━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜(ドラゴン)の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 連載第8回 岡和田晃 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ▼はじめに 本作は、かつてD&D日本語版公式サイトに掲載されていた、エベロン世界が舞台の『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版』リプレイ「竜の予言に選ばれし者たち」の続編です。 当時のサイトは閉鎖されていますが、前日譚の「トレイルブレイザーズを探せ!」と「竜の予言を解放せよ!」はウェブアーカイブで閲覧可能です。D&D第4版や舞台の世界観そのものの解説にもなっておりますので、未読の方は以下よりご覧ください。 https://web.archive.org/web/20110520091921/http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/web_replay_eb/index.html うまく繋がらない方は以下もあわせてご利用ください。 https://www.dropbox.com/scl/fi/hfckq3h4rglyer10ycaj4/1_.pdf?rlkey=xzasih78fdhbqoikbr98kovkl&dl=0 https://www.dropbox.com/scl/fi/nluo5nzotbnpeanc1zh0r/2_.pdf?rlkey=f49qwu5pxzhc4flzcw7kj1v5y&dl=0 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ DM:ダンジョンマスター(岡和田晃) ネディア:ヒューマンのレンジャー(PL:中山葵) ヘルメス:ヒューマンのアーティフィサー(PL:カナイセイジ) クシュタリ:カラシュターのパラディン(PL:見田航介) ベック:ウォーフォージドのファイター(PL:高橋志行) ジュス:ティーフリングのウィザード(PL:ノダソル) ●予言の洞窟へ DM:それでは君たちは、長老ヴァロンほか、エラドリンの精鋭たちに連れられ、地下にある防壁のもとへ連れて行かれます。周囲はぼんやりとした魔法の明かりに照らされ、特に困るほどのものでもありません。やがて、防壁が見えてきました。 DM/長老ヴァロン:「この防壁は、フェイスパイアとカイバーとを分かつもの。この先に、偉大なる竜の力が封じ込められた“竜の予言”がある。竜の予言者に選ばれた者のみが、この先、道を拓くことができるだろう」 ベック:片道切符となる可能性があるというわけですね。 ジュス:俺様がいる限り、そうはさせん。常に道は分岐するぞ、ガハハ! ヘルメス:その根拠のない自信はどこから来るんだ……。 ベック:データ・バンクから“炭鉱のカナリア”という言葉が出てきました(笑) DM:長老が何やら、竜語で呪文を唱えると、防壁はするりと通り抜けられるようになった。ネディア:では、尖塔に立って歩いていきます。 ベック:それはさすがに付き添いますよ。防衛役の勤めを果たします。 ヘルメス:“乗りかかった泥船”というか……。 DM:では、しばらく降りていくと、途端に瘴気が漲ってきます。全員、〈持久力〉で判定を。難易度は15。 ヘルメス:(ころころ)4。 クシュタリ:(ころころ)1を振ってしまった。 ベック:(ころころ)20を振りました。 ネディア:(ころころ)こちらは、達成値が20です。 ジュス:(ころころ)13しか行かなかったぜ。 DM:瘴気にあてられて、ヘルメス、クシュタリ、ジュスは回復力が1減ります。 クシュタリ:こ、小癪な……。じゃが、これしきで悪しき者には破れんぞ! DM:瘴気の中を歩き続け、下りに下ると、やがて道が、T字路状になります。突き当りにはイオカリック文字(竜語の文字)で、何か書かれています。不思議なことに、竜語を解さない者でも、そこのプレートには何が書かれているかわかりました。 真に賢き者は、定められた道をただ辿る者ではない。 現在を見据え、正しき道筋を見出すだろう。 ネディア:これだけ? DM:そう。でも、この「正しき道筋を“見出す”だろう」というのは、竜語ではダブルミーニングになっていて、「正しき道筋を“創り出す”だろう」という意味にも取ることができるようになっています。 ネディア:「“見出す”と“創り出す”……?」 DM:そう。それらは同じ言葉なんだ。 クシュタリ:ふむ、謎めいているな。ほかに手がかりはないのか? DM:T字路の左手側には“予見”、右手には“反省”と、これもまたイオカリック文字で記されています。 ジュス:うさん臭いな〜。 ヘルメス:(何かが閃いたように)ここはオレの出番だな。隠し扉、もしくは、それに類するものを探そう。 DM:それでは、〈知覚〉で判定してください。 ヘルメス:(ころころ)ふっふっふ。達成値30! DM:正面の壁、プレートのかかっている場所に隠し扉があるとわかりました。鍵も罠もないようです。チロリロリロリン♪ 一同:おおお〜! ベック/高橋:『ゼルダの伝説』的な(笑) ヘルメス:(即断)では、その扉へ行こう! 一同:おいおいおい! DM:では、荘重な竜語で「そなたは正しき道を選んだ」と。 一同:おお〜(驚嘆する) ネディア:どうしてわかったんですか(不思議そうに)? ヘルメス:左手の“予見”は「未来」の光景を見ることだろ。右手の“反省”は「過去」の経験を思い返し、修正の材料とすることだ。だとしたら、真ん中にあるのは「現在」っきゃないだろう。 DM:ご名答。 ネディア:なるほど〜。 第2話で登場したのは仕掛けは、古典的パズル「ハノイの塔」だったが、今回のギミックは、ずばり「リドル」(謎かけ)である。D&Dに多大な影響を与え、映画化も予定されている古典ファンタジー小説の名作『ホビットの冒険』(岩波少年文庫)では、たくさんのリドルが実際に登場するので、ぜひ読んでみてほしい。 なお、ヒントがやや素っ気ないが、左右両方の道に、別の手がかりは用意しておいてあった。「リドル」も、ヒラメキがないと、行き詰まりやすいギミックなので、簡単すぎるくらいがちょうどよいだろう。 ●ドラゴンの予言者 DM:隠し扉の先は細い道が続いていました。そこをしばらく下っていくと、洞窟を刳り抜いたような広大な空間が広がっています。……よく見るとわかるのですが、巨大なドラゴンシャードの鉱床になっているようですね。シベイ・ドラゴンシャード、エベロン・ドラゴンシャード、カイバー・ドラゴンシャード。それらが混在している一種異様な光景です。 ヘルメス:おおお、それはすごい。皆を呼び寄せよう。 DM:では、パーティは、その広大な洞窟を歩いています。静謐で、善とも悪とも付かない、それでいて張り詰めたような空気が流れています。 クシュタリ:おかしいな、もっと妨害的なものがあるかと思ったが、そうでもなさそうじゃ。 DM:やがて、洞窟の奥に、大きなモノリスのようなものがあることがわかりました。そのモノリスは、ドラゴンの姿をしています。見方によっては、ドラゴンの化石のようにも見えます。その前に、修行者を思わせる謹厳な顔をした禿頭の男が立っています。右の二の腕には、既存のいかなるドラゴンマークにも似ていないドラゴンマークが刻まれています。 ヘルメス:噂に聞く特異型ドラゴンマークか? DM:微妙に違う。特異型ドラゴンマークは、13の主要ドラゴンマークの突然変異として登場したものと言われているが、彼のドラゴンマークは、あらゆるドラゴンマークの根源に近いもの。彼はネディアを見て……。 謎の男:「久しぶりだな。待ちわびておったぞ」 ネディア:誰でしょう? ベック:知り合いだったのですか? 謎の男:「わしのことを憶えてはおらんのか……ならば、思い出させて見せよう」 ジュス:「おっ、闘うのか?」 DM:男は、全身に闘気を漲らせました。二の腕のドラゴンマークが熱を帯びて輝きます。すると、それに共鳴するかのように、ネディアとヘルメスのドラゴンマークが共鳴し、同時に、クシュタリ、ベック、ジュスの記憶に刻まれた“竜の予言”が共鳴し、燃え盛るように熱を帯びます。 ネディア:「あなたに見覚えはありませんが……だけど、このドラゴンマークはあなたを知っているみたい」 イェスリン・リーン:「わしは“ドラゴンの予言者”イェスリン・リーン、かつて、そなたと共に戦った者だ」 一同:ええーっ!? ネディア:「どういうことですか?」 イェスリン・リーン:「急いてはならぬ、よく聞け。世界のあらゆる神秘は、所詮は各々の様相に過ぎぬ。その様相を代表する存在こそが、ドラゴンというものなのだ。ゆえにドラゴンは、世界の過去、現在、未来、そのすべての意味を心得ている」 ベック/高橋:そうか、エベロン世界でのドラゴンは、単なるクリーチャーではなかったんでしたね。 イェスリン・リーン:「だが、彼らは語らぬ。ただ“予言”という形で記録するのみ。つまり、{竜/ドラゴン}の予言”とは、彼らが幻視した世界の記録なのだ。世界の神秘——そのすべてはある様式の一部にすぎない。すべての事物は、大きなものも小さきものも、“竜の予言”に仕えているのだ」 ジュス:「わかるような、わからないような……」 ●“竜の予言”の正体 イェスリン・リーン:「劫初の時より、定命の者には想像もつかぬ永きにわたり、ドラゴンは、世界の{相/かたち}を見据えてきた。だが、そのことについて語る際、彼らは“予言”という形を取らざるをえない。ドラゴンでさえ、自らが体現する世界の時間を、言葉にすることは、かなわない」 ベック:「だから“竜の予言”は、さまざまな解釈が可能であったり、その位置づけも多様なのですね」 イェスリン・リーン:「さよう。“竜の予言”とはすなわち、空間を、時間を、そして歴史を超えるもの。だが“予言”を記したドラゴンは、それを超えることができぬのだ。ここに“予言”の秘密がある」 DM:そうして、彼は無限の彼方を見据えるような眼差しで、滔々と語り始めた。 シベイが虚無に舞い踊り、ひとつ、またひとつと星ぼしを配置していった。 そのうしろをカイバーがついてまわり、シベイが星を置くが早いか平らげてゆく。 エベロンだけが離れたところで歌をうたい、それに合わせるように何もない空間に生命が芽生えていった。 シベイとカイバーは絡み合い、互いに互いを貪り合う。両者はやがて、散り散りになって星々の彼方へと掻き消えてゆく。 残るエベロンは、彼らの遺骸をかき集め、哀しみの歌を歌いながら、生まれた生命を新たにシベイ、カイバーと名指した。シベイは未来を示し、カイバーは過去を表す。 ヘルメス:この創世神話は……。ゴッドフォージドのサロ(第2話参照)から聞いたものとは、違うようだな。 ジュス:わけがわからん。どっちが正しいんだ? イェスリン・リーン:「どちらが正しいのか、ということはさして重要ではない。問題なのは、わしが吟じた創世神話も、また、ひとつの“ありえた創世神話”だということじゃ」 ジュス:嘘なのかよっ! イェスリン・リーン:「そうではない。歴史も神話も、{畢竟/ひっきょう}、物語の一つにすぎぬ、とわしは言っておるのだ。そして、それを体現するドラゴンもまた、然り。すなわちドラゴンが体現しているものは、過去であり、現在であり、同時に未来でもある。ドラゴンとはひとつの“可能性”が具象化した存在なのだ」 ジュス:さっぱりわからーん! ベック/高橋:「シュレーディンガーの猫」みたいな話ですよね? DM:確かに、イェスリン・リーンの言っていることは「シュレーディンガーの猫」の例を出せば、しっくりと来るものがあるな。 「シュレーディンガーの猫」とは、有名な量子論の確率実験のこと。物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーの実験に由来する。密閉された箱の中に猫を入れ、50%の確率で条件が満たされて毒ガスが発生し、猫は死んでしまうとする。 さて、この猫は、箱に入れられた状態において、生きているのか、死んでいるのか? 答えは、生きても死んでもいない。猫の生死を決めるためには、第三者が箱の中を観測する必要がある。つまり、猫は生きている可能性もあれば、すでに死んでいる可能性もあるが、実際に観測するまで、そのどちらになるのかはわからない。この観測する以前の猫の状態は、いわば生きてもいるし死んでもいる「可能性の猫」なのだ。 ネディア:「(ベックの説明を聞き)つまり、未来は私たち次第だと……?」 イェスリン・リーン:「然り。森羅万象を知悉する者は誰もない。いわんや、理解することなど夢のまた夢。しかしそれは、我らが挑戦を妨げるものではないのだ」 ネディア:「それが“予言”の本質なのですか……」 イェスリン・リーン:「そのように言い切ってしまうことはできない。しかしながら、そなたらのように“竜の予言”に選ばれた者ということは、すなわち、未来を切り拓く「可能性」を、その身に宿しているということを意味するのだ」 DM:ドラゴンの予言者がそう言うと、君たちの脳裏に刻まれた“竜の予言”が鮮明に蘇ってくる。 ベック:偉大なるゴッドフォージド、サロに敬意を捧げましょう。 イェスリン・リーン:「“竜の予言”に選ばれたそなたらは、未来を体現すると同時に、過去をその身に宿す者でもある」 ネディア:「どういうこと?」 イェスリン・リーン「思い出せ。そなたはかつて、わしとともに戦ったことがあるはずだ」 一同:えええっ! DM:そう、ネディアはエターナル・チャンピオンのような存在だったのさ。 クシュタリ:転生を繰り返しながら永遠の戦いを続ける、ムアコックの小説に出てくるヒーローのことですね。 DM:それでは、ネディアは、転生前の自分がどんな姿だったか、考えてみてください。 ネディア:いきなり、そんな無茶振りされても……。 DM:確かに無茶振りだけど、RPGは無茶振りに応えるゲームなのだ。ここはストーリー的に大事な場所だから、がんばってちょうだい。君はまだまだ駆け出しの英雄だったけれども、かつては伝説級(10レベル以上)、あるいは神話級(20レベル以上)の存在で、数々の苦難を乗り越え、イェスリン・リーンとパーティを組み、ドラゴンやジャイアント、あるいはデーモンやデヴィルをバッサバッサと薙ぎ倒していたに違いない。その頃のことを想像してみてほしい。 ネディア:アマゾネス系かな。それも男で……。 こうして、PCはそれぞれ、かつての自分がどうだったのかを語り始めた。DMはそれをどこまで拾うべきかを考慮しつつ、次のセッションを準備する。この先は、もっと規模の大きな戦いが待つに相違ない。しかし、その前に、少しばかりの休息を……。 【了】 “『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜” is unofficial Fan Content permitted under the Fan Content Policy.Not approved/endorsed by Wizards. 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