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2026年2月5日木曜日

「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する? FT新聞 No.4761

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「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する?

 岡和田晃
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 発売中の『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』には、付属シナリオ「ドウォンの秘密神殿の冒険」が収められています。これは、日本版のボーナスとして付属した翻訳シナリオ「女神キット=ラーの幽閉されしピラミッド」とは異なり、原著からそのまま付いていたもの。それこそ『トンネルズ&トロールズ』第5版のルールブックに付属していた多人数用「トロールストーンの洞窟」のごとくに、まず最初にプレイされることが想定されたシナリオなのかもしれません(もっとも、最近、T&T第5版日本語版のルールブックを改めて読んだケンは、日本語版に付いているのは、多人数用アドベンチャーではなく、ソロアドベンチャーの「バッファロー・キャッスル」だと勘違いしていましたが)。
 既刊に準えれば、「ドウォンの秘密神殿の冒険」は、『T&Tビギナーズバンドル 魔術師の島』に収められている「カリスの墳墓」に近いところがあります。つまり、一定のセッティングが与えられており、あとはゲームマスターが独自にそれらをアレンジしてプレイすることが想定されているわけです。
 この手のシナリオを、私は敬意を込めて「半構築済みシナリオ」と呼ぶようにしています。シナリオソースほど簡素ではないが、そのまま、おんぶに抱っこできてしまうほどには、悪い意味で懇切丁寧にはなっていない。同じタイプのシナリオはD&Dなんかにもありました。クラシックD&DのB2モジュール「国境の城塞」やB3「アリクの瞳」がこのタイプの冒険です。「国境の城塞」はD&D第4版のエンカウンターズ、第5版(いわゆる2024年版)のボックス・セットでリメイクされ、「アリクの瞳」も「ドラゴンマガジン」3号で日本オリジナルの続編が作られていましたから、「半構築済みシナリオ」はユーザーの創造性を掻き立てるところがあるようです。

 他方、ネット時代、地の文やセリフが事細かに書かれているタイプのシナリオ——「FT新聞」では、No.4145に掲載された「ファンタジーRPG汎用"逆転の発想"シナリオfeaturing 『モンスター!モンスター!TRPG』『新・裏伝説』」(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/503784256.html)のようなタイプの冒険——とは真逆のアプローチ。至れり尽くせりに全てが設定されている『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオに慣れ親しんでいる方にとっては、驚きを隠せないかもしれません。
 何はともあれ、見切り発車で構わないので、ひとまずプレイしてみることが手っ取り早いのでありますが、そこにいたるまでが大変、という方もあるでしょう。子ども時代ならばともかく、大人になったら、貴重な余暇を割いてゲームに突き合わせるのですから、余計に心理的ハードルが上がる、というものでしょう。

 それでは、どうやったら「ドウォンの秘密神殿の冒険」を上手にプレイすることができるのでしょうか? ルールブックにもいくつかの導入案は明記されていますが、もっともわかりやすいのは、シナリオソースのA(【ワールド編】、p.66)を採用することです。
 大神殿の修繕を手伝うか、侵入してくるバット・トロールと戦うか、という2つの案が提示されていますが、大神殿の修繕の方を選んでも、どのみちバット・トロールと戦う方向へ誘導すれば問題ないでしょう。
 ただ、いきなり転移門(ポータル)を通ってズィムララへやって来たと言っても、あまりにも唐突すぎて現実感がありません。一つの妙案としては、現代ものの別のシナリオと連結させることです。ある怪異が、転移門の向こう側からやってきた、その正体はバット・トロールで、PCたちは調査に来たということにすればいいのです。
 この方法の問題点は、基本的なシナリオ構造が異世界往復ファンタジーのようになってしまうこと。『ナルニア国ものがたり』が典型ですが、ズィムララから、いつかは現実世界へ戻らねばならなくなるのです。そうやって往復していくのも、海外のヒーローコミックでよくあるクロスオーバーものの雰囲気が出るので一興ではありますが——実際、「クチュールー・エンジェルズ」のように、『モンスター!モンスター!TRPG』はコミックとのクロスオーバーを積極的に行っているタイトルでもあります——カラーが異なる複数の世界を継続的に運用していくのは、なかなかどうして大変です。
 英語では、現実世界からズィムララへの旅路そのものをテーマにした『Trail to Zimrala』が存在します。これは北米先住民のヒロイン、エリカ・アメリカが登場する画期的なシナリオなのですが。あいにく、まだ日本語版は出ていませんので、お待ちいただくとしまして……。
 オススメなのは、『猫の女神の冒険』から、しっかり繋げていく方法です。

 この「繋げ方」には、コツがあります。
 「半構築済みシナリオ」の問題点は、とにかく、シナリオの押し引きが弱いこと。コンピュータRPGで言う「オープンフィールド」の先駆とも言うべきスタイルなのですから、プレイヤーの自由度こそを重視すべきで、自由に動き回ることができることが魅力なのですが、プレイヤーに一人でも、「何をやればいいのかわからない」という人がいれば、これは成り立たなくなってしまいます。
 そこで、強力な動機づけが必要になります。そこで、押し引きを強化することが、「半構築済みシナリオ」を完成させるうえで有用なのです。
 もっともわかりやすいのは、「死んだ仲間や、それに近い状態になった仲間を救う」というもの。それこそ、『ロードス島戦記リプレイI』の頃からの伝統です。オリジナル・ルール『ロードス島戦記コンパニオン』準拠の作品として、連載時のD&Dリプレイから収録し直された本作では、最初の冒険のゴブリン退治で主人公のひとり騎士パーンが死んでしまい、高位の司祭ニースに復活させてもらったはいいものの、代償として「7年前から行方不明になっている娘のレイリアを探してください」というクエストを受け入れる羽目になります。
 この点、『猫の女神の冒険』のGMアドベンチャーはソロアドベンチャーの多人数用シナリオ化なので、いちど自分でソロをプレイしておけば、多人数での運用についてイメージが持ちやすいですし、杓子定規に全滅させたりせずに、生かさず殺さずでストーリーを進めていくコツについても、身につけることができるでしょう。
 ただし……。【以下、ネタバレ注意】
 『猫の女神の冒険』に関して言えば、もっともストーリーの深奥に踏み込んだ結末部で、プレイヤー・キャラクターは猫の女神セクメトの計略に引っ掛かり、クリスタル・スカル(水晶髑髏)に閉じ込められてしまうことになります。ソロアドベンチャーでは、これで冒険は終わることになりますが、多人数用アドベンチャーでは、あくまでも閉じ込められるのはプレイヤーの1人、とすればいい。
 それで困るなら、途中で助けるラットリングのスクウィー=スクウィーが閉じ込められることにしてもいいし、誤って閉じ込められるのがテン=メアだということにすれば、セクメトは何に変えても、救出の方法を探ることでしょう。
 
 もちろん、「ドウォンの秘密神殿の冒険」には、そこまで強力な魔法のアイテムが設定されているわけではありません。そこで、私ならば部屋J、部屋K。部屋Oのそれぞれに、解呪のために用いられる特別なアンクの欠片を配置しておき、それらを揃えれば、クリスタル・スカルに閉じ込められた者を救済することができるようにすると思います。
 よりズィムララらしくというか、ケンのゲームらしくするのであれば、ドウォンの大神官ヴォラスカーに事情を話し、ドウォン魔法で解決するというのもオツかもしれません。ドウォン魔法については、【ワールド編】のp.30〜32に詳述されていますが、それ以外にも、雲ヶ谷正運さんによる「深淵なるドウォン魔法」(http://kumogaya.com/archives/28617129.html)という名コラムがあります。ここに出てくる「反魔法と解呪の神ヤー・クバライ」の加護を祈る、というわけです。

 さて、「ドウォンの秘密神殿の冒険」には、ボスらしいボスが設定されてはいません。バット・トロールや洞窟イカ、そしてヴォラスカーの設定は紹介されているものの、ボスらしいボスという感じはありませんよね。ダンジョンにボスがいなければらならない、という考え方そのものがステレオタイプではあり、かえってリアリティの演出にもつながるものですが、押し引きの強化という意味では、ボスもいてよいかと。
 手っ取り早くするなら、ここでもシナリオソースのお世話になりましょう。シナリオソースのD(【ワールド編】、p.66)には、アークデーモン(アーチデーモンとも)のマルゴデラウスの麾下にあるデーモン10体が、神殿に攻撃を仕掛けてくるというアイデアが書かれています。
 【モンスター編】のp.119によれば、アーチデーモンのモンスター・レートは300。作りたてのパーティで、MR300のボスは、正攻法では、なかなか倒せません。200くらいならば、なんとかなりますが……。ゆえに、それこそヴォラスカーや(場合によってはバット・トロールたちと協力してでも)アーチデーモンに立ち向かう意味が生まれてきます。
 ただ、MR300の敵1体では、数の暴力でたちまち蹂躙されてしまいます。ですから、マルゴデラウス以外のデーモンを設定してもいいでしょう。ここで便利なのが、【ワールド編】p.30の表。5のビースト=デヴィルは、原書の『Monsterary of Zimrala』の初期のバージョンのみに登場してくるクリーチャーで、日本語版でもいまのところ紹介がないので、自由に設定いただければと思います。アーチデーモンやデモドラゴンも強力すぎるので除外するとして、あとはゾム・レイス3体、ヘルハウンド2体、スナウター3体、シペ2体くらいの構成にして、ドウォンやバット・トロールたちとぶつけさせるのも面白いのではないでしょうか。単にぶつけさせるだけでは、デーモン軍団の圧勝となるのは目に見えていますから、地の利を活かした戦略を立てねばなりません。
 ——「半構築済みシナリオ」は使い倒すためのもの。あなただけの「ドウォンの秘密神殿の冒険」をデザインしてください!


■書誌情報
モンスター!モンスター!TRPGサプリメント
『ズィムララのモンスターラリー ワールド編』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
書籍版:3,850円/電子書籍版:3,500円
https://ftbooks.booth.pm/items/7041688

モンスター!モンスター!TRPGサプリメント
『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
書籍版:4,950円/電子書籍版:4,500円
https://ftbooks.booth.pm/items/7733432


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