SPAM注意

(編集・水波)最近SPAM投稿が増えておりますが、見つけ次第手動で削除いたしますので、決してクリックなどされないよう、ご注意下さい。

2026年1月15日木曜日

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.40『汝、獣となれ人となれ』その4 FT新聞 No.4740

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.40
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

〜前回までのあらすじ、あるいはイェシカの日記より抜粋〜
押忍、イェシカです。呪いを解く目的で意気込んで、〈太古の森〉のヴィンドランダ遺跡群へ冒険しに来たのに、金目の物をあさっている奴がいるんだ。旧き騎士と旧き剣との戦闘やガーゴイルとの戦闘で、ぼろぼろになってもだぜ! いやぁこの根性、冒険家だねぇ!
次回、「夜の遺跡群の探索、クワニャウマ一行の行く手に何が待つ?」
そこんとこ、よろしく。

あらすじに遊び心を入れてみようと試みたら、某男の道を魁よアニメの次回予告風になってしまいました。深く掘り下げたら負けなので、今回は『汝、獣となれ人となれ』リプレイその4です。
クリスティにかけられた、昼になるとミソサザイになる呪いを解くために繰り広げるヴィンドランダ遺跡群の冒険は、中間イベントを経てますます本格化していきます。
ところで、本作の頼もしい仲間であるクリスティですが、彼女には「彼女は冒険中に一度だけ〈宝物表〉を振るとき、その出目に1を足すことができる」という能力があります。
主人公が強欲設定なのに、〈宝物表〉のダイスの結果がふるわなくてしょっぱい収穫ばかりだったのですが、クリスティのおかげでとても久しぶりに魔法の宝物をゲットすることができました^^♪
今回の冒険は、クリスティに限らず仲間に恵まれていて、【アンデッド】【家畜】【ゴーレム】【植物】【兵器】【建造物】のいずれかのタグを持つクリーチャーは対魔法ロール判定に自動的に成功するが、それ以外は違うという敵に遭遇した際、猟犬の雷電、飛燕、月光は【家畜】で、イェシカは耳が聞こえないので、仲間のうち半数以上が自動成功。クワニャウマとクリスティだけロール判定をすればいいだけになったおかげで、とてもリスクが軽減されました。
キャラクターを考えるのが大変だからという怠惰な理由で従者に猟犬を選んだのですが、今回の冒険ではそれがよい方に転がる形となり、「今度からもっと戦略的に考えればさらにローグライクハーフを楽しめるじゃん!」と学習できました^^
ところで、冒険中に助けた兵士たちが従者になるエピソードがあるのですが、この時、クワニャウマの従者点がいっぱいだと思って従者にしませんでした。しかし、後で冒険メモを確認したところ、1点分空きがあるではありませんか! ここで従者を加えていたら、のちの展開に変化があった可能性が高かったので、ショックでした。何しろ、新たにプレイしても、ダイスの目次第で二度と同じ冒険はできないからです。主人公のステータス確認大事!ゼッタイ!と思いました><


※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その4

齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

10:墳墓の不寝番
夕食を食べ終えた後、遺跡群の中の探索を再開した。
幾つもの角を曲がるうちに、わたしは妙に気になる玄室を見つけた。
「旧い墳墓か霊廟や」
クリスティが説明してくれる。中を覗くと、名も知らぬ神々の石像が建ち並ぶ奥に、ひやりとした暗がりが口を開けている。
「何かお宝があるかも!」
わたしが喜び勇んで暗がりに一歩足を踏み入れると、いくつもの紅い双眼がわたしたちを睨みつけてきた。
生臭い息と共にうなり声が聞こえたかと思うと、魔狼1匹と黒狼3匹が現れた。
「きばっていこうや!!」
クリスティは、両手に持った小剣で魔狼を斬りつける。
「やるじゃない、クリスティ! 黒狼にかじられているわたしとは大違いね!」
「あんた、何を盛大にやられとんの!? ワンコ、何をボケーっとしとるんや! あんたらの御主人様がおいしくいただかれかけとるやろ!!」
猟犬たちは、魔狼をクリスティにまかせて黒狼たちに飛びかかる。
その頃には、わたしはだいぶダメージを食らっていたので、かえる人の旅商人から買ったばかりの治療のポーションを使って回復を図る。
「しっかりしぃや、クワニャウマ!」
「おかげさまで復活! ここから反撃よ! 食らえ、古代の神槍!」
わたしは、魔狼めがけて古代の神槍を投擲する。
槍は、魔狼の腹に突き刺さる。
「ようやった!! これでとどめや!!」
クリスティは、魔狼へおどりかかると、小剣二刀流でとどめを刺す。
「これで魔狼は倒せた! 黒狼の方は?」
「ワンッ!」
猟犬たちが、黒狼の屍の前で勝ち誇った顔で一声鳴いた。
すると、玄室の片隅から声が聞こえてきた。
「奴らを倒したのか!?」
「助かった!」
「あんたたちは、命の恩人だよ!」
そこには、3人の兵士がいた。
「あんたたちもこの遺跡を探索していたの? ねえ、ここにお宝はあった?」
「いいや、あいにく」
「あったら、お礼にあんたらに捧げているよ」
「今、持ち合わせがないから、ただで従者になるよ」
「ただ!? あ……でも、食料がたりないからだめだ。くっ!! せっかくただの従者をゲットできるチャンスだったのに!! 猛烈に損した気分!!」
わたしがくやしがっていると、3人の兵士が気の毒なものを見るようにわたしを見てから、魔狼の死体をあさる。
「恩人さん、ほれ。これ」
「魔狼のへそくりだ」
「これを俺達からの謝礼と思って受け取ってくれよ」
兵士たちはそう言って、身代わりの依代と金貨30枚相当の小さな宝石を渡してくれた。
「おぉ! いいお宝じゃないの! ウィーッヒッヒッ! ウィーッヒッヒッ!」
「クワニャウマ、ほんま単純やね」
クリスティが笑うと、イェシカも兵士たちもみんな笑った。いい笑顔をただでくれるとは、気のいい連中が集結してくれたものだ。


11:コビットの罠師
「身代わりの依代、さっき雷電に使って壊れちゃったから、新しいのが手に入ってよかったわ! これで、安心してこの先を進めるってもんよ! ウィーッヒッヒッ! ウィーッヒッヒッ!」
「クワニャウマ、笑い声が邪悪って言われへんか?」
「ん? 故郷の村を出て冒険家になってからよく言われるわね」
「てことは、あんたの故郷の村の人たち、あんたの笑い方に疑問を抱かなかったちゅうことになるから、村人全員邪悪な笑い方をしとったの……?」
兵士たちと別れ、玄室を出た後、雑談をしながら進んでいると、足に嫌な感触が走った。
これは……。
「クワニャウマのアホー!! あんたまた罠にかかりよって! 少しは学習しいや!」
「面目ない……。でも、クリスティもイェシカも猟犬たちも無事でよかったわ」
「あんたが足元お留守なだけや!」
「ぐうの音も出ないわ……。でも、すぎたことをくよくよしていても誰も得しないから、罠を外してくれる?」
「そう言うても、この手の罠は下手にいじくりよると、別のしかけが出てくるかもしれんから、危のうてかなわんわ」
クリスティが、ぶつくさ文句を言いながらも罠の解除に取りかかる。
イェシカは、その手元が明るくなるようにランタンを照らす。ランタンの中から、か細い声で「出シテ……出シテ……」とリンネソウの妖精の声が聞こえたけど、気にしない。
「ちぇっ、なんでえ。間抜けな黒狼かと思ったのによ」
コビットの罠師が、ランタンを片手に暗闇から姿を現す。
一瞬、昼間会ったコビットの罠師かと思ったけれど、よく見たら昼間の罠師が右目の下にほくろがあったけど、こちらは左目の下にほくろがあるから別人だ。
すると、クリスティが勢いよく立ち上がった。
「フェルディ! あんた、フェルディブランド・バターカップやないの」
「なんだ、クリスティじゃねえか。この抜け作ども、お前の連れかよ?」
どうやらこの二人、顔見知りらしい。
「抜け作どもって、失礼じゃない? わたし一人しか罠に引っかかっているんだから、抜け作単品でいいでしょ?」
「なんでもいいから、はよ罠を外してもらえる? このままじゃ連れが頭に血が上ってくたばってしまうわ」
わたしの発言に、ツッコミを入れることなくクリスティは罠師と交渉を始める。スルーされるのは、ちょっと寂しいなぁ……。
「金貨5枚だ。それ以上はまからねえぜ」
わたしが財布を取ろうとすると、それより先にクリスティが、底意地悪い笑みを浮かべる。
「"仕込み骰子の"フェルディ。サンドヒーバー村の連中にあんたの居場所を話したって構わんねんで」
コビットの罠師はちっと舌打ちすると、手早くわたしがかかった罠を解除する。
「覚えてろよ、クリスティ」
「ウチは物覚えが悪うてな」
勝ち誇った笑顔で罠師を見送るクリスティの背中が、いつになく大きく見えた。
「クリスティ、あんたの値切りテクニック、すごく勉強になったわ!!」
「そやろそやろ!!」
本日二度目の罠だったけれど、一つ賢くなれた分だけお得だった。


12:旧き神の祭司
遺跡群の中で、まだ崩れていない建物を見つけたので、扉を開けてみた。
こちらは長い時を経て堆積した埃が舞い、鼻腔を刺激する。猟犬たちが、そろってくしゃみをした。
先がまるで見通せぬ薄暗い広間に、小さな篝火が点々と焚かれ、独特な香木の匂いがかすかに漂っているから、埃だけでなく香木の匂いのせいで、猟犬たちはくしゃみをしたのかもしれない。
「何や、ここ……」
「奥に祭壇と何かの偶像が置かれているみたいね」
揺らめく灯りに、奥にある祭壇と何かの偶像が怪しく照らし出される。
その時、暗闇のなかから不気味な足音と共に、ランタンを片手に持ったフードを被った人物が現れる。祭服を着ているから、祭司か何かか?
まったく理解できない言葉の羅列が、わたしの耳元に近づいてくる。
湿った足音とともに、やがてフードの奥から細長い首と魚めいた頭がのぞく。
奇怪な姿のその怪物は司教杖を片手に、舌をしるしると伸ばしてきた。
「あれはジャバウォックや。むっちゃあかん奴やから、関わり合いにならん方がええで」
「了解……て、まわりこまれた!」
せっかくクリスティに不審者情報を教えてもらったのに、まんまとジャバウォックに耳元を確保されてしまった! 
「Twas brillig, and the slithy toves」
「え? 何語? あー……わからないから、こっちの言葉で話してくれる?」
「Did gyre and gimble in the wabe」
「話す気なしね。わかった。じゃあ、こっちも自分の言葉で話すから、いい?」
「All mimsy were the borogoves」
「今のはそれでいいと承諾したと見做すわ。じゃあ、質問。お宝の在処を知っていたら、教えてくれる?」
「And the mome raths outgrabe」
「知らないし、知っていたら自分が取りに行っているっつーの? そんな感じ?」
「……」
ジャバウォックは、面倒くさい者を見る目でわたしを一睨みしてから、足元に袋を放り投げる。
開けてみると、中から金貨が2枚入っていた。
「くれるの!? ありがとう!!」
顔を上げてお礼を言うも、そこにジャバウォックの姿はいなかった。
再び、奥の闇の中へ帰って行ってしまったらしい。
「逃げた……?」
「『あんたとは付き合いきれんわ』と思うたんやろ。ありがたいことやわ。あいつに見込みがあると思われたら最後、あいつと同じ訳の分からん言葉をしゃべって正気を失うっちゅう話でな。そういう意味で、あんたのおかげで、ウチらはうまくあいつから逃げられたわ」
「逃げたんだか、逃げられたんだかわからないけど、とりあえず金貨2枚得したことだけはわかったわ」
「うん。もうクワニャウマはその理解でええわ」
何かクリスティからジャバウォックと同じ目つきで見られたような気がした。
気のせい、かな……?


(続く)

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2025年までに6巻が刊行中。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2026年1月上旬に文庫版『歌人探偵定家』(東京創元社)が刊行決定。同年春には『歌人探偵定家 弐』(仮)が刊行予定。

初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信


●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m

https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report

【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/

【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84

■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun

----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------

メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。