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子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(1)
岡和田晃
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私の娘は現在8歳で、4月から小学3年生になりました。思い返せば、保育園に入るか入らないかの3歳の頃から、子どもと接する際はコミュニケーションの一環として、アナログゲームを取り入れてきました。
最初はごく簡単で、ほぼ自動的に進むが「お母さんカード」の登場がほっこりと楽しい、カードゲームの『バルーン』から始めて、さまざまなボードゲームとカードゲームを愉しんできました。一人っ子なので、ママやいとこを交えてプレイすることもありますが、基本的にはパパ(私)と娘の2人で遊びます。
ただしアナログゲームの多くは、3人以上でプレイすることが想定されており、2人だと若干盛り上がりに欠ける。そこで娘が集めているお人形さんたちをプレイヤーに見立てて、4人以上で遊ぶこともしばしばです。もっとも、お人形さんたちも大半は私が動かすので、大忙しではありますが(笑)。ただ、子どもとのコミュニケーション以外にも、システムを研究する役に立ちます。
ゲームを用いた子どもとの関わり方には様々なやり方がありますが、対戦型のゲームの場合、特に年齢が低いうちは子どもに自己肯定感を育ててもらうため、私はわざと子どもを勝たせるようにしていました。
——と申しますか、私が勝ちそうになったら、子どもの方が私からカードを奪って自分が上がったりすることも日常茶飯事(笑)。友だち同士で遊ぶときはそのようなズルはしないので、相手が親だから、ということでしょうか。
対戦型ゲームは、当たり前の話ですが、最後には勝ち負けが決まってしまいます。しかも、慣れている大人がプレイすると、とかく小さい子どもを相手なら簡単に勝ち筋が見えてしまいます。なので、圧倒してしまわないように、盛り上げて、最後は勝ってもらわねばなりません。このあたりは八百長というより、エンターテインメントとしての盛り上がりをどう演出していくか、ということになりましょうか。
しかし、協力型のゲームの場合、こうした「配慮」はほとんど必要がないのです。物語を紡ぎ上げること、相手に勝つのではなく一緒に楽しむことが目的になるのですから。
さて、私は4月から家族で海外にて暮らしているのですが、私と娘が一緒に過ごす時間は日本にいるときよりも飛躍的に増えました。そうしたなか、娘はRPGにいっそう強い興味を示し、私が促さなくても自分からルールブックをめくるようになっています。そんななかでもお気に入りが、日本から持参した『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(ケイブンシャ、1990年)です。もう10回以上(!)、キャンペーンゲームを遊んできましたし、暇さえあればルールブックを眺めていて、ゲームマスターの私よりも娘の方が、固有名詞やデータには詳しくなっている始末です。
『甲竜伝説ヴィルガスト』(1990〜1993年)とは、もともとガシャポンから始まり、背景を解説するケイブンシャの大百科との連動、「コミックボンボン」での連載コミック等、マルチに展開された作品です。特定の原作から派生しているのではなく、一種のシェアードワールドとして展開される形になっているのが大きな特徴でしょうか。
私は1981年生まれで、親に同行して買い物に出かけた先で『ヴィルガスト』のガシャポンを買ってもらう機会はありましたし、幼馴染の家で『大百科』に触れて、世界観に親しんでいました。導入こそ異世界往復ファンタジーのマナーを踏襲していますが、内容は本格ファンタジーRPGそのもの。私にとっては『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『トンネルズ&トロールズ』をはじめとする海外RPGに触れる前に接した作品の一つでした。世界観はD&D的なアーキタイプをふまえていますが、同時代の『聖珠伝説パールシード』ほか国産RPGとも共通する雰囲気をたたえています。
もっとも、『パールシード』は基本的にはボックス1箱で完結した内容ですが(復刻後に有志によるサポートブックが出されていますが、ひとまず措くとします)、『甲竜伝説ヴィルガスト』は膨大な関連作品が出ており、今からそれをフォローし直すのは至難の業。しかも、ガシャポンはシリーズ2の途中で打ち切られており、そういった意味では未完の作品です(漫画版は完結していますが)。
それこそSNSで子どもとプレイするRPGは『甲竜伝説ヴィルガストRPG』がいいと実際に遊んでみる前に答えたら、もともとは児童を対象に発売されたとはいえ、「今日の初心者向きではない」というお叱りや反対の声を、少なからずいただいてしまいそうであります。
けれども、子どもが気に入ったのは、自分が生まれるよりも四半世紀以上前に発売された、本作なのでありました。
こうした意外な(?)現実に、今後のRPGを占うといったら大げさですが、何かしら私たちが学ぶべきことがあるのではないかと思いまして、覚え書きを兼ねて、思うところを文章化していければというのが、今回からの新連載の趣旨であります。これまでの私の連載は1回4000〜8000字程度の長いものが多かったのですが、本コラムはもう少しささやかに、2000字程度を1回としていければと思います。よろしくお付き合いください。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
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