おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
最近、じんわりと執筆の時間が増えてきました。
ムリに増やしているわけではなく、書きたい気持ちが高まっております。
今後の日曜配信について、お知らせです!
◆火呂居美智先生による新d33シナリオ!
1月の第1日曜日は「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」の最新d33シナリオ「失楽園奇譚」を配信いたします!
拠点となる街はポロメイア小国家連合です。
獣人、コビット、龍人……さまざまな種族が暮らすこの砂漠の地で、どんな冒険が繰り広げられるのでしょう?
◆2月からは「ガルアーダの塔」を!
2月以降の日曜枠は、ローグライクハーフ版「ガルアーダの塔」をお届けいたします!
こちらは90階建てとなった結果、合計9回の冒険をお届けします。
今はこの塔を建築しておりますが、なにぶん大きな建築物です☆
2月から3回にわたってお届けすることになるだろうと思います……お時間をいただき恐縮ですが、よろしくお願いします!
簡単ですが、本日はこれにて。
それではまた!
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ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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2025年12月15日月曜日
2025年12月14日日曜日
アランツァクリーチャー事典 Vol.23 FT新聞 No.4708
おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。
本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
杉本=ヨハネから預かりました、アランツァクリーチャー事典の第23回です。
先月に引続き『家畜、騎乗生物』後編!
かなりのボリュームがあるため、3回に渡って掲載します。
今回は軍馬やヒポグリフから、火吹き獣、丸々獣まで!
どうぞお楽しみ下さいませ。
アランツァクリーチャー事典『家畜、騎乗生物』後編
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/AranciaMonsterEncyclopedia_vol.23.txt
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先月に引続き『家畜、騎乗生物』後編!
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どうぞお楽しみ下さいませ。
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2025年12月13日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第670号 FT新聞 No.4707
From:水波流
私は90年代前半にT&Tやソードワールドなどの文庫本TRPGをよく遊んだ世代なのですが、日本のTRPG黎明期の先輩方とは数年遅れだったので、D&Dを全く遊ばずに来ていたんだなぁと先日、ふと気づきました。
同様のズレは随所で起こっており、例えばロードス島戦記リプレイに間に合わず、コンプティークを買ったときにはクリスタニアが連載されていたり、蓬莱学園に間に合わず、遊演体のPBMを遊べていなかったり。
もっとも熱狂的な時代から、ほんの少しだけ遅れていたんだなぁと。
(余談ですが、蓬莱学園の小説のリブート連載がはじまってますよ!)
From:葉山海月
何かを検索しようとして忘れる。
だれか教えてください。
From:天狗ろむ
8日(月)の杉本先生の記事より告知がありました、シナリオ作者さんご自身による「ローグライクハーフシナリオ紹介記事」の件は、天狗ろむが窓口となっております。
是非、貴方の書かれたシナリオを、FT新聞読者の皆様に紹介してみませんか? ご相談からお気軽に! お待ちしております!
(連絡先
Twitter(現X)アカウント:@amaku_romu リプライ、またはDMにて
discordアカウント:amaku_romu DMにて)
From:中山将平
僕ら、明日12月14日(日)埼玉県の川口市民ホールフレンディアで開催の「ゲームレジェンド40」というイベントにサークル参加します。
レトロゲーム・マイナーゲーム中心の同人即売会です。
お近くの方は、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(天)=天狗ろむ
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■12/7(日)~12/12(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年12月7日(日)紫隠ねこ FT新聞 No.4701
『ベテルギウスの残光』ローグライクハーフd66シナリオ
・今月の新作シナリオは、作:紫隠ねこ氏、原案:ロア=スペイダー氏のコンビでお送りします!
冒険の舞台は、ラドリド大陸の南西部に位置する町モフージャ。
もふもふの毛に覆われた生物〈もふもふ獣〉と楽器の音色にあふれる町に作られた公衆浴場〈ベテルギウス〉の拡張工事中に、何と温泉ではなく【アンデッド】が噴出!
更に原因不明の地震も発生した事で、深刻なダメージを受けた別館に多くの人々が取り残されてしまいます。事件の真相を突き止めると共に、人々の救助も行うという、緊張感と緊急性の高い冒険があなたを待っています。
このままでは消えゆきかねない〈ベテルギウス〉の輝きを、どうか守ってあげてください!
(天)
2025年12月8日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4702
新しい記事群のお知らせ!
・先日、名古屋で行われた「FT書房作品オンリーコンベンション」にゲスト参加した杉本氏。「1人用TRPGローグライクハーフ」の関連作品が、公式非公式を合わせると100作近くになるという事に驚いたそうです。
楽しいことが起こっている、けれども「作品が増えてるぶん、探すのが大変だぞ……?」
そこで! シナリオ作者さんご自身にシナリオを紹介いただく「紹介記事」の準備を、編集部員・天狗ろむが窓口となって進めています。続報はしばしお待ちください!
(天)
2025年12月9日(火)明日槇悠 FT新聞 No.4703
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
・TPRG初心者4名が友人宅で気軽に遊んだ、GM不要のナラティブ・スタイルRPG『モンセギュール1244』のリプレイ、第3回をお届けしました。
カタリ派の「完徳者」であるベルトランは、モンセギュール砦にたてこもる信徒たちの精神的指導者ですが、このリプレイでは権謀術数を巡らす策士として演じられています。
そして今回登場するのは、もうひとりの「完徳者」であるセシル。こちらも一筋縄ではいかない、演じるプレイヤーB氏いわく「強キャラババア感」を醸し出す人物です。
領主レーモンの娘エスクラルモンドや、その母コルバをはさんで、対立するふたりの「完徳者」。砦を包囲する十字軍はまだ静かな様子ですが、砦の中の人間関係はどうなっていくのでしょうか…?
(く)
2025年12月10日(水)ぜろ FT新聞 No.4704
第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・精緻な原作を深く豊かな解釈で描き直す、ぜろ氏のリプレイ第469回です。
最後の魔法でエナを救い、スノウシャークの襲撃を振り切ったミナは、ゴルジュを抜けて湖の岸辺に辿り着きました。
フェルとの「再会」を経て、エナとともに辺縁の村に戻るミナを待つのは、ボラミーとビバイアのきょうだい、そしてもうひとりの姉・ティナ。残る姉たちを探す旅は続きますが、この物語はひとまずここで大団円を迎えます。
ぜろ氏の新境地とも言うべき物語性豊かな長編リプレイの結末を、どうぞ見届けてください!
(く)
2025年12月11日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4705
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.33
・岡和田晃氏による、スペキュレイティブ・フィクション専門のネットマガジン「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
久々となる今回は、なんとゲームブックの名作『展覧会の絵』の外伝!
平田真夫氏と森山安雄氏の合作という事にニヤリとされた方もおられるのではないでしょうか。
平田氏の『水の中、光の底』では水と光をモチーフにした10の世界が描かれており、これぞまさに幻想世界の探索譚だと思ったものです。次回作も読みたいですねえ。
(水)
*編集部註*
本記事の配信時に初出の表記が抜け落ちておりました。正しくは下記となります。訂正してお詫び申し上げます。
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/3944
2025年12月12日(金)ぜろ FT新聞 No.4706
番外編【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ蛇足
・10日(水)に「狂える魔女のゴルジュ」のゲームブックリプレイを終えた、ぜろ氏のリプレイ番外編にあたる第470回は感想回です。
「物語」に比重を置いた作品だった「狂える魔女のゴルジュ」。その為、普段のぜろ氏の「ゲームブックリプレイらしさ」「メタ視点」は減っていき、物語の起伏と主人公ミナの感情に焦点を当てていったそうです。
細かな手を加えながら、こうして今回のリプレイ……「未来の記憶を有する」ミナの物語が出来上がったとのこと。ぜろ氏がどんな風に書き上げていったのか、詳しく知りたい方は記事をご覧ください。
これからもリプレイを書き続けてくれるであろうぜろ氏に、どうぞ引き続きの応援を宜しくお願いします!
(天)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(忍者福島さん)
もしかしたら、オスクリード神はボラミーとではなく、ミナとフェルが失敗せずに姉を助けた未来も知っているのかもしれない、でも自分の知ってる事は今の自分の記憶しかないのは、ちょっと切ない終わり方かもしれませんね。
からくり好きなフェルと共に歩んだ記憶は、また別の記憶なのはわかるんですが、それもまた人生って事ですかね。
(お返事:ぜろ)
皆さまのあたたかい応援や感想のおかげもあり、最終回までたどりつくことができました。
ラストのフェルとのすれ違いは、フェルがお気に入りのキャラクターだったからというだけでなく、実現しなかった未来の切なさとやさしさの両方を表現したいという思いを込めています。受け取っていただけたようで、うれしいです。フェルとの結末を正史としたミナにも、最後までシビアに単独で目的達成のために奮闘したミナにも、等しく祝福があらんことを。
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2025年12月7日(日)紫隠ねこ FT新聞 No.4701
『ベテルギウスの残光』ローグライクハーフd66シナリオ
・今月の新作シナリオは、作:紫隠ねこ氏、原案:ロア=スペイダー氏のコンビでお送りします!
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2025年12月9日(火)明日槇悠 FT新聞 No.4703
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
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カタリ派の「完徳者」であるベルトランは、モンセギュール砦にたてこもる信徒たちの精神的指導者ですが、このリプレイでは権謀術数を巡らす策士として演じられています。
そして今回登場するのは、もうひとりの「完徳者」であるセシル。こちらも一筋縄ではいかない、演じるプレイヤーB氏いわく「強キャラババア感」を醸し出す人物です。
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第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・精緻な原作を深く豊かな解釈で描き直す、ぜろ氏のリプレイ第469回です。
最後の魔法でエナを救い、スノウシャークの襲撃を振り切ったミナは、ゴルジュを抜けて湖の岸辺に辿り着きました。
フェルとの「再会」を経て、エナとともに辺縁の村に戻るミナを待つのは、ボラミーとビバイアのきょうだい、そしてもうひとりの姉・ティナ。残る姉たちを探す旅は続きますが、この物語はひとまずここで大団円を迎えます。
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平田氏の『水の中、光の底』では水と光をモチーフにした10の世界が描かれており、これぞまさに幻想世界の探索譚だと思ったものです。次回作も読みたいですねえ。
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「物語」に比重を置いた作品だった「狂える魔女のゴルジュ」。その為、普段のぜろ氏の「ゲームブックリプレイらしさ」「メタ視点」は減っていき、物語の起伏と主人公ミナの感情に焦点を当てていったそうです。
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2025年12月12日金曜日
番外編【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ蛇足 FT新聞 No.4706
【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ蛇足
●感想
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」ゲームブックリプレイ、完結しました。
書いた自分自身の感情が極まってしまい、これ以上は何を書いても蛇足にしかなりません。
なので、ここから先はあえて蛇足と割り切って、思ったままのことを書き散らかしていきます。
書き出しこそ、普通のゲームブックリプレイ風に始まりましたが、途中から大幅に変化しました。
それはこの作品が、あまりにも「物語」に比重を置いたものだったためです。
リプレイでは、徐々に「ゲームブックリプレイらしさ」「メタ視点」を減らし、物語の起伏とミナの感情に焦点を当てる比重を重くしていきました。
最初は普通のリプレイ風、と言いましたが、そう言いながらも最初から、「物語」を強く印象づける内容にもなっています。
導入にあたるエピソードから様々なアレンジを加え、細やかな描写の追加やミナの内面の深掘りを心がけました。
その結果、ミナと仲間、そのほかの登場人物とのかかわりが、原作以上に関係性を重視するものとなりました。
フェルとはビジネスライクでありながら、親しげな雰囲気が加わり、ボラミーに至っては、ミナが「かけがえのない存在」と認識するほどに。
今回はアタック03として描いていますが、実際のアタックは06までありました。
内訳は、単独行が1回、フェル編が4回、ボラミー編が1回でした。
その中から3回を選んでリプレイにしました。
実際のプレイが、単独行→フェル編→ボラミー編だったのが、このリプレイの唯一無二の構成に繋がったと思っています。
単独でもフェルでもボラミーでもクリアできる構成となっているようでしたが、やはりボラミーはキャラクターづけの意味あいが他と異なります。
ラスボスであるマルティン・ローズを父に持ち、そしてミナと同じく「きょうだいを助ける」ことが動機のキャラクター。
ミナの物語を描き出すうえで、ボラミー編で締めくくったのは、結果的に必然だったと思います。
また、作品としては、時の魔法と、時に支配されない不死性を持った吸血鬼という対比が効いていると思いました。
物語の展開にも、大幅なアレンジを加えています。
特に大きく変化させたところは、ティナの救出後と、マルティン戦後の演出ですね。
ティナは時をさかのぼって救出するため、元の展開では屋敷の外まで逃がし、自力で脱出をさせます。
これは私には二重の違和感がありました。
このときだけ<跳兎の懐中時計>で過去に遡れる時間がだいぶ長いことと、そして館から脱出させたとしても、ゾンビ墓地を抜けられるとは到底思えないことです。
私がティナを助けた2回の道筋は、ともにビバイア生存ルートでしたので「ビバイアにかくまってもらう」という形に展開をいじらせていただきました。
また、ビバイアを助けた場合、元の展開ではボラミーは館を立ち去ります。
しかし、そこまでに築き上げたミナとボラミーの関係性では、ボラミーがミナを置いて去るなど、とても考えられなくなっていました。
そこで、ボラミーとビバイアが再会を喜んでいる間に、ミナだけがそっと部屋を抜け出すことで、ひとりになることにしました。
その後、ボラミーと合流して共闘する流れになります。
原作では、ボラミーとビバイアが部屋から抜け出す際に使った戸板が外れやすくなっており、その戸板を外すことで太陽光を部屋に取り込む展開でした。
そこは、ボラミーが戸板を破壊するという形に変更し、共闘での役割も与えた形です。
ほかにも、選択肢の構成は変えていませんが、ニュアンスを大幅に変えているところも多くあります。
外縁の村で「自分が闇エルフでないことを主張する」が、限界を迎えて泣きわめく行動になったり。
あるいは、ボラミーを仲間に誘う場面では、ボラミーの方から提案してくるなど、能動側と受動側を変更しているところも多くあります。
原作のエンディングでは、ティナが湖岸まで来て合流するのですが、地図を見る限り、湖はチャマイよりもさらに南です。
ミナとエナは湖まで激流で一気に流されています。距離がありすぎて、ティナが移動に要する時間を考えたとき、とてもすぐに合流できるとは思えませんでした。
また、スマホの位置情報もない世界では、ミナたちが湖まで流れていったという情報も得られるとは思えません。
もしかしたら、ティナにはそうした探索系の魔法か能力がある可能性もありますが、特にそうした匂わせも見当たりませんでした。
そこで展開を変え、こちらから、ボラミー宅にいるティナに会いに行く形を取ることとしました。
細かいところを挙げていくときりはありませんが、元がゲームブックであることは意識しながらも、だいぶ手を加えさせていただきました。
おかげで、リプレイとしてというより、物語としての完成度がかなり高まったと思います。
さて、オスクリードが時を巻き戻す能力については、実際にオスクリードにそのような能力があるかどうかは言及されていません。
これは、「プレイヤーが再アタックすること」を「オスクリードの戯れ」として表現したに過ぎません。時をテーマにした作品なので、こういう形に落とし込みました。
それもこれも、最初にキャラクターシートの説明をした時にミナが「未来の記憶」を断片的に持っている、と設定されたことに端を発しています。
何気なく考えついただけのその設定が、まさかこれほどまでに重さをもってミナに降りかかってくるとは、考えもしませんでした。
未来の記憶を有するミナだからこそ、このループに気づきました。
きっと他のゲームブックの他の主人公たちも、どこかで見ているデウスエクスマキナ神(プレイヤー)の戯れで、何度も巻き戻されているのに気づいていないということなのでしょう。
この話はこれでおしまいですが、これで終わりというにはあまりにも重厚な物語があります。
この先のミナの物語も、ぜひ見てみたい。そう思わせる作品でした。
ただ同時に、この作品の続編を書くことは、かなりの力量を要求されるものになるとも感じるところです。
あと救出すべき姉は3人? なら、ローグライクハーフのd66シナリオで行ける? なんて考えてはいませんよ(笑)
原作がとびきり面白かったこともありますが、このリプレイは、私がこれまで書いてきたものの中でも最高傑作となりました。
これを機に、姉であるニナの物語にも、少し触れられたらな、と思います。
と、この作品は物語の比重が大きいみたいな話をしてきましたが、実はゲーム面でもかなり凝った作りになっています
実は。物語性、ゲーム性、ともに高度なレベルの作品なのです。
7種類の時の魔法とその効果、使い方や使いどころなど、ものすごく練られています。
単独、フェル、ボラミーによる3つのルートは、そのいずれもで攻略法が異なります。
おかげで、銀のナイフを巡って失敗もしてしまいました。
森の中のキーウに会うと、銀貨5枚で銀のナイフを作ってもらえるんですよ。
その銀貨は、森の入口のねこ人からニンニクを購入することで、おつりとしてもらえます。
私は、それを見こしてプレイしていました。
ところが、森の入口でねこ人との交渉が発生するのは、単独の時だけでした!
それに気づかず、仲間キャラが変わっても、ねこ人との交渉に期待して、ハズレ続けてしまったのでした。
フェル編で手に入れる、なんらかの設計図が描かれた羊皮紙は、リプレイではまったく触れられない死んだ設定になっています。
これはフェル専用の武器「吸血鬼ごろし」の設計図で、フェル編での攻略に役立ちます。
そんなふうに、物語の面だけでなく、システム面もかなりの凝りようです。
私が最終的にクリアした道のりは、たぶんベストルートではありません。
少なくともね、ラストのスノウシャークを回避する場面では悪夢袋がひとつ残っていて、そこで<沙羅双樹の予知時計>を使う想定だとは思うんですよ。
私みたいに完全に勘に頼るのでなしに。
私は本作品のリプレイが、これまで書いてきたリプレイの中でも屈指の出来だと自負していますが、それは元作品が素晴らしいからこそです。
本当に、すごい作品をプレイしてしまった、また、自分の力量を越えるものすごいリプレイが書きあがってしまった、という両方の思いで感無量です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
私はこれからも、ゲームブックリプレイを書き続けるでしょう。
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●感想
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」ゲームブックリプレイ、完結しました。
書いた自分自身の感情が極まってしまい、これ以上は何を書いても蛇足にしかなりません。
なので、ここから先はあえて蛇足と割り切って、思ったままのことを書き散らかしていきます。
書き出しこそ、普通のゲームブックリプレイ風に始まりましたが、途中から大幅に変化しました。
それはこの作品が、あまりにも「物語」に比重を置いたものだったためです。
リプレイでは、徐々に「ゲームブックリプレイらしさ」「メタ視点」を減らし、物語の起伏とミナの感情に焦点を当てる比重を重くしていきました。
最初は普通のリプレイ風、と言いましたが、そう言いながらも最初から、「物語」を強く印象づける内容にもなっています。
導入にあたるエピソードから様々なアレンジを加え、細やかな描写の追加やミナの内面の深掘りを心がけました。
その結果、ミナと仲間、そのほかの登場人物とのかかわりが、原作以上に関係性を重視するものとなりました。
フェルとはビジネスライクでありながら、親しげな雰囲気が加わり、ボラミーに至っては、ミナが「かけがえのない存在」と認識するほどに。
今回はアタック03として描いていますが、実際のアタックは06までありました。
内訳は、単独行が1回、フェル編が4回、ボラミー編が1回でした。
その中から3回を選んでリプレイにしました。
実際のプレイが、単独行→フェル編→ボラミー編だったのが、このリプレイの唯一無二の構成に繋がったと思っています。
単独でもフェルでもボラミーでもクリアできる構成となっているようでしたが、やはりボラミーはキャラクターづけの意味あいが他と異なります。
ラスボスであるマルティン・ローズを父に持ち、そしてミナと同じく「きょうだいを助ける」ことが動機のキャラクター。
ミナの物語を描き出すうえで、ボラミー編で締めくくったのは、結果的に必然だったと思います。
また、作品としては、時の魔法と、時に支配されない不死性を持った吸血鬼という対比が効いていると思いました。
物語の展開にも、大幅なアレンジを加えています。
特に大きく変化させたところは、ティナの救出後と、マルティン戦後の演出ですね。
ティナは時をさかのぼって救出するため、元の展開では屋敷の外まで逃がし、自力で脱出をさせます。
これは私には二重の違和感がありました。
このときだけ<跳兎の懐中時計>で過去に遡れる時間がだいぶ長いことと、そして館から脱出させたとしても、ゾンビ墓地を抜けられるとは到底思えないことです。
私がティナを助けた2回の道筋は、ともにビバイア生存ルートでしたので「ビバイアにかくまってもらう」という形に展開をいじらせていただきました。
また、ビバイアを助けた場合、元の展開ではボラミーは館を立ち去ります。
しかし、そこまでに築き上げたミナとボラミーの関係性では、ボラミーがミナを置いて去るなど、とても考えられなくなっていました。
そこで、ボラミーとビバイアが再会を喜んでいる間に、ミナだけがそっと部屋を抜け出すことで、ひとりになることにしました。
その後、ボラミーと合流して共闘する流れになります。
原作では、ボラミーとビバイアが部屋から抜け出す際に使った戸板が外れやすくなっており、その戸板を外すことで太陽光を部屋に取り込む展開でした。
そこは、ボラミーが戸板を破壊するという形に変更し、共闘での役割も与えた形です。
ほかにも、選択肢の構成は変えていませんが、ニュアンスを大幅に変えているところも多くあります。
外縁の村で「自分が闇エルフでないことを主張する」が、限界を迎えて泣きわめく行動になったり。
あるいは、ボラミーを仲間に誘う場面では、ボラミーの方から提案してくるなど、能動側と受動側を変更しているところも多くあります。
原作のエンディングでは、ティナが湖岸まで来て合流するのですが、地図を見る限り、湖はチャマイよりもさらに南です。
ミナとエナは湖まで激流で一気に流されています。距離がありすぎて、ティナが移動に要する時間を考えたとき、とてもすぐに合流できるとは思えませんでした。
また、スマホの位置情報もない世界では、ミナたちが湖まで流れていったという情報も得られるとは思えません。
もしかしたら、ティナにはそうした探索系の魔法か能力がある可能性もありますが、特にそうした匂わせも見当たりませんでした。
そこで展開を変え、こちらから、ボラミー宅にいるティナに会いに行く形を取ることとしました。
細かいところを挙げていくときりはありませんが、元がゲームブックであることは意識しながらも、だいぶ手を加えさせていただきました。
おかげで、リプレイとしてというより、物語としての完成度がかなり高まったと思います。
さて、オスクリードが時を巻き戻す能力については、実際にオスクリードにそのような能力があるかどうかは言及されていません。
これは、「プレイヤーが再アタックすること」を「オスクリードの戯れ」として表現したに過ぎません。時をテーマにした作品なので、こういう形に落とし込みました。
それもこれも、最初にキャラクターシートの説明をした時にミナが「未来の記憶」を断片的に持っている、と設定されたことに端を発しています。
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未来の記憶を有するミナだからこそ、このループに気づきました。
きっと他のゲームブックの他の主人公たちも、どこかで見ているデウスエクスマキナ神(プレイヤー)の戯れで、何度も巻き戻されているのに気づいていないということなのでしょう。
この話はこれでおしまいですが、これで終わりというにはあまりにも重厚な物語があります。
この先のミナの物語も、ぜひ見てみたい。そう思わせる作品でした。
ただ同時に、この作品の続編を書くことは、かなりの力量を要求されるものになるとも感じるところです。
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原作がとびきり面白かったこともありますが、このリプレイは、私がこれまで書いてきたものの中でも最高傑作となりました。
これを機に、姉であるニナの物語にも、少し触れられたらな、と思います。
と、この作品は物語の比重が大きいみたいな話をしてきましたが、実はゲーム面でもかなり凝った作りになっています
実は。物語性、ゲーム性、ともに高度なレベルの作品なのです。
7種類の時の魔法とその効果、使い方や使いどころなど、ものすごく練られています。
単独、フェル、ボラミーによる3つのルートは、そのいずれもで攻略法が異なります。
おかげで、銀のナイフを巡って失敗もしてしまいました。
森の中のキーウに会うと、銀貨5枚で銀のナイフを作ってもらえるんですよ。
その銀貨は、森の入口のねこ人からニンニクを購入することで、おつりとしてもらえます。
私は、それを見こしてプレイしていました。
ところが、森の入口でねこ人との交渉が発生するのは、単独の時だけでした!
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そんなふうに、物語の面だけでなく、システム面もかなりの凝りようです。
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本当に、すごい作品をプレイしてしまった、また、自分の力量を越えるものすごいリプレイが書きあがってしまった、という両方の思いで感無量です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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2025年12月11日木曜日
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.33 FT新聞 No.4705
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.33
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに(岡和田晃)
祝:田林洋一「スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本」、連載完結!
私は連載が始まって少し経ってから、公開前のチェックに参加させていただきました。
むろん、論そのものは田林さんのものですが、私見とは異なる箇所もままありますが、私の知っていることをお伝えし、参考にしていただいたということです。
そちらの連載でも取り上げられ、「FT新聞」でもたびたび言及されている「展覧会の絵」(創元推理文庫、1987年)。
創土社(2003年)・幻想迷宮書店(2016年)と、2度のリバイバルを経ている傑作として、もはやカノンと化していますが、その『展覧会の絵』に、外伝として書かれた小説があることをご存知でしたか?
リリカルなSF小説『水の中、光の底』(東京創元社、2011年)の著者・平田真夫氏との合作になります。
(こっそり書いておきますと、「スーパーアドベンチャーアドベンチャーゲームがよくわかる本」が書籍化するようなことがもしあれば、応援を兼ねて本作を収めてもかまわないとのご許諾も賜りましたよ)
そうそう、手前味噌ですが、名作ゲームブック「ファイティング・ファンタジー」シリーズの歴史をまとめ上げた書籍「主人公はキミだ!〜You are the Hero!日本語版〜インタラクティブに振り返る ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの歴史」に同梱される拙著に、東京創元社で「スーパーアドベンチャーゲーム」シリーズを手掛けた編集・小浜徹也氏への取材が含まれておりますので、同シリーズに関心がある方はぜひどうぞ。
https://www.4gamer.net/games/758/G075800/20251128001/
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「吟遊詩人」
平田真夫
(「展覧会の絵」外伝・森山安雄と合作)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
—十二律
日本や中国で古くから用いられた音階。管楽器の管の長さを三分の一短くして完全五度、三分の一長くして完全四度を得、これを繰り返して十二の音を得る。ただしこのやり方では対数関数にならないので、現在の平均率とは異なる音高となる。西洋では、ピタゴラスが弦の長さを用いて同じ方法を採った為、十二律はピタゴラス音階と実質的に同じ物である。
艶のある固そうな皮膚に、切れ長の目——。始めは能面でも被っているのかと思った。その位彼女の顔は色が白く、のっぺりしていたのだ。
だが、すぐにそれは、外灯の暗さ故の見誤りだと判る。一瞬、上目遣いにこちらを向いた視線が瞬いたかと思うと、細目の唇の端が僅かに微笑んだ。全身に一枚布を巻き付けたかのような弛んだ服。白地に茶色く染みが付き、地べたに直接胡坐をかいた膝には有棹の琴が乗せられている——。
「ちょっと、あなた」
澄んだよく通る声で呼ばれて振り返る。跨った雌馬が足を止め、鬣の風船が揺れた。近くには他にもたくさんの子供がいるが、皆親子連れで、このような言い方をされるのは自分しか居なさそうだ。見ると舗道に、小柄な女が座っている。
↓続きはこちらから!(PDFファイル)
https://prologuewave.club/wp-content/uploads/2013/12/ginnyuusijinn_hiratamasao.pdf
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●はじめに(岡和田晃)
祝:田林洋一「スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本」、連載完結!
私は連載が始まって少し経ってから、公開前のチェックに参加させていただきました。
むろん、論そのものは田林さんのものですが、私見とは異なる箇所もままありますが、私の知っていることをお伝えし、参考にしていただいたということです。
そちらの連載でも取り上げられ、「FT新聞」でもたびたび言及されている「展覧会の絵」(創元推理文庫、1987年)。
創土社(2003年)・幻想迷宮書店(2016年)と、2度のリバイバルを経ている傑作として、もはやカノンと化していますが、その『展覧会の絵』に、外伝として書かれた小説があることをご存知でしたか?
リリカルなSF小説『水の中、光の底』(東京創元社、2011年)の著者・平田真夫氏との合作になります。
(こっそり書いておきますと、「スーパーアドベンチャーアドベンチャーゲームがよくわかる本」が書籍化するようなことがもしあれば、応援を兼ねて本作を収めてもかまわないとのご許諾も賜りましたよ)
そうそう、手前味噌ですが、名作ゲームブック「ファイティング・ファンタジー」シリーズの歴史をまとめ上げた書籍「主人公はキミだ!〜You are the Hero!日本語版〜インタラクティブに振り返る ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの歴史」に同梱される拙著に、東京創元社で「スーパーアドベンチャーゲーム」シリーズを手掛けた編集・小浜徹也氏への取材が含まれておりますので、同シリーズに関心がある方はぜひどうぞ。
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平田真夫
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—十二律
日本や中国で古くから用いられた音階。管楽器の管の長さを三分の一短くして完全五度、三分の一長くして完全四度を得、これを繰り返して十二の音を得る。ただしこのやり方では対数関数にならないので、現在の平均率とは異なる音高となる。西洋では、ピタゴラスが弦の長さを用いて同じ方法を採った為、十二律はピタゴラス音階と実質的に同じ物である。
艶のある固そうな皮膚に、切れ長の目——。始めは能面でも被っているのかと思った。その位彼女の顔は色が白く、のっぺりしていたのだ。
だが、すぐにそれは、外灯の暗さ故の見誤りだと判る。一瞬、上目遣いにこちらを向いた視線が瞬いたかと思うと、細目の唇の端が僅かに微笑んだ。全身に一枚布を巻き付けたかのような弛んだ服。白地に茶色く染みが付き、地べたに直接胡坐をかいた膝には有棹の琴が乗せられている——。
「ちょっと、あなた」
澄んだよく通る声で呼ばれて振り返る。跨った雌馬が足を止め、鬣の風船が揺れた。近くには他にもたくさんの子供がいるが、皆親子連れで、このような言い方をされるのは自分しか居なさそうだ。見ると舗道に、小柄な女が座っている。
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初出:「SF Prologue Wave」
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2025年12月10日水曜日
第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4704
第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
神の戯れによる時の繰り返しに気づき、一度は絶望しますが、それでもあきらめずに旅を続けます。
そしてついに、吸血鬼マルティンを倒し、双子の姉エナとティナを助け出すことができたのでした。
今回は、この冒険の結末を描きます。また、その後に感想もお届けします。
【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-15 静かな湖畔にて
ボクとエナ姉は、湖のほとりで横並びになって、あお向けに寝そべっている。
全力を出し切った後の疲れと、水から上がった体の重さで、しばらく動けそうになかった。
ずぶ濡れで冷え切った体を、雲ひとつない空から、太陽が温めてくれる。
「まぶしい……」
エナ姉が、腕を光の方向にかざしながら、かみしめるように言う。
「太陽の光を浴びられる日がまた来るなんて、思いもしなかった……」
エナ姉の透き通った瞳から、涙が一筋、見えた。
エナ姉は、やがてボクに向けて語りかけた。
「ありがとうねミナ。私がすべてを取り戻したのは、ミナのおかげよ」
「ずっと探してたんだ。姉さんたちの行方を。ボクだけじゃなく、ニナ姉も。ずっと、ずっと探してたんだ」
「うん。うん」
「やっと見つけた。やっと会えた」
「うん」
「会いたかった……」
「私も。また会えるなんて、本当に夢のよう」
エナ姉は、やわらかな笑みをボクにくれた。
奴隷として売られて、10年以上も、ずっとずっと辛い体験を重ねてきたに違いない。
それでも、こんな表情ができるんだ。ボクに変わらない笑顔を向けてくれるんだ。
ボクはこの旅で、自分が辛くてしんどい目にたくさんあってきたって思ってた。
けど、エナ姉の笑みはそれだけで、それが全部吹き飛んでしまうだけの力があった。
なんだか、自分がすごくちっぽけなことにとらわれていたように思えた。
オスクリード神に観察されてるからって、なんだ。
別に普段から、オスクリード神がボクに語りかけてくるなんてことはない。
単に、ボクが時の魔法を使うときに、ただ力を貸してくれるだけの存在だ。
それで、死んでも時間をさかのぼってやり直させてくれるんだ。だったらボクは、神の思惑だって、利用するだけだ。
そうはいっても、オスクリード神のボクへの興味がいつまで続くかわからない。
だからボクは、死なないようにしないと。
死ぬときの苦しみはもう二度と味わいたくないし、なにより、せっかく助けたエナ姉とティナ姉が、またピンチに逆戻りしてしまうのもきつい。
次に時が巻き戻ったら、記憶が継承されているかもわからない。
神の観察を知りながら、こんな風に考えてしまえるなんて。ボクはもう、狂ってるのかもしれないな。
でも、決して命を粗末にしない。どれだけ罪を重ねようと、精一杯、生き延びて、姉たちを救い出してみせる。
あと3人。マナ姉も、ドナ姉も、ノナ姉も。
ボクは、ひとつの時計をなでた。
<沙羅双樹の予知時計>。
この旅で新しく得た魔法だ。
重要な選択の先を知り、何度でも選び直すことができる魔法。
悪夢袋が尽きてしまったために、今回は使う機会がなかった。
けれど、この時計はこの先、ボクの生存率を上げてくれるだろう確信があった。
たよりにしてるよ。
<沙羅双樹の予知時計>の針が、わずかにふるえたように見えた。まるで、ボクが使う機会を待ちわびているように。
「ティナ姉も助けたよ。今は、外縁の村の仲間のところにいるはず。少し休んだら、会いに行こう」
「ティナも無事なのね。よかった」
ティナ姉を迎えに行ったら、一度、ニナ姉のところに帰ろう。
そうしたら、ほかの姉たちを探す旅に出よう。
もしかしたら、姉たちが全員が、エナ姉と同じ貴族に買われていたのかもしれない。
だとしたら、エナ姉に聞けば、次の身請け先のヒントが見つかるかもしれない。
それに、ニナ姉も何かつかんでいるかもしれない。
「かもしれない」ばかりだけれど、希望はある。
エナ姉とティナ姉を助け出したことで、ボクは停滞していた時間が、動き出したように感じていた。
「ところでミナ、気になることがあるの。聞いていいかどうかわからないけれど」
「なに?」
「ずいぶん真っ黒になったみたいだけど、どうしたの? 日焼け?」
とぼけた質問。エナ姉、昔とぜんぜん変わってない。
ボクはくすりと笑って、「そうだよ」と答えた。
●アタック03-16 再会
それからボクたちは、湖畔でぐったりしているところを漁師に見つけられ、湖畔の村に案内してもらった。
湖畔の村で一晩休んでわずかばかりの体力を回復し、還らずの森の外縁の村を目指し、歩みを進めている。
昨晩は悪夢を見なかったみたいだ。悪夢袋が空のままなのが、わずかに不安ではある。
数日をかけて、ボクたちはようやく還らずの森へと近づいた。
その間にボクは、今までに経験してきたことを、エナ姉に話して聞かせた。
エナ姉も、ボクの知らないこれまでの生活のことを聞かせてくれた。
ようやく外縁の村に近づいてきたところでボクたちは、反対側から来たノームの男に声をかけられた。
「ありゃ。闇エルフと普通のエルフが連れ立って歩いているなんて、初めて見るな」
たしかに、珍しい光景だろう。
エナ姉がボクのことを、「妹なのよ。日焼けしたみたい」と紹介する。
「いやいや。日焼けじゃないだろってのはオレでもわかるぜ」
エナ姉は、それでもボクが正真正銘の妹だと、言い切った。
「騙されてるとか脅されてるとかじゃなければいいんだけどよ。この先の村に入るときにゃ気をつけな。森の闇エルフどもに搾取されすぎて、闇エルフを憎んでる。エルフの姉ちゃんと一緒なら大丈夫かもしれないが、な」
そんな会話を交わした後、ノームの男はすれ違って去っていく。
ボクは去り際のノームに声をかけた。
「心配してくれてありがとう、フェル」
「あれ? オレ、名前言ったっけ。ま、いっか。じゃあな」
ノームの姿が見えなくなった後、エナ姉が怪訝な表情で尋ねた。
「さっきのノーム、お知り合い?」
うん。知ってるといえば知ってるし、初対面といえば初対面。
煙に巻くような答え方をして、ボクはフェルのことを思い起こしていた。
あいまいだけど、「フェルと一緒に旅をした」ことだけは覚えていた。
フェルに助けてもらったことを、ボクだけが知っている。
ボクは心の中で、フェルにもういちど、感謝の気持ちを告げた。
外縁の村に着いた。
村人たちの視線は気になるけれど、積極的に何かをしかけてくることはない。
ボクがエルフのエナ姉と一緒に歩いているからだろうか。
前にこの村に来たときの騒ぎを知っている人もいるかもしれない。
ボクたちは、まっすぐボラミーの家に向かった。
庭先にいたビバイアがボクたちに気がつくと、慌てて中に駆け込む。
やがてボラミーとティナ姉が飛び出してきた。
「ミナ、無事だったか! あまりに遅いから心配したぞ」
「ミナ、おかえり。エナも……よかった」
「ぜんぶミナのおかげ。ミナがいなければ命はなかった」
「それは、ここにいるみんながそう」
エナ姉、ティナ姉とボクは再会を喜び合う。
その光景を、ボラミーとビバイアがまぶしそうに見つめている。
ボクはそこにいるみんなに、とびきりの笑顔で告げた。
「ただいま!」
【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ 完
【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/4897513
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ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
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※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
神の戯れによる時の繰り返しに気づき、一度は絶望しますが、それでもあきらめずに旅を続けます。
そしてついに、吸血鬼マルティンを倒し、双子の姉エナとティナを助け出すことができたのでした。
今回は、この冒険の結末を描きます。また、その後に感想もお届けします。
【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-15 静かな湖畔にて
ボクとエナ姉は、湖のほとりで横並びになって、あお向けに寝そべっている。
全力を出し切った後の疲れと、水から上がった体の重さで、しばらく動けそうになかった。
ずぶ濡れで冷え切った体を、雲ひとつない空から、太陽が温めてくれる。
「まぶしい……」
エナ姉が、腕を光の方向にかざしながら、かみしめるように言う。
「太陽の光を浴びられる日がまた来るなんて、思いもしなかった……」
エナ姉の透き通った瞳から、涙が一筋、見えた。
エナ姉は、やがてボクに向けて語りかけた。
「ありがとうねミナ。私がすべてを取り戻したのは、ミナのおかげよ」
「ずっと探してたんだ。姉さんたちの行方を。ボクだけじゃなく、ニナ姉も。ずっと、ずっと探してたんだ」
「うん。うん」
「やっと見つけた。やっと会えた」
「うん」
「会いたかった……」
「私も。また会えるなんて、本当に夢のよう」
エナ姉は、やわらかな笑みをボクにくれた。
奴隷として売られて、10年以上も、ずっとずっと辛い体験を重ねてきたに違いない。
それでも、こんな表情ができるんだ。ボクに変わらない笑顔を向けてくれるんだ。
ボクはこの旅で、自分が辛くてしんどい目にたくさんあってきたって思ってた。
けど、エナ姉の笑みはそれだけで、それが全部吹き飛んでしまうだけの力があった。
なんだか、自分がすごくちっぽけなことにとらわれていたように思えた。
オスクリード神に観察されてるからって、なんだ。
別に普段から、オスクリード神がボクに語りかけてくるなんてことはない。
単に、ボクが時の魔法を使うときに、ただ力を貸してくれるだけの存在だ。
それで、死んでも時間をさかのぼってやり直させてくれるんだ。だったらボクは、神の思惑だって、利用するだけだ。
そうはいっても、オスクリード神のボクへの興味がいつまで続くかわからない。
だからボクは、死なないようにしないと。
死ぬときの苦しみはもう二度と味わいたくないし、なにより、せっかく助けたエナ姉とティナ姉が、またピンチに逆戻りしてしまうのもきつい。
次に時が巻き戻ったら、記憶が継承されているかもわからない。
神の観察を知りながら、こんな風に考えてしまえるなんて。ボクはもう、狂ってるのかもしれないな。
でも、決して命を粗末にしない。どれだけ罪を重ねようと、精一杯、生き延びて、姉たちを救い出してみせる。
あと3人。マナ姉も、ドナ姉も、ノナ姉も。
ボクは、ひとつの時計をなでた。
<沙羅双樹の予知時計>。
この旅で新しく得た魔法だ。
重要な選択の先を知り、何度でも選び直すことができる魔法。
悪夢袋が尽きてしまったために、今回は使う機会がなかった。
けれど、この時計はこの先、ボクの生存率を上げてくれるだろう確信があった。
たよりにしてるよ。
<沙羅双樹の予知時計>の針が、わずかにふるえたように見えた。まるで、ボクが使う機会を待ちわびているように。
「ティナ姉も助けたよ。今は、外縁の村の仲間のところにいるはず。少し休んだら、会いに行こう」
「ティナも無事なのね。よかった」
ティナ姉を迎えに行ったら、一度、ニナ姉のところに帰ろう。
そうしたら、ほかの姉たちを探す旅に出よう。
もしかしたら、姉たちが全員が、エナ姉と同じ貴族に買われていたのかもしれない。
だとしたら、エナ姉に聞けば、次の身請け先のヒントが見つかるかもしれない。
それに、ニナ姉も何かつかんでいるかもしれない。
「かもしれない」ばかりだけれど、希望はある。
エナ姉とティナ姉を助け出したことで、ボクは停滞していた時間が、動き出したように感じていた。
「ところでミナ、気になることがあるの。聞いていいかどうかわからないけれど」
「なに?」
「ずいぶん真っ黒になったみたいだけど、どうしたの? 日焼け?」
とぼけた質問。エナ姉、昔とぜんぜん変わってない。
ボクはくすりと笑って、「そうだよ」と答えた。
●アタック03-16 再会
それからボクたちは、湖畔でぐったりしているところを漁師に見つけられ、湖畔の村に案内してもらった。
湖畔の村で一晩休んでわずかばかりの体力を回復し、還らずの森の外縁の村を目指し、歩みを進めている。
昨晩は悪夢を見なかったみたいだ。悪夢袋が空のままなのが、わずかに不安ではある。
数日をかけて、ボクたちはようやく還らずの森へと近づいた。
その間にボクは、今までに経験してきたことを、エナ姉に話して聞かせた。
エナ姉も、ボクの知らないこれまでの生活のことを聞かせてくれた。
ようやく外縁の村に近づいてきたところでボクたちは、反対側から来たノームの男に声をかけられた。
「ありゃ。闇エルフと普通のエルフが連れ立って歩いているなんて、初めて見るな」
たしかに、珍しい光景だろう。
エナ姉がボクのことを、「妹なのよ。日焼けしたみたい」と紹介する。
「いやいや。日焼けじゃないだろってのはオレでもわかるぜ」
エナ姉は、それでもボクが正真正銘の妹だと、言い切った。
「騙されてるとか脅されてるとかじゃなければいいんだけどよ。この先の村に入るときにゃ気をつけな。森の闇エルフどもに搾取されすぎて、闇エルフを憎んでる。エルフの姉ちゃんと一緒なら大丈夫かもしれないが、な」
そんな会話を交わした後、ノームの男はすれ違って去っていく。
ボクは去り際のノームに声をかけた。
「心配してくれてありがとう、フェル」
「あれ? オレ、名前言ったっけ。ま、いっか。じゃあな」
ノームの姿が見えなくなった後、エナ姉が怪訝な表情で尋ねた。
「さっきのノーム、お知り合い?」
うん。知ってるといえば知ってるし、初対面といえば初対面。
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あいまいだけど、「フェルと一緒に旅をした」ことだけは覚えていた。
フェルに助けてもらったことを、ボクだけが知っている。
ボクは心の中で、フェルにもういちど、感謝の気持ちを告げた。
外縁の村に着いた。
村人たちの視線は気になるけれど、積極的に何かをしかけてくることはない。
ボクがエルフのエナ姉と一緒に歩いているからだろうか。
前にこの村に来たときの騒ぎを知っている人もいるかもしれない。
ボクたちは、まっすぐボラミーの家に向かった。
庭先にいたビバイアがボクたちに気がつくと、慌てて中に駆け込む。
やがてボラミーとティナ姉が飛び出してきた。
「ミナ、無事だったか! あまりに遅いから心配したぞ」
「ミナ、おかえり。エナも……よかった」
「ぜんぶミナのおかげ。ミナがいなければ命はなかった」
「それは、ここにいるみんながそう」
エナ姉、ティナ姉とボクは再会を喜び合う。
その光景を、ボラミーとビバイアがまぶしそうに見つめている。
ボクはそこにいるみんなに、とびきりの笑顔で告げた。
「ただいま!」
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<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
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2025年12月9日火曜日
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3) FT新聞 No.4703
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
(明日槇 悠)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第3回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
そんな中、領主レーモンの次女、エスクラルモンドは夜ごと城塞から南方を見つめ、天から降り注いだ火が神の軍となって向かってくる場面を幻視していた。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
お手のものの権謀術数を巡らせつつあった……。
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
●本編
■Act2.過酷なる冬(前編)
——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。
Aベルトラン「じゃあベルトラン、説明しちゃうけど、
(背景シート・信仰)【カタリ派の人たちは、自分たちをカタリ派と呼んでいるわけではない。集団とみなす必要のある場合には、単に自分たちを帰依者《アミクス・ド・ディウ》と呼ぶ。カタリ派の信仰はキリスト教の正統に逆らうものだ。というのも、彼らは旧約聖書で描かれる神、世界の創造主とはサタンであると信じているのだ。】
つまりヤハウェ=サタン、らしい。
【あらゆる人間には聖なる魂が内在しているものの、肉体という物質に囚われてしまっている。】グノーシスみてーだな。【人々が食事をするとき、性的な交わりを持つとき、血や体液に触れるとき、物質世界の悪に穢れに犯されるとみなすのである。(以下略)】
これがカタリ派だ。そしてその中で一番優れた、戒律を守っているエリートがベルトランだ」
C「シーンカード、【乾いた汗のすえた臭い】。エスクラルモンドは、人目を避けるようにセシルのいる小屋に向かいます。そこでエスクラルモンドはセシルの教理を聞きます。
Cエスクラルモンド「セシルさん、夜になるとまた南方にあの神の軍隊が見えるのです。あれは一体なにを指し示すのでしょうか。あれはなにか、フィリッパが、よからぬことを企てていることと関係があるのでしょうか」
手を合わせていると、カーテンの向こうからセシルは煙管をくゆらせて、乾いた汗のすえた臭いが漂ってきます」
A「セシル……俺が演ってもいいんだけど、俺がやらないほうがいいかもしれない。セシルを疑ってるベルトランと疑われてるセシルをやっちゃうことになるから、俺次第で話の内容を決めてしまうことができる」
B「分散してったほうが。じゃあセシル、やります」
Aセシル「私だよ! セシルだよ!(一同笑)」
Bセシル「あんたは誰だったかねえ」
Cエスクラルモンド「私です。エスクラルモンドです」
Bセシル「ああ、あの。最近は、どうだい」
Cエスクラルモンド「南方からやってくる神の軍隊はますますこのモンセギュール城塞に近づいてきております。その神の軍勢の放つ火の勢いで、私のかんばせからも汗が流れ落ちてきます」
Bセシル「そう心配することは、ないよ。肉体は、魂を縛る器。ただ信仰を続けなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。でも、姉のフィリッパはその信仰を守っているかどうか、どうも疑わしいところがあるのです」
Bセシル「それを判断するのは、人間のする仕事ではない。ただあの子は……信仰に篤いとはいえない。だからこそ今、受難がふりかかっているのでしょう。彼女の夫、ピエール・ロジェが、ベルトランからどのように言われているか、知っていますか?」
Cエスクラルモンド「どのように言われているのですか?」
Bセシル「彼は妻帯者でありながら、娼婦や、複数の女性と関係を持とうとしている」
Cエスクラルモンド「ハッ……!(息を呑む)」
Bセシル「それは敬虔な信仰とはいえません。おそらく十字軍の軍勢が彼に油断をもたらしているのは、それを主が見ているからでしょう。すべては神の差配のもとに動いているのです。あなたが心配する必要はありません」
Cエスクラルモンド「わかりました。しかし、そのような状況であれば、私はあの二人、ピエール・ロジェとフィリッパの夫妻のことをよく観察しておかねばならないと思っております」
Bセシル「では、今度フィリッパを私のもとに連れてきなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。是非連れてきます!」
C「と言ってエスクラルモンドは、セシルの館を後にし、自分の家に帰る」
A「【夜闇を駆ける馬の足音】がレーモン邸に(笑)(シーンカードを出してナレーション権奪取)
Aベルトラン「コルバさん。コルバ君。いま、エスクラルモンドがセシルの元から帰ってくるのを見かけたから、入れ替わりで君が、セシル邸に行ってはくれんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「はははは。そしてエスクラルモンドがなんの話をしたか、それをすぐ探ってくれはせんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「君、ニンジャか!(笑) じゃあ君、ちょっと今から行ってくれんかね」
Dコルバ「御意」
A「そしてコルバはセシル邸に行きました」
D「マンションに行きました。普通に入っちゃっていいんですよね、表から」
A「いいよ。マンションじゃないと思うけど(笑)。ふつうにエスクラルモンドが行ったのと同じように洗礼とか、『私もぉー、ペルフィッチャなりたいですー!』みたいな。そういうノリで、まあ既婚者だから厳しいとおもうけど、なんか相談事とかのフリで行きなさい。『レーモンが冷たくてー!』みたいな」
D「はい。ピンポーンと押しました」
Dコルバ「すみませーん」
Bセシル「あら、珍しいわね。コルバ」
Dコルバ「あのー少しいろいろ、生活のこととかでご相談があって、ぜひお話させていただければとおもいまして。お時間、よろしいでしょうか」
Bセシル「ええ。構いません」
Dコルバ「では失礼します。ところで、なにやらエスクラルモンドとお話されていたと聞いたのですが、どういったお話をされていたのでしょうか」
Bセシル「ええ、細かな内容はお伝えできませんが……彼女の生活の悩みについての相談を受けていました」
Dコルバ「そうですか……。私は彼女の母親なので、その内容というのを保護者として聞かねばならないのです」
Bセシル「うーん。難しいですが……ここで聞いたことは、他言無用です」
Dコルバ「はい。……御意」
Bセシル「では。……コルバ(CORBA)の名前の文字を入れ替えると、コブラ(COBRA)になるから、彼女は本当に教義に則したことをできているのかと、まあしょうもない相談に乗っていましてね。あと名前が長すぎて、エスクラルモンドと書くとき、本当に大変だという話を聞いていました」
Dコルバ「あの子がそんなことを……」
Bセシル「本当にしょうもない話なので、私も相談に乗りながらもちょっと困ってはいたんですけれど、あの子は心が弱いところがあるので、母親であるあなたも相談に乗ってあげてください」
Dコルバ「わかりました……ありがとうございます」
A「コルバは一部始終をベルトランに話した。
Aベルトラン「コルバ君、あのババアは薬をやってるよ!(一同笑)純粋に考えて、はぐらかされた可能性が高い。(膝を叩きながら)君の娘が、変になっていっているのに、あの女は、それを誤魔化して、君のことまで、侮蔑したんだよ。コルバ君! 今度、日を改めてセシルのところに行って、こう言いなさい。『相談があります。すみません、懺悔します。私は、教皇軍と内通しています』それで、あのババアに揺さぶりをかけなさい」
Dコルバ「はっ!!(一同笑)」
Aベルトラン「ロジェの後釜を君にしようかな(笑)」
Dコルバ「従順なしもべなので」
Aベルトラン「うーん。じゃあ君に。僕、ちと行くところあるから、行くわ」
Dコルバ「はっ」
Aベルトラン「おいガニエル! ガニエルゥー! ガニエル……ガニエル君」
Cガルニエ「ガルニエです……!(一同笑)」
Aベルトラン「すまない。すまない。えーっとガニエル……あっ、ガルニエか! すまない」
Cガルニエ「なんでしょうか!」
Aベルトラン「ちなみに君、エスメラ…………エスクラルモンドからなんか聞いてない?」
Cガルニエ「あー、私は遠くから見つめているだけです! エスクラルモンドのことは……」
Aベルトラン「あー……んあー……だからお前……だからお前、キモいって言われんじゃない! いや、ごめん(笑)。今のは冗談だよ。今のは冗談だよ、ガニエル。君、勇気を持って話しかけて、エスクラルモンドと早く世帯を持って、そんぐらい仲良くなって、セシルのことをもっと深く聞いてほしいんだがね」
Cガルニエ「そ、そうですか……」
Aベルトラン「そして……フィリッパのことをエスクラルモンドに話すときに……そうだな、セシルがフィリッパのことをよく思っていないみたいなので、ここらへんをガニエルが……あ、ガルニエ君!(一同笑)君、もうガニエルに改姓したらどうかな」
Cガルニエ「これは、親からもらった大事な名前です」
Aベルトラン「ガルニエ君。深慮遠謀を思いついたんだが、ちょっと考えをまとめるので、ガルニエ君、また後日呼び出すよ。ガルニエ君」
Cガルニエ「分かりました……」
Aベルトラン「早く仲良くなれ。エスクラルモンドと。とっとと」
B「ちょっと使ってみていいですか? (シーンカードを出してナレーション権奪取)【山の端をかすめる雲】を眺めながら、コルバが去った後、セシルは思いました。自らの質問、【あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?】セシルが織る布には、人間の血のような赤色が。何度縫っても、同じように赤い布を織ってしまう」
A「クレイジーサイコババアじゃん(笑)」
D「なるほどね」
B「セシルは、このままだと十字軍に囲まれたモンセギュールは危ういことになると感じています。しかし政府のよしなしごと、人間界の出来事は、肉体を持った人間がなすものであって、ペルフェッチャである彼女にとっては、もはやどうでもいいことなのです。彼女は今、死の淵にあり、すべての出来事はサタン——主の思し召しのままに動くであろうと、すべてを達観しています。そしてベルトランに対しても、人間の出来事に囚われているようではまだまだだと、ちょっと強キャラババア感を出して、血の色の布を織っていました」
◯Act2.過酷なる冬(後編) に続く……
●登場人物/3つの質問
セシル・デ・モンセヴェール……完徳者《ペルフェッチャ》。信徒たちの指導者的な立場にある年配の女性。
1. ファイユを見ると、あなたは誰のことを思い出すのか?
2. あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?
3. 自分が死の淵にあると信じなかったなら、あなたは果たして救慰礼《コンソラメンテ》を受けて完徳者《ペルフェッチャ》になったろうか?
コルバ……レーモン・ド・ペレーユと結婚している中年女。フィリッパとエスクラルモンドの母親。
1. あなたは何人の子どもを埋葬してきたか?
2. フィリッパを見ると、あなたは誰のことを思い出すか?
3. あなたがいちばん後悔していることは何か?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
(明日槇 悠)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第3回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
そんな中、領主レーモンの次女、エスクラルモンドは夜ごと城塞から南方を見つめ、天から降り注いだ火が神の軍となって向かってくる場面を幻視していた。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
お手のものの権謀術数を巡らせつつあった……。
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
●本編
■Act2.過酷なる冬(前編)
——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。
Aベルトラン「じゃあベルトラン、説明しちゃうけど、
(背景シート・信仰)【カタリ派の人たちは、自分たちをカタリ派と呼んでいるわけではない。集団とみなす必要のある場合には、単に自分たちを帰依者《アミクス・ド・ディウ》と呼ぶ。カタリ派の信仰はキリスト教の正統に逆らうものだ。というのも、彼らは旧約聖書で描かれる神、世界の創造主とはサタンであると信じているのだ。】
つまりヤハウェ=サタン、らしい。
【あらゆる人間には聖なる魂が内在しているものの、肉体という物質に囚われてしまっている。】グノーシスみてーだな。【人々が食事をするとき、性的な交わりを持つとき、血や体液に触れるとき、物質世界の悪に穢れに犯されるとみなすのである。(以下略)】
これがカタリ派だ。そしてその中で一番優れた、戒律を守っているエリートがベルトランだ」
C「シーンカード、【乾いた汗のすえた臭い】。エスクラルモンドは、人目を避けるようにセシルのいる小屋に向かいます。そこでエスクラルモンドはセシルの教理を聞きます。
Cエスクラルモンド「セシルさん、夜になるとまた南方にあの神の軍隊が見えるのです。あれは一体なにを指し示すのでしょうか。あれはなにか、フィリッパが、よからぬことを企てていることと関係があるのでしょうか」
手を合わせていると、カーテンの向こうからセシルは煙管をくゆらせて、乾いた汗のすえた臭いが漂ってきます」
A「セシル……俺が演ってもいいんだけど、俺がやらないほうがいいかもしれない。セシルを疑ってるベルトランと疑われてるセシルをやっちゃうことになるから、俺次第で話の内容を決めてしまうことができる」
B「分散してったほうが。じゃあセシル、やります」
Aセシル「私だよ! セシルだよ!(一同笑)」
Bセシル「あんたは誰だったかねえ」
Cエスクラルモンド「私です。エスクラルモンドです」
Bセシル「ああ、あの。最近は、どうだい」
Cエスクラルモンド「南方からやってくる神の軍隊はますますこのモンセギュール城塞に近づいてきております。その神の軍勢の放つ火の勢いで、私のかんばせからも汗が流れ落ちてきます」
Bセシル「そう心配することは、ないよ。肉体は、魂を縛る器。ただ信仰を続けなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。でも、姉のフィリッパはその信仰を守っているかどうか、どうも疑わしいところがあるのです」
Bセシル「それを判断するのは、人間のする仕事ではない。ただあの子は……信仰に篤いとはいえない。だからこそ今、受難がふりかかっているのでしょう。彼女の夫、ピエール・ロジェが、ベルトランからどのように言われているか、知っていますか?」
Cエスクラルモンド「どのように言われているのですか?」
Bセシル「彼は妻帯者でありながら、娼婦や、複数の女性と関係を持とうとしている」
Cエスクラルモンド「ハッ……!(息を呑む)」
Bセシル「それは敬虔な信仰とはいえません。おそらく十字軍の軍勢が彼に油断をもたらしているのは、それを主が見ているからでしょう。すべては神の差配のもとに動いているのです。あなたが心配する必要はありません」
Cエスクラルモンド「わかりました。しかし、そのような状況であれば、私はあの二人、ピエール・ロジェとフィリッパの夫妻のことをよく観察しておかねばならないと思っております」
Bセシル「では、今度フィリッパを私のもとに連れてきなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。是非連れてきます!」
C「と言ってエスクラルモンドは、セシルの館を後にし、自分の家に帰る」
A「【夜闇を駆ける馬の足音】がレーモン邸に(笑)(シーンカードを出してナレーション権奪取)
Aベルトラン「コルバさん。コルバ君。いま、エスクラルモンドがセシルの元から帰ってくるのを見かけたから、入れ替わりで君が、セシル邸に行ってはくれんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「はははは。そしてエスクラルモンドがなんの話をしたか、それをすぐ探ってくれはせんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「君、ニンジャか!(笑) じゃあ君、ちょっと今から行ってくれんかね」
Dコルバ「御意」
A「そしてコルバはセシル邸に行きました」
D「マンションに行きました。普通に入っちゃっていいんですよね、表から」
A「いいよ。マンションじゃないと思うけど(笑)。ふつうにエスクラルモンドが行ったのと同じように洗礼とか、『私もぉー、ペルフィッチャなりたいですー!』みたいな。そういうノリで、まあ既婚者だから厳しいとおもうけど、なんか相談事とかのフリで行きなさい。『レーモンが冷たくてー!』みたいな」
D「はい。ピンポーンと押しました」
Dコルバ「すみませーん」
Bセシル「あら、珍しいわね。コルバ」
Dコルバ「あのー少しいろいろ、生活のこととかでご相談があって、ぜひお話させていただければとおもいまして。お時間、よろしいでしょうか」
Bセシル「ええ。構いません」
Dコルバ「では失礼します。ところで、なにやらエスクラルモンドとお話されていたと聞いたのですが、どういったお話をされていたのでしょうか」
Bセシル「ええ、細かな内容はお伝えできませんが……彼女の生活の悩みについての相談を受けていました」
Dコルバ「そうですか……。私は彼女の母親なので、その内容というのを保護者として聞かねばならないのです」
Bセシル「うーん。難しいですが……ここで聞いたことは、他言無用です」
Dコルバ「はい。……御意」
Bセシル「では。……コルバ(CORBA)の名前の文字を入れ替えると、コブラ(COBRA)になるから、彼女は本当に教義に則したことをできているのかと、まあしょうもない相談に乗っていましてね。あと名前が長すぎて、エスクラルモンドと書くとき、本当に大変だという話を聞いていました」
Dコルバ「あの子がそんなことを……」
Bセシル「本当にしょうもない話なので、私も相談に乗りながらもちょっと困ってはいたんですけれど、あの子は心が弱いところがあるので、母親であるあなたも相談に乗ってあげてください」
Dコルバ「わかりました……ありがとうございます」
A「コルバは一部始終をベルトランに話した。
Aベルトラン「コルバ君、あのババアは薬をやってるよ!(一同笑)純粋に考えて、はぐらかされた可能性が高い。(膝を叩きながら)君の娘が、変になっていっているのに、あの女は、それを誤魔化して、君のことまで、侮蔑したんだよ。コルバ君! 今度、日を改めてセシルのところに行って、こう言いなさい。『相談があります。すみません、懺悔します。私は、教皇軍と内通しています』それで、あのババアに揺さぶりをかけなさい」
Dコルバ「はっ!!(一同笑)」
Aベルトラン「ロジェの後釜を君にしようかな(笑)」
Dコルバ「従順なしもべなので」
Aベルトラン「うーん。じゃあ君に。僕、ちと行くところあるから、行くわ」
Dコルバ「はっ」
Aベルトラン「おいガニエル! ガニエルゥー! ガニエル……ガニエル君」
Cガルニエ「ガルニエです……!(一同笑)」
Aベルトラン「すまない。すまない。えーっとガニエル……あっ、ガルニエか! すまない」
Cガルニエ「なんでしょうか!」
Aベルトラン「ちなみに君、エスメラ…………エスクラルモンドからなんか聞いてない?」
Cガルニエ「あー、私は遠くから見つめているだけです! エスクラルモンドのことは……」
Aベルトラン「あー……んあー……だからお前……だからお前、キモいって言われんじゃない! いや、ごめん(笑)。今のは冗談だよ。今のは冗談だよ、ガニエル。君、勇気を持って話しかけて、エスクラルモンドと早く世帯を持って、そんぐらい仲良くなって、セシルのことをもっと深く聞いてほしいんだがね」
Cガルニエ「そ、そうですか……」
Aベルトラン「そして……フィリッパのことをエスクラルモンドに話すときに……そうだな、セシルがフィリッパのことをよく思っていないみたいなので、ここらへんをガニエルが……あ、ガルニエ君!(一同笑)君、もうガニエルに改姓したらどうかな」
Cガルニエ「これは、親からもらった大事な名前です」
Aベルトラン「ガルニエ君。深慮遠謀を思いついたんだが、ちょっと考えをまとめるので、ガルニエ君、また後日呼び出すよ。ガルニエ君」
Cガルニエ「分かりました……」
Aベルトラン「早く仲良くなれ。エスクラルモンドと。とっとと」
B「ちょっと使ってみていいですか? (シーンカードを出してナレーション権奪取)【山の端をかすめる雲】を眺めながら、コルバが去った後、セシルは思いました。自らの質問、【あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?】セシルが織る布には、人間の血のような赤色が。何度縫っても、同じように赤い布を織ってしまう」
A「クレイジーサイコババアじゃん(笑)」
D「なるほどね」
B「セシルは、このままだと十字軍に囲まれたモンセギュールは危ういことになると感じています。しかし政府のよしなしごと、人間界の出来事は、肉体を持った人間がなすものであって、ペルフェッチャである彼女にとっては、もはやどうでもいいことなのです。彼女は今、死の淵にあり、すべての出来事はサタン——主の思し召しのままに動くであろうと、すべてを達観しています。そしてベルトランに対しても、人間の出来事に囚われているようではまだまだだと、ちょっと強キャラババア感を出して、血の色の布を織っていました」
◯Act2.過酷なる冬(後編) に続く……
●登場人物/3つの質問
セシル・デ・モンセヴェール……完徳者《ペルフェッチャ》。信徒たちの指導者的な立場にある年配の女性。
1. ファイユを見ると、あなたは誰のことを思い出すのか?
2. あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?
3. 自分が死の淵にあると信じなかったなら、あなたは果たして救慰礼《コンソラメンテ》を受けて完徳者《ペルフェッチャ》になったろうか?
コルバ……レーモン・ド・ペレーユと結婚している中年女。フィリッパとエスクラルモンドの母親。
1. あなたは何人の子どもを埋葬してきたか?
2. フィリッパを見ると、あなたは誰のことを思い出すか?
3. あなたがいちばん後悔していることは何か?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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