幻覚に溺れる者たち』と題して、夢野久作『ドグラ・マグラ』、唐辺葉介『PSYCHE』、鴻上尚史『トランス』と三つの作品について論じております。
ぜひ書店や通販でお手にとってお読み下さい!
詳細>https://athird.cart.fc2.com/ca1/454/p-r8-s/
主な取扱書店>https://atelierthird.blogspot.com/2026/01/th-seriesno105.html
From:葉山海月
たかがネットにつながりづらい、ということが、こんなに不安に直結するとは!
現代人の宿痾でございましょうか?
From:くろやなぎ
今週の記事紹介文の作成中、「幕間」と書こうとして「まくま」と入力すると、変換候補には「幕間」が見当たりません。調べてみて、「幕間」の本来の読みが「まくあい」だということを初めて知った次第です(「まくあい」という音自体は頭の中にあったのですが、漢字の「幕間」とは結びついていませんでした…)。
ちなみに「まくま」は、辞書によって誤読/俗用/許容と見解が分かれるようですが、うちのパソコンの辞書では誤読扱いでスルーされたようです。スマホでは「まくま」と入力すると「幕間[補正]まくあい」と出てきて、さすがに行き届いてるなあ、と感心しました。
From:中山将平
僕らFT書房は、今日1月31日(土)と明日2月1日(日)の両日、「BGBE2026」(Board Game Business Expo Japan 2026)にサークル参加します。
ブース配置は【G-14】です。
19年以上作り続ける「ゲームブック」や、「1人用TRPGローグライクハーフ」「モンスター!モンスター!TRPG」関連書籍などを扱います。
現地には、売り子として僕中山が行く予定です。ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
最新作「ズィムララのモンスターラリー モンスター編」ご紹介→ https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/zimralamonster
最新作「ローグライクハーフ クトゥウルウの聖なる邪神殿」ご紹介→ https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/jyashinden
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
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■1/25(日)~1/30(金)の記事一覧
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2026年1月25日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4750
ローグライクハーフ新職業【道化師】
・いよいよ配信開始が間近に迫った、ローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』。そのシナリオに合わせた新職業【道化師】のデータをお届けしました。
戦闘・交渉・探索とさまざまな場面で役立ちそうな特殊技能の数々は、いちど使ってみたくなること間違いなしです。実際にその技を使う光景が目に見えるような、フレーバーテキストにもご注目ください!
(く)
2026年1月26日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4751
☆イベントに出てます☆
実は、忙しい理由は、「イベントに参加していた」ということがありまして。
「すでに去年の2倍ほどイベントに出たことになります」と本人から言わしめるほどです!
次にヨハネ氏が参加されるイベントについて。
去年の勢いに追いつけ追い越せで疾走するヨハネ氏に応援ヨロシク!
(葉)
2026年1月27日(火)かなでひびき FT新聞 No.4752
『これはゲームブックなのですか!?』vol.128
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する作品は『2つの意味の物語 勇者は聖なる剣を手に向かってくる魔物と戦った』及び『2つの意味の物語 アイドルの妹は高校生』(ささきかつお 新星出版社)!
この二冊のサブタイトル、あなたはどういう意味に捉えたでしょうか?
よく知られた例では「ここではきものをぬいでください」のような、二つの意味に解釈できる文がオチに混ざっているお話がズラリ満載!
かなで氏曰く、まさに、物語の「ルビンの壺」。そのラストは、「見逃せば人生後悔することウケアイ!」(二つの意味にしてみました)
(明)
2026年1月28日(水)ぜろ FT新聞 No.4753
第3回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第476回。「荷物持ち」の少年が〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第3回です。
今回は、1回目の【最終イベント】でのオウカンワシとの対決から。ファンブルもクリティカルも飛び交う2匹と1羽の戦闘の様子が、ダイスの目には表れない少年タイガのサポートも含め、たっぷりと描写されます。
戦いの後は、〈妖狐〉フォルネ視点での幕間を経て、2回目の冒険へ。【観測所】で先の様子を確認しつつ、タイガたちは巨大樹のさらに上を目指します!
(く)
2026年1月29日(木)齊藤飛鳥 FT新聞 No.4754
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』 その5
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
冒険家乙女のクワニャウマとその相棒のエルフの少女イェシカは、昼の間ミソサザイになる呪いをかけられたコビットの冒険者クリスティと共に、彼女の呪いを解くカギを探しに〈太古の森〉に眠る遺跡を探索し、ついに目的地へ到達します。
クワニャウマ一行を待ち受けていたのは、「力」を手に入れたクリスティの探し人。そして、衝撃の結末……。
クワニャウマたちによる『汝、獣となれ人となれ』最終回、どうぞお見逃しなきよう!
(天)
2026年1月30日(金)森梟夫&水波流 FT新聞 No.4755
『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって
・水波編集長と非実在作家・森梟夫先生が最近取組んでいる活動、それは怪異的な古史古伝を電子の海から引き揚げることです。
未だ嘗て知る人なき信濃国の国学者、橘樹景巌(たちばな・けいがん)が記した危険な書、『真州古伝攷(しんしゅうこでんこう)』全七巻。
書を読む行為を儀式に見立てたこれは、決して学問書ではなく、実践書であり、召喚書に近い。この書の存在を知ったこと自体が「始まり」に等しいと森先生は説きます。
記録によれば、井原志帆という研究者が本書の調査のため、長野県伊那郡の「鈴音坂(すずねざか)」を尋ねたまま消息を絶っているとのこと。
残されたレコーダーとノートを手がかりに、彼女の足跡を辿る佐伯修二。記録者本人が失踪したのに、一体なぜ失踪のことが記録されているのでしょうか?
「記すことは、封ずるにあらず。/これ、ひらくなり。」(終章注記より)
忘れ去られた存在を喚ぶことは、喚ばれる存在になることでもあるのでしょうか。「喚ぶ」ことは「読む」ことに通じるようです。
(明)
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■今週の読者様の声のご紹介
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(忍者福島さん)
ジャバウォックとの会話、全然理解できねー!と思ったけど、クワニャウマも言いたいことだけ言って(お前は何を言ってるんだ)という感じだったので、二人とも違ったベクトルでコイツはヤベー奴だと思いましたね(笑)
(お返事:齊藤飛鳥)
今回も感想を下さり、まことにありがとうございますm(_ _)m♪
「二人とも違ったベクトルでコイツはヤベー奴」というコメントに、思わず吹いてしまいました(≧m≦)
話しかけたら、相手に発狂されるか、クワニャウマみたいなリアクションしかされないのでは、ジャバウォックは、もしかしたらとても孤独なクリーチャーなのかもしれません(笑)
(ぜろさん)
「汝、獣となれ人となれ」リプレイ完結おつかれさまおめでとうございます。
まさかのラスト。ミソサザイさんがあのようなことになってしまうなんて、思いもよりませんでした。相変わらずキャラクター設定と物語のシリアスさとのギャップが著しいですね。
とはいえプレイしてみないと先の展開も内容もわからないもの。そこに予想不可能なドラマも生まれます。原作シナリオを読んでいないので、どこまでが元シナリオで、どこからが創作なのかと思いながら楽しませていただきました。
(お返事:齊藤飛鳥)
御感想下さり、ありがとうございます!おかげさまで、リプレイを完結できましたm(_ _)m
まさかのラストとは、まさに言い得て妙です。この展開を迎えた瞬間、「やってしまった!」と頭を抱えましたorz
今回も、このラストの直前にクワニャウマにおバカな発言をさせてしまっていたので、シナリオと不調和を起こさない程度にその後のリアクションにシリアスを加味してバランスを取りましたf^^;
ちなみに原作シナリオはいくつもの結末や分岐点があるので、拙リプレイとはまったく違った展開と結末も用意されております!
とても冒険し甲斐があって面白いので、お勧めです^^b
(忍者福島さん)
2ラウンドで鈍器猿は逃走したって事になってますが、鈍器猿は逃げた先でもジャッキを飛ばしてこないか心配ですね(笑)
(お返事:ぜろ)
ありがとうございます。
鉄骨のビスを全部外して高所から落とすしかないかもしれませんね。
(ジャラル アフサラールさん)
この「言葉の解釈」で一番印象的なのはミステリーですね。皆さんもご存じだろう『名探偵コナン』でも犯人ないし重要人物が「言葉の解釈」を間違えたための悲劇というのがありましたし、金田一耕助の出てくる傑作でも登場人物が言ってしまった言葉の解釈が事件解決のカギになるというのがありました。
(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます!
金田一先生のお話といえば、老女がうつむいて嘆くそぶりが実は……!?っていうのが印象的でしたよね!
これも言葉の解釈の違いではないですが、それに似たようなものだと思います。
(ジャラル アフサラールさん)
読むとSAN値の削れそうな(笑)本の紹介ありがとうございました。諏訪大社とミシャグジ神ですが、少年ジャンプ連載漫画でアニメ第二期が2026年7月が始まる『逃げ上手の若君』、北条時行の生涯を描く歴史漫画でミシャグジ神とある登場人物が深い関係(未読・未見の方の為に詳細は自粛)にあるのである意味タイムリーですね。
(お返事:森梟夫)
お便り感謝する、ジャラル・アフサラール殿。 私の筆致で君のSAN値を削ってしまったなら本望だが、どうか現実の平穏まで手放さないよう自愛していただきたい(笑)。
なるほど、『逃げ上手の若君』か。北条時行が駆け抜けた南北朝の動乱と、その背後で蠢く諏訪の神性……。アニメ第二期の放送が本年(2026年)七月とは、まさに「星辰が正しい位置に並ぶ」かのような、奇妙な符号を感じるよ。
君の鋭い指摘を受けて、私なりに返書を認めてみた。
■ 諏訪の神性と『真州古伝攷』の交差点
ジャラル殿の仰る通り、諏訪大社とミシャグジ神の関係は、歴史的にも民俗学的にも、そして物語的にも底知れぬ深淵を抱えている。
「生ける神」としての重圧: 『逃げ上手の若君』に登場する某人物が背負う神性は、まさに『真州古伝攷』が記す「神は名を持たず、人が呼ぶたびに名が生まれる」という、存在そのものが不安定な恐怖と隣り合わせだ 。
封印としての神事: 『真州古伝攷』の調査報告によれば、ミシャグジとは本来、外から来た異神を封じるための「再封(さいふう)」の儀式であるとされる 。漫画で描かれる華やかな伝承の裏側には、こうした「見せてはならぬ御印」としての側面が、毒のように塗り込められているのかもしれぬ 。
2026年7月の共鳴: アニメ第二期が始まるこの夏、多くの視聴者が「諏訪の神秘」に触れることになる。それは、図らずも橘樹景巌が危惧した「一たび記せば、古(いにしえ)は現(うつつ)となり、甦(よみがえ)らすなり」という状況を加速させるのではないか……と、作家としては期待と危惧を禁じ得ないのだ 。
■ 読者へのメッセージ
『逃げ上手の若君』を読み解く際、もし耳元で「鈴の音」が聞こえたり、ページをめくる手が氷のように冷たくなったりしたなら、それは『真州古伝攷』の断簡が君の心の中に侵入口を見つけた証拠かもしれない。
「赤面を剥ぎたる者、七夜ののち、村を喰う」—— 。 作中の物語が、単なる創作ではなく、何らかの封印を解くための「鍵」ではないことを祈るばかりだ。
ジャラル殿、またいつでもこの森梟夫へお便りをくれたまえ。君の知見が、私の物語にさらなる狂気と美を添えてくれるだろう。
(お返事:水波流)
諏訪とミシャグジについては、実は以前より私がよくモチーフにしている内容です。諏訪の地下に広がる維縵国とそこに巣食う蛇人間たちについての物語も、いつかお届けできればと思っています。
ところで『逃げ上手の若君』については私も未読で、森先生のお返事が正しいのかどうかは不明です……。(森さん、読んだの?)
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2026年1月31日土曜日
2026年1月30日金曜日
『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって FT新聞 No.4755
おはようございます。
FT新聞編集長の水波です。
今日は金曜日の投稿枠を使って、非実在作家・森梟夫先生と私が最近取組んでいるお話をさせて頂こうと思います。
皆さんは、江戸時代の国学者・室井恭蘭をご存じでしょうか。
『信濃秘史』『妖魅本草録』などが代表的な著作で、諸星大二郎氏の漫画作品にも度々引用されております。
私はその怪異なる匂いに昔から惹かれておりました。
そして、森梟夫先生によって電子の海から、忘れ去られた国学者が記した古史古伝が1つ、引き揚げられました。
今日はそのご紹介をできればと思います。
おっと、あとは森さんにお任せしましょう。
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『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』
──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって
著:森梟夫&水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
文政から幕末にかけて、信濃国に一人の国学者がいた。
名を橘樹景巌(たちばな・けいがん)という。
本居宣長や平田篤胤の名は、いまなお国学史の正史に刻まれている。
だが景巌の名は、そこにはない。
理由は単純だ。──彼の学問は、「考証」ではなかったからである。
■ 正統国学の末流、あるいは逸脱
橘樹景巌は、平田派の影響を色濃く受けた国学者とされる。
しかし残された断簡や門人の聞書を読む限り、彼は「幽冥の存在を理論化」することに満足していなかった。
古伝を攷(かんが)ふにあらず、古伝を喚(よ)ぶに在り。
これは『真州古伝攷』序文断簡に見える一文だ。
ここに彼の立場は端的に示されている。
景巌にとって、古事記や神代伝承は「読むもの」ではない。
再び現世に入り込ませるものだった。
■ 『真州古伝攷』という危険な書
『真州古伝攷(しんしゅうこでんこう)』は、全七巻構成と伝えられる。
そこには「すべき作法」が書かれている。
読む者の呼吸、沈黙の時間、香の焚き方──
書を読む行為そのものが、一種の儀式として構成されているのだ。
これは学問書ではない。
実践書であり、召喚書に近い。
■ なぜ「古伝攷」なのか
景巌は、自らの書をこう呼んだ。
「真州(=神州)」の「古伝」を「攷」する書──
つまり、正しい日本の古層を、あらためて"考え直す"書である。
だが、終章注記にはこう記されている。
記すことは、封ずるにあらず。
これ、ひらくなり。
この一文によって、『真州古伝攷』は反転する。
書かれた瞬間、それは記録ではなく侵入口となる。
■ 歴史から消された書
明治初年、ある地方官の報告書に次の記述がある。
「橘樹景巌遺書、学理にあらず、民心を惑はす虞あり。神道行政上、看過しがたし。」
危険すぎたのである。
近代国家が必要としたのは、整えられた神道であって、神が「再び来てしまう」神学ではなかった。
■ 失われた古伝を紐解くものへ
『真州古伝攷』は、いまなお完全な形では読めない。
だが断簡であっても、十分すぎる。
なぜなら、この書は──
読まれることで完成するからだ。
あなたがこの記事を読み、この書の存在を知ってしまったこと自体、橘樹景巌の思想から見れば「始まり」に等しい。
封印は、読む者が閉じないことによって成立する。
令和8年1月-
森梟夫
+++++++++++
『真州古伝攷』(しんしゅうこでんこう)
著者:橘樹景巌(たちばな・けいがん)江戸後期の国学者。
成立:文化年間(1804〜1818)ごろ。文化十三年刊という説在り。
長野県木曽郡の廃寺で、焼け残った『真州古伝攷』の写本断片が発見された。
「真なる信州に伝わる、古き神々の伝承を考証したる書」
すなわち
"地誌の形をとった異界の史書"または"現実と異界を地続きに見る地方誌"である。
【全体構成】
『真州古伝攷』は、信州(長野県)を中心とした中部山岳地帯(諏訪・戸隠・安曇野)に伝わる異形信仰・古代部族・禁忌の伝承・民間の怪異・神代の遺構などを記した民族誌的記録。
全七巻。序に曰く──"真州とは、神々の埋りし地なり"
【巻別内容】
一之巻:山人と土蜘蛛伝承
木曽・伊那谷に残る「土蜘蛛」伝承の記録。
鍾乳洞に住まう毛むくじゃらの異形人(山人)の目撃譚。
倭政以前にこの地を治めていた「葦原族」と呼ばれる人々の記録。
二之巻:諏訪神と蛇神信仰
諏訪大社の神事に潜む「ミシャグジ」神の秘密。
「蛇骨神」と呼ばれる禁忌の存在について。
古代に「大蛇を以て国を祓う」呪儀が存在したとの記述。
三之巻:隠れ里の記録
天竜川上流域に存在したとされる「空白の村」の調査。
迷い込んだ旅人が見た不老の民と、逆さまに歩く子どもの話。
「隠れ里」は一種の時間の外にある空間であるとの推測。
四之巻:信濃地下に眠る"国つ罪"の牢
戦国期以前から存在する「地下封印」の伝承。
人間ではない何かを封じた「鉄の棺」が山中にあるという。
地下に響く鈴の音と、見ると死ぬという赤い仮面の話。
五之巻:月読族と黄泉の門
信濃西部に伝わる「月読の巫女」の系譜と、呪禁の技法。
古墳に眠る「夜の王」の伝承。
冬至の夜にだけ開く「黄泉比良坂」への入口。
六之巻:渡来民と巨石信仰
飛鳥以前、海を越えてやってきた「和珥族」の痕跡。
上田・佐久の巨石群と星座信仰の関係。
巨石の下にある"神の骨"の正体。
七之巻:大災と封印の儀
古記録にない「黒い日蝕」と、それに続いた地割れの年。
それを鎮めた「神人」の自死と封印の話。
『真州古伝攷』自体がその封印の一部であるという終章。
【形式】
各巻には橘樹景巌の聞き書き、古文書からの抜粋、絵図、神代文字とされる謎の文字の写しも含まれる。
記された地名の多くは現存しない。
一部の巻は"閲覧禁止"とされていたとの記録もあり、「触れるべからず」「語るべからず」との朱書きあり。
【補足】
橘樹景巌は「この地に封じられし神、今なお眠らず」と巻末に記す。
現存する写本は2部とされ、うち1部は明治期に焼失、もう1部は所在不明。
+++++++++++
《記録文書:『真州古伝攷』調査報告書より抜粋》
第一章:赤い仮面の夜
【記録日:2025年10月22日】
【記録者:井原 志帆】
2025年10月、信州大学民俗学研究室・助手の井原志帆(いはらしほ)は、先輩研究者から受け継いだ一冊の古写本の調査を命じられた。それが、後に「橘樹景巌の幻の著作」と判明する──『真州古伝攷』である。
写本の出所は不明だった。劣化が進み、一部には虫食いがあったが、「四之巻」だけが異様に保存状態が良かった。ページの途中に朱墨で書かれた文字がある。
「真州とは、神代の裔(すえ)いまだ息づくところなり。」
そして、その巻にはこうあった。
──鉄の棺。仮面をかぶせし者、神に非ずしてヒトにあらず。
それに触れし者は、一夜にして姿を変え、里を食む。
志帆は調査のため、長野県伊那郡のある廃村跡へと向かった。『真州古伝攷』の記述と一致する地形が見つかったからだ。集落跡は地図にも載っていない。唯一の手がかりは、古い登山会報に記された「鈴音坂(すずねざか)」という地名だった。
彼女は音声レコーダーを回しながら、谷を歩いていた。午後五時、誰もいない山中で、ふと「鈴の音」が聞こえた。それは風に乗って遠ざかったかと思うと、次には耳元に現れた。
「……くる……くる……また、くる……」
振り向いた瞬間、志帆はそこに"仮面"を見た。赤く塗られ、能面のように無表情なそれが、木の間からこちらをじっと見ていたという。
録音データには、不可解な高周波ノイズと、女のすすり泣きのような音が残っていた。
彼女は翌日、消息を絶った。
第二章:ミシャグジ封印図
【記録日:2025年11月2日】
【記録者:佐伯 修二(民俗考古学会・特別会員/元NHKディレクター)】
【概要:井原志帆氏失踪後の再調査記録】
志帆が消息を絶ってから十日が経った。報道はされなかった。大学は「調査中に滑落した可能性が高い」として、詳細を伏せた。しかし、彼女が残したレコーダーとノートは、私の手元にある。
録音には、確かに「鈴の音」と「仮面に関する証言」が残されていた。そして、ノートには奇妙なスケッチがあった。
それは、一枚の円形の図。周囲に梵字めいた文字が書かれ、中央には二匹の蛇が絡み合い、仮面を巻きつけているような奇怪な構図。
志帆はこの図を「封印図」と呼び、傍らにこう書いていた。
「これは"ミシャグジ"ではない。だが、ミシャグジ神事にこれが封じられている。祭ではなく、再封なのだ。」
私は長野県・茅野市の諏訪大社の旧記録を調べた。意外にも江戸期の古文書に、以下のような一節があった。
「神事、蛇骨を封じ、仮面を被せて祀る。ミシャグジ、此にて動かず。」
さらに驚いたのは、諏訪大社下社の宝物殿に保管されていた古絵巻『神蛇図』に、志帆の描いた封印図と酷似した構図が存在していたことだ。だが、学芸員はその絵について口を閉ざした。
「その図は……里の者も、あまり見たがりません。」
志帆のノートには、もう一つ、赤インクで書かれた言葉があった。
「夜に封印を解くな。音が響けば、仮面は目覚める。」
私はその日のうちに、志帆が最後に立ち寄った「鈴音坂」への同行を申し出た。現地ガイドは一度は拒否したが、私が例のスケッチを見せると、蒼白になってこう言った。
「その絵……うちのじい様が、"見てはならん御印"だと言って焼いたもんですよ……。よくまだ、残ってましたね。」
【調査メモ抜粋】
・"ミシャグジ"とは封印神事であり、本来は外から来た異神
・"赤い仮面"は、神を覆うものではなく、神そのものの"顔"である可能性
・古写本『真州古伝攷』四之巻には、「赤面を剥ぎたる者、七夜ののち、村を喰う」との記述あり
第三章:鉄の棺
【記録日:2025年11月4日】
【記録者:佐伯 修二】
【同行者:地元案内人・北村 昇(60代・元猟師)】
「志帆さんの声、残ってましたか?」
北村は登山口に立ちながら、そう訊いた。
「ええ……だが、録音の終盤、まるで別人のような、笑い声が入っていた。」
私が答えると、彼は言った。
「それ、志帆さんやない。"山の声"ですわ。」
私たちは早朝6時、「鈴音坂」へ向かった。林道は廃道寸前で、車を下りてから歩く。途中、獣道としか思えぬ崖沿いの小径を抜け、古びた石の鳥居を見つけた。
鳥居の柱には、かろうじて読める文字が刻まれていた。
「□□ノ□□神封所」
※判読不能箇所多数。中央に"封"の一文字だけが赤く浮かび上がっていた。
鳥居をくぐった先に、それはあった。
山肌の岩を穿った、人工的な「穴」。入り口は石積みでふさがれていたが、一部が崩れ、中が見える。私は強い腐臭に顔をしかめながら、ヘッドランプを点けて中へ入った。
【記録:内部構造】
・トンネル状に奥行き10m程度
・奥に「台座」と思われる石組みあり
・その上に、長さ2mほどの金属製の"棺"が存在
棺は黒く錆びており、鉄ではなく「鉛」のような鈍い質感をしていた。その上には──赤い仮面が乗っていた。
能面にも似たその仮面は、無表情でありながら、どこか"笑っている"ように見えた。
北村が声を上げた。「動いた……」
私は何も見ていない。ただ、棺の下から「水が滲むような音」が聞こえていた。
その瞬間、ランプが一度消えた。
真っ暗闇の中で、明らかに「第三の足音」が聞こえた。私と北村は確かに、もう一人いることを感じた。
【脱出とその後】
私たちは棺に触れず、急いで撤退した。だが、戻る途中で北村は崖下に転落、右足を骨折した。
彼は担架に運ばれながら、うわ言のように繰り返した。
「……音、聞いた。もう、目、覚めてる……あいつ、"名"を探してる……」
その夜、私は志帆のノートの最後のページを改めて見た。
そこには赤字でこう記されていた。
「神は名を持たぬ。だが、人が呼ぶたび、"名"が生まれる」
「仮面を呼ぶな。形を思い浮かべるな。それが鍵になる」
第四章:仮面を被るもの
【記録日:2025年11月6日】
【記録者:佐伯 修二】
【資料:井原志帆のスマートフォンより復元された音声ファイル】
■ 発見された音声
佐伯のもとに、志帆のスマートフォンから復元された音声ファイルが届いたのは11月6日の朝だった。
ファイル名は《M-SHINANO_04-4》、記録時刻は失踪当日、午後6時43分。
最初の20秒は風の音。山中で録られたものだ。
しかし、次の瞬間、志帆の震える声が入った。
「……何かが、這っている。足ではない。音が……鈴じゃない、骨が鳴ってる……」
「あれは、"呼んでいる"……"誰か"、じゃない、"名を"……」
最後に、志帆の声ではない、異様に濁った低音が一言だけ呟いた。
「……おまえの顔を……よこせ……」
この音声が最後だった。
■ 拡がる影
それと前後して、長野県茅野市、伊那市、松本市の三地域で奇妙な耳鳴りや幻聴の訴えが急増し始めた。被害者の共通点は、赤い仮面の夢を見たこと。
「誰かが私の顔を剥がして、仮面をかぶせようとするんです……」
「仮面の内側から、何かがこっちを見ている。」
精神科医は集団ヒステリーと判断したが、地元神職の一人──諏訪下社の外護師・安曇成範(あずみ・しげのり)は、佐伯にこう語った。
「それは"容れ物"を探しているのです。あなたが"見た"なら、もう遅い。」
「神ではない。神になりかけた"何か"……仮面はその"外殻"です。」
■ 佐伯の異変
11月7日、佐伯は自宅で"仮面"の夢を見る。
暗い山中、鉄の棺の前に立つ自分。
その中から"もう一人の佐伯"が這い出し、仮面を差し出す。
仮面の裏に、自分の名前が刻まれている。
「名がある。名があるなら、それは"現れる"」
「……顔をよこせ」
佐伯は目覚めたが、耳鳴りが消えなかった。
鏡を見ると、自分の顔が"どこか他人のもの"のように思えた。
■ 終りの兆し
佐伯はついに決断する。
再び、鉄の棺の地へ戻る。
封印を"解く"のではなく、"確認"するために。
志帆は棺に触れていない。ならば、彼女の"意志"がそこにまだ残っているかもしれない。
しかし、安曇外護師は最後にこう警告した。
「"顔を渡した者"はもう、戻れません。名前を呼ばれた瞬間に、"仮面"は生きる。」
「どうか、名を思い出すな。己の"顔"を信じなさい。」
第五章:顔なき神
【記録日:2025年11月9日】
【記録者:佐伯 修二(記録途中で失踪)】
【備考:本章は、佐伯が遺した録音と手記、および後日発見された映像記録を元に復元された】
■ 鉄の棺、再訪
11月9日午前4時。佐伯修二は、最後の調査と称して「鈴音坂」の封印地を再訪する。
彼が選んだのは、かつて志帆が失踪したのと同じ時刻、夕暮れ時だった。
録音記録によれば、佐伯は棺の前でこう呟いている。
「……仮面は、"顔"じゃなかった。"入口"だ。
ここから何かが……"人"になろうとしてる。」
■ 映像記録(カメラ残留フッテージ)
三脚に固定されたハンディカムの映像。カメラが捉えたのは、棺の蓋が開いている様子だった。
中は空。だが、棺の周囲に粘液のような跡と"足跡"が残されていた。
足跡は人間のものではない。趾が異様に長く、中心に"割れ目"のような窪みがある。佐伯はそれを見て呟く。
「顔じゃない。これは、仮面そのものが……歩いている?」
突然、カメラがノイズに覆われる。次の瞬間、佐伯の顔が一瞬カメラに映る──
仮面を手にしていた。
彼は泣いている。だが、笑っているようにも見える。
最後の言葉が、記録されていた。
「……名を思い出してしまった。"神"の……名前を……」
■ 結末
佐伯修二は、それ以降、消息を絶つ。
同月中旬、諏訪地方では謎の集団"顔面幻覚症状"による失神者が30名超。
多くの被害者が「同じ顔を見た」と証言する。
「無表情な赤い仮面。けれど、どこか……見覚えのある"自分の顔"だった。」
そして──
『真州古伝攷』四之巻が再び大学の書庫に戻されていた。誰が戻したのかは不明である。
だが、その最後のページには、手書きでこう記されていた。
「顔を奪いし神、いまや仮面に宿りて、"名を持ちたり"」
「その名を呼びし者、次の容れ物なり。」
終章の註
『真州古伝攷』、是れただ古(いにしえ)の詞を攷する書にあらず。
秘(ひ)すべきを攷す、言(こと)にあらわすこと、即ち禍(まが)を解くに等し。
一たび記せば、古(いにしえ)は現(うつつ)となり、
封(とざ)すにあらず、甦(よみがえ)らすなり。
(完)
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FT新聞編集長の水波です。
今日は金曜日の投稿枠を使って、非実在作家・森梟夫先生と私が最近取組んでいるお話をさせて頂こうと思います。
皆さんは、江戸時代の国学者・室井恭蘭をご存じでしょうか。
『信濃秘史』『妖魅本草録』などが代表的な著作で、諸星大二郎氏の漫画作品にも度々引用されております。
私はその怪異なる匂いに昔から惹かれておりました。
そして、森梟夫先生によって電子の海から、忘れ去られた国学者が記した古史古伝が1つ、引き揚げられました。
今日はそのご紹介をできればと思います。
おっと、あとは森さんにお任せしましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』
──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって
著:森梟夫&水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
文政から幕末にかけて、信濃国に一人の国学者がいた。
名を橘樹景巌(たちばな・けいがん)という。
本居宣長や平田篤胤の名は、いまなお国学史の正史に刻まれている。
だが景巌の名は、そこにはない。
理由は単純だ。──彼の学問は、「考証」ではなかったからである。
■ 正統国学の末流、あるいは逸脱
橘樹景巌は、平田派の影響を色濃く受けた国学者とされる。
しかし残された断簡や門人の聞書を読む限り、彼は「幽冥の存在を理論化」することに満足していなかった。
古伝を攷(かんが)ふにあらず、古伝を喚(よ)ぶに在り。
これは『真州古伝攷』序文断簡に見える一文だ。
ここに彼の立場は端的に示されている。
景巌にとって、古事記や神代伝承は「読むもの」ではない。
再び現世に入り込ませるものだった。
■ 『真州古伝攷』という危険な書
『真州古伝攷(しんしゅうこでんこう)』は、全七巻構成と伝えられる。
そこには「すべき作法」が書かれている。
読む者の呼吸、沈黙の時間、香の焚き方──
書を読む行為そのものが、一種の儀式として構成されているのだ。
これは学問書ではない。
実践書であり、召喚書に近い。
■ なぜ「古伝攷」なのか
景巌は、自らの書をこう呼んだ。
「真州(=神州)」の「古伝」を「攷」する書──
つまり、正しい日本の古層を、あらためて"考え直す"書である。
だが、終章注記にはこう記されている。
記すことは、封ずるにあらず。
これ、ひらくなり。
この一文によって、『真州古伝攷』は反転する。
書かれた瞬間、それは記録ではなく侵入口となる。
■ 歴史から消された書
明治初年、ある地方官の報告書に次の記述がある。
「橘樹景巌遺書、学理にあらず、民心を惑はす虞あり。神道行政上、看過しがたし。」
危険すぎたのである。
近代国家が必要としたのは、整えられた神道であって、神が「再び来てしまう」神学ではなかった。
■ 失われた古伝を紐解くものへ
『真州古伝攷』は、いまなお完全な形では読めない。
だが断簡であっても、十分すぎる。
なぜなら、この書は──
読まれることで完成するからだ。
あなたがこの記事を読み、この書の存在を知ってしまったこと自体、橘樹景巌の思想から見れば「始まり」に等しい。
封印は、読む者が閉じないことによって成立する。
令和8年1月-
森梟夫
+++++++++++
『真州古伝攷』(しんしゅうこでんこう)
著者:橘樹景巌(たちばな・けいがん)江戸後期の国学者。
成立:文化年間(1804〜1818)ごろ。文化十三年刊という説在り。
長野県木曽郡の廃寺で、焼け残った『真州古伝攷』の写本断片が発見された。
「真なる信州に伝わる、古き神々の伝承を考証したる書」
すなわち
"地誌の形をとった異界の史書"または"現実と異界を地続きに見る地方誌"である。
【全体構成】
『真州古伝攷』は、信州(長野県)を中心とした中部山岳地帯(諏訪・戸隠・安曇野)に伝わる異形信仰・古代部族・禁忌の伝承・民間の怪異・神代の遺構などを記した民族誌的記録。
全七巻。序に曰く──"真州とは、神々の埋りし地なり"
【巻別内容】
一之巻:山人と土蜘蛛伝承
木曽・伊那谷に残る「土蜘蛛」伝承の記録。
鍾乳洞に住まう毛むくじゃらの異形人(山人)の目撃譚。
倭政以前にこの地を治めていた「葦原族」と呼ばれる人々の記録。
二之巻:諏訪神と蛇神信仰
諏訪大社の神事に潜む「ミシャグジ」神の秘密。
「蛇骨神」と呼ばれる禁忌の存在について。
古代に「大蛇を以て国を祓う」呪儀が存在したとの記述。
三之巻:隠れ里の記録
天竜川上流域に存在したとされる「空白の村」の調査。
迷い込んだ旅人が見た不老の民と、逆さまに歩く子どもの話。
「隠れ里」は一種の時間の外にある空間であるとの推測。
四之巻:信濃地下に眠る"国つ罪"の牢
戦国期以前から存在する「地下封印」の伝承。
人間ではない何かを封じた「鉄の棺」が山中にあるという。
地下に響く鈴の音と、見ると死ぬという赤い仮面の話。
五之巻:月読族と黄泉の門
信濃西部に伝わる「月読の巫女」の系譜と、呪禁の技法。
古墳に眠る「夜の王」の伝承。
冬至の夜にだけ開く「黄泉比良坂」への入口。
六之巻:渡来民と巨石信仰
飛鳥以前、海を越えてやってきた「和珥族」の痕跡。
上田・佐久の巨石群と星座信仰の関係。
巨石の下にある"神の骨"の正体。
七之巻:大災と封印の儀
古記録にない「黒い日蝕」と、それに続いた地割れの年。
それを鎮めた「神人」の自死と封印の話。
『真州古伝攷』自体がその封印の一部であるという終章。
【形式】
各巻には橘樹景巌の聞き書き、古文書からの抜粋、絵図、神代文字とされる謎の文字の写しも含まれる。
記された地名の多くは現存しない。
一部の巻は"閲覧禁止"とされていたとの記録もあり、「触れるべからず」「語るべからず」との朱書きあり。
【補足】
橘樹景巌は「この地に封じられし神、今なお眠らず」と巻末に記す。
現存する写本は2部とされ、うち1部は明治期に焼失、もう1部は所在不明。
+++++++++++
《記録文書:『真州古伝攷』調査報告書より抜粋》
第一章:赤い仮面の夜
【記録日:2025年10月22日】
【記録者:井原 志帆】
2025年10月、信州大学民俗学研究室・助手の井原志帆(いはらしほ)は、先輩研究者から受け継いだ一冊の古写本の調査を命じられた。それが、後に「橘樹景巌の幻の著作」と判明する──『真州古伝攷』である。
写本の出所は不明だった。劣化が進み、一部には虫食いがあったが、「四之巻」だけが異様に保存状態が良かった。ページの途中に朱墨で書かれた文字がある。
「真州とは、神代の裔(すえ)いまだ息づくところなり。」
そして、その巻にはこうあった。
──鉄の棺。仮面をかぶせし者、神に非ずしてヒトにあらず。
それに触れし者は、一夜にして姿を変え、里を食む。
志帆は調査のため、長野県伊那郡のある廃村跡へと向かった。『真州古伝攷』の記述と一致する地形が見つかったからだ。集落跡は地図にも載っていない。唯一の手がかりは、古い登山会報に記された「鈴音坂(すずねざか)」という地名だった。
彼女は音声レコーダーを回しながら、谷を歩いていた。午後五時、誰もいない山中で、ふと「鈴の音」が聞こえた。それは風に乗って遠ざかったかと思うと、次には耳元に現れた。
「……くる……くる……また、くる……」
振り向いた瞬間、志帆はそこに"仮面"を見た。赤く塗られ、能面のように無表情なそれが、木の間からこちらをじっと見ていたという。
録音データには、不可解な高周波ノイズと、女のすすり泣きのような音が残っていた。
彼女は翌日、消息を絶った。
第二章:ミシャグジ封印図
【記録日:2025年11月2日】
【記録者:佐伯 修二(民俗考古学会・特別会員/元NHKディレクター)】
【概要:井原志帆氏失踪後の再調査記録】
志帆が消息を絶ってから十日が経った。報道はされなかった。大学は「調査中に滑落した可能性が高い」として、詳細を伏せた。しかし、彼女が残したレコーダーとノートは、私の手元にある。
録音には、確かに「鈴の音」と「仮面に関する証言」が残されていた。そして、ノートには奇妙なスケッチがあった。
それは、一枚の円形の図。周囲に梵字めいた文字が書かれ、中央には二匹の蛇が絡み合い、仮面を巻きつけているような奇怪な構図。
志帆はこの図を「封印図」と呼び、傍らにこう書いていた。
「これは"ミシャグジ"ではない。だが、ミシャグジ神事にこれが封じられている。祭ではなく、再封なのだ。」
私は長野県・茅野市の諏訪大社の旧記録を調べた。意外にも江戸期の古文書に、以下のような一節があった。
「神事、蛇骨を封じ、仮面を被せて祀る。ミシャグジ、此にて動かず。」
さらに驚いたのは、諏訪大社下社の宝物殿に保管されていた古絵巻『神蛇図』に、志帆の描いた封印図と酷似した構図が存在していたことだ。だが、学芸員はその絵について口を閉ざした。
「その図は……里の者も、あまり見たがりません。」
志帆のノートには、もう一つ、赤インクで書かれた言葉があった。
「夜に封印を解くな。音が響けば、仮面は目覚める。」
私はその日のうちに、志帆が最後に立ち寄った「鈴音坂」への同行を申し出た。現地ガイドは一度は拒否したが、私が例のスケッチを見せると、蒼白になってこう言った。
「その絵……うちのじい様が、"見てはならん御印"だと言って焼いたもんですよ……。よくまだ、残ってましたね。」
【調査メモ抜粋】
・"ミシャグジ"とは封印神事であり、本来は外から来た異神
・"赤い仮面"は、神を覆うものではなく、神そのものの"顔"である可能性
・古写本『真州古伝攷』四之巻には、「赤面を剥ぎたる者、七夜ののち、村を喰う」との記述あり
第三章:鉄の棺
【記録日:2025年11月4日】
【記録者:佐伯 修二】
【同行者:地元案内人・北村 昇(60代・元猟師)】
「志帆さんの声、残ってましたか?」
北村は登山口に立ちながら、そう訊いた。
「ええ……だが、録音の終盤、まるで別人のような、笑い声が入っていた。」
私が答えると、彼は言った。
「それ、志帆さんやない。"山の声"ですわ。」
私たちは早朝6時、「鈴音坂」へ向かった。林道は廃道寸前で、車を下りてから歩く。途中、獣道としか思えぬ崖沿いの小径を抜け、古びた石の鳥居を見つけた。
鳥居の柱には、かろうじて読める文字が刻まれていた。
「□□ノ□□神封所」
※判読不能箇所多数。中央に"封"の一文字だけが赤く浮かび上がっていた。
鳥居をくぐった先に、それはあった。
山肌の岩を穿った、人工的な「穴」。入り口は石積みでふさがれていたが、一部が崩れ、中が見える。私は強い腐臭に顔をしかめながら、ヘッドランプを点けて中へ入った。
【記録:内部構造】
・トンネル状に奥行き10m程度
・奥に「台座」と思われる石組みあり
・その上に、長さ2mほどの金属製の"棺"が存在
棺は黒く錆びており、鉄ではなく「鉛」のような鈍い質感をしていた。その上には──赤い仮面が乗っていた。
能面にも似たその仮面は、無表情でありながら、どこか"笑っている"ように見えた。
北村が声を上げた。「動いた……」
私は何も見ていない。ただ、棺の下から「水が滲むような音」が聞こえていた。
その瞬間、ランプが一度消えた。
真っ暗闇の中で、明らかに「第三の足音」が聞こえた。私と北村は確かに、もう一人いることを感じた。
【脱出とその後】
私たちは棺に触れず、急いで撤退した。だが、戻る途中で北村は崖下に転落、右足を骨折した。
彼は担架に運ばれながら、うわ言のように繰り返した。
「……音、聞いた。もう、目、覚めてる……あいつ、"名"を探してる……」
その夜、私は志帆のノートの最後のページを改めて見た。
そこには赤字でこう記されていた。
「神は名を持たぬ。だが、人が呼ぶたび、"名"が生まれる」
「仮面を呼ぶな。形を思い浮かべるな。それが鍵になる」
第四章:仮面を被るもの
【記録日:2025年11月6日】
【記録者:佐伯 修二】
【資料:井原志帆のスマートフォンより復元された音声ファイル】
■ 発見された音声
佐伯のもとに、志帆のスマートフォンから復元された音声ファイルが届いたのは11月6日の朝だった。
ファイル名は《M-SHINANO_04-4》、記録時刻は失踪当日、午後6時43分。
最初の20秒は風の音。山中で録られたものだ。
しかし、次の瞬間、志帆の震える声が入った。
「……何かが、這っている。足ではない。音が……鈴じゃない、骨が鳴ってる……」
「あれは、"呼んでいる"……"誰か"、じゃない、"名を"……」
最後に、志帆の声ではない、異様に濁った低音が一言だけ呟いた。
「……おまえの顔を……よこせ……」
この音声が最後だった。
■ 拡がる影
それと前後して、長野県茅野市、伊那市、松本市の三地域で奇妙な耳鳴りや幻聴の訴えが急増し始めた。被害者の共通点は、赤い仮面の夢を見たこと。
「誰かが私の顔を剥がして、仮面をかぶせようとするんです……」
「仮面の内側から、何かがこっちを見ている。」
精神科医は集団ヒステリーと判断したが、地元神職の一人──諏訪下社の外護師・安曇成範(あずみ・しげのり)は、佐伯にこう語った。
「それは"容れ物"を探しているのです。あなたが"見た"なら、もう遅い。」
「神ではない。神になりかけた"何か"……仮面はその"外殻"です。」
■ 佐伯の異変
11月7日、佐伯は自宅で"仮面"の夢を見る。
暗い山中、鉄の棺の前に立つ自分。
その中から"もう一人の佐伯"が這い出し、仮面を差し出す。
仮面の裏に、自分の名前が刻まれている。
「名がある。名があるなら、それは"現れる"」
「……顔をよこせ」
佐伯は目覚めたが、耳鳴りが消えなかった。
鏡を見ると、自分の顔が"どこか他人のもの"のように思えた。
■ 終りの兆し
佐伯はついに決断する。
再び、鉄の棺の地へ戻る。
封印を"解く"のではなく、"確認"するために。
志帆は棺に触れていない。ならば、彼女の"意志"がそこにまだ残っているかもしれない。
しかし、安曇外護師は最後にこう警告した。
「"顔を渡した者"はもう、戻れません。名前を呼ばれた瞬間に、"仮面"は生きる。」
「どうか、名を思い出すな。己の"顔"を信じなさい。」
第五章:顔なき神
【記録日:2025年11月9日】
【記録者:佐伯 修二(記録途中で失踪)】
【備考:本章は、佐伯が遺した録音と手記、および後日発見された映像記録を元に復元された】
■ 鉄の棺、再訪
11月9日午前4時。佐伯修二は、最後の調査と称して「鈴音坂」の封印地を再訪する。
彼が選んだのは、かつて志帆が失踪したのと同じ時刻、夕暮れ時だった。
録音記録によれば、佐伯は棺の前でこう呟いている。
「……仮面は、"顔"じゃなかった。"入口"だ。
ここから何かが……"人"になろうとしてる。」
■ 映像記録(カメラ残留フッテージ)
三脚に固定されたハンディカムの映像。カメラが捉えたのは、棺の蓋が開いている様子だった。
中は空。だが、棺の周囲に粘液のような跡と"足跡"が残されていた。
足跡は人間のものではない。趾が異様に長く、中心に"割れ目"のような窪みがある。佐伯はそれを見て呟く。
「顔じゃない。これは、仮面そのものが……歩いている?」
突然、カメラがノイズに覆われる。次の瞬間、佐伯の顔が一瞬カメラに映る──
仮面を手にしていた。
彼は泣いている。だが、笑っているようにも見える。
最後の言葉が、記録されていた。
「……名を思い出してしまった。"神"の……名前を……」
■ 結末
佐伯修二は、それ以降、消息を絶つ。
同月中旬、諏訪地方では謎の集団"顔面幻覚症状"による失神者が30名超。
多くの被害者が「同じ顔を見た」と証言する。
「無表情な赤い仮面。けれど、どこか……見覚えのある"自分の顔"だった。」
そして──
『真州古伝攷』四之巻が再び大学の書庫に戻されていた。誰が戻したのかは不明である。
だが、その最後のページには、手書きでこう記されていた。
「顔を奪いし神、いまや仮面に宿りて、"名を持ちたり"」
「その名を呼びし者、次の容れ物なり。」
終章の註
『真州古伝攷』、是れただ古(いにしえ)の詞を攷する書にあらず。
秘(ひ)すべきを攷す、言(こと)にあらわすこと、即ち禍(まが)を解くに等し。
一たび記せば、古(いにしえ)は現(うつつ)となり、
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2026年1月29日木曜日
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』その5 FT新聞 No.4754
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.41
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
〜前回までのあらすじ、あるいはイェシカの日記より抜粋〜
やめて! 世界を破滅に導く力を持っているジャバウォックに耳元で混乱した言葉を吹き込れたら、クワニャウマが発狂して精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでクワニャウマ!
あんたが今ここで倒れたら、ファラサールを讃える詩を作る約束はどうなっちゃうの?
【対魔法ロール】がまだ残ってる。ここを耐えれば、ジャバウォックに勝てるんだから!
次回「クワニャウマ死す」デュエルスタンバイ!
『汝、獣となれ人となれ』リプレイは、今回の第5回を持ちまして最終回でございます。前回までのあらすじが、もう説明不要の次回予告ネタになっていますのも、最終回テンションゆえのことです。
『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』と続く今作もまた、「異なる信仰をしたことで変容した他者と、どこまで共存できるか」「愛のような根源的な人間の感情と、後付けで得る信仰の二つのうち、どちらが強いのか」という骨太かつ重厚なテーマでした。また、「カルト宗教集団に洗脳されてしまった恋人を助けに行く人に協力する話」の寓話とも読み取れました。通常のリアリズム作品で書くとかなりどぎつくなりますが、ファンタジーですと俄然読みやすくなるので、つくづくファンタジーの強みだと思います。
なお、三作とも異なる思想を抱くようになった他者を「外見が変わった」「怪物と同化した」「怪物になった」と象徴的に表現し、それに対してプレイヤーらが「受容」と「拒絶」のどちらを選ぶのか、分岐が発生。これにより、プレイヤーの中で普段眠っている人生観を盛大に揺さぶって下さいます。だから、この三作のシナリオはとてつもなく冒険し甲斐があるし、心にも残るのだと得心がいきました^^b
ところで、今回のプレイで以前FT新聞様に掲載されていた「ローグライクハーフのルール」で紹介されていた、「第一ラウンドで氷槍を使うと有利」というのを実践してみたく、クワニャウマの経験点を魔術点にまわして、二つ目の呪文として氷槍を選択。最終決戦まで魔術点を温存しました。これまでは【魔術ロール】の威力が上回っていて狭い場所だった場合に複数の敵に攻撃できる炎球を重宝していたのですが、同じ条件で2点のダメージを与えられる氷槍の便利さに目覚めました^^
私事になりますが、先日刊行された『シンポ教授のマジカルミステリー劇場』(光文社)を拝読しました。かの伝説のバラエティ番組『マジカル頭脳パワー』の人気コーナー「マジカルミステリー劇場」の推理パズルの本です。挑戦のルールが冒頭に書かれ、解答編を読み終えるまで正解にたどり着ければ800点、途中のヒントのページを読むと減点、不正解なら0点という形式で、かつての番組の解答者の気分を味わえます。各問題には、推理指数というレベル設定がされていました。分岐小説とは異なりますが、遊戯性に特化しているので、こちらもゲームブックに分類されるのだろうかと、ゲームブックにはまるま前には思いもしなかった感想を抱けるようになりました^^
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その5
齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
13:最終イベント
ジャバウォックと遭遇した遺跡の通路をさらに探索を続けていくと、ねっとりと澱んだ黴臭い空気が漂う場所に出た。
不気味な獣の神像が祀られている祭壇がぽつりと目に留まる。辺り一帯は沈黙が支配しており、生き物の気配一つ感じない。
「ここや」
クリスティが小声で呟く。わたしたちはもちろん、猟犬たちも頷き返す。
わたしは、今日2回も罠にかかった経験から、辺りを窺いつつ慎重に一歩踏み出す。そのまま数歩。
祭壇の周りには引き裂かれたような衣服や荷物が散らばっている。
……イェシカの教育によくないものが近くに転がってないといいな。
〈……こい〉
頭の中に低い唸り声が木霊する。神像が微かな光を発し始める。急に空気が重くなり、息苦しさを感じる。
わたしは小さく舌打ちする。このままここに居るのはまずい。理由はないがそう直感する。
クリスティは焦りを隠せない様子で、辺りを探し回っている。
〈……こい〉
「うるさいっ」
クリスティが苛立たしげに吐き捨てる。
生臭い匂いが辺りに漂い始め、頭に響く声がやや力を増した気がする。
「ただでされた命令に従う理由なしっ」
わたしも吐き捨てるように叫んで声を振り切ると、クリスティと共に辺りを探し回る。
人影も、彼女が見たと話していた怪物の姿すらない。クリスティは深く嘆息する。
「……ほんまは薄々わかっとったんよ……ウチのように、あの人もきっと……」
〈こい〉
〈こい〉
〈こい〉
「今、こっちが会話中でしょう! 人が話している時に邪魔したらダメだってこれまでの経験から学ばなかったの!!」
あまりのしつこさに、わたしはいつになく苛立ってしまった。
その途端、息が苦しくなる。
荒い息づかいでわたしとクリスティは祭壇に倒れ込む。
ひんやりとした石が身体に心地よい。
このまま寝てもいいかと思ったわたしの耳に、獣の唸り声が聞こえてくる。
起き上がったわたしの目に、遺跡の暗がりからのそりと這い出てきた奇怪な魔獣の姿が映る。獅子と山羊と毒蛇の三つの頭を持つ邪悪な巨体が身じろぎする。
「キマイラや……」
クリスティは魔獣の左前足に嵌められている意匠を凝らした銀の腕輪をじっと見つめながら囁いた。
「……せめて言葉が通じれば、なんて思ってるウチは……甘すぎるんやろな」
「とんでもない。さっきのわたしとジャバウォックを忘れたの? 言葉が通じなくても、あいつはわたしに話しかけて来たでしょう?」
わたしは、クリスティへ話を続ける。
「大事なのは、言葉が通じるかじゃなくて、『心を通わせたい』という意思を相手に伝わるように振る舞うことよ。すると、あら不思議。全然言葉が通じた気配がないのに、金貨をゲットできてお得ってわけ」
「一瞬ええ話をしとると思いかけたウチがアホやったわ。もうええよ、クワニャウマ。気を取り直して、戦闘に入るで」
「ワンッ」
クリスティの言葉を合図に、わたしたちはキマイラとの戦闘に入った。
「食らえ、氷槍!」
この前、街道の雑貨屋で立ち読みした『冒険家の友』夏の大増刊号に掲載されていた、「魔法が通じる相手への最初の攻撃は、氷槍がお勧め」という記事の内容を実践に移す。
キマイラは、声にならない悲鳴を上げる。
けっこうがっつりダメージを与えられたようだ。
すごいぞ、夏の大増刊号の記事!
すると、クリスティが集中を欠いた様子でチラチラと魔獣の後方に視線をやっているのに気づいた。
「危ない!」
わたしが叫ぶと、猟犬のうち、一頭がクリスティへ体当たりをする。
おかげで獅子頭の噛みつきが間一髪のところで彼女の肩をかすめる。
「よくやったわ、雷電!」
〈さすが雷電!〉
どうやら、今度はちゃんと間違えずに猟犬の名前を言えたらしい。イェシカがランタンで辺りを照らしながら、石板にそう書いていた。
「大丈夫、クリスティ?」
わたしは、彼女の許へ駆け寄る。
「……試させてくれへんか」
「いったい、何を?」
「あの神像を破壊するんや」
クリスティは毅然とした表情で、そう提案した。
「きっとあの神像に操られとるだけなんや」
「へ?」
密かに金目の物その1と候補に入れていた神像を破壊すると宣言され、わたしは咄嗟に判断が付かず口ごもる。
「せやけどもし……もしそれでもあかんかったら、その時は……」
クリスティの目に強い覚悟の意思が宿っている。
「神像を破壊したら、何かの封印が解けてもっと強い魔物が出てきて殺戮を繰り広げるかもしれないし、中から財宝がザックザックと出てくるだけかもしれない。それでも、試す?」
「えらく両極端な想定をするんやなぁ、クワニャウマ。でも、ウチは神像を壊しさえすれば、あのキマイラを止められると思うんや」
両手の小剣を握るクリスティの両手に力がこもる。
わたしも、覚悟が決まった。
「わかった。あなたは雇った従者ではなくて、無料の仲間。失敗しても、こっちの懐はちっとも痛まないし、成功したら丸儲け。どっちに転んでもわたしに損はないから、好きにしていいわ」
「クワニャウマ……あんたなぁ、真顔でゲスなことを言いおってからに……」
クリスティは、泣き笑いのような顔になる。
それから、決死の形相へと変わる。
「……でも、おおきに。ウチの提案に賛成してくれて」
クリスティは、神像の破壊に取りかかる。
キマイラを傷つけたくない気持ちはわかるけど、キマイラにはその気持ちは伝わっていない。容赦なくわたしたちへ攻撃を続ける。
「クリスティが神像の破壊に成功するまで、少しはおとなしくしてちょうだいよ!」
わたしは、抗議しながら古代の神槍を振るう。
「キャウン!」
獅子頭に噛みつかれ、猟犬の一頭がよろめく。
……もう戦えそうにはない。
「さっそく使うか。身代わりの依代!」
どの猟犬かわからないので、わたしは道具の名前の方を叫ぶ。
「ガルル!」
わたしが回復で手が離せない間、猟犬の一頭が獅子頭に噛みつく。
「バウッ!」
もう一頭は、山羊頭に噛みつく。
「みんないいぞ、その調子!よーし、わたしもはりきって、古代の神槍を投げる!」
槍は見事に空を切った。
「ワンッ」
槍を投げたままの姿勢で停止するわたしのわきを、回復したての猟犬が蛇頭に噛みつく。
「ちょい、待ちぃ! ウチが神像を破壊している最中に、何をしとるんや! 血みどろやん!」
クリスティが小剣を投げ捨て、悲痛な叫びを上げる。
「お願いや、殺さんといて」
クリスティは、魔獣を庇うように立ち塞がる。
「ごめん。手加減できるような相手じゃないから、つい死力を尽くしちゃって……」
その瞬間、魔獣の山羊角が背後から彼女の身体を刺し貫く。
ごぼりと血の塊を吐き出し、クリスティは力を失う。
身代わりの依代を使っても間に合わない、決定的にしてすみやかな死が彼女に訪れたことは、光を失った瞳が教えてくれた。
「わたしの前で『不慮の死』という大損を見せつけやがって!」
わたしは古代の神槍を拾い上げると、怒りにまかせて魔獣に飛びかかり、自分でも信じられない腕力を発揮してその首を跳ね飛ばした。
イェシカがすすり泣く声で、わたしは我に返った。
気がつくと、わたしの前には一つに繋がった男女の遺体が転がっていた。
魔獣を胸に抱いて事切れているクリスティの顔は不思議と安らかだ。
懐は痛まなくても、心が痛む光景だった。
でも、そんな顔で死なれたら、心の重荷が少し軽くなっちゃうじゃないのさ。
わたしは無言で辺りに散らばっていたものをかき集める。
それは、若い女性向けの金貨10枚相当のアクセサリーと、45枚の金貨だ。
アクセサリーの方は、キマイラだった彼が、クリスティへプレゼントしようとしていたものだったのだろうか?
今となっては、もうわからない。
この二人の命の値段にしては安すぎるけど、イェシカの悲しみを癒す資金にはちょうどいい。丁寧に財布にしまう。
……だから、山分けの方が好きなんだ。こんな総取り、味気ないから、ちっとも得した気分になれない。
わたしは、イェシカの頬をなめて慰める猟犬たちの中に混ざって、イェシカを抱き寄せた。
それから、ふとクリスティが必死になって破壊しようとしていた神像が目に留まる。
彼女の愛用の小剣で斬りつけた跡がいくつも残っていた——小さな体で、何度も神像に挑み続ける彼女の姿が容易に想像できた。
もしも、わたしがクリスティと一緒に神像を壊しにかかっていれば、キマイラの彼はともかく、クリスティの命は助かったのでは?
わたしがもっと早くキマイラを倒していれば、クリスティに恨まれるかもしれないけど、彼女は生きていたのでは?
いくら後悔しても、クリスティは蘇って来ない。
それより、彼女が彼と安らかに眠れるようにしよう。
わたしは、イェシカたちを安全な場所に避難させてから、残りの魔力を使って炎球で遺跡の出入り口を破壊して埋め尽くす。
遺跡の廃墟は、彼女たちの墓所になった。
クリスティ、これがわたしからの最初で最後のプレゼント。安らかに眠ってね。
「帰ろう、みんな。もうここには何の用もないから」
わたしたちは、ヴィドランダ遺跡群に背を向けると、重い足と心を引きずって夜明けの〈太古の森〉を歩き出した。
14:エンディング
「……一度闇を受け入れ、魂を委ねたものに真の救済は訪れぬということか」
わたしの話を聞き終わると、闇の賢人は不思議と穏やかな様子でそう答えた。
魔獣の姿のままで死んだ、クリスティの大事な人。
似我蜂の姿のままで死んだ、わたしの命の恩人。
彼らが私の中で重なり合ってしまったせいか、別にファラサールの話ではないのに、彼のことが脳裏をよぎる。
命の恩人を殺す決断をしたわたしだけど、頭の片隅では彼を救済する術があったのではないかと考えない日はない。
でも、メメコレオウス様の話で、死をもってしても真の救済はなく、そして一瞬でもためらえば、ギルサリオンもクリスティと同じ結末を迎えていたかもしれないことを悟った。
死者1名ですんだから、あの悪夢のような日の決断は、間違っていなかったと思えるようにはなれた。
けれども、クリスティの死を思うと、また気持ちが塞いでくる。
あんなにおもろくて有能な冒険家を喪うなんて、世界にとって大損失だ……。
そんなわたしを見かねたように、メメコレオウス様が鼻を鳴らした。
「ふん……旧き神どもの遺跡など、ヴィンドランダにはまだいくらでも眠っておる。いずれまた諸君らに調査を命ずることになるやもしれん……その時に備えておくがよい。これは、今回の報酬だ。受け取れ」
メメコレオウス様は、そう言って金貨10枚相当のアクセサリーと金貨12枚相当のアクセサリーをくれた。
「死者2名という損失を出したのに報酬を払ってくれるし、またわたしを雇ってくれる気があるの!? 神なの!?」
意外にもメメコレオウス様が寛大な対応だったことに、わたしは驚いてしまった。
「儂が神、か。フッ、おぬしの神に対する姿勢は、実に面白い」
「そう? 会ったこともない神さまにだって感謝できるんだから、現在進行形で会っている相手を神さまに見立てて感謝しても損はないでしょう?」
「本当に面白いな。おぬしを雇った儂の目に狂いはなかった」
そう言い残すと、彼は遠くを見るような表情で微かな笑みを浮かべ、洞穴に向き直る。
そして、静かに洞穴の奥へと帰っていった。
わたしとイェシカは、メメコレオウス様と別れた後、フーウェイへと向かった。
「疲れたよね、イェシカ? 宿を借りたら、当分ゆっくりすごそう」
わたしが言うと、イェシカは心配そうに石板にこう書いて見せた。
〈当分ゆっくりすごす? ぎんゆう詩人を雇うお金をためなくていいの?〉
「大丈夫。ゆっくりすごせば、わたしもイェシカも元気になるでしょう? そうすれば、いくらでも荒稼ぎの冒険に出かけられるわ。だから、今は休もう。そうだ、ただ休むだけじゃなくて、猟犬たちとも遊ぼう」
わたしの言葉に、イェシカは笑顔になる。猟犬たちも、うれしそうに尻尾を振る。
命が紙のように薄っぺらく軽いこの世界だけど、生きていてよかったと思えることは多々ある。
今がまさにそう。
「さあ、宿屋を探そうか。安くてご飯がおいしくて、ヴィドとゲルダが遊びに来やすい所がいいよね」
〈クワニャウマ、よくばりさん〉
イェシカの石板の文字が、楽しげな筆跡に変わる。
今日も一日、生きていく意欲がわいてきた。
(完)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2025年までに6巻が刊行中。2026年春には、7巻が刊行予定。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)が刊行。同年春には『歌人探偵定家 弐』(仮)が刊行予定。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信
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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.41
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
〜前回までのあらすじ、あるいはイェシカの日記より抜粋〜
やめて! 世界を破滅に導く力を持っているジャバウォックに耳元で混乱した言葉を吹き込れたら、クワニャウマが発狂して精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでクワニャウマ!
あんたが今ここで倒れたら、ファラサールを讃える詩を作る約束はどうなっちゃうの?
【対魔法ロール】がまだ残ってる。ここを耐えれば、ジャバウォックに勝てるんだから!
次回「クワニャウマ死す」デュエルスタンバイ!
『汝、獣となれ人となれ』リプレイは、今回の第5回を持ちまして最終回でございます。前回までのあらすじが、もう説明不要の次回予告ネタになっていますのも、最終回テンションゆえのことです。
『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』と続く今作もまた、「異なる信仰をしたことで変容した他者と、どこまで共存できるか」「愛のような根源的な人間の感情と、後付けで得る信仰の二つのうち、どちらが強いのか」という骨太かつ重厚なテーマでした。また、「カルト宗教集団に洗脳されてしまった恋人を助けに行く人に協力する話」の寓話とも読み取れました。通常のリアリズム作品で書くとかなりどぎつくなりますが、ファンタジーですと俄然読みやすくなるので、つくづくファンタジーの強みだと思います。
なお、三作とも異なる思想を抱くようになった他者を「外見が変わった」「怪物と同化した」「怪物になった」と象徴的に表現し、それに対してプレイヤーらが「受容」と「拒絶」のどちらを選ぶのか、分岐が発生。これにより、プレイヤーの中で普段眠っている人生観を盛大に揺さぶって下さいます。だから、この三作のシナリオはとてつもなく冒険し甲斐があるし、心にも残るのだと得心がいきました^^b
ところで、今回のプレイで以前FT新聞様に掲載されていた「ローグライクハーフのルール」で紹介されていた、「第一ラウンドで氷槍を使うと有利」というのを実践してみたく、クワニャウマの経験点を魔術点にまわして、二つ目の呪文として氷槍を選択。最終決戦まで魔術点を温存しました。これまでは【魔術ロール】の威力が上回っていて狭い場所だった場合に複数の敵に攻撃できる炎球を重宝していたのですが、同じ条件で2点のダメージを与えられる氷槍の便利さに目覚めました^^
私事になりますが、先日刊行された『シンポ教授のマジカルミステリー劇場』(光文社)を拝読しました。かの伝説のバラエティ番組『マジカル頭脳パワー』の人気コーナー「マジカルミステリー劇場」の推理パズルの本です。挑戦のルールが冒頭に書かれ、解答編を読み終えるまで正解にたどり着ければ800点、途中のヒントのページを読むと減点、不正解なら0点という形式で、かつての番組の解答者の気分を味わえます。各問題には、推理指数というレベル設定がされていました。分岐小説とは異なりますが、遊戯性に特化しているので、こちらもゲームブックに分類されるのだろうかと、ゲームブックにはまるま前には思いもしなかった感想を抱けるようになりました^^
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その5
齊藤(羽生)飛鳥
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13:最終イベント
ジャバウォックと遭遇した遺跡の通路をさらに探索を続けていくと、ねっとりと澱んだ黴臭い空気が漂う場所に出た。
不気味な獣の神像が祀られている祭壇がぽつりと目に留まる。辺り一帯は沈黙が支配しており、生き物の気配一つ感じない。
「ここや」
クリスティが小声で呟く。わたしたちはもちろん、猟犬たちも頷き返す。
わたしは、今日2回も罠にかかった経験から、辺りを窺いつつ慎重に一歩踏み出す。そのまま数歩。
祭壇の周りには引き裂かれたような衣服や荷物が散らばっている。
……イェシカの教育によくないものが近くに転がってないといいな。
〈……こい〉
頭の中に低い唸り声が木霊する。神像が微かな光を発し始める。急に空気が重くなり、息苦しさを感じる。
わたしは小さく舌打ちする。このままここに居るのはまずい。理由はないがそう直感する。
クリスティは焦りを隠せない様子で、辺りを探し回っている。
〈……こい〉
「うるさいっ」
クリスティが苛立たしげに吐き捨てる。
生臭い匂いが辺りに漂い始め、頭に響く声がやや力を増した気がする。
「ただでされた命令に従う理由なしっ」
わたしも吐き捨てるように叫んで声を振り切ると、クリスティと共に辺りを探し回る。
人影も、彼女が見たと話していた怪物の姿すらない。クリスティは深く嘆息する。
「……ほんまは薄々わかっとったんよ……ウチのように、あの人もきっと……」
〈こい〉
〈こい〉
〈こい〉
「今、こっちが会話中でしょう! 人が話している時に邪魔したらダメだってこれまでの経験から学ばなかったの!!」
あまりのしつこさに、わたしはいつになく苛立ってしまった。
その途端、息が苦しくなる。
荒い息づかいでわたしとクリスティは祭壇に倒れ込む。
ひんやりとした石が身体に心地よい。
このまま寝てもいいかと思ったわたしの耳に、獣の唸り声が聞こえてくる。
起き上がったわたしの目に、遺跡の暗がりからのそりと這い出てきた奇怪な魔獣の姿が映る。獅子と山羊と毒蛇の三つの頭を持つ邪悪な巨体が身じろぎする。
「キマイラや……」
クリスティは魔獣の左前足に嵌められている意匠を凝らした銀の腕輪をじっと見つめながら囁いた。
「……せめて言葉が通じれば、なんて思ってるウチは……甘すぎるんやろな」
「とんでもない。さっきのわたしとジャバウォックを忘れたの? 言葉が通じなくても、あいつはわたしに話しかけて来たでしょう?」
わたしは、クリスティへ話を続ける。
「大事なのは、言葉が通じるかじゃなくて、『心を通わせたい』という意思を相手に伝わるように振る舞うことよ。すると、あら不思議。全然言葉が通じた気配がないのに、金貨をゲットできてお得ってわけ」
「一瞬ええ話をしとると思いかけたウチがアホやったわ。もうええよ、クワニャウマ。気を取り直して、戦闘に入るで」
「ワンッ」
クリスティの言葉を合図に、わたしたちはキマイラとの戦闘に入った。
「食らえ、氷槍!」
この前、街道の雑貨屋で立ち読みした『冒険家の友』夏の大増刊号に掲載されていた、「魔法が通じる相手への最初の攻撃は、氷槍がお勧め」という記事の内容を実践に移す。
キマイラは、声にならない悲鳴を上げる。
けっこうがっつりダメージを与えられたようだ。
すごいぞ、夏の大増刊号の記事!
すると、クリスティが集中を欠いた様子でチラチラと魔獣の後方に視線をやっているのに気づいた。
「危ない!」
わたしが叫ぶと、猟犬のうち、一頭がクリスティへ体当たりをする。
おかげで獅子頭の噛みつきが間一髪のところで彼女の肩をかすめる。
「よくやったわ、雷電!」
〈さすが雷電!〉
どうやら、今度はちゃんと間違えずに猟犬の名前を言えたらしい。イェシカがランタンで辺りを照らしながら、石板にそう書いていた。
「大丈夫、クリスティ?」
わたしは、彼女の許へ駆け寄る。
「……試させてくれへんか」
「いったい、何を?」
「あの神像を破壊するんや」
クリスティは毅然とした表情で、そう提案した。
「きっとあの神像に操られとるだけなんや」
「へ?」
密かに金目の物その1と候補に入れていた神像を破壊すると宣言され、わたしは咄嗟に判断が付かず口ごもる。
「せやけどもし……もしそれでもあかんかったら、その時は……」
クリスティの目に強い覚悟の意思が宿っている。
「神像を破壊したら、何かの封印が解けてもっと強い魔物が出てきて殺戮を繰り広げるかもしれないし、中から財宝がザックザックと出てくるだけかもしれない。それでも、試す?」
「えらく両極端な想定をするんやなぁ、クワニャウマ。でも、ウチは神像を壊しさえすれば、あのキマイラを止められると思うんや」
両手の小剣を握るクリスティの両手に力がこもる。
わたしも、覚悟が決まった。
「わかった。あなたは雇った従者ではなくて、無料の仲間。失敗しても、こっちの懐はちっとも痛まないし、成功したら丸儲け。どっちに転んでもわたしに損はないから、好きにしていいわ」
「クワニャウマ……あんたなぁ、真顔でゲスなことを言いおってからに……」
クリスティは、泣き笑いのような顔になる。
それから、決死の形相へと変わる。
「……でも、おおきに。ウチの提案に賛成してくれて」
クリスティは、神像の破壊に取りかかる。
キマイラを傷つけたくない気持ちはわかるけど、キマイラにはその気持ちは伝わっていない。容赦なくわたしたちへ攻撃を続ける。
「クリスティが神像の破壊に成功するまで、少しはおとなしくしてちょうだいよ!」
わたしは、抗議しながら古代の神槍を振るう。
「キャウン!」
獅子頭に噛みつかれ、猟犬の一頭がよろめく。
……もう戦えそうにはない。
「さっそく使うか。身代わりの依代!」
どの猟犬かわからないので、わたしは道具の名前の方を叫ぶ。
「ガルル!」
わたしが回復で手が離せない間、猟犬の一頭が獅子頭に噛みつく。
「バウッ!」
もう一頭は、山羊頭に噛みつく。
「みんないいぞ、その調子!よーし、わたしもはりきって、古代の神槍を投げる!」
槍は見事に空を切った。
「ワンッ」
槍を投げたままの姿勢で停止するわたしのわきを、回復したての猟犬が蛇頭に噛みつく。
「ちょい、待ちぃ! ウチが神像を破壊している最中に、何をしとるんや! 血みどろやん!」
クリスティが小剣を投げ捨て、悲痛な叫びを上げる。
「お願いや、殺さんといて」
クリスティは、魔獣を庇うように立ち塞がる。
「ごめん。手加減できるような相手じゃないから、つい死力を尽くしちゃって……」
その瞬間、魔獣の山羊角が背後から彼女の身体を刺し貫く。
ごぼりと血の塊を吐き出し、クリスティは力を失う。
身代わりの依代を使っても間に合わない、決定的にしてすみやかな死が彼女に訪れたことは、光を失った瞳が教えてくれた。
「わたしの前で『不慮の死』という大損を見せつけやがって!」
わたしは古代の神槍を拾い上げると、怒りにまかせて魔獣に飛びかかり、自分でも信じられない腕力を発揮してその首を跳ね飛ばした。
イェシカがすすり泣く声で、わたしは我に返った。
気がつくと、わたしの前には一つに繋がった男女の遺体が転がっていた。
魔獣を胸に抱いて事切れているクリスティの顔は不思議と安らかだ。
懐は痛まなくても、心が痛む光景だった。
でも、そんな顔で死なれたら、心の重荷が少し軽くなっちゃうじゃないのさ。
わたしは無言で辺りに散らばっていたものをかき集める。
それは、若い女性向けの金貨10枚相当のアクセサリーと、45枚の金貨だ。
アクセサリーの方は、キマイラだった彼が、クリスティへプレゼントしようとしていたものだったのだろうか?
今となっては、もうわからない。
この二人の命の値段にしては安すぎるけど、イェシカの悲しみを癒す資金にはちょうどいい。丁寧に財布にしまう。
……だから、山分けの方が好きなんだ。こんな総取り、味気ないから、ちっとも得した気分になれない。
わたしは、イェシカの頬をなめて慰める猟犬たちの中に混ざって、イェシカを抱き寄せた。
それから、ふとクリスティが必死になって破壊しようとしていた神像が目に留まる。
彼女の愛用の小剣で斬りつけた跡がいくつも残っていた——小さな体で、何度も神像に挑み続ける彼女の姿が容易に想像できた。
もしも、わたしがクリスティと一緒に神像を壊しにかかっていれば、キマイラの彼はともかく、クリスティの命は助かったのでは?
わたしがもっと早くキマイラを倒していれば、クリスティに恨まれるかもしれないけど、彼女は生きていたのでは?
いくら後悔しても、クリスティは蘇って来ない。
それより、彼女が彼と安らかに眠れるようにしよう。
わたしは、イェシカたちを安全な場所に避難させてから、残りの魔力を使って炎球で遺跡の出入り口を破壊して埋め尽くす。
遺跡の廃墟は、彼女たちの墓所になった。
クリスティ、これがわたしからの最初で最後のプレゼント。安らかに眠ってね。
「帰ろう、みんな。もうここには何の用もないから」
わたしたちは、ヴィドランダ遺跡群に背を向けると、重い足と心を引きずって夜明けの〈太古の森〉を歩き出した。
14:エンディング
「……一度闇を受け入れ、魂を委ねたものに真の救済は訪れぬということか」
わたしの話を聞き終わると、闇の賢人は不思議と穏やかな様子でそう答えた。
魔獣の姿のままで死んだ、クリスティの大事な人。
似我蜂の姿のままで死んだ、わたしの命の恩人。
彼らが私の中で重なり合ってしまったせいか、別にファラサールの話ではないのに、彼のことが脳裏をよぎる。
命の恩人を殺す決断をしたわたしだけど、頭の片隅では彼を救済する術があったのではないかと考えない日はない。
でも、メメコレオウス様の話で、死をもってしても真の救済はなく、そして一瞬でもためらえば、ギルサリオンもクリスティと同じ結末を迎えていたかもしれないことを悟った。
死者1名ですんだから、あの悪夢のような日の決断は、間違っていなかったと思えるようにはなれた。
けれども、クリスティの死を思うと、また気持ちが塞いでくる。
あんなにおもろくて有能な冒険家を喪うなんて、世界にとって大損失だ……。
そんなわたしを見かねたように、メメコレオウス様が鼻を鳴らした。
「ふん……旧き神どもの遺跡など、ヴィンドランダにはまだいくらでも眠っておる。いずれまた諸君らに調査を命ずることになるやもしれん……その時に備えておくがよい。これは、今回の報酬だ。受け取れ」
メメコレオウス様は、そう言って金貨10枚相当のアクセサリーと金貨12枚相当のアクセサリーをくれた。
「死者2名という損失を出したのに報酬を払ってくれるし、またわたしを雇ってくれる気があるの!? 神なの!?」
意外にもメメコレオウス様が寛大な対応だったことに、わたしは驚いてしまった。
「儂が神、か。フッ、おぬしの神に対する姿勢は、実に面白い」
「そう? 会ったこともない神さまにだって感謝できるんだから、現在進行形で会っている相手を神さまに見立てて感謝しても損はないでしょう?」
「本当に面白いな。おぬしを雇った儂の目に狂いはなかった」
そう言い残すと、彼は遠くを見るような表情で微かな笑みを浮かべ、洞穴に向き直る。
そして、静かに洞穴の奥へと帰っていった。
わたしとイェシカは、メメコレオウス様と別れた後、フーウェイへと向かった。
「疲れたよね、イェシカ? 宿を借りたら、当分ゆっくりすごそう」
わたしが言うと、イェシカは心配そうに石板にこう書いて見せた。
〈当分ゆっくりすごす? ぎんゆう詩人を雇うお金をためなくていいの?〉
「大丈夫。ゆっくりすごせば、わたしもイェシカも元気になるでしょう? そうすれば、いくらでも荒稼ぎの冒険に出かけられるわ。だから、今は休もう。そうだ、ただ休むだけじゃなくて、猟犬たちとも遊ぼう」
わたしの言葉に、イェシカは笑顔になる。猟犬たちも、うれしそうに尻尾を振る。
命が紙のように薄っぺらく軽いこの世界だけど、生きていてよかったと思えることは多々ある。
今がまさにそう。
「さあ、宿屋を探そうか。安くてご飯がおいしくて、ヴィドとゲルダが遊びに来やすい所がいいよね」
〈クワニャウマ、よくばりさん〉
イェシカの石板の文字が、楽しげな筆跡に変わる。
今日も一日、生きていく意欲がわいてきた。
(完)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2025年までに6巻が刊行中。2026年春には、7巻が刊行予定。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)が刊行。同年春には『歌人探偵定家 弐』(仮)が刊行予定。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信
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2026年1月28日水曜日
第3回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4753
第3回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」への挑戦を始めました。
妖狐と魔猫、二匹のお供を連れたタイガの冒険です。
目の前でコーネリアス商会の令嬢コンスタンサがオウカンワシにさらわれるのを目撃したタイガたち。
オウカンワシの巣がある巨大樹の中腹を目指します。
猿たちの闘技場でボスの鈍器猿と戦ったり、クライミングに苦戦したりと冒険を続け、今回はいよいよオウカンワシの巣へと到達します。
【フォルネ(妖狐) レベル10 技量点:2 生命点:3 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル10 技量点:1 生命点:8/9 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4
金貨11
●アタック01-6 フォルネとオウカンワシ戦
【最終イベント(1回目の冒険)】
「タイガさま、オウカンワシの巣は近そうです」
「みえた〜」
フォルネとニャルラは動物的な感覚で、僕より早くに察知していた。
やがて僕の視界にも、張り出した巨大な枝の先端にある、さらに巨大なオウカンワシの巣が姿を現した。
多くの鳥の巣と同じく、枝をたくさん重ね合わせて作られている。
お皿状になっているので、僕たちの位置からでは巣の中の様子は見えない。
さらわれたお姉さんは、あそこにいるんだろうか。
オウカンワシもいた。一羽だ。頭にきらびやかな装飾品を乱雑にのっけていて、まるで王冠のようだ。
僕が視線を向けると、こちらが巣に向かっている動きをいち早く察知して翼を広げた。
巣の周囲を常に警戒しているみたい。
人間よりも感覚に優れているから、気づかれないように接近するのは最初から無理だった。
ただ、さらったお姉さんを人質にするようなことはないから、やりやすいとも言える。
向こうは空を飛べる。こっちは落ちたらおしまいだ。
「とにかく、あの巣まで行こう。枝のとこだと足場が狭いから危険だ」
「簡単に近づかせてはくれないでしょうね」
気づかれているのだから、遠慮はいらない。僕たちはダッシュで巣に向かう。
オウカンワシは翼を大きく広げて飛び立つと、空から急降下をしかけてきた。僕は太い枝の地面に伏せってかわす。
その間に、フォルネとニャルラが巣の中に飛び込む。
「! タイガさま、さらわれた人はいません」
「ここ、ちくちくして、や〜」
このオウカンワシは違う個体だったのか。それとも巣はいくつもあるのか。
とにかく、ここではなかったみたい。それなら、ここには用はない。
けれど、巣の中に入り込んだ侵入者を、オウカンワシは見逃すつもりはないようだった。
【オウカンワシ レベル4 生命点6 攻撃数2】
オウカンワシは標的を、巣に入り込んだ二匹に定めた。
こちらは空中の敵に対してできることはない。
フォルネの小柄は飛び道具だけど、人間形態でないと使えない。
向こうが攻撃しようと接近してきたときに応戦し、敵より早く攻撃する。これが基本戦術だ。
僕のところから見ていると、巣に近づこうとするオウカンワシに吼えかかり、互いに攻めあぐねているように見える。
空中の敵のため、こちらの攻撃もなかなか当たらない。
こう着状態に痺れを切らしたニャルラが、大きく跳躍した。
危ない。あんなに高く跳んでは……!
そう思ったけれど、それはオウカンワシにとっても不意を突かれた形になったみたい。
縦回転を加えて威力を増した鋭利な爪撃が、オウカンワシの頭部に炸裂した。
いくつかの装飾品がきらきらと光を散らしてはがれ落ちる。
ぐらりと傾くオウカンワシに、さらなる追撃を仕かけるニャルラ。
けれど自分の態勢を保つのも限界で、そこまでだった。ワシの身体を蹴って跳躍し、巣の中に着地した。
フォルネは、ニャルラの一撃で高度を落としたオウカンワシの隙を見逃さなかった。
真下から縦に跳躍し、頭突きをかます。フォルネ得意のダッシュ頭突きを垂直に昇華させた一撃だ。
オウカンワシはやみくもに反撃してくるが、そんな攻撃に簡単に当たるような二匹ではない。
巨大な鳥相手に、二匹ともよく戦っている。
けれど、オウカンワシも馬鹿ではない。
ニャルラの大きな跳躍を警戒してか、より距離を取るようになった。
ニャルラがさっきと同じように大きく跳ぶが、当たらない。
フォルネもニャルラの動きを真似て跳躍した。空中にいるニャルラの背を蹴り、さらに高く跳ぶ。
「アタイをふみ台にするな〜!」
ニャルラはそれでも、しなやかな猫の動きで上手に着地する。
フォルネの方は、オウカンワシの高度に到達した。けれど、すでに跳躍時の勢いはない。
オウカンワシにしてみれば、的が自分から来てくれたみたいなものだ。
バサバサと大きく羽ばたく。バランスを崩し落下していくフォルネ。
まずい。あのまま落ちたら……。
フォルネの落下コースは、巣からわずかに外れているように見えた。
フォルネは必死に前足を伸ばす。けれど、わずかに届かない。
その頃までには僕も巣に到達していた。
巣から思いきり身を乗り出し、落ちゆくフォルネの前足を、すんでのところでつかまえた。
フォルネのからだは小さいが、落下の勢いもあり、僕の腕にずしんと重く荷重がかかる。僕ごと落ちてしまいそうなところを、ギリギリで支えた。
思わず下を見てしまう。果てしない高さに頭がクラクラし、足元に冷たい震えが走った。
「タイガさま……!」
「くっ。ま、間に合って……よかった。さあ、僕の身体をよじ登って」
僕たちの動きが止まっているのを好機と捉えたのだろう。
オウカンワシが急降下をしかけてくる。
「させないよっ」
そこにニャルラが割って入る。
オウカンワシは煩わしそうに脚で振り払い、ニャルラが横に吹っ飛ばされる。それでもワシの勢いは止まらない。
「タイガさまには、手出しさせません!」
フォルネは僕の身体をすばやく駆け上がると一跳び、オウカンワシの顔面に飛びついた。
視界を封じられ、暴れ回る。その攻撃は僕のところには届かなかった。
頃合いを見て、フォルネは巣に飛び降りた。
オウカンワシは一旦上空に身を引くと、巣のまわりをぐるぐる旋回している。
これまでの攻防から、攻めあぐねているのだろう。
「とにかく、巣から離れよう。あいつと戦う理由はないから」
巣から離れたら攻撃が止むかはわからない。
けれど、ここにいたままではオウカンワシは攻撃の手を緩めないだろう。
僕たちは撤退にかかった。吹っ飛ばされたニャルラもふらふらと立ち上がり、僕たちと同じ行動を取る。大きなダメージは受けていないみたい。僕はほっとした。
オウカンワシは、僕たちの逃走経路を塞ぐように、枝の道側の空中に陣取った。
ニャルラが先行し、オウカンワシの気を引こうとする。オウカンワシは空中にその身を置いたまま、ニャルラと対峙する。
このまま逃がさないつもりだ。
そのとき、フォルネが言った。
「タイガさま、私をあいつに向かって投げてください」
「えっ。でも、そんなことしたら」
「大丈夫。私を信じて。さっきみたいな無様はしません。時間がない。早く!」
僕はフォルネの決意をくみ取り、空中のオウカンワシの方向に、フォルネを思い切り投げた。
投げる瞬間に僕の手を蹴り、軌道を修正しつつさらに勢いを増したフォルネが空中を跳ぶ。
オウカンワシはニャルラに気を取られており、フォルネの突進に気づくのが遅れた。
そこに、フォルネが思い切り頭突きをかます。完全に不意を打たれ、オウカンワシの頭と頭がごっつんこ。
王冠の上に星が散る。一羽と一匹はぐらりと体制を崩し、落下してゆく。
僕はフォルネの落下地点に走り、キャッチしようとしたけれど、フォルネはそんな僕の身体を蹴って勢いを殺しつつ、しなやかに地面に着地した。
僕たちはそのまま幹のところまで走った。
一旦落下しかけたオウカンワシは、下の方で体勢を立て直して再び飛翔すると、巣のまわりをぐるぐると回っている。
僕たちがいる場所には気づいているだろうけれど、これ以上近づかなければ攻撃の意思はなさそうだ。
これでひとまず、安全な場所に身を置くことができたかな。
[プレイログ]
【オウカンワシ レベル4 生命点6 攻撃数2】空中のため攻撃に-1のペナルティ。
・第1ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目3 技量点1 ペナルティ1 →外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目1 ファンブル
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目4で回避
オウカンワシの攻撃2 フォルネへ サイコロの出目3 技量点2 回避
・第2ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル オウカンワシ生命点6→5
ニャルラの追加攻撃 サイコロの出目3 技量点1 ペナルティ1 →外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 オウカンワシ生命点5→4
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目5で回避
オウカンワシの攻撃2 フォルネへ サイコロの出目5で回避
・第3ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目2 外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目1 ファンブル(巣から落ちかかる演出のシーン)
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目2で命中 ニャルラの生命点8→7
オウカンワシの攻撃2 フォルネは サイコロの出目6 クリティカル回避
・第4ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目2 外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 オウカンワシ生命点4→3
→オウカンワシの生命点が半分になったので戦闘終了
●幕間 【フォルネ視点】フォルネの理由
私は、フォルネ。3本尻尾の妖狐。
わけあって、タイガさまにお仕えしている。
タイガさまは、ある目的をもって旅をしている。
けれどタイガさまは、道中でいろんなトラブルに巻き込まれては「ほっとけないから」という理由で手助けをしてきた。
今回もそうだ。タイガさまは、別に頼まれたわけでもないのに、商家の令嬢を助けに巨大樹までやってきた。
タイガさまの旅は、決してのんびりして良いものではない。
けれど、目的地がわかっているわけではない。どこにいるかわからない人を探す、あてのない旅だ。
そして私は、タイガさまの「ほっとけない」性格をよくわかっている。
かつて私もその「ほっとけない」に助けられたから。
だから私はタイガさまを、全力でサポートするんだ。
巨大樹の中腹にあるオウカンワシの巣までたどり着いたけれど、そこにはさらわれた商家の令嬢はいなかった。
もしかしたら、本命の巣はもっと上の方にあるのかもしれない。
「いったん、降りよう」
タイガさまは、そう決断した。
理由は、準備不足。これ以上高いところを目指すには、対策が甘かった。
特にロープの持ち合わせがないのが困る。
今後、絶壁のような幹に当たった時に、私とニャルラは登れるかもしれない。けれど、タイガさまには危険が大きすぎる。
だから、この選択は正しいと思う。令嬢を救うのは、時間との勝負だ。だからこそ、備えは必要。
けど、何の収穫もなしに引き返すのは惜しいな。
私は付近の枝に囲まれた空間に、希少な薬草の群生地を発見した。
これを戦利品がわりとして、いったん地上に戻ろう。
私たちは、絶壁の道や猿の縄張りを慎重に避けつつ進んだ。
箱を上下に運ぶ昇降機という装置で地上に降り立ったときには、もう夕暮れどきだった。
地上では、たしかロイと名乗っていた年配の冒険者が、タイガさまの帰りを心配していた。
ここは冒険者たちが一時的に留まる地だ。出店などが集まって町のように見えるが、町ではない。
宿の機能のある建物もあるようだが、たいていの冒険者は、広場にテントを張って野営している。
タイガさまは、ロイのテントの隣に場所を得て、そこで一夜を明かすことにした。
その夜のことだ。
タイガさまが寝静まった後、ニャルラが私に話しかけてきた。
ニャルラは、今日の冒険の内容を興奮気味に話した。
ニャルラにとって、初めての経験が多く、ドキドキでキラキラだったという。
話がオウカンワシ戦にさしかかる。
「あぶなかったね〜。アタイ、フォルネが落っこちちゃうかと思った」
「タイガさまに、また助けられてしまった」
「また」という言葉に、ニャルラは反応した。
「そういえば、どうしてフォルネはたいがと一緒に旅してるの?」
「話してなかったっけ」
「きいてな〜い」
「……じゃ、話そうかな。別に隠しているわけでもないし」
私はニャルラに話すことにした。私がタイガさまと一緒にいる「理由」を。
「私がタイガさまに出会ったのは、森の中。私が魔獣に追われ傷つき、今にも食べられてしまうのではないかという、そんな危機的状況だった……」
よろよろと逃げる私の前に、その少年は現れた。
私はもう精も根も尽き果て、抵抗する力すらほとんど奪われていた。
私がもう逃げきれないのを把握しているのだろう。魔獣はゆっくりと、私を追ってくる。
この先は切り立った崖になっている。逃げ道は、もはやない。
やがてここに到達するだろう。そうしたら、私の命はおしまいだ。
でも、この少年はどうする。
追われる私に偶然出会ったばっかりに、私とともに魔獣の餌食になってしまうのか。
そんなこと、させない。
木陰からゆっくりと姿を現す魔獣に、私は動かぬ四肢でふんばり、対峙した。
「そのときタイガさまは、どうしたと思う?」
「ん〜。フォルネを助けたんだよね? でもどうやって? たいが、強くないよ?」
「タイガさまはね、私を抱きかかえると、一気に崖から飛び降りたんだ。何のためらいもなく、ね」
「えっ!? そんなことしたら、死んじゃう」
「ああ。そうだ。でもタイガさまは、迷いなくそれをやってのけた。崖の下は深い川になっていて、そこに飛び込んだ私たちは助かった」
おしゃべりなニャルラが沈黙している。驚かせてしまったようだ。
「タイガさまは、全身ボロボロになりながらも、私を助けてくれた。それで、理由を尋ねたら言うんだ。『ほっとけなかったから』って」
私は一息ついた。
「……タイガさまはね、危ういんだ」
私は続けた。
「タイガさまは、誰かを助けるために、簡単に自分の命さえも投げ出してしまいかねないところがある。私のときにそうだったみたいに」
タイガさまはまだ少年と言っていい年齢だ。けれど、タイガさまの「ほっとけない」には、何かあるんだと思う。
たとえば、何かを見過ごしたために、誰かが犠牲になってしまった、そんな経験が。
「タイガさまが命を落とすようなこと、私が絶対にさせない。私はタイガさまに命を救われた。私の命はタイガさまのもの。だから、今度は私が守る。この命に代えても」
そう。これが私がタイガさまと一緒に旅をする理由。
「ふ〜ん?」
ニャルラは、なんだかあいまいな反応をした。
別に、重い話に返す言葉が見つからないわけではなかったみたい。
「納得いってない?」
「うん。アタイはね、フォルネはたいがのことが大好きだから一緒にいるって思ってた〜」
「なっ! ばっ!」
私は不意を打たれ、あからさまにうろたえてしまった。
「にゃはは。フォルネ、かおまっか〜」
「う、うるさいな。だいたいニャルラはどうなんだよ」
「え? アタイはたいがのこと、だいすきよ?」
「そうじゃなくて、一緒に旅してる理由!」
「ん〜。たいがに助けてもらったから。おいしいもの食べれるから。あと、一緒にいると楽しいこといっぱいあるし」
「……もういいよ。聞いた私がバカだった」
私の中に「ニャルラはそれでいいんだよ」というタイガさまの言葉が聞こえた気がした。
まあ、いいか。
明日の朝も早い。もう、寝てしまおう。
●アタック02-1 フォルネとニャルラの成長
翌朝。
目が覚めると、フォルネとニャルラはまだ寝ていた。
珍しい。
いつもはだいたい、早起きのニャルラが退屈して、僕にじゃれついて起こしにかかるのに。
久しぶりの大冒険で疲れたんだろう。
僕は二匹を起こさないよう、朝食の支度をした。
それでもまだ起きてこないので、細かな用事は済ませておくことにした。
昨日の冒険で得た戦利品の換金。フォルネが見つけてくれた薬草の束は、合わせて金貨15枚になった。
ニャルラが鈍器猿のスタジアムで拾った金貨と合わせると、いきなり大金持ちになってしまった。
ええと……手持金を合わせると、全部で金貨31枚だ。
このお金で、ロープを買っておこう。
持てる量には限りがあるし、まだ持てるだけの余裕もほしい。
僕はロープを2束購入した。
ほかにもこまごまとした必要物品を買いそろえ、野営地に戻る。
「タイガさま、おかえりなさい」
「ごちそうさま〜」
フォルネとニャルラは、朝食を食べ終えたところだった。
「おはよ。だいぶ疲れてたみたいね」
「ううん? いっぱいおしゃべりしてたの。ね? フォルネ」
フォルネはなぜか口をとがらせて、そっぽを向いている。
「それより聞いてたいが〜。アタイ、たっぷり休んでちょっと強くなった気がするの」
「私も、少しだけタフネスさが身についたように感じます」
二匹ともまだまだ急成長する時期なのだろう。冒険を重ねるたびに、ぐんぐん強くなっていく。
僕たちは、今日の冒険の準備をまとめた。
【フォルネ(妖狐) レベル10→11 技量点:2 生命点:3→4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル10→11 技量点:1 生命点:9→10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4
金貨11→31→25
1ロープ
2ロープ
僕たちの隣では、ロイおじさんがテントを畳んでいる。
「今日は俺たちも巨大樹に登るんだ。途中まで一緒に行くか?」
「はい。お願いします」
ロイおじさんたちと連れ立って昇降機に向かう。
「……で、タイガは今日はさらに上を目指すのか」
「はい。そのつもりです」
「ま、ほどほどにな。帰れる余力を残してるうちに引き返すのが、生き残る秘訣だ」
昇降機の順番を待つ。朝は少しだけ並ぶ。
「じゃあな。上で会ったらよろしくな」
ロイおじさんたちが先に昇降機に乗り込むと、ゆっくりと上昇していった。
次は僕たちの番だ。ニャルラが元気に飛び乗り、その次に、フォルネを肩に乗せた僕が乗り込んだ。
昇降機の上昇にあわせて、地上の景色がどんどん遠くなっていく。ニャルラが外の景色の動きに歓声を上げる。
やがて、最初の枝に到着した。ロイおじさんたちは、僕たちの到着を待たずに自分の冒険に出立したようだ。
僕たちは、昨日よりさらに上を目指す。猿たちの縄張りは避けて行く。
冒険は順調だ。やがて昨日と同程度の高度まで到達した。
【34 観測所】
幹の周囲に作られた階段を上りきった見晴らしの良い空間に、小屋が建てられていた。
こんな高所に建物を建てるなんて、驚きを通り越してあきれてしまう。
それにしても、どんな目的で建てたんだろう。宿泊のための休憩所だろうか。
僕たちは、その建物に入ってみた。
そこは休憩所というより、展望施設といった風だった。
建物上部に繋がる階段を上がると、出窓に望遠鏡が設置されていた。
上下左右に回転できるようになっている。
「たいが、これなに?」
「遠くの景色を大きくして見渡せる道具だと思う。こっち側から覗くんだよ」
「わっ、わわっ」
望遠鏡を覗き込んだニャルラが歓声を上げる。何を見たんだろう。
「さるがいっぱい!」
「下の方じゃなくて、これから進む方角を見なさいな」
ニャルラは軽く聞き流して、望遠鏡を回転させる。
「あははははっ。フォルネの頭でっか〜い」
「もう、私に貸しなさい」
「あっ」
フォルネは、完全に遊びに入っているニャルラから、望遠鏡を横取りした。
上の方に向け、なにやら観察している。
「んっ……あれは……あっ」
フォルネは、何か気になるものを見つけたみたいだったけれど、ニャルラに押されて望遠鏡の位置がずれてしまったようだ。
「もう、何するの」
「とんないでよ〜、アタイ使ってたのに」
「はいはい」
それからしばし、ニャルラが満足するまで望遠鏡遊びにつきあうことになった。
[プレイログ]
・進行方向を観測し「手がかり」をひとつ入手。
次回、ヤツが帰ってくる。樽とともに。
■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。
■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
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【フォルネ(妖狐) レベル10 技量点:2 生命点:3 魔術点:3 従者点:8】
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木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
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【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル10 技量点:1 生命点:8/9 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
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【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
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「タイガさま、オウカンワシの巣は近そうです」
「みえた〜」
フォルネとニャルラは動物的な感覚で、僕より早くに察知していた。
やがて僕の視界にも、張り出した巨大な枝の先端にある、さらに巨大なオウカンワシの巣が姿を現した。
多くの鳥の巣と同じく、枝をたくさん重ね合わせて作られている。
お皿状になっているので、僕たちの位置からでは巣の中の様子は見えない。
さらわれたお姉さんは、あそこにいるんだろうか。
オウカンワシもいた。一羽だ。頭にきらびやかな装飾品を乱雑にのっけていて、まるで王冠のようだ。
僕が視線を向けると、こちらが巣に向かっている動きをいち早く察知して翼を広げた。
巣の周囲を常に警戒しているみたい。
人間よりも感覚に優れているから、気づかれないように接近するのは最初から無理だった。
ただ、さらったお姉さんを人質にするようなことはないから、やりやすいとも言える。
向こうは空を飛べる。こっちは落ちたらおしまいだ。
「とにかく、あの巣まで行こう。枝のとこだと足場が狭いから危険だ」
「簡単に近づかせてはくれないでしょうね」
気づかれているのだから、遠慮はいらない。僕たちはダッシュで巣に向かう。
オウカンワシは翼を大きく広げて飛び立つと、空から急降下をしかけてきた。僕は太い枝の地面に伏せってかわす。
その間に、フォルネとニャルラが巣の中に飛び込む。
「! タイガさま、さらわれた人はいません」
「ここ、ちくちくして、や〜」
このオウカンワシは違う個体だったのか。それとも巣はいくつもあるのか。
とにかく、ここではなかったみたい。それなら、ここには用はない。
けれど、巣の中に入り込んだ侵入者を、オウカンワシは見逃すつもりはないようだった。
【オウカンワシ レベル4 生命点6 攻撃数2】
オウカンワシは標的を、巣に入り込んだ二匹に定めた。
こちらは空中の敵に対してできることはない。
フォルネの小柄は飛び道具だけど、人間形態でないと使えない。
向こうが攻撃しようと接近してきたときに応戦し、敵より早く攻撃する。これが基本戦術だ。
僕のところから見ていると、巣に近づこうとするオウカンワシに吼えかかり、互いに攻めあぐねているように見える。
空中の敵のため、こちらの攻撃もなかなか当たらない。
こう着状態に痺れを切らしたニャルラが、大きく跳躍した。
危ない。あんなに高く跳んでは……!
そう思ったけれど、それはオウカンワシにとっても不意を突かれた形になったみたい。
縦回転を加えて威力を増した鋭利な爪撃が、オウカンワシの頭部に炸裂した。
いくつかの装飾品がきらきらと光を散らしてはがれ落ちる。
ぐらりと傾くオウカンワシに、さらなる追撃を仕かけるニャルラ。
けれど自分の態勢を保つのも限界で、そこまでだった。ワシの身体を蹴って跳躍し、巣の中に着地した。
フォルネは、ニャルラの一撃で高度を落としたオウカンワシの隙を見逃さなかった。
真下から縦に跳躍し、頭突きをかます。フォルネ得意のダッシュ頭突きを垂直に昇華させた一撃だ。
オウカンワシはやみくもに反撃してくるが、そんな攻撃に簡単に当たるような二匹ではない。
巨大な鳥相手に、二匹ともよく戦っている。
けれど、オウカンワシも馬鹿ではない。
ニャルラの大きな跳躍を警戒してか、より距離を取るようになった。
ニャルラがさっきと同じように大きく跳ぶが、当たらない。
フォルネもニャルラの動きを真似て跳躍した。空中にいるニャルラの背を蹴り、さらに高く跳ぶ。
「アタイをふみ台にするな〜!」
ニャルラはそれでも、しなやかな猫の動きで上手に着地する。
フォルネの方は、オウカンワシの高度に到達した。けれど、すでに跳躍時の勢いはない。
オウカンワシにしてみれば、的が自分から来てくれたみたいなものだ。
バサバサと大きく羽ばたく。バランスを崩し落下していくフォルネ。
まずい。あのまま落ちたら……。
フォルネの落下コースは、巣からわずかに外れているように見えた。
フォルネは必死に前足を伸ばす。けれど、わずかに届かない。
その頃までには僕も巣に到達していた。
巣から思いきり身を乗り出し、落ちゆくフォルネの前足を、すんでのところでつかまえた。
フォルネのからだは小さいが、落下の勢いもあり、僕の腕にずしんと重く荷重がかかる。僕ごと落ちてしまいそうなところを、ギリギリで支えた。
思わず下を見てしまう。果てしない高さに頭がクラクラし、足元に冷たい震えが走った。
「タイガさま……!」
「くっ。ま、間に合って……よかった。さあ、僕の身体をよじ登って」
僕たちの動きが止まっているのを好機と捉えたのだろう。
オウカンワシが急降下をしかけてくる。
「させないよっ」
そこにニャルラが割って入る。
オウカンワシは煩わしそうに脚で振り払い、ニャルラが横に吹っ飛ばされる。それでもワシの勢いは止まらない。
「タイガさまには、手出しさせません!」
フォルネは僕の身体をすばやく駆け上がると一跳び、オウカンワシの顔面に飛びついた。
視界を封じられ、暴れ回る。その攻撃は僕のところには届かなかった。
頃合いを見て、フォルネは巣に飛び降りた。
オウカンワシは一旦上空に身を引くと、巣のまわりをぐるぐる旋回している。
これまでの攻防から、攻めあぐねているのだろう。
「とにかく、巣から離れよう。あいつと戦う理由はないから」
巣から離れたら攻撃が止むかはわからない。
けれど、ここにいたままではオウカンワシは攻撃の手を緩めないだろう。
僕たちは撤退にかかった。吹っ飛ばされたニャルラもふらふらと立ち上がり、僕たちと同じ行動を取る。大きなダメージは受けていないみたい。僕はほっとした。
オウカンワシは、僕たちの逃走経路を塞ぐように、枝の道側の空中に陣取った。
ニャルラが先行し、オウカンワシの気を引こうとする。オウカンワシは空中にその身を置いたまま、ニャルラと対峙する。
このまま逃がさないつもりだ。
そのとき、フォルネが言った。
「タイガさま、私をあいつに向かって投げてください」
「えっ。でも、そんなことしたら」
「大丈夫。私を信じて。さっきみたいな無様はしません。時間がない。早く!」
僕はフォルネの決意をくみ取り、空中のオウカンワシの方向に、フォルネを思い切り投げた。
投げる瞬間に僕の手を蹴り、軌道を修正しつつさらに勢いを増したフォルネが空中を跳ぶ。
オウカンワシはニャルラに気を取られており、フォルネの突進に気づくのが遅れた。
そこに、フォルネが思い切り頭突きをかます。完全に不意を打たれ、オウカンワシの頭と頭がごっつんこ。
王冠の上に星が散る。一羽と一匹はぐらりと体制を崩し、落下してゆく。
僕はフォルネの落下地点に走り、キャッチしようとしたけれど、フォルネはそんな僕の身体を蹴って勢いを殺しつつ、しなやかに地面に着地した。
僕たちはそのまま幹のところまで走った。
一旦落下しかけたオウカンワシは、下の方で体勢を立て直して再び飛翔すると、巣のまわりをぐるぐると回っている。
僕たちがいる場所には気づいているだろうけれど、これ以上近づかなければ攻撃の意思はなさそうだ。
これでひとまず、安全な場所に身を置くことができたかな。
[プレイログ]
【オウカンワシ レベル4 生命点6 攻撃数2】空中のため攻撃に-1のペナルティ。
・第1ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目3 技量点1 ペナルティ1 →外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目1 ファンブル
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目4で回避
オウカンワシの攻撃2 フォルネへ サイコロの出目3 技量点2 回避
・第2ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル オウカンワシ生命点6→5
ニャルラの追加攻撃 サイコロの出目3 技量点1 ペナルティ1 →外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 オウカンワシ生命点5→4
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目5で回避
オウカンワシの攻撃2 フォルネへ サイコロの出目5で回避
・第3ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目2 外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目1 ファンブル(巣から落ちかかる演出のシーン)
オウカンワシの攻撃1 ニャルラへ サイコロの出目2で命中 ニャルラの生命点8→7
オウカンワシの攻撃2 フォルネは サイコロの出目6 クリティカル回避
・第4ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目2 外れ
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 オウカンワシ生命点4→3
→オウカンワシの生命点が半分になったので戦闘終了
●幕間 【フォルネ視点】フォルネの理由
私は、フォルネ。3本尻尾の妖狐。
わけあって、タイガさまにお仕えしている。
タイガさまは、ある目的をもって旅をしている。
けれどタイガさまは、道中でいろんなトラブルに巻き込まれては「ほっとけないから」という理由で手助けをしてきた。
今回もそうだ。タイガさまは、別に頼まれたわけでもないのに、商家の令嬢を助けに巨大樹までやってきた。
タイガさまの旅は、決してのんびりして良いものではない。
けれど、目的地がわかっているわけではない。どこにいるかわからない人を探す、あてのない旅だ。
そして私は、タイガさまの「ほっとけない」性格をよくわかっている。
かつて私もその「ほっとけない」に助けられたから。
だから私はタイガさまを、全力でサポートするんだ。
巨大樹の中腹にあるオウカンワシの巣までたどり着いたけれど、そこにはさらわれた商家の令嬢はいなかった。
もしかしたら、本命の巣はもっと上の方にあるのかもしれない。
「いったん、降りよう」
タイガさまは、そう決断した。
理由は、準備不足。これ以上高いところを目指すには、対策が甘かった。
特にロープの持ち合わせがないのが困る。
今後、絶壁のような幹に当たった時に、私とニャルラは登れるかもしれない。けれど、タイガさまには危険が大きすぎる。
だから、この選択は正しいと思う。令嬢を救うのは、時間との勝負だ。だからこそ、備えは必要。
けど、何の収穫もなしに引き返すのは惜しいな。
私は付近の枝に囲まれた空間に、希少な薬草の群生地を発見した。
これを戦利品がわりとして、いったん地上に戻ろう。
私たちは、絶壁の道や猿の縄張りを慎重に避けつつ進んだ。
箱を上下に運ぶ昇降機という装置で地上に降り立ったときには、もう夕暮れどきだった。
地上では、たしかロイと名乗っていた年配の冒険者が、タイガさまの帰りを心配していた。
ここは冒険者たちが一時的に留まる地だ。出店などが集まって町のように見えるが、町ではない。
宿の機能のある建物もあるようだが、たいていの冒険者は、広場にテントを張って野営している。
タイガさまは、ロイのテントの隣に場所を得て、そこで一夜を明かすことにした。
その夜のことだ。
タイガさまが寝静まった後、ニャルラが私に話しかけてきた。
ニャルラは、今日の冒険の内容を興奮気味に話した。
ニャルラにとって、初めての経験が多く、ドキドキでキラキラだったという。
話がオウカンワシ戦にさしかかる。
「あぶなかったね〜。アタイ、フォルネが落っこちちゃうかと思った」
「タイガさまに、また助けられてしまった」
「また」という言葉に、ニャルラは反応した。
「そういえば、どうしてフォルネはたいがと一緒に旅してるの?」
「話してなかったっけ」
「きいてな〜い」
「……じゃ、話そうかな。別に隠しているわけでもないし」
私はニャルラに話すことにした。私がタイガさまと一緒にいる「理由」を。
「私がタイガさまに出会ったのは、森の中。私が魔獣に追われ傷つき、今にも食べられてしまうのではないかという、そんな危機的状況だった……」
よろよろと逃げる私の前に、その少年は現れた。
私はもう精も根も尽き果て、抵抗する力すらほとんど奪われていた。
私がもう逃げきれないのを把握しているのだろう。魔獣はゆっくりと、私を追ってくる。
この先は切り立った崖になっている。逃げ道は、もはやない。
やがてここに到達するだろう。そうしたら、私の命はおしまいだ。
でも、この少年はどうする。
追われる私に偶然出会ったばっかりに、私とともに魔獣の餌食になってしまうのか。
そんなこと、させない。
木陰からゆっくりと姿を現す魔獣に、私は動かぬ四肢でふんばり、対峙した。
「そのときタイガさまは、どうしたと思う?」
「ん〜。フォルネを助けたんだよね? でもどうやって? たいが、強くないよ?」
「タイガさまはね、私を抱きかかえると、一気に崖から飛び降りたんだ。何のためらいもなく、ね」
「えっ!? そんなことしたら、死んじゃう」
「ああ。そうだ。でもタイガさまは、迷いなくそれをやってのけた。崖の下は深い川になっていて、そこに飛び込んだ私たちは助かった」
おしゃべりなニャルラが沈黙している。驚かせてしまったようだ。
「タイガさまは、全身ボロボロになりながらも、私を助けてくれた。それで、理由を尋ねたら言うんだ。『ほっとけなかったから』って」
私は一息ついた。
「……タイガさまはね、危ういんだ」
私は続けた。
「タイガさまは、誰かを助けるために、簡単に自分の命さえも投げ出してしまいかねないところがある。私のときにそうだったみたいに」
タイガさまはまだ少年と言っていい年齢だ。けれど、タイガさまの「ほっとけない」には、何かあるんだと思う。
たとえば、何かを見過ごしたために、誰かが犠牲になってしまった、そんな経験が。
「タイガさまが命を落とすようなこと、私が絶対にさせない。私はタイガさまに命を救われた。私の命はタイガさまのもの。だから、今度は私が守る。この命に代えても」
そう。これが私がタイガさまと一緒に旅をする理由。
「ふ〜ん?」
ニャルラは、なんだかあいまいな反応をした。
別に、重い話に返す言葉が見つからないわけではなかったみたい。
「納得いってない?」
「うん。アタイはね、フォルネはたいがのことが大好きだから一緒にいるって思ってた〜」
「なっ! ばっ!」
私は不意を打たれ、あからさまにうろたえてしまった。
「にゃはは。フォルネ、かおまっか〜」
「う、うるさいな。だいたいニャルラはどうなんだよ」
「え? アタイはたいがのこと、だいすきよ?」
「そうじゃなくて、一緒に旅してる理由!」
「ん〜。たいがに助けてもらったから。おいしいもの食べれるから。あと、一緒にいると楽しいこといっぱいあるし」
「……もういいよ。聞いた私がバカだった」
私の中に「ニャルラはそれでいいんだよ」というタイガさまの言葉が聞こえた気がした。
まあ、いいか。
明日の朝も早い。もう、寝てしまおう。
●アタック02-1 フォルネとニャルラの成長
翌朝。
目が覚めると、フォルネとニャルラはまだ寝ていた。
珍しい。
いつもはだいたい、早起きのニャルラが退屈して、僕にじゃれついて起こしにかかるのに。
久しぶりの大冒険で疲れたんだろう。
僕は二匹を起こさないよう、朝食の支度をした。
それでもまだ起きてこないので、細かな用事は済ませておくことにした。
昨日の冒険で得た戦利品の換金。フォルネが見つけてくれた薬草の束は、合わせて金貨15枚になった。
ニャルラが鈍器猿のスタジアムで拾った金貨と合わせると、いきなり大金持ちになってしまった。
ええと……手持金を合わせると、全部で金貨31枚だ。
このお金で、ロープを買っておこう。
持てる量には限りがあるし、まだ持てるだけの余裕もほしい。
僕はロープを2束購入した。
ほかにもこまごまとした必要物品を買いそろえ、野営地に戻る。
「タイガさま、おかえりなさい」
「ごちそうさま〜」
フォルネとニャルラは、朝食を食べ終えたところだった。
「おはよ。だいぶ疲れてたみたいね」
「ううん? いっぱいおしゃべりしてたの。ね? フォルネ」
フォルネはなぜか口をとがらせて、そっぽを向いている。
「それより聞いてたいが〜。アタイ、たっぷり休んでちょっと強くなった気がするの」
「私も、少しだけタフネスさが身についたように感じます」
二匹ともまだまだ急成長する時期なのだろう。冒険を重ねるたびに、ぐんぐん強くなっていく。
僕たちは、今日の冒険の準備をまとめた。
【フォルネ(妖狐) レベル10→11 技量点:2 生命点:3→4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル10→11 技量点:1 生命点:9→10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4
金貨11→31→25
1ロープ
2ロープ
僕たちの隣では、ロイおじさんがテントを畳んでいる。
「今日は俺たちも巨大樹に登るんだ。途中まで一緒に行くか?」
「はい。お願いします」
ロイおじさんたちと連れ立って昇降機に向かう。
「……で、タイガは今日はさらに上を目指すのか」
「はい。そのつもりです」
「ま、ほどほどにな。帰れる余力を残してるうちに引き返すのが、生き残る秘訣だ」
昇降機の順番を待つ。朝は少しだけ並ぶ。
「じゃあな。上で会ったらよろしくな」
ロイおじさんたちが先に昇降機に乗り込むと、ゆっくりと上昇していった。
次は僕たちの番だ。ニャルラが元気に飛び乗り、その次に、フォルネを肩に乗せた僕が乗り込んだ。
昇降機の上昇にあわせて、地上の景色がどんどん遠くなっていく。ニャルラが外の景色の動きに歓声を上げる。
やがて、最初の枝に到着した。ロイおじさんたちは、僕たちの到着を待たずに自分の冒険に出立したようだ。
僕たちは、昨日よりさらに上を目指す。猿たちの縄張りは避けて行く。
冒険は順調だ。やがて昨日と同程度の高度まで到達した。
【34 観測所】
幹の周囲に作られた階段を上りきった見晴らしの良い空間に、小屋が建てられていた。
こんな高所に建物を建てるなんて、驚きを通り越してあきれてしまう。
それにしても、どんな目的で建てたんだろう。宿泊のための休憩所だろうか。
僕たちは、その建物に入ってみた。
そこは休憩所というより、展望施設といった風だった。
建物上部に繋がる階段を上がると、出窓に望遠鏡が設置されていた。
上下左右に回転できるようになっている。
「たいが、これなに?」
「遠くの景色を大きくして見渡せる道具だと思う。こっち側から覗くんだよ」
「わっ、わわっ」
望遠鏡を覗き込んだニャルラが歓声を上げる。何を見たんだろう。
「さるがいっぱい!」
「下の方じゃなくて、これから進む方角を見なさいな」
ニャルラは軽く聞き流して、望遠鏡を回転させる。
「あははははっ。フォルネの頭でっか〜い」
「もう、私に貸しなさい」
「あっ」
フォルネは、完全に遊びに入っているニャルラから、望遠鏡を横取りした。
上の方に向け、なにやら観察している。
「んっ……あれは……あっ」
フォルネは、何か気になるものを見つけたみたいだったけれど、ニャルラに押されて望遠鏡の位置がずれてしまったようだ。
「もう、何するの」
「とんないでよ〜、アタイ使ってたのに」
「はいはい」
それからしばし、ニャルラが満足するまで望遠鏡遊びにつきあうことになった。
[プレイログ]
・進行方向を観測し「手がかり」をひとつ入手。
次回、ヤツが帰ってくる。樽とともに。
■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。
■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
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2026年1月27日火曜日
これはゲームブックなのですか!? vol.128 FT新聞 No.4752
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.128
かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
「次郎は、冷たく暗い瞳で、にたにた笑うのを止めない前田をじっと見ている」
さて、クイズです。
「冷たく暗い瞳」をしているのは、次郎でしょうか?
前田でしょうか?
年末でもないのに大掃除しながら、バーチャル図書委員長、かなでひびき登場!
というか、前述した文。
「冷たく暗い瞳で、にたにた笑うのを止めない」という形容が、次郎にも前田にもかかっているから、二つの意味に取れちゃう。
実は、プロの作家先生で、堂々と「印字された」本でさえこんなことは起きる。
例えば「奴は今世紀サイアク最凶のヴィラン。今死んでいない。」
さて、「今世紀最強のヴィラン」は、死んで「もうこの世には居ない」のかしら?
「死んではいない」つまり、生きているのかしら?
以上、本文は変えてあるけど、かなでもこんな文が、「ちゃんと校正を通した」書籍としてお目にかかったことがあるよ。
あるいは「ここではきものをぬいでください」ってやつ。
これも「きもの」か「はきもの」なのかで、大きく意味が変わってくるじゃない?
というわけで、今回紹介する本は『2つの意味の物語 勇者は聖なる剣を手に向かってくる魔物と戦った』(ささきかつお著 新星出版社)よ。
笑い話に、詐欺で「結構です」と言ったのに、商品が送られてきた。
こっちは「断る」意味で「結構です」と言ったのに、向こうはOKの意味ととった。って話ね。
この本には、そのような二つの解釈ができる文が、オチに混じっている話が満載。
例えばね、本書から引用してみると、
「テスト、全部できなかった。」
こう言って、ため息の一つでもついたら、「ああ、こいつ。のび太さんもまっつ青な0点をとったな」と思うでしょ。
ところがね……。
どうしても「もうひとつの意味」が知りたかったら、本屋さんへGO!
こんな具合に、ラスト近くの一文で、まるで運命という列車のポイントが切り替わるみたいに、物語の意味が違ってくるお話がズラリ!
それは、まさに、物語の「ルビンの壺」
一件、黒い花瓶に見えるんだけど、背景に着目すると、向かい合う男の人に見える、ってトリックアートの有名な作品。
これは、まさに、文章でそれをやっているわ。
それは漢字の違い。主語やてにをはを曖昧にする。
多種多様な手を使ってくるけど、これって頭の体操になるわ。
また、作品内に何らかの手で謎解きをさせよう。例えば暗号文、ダイイング・メッセージなど入れようと思う作り手側にもおすすめ!
見逃せば人生後悔することウケアイ!
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『2つの意味の物語 勇者は聖なる剣を手に向かってくる魔物と戦った』
著 ささきかつお
出版社:新星出版社 2023/12/15
新書 1100円(税別)
『2つの意味の物語 アイドルの妹は高校生』
著 ささきかつお
出版社:新星出版社 2024/7/11
新書 1100円(税別)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
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「冷たく暗い瞳」をしているのは、次郎でしょうか?
前田でしょうか?
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実は、プロの作家先生で、堂々と「印字された」本でさえこんなことは起きる。
例えば「奴は今世紀サイアク最凶のヴィラン。今死んでいない。」
さて、「今世紀最強のヴィラン」は、死んで「もうこの世には居ない」のかしら?
「死んではいない」つまり、生きているのかしら?
以上、本文は変えてあるけど、かなでもこんな文が、「ちゃんと校正を通した」書籍としてお目にかかったことがあるよ。
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というわけで、今回紹介する本は『2つの意味の物語 勇者は聖なる剣を手に向かってくる魔物と戦った』(ささきかつお著 新星出版社)よ。
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この本には、そのような二つの解釈ができる文が、オチに混じっている話が満載。
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「テスト、全部できなかった。」
こう言って、ため息の一つでもついたら、「ああ、こいつ。のび太さんもまっつ青な0点をとったな」と思うでしょ。
ところがね……。
どうしても「もうひとつの意味」が知りたかったら、本屋さんへGO!
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それは、まさに、物語の「ルビンの壺」
一件、黒い花瓶に見えるんだけど、背景に着目すると、向かい合う男の人に見える、ってトリックアートの有名な作品。
これは、まさに、文章でそれをやっているわ。
それは漢字の違い。主語やてにをはを曖昧にする。
多種多様な手を使ってくるけど、これって頭の体操になるわ。
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著 ささきかつお
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2026年1月26日月曜日
☆イベントに出てます☆ FT新聞 No.4751
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
蕨之介さんが通販サイトBOOTHにて「モンスター!モンスター!TRPG」のシナリオを無料公開いたしました!
https://kakinokishokai.booth.pm/items/7887253
「ズィムララにエリカ・アメリカがやってきた」というコンセプトだそうです……エリカ・アメリカはスーパーヒーローの1人のようで、作者さんの許諾のもと、作られたシナリオだそうです☆
◆今日は近況のご報告だけ☆
今週はあまりにも忙しかったので、今日の記事は近況のご報告がメインです。
平日はローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』を進めて、週末にはFT書房の集まりやイベント参加などをしておりました。
そうなんです、先週と今週の日曜日に、久しぶりにFT書房の売り子としてイベントに出てきたんですよ。
去年は一度だけしかイベントに出ていないので、すでに去年の2倍ほどイベントに出たことになります☆
お客さんとの交流そのものが久しぶりで、とても楽しく新鮮でした!
次はBGBEというイベントに、顔を出すつもりです。
1月31日(土)と2月1日(日)の2日間開催されるイベントです。
これには売り子として参加する予定はないのですが、どちらか1日でも顔見せに行けたらいいなぁと思っています☆
◆去年に追いつくために☆
何度かチラッと書いているのですが、実は私、去年はウツになってしまい、文章がちゃんと読めない時期がありました。
何かを「楽しい」と思うこともあまりできず、TRPGのセッションもほとんどしていません★
そのあたりの影響で「モンスター!モンスター!TRPG」に対する理解が進まず、かなり困りました。
今は、「ズィムララのモンスターラリー」の【モンスター編】をかばんに入れて、電車の中や空いた時間に読んでいます。
さすがに一度は終わりまで読んでいるのですが、コンディションが悪いときに読んだものですから、しっかりと定着していないんです。
いま読むと「おぉ、面白いモンスターだなぁ」と素直に感じられます。
海外作品にはしばしば、国産の作品には見受けられないいい意味でのデタラメさといいますか、インスピレーションに満ちたモンスターの姿を見ることができます。
作品のそういう「良さ」をどう端的に表現するのが、他者にこの作品の魅力を伝えるのに最適なのだろうか。
そんなことを考えながら、イベントに出てきました。
登場するモンスターは全部暗記するぐらいの気持ちで、読み込むのがいいなと思いつつ……この本を買われたあなたが、どこに魅力を感じているかを言葉にして聞かせていただけたらありがたいな、と願っています。
「ズィムララのモンスターラリー」に関するお話ですが、「モンスター!モンスター!TRPG」全般に関するお話でも無問題です。
ぜひ、声をお届けください……今年、イベントでお客さんに作品の魅力を伝える際の、参考にさせていただきますので!
今回はこれにて☆
それではまた!!
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■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
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発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
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蕨之介さんが通販サイトBOOTHにて「モンスター!モンスター!TRPG」のシナリオを無料公開いたしました!
https://kakinokishokai.booth.pm/items/7887253
「ズィムララにエリカ・アメリカがやってきた」というコンセプトだそうです……エリカ・アメリカはスーパーヒーローの1人のようで、作者さんの許諾のもと、作られたシナリオだそうです☆
◆今日は近況のご報告だけ☆
今週はあまりにも忙しかったので、今日の記事は近況のご報告がメインです。
平日はローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』を進めて、週末にはFT書房の集まりやイベント参加などをしておりました。
そうなんです、先週と今週の日曜日に、久しぶりにFT書房の売り子としてイベントに出てきたんですよ。
去年は一度だけしかイベントに出ていないので、すでに去年の2倍ほどイベントに出たことになります☆
お客さんとの交流そのものが久しぶりで、とても楽しく新鮮でした!
次はBGBEというイベントに、顔を出すつもりです。
1月31日(土)と2月1日(日)の2日間開催されるイベントです。
これには売り子として参加する予定はないのですが、どちらか1日でも顔見せに行けたらいいなぁと思っています☆
◆去年に追いつくために☆
何度かチラッと書いているのですが、実は私、去年はウツになってしまい、文章がちゃんと読めない時期がありました。
何かを「楽しい」と思うこともあまりできず、TRPGのセッションもほとんどしていません★
そのあたりの影響で「モンスター!モンスター!TRPG」に対する理解が進まず、かなり困りました。
今は、「ズィムララのモンスターラリー」の【モンスター編】をかばんに入れて、電車の中や空いた時間に読んでいます。
さすがに一度は終わりまで読んでいるのですが、コンディションが悪いときに読んだものですから、しっかりと定着していないんです。
いま読むと「おぉ、面白いモンスターだなぁ」と素直に感じられます。
海外作品にはしばしば、国産の作品には見受けられないいい意味でのデタラメさといいますか、インスピレーションに満ちたモンスターの姿を見ることができます。
作品のそういう「良さ」をどう端的に表現するのが、他者にこの作品の魅力を伝えるのに最適なのだろうか。
そんなことを考えながら、イベントに出てきました。
登場するモンスターは全部暗記するぐらいの気持ちで、読み込むのがいいなと思いつつ……この本を買われたあなたが、どこに魅力を感じているかを言葉にして聞かせていただけたらありがたいな、と願っています。
「ズィムララのモンスターラリー」に関するお話ですが、「モンスター!モンスター!TRPG」全般に関するお話でも無問題です。
ぜひ、声をお届けください……今年、イベントでお客さんに作品の魅力を伝える際の、参考にさせていただきますので!
今回はこれにて☆
それではまた!!
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2026年1月25日日曜日
ローグライクハーフ新職業【道化師】 FT新聞 No.4750
おはようございます、FT新聞編集長の水波流です。
来月の日曜日に配信予定となる、杉本=ヨハネによるローグライクハーフd66シナリオ『ガルアーダの塔』!
本日は、そのシナリオに合わせた新職業【道化師】のデータを配信致します。
こちらをご覧頂きつつ、来月を楽しみにお待ちください!
◆道化師
軽業や曲芸を披露して、人々を楽しませる職業を【道化師】と呼びます。その卓越した体術を生かして、剣技を磨く【道化師】も、アランツァでは少なからず存在します。
【道化師】は【器用点】の副能力値を持ちます。
↓ 新職業【道化師】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_Jester.txt
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◆道化師
軽業や曲芸を披露して、人々を楽しませる職業を【道化師】と呼びます。その卓越した体術を生かして、剣技を磨く【道化師】も、アランツァでは少なからず存在します。
【道化師】は【器用点】の副能力値を持ちます。
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