SPAM注意

(編集・水波)最近SPAM投稿が増えておりますが、見つけ次第手動で削除いたしますので、決してクリックなどされないよう、ご注意下さい。

2025年12月10日水曜日

第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4704

第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。


ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
神の戯れによる時の繰り返しに気づき、一度は絶望しますが、それでもあきらめずに旅を続けます。
そしてついに、吸血鬼マルティンを倒し、双子の姉エナとティナを助け出すことができたのでした。
今回は、この冒険の結末を描きます。また、その後に感想もお届けします。


【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。


●アタック03-15 静かな湖畔にて

ボクとエナ姉は、湖のほとりで横並びになって、あお向けに寝そべっている。
全力を出し切った後の疲れと、水から上がった体の重さで、しばらく動けそうになかった。
ずぶ濡れで冷え切った体を、雲ひとつない空から、太陽が温めてくれる。

「まぶしい……」

エナ姉が、腕を光の方向にかざしながら、かみしめるように言う。

「太陽の光を浴びられる日がまた来るなんて、思いもしなかった……」

エナ姉の透き通った瞳から、涙が一筋、見えた。
エナ姉は、やがてボクに向けて語りかけた。

「ありがとうねミナ。私がすべてを取り戻したのは、ミナのおかげよ」
「ずっと探してたんだ。姉さんたちの行方を。ボクだけじゃなく、ニナ姉も。ずっと、ずっと探してたんだ」
「うん。うん」
「やっと見つけた。やっと会えた」
「うん」
「会いたかった……」
「私も。また会えるなんて、本当に夢のよう」

エナ姉は、やわらかな笑みをボクにくれた。
奴隷として売られて、10年以上も、ずっとずっと辛い体験を重ねてきたに違いない。
それでも、こんな表情ができるんだ。ボクに変わらない笑顔を向けてくれるんだ。

ボクはこの旅で、自分が辛くてしんどい目にたくさんあってきたって思ってた。
けど、エナ姉の笑みはそれだけで、それが全部吹き飛んでしまうだけの力があった。
なんだか、自分がすごくちっぽけなことにとらわれていたように思えた。

オスクリード神に観察されてるからって、なんだ。
別に普段から、オスクリード神がボクに語りかけてくるなんてことはない。
単に、ボクが時の魔法を使うときに、ただ力を貸してくれるだけの存在だ。
それで、死んでも時間をさかのぼってやり直させてくれるんだ。だったらボクは、神の思惑だって、利用するだけだ。

そうはいっても、オスクリード神のボクへの興味がいつまで続くかわからない。
だからボクは、死なないようにしないと。
死ぬときの苦しみはもう二度と味わいたくないし、なにより、せっかく助けたエナ姉とティナ姉が、またピンチに逆戻りしてしまうのもきつい。
次に時が巻き戻ったら、記憶が継承されているかもわからない。

神の観察を知りながら、こんな風に考えてしまえるなんて。ボクはもう、狂ってるのかもしれないな。
でも、決して命を粗末にしない。どれだけ罪を重ねようと、精一杯、生き延びて、姉たちを救い出してみせる。
あと3人。マナ姉も、ドナ姉も、ノナ姉も。

ボクは、ひとつの時計をなでた。
<沙羅双樹の予知時計>。
この旅で新しく得た魔法だ。
重要な選択の先を知り、何度でも選び直すことができる魔法。
悪夢袋が尽きてしまったために、今回は使う機会がなかった。
けれど、この時計はこの先、ボクの生存率を上げてくれるだろう確信があった。
たよりにしてるよ。

<沙羅双樹の予知時計>の針が、わずかにふるえたように見えた。まるで、ボクが使う機会を待ちわびているように。

「ティナ姉も助けたよ。今は、外縁の村の仲間のところにいるはず。少し休んだら、会いに行こう」
「ティナも無事なのね。よかった」

ティナ姉を迎えに行ったら、一度、ニナ姉のところに帰ろう。
そうしたら、ほかの姉たちを探す旅に出よう。
もしかしたら、姉たちが全員が、エナ姉と同じ貴族に買われていたのかもしれない。
だとしたら、エナ姉に聞けば、次の身請け先のヒントが見つかるかもしれない。
それに、ニナ姉も何かつかんでいるかもしれない。
「かもしれない」ばかりだけれど、希望はある。

エナ姉とティナ姉を助け出したことで、ボクは停滞していた時間が、動き出したように感じていた。

「ところでミナ、気になることがあるの。聞いていいかどうかわからないけれど」
「なに?」
「ずいぶん真っ黒になったみたいだけど、どうしたの? 日焼け?」

とぼけた質問。エナ姉、昔とぜんぜん変わってない。
ボクはくすりと笑って、「そうだよ」と答えた。


●アタック03-16 再会

それからボクたちは、湖畔でぐったりしているところを漁師に見つけられ、湖畔の村に案内してもらった。
湖畔の村で一晩休んでわずかばかりの体力を回復し、還らずの森の外縁の村を目指し、歩みを進めている。
昨晩は悪夢を見なかったみたいだ。悪夢袋が空のままなのが、わずかに不安ではある。

数日をかけて、ボクたちはようやく還らずの森へと近づいた。
その間にボクは、今までに経験してきたことを、エナ姉に話して聞かせた。
エナ姉も、ボクの知らないこれまでの生活のことを聞かせてくれた。

ようやく外縁の村に近づいてきたところでボクたちは、反対側から来たノームの男に声をかけられた。

「ありゃ。闇エルフと普通のエルフが連れ立って歩いているなんて、初めて見るな」

たしかに、珍しい光景だろう。
エナ姉がボクのことを、「妹なのよ。日焼けしたみたい」と紹介する。

「いやいや。日焼けじゃないだろってのはオレでもわかるぜ」

エナ姉は、それでもボクが正真正銘の妹だと、言い切った。

「騙されてるとか脅されてるとかじゃなければいいんだけどよ。この先の村に入るときにゃ気をつけな。森の闇エルフどもに搾取されすぎて、闇エルフを憎んでる。エルフの姉ちゃんと一緒なら大丈夫かもしれないが、な」

そんな会話を交わした後、ノームの男はすれ違って去っていく。
ボクは去り際のノームに声をかけた。

「心配してくれてありがとう、フェル」
「あれ? オレ、名前言ったっけ。ま、いっか。じゃあな」

ノームの姿が見えなくなった後、エナ姉が怪訝な表情で尋ねた。

「さっきのノーム、お知り合い?」

うん。知ってるといえば知ってるし、初対面といえば初対面。
煙に巻くような答え方をして、ボクはフェルのことを思い起こしていた。
あいまいだけど、「フェルと一緒に旅をした」ことだけは覚えていた。
フェルに助けてもらったことを、ボクだけが知っている。
ボクは心の中で、フェルにもういちど、感謝の気持ちを告げた。

外縁の村に着いた。
村人たちの視線は気になるけれど、積極的に何かをしかけてくることはない。
ボクがエルフのエナ姉と一緒に歩いているからだろうか。
前にこの村に来たときの騒ぎを知っている人もいるかもしれない。

ボクたちは、まっすぐボラミーの家に向かった。
庭先にいたビバイアがボクたちに気がつくと、慌てて中に駆け込む。
やがてボラミーとティナ姉が飛び出してきた。

「ミナ、無事だったか! あまりに遅いから心配したぞ」
「ミナ、おかえり。エナも……よかった」
「ぜんぶミナのおかげ。ミナがいなければ命はなかった」
「それは、ここにいるみんながそう」

エナ姉、ティナ姉とボクは再会を喜び合う。
その光景を、ボラミーとビバイアがまぶしそうに見つめている。
ボクはそこにいるみんなに、とびきりの笑顔で告げた。

「ただいま!」


      【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ 完



【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。


■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。


■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/4897513


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m

https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report

【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/

【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84

■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun

----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------

メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。