第5回【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「蜂竜の森」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフ「蜂竜の森」の冒険譚です。 妖狐のフォルネ、魔猫のニャルラ。二匹のお供を連れたタイガの冒険です。 今回の目当ては「蜂竜の王蜜」。 コーネリアス商会の料理人クックロッド氏の依頼による、危険な蜂竜の巣でしか取れない食材採取の冒険です。 森へと入り、蜂竜と戦う竜人やヘラクレスナイトと協力関係になりました。 今回はついに蜂竜の巣を発見。ヘラクレスナイトたちも到着し、いよいよ巨大な巣の内部へと突入します。 【フォルネ(妖狐) レベル13 技量点:2 生命点:5/5 魔術点:4 従者点:8】 【装備】(人間形態でのみ効果あり) 片手武器 木盾(生命点+1) 鎖鎧(生命点+1防御ロール+1) <スキル> 【変化】人間形態に変化する。 【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。 【西法術:氷槍】魔術ロール成功で2点ダメージ 【持ち物】 1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。 2草避けのお守り 植物によるアクシデントへの対応力を上げる。 【ニャルラ(魔猫) レベル13 技量点:1 生命点:9/10 器用点:8 従者点:5】 【装備】なし <スキル> 【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない 【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。 【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。 【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。 【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。 【温存経験点】1 【タイガ 従者 荷物持ち】 【持ち物】 食料0 金貨5 1 蟷螂蜂毒 3回分 追加ダメージ1 巨大樹の迷宮P56 2 ロープ 3 オオトカゲの宝石(金貨18枚分) 「手がかり」1 ●アタック01-12 タイガと蜂竜の巣 【最終イベント 蜂竜の女王】 逃げ去る蜂竜の偵察兵を追って、巣のところまでやってきた。 蜂竜の巣は、巨大樹のふもとにあった。前に行ったことのある巨大樹に比べれば、格段に小さい。 「小さい巨大樹」って単語が妙におかしい。 小さい巨大樹に、大きな蜂の巣。 蜂竜の巣は、巨大樹の枝からぶら下がり、地面についてしまっている巨大な土色の球体。 精緻な波のようなものを幾重にも重ねた模様は、まるで芸術作品のよう。 やがて巣の中から、蜂竜たちが次々と飛び出してきた。 それは、ここまで逃げる蜂竜を追跡してきた僕たちにまっすぐ向かってくる。 数が多い。これでは中に入るどころか、ここの戦いだけでも危ない。 その時、どこからともなく飛来した巨大なカブトムシが、蜂竜の群れを蹴散らしていった。 「チェーンジ! ヘラクレスナイト」 そのカブトムシはかけ声とともに、甲冑を身につけた人型に変形する。 「待たせたな、タイガ少年」 「ナイトさん!!」 「私もいるよ!」 竜人の女戦士カトリーナさんが、他の竜人の戦士たちを率いて参戦してきた。 「さあ、ここは私たちにまかせて、君たちは中に入りなさい」 「ありがとう、カトリーナさん、ナイトさんも。いくよ、フォルネ、ニャルラ」 「はい」「お〜みつっ!」 いよいよ、蜂竜の巣に突入だ。 「少しだけ、待ってください」 フォルネが制止をかける。なにをするかと思ったら、その場で【変化】をし、和装の少年の姿になった。 その姿は、蜂竜との激戦が繰り広げられているこの場所には場違いなほどに美しい。 「これは驚いた。君は私と同じタイプだったのだね」 ヘラクレスナイトが親近感マシマシで喜びの声を口にする。 「私のは『変形』ではなく【変化】なので違うのですけど……まあ、いいでしょう」 フォルネは説明を放棄した。のんびり説明している時間はない。 でも、フォルネは僕に人の姿を見られるのを避けていたけれど、どうして。 「私が得た新しい術『西法術』は人の姿でないと使えないのです。出し惜しみをしている余裕はなさそうですから」 なるほど。そういうことか。 「あの……でも……あまり私の方を見ないでいただけると……」 フォルネは頬を赤らめながら、恥ずかしげにそう言ったのだった。 「なにやってるの。はやくいくよっ。お〜みつがアタイを待ってるのだ」 ニャルラに急かされ、僕たちは蜂竜の巣に突入した。 巣の中は、真っ暗かと思ったが、そうではなかった。 巣の外観からはわからなかったけど、外の光が透過して内部を照らし出している。 それは外壁を通すことで、黄金色の光に変化して見えた。 まるで巣の内部全体が黄金でできているみたいだ。 そして、全体に甘ったるい匂いが漂っている。 「匂いだけのはずなのに、服がべとついてしまわないか心配になりますね」 「甘いかおりでくらくらする〜」 ニャルラは、甘さだけで酔っぱらったみたいになっている。 床はぶよぶよしている。 壁には、数多くの蜂竜がへばりついている。 しかし、僕たちに対して、攻撃する様子もなければ、なんらかのリアクションを起こそうという気配もない。 「クックロッドさんが言っていたとおりだ」 僕たちに蜂竜の王蜜を取ってくることを依頼したクックロッドさんは、出発前に知る限りの知識を教えてくれた。 外で遭遇する蜂竜は危険だけれど、巣の中の蜂竜は働き蜂だから、何もしてこない。 それでも僕たちは警戒しながら、蜂竜の王蜜がどこにあるのか探す。 広めの空間に出た。 甘い匂いは、ひときわ強くなってきた。 天井に、無数の六角形の穴があいている。 その六角形には、黄金色の液体のようなものがたまっている。 その液体は粘性があるのか、そこに留まり続ける。 と、徐々に六角形の口からはみだし、ふくらみ始める。 粘性のある液体が、ゆっくりと時間を引き延ばすように伸び、つながりの部分が糸のように細くなり……不意に、途切れておちた。 ぽたり。 それは下の柔らかな床へと落ちる。 下は黄金色の水たまりのようになっていた。 落ちた瞬間、粘り気が感じられる重い動きで水面がわずかに跳ね、波紋が広がる。 天井では、次の雫が落ちようと、その筋を伸ばしている。 その水たまりにたまった液体を、雑用係の蜂竜が、口で吸い上げては移動していく。 きっと、運搬しているんだ。あいかわらず、僕たちの方には見向きもしない。 「あの床の黄金色の水たまり。きっとあれが王蜜だね」 「わお!」 ニャルラが駆け寄り、さっそくひとなめ。 「あっま〜〜い!」 ニャルラはその味覚を全身で表現するかのように転げ回った。 「急いで回収しよう。外でナイトさんたちが戦ってくれてる」 僕たちは、王蜜を回収しようと水筒を取り出した。 そのときだ。 一方の壁に、赤いふたつの光が灯った。 不思議なことに、その壁にだけ、働き蜂の蜂竜が一匹もへばりついていない。 壁を割るように、巨大なスズメバチの頭がのぞいた。 壁を破って胴体が、そして脚が現れる。ぶよぶよの地面が揺れる。 のっそりと姿を現したのは、巨大な、あまりにも巨大な蜂竜だった。 胴の部分が異様に長く、壁の向こうに消えている。 間違いない。女王蜂。蜂竜の女王だ。 それは、道中に出会った蛇竜の女帝にもひけを取らない大きさだった。 ガギガギガギ、とその巨大な顎が鳴った。 僕たち侵入者を、放置する気はないようだった。 [プレイログ] 「手がかり」をひとつ消費することで、竜人の戦士たちが駆けつけ、巣の前の蜂竜(弓兵)との戦闘は回避できる。 ●アタック01-13 フォルネの西法術 【蜂竜の女王 レベル5 生命点7 攻撃回数2 ダメージ2 防御点1】〈巨大なクリーチャー〉 「ニャルラ、こっちへ」 蜂竜の女王がこちらに注意を向ける前に、僕はニャルラを呼び寄せた。 いざという時のために準備しておいた「蟷螂蜂毒」だ。 これにニャルラの爪を浸す。 「決して自分で舐めないようにね」 「うう〜。気をつける」 周りの匂いが甘すぎて、舐めたくなってしまうらしい。 「この毒は一度の攻撃しか効果はない。攻撃したら、また僕のところに戻ってきて。フォルネも」 「私は別の手段で攻撃します。それはすべてニャルラに」 「ありがとフォルネ」 それにしても大きい。こんな大きな怪物と、戦うのか僕たちは。 蛇竜の女帝のときに感じた、決して相手をしてはならない威圧感を全身に感じる。 「どんなに大きな敵でも、鼻の頭にかみつけばいけるんでしょう?」 「ちょっと鼻まで届きそうにないの」 そんな状況だというのに、僕の頼もしい仲間たちは、軽口をたたいていた。 やがて蜂竜の女王の全貌があらわれ、ついに僕たちと対峙した。 ガギガギと顎を鳴らし続けている。これが怒りのサインだというのは、コミュニケーションが取れずとも理解できた。 フォルネが遠方から術を使い、ニャルラが前線でかく乱をする作戦だ。 「いきます!」 フォルネが優雅な動きで術式を唱える。 かざした手の先に、光が集約し、氷の槍が形づくられた。 「これが会得した西法術【氷槍】です!」 鋭く発射された氷の槍は、蜂竜の女王の分厚い皮膚を貫き、長い胴体部分に突き刺さった。 これならこの巨大な女王にも通用する。 「くらえ、どくどくのツメ!」 ニャルラは目一杯ジャンプするけれど、やっぱり女王の頭にはとても届かなかった。 突き刺さった氷の槍の付近に接近すると、その鋭い爪を振るう。 それは腹部の比較的柔らかな皮膚を裂き、裂かれた部分がたちまち変色する。 蟷螂蜂毒は即効性の毒なのだ。 蜂竜の女王のギチギチ音が悲鳴のように変化した。明らかに効果がある。 蜂竜の女王は、その巨大な脚でニャルラを踏みつけようとする。 脚を持ちあげた時には余裕ぶっていたニャルラだが、踏み下ろしの動作に顔色を変えた。 予想を超えて鋭い動きだったからだ。素早い反射ですんでのところで身をかわす。 さらに蜂竜の女王は、連続しての攻撃を繰り出す。 次の脚が持ちあげられ……そしてそれはニャルラではなく、王蜜を運んでいる運搬係の蜂竜に向けられた。 運搬係の蜂竜は、これまで何の反応も示さず黙々と作業していたが、さすがに女王の攻撃に対しては回避行動を取り、なんと、ギリギリでかわした。 「見境ないですね。怒りで我を忘れているようです」 「それより、あの攻撃よけるなんて、あの蜂竜すごいの。一緒にたたかえないかな」 「それはさすがに無理でしょう」 戦いはまだ始まったばかりだ。 「ニャルラ、毒を塗り直すからこっちへ」 「あいあいさ〜」 僕たちが次の蟷螂蜂毒の準備をしている間にも、フォルネは【氷槍】を飛ばし、蜂竜の女王へのダメージを重ねている。 「タイガさま、そちらに向かっています。気をつけて」 その声にニャルラがいち早く反応し、すぐに前線に戻った。 そこに蜂竜の女王からの、鋭い爪蹴りが飛ぶ。 ニャルラは素早い反射で回避しようとするも避けきれず、軽々と蹴り飛ばされてしまい、壁に打ちつけられた。 よろよろと立ち上がる。 その合間にも蜂竜の女王は猛り狂い、運搬係の蜂竜が一匹、犠牲となった。 「ニャルラ、無事ですか!?」 「まだまだ。へっちゃら〜」 ふらつきながらも、まだ軽口を言えている。 しかし、ニャルラへのダメージはフォルネの集中力を奪った。 西法術を唱えるのだが、【氷槍】がうまく生成されない。 ニャルラもなんとか態勢を立て直して攻撃を試みるが、動きに精彩を欠き、ぜんぜん当てられない。 蜂竜の女王は、まるで意に介さずに前線のニャルラを蹴散らしにかかる。 今度はニャルラはどうにか避けた。付近にいた蜂竜がまた一匹犠牲になった。本当に誰彼かまわず攻撃をしている。 「まずいです。後がありません」 フォルネの口調から焦りがにじむ。 「私の魔力では、【氷槍】は、あと一発が限度です」 蜂竜の女王は、まだまだ余力を残している。 フォルネの【氷槍】がなくなれば、あとはニャルラの毒攻撃頼みだ。 なにか、ほかに方法はないか、考えなければ。 「フォルネ、落ち着いて。今はその魔法にだけ集中するんだ」 しかしフォルネは、あと一発しか打てないこと、絶対に外してはならないことへの緊張感から、まるで立ち直ることができていなかった。 フォルネの端正な顔立ちに、隠しようのない焦りが浮かび上がっている。 そしてフォルネの唱える術式は、光を集めて氷の槍を形成しつつあったが、それが途中で霧散した。 術は、効果を現さなかった。 「あ……」 フォルネは、がっくりと両膝をついた。 [プレイログ] 蟷螂蜂毒は事前に準備していたが、物語の展開上ここで準備描写を入れた。 第1ラウンド フォルネの攻撃【氷槍】 サイコロの出目3+魔術点4=7 命中 蜂竜の女王の生命点7→6 フォルネの魔術点4→3 ニャルラの攻撃 サイコロの出目5+技量点1 命中 蜂竜の女王の生命点6→5 毒の効果切れる 蜂竜の女王の攻撃 1回目 ニャルラの回避 サイコロの出目3+技量点1 命中 【素早い反射】で振り直し。サイコロの出目4+技量点1=5 回避。ニャルラの器用点8→7 2回目 蜂竜(雑用)の回避 サイコロの出目5で回避。 第2ラウンド フォルネの攻撃【氷槍】 サイコロの出目4+魔術点3=7 命中 蜂竜の女王の生命点5→4 フォルネの魔術点3→2 ニャルラ 蟷螂蜂毒を再装填 蜂竜の女王の攻撃 1回目 ニャルラの回避 サイコロの出目3+技量点1=4 命中 【素早い反射】で振り直し。サイコロの出目1 ファンブルで命中 ニャルラの生命点9→7 ニャルラの器用点7→6 2回目 蜂竜(雑用)に命中 第3ラウンド フォルネの攻撃【氷槍】 サイコロの出目1 ファンブルで失敗 フォルネの魔術点2→1 ニャルラの攻撃 サイコロの出目1 ファンブルで失敗 蜂竜の女王の攻撃 1回目 ニャルラの回避 サイコロの出目4+技量点1 回避 2回目 蜂竜(雑用)に命中 第4ラウンド フォルネの攻撃【氷槍】 サイコロの出目1 ファンブルで失敗 フォルネの魔術点1→0 ●アタック01-14 蜂竜の女王との決着 一方、ニャルラも攻めあぐねていた。 蜂竜の女王の一撃は強力だ。うっかり当たるだけでも命を削り取られかねない。 さきほどのダメージによるふらつきからは回復してきたものの、女王の攻撃を警戒しての動きでは、どうしても決定的な隙を突くことができなかった。 逆上した女王の無差別攻撃は、いたずらに蜂竜の数だけを減らしてゆく。 僕は、なにかないかと周囲を見回していた。 このままではジリ貧だ。この状況を打開できる鍵は、どこかにないか。 この空洞の隅には、馬車などの残骸が放置されていた。 明らかに場違いだ。馬車の乗り手がこの中まで来るのは考えにくい。 きっと、外の蜂竜たちが資材かなにかのために持ちこんだものに違いない。 その中に、なぜか巨大な丸太が転がっていた。 あの丸太をぶん回せば、いかな蜂竜の女王といえど、ダメージは通りそうだ。 僕は、筋肉ムキムキになって丸太で女王に殴りかかる自分を夢想し、その妄想を振り払った。 ダメだ。現実を見ろ。 次に目についたのは設置型のクロスボウだ。 手に持って発射するクロスボウと違い、サイズも大きく、威力も段違いだ。 これなら、なんとかなるかもしれない。 僕はクロスボウのところに向かい、動きを確かめる。 固いし重いが、ちゃんとまだ動く。 装填する矢も何本か落ちている。 「フォルネ、手伝って!」 声をかけるが、フォルネは反応しない。 僕が、やるしかない。 僕は、斜めにかしいでいる固定型クロスボウを全身の力を込めて押し、土台を水平に設置した。 ずりずりと引きずりながら、方向を蜂竜の女王の方へと向ける。 そのとき、こう着状態にあった戦場に動きがあった。 ニャルラの攻撃が、ついに蜂竜の女王を捉えたのだ。 またしても柔らかな腹部を狙った攻撃が見事にヒットする。毒による効果もあるのだろう。蜂竜の顎音が、まるで苦しみに歪むように変化した。 そしてそのまま、蜂竜の全体が灼熱の赤色に変貌してゆく。 黄金色の室内に、赤熱化した蜂竜の巨体のコントラストは、目に優しくない。 そして熱い。女王の身体全体が、熱を発しているのだ。 蜂の騎士が炎の舌で攻撃していたことを思い出す。蜂竜は炎を操るのだ。 腹部に突き刺さっていた、フォルネが放った氷の槍が白煙を上げて溶け出し、そこからドロドロと体液があふれ出している。 熱によって部屋の中に甘ったるい匂いがさらに充満し、蜜の中を泳いでいるみたいだ。 もはや蜂竜の女王は、蜂でも竜でもなく、巨大な怪獣に見えた。 これまでも無差別に攻撃していた女王だが、完全に自分を見失い、我を忘れている。 素早い動きでこの場にいるすべてのものを排除しようとする。 「フォルネ! 避けて!!」 失意の底に沈むフォルネにも容赦なく攻撃が向けられる。 さすがに女王の深刻な変化を見過ごすようなフォルネではない。 女王の手あたり次第の攻撃をギリギリで回避しながら、僕の動きにようやく気づいた。 「タイガさま、それは……」 「この固定式のクロスボウで、女王を射貫くんだ。僕ひとりの力じゃ足りない。力を貸して」 「は、はい……!」 一方、至近距離で女王に攻撃を加えたニャルラの方は、赤熱化した女王の熱波をまともに受けてしまった。 「あっつぅ〜〜い!」 女王から距離を取って転げまわる。 そしてあろうことか、水のかわりに蜂竜の王蜜だまりに突っ込んだ。 体じゅうべとべとになりながら、それでも熱さましにはなったみたいだ。 女王はグゴゴゴと、苦しげな顎音を鳴らす。 僕は気づいた。女王は怒りのあまり、自身の赤熱化を制御しきれていない。 あの熱は、女王自身をも傷つけている。そしてそのことで女王は、さらに怒りを増幅させている。 これまで女王の巨体へ与えたダメージはわずかで、まるで勝ち目が見えなかった。 けれど、女王が自分で自分を傷つけているのなら、勝機はある。 「ニャルラ。僕たちがクロスボウを準備する間、少しだけ時間を稼げる?」 「たいが、アタイを誰だと思ってるのっ。できるに決まってるじゃない」 そう言いながら、僕の方に向けて駆け寄ってくるニャルラ。 言葉と行動が合ってないけど、どういうこと? 「その前にまたどくちょ〜だい。さっきの攻撃で切れちゃった」 ああ、そういうことか。 僕はニャルラの爪に蟷螂蜂毒を塗布する。 「うう〜。お〜みつで全身甘いから、舐めたくなっちゃう〜」 「ニャルラ、がまんがまん」 「わかってる〜」 ニャルラは元気を取り戻して蜂竜の女王に向かっていった。 僕とフォルネは協力して、照準を微修正し、固定式クロスボウの弓を装填する。 この一撃で、決める。 僕たちの視線の先では、ニャルラが暴れる蜂竜の女王を必死にけん制していた。 当たらなければ良い。しかし一撃でも食らおうものなら、下手をすればそれだけで命を奪われかねない重い一撃。 それでもニャルラは、女王を翻弄することを楽しんでいるようにさえ見えた。 しかし、ついに女王の爪がニャルラを捉えた。 「ぎゃっ」という悲鳴とともに引き裂かれ、地面に投げ出されるニャルラ。 これまでの激戦のダメージの蓄積が一気に出たのか、息も絶え絶えだ。 そんなニャルラを、女王は容赦なく踏みつけにゆく。 「ニャルラぁ!」 フォルネが叫ぶ。フォルネは以前、【空蝉】でニャルラの幻影を作って割り込み、回避させたことがある。 けれども魔力が底をついた今、その方法が使えないことを悔やんでいるのだ。 ニャルラは最後の力を振り絞るようにして、すんでのところで転がって踏みつけを避けた。けれど、ふらふらだ。これ以上戦わせられない。 「ニャルラ、ありがとう。あとは僕たちがやる。フォルネ、用意はいい?」 「いけます」 蜂竜の女王の胴体を狙いたい。そこが一番柔らかいからだ。しかし重いクロスボウの角度はもう修正できない。 僕は弦をギリギリと引いてがちっと固定させる。引き金を引くのはフォルネの役目だ。 ニャルラが撤退したことで、蜂竜の女王の視界にいるのは僕たちだ。 蜂竜の女王はまっすぐ僕たちを見た。斜線は完全に通っている。これなら。 ところが、蜂竜の女王は赤熱化した火炎の球のようなものを飛ばしてきた。 いけない。これがクロスボウに当たって角度が変わったら、全部やり直しだ。 「させません!」 そこにフォルネがクロスボウの前に割って入り、自分の身体でそれを防ぐ。 「ぐ……ああ……」 「フォルネ!」 フォルネは自身に受けたダメージにふらつきながら赤熱の球をはじくと、がっくりと膝をついた。 その向こうには蜂竜の女王が至近に迫っていた。 「タイガさま、今です!」 「!! うん」 ニャルラが、フォルネが、命がけで作ってくれたチャンス。 僕は力任せに重い引き金を引いた。 クロスボウの太い矢は、ものすごい勢いで女王めがけて射出され、氷槍が刺さっていた傷痕に命中した。 通常だったら貫通していてもおかしくない攻撃だ。しかし女王の腹部が長く伸びているために、完全に胴内にめりこむ形となった。 蜂竜の女王の身体が大きくのけぞり、次に巨体が地響きを立てて倒れてゆく。 巨大な手足をもぞもぞさせながら、縮こまっていく。死に際の虫を思わせる動き。 巨大なるがゆえに、生命活動を停止するには至らないが、もう動いて戦う力も意志もないことは明らかだった。 手足を丸めた蜂竜の女王は、思った以上に小さく見えた。 [プレイログ] 第4ラウンド(続き) ニャルラの攻撃 サイコロの出目1 ファンブル 蜂竜の女王の攻撃 1回目 ニャルラの回避 サイコロの出目6クリティカル回避 2回目 蜂竜(雑用)に命中 第5ラウンド フォルネ 固定クロスボウの準備(位置修正) ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル命中 蜂竜の女王の生命点4→3 連続攻撃は毒の効果なくダメージが通らないためキャンセル。 生命点が3点になり、蜂竜の赤熱化。攻撃回数が2から4に。 蜂竜の女王の攻撃 1回目 フォルネの回避 サイコロの出目5 回避 2回目 ニャルラの回避 サイコロの出目1 ファンブルで命中 【素早い反射】で振り直し。サイコロの出目1でファンブル ニャルラの生命点7→5 ニャルラの器用点6→5 3回目と4回目 蜂竜(雑用)ともにサイコロの出目5で回避 赤熱化の反動により蜂竜の女王の生命点3→2 第6ラウンド ニャルラ 毒の準備 フォルネ 固定クロスボウの準備(弓の装填、弦を引く) 蜂竜の女王の4回攻撃 1回目 ニャルラの回避 サイコロの出目1でファンブル 【素早い反射】サイコロの出目4+技量点1=5 回避 ニャルラの器用点5→4 2回目 フォルネの回避 サイコロの出目1 ファンブル 命中 フォルネの生命点5→3 3回目 蜂竜(雑用)が回避 4回目 蜂竜(雑用)に命中 赤熱化の反動により蜂竜の女王の生命点2→1 第7ラウンド フォルネの攻撃 サイコロの出目3+技量点2 命中 蜂竜の女王の生命点1→0 (演出上、引き金を引くのはタイガですが、フォルネの攻撃の扱いです) 次回、この冒険の結末。そして……。 【フォルネ(妖狐) レベル13 技量点:2 生命点:5→3/5 魔術点:4→0/4 従者点:8】 【装備】(人間形態でのみ効果あり) 片手武器 木盾(生命点+1) 鎖鎧(生命点+1防御ロール+1) <スキル> 【変化】人間形態に変化する。 【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。 【西法術:氷槍】魔術ロール成功で2点ダメージ 【持ち物】 1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。 2草避けのお守り 植物によるアクシデントへの対応力を上げる。 【ニャルラ(魔猫) レベル13 技量点:1 生命点:9→5/10 器用点:8→4/8 従者点:5】 【装備】なし <スキル> 【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない 【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。 【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。 【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。 【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。 【温存経験点】1 【タイガ 従者 荷物持ち】 【持ち物】 食料0 金貨5 1 蟷螂蜂毒 3回分→0 追加ダメージ1 巨大樹の迷宮P56 2 ロープ 3 オオトカゲの宝石(金貨18枚分) ■登場人物 タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。 フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。 ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。 コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。通称コニー。オウカンワシにさらわれたところをタイガたちに救われる。 ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。コニーの父親。 クックロッド コーネリアス商会の料理人。蜂竜の王蜜取得に情熱を燃やす。 キャティ 竜人の村の道具屋。初出はゲームブック「百竜の森」。 カトリーナ 竜人の村の女戦士。蜂竜討伐の遠征中。 ナイトさん ヘラクレスナイト。カブトムシ形態から人間形態に変形できる竜人の村への協力者。その動機はキャティへの一目ぼれ。 蜂竜の女王 巨大なクリーチャー。巣への侵入者に対し怒りで我を忘れ、赤熱化し暴走する。 ■作品情報 作品名:蜂竜の森「ローグライクハーフ」d33シナリオ 著者:ロア・スペイダー 監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ(「蜂竜の森」収録) https://ftbooks.booth.pm/items/5361362 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! 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