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2024年11月21日木曜日

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.20『猫の女神の冒険』その1 FT新聞 No.4320

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.20
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『猫の女神の冒険』は、まずTRPGでプレイしました(その節は、岡和田先生を始め、参加者の皆様たいへんお世話になりました)。
たいてい中世ヨーロッパ風世界観か現代が舞台の作品が多いTRPGでは珍しい、古代エジプト風世界が舞台となっていて、とても楽しかったです^^
その『猫の女神の冒険』がソロアドベンチャーにもなっているということで、プレイせずにはいられませんでした!
TRPGではモンスターのウルク(目先の欲望に弱い粗忽系男子)でプレイしたので、ソロアドベンチャー版では別のモンスターにして、TRPG版とは一味違った冒険を楽しもうと、ウッキウキして選んでいたところ、種族の選択項目に「人間」が目に留まりました。
そう言えば、『猫の女神の冒険』は導入が「わけあってウルクの衛兵に追いかけられてピンチ」とあり、TRPG版では各自「わけあって」の部分を自由に考えてもよいとなっています。
これだけ自由度と柔軟性が高い設定なら、昔自分がソロアドベンチャーをプレイしていて、バッドエンドを迎えさせてしまったキャラに復活戦として新たな冒険をさせられることができるのではないか?
この時、真っ先に頭に浮かんだのが、以前『ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇』所収の「クトゥルフ深話」の主人公の灰鼠深尋(はいねず・みひろ)でした。
「クトゥルフ深話」は、仲間達と力を合わせて積極的に困難に立ち向かっていく正統派主人公が魅力的だったのですが、プレイヤーが私だったばっかりにバッドエンドを迎えさせてしまったという申し訳なさがありました。
『猫の女神の冒険』が舞台となっているズィムララ世界と、『クトゥルフ深話』が舞台となっている現代地球は、だいぶかけ離れているので、その辺りをすり合わせて『猫の女神の冒険』と融合させるために自分なりに妄想していたら、いつになく長くなってしまいましたf^^;
そこで分割掲載して下さることになり、御厚意まことに感謝いたしますm(__)m
そういうわけで、今回の小説リプレイは、「クトゥルー神話の世界の探索者が、ズィムララ世界の冒険者になっている」という、何とも摩訶不思議なシチュエーションになっております。
最後になりますが、このたび羽生飛鳥名義でKADOKAWA様より『賊徒、暁に千里を奔る』が、11月29日に刊行予定となりました!!
鎌倉時代に実在した盗賊小殿(ことの)を主人公にした歴史ミステリです。
足を洗った元盗賊の老侍の所へ、運慶や後鳥羽院などの鎌倉時代の有名人が訪れて彼の過去の悪事の謎解きをするというのが、あらすじです。興味のおありの方は、お時間ある時に御笑覧下さいませm(__)m

(編集部より)
本作は2024年6月6日(木)に配信されたリプレイ記事の続編となります。
本記事掲載に併せてバックナンバーを再掲載いたしますので、未読の際はぜひそちらもお読みください。

『GBクトゥルー短編集小説リプレイvol.4『クトゥルフ深話』 FT新聞 No.4152』
https://ftnews-archive.blogspot.com/2024/06/gbvol4ft-no4152.html

※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

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モンスター!モンスター!TRPGソロアドベンチャー
『猫の女神の冒険』リプレイ
その1

齊藤(羽生)飛鳥
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(※『暗黒詩篇』所収『クトゥルフ深話』リプレイのラストから続いています)


0:深尋、再び
暗転。
暗澹
暗黒。
暗黙……。
魚人たちの群れによる極彩色の悪夢を漂う中、黒い人影が再び私の前に現れた。
そいつは、アメンホテプだか何とかトテップだかいう邪神だと、無駄に御丁寧な自己紹介をした後、こう語りかけてきた。
「灰鼠深尋(はいねず・みひろ)。キミの悪あがきは、とてもボクを楽しませてくれたよ。キミが全身全霊賭けて救おうとした地球はきれいさっぱり滅んじゃったけど、ご褒美に新たな世界へ送ってあげる。そしてまた、ボクを楽しませて」
「断る」
「キミに拒否権及び選択肢があると思う?」
それから、地響きと土煙と共に、私は自宅ごと見知らぬ異世界に放り出されたことを知った。
『オズの魔法使い』のドロシーか、私は。
そんな感想を胸に抱きつつ、おそるおそる窓の外を見る。
我が家は、小高い丘の上に落とされたようだ。
眼下には中世ヨーロッパ風の景観が広がり、あの黒い人影野郎が喜びそうで癪に障るが、驚いた。頬をつねって夢ではないか、古典的な確認作業までした。
それから、ネット環境をチェックした。
予想通り、どれも電源すら入らない。
ネット環境を使えないグレーハッカーなんて、四次元ポケットのない青い猫型ロボットと同じ。
あの黒い人影野郎は、私が最大限の実力と才能を発揮できない世界へ放り出し、高みの見物を楽しもうという魂胆らしい。
これで私が絶望すれば、あいつが大喜びすると思うと、面白くない。
ここは簡単にくじけず、もっと現状把握して好転を目指そう。
私はうちにあった双眼鏡で外の景色を観察することにした。道行く人々がいるので、そこに焦点を合わせて見てみる。
どの人も、龍探索や最終幻想してそうな、ファンタジーな格好をしていた。
今のウサ耳ドクロのイラストがプリントされたTシャツと中学校時代の体操着のハーフパンツ姿で外出しては、絶対に浮くこと間違いなしだ。そもそも、元いた世界でもこの格好では外出しない。
……よく考えたら、地球の存亡を賭けた戦いに、なんでこんなだるだるなファッションで挑んでいたんだろうな、私……。
……と、あれこれふり返ればきりがない。
確か去年のハロウィンで使った仮装用の衣装が残っているはず。
私はクローゼットを開け、「万霊節用」と黒いサインペンで書かれた段ボール箱を探し出す。
中には、デブ猫ヒデヨシの着ぐるみと共に、中世ファンタジーでよく見かけるスタテッド・レザーと探検家の基本セットという名のリュックサックがあった。
後は武器があればいいのだけど、私は平和と非武装を心から愛する日本人グレーハッカー。銃刀法違反になるような物は家に一切置いていない。
前にバックパッカーのアルマス・ハンにお土産でもらったエクスカリバー型のペーパーナイフなら、短剣代わりになりそう。包丁と違って鞘もついているから、持ち運びも安全だ。
あと、もうちょい破壊力とリーチがあるエモノがほしい。
私は、ロフトを探る。
あった。前にアウトドア用に買った、多機能スコップ!
これなら、ショート・ソード代わりになるし、ある程度は使い慣れている。
モカ色のスタテッド・レザーとスコップだと、モグラを擬人化したみたいなコーデだけど、気にしている場合ではない。
この格好なら、あの黒い人影野郎が私をどんな地獄へ放り出してくれたのか、偵察しに行っても違和感なくこの世界に溶けこめる。
そうだ。換金性が高そうだから、趣味でコレクションしていたパワーストーンをいくつか持っていこう。
私は、ファンタジーな外出支度を終えると、家を出てふもとの街へ赴いた。
こうして歩くこと30分、ようやく街に到着した。
幸いなことに、住民達には日本語が通じた。厳密に言えば、お互い違う言語で会話しているのだが、なぜか通じ合ってしまうのだ。不思議だが、便利だ。
(キミへのサービスだよ)
脳内に黒い人影野郎の声が聞こえた。完全に野郎のおもちゃ扱いで忌々しく思ったが、ここで腹を立てては奴の思うつぼ。気に留めず、私はこの世界の第一歩を踏み出した。
まず、宝石店でパワーストーンを換金して6gpを手に入れた。
それから宝石店の主人が、私のスコップを見ながら、手っ取り早く稼ぎたいなら、北の洞窟へ行ってそこの宝石の原石を採ってくればいいと仕事を持ちかけてきた。
本当、この手の異世界はすぐに仕事が手に入るから無職にならずにすむ。その点は、元いた世界よりも労働環境がいい。
かつてはグレーハッカーというインドアな職業だったけれど、体を動かすのは嫌いではない。週に3回は運動不足解消にジムとキックボクササイズへ通っていたから、体力には自信がある。
稼ぎたいし、体力にも問題がないので、私は迷うことなく宝石店の主人の話に乗った。
それが、間違いのもとだった。
洞窟は、ウルク達の採石場だったのだ。
宝石店の主人が、何も知らないよそ者を騙し、宝石の原石泥棒をさせる計画だったと気づいた時には、ウルクの衛兵たちに追いかけ回されていた。
魚人たちの群れにトラウマ持ちの私だが、今度はウルクたちにトラウマ持ちになりそうだ!
直接この修羅場へ送りこんでくれた宝石店の主人への恨みもなくはない。ただ、あいつへ売ったパワーストーンは前に入手した『黄衣の王』のちぎったページでくるんであるから、いずれろくな目に遭わないのは確実だから、まだ許せる。
許せないのは、あの黒い人影野郎だ。奴がどこからか今の私の現状を見て笑っていると思うと、ウルクたちに捕まって殺される恐怖よりも、奴への怒りや恨みつらみが先立つ。
こうなったら、何が何でも生き延びてあいつをぶん殴る。
私は、気を取り直して出口を探す。
怒ったウルクの衛兵たちが接近してくる物音が聞こえるけど、この袋小路の廊下では、他に行き場がない。
救おうと思った世界が滅ぶ。
パソコンの画面越しに、仲間が魚人たちに惨殺されるのを目の当たりにする。
そして、黒い人影野郎に現在進行形でもてあそばれている。
あいつをぶん殴るためには何が何でも生き延びたいのに、なんてことだ!
世界を救おうとしていた時は、自分の持てる知識と人脈を駆使して戦うグレーハッカーだったけど、ネット環境もなければ仲間もいない今の自分は、無力な冒険者。
くやしさがこみ上げてくる。
「私の願いを聞き届けられる神々よ、どうかわたしをお助け下さい! いかなる代償とてお支払する覚悟です!」
苦しい時の神頼みならぬ、悔しい時の神頼みで、気がつけば私はそう叫んでいた。
叫んだら、ウルクたちに居場所がばれてしまうのに、何をしているんだろう?
まだ正気が完全に戻ってないのかな。
ああ……今度こそ終わったな、人生。
前は世界が滅んだけど、今度は私が滅ぶんだな……。
その時、背後でまばゆい閃光がほとばしる。
驚くと同時に、遠方から聞いたことのない声が響く。
「そなたの請願を受け入れましょう」
「かなり不意打ちの無茶ぶりだったのに、いいの!?」
「死を免れるつもりなら、転移門へと足を踏み入れなさい」
「転移門? よくわからないけれど、この閃光の中へ足を踏み入れればいいのね? わかった!」
ウルクたちの怒号が近づいて来る。
黒い人影野郎をぶん殴るためには、何が何でも生き延びる。
その願いをかなえてくれる相手が現れたんだ。
迷っている暇はない。
私は、転移門をくぐり抜ける。
落下、そして、また落下。
ひたすら落下。
ここまで5秒。
遊園地の絶叫マシンのような落下感に、ちょっと涙目になりかけたところで、足元に地面があるのを感じられた。
よろよろと移動を再開する。
もう、私が今までいた洞窟ではない。
まるで、クイズ番組でおなじみの古代エジプト神殿を彷彿とさせる場所だった。ただし、こちらは古びたところが一切ない、ピカピカの新品の神殿だ。
あまりの荘厳な雰囲気に飲まれかけたところで、私の目の前に猫のような頭部をした身長2.1メートルの女性が、古代エジプト風な服を十割増しセクシーにしたファッションを着こなし、立っているのに気がついた。すごいファッションだ……。でも、実際の古代エジプトの服は、女性も胸丸出しという、現代日本人からすれば度肝を抜かすデザインだったことを考えれば、まだセーフか。
私があれこれ考えていると、猫のような頭部の女性が語りかけてきた。
「武器を置きなさい、定命者よ。話し合いましょう。わらわセクメトが、そなたの嘆願を聞き入れ、命を助けたのです」
私の願い。
それは、あの黒い人影野郎をぶん殴ること。
それを聞き入れて助けてくれたということは、このニャンコ女神様は、あの邪神に匹敵する御力の持ち主!!
ここは、彼女と良好な関係を築かねば!!
ビジネスは、最初の7秒で印象が決まるから、ベストコンディションで面談しないと。
その時、ニャンコ女神様の背後に、もう一人、どちらかと言えば小柄で、やっぱり十割増しセクシー古代エジプトファッションをした黒い巻き毛にピンクの角と翼をはやした悪魔っ娘がいるのに気づいた。
よく見ると、足がひづめだ!
でも、あの黒い人影野郎や魚人たちにくらべたら、圧倒的にまともだ。
私は、ニャンコ女神様に言われた通り、ペーパーナイフとスコップを床に置いた。



1:深尋、女神と面談する
あの何とかトテップとか抜かした黒い人影野郎によって陥っていた窮地から私を救ってくれたとは、ニャンコ女神様は紛うことなく真の女神。女神オブ女神。奴と対抗し得る力を持つ偉大な女神。もうこれでもかってくらい、女神様。喜んで跪いて頭を垂れるわ。
それから顔を上げると、ニャンコ女神様が微笑んでいるように見えた。
「生命を救っていただき、感謝いたします、ニャン……セクメト女神様。私はあなた様にお仕えします」
そして、信頼を勝ち取って力を得て、いつの日か必ずあの黒い人影野郎をぶん殴る。
セクメト女神様は、わたしの言葉に大きく笑った。
「定命者よ、そなたは愉快ですね。立ちなさい。わらわに忠誠を誓えば、そなたは不死にもなれます。それを望むなら、ですが」
不死より、あのヒキガエルのウンコみたいな黒い人影野郎をぶん殴る力とチャンスが欲しいな。
そう思ったけど、ビジネスにおいて、いきなり本音をぶちまけるのは、悪手。
私は、セクメト女神様に笑みを返した。
女神様は、肩をすくめて話を続けた。
「テン=メア、この冒険者が身を清め、リフレッシュできるような場所へ連れて行ってあげなさい」
テン=メアと呼びかけられて、セクメト女神様の後ろに控えていた悪魔っ娘が私のそばに来る。
「さっぱりしたら、今宵夕餉を御一緒いたしましょう、深尋。魚がお好きだといいのだけど」
「サーモン丼を先頭に、シラス丼も海鮮バラチラシ丼もマグロ丼もナメロウ丼も大好きです」
「後でそのレシピを作って提出するのを最初の奉仕としていただくとして、あなたに望む本来の奉仕が何かをお話いたしましょう」
セクメト女神様は、そう言って私にウィンクする。よかった。つかみはOKみたいだ。
だけど、まだ自己紹介していないのに、どうして私の名前がわかったんだろう? これも、女神様の偉大なお力のなせる業なのかな。
私が考えていると、テン=メアが甘い声で話しかけてきた。セクシー系美女の見た目で萌え声とは、最強ではないか。
「では、深尋。どうぞ、あたしと一緒に来て下さいな」
彼女は今まで私たちがいた大広間から連れ出すと、活き活きとした表情を見せる。
「ようこそ、ズィムララの世界へ。ここは驚異に満ちた場所。あなたがあたしたちに力を貸し、何よりご主人様に奉仕してくれるのなら、まさしくぴったりのタイミングで来てくれたってことになるわね」
そう言いながら、彼女は私を神殿の下層にある数種類のプールがあるフロアに案内してくれた。


2:深尋、リフレッシュする
好みの水温のプールに入ってもいいとのことで、日本人ならお風呂というセオリーの下、私はありがたくぬるま湯の温度のプールを選んだ。
土埃にまみれた装備を脱いでベンチに置くと、私はプールに浸かる。
大浴場に浸かっている気分だ。ITビジネスパートナーのアブドル・アフ・アキビに招待されて行ったスパを思い出す。……アブドルも、世界と言うか地球もろとも滅んでしまったのかと思うと、涙が出てきそうだ。
「入浴のお手伝いをしましょうか〜?」
しんみりしていたところへ、陽気な声が聞こえてきたので、我に返る。
プールサイドには、風呂付きメイド三人娘が両手に石鹸やローションを抱えて現れた!!
しんみり気分は吹き飛んだけど、何か風呂をのぞかれていて恥ずかしい!!
「ありがとね。でも、石鹸やローションとか入ったそのトレイを置いて行ってくれればいいから」
「は〜い!!」
風呂付きメイド三人娘は、来た時と同じ陽気な声で返事をして去って行く。
それから、心置きなく入浴してさっぱりとリフレッシュして風呂から上がった。
そこには、十割増しセクシー古代エジプトファッションの正装が用意され、武器や鎧は消えていた。
平たい顔と胸に似合うかな、古代エジプト風ファッション? セクメト女神様とテン=メアみたいにスタイルがいい人たちが着ているのを見る分にはきれいだからいいけれど、いざ自分が着るとなると、相当ハードルが高いんだよね……。
私が悩んでいるのをどう勘違いしたのか、テン=メアは武器や鎧は現在修繕やメンテナンス中だと教えてくれた。
それから、テン=メアはウェルカムドリンクとばかりに、ミルクのようなワインの入った杯を渡して庭へ案内しにかかる。
完全に、これ以外の服はあるか、聞くタイミングを逃してしまった。
こうなれば、自棄だ!
私は、勇気を振り絞って十割増しセクシー古代エジプトファッションの正装を着た。胸が緩くてウェストがきつい。体形改善、もっと頑張ろう……。
それから、テン=メアの案内に従い、庭に出た。
その瞬間、美しさに思わず息を飲んだ。
可憐な花々。そよ風。心地よい香気。青々とした空。黄金のように赤々と輝く沈みゆく太陽。
ここしばらく、地殻変動や放射能の灰の雨とかの異変に蝕まれた地球を見てきただけに、この美しい風景に激しく心を揺さぶられた。
月は3つもあるけど!
「すごくきれい……」
陳腐だけどこれ以上適切な表現を、私は見つけられなかった。
それから、私は小高い丘の頂上部にある美しいピラミッドの中にいることに気づいた。底部には一筋の川が流れている。このピラミッドは街、あるいは小さな都市の中心部に位置しているみたいだ。
「深尋がいるのは、セクー=アテムというセクメト女神様の支配下にある主要な都市なの」
「つまり、首都みたいな所ね」
「そういうこと。ねえ、深尋は今までどんな戦いをしてきたの?」
「あまりたいした戦いはしてないよ」
私は、苦い顔になる。
「地球っていう私達の種族が住んでいる惑星の存亡を賭けた戦いに、仲間達と一緒に力を合わせて挑んで見事に敗北しちゃったから。生き残っているのは、私だけなんだ」
「たいしたことないって、何だっけ!? 自分達の世界を守る戦いって、充分たいしたことあるわよ。セクメト女神様は、大きな戦いに挑む気概があるから、あなたを見込んだのね」
「テン=メア、もしかしなくてもいい子!?」
荒んでいただけに、テン=メアの優しさが身に染みる。
「慈悲深いセクメト女神様にお仕えしているから、当然!」
テン=メアは、いやみなく冗談めかして答える。
久しぶりに気の置けない会話ができて、私はほっとした。
「さあ、女神の夕餉に加わる時間になりました。行きましょう」
テン=メアは、私の手を取ってセクメト女神様のピラミッドまで案内してくれた。

(続く)

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年現在、『歌人探偵定家』(東京創元社)を6月に刊行。11月29日には『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行予定。


初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
モンスター!モンスター!TRPGソロアドベンチャー
『猫の女神の冒険』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
https://ftbooks.booth.pm/items/5889199


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2024年11月20日水曜日

第1回【白い小屋、赤い絶望】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4319

第1回【白い小屋、赤い絶望(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ


※ここから先はゲームブック【白い小屋、赤い絶望(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


●作品紹介

****

狂気とは何か、目に、耳に肌に心に。
日常ならざるそれは観察され思索され絵に文字に綴られてきた。
感覚の外に人の外にあり、人の手で語られるもの。
深淵のふちを散策する、クトゥルーゲームブック短編集 第2弾

——「クトゥルー短編集2 暗黒詩篇」裏表紙より

****


永遠のクトゥルフ初心者ぜろです。
今回はFT書房のゲームブック「クトゥルー短編集2 暗黒詩篇」の中から、丹野佑著「白い小屋、赤い絶望」に挑戦します。
「クトゥルー短編集」はそのタイトルのとおり、クトゥルフ神話を題材にしたゲームブックの短編をまとめたもの。「暗黒詩篇」はその2巻になります。
この短編集には本作「白い小屋、赤い絶望」を含め、6本の短編が収録されています。

・ヨグ=ソトースの飛沫
・白い小屋、赤い絶望
・忌まわしきグラファリアンの蛹
・クトゥルフ深話
・いあいあキャバクラ
・最期の日に彼女は

「クトゥルー」「クトゥルフ」の表記のゆれは、気にしないでください。どっちも意味は同じです。そういうものです。
私はなんとなく「クトゥルフ」表記がしっくりくるので、そちらを使うことが多いですが、作中の呼び方に合わせて臨機応変に表記は変わります。

さて、FT書房の短編集では、本の冒頭に作品紹介の四コマ漫画がついておりまして、そこで各作品の簡単なあらすじが紹介されているのが常です。
この作品にも、中山将平氏による四コマ漫画がついています。
まずはこの四コマ漫画の文章を拾って、作品の雰囲気をつかみましょう。


****

吹雪の中、たどりついた一軒の山小屋。
だがそこは、壁一面に赤い文字が書かれた異様な空間。
直前まで誰かがいた痕跡があるが、無人。
ここで何が起こったのか、確かめなければ。
そう、たとえどれだけ恐ろしい真実が隠されていようとも……

****

雪で閉ざされた山小屋。
グループで入ればクローズドサークルもののミステリになっているところです。
「ある閉ざされた雪の山荘で」なんてタイトルがしっくりきそう。いやそれ作品ちがう。

雪の山荘ものは、集団で閉じ込められた中で殺人事件が起きるというものです。
でもここに1人で迷い込むとなると、途端にホラーに。
雨の中、森の中にひっそりとたたずむ洋館に一夜の宿を求めるパターンの方が近いイメージですね。
そしてこの作品はクトゥルフもの。なにも起きないはずはなく……。

とにかく、主人公はひとりなのです。たったのひとり。
どんな脅威も蹴散らせるだけの力を持ってるわけでもない、ちっぽけな人間風情なのです。
いったい何があったのか、その謎を解き明かし、そしてなんとか生還したいものですね。

パラグラフ数は37。はっきりと短編です。
しかし、パラグラフ数を確認しに行った私は、うっかり見てしまいました。
パラグラフ37のラストに「END5」と書いてあるのを。
どうやらマルチエンディングを採用していて、しかも最低5つはエンディングがある作品のようです。

37あるパラグラフのうち、最低5つをエンディングに割いている……。
残りのパラグラフ数の少なさを考えると、いったいいかなる分岐が待ち受けているというのでしょうか。

そして、ルールの説明など何もなく、いきなり物語がスタートするようになっています。
ならば、四の五の言うのはなしにして、私も早速チャレンジャーモードに移行して、プレイを開始しましょう!

主人公の名前を決めます。
私はゲームブックに挑戦するときには、名前だけつけています。
特に詳細な背景や設定を考えるわけでもありませんし、リプレイ上は主人公の一人称なので、名前が登場することも滅多にありません。
単に、気分の問題です。

舞台は、吹雪の山小屋か。
どこの国だろう。
わからないから、たまには日本人にしよう。
主人公の名前はサクタロウ。丸井サクタロウです。
丸井は……まる。つまりぜろですね。サクタロウは、私がそんなあだ名をつけられていたことがあったなぁと思い出したので。

リプレイの文中は、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。


●アタック01-1 どこへも行けない物語

俺はサクタロウ。丸井サクタロウだ。
俺は今、危機に瀕していた。
登り始めたときは、これ以上ないってくらいの登山日和だったのだ。
それが昼を過ぎた頃から、空はにわかにかき曇り、雪がちらつき始めた。
あまつさえ、それが吹雪にまで発展してしまったのだ。(「あまつさえ」を使って短文を作りなさい。配点5点)

記憶を頼りに進み、山小屋までたどり着けたのは、奇跡と言っても良いだろう。

こじんまりとした山小屋だ。
戸に鍵はかかっていない。

入れる!

中の空気はあたたかい。誰か先客がいるのか。

しかしそこには、誰もいなかった。
いや、誰もいなかっただけならまだいい。
むしろそこには、異様な光景が広がっていたのだ。

まず、壁一面に赤い文字が描かれている。
それは俺が知るどの文字とも異なっていたが、俺は受ける印象から、文字だと認識した。
意味はまったくわからないが、不吉な何かが書かれているに違いない。
少なくともこの状況で、愛の告白やハッピーバースデイが書いてあると思う能天気さは持ち合わせていない。
だいたいこの作品のタイトルが「白い小屋、赤い絶望」なのだ。白い小屋の中に赤い文字で書かれたものは「絶望」以外にありえないだろう。

そして床だ。
床にも赤い塗料と思しきもので、複雑な図形が描き出されている。
まるで魔法か呪術の儀式でも行われた後のようだ。
まさかここから誰かが異世界に召喚でもされたのか。

さらに臭い。
生臭い。小屋じゅうが生臭い。

普段テレビなどで事件・事故などのニュースを流しているが、それらでは伝えきれない情報。
それが臭いだ。
俺は東北の震災のとき、支援のために3か月めに岩手の地へ降り立った。
その時に感じた魚の腐ったような生臭さは、俺にリアルとはどういうことかを教えてくれた。
あの情景や質感を感じさせる表現を、俺はまだ獲得できないでいる。伝えることの難しさを感じる。
とにかく言いたいのは、五感の中でも特に臭いを伴った情報が、もっとも強い実感と質感をもって俺を恐怖させるということだ。

そして、こんな状況にも関わらず、暖炉には火がくべられている。
さっきまで、誰かがいたということだ。

「そして誰もいなくなった」後にこの場にやってきた感。
1人また1人と殺されてゆくクローズドサークルの連続殺人事件が終わった現場についた感。
事件が完全に終わっているのなら、まだいい。どこかに生き残りがいたとしたら、どうか。
俺はまず、その人物が犯人ではないかと疑うところからはじめないと、命ヤバイのではないか。

これどうしよう。
この小屋の中で過ごすことが、吹雪荒れ狂う山中で過ごすよりも安全って言っちゃっていいのだろうか。
俺としては、ここで少しの時間暖を取り、身体を温めた後に外に出て、カマクラでも作った方がマシにすら思える。
まあ、こんな吹雪を想像もしていなかった俺の貧弱装備じゃ、それもかなわないけれど。

ところで、暖炉の薪は残り少ない。
ここで過ごすなら、まずは薪の補充が優先かもしれない。
しかる後に、ここで何が起きたのか、それともこれからまだ何か起きようとしているのか、確かめなければ。

こうして物語は始まった。

そしてパラグラフ1へと進む。
そこには、こうあった。

「いまは『午後9時』だ。
 今後、文章の中で『1時間が経過した』と書かれていたら、『現在の時間』に1時間を足すこと。
 『現在の時間』が『午後12時』に達したら(つまり、現在から3時間が経過したら)、24へ進め。」

これがパラグラフ1の全文だ。

おわかりいただけただろうか。

つまり、薪はあと3時間で燃え尽きるのだろう。
そうだ。でも違う違うそうじゃない。
俺が言いたいのはそういうことじゃない。

このパラグラフ1には、「3時間が経過したら24へ進め」という指示しか書かれていない。
今、どこに進んで何を調査すればいいとか、そういう記述が一切ないのだ!

この指示に従うのなら、俺はただ、3時間が経過するのを待つしかない。
そして24に進む。
薪が燃え尽きた。空気が冷えて来た。
吹雪は止まない。寒さに体力も気力も奪われ、俺は意識を失っていく。

『END2 遭難』

俺は死んだ。


●アタック02-1 小屋の中

はいはーい。もといもとい。仕切り直すよー。
さすがにこの結末はあんまりなんで、このまま俺は丸井サクタロウでいくよー。

パラグラフ1で、次に進むべき場所が示されないという致命的バグに遭遇してしまったので、ついやってしまった。
でも実は迷うことはないのだ。
なぜなら、すぐ隣のパラグラフ2が、どうやら1の次に進むべき場所になっているようなのだ。だから何気に隣が目に入ると、「どうやらここらしいな」と気づけるってわけ。
単純に「2へ進む」の記述を書き忘れただけのようだ。
まあ、パラグラフ1の次に2に進むのが当たり前ではないゲームブックなので、致命的なミスといえば致命的なミスなのだが。
読者のフォローの範囲内でなんとかなるレベルで良かった。

そんなわけで、吹雪で遭難しかかり山小屋に一時避難した俺は、小屋の中の、不気味な儀式でもやったかのような惨状にギョッとする。
そこから行動開始だ。

壁の文字と床の図形、そして臭いについて説明したが、実はそれだけではない。
さっきから、誰かに見られているような視線を感じる。これはこの情景がもたらす被害妄想なのか。それとも実際に誰かにどこかから見られているのか。
暖炉の火が燃えるパチパチいう音に混じって、クスクス笑いが聞こえたような気がした。

さて、どんなに怖がっても動かなければはじまらない。
とにかく薪の補充が最優先課題だ。

調べられる場所はないか、あたりを見回す。

部屋には簡素な棚がある。

部屋の隅には、登山用のリュックサックが5人分。
1か所にまとめて置いてあるところをみると、どうやら消えた先客は5人連れだったようだ。

入口そばには小さな物置があるようだ。
薪なら、こういう場所に置いてあるものかなと思う。

あとは、便所と思われる戸がひとつ。
便所はこの小屋の中で、唯一視線が通らない場所だ。
人がいないか最初に確認することは、安全の確保にもつながるかもしれない。

とか言っていたら、上げ板も発見。
床下収納か、地下への階段か。

そんなところだ。
さて、どこから確認したものか。

・暖炉
・棚
・荷物(時間経過)
・物置(時間経過)
・便所
・上げ板

俺は、薪があるとしたら物置がいちばん可能性が高いと思っている。
しかしそこは、時間経過をともなうようだ。
それなら、時間が経過しない簡単なところから調査を進めた方が良いかもしれない。
地の文は薪の確保が最優先と、やたらとしつこく勧めてくるが、何があったのか、漠然とでもつかんでおけば、薪を探す際にも危険な行為をしなくても済むかもしれないからな。

俺はまず、この小屋に設置されている棚を確認した。
そこには、日用品が雑然と並べられている。
電源の入っていないラジオがある。何枚か写真が収められた帳面がある。

俺はラジオを手に取った。
電源を入れてみる。入る。しかし吹雪に阻まれているのか、音は拾えない。
残念ながら、ニュースから情報を把握することはできそうにない。
ラジオは使えそうにないので、俺は乾電池だけ失敬しておくことにした。
電池は残っているみたいだから、どこかで使えないとも限らない。

写真の挟まった帳面は、この山小屋の記録みたいなものだった。
ごくごく普通の写真だ。ここを訪れた登山者や夜景など。
記念に残してあるのだろう。
この得体のしれない儀式につながるようなものはまったくなかった。

棚はこんなところかな。
次は、と。

俺は、残された登山客のリュックに目をつけた。
もしかしたら、何かヒントになるものが入っているかもしれない。

次回、リュックの中からこんにちは。

【現在の時間:午後9時】

■登場人物
丸井サクタロウ 主人公。登山中に吹雪に見舞われ、山小屋に避難する。しかしその山小屋は異様な状況だった。


■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「白い小屋、赤い絶望」
著者:丹野 佑
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/2484141


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2024年11月19日火曜日

Re:ヒーローVSヒーロー(前)@ファンタジー映画村 FT新聞 No.4318

FT新聞編集長の水波流です。
過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』番外編:ファンタジー映画村。
元は丹野氏が20代のとき、約3年に渡って書き綴られた名コラムの再録です。
(2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412)

☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメントは全て当時のものとなっております)

 おはようございます。丹野です。
 大型連休が明けて天候も湿っぽくなってきましたね。落ち込むには最適の時期です。
 気温や気圧と、気分の上下には相関関係があるようで、気圧が下がった日や曇りの日にはセンシティブな気分になることが多いようです(個人差はあります)。
 いまは天気予報アプリなどで簡単にその日の気圧も調べることができますから、どうにも気分が落ち込む日などは、「これは気圧のせい」と考えてみると、少しはラクになるかもしれません。


■スーパーヒーローは世界を変える
 はい、今週もまた映画の話です。ゴールデンウィークの前後くらいいいじゃないですか!
 非常によく似たテーマを持った内容の作品が連続で公開されたので、せっかくなので比較して語ってみたいと思います。一方は『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』(以下、『BVS』と書きます)。もう一方は、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』(以下『CW』)です。
 長めのタイトルからわかるとおり、それぞれスーパーヒーローものの映画シリーズに当たります。『BVS』は「DCエクステンデッドユニバース」シリーズの2作目。『CW』は「マーベルシネマティックユニバース」の13作目(!)です。

 たびたびスーパーヒーロー映画をファンタジーの一種として紹介しています。現代を舞台にしたファンタジーとして解釈が可能であるのは、ヒーローの存在する世界は決して現実の世界と「まったく同じ」ではいられない、と丹野は考えています。
 だいたいの映画作品では、ヒーローの持つパワーが世界に影響を与えていく過程を描いきます。ですが、近年は様々なキャラクターの映画をシリーズ化して公開するのが流行。そうなると、ある作品で描かれた事件が、次の作品では「過去」として描かれることになります。

 たとえば『BVS』は、『マン・オブ・スティール』の続編にあたります。同作はスーパーマンの戦いを描いていましたが、『BVS』のオープニングでは、そんなスーパーマンの戦いが一般の人々からどのように見えていたのかが非常に象徴的に示されます。
 『BVS』はまさにこの点がテーマになっており、あまりに強すぎる力が突然現れたとき、世界がどのように変わっていくのか、ということが強調されます。バットマンやレックス・ルーサーがスーパーマンの存在をどう受け止め、どんな反応をするのかが物語を進める原動力となります。


■完全に別世界になったMCU
 ひとつの映画作品でも世界は大きく変質していきますが、そんな事件がいくつも重なっていくと、我々の住むこの地球とは、似ているようでまったく違った世界になっていきます。
 『CW』は、今までの12本もの映画で語られたストーリーの結果、大きく変質してしまった世界が見どころの一つです。
 同作のストーリーはこうです。一国を滅ぼしかねない戦闘力を持つアベンジャーズが世界に与える影響を恐れ、各国はアベンジャーズを国連の監視下に置く協定を決議。協定に反対するキャプテン・アメリカと、協定を受け入れようとするアイアンマンは意見の違いから対立を深めていく……。

 まさに、ヒーローが世界を変えてしまったことに対する社会の反応がテーマと言えます。
 特筆すべきは、こうした大きな事件が作品世界のさまざまな部分に細やかな影響を与えいる点です。社会の在り方だけでなく、個人の感情や細かなメカニックに至るまで、現実とはどこか違う世界であることがたびたび感じられるようになっています。
 映画の序盤に大きな字で「現在」と表示されるのですが、我々の知っているこの現在とはまったく違う世界であることを感じずにはいられません。
 こうした、個々のキャラクターだけではない、作品世界全体が確実に変化していくような描写は、長いシリーズでなければ味わえない醍醐味といえます。近年は連続ドラマの流行により、世界が変化していく過程の描き方が洗練されてきているようです。え

 ……と、ここまで書いてすでにけっこうな分量になってしまいました。
 2本扱っているので記事も2回、ということで、内容についてはまた次回お話しします。
 それではまた。

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2024年11月18日月曜日

☆方針変更のお知らせ☆ FT新聞 No.4317

おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です。
現在FT書房では「ローグライクハーフ」のサプリメントとして「ヒーローズオブダークネス」を展開しているわけですが、1つ、いや2つ、方針を修正していくことに決めました。


◆出し惜しみは、なしだ。
私たちがFT新聞をはじめたとき、私は宣言しました。

「出し惜しみは、なしだ」

この宣言は、私たちFT書房がもっとも大切にしているものが「熱狂」であることと、深く関わっています。
誰かが何かに大きくハマるとき、いちばん大切なものは「気軽に入って来られること」と「気持ちよく楽しめること」さらには「仲間がいること」だと、私は考えています。
それなのに、私たちが情報を出し惜しむようなことがあったとしたら、どうでしょうか?
ゲームブックやシナリオを途中まで見せて、「続きを知りたかったら、本を買ってね」なんて、言ったとしたら?
楽しめる人と楽しめない人が出てくる……そんな状況で、心おきなく熱中することができるでしょうか?
読者の「熱狂」と製作者の「出し惜しみしないこと」は、対になっている。
それが、私の考え方です。

それなのに、私はこの「ヒーローズオブダークネス」で、配信版では8種類のクリーチャーを紹介して、残りの12種類は製品版でご紹介します、などと言ってしまった。

これは、魂の堕落です。
FT書房は、そうじゃないだろ。
「熱狂」がそこにあるのだとしたら、「買わないと遊べない」なんて、線を引くのは間違っている。
順番が、逆なんだ。
私が望むのは、「買ってくれた人だけが楽しめる」ことじゃない。
望むのはただ、「楽しんでくれた人が、気に入って買ってくれること」。

私は、私を裏切ってしまった。
でも、まだ間に合う。
そこで、私は「ヒーローズオブダークネス」に登場する【種族】は、残りの12種類についても配信していくことに、決めました!


◆協力を、求めたい。
それと同時に、「ローグライクハーフ」の、さらにはFT新聞の姿勢も、初心に返っていくことを決めました。
配信されたシナリオやサプリメントに対して広くご感想を求めていき、フィードバックによって完成度を高めていく。

だから、【種族】の使用感や好みについて、広くご意見を求めていきます。
遊びづらい点を修正、あるいは説明の補足をするなど、磨き上げていきたい。
ぜひ、力を貸してください。


◆wikiにも載せていきます☆
また、多くの人が楽しめるように、これらの展開をBOOTHの無料配布やwikiに掲載、随時更新していこうと考えています。

↓ローグライクハーフwiki
https://x.gd/WoYat

「ローグライクハーフwiki」では基本、中級、追加ルールに加えて公式シナリオ「黄昏の騎士」「雪剣の頂 勇者の轍」が遊べます。


◆タスクをどう吸収する?
「ローグライクハーフ」の活動を通じて体力オバケに成長しつつある杉本ですが、人間に与えられた時間は平等です。
「シナリオを書きながら」「サプリメントも育てて」「月曜記事も書く」という姿勢にも、限界があります。
だから、ここしばらくはこの月曜記事を使って、「ヒーローズオブダークネス」のサポートをしてまいります。
改訂された種族の変更点の説明。
新しい種族のご紹介。
このあたりをやっていこうと考えております☆


◆今週の「改訂」。
今週の「ヒーローズオブダークネス」は、【吸血鬼】が更新されました!
【眷属化】などによって生まれるクリーチャーがただの【アンデッド】から、特殊能力を持ったものへと変更されました☆
〈ゾンビ・ファイター〉〈スケルトン・ウォリアー〉〈アシッド・グール〉〈ホーント〉〈ワイルド・レイス〉が作成可能になりました。

https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_HoD_NewKindred_Vampire.txt


◆【新種族】の進行☆
続けての12種族についても、着々と進行中です。
今週はお見せできる【種族】がありませんが、「内定」したもののご紹介ならできます。

東国都市キョウから【妖狐】の登場です!
ローグライクハーフ公式シナリオ「あやかし」「秋雨の狐」に登場したこのキャラクターは人間と狐の姿を行き来することができ、【人間形態】では【魔術】を、【狐形態】では【幻術】を使います☆

  紹介された【種族】
・ゴブリン
・オーク
・吸血鬼
・おどる剣
・ジグリ・ザグリ
・ケンタウロス
・魔猫
・バルサムデビル

  「内定」した【種族】
・妖狐

  候補対象の種族
・ゴーレム
・地龍(リンドヴルム)


◆その他の改訂点。
Kaffaさんからご指摘をいただいたのですが、配信した「ヒーローズオブダークネス」の【種族】たちの能力値と成長限界は10-15レベルどまりのものです。
また、装備品や従者の購入について、読者によっては疑問が生じる部分があります。
そのあたりの足まわりを修正した原稿を再構築しておりますので、今しばらくお待ちください!
「だいたい分かるから遊んでるね」という方は、遊んでいてね!


それではまた!


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2024年11月17日日曜日

Ψ『桶狭間の合戦〜天下統一の試練〜』 FT新聞 No.4316

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シミュレーション・ウォーゲーム
『桶狭間の合戦 〜天下統一の試練〜』

 作:藤原憲大
 監修:岡和田晃
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【はじめに】(岡和田晃)

 今回お届けするのは、「FT新聞」では新機軸、日本史上、屈指の著名な戦いである「桶狭間の合戦」に題材をとったシミュレーション・ウォーゲームです。
 できるだけシンプルなルールでプレイアビリティを高めていますが、伏兵ルールで「戦場の霧」を再現しているのがポイント。
 往年の「タクテクス」誌付録ゲームのように、別途用意してあるコンポーネントを切り取ってプレイしてみてください(マップは116%に拡大してもよいかもしれません)。
 ソロプレイにも向いていますよ。ユニット数も少なく、ヘクスではなくグリッドマップを採用しているため、『ファイアーエムブレム』に代表されるコンピュータ・シミュレーションRPGの感覚でも遊べそうです。
 
 本作は岡和田晃が2024年度春学期に東海大学文芸創作学科で開講したゲームデザイン論の最優秀作です。
 ここ数年、アバロンヒル・クラシックの『スターリングラード攻防戦』『D-DAY』『ドイツアフリカ軍団』、SPIの『第一次世界大戦』やGDWの『アルマの戦い』といったシミュレーション・ウォーゲームの古典的な傑作群をプレイしており、そうした経験がデザインに反映されています。
 本作もテストプレイを重ね、監修時に気づいたポイントをデザイナーの藤原さんにフィードバックして完成度を高めて参りました。充分「遊べる」ものに仕上がったと自負しております。お試しあれ。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

【ゲーム概要】

<桶狭間の合戦>

世は、戦国時代。
全国の大名は、天下統一を目指し勢力をのばしていた。その中でもひと際、力を持ち天下統一を目指していたのは、駿河の大名・今川義元であった。今川義元は、優れた頭脳から、領国を豊かにし軍事力も備えていた。
その今川義元は、天下統一に向け、領国の拡大を目指し、隣国・尾張への侵攻を企んでいた。
対して、尾張は、尾張の虎の異名を持つ織田信秀が大名として鎮座していた。織田信秀は、今川義元の弟にあたる今川氏豊
(うじとよ)の居城である那古野(なごや)城の攻略をするなど大名としての名も高くあった。
時は、天文20年(1551)、激動の戦国時代を生き抜いた織田信秀は病に侵され生涯を終えた。この出来事により、織田家をはじめ尾張は、乱れた。
永禄3年(1560年)、その乱雑になった尾張を、今川義元は、2万5000人の軍勢を率いて尾張略奪を目指し、運命を分ける戦いへと向かった。
この運命を分ける、合戦にプレイヤーとして参加し、合戦に勝利せよ。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

↓【ゲーム本編】はこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/Battle_of_Okehazama.pdf

↓【コンポーネント】はこちら
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/Battle_of_Okehazama_Component.pdf


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2024年11月16日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第614号 FT新聞 No.4315

From:水波流
「ナイトランド・クォータリー Vol.37 吟遊詩人と物語の生まれるところ」
門倉直人氏によるユルセルーム世界の新作小説と聞いて購入。
『ホシホタルの夜祭り』を彷彿とさせる、まさに吟遊詩人特集にふさわしい短編でした。
統一王都、薄暗がり、逍遥舞人と懐かしい単語も。

from:葉山海月
「ヤマカイはお人よしだから、簡単にお金を貸しちゃダメ」という人が20万借りに来る。
世の中はカオスに満ちている。

From:中山将平
僕ら今日16日(土)と明日17日(日)「幕張メッセ」で開催の「ゲームマーケット2024秋」に参加しています!
ブース配置は【K22】です。
新発売の作品は「アランツァクリーチャー事典×シナリオ作成ガイド」と「四猫亭の幽霊」。
そのほかに関東のゲームマーケットでは初めて扱うことになる作品は「廃城の秘宝」と「モンスター!モンスター!TRPG 猫の女神の冒険」。
僕も現地にいますので、ぜひお立ち寄りいただけましたら。
「このイベントには行けないけど発売新刊気になるなぁ」という方は、以下のURLより【BOOTH通販予約】をお使いいただけましたら。
https://ftbooks.booth.pm/


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■11/10(日)~11/15(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2024年11月10日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4309

『堕落都市の迷宮』ローグライクハーフd66シナリオ 
・お待たせしました、「ローグライクハーフ」の最新d66シナリオ『堕落都市の迷宮』をお届けいたします!
これは堕落都市と呼ばれる、悪の種族が統治する街ネルドにおける地下の冒険を描いたシナリオです。
敵はFT書房から刊行された本格派ゲームブック「狂える魔女のゴルジュ」にも登場するモータス教授。
味方には獣人にして七賢者の1人である魔法使い、アーケイン・オルヒが登場します☆
シナリオは「ヒーローズオブダークネス」に対応していますが、ノーマルな遊び方でも問題ありません。
主役はモンスター! なこの一本!
どうぞゆっくりとご堪能あれ!


2024年11月11日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4310

秋と冬の話★ 
・今回は冬コミを含むこれからのFT書房のスケジュール。
そして「ヒーローズオブダークネス」のお話。
ローグライクハーフのサプリメント「ヒーローズオブダークネス」と、対応シナリオである『堕落都市の迷宮』を、無事に配信することができました!
これからしばらくは、このサプリメントの完全版を出すための調整を繰り返していきます。
「ローグライクハーフ」の基本ルール配信時と同様、たくさんのフィードバックを受けて、デザインを強化していくつもりです。
もしよければ、8種類の【種族】のプレイ体験について、ご意見をお寄せくださいm(__)m
基本ルールのときと同じく、そうした意見を取り入れてブラッシュアップしていく予定です。
詳しくは本記事を!


2024年11月12日(火) 中山将平 FT新聞 No.4311

カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第33回 
・中山氏が創作している『カエルの勇者ケロナイツ』(ファンタジー世界に住まうカエル人たちの活躍を描いたオリジナル作品)。
その創作から、学んだことを書きつづります。
今回は「ファンタジーの中で友好的な種族を描くとき、どんなことを考えたか」という話題です。
ズバリ言っちゃいますと、「友好種族ほど悪い点が見える」
例えば。
・ドワーフの鍛冶屋が、腕は確かだが「良くも悪くも職人カタギ」で気難しい。 
・冒険者としては頼もしくもあるが、取引するたびにその特性に振り回される。
・夜行キノコ人の商人がいつ会っても「すごく久しぶりに会ったように」大げさに対応してくる。
・伝えてくる情報も、「まるでかなり昔からの伝承でもあるかのように」話す。
親密だからこそ目立つ、「相違」をどうとらえるか?
「自分ではない他者」を考えるときにも有効なヒントになるかも? な一本です。


2024年11月13日(水) ぜろ FT新聞 No.4312

第4回【忌まわしきグラファリアンの蛹】ゲームブックリプレイ 
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第411回をお届けしました。
今回はFT書房のゲームブック「クトゥルー短編集2 暗黒詩篇」の中から、中山将平著「忌まわしきグラファリアンの蛹」に挑戦します。
友人3人で、打ち捨てられた地下鉄の探検に来た主人公。
不審な死体を発見したうえに閉じ込められ、さらに一緒に来ていたアダムまでが犠牲になりました。
友人ライアンがグラファリアンの信者。私たちをグラファリアンへの生贄に捧げようとしている。
そこまではわかりましたが、どううまく立ち回れば生き残れるのか、それがわからないままゲームオーバーを重ねます。
そんな中、ぜろさんはある気づきに達します。
「サブレールの情報を得る」のが鍵なのではないか!?
はたしてぜろさんの目論見は当たり、見事悪夢の迷宮を脱出できるか?
そして、意外などんでん返しが……。
いかにも「クトゥルフ」らしい結末を、どうぞご堪能あれ!


2024年11月14日(木) 丹野佑 FT新聞 No.4313

Re:リソース@20代からのゲームブック115 
・過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』
今回は第115回。テーマは『マクガフィン』
「マクガフィン」って何だ!? 見たことも聞いたこともねぇぞ!
とおっしゃられる方。それこそがマクガフィンの「本質」なのです!?
好奇心をくすぐられる方は、ぜひ本記事を!


2024年11月15日(金) 休刊日 FT新聞 No.4314

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ghostwriterさん)
中世ヨーロッパの生活呪文楽しみにしていたので終わるのは寂しいです。
中世ヨーロッパの生活の様子や領主の在り方など創作やTRPGを遊ぶ上で大変参考になる内容でした。
この呪文詩を巡る物語が、本になることを願っています。

(お返事:テンプラソバ)
お言葉とても嬉しいです!ありがとうございます!
10世紀前後のイングランドという他ではそれほど見られない時代の「中世ヨーロッパ」を描くことができて私も楽しかったです!
ghostwriterさんからも、色々なご感想を頂けて嬉しかったです!改めてありがとうございました!


(ジャラル アフサラールさん)
日本のファンタジーではドワーフ=頑固で酒好きというイメージが既に確立されていますね。これは海外小説とかの影響だと思いますし、ダークエルフがナイスバディのHな種族(笑)になっているのは日本のアニメや漫画の影響が強いでしょうし、ホビット(グラスランナー)が軽薄でしょーもないことをするトラブルメーカー(笑)になっているのは日本ではTRPGの影響が強いように思えます。『カエルの勇者ケロナイツ』の「友好種族」がどういう印象になるのか?はこれからプレイする皆さんの影響次第かも知れませんね。

(お返事:中山将平)
いつもご感想をいただき、ありがとうございます。
「遊ばれたゲームでの出来事」自体が新たなイメージを形作っていくというのは興味深い流れですね。
そういうイメージがプレイグループごとに自然発生することがあれば、作る者として冥利に尽きると感じています。


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2024年11月15日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4314

おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。

毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!

FT新聞編集部一同


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