第5回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
旅の供は、禁断の、時を操る魔法の時計。
闇神オスクリードに見初められ、闇色の肌になってなお、目的を見失わない。
目的地は、「還らずの森」深くの吸血鬼の館。そこに双子の姉たちがいるはずです。
森に入るとさっそく吸血獣との戦いがあり、間一髪でした。
この先は、「闇エルフの隠れ里」と「時計塔」への分岐があります。
情報を求め、闇エルフの隠れ里を訪れることにしたミナ。
排他的な村で、闇エルフでない普通のエルフとばれたら生きては帰れないかもしれない緊張感の中、ミナは何を得ることができるでしょうか。
【ミナ 体力点3/4 悪夢袋4/7】
金貨 6枚
銀貨 5枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
●アタック01-12 闇エルフの隠れ里
闇エルフの隠れ里の前で待っていると、ひとりの長身の闇エルフが、木の家から降り、ボクのところに来た。
ボクは、ここに闇エルフの里があると聞いて訪れた、同族の旅人を装う。
・長に会いたい
・酒場に案内してもらう
これは、どちらの選択にも唐突感があって困ってしまうな。
でも、人生経験の浅いボクに考えつくのはそれくらいしかなかった。
どちらも不自然なら、酒場よりも長に会わせてもらった方が、まだしも良い話が聞けるのではないか。
ボクは<枝分かれの未来時計>が機能しているのを確かめつつ、「せっかく来たのだから、長にあいさつをしたい」と切り出した。
長身の闇エルフは少し思案した後、ボクを小さな家のひと部屋に案内する。
彼は少しぎこちない動作でボクに紅茶を淹れてくれ、しばらく待つようにと告げる。
そうして部屋を出て行った。
・席を立ち、自分で長を探しに行く
・紅茶を飲みながら待機する
このシチュエーションで、紅茶を飲みながら長の到着を待つとしたら、そうとう警戒心が足りないよね。
さっきの闇エルフの態度は、単に紅茶を淹れ慣れていないぎこちなさというより、不自然さを感じた。紅茶にも何か入っていることを疑うべきだ。
さっさとこの部屋を出よう。それで、自力で村を回ろうか。
なかなか来ないから、自分で長を探しに出た、と言えば言い訳はきくだろう。
ボクは家を出て地上に降りると、隠れ里の中心あたりに向かった。
そこにはひときわ大きな樹上の家と、樹上の祠があった。
祠は、闇神オスクリード様を祀るものだ。闇エルフはすべからく、オスクリード様を信仰しているのかな?
大きな家のドアは開け放たれていたため、ボクは声をかけてみた。
中からひとりの闇エルフがゆっくりと現れた。立派なローブ状の服を着ている。ハンサムだが威圧感があり、目つきは鋭い。
「私はこの集落の長、ネフェルロックだ」
闇エルフは自己紹介をしてくれた。ボクも名乗る。
「独力でここまで来たか。特別ななにかを持っていることは間違いあるまい。こちらへ来なさい」
長はボクを、室内に案内してくれた。
長の応接間は、独特の芳香が漂っている。かいだことのない甘くもったりした匂いだ。これも闇エルフ独特の文化なのかな。
頭が少し、重くなった気がした。
「なにか知りたいことがあってここへ来た。違うかな?」
まるでボクの考えを見透かすように、長は言った。
・2人の姉について尋ねる
・時計塔について尋ねる
これだけ洞察力に優れた長だ。もうボクの正体になんて気づいているんじゃないか。
でも、向こうが態度を変えない以上は、ボクから今のスタンスを変えるわけにはいかない。
聞けるだけ聞いてみよう。
ボクは2人の姉のことを尋ねることにした。
もちろん、自分の姉だなんて馬鹿正直に言ったりなどしない。
奴隷として売られてきた2人のエルフのことを知っているか、と尋ねた。
「2頭の双子の話か」
まるで家畜か何かのような長の言い方には怒りを覚えたが、ぐっとこらえた。
「白エルフどもなら、この村に一晩泊めた後、ローズ様の館に連れて行ったよ」
なんと、長自らが動いたという。目の前のこの人物は、エナ姉とティナ姉を直接見ているんだ。
2人がどんな様子だったのか尋ねたいが、抑える。その質問はさすがにあまりにも、あからさまだろう。
ボクは、それがどれくらい前の話かを尋ねた。
しかし長は、ボクの質問などおかまいなしに、好き勝手に話している。
「ローズ様の館は相変わらず素晴らしかった。地下の秘密の拷問部屋は、まるでバラの花が咲いたような美しさだった」
拷問部屋?!
「バラの花が咲いたような美しさ」、は、血の色を連想する。
まさか、今も使われているの?
おぞましい。
そのような部屋を備えている館のあるじも、それを美しいと言い切るこの闇エルフの感性も。
そんな人物に買い取られたエナ姉とティナ姉は、無事でいられるの?
もしローズ家の地下に行くことがあったら、秘密の部屋を突き止めなければ。
ボクは、姉たちがそこに入れられている可能性に、心の震えが止まらなくなった。
あれ。
心だけじゃない。頭がクラクラする。気分が悪い。
もしかして、この独特な香りのせい……?
ぐにゃり、と視界が歪みながら目の前の景色が変わる。どさり、と音がする。目の前に歪んで見えているのは、床だ。
あれ、ボク、倒れた?
「効いてきたか……」
長の声が遠く聞こえた。
●アタック01-13 未来時計と選択肢
視界は床に固定されたままだ。
身体が、動かないのだ。
意識も、もうろうとしてきた。
「この薬が効くなら、やはりお前は闇エルフではないな。あるいは、なりたてといったところか」
長の声が、上から降ってくる。やはりボクの正体は、とっくにお見通しだったみたいだ。
このままでは、いけない。
<枝分かれの未来時計>を……。
ボクは、ぼんやりしてきた意識を奮い立たせ、かすかに動く指先で、どうにか時計に触れた。
<枝分かれの未来時計>が、ゆっくりと時を巻き戻しはじめた。
もっと、早く。お願いだ。ボクの意識が途切れる前に……。
「ほう。よく見れば、かなり特殊な魔道具を持っているようだな」
ボクのわずかな動きに気づいたのだろう。長の声が聞こえ、ボクの身体がぐいっと引き上げられる。
いけない。このままでは、時計を、奪われ……て……。
意識を保つことも難しくなってきた。もう、ダメかも……。
ボクの意識はそのまま闇の中へ……。
あれ?
……ボクは、椅子に座っていた。
目の前では、長がボクに、聞きたいことはないかと言ってきている。
部屋の甘く重い芳香はそのままだけど、まだ症状は出ていない。
時が、少しだけ巻き戻っている。
<枝分かれの未来時計>が、間に合ったのだ。
けど、意識を手放す恐怖も絶望も、たった今体験したことだ。
その感覚は、そのまま残っている。
ボクの全身から、嫌な汗が噴き出した。
あのままだったらボクは……。
すべての時計を奪われ、激しい拷問の末に死んでいく未来を幻視する。
そんな未来を引き寄せなくてよかった。
「どうした? 気分でも悪いのかな?」
「いえ、なんでも、ないです……」
長は射貫くような目で、ボクの様子をじっくり観察している。薬の効果が出るのを待っているのだろう。
このままもっと時を巻き戻せば、ボクはこの村から安全に抜け出せる。
けど、その前にもうひとつ、長に聞いておきたいことがある。
・時計塔について尋ねる
<枝分かれの未来時計>がまだ動かせる状態にあることを確かめると、ボクは尋ねた。
「森にある時計塔について、聞かせて」
もうひとつの質問だ。これも聞いておかなければ。
「なんだ。君はあの時計塔に用があるのか」
長の鋭い目がボクを刺す。まるで値踏みをしているよう。
その視線が、ボクの時計たちをじっと見つめる。
なにかに得心がいったのだろう。長は説明を始めた。
長にとっては薬が効いてくるまでの時間稼ぎ。どうせボクの自由を奪うのだからと、何でも話してくれるのだろう。
「時計塔はノームたちが建てた古い遺産だ。からくりが残っているようだが、我々には用はない」
闇エルフたちも、吸血鬼たちも、時計塔には関心を持っていないという。
それでも長は一度、隠された安全な裏口から中の様子を確認したが、闇エルフの興味を引くものはなかったと。
時計塔は、裏口から入る方が安全なのか。覚えておこう。
甘くもったりした香りが、頭に重くのしかかってきた。
潮時だ。
「いろいろ教えてくれてありがとう。それじゃ、ボクはそろそろ……」
「まあ待て。そろそろアレが効いてくる頃だ」
「残念だけど、そこまで待っていられないんだ。もう行くね」
ボクは長の前で、おもむろに<枝分かれの未来時計>に触れる。
未来時計は、ゆっくりと時を巻き戻し始めた。
長は、あっけにとられてボクを見ている。
そして、ボクに向かってつかみかかろうという動作が見え……。
唐突に目の前の風景が切り替わった。
森の中の小道だ。ボクはそこに立っていた。
進行方向には、木々の上に黒い建物がある集落が見える。
闇エルフの隠れ里だ。
ボクは、隠れ里に入るより前まで、時を巻き戻すことに成功した。
悪夢袋がひとつ、しぼんでいた。
<枝分かれの未来時計>は、針の動きを完全に止めている。
ボクは今、ひとつの危機を乗り切ったんだ。
●アタック01-14 時計塔を攻略せよ
ここは森の中の分岐点だ。
右へと進めば闇エルフの隠れ里へ。左へ進めば森の中の時計塔へと向かうポイントだ。
ボクは時計塔へと歩みを進める。
ボクには確信があった。ここにはきっとなにかあると。
そして予感もあった。新しい力を手に入れられる可能性を感じていた。
時計塔に至る道は、道の体をなしていなかった。
棘のある植物がちくちくと、ボクの邪魔をする。
長年誰も近寄っていないことがはっきりとわかった。
それでもボクは、遠くに見える時計塔の外観を目標に、かつて使われていたと思しき古道を進んだ。
時計塔は、円筒形をした3階建ての建造物だった。
その壁にはツタが絡まり、石造りの外観は薄汚れていた。
しかし、そんな年季の入った外観にもかかわらず、3階部分についた時計は、今も時を刻んでいる。
精巧で緻密なからくりが、内部にあるのは明らかだった。
・この扉の鍵だと思うものを持っている
・体当たりで開ける
・ボラミーに頼む
・あきらめる
ボクの頭の中に、いろんな可能性が渦巻いた。今できることも、できないことも含めて。
でも、それは全部無視する。
ボクはこの塔に安全に入れる裏口を知っている。
闇エルフの長ネフェルロックが丁寧に教えてくれたからね。
ボクは裏口に回った。
そこには小さな入口があった。
小柄なボクでも小さめだって思う。
そういえば、この時計塔はノームが建てたっていわれてるんだっけ。
ノームは小柄な種族だ。からくり都市チャマイでときどき見かけたことがある。
手先が器用で、チャマイのからくり師の多くがノームだ。
ボクはそのドアを開けると、くぐるようにして塔内に入った。
塔の1階は吹き抜けのエントランスホールになっていた。
入口側の扉は普通の人サイズで大きいけれど、扉の上部がなにかの仕掛けに繋がっているのが見える。
表の入口から入ると、その仕掛けが作動するようになっているのがわかった。多分罠だ。
こっちから入ってよかった。
ホールの奥にアーチがあって、奥の部屋に続いている。
そのアーチのところにからくり仕掛けのゴーレムが立っていた。
積み木を重ねたような無機質な造形だ。
今は作動していないみたいだけど、近づいたら動き出すかもしれない。
けど、奥の部屋を無視するなら、ホールの階段から2階に上がることができる。
・奥の部屋を見たい
・2階に上る
奥の部屋は見たい。
けど、危険はあまり冒したくない。
先に上を確認してみようかな。
ボクは2階に上がることにした。
2階は、からくりの研究室のようになっていた。
既視感がある。チャマイにあった時計塔の内部の部屋に、雰囲気が似ている。
台の上に古い図面が置かれている。それを覗き込んだボクは、あっ、と声をもらした。
それは、ボクの持っている時計と同じような、魔法の時計の図面だったからだ。
これは、この図面は、かつてここに住んでいたノームたちが引いた図面なの?
魔法の時計の理論は、ここで作られていたってこと?
でもなんで?
魔法の時計を完成させたのはモータス教授だったはず。
モータス教授はノームじゃない。普通の人間だった。
そうか。モータス教授は授業で、ノームのからくり師と共同で魔法の研究をしてるって言ってたことがあったっけ。
かつてここに住んでいたノームたちがモータス教授を手伝っていた?
つい図面に見入ってしまったが、テーブルにはもっと得体の知れない装置があった。
細いチューブと瓶が、複雑に組み合わさっている。
チューブの終点にある瓶に、黒いもやのようなものが溜まっていた。
チューブの始点を目で追うと、壁際の檻に、クモに似た黒い生物が捕らえられていた。
その生き物は今もまだ生きており、からくりで刺激が加えられ、そのたびに黒いもやのような何かが、ほんの少しずつ抽出されている。
そのもやがチューブをたどり、凝縮されて、終点の瓶にたまっていくのだ。
ボクはまた、モータス教授の授業を思い出した。
魔法に関する生物。たぶん、夢魔だ。人の夢に入り込んで悪夢を見せる怪物。
そうか。あの黒いもやは、悪夢だ。
これ、ボクの持つ悪夢袋を作るための実験装置。
あの黒いもやは、夢魔から取り出された悪夢に違いない。
夢魔は弱っている。
ここにノームたちがいなくなってなお、長い年月、装置に縛りつけられてきたんだ。
夢を食べる魔法的な存在の怪物だから、弱っても死ぬこともできず、ずっと悪夢を取り出され続けてきたに違いない。
悪い魔物には違いないだろうけど、なんだか少し、かわいそうに感じた。
でも、ボクにはどうすることもできない。檻を壊すための道具がない。
・マイトレーヤが仲間なら
・溜まっている悪夢をもらうなら
・3階に上がるなら
そうだ、マイトレーヤに頼もう、という言葉を思わず口に出し、ボクは戸惑う。
マイトレーヤって誰だっけ。今、ボクはひとりだ。
ボクは空になった悪夢袋を、黒いもやが溜まっている瓶に近づけた。
それだけで、瓶にたまっていた黒いもやは消え、空だった4つの悪夢袋のうち、3つがいっぱいになった。
悪夢袋に口がないのに、悪夢が移動していた。不思議で、不気味だ。
ボクは結果に満足して、塔の3階へと上っていった。時計塔が時を刻み続ける音とボクの足音が、静かな塔内に響いていた。
次回、ボクは3階からの風景に目を疑う。
【ミナ 体力点4→3/4 悪夢袋4→3→6/7】
金貨 6枚
銀貨 5枚
歯車 0枚
・ニンニク
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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