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2026年9月10日木曜日

ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.10 FT新聞 No.4978

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.10  (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!  本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。  ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。  冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロが主役です。  前回vol.9では、女騎士グロリアを退け、〈怨霊列車〉の主ダゲン・ラ・バーゲズとの最終決戦にもつれこみました。従者ヨンの死によって怒りに燃えるシグナスは、怨霊伯爵に正義の鉄槌を下すことができるのでしょうか?  なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。  ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。    前口上はこれでおしまい。  さっそく決戦の只中に向かって出発と参りましょう!  ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:1 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨14枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料1食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:5 ・器用点:2 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし    ◇ [先頭車両]最終イベント (承前)    玉座の主が背筋を伸ばすと、その背部から生えた三本の白骨の腕がうねり、まるで多頭の竜のように主を取り巻いた。シグナスを襲った腕は、中央から頭を超えて生えたものであろう。鋭い爪と見えたものは、三日月型に固まった氷であった。 「さてシグナス、これは魔術王の腕だ。私を氷の術で殺そうとした。氷に封じて粉砕することによってな。しかし生憎、私はそのように下賤な手法では死なぬ」  上機嫌な玉座の主は、続いて剣を携えた二本の腕も紹介する。 「これは兄弟傭兵の腕。お前たちのように息の合った剣士どもであった。おお、そうだシグナス。お前の主人は見事な剣の使い手であるな。ハボリームめを生命の根源まで焼いて絶やしたのだと、それでいて手傷のひとつも負わなかったと聞いたぞ。悪魔の骸をコレクションに並べる貴重な機会であったが、お前の主人のお陰でし損ねたわ。しかし彼奴の腕を揃えて聖騎士狩りをするのはさぞかし楽しかろう。興行のためには名剣も集めねばなるまいな」 くっくっくっ、と玉座の主は喉を鳴らした。  シグナスの耳元でクロが囁く。 「俺が魔術王の相手をする」 「わかった」 「一撃で落とす。堪えてくれ」 「やる」 「諸君、作戦会議は終わったかね。では再開だ!」  (※2ラウンド、シグナス【全力攻撃】成功。クロは初めて【精密攻撃】を使ってみます。これは攻撃に初期属性(クロの場合は【炎】)が付与される上に、【攻撃ロール】に+1までもらえる優れもの。クロの攻撃は、おっとクリティカル! からのもう一度振って、こちらもクリティカル! 本人(本剣)にとっても必殺の隠し玉だったのでしょう)  クロが高々と飛び上がり、魔術王の腕への挑戦を明確に示した。ジグザグに宙を舞う〈おどる剣〉めがけて、氷の爪が伸びる。 (ふん、のろまめ。読み通りだ。隠しておいた価値はあったな)  クロは自身の内部に指令を送る。光の速さで総身に行き渡った指令は、ゴーレムの魔術回路を精密に変動させる。その指令はこうだ。〈発火せよ〉。  炎の尾を引き、燃える彗星となったクロが氷の爪に接近すると、体当たりする間もなく爪は溶け、あとには慄く白骨のみが残された。粉砕する。バーゲズの肩の骨までが砕ける。バーゲズの悲鳴。空中でターン。シグナスが攻め立てられつつも懸命にいなしている、兄弟傭兵の手の片割れに襲いかかる。  シグナスが目を見開いて、輝く黒い瞳でクロを見つめた。クロは面映ゆくも、誇らしく思う。そうだ、俺は騎士の先達として背中を見せ、この子を護らねばならん。  今度は傭兵たちの腕が守勢に回る番だった。言葉通り気炎万丈のクロと斬り結ぶ剣は、鋼が根を上げて欠け、やがて砕けたところを腕ごと仕留められる。シグナスは残りの腕と打ち合い、これは主人に褒められるところであろうが、真っ向勝負で剣の冴えで優った。手首から切断された傭兵の腕に亀裂が走り、それはバーゲズの肩に至り、ついに胸まで弾けた。白骨が美麗な装束から突き出す。 「バーゲズ卿、降参を!」  (※ここで処理的には生命点0になって戦闘終了。続くシナリオのエンディングでは、バーゲズは余裕綽々で腕を再生しようとしますが、何故か果たせず、やがてバラバラになってしまうという終わりが書かれます。しかしですね、不遜にも「何故か」の部分が消化不良だなと個人的に思ってしまいました。ということで、ここからは我流のエンディングです。派手に行きます)  しかしシグナスの言葉に、玉座の主は嗤って応じる。 「素晴らしい。実に素晴らしい。では次だ」  バーゲズの背中に、天井からずり落ちた躯がのしかかった。マントのようにバーゲズを包んだ躯の半ばから、次は八本の手が伸びた。手、いや脚かもしれない。 「ううむ良い表情だシグナス。久方ぶりにぞくぞくさせてくれるではないか。その調子で絶望していけ。私は無限に再生するのだから」  さてこれはアラネアの勇士の、と続ける玉座の主の言葉をシグナスはろくに聞いていなかった。無限に再生する。その言葉に打ちのめされていたからだ。確かにシグナスとクロの攻撃はバーゲズの胴体にまで届いていたはず。しかしそれは致命傷にはならかった、とバーゲズは言うのだ。それが証拠に骸はバーゲズの下半身まで包み込み、今や玉座の主はアラネアそのもののように見える。  不死者を完全に沈黙させるには、再生できないほどの破壊を与えなくてはならない。最良の打ち手は善なるセルウェー神の御力を借りて浄化する手法であろうが、残念ながらシグナスは未熟故に、善神の御力を攻撃において振るう許可を得ていないのである。  先ほど、あの玉座の主は魔術王に氷漬けにされて砕かれても平気だと言った。そして炎を操るから、恐らくクロが焼き尽くそうとしても対抗手段を持ち合わせているはず。自分さえしっかりしていれば、とシグナスは歯噛みするのだ。 「諦めるな」 クロが決然と言い放つ。 「何か仕掛けがある。それさえ叩けば」 玉座の主は鼻で笑った。 「わきまえよ。演者が台本に干渉することを、私が許すと思うてか!」 ◆  時は少しだけ遡る。  三号車。 「あらあらあら、今宵は迷える子羊の多いこと。ついに足を止めてくださったのですね、グロリア様。懺悔をなさいますか? あまりお時間も無いようですので」  シスターの前に立った女騎士グロリアは、燃えている。だがその瞳は明瞭で、怨霊列車の主人による呪縛から切り離されたことを、無言のうちに告げていた。これは彼女の魂なのである。 「シスター、感謝します。しかし懺悔の前に伝えねばならぬことがある。それは私の使命だ。これより先に、怨霊列車を攻略せんと願う者のために……いや、今まさに戦っている者のためにもだ。間に合うのなら、まだ負けと決まってはいないのだから」 「わたくしへの伝言でよろしいのです?」 「いや、出来れば、従騎士シグナスの主人に託したい」 「分かりました。特別にお代はいただきませんわ。払ってくださっても構いませんけど♪」 グロリアは苦笑いする。 「生憎と、シスター、この朽ちた身には恥と罪以外に価値あるものは残っておりません」 「冗談ですわ〜♪」  幾つかの香と、幾つかの薬草と、幾つかの呪文。それを繋ぎ合わせてシスターは女騎士の魂を、彼女の望む方向へ押し出した。それはいずれの神の御業でもなく、ただいずれの神にも仕えるこのシスターにしか使役できない技である。 ◆  同刻。  廃城前には小さな焚き火が熾されている。聖騎士ノックス・オ・リエンスは独り、待ち侘びていた。最上のものは彼の従騎士が五体満足で仕事を成し終えて帰還することである。最悪の場合でも、乗り込む術は用意した。  甲高いグリフォンの鳴き声が雪原にこだまする。随分と気性の荒い個体らしい。だが勇気があるならそれで構わなかった。思い描いた作戦通りなら〈怨霊列車〉の真横を飛ぶことになる。胆力を持ち合わせないグリフォンでは用を為さない。その条件さえ合うならば、あとは腕で乗りこなしてみせる。  雪は降っていないが、その分ひどく冷え込む夜だった。作戦決行にはまだ時を待たなければならない。〈怨霊列車〉が近づいてくる時を狙う。追いかけるのはグリフォンの体力を無駄にするばかりだ。小枝をくべ、火を見つめて心を無にする。空洞になった心を、善神セルウェーへの祈りで満たす。  ぱちん、と火が爆ぜた。顔を上げると、そこに女性が立っている。騎士だ。サン・サレンの騎士だろうか。しかし燃えている。定命の者ではないようだが、悪意はなさそうだ。 「サー・ノックス?」 「ああ」 「名乗り遅れた無礼をお許し願う。我が名はグロリア。情報を託すべく、死せる身なれど魂にて参じた次第である。恥ずかしながら、私は〈怨霊列車〉に囚われて今の今まで正気を失っていた。最後に善き事を成したい」 「聞こう」  女騎士は微かに笑ったようである。少しだけ柔らかな口調になって、続けた。 「貴殿、どうも従騎士とは正反対の気性をお持ちのようだ。良い少年をお育てになった」 「……」 「いや、重ねてご無礼を致した。単刀直入に申し上げる。〈怨霊列車〉を止めるためには、外部からの介入が不可欠。かの列車の主、ダゲン・ラ・バーゲズ伯爵を名乗る怪異は不死者であり、常の手段では屠ること能わず。伯爵を仕留めるには、先頭車両の機関部を破壊するしかない。伯爵はそこに他者の魂を溜め込んで精製し、自身と列車、そして私のような躯とを動かす活力に仕立て上げているのだ。伯爵と貴殿の従騎士がたった今、交戦している」  ノックスはすっくと立ち上がる。 「破壊の手法は」 「分からない。私が得られた情報はそこまでなのだ」  汽笛の音が、夜空のどこかで鳴り響いた。サン・サレンの兵士が駆けてきて、燃える女騎士を見て目を剥く。 「報告」 「し、失礼致しましたサー・ノックス! 観測兵の情報によりますと、〈怨霊列車〉が回頭しこの廃城に向かっているとのことです。速度が一定なら、接敵まであと十分です! グリフォンを引いてまいりましょうか」 「いや、まだだ。離れていろ」 「はっ! 了解しました!」  ノックスは背負った道具袋から、弓を取り出した。 「まさか貴殿、射落すつもりか」  女騎士の言葉に応えず、ノックスは淡々と弦を張って整え、引いて弓の調子を試す。西方砂漠の砂クジラの骨を主材とするフレームは、本来ならばこのような雪原で引くには不向きだろう。しかし一撃だけ保てば良い。  汽笛が再び鳴り響いた。空に目を遣ると〈怨霊列車〉が早くも視認できる。 「何処だ」 「龍の後頭部から続く、やや細い円筒の部分だ」  ノックスは了解した。  この技は弟の見様見真似である。武芸師範はノックスには伝えず、弟を選んだ。妬ましくはなく、むしろ誇らしく思っている。しかし今は、その技が必要だ。  ノックスは低く、地面に沈み込もうとするように低く構える。引き絞られた弦が静かに猛っていた。 (さて、僕に出来るか。出来なければ兄として情けないな。善なる神よ御照覧あれ。リエンス流——剛弓術!) ◆  今回のリプレイはここまでです。    特にランダム要素のあるローグライクハーフのリプレイを書くことの面白さと申しましょうか。同じシナリオであっても、プレイヤーの数だけ、あるいは主人公の数だけ違う物語や意味が生まれていくのです。  そんなわけで、シグナスとクロの冒険は、シナリオの本来のエンディングよりも派手派手にはっちゃけて結末を綴らせていただこうと思っております。  ちなみにノックスが引いている弓は、また別の冒険で彼が獲得したものであったりします。そうやって繋がって行くのも楽しいですね。  次回が最終回となりますが、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。    それでは皆様、良きローグライクハーフを!   ◇    (登場人物)  ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。  ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。  ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。グロリアとの最後の対決にて落命。  ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。  ・トーヴァ…ヨンとアルゴットと共に〈怨霊列車〉の調査に来ていた「人間」の兵士。  ・ノックス・オ・リエンス…ロング・ナリクの聖騎士。シグナスの師匠。〈猟犬〉の異名を持ち、主命を受けて暗殺などの仕事もこなしているともっぱらの噂。  ・グロリア…サン・サレンの女騎士。躯になってもバーゲズに操られ、最後には爆発させられた。魂となってノックスの元を訪れバーゲズの情報を提供する。  ・ダゲン・ラ・バーゲズ…〈怨霊列車〉の主。役者と称して躯(むくろ)を蒐集する、最悪の手合い。   ・ハボリーム…拙リプレイ時空ではサン・サレンに根城を構えたバルサムデビル。シグナスの師匠ノックスにより暗殺される(参考シナリオ:『賞金首を狙え—隠密任務編—』/作:天狗ろむ/作品URL: https://talto.cc/projects/mjMKe3Lgaz58zl4sg5LdE / リプレイ: https://x.com/summer_east/status/2003597509038678525?s=20) ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。