第2回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「戦場の風」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ版d33シナリオ「戦場の風」への挑戦を始めました。
今回の主人公はウォーレン。ロング・ナリクで当代一と言われた聖騎士と同名の若き騎士です。
国王からの密命は、戦場に置き去りになっている王女コーデリアを救い出し、離脱すること。
主人公のあこがれである聖騎士ウォーレンも戦死したという過酷な戦場。しかも敗色濃厚にもかかわらず、王女はなおも戦いを諦めていないといいます。
この過酷な任務を、なんとしてもやり遂げなければなりません。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
●アタック01-2 アンドロがアンドレに
国王は俺に配下をつけてくれた。
弓兵が2名。一般兵が4名。
加えて、軍馬か乗用馬かのどちらかが与えられるという。
俺は迷わず乗用馬を選択した。
軍馬は戦う従者、乗用馬は戦わない従者だ。
となれば、戦う従者である軍馬は、途中でロストするリスクが高いと考えた。
戦わない従者が被害に遭う可能性はあるが、それでも、戦う従者よりは可能性は低いと言えよう。
それに、乗用馬は5つ分の装備品を積むことができる。
ところで、俺だけ馬に乗っていて従者たちが徒歩では、結局ぜんぜん移動速度が出せないと思うのだが。
その点については、シナリオ中にフォローはないようだ。
なので全員に、馬は貸し与えられていることとした。これは設定上そうというだけで、数値上にはなんの影響もしない扱いとする。
でなければ、この時間との勝負となる任務に、国王が就かせるわけがないからだ。
そして今回は、従者の兵士たちの個性はあえて控えめにすることにした。
従者を含めたドラマを展開するのは、この任務のスピード感を削ぐことになるし、他にメインとなる登場人物も多い。
これで準備は整った。
次は、今回のd33シナリオの進め方の確認だ。
一本道モードである。
マップなどは特になく、サイコロを振りランダムにイベントが起きる。
そしてイベントの合間に、〈中間イベント〉が、ラストには〈最終イベント〉が起きることになる。
〈中間イベント〉の出方は少し変わっている。
俺は1から7回目までのランダムイベントを起こしつつ進む。その途中で、コーデリア王女に会うための条件が整ったら、〈中間イベント〉に進む。
コーデリア王女に会えていようがいまいが、8枚目は〈最終イベント〉だ。
ここまで確認できればいいだろう。
俺は入念に準備を整えると、夜明けとともに出発した。
さあ、ここからは、ランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めていく冒険が始まる。
本リプレイでは、サイコロを振ってイベントが決まったら、次にあるような表記でイベント番号と簡単な内容を示し、話を進めていくことにする。
【13 ロング・ナリク軍】
戦場である金牛の丘。
ここで最初に友軍の陣を発見できたのは幸運だった。
だが、ここにはコーデリア王女はいない。王女は広大な金牛の丘のどこかに分断され、取り残されているのだ。
負傷兵たちの中から、俺に声をかけてくる者がいた。
「君か。王女のもとへ向かおうというのは」
その負傷兵は、アンドレと名乗った。
え。アンドレなの? アンドロじゃなくて?
ゲームブック版ではアンドロだった彼は、名前がアンドレになっていた。
これではもう、アンドロ梅田ネタを出すことができない。アンドロ軍団にも所属できない。
連想するのはベルサイユのばらか、プロレスラーだ。
いや、名前のことはいいんだ。
「俺はウォーレン様の従者だった」
なんと、この戦場で戦死したと聞いている聖騎士ウォーレンのもとにいたのだという。
「ウォーレン様は王女を逃がすため、しんがりとしてウォー・ドレイクを引きつけていたんだ」
なるほど。そういうことだったのか。
それはそれとして、細かい点だが、ゲームブック版では「ウォードレイク」だったのが、「ウォー・ドレイク」と中点がついたな。
そしてアンドレは俺に懇願した。
「俺も一緒に連れていってくれ。俺にはコーデリア様に伝えなければならないことがある」
たしかに、彼を連れて行くことは、王女の説得にかなりプラスに働くに違いない。
というか、彼の言で説得できることを、俺はもう知っている。ゲームブック版をクリアしているからな。
でも、今、従者枠がいっぱいなんだよね。どうしたものか。
と思ったら、注釈があった。
彼は負傷を負って自分では歩けないレベルだ。
そして騎乗生物の従者がいれば、アンドレを連れて行くことができるという。
ただし、騎乗生物には装備品を持たせることができなくなるし、戦闘にも参加できなくなる。
もちろん連れて行くさ。もともと戦闘には参加できないし、持ち物は自分だけでも十分だからな。
それにしてもこれ、牛飼いのジェイコブも同行することになったら、どうなるんだろう。
アンドレを加え、俺たちは自陣をあとにした。
●アタック01-3 ドラッツェン兵と密偵
【21 ドラッツェン兵】
金牛の丘のふもとを出発し、ゆるやかな放牧地を登っていく。
この先には大聖堂がある。王女が無事ならば、そこにいる可能性は高いと思われた。
しかし同時に、敵も同じことを考え、捜索の手をのばしているかもしれない。
そこは、ドラッツェン軍が土地に不案内なことに期待するしかない。
戦場から国王が報告を受け、俺が出立するまでにも日数が経過している。
スマホのような便利な通信手段があるわけではない。事態の把握にも時間がかかるのだ。
まだ無事なら良いのだが……。
ここは見通しの良いなだらかな丘陵だ。
だから、巡回中のドラッツェン兵の姿を、かなり遠くから視認できた。
人数は4人だ。
反応表を振るか?
いや、その必要はない。
ここは戦場。相手はドラッツェン兵。ただちに攻撃する。
弓兵の攻撃で1人、すばやく接近した兵士の攻撃で1人が倒され、ドラッツェン兵は逃走した。
俺? 攻撃外した。言わせんな。
戦利品として、金貨15枚のアクセサリーを得るとある。
こういう時に手に入れるものって、思い出のロケットつきペンダントみたいなもので、敵兵にも待っている家族がいるんだ、みたいな気分にさせられちゃうやつなんだろうな。
だが、俺には使命がある。感傷にひたる暇はない。
この戦闘を通過すると、次のイベントは自動的に決定されるようだ。
では、サイコロを振らずに次のイベントに入ろうか。
【22 密使】
「見てたぜ、兄ちゃん、なかなかやるな」
不意に、近くの茂みから声をかけられた。そこには男が潜んでいた。
み、見てたのか。俺がみっともなく攻撃を外すところを。
謎の人物の出現に、俺たちに緊張が走る。
「いやいや、この集団の前に自分から登場したんだ。何もしないって」
たしかに、俺を含めて7人の前に自ら出てくるのだ。敵意がないか、相当の手練れかのどちらかだろう。
男は、黒いコインを取り出して、これみよがしに俺に見せつけてくる。
なにそれ。くれるの?
「だー。お前、何も聞いてないのか。お前も持ってるだろ。ロング・ナリクの密偵であることを示す符丁だよ」
荷物の中身を改める。たしかに黒いコインがあった。持ち物欄を消費しないアイテムだから見逃していたよ。
「ったく。俺が気づかなかったらどうなっていたことやら」
だいぶ呆れられてしまったようだ。
男は名前を名乗らなかった。ただ自身が、コーデリア王女の密偵であると告げた。
索敵しつつ、分断された軍の位置関係を把握し現状を分析、軍を再結集させるために動いているという。
そしたらあからさまに軍とは別の動きをしている集団を見つけた、と。それが俺たちだ。
「だから、あんたらがロング・ナリクの所属で、何らかの目的をもって姫さんを探してるんだったのはすぐにわかったよ」
俺たちの行動は、戦場ではだいぶ不自然で目立つらしい。
男は、声を低くした。
「いいか。コーデリア殿下は聖堂にかくまわれている。合言葉は『フリージアの花の様子を知りたい』だ。それを司祭に告げろ」
聖堂でこの合言葉を言うことが、中間イベントを起こす条件だという。
とにかく、聖堂に行かないことにははじまらないのだな。
俺たちは聖堂を目指す。聖堂を出せるかは、サイコロ運だ。はたして、出せるだろうか。
●アタック01-4 聖堂の王女
【23 聖堂】
って、いきなり聖堂に到着しちゃったんだけど!
都合が良すぎる。イージーモードすぎないか。
金牛の丘に建てられた聖堂はロング・ナリク式の力強い建築様式で、白く輝く存在感を放つ建造物である。
今、その聖堂は野外病院と化していた。
負傷兵が礼拝堂の広間に並べられ、治療を受けている。負傷者に敵味方は関係ないようだ。
場違いな俺たちに、司祭が声をかけてきた。
「あなたはここにどのような御用でいらしたのかな? そちらの御仁に治療を受けさせるためかな?」
一緒に連れている、負傷兵のアンドレのことを言っている。
俺は答えた。俺はフリージアの花の様子を知るためにやってきたフリージアボーイであると。
司祭ははっと息を呑んだ。
「そうですか、ではあなたがたを、『ガーデン』へ案内しましょう」
司祭の案内で、俺たちは地下への階段を下ってゆく。
【中間イベント】
地下室には、王女と、側近の兵たちがかくまわれていた。
兵たちも負傷しており、王女みずからが治療にあたっている。
俺は、名を名乗った。そして、国王の使いであると、身分を明かした。
「そう。あなた、ウォーレンというのね。あの方と同じ……」
そうだ。俺は聖騎士ウォーレンにあこがれ、騎士になった。
「でも、聖騎士ウォーレンは命を落としました。私を逃がすため、犠牲になって……」
コーデリア王女には、悲愴な覚悟のようなものが見えた。
「だから私は、戦わなければなりません。聖騎士ウォーレンに報いるためにも、ドラッツェンをこの地から追いやらなければならないのです」
「それは違います」
横やりが入る。
俺が連れてきた、アンドレだった。
「……貴方は?」
「俺はアンドレ。聖騎士ウォーレン様の従者です」
「それで、何が違うというのです?」
「簡単なことです。王女が自ら死を選ぶのでは、ウォーレン様が何のために貴女を助けたのか、わからなくなります」
「それは……」
コーデリア王女が少しの間言葉に詰まる。
国王からの言葉を伝えるのは、今だと思った。
「国王からの言葉を伝えます。『この戦いに勝ち目はない。逃げろ』と」
あえて、王女にとってショッキングな言葉を選んだ。
こういうとき、言いにくさのあまり、中途半端にまわりくどい言い方をしてしまうことがあるが、悪手だ。
はっきり伝えないと、伝わらないこともある。受け手がいいように解釈してしまうこともある。
伝える側は伝えたつもりになっていても、受け手との間で齟齬が起きがちなパターンでもある。
「そんな。陛下はこの戦いを捨て、逃げよとおっしゃるのですか?」
ああ。そう言った。
「……それは、できません」
コーデリア王女の悲壮感たっぷりの瞳の色は、変わらない。
理由を聞いてもいいだろうか。
「王族としての誇りが撤退を許さないからです。この戦場を捨ててしまっては、彼の死に報いることができません」
そうか。
ここで「ロング・ナリクの民を守るため」などと言うようなら、俺は王女を見限っていたかもしれない。
俺はこの回答で、王女が少なくとも、戦況が読めていないただの少女ではないことを知った。
少なくとも、勝ち目のない戦いであることを理解している。そのうえで矜持のために戦うと言っているのだ。
だからこそ、悲壮感を漂わせているのだろう。
全滅するとわかっている戦いの理由に「民を守るため」なんて持ちだすとしたら愚かとしか言いようがない。
全滅どころか勝つ気でいるのなら、戦況がまるでわかっていないので、やはり愚か者と呼ばれても仕方あるまい。
しかし王女はそうではなかった。だったら、説得のしようもある。
「コーデリア王女。あなたが戦況を見極められる聡明な方と知り、安心しました」
ここはサイコロによる判定で決定される。失敗するとペナルティは受けるものの、再挑戦が可能だ。
目標値は、5。技量点による判定だ。また、アンドレがいると2点を加えることができる。
俺の技量点は2。アンドレの2点加算を加えると、4。目標値5に届くためには、1以上を出せば良い。
ただ、1はファンブルで自動的失敗になるから、2以上で成功だ。
俺はサイコロを振った。出目は6。クリティカルだった。
これ以上ない成功だ。
「ウォーレン様は、王女様を生かすために犠牲となったのです。みすみす命を落とさせるわけにはまいりません」
「アンドレ、しかし……」
「ウォーレン様の言葉を伝えます。『この国の未来のために、できることをしてほしい』と。王女様、貴女が今、なさろうとしていることは、未来のためになることなのですか?」
この言葉は、コーデリア王女の胸を深くえぐったようだった。
勝てない戦に誇りのために挑むことが、未来を閉ざす行為であることを、王女は理解していた。
「……私が、間違っていました」
コーデリア王女は、自身の非を認めた。
「我が国の未来を思うのなら、私は敵の手に落ちてはならない。国のために戦ってくれる兵たちを、無駄死にさせてはならない」
結局、俺がこれ以上何かを言う必要もなく、アンドレの言葉のみで、王女は説得に応じることになったのだった。
次回、軍を撤退させるための作戦がはじまる。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
0 黒いコイン
1 ロケットつきペンダント(金貨15枚)
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
【従者】
弓兵 2人
兵士 4人
乗用馬 1頭(装備5つ)※アンドレが同行
■登場人物
ウォーレン 主人公。ロング・ナリクの若き騎士。従者とアンドレ頼みで活躍の場は少ない。
ロング・ナリク王 コーデリア王女の父。主人公に密命をくだす。
聖騎士ウォーレン 主人公のあこがれであり目標。戦場で命を落とす。
コーデリア ロング・ナリクの王女。15歳で初陣。戦場の指揮を執る。
ジャルベッタ ドラッツェン軍の指揮官。冷酷無比との噂。
アンドレ 聖騎士ウォーレンの従者。継戦を主張するコーデリア王女の説得に成功する。
■作品情報
作品名:『戦場の風d33』ローグライクハーフd33シナリオ
著者:丹野佑
初出:FT新聞2024年8月4日(No.4211)号
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
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