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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.42
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お久しぶりです。ローグライクハーフに絶賛ハマり中の齊藤飛鳥です。今回は『君へ贈る詩』リプレイ(前編)をお送りします。
通常は探索や戦闘が冒険の中心となりますが、今作は「詩を作る」ことを目標とした珍しいシナリオです。
これだけでも心惹かれましたが、さらには、
1:舞台が以前プレイした(リプレイはなし)『幽霊屋敷の果実酒』と同じ自治都市トーン。
2:クワニャウマの冒険の目標である、「ファラサールの詩を吟遊詩人に作ってもらう」と、うまく絡み合う、吟遊詩人がメインとなるシナリオ。
と、クワニャウマの冒険譚とぴったり合うシナリオ内容に、「もうプレイするしかないじゃない♪」ということで、クワニャウマに冒険してもらうことにしました^^
そこで、ファラサールの詩を作ってくれる吟遊詩人も作成し、冒険に参加してもらって「一緒に冒険した仲だから詩を作ってもらった」という展開を目指しました。
初めてローグライクハーフをプレイした時には、キャラクターを一人作って動かすのもやっとで、キャラクターを増やすたびに会話や掛け合いに難航しておりました。でも、プレイ経験を重ねるうちに、「自分で作ったキャラクター同士で冒険を盛り上げたい!」「今の自分ならできる!」「主人公キャラ二人を動かす、いい勉強になるぞ!」と、がんばりましたf^^
そういうわけで、今回は冒険家乙女の魔術師クワニャウマと、新規キャラの吟遊詩人少女のピロスカの冒険となります。双方の個性をつぶし合わないように気をつけてキャラクター作成をしたのですが、いかがでしょうか? この期に及んで、緊張しております><
最後になりますが、『シニカル探偵安土真』7巻が3月17日に発売となりました^^
こんなに巻数を重ねられましたのも、皆様のご声援のおかげです!! まことに感謝の念に堪えませんm(_ _)m♪
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
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ローグライクハーフ
『君へ贈る詩』リプレイ
前編
齊藤(羽生)飛鳥
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0:プロローグ
こんな夢を見た。
実物よりもクレバーになったわたしが、『冒険家の友』を刊行している出版社の人を招き、しゃれたアジトを紹介している。
緑あふれるそのアジトで、イェシカが幸せそうにすごしていた。
目が覚めたわたしの口から、自然とこんな言葉が零れ出た。
「そうだ、家を買おう」
わたしは、クワニャウマ。
善悪より損得を美徳とする強欲な冒険家乙女。
黒髪を二つ結びのおさげにして、イエベ肌で金褐色の瞳が特徴だ。
最初の装備は、布鎧と剃刀と竹光で作った軽い武器だったが、いくつかの冒険を経て、今は革鎧と古代の神槍を装備できるまでになったから、我ながら成長したものだ。
でも、冒険家としての最大の成長は、旅の相棒イェシカができたことだろう。
魔犬獣の毛皮の犬耳付きローブがべらぼうに似合う、愛くるしいエルフの少女である彼女は、ランタン持ちを務めてくれている。
イェシカの最大の功績は、強欲で損得勘定命で、自他共に邪悪と評されるわたしに、無償で心を開いてくれているし、一緒にいてくれることだ。生ける奇跡であり、天使であり、唯一無二の宝だ。
この幸運の天使が選んでくれた三匹の猟犬・雷電、飛燕、月光は、遠い異国のチャウチャウという犬種で、モフモフとかわいいだけでなく、しっかり者で頼もしい従者でもある。
こうして恵まれた冒険家生活を送るわたしとイェシカと猟犬たちだけど、それはとあるエルフの青年の献身が大きい。
彼の名は、ファラサール。
こともあろうに、彼は出会って正味数分もないわたしの命を、報酬を要求するどころか、ただで、しかも自らの命と尊厳を代価にして、救ってくれたのだ。
この偉大なるファラサールを忘却の彼方へ送り出すのは、世界にとって大損失だ。
そんなわけで、彼の勇敢な人生を後世に語り伝えるべく、わたしは吟遊詩人にファラサールの詩を作ってもらおうと資金を貯めていた。
運がいいことに、〈太古の森〉の奥に昔から住んでいる森の賢人・メメコレオウス様が遺跡の冒険を紹介してくれたので、そこでも荒稼ぎさせてもらったのだけど……。
……またも世界の大損失を目の当たりにしてしまった。
二度も大損失を味わい、図太いわたしはともかく、イェシカがひどく打ちのめされてしまった。
冒険には出ず、フーウェイですごして顔なじみのヴィドとゲルダと交流したけれど、やっぱりまだどこか元気がない。
わたしに気を使って元気に振る舞っているところが、いっそう不憫だ。
そこで、今しがた見た夢に着想を得て、イェシカが落ち着いてすごせる家を買うことに決めた。
現在、わたしとイェシカが下宿しているのは、蛮族都市フーウェイの安酒場の二階だ。安酒場の主人夫婦である、頭頂部がまぶしい太鼓腹のマスターと、ふくよか美人のママにフーウェイで家を買いたいと相談すると、二人は顔を見合わせる。それから、念を押すようにこう訊いてきた。
「もう一回、言ってくれ」
「できれば、正確にね」
「わかった。予算は、金貨20枚。メイン通りから徒歩三分。庭付き一戸建て。日当たり良好。ペット可。冒険家に最適な物件希望」
わたしは、マスターとママへ理路整然と答える。だが、二人は頭を抱えた。
「そんな一等地を金貨20枚で買えるわけねえだろう」
「その予算だと、町の東端にある奴隷厩舎の近所の家くらいよ?」
「奴隷厩舎は絶対にダメ! イェシカの情操教育に悪い!」
「いつになく、すげえ目がマジだな、クワニャウマ……」
「でも、イェシカちゃんは闇エルフにさらわれた子だったものね。クワニャウマの気持ちもわかるわ」
イェシカの訳ありな事情を察し、マスターとママはまた頭をひねってくれる。相談料として、この店で一番高いメニューを頼んでおいたのは正解だった。ちなみに、イェシカは安酒場の裏庭で雷電、飛燕、月光と遊んでいる。
「おい、クワニャウマ。マスターとママをあまり困らせるんじゃないぞ」
「ゲルダ、久しぶり!!」
安酒場に顔なじみの女剣士ゲルダがやって来たので、わたしは彼女が座れるように、丸太のベンチの端に寄る。その間、家を買う相談をしていたことを主人夫婦がゲルダへ説明する。
「ゲルダは、〈男の中の男〉の称号を持っているだけあって、フーウェイの住宅事情に詳しいよね? 食事をおごるから、いい家があったら紹介して」
「おまえからおごられるとは、明日は槍が降るかもしれんな……。しかし、一軒だけだが、おまえの希望通りの家があるぞ」
「さすが、ゲルダ!」
「ただし、古いので修理とリフォームをする必要がある上、二股をかけて貢がせていたせいで、逆上した恋人にメッタ刺しにされたその家の娘の幽霊が出るという曰く付きだぞ?」
「大丈夫。幽霊なら、自治都市トーンにある幽霊屋敷で退治した経験があるから! 退治できなくて居座られても、家をクワニャウマ・ゴーストハウスに改造。観光の目玉になって稼いでもらうから問題なし!」
「幽霊に同情する日が来ようとは……。わかった。私の方から家主に話をつけておく。あちらとしても、長年売れなかった家を手放せて悪い話ではないからな」
「ありがとう、ゲルダ! イェシカにさっそくしらせてくる!」
こうして、ゲルダのおかげで、トントン拍子で話はまとまり、わたしは希望通りの家を手に入れることができた。イェシカも、わたしと一緒に幽霊屋敷で冒険した経験があるので、石板に〈宝を持っている幽霊だといいね〉というメッセージを書くほど、曰くつきの家でも気にしていなかった。天使か。
ただし、修理とリフォームが完了するまでそこそこの日数がかかるため(特に壁や床に染み付いた血痕が消えないので張り替える必要があるらしい)、住めるようになるまでの間、わたしたちは自治都市トーンへ行くことにした。
そこには、以前の冒険でイェシカと友達になった人間の少女・ミッチがいるからだ。
トーンに着いてミッチの家を訪ねると無人になっていて、あせって通行人に訊ねると、彼女は『騒ぎすぎる白鯨』亭の経営者夫婦の養女に迎えられていると聞き、わたしたちはそこへ向かった。
イェシカもミッチも、大喜びで再会する様子を見て、大いに満足していると、『騒ぎすぎる白鯨』亭へ一人の少女が入ってきた。
ミルク色の肌とチョコレート色の髪と瞳を持つ、14〜15歳ほどのウェーブのかかったロングヘアをした少女で、ハーディガーディを携えている——吟遊詩人だ。
見るからに駆け出しの冒険家らしく、居酒屋の中を歩くだけで生まれたての仔鹿のように震えている。
大丈夫かと気になっていると、彼女はなんとわたしの所へ来た。
「その、大地を這いずり回る獲物を蒼穹より狙う鷹の目のような金褐色の瞳。幽霊屋敷を制したクワニャウマさん、ですよね?」
吟遊詩人らしく、形容詞過多な確認をしてくる彼女へ、わたしは頷く。
「ええ、そうよ。趣味は節約、特技は損得勘定。好きなものはお金と金目の物。善悪よりも損得が判断基準で世の中を渡り歩く冒険家乙女よ」
「その性格、噂で聞いた通り! 間違いなくクワニャウマさんですね!!」
たちまち、緊張しきっていた彼女の顔が明るく緩む。
「あ、あたし、吟遊詩人のピロスカと言います。突然のお願いですみません。どうか、一緒に『詩人の石碑』へ行っていただけませんか?」
声を弾ませて頼みこむピロスカに、『騒ぎすぎる白鯨』亭の主人夫婦が加わってきた。
「クワニャウマ、『詩人の石碑』ってのは、トーン近郊にある遺跡だよ」
「かつては栄えた街だったけど、一夜にして滅んじゃったから、行き場をなくした住民達の霊がさまよって大変だったのよ。でも、そこに一人の詩人が現れてね」
「すごいんだぞ、その詩人。千もの詩を遺跡にささげて霊たちを慰めたんだ。その詩人も亡くなって霊たちの一員となったが、彼の栄誉をたたえ、その詩を記すために作られたのが『詩人の石碑』ってやつよ」
「石碑には、年に一度、勇気ある者が訪ねて新しい詩を二つ刻んで霊たちへのあらたな慰めにするの。そっかぁ、今年の勇気ある詩人はピロスカちゃんだったのね」
客商売らしく人当たりのいい主人夫婦のおかげで、ピロスカがわたしに何を頼みたいのか、速攻理解できた。
ピロスカは、うつむきがちにもじもじと赤面する。
「クワニャウマさんは、いくつもの危険な冒険を生きのびた冒険家と評判ですので、今回の冒険の仲間になっていただければ、頼もしいです」
「そう。ありがとね。で、報酬はいくら出せる?」
なかなか大事な話が出て来ないので、わたしから切り出してみた。
ピロスカは、一瞬何を言われたかわからないという顔をしたけれど、すぐに理解できたらしい。ゴクリと息を呑みこんでから、こう言った。
「トーンの街から支払われる報酬と、遺跡を冒険中に見つけた宝の合計の半分の金額というのはいかがでしょうか?」
「半分? 七対三じゃないの」
ピロスカが、困りきった顔になる。
そこへ、イェシカがわたしの背中をつつき、持っていた石板を見せた。
石板には、〈ファラサールの詩を作ってもらえば?〉と書かれていた。
「イェシカ、頭いい! てなわけで、その報酬プラス、ただで詩を作ってくれるって条件なら引き受ける!」
「いいんですか? ありがとうございます! その条件でお受けします!」
こうして、交渉成立。
イェシカはミッチと一緒に猟犬たちをモフモフして楽しくすごし、わたしはピロスカと遺跡へ行くことで話はまとまり、新たな冒険が始まった。
(続く)
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齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2025年までに6巻が刊行中。2026年春には、7巻が刊行予定。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)が刊行。同年春には『歌人探偵定家 弐』(仮)が刊行予定。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『君へ贈る詩』
著 丹野佑
2025年11月2日FT新聞配信
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