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2026年1月7日水曜日

第3回【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4732

第3回【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【ハンテッドガーデンハート〜盗賊剣士外伝〜】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。


ぜろです。
ニナ・ガーデンハートの雪深い森の中での逃避行。
その一点に絞ったゲームブック。それがこの「ハンテッドガーデンハート」です。
スタミナと敵との距離を測りながら、最終的に逃げ切るのが目的です。
相手は手練れのハンター、ダムリス。痕跡が残りやすい雪の地で、不利な逃走劇が続きます。
そんな中、森の中の小屋で、青年が暗殺者に襲われる場面に遭遇。青年と協力して暗殺者を倒しました。
これが逆転のきっかけになりますか、どうか。


【ニナ スタミナ:5 距離:1】


●アタック02-4 ニナと主人公

私は、覆いかぶさっている暗殺者の遺体をどけると、荒い息を吐いた。

「助かったよ、ありがとう」

青年が、へたりこむ私のそばに来て、座った。

「ヘマをやらかしてね、追われているんだ」
「そうみたいね。見てわかった。実は私も追われているから」
「そうなのか」

少しの体力も惜しいこの時に、この青年を助けるため、余分な体力を使ってしまった。
もう、へとへとだ。この先、長い逃避行を続けられる余力はない。数値的にはスタミナを消耗していないが、気力の問題だ。
距離も1だというのに、この小屋の中で長時間トラブルに巻き込まれて過ごしている。
ダムリスは視認できる位置にいたのだから、この状況をどのように見て、今どのように策をめぐらせているのか、わかったものではない。
警戒心が強いダムリスのことだ。この青年の存在があるから、小屋の中に踏み込んでこないのだろうけれど。
この暗殺者のように、殺してしまうのならむしろ簡単だ。ダムリスの目的は、私を五体満足で連れ帰ること。彼にとっても、高難度のミッションに違いない。

「あなたはひとまず助かって良かったかもしれないけれど、私の方はもうダメね。ここで力を使い切ってしまった」
「どうして、あきらめるんだ? あんたはまだ、捕まっていないじゃないか」

青年は言った。

「俺は、捕まっても諦めなかったら、森の妖精に助けられたぜ」

森の妖精……私のことか。だいぶ無様だったけれど。

「好機は、訪れる。あんたに運が残っていれば」

青年は、さっきまで首を絞められていたとは思えないほど、力強い瞳をしており、私は息を呑んだ。
この青年は、なってくれるだろうか。私の好機に。

「自分からこんなことを言うのは気がひけるけど、借りを返してもらえない? 今度はあなたが、私を助ける番」
「その言葉を待っていた」

青年は言った。

「俺が、あんたにとっての好機だ」

私は思った。この展開を青年視点で描いたら、そっちが主人公みたいだ、と。
そんなメタな思いをよそに、青年は私に弓矢を渡す。

「これは君が使うといい。俺にはこれがある」

青年は、剣を手にしていた。

「名前くらいは名乗っておくわ。私はニナ。ニナ・ガーデンハート」
「俺は……そうだな。アルスでもイルスでもウルスでも、好きに呼ぶといい」
「なにそれ。偽名?」
「いや、別に秘密にするつもりはないんだが、本編が始まらないと正式な名前は決まらないんだ」

なるほど。この前日譚ではなく、本編の主人公候補というわけね。
こうして、私とアルスの反撃が始まった。


●アタック02-5 ダムリスとの決着

警戒しながら小屋を出る。
こういうタイミングがいちばん狙われやすい。
出るのは、私だけだ。アルスと一緒には出ない。
ダムリスを誘い出すのが目的だから、余分な警戒心は抱かせない。

小屋に向かう足跡は私のものだけではない。
やはりダムリスはここまで来ている。
小屋の死角に潜んでいるのかも。
けれど、足跡を追うような真似はしない。あえて無視して歩き始める。

私は歩く速度を速めるが、ダムリスはなかなか動きを見せなかった。
しかし私が十分に距離を取ったと思う頃に、いよいよ私を追いかけ始めた。
たぶん、小屋の中の青年と私とで挟撃されるリスクを警戒していたんだ。
小屋の方の動きが見えなかったため、その可能性は低いと踏んで、追跡を再開したといったところだろう。

私は焦る気持ちを抑えつつ、雪面に足跡を増やしてゆく。

・弓矢を持っていて、正面から戦う
・弓矢はあるが、逃げてダムリスを誘い込む
・弓矢がない

私の動きを見ればわかるとおり、逃げながらダムリスを誘い込む。
今はまだ、ダムリスとの距離はある。

・今のうちに樹上に隠れる
・白い雪原に足跡をつけて逃げる

この選択肢でピンときた。
イタチ先生から学んだテクニックを、今こそ実行に移すときだと。

私は、雪原に足跡をつけて歩く。
少し歩いたところで、同じ足跡を踏んで戻り、元のパラグラフへ。
そして、樹上に隠れるのだ。

私は樹に素早く登った。

・足跡に関する工夫があるなら、進んだ歩数と同じ数を、この項目番号に加えること

これだ!
私は樹のところから、7歩、歩いた。そして、戻った。
そこで不自然に足跡が途切れているから、ダムリスはすぐに異変に気づくだろう。
けれど、それでいい。わずかでも時間が稼げれば。隙が作れれば。

やがて。

きた。ダムリスだ。

ダムリスは、私の足跡に視線を落としながら、余裕のある態度で歩いている。
足跡の観察のため、頭上はお留守だ。この時点でも隙が見える。

けど、まだだ。

やがて足跡が突如途切れたことで、取り乱す様子を見せた。そこが狙い目だ。

私は樹上から矢を放つ。
それはダムリスの肩に刺さった。ダムリスは弓を取り落とす。

そこにアルスが飛び出し、ダムリスのももに剣を突き立てた。
ダムリスは声を上げて倒れ込む。

アルスは、小屋から離れるダムリスを見送った後、足跡がばれないよう、木々の裏側を通ってここまで来て、待ち伏せしていたのだ。

私は地上に降りた。倒れたままのダムリスに声をかける。

「あなたは私を殺すことが目的じゃなかった。だから、私もあなたを殺さない。私のことは、雪崩に巻き込まれて死んだとでもしておくことね」

それ以上、言うことはなかった。
ダムリスの返事を待たずに、歩き出す。
アルスが隣に並んで歩き始めた。

「これから、どうするんだ?」
「住み慣れた街に戻るわ。慣れない稼ぎ方はするもんじゃない。普段と違うことをするとき、猫は死んじゃうのよ」
「猫のことは知らないが……あんたの街、ネグラレーナの盗賊ギルドに世話になりたいんだ。できるかな?」

そういえばアルスは、何かヘマをやらかしたって言っていたっけ。

「いいわ。頭領に話をしておく。『奇妙な猫の瞳亭』に来てちょうだい」
「ありがとう。……あんたから、春みたいな香りがするよ。新緑の樹から漂うような、目の覚める匂い」
「そう? 私は、眠い」

いきなり何を言い出すんだこの男は。汗臭さしかないと思うのだれど。
そんなことより、私は眠い。
追っ手がいなくなり、自由を手にした途端に、これまで緊張感とともにためこんできたものが、あふれ出てしまったようだ。

彼がどこまで同行するかはわからないけれど、ひとまずこの先休憩できるところまで行ったら、交代で見張りしながら休もう。

なんとなくアルスとは、長いつきあいになる気がした。


■登場人物
ニナ・ガーデンハート ガーデンハート姉妹の長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
ダムリス 非合法な組織の追っ手。ニナを狙っている。
ポリアンナ 森でニナが餌付けしたポルルポルル。空腹。
イタチ先生 ニナに雪上の足跡トラップを伝授してくれる。
アルス(仮名) 小屋にいた青年。ヘマして追われてたところをニナが助けた。

■作品情報
作品名:ハンテッドガーデンハート
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/3998135
ゲームブック短編集「ハンテッドガーデンハート」に収録されています


●感想

ニナ・ガーデンハートの短編、クリアしました。
スタミナと距離を計算しながら歩く、緊張の逃走劇でした。
この作品のポイントは、なんといっても足跡の罠をしかけるための、特殊なパラグラフジャンプですね。
足跡をつけて戻ったのを表現するために、その知識があれば、元の番号に戻れるという特殊な処理と、その後に続くパラグラフジャンプが、短編のワンアイディアとして輝いていました。

私が先にプレイした『狂える魔女のゴルジュ』とは基本設定が少々異なっていました。
ニナの妹たちが売られていった設定の大雑把なところは合っていましたが、末の妹ミナへの言及はありませんでした。
また、「ゴルジュ」のストーリーである、奴隷狩りにあってさらわれたという文脈ではなく、借金のカタに女郎屋に売られた、という流れなのは大きな違いですね。
ニナは女郎屋から逃げたことになっているので、追っ手がかかる合理的な理由にもなっていました。
奴隷狩りからミナとともに逃亡した展開だと、この話には直接つながらないように思います。

まあ、設定は後から生えてきたり、時とともにいい感じに熟成されていったりするものなので、辻褄が合おうが合うまいが、どっちも正史ってことでいいと思います。

結末はメタ視点も入れて勝手な解釈を加えましたが、きっとアルス(仮名)が『盗賊剣士』の主人公、なんでしょうね。
そんな風に読めたので、そういうこととして話を進めました。『盗賊剣士』は触っていないので、推測です。

そこでふと思ったのですが、ニナが主人公のこの短編に加え、同じ場面に繋がるアルス(仮名)が主人公の短編があっても面白いなって思いました。
2つの短編が、小屋の場面でクロスオーバーするって展開です。
昨今の異世界転生系の小説などでは、同じ場面を他の登場人物視点で描く、というのをよく見ますので、そんな感じで。
ニナとアルス(仮名)が、それぞれどんなトラブルを抱えつつ、人生が交わる点に到達するのか。そんな見方ができたら、面白いかも。
まあ、全部私の妄想ですので、作ってくださいとか要望するわけではありません。

『狂える魔女のゴルジュ』の、ミナ視点から見るニナは、なんでもできるすごいお姉さんでした。
こうしてニナの物語を体験すると、ニナはニナで、苦悩もすれば成長過程でもある、いたって普通のエルフのお姉さんってことがわかります。

ニナが登場する作品はまだありますので、今後彼女が活躍する場面を見る機会を楽しみにしたいと思います。

短編ながらアイディアあふれる作品、ありがとうございました。


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