(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメント等は全て当時のものとなっております) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ オレニアックス生物学 Vol.5 『生ける骸骨』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 生物学の授業は非常に重要な科目だった。 アランツァの地での戦いは、戦争となるとまた話は別だが、人間以外の生き物と交戦することも少なくなかった。 聖オレニアックス剣術学校のカメル・グラントは生物学の権威。 そんな彼の授業は生き物の外見、性質、そして対処方法を教えてくれる。 生徒たちを生き残る道へと導く、確かな灯火だ。 今日もカメルの授業が始まる……。 「さて、今日は君たちに質問だ。君たちは忘れられた地下遺跡の中を進んでいる。すると、目の前に骸骨が現れた。ただの朽ちた骸骨ではない。しっかりと足で立ち、頭をこちらを向けた。さあ! どうする?」 この問いかけにまず手を上げたのがヘイルだ。 「向かってくるならこちらは剣で応戦します」 「君らしい回答だ。だが、30点。相手が向かってくるからといってやみくもに剣を振るだけで問題は解決しないことが多い。他には?」 カメルはそういって他の生徒を見る。 「はい! 相手が骸骨なら剣より鈍器が効果的と考え、杖で攻撃。もしくは、石つぶての魔法を唱えます」 そう答えたのは、レムレスだ。確かに、剣は骨のような刃が聞きにくい相手にはあまり有効ではない。 「ふむふむ。さすが。相手の特性を良く考えた対処法だ。だが、それでは70点。もっと効率が良い方法はないかな?」 カメルがそういうとベルナデッタが立ち上がり答える。 「ここは……私の出番かと。そのような理に反したモノは神の力が一番効くはずです」 ややおっとりぎみだが、自信ありげに胸を張って答える。 「そうだな。その回答で95点だ」 カメルの言葉にベルナデッタが、少し不満げに問いかける。 「……100点ではないのですか?」 「ふふふ……。ベルナデッタ。君の回答は正しい。ただ1つ。ある生物の存在を考慮にいれていないという点を除いてな。それこそが今日の講義の本題だ」 そういってカメルは骸骨がかかれた羊皮紙を黒板に張った。 「皆は骸骨だけが動いているのを見れば、邪悪な存在によって骨だけが動かされていると考えるだろう。『アンデット』だと。しかし、この世界にはいるのだよ。骨だけが動いているように見せる生物が。『アンデット』ではない『生ける骸骨』という名の生物が」 「……それはスケルトン……つまり『アンデット』というモンスターではないのですか?」 「それは『動く骸骨』だ。『生ける骸骨』は人間なのだ。ただし、皮膚はおろか内臓までも透明だがな」 カメルの言葉に生徒達はざわめく。 「彼らは元々は普通の人だ。ただ、錬金術実験の結果で骨を除いて透明な体になってしまった。さらに不幸な事に生まれてきた子供にも同じ特性を持つことになってしまったのだ」 「な……なんでそんな実験を?」 マグスはおそるおそるカメルに質問した。錬金術師として、気になったのだろう。 「ふむ……。本当のところは分からん。『生ける骸骨』は聖フランチェスコの東南東にあるカラメールはケラーツヴェルグ地方で生まれた。あのあたりは錬金術の軍事利用が盛んで、生物どうしのかけ合わせによるキメラ化や不老長寿の研究が盛んに行われている。聖フランチェスコの錬金術師は彼らとも交流があるわけだが……。推測ではあるが、軍事利用でもするつもりだったのだろう? 完全な透明生物ができれば、暗殺・諜報にとても役立つ。だが、結果は失敗。そうして生み出されたのが『生ける骸骨』だ」 カメルは黒板に張られた生ける骸骨の絵をみる。 「彼らはれっきとした人間だ。ただ、骨以外の器官が透明なだけのな。だが、見た目はまさしく『アンデット』。だから、普通の人間は忌み嫌う。モンスターと同じにしか見えないからな。だから、彼らは人が来ないような場所に隠れるように住み、ときには刑吏や黄金さらいのような、身分の低い仕事をしながら街に住んでいる」 分かっていない顔をしている生徒がいたので、カメルはつけ加える。 「黄金さらいとは、糞尿を処理する職業のことだ。もし彼らが人間を見ても、極力かかわることはしない。だが、万が一、人里離れた彼らの里が見つかった場合、全力で口を封じようとするかもしれない。彼らにとって存在を知られることは討伐されることと、しばし同義の歴史を歩んできたからだ」 一息をついて、今度はベルナデッタを見て話す。 「注意しなければいけないのは、彼らは『アンデット』ではなく、れっきとした生物だということだ。だから、『アンデット』に対して有効な、君の神の力はあまり意味がない」 ベルナデッタは別のことで身震いした。アンデッドをちりに返すつもりで、人間を殺してしまうなど、あってはならない。 ベルナデッタは真剣な顔で話を聞く。 「『生ける骸骨』と出会うことは殆どない。だが、0ではない。その時、相手を『アンデット』と思って行動すると、大変な目に会うだろう。しかし、今回の講義を思い出せば、そのとき慌てなくすむ。だから、覚えておいてほしい。彼らの悲しい生い立ちもな……では、今日の講義はここまで」 博士はピンと背すじを伸ばしたまま、教室の扉を開ける。ありがとうございました!と声が響く。 若い生徒たちに教えることのうち、どれが役立ち、どれが無駄になるかは分からない。 だが、いくつかはきっと、彼らの命を永らえさせてくれるだろう。そう信じて博士は今日も教鞭をとる。 (From:ロア・スペイダー) ∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴ 「生ける骸骨」 【大魔導城のワナ】94ページ参照 技術点不明 体力点不明 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。