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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(2)
(明日槇 悠)
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世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第2回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1242年5月。近隣のアヴィニョネに向かう異端審問官ギヨーム=アルノーを、砦の指揮官ピエール・ロジェは「おらッしゃあァァァ!」の一声とともに葬った。
暗殺から一年後、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、内通者の存在を疑い、言動のあやふやなピエール・ロジェに見張りをつけるよう領主レーモンに要請した。
その教義において子供は正しい判断ができない悪魔であるため、孤児であるアミエルとファイユの姉弟をもベルトランは危険視する。
そんな中、レーモンの次女、エスクラルモンドは夜ごと城塞から南方を見つめ、天から降り注いだ火が神の軍となって向かってくると父に訴えていた……。
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
●本編
■Act1.包囲開始(後編)
C「シーンカード、【遠くを見えなくさせる深い霧】。
その日は、5月だというのに深い霧がモンセギュールの砦を覆っておりました。そしてエスクラルモンドはその日の夜も南方を見つめ、レーモンに『あの神の軍勢が見えませんか?』と同じように尋ねる。
Cエスクラルモンド「私は完徳者《ペルフェッチャ》のセシルから、あの神の軍の正体を聞きました」
と唐突に言い出す。レーモンが知らないうちにエスクラルモンドは、完徳者のセシルに深く感銘を受け、なにか手ほどきのようなものを受けている。それ以来、幻覚のような症状をあらわすようになった。そしてレーモンに、深い霧で何も見えないというのに、あそこにあのような配置で神の軍が来ていますということを強く訴える。ピエール・ロジェの妻で姉のフィリッパについては、『あのひとはなにか怪しいところがありますよ』とレーモンにこっそり。レーモンからなにかを聞いたというわけでもないのに、そういうことを言い出します。これも幻覚で、
Cエスクラルモンド「フィリッパはなにか様子がおかしいようです。神の兵に向かって尻を出しているところを見ました」
それを受けてレーモンがどう思うかという」
B「レーモンは、エスクラルモンドがたびたび幻覚を見ていることに対してかなり危機感を抱いている。『とりあえずゆっくり休むといい』と言う。そしてフィリッパの件については、『私から話を聞いてみよう』と言って、この問題をできるだけ公のものにしないように一家の主として対応しました」
Aベルトラン「レーモンくん! レーモンくん! 私だよ。ベルトランだよ。(一同笑)レーモンくん、君がいま話してたエスクラルモンドって女、どう考えても様子がおかしいよね? レーモンくん、セシルと会うようになってから様子がおかしくなったってことは、セシルがエスクラルモンドに変な薬でも渡している可能性があるとは思わんかね。セシルがもしエスクラルモンドに人間の欲を高めるような薬物などを渡していた場合、それは戒律に反するし、何よりそんなものをどこで手に入れたのか、怪しいとは思わんかねレーモンくん。もしかしたら教皇軍ならそんなものも手に入るかもしれないけど、今は砦で包囲されている私たちにそんなものを手に入れる術があるわけではないとは思わんか」
Bレーモン「いや、彼女はセシルに精神的に依存しているだけだと私は思っている」
Aベルトラン「依存だけで幻覚とか言い出すかねぇ? そもそもなぜセシルに依存するのかわからん! だって、セシルはペルフェッチャだけど、私はペルフェッチだぞ?」
Bレーモン「フィリッパはよくできた娘で、既にピエール・ロジェと結婚している。それに対してエスクラルモンドは相手を見つけられず、優秀な姉に対して深い嫉妬を抱いている。信仰によってでしかそれを解消できなかったという話なのかと私は思っている」
Aベルトラン「ガルニエ(エスクラルモンドに恋心を抱く傭兵)でいいじゃないか! 選り好みしやがって! ガルニエとくっつけばいいじゃないか!(一同笑) なんだあの女! ラリってるんじゃないか。まぁ元から様子のおかしい女だったからな」
Bレーモン「やつは名誉のためにエスクラルモンドに近づいているだけだ」
Aベルトラン「ガ、ガルニエが?」
Bレーモン「私の命を奪おうとしているだけだ」
Aベルトラン「ガルニエが!?(笑) あぁ、ガルニエがレーモン君に取って代わろうと。それは考えすぎじゃないか!? 傭兵だぞ?」
Bレーモン「しかしロジェもベルトランに言われたように、かなり心身を衰弱させているか、それとも怪しい内通者として振る舞っているかはわからないが、かなりとぼけたところがある。私はそういったところに乗じてガルニエが取り入ってこようとしているのではないかと危惧している。幻覚が見えるという女に恋心を抱いているなどというのは彼女の内面を見ていないに違いない」
Aベルトラン「彼がどれくらいエスクラルモンドのことを思い続けてきたかわからんしな」
Bレーモン「私が信頼できるのはベルトラン、君一人だ」
Aベルトラン「まぁ私の方でもちょっと調べておくわ。ガルニエ君! ガルニエ君! 私だよ。ベルトランだよ。ガルニエ君……君の恋人、あぁ、まだ恋人じゃなかったか……エスクラルモンドによく言っておきなさい。フィリッパは頭のおかしい女であり、それを娶ったピエール・ロジェに責任があるんじゃないか。そして君がロジェに成り代わる。それを私は支援する。そして私が君とエスクラルモンドを結婚させてあげよう。私の言うことを聞かん防衛指揮官なぞ、いらん! しかも、あいつは内通者の疑いがある。そんなものはいらん!」
Cガルニエ「畏まりました……」
Aベルトラン「しかも、【私の言葉を信仰に裏打ちされた啓発的なものにしているその要因】(ベルトランの質問1)、それは権威である。完徳者《ペルフェッチ/ペルフェッチャ》は二人いらん。セシルの方も探らんとな。じゃ、わし、メシ食って寝るわ(一同笑)」
D「風呂はいれや」
C「ピエール・ロジェは全員に狙われていることを全く知らず、妻のフィリッパのことは置いておいて娼婦のアルセンドと寝ているのでしょう。こんなところでシーン終わりですかね」
D「【コポコポ音を立てる山の川】。アルセンドの質問、【ロジェと寝るとき何を感じるか】って会話、誰とするんだろう……(ロジェと一人二役はできないため)」
A「まぁ、ベルナールじゃない? 関係値でいうと。むりやり関係値をアドリブで生やすか、ベルナールに話すか」
C「ベルトランに報告するとか?」
D「いきなり娼婦が」
A「……か、甥と姪にセックスの話をする醜い叔母という設定にしていく(一同笑)」
D「そのほうが面白いかな。どうしよ」
A「ただ俺のキャラ設定的に言うと、めっちゃアルセンドのこと嫌いだよ」
D「あー。じゃあ、甥にでも話そうかな」
Bアミエル「叔母さん、どうしたの?」
Dアルセンド「実はね、ちょっと話したいことがあって……。実はロジェさんね、あんまりこう……最近冷たいのよね。冷たくてちょっと、別の人に乗り換えようかなってふうに思っているのだけど、あなたどう思う?」
Bアミエル「ロジェさんって、あの防衛指揮官のロジェさんで合ってる? ロジェさん、すごい奥さんいるのに(一同笑)」
Dアルセンド「そうだよね。そういうこともあって彼のことはアタシ、信用できてないのよね。ベルナールさんのほうが最近ちょっとカッコいいかなって思ってるんだけど、あなた的にはどう思う?」
Bアミエル「自分は賑やかだったら、あとはちゃんとしてる人だったらどっちでもいいかな。叔母さんが幸せになるなら、それで」
Aファイユ「わたしファイユなんだけど! わたし基本マザコンだから、お父さんお金持ってるほうがいい」
Dアルセンド「あー。でもロジェさんはちょっと信用できないのよねー。お金より大事なものってあるよ?」
Aファイユ「ない! ない! 娼婦がなに言ってんの叔母さん!(笑)」
Dアルセンド「食わせてもらっといて何様だお前……。出てけお前……!(一同笑)」
Aファイユ「叔母さん! わたし、誰にも見られないようにポケットの中で握ってる石で殴るよ?(笑) あー、じゃあいいよ。わたし馬小屋行くよ。馬小屋の暗いところは安全だと思ってるから馬小屋へ行くよ、わたし」
Dアルセンド「いいわね、あんたなんて家畜よ。行っちまいな!」
A「ファイユは馬小屋に行きました」
D「アルセンドはロジェのことをあんまりよく思ってないという感じですね」
B「アミエルの質問はだいぶ味わいがあるな……。【あなたが木で作ったのは、いかなる種類の武器か?】【あなたは大人になったら、何になりたいか?】力を求めてそうな雰囲気が」
D「力が欲しいか」
A「悪魔じゃなかったらベルトランがなんとかしてやったのにな〜。ガキだからな〜。基本悪魔なんだよ、ガキ」
D「サイドストーリーなんだよな、こいつ(アルセンド)。せっかくだから、【どうやって甥や姪の世話をしていくつもりか?】という問いに対する話をしようかなと思うんすけど、これはまた甥と姪を呼び出したほうがいいかな」
Dアルセンド「一旦、話あるからちょっと来て」
Aファイユ「カーッ! カーッ!(威嚇)」
D「馬に! 馬になってる!」
A「ポケットの中で石をすごい握りしめながら」
Dアルセンド「怖い怖い怖い。ごめんなさい、さっきはちょっと言い過ぎたわ。ごめん」
Aファイユ「カーァ……カー……」
Dアルセンド「あの……これ、餌。エサというか、あげるから(笑)」
Aファイユ「チッ、チッ、(舌打ち)フガァ」
Dアルセンド「大丈夫? 動物になってる! 一旦戻ってきて。あなたたちをどうやって育てていくかについてお話をしなければいけないんだけど」
Aファイユ「お前の匙加減だろうが!(小声) お前の! 匙加減だろうが!」
Dアルセンド「あなたたちはこれからどうしたい?」
Aファイユ「どうしたい!? 養ってほしい!(笑)」
Bアミエル「僕は大人になったら、叔母さんのような立派な娼婦になるよ(一同笑)」
Aファイユ「弟ォ! 何言ってんだ、アミエル。石出るよ!」
Dアルセンド「あー、そうなの。あなたの進路は娼婦なのね。男娼になるわけね? でもファイユのほうがどちらかというと向いてるんじゃないかしら(一同笑)」
Aファイユ「ッ、クソババア! アミエル、なんとかしなさいよ! あんたのせいじゃない、これ完全に。どうすんのよ、これ!」
Bアミエル「というのは冗談で、僕はいま木で武器を作っていて、やっぱり強い人になりたいので、剣の腕を磨いてちゃんとした兵士のような男になるよ」
Aファイユ「よかった。偏見だけど絶対ロジェなんてアミエルに手出すじゃない。あいつド変態なんだから」
D「え、男に手出すの?」
A「知らんけど。偏見だけど」
Dアルセンド「そうだったの。けっこう将来について考えてるのね、あなたは」
Bアミエル「いま、木で武器を作っているんだ」
Dアルセンド「で、ファイユはこのまま私の世話になり続けるつもり? そろそろ仕事してもらわないと……」
Aファイユ「カーァッ! 馬小屋に行くゥ!(一同笑) やっぱ馬小屋は暗くて安全だからなー。自分、馬小屋行ってくるわ」
Dアルセンド「あー。いつまでも安全でいられると思うなよ」
A「撃墜してくるやんけ(笑)」
Bアミエル「そのときはお姉ちゃんには刀の錆になってもらうよ」
Aファイユ「えっ? わたし、うっすら嫌われてる?」
D「あたりめぇだろ(笑)」
A「ファイユは馬小屋で泣いてる、いま。えーんえーん! つって」
D「二人の世話はなるべく今後、解消していくって感じで私はやります、という結論」
B「だいぶ劣悪な家庭環境……」
A「やろうと思えばアルセンドの姉か妹の謎もあるよね。姪と甥なわけだから」
B「アミエルの質問も【父親について、どんなところがいちばん恋しいか?】みたいなのがある。孤児なんでたぶん亡くなってるんですよね」
A「そう。ファイユもあるんよ。【あなたが母の姿を最後に見たのはいつか?】って意味深フレーズが」
B「まぁ、おいおい」
D「甥だけに」
A「【夜闇をかける馬の足音】で、ベルトランがレーモン邸に着いた。コルバはいる?」
Dコルバ「います」
Aベルトラン「コルバ。レーモンに薄々相談を持ちかけていたんだが、君はセシルについてどう思う? そう、エスクラルモンドがセシルに会うようになってからおかしくなったようなんだ。いやぁー、普通だとあんな風にはならないんだけどね。もしかしたらセシルは、エスクラルモンドになにかしているんじゃないかと思って。
コルバ、お願いがあるんだが……君もセシルに近づいてセシルがエスクラルモンドになにか怪しげな薬物を渡していたり、私たちの教義じゃない変な教義を教えたり、セシルがもしかしたら教皇軍と連絡していたり、そんな様子がないか探ってはくれんかね」
Dコルバ「……御意」
Aベルトラン「じゃあベルトラン、コルバに味方してもらえる算段ついたし、お風呂はいって寝よっかな」
Bレーモン「やあベルトラン。うちの浴槽を使っていくかね」
Aベルトラン「あ……、すまないレーモン君。人の風呂とかちょっと無理なタイプで、ごめんねぇ」
Bレーモン「ご飯も作らせるよ。うちの召使の者に」
Aベルトラン「あ〜……、ちなみにその召使は何歳くらいかね」
Bレーモン「二十歳くらい」
Aベルトラン「あ〜、頂こうかね。よかったよかった、二十歳ならよかった。十四歳以下なら殺したほうがいい。もしくは大人がついて逐一指導してしつけをしたほうがいい」
Bレーモン「厳格だね」
A「そう言ってベルトランはレーモン邸で夕食をいただいた。終了」
◯Act2.過酷なる冬(前編) に続く……
●登場人物/3つの質問
エスクラルモンド……モンセギュールの領主レーモンの娘で、フィリッパの妹。
1. どうしてあなたは、夜になると南方を見つめるのか?
2. なぜあなたは、セシルと同じ髪型をしているのか?
3. あなたが姉のフィリッパをいちばん妬んでいることは何か?
ファイユ……孤児の少女。アミエルの姉。おばのアルセンドと一緒に、モンセギュールに住んでいる。
1. あなたが母の姿を最後に見たのはいつか?
2. 誰にも見られていないとき、あなたがポケットのなかで握りしめている石——これはどこで手に入れたものか?
3. なぜあなたは、馬小屋の暗いところが安全に思えるのか?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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