挨拶に代えて。 ついに、齊藤飛鳥先生による「ミステリ」としての、しかも「ローグライクハーフ」しての作品、『霊廟館の悪夢』登場! これでミステリ作家としての先生の味を十二分に楽しめる! その手ごたえは、本格推理ものとして、あそびごたえがある一本でした! あまりの喜びに、ついに一本書いてしまいました。 拙作の二次創作に、快く許可を出していただけた齊藤先生に、大いなる感謝を込めて! つたない作品ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『Monkey business 2』 -斥候の犬- 著:葉山海月 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 冒険者として、やっと独り立ちして十ン年。 君は、今日も殺人的なミッションをタフにこなし、「ああ、今日も忙しい野良犬な一日だった」と、場末の酒場に足を運ぶ。 店内に流れる甘ったるい音楽が、心をマッサージする。 これで、疲れを吹き飛ばすような「彼女」がいればなぁ、と夢想していた。 しかし、思い出すのは、かつて出会った女吸血鬼の館『霊廟館』の事件。 事件自体も、複雑な条件が絡み合い、不可能犯罪に見えた。 しかし、その中でも、ひときわ異様だった一人の少女。 その名はクワニャウマ。 「かわいい」というよりも「たくましい」(特に商魂)という顔をしていた彼女。 にやけているヤマネコのような印象の少女。 何よりも犯人を適当に指摘した時の、みぞおちに入れられた一撃が忘れられない! あれのおかげで、全身にスパークが走り、犯人を指摘できたのだ。 「高嶺の華」というよりか「高くつくそのへんの花」みたいな彼女を、どうして思い出したのだろう? 不思議に首をかしげていると、「わたしのこと、呼んだ?」と声をかけられた。 見て見ると、あのトンでも少女の面影が残る、「おねえさん」じゃないか? 「なぜ? ここに?」 「あんたはわたしを探せないかもしれないけど、わたしは呼ばれたら飛び出すのがモットー。あんたの居所なんて教えてくれなくても横に立つ」 そういえばこの店の名前が『泥酔の泥沼亭』。流れる曲が『覚えてますか? 愛しい時を』だったことを思い出す。 「へぇ。あんたもお酒、飲めるトシになったんだ」 こちらに運ばれてきた酒は、そう弱くないのを見て、クワニャウマが揶揄する。 「あんたがお酒をたしなむ歳になったくらいには」 当然ながら、話はいつしかあの事件について飛ぶ。 というのが、お互い共通した体験が、それしかないから。 「しっかしねぇ。よくもあんなに細かいところから手がかりを見つけて、組み立てたもんだねぇ」 クワニャウマは「青い月」という、いわゆるかき氷に柑橘系のお酒をまぶしたもの、(この店だけで出す特注品)を注文したところで、語りだす。 「まぁ。たまたま運がよかっただけだよ」 君も注文を終えたので、謙遜しつつまんざらでもない顔で言う。 「わたしも年食った間にいろいろあってね。じゃあね。この謎は解けるかな? 最近、旅先でわたしが『弁護』した事件なんだけど」 ……はは、これが無いと夏がはじまんないんだってばさ。 クワニャウマは、愛しそうに自分の前に置かれた、皿にフルーツが盛られたフローズンカクテルを愛でる。 夜も、君に来た酒も、序の口。 君は早速クワニャウマを促す。 隣国との関係がちょっとキナ臭い国……「T国」とでもしておく……では、建国100周年を祝って「王家の犬」を、広く一般市民からも募集していた。 生まれも育ちも関係無い。とにかく「これは王家にふさわしい!」と思われる逸話を残したワンちゃんを集め、その中で一番優秀な一頭を王家の犬として公式に迎え入れようとしたのだ。 「で、その時に面白いエピソードがあるんだヨ」 彼女は、氷を匙で一口すると、切り出し始めた。 ナンバーワンのエピソードがこれ。 その国が独立戦争を始めたとき、ある斥候がいた。 彼には、いつも一緒にいる家族同然の犬がいて、いっつも行動をともにしていた。 で、切り込み部隊の先導として、敵地に偵察に行き、もしも何かまずいことが起こったら、ぎりぎりまで自分の陣地へ戻って赤い旗を振っていたのさ。 彼は全力を持って期待に応え、部隊からの信頼も厚かった。 そんなある日、敵の一団が、罠をはった。 先もってその部隊の行くところを待ち伏せして、一気に叩こうとしたわけ。 もちろん、その斥候は異常に気づき、仲間のところへかけ戻ろうとしたけど、追っ手にやられて大怪我をした。喉を深く傷つけられ、もはやこれまでか! そいつが覚悟を決めたとき、その犬が大活躍! 彼は、自分の主人の血で赤く染まった上着を引きちぎって脱がせ、仲間のところへ駆け寄って、それを振るように走り暴れまわった。 その犬の異常さ。そして赤い布を見て、仲間は進撃を中断した。 一部隊の命を救ったのさ。 「いい話じゃないか」 君は正直なところを述べた。 クワニャウマは、皮肉な笑みで答えた。 「ところがね。そううまく世の中が転がるんだったら、わたしは今頃一国の大臣になってる」 それに異議を申し立てた者がある。 自称、「犬の研究家」さ。 そいつが言うことには。 「恐れながら陛下、この話は真っ赤な嘘と思われます。 というのが、犬は目が悪く、白黒なぼんやりとした視界しかございません。色が識別できないのに、どうして「赤い」布を認識できたのでしょうか?」 「この話を聞いて、その斥候の評判は一夜にしてひっくり返った。 『自分の名誉のためだけに、大嘘をついた大悪党』ってなもんね。 喉をやられて、一命をとりとめたやっこさんも、声が潰れていてろくに弁護ができない。かわいそうに、王家を騙した罪で、辺境の地へ流されるとこだったよ」 「それで?」 「そこで、名うての弁護士、クワニャウマ様のご登場」 彼女はニコリ、と向日葵が咲いたような笑顔を繰り出す。 そして、指を三本出した。 「何それ? 3杯おごれってこと?」 「いや、金貨3枚」 「高すぎるよ。せめて3杯おごれ、にしてくれよ」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・作者からの挑戦状。 私は犬でないのでよくわかりませんが、「犬は色を感知できない」ということを前提にします。 それならば、どうしてこのワンちゃんは、「赤い色」を識別できたのでしょうか? 「偶然それを取った」という答えは、面白いですがそれはなしにします。 クワニャウマと、「君」がもめている間に、答えをどうぞ! 制限時間は1分! どうぞよろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 結局は、この店で一番高い酒を「正解」の代金にするということでお互いの利益は一致したらしい。 クワニャウマ切り出し始めた。 結論から言うと、その斥候が振り回していた布。 そいつには血が染み込んでいたんだな。 なんでも、初陣で斥候をやった時に、自身も大怪我をしたそうで、しかも、あたりに目立つようなものは無い。 そこで、自分の血で染めた下着を振り回して、仲間に危機を知らせた。 それ以来、「初心忘れるなかれ」という意味も込めて、その記念の布を使ってた。 つまり、布には「そいつの血と汗の匂い」が染み付いていたんだな。 で、今回の事案。 色はわからなくても「自分の主人が危機になると振り回している」血と汗にまみれた布がある。 お利口な犬は、咄嗟に機転を利かせて、血まみれの上着を使った。 これが事件の真相だよ。 彼は再び一転して、莫大な名誉と地位を得たよ。 わたしに弁護料を払えるくらいに」 「さぁて、まだまだ夜は長いよ。あんたに話がなくっても、こっちにはつもる話が、たっぷりあるの。なくってもでっちあげるケド。まぁ、その前に乾杯と行こうよ」 クワニャウマは、真顔になって聞く。 「ところで、この勘定は、あんた持ちだろうね」 なんで彼女を思い出したか、それがわかった。 永遠のとてつもなくフリーダムな女、それがクワニャウマだからだ。 ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 本作に登場した酒場『泥酔の泥沼亭』のイメージミニチュア(制作:葉山海月) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/bar1.JPG https://ftbooks.xyz/ftnews/article/bar2.JPG ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。