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2026年10月14日水曜日

第4回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.5012

第4回【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「あなたに弟子がやってきた」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフリプレイ「あなたに弟子がやってきた」をお送りします。 本シナリオは師匠視点のシナリオですが、弟子視点で描いているため、タイトルは内容に合わせて変更しています。 「エメラルド海の探索」の続編にして過去編。 ハルトは、大ヤギの魔獣から呪いを移され、生死の境をさまよい、ヴァルグに命を救われました。 そこから生きる術を身につけ、ヴァルグに弟子入りを志願。 ヴァルグは、ハルトを諦めさせるため、高難度の遺跡調査への同行を課しました。 遺跡では多くの失敗と学びがあり、目的地にて、先に入り込んでいた闇エルフとの対決が待ち受けていました。 闇エルフのたくらみは阻止しましたが、ヴァルグの制止も聞かずに闇エルフと直接刃を交えたハルトに、ヴァルグはなにを言うのでしょうか。 ■ステイタス 【ハルト レベル6 技量点:1 生命点:1/5 副能力値:2 従者点:8】 弟子スキル:【心優しき勇者の素質】 ・自分以外のキャラクターが【防御ロール】に失敗した際、その生命点へのダメージを身代わりとして自分に受ける。発動は任意。 【ヴァルグ レベル16 技量点:2 生命点:9 筋力点:4 従者点:8】 【従者:火吹き獣(技量点:1)】炎耐性。特定のクリーチャーに2点ダメージ。0ラウンド攻撃に引き続き1ラウンド攻撃が可能。 ●12 遺跡調査を終えて ノードの魔力と生贄を用いて、闇神の力を得ようとしていた闇エルフは、オレと火吹き獣によって倒された。 闇エルフが召喚した不完全な影の魔物たちも、ヴァルグがすべて掃討した。 しかし、その代償も大きかった。 オレはあちこちを斬られ、ボロボロだ。 そしてヴァルグは、そんなオレに厳しい視線を向けていた。 「俺は逃げろって言ったぜ。なんで逃げなかった」 ヴァルグは、でかい声でそう詰めてきた。 オレはオレで「倒せたんだからいいじゃん」なんて言い訳するつもりはさらさらなかった。 ヴァルグの言いつけを守らず、無謀な攻撃に出たのは事実だ。 この呪われた腕が引き出す闘争本能に呑まれていたばかりじゃない。 「しかもテメエの命を投げ出してソイツを守ろうとするなんざ、どうかしてる」 ヴァルグは、火吹き獣を囮にして逃げろと指示を出した。 けれどもオレが取ったのは正反対の行動。火吹き獣をかばって傷を負ってしまった。 「あの一撃でテメエが死んでたかもしれねェってこと、わかってんのか?!」 それはもう、完全に怒号だった。 ヴァルグが言ってることは、全部そのとおりだった。 けれども、これだけは言っておきたかった。 「ごめん。でもオレ、ほっとけなかったんだよ! オレのためにコイツが犠牲になるのなんて!」 「だからってなァ!」 言いかけたヴァルグだが、それ以上の言葉が出てこなかったようで口を閉じてしまった。 「だァもうクソが!!」 そして、よくわからない言葉でどこかに向かって当たり散らしていた。 オレはそんなヴァルグの態度を見ながら、すうっと意識が遠くなっていくのを感じた。 負傷のせいなのか、緊張が解けたのか。 オレの意識はそのまま闇の底へと……。 **** 次に気がついたとき、オレはいつもの洞窟にいた。 「よお」 ヴァルグが声をかけてきた。 「オレは……?」 「まる一日寝てた」 「運んでくれた?」 「放置できねェだろうが。けっこうな怪我だったしよ」 応急手当は済んでいた。 オレはヴァルグにお礼を言った。そして、あれからどうなったのかを尋ねた。 「ノードを発見したから依頼は達成だ。隠し扉を偽装して、簡単にはわからねェようにしといた。あとは報告に行ったらおしまいだな」 一応、依頼は成功ってことでいいみたいだ。 じゃあ……。 「じゃあ、オレは合格?」 そう尋ねると、ヴァルグは変な顔をした。 「合格だァ?」 やっぱり、ダメだったのかな? ややあって、ヴァルグの表情が変化した。何やらピンときた、という顔だ。 「なるほどな。そういうことか。……最初から試験なんざしてねェ」 「え、でも……」 「俺ァな、ガキの冒険ごっこじゃねェ、ホンモノがどんだけリスキーかを知ってもらうために連れてっただけだ。あきらめさせるためにな」 「……」 「テメエひとりで遺跡に行ってたら、何回死んでた? やめときな」 そこには、ヴァルグの強い意思が感じられた。 オレはなにも言い返せなかった。 「それにな。……テメエの命を一番にできねェ奴から、死んでいくんだ。向いてねェよ」 ヴァルグからは、表面的な言葉だけではない、凄みのようなものが感じられた。 ふと、そばにいた火吹き獣が、オレの頬をなめてきた。 「ああ、そうだ。ソイツはずっとテメエについてたぜ。わかんだな。助けてもらったって」 そうなんだ。 「そいつはもう、テメエのモンだ」 唐突にヴァルグは言った。 「俺はソイツのこたァ、便利な道具としか思ってなかったからな。だが、テメエに心底なついてるじゃねェか」 オレはそっと、火吹き獣の頬をなで返した。 火吹き獣は心地よさそうに目を細める。 「この子、名前は?」 「名前? ンなもんねェよ」 「じゃあ、普段はなんて呼んでんだ?」 「ソイツとか、コイツとか……」 「ほかには?」 「あー……火ィ出せとか、火ィつけろとか」 オレは少し考えて、決めた。 「じゃあ、お前の名前は今から、『ヒース』だ」 ヴァルグが「火ィ」と言っていたから、発音を寄せてみた。 ヒースはその名が気に入ったのか、「ギャウ」と鳴いた。 「……もしかしたら、そうやって生き物に好かれちまうのが、テメエの『素質』かもしれねェな」 ヴァルグはそんな感想をもらしていた。 ●13 獣の弟子 ヴァルグは、俺が回復するまで待ってくれていた。 もともと八つの遺跡の調査だから、想定期間は長めに取ってあるみたい。 それに、隠し扉を偽装したことで、すぐに誰かの手に落ちる危険性も少ないと言っていた。 オレが回復したら、お別れだという。 ある日、外出から戻ってきたヴァルグが、オレに言った。 「村に、行ってきた」 それだけで、オレは察した。 「あの遺跡と同じ石碑があった。それで読めたんだな」 この言葉で、ヴァルグがほぼ正確にオレと村の関係を把握していることがはっきりした。 「あの村はおそらく、あの遺跡を作ったヤツの系譜だ」 オレも、あの遺跡を作った人物の子孫かもしれないってことか。 それよりも、もうバレているんだったら、どうしても気になっていることがあった。 「村は、村はどうなってた? あの大ヤギの魔獣はどうなったんだ?」 「そうだな……。村に大ヤギの魔獣は出たらしい。たまたま来ていた冒険者が、どうにか追い払ったって聞いたぜ」 「ほかには?」 「あとは……そうだな。森ではぐれてたガキが一人、発見され保護されたって話だな」 タイガだ。間違いない。 タイガは、無事だったんだ。よかった。本当によかった。 目頭が熱くなり、頬に涙が伝った。 「最初に『帰るトコがねェ』って嘘ついたことは責めねェよ。理由はだいたいわかるからな」 ヴァルグは珍しく、諭すような口調でそう話した。 「だがな。帰るとこ、あンじゃねェか。帰んな。村へよ」 「……帰れない。帰れるわけ、ないじゃないか。こんな、こんな腕……!」 「そうか……」 オレはヴァルグをきっと見据えた。 そして、はっきりとした口調で、しっかりと、伝えた。 「ヴァルグさん、お願いします。オレを連れてってください!」 ぐいっと深く頭を下げる。 「バカいってんじゃねェ。どんだけ危険かあれほど経験したじゃねェか」 「だったら、もっとオレを鍛えてくれ。オレはこの腕の呪いを解きたい。それにはきっと、力が必要なんだ。お願いします!」 沈黙。 ヴァルグが、オレのことをじっと見つめているのが、気配でわかった。 けど、オレは揺るがぬ決意をみなぎらせ、頭を下げ続けた。 「はぁ〜」 ヴァルグは、大げさにため息をついた。そして言った。 「勝手にしろ」 それは、肯定と捉えて、いいのかな。 「ありがとうございます。師匠!」 ものすごく自然に、『師匠』という言葉が出たことに、自分でも驚いた。 「バカ野郎。俺を師匠なんて呼ぶな!」 ヴァルグは、なぜかうろたえていた。 「だがな、忘れるな。テメエの身はテメエで守れ。俺は誰かを守りながら戦うなんて器用な真似はできねェんだよ!」 「はい、師匠」 「っだーッ! だからその『師匠』ってのヤメロっての!!」 こうして俺は、師匠とともに旅をすることになったんだ。 ●14 そして今 オレは師匠、そしてヒースとともに、馬車に揺られていた。 エメラルド海のクラーケン退治の後、ハーツデイル船長、白奴さん、ポールさんニーナさんたちと別れ、ロング・ナリクに向かう道中だ。 ビストフの領主マキシミリアンが話してくれた師匠の事情が気になり、師匠と出会った頃のことを思い出していた。 その師匠は隣でだらしないいびきをかいて眠りこけている。体全体がオレの肩に寄りかかっていた。 「目の前で人に死なれるのにガマンならなかっただけだ」 「目は! 目ェ閉じてたか?! アレに目ェ焼かれると取り返しがつかねェからな」 「あの一撃でテメエが死んでたかもしれねェってこと、わかってんのか?!」 「テメエの命を一番にできねェ奴から、死んでいくんだ」 「俺は誰かを守りながら戦うなんて器用な真似はできねェんだよ!」 「テメエはバカか! 泳げもしねェクセに海に飛び込むなんざ」 「俺ァな、テメエの命を大事にしろって言ってんの! 怒っちゃいねェよ!!」 ずっしりとした師匠の重みを感じながら、ひとつひとつの言葉を、頭の中で反すうする。 言われたときには、表面上の言葉だけで受け止めていた。 けど、今ならわかる。 師匠がその言葉の裏に、どんな意味を込めていたのか。どんな過去を重ねていたのか。 師匠がどれだけオレのことを心配し、オレを遠ざけようとしてきたのか。 「一緒に組んだ者が死ぬ。一人だけ生き残る。そんな経験を繰り返したらどうだ。組んだら、そいつが死ぬかもしれない。それに耐えられるか? だからあいつは孤独を選んだ」 領主マキシミリアンの言葉が胸に刺さる。 そんな師匠に、オレは強引に頼み込み、無理矢理弟子になったようなものだ。 師匠には師匠の葛藤がある。オレのこと、重荷になっているかもしれない。 オレが師匠のためにできること。それは、師匠の前で絶対に命を落とさないこと。それだけだ。 師匠の不名誉な二つ名のジンクスを、蹴飛ばし続けてやる。 そう決意したオレの前に、ヒースがちょこんと座っている。 「ヒース……」 「ギャウ?」 オレはヒースの頬をなでた。ヒースが心地よさそうに目を細める。 そういえば師匠、オレががんばって火を起こしてたら、ヒースに命じて簡単に火をつけてたっけな。 やり方がせこいんだよ。 さらに、便利な道具を取り出して、オレに自慢してたっけ。 「こんなのもある。先端に乾燥して固めた火薬がついていて、こすると火がつく。ノームの発明品だ」 あのあと結局、いざ使おうとしたとき、湿っていて使いものにならなかったんだよな。 そんときの師匠の表情ったらなかったぜ。師匠ってホント、子どもっぽいよな。 そんなことを思いながら師匠の寝顔を見つめていたら、くすりと笑みがこぼれた。 次のロング・ナリクではどんな冒険が待っているんだろう。 次も、その次も、師匠と一緒に切りぬけていこう。 オレは、獣のような豪快な師匠と、獣のような腕を持つ、「獣の弟子」だから。 【獣の弟子】ローグライクハーフリプレイ 完 ■ステイタス 【ハルト レベル6 技量点:1 生命点:1/5 副能力値:2 従者点:8】 弟子スキル:【心優しき勇者の素質】 ・自分以外のキャラクターが【防御ロール】に失敗した際、その生命点へのダメージを身代わりとして自分に受ける。発動は任意。 【ヴァルグ レベル16 技量点:2 生命点:9 筋力点:4 従者点:8】 【従者:火吹き獣(技量点:1)】炎耐性。特定のクリーチャーに2点ダメージ。0ラウンド攻撃に引き続き1ラウンド攻撃が可能。 ■登場人物 ヴァルグ 冒険者。依頼を受けて遺跡調査に来たところ、偶然瀕死のハルトを発見した。 ハルト 大ヤギの魔獣の黒角にやられ、崖下に転落したところをヴァルグに助けられた。左腕に厄介な呪いを受けている。 タイガ ハルトの弟。大ヤギの魔獣の出現の恐怖で動けなくなった。 闇エルフ 調査対象の遺跡に先んじて侵入していた。ノードと生贄で闇神の眷属たる魔物を召喚しようとしていた。 ■作品情報 作品名:ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 著者:東洋夏 イラスト:骨盤 編集:緋色朱音 発行者:東洋夏 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 冊子版 ローグライクハーフ個人製作シナリオ集『主人公は一日にして成らず』 https://booth.pm/ja/items/8063646 ※本作品が収録されています。 ネット閲覧可 ローグライクハーフd33シナリオ『あなたに弟子がやってきた』 https://talto.cc/projects/FoEKXdyD2KdpaLHU1_siE 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。