━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.5 (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆様、こんにちは! 本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。 夜を駆け、人をさらう謎の怪物〈怨霊列車〉。その調査を依頼されたのは、十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロ。未だ乗客の帰還者ゼロという危険な〈怨霊列車〉の正体を暴き、無事に脱出することができるのでしょうか。 前回vol.4では、謎めいた女騎士グロリアとの出会いをお届けしました。 「列車の調査に来たのか」というシグナスの問いかけに激しく苦悩し、アンデッドの兵士たちをけしかけて襲い掛かってきたグロリア。彼女の火球攻撃によってドワーフのアルゴットが落命。早くも冒険の仲間を喪う事態となってしまいました。 それでも後退は許されません。 涙を払って先へ進む彼らを、今回待ち受けるものは……。 なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。 ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。 前口上はこれでおしまい。 さあ、冒険の始まりです! ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:8 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨11枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料2食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:7 ・器用点:5 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし ◇ [5号車]32:騎士ゾンビ 「ヨンさん、あの……」 友人を亡くしたコビットは、流石に気を落としているように見えた。 「お悔やみなんて言わないでおくれよ。あの頑固者が化けて出ちまう。寝てる間に三つ編みにされたら最悪じゃん?」 「……はい」 「それよりも、中々やるじゃんシグ。バッサバッサと斬ってさ。そっちの剣も強かったし」 「当たり前だ。俺は騎士だからな」 〈おどる剣〉のクロは、優しい声音で言った。ヨンを気遣っているのだとシグナスは察する。アルゴットの骸は無かった。彼の存在を示すのは、床に残った激しく焦げた痕跡だけ。シグナスは直視できなかった。 「アルゴットは……格好良かったよ」 ヨンの言葉が、開け放してきた扉から吹き込んだ夜風に舞う。思わず振り向いたシグナスは、床に点々とついた焼け跡が、後方の扉へと続いているのを知った。 (足跡だ。アルゴットさんの……!) 「シグに見せたくなかったんだ、自分が、こんがり焼けたところをさ。最後まで頑固なヤツ! 全然おもろじゃないよ。おもろじゃないっ」 (あんな炎に巻かれながら、歩いたんだ。それから空に身を投げた。……痛みや苦しみ、恐れじゃなくて、出会ったばかりの僕の事を最期に考えてくれたんだ。なんて誇り高い心なんだろう。僕もそうなりたい。誓います、アルゴットさん。強くなります) シグナスは決意を込めて、ぎゅっと拳を握りしめた。 そして任務は再開される。 連結部を渡る時、シグナスは唐突に喪われたアルゴットの事を、やはり思い出した。空飛ぶ列車から吹き払われないように、先に渡ってシグナスの手を取ってくれた優しいドワーフの事を。 (仇を討ちます。絶対に) シグナスは慎重に連結部を飛び越えた。 「ヨンさん、僕とクロが先に行きます」 次の車両には、大いに警戒が必要である。女騎士グロリアが次の策を講じて待ち構えているかもしれない。何故、彼女がこちらを害そうとするのか。きっと〈怨霊列車〉の味方だからだろうとシグナスは考えている。もしかしたら、この列車にはサン・サレンの重大な秘密が隠されているのだろうか。そうでも無ければ専属の騎士を置く意味は薄い。しかし、だったらサン・サレンの領主その人が、〈怨霊列車〉の正体を知らないことなど、あるのだろうか? (何だかちぐはぐだ) そう思いつつ、シグナスは息を整えて内側の扉を開く。やはりと言うべきか、人の影があった。 (※ここで登場するのは騎士ゾンビ! フレーバーテキストには何も書かれていませんが、タイミング的にグロリアとの関係を勘ぐってしまいますね。出現数3、レベル3。反応表を見ますと、出目1〜4だと「手がかり」がいただけるそう。ローグライクハーフにおいて「手がかり」は攻略難易度ががらりと変わる超重要アイテムの場合が多いですから、ここは獲得しておきたいところです。確率も高いですからきっと大丈……ばない出目6! 敵対的も敵対的。んんん、他国の騎士なのがいけないのか、それともやはりグロリアの采配か。いずれにせよ、戦闘です!) 錆と汚れだらけの武器を持ち、型の古い鎧を着た亡者の騎士たち。鎧にはサン・サレンの紋章がついている。領主直属の騎士なのだろう。三人、いや三体の騎士は落ちかけた首の先から、虚ろな眼窩に光を宿して、シグナスを値踏みした。 「通してください。サー・グロリアに用事があります」 かた、かたかたかた、と亡者の騎士たちが骨を鳴らし、各々の頭に手を添えた。 「サー……?」 シグナスが言いかけたところで、騎士たちは白骨化した己の頭を己の手で引きちぎり、こちらに投げつける。 「うわ、うわあああ!」 シグナスとヨンは揃って悲鳴を上げて逃げ回る。 (※ということで0ラウンド、敵対的なので相手が先に動きます。ゾンビになった騎士たちは自分の頭をぶん投げて攻撃を敢行。あの、サン・サレンの皆様って急にアグレッシブになる国民性なんですか!? それはそうと、難易度が記載されていないので目標値をクリーチャーのレベルと設定して、判定していきます。シグナスとヨンは成功、クロは大失敗。クロ先輩、やはり何か変ですね) 顔の前で骸骨がぱかりと口を開け、シグナスは無我夢中でそれを叩き落とした。ヨンは小柄な体を床に放り出し、骸骨がすかを食って墜落したところを蹴飛ばして黙らせている。シグナスは一安心した。 ところが、ばり、と妙な音が聞こえる。そちらを向くと、一番身軽で戦闘慣れしているはずの〈おどる剣〉のクロが、骸骨に咥えられているではないか。歯を立てられた刀身が、みしみしと軋んでいる。 (※0ラウンド、こちらの攻撃。クロが【凶器乱舞】を選んで成功。) シグナスは飛びかかって頭蓋骨に剣を突き入れた。 「すまん」 脱出したクロは宙を舞い、今まさに襲いかからんと剣を振り下ろしてきた首なしの騎士に体当たりすると、これを粉砕する。 (クロが変だ) その一撃が力任せの乱暴なものに感じられ、シグナスは不安に思った。 「シグ、危ない!」 ヨンの声に我に返る。いつの間にか、錆び付いた剣がシグナスの眼前に迫っていた。 (※1ラウンド。防御はシグナスとクロに割り振りますが、ここでシグナスくんが大失敗。ダメージを受けてしまいます。続く攻撃はレベル3相手に全員失敗するという体たらく。どうしたどうした!) 「くっ……!」 シグナスは咄嗟に弾こうとしたが、腐っても騎士。先程のグロリアの兵士たちより遥かに重く速い剣は、かえってシグナスの防御を弾き飛ばす。切っ先に肩口を突かれ、激しい衝撃でシグナスは床にひっくり返った。強かに体を打ち付けたが、何とか剣は握りしめている。転がり起きて反撃を試みた。が、軽く流される。ヨンが背後から攻撃を仕掛けるも結果は同じ。これではまるで、稽古を付けられているようだ。 (情けない) もう一体とクロが斬り結んでいる。こちらも芳しくない。骸骨に刀身を噛まれた損傷が影響しているのか、それとも──。 (クロ、やっぱり何か思い出してるんじゃない?) 「シグ、狙われてる!」 (※2ラウンド。防御はシグナスとヨンに割り振ります。一転してシグナスくんが大成功を収めます。戦いの中で成長していくなんて主人公っぽいんじゃないでしょうか。ヨンさんも出目5で立派な数値です。そして攻撃はシグナスくん大失敗するものの、クロが成功、ヨンさんが何と大成功で勝利となりました。ヨンさん、いざとなったら強いじゃないですか。おもろ!) 振り下ろされる首なしの騎士の剣を、シグナスは今度は読んで、がっしりと受け止めた。 「負けない、負けるか、この……っ」 全身の力をかけて、騎士の剣と押し合う。その意を汲んだヨンが素早く騎士の脛に一撃を加えた。骨が砕ける乾いた音と共に騎士は横転。それ以上は動けなくなった。 「ありがとうございます、ヨンさん!」 「へへ、おいらもやる時はやるんよ」 同じ頃、クロももう一体の騎士を片付けている。しかしシグナスが見たところ、〈おどる剣〉にはどこか覇気に欠ける気がした。ぼんやりと、自分が仕留めた騎士の骸の上に浮かんでいる。 「ねえクロ、隠し事は無しだよ。何か思い出したんでしょ。違う?」 シグナスが声をかけると、〈おどる剣〉は言葉を探すように空中で回転し、 「その通りだシグナス。俺は何か引っかかっている。もう少しで思い出せそうなんだ」 「記憶喪失かい」 ヨンが口を挟む。 「俺は人間で、騎士だったんだ。それ以外が分からん」 シグナスが孤児院に預けられたとき、その傍らにクロが添えられていたという。最初は誰も〈おどる剣〉などではなく、守り刀の類なのだと思っていた。その剣が、シグナスが物心つくと同時に喋り出したのだから、孤児院は蜂の巣をつついたような大騒ぎになったと聞いている。ただその〈おどる剣〉は何の命令も自覚していなかった。ゴーレムなのだから、何かしらの役に立たせるために創られた存在のはずなのに。 クロはどこか自分に言い聞かせるように呟いた。俺は騎士なんだ、そのはずなんだ、と。 ◇ 今回のリプレイは、ここまでです。 アルゴットさんとの別れを経て、シグナス&ヨンが良いコンビになりつつあるような気がします。ノーブレーキになったヨンさんが今後どの程度脱線するのか、それをシグナスくんは止められるのか、すべては出目のみが知るところです。スリリングおもろですね! 一方、クロ先輩の出目は乱高下し、どうにも冴えません。何があるのだろうと意味を求めるところも、またリプレイを書く楽しみだと思っています。クロが何者で、過去に何があったのかは、まだプレイヤーも決めていません。すべてはシナリオと出目を睨めっこしながら読み解いていこうと考えています。この先で、クロの動揺の理由が明らかになる展開が拾えたら楽しいですね。 それでは、次の車両でお目にかかりましょう。 良きローグライクハーフを! ◇ (登場人物) ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。泣かないように踏ん張っている。 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。何かの記憶を思い出しつつある? ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。 ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。 ・グロリア…サン・サレンの女騎士。アンデッドの部下を引き連れ、様子がおかしい。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。