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2025年12月25日木曜日

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.34 FT新聞 No.4719

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.34

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●はじめに(岡和田晃)

 ゲームブックの不朽の名作『展覧会の絵』で名高い平田真夫(森山安雄)氏は、自他ともに認める熱心なSFファンで、リリカルなヴィジョンもSF的な裏付けてがあってのこそ——氏のもう一つの代表作たる『水の中、光の底』は、そのことをよく伝えてくれます。
 前回、ご紹介した「吟遊詩人」が『展覧会の絵』のスピンオフだったとしたら、今回ご紹介する「道化師」は『水の中、光の底』との連続性を感じさせる物語となっています。

 ご参考までに、「Webミステリーズ!」(現:「Web東京創元社マガジン」)に掲載された「平田真夫/森山安雄の挑戦——ゲームブック『展覧会の絵』から小説『水の中、光の底』へ」(平田真夫/森山安雄×岡和田晃)をお読みいただければ、いっそう興趣が増すと思います。
https://www.webmysteries.jp/archives/12245589.html

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オリジナル小説「道化師」
 平田真夫

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——希ガス
 周期表上の十八族に当たる、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの六つの元素。最外殻の電子が丁度八つで安定しており、化合物を作り難い気体である。その為、不活性ガスとも言う。ただし、キセノンがフッ素や酸素などと結晶性の固体になる例もある。古くは存在量が少ないと思われていた為「希ガス」と呼ばれたが、実際には空気中で三番目に多いのはアルゴンであり、それ程「希」ではない。

 夜の園内を照らす電気の明かりの下で、道化師が風船を配っている。この遊園地のあちこちで目にする赤と黄色の縦縞模様の制服、ただ、他の従業員のそれとは異なり、だぶだぶのズボンまでが同じ柄だ。帽子も被らない頭頂部の髪は綺麗に剃られており、どうみても鬘ではない。それが、道行く子供達を相手に、色取り取りの風船を手渡しては、一人一人の頭を撫でているのである。
 跨っていた馬の背中を突いて合図を送り、足を止めさせる。しばしそのまま佇んで、その仕事振りを眺めることとする。
 ヘリウムを詰められて宙に浮かぶ風船は、まだ彼の左手に何十本も残っており、幾ら子供の手に握らせてもいっかな無くなる気配が無い。というより、少しでも減っているようにすら見えなかった。まるで、配るそばから新しく増えていくみたいである。
 どうなってるのかしら。
 誰かが横に隠れて、新しい風船を膨らませながら渡しているのかとも思ったが、そのような人影は幾ら目を凝らしても見えなかった。そもそも仮にそうだとして、左手だけで受け取るのは難しかろう。そんなことをしたら、手を開いた瞬間に全部が空に逃げてしまう。
 しかし、どんなに注意深く観察してみても、風船の数は少しも変わらない。一本、又一本、子供の手に風船が渡され、辺りに色取り取りの球が漂いながら散って行く。あれでは、いずれ敷地全体に溢れ返ってしまうのではなかろうか。成程、この遊園地ではどんなことでも起こり得るのだ、と改めて思わせられる。
 そうして見ているうち、自分も風船が欲しくなった。余所見している馬の首を叩いて、道化師を指差す。馬は、解った、という風に、そちらに向かった。途中、何人かの子供達と擦れ違い、彼ら彼女らの影法師が、頭上に丸い球を漂わせながら走って行く様を目にする。
 みんな、あれを持ったまま、回転木馬や珈琲茶碗に乗るのか。多分、その時は親に預けたりするのだろう。では、独りしか居ない自分はどうしよう。
 と、その時、道化師から一本を受け取った女の子が、何の弾みか手を放してしまった。十歳にも満たなさそうな少女は、飛んで行く黄色い球を見上げ、しばし呆然とする。そして、顔を元に戻してから、肩を振るわせてしゃくり上げ始めた。周囲に満ちる客達のざわめきや音楽で声は聞こえないが、恐らく簡単には収まるまい。

↓続きは以下のPDFファイルでお読みください。
https://prologuewave.club/wp-content/uploads/2013/05/doukesi_hiratamasao.pdf

初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/3241


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2025年12月24日水曜日

第2回【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4718

第2回【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。


ぜろです。
ニナ・ガーデンハートの雪深い森の中での逃避行。
その一点に絞ったゲームブック。それがこの「ハンテッドガーデンハート」です。
スタミナと敵との距離を測りながら、最終的に逃げ切るのが目的です。
しかし、相手は手練れのハンター、ダムリス。
その追跡術と、痕跡が残りやすい雪の地では、思うようにいきません。
最初の挑戦者は、雪による自然が作り出したトラップにはまり失敗に終わりました。
2回目の挑戦となる今回は、はたして逃げ切れるのでしょうか。


【ニナ スタミナ:5 距離:2】


●アタック02-1 ニナと毛皮商人

最初の挑戦は、あえなく失敗に終わった。
再挑戦の時間だ。
主人公ニナは、末妹ミナのような時を操る魔法使いではないので、設定を追加することもなくシンプルに「やり直し」ということでプレイする。

私ニナが、雪の森を歩いている場面からだ。
背後には、追っ手ダムリスが、視認できる位置をつかず離れずついてきている。

ダムリスは、優秀なハンターで、弓の名手でもある。
弓矢で狙われるリスクを考えると、隙を見せないよう、神経をすり減らし続けなければならない。
けれども、今回射てくることはないだろうと踏んでいる。
なぜなら、ヤツらは私を無傷で手に入れたいからだ。
私の身体が目当てなのだから。

ヤツらの組織はやばい。
かつて私がいっときヤツらの手に落ちていた時のことだ。
ヤツらは、私のセミヌードの写し絵を栞にして、全国各地のイベントで頒布してしまっていたのだ。
これだけで、ヤツらの組織がどれほど危険なのか、わかっていただけたと思う。

(註:FT書房はゲームブック「盗賊剣士」を発売した頃、ニナのセミヌード栞を各種イベントで頒布していました。今もあるのかな?)

いけない。現実と妄想の区別がつかなくなってきている。神経を使いすぎて、疲れてきたのかな。

・もう少し距離を取る
・状況を受け入れる

ここの答えはもう決まっている。
今、スタミナを余分に消費してまで無理に距離を取る必要はない。
むしろヤツは、そうやって私が消耗するのを待っている。だからああやってわざわざ見える位置からプレッシャーをかけ続けている。

私はそのまま、つかず離れずの距離のまま歩き続ける。

【ニナ スタミナ:5→3 距離:2→1】

やがて、メーラの実が3個なっている木を発見。
私は1個かじり、もう1個を半分にし、ポケットに突っ込む。

【ニナ スタミナ:3→4 距離:1】

やがて、野生のポルルポルルを発見した。
私の持つメーラの実に反応したため、餌付けついでに乗りこなす。
ポルルポルルは、最初こそ戸惑ったが、おとなしく私の合図に従ってくれた。
もともと人懐こい生物だけど、もしかしたらかつて人を乗せたことがあるのかもしれない。
私はこのポルルポルルを、ポリアンナと名づけた。

このまま森を抜けられたら良かったのだけれど、ポリアンナにはそんな体力は残っていなかったみたい。
少しの距離でへばってしまった。そのまま徒歩で並んで進むこともできそうにない。
せっかく名づけて愛着を持ったのに、別れの時は思いのほか早かった。

【ニナ スタミナ:4 距離:1→3】

やがて日が沈む。
そんなとき進行方向に、焚火の明かりが見えた。
人影は3人。中年の商人に、その護衛が2人といったところか。

・焚火の方に行く
・焚火を避ける

悩ましいシチュエーションだ。
焚火の商人たちとダムリスが連携を取っている可能性は少ないだろうと思う。
私は発見されるやいなや、逃走に転じた。だからそういった時間は与えていないはずだ。
しかし、それは別としてあの商人が、ヤツらの組織と繋がっている可能性は否定できない。

私は決めた。商人と接触しよう。
商人を避け、このまま夜通し歩き続けるくらいなら、賭けてみる価値はある。

私の接近に気づいた商人は、両手を大きく広げて歓迎のポーズをした。

「エルフのお嬢さん、こんばんは。一人旅ですかな? それともこの森にお住まいで?」

敵意がないことを示してくる。
たしかに、向こうは護衛を2人連れているのだから、立場的には上だ。
先にこちらの警戒心を解いてくるあたり、商売上手なのだろうと思う。

商人は、毛皮を取り扱っているという話をし、こんな森の中で出会ったのだから、お客でなくても歓迎だ、と言う。

・事情を話してみる
・事情は黙って泊めてもらう
・やはり夜通し歩く

いくら商人の信頼性が高かろうと、ここで事情を話すは、ないな。
事情を話すということは、商人側に選択肢を与えるということだ。
私は、出会ったばかりの商人に、自分の運命を委ねようなどという趣味はない。

私は、ただ旅人であることを告げ、一緒に野営したいと申し出る。商人は快諾してくれた。
なけなしの所持金を払うことにする。商人は断ってきたが、それでも強引に握らせた。

ダムリスは襲ってはこなかった。
商人の護衛たちがいるためだ。
おかげで私は、しっかり休息を取ることができた。

あくる朝。私のスタミナは1回復していた。距離は固定で、2にリセットされている。

【ニナ スタミナ:4→5 距離:3→2】

完全にスタート時のステイタスに戻った形だ。

商人とは進む方向が違う。
私は商人と別れを告げ、歩き出す。

商人の姿が見えなくなった頃合を見計らって、ダムリスがまた、その姿を見せた。
そうしてまた、視認されながらの、徒歩の追いかけっこが、始まる。


●アタック02-2 ニナとイタチ先生

森の端の崖側に、スキー板が落ちているのを見つけたが、無視した。
崖付近は、雪はあるけれど地面はないという危険性があるから、近寄らない方が良い。

ちなみにプレイヤーの方の私は、スキー場で道の端を歩いていた友人が、ずっぽりと雪に隠れた側溝にはまりこむのを目の当たりにしたことがある。
雪地の端はそれほどに危険なのだ。

この日もそのまま、つかず離れずの追いかけっこは続く。
徐々に空腹になってきた。
とはいえ、食料はない。
あの商人に、宿泊代を握らせるついでに、少しの食料でも分けてもらっておけばよかった。

過ぎたことを嘆いても仕方がない。

私は、昨日のように木の実がなっていないかといった期待をしながら、雪を踏みしめ歩く。

やがて、前方に動くものを見つける。小動物。イタチだ。
イタチを捕獲すれば、食料になる……か?
いやいや、さばく時間も、調理する時間もないぞ?
さすがに生肉にかじりつくこともできないし。

・イタチを追いかける
・まずは動きを観察する
・先を急ぐ

私は捕まえることにはこだわっていない。
ただ追うだけでは逃げられるだろうし、動きを観察してみよう。

どうやらイタチは、私ではない何かに追われているようだった。
せわしなく走り、川に飛び込んで反対側に渡ると数歩歩き……なんと、その数歩を、同じ足跡を踏んで戻った。
そして川に入り、泳いで消えて行った。

私は思った。これは……使える!

雪の中に行きの足跡しかない殺人事件のトリックのように、同じ足跡を踏んで戻る技術。
これを覚えておけば、ほんのわずかな距離でも行き先を偽装できる可能性がある。
きっとどこかで使えるチャンスはあるはずだ。

具体的には「雪に足跡が残る」という記述に出会った際に、特に指示がなくとも、直前のパラグラフに戻れるようになるという。
もとのパラグラフには戻るが、先に歩いて行ったと見せかける足跡が残った場面に変化しているという仕掛けだ。
これは新しいアイディアだ。
こうした短編作品には、何かひとつ目を引く仕掛けを用意するものだが、これがまさにそうだと確信できる。
この「バックトラック」を活用することが勝利の鍵となるに違いない。

そんなことを考えながら歩いていたら、うっかり仕掛け罠にかかってしまった。
イノシシなんかを捕獲する時に用いる「くくり罠」だ。

見れば、木々に動物が身体をこすりつけたような痕跡があった。
どうやらこのあたり、イノシシが生息しているようだ。それで猟師が、捕獲用のくくり罠を設置していたのだろう。
イノシシは本来、温暖なところを好む動物だ。このような雪の地にいるのは珍しい。冬眠する生態ではないから。

実際、プレイヤーの居住地、静岡はイノシシによる畑の被害が多いが、岩手に住んでいた頃、あちらにはイノシシは出ないと聞いたことがある。
それにしても迷惑なのはくくり罠だ。人には罠があることを知らせるために看板等で注意喚起をしておいてくれないと。甲種狩猟免許をはく奪されてしまうよ。
それに告知しておいてくれた方が、こうやって罠を無駄にしてしまうことが減るから、実は設置者にとってもお得なはずなのだ。
くくり罠は、獣の通り道を調べ、そこに足を置くであろう場所に想定して設置する、非常にデリケートで手間のかかる罠だから。

それでも、くくり罠はトラバサミよりはやさしい。人力なら比較的たやすく外すことができる。
とはいえ、罠を外すのに時間を要した。スタミナは減らなかったが、ダムリスは距離を詰めてきている。

【ニナ スタミナ:5 距離:2→1】

やがて、丸木小屋のある小さな広場に出た。


●アタック02-3 ニナと黒ずくめの男

ダムリスとの距離は1しかない。
かなり接近されてしまった。

あの丸木小屋を前にして、考えられる取り得る行動は2つ。
入るか、無視するかだ。

入る場合、何を目的とするか。
武器になるものを探すのが一番か。
今の距離だとダムリスは、私が小屋から出た時点で待ちかまえているか、なんらかの罠を仕かけてくる可能性は高いだろう。

いや待て。煙突から煙が出ている。
誰かが住んでいるのか。
だとしたらダムリスは慎重になるだろうな。焚火の商人に近づかなかったのと同じことだ。
住人が私にとってどういう態度に出るのかは賭けだけど、私にとって選択肢はないも同じだ。
このままではジリ貧なのだから、とにかく行ってみるしかない。

小屋に近づくと、異様な雰囲気に気がついた。
扉が半開きになっている。この寒い中で? 明らかに不自然だ。
扉の影からそっと中をのぞく。

2人の男がもつれあっている。
あ、ええと、いやらしい意味ではない。
青年が、黒ずくめの男に背後から首を締め上げられているのだ。

青年と目が合った。
助けを乞うような視線だ。
青年の足もとには、矢が数本と、弓が落ちている。あれがあれば、ダムリスに対抗する武器になるだろう。

・青年を助ける
・武器を持って去る
・先を急ぐ

今の状況を整理しよう。
青年が、黒ずくめの男に襲われている。これは間違いない。
となると、この小屋に住んでいたのは青年の方か。
青年が何をやらかしたのかはわからないが、あんなに怪しげな暗殺者を差し向けられるだけのことをしたということか。
ああ、考えてみたら私も完全に立場は同じだ。
となると、この小屋が青年の家なのかも怪しい。私と同じく一時避難として利用したのかもしれない。

なんにせよ、助けるほかないな。
だいたい、今助けを求めているのは若者の方だけだ。暗殺者に手を貸しても何の見返りもないどころか、目撃者として消されかねない。
若者の素性やいきさつによっては、危険ななにかに首を突っ込んでしまう可能性はあるけれど、売れる恩は売っておかないと。

私は若者に合図を送る。
若者は、暴れ出した。

「おとなしくしろ。今さら暴れても無駄だ」

もちろん若者の動きは、丸木小屋に進入した私の動きを察知されないためだ。
私はすかさず小屋に突入し、手近にあった薪を拾い上げると、暗殺者を殴りつけた。
頭部を狙ったつもりだったが、もみあう2人に正確な一撃を食らわせるのは難しく、肩への打撃となった。

「仲間がいたとはな!」

違うけど、誤解させておけ。
2対1になったにもかかわらず、暗殺者はひるむことなく私に向けて短刀を繰り出す。
相当な自信があるのか、失敗が許されないのか。

薪で防御するが、あっさりと払われる。
こいつ、かなり戦闘慣れしている。

・スタミナが3以上
・スタミナが2以下

今の私のスタミナは、5だ。これなら、いけそうだ。
戦いは長期戦になった。とはいえ、技量は向こうが上だ。
私はやがて、床に転ばされた。暗殺者は私に馬乗りになり、短刀を振り下ろしてくる。
私はその腕をつかみ、全力で止める。しかし力の差は歴然としており、短刀の刃先がじりじりと喉元に迫ってくる。

もうダメだと思った時、暗殺者は「うっ」とうめいた。短刀にかかる力がゆるむ。
その隙に抜け出そうとしたが、その前に暗殺者の身体が私に覆いかぶさるように倒れてきた。

その向こうに立っているのは青年だ。
暗殺者は息絶えている。首筋の後ろに、矢が突き刺さっていた。青年が、矢を直接ねじり込んだのだ。

助けに入って、助けられた。
けれど、実質は私が青年を助けたということで良いのだろう。
私が助けに入らなければ、青年は命を落としていたに違いないのだから。

次回、青年の助力を得て、ダムリスに反撃か


【ニナ スタミナ:5 距離:1】


■登場人物
ニナ・ガーデンハート ガーデンハート姉妹の長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
ダムリス 非合法な組織の追っ手。ニナを狙っている。
ポリアンナ 森でニナが餌付けしたポルルポルル。空腹。
イタチ先生 ニナに雪上の足跡トラップを伝授してくれる。
青年 小屋にいた青年。暗殺者に襲われていた。
暗殺者 名探偵コナンの犯人にしか見えない黒ずくめ。

■作品情報
作品名:ハンテッドガーデンハート
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/3998135
ゲームブック短編集「ハンテッドガーデンハート」に収録されています

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2025年12月23日火曜日

『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(4) FT新聞 No.4717

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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(4)

 (明日槇 悠)
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世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第4回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。


◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……


1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、領主レーモンの次女、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
一方のセシルはコルバの追究を躱し、赤色の多く混じった布を織りながら、人間のよしなしごとに囚われているようではベルトランもまだまだだと達観していた。
完徳者同士の策謀と意地とがモンセギュール砦に交差する……。


◯プレイヤー紹介


Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。

プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244


●本編


 ■Act2.過酷なる冬(後編)
  ——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。

C「てことで、シーンを移って、Act.2の二回目。新カード、この中から一つを選んでもらってという……」
D「あ、俺ですか? うーん……じゃあこれで。【雪の積もった山の斜面を照らし出す月光】。じゃあコルバを動かしていいですか。3の質問……【あなたが一番後悔していることは何か?】」

Dコルバ「私はなんであの時……セシル様と一緒になれなかったんだろう。私たちは実は愛しあっていたというのに。でも今は……セシル様は……私の娘、エスクラルモンドと、なにやら懇ろ。許せない。娘を殺してやる」

D「ということを思っています。この怨みを燃やしているという状況ですね」
C「エスクラルモンドはそうとは知らず……」
D「知らないですね」


A「手番が俺に移るのか。【息詰まるような煙で涙が出てしまう】」

Aベルトラン「いやぁ〜、巡礼料理なんて作るもんじゃないね、ガニエル君(一同笑)。けほっ、けほっ。やはり、召使い……誰かに作ってもらうことに慣れてるんでね。私、ペルフェッチだから。あー……ところでガニエル君、今日はわざわざ、私自ら料理を作って、君に話したいことがあったんだよ」

Cガルニエ「なんでしょうか」

Aベルトラン「どうやら聞いた話によると、セシルはフィリッパのことをよく思っていないようだね」

Cガルニエ「どうやら、そのようですね……。私はよく知りませんが……」

Aベルトラン「つまり、君のお気に入りの……エスクラ……んあー……エスちゃん、エスちゃんが……(一同笑)。もう名前がややこしいんだよ、君たち! 君のお気に入りのエスちゃんのためにも……そうだね、フィリッパ姉さんと自分は仲良くないということをアピールしなきゃいけない」

Cガルニエ「ああ、確かにそうですね」

Aベルトラン「つまり、フィリッパがセシルにもっと嫌われるようにすればいい。そこでエスクラルモンドに、フィリッパが……アミエルに性的ないたずらをしたという……噂があるっていうのを言ってもらえんかね(笑)」

Cガルニエ「そ、それは……私の口からは、ど、どうにも言いづらいもの……」

Aベルトラン「そうだな! それはやめよう。フィリッパが教皇軍と内通しているとエスクラルモンドに言ってもらえんかね。これならまだ言いやすいだろう?」

Cガルニエ「な、なるほど……」

Aベルトラン「フィリッパが、『ガルニエとか付き合うのダッサー、あんなキモいやつ!』ってエスクラルモンドに言ってたって、私聞いた! フフッ、うん。君がエスクラルモンドと仲良くなれないのはフィリッパのせいもでかい。フィリッパさえいなくなればエスクラルモンドと仲良くなれる確率は高いよ、ガルニエ君」

Cガルニエ「確かに」

Aベルトラン「じゃあガルニエ君、エスクラルモンドにそう言ってくれるね」

Cガルニエ「分かりました。し、しかしエスクラルモンドが私の言うことを信じてくれるかどうかは少し、自信のないところです」

Aベルトラン「ガルニエ君! ……信じさせるんだよ……。ガルニエ君ならできるよ。君、未来の指揮官だろう?」

Cガルニエ「わ、分かりました……!」

A「え? ちなみにエスクラルモンドって誰担当でしたっけ」
C「はい」
A「で、ガルニエは?(一同笑) 大きな問題が出た! おっけおっけおっけおっけ。ガルニエは明日の朝エスクラルモンドに会うと言って、そのまま帰路についた。そして」

Aベルトラン「コルバ君! コルバ君! きみ、娘と会話する? よく」

Dコルバ「最近は……あまり」

Aベルトラン「あー。え、君の娘のエスちゃんから、フィリッパの話、聞いた?(笑)」

Dコルバ「いや、特には」

Aベルトラン「ガッ……えええ……(笑)。ガルニエぇ……。あ〜、そう。ああ〜。あ〜……いや〜、なんか……でも、あるらしいよ。セシルは、君の娘のフィリッパが、教皇軍と内通してるんじゃないかって疑ってるらしいよ」

Dコルバ「あっ、そうなんですか!」

Aベルトラン「これは大変なことだよ? 君の娘が疑われてて、もう一人の君の娘がおかしくされてるんだよ。君、セシル嫌いだよな!?」

Dコルバ「え。う、う〜ん……」

Aベルトラン「な!」

Dコルバ「いや、ん〜……。すみません、ちょっとお腹が痛いので……(一同笑)お手洗いに……」

Aベルトラン「ああ。申し訳ないけど、うんこしたら、またセシルのとこへ行ってもらえんかね」

Dコルバ「はぁ……」

A「コルバは、うんこから帰ってきた後、セシルのところへ行きました」

Dコルバ「訪ねました。コルバでございます」

B「セシルは今、いないわよ。お母さん」

D「お」
B「セシルの部屋から出てきたのは、フィリッパでした」
A「えええ!? 想定外(笑)」

Dコルバ「あら。な、なんであなたが、セシル様の館に?」

Bフィリッパ「妹に言われたの。セシルが会いたがってるって」

Dコルバ「あ、あらそう」

Bフィリッパ「だから久々に来てやったら、あのババア、つまんねえ眠たい話しやがって。私はすごく、疲れたわ」

Dコルバ「なんてこと言うの!(バシッ)セシル様に、なんてそんな失礼なことを。あなた、悔い改めなさい」

Bフィリッパ「失礼なのはどっちの方かしら」

Dコルバ「うるさいわよ!」

Bフィリッパ「ペルフェッチャになったセシルさんとお母さんがとても仲良くしていたのは、知っているわ」

Dコルバ「……だから何だって言うのよ……」

Bフィリッパ「あなたは家族じゃなくて、セシルさんのことばかり。そんなだから、うちが今、滅茶苦茶になっているんじゃない。口を開けば、セシル、セシル……(一同笑)」

Dコルバ「そんなものは私の勝手でしょ? 何しようと私の勝手でしょ! もう子育ては終わったわ!」

Bフィリッパ「あんたのせいで……私のお腹の中にいる、子供の父親は誰か分かる?」

Dコルバ「知らないわ、そんなの……」

Bフィリッパ「レーモンよ」

D「ええええ?(笑) ヤッバ……近親相姦じゃん」
A「それ、あれじゃん! 俺がやろうと思ってやらなかったやつじゃん(笑)」

Dコルバ「ああ、そう。よかったじゃない。子供ができて……」

Bフィリッパ「何が面白いんだか。でも、これでロジェの気持ちを、私に向かせられるなら……」

Dコルバ「まあ、いいわ。セシル様がいないなら、帰るわ」

D「帰りました」
A「ベルトランは寝る前に言いました」

Aベルトラン「いや〜、でも……私いらんことして、レーモン君に申し訳ないなぁ。レーモン君の家庭……私、滅茶苦茶にしちゃったかもしれんなぁ。申し訳ないなぁ〜!(一同笑)あ〜、よし! じゃあベルトランは酒のんで寝よう!」

A「ベルトランは寝た」
B「ちなみに、この父親の件は質問に書いてて」
A「そうだよね」
B「【あなたのお腹のなかにいる子どもの父親は誰か?】そんな重い質問が……」
A「てか、探偵役の意図してないところで異様なドロドロが始まってるけど。これ、マジ……カタリ派に聞かれたら殺されること言ってるでしょ」
C「姦淫だらけ……」
A「だって……怪しげなババアと権力欲にまみれたジジイと近親相姦の一家と娼婦だろ? 暫定変態だろ(笑)」
D「ガルニエ発狂しちゃいますね。エスちゃんが死んだら。今んとこ、コルバは殺す気満々ですから。実の娘を。もう、セシルにしか興味ないから」
A「っていうか、レーモン一家は厄ネタ過ぎるやろ。領主だぞ、コイツ! 言っとくけど、この城塞コイツにかかってるぞ!(一同笑)」
D「終わりだべ……」
A「てか、この一家がけっこう信仰と砦の集合みたいなところあるから」
D「アミエルの動きに注目してますね。剣の腕を磨いている真面目な少年です」
A「武器作ってるからね。でも噂によると性的いたずらをされているらしいぞ」


B「これってレーモンからですよね。【鉄錆のような血の味】。レーモンは、自分の持っている刀を久々に研ぎながら、その味を思い出していました」
A「あ、そうだ。これ一個疑問があったんだけどさ、ベルナールさ、異端審問で死刑になったって書いてあるじゃん。これ、生きてんだよね?」
C「猶予期間じゃないですか?」
D「執行されてない」
A「OK、OK。出せるわ、じゃあ」
B「レーモンは、モンセギュールをカタリ派の根城としたことを後悔していました。カタリ派のペルフェッチ、ペルフェッチャを訪れてから、彼の生活は大きく変わり、妻のコルバがセシルに傾倒し、家庭は崩壊し、そしてレーモンはフィリッパに頼まれて、ロジェを誘惑するために子供を作ってほしいと言われ、それに応じることになってしまったのです。彼等が来たことによって、その信徒はモンセギュールに訪れ、そして城塞自体は発展したのですが、それに伴う大きな代償は、彼の人生に大きく影を落としていました。レーモンはかつて、城塞の外で狩りをしていて、そのときに滑落し、左足を怪我し、それからは表に出ていなかったのですが、十字軍が辺りを包囲する状況が半年間続いている中、ついに自分の持っていた、ほとんどお飾りだった刀を持ち出し、そして再び自衛のために体を鍛えはじめました。それは彼の家庭が崩壊している中で唯一の救いとなっていました。彼が日課の素振りをしていると、そこに木で作った刀を持ったアミエルが訪れました。……ちょっと誰かアミエルをやってもらっていいですか」
A「これ変わっていいんだっけ」
C「まあまあ。実質いいことには。仕方ない場合は」
A「あ、はい。じゃあやる? アミエル。好きでしょ、アミエル」
D「やります」

Bレーモン「おお、アミエル君じゃないか。おじちゃんが剣を教えてやろうか?」

Dアミエル「ほんとぉ!? ありがとう!」

Bレーモン「ええでー」

B「レーモンは、家庭環境のヤバさから目を逸らすために、近所にいる子供に剣を教えることで自尊心を満たしています。そこに訪れたのがベルナールでした」

Cベルナール「あー……アルセンドはいないのか、ここには……」

Bレーモン「アルセンドは見てないね」

Cベルナール「ここにいるのはアミエルと、領主のレーモン様か」

Bレーモン「うん。アミエルはかなり筋がいいね。私が見てきた中でも、かなり腕が立つ少年だ。大人になった時のことが、楽しみだよ」

Cベルナール「ああ……私は死刑になるというのに(一同笑)。これがこの城塞の未来になるといいのだが」

Bレーモン「とはいえ十字軍が去れば、君の身柄もしばらくは安泰だろう。大変な立場だとは思うが、頑張りたまえ。……ところで、あのロジェという男はどうかね」

Cベルナール「はあ……。ロジェは、妻のフィリッパと寝ている様子がありません(一同笑)。私はアルセンドと寝ているから知っているのです!」

Bレーモン「フィリッパとは私の娘のことで合っているね?」

Cベルナール「そうです。あなたの娘のフィリッパを娶っていながら、あの指揮官は情婦にうつつを抜かしております」

Bレーモン「しかし彼の思いも子供がいれば変わるだろう。フィリッパは、彼の子を妊娠しているのだ」

Cベルナール「ほう……そうだったのですか。いつの間に。そんな様子はなかったというのに」

Bレーモン「彼等も仲のいい男女、何があるか分からないからね」

Cベルナール「確かにそうですな」

Bレーモン「彼に指揮を任していれば、十字軍の攻勢は留まるところを知らない」

Cベルナール「はあ……あの楽観的な男に務まるのかというのは、部下の私の口から言うのもどうかと思うのですが……その考えを改めます」

Bレーモン「彼は色情狂ではあるが、やる時はやる男だと信じている。君も周囲から彼のことを支えてやってほしい」

Cベルナール「分かりました。もうすぐ火刑に処される身ですが、それまで頑張っていきたいと思います」

Bレーモン「もし彼に信用ならないところがあれば、私の元に来て、報告をお願いするよ」

Cベルナール「分かりましたっ……」

B「レーモンはベルトランのスパイ内通者の嫌疑を聞くために、ロジェの周辺に半年間、色々当たっているが、しかし彼の決定的な証拠は出てきていない。そのことに対しても少しフラストレーションを溜めているようだった。というところで、私の手番はこんなものですが」

◯Act3.運命の決戦(前篇) に続く……


●登場人物/3つの質問

フィリッパ……コルバと領主レーモンの娘。エスクラルモンドの姉。父のいとこのピエール・ロジェと結婚している。
 1. あなたのお腹のなかにいる子どもの父親は誰か?
 2. どうしてあなたは、母のコルバと口を利かないのか?
 3. あなたがいちばん恐れていることは何か?

ベルナール・ド・サン・マルタン……ピエール・ロジェに仕える騎士の一人。留守の間に異端審問で、死刑を宣告された成人男性。
 1. どうして他の誰もあなたの馬に乗れないのか?
 2. なぜ、異端審問はあなたがいない間に行われたのか?
 3. あなたがアルセンドと寝るとき、誰のことを頭に思い浮かべるのか?


■作品情報

・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
 Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳

モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向

・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
 https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
 https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669

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2025年12月22日月曜日

☆告知と雑記☆ FT新聞 No.4716

おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
今年の冬はあまり寒さを感じません。
身体が強くなったのか、それとも暖冬なのか。
特に調べもせず、毎日を強く生きています。
今日は「告知と雑記」です。


◆『悪魔よそれをとれ』の電子書籍版が出ました!
突然ですがあなたは『悪魔よそれをとれ』をご存知でしょうか。
吉里川べおさんが書かれた、世界で2番目に古いTRPG「トンネルズ&トロールズ」のコラム集です。
「世界で2番目にディープなT&Tコラム」という二つ名を持つこの本は、発売から数日で完売となり、その後ずっと絶版のままでした。
いろいろありまして、それの電子書籍版が昨晩、思い出したかのように突如として爆誕したのです☆

https://ftbooks.booth.pm/items/3755062


◆何があったのか、だって?
どうして突然、2年以上も前に出した本を出すのかと言いますと。
最近、電子書籍も充実させたいなって、思っているんです。
いきなり関係なさげな話からはじまるんですが、FT書房では最近、B5版の作品が増えました。
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」と「モンスター!モンスター!TRPG」を展開している都合上、そうなっています。
数年前までは文庫本型のゲームブックが多かったので、これはちょっとした変化です。
この変化がもたらした〈できごと〉は、ふたつあります。

ひとつは、イベントで本を売る際に、ちょっと手狭(てぜま)な時があること。
文庫本よりもかなり大きいので、ズラリと並べると作品をすべて置くことができなくて、取捨選択が必要な事態に陥ることがしばしばあります。
もうひとつは、在庫となる段ボールの数が以前よりも遥かに多くなり、本を置く場所に困りつつあることです。
たとえば『アランツァクリーチャー事典』を出した際などには、16箱の段ボールが届きました(余談ですが、もうすぐ完売します。ありがとう)。
在庫本は中山将平と私の家にそれぞれ置いていますが、それぞれの家でそれぞれの段ボールが、独特の圧を放ちはじめています。


◆『混沌の迷宮』の話をしよう。
さて、在庫が空間を圧迫するとき、本当に苦痛となるのは「売れていないもの(デッドストック)」の存在です。
私の家でひときわ負の存在感を放っているのは『混沌の迷宮』です。
この本は16年前に私が出した作品で、イラストレーターはケロリという名前で載っています。
このケロリという人は、ケロちゃんという友人でもあったのですが、後に佐野菜見という名前で漫画家デビューを果たします。
その後『坂本ですが?』『ミギとダリ』といったヒット作を描き、2023年の夏に亡くなりました。

私よりも10歳以上は若かったので、ショックでした。
そんな彼女を偲んで、社長の独断で『混沌の迷宮』をまあまあの部数、再印刷したんです。
個人的な思いで再版しただけで、特に読者からの求めがあったわけではありません。
だから、ずっと売れ残っています。
実をいうと『混沌の迷宮』はもともと、自家製本という手法で作ったものしか存在しませんでした。
自分たちの手で作った、いわば「手づくり本」のみだったわけです。
それもあって、古い作品でしたが「きちんと製本されたもの」を墓前に供えたいという思いから、ご焼香に伺うまでの間に「製本したバージョン」をこしらえたという流れです。

後悔はまったくしていないんです。
私自身が、製本されたバージョンを欲しかった。
ご遺族にも、そのバージョンを渡せました。
でも、どう考えても、段ボール2箱は少なくして良かったんじゃないかと、家に積み上げられていっこうに減らない『混沌の迷宮』を見て、思っています。


◆そうだね、絶版したら電子だよね。
そんな経験を通じて、つくづく感じているんです。
「絶版になった本を安易に再版しない。電子書籍に移行する、それが大人だ」って。

またもや離れたところから話がはじまるんですが、先日、スティーブ・クロンプトンが来日しました。
その際に集結したファンが、クロンプトン氏にいくつかの本をプレゼントしたんです。
そのなかに『悪魔よそれをとれ』が混じっていまして。
その本が海を越えてケン・セント・アンドレの手もとまで届き、絶賛されたとのことでして。
そうなると、復刊したくなるわけです。
「あーダメダメ、在庫に押し潰されてしまうよ!」
という理性の声に従って、電子書籍版を出したわけです。


◆『〈四猫亭〉の幽霊』の電子版も出たよ!
1年越しとなってしまいましたが、『〈四猫亭〉の幽霊』の電子書籍版も登場しました!
お待たせしてしまい、申し訳ありません☆

https://ftbooks.booth.pm/items/5538872


本日はこれにて。
それではまた!


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2025年12月21日日曜日

読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第11回解答編 FT新聞 No.4715

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読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第11回(解答編)

かなでひびき
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 はろにちわー!
 初めての方は、はじめまして!
 おなじみの方は、毎度!
 火曜日の記事『これはゲームブックなのですか?』にて、掲載させていただいてる、ヴァーチャル図書委員長かなでひびきですぅ!
 かなでが集めてきた「謎だけ」で答えのないお話に、オチを付けていただくというこの企画!

 今回のお話は、「われらが冒険者、ピンチ君の前に立ちふさがる税関。何とかしてこの女の子を見返りに請求するエロ税関をごまかし、犠牲者を出さずに突破する方法を考えて欲しい」
 って話だったよねー!
 そして、応募していただいた皆様、ありがとうございます!
 早速、紹介していっちゃうね!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

『女の子に厳しい税関』(解答編)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 
(ポール・ブリッツさん)

「仕方がない、残りましょう」
 ぼくが答えると、やつはいやらしい笑みを浮かべながらぼくの腕をつかんだ。だが、ぼくはそこを柔術の技で逆に押さえ込んだ。
「法に刃向かうのか!」
 と叫ぶ声にぼくはさらに大きな声で返した。
「収賄の罪で現行犯逮捕する! このものは、おそれ多くも国税を見逃し、そして代価として賄賂をわたくししようとした大罪人であるぞ!」
 周囲の人々は大笑いしながらロープとぞうきんを貸してくれたので、ぼくはそのままやつに縄をかけ猿轡をかました。こいつは番人としてよほど専横がひどかったらしい。恨まれるようなことしてるからいざというときこうなるんだぜ。

 ぼくは贈賄罪にならなかったのかって?
 その点に抜かりのあるぼくじゃない。もちろん公爵から、事前に公領の外交官身分をもらっていたから、ぼくは罪には問われないんだ。人間三人を入れられる外交官郵袋があったらもっと楽だったんだけど、高望みをしても仕方ないし、きれいに片付いたので万事オーライってことで……。


+++++++++++++

(かなでコメント)
なるほどねー。うまいこと法の抜け穴を熟知してますねー。
そして、本当にありがとうございます。ポール・ブリッツさん
次にあげる二作目も作ってくれました!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(ポール・ブリッツさん)

「番人さん、あなたのお名前は?」
「ゴルディアスですが」
「えい面倒なり」

 ぼくは一刀のもとにやつを切り伏せた。
 こうして窮地を脱したぼくは、その後大帝国を築くことになるのだがそれはまた別の話。

+++++++++++++

(かなでコメント)
キレッキレです!
浅学ながら、「ゴルディアス」のこと知らなかったので、ググってみました!
なるほど「ゴルディアスの結び目」で「快刀乱麻を断つ」みたいな意味だったんですねー。
勉強になるし、こういうギャグ、大好きです。
センスあるユーモアとちらりと見せる博学に脱帽いたしました!


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 
(ジャラル アフサラールさん)

「じゃあボクが残ります。」
アブラギッシュ(仮名)は喜んで3人娘を通過させた後、僕のいる別室のベットに行き…。
「ああ、上手くいった。」
僕は人形相手に腰を振り続けるアブラギッシュ(仮名)を置いて関所を出た。部屋には強力な麻薬が充満しており、僕が「変わり身の術」用にいつも持ち歩いている傀儡人形を麻薬の効果で僕と思い込んだアブラギッシュ(仮名)は死ぬまで腰を振り続けるだろう。傀儡人形は出来が良いので置いていくのは残念だったが。

後年、僕の傀儡人形をモデルにした模造品があの国で販売されているのを知って複雑な気分になった僕だった。

<End>

今回の人形と麻薬は手塚治虫先生の大人向けサスペンス漫画『地球を呑む』にアイデア頂きました。世界に人造皮膚と無尽蔵の金塊で復讐しようとするゼフィルス7姉妹が男性を篭絡してベットインする時に人造皮膚製の人形と麻薬なのです。手塚先生は失敗作扱いされていますが、なかなかの佳作だと思います。

+++++++++++++

(かなでコメント)
なるほどねー。因果応報というか、欲におぼれすぎるというか、なかなか手の込んだ仕掛けですねー。
まさに「死の抱擁!」ってところもそそります。
勧善懲悪エンドなのもすかっとしますねー!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(忍者福島さん)

「それでは仕方ありませんねえ、こちらの別室へどうぞ」
と言われて、男に連れていかれた僕。

〜30分後〜

「ハァ…ハァ…どうぞ、この関所をお通りください…それどころか、また来てくれるなら関税もお返しします。というか、また来てください!」
こうしてぼく達は無事関所を通過することができたのだった。

え?別室で何があったのかって?
いや、太ってる体形であまりにも肩や腰がこってる感じだったから、僕が得意のマッサージでもみほぐしてあげたら一発で解消ってもんさ。
ぼくの魅惑のマッサージテクニック、あなたも味わってみませんか?

(注:この物語は全年齢向けの健全な物語です)

+++++++++++++

(かなでコメント)
えっちっち?に誘導しておいて、実は健全! というのが、いい意味で80年代ギャグをほうふつさせます!
しかし、ピンチ君、意外な特技を持っているものですねー!
いろんな意味でキャッキャウフフですねー。
かなでも受けてみたく候!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(ヴェルサリウス28世さん)

「最近こんなものを手に入れたんですが、これは一体何ですか」
「ああ、これは東方の島国のカードゲームのアイテムだな。この読み札にある歌詞をゲームマスターが読み上げて、プレイヤーが歌詞の後半が書かれた取り札を取る遊びだ」
「何て書いてあるんです」
「うむ、1枚目のカードには、『よをこめてとりのそらねははかるともよにあふさかのせきはゆるさし』と書いてある」
「どういう意味ですか」
「これは、かの美形英雄、エルフ・ザ・ピンチの冒険譚を歌った歌だ。

あるとき、エルフ・ザ・ピンチは悪党に捕われた公爵令嬢を見事救い出したが、無事に帰るには関所を通り抜けなければならなかった。
ここは例の素顔を見せてでも突破しなければならないか、いやそれをすると騒ぎが起こって面倒だ。
そこで口を開いたのが公爵令嬢と一緒に救い出した女の一人で名を鳥野(とりの)ソラネ。鶏の鳴き真似が得意だという公爵令嬢の護衛の一人だ。
姫様はこの奥に隠れていてください、と公爵令嬢を馬車の奥に押し籠めると、もう一人の護衛とともに身を潜め、

クック・ア・ドゥードゥル・ドゥー

と見事な鶏の鳴き真似をした。
エルフ・ザ・ピンチは関所の男に、ほら、馬車に積んでるのは鶏ですよ、とかなんとか言ってごまかそうとしたが、関所の男は騙されずに馬車の中を見せろと迫った。ああ、私はこの関所を超えて家に戻ることは許されないのか、一行の運命やいかに、でこの歌は終わる」
「次回に続くクリフハンガーというわけですね。『よをこめて』というのは何ですか」
「公爵家といえば公侯伯子男の序列第1位。王女を嫁に迎えるような家柄だ。このアル・ポカネ家の公爵令嬢も王位継承権を持つようなお姫様で、長じて運命のいたずらで遂には女王となった。
女王となったのち、幼い頃に護衛と一緒に過ごした日々をなつかしんで歌ったのがこの歌だ。なので一人称が『予』。
『予を籠めて』、つまり私を馬車の奥に押し籠めて鳥野ソラネがはかりごとを謀ったが、予が関所を超えることは許されないのか、『鳥野ソラネは謀るとも、予にアフサカの関は許さじ』というわけだ」
「アフサカの関ってのは何ですか」
「アフサカというのはこの関所を守る関守の名だ。この回ではまだ登場しないが次の回で重要な役割を演じる」
「次の回って、この2枚目のカードですか」
「これや!」
「うわっ、びっくりした。何ですかいきなり」
「いや、この2枚目のカードの歌い出しだ。『これやこのゆくもかへるもわかれてはしるもしらぬもあふさかのせき』」
「その意味は」
「鳥野ソラネの作戦は失敗した。次に作戦を立てたのはもう一人の護衛、湯雲(ゆくも)カエルだ。こちらはまるで犬のように盗みを得意としていた」
「犬って盗みが得意なんですか」
「無くなったと思ったものが犬小屋だったり土の中だったりで見つかったということがあるだろう。まあそんなものだと思いなさい。

さてこの湯雲カエル、関所に並んでいる僧侶の一行から人数分の許可証を掏り取ると、こうまくし立てた。

『あたしたちは神に操を捧げた聖職者。今後も子を産んで生殖することはございませぬ。よって未来の子のための特別関税は課税されないはず。
あたしたちは恐れ多くも東方皇帝の命を受け、先の戦争で焼失した神殿再建のためのクラウドファンディングで諸国を回るもの。咎め立てすれば東方皇帝が黙っておりませぬぞ』

『なに神殿再建のクラウドファンディングと。ならばそれを依頼する勧進帳をお持ちであろう』と関守」

「勧進帳って何ですか」
「『勧進』というのは、東方の僧侶が、寺院の建立などのためにその費用を奉納させることをいう。このときも少し前の戦争で焼失した神殿再建ためのクラウドファンディングを募り、勧進の目的について書かれた『勧進帳』を持って諸国を回っていた。
もとより勧進帳のあらばこそ。湯雲カエルは背負い袋に入っていた白紙の巻物を取り出すと、あたかも勧進帳に見立てて朗々と読み上げた」

「すごいですね。Aパートをみるとまだ幼女でしょう」
「『衣装のところどころから見える手足は、女豹のようにしなやかでしっかりしている』ともあっただろう。後の女王になるような公爵令嬢の護衛にえらべれるような少女だ。あらゆる武芸と知識を叩き込まれていたのだろう。

関守アフサカは湯雲カエルの勢いに押され、思わず関所を通してしまう。
しかし実は、私が公爵令嬢だと知っていて通したのではなかっただろうか。アフサカは知っていたのか、知らなかったのか。
女王は、のちに公爵家を出て王家に入り、湯雲カエルと別れた後も、これ、この出来事が生涯で一番記憶に残っていると振り返った。

『これやこの、湯雲カエルも別れては、知るも知らぬも、アフサカの関』」

=======================

落語の『千早振る』パターンの百人一首解釈もの。「筑波嶺の」を解釈する『陽成院』という落語もある。

夜をこめて鳥の空音は謀るとも よに逢坂の関は許さじ:小倉百人一首第62番。清少納言の歌。『後拾遺和歌集』より。

藤原行成(972〜1028)が清少納言(966頃〜1025頃)と夜遅くまで話し込んで、途中で帰った後に「鶏の声にせきたてられて」と言い訳をしたのに対し、孟嘗君を通した函谷関の関守は鳴き真似に騙されても、逢坂の関(清少納言と会うこと)は許さない、と詠んだ歌。

清少納言(966頃〜1025頃)は、平安時代の女房、作家、歌人。一条天皇(在位986〜1011)の中宮・藤原定子(ていし。976〜1001)に仕え、随筆『枕草子』を書いた。

本作の公爵令嬢は僧を装い女を否定したが、清少納言には、源頼光が清原致信(きよはらのむねのぶ。?〜1017)を討った際、僧形をしていたため(男の)僧兵と思われて殺されそうになり、女性であることを示して逃れたという伝承がある(源顕兼『古事談』「清少納言、開を出だす事」)。

鶏鳴狗盗:中国の戦国時代、斉の孟嘗君(?〜−279)が秦の昭襄王(在位−306〜−251)のもとから脱出しようとした際、昭襄王に献上した「狐白裘」(狐の毛皮の衣)が必要となった。孟嘗君の食客に狗盗(犬のようにすばしこく盗むこと)を得意とする者がおり、狐白裘を盗んできた。また函谷関が開くのは一番鶏が鳴いてからであったが、食客に鶏鳴(鶏の鳴き真似)を得意とする者がおり、彼が鶏の鳴き真似をすると本物の鶏もつられて鳴き始め、函谷関が開き、孟嘗君は脱出に成功した(司馬遷『史記』孟嘗君伝)。

清少納言の歌もこれを踏まえたもの。

本作でも1人を鶏鳴を得意とする『鳥野ソラネ』としたため、それならもう1人は狗盗を得意とする者とした。

鳥野ソラネ:架空のキャラクターやVチューバーに同名は見当たらない。ペンネームに使っている人はいるようだ。

出題編で最初にしゃべっている、まだ幼さが残る、というか幼い女の子が鳥野ソラネ、女豹のようにしなやかでしっかりしている踊り子の服の女の子が湯雲カエル、最後の品の良さそうな少女が公爵令嬢である。なんでヴィオラを背負っていたのかは知らん。

アル・ポカネ:アル・カポネ(1899〜1947)は米国のギャング。本名アルフォンス・ガブリエル・カポネ。本作のアル・ポカネ家は由緒正しい公爵家という設定。

公爵令嬢:イギリスのヴィクトリア女王(在位1877〜1901)は、イギリス王ジョージ3世の王子ケント=ストラサーン公爵エドワード・オーガスタス(The Prince Edward Augustus, Duke of Kent and Strathearn)の娘で、生誕時王位継承権5位から先順位者が次々と死去し、18歳で女王に即位した。なので、公爵令嬢からの女王即位もそんなにあり得ないことではない(その国の制度によるが)。

クリフハンガー:作劇手法の一つで、劇中で盛り上がる場面、例えば主人公の絶体絶命のシーンや新展開をみせる場面などを迎えた段階で結末を示さないまま物語を終了とすること。元々は、1910年代から1920年代に映画館で上映された連続活劇の多くが、主人公が崖からぶら下がった絶体絶命のシーンで終わっていたことから、「崖にぶら下がるもの」を意味する「クリフハンガー」と呼ばれるようになった。

逢坂の関:山城国(現・京都府)と近江国(現・滋賀県)の国境となっていた関所。関のあった場所は現在では定かでないが、滋賀県大津市に「逢坂関址碑」が建てられている。逢坂は「おうさか」(歴史的仮名遣い:あふさか)と詠むが、大阪(古くは「大坂」、歴史的仮名遣い「おほさか」。さらに古くは「をさか」と発音されていたという。)とは同語源ではないようだ。

予:「予」や「余」は一人称の一つにすぎず、別段皇帝に限られるものではないが、現代では主に皇帝の一人称として使われることが多いので、女王になってからの一人称ということにした。

「夜をこめて」の歌の「よに」は「世に」や「夜に」ではなく、「決して」という意味の副詞。

これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関:小倉百人一首第10番。蝉丸の歌。『後撰和歌集』より。

蝉丸は、平安時代前期の歌人。様々な伝承があり、『今昔物語集』に盲目で琵琶の名手であったとあり、琵琶法師の祖とされる。

湯雲カエル:こんな名前でも、出題編の描写からしても、公爵令嬢の護衛という設定的にも、カエル人ではなく人間である。「アフサカ」に合わせて「カヘル」でもよかったけど語呂の関係でこちらに。

勧進帳:一般名詞としての「勧進帳」は本文のとおり。また、『勧進帳』は、能の演目『安宅』を元に創られた義経と弁慶を題材とした歌舞伎の演目。1180年の平氏による南都焼討によって焼失した東大寺再建のための勧進を行う山伏に扮した源義経の忠臣・武蔵坊弁慶が、安宅の関(現・石川県小松市)の関守・富樫左衛門に、白紙の巻物を勧進帳に見立てて読み上げる。「もとより勧進帳のあらばこそ」は『勧進帳』の中のせりふ。

あたかも:漢字で書けば「恰も」。『勧進帳』の舞台である「安宅」に掛けている。

知るも知らぬも:能『安宅』の段階では、関守富樫は弁慶に欺かれた男として描かれていたが、歌舞伎『勧進帳』では、弁慶の真意に気付きながらあえて見逃したように演じられるようになった。

生殖:聖職者と生殖を掛けている。聖職者が妻帯して生殖を行うかどうかは、宗教・時代により異なる。キリスト教のカトリックでは、1139年の第2ラテラン公会議で聖職者・修道女の婚姻禁止が定められた。カトリックでは助祭以上を聖職者とし、女性は修道女にはなれても聖職者にはなれない。プロテスタントでは万人祭司の教義があり、牧師も聖職者と呼ばず、牧師の妻帯も禁じられない。現在のTRPGやその世界観に基づく中世ヨーロッパ風ファンタジーの大半では、男女とも僧侶職に就けるはずであり、本作の設定上もそうなっている。


+++++++++++++

(かなでコメント)
今回も力の入った力作、ありがとうございます!
なるほどね。
冒頭からいきなりの場面転換から、一気にストーリーへ!
思わず落語『千早振る』ググっちゃいました。
まさかの百人一首ネタとは!
話ずれますが、「強引な解釈」といえば「ノストラダムスの大予言系」の解説本を思い出すかなではもういいお年(はわわ!)
一句一句もちゃんと「お話」になっていて(『勧進帳』まで出てくるとは!)
全体として、ちゃんとオチがついてるのがすごいですねー。
今回も、勉強になりました!
楽しい時間、ありがとうございました!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(安住餡〇さん)

「仕方ないですねー」
僕は、彼女たちをあっさり手渡した。
奴はにやにや笑って、彼女たちに下卑た会話をするが……いつまで持つかな?

「アル・ポカネ」公爵の「通称」「娘」を、誘拐団から取り返して欲しい……。
アル・ポカネ氏は、「人間」コレクター。
そして、その中には「災厄」を引き寄せてしまう、疫病神「封印すべき」モノだってある。
彼女たちがそう。
事実、僕自身、まるで「運」を吸い取られていくように、腹をこわすわ財布に穴が開くわ、災難の連続。
彼女たちを狙うやつらは。彼女を「災厄兵器」として使おうと考えたから。

さて、奴はいつまで持つかな?

+++++++++++++

(かなでコメント)
ありがとうございました。
確かに「大事に保管してあるもの」=「善きもの」ではないですよねー。
短いながら、その発想のパンチ、そして皮肉さにニヤリ! ですねー!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(七尾八尾さん)

僕は眉根にしわを寄せ、結局は手渡す。
「アル・ポカネ」公爵の「娘」の中には、「腹違いの娘」もいる。
ということは、スキャンダルを恐れて、ポカネは彼女たちを殺してしまう。
どうせ殺されるなら、ここで「生きている」方がマシだと思うのです。
彼女たちもこの程度の変態野郎なら、軽くあしらって逃げてくれるだろうし……。

+++++++++++++

(かなでコメント)
ありがとうございます。
うわっ! 生々しい!
まるでよくある歴史の裏幕みたい!
で、これで愛憎乱れまくりで「歴史は夜作られる」(なんのこっちゃ!)
へヴィなネタ、ありがとうございます!


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(クレイジィケンナオ子さん)

僕は、意を決して頷く。
「仕方ありませんね。彼女たちを預けます。」
あっさり答えたので、アブラ氏の顔が驚きに満ちた。
しかし、あっさりと元のいやらしい笑顔に戻って。
「いいんだね。確かにいいんだね」
彼の念押しに、彼女たちが一斉に頷く……。

「あんな手に引っかかるなんて、さすが安っぽい税関だよねー」
これはいらない、と返してもらったヴィオラ。そのケースの中から声がした。
「そこは、ピンチ様の頭の回転の速さ、ですわ」
「だけどびっくりしたろうね。あいつ。捕まえたと思った三人が煙のように消えたんだから」


「アル・ポカネ」公爵の「娘」
それは、ド級の名工、アル氏が、彼が文字通り心血、いや魂を注ぎ込んで作り上げたヴィオラ。
立て続けに不幸に襲われて、はかなくも幼いままこの世を去った三人の娘さんのレクイエムを弾くために作り上げられたもの。
そして、精魂込めて作っているうちに、三人の精霊がつくことになった。
僕にラブラブだった三人は、彼女たちの幻影というわけ。
「ねぇ。このままみんなで旅をして、みんなに歌を届けましょうよ」
悪くない。僕は思う。

+++++++++++++

(かなでコメント)
おおっ! きれいで和むお話ですねー。
なんか、本当に童話テイストというか、ファンタジーバリバリな作品ですねー!
この手の「魂を伝えるために作られたモノ」に、かなで弱いんですよー!
今回の募集の中で、一番ほのぼのしているかもしれません。


・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
(葉山海月さん)

 ぼくはため息を付き、品のいい楽士の女の子の背中に回った。
 覗き込んだ税関の男は、うっとうめいて、言葉も出なかった。
 そこには、無数の歯車と、鉄の背骨。
「失われた古代技術と、トメキルアの最新魔法技術を駆使した、世にも珍しい、からくり人形です。
 ほかの二人も……」
 顔を外す! 
 それだけでも驚きなのに、その下には、硬質の仮面に、歯車が動く、水晶が瞳の顔があった。
「つまり、全員からくり人形なんです。人形って、『モノ』ですよね。課税対象じゃないですよね。
 口をパクパクさせる彼を背に、歩き出す。
 彼が混乱から覚めるまでに、消えてしまいたかったのだ。

「しかし、うまくいったね。もう二重に仮面被るのって、暑くって暑くって!」
「まったく、顔だけのサウナじゃないんですから……」
 踊り子の子と、幼い子が、「からくり人形」の仮面を外す。
「だけど、あたしがいて、良かったですわね。」
 そう、「アル・ポカネ」公爵の「娘」
 それは、二人は肉親。
 しかし、もうひとりは、幼くして逝った娘を偲んで、その財力と人脈にものを言わせ、作らせた「からくり人形」
 いや、「魂」を持つという点では、人造人間に近いかもしれない。
 一人「本物」を差し出せば、あとの二人も「からくり人形」だと思い込む。
 危ない賭けだったが、額を流れる汗は、安堵の汗。

(からくり人形の踊り子、ヒントの元ネタははヴェルサリウス28世様から。ありがとうございました!)

+++++++++++++

(かなでコメント)
ありがとうございます。
なんか、ルパン三世のようなオチですねー。
ちょいと頭脳プレイが絡むところなんかも、かなりツボですわー!


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 
(かなでひびきさん)

「ああたっ!」
 次の瞬間、棍棒片手に奥から鬼のような形相をして出てきたのは、ちょっとした小山のような、小太りマッチョな「おかあさん」!
「『この立場を利用して、公私混同やりたい放題してた!』ってのは、本当なのね! あたしという正妻がありながら、つまみ食いとは! ちょっとOHANASHIしましょうか」
 悲鳴を引きながら、まるでクラーケンの触手に引きずられていくような彼に幸あれ!

+++++++++++++

(かなでコメント)
最後は、不肖、かなでひびきのオチで占めてみましたが……。
「おかあさん」はたぶんジャイアンのママの祖先です……。

・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

 改めて、皆さん! たくさんのご応募ありがとうございます!
 みんなで考えたショートリドルストーリーの、お味はいかがだったかな?
 今回、心に残ったのは、やっばりポール・ブリッツさんの豪華二本立て!
 特に、二番目の作品は、短いながらも含蓄あるギャグにうならされました。
 次は、やっぱり、ヴェルサリウス28世さんの力作ですね。
 オチが効いているし、今回の作品「史実ネタを盛り込んだ」という点もリアリティがすごい出ていて、いいと思うのです。
 ジャラル アフサラールさん、忍者福島さんは、えっちっちに見せかけながら……、というギャグオチが王道でした。
 安住餡〇さん、七尾八尾さん、葉山海月さんは、あの手この手の頭をひねった「脱出口」そして「意外なオチ」が、いかにも「ショートショート」でしたよね。
 クレイジィケンナオ子さんの「ヴィオラ」に着目したお話も意外でよかったです!
 今回は十人十色、千差万別な答えが返ってきて、こちらとしても楽しませていただきました。
「一本のお題」で、ここまでバラエティー豊かな回答が返ってくるとは!
 かなで、感謝感激感動の嵐です!
 ありがとうございます!

 締め切りは終わったけど、ここに応募された答えにこだわらず、みんなでご自由に謎の続きを考えて欲しいの。
 魅力的な謎は、それだけで一つの物語。
 それでは、次回の「問題編」
 あなただけのオリジナルストーリー、ご応募お待ちしております!
 どうぞよろしくお願いいたしますぅ!

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2025年12月20日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第671号 FT新聞 No.4714

From:水波流
巨大な島を探索する新作ファンタジーRPG『ソードヘイヴン』をSNSで知りました。
バルダーズゲート1・2、アイスウインドデイルのインスパイアRPGで、日本語翻訳済みとは!
Mac版もあるし、気になる……(でも遊ぶ時間はない)

From:葉山海月
ある本のタイトルを見て、「読んだ覚えはあるけど、内容はトンと忘れている」
本に限らず、忘れているってことって、人生のかなりの割合を占めているのではないのだろうか?
と思ったら、急に心が軽くなりました。

From:中山将平
僕ら、12月30日「コミックマーケット107」にサークル参加します。
ブース配置は【東ソ01ab】です。
発売の新刊は2冊で、それ以外に11月ゲームマーケットで発売した作品が1冊あります。発売新刊の通販予約も開始していますので、ぜひチェックしていただけましたら。
・「ズィムララのモンスターラリー モンスター編」モンスター!モンスター!TRPGサプリメント
https://ftbooks.booth.pm/items/7733432
・「クトゥウルウの聖なる邪神殿」ローグライクハーフサプリメント
https://ftbooks.booth.pm/items/7726592
・「ヒーローズオブダークネス」ローグライクハーフサプリメント(ゲムマにて発売)
https://ftbooks.booth.pm/items/7572242


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(水)=水波流

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■12/14(日)~12/19(金)の記事一覧
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2025年12月14日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4708

アランツァクリーチャー事典 Vol.23
・本日は日曜日。アランツァクリーチャー事典の第23回目をお送りいたします。
先月に引続き『家畜、騎乗生物』後編!
かなりのボリュームがあるため、3回に渡って掲載します。
今回は軍馬やヒポグリフから、火吹き獣、丸々獣まで!
どうぞお楽しみ下さいませ。
(葉)


2025年12月15日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4709

これからの配信予定は……!
・1月の第1日曜日にお送りしますのは、火呂居美智先生による「ローグライクハーフ」の最新d33シナリオ「失楽園奇譚」!
拠点となる街は、獣人、コビット、龍人……さまざまな種族が暮らす砂漠の地、ポロメイア小国家連合です。そこで一体どんな冒険が繰り広げられるのでしょう?
2月以降の日曜枠は、ローグライクハーフ版「ガルアーダの塔」! 90階建ての果てしない冒険をお届けするべく、杉本氏が鋭意建築中でございます。
来年もスタートから未知の世界にお連れいたしますが、よろしくお願いします!
(明)


2025年12月16日(火)くろやなぎ FT新聞 No.4710

ゲームブックにおける死と物語 第2回:『狂える魔女のゴルジュ』における「時の魔法」と死
・『狂える魔女のゴルジュ』における「時の魔法」は、時を遡り、過去を変えることによって、死者の運命をも変える力をもっています。
その一方で、時の魔法による「死」への干渉は、いつも間接的な形になっていて、現前する「死んだ状態」を直接「生きている状態」に巻き戻すことはできないようにも見えます。
このような構造がもつ意味について、ぜろ氏による『狂える魔女のゴルジュ』のリプレイやRLHシナリオ『ベテルギウスの残光』の内容も踏まえつつ、前回ご紹介した『護国記』と対比させる形で考察してみました。よろしければ、ご意見・ご感想などお聞かせください!
(く)


2025年12月17日(水)ぜろ FT新聞 No.4711

第1回【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】ゲームブックリプレイ
・プレイヤーとキャラクター双方の視点を織り交ぜながら展開される、ぜろ氏のリプレイ第471回です。
先週ついに大団円を迎えた、ガーデンハート家の末っ子ミナの冒険に引き続き、今週からは、長女ニナ・ガーデンハートの逃走劇をお届けします。
追跡のプロを相手に、限られたスタミナを使いながら、距離を保ちつつ雪原の中を逃げ延びるという困難なミッション。何もなさそうな雪原でも、ポルルポルルや野営の焚火など、意外と助けになりそうな出会いはあるものですが、そこには危険や罠があるかもしれません。ニナの選択がもたらす、今回のアタックの結末はどうなるでしょうか?
(く)


2025年12月18日(木)齊藤飛鳥 FT新聞 No.4712

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.38『汝、獣となれ人となれ』 その2 
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
冒険家乙女のクワニャウマとその相棒のエルフの少女イェシカは、昼の間ミソサザイになる呪いをかけられたコビットの冒険者クリスティと共に、彼女の呪いを解くカギを探しに〈太古の森〉に眠る遺跡へと出発!
思わぬ人との再会、思わぬものとの出会いを重ねていく、道中の軽妙なやりとりが賑やかで楽しいクワニャウマたちの冒険をどうぞご覧あれ。
(天)


2025年12月19日(金)休刊日 FT新聞 No.4713

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ジャラル アフサラールさん)
時間遡行はエンタメを面白くもしますが「ご都合主義」になる可能性もありますね。現在アニメ放送中の『魔法少女まどか☆マギカ』の暁美 ほむらの「時間操作」の魔法なんかは上手く使っていると思います。まあ私は某ゲームブックで時間遡行の箇所で何度もパラグラフをやり直して最強に近づくという所だけ暁美 ほむらと同じです(笑)。

(お返事:くろやなぎ)
コメントありがとうございます。時間遡行というギミックの使用について、「エンタメ性を高める効果」と「ご都合主義に陥るリスク」との折り合いがどのように調整されているか、というのは興味深いテーマですね。
この視点から改めて考えてみると、『狂える魔女のゴルジュ』における「時の魔法」は、使える場面を限定した上で、あまり効果がない「空振り」的なケースや逆効果になるケースも用意し、さらに悪夢というリソース管理のバランスを厳しめに設定することで、プレイヤーに「ご都合主義感」を感じさせずに、しかもここぞという場面では劇的な変化を演出する、という絶妙なバランスになっているように思います。
また、ぜろ氏の『狂える魔女のゴルジュ』リプレイにおけるオスクリード神の「戯れ」については、時間遡行に伴うご都合主義的な万能性を「神」の側に寄せることで、主人公の無力感や苦悩をドラマチックに浮かび上がらせる効果をもっている、という見方もできるかもしれません。

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2025年12月19日金曜日

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おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。

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あなたの記事を、お待ちしております!

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