━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.7 (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆様、こんにちは! 本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。 冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロ。そして従者に「面白いこと」を愛するコビット族のヨンという布陣で進んでいきます。 前回vol.6では、踊る骸骨たちの輪の中に据えられた宝箱を「盗む」というミッションに挑戦した三人。〈おどる剣〉クロが持つダンスの知識によって、トラブルにもならずお宝(といっても金貨3枚しか入っていなかったのですが)の獲得に成功しました。サン・サレン伝統のダンスを見事にこなしたクロ。そしてシグナスが見た幻影。不思議な〈おどる剣〉の過去の断片が浮かび上がってきました。 次の車両では何が待ち受けているのでしょうか? なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。 ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。 前口上はこれでおしまい。 予測不可能な列車の旅へ、いざ出発と参りましょう! ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨14枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料2食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:6 ・器用点:3 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし ◇ [7号車]33:巨大な刻印はさみをもった魔物車掌 かしゃり、と車両前方の扉が開く音がする。 今までには無かったことだ。シグナスとクロ、それにヨンも素早く武器を構える。 客車の中扉が開くと、そこには魔物が立っていた。 「よ〜こそ! この怨霊列車にご乗車いただきありがとうございます♪ 私は当列車の車掌でございます。ただいまより切符を拝見したく存じま〜す」 車掌の服の下は黒いモヤで構成されており、瞳だけが怪しく光る。その手には不思議なはさみがあり、そのはさみは下手な怪物の口より大きく見えるから、人体でも易々と切り取れるだろうと考えた途端に、シグナスの全身にぞわりと鳥肌が立った。 (※何と、ここで初めて〈怨霊列車〉側の人物が登場です。いよいよ大詰めという感じがしてきましたね! この何となく9がみっつ並ぶ列車に兄弟がいらっしゃいそうな車掌さんですが、凶悪なはさみをお持ちです。切符を切るための刻印はさみとのこと。戦うこともできますが、ここは反応表を振ってみます。出目は1、【歓待】。よし、これを望んでいました!) 「シグ、シグ、切符出して!」 ヨンに小突かれて、慌ててシグナスも招待状を取り出す。 「おお、ようございます。こちらの、えー、お客様のペットでございましょうか? まあ今回は、無賃乗車とは致しませんのでね、次回からは切符を買っていただけますと」 「ペットだと! 俺は」 「黙ってクロ」 シグナスは空中の〈おどる剣〉を引き戻して鞘につっこんだ。 「ペットです。僕の」 「あい、よろしゅうございます。しかしシグナス様」 招待状の縁をパチリと切って印をつけると、車掌はポケットにはさみをしまう。その服の下のもやが動いて、首を傾げたように見える。 「何でしょうか」 黄色く光る車掌の目が、にっこりと笑みを形作った。化け物なのにここは一緒なんだな、などとシグナスは妙なことを考えてしまう。ヨンの影響かもしれない。おもろ! 「シグナス様は生身の人間でございますね。その、私の一身上の都合でありまして、大変申し上げづらいことではございますが、お願い事があるのです」 車掌の両手は、白くて薄い上等な手袋に包まれている。それが、宙に浮いて揉み合わさる形になった。 (もじもじしてるってこと?) 卵なれど聖騎士たる者、如何なる異形に遭遇しても動揺してはならない。そう自らに言い聞かせたものの、恥じらう化け物に遭遇したのは初めてである。シグナスは少しばかり化け物の車掌に好感を抱いた。しかしその思いは、続く言葉によって風の前の塵の如く儚い妄想であったと突きつけられる。 「ああどうかシグナス様、お身体の一部を切らせていただけませんでしょうか? このハサミで、パッチン! パッチン! と。ご乗車記念の刻印にもなりますよ♪」 「お、おもろ……」 「おもろじゃないですヨンさん!」 んふふ、と車掌は笑った。 「ご安心くださぁい♪ オーナーと違って殺しはいたしませんので。さあさあ、ご遠慮なさらずに」 「シグ、ここはいっちょ度胸だよお!」 「ヨンさん!? 一体どっちの味方なんですか」 「え、車掌さんのおもろに共感の嵐だけど?」 「おおーっほっほ、分かっていただけますかヨン様。うつろう人の身のその柔肌に永遠の傷を残す。その唯一無二の感触がですねえ」 「うん、おもろ!」 「はい、面白うございますでしょ♪」 イェーイ、と手のひらを打ち合わせて喜ぶ車掌とヨン。シグナスはコビットという種族の難しさに、今更ながら頭がこんがらがって来た。 (※さて、反応表が【歓待】だった場合、車掌はこちらの肉体をパッチンする代わりに、何故か「この冒険が終了するまで一度だけ判定時のファンブルをクリティカルにすることができる」という効果を付加してくれます。具体的にどう助けていただけるかは謎ですし、職業上の特権を濫用しているような気もしますが、これから最終イベントに向かうには非常に頼もしい効果ですね。生命点2を支払わないといけないので対象はシグナスかクロ。技量点0のシグナスくんにお願いしたいところですが……と冷静に計算したところで、心情的に十二歳にプレイヤーの選択で傷を残すことを躊躇って一ヶ月ほど筆が止まったりしたのですが……ここは彼に乗り越えていただくことにして、対象はシグナスとして進めましょう) 鞘の中に押し込められたクロが、ぶぶぶぶぶと震えて怒りを露わにする。シグナスが柄にかけた手を離せば、たちまち車掌に襲いかかるだろう。ここで戦闘はしたくない。何より、この<怨霊列車>におけるそれなりの偉い人なのだ。怒らせない方がいい。たぶん。 (というか、初めて会ったんじゃない? この列車で働く人…‥人じゃないけど) シグナスは、巣を突かれた蜂のようにぶんぶん唸る、クロを納めた鞘をぎゅうと抑えつける。そして意を決して、 「分かりました」 「おお」 「でも! 切ったら先に行かせてください。約束ですよ」 「勿論でございますとも! さて、どこがよろしいでしょうか。よく見えて、しかも殺さずにいられるところ。そうだ」 車掌はポケットからはさみを取り出すと、電撃的な不意打ちでシグナスの耳たぶをぱちんと挟んで切り取った。 「うぁっ!」 頭の中に雷を流し込まれたような衝撃が走る。痛いのではなく、何か別のもの……この<怨霊列車>に属するものがシグナスの右耳から押し入って、左耳から突き抜けて行った気がした。 くらくらと目が回る。下を向くと床にぱたぱたと血が落ちた。 「す……ばらしい! 人間の、これほど若いお方を切ったのは初めてですが、おお何と生命力に溢れて華やかな手応えなのでございましょう」 「いいなあ、おもろで。ねえ車掌さん、はさみ貸してよ!」 シグナスが手を離した隙をついて、クロが猛然と鞘の外に飛び出す。怒りのまま、ヨンの頭に自身の柄をドカンと打ちつけた。 「痛いっ」 「いかれコビットめ! お前なんぞをシグナスに同行させるのではなかった!」 「おお、ペットはケージの中から決してお出しになりませんよう」 「ペットではないと言っておろうが、この無礼もむがーっ」 シグナスは再びクロを鞘の中に押し込む。むがむがむがむがと罵倒が聞こえるが、ともかく主導権は取り戻した。 「これで、良いですか」 車掌はにっこり笑う。 「ええ、ご協力ありがとうございます。久しぶりのお客様に昂ってしまい、申し訳ございませんでした」 帽子のつばにちょいと指をかけて敬礼の代わりとし、車掌はシグナスたちが過ぎて来た車両後方へと歩いて行った。 「シグ? 大丈夫? 新たな快感に目覚めた?」 「目覚めてないです」 「それは残念。だけどシグ、なっかなかイカしてるよ」 ヨンがウィンクしてみせる。シグナスは切られた耳を触り、早くも不穏な腫れを帯び始めた耳たぶの熱さと共に、鋭い切れ込みの感触をなぞった。 (これは、確かに) 十二歳の心が大きく疼く。 英雄には、インパクトのある逸話と外見が組み合わさるものである。 例えば主人ノックスの長い前髪と三白眼と無表情の組み合わせが、不吉で暴力的な噂に尾ひれを付けるように。だから僕にもひとつくらい勲章の傷が、それも良く見えるところにあったっていいじゃないかとシグナスは思う。 (ギザ耳のシグナス? それじゃあんまり格好良くないかも。どんなのがいいかな……?) シグナスは騎士たちの仲間入りを果たしたような気分になって、ヨンにつられてか、こんな時なのに少しだけ嬉しくなってしまったのだった。 ◇ 今回のリプレイはここまでです。 〈怨霊列車〉には車掌さんがいらっしゃったのですね。しかもかなり癖のある……。この車掌さんを雇っている列車の主にもかなり特殊な好みがありそうで、シグナスくんが無事に攻略できるか、改めてドキドキしてまいりましたよ。 さてギザ耳になったシグナスくん。生命点の回復のために食料を使っておきましょう。食べたというよりは、ワインがありましたから耳の傷を消毒したという感じでしょうか。これで今回の2点減少分をカバーできました。 最終イベントまで車両はあとひとつ。次はどんな驚きが飛び出すことやら! それでは、次の車両でお目にかかりましょう。 良きローグライクハーフを! ◇ (登場人物) ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。中二病に罹患する年頃ではある。 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。断じてペットではない。 ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。 ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。 ・グロリア…サン・サレンの女騎士。アンデッドの部下を引き連れ、様子がおかしい。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。