小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』完結おめでとうございます!
その熱気に触れまして、番外編書いてみましたー!
すべての『汝、獣となれ人となれ』ファンに!
そして、齊藤飛鳥先生ファンに捧げます。
楽しんでいただければ幸いです!
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『Monkey business』
-クワニャウマの新しいアジト-
葉山海月
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稀代の冒険家、(あるいは詐欺師とも口の悪い奴は言う)クワニャウマ氏。
この度、〈太古の森〉のヴィンドランダ遺跡群へ冒険、通称『汝、獣となれ人となれ』事件を解決に導き、その報酬で念願のアジトを手に入れたということで、FT書房の編集員である私が呼ばれた。
「本当は誰にも見せたくないけど」
クワニャウマ氏はそう言った。
「じゃあ。なぜ私なんかを?」
「あんた一番人畜無害……というか、ここのアジトの位置さえも忘れちゃううっかりさん系だから。秘密を守るにはちょうどいいの」
一歩入る。
部屋の中に咲き乱れる花。壁はツタでおおわれている。いたるところに植物が生い茂っている。
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それが「廃墟」のようなイメージを保っているのは、「持ち主が丹精込めて手入れしているから」。
「クワニャウマさんが!? これを!?」
がさつなイメージに合わない。
「まあね。ある意味命に等しい財産だし」
「で、暇なときはこのデッキチェアで寝てるの。というか、デッキチェアで緑に囲まれてリフレッシュするのが目的。名付けて『緑の王座』」
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「冒険でくたくたになったとき。汗やほこりなんかはこうして流す!」
クワニャウマ氏は、何か床のステップを操作。
すると、デッキチェアがひっくり返り、出てきたのは風呂桶!
「なんとなればそこのハーブを取って入れてもオケ。少なくとも、相棒にも知らせてない『秘密の天国』よ。ここがあるから、あたしは明日冒険に出られる。そう言っても過言じゃないけど」、
床下でデッキチェアが散乱する音が聞こえたのだけど、気のせいだろう。
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まるでガラクタのように無造作に置かれているのは、これまでの「収穫」つまり、宝箱、何かの剣。
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「これって曰く付きみたいですねー」
「うん。『選ばれたモノしか抜けない』なんてふざけたこと言うから、台座ごと奪ってきたよ」
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そして、目につくのは……
「カメラ!」
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古めかしいが、オーバーテクノロジーなカメラ。
「なんでこんなものがここに!?」
「いいところを指摘してくれました!
実は、チャマイで開発された最新技術の末。活動写真って知ってる!? ひそかにそれをはやらせるプロジェクトがあるの。
まだまだ産声を上げたばかりなんで、海のものとも山のものともとれないけど、これは、活動写真を撮るカメラ。
これからあたしの冒険譚を取って、アランツァ全土に感動の嵐を巻き起こすの。シリーズタイトルは『クワニャウマ。その愛と真実。そして』
ゆくゆくは、『クワニャウマ記念館』が建てられる予定よ」
目を輝かせて、一気にまくしたてるクワニャウマ氏。
そこには、少女、そして少年の心を持った大人がいた。
このアジトの弱点は、トイレは別室だということ。(そりゃそうだ)
二人して用をたして帰ってくる。
全財産盗まれていた!
「ああっ! あんまりにも気持ちいいんで、屋根もつけずにふきっさらしにしたのは、セキュリティ対策の大きな穴!」
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「仕方ないわね。もう一度買うか」
クワニャウマさん! 今何と!?
「例えばね、この花は、香りだけで完全にその人の心に真のリラックスを与える。
ある宗教でも、瞑想の時にこれを使う。
百年に一度しか咲かない。ってんで、金貨1万枚出して買う人もいる。
この部屋に来たら、魂さえリフレッシュするのは、その効果のタマモノ。
この花もしかり。この花はある山脈にしか咲かない。しかも人食いモンスターがうようよしているところに咲く花で、食材としても、コレクションとしてもすさまじい額を誇るの。生えてるつただって、一口食べれば死者さえ生き返るシロモノ。通称『翠竜の鱗』まだほかにもヤバいものがあるけど、聞きたい?」
なるほど、無料で手に入る安全カミソリを使って剣を作る、など、涙ぐましい努力の末に、この財産を買ったんですね!
「目の前に無造作に堂々と置かれているものほど、賊は注意を払わないもの。おかげで目くらましの雑魚アイテムに手を出す奴らが多いこと多いこと」
「なるほど。最高のセキュリティかつ、宝物庫なんですね」
「あのカメル教授にも『このコレクションを一般公開しないことは人類の損失だ』とさえ言われた。けど、あたしのものはあたしのもの。名前も書いたしね。あたしが誰にも言わないわけ、わかってくれて?」
その時、ドアが開いて、そよ風とともに一人の少女が入ってきた。
イェシカだ。
彼女は、ここの花にもう一つ付け加えるように、花のような笑顔をはじけさせる。
そして、石板にこう書く。
「新しい花。咲いた?」
クワニャウマ氏は、笑ってこう答える。
「うん。この間、100年に一回しか咲かない『極楽花』が咲いたところ」
イェシカは早速、その前に座る。
そして、便箋を取り出し、スケッチを始めた。
つたないながらも、いきいきとしている絵。
「人はあたしのことを『度を過ぎたケチ』と言ってるのを知っている。
あたし自身『金は命より重い』と思っている」
そして、イェシカを眩しそうに見つめる。
「だけどね。それは、世の中に、命より重いモノを賭けるだけの価値がないことをよく知ってるだけ。
そして、この笑顔には、いくらかけたっていい。それだけの価値はある。そう思わない?」
一心に筆を走らせるものと、それを見守るもの。
書き終えたスケッチに「天国のクリスティさんへ」と書かれるのを見届ける。
イェシカは、デスクから何かの種を取り、そしてスケッチに置く。
一心不乱に、丁寧に、折りたたんだそれは、何か「羽のついた種子」にも見える紙飛行機になる。
立ち上がるイェシカ。
春から夏へ変わる香りがする風が、流れ込む。
彼女は、それめがけて、天にも届かんばかりにそれを放り投げる。
紙の羽が、あおられながら天空の点となって、見えなくなるまで見届ける。
私は、「どうして彼女が全財産を使ってここを建てた」か分かった。
EOF
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あとがき。
ありがとうございます。
今回は「二人」の先生の前、ということで、力を入れて作ってみました。
私のつたない筆、そしてつたない工作の腕に、ありがたくも深く感銘していただいた 齊藤飛鳥先生。
そして、発表の場を与えていただいた水波流編集長。
ほんと、わたしなんかでいいのかな? という感じです。
今年の幸運、ここで使い果たしたかも!?(笑)
お二人に深い感謝を。
(葉山海月)
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