第4回【忌まわしきグラファリアンの蛹(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【忌まわしきグラファリアンの蛹(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。
ぜろです。
「忌まわしきグラファリアンの蛹」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
友人3人で、打ち捨てられた地下鉄の探検に来た主人公。
不審な死体を発見したうえに閉じ込められ、さらに一緒に来ていたアダムまでが犠牲になりました。
友人ライアンがグラファリアンの信者。私たちをグラファリアンへの生贄に捧げようとしている。
そこまではわかりましたが、どううまく立ち回れば生き残れるのか、それがわからないままゲームオーバーを重ねます。
今回こそ生き残りたい。生き残りたい。まだ生きていたくなる。
そんなアタック04です。
●アタック04-1 忌まわしきホームレスの遺体
3回のアタックを経て、生き残るためになにが必要なのか、わかってきた。
「サブレールの情報を得る」
これが大事なことだ。
では今回は、最初からやり直すことにする。
私、アダム、ライアンの4人で打ち捨てられた地下鉄の探検にやってきた。
地下に潜り、ホームに入ったところで、ホームレスの遺体を見つける。
ここで選択肢だ。
・死体を調べる
・すぐに引き返す
前は、すぐに引き返すことを選んだ。
今回は、自ら死体を調べよう。
今後のことを考えたら、自分の目で見て調べた方が、なにかと役に立つに違いない。
線路に降りると、アダムもついてきた。そういえば最初は、私が引き返そうと提案しても、アダムだけで見に行ってたもんな。なおライアンは周辺を警戒している。
そしてアダムは歩きながら、私に注意警告してきた。
「サブレールに気をつけろ」と。
きた。さっそくサブレールの情報だ。早いな。ここだったのか。
しかも偶然、ライアンと離れている。いいタイミングだ。
アダムによれば、地下鉄には「サブレール」という強い電流が流れているレールがあるそうだ。
捨てられた駅でも、それに触ると危険な場合があるとのこと。
どのレールがサブレールにあたるのか、教えてもらった。
アダムは鉄道マニアなのかも。それでこの探検に乗ってきたのかもしれない。
そして理解した。
このサブレールの情報が、ライアンとやりあうときに、起死回生の一手になることを。
まさかこんな、物理的に攻撃に使えそうな手段だとは思いもしなかったよサブレール。
遺体を確認した。遺体はホームレスの老人ということがわかった。
そうか、ここでホームレスってわかるんだっけっか。
すっかり忘れて最初からホームレス呼びしちゃっていたよ。
私たちはホームに引き返す。
戻ろうとするが、階段は途中で分厚い防火扉に阻まれてしまう。
このあたりでアダムが精神的に追い詰められ、お前らはグラファリアンの信者だろう、と言い出す。
きっと彼は、どこかの瞬間でライアンの手のひらの虫の印を見たのだ。
そしてアダムは駆け出し、線路の暗がりへ消えた。
・追いかける
・無視して脱出路を探す
さすがに、無視する選択肢は選べない。
私はアダムを追った。
途中、線路に明かりをともすことは忘れない。
そして線路の行き止まりで、立ったまま死んでいるアダムを見つけたのだった。
●アタック04-2 忌まわしき呪文
アダムの足下には、下水道の地図が落ちている。
この描写、なにげに気になっている。別にこの場面で地図を回収するわけではないのだが。
アダムに駆け寄り、抱き寄せ、悲痛な叫びを上げ続けるライアン。
作中の主人公アレックスはまだ知らないことだが、真相のわかっている私からしたら、しらじらしいことこのうえない。
そしてここからだ。
ライアンのタガが外れて、だんだんいろいろと隠さなくなってくるのが。
おそらく、ターゲットの1人を順調に仕留めたことで、気が大きくなってしまったのだ。
アダムの遺体を回収することは諦めるしかない。
今は脱出が最優先だからだ。
ホームまで戻る。
案内図にない階段を発見する。
私は今すぐ脱出したい。
しかしライアンは、疲れたからここで少し休憩をしてから行きたいと言い出している。
そして選択肢だ。
・今すぐ脱出
・休憩して冷静になる
前は脱出を優先させた。
今回は、ライアンの思惑に乗って休憩してみようか。
一度冷静になってみることも必要かもしれない。
ここで休憩を取ることで、後で多少動きが良くなるかもしれない。
私はライアンに、閉ざされた扉のことや、アダムのことの見解を尋ねた。
しかしライアンは「わからない」としか答えない。
私は周辺を警戒しつつ……戻ってくると、ライアンが柱の陰でなにごとかつぶやいていた。
「イア・イア・ガラファリア・フタグン・ヘワゲレウ・メゲレエニヘ」
はい。アウト。
もう、どっからどこまでも、クトゥルフ神話で神々を崇める系の呪文じゃないか。
しかしもちろん、作中の私アレックスは、そんなことまったくわからない。
だから、こんな選択肢が出る。
・聞かなかったことにする
・呪文についてライアンに尋ねる
だめだめ。今尋ねたりなんか。
私の死期を早める結果にしかならないよ。
ここはあくまで、聞かなかったことにするのが一番。
休憩を終え、新しく見つけた階段を登る。
その先の通路を懐中電灯を頼りに進む。
私はといえば、ライアンに生じた疑念に、さりげなく懐中電灯でライアンの手のひらを照らし、そこに虫の刻印を発見していた。
「実はグラファリアンの噂、俺も聞いたことがあるんだ」
唐突に、ライアンが語り始めた。
前はこのとき、私が手のひらの虫の刻印に気づいたことがバレた?! なんてドキドキしていた。
けれど、今の周回ならわかる。
ライアンは、私のことをそこまで気にして見ちゃいない。
いよいよ生贄の瞬間が近づいてきて、テンションが上がっちゃってるだけなのだ。
だから
・ライアンを問い詰める
・一緒に歩き続ける
こんな選択肢が出ても私は一緒に歩き続けるぞ。
通路を進むうちに、前とは別のプラットホームに着いた。
もちろん出入口なんて見当たらない。そりゃそうだ。ライアンが先導しているのに、逃げ道があるはずがないのだ。
そんなライアンの提案。
線路に降りて、線路伝いに進まないか、というものだ。
ここで選択肢が出た。
・ライアンにそのままついていく
・線路にいるライアンに襲いかかる
これ以上はいけない。
今が先制攻撃のチャンスだ。
私は懐中電灯でライアンの頭をしこたま殴りつけるが、あまり効いていないようだ。
そのままもみ合いになる。明らかに私が不利だ。
ここで、待ちに待った質問がきた。
・サブレールの話を聞いたことがあるか
・聞いたことがないか
ある! あるとも!
その情報を得るために最初からやり直し、そして最初も最初のところで見つけたんだからな!
私は捨て身のタックルで、ライアンをサブレールに突き飛ばした。
サブレールは通電していた。
強い電流がライアンを焼き、辺りに嫌な臭いが充満した。
結果的にライアンを死にいたらしめてしまったわけだが、自分自身の命には代えられなかった。
ライアンの手のひらには、背中をまるめた幼虫のような印が、たしかにあったことを確認した。
●アタック04-3 忌まわしき世界の裏側の真実
さて、これからどうしよう。
ライアンが私を連れて行こうとしていた方角に行くことはご法度だ。
それ以外の道を探さなければ。
ここで質問がきた。
・「下水道の地図」を見たことがある
・「下水道の地図」を見たことがない、あるいは存在を完全に忘れる
立ったまま死んでいたアダムの足下にあったのが、下水道の地図だった。
見たことがある。
存在を完全に忘れる、という選択肢はなんだろう。忘れている、の誤植か。
それか、見ていても、見ていなかったことにする、ということか。
いや見た。見たよ。
だって、今見なかったことにすることの意味、ないじゃん。
他の出口を探して、ほんの少しでもヒントがほしいこのときに、それを生かさない手は、ない。
そして思い当たった。
この地下鉄は、どこかで下水道と繋がっているのではないか。
普通にあり得る話だ。
線路や階段、通路を使うより、よほど逃走の可能性が高い。
私は壁沿いを進み、熱心に下水道への道を探す。
そのかいあって、ついに見つけた。
探さなければ、まず発見できなかっただろう。
扉のさびつき具合から見ると、近年は誰も使っていないようだ。
つまり、ここから脱出すれば、異形の怪物たちの目からは、逃れられるということ。
私は地下鉄の駅構内から、下水道へと入った。
あとは簡単だった。
近くにあったはしごを登れば、どこかのマンホールだ。
いきなりマンホールから顔を出す不審者にはなったが、そんなもの、ここまでの体験に比べればどうということはない。
生き残った!!
私はすかさず警察署へ駆け込んだ。
ここの署にはご都合主義的に私の友人が勤務している。話くらいは聞いてくれるだろう。
私の話は荒唐無稽だったが、真に迫っていたため、捜索隊の編成がなされた。
捜索隊の成果は秘匿とされた。しかし人の口に戸は立てられないもので、捜索隊が奇妙なものをいくつも見つけた、という噂が飛び交っていた。
アダムとライアンは、行方不明者ということで処理された。
私はこの事件には、これ以上深入りしない方が良いと考え、その後の捜査の進展については、一切確認することはなかった。
私に、平和な日々が戻って来た。
ただひとつ不便なことがあったとすれば、心の問題で、あれ以降、地下鉄の駅に足を踏み入れることができなくなったくらいだ。
これは、急速に地下鉄交通網が整備されてゆくこのニューヨークでは、かなりの不便を強いられることである。
でも、それでも、安全には代えられない。
忌まわしきグラファリアンどもは、あそこにいたのがすべてではないはずだ。
なにしろ、人間よりはるか以前から地下に住んでいた生命体なのだから。
この世界の裏側の真実を、ほんの少しでも知ってしまったことの代償だ。
クリア! おめでとう!!
●アタック04-4 忌まわしきグラファリアンの蛹
まだだ。まだ終わらんよ。
数年が経過した。
私は、仕事で偶然立ち寄ったミスカトニック大学の図書館で、偶然一冊の本を手に取った。
何も書かれていない表紙をめくると、聞いた覚えのある呪文が、目に飛び込んできた。
「イア・イア・ガラファリア・フタグン・ヘワゲレウ・メゲレエニヘ」
そしてここで選択肢が出た。
・この物語の中で、この言葉を聞いた記憶がある
・聞いたことがない
い、嫌な予感しかしない。
忘れたい。記憶ごと抹消したい。
しかし私は覚えていた。
あのグラファリアンの信者ライアンが、どこかのタイミングでつぶやいていた言葉だ。
私は、心拍数が上がるのを感じながら、ページをめくった。
そこには、数年前に起きたあの出来事の、答え合わせが書かれていた。
・グラファリアンは、20万年前に地球に飛来した「グラファリア神」が創造した種族。
・グラファリアンは、人類登場前、何万年も地球の支配者だった。
・グラファリア神が力を失い、地下で眠りにつくと、グラファリアンもまた地下へ潜った。
・グラファリアンは、神の力なしでは繁殖ができなかった。種の保存のため、ある方法が編み出された。
・その方法とは、自己複製能力のある地球上の生物にグラファリアンの遺伝子を忍ばせ、ある条件を満たしたその生物が、グラファリアンとして再構築されるという仕組み。
・その結果生み出されたという地球上の生物こそが、人間。人間は、グラファリアンにとって、再構築される前の蛹のようなもの。
人間がグラファリアンとして再構築される条件とは、条件とは……。
だめだ。これ以上はいけない。
ページをめくる指を止められない。
・人間がグラファリアンとして再構築される条件。それは、「自分がグラファリアンの蛹であると認識すること」。
終わった。
私は、世界の裏側の真実を知ってしまった。
すでに、条件は満たされている。
つまり、私は……。
そう。ライアンを含むグラファリアンの信者たちは、知らなかったのだ。
この超簡単な真実を。勝手に知って勝手にグラファリアンになってくれればよかったのに。
そうしたら、生贄なんて発想にはならなかった。
ままならないものだな。信者が真相からいちばん遠いところにいたなんて。
あの時、妄想にとりつかれたアダムはきっと、たどりついてしまったのだ。この真実に。
線路の行き止まりで立ち尽くして死んでいたアダム。
彼を襲った怪物は、いなかった。
私の体がつくり変えられていく。
そして、蛹から脱皮するように、私はあの、見るもおぞましい外見の、グラファリアンになるのだ。
しかしそれは、不幸なことなのだろうか。
グラファリアンは、高い知能と科学技術を持っていたという。
グラファリアンになってしまえば、美的感覚はそちら基準になるだけの話だ。
グラファリアンの世界で、グラファリアンの常識で生きる。
あれ。それってそこまで悪い話じゃないんじゃね?
そこに、今持っているこの私の自我が残るかどうかが問題だけど。
いやだー。蛹の側に置き去りにされるなんていやだー。
再構築っていうくらいだから、ちゃんと私の私としての自意識は残ると信じたい!
こうして、私の物語は幕を閉じた。
●感想
いかにもクトゥルフらしい結末でありました!
もちろん、これがベストエンドではありません。
ちょっと寄り道して、ライアンのつぶやく呪文を聞いてしまっていたがために起きた悲劇です。
そこさえ聞かずにスルーできていれば、このラストは防げました。
しかし思うのです。
そうして手に入れた真エンドでは、何も知ることができない。
最初から最後まで、無知な一般市民としての挙動でしかないわけです。
そう思えば、こちらの方が、はるかにクトゥルフものらしい結末といえるでしょう。
なので、これ以上の再アタックはしません。
次にやれば間違いなく、真エンドにはたどり着けますけどね。
さて、そんなわけで、私はこの物語を結末まで導いてしまいました。
そして知りました。世界の真実を。
みなさんがこれを読んでいる頃には、私は蛹から蝶になるごとく、グラファリアンとして覚醒していることでしょう。
そして今、これを読んでいるあなた。
あなたも、たどり着きましたね。ここまで。
自覚、できましたか?
さあ、おいでなさい。こちらの世界へ。
グラファリアンの、めくるめく地下世界が、あなたを待っています!!
※この「新しい種族への変容」という部分は、この作品タイトルのインスパイア元である「異次元の抱擁〜ゾルタクスゼイアンの卵〜」とも共通しています。なるほど深い。
■登場人物
アレックス 主人公。会社員。キリスト教徒。
ライアン アレックスの友人。グラファリアンの信者。
アダム アレックスの友人であるライアンの友人。死んだと思われていたが、グラファリアンになったっぽい。
■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「忌まわしきグラファリアンの蛹」
著者:中山将平
発行所・発行元:FT書房
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