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2024年5月8日水曜日

第1回【くさびらの森】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4123

第1回【くさびらの森】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【くさびらの森】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


●作品紹介

***

森で生まれた妖精女王と、平凡な1人の狩人。
2人が出会うとき、神秘の森の冒険がはじまる。
(100パラグラフゲームブック集3、背表紙より)

「くさびらの森」にいるアリ人たちの様子が怪しい。調査に出る。
大型の怪物も暮らすくさびらの森。様々な出会いが君を待つ。
恐怖の「ジバクアリ」をはじめ、アリ人たちには特に気をつけろ!
数多の試練を越え、この森で起こっている真の異変を理解したとき君は……。
(100パラグラフゲームブック集3、冒頭の4コマ漫画からセリフのみ抜粋)

***

ぜろです。
今回挑戦する作品は「くさびらの森」です。
作者は、杉本=ヨハネ氏。言わずと知れた、FT書房の代表です。
100パラグラフゲームブック集3の3本の作品の中の1本です。
私の100パラグラフゲームブック集3、ただ今借りパクされておりまして、やむを得ず再度購入させていただきました。

そして、実はこの作品、私は以前プレイしたことがあり、しかもリプレイも書いています。
今回は、再挑戦&再リプレイ化ということになります。
私からすれば、それだけの魅力を持った作品なのです。
記録を見ると、私が以前このリプレイを書いたのは2015年。すでに8年は経過していますね。
そっかーそんな前だったかー。つい最近とまでは言いませんが、そんなに前という意識もありませんでした。
時の流れは早いものです。

でも、1度プレイした作品ですから、そんなに悲惨なことにはならない……はず!
さくっとプレイして、さくっとクリアしてしまいましょう。
アタック01でクリアできたら拍手喝采をお願いします。(なにかのフラグ)

おおっと、まずは作品紹介からですね。
この作品「くさびらの森」の「くさびら」は「きのこ」のことです。
つまり、きのこの森。
きのこの山でもたけのこの里でもない、きのこの森。
きのこたけのこ戦争に終止符を打つべく遣わされた決戦兵器です。

この作品には、豊富な種類のきのこと、きのこの精たちが登場します。
そして、豊富な種類のアリ人も登場します。

アリ人!

FT書房の作品には、比較的頻繁に登場する種族です。
「宝石島の脱出」「マドレーンの海域」には友好的なアリ人が登場。食料を分けてもらえました。
「ディラットの危険な地下迷宮」ではアリ人の傭兵として雇われる展開がありました。アリ人の陣営で加藤茶と共闘したら、ディラット側に志村けんがいたんですよね。
「ディラットの危険な地下迷宮」未経験の方が見たら頭にはてなマークが浮かびそうですが、間違ったことを言っているわけではないのです。

そんなふうに、比較的交流ができる種族として登場しがちなアリ人ですが、本作のアリ人は、いうなれば……敵!

大雑把に言うと、きのこに味方してアリ人をなんとかするストーリーとなっております。
ただそれも、自然の大きな流れの中から見ると、ひとつの「共生」ではあるのですが。
そしてそれが、この作品のオチにあたる部分だったりもするのですが、作品紹介でバラしてどうする私。
でも大丈夫。そんなの全然問題にならないくらい、そこに至る過程が面白いんですから!
そんなきのことたけのこ……じゃなかった、きのことアリ人に彩られた冒険模様を、これからたっぷりお届けします。


●ルール確認

この作品は、ファイティングファンタジーの基本ルールをベースにした作品です。
技術点、体力点、運点といった能力値をサイコロを振って決め、サイコロを振っていろんな判定をし、サイコロを振って怪物と戦います。
最初に決める能力値の差が著しく、難易度が大きく左右されるため、バランスの悪さ等の欠点もありますが、やはりこのルールが原点だなと感じます。

この作品では、最初の能力値はサイコロを振って決めるのではなく、最初から決まっています。
なるほど、これなら極端な能力値を排除し、ある程度コントロールできるので、バランスの悪さという課題はクリアされますね。

そしてその能力値というのがこちら。

【主人公 技術点7 体力点14 運点7】

な、な、な、なんですとーーーーー!!!??

私が一体何に驚いているのか。
実はこれ、ファイティングファンタジーの基本ルールでいうところの「最弱キャラ」なのです!
技術点、体力点、運点を決めるサイコロですべて1を出したらできるキャラクターがこれ。
すなわち最弱。
これでは、通常の作品に登場するほとんどの強敵モンスターには手も足も出ません。
運だめしなどの判定の成功もおぼつきません。
しかも体力も貧弱貧弱ウリィィ状態ですから、すぐ死にます。
冒険者すぐ死ぬ。
あ、本作の主人公は冒険者ではなく狩人でしたね。

村の狩人。
そう、これはあくまでも狩人などの、冒険する職業の人の最低限の能力値なのです。
冒険に出ない一般人の能力値は、この最低値よりももっと低いはずなのです。
だから、この最弱ステイタスでも、きっと村ではかなり強いに違いない。地元じゃ負けしらずってやつです。
そんな村いちばんの勇者が、危険きわまりないくさびらの森へと挑むわけです。

ところで、ちょっと噂に聞いたところによると、スティーブ・ジャクソン氏のファイティングファンタジー最新作は、さらにこの上(この下?)をゆく、【技術点6 体力点12 運点6】なのだとか。
主人公作成上の最低値を下回る値を出してくるあたり、わずか1点であっても、さらなる発想の飛躍を感じます。さすが本家といったところ。

おおっと、持ち物等のチェックを忘れるところでした。
袋、剣、金貨10枚、食料2食分を持っているとあります。
食料は食べると体力点を4点回復できます。
そして大事。持ち物の欄には書かれていませんでしたが、それらと別に弓矢を持っています。
そりゃ狩人ですもんね。弓矢は持っててもらわないと。
矢は9本。
戦いに入るとき、通常の戦闘ルールに入る前に先制で弓を射ることができます。
技術チェックといって、サイコロ2個を振り、技術点7以下の目が出れば成功。
サイコロ1個分のダメージを相手に負わせることができるとあります。
これは、かなり強力です。
この攻撃が当たるか否かで、戦況がひっくり返るくらいの威力があります!

当たれば!

……当たれば!

技術点が7点だと、まず当てるとこがネックなんですよねぇ。

さあ、だいたい準備は整いました。

次は主人公の名前を決めます。
私はゲームブックに挑戦するときには、名前だけつけています。
特に詳細な背景や設定を考えるわけでもありませんし、リプレイ上は主人公の一人称なので、名前が登場することも滅多にありません。
単に、気分の問題です。

今回は、自作の名前決定表を用いてサイコロを振って決めました。
その結果、主人公の名前は「ハーヴェイ」に決定しました。
この名前で呼ばれる機会は少ないと思いますが、よろしくお願いします。

リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。

【ハーヴェイ 技術点7 体力点14 運点7】
【持ち物】
・ものを入れる袋
・剣
・弓矢
・金貨10枚
・食料2

さあ、それではここから本編に入りましょう!


●アタック01-1 くさびらの森のアリ人

俺はハーヴェイ。くさびらの森付近の村に住む狩人だ。
森へしばしば入っては、狩猟をしたり山菜を採ったりしながら生計を立てている。
そんな俺がスタート時に金貨を10枚も持っているというのは、我ながらいささか疑問だ。

さて、俺は今日も森へと入っていた。
いつもは外縁あたりで活動しているのだが、この日はいちご狩りに夢中になりすぎ、うっかり奥まったところに入り込んでしまった。
そしてそんなとき俺は、女性の悲鳴を聞いたのだ。

こんな森深い場所で。

すぐさまかけつける。
木々の間に1人の女性の姿をとらえた。
複数のアリ人に、槍を向けられている。

なんでこんな場所に女性がいるのか、疑問は尽きないが、今はそんな場合ではない。
俺は音を立てて接近し、女性に、アリ人たちに気づかせた。

「ここで何をしているのか!」

強い気迫でアリ人たちを問い詰める。俺の態度に一瞬ひるんだようだ。
アリ人という種族、一応話は通じる。しかし、何を考えているのかわからない不気味な怖さがある。

「立ち去れ!」

俺はもう一度、強い口調で言い渡す。
アリ人たちは、ここでこれ以上争うつもりはなかったようで、引き下がり、去って行った。
よかった。ほっとした。

さて、女性の方だ。
抜けるような白い肌に、薄い絹の衣類。
はっきり言って、こんな森の中にいられるような格好ではない。
それに漆黒の王冠をかぶっている。
どう見ても普通の立場の人間ではない。

謎は多いが、普通に声をかけるしかあるまい。

「森は危険だ。あなたも早く出たほうが良い」

それに対する女性の返事は、意外なものだった。

「ここが私の生まれた森。誰も『出ていけ』とは言えないのよ」

女性のまわりを、鱗粉のようななにかがキラキラと舞っていた。

「くらびらの王妃の命を救ったのです。あなたに褒美を取らせましょう」

くさびらの、王妃?

この女性は、きのこの精かなにかだというのか?
じゃあ、このキラキラと舞っているのは、きのこの胞子?

「森まで会いに来て。私とあなたはきっと、菌縁で結ばれている」

そんな謎めいた言葉を残すと、くさびらの王妃の身体は宙に浮き、森の奥へと消えて行った。
俺はそんな様子を、ぼーっと見送るだけだった。

くさびらの王妃が消えた後、ふと我に返り、俺はつぶやいた。

「褒美って、なに?」

これが俺とくさびらの王妃とのファーストコンタクトだった。
そしてこの出会いを経て俺はすっかり、くさびらの王妃のとりこになっていた。

そんなある日、村で事件が起きた。
村はずれに住む老婆カトリーヌが、惨殺されたのだ。
村勇者の俺には当然のようにお呼びがかかる。
俺はカトリーヌ老の状態を確認し、直感した。

これは、アリ人の仕業だ!

先日のアリ人は、俺の眼力で撤退させた。
それが村まで来て、問答無用で惨殺するところを見ると、だいぶ凶暴性が増しているようだ。
アリ人は定期的に移動を繰り返す種族だ。移動の前後にはひどく興奮する。
そうした種族的な習性によるものなのか、森でなにかが起きているのか。

……森に、行く必要があるな。

森へ行き、村に対してのアリ人の脅威を排除する。

しかし使命とは裏腹に、俺の頭の中にはくさびらの王妃の「森まで会いに来て」という言葉が反響していた。

次回、くさびらの森へと足を踏み入れる。

【ハーヴェイ 技術点7/7 体力点14/14 運点7/7】
【持ち物】
・ものを入れる袋
・剣
・弓矢
・金貨10枚
・食料2

■登場人物
ハーヴェイ 主人公。むらゆうしゃだがアストロンは使えない。うちゅうヒーローへの道は遠い。
くさびらの王妃 きのこの精かなにか。はじまる前に主人公をとりこにしてしまった。
カトリーヌ 村はずれに住む老婆。凶暴化したアリ人の犠牲に。

■作品情報
作品名:くさびらの森
著者:杉村=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://ftbooks.booth.pm/items/2484128
100パラグラフゲームブック集3に収録されています。


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2024年5月7日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.105 FT新聞 No.4122

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.105

 かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

 こほん!
 覚えておるかの!
 ヴァーチャル図書委員長かなでひびきの永遠のライバル。かぶく鬼狐、七尾八尾たぁ、わしのことでぃ!
 で、なんか今回はかなでに呼ばれたから来たンだけれど、かなでは何処にありや?
「シュヴァインヴァイぃぃぃぃぃプ! あるいは! ベルクライスぅフェルトグゥゥゥゥゥゥゥトマァァァァン!」
 ぐぎゃー、いきなり必殺技で八尾たん光の中に消滅!

 のっけからトヴァしております。
 バーチャル図書委員長かなでひびきだよっち!
 うん。かなでもいきなり冒頭から必殺技出してみたい気分にも誘われるのよ。
 女の子だからてへぺろ。

 というわけで、今回ご紹介するのは『幻想世界11カ国語 ネーミング辞典 (笠倉出版社)』だよっ!
「幻想世界」って言うから、例えばトルメキア語やヨゴ語、グロンギ語など架空言語を紹介してるのかな? と思いつつ、読んでみましたら、まっとうな言語の本。
 日本語、そして、世界共通ごと化してしまった英語。フランス語などのヨーロッパ圏中心に、11カ国語で、総記に、時間から社会まで、13409単語を収録!
 で、その中には「色」や「数」そして当然!?「封印」やら「呪い」やら「精霊」に「堕天使」。
 ファンタジーなんかで、「ああ! アレってなんだったけ?」って思う単語も、これを引いたら、手軽にわかるわ。
 個人的には、中国語までフォローしているのが嬉しいですぅ。
 特に、巻末の、「中国語・新語・俗語辞典」
 というのは、中国語は「表意文字」です。
 つまり、字の中に「木」が含まれていたら、「木に関係あるんだな」と類推できる。
 さらに言うと、発音まで漢字でやらせちゃおう! としているのが中国語!
 日本語なら「カタカナ」で、英語なら外国語の単語は「ローマ字」で逃げることができるけど。
 まぁ、その結果、原型がわからない残念な仕上がりになっているものもあるけど、例えば「カプチーノ」は「カプジヌオ」、「カフェモカ」は「モカカフェイ」あるいは「フェイスブック」は「フェイスブクゥ」(ピンインはわかりませんので無視してます・かなで)
 どう? 似てない?
 という具合に「意味」を取るか、発音を取るか。
 特にかなでのツボに入ったのは「フェイスブクゥ」
 その綴りは果たして……。
 ぜひ、本書で確認してみて!

 あるいは、付録の「ヨーロッパ人名対照表」
 例えば「キャサリン」のロシア語読みは「エカテリーナ」。
 ジョジョでお馴染みの「ジョセフ」は、ドイツ語では「ヨーセフ」、イタリア語では「ジュゼッベ」。スペイン語では「ホセ」
 そのような、国によっての名前の呼び方の変化も、「ヨーロッパ人名対照表」に掲載されている。
 ネーミングだけではなくって、聞き覚えのある名前が、様々な国でどう変化するのか、見ているだけでおもしろいよ。

 ただねー。
 これは、本書でも断っているんだけど「あくまでも入門用」
 辞書には劣るのは、認めざるを得ないわ。
 例えば、「馬鹿」を英語で言うと「fool」または「idiot」
 だけど、この本、フランス語で「idiot」が来てる。
 そうなのよ。実は英語でもフランス語でも、「馬鹿」は「idiot」っていうの。
 ただね、初めて英会話、フランス語に触れる人は、混乱するかもしれない。
 あるいは、「いつも」の英訳は「always」ってなってるけど「everytime」など、ほかの言い回しも多数ある。
 武器は、英訳として「weapon」があるけど「arms」もそうよね。
 といった具合に、ちらほら「ゆれ・ぶれ」が見られるので、辞書として使うのはNG。

 ただ、言語に対するトリビア本としては一級!
 本書のまえがき。
「どうして、日本人は外来語がかっこよく見えるのか? それはもともと、外国語の漢字を輸入していたから」のくだりには、ものすごく頷いたよ!
 それに「十二指腸」「神経」なんて言葉って、日本産の造語って知ってた?
 この本で初めて知ったけど、杉田玄白先生たちが「舵も櫂もない小舟で大海に乗り出した」と例えられるぐらい、暗中模索、試行錯誤の連続だった『解体新書』の訳。
 その上で「どうしても在来の日本語にはぴったりくる言葉がない」ならば「作ってしまえ!」ってことで、爆誕した言葉だけど、今じゃまるで「日本語が生まれた時点からずっとあるような」感覚で使っているよね!

 いい意味で、お手軽に知的好奇心は満たしてくれる。
 言葉のトリビアにはもってこいな一冊ですぅ!
 そう言った意味では、楽しい一冊ね。
 それに、これをきっかけに、他言語を習い始めるきっかけになるかもしれないし……。
 冒頭、かなでがぶっぱなしていた呪文の意味もわかるかも?
 知ったらがっかりするか、びっくりするか?

 次回もモアベターでありますように。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

『幻想世界11カ国語 ネーミング辞典』
 著 ネーミング研究会
 出版社:笠倉出版社 
 ソフトカバー 2011/6/28 848円(+税)


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2024年5月6日月曜日

「廃城の秘宝」ってどんな作品? FT新聞 No.4121

おはようございます、京都に向かう電車のなかから杉本です。
昨日、「ローグライクハーフ」のd66シナリオ「廃城の秘宝」が、ついに配信されました。
感想などお待ちしております。
この作品が気になっているあなたに向けて、これがどんな作品であるかを今日はご紹介してまいります。


◆テーマは「遊びやすさ」。
シリーズで作品を出すときに難しいと思うのは、読者が作品を知る「タイミング」です。
「ローグライクハーフ」はおかげさまで7本の関連書籍を刊行しておりますが、その中で初心者にピッタリな作品というと、やはり最初に出した「黄昏の騎士」です。
「女王の肉」あたりはボリュームが多く、ルールを把握したうえで楽しむ方が余裕をもって遊べる作品だと思います。
いうなればこのような作品は、一連の作品を山に見立てるなら、中腹、あるいは頂上といった、ずっと上のほうにあるものと言えます。
でも、山の入口って、ひとつじゃなくてもいいですよね?


◆遊びやすい作品☆
「ローグライクハーフ」を何度かプレイしたことがあっても、やさしい作品でのんびりと、ルールの復習をしながら遊びたい気分のときもあるでしょう。
あるいは、中級レベルのキャラクターが存在しないので、新たに一から冒険したいときも、あることでしょう。

「山の入口にあたる作品、遊びやすく楽しい作品を定期的に出す」という考えに基づいて作られたのが、今作「廃城の秘宝」です。


◆原点回帰を!
この作品の制作を開始する少し前に、冒険企画局さんから声をかけていただき、冒険TVに出演いたしました。
その際、久しぶりに1stシナリオである「黄昏の騎士」を一緒に遊んだのですが、やってみて「おぉ!?」と驚いたことがありました。

「黄昏の騎士」に登場するアイテムの効果が、思ったよりも大胆で、状況をひっくり返すパワーのあるものが多かったのです。
特に、「隠された部屋」で入手できる装備品。
手に入れた作品内でしか使えないだけあって、とても強力です。

そのときの衝撃を振り返って、「原点回帰をしよう」と決めました。
使い方が単純かつ、力強いデザイン。
私が提供したいゲームの、基本コンセプトです。


◆うまくいきました。
これらの方向性を紫隠ねこさんと話し合って、パワフルでシンプルな装備品や、状況に大きな影響のある敵味方が入り混じった「ローグライクハーフ」のシナリオができあがったと思います☆



それではまた!



↓冒険TVとFT書房「ローグライクハーフ」のコラボはこちらから観られます☆
https://www.youtube.com/watch?v=A9FfZqyIQkY



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2024年5月5日日曜日

「廃城の秘宝」ローグライクハーフd66シナリオ FT新聞 No.4120

おはようございます、京都の平安神宮そばから杉本です。
イベントの手伝いに来ておりまして、その休憩時間に書いております☆
いよいよ本日はですね、「ローグライクハーフ」の最新d66シナリオ「廃城の秘宝」の配信です!!

拠点はアランツァの神聖都市ロング・ナリク。
舞台は危険な食人植物のはびこるかづら森に支配されたナリクの王城。
難易度は易、ごく遊びやすい冒険です。

それでは、さっそく☆

https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_Treasures_of_MelmValois.txt



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2024年5月4日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第586号 FT新聞 No.4119

From:水波流
アルスラーン戦記、全巻読了。30年以上かけての完結。これはなんというか、いろいろな感想があると思うが、自分は90〜00年代の田中芳樹が好きなんだなと改めて。
もしリアルタイムで追っていたらまた違う感想を持ったのかも知れないが、なにせ僕は中学生時代に2巻くらいで止めていた落第読者なので……。
このまま田中芳樹の未読本を進めるか、別の作家に行くか悩むなあ。

From:葉山海月
某仕事先で。
「葉山君。今回君の給料は三割引きでいいのかね?」
見て見ると、私のケツに、はがして捨てたはずの「三割引き」シールが!

From:中山将平
明日5月5日(日)、僕ら「TGFF(テーブルゲームファンフェスタ)2024春祭」に物販サークルとして参加します。
ブース配置は【δ6a】です。
開催地は「京セラドーム大阪9F スカイホールC・Dブロック」。
個人的にも大好きなイベントなので、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4/28(日)~5/3(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2024年4月28日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4113

神聖都市ロング・ナリク「ローグライクハーフ」都市サプリメント 
・本日の記事は「ローグライクハーフ」の新d66シナリオ「メルム・ヴァロワの秘宝」の拠点となる、神聖都市ロング・ナリクの都市サプリメントです!
トレント弓と、それを使った特殊技能。
トレント蔦。かづら森の魔術師エルフ。
など、ロング・ナリクならではの個性豊かなサプリメントをご堪能ください!


2024年4月29日(月) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4114

【聖騎士】の登場!! 
・お待たせしました!
本日の記事は、ローグライクハーグ【新職業】として、神聖都市ロング・ナリクにふさわしい新職業【聖騎士】の登場です!!
副能力値は筋力点。
基本ルールで【筋力点】を選んだ場合ほど万能ではありませんが、魔法を使う敵や【アンデッド】などに対抗する力があるデザインです。
詳細は本記事をどうぞ!


2024年4月30日(火) ロア・スペイダー FT新聞 No.4115

蜂竜の森のあとがき 
・4月7日に発表されたd33シナリオ『蜂竜の森〜竜の蜜は秘密のお味〜』。皆様はプレイされたでしょうか? 
今回は舞台裏の小話というかあとがきというものを、作者ロア氏が直々につづっていきます。
……『モンスターを料理して冒険』というのはどうだ!?
そのようなコンセプトではじまったこの企画、芋づる式に、ロア氏にとっても思い入れが深い『百竜の森』を舞台にするというアイディアがひらめき、そして強すぎたラスボスについて。
ファンの方にも、これからシナリオを書こうとする方にも、参考になる逸品です!


2024年5月1日(水) ぜろ FT新聞 No.4116

第13回【混沌迷宮の試練】ローグライクハーフリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第383回をお届けしました。
今回はノリに乗っている「ローグライクハーフ」2ndシナリオ『混沌迷宮の試練』リプレイ。
「ミラー・ドール」三部作の2巻、「混沌の迷宮」の後日談的な作品です。
レドナントの村人のため混沌の迷宮に赴く主人公サクラ。
黒エルフとオークとの協定を結び、混成精鋭部隊でカオスマスター打倒を目指します。
そしてついにカオスマスターとの直接対決。
勝利しますが、同行していた黒エルフの長エルサスが、混沌の力でしずくの怪物と化してしまいます。
混沌の核の力とニモの祈りで、エルサスは元の姿を取り戻しました。
今回は、帰還後の顛末と感想回です。
祝宴の中、ちょっとほろ苦い別れが涙を誘う中、今回のリプレイについて、特に従者にこだわったプレイなどなど、ファンなら深くうなずけるところも多いと思います!
長い間の応援、ありがとうございました!
次のぜろ氏の冒険にて、またお会いいたしましょう!


2024年5月2日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4117

『Whether the Cat is Black or White』刊行までの裏話 
・世界で2番目に古いRPG『トンネルズ&トロールズ』(1975年〜)のデザイナー、ケン・セント・アンドレの出版社Trollgodfather Pressより、2024年4月末にラヴクラフト・ヴァリアントのソロアドベンチャー『Whether the Cat is Black or White』(著:岡和田晃・石川あやね、協力:水波流、イラスト:Don-Chang)が発売されました。様々な追い風に恵まれて刊行された本書。
例えばそれにかかわられた方々、例えばタイトルへのこだわり、などの裏話を、自ら翻訳を手がけられた岡和田氏自身の口から語ります。
どうぞよろしくお願いいたします。


2024年5月3日(金) 岡和田晃 FT新聞 No.4118

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 番外編(1)

・岡和田晃氏による、新しく楽しい読み物満載な「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
今回は、ちょっと趣向を変え、前回紹介した『Whether the Cat is Black or White』との兼ね合いで、英訳の話について書いた伊野隆之氏のエッセイを紹介させていただきます。
題して『「Osprey's Sky」と環境正義』!
独特の鋭い視線からメスを入れるお話にご注目!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ジャラル アフサラールさん)
今回はホラーGBリプレイご苦労様です。やはりバットエンドでしたね。
『蝶として死す』文庫化おめでとうございます。細谷正充賞を受賞した縁で細谷正充先生が解説書いてくださるんですね。
あと続編の『揺籃の都 平家物語推理抄』 ですがレジェンド脚本家でミステリーランキング3冠を達成したミステリ界の長老の辻真先先生がXで称賛されていました。さらなる続編期待しています。

(お返事:齊藤飛鳥)
御感想下さり、ありがとうございます!ホラーの醍醐味、バッドエンドをしっかり堪能いたしました^^
拙作『蝶として死す』文庫化、お祝いして下さってありがとうございます!! 細谷正充賞受賞の縁が、解説に繋がったので、本当にありがたい限りでした^^
Xをやっていなくて存じ上げなかったのですが、辻真先先生が『揺籃の都』を絶賛して下さっていたとは!!
ホラーゲームブックではバッドエンドを迎えましたが、現実ではグッドニュースをいただけました!! ありがとうございますm(_ _)m♪


(ghostwriterさん)
蜂竜の森のあとがき面白かったです。
こうした制作秘話があると、作品に深みがでますよね。
ちなみに、丸太は某吸血鬼漫画から着想かと勝手に思っていました。

(お返事:ロア)
感想ありがとうございます。丸太はあの吸血鬼漫画のイメージが強いですからね。武器としては……。
でも、あれみたいに一人で持つ武器ではないので。50cmほどの長さの丸太でも、持ち上げるのに精一杯ですから……意外とずっしり。
あとがきも楽しんでいただき書いてよかったです。


(ジャラル アフサラールさん)
武器=丸太というと実写映画化した吸血鬼と戦う漫画の最強武器を思い出します(笑)。ちなみに「空想科学読本」の柳田理科雄氏によると丸太は金属製の武器と違って中身が密だから、なかなか折れないそうで、直径20センチの丸太は1トン近くある車を支えられるそうです。あるTRPGでは丸太の威力は2D6+6でハルバートの2D6+5より上でした。「みんな丸太は持ったな! 行くぞ!」と冒険に出るパーティーもいそうです(笑)。

(お返事:ロア)
感想ありがとうございます。のこぎりで切ろうとすると密さがわかります。がっちりみっしりで重い。あんなものぶつけられたらただではすみませんよ。威力に関してもハルバードより強いと言われても納得です。ただ一人で振り回すのは……。やっぱりあれは協力兵器です。


(ghostwriterさん)
混沌迷宮の試練リプレイ楽しみにしていたので終わりとなるとさみしく感じます。
ですが冒険に終わりはありません。また新たなリプレイを待っています。

(お返事:ぜろ)
3か月にわたる連載、楽しんでいただけて最高にうれしいです。
こうして面白いと言ってもらえる方々のうえに成り立っているものですので。
そしてもちろん、次の水曜日からは、休むことなく新たなリプレイを始めますよ。
次はゲームブック。「100パラグラフゲームブック集3」に収録されております、「くさびらの森」という作品です。くさびら(きのこ)とアリ人にいろどられた森を探索する作品で、私は大好きなあまり、2回もリプレイを書いてしまいました。
また、「混沌迷宮の試練」の主人公サクラが活躍する、次のローグライクハーフのリプレイも着々と準備中です。次も少々変則でシステム上はサクラが主人公で従者を連れているのですが、ストーリー上はサクラが従者になっているという、そんなリプレイです。そちらも書き上げましたらいつの日かお目見えすると思いますので、期待してお待ちください。


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2024年5月3日金曜日

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 番外編(1) FT新聞 No.4118

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 番外編(1)

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●はじめに(岡和田晃)

 ネットマガジン「SF Prologue Wave」とのコラボレーションについては、なるべく色々な方々にご登場いただければと思っているのですが、今回は『Whether the Cat is Black or White』との兼ね合いで、英訳の話について書いた伊野隆之さんのエッセイを紹介させていただきます。ご参考にしていただければと思います。

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『「Osprey's Sky」と環境正義』
 伊野隆之

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Reckoningという年次ジャーナルのサイトに、Takayuki Ino の小説、"Osprey's Sky" が掲載されている(https://reckoning.press/ospreys-sky/)。この作品が収載された Reckoning6 は、2022年の1月に電子版が発行され、7月には印刷物としても販売されており(https://www.amazon.com/Reckoning-6-Francesca-Gabrielle-Hurtado/dp/1955360049)、僕自身の手元にも実物が届いている。Reckoning6 のコンテンツは、発行者である Reckoning Press のサイトで順次公開されており、順番が回ってきた、ということになる。
それで、"Osprey's Sky" だ。カタカナにすると、「オスプレイズ・スカイ」で、オスプレイは例の傾きを変えられる回転翼が二つある軍用機の愛称として有名だが、元々の意味はミサゴという猛禽類の一種だ。つまり、"Osprey's Sky" は「ミサゴの空」(https://prologuewave.club/archives/735)で、自作の英訳作品としては、「FT新聞」にも再録してもらった「ヴァレンハレルの黒い剣」に続く第二弾になる。

"Osprey's Sky"を掲載したReckoning は非営利のジャーナルで、"Environmental Justice" をテーマにして、毎年1冊ずつ刊行してる。この "Environmental Justice" を日本語にすると「環境正義」になるのだが、これが少々ピンとこない。環境省の関係団体である「一般財団法人環境イノベーション情報機構」のEICネットでは、「環境保全と社会的正義の同時追及の必要性を示す概念。多民族国家である米国の社会的背景をもとに生まれてきた概念で、環境的人種差別主義批判(Environmental racism)として展開した環境正義運動(Environmental justice movement)に端を発す。1980年代に米国で、アフリカ系黒人が多くを占める地域において有害廃棄物処理施設が集中していることに対する抗議運動などが象徴的な動きとされる。」とある。

Reckoning のサイトにも説明があるが、そっちは英語が難しい。「人類の環境に関する誤った選択の結果を負わされた人々(および他の生物)は、その選択を是正する義務を負わないという考え方。」くらいだろうか。"Environmental Justice" や「環境正義」が具体的に何か、は、まだいろんな議論がなされているようで、それこそ難しいけれど、原稿の応募の観点からすれば、作品の内容で環境問題に起因した不公正を扱っていれば良い、くらいの解釈で間違っていないと思う。

そこで、「ミサゴの空」だ。作品は南北に延びる海岸線沿いに飛ぶミサゴが、太陽光発電衛星からのマイクロ波送電の受電施設の上を飛ぶことで、空から落ちるシーンで始まる。受電施設があるのは原子力発電所が事故を起こした跡地だ。どこが想定されているかはあえて説明するまでも無いだろう。その場所で主人公は放射線への暴露をごまかしながら働いている。

この作品の公開は2011年6月。何を契機として書かれたかは、言うまでも無く東日本大震災による福島原発の事故だ。今でも廃炉作業が続くサイトでの労働者の放射線暴露については、さすがにちゃんと管理されているとは思うが、東京でエアコンを使って快適に過ごしている僕たち(当時、僕はまだ現役で東京に住んでいた)は、普段、廃炉作業に従事する人の事など考えもしていない。敢えて言えば、職業選択の自由はあるが、一方で社会経済的制約が職業選択を狭める事を知っている。労働者を守るための規制はあるが、経済的な理由が労働者自身に規制を破らせるインセンティヴになり得る事を知っている。その上で、僕らは快適さをむさぼっているのだ。

原発事故の当時から今現在まで原子力発電は悪者にされている。ただ、悪者は原発だけなのか。原発という技術を悪者にして、その原発を必要なものとしているエネルギー消費構造を見ないふりをしているのではないか。そんな現状へのフラストレーションが、珍しく執筆のモチベーションになった作品だった。

この作品を公開した時には、これと言った反応も無かったのだけれど、日本語版の公開から10年以上を経て、米国の環境正義を扱うジャーナルで、僕の作品が評価された事を率直に喜びたい。担当編集者のGabrielaはメールの中でこんな風に書いた。 "It is a beautiful, haunting story, and the ending gets me every time."(これは、美しく、心に残る物語です。そしてエンディングには毎回感動させられます。)こんなことを米国の編集者に書いてもらったら、小説家なら誰だって舞い上がるはずだ。

ところで、日本語にすると、また、分かりづらいのだが、英語圏では「気候小説(Climate Fiction,略してCli-Fi)」なるものがジャンルとして認識されているらしい。SFのサブジャンルかというと、必ずしもそうではないようだが、かなりの重なりがある。最近は、SFプロトタイピングのような企業活動に貢献するSF的なアプローチが国内に紹介されてきているが、気候変動のような問題(とはいえ、あまり現実だと思われていないかも知れない)へのアプローチとして小説を捉え直すこともできるだろう。日本では聞き慣れないCli-Fiだか、毎年のように甚大な気象災害は発生している現在、世界でも「気候変動への意識」が低いと言われる日本の現状を変える一助にもなると思う。僕の書く小説が、どれくらい貢献できるかは疑わしいのだが。

(注釈1)
ちなみに、なんでミサゴかというと、猛禽類にしては珍しくミサゴの餌は魚で、太陽光を反射する受電施設(ホント?)を海と誤認して飛んでいくという展開にふさわしいということもあるが、それとは別にロバート・ホールドストックの「ミサゴの森」という小説が念頭にあった。ホールドストックの小説は、エンタメ的な盛り上がりに欠ける一方で、妙にじんわりくるイギリス的な小説で、結構好きでした。もっともホールドストックのミサゴは鳥では無く Mythago という森が作り出す神話的存在なので、鳥のミサゴとは全く関係が無いです。

(注釈2)
Environmental Justiceを説明するReckoning の説明(https://prologuewave.club/archives/6731)は以下の通り。もう少しわかりやすい英文にして欲しい気がする。
the notion that the people (and other living things) saddled with the consequences of humanity's poor environmental choices and the imperative to remedy those choices are not the ones responsible for them.
この説明の背景につき、岡和田晃氏から「「Environmental Justice」について、「この「Justice」はアメリカを代表する哲学者の一人、ロールズの思想等が背景にあると思います。ロールズはプラグマティズムやリバタリアニズムを代表する思想家とされますが、代表作に『正義論』があります。ロールズ的な「正義」とは、協業作業によって生まれる便益の分配に関する考え方のことで、格差が存在する際にそれを是正する「公正さ」(Fairness)の担保を「正義」の前提としています。従来、環境問題については「公正さ」の埒外にあるものとしてみなされがちでしたが、激しさを増す気候変動により、そうも言えなくなってきた。グレタ・トゥーンベリの訴えを思い出してください。だからこそ、「正義」をもって機会の平等を担保し、生まれながらに環境危機の負債を背負わされる将来世代をもエンパワーメントすることが、小説(Fiction)の切実なテーマともなっているのでしょう。」というコメントを頂いた。うん、そんな風に解説してもらえると、なんとなくわかりやすくなった気がする。

(注釈3)
自作の話になって恐縮だが、2018年に「チュティマの蝶」という気候変動をストレートに扱った作品がある。この作品もまた人災である気象災害が、あたかも天災のように報道される事へのフラストレーションが執筆の動機になっていた。この作品は、たまたま、西日本豪雨の直後に公開されており、ちょっとした偶然に驚かされたものだ。
なお、これもまた岡和田さんの紹介で、日本にはエコクリティシズム研究学会の論集では、ヴォネガット、バチガルピ、上田早夕里(敬称略)等が扱われているとのこと。もともとエコクリティシズムは「文学と自然環境の関係についての批評」を意味するようだが、論集である「エコクリティシズムの波を越えて」のサブタイトルは「人新世の地球を生きる」になっている。「人新世」とは、ノーベル化学賞受賞者パウル・クルッツェンらの言う人間登場以降の歴史のこと。そこには人の営みから切り離されたものとして「自然環境」を捉えることはもはやできないという認識が強く表れているように思う。

(注釈4)
「ヴァレンハレル」の方の原稿料は、「利益が出たら分配するね」なので、とりあえず印刷物はもらったものの、手元には入ってきていない。一方、「Ospray's Sky」は,ワードあたり8セントの原稿料が出ている。この8セントというのは、僕が寄稿した時点では、大きな意味のある数字だった。アメリカのSF作家クラブであるSFWAは,少し前までは入会基準が厳しく、単著であれば特定の版元からの出版ではないと入会資格を満たすための実績として認めないし、雑誌掲載ではワード8セント以上で3作合計○○ドル(←忘れました)以上でなければ認めなかった。このワード8セントも、過去からじわじわと上がってきていて、もしかすると作家の地位向上のためのレバレージに使っているのかとも思っていたのだが、最近になって、その基準が撤廃され、商業出版の単著であれば版元を問わず、雑誌等であれば累積金額の基準をいたせば良いとなったらしい。媒体の多様化に対応するとともに、組織の裾野の拡大を図っているのかな、という印象。
Reckoningやヴァレンバレルの掲載された「Chankey with Ketchuap」を出したWolfsinger Publicationに限らず、英語圏のSF&Fの出版はポッドキャストのようなものを含めて多様化している。チャンスはどこにでも転がっているのだ。

初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9656

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2024年5月2日木曜日

『Whether the Cat is Black or White』刊行までの裏話 FT新聞 No.4117

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『Whether the Cat is Black or White』刊行までの裏話
 岡和田晃

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 世界で2番目に古いRPG『トンネルズ&トロールズ』(1975年〜)のデザイナー、ケン・セント・アンドレの出版社Trollgodfather Pressより、2024年4月末にラヴクラフト・ヴァリアントのソロアドベンチャー『Whether the Cat is Black or White』(著:岡和田晃・石川あやね、協力:水波流、イラスト:Don-Chang)が発売されました。
 これは2023年に「FT新聞」No.3910にて非営利で発表された「黒い猫でも白い猫でも」を、私が英語に自己翻訳したもので、多人数用シナリオ「ドルイドの末裔」(「ウォーロック・マガジン」Vol.5、2019年)の自己翻訳による英語版『The Descendants of the Druids』(著:岡和田晃・豊田奏太、協力:仲知喜、イラスト:Don-Chang、2023年)に続く、Trollgodfather Pressからの第2作になります。

 そもそも英訳をしようと思ったきっかけは、2つあります。1つ目は、「FT新聞」にも登場いただいた伊野隆之さんが、自作の英訳に精力的に取り組んでおられるという話でありました。ストーリーゲームをも含めた日本の文芸マーケットが頭打ちになっていると、かねてから指摘されています。必ずしもそれを真に受ける必要はないにせよ、発表のチャンネルは多様な方がよいのは事実。英語で発表すれば、私が日頃から感じている閉塞感が、少しでも拭えるのではないかと考えていた矢先──伊野さんが次々と、自作を英語のウェブジンやアンソロジーに発表しているではありませんか! 思い返せば、ユキミ・オガワさんのように日本語のネイティヴなのに英語でのみ作品発表をする作家すら出てきている現状、座して翻訳者が現れるのを待つのは時代遅れで、Do it yourselfの精神こそが大事になっているようにも思います。
 
 2つ目は、私が編集に参加している「SF Prologue Wave」で、国領昭彦さんによる巨匠J・G・バラードの英文インタビューを掲載したこと(https://prologuewave.club/archives/9143)。こちらは、既存のバラード・インタビュー集には未収録のもので、国領さんが書き下ろした英語の序文の校閲には私も参加しています。同作は英語圏のバラード・ファンのコミュニティ(バラーディアンと言います)でたびたび話題になっており、英語で発表することの強みを、否が応でも感じさせるものとなっていました。
 
 折しも、『トンネルズ&トロールズ』の版権が、フライング・バッファロー社からウェッブド・スフィア社、さらにはリベリオン・アンプラグド社に移行し、次なる展開が待たれている一方で、ケン・セント・アンドレやスティーヴ・クロンプトンらのデザイナー陣は、自身に版権がある『モンスター!モンスター!TRPG』(1976年〜)の新作を精力的に打ち出しています。
 他方、トム・プーは、デザイナーのグレン・ラーマンから『ラヴクラフト・ヴァリアント』(1980年)の版権を購入し、クロンプトンの序文を添えた『The Lovecraft Variant』として2023年にリプリントしていますが、注目すべきは基幹のゲームエンジンは『モンスター!モンスター!TRPG』に変更されていること。このタイミングを逃す手はありません。
 
 さっそく関係各位に許諾を取り、翻訳作業に着手したのが2023年の2月。他の仕事を多数抱えていたことから、「ドルイドの末裔」の英訳は、他の仕事が煮詰まっているときに、気分転換を兼ねて進めることにしているため、完成したのは6月でした。
 ケンには、『Ken St. Andre's Monsterary of Zimrala』(2022年)に寄稿したときに編集を担当してもらったことがあります。このときは私がコロナ・ウイルスに罹患してダウンしているさなかだったにもかかわらず、懇切丁寧に対応してもらったので、今回もケンに直接持ち込みを行いました。
 
 ただ、翻訳そのものに苦労らしい苦労はありません。「ドルイドの末裔」は、舞台こそスコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島という珍しいものでしたが、基本となる構造は、シンプルなダンジョン探索だったからです。なぜスコットランドを舞台にしたかというと、原案となった豊田奏太さんのレポートが提出された回の拙ゲームデザイン講義においては、スコティッシュ・ケルトの作家フィオナ・マクラウドの小説を講読していたからですね。設定面では、H・P・ラヴクラフトやブラム・ストーカー、エミリー・ブロンテといった古典文学への参照を強化したうえで、仲知喜さんの意見を受けて大枠となる設定を組み直しましたが、基幹となる屋敷の構造そのものは、豊田さんの原案を尊重した形にしています。
 
 文章についても、初出時から一文一文を読みやすく整理していたので、それを英語に訳すことは、さほど難しいものではありませんでした。ゲームタームのブレを削り、日本語では省略される主語をきちんと打ち出すことを目指したのです。Don-Changさんには、地図の書き文字を英語に直してもらい、初出時にはモノクロだったイラストをカラーリングしてもらいました。
 『The Descendants of the Druids』のレイアウトは、ケンの「ゾルのモンスター迷宮」(「GMウォーロック」Vol.2、2021年)でもお馴染み、デイヴィッド・A・ウラリーに担当してもらいました。ケンとデイヴィッドのセンスによる著者紹介群は爆笑ものですので、ぜひご自分の目でご確認ください。
 幸い、『The Descendants of the Druids』の出版は東海大学文芸創作学科のニュースとしても取り上げられ(https://www.u-tokai.ac.jp/ud-cultural-and-social-studies/news/12502/)、入学説明会で言及があると、会場の空気が変わるといいます。
 
 驚いたのは、『The Descendants of the Druids』に支払われた印税でした。英語圏では小説のマーケットは多々ありますが、多くが無料で読めるもののためか、支払われる原稿料は決して多くはありません。単行本化しても、一定ラインに達するまで、支払いがないというのも普通です。
 ところが、『The Descendants of the Druids』も、3ドル99セントと廉価で売られているうえ、関係者で按分しているにもかかわらず、支払われた額は予想以上だったのです。もちろん、金額としては大騒ぎするほどのものではありませんが、レート換算をするならば、かつてアメリカSF作家協会が設けていた入会基準のラインを超えているように思いました。これは短編でも、Drive Thru RPGで単体作として売られることで、著者サイドへ還元される割合が高い、ということであるように思います。英語で発表すれば、北米やヨーロッパだけではなく、カナダやオーストラリア、さらにはアジア圏をも含めた世界各地の読者へ届くということが、しっかり確認できました。
 何より、T&T系ファンダムや個別読者の反応や、版元がつけてくれた紹介文から、『The Descendants of the Druids』に仕込んでいた古典文学へのオマージュが伝わっているという手応えがあったのも嬉しいところです。
 
 気を良くした私は、さっそく次作の英訳に取り組むことにしました。「黒い猫でも白い猫でも」を選んだのは、エドガー・アラン・ポーを下敷きにした構造が、英語圏にも伝わりやすいだろうと考えたためですが、多人数用のシナリオを発表したので、次はソロを、という思いもありました。
 今回は二人称のソロアドベンチャーなので、より狭義の小説に近くなります。まずは、どう考えても伝わらないだろう、という部分を置き換えるところから始まりました。「FT新聞」での配信直後に、すぐさま読者に見抜かれてしまいましたが、「黒い猫でも白い猫でも」には、カルト的な人気を誇るファミコンの怪作アドベンチャー『東方見文禄』(1988年)へのオマージュを入れ込んでいたのですが、私の知る限り『東方見文録』は英訳されていないので、そのまま訳しても意味不明だと思い、別のネタに差し替えざるをえませんでした。また、T&Tの地名とのリンクもあったのですが、M!M!がベースなので、そちらも差し替え。
 キャラクターの名称では「ケルベロス」に悩みました。「Cerberus」表記が原語に近いものの、作品によっては「Kerberos」表記の場合もある。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1974年〜)の「Demon」が、『ウォーハンマーRPG』(1985年〜)では「Deamon」になるようなものですが、ここは安牌をとって「Cerberus」表記に。

 「The Descendants of the Druids」より分量はあったのですが、前よりもだいぶ早いペースで翻訳を進められました。私は現代詩作家でもあるのですが、「The Descendants of the Druidsと同時期に、アフガニスタンでタリバン政権により実際になされた詩の禁止に抗うテーマで、はじめて英語の詩を書き下ろしており(「The Death of Democracy」)、それがフランス語に訳されてフランスの出版社から出るという僥倖に恵まれました(セシル・ウムアニ監訳『Nulle prison n' enfermera ton poeme』収録【※poemeの最初のeにはアクサンテギュ】、Oxybia、2023年)。拙作のフランス語訳はかなり正確だったので、英訳の力を感じたものです。それが自信につながり、コツがつかめたのかもしれません。
 英訳にあたっては、何人かの方々に違和感がないか簡単なチェックをしてもらって微調整をしました。協力をいただいた方々については、『ラヴクラフト・ヴァリアント』紹介の先駆者や「The Descendants of the Druids」を取り上げてくださった方々とともに、Special Thanksにお名前を入れています。イラストレーターのDonさんにまでチェックをしてもらい、大きなバグを指摘していただいたのは、ここだけの秘密です(笑)。
 
 英語版タイトルは、最初は『Black Cat or White Cat』としていましたが、英語に堪能な吉里川べおさんに相談したところ、やはり、それでは味気ないと。思い返せば、もともと石川あやねさんの原案の段階では、タイトルは「黒猫」でした。それを「黒い猫でも白猫でも」としたのは、次のような理由によります。
 拙講義の課題の段階では、何らかの下敷きを用いたうえで創作を行うように指導していました。さもなければ、学生は往々にして、自分の知らないものを学ぶのではなく、身近な題材で小さくまとまってしまいがちになるからです。
 趣味で作るのであればそれでもかまいませんが、大学の講義である以上、プラスアルファの学びが必要です。そこで出てきたのが、講義内でしばしば読む、ポーの短編に引っ掛けたもの。ただ、内容を見るに、ポーを読んでいれば、一瞬にして「元ネタ」がわかるわけで、かえってミスリードにもなると考えました。
 そこで、ソロアドベンチャー内にも出てくる「白猫」をも含めたタイトル改善案を考えていたとき、トウ小平の有名なセリフが思い浮んだのです(「※トウ」は登へんにおおざと)。「白い猫でも黒い猫でも、鼠をとるのがよい猫だ」というものですね。
 本作のイメージとトウ小平は縁もゆかりもないものですが、だからこそ、かえって使えると思いました。トウ小平の台詞は、改革開放の正当化と受け止められることが多いのですが、言わんとすることは、要するにプラグマティズム(功利主義、実利主義)です。ソ連側の計画経済一辺倒でも、アメリカ式の自由主義経済一色でもなく、使えるものは使ってやろう、ということで、いうならば中国共産党の自立主義を謳ったもの。
 ただ、自立主義といっても、李大ショウ(※ショウは金へんにりっとう)が打ち立てた頃の中国共産党の理念と、トウ小平の頃の状況、もちろん2024年現在における中国共産党の実情は、それぞれ異なります。実際、今回の話はテクスチャーとして中国共産党とは一切関係なく、そう深読みするのも不可能です。そうすると生まれる文脈は、トウ小平をめぐる状況を離れた「プラグマティズム」そのものとなります。
 RPGにおけるプレイヤー・キャラクターは、基本的に、功利主義的に振る舞います。誰がいいか悪いかは関係なく、要は自分が生き延びて、より多くのお金をもらえればそれでよい、ということです。それが確保できてはじめて、願わくば人道的に振る舞いたい、と思うのではないでしょうか。しかし、今回のソロアドベンチャーは、実のところ、何が利益になるのかが、一見して見えづらい構成になっています。生死すらもが曖昧です。
 それゆえ、「白い猫でも黒い猫でも、鼠をとるのがよい猫だ」という常套句が、プレイをしているうちに、一種のアイロニーとしてプレイヤー側に響いてきます。そうすると、今回のタイトルは、「黒い猫でも白い猫でも(鼠をとるのがよい猫だ)」ではなく、「黒い猫でも白い猫でも……?!」と読むのが正解だとプレイしながらわかってきます。つまり、本作のタイトルは、マルチエンディング性を示唆しているのです。ゆえに、イマドキの分岐性をはっきり出すためにも、「Whether」から始まるのは外せない、と……。
 
 こうして初稿を仕上げ、ケンに送ったところ、まず、パラグラフ構成が単調すぎるという指摘がありました。もとの日本語版は、杉本=ヨハネさんが「Role&Roll」掲載のT&Tソロアドベンチャー(現在は『トラブル in トロールワールド』、書苑新社、2018年で読めます)にて本格的に導入した「1-1」、「1-2」と、2つの数字から構成され、ジャンプ先が比較的近いパラグラフになるという構成をとっていました。これは、ソロアドベンチャーが狭義のゲームブックよりも複雑な数値処理を要することを勘案しての処理で、事前に読んでいた方々は異口同音にこちらがよいと言われますが、ケンからは、英語の読者にとっては単純すぎると。しかも、3部構成では短すぎるということで、パラグラフを41パラグラフから60パラグラフまで増補したうえで、本格的なリシャッフルを行い、パラグラフ・アドベンチャーとしても楽しめるようにしました。
 
 次に、本作は叙述トリックのような仕掛けを用いています。叙述トリックとはミステリ小説の用語で、物理トリックではなくナラティヴのあり方によって、作者や語り手が読者を引っ掛けようとする技術のことを指します。アガサ・クリスティの有名作をはじめ、積極的に使われてはいるものの、英語での定訳はありません。イギリス文学を専門とし、最近では『一つの指輪:指輪物語TRPG』(ホビージャパン、2023年〜)がらみの企画でも著名な高橋勇さんから、「"narrative deception"とか"rhetoric of deception"なんかが近いと思います」というアドバイスをいただき、ケンにはnarrative deceptionの技術を用いたと説明して一定の理解は得たものの、やはり、英語圏の読者には不親切かもしれないと言われ、周辺の文脈を強化することで対応を行いました。
 
 次に、細かな指摘もありました。いくつかデータ処理の英訳や、館内での移動を処理する際に、ケアレスミスが残っていたのです。それらを直したわけですが、1つ紹介すると、例えば、「6のゾロ目」を「snake eyes」と表現していたこと。私が完全に誤解していたのですが、「snake eyes」は「1のゾロ目」のときしか言わないのですね。こういう箇所をすべて修正しました。
 また、ケンからは、「どうも文章が素朴すぎる」という指摘も受けましたが、これは日本語版が改行を多用していたからのようです。日本語版では、ゲームバランス調整については、水波流さんのご協力をいただき、その修正を受けたうえで、私が石川あやねさんの原文の修正を1行単位で行ってきたことから、読みやすさを優先して改行を増やしていたのですけれども、英語圏での小説の規範はチャールズ・ディケンズやヘンリー・ジェイムズ等の19世紀小説というわけで、逆に文章が痩せて見えると。ゆえに、改行を減らして説明を増やす形でカバーしました。
 ソロアドベンチャーは狭義の小説により近いということから、日本語での語りにおいては、二人称と一人称的な視点を織り交ぜ、また現在形と過去形を織り交ぜて「プレイヤー視点の現在」を表現していましたが、英語では混乱するとも言われたので、回想シーン以外は現在形、全体の地の文を二人称に統一しました。
 英語版ではサンプル・キャラクターを『The Descendants of the Druids』に登場したフィオナのその後という形に設定し直し、Donさんにイラストを描き下ろしてもらいましたが、ケンからは、プレイヤー・キャラクターが女性ならばきちんと明記すべきと言われ、ジェンダーについても明確化しました。主人公は女性(she/her)、恋人は男性(he/him)で統一。加えて、黒猫のプルートーは雄(he/him)、白猫のエルは雌(she/her)に設定し、人称も書き分けていましたが、こちらも動物ということで「it」に統一。
 その代わり、序文に、あなた性自認や性的指向を束縛するものではないので、望むのなら登場人物のジェンダーを好きなように読み替えてかまわない、との但し書きを添えることで、多様性を意識した配慮を行いました。
 
 それで、当初、ケンからは「この英語ではマズいからこちらで手を入れて、あとで差分から学んでほしい」とも言われていたのですが(涙)、最終的には直接書き直しをされることなくOKがもらえ、「このソロアドベンチャーには、ゲーマー向けの冒険にはめったに見受けられない心理的な深みが描かれている」とお褒めの言葉を頂戴しました。編集のデイヴィッド・ウラリーに、全体を調整してもらい、きれいなレイアウトでの出版が実現したという流れになります。ちなみに、パスした原稿は第4校です。
 編集者としての立場からすれば、著者に8校や10校まで直してもらうのもそう珍しくないとはいえ、少々手間をかけてしまった感は否めません。ちなみにTrollgodfather Pressでは、ゲラを直すという機会はなく、そのまま割り付けが行われるので、提出時にしっかりした原稿へと仕上げておく必要があります。タイトルと著者名の日本語が添えられているのは、さりげなく日本人作であることをアピールしたい、という意図によるようで、ケンに訊かれて日本語の綴りをレクチャーさせてもらいました(笑)。
 Don-Changさんのイラストは描き下ろしです。表紙のカラーは新境地ですね。ケンから、「Donのイラストは最高だが、カラーリングはもっとvividな色合いでもよいかも」と言われていたので、その要望を伝えました。もともとは3枚でしたが、「もっとほしい」と言われ、追加で4枚を描き下ろしてもらいました。すでに日本人女性の読者から「Donさんの表紙が素晴らしく、Drive Thruに並んでいても違和感ありませんね」という感想が届いており、世に出せてよかったなと思います。
 
 「黒い猫でも白い猫でも」の日本語版が商業出版できるとしても、まだ先になるかもしれませんから、まずは、私たちの自信作『Whether the Cat is Black or White』へ、あたたかいご支援をいただけましたら幸いです。

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 『Whether the Cat is Black or White』
 著:岡和田晃・石川あやね 協力:水波流
 英訳:岡和田晃 イラスト:Don-Chang
 編集:ケン・セント・アンドレ、デイヴィッド・A・ウラリー
 版元:Trollgodfather Press
 価格:4ドル99セント
 Drive Thru RPGの販売ページ
 https://www.drivethrurpg.com/ja/product/479009/whether-the-cat-is-black-or-white
 
 『The Descendants of the Druids』
 著:岡和田晃・豊田奏太 協力:仲知喜
 英訳:岡和田晃 イラスト:Don-Chang
 編集:ケン・セント・アンドレ、デイヴィッド・A・ウラリー
 版元:Trollgodfather Press
 価格:3ドル99セント
 Drive Thru RPGの販売ページ
 https://www.drivethrurpg.com/ja/product/445721/The-Descendants-of-Druids


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