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2026年1月6日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.127 FT新聞 No.4731

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『これはゲームブックなのですか!?』vol.127

 かなでひびき
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 朝起きたら、金髪グラマーが立っていた。
「長年美女の依頼人か秘書が欲しいと思ってたんだが、願いが天に通じたか」
「依頼人も美人秘書も、こんなものをあなたに突きつけると思う?」
 彼女の手には、黒光りする拳銃が握られていた。
 やれやれだ。真冬なのに熱い一日が送れそうだ。

 読者の皆さんのライフ、ハードボイル度足りてますぅ?
 ユーモアがかまし出す甘味と、ピリリとした緊張感が織り成す「ワイズクラック」
 粋なジョークは、読者を異界に誘う扉であり、一種のファンタジーだと、かなで思ってますっ!
 で、今回ご紹介するのは、ハードボイルド最大の醍醐味「ワイズクラック」が充分堪能できる作品よ!
 その名も『俺に撃たせろ!』(火浦 功著 徳間デュアル文庫)


「俺の名は、アルツ・ハマー。
 この都市の正義と平和を、一手に引き受けている男だ。
 多分、そのはずだ。」
(本文より)

 いきなり冒頭からこのセリフ!
 探偵、いや、漢だったら一度は口にしたいセリフ!
 快調に飛ばしてます!

『ここに入るもの、全ての希望を捨てよ』
 ラテン語でそう書かれている……本人曰く、「依頼人のほとんどがラテン語は読めないので仕事には差し支えない」とのたまう看板をくぐると、そこはわれらが探偵「アルツ・ハマー」の事務所。
 だけど、依頼人……というか、彼に関わる全てのものは、この言葉をすぐに思い知らされることになるわ。
 なぜならば、この探偵、昼食に何を食べたか覚えていないわ、自分の美人秘書の名前も覚えていないわ、「アルツハイマー」もとい「アルツ・ハマー」の名は伊達ではないの。
 そんな彼を待ち受けている事件は、真夏のプールに浮かんだ死体。
 しかも、サンタクロースの衣装を着ている老人と来ている!
 やっかいなのは、悲鳴もなしに飛び降りた現場に誰も気づかなかったこと。
 さらに不思議なのは、死因は飛び降りと見られるのに、飛び降りた建物からプールは20メートル以上離れている。
 走り高跳びの選手でも無理そうな「降って湧いた」死体。
 御手洗潔先生が見たら、口笛を鳴らして飛びつきそうな、本格ミステリの香りさえ漂うこの事件。
 名探偵ハマーは断言するわ。
「こいつは殺しだ! 犯人の目星もついている」

 ……
 ………。
 ちょっと推理は割愛させていただくわ。
 本格好きなら、ひょっとするとここで激怒して、本を壁に叩きつけるかもしれない。
 このノリに付いてこれるかどうかが、この本を楽しめる分水嶺!

 でも、それを補って余りある乱闘とドンパチ!
 愛銃は、コルトの45オート。
 愛車は、V8、8リッターの真っ赤なマーキュリー・クーガ。
 古き良き時代の「あぶない」探偵の必須アイコンだし、例えばクーガがホイルスピンさせながら飛び出すシーンは「本当にこの頃のハードボイルドがわかってるなぁ」としびれるくらいかっこいい。銃も同様なところに、愛を感じますぅ!

 また、出てくる会話も粒ぞろい!
 本文から抜粋すると……
 

「人間、首が折れると、いくつか不都合なことが起こってきて、そのうちの一つが、死ぬってことだ。こいつは、医学上の定説でね。万一、お前さんの知り合いで、首が折れても生きてる奴がいたとしたら、そいつは、よっぽど運がいいのか、それとも、厚かましいかのどっちかだ。」


 こんな小粋で洒落たセリフが、全編ぎっしり詰まってる。
 そう、こんなコラム読んでる暇あったら本屋に走るか、ポチれ。っていうくらい「読んでいただきたい」!
 これだ! 私に足りなかったのは、この手のハードなゆで卵のセリフなんだ! という方はご一読をどうぞ!
 また、「ご自分の創作に、ハードボイルドな会話を出したい」と思っている方にも、絶好の教科書!
 この本はワイズクラックの宝箱よ!

 で、この小説がどうして「ゲームブック」=「遊べる本」として紹介したのか。
 この話、気の利いたセリフと暴力が満載されているのはいいけど、肝心な最初の事件の「解決」がついてない。
 というか、すっかり忘れ去られている!
 一応、回答編も用意されているけど、これがまっとうな推理小説好きなら、そのまま窓から思い切り投げるぐらいふざけている。
 というわけで、あなた自身で納得の行く答えを見つけてみたらいかがでしょうか?
 そう言った意味でも、本作は優れたリドル・ストーリーだし、「遊べる」本よ。
 見逃せば人生後悔することウケアイ!


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『俺に撃たせろ!』
 著 火浦 功
 出版社:徳間書店 2001/11/30
 文庫 505円+税 絶版
 Kindle版 770円(税込)


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