第6回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
旅の供は、禁断の、時を操る魔法の時計。
闇神オスクリードに見初められ、闇色の肌になってなお、目的を見失わない。
目的地は、「還らずの森」深くの吸血鬼の館。そこに双子の姉たちがいるはずです。
闇エルフの隠れ里にて、命の危険と引き換えに重要な情報を得たミナ。
時計塔を攻略し、新たな力の獲得を目指します。
【ミナ 体力点3/4 悪夢袋6/7】
金貨 6枚
銀貨 5枚
歯車 0枚
・ニンニク
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
●アタック01-15 夜の森の出会い
ここは時計塔の最上階だ。
ドーム状の小さな部屋。
ノームサイズの小さな扉がついているので開けてみる。
そこは、この時計塔に設置されている時計の、文字盤の横の小窓だった。
メンテナンス用だろう。
ここからは、森の奥が一望できた。
森のすき間を抜けるように延びる一本の道は、黒塗りの館へと繋がっている。
しかしその手前に、見たくないものを見てしまった。
墓地が見える。無数の墓標が不気味に並んでいる。
それだけではない。ボロボロの衣類をまとった人影がいくつも、あてもなくうろついているのが見えた。
墓地であのような動きをするものといえば、ゾンビ以外思い当たらない。
どうしてあんなにゾンビが。吸血鬼に血を吸われた人間のなれの果てだろうか。
ここから見てわかるだけでも、20体はいる。うっそうとした森に隠れているから、もっといるのかも。
とても戦って切り抜けられる数ではない。
それでも、館に行くためには通らないわけにはいかない。
困ったな。
ボクは打開策を思いつかないまま、時計塔をあとにした。
その後は大きな危険に遭遇することなく、森を進んだ。
日暮れだ。
時計塔から見えていた墓地にたどり着く前に、一度野営をする必要がある。
吸血獣やゾンビが跋扈する暗い森で一夜を過ごすなんて、嫌な予感しかしない。
ボクは、野営に適した空き地を見つけた。
今晩は、ここで寝よう。
・空き地のすみで眠る
・安全な場所を探す
・火を焚いて起きている
どんなに恐ろしい場所でも、体を休める必要はある。
だから、起きている選択肢はなしだ。
空き地のすみ以外に、安全そうな場所って、どこがあるだろう。
安全性を考えるのなら、やはり木の上かな。
木に登ってまで襲って来る猛獣は、なかなかいない。
ボクは手ごろな木を見つけて登る。
森育ちだから木登りは得意だ。
大きな枝のところまで登ると、そこには木材をいかだのように組んだ床があって、ボクは面食らった。
なんと、こんな森の中の木に先客がいるなんて。
しかも、ボクみたいに一泊だけの目的ではない。この様子からすると、明らかに住んでいる。
「驚いた。誰だよ、驚かさないでくれ」
いや、こっちも驚いてるんだけど。まさかこんな暗い森で、樹上生活している人がいるなんて。
声の主は男。初老のノームだった。薄汚れた身なりをしているけど、普通に会話はできそう。
まさかと思うけど、吸血鬼じゃないよね?
「急に入り込んで来ただけじゃなく、失礼な奴だな」
あ。この反応なら大丈夫そうだ。
・泊めてもらえないか交渉する
・木を降りる
あまりにも唐突な出会いだったため、相手のことを何もわからないけれど、泊めてもらえたらありがたいな。
ボクは、このノームは交渉ができる相手と見て、お願いしてみた。
初老のノームは難色を示し、条件を出してきた。
「ただというわけにはいかん。わしの仕事を手伝ってもらえるか?」
ノームは、頭脳労働でも肉体労働でも良いという。
ノームはボクより小柄だから、肉体労働の手はきっとほしいだろう。
けどボクは、ノームの言う「頭脳労働」の中身が気になった。
ノームは研究好きだ。ボクの知識では役に立てないかもしれないけれど、どんなことを研究しているのか見てみたい。
ボクは、ノームが研究で詰まっているところを手伝うことにした。
ノームの研究は、驚いたことに時計に関するものだった。
それなら、ボクにも少しは役に立てる。
ボクは、これまで旅の中で研究してきた魔法の時計についての知識をフル活用し、ノームの疑問に答えていった。
「あんた、若いのにすごいな」
ノームは興奮を隠さず、次から次へと疑問点を出していく。
いつの間にか、ボクが質問に答えるばかりでなく、時計の仕組みについて互いに白熱して話し合う感じになった。
ボクの付け焼刃の知識がノームに押し負ける頃、ノームは大満足したようだ。
「まさかこんな森で、これほど有意義な時間が過ごせるとは」
ノームは、研究に関する激論に飢えていたという。
ノームとボクは、すっかり意気投合した。
●アタック01-16 ローズ家の家庭の事情
「泊めてほしいんだったな。キミなら何泊してくれてもいいぞ」
ノームは上機嫌だ。
「そういえば、名前も名乗っていなかったな。わしはキーウという」
ボクも、時計の話に夢中になって忘れていた。今さらだけど、ボクも名乗った。
キーウは、この森の歴史を研究している研究家だ。
「森とノームと時計塔」というタイトルの本を出版したいそうだ。
時計塔まで来たはいいものの、入る手段がなくて思案していたという。
そういうことならと、ボクは時計塔の秘密の裏口について教えた。
内部構造のことも、ボクが知っている限りのことを伝えておいた。
キーウはとても感謝した。そして次に、ボクのことを知りたがった。
ボクは、この先にある館に用があって来たことを伝えた。
「ローズ家の館か。それなら、さっきの話のお礼に、知っていることを話してやろう」
え。それはありがたいけど、どうして詳しいの?
「わしは森の研究をしてるんだ。ローズ家のことも含まれるのさ。口が軽い使用人からいろいろ聞き出したよ」
ローズ家は奇妙な家だ、とキーウは言う。
母親が早くに他界し、父親はその後吸血鬼になった。
しかし、その子どもたちは人間のままだという。
ローズ家には2人の子どもがいた。
父親が吸血鬼になったのをきっかけに、姉のほうは家を出た。
弟は、犬に噛まれたことがきっかけで病気になってしまい、館に住んでいる。
治すためには、特別な聖水が必要なのだとか。
館に用があるのなら、吸血鬼である主人より先に、病気の息子に会った方が良い、という助言ももらった。
これらはすべて、ボクが今まで知りたくても知り得なかったことだ。とても助かる。
「ところでキミは、銀貨を持っていないか?」
キーウは唐突に切り出した。
銀貨なら持っているけど、どうして?
「ちょっとしたことさ」
キーウはボクから銀貨を受け取ると、容器に入れ、小型の暖炉の中に突っ込んでしまった。
ボクにはその行動の意味がわからない。
「なあに、朝になればわかるさ」
その夜ボクたちは、また時計の話をしながら、いつしか眠りについた。
そして……。
とても心地よい入眠だったはずなのに、悪夢を見た。
「あの日」の夢だ。家が襲撃され、家族がばらばらに引き裂かれた、あの日の。
そこでボクはやっぱり何もできず……現実と同じ出来事をなぞった。
とても生々しい夢だった。起きると、体力点を1点、消耗していた。
けれど、悪夢袋に変化はない。
まるで誰かに悪夢を見させられ、吸い取られたような感覚だ。
ボクは、時計塔の中に囚われていた夢魔を思い出す。
あの夢魔のような、なんらかの別の力が、ボクに働いたように思えた。
寝覚めは悪かったが、朝を迎えることができた。
「おはよう。だいぶうなされていたね」
朝、目が覚めると、キーウが先に起き出していた。
野草とキノコのスープが用意されている。ボクもネルドで用意してきた固いパンと干し肉を提供した。
夢のダメージは、睡眠と食事では回復しそうになかった。
そこでボクは、<時もどしの回復時計>を取り出した。
この森の暗いイメージとは真逆の、柔らかな緑色の時計。
そっと触れながら念じると、時計の針が動き始める。それと同時に悪夢袋がひとつ、徐々にしぼみはじめる。
それは緩やかに逆回りをし、秒針がちりん、ちりんと風鈴のような心地よい音色を奏でた。
ボクの身体がほのかに光る。ボクの身体だけが時を戻し、悪い効果をすべて取り去っていく。
森に入ったばかりの時に吸血獣にやられた額の傷も、すうっと消えていった。
悪夢袋が空になると、回復時計はその動きを止めた。
「ほう。これは興味深い。時計と魔法の融合とは」
キーウはその様子を、興味深く眺めている。
「時計塔にあるという図面を見るのが楽しみになったよ」
朝食を終えたら、お別れだ。
キーウは、昨夜暖炉に放り込んだ容器を出してきた。
容器の中から出てきたのは、銀のナイフだ。
銀貨を溶かし、型にはめて作ってくれたんだ。
銀のナイフは、ぴかぴかに磨かれていた。
キーウがボクより早く起き出していたのは、このためだと知った。
「吸血鬼の館に行くんだ。準備しておくに越したことはない」
ボクはありがたく、銀のナイフを受け取った。
さらにキーウはボクに、小さな小さな歯車を1枚くれた。
「これはノームの技師で一般的に使われている歯車だ。もしかしたら、動かない時計の修理に役立つかもしれない」
ボクは感謝した。
「なに、楽しい一夜と時計塔の情報に比べれば、足りないくらいだよ」
ボクは木を降りると、キーウに別れを告げた。
背後から、鐘の音が聞こえた。森の中の時計塔が、朝を告げたのだ。
さあ、出発しよう。今日のうちに館にたどり着きたい。
●アタック01-17 からくり神と魔法の時計
昼間でも暗い森を進む。
空気がよどんできた。異臭がきつい。独特の腐敗臭だ。
時計塔から見えていた墓地が近いことが、嫌でもわかった。
やがて、森の中の墓地が見えてくる。
墓地は、低い石塀で仕切られている。
そこかしこに、ボロボロの服を着たゾンビたちがおり、呆けたようにうろついている。
その数は、時計塔で視認した20体より、もっとずっと多く見えた。木々の影に隠れていたのか。
ローズ家の館は、この先にある。
ここを、切り抜けなければならない。
ゾンビたちの腐った脳には、思考する力はほとんどない。
餌か、そうでないかくらいしか区別はない。
そしてボクはまだ、ゾンビたちに見つかってはいない。
ダッシュで走り抜けるか。できるかな。<速撃の戦時計>に頼ることになるかも。
ボクは、気配を殺して墓地の門に近づいた。
そっと門扉を開ける。
さびついた門扉は、ギィ、という嫌なきしみ音を立てて開いた。
その瞬間、たくさんのゾンビたちの顔がいっせいにこちらを向いた。
ボクに気づいたゾンビは、一斉にこちらに向かってくる。その動きは、予想以上に素早い。
緊急事態だ。どうしたらいい?
・ゾンビたちと戦う
・<速撃の戦時計>を用いる
・<刻々の狭間時計>を用いる
もともとは<速撃の戦時計>を使い、ゾンビたちが群がってくる前に墓地を走り抜けるつもりだった。
けれど、殺到してくるゾンビたちの数を見る限り、突破できる自信はない。一度引きずり倒されてしまえば、おしまいだろう。
もちろん、戦うなんて選択は、取れない。
<刻々の狭間時計>ならば、時を止めた隙に走り抜けることができるだろう。
けれど、まだ修理できていない。修理には歯車3枚が必要なのだ。歯車が足りない。
ボクは、ここにはないもうひとつの手段を思いついた。
時を遡る、<跳兎の懐中時計>。
どのくらい時を遡るのかはわからないが、使ってみる価値はある。
懐中時計に触れると、場違いな、跳ねるような音色で、針のかわりのウサギの意匠が動き出す。
その音は、止まりかけたオルゴールが、一音一音、丁寧に音を鳴らすのに似ている。
音に乗って、ボクは過去へと跳ぶ。
ボクの立つ場所は変わらない。
けれど、門扉も塀も、墓石もまだ新しい。
ゾンビはまだいたが、その数は多くない。
なにより、まだボクに気づいていない。
過去に戻っていられるのは、ボクが集中している間だけだ。
ボクは急ぎ足で、墓地を走り抜けた。
墓地を走り抜け、一息つく。そこで集中力が途切れた。
強く引き戻される力を感じ、ボクは現在へと戻った。
墓地のゾンビたちを大きく引き離していた。ここなら襲われる心配はない。
ボクはほっと、一息ついた。
ローズ家の館は、もうすぐだろうか。
ボクは歩を進めた。
やがて建物が見えてくる。
しかしそれは、ローズ家の館ではなかった。
さながら神殿のようだ。
時計塔の上からは見えなかった。木々に覆い隠されていたのかもしれない。
神殿の入口には扉がない。
石造りの建物の上部には、神像がかたどられている。
精密なからくりゴーレムの姿を模した像だ。
からくり神テクアの像だ。ボクが生活していたからくり都市チャマイで信仰されていた神。
信仰する者に、知力とインスピレーションを与えてくれるという。
ボクは神像の下をくぐり抜け、神殿の内部へと足を踏み入れた。
人の気配はない。ただ、荘厳な雰囲気だけがある。周囲の壁には、からくりの歴史をたどるレリーフが彫られている。
ボクはそれらを眺めながら、神殿の奥へと歩みを進めていく。
最奥の闇に影が見える。神像だろうか。
背後から物音がした。
振り返る。
そこには、吸血獣がいた。
ボクをつけてきたのか。それとも、神殿の中なら太陽の光が入らないため、根城にしていたのか。
・吸血獣と戦う
・<速撃の戦時計>を用いる
・<刻々の狭間時計>を用いる
吸血獣は強敵だ。
前の戦いでは、幸運にも勝利をつかむことができたが、今回もそうなるとは限らない。
ボクは迷いなく、<速撃の戦時計>を作動させようと手に取る。
その瞬間、空気が一瞬凍るような感覚。何かに、見られている?
ボクはかまわず、<速撃の戦時計>を作動させた。
しかし、時計は動き出さない。それどころか、奇妙な感覚がボクを襲う。
まるでボクの身体が、時の狭間に入り込んでしまったような。
神殿の最奥から、なにかが動き出した。
ボクの前にあらわれたそれは、魔術師の格好をしたゴーレムだ。
身体の全身が透き通っており、内側には無数の歯車が見える。その精巧精緻は、人の手で作り上げられるものを、軽く凌駕している。
謎の存在の登場に、吸血獣は怯えたように逃げ去ってしまった。
「大胆だな。私の神殿で、私の子らが造ったその道具を、盗んだその道具を使って、あまつさえ他の神の魔法を行使するとはな」
ボクは、このゴーレムの姿が、神殿の入口の神像に酷似していることに気がついた。
すなわち、——からくり神テクア。
次回、からくりの神からの問いかけ。ひとつ間違えば魂は破滅する。
【ミナ 体力点3→2→4/4 悪夢袋6→5→3/7】
金貨 6枚
銀貨 5枚→0枚
歯車 0枚→1枚
・ニンニク
・銀のナイフ
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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