第1回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
●物語のはじまり
「ねぇ〜次の町まだぁ? アタイおなかすいちゃった〜」
星空を映したような艶やかな毛並みの子猫が、甘えるように僕の足にすりすりとからみついてくる。
「ニャルラ、あんまりタイガさまを困らせるんじゃないよ」
僕の肩口からひょいと頭をのぞかせた銀毛の子狐が、子猫をたしなめるように小声でなだめた。
「え〜困らせてないよぅ。おなかすいちゃっただけだもん。ね、たいが〜」
「はは。たぶんもうすぐだよ。次のカラメールは大きな町って聞いてるから、おいしいものたくさんあると思うよ」
僕は足もとの子猫ニャルラにそう答える。途端にニャルラの瞳が星くずを散らしたように、キラキラに輝いた。
「ホント?! ナゴールみたいにおっきいかな。たのしみ〜」
「前の村で聞いたんだけど、丸々獣の肉料理が有名なんだって」
「にくりょうりっ!?」
ニャルラは、今まさに目の前にごちそうの皿を並べられたみたいな表情を浮かべた。
「タイガさま、ニャルラをあんまり甘やかさないで」
僕の肩に乗っかっている銀毛の子狐がとがった口をさらにとがらせてプリプリしている。
「いいんだよフォルネ。ニャルラはこれくらいで」
「そうなのだフォルネよ。アタイはこれくらいでいいのだ」
「むー」
フォルネがぷんむくれて、視線をそらした。
と、その表情が変化する。
「タイガさま、あれ」
進行方向を指し示すフォルネに、僕もその光景を見た。
僕たちが歩いているのは、森の脇をかすめるように進む街道。
視線の先にあるのは、少し前に僕たちを追い抜いていった護衛つきの一台の馬車だ。
先を譲ったとき、綺麗なドレスのお姉さんが窓から外を覗いていて、目が合った僕は少し見とれてしまった。
それは、前を行く馬車に向かって、巨大な鳥が今まさに急降下をかける場面に見えた。
緊急事態だ。
「フォルネ、ニャルラ、いくよっ」
「はいっ」「わかった〜」
僕が駆けだすと、フォルネが肩口から飛び降りて先行する。ニャルラもすぐにその後を追った。
巨大な鳥は、太陽の光を反射して、やけにキラキラと輝いているように見えた。
近づくとその理由がわかった。
鳥なのに、頭に王冠みたいなのを載せている。それだけでなく体にも輝く装飾品をいろいろつけているみたい。
巨大鳥の襲撃で、馬がけたたましく叫び、歩みを止めてしまう。
駆け寄る僕が見ている前で馬車の屋根の幌がバリバリっと破られ、巨大鳥の脚が突っ込まれた。
突然の出来事に、馬車の中から男女の怯えた叫び声が響く。
馬車に乗る人も周囲の護衛も、まだ誰も対応できていない。
巨大鳥が飛び立つときには、その鋭い爪に力なくこうべを垂れた人物を、しっかりと捉えていた。
それは、きらびやかなドレスに身を包んだ令嬢に見えた。さっきの、あのお姉さんだ。
「フォルネ! ニャルラ!」
僕の意をくんでいち早く馬車に接近した二匹は、左右から勢いよく馬車の屋根まで駆け上がり、大きくジャンプ。
しかし飛び去る巨大鳥にはわずかに届かず、二匹は互いにクロスするように空を切り、軽やかに地面へと着地した。
巨大鳥は、ゆうゆうと飛び去って行く。
「む、娘を……! 何をしているのだ。追え。追ってくれええ」
馬車の中からパニック状態でわめく男の声が聞こえる。
しかし動揺した馬に、馬車は歩みを止めたままだ。
馬車の左右を固めていた、馬に乗った冒険者風の男女二人が、巨大鳥の進行方向に向かい追跡を始めた。
僕はようやく馬車のところまでやって来た。
「タイガさま、間に合いませんでした」
「あとちょっとだったのに〜」
フォルネは僕の肩の定位置に乗っかる。
「あの……」
僕は帽子を脱ぐと、馬車の中で叫び散らかす男の人に声をかけた。
男は叫ぶのをいったん止めると、僕の方をじっと見つめた。上品な身なりをしているが、その顔は崩れてぐちゃぐちゃだった。
衣装の肩の部分が破れている。きっと、娘が連れ去られるのを防ごうと、鳥の脚に組み付いたに違いない。
「うん? 君は? どうして子どもが……君は魔物調教師かなにかなのか?」
僕のいでたちと連れている動物たちを見て、男は言った。
詳しく説明する必要もないと思い、あいまいにうなずく。
「先ほど後方から駆けつけて、オウカンワシから令嬢を救おうと動いてくださいました」
残る一人の護衛が、僕たちの動きを見ていたみたいだった。
「そうだったのか。助力に感謝する。しかし、間に合わなかった。我が娘コンスタンサは……」
落胆する男。
「こちらコーネリアス商会の当主、ヴァンダービルド様にあらせられます」
コーネリアス商会は、このあたりで大きな商売をしている豪商だという。
カラメールの街で海運を中心に事業を展開している。
僕たちがどう声をかけたものかと思案していると、巨大鳥を追いかけていた冒険者風の男女が戻ってきた。
「申し訳ありません。追いきれず……」
「オウカンワシが、巨大樹の中腹に消えるところまでは確認できました」
「なんと、あの『巨大樹』にか……いや、あれの巣があるのならそこくらいか……」
そこから、ヴァンダービルドさんは素早い立ち直りを見せた。
「オウカンワシなら、目当ては人そのものでなく装飾品だろう。まだ助けられる可能性はある。すぐにカラメールに向かうぞ。救援隊を組織し巨大樹に向かうのだ。お前たちが指揮を執れ」
「はっ」
そうして、ヴァンダービルドさんは僕に向けて言った。
「ありがとう。力及ばずであれ助力に感謝する。後日お礼はさせてもらう。我が商会を訪ねたまえ。この木札を出して取り次いでもらえば良い」
こんな場面でも、こうした細やかな心遣いができるのが、商人として成功する秘訣なのかもしれない。そんな風に思ったりもした。
「少年よ。名を訊いても良いか」
「はい。タイガといいます」
「タイガか。覚えておこう」
コーネリアス商会の人々はたちまち状況を立て直すと、早駆けでその場を去って行った。
僕は、巨大鳥が立ち去った方角を見た。
広がる森の向こうに、雲を突くようにそびえる巨木の影がかすんで浮かんでいた。
森の木々とは明らかに別格だ。
「あれが、巨大樹……」
「たいががなにかんがえてるかわかる〜」
「やっぱり、行くんですよね」
「……うん。ほっとけないかな」
「うぅ〜ごちそう〜〜」
「ごめんね。帰ってからでもいい?」
「もっちろん。やくそくやくそく〜♪」
僕たちは、進行方向を変えた。
目指すは巨大樹。さらわれたお姉さんを助け出すんだ。
■ローグライクハーフとは
「ローグライクハーフ」は、TRPGのように遊ぶこともでき、ゲームブックのように遊ぶこともできるという両者の中間のような位置づけのルールです。
1人でもプレイできますし、3人まででTRPGのように遊ぶこともできます。
その内容はランダムダンジョン。サイコロを振ってイベントを決め、起きた出来事に対処します。
同じイベントに行き当たらないような工夫がされているのもポイント高いですね。
簡単に遊ぶには、とても良くできたシステムなのです。
●作品紹介
ぜろです。
今回挑むのは、ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」になります。
「巨大樹の迷宮」は、その名の通りの巨大樹を高く登りつめ、さらわれた商家の令嬢を救い出す冒険です。
ダンジョンが地下に潜っていくのに対し、高くそびえる巨大樹を上へと進みます。
この設定をもとに、主人公キャラクターを作成し冒険に挑みます。
これまで私は、いろんな主人公を作成し、ローグライクハーフのシナリオに挑んできました。
初めて作り、「黄昏の騎士」に挑んだ戦士シズ。
「混沌迷宮の試練」「あやかし」「秋雨の狐」に登場した女侍、サクラ。
ウサギたちと戯れたウサギの友だち、ウサナギノミコト。
竜鍵諸島を遊び歩いた宇宙忍者ポストん。
正直、どのキャラクターにも愛着があり、いずれも再登場させたくて仕方ありません。
しかし今回また、新たなこころみを思いついてしまったため、新キャラクターの登場となりました。
それは、ローグライクハーフwikiにて「ヒーローオブダークネス」を眺めていた時のことです。
「ヒーローオブダークネス」は、人間以外の様々な種族でローグライクハーフをプレイできる追加ルールになります。
悪の種族や人外のモンスターなども設定されていて、ゲームの世界に、さらなる広がりをもたらすものです。
これを眺めているうちに、瞬間的に、思いついちゃったんですよ。
このルールを使えば、ローグライクハーフの世界で「ポケモン」ができるんじゃないかって!
それは、アランツァ世界の世界観を崩壊させてしまいかねない危険な思いつきかもしれません。
でも、思いついたらやってみたい!
ローグライクハーフは一人で遊べるTRPGなんです。
一人で遊ぶのなら、自分が思いつく限りのアイディアを投入して楽しんじゃってもいいよね。
本来の世界観を少しくらい逸脱したっていいよね。
だったらFT新聞で、これだけハメを外したプレイを公開するのはありかもしれない。
そんな風に思って、このリプレイを書きました。
言語コミュニケーションが取れているから「ポケモン」より「デジモン」寄りかもしれませんが、そこはスルーでお願いします。
そうして生み出されたのが、「物語のはじまり」に登場したキャラクターたちです。
主人公枠の少年と、そのお供の二匹。
でもちょっと待って。
ローグライクハーフは、「主人公2人」か「主人公と従者たち」という組み合わせでできる冒険のはず。
主人公3人ってのはできないんじゃ?
それではルール上、どういう構成になっているのか説明しておきましょう。
ルール上、主人公枠としてデータ作成しているのは、以下の二匹になります。
〈妖狐〉のフォルネ。
〈魔猫〉のニャルラ。
妖狐は、妖力を持った狐のあやかし。
魔猫は、高い知能を持った猫のクリーチャー。
あれ? この物語の主人公のタイガは?
実はタイガは、キャラクター設定上は、フォルネの「戦わない従者」枠の「荷物持ち」なのです。
「あやかし」の時にも、チーム全体の総大将の藤丸は、従者の「ランラン持ち」枠でした。
でもあの時の主人公は、あくまでもサクラでした。
今回はなんと、戦わない従者枠の少年を主人公に据えての冒険です。
今はこれくらいにしておきます。またどこかで詳しく語ることもあるでしょう。
彼らの織りなす冒険を、ぜひ楽しんでください。
さて、私はうっかりさんなので、基本的なところで根本的な勘違いをしたまま、あるいは堂々と間違った解釈をして突き進んでしまうことがあるかもしれません。
だから、私のプレイにとらわれず、みなさんはみなさんのローグライクハーフライフを送ってください。
リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。
●アタック01-1 タイガと巨大樹のふもと
巨大樹のふもとは、ものすごく賑わっていた。
そう。根本っていうより、ふもとっていう方が合ってると思う。
あちこちに冒険者がテントを張っているだけでなく、簡易な出店もある。
小さな小屋では武器を扱っているみたい。
まるでひとつの町みたいだ。
「わっわわっ! たいが、あっち、いいにおい〜」
ニャルラがとてとてと離れていく。
「あんまり遠くに行かないでね」
「だいじょ〜ぶ。においでわかるから〜」
「まったくニャルラは。それだと必要なときに呼び戻せないでしょ」
「はは……」
おなじみのやりとりに、僕は小さく苦笑を浮かべるしかない。
ここで少し話を聞いて、食料を調達したら、巨大樹に挑もう。
見る限り、数多くの冒険者がこの巨大樹に挑んでいるみたい。
コーネリアス商会のコンスタンサさんの救援部隊はまだ来ていない。それはそうか。僕らはカラメールに立ち寄らずに直接来たから。
「よお坊主。親父とはぐれたのか?」
いかつい雰囲気のおじさんが、意外にも気さくに声をかけてきた。
僕みたいな子どもは珍しいから、こういう場所ではよくあることだ。
「違うよ。僕も巨大樹に登ろうと思って」
「ははっ。こいつはケッサクだ。じゃあひとつ忠告だ。この巨大樹は、上に行けば行くほど同じ敵でも強くなる。『高度』には常に気をつけな」
おじさんは僕の言葉をまったく信じていないみたいだったけれど、ちゃんと教えてくれた。
意外といい人っぽい。ついでに聞いてみよう。
「オウカンワシって知ってる?」
「ああ。知ってるぜ。頭に王冠かぶった奇妙なでっかい鳥だ。キラキラした装飾品を集めては体につけてる。なんだってそんなことするのかねぇ。ここにも中腹あたりから生息してるみたいだぜ」
どうして体を飾りたてるんだろう。クジャクみたいな、オスの求愛行動とかかな?
「タイガさま、そろそろニャルラを迎えに行っては?」
「そうだね。そうしよっか」
フォルネは、なんだかんだ言ってニャルラのことを気にかけている。
僕は食料品を扱っている出店に向かった。
そこでは星空色の猫が、まるで獲物を狙うみたいな鋭い目つきで、店主とにらめっこをしていた。
「あんたんとこの猫かい。さっさとヨソへやっておくれよ」
「手を出さなかったね。えらいえらい」
「うん。アタイまってた〜」
僕は、巨大樹に挑む用の保存食と、今少し食べておく分を購入した。ニャルラはほくほくだ。
「ねえねえ、丸々獣は? 丸々獣のおにく、ある?」
「丸々獣なら、こっちの干し肉だな。そっちのはボア(猪)のやつだ」
店主は、ニャルラが盗みを働くような猫ではないとわかったためか、猫がしゃべることはそれほど気にせずに答えてくれている。
こんな場所に出店を構えているのだから、もしかしたら、ニャルラと同じ種族「魔猫」に会ったことがあるのかもしれない。
だいたい準備は整ったかな。
それじゃあいよいよ、巨大樹に挑もうか。
巨大樹を登るには、まずはふもとの坂道を上りながら進む。
そして最初の高台に設置された手動の昇降機で、一番下の枝まで運んでもらう。
そこからは、交差する太い枝や、幹を巻くように延びる道を使いながら上へと登っていくのだ。
昇降機は、太いロープと滑車で支えられた大きな箱に乗り込み、力強くハンドルを回して昇降する仕組みになっていた。
かつてこの巨大樹に挑んだ者たちが作り上げた大がかりな装置ということだ。
ところが昇降機の前で、僕たちの足は止められてしまった。
僕に巨大樹のことを教えてくれたおじさんと、連れのもう一人の男が、僕たちの行く手を阻んだからだ。
「まさか本気で子どもひとりで巨大樹に挑む気か。それは止めないわけにはいかないな」
「ひとりじゃないよ」
「かわいらしいお供のことを言ってるんならなおさらだ。俺たち大人は、みすみす死にに行くとわかっている場所に子どもを送り出すことはできないのさ」
まいったな。このおじさん、ホントにいい人だった。
こういう時には、少しだけ実力を見せるしかない。
あんまりやりたくはないけど。
「フォルネ、ニャルラ、いい?」
フォルネは僕の肩から滑るように降り、瞬時に距離を詰めると、おじさんの肩に飛び乗り、鋭い爪を首元にそっと突きつけた。
「お。うお!?」
ニャルラももう一人の男に対し、同様の動きを見せる。
「もういいよ」
冷や汗を浮かべるおじさんたちの元を離れ、フォルネとニャルラは僕のところに戻る。
「驚かせちゃってごめんなさい。危害を加えるつもりでやったんじゃないです」
「お、おう……」
「この子はフォルネ。妖狐というあやかしです。見てのとおり、素早くて強い。妖狐は尻尾が多いほど強くなるっていうから、3本尻尾のフォルネはけっこう強いんじゃないかな」
フォルネが僕の説明に合わせて、愛嬌たっぷりに3本の銀毛の尻尾を振っている。
「人の姿にもなれるけど、なぜか僕の前じゃ、なりたがらないんですよね」
フォルネはそっぽを向いた。
今度はニャルラが僕の前に進み出る。艶やかな星空色の子猫。
「アタイは魔猫のニャルラ。アタイのほうがフォルネより強いの〜」
「魔猫はもっと大きく成長するみたいだけど、この子はまだ子どもだから」
「いいの。たいがだってこども〜」
「はは。そうだね」
あんまり手の内を見せすぎるのはよくないけど、こういう時には必要だ。
僕たちのやりとりを見て、おじさんは言った。
「参ったな。これでも冒険者としてはそこそこと思ってるんだが。不意打ちとはいえ完全にやられた。あんたらの強さは十分わかったよ。子どもだけで旅できるわけもな。ま、心配がなくなるわけじゃないが、他の連中がなんか言ってきたら、口添えしてやるよ」
「やった。ありがとう、おじさん」
「ロイってんだ。よろしくな」
こうして僕たちは、いよいよ巨大樹に挑むことになった。
【フォルネ(妖狐) レベル10 技量点:2 生命点:3 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
2小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
【ニャルラ(魔猫) レベル10 技量点:1 生命点:9 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。
【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4
金貨10
さあ、ここからが冒険本番だ。
ランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めていく冒険が始まる。
本リプレイでは、サイコロを振ってイベントが決まったら、イベント番号と簡単な内容を示し、話を進めていくことにする。
●アタック01-2 タイガと猿の軍団
【61 骨鳴り蛇】
昇降機の箱から足を踏み出すと、そこは最初の巨枝だ。いや、枝というより完全な道になっている。
多くの冒険者が行き交ったため、木の皮がめくれ、そこだけ本当の道のように見える。
道の脇には雑草が茂っており、ここが木の上だなんて思えない。
上の方をあおぎ見ると、枝の道だけでなく、幹にも階段や広場があり、木の中の空洞に入れるようになっているところも見える。
そして今の高さで、すでにほかの木々よりもはるかに高い。
遠くに見える都市がきっと、カラメールの町に違いない。
「ふわあ〜すごい〜こんなとこくるのはじめて〜」
ニャルラは瞳を輝かせ、きょどきょどとあたりを見回し、次にくるくると軽快に駆け回り始めた。
「あんまり端に行ったら落っこちるから気をつけて」
フォルネでなくても注意せずにはいられない。ここには手すりも安全柵もないのだから。
十分な幅があるとわかっていても、正直、心もとない気分になる。
ニャルラが道脇の雑草に近づいたとき、「カラカラカラ!」と耳障りな乾いた音が鋭く響き渡った。
瞬間的にとびすさり、毛を逆立てて威嚇の構えを取るニャルラ。
草むらにガサっ飛び込むと、なにやらうねうね動く長い生き物をくわえて出てきた。
それは蛇だった。尻尾のところの骨がむき出しになっている。
骨鳴り蛇は毒蛇だ。尻尾の先の骨を鳴らして威嚇することで知られる。
さっきのカラカラ音は、ニャルラが不用意に縄張りに踏み込んだための、蛇の威嚇音だったに違いない。
【骨鳴り蛇 レベル4 生命点2】
蛇はニャルラの先制攻撃を受けてぶらぶらと揺られており、すでに巻きついて反撃しようという気配すら失っていた。
「離しておあげ」
僕が言うと、ニャルラは蛇をぽーんと放り投げる。
のたうつように地面に着地した蛇は、そのまま茂みに消えていった。
それを見送ったニャルラは、なにを思ったか、もう一度茂みに飛び込んだ。
そして次に、違うものを口にくわえて出てきた。僕の前にそれを置く。
「きらきら、はっけ〜ん」
それは1枚の金貨だった。
[プレイログ]
骨鳴り蛇と戦闘
ニャルラの攻撃 サイコロ6<クリティカル!>
骨鳴り蛇へ1点のダメージ(骨鳴り蛇生命点2→1)
骨鳴り蛇は逃走した
宝物判定 サイコロ3 金貨1枚入手
【43 投猿機】
それからしばらくは、ひたすら木登りの時間になった。
木登りと言ってもよじ登るようなところはない。ただただうねった枝と幹の道を歩いていく。
基本は上り道だけど、たまに下っている枝もあって、「せっかく上ったのに、またやりなおし」って気分にさせられた。
あと、この木登り、とにかくどこでも下がよく見える。
地面がしっかりしているとわかっていても、下を見続けていると目がクラクラしてくる。
高いところが苦手な人は来るのぜったい無理だと思う。
「タイガさま、あぶなっ」
フォルネが僕の服のすそを力まかせにぐいっと引っ張り、僕は体ごと大きくのけぞった。
その僕の目の前を、何かがすさまじい勢いで、びゅんっとかすめ飛んでいく。
その先を目で追うと、小猿が向こうの幹に、びたんっとへばりついた瞬間だった。
猿が、猿が飛んできた?!
次に飛んできた方角を見ると、たくさんの猿たちがわらわらと群れている。
その中に木製の得体の知れない装置が見えた。投石機のような……?
その棒状の『腕』の部分に、小猿がしがみついている。
そして大きな猿が、棒の反対側に勢いよく乗っかると、その反動で小猿が「発射」された!
ひゅん、っと飛んでくる小猿。今回は狙いが少しそれたから何もなかったけれど、猿に出していい速度じゃない。
「いけない。ここは猿たちの縄張りだ」
「でもでもたいがっ。変なキカイ向こうの枝だから、アタイたちいけない〜」
そうなのだ。猿たちも、あの猿を飛ばす装置も、向こうの枝だ。
こちらから接近する手段がない。急いで走り抜けるしかないかな。
「飛び道具には飛び道具……。仕方ないですね」
フォルネが四肢でしっかりと枝の地面を踏みしめ、枝向こうの装置を鋭くにらみすえる。
「タイガさま、あっち向いてて。決して私を見ないで」
「いつ猿飛んでくるかわかんないから、無茶言わないで」
「……仕方ないですね」
フォルネはその姿を変えてゆく。
妖狐特有の力〈変化〉。人間形態になることができるのだ。
フォルネの人間形態は、すらりとした銀髪の少年で、端正な顔立ちが印象的だ。ゆったりとした羽織る衣装に身を委ねている。「和装」というらしい。その姿は、息を呑むほどに美しい。
フォルネは手持ちの小柄を投猿機に向け、しゅっと飛ばした。
それはあやまたず、装置の可動部分のすき間に差し込まれる。
大猿が投猿機の端に飛び乗るが、挟まった小柄のためにガチっと固定され、動かない。
僕はフォルネの美しさと、洗練された正確無比な腕前に、しばし見とれてしまう。
「装置止めたから、もう見ないで」
「あ、ご、ごめん」
「フォルネかおまっか〜」
僕が目をそらしたところで、フォルネはしゅっと、元の狐に戻った。
「さ、今のうちに」
猿たちはこっちに向けてギャッギャとさかんに叫びたてるが、僕たちは意に介さない。
猿たちがこちらに手出しする手段を持たない間に、その場を駆け抜けた。
それが、猿たちの縄張りにより深く入り込むことになるとも知らずに。
[プレイログ]
投猿機を壊せ 難易度2
フォルネ 小柄を投てき サイコロ4(修正-1)→3 命中
小柄1本消費
次回、ボス猿登場!?
■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。
■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
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