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2026年7月22日水曜日

第6回【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4928

第6回【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ ※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「蜂竜の森」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。 ぜろです。 ローグライクハーフ「蜂竜の森」の冒険譚です。 妖狐のフォルネ、魔猫のニャルラ。二匹のお供を連れたタイガの冒険です。 今回の目当ては「蜂竜の王蜜」。 コーネリアス商会の料理人クックロッド氏の依頼による、危険な蜂竜の巣でしか取れない食材採取の冒険です。 蜂竜と戦う竜人やヘラクレスナイトの協力を得て蜂竜の巣へと侵入。 そこで怒りに我を忘れた蜂竜の女王との戦いになり、ギリギリの戦いの中、勝利したのでした。 今回は冒険のその後を描きます。 【フォルネ(妖狐) レベル13 技量点:2 生命点:5→3/5 魔術点:4→0/4 従者点:8】 【装備】(人間形態でのみ効果あり) 片手武器 木盾(生命点+1) 鎖鎧(生命点+1防御ロール+1) <スキル> 【変化】人間形態に変化する。 【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。 【西法術:氷槍】魔術ロール成功で2点ダメージ 【持ち物】 1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。 2草避けのお守り 植物によるアクシデントへの対応力を上げる。 【ニャルラ(魔猫) レベル13 技量点:1 生命点:9→5/10 器用点:8→4/8 従者点:5】 【装備】なし <スキル> 【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない 【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。 【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。 【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。 【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。 【温存経験点】1 【タイガ 従者 荷物持ち】 【持ち物】 食料0 金貨5 1 ロープ 2 オオトカゲの宝石(金貨18枚分) ●アタック01-15 ニャルラと蜂竜の王蜜 ここは蜂竜の巣の内部。 薄い金色の照明に照らされたような洞内。 天井の六角形の巣穴からぽたぽたと垂れている蜂竜の王蜜は、池を形づくっている。 巨大なクリーチャー、蜂竜の女王に、激戦のすえ勝利した。 蜂竜の女王は体を横たえ、手足を縮めた状態で丸まっている。 手足はもぞもぞと動き、顎もガチガチと鳴っているので、生きてはいる。 けれどもう、何か行動を起こそうという様子は見られない。 赤熱化した身体が熱を発し、密閉された巣の内部はどんどん温度を上げている。 それにともない蜜の甘い匂いが充満し、くらくらするほどだ。 「フォルネ、しっかり。立てる?」 「はい。ええ、大丈夫です」 僕は、身を挺して僕とクロスボウを守ってくれたフォルネを抱き起こした。 少年の姿のフォルネの髪は乱れ、和装の胸のあたりは赤熱化した球の直撃を受けて黒く焦げていたが、どうにか立ち上がる。 そこへニャルラも駆け寄ってきた。 「じゃまものやっつけたから、はやくお〜みつ、もってこ!」 ニャルラはまだまだ元気だ。 さっき蜂竜の女王の攻撃をもろに食らって、今にも死んでしまうのではないかと心配したけど。 「げんきげんきっ。あと半分くらいだいじょ〜ぶだよっ」 あと半分ってのはよくわからないけれど、ニャルラがとにかくタフネスだってことはわかった。 「それよりフォルネのほうがだいじょうぶ? なんだか息もあらいし、顔もまっかだし」 たしかにフォルネのダメージは深刻だ。けど顔はダメージというより、赤面しているように見えた。 「だ、大丈夫……です」 フォルネはニャルラに顔を見られないようにか、僕の胸により深く顔をうずめた。 なぜだか、フォルネの心臓の鼓動の高鳴りが聞こえるような気がした。 「あ、そだ。奥の部屋で、お〜みつがまゆみたいなのに入ってるの。あれならかんたんに運べそう」 そういえば、ここの王蜜たまりの池から、運搬係の蜂竜が、王蜜を吸い上げては運んでいた。 ニャルラが見つけたのは、きっとその王蜜の貯蔵庫だ。 「だったら、そっちの王蜜を運び出そう」 僕はそう提案し、そちらに移動しようとした。 その時、背後から高熱を感じた。見ると、蜂竜の巣が、燃えはじめていた。 女王の赤熱化の影響か、フォルネがはじいた火炎の球が燃え移ったのか。 材質を考えると、この巣は非常によく燃えるのではないか。もう時間がない。 「急ごう」 僕たちはニャルラの案内で、貯蔵庫へと移動する。 そうしている間にも火はすごい勢いで燃え広がっている。 ゆっくりと王蜜を採取している時間はない。 僕とフォルネは手早く王蜜を手に取る。 「さあニャルラ、行くよ!」 なんとしてもひとつでも多く追加で持っていこうと粘っているニャルラにそう声をかけ、甘く焦げた匂いが充満する蜂竜の巣から脱出した。 僕たちが外に出ると、巣の外観は、もうすっかり火の手に覆われていた。 一応ここは森の中でも開けた場所だし風もない。 巨大樹はがっしりとした巨体なので、飛び火にさえ注意すれば燃え移ることはなさそう。 中に残った働き蜂の蜂竜たちは、外に出てくる様子はない。そうした判断もできないのだろうか。 ごうごうという炎の音に混じり「ギガガガガ」という、ひときわ大きな顎を鳴らす音が響いた。 蜂竜の女王の断末魔だろう。 僕たちは、炎に包まれた蜂竜の巣をじっと見つめていた。 と、ニャルラが急に僕によじのぼり、頬をなめはじめた。 「たいがのほっぺ、あま〜い」 「ニャルラ、自分だって王蜜でべたべたなのに、なんで僕なの?」 「アタイのおてて、どくどくなのよ。はやくキレイにしてよ〜」 「あ、そうだったね、ごめんごめん」 僕はニャルラを地面におろすと、丁寧に前脚を布でぬぐっていく。 「やったな。まさか巣ごと駆除してしまうとは思いもしなかったぞ」 そこに、ナイトさんの引き締まった声が降ってきた。 僕たちはそこでようやく周囲を見渡した。 外の戦闘は終わっていた。そこかしこに蜂竜が倒れており、竜人の戦士たちが、互いの健闘をたたえあっているところだった。 そして、人間形態に変形したナイトさんが、僕たちの前に降り立った。 「君たちの実力は承知していたつもりだった。しかしこれは偉業というほかないな」 「私からも感謝の言葉を贈らせてもらおう。君たちは我らの村の救い主だ」 竜人の女戦士カトリーナさんもそんな風に言ってくる。 さらにほかの竜人の戦士たちも僕たちの周りに集まってきて、口々に感謝の気持ちを伝えてきた。 「お供のふたりはだいぶ傷ついているようだ。ここはひとつ、私が先に村まで送っていこう。君たちのサイズならたぶん飛べるだろう」 ナイトさんがそんなことを言い出した。 「いえ、私はタイガさまのおそばに……」 フォルネが断わろうとする。 「大丈夫だ。カトリーナをはじめ竜人の戦士たちがいる。タイガ君を無事に村まで送り届けることは保証しよう」 「タイガくんのことは私たちに任せておいて。それより早く村に行って手当を受けた方が良いわ」 そう言われては、フォルネも折れるしかなかった。 ニャルラの方は、ナイトさんに乗って空を飛べることに大はしゃぎだ。 ナイトさんは二匹を連れて、先行して飛び去っていった。 「彼は、とにかく早く村に戻って蜂竜の脅威が去ったことを報告したくて仕方ないのね、私の妹に」 飛び去るナイトさんを眺めながら、カトリーナさんがそう言った。 それから僕たちは、特に大きな危険に遭遇することもなく竜人の村に戻った。 先に到着したフォルネとニャルラはすでに手当を受けていた。 二匹によればナイトさんは村長とキャティさんの前で、へにょへにょした奇妙な踊りをしながら蜂竜退治の報告をしたらしい。 「妹の前では緊張しすぎていつもそうなんだよ。いつになったらくだけた態度が取れるようになるのかね」 カトリーナさんは呆れていた。 僕たちは竜人の村では歓待を受け、数日間身体を休めることができた。 そうしてフォルネとニャルラの体力がすっかり回復した頃、僕たちは村をあとにした。 さあ、カラメールに戻って、コーネリアス商会で依頼の達成と顛末を報告しよう。 [プレイログ] 蜂竜の王蜜2個入手。 ニャルラが追加で1個の入手チャレンジ。幸運点で目標値は4。失敗すると火に巻き込まれダメージ。 サイコロの出目3+技量点1=4 成功し、蜂竜の王蜜を追加で1個入手。 ●アタック01-16 クックロッドの歓喜 コーネリアス商会に戻ると、まさにクックロッドさんが来ているところだった。 クックロッドさんは料理人。僕たちはクックロッドさんの依頼で蜂竜の王蜜を採集に行ったんだ。 クックロッドさんは険しい表情をしている。なにかあったのかな? 「討伐隊が森へと向かったのですが、蜂竜とまったく遭遇しなかったそうなのです」 それはそうだろうね。竜人の戦士たちが、外を徘徊する蜂竜たちを駆逐して回っていたから。 巣を失った蜂竜は、散り散りになってどこかへ行ってしまった。 「何者かによって駆除されたのか、あるいはほかの地へと移動してしまったのか。なんにせよ、これで蜂竜の王蜜は手に入らなくなってしまったのです」 クックロッドさんは目に見えて落胆していた。 僕とフォルネ、ニャルラは顔を見合わせた。 僕たちが竜人の村で数日間過ごしている間に、そんなことになっていたのか。 「カラメールに出されていた『非常事態宣言』もまもなく解けるでしょう。君たちも森に行ってくれて、ありがとう」 これは、今すぐに伝えた方がいいよね? 「アタイたち、お〜みつ取ってきたのよっ」 ニャルラがすましたドヤ顔で宣言する。 僕は王蜜の入った繭を3つ、取り出した。 「蜂竜の巣は燃えちゃったんで、これだけなんですけど」 クックロッドさんは最初、僕たちが何を言っているのかわからないといった顔をしていたが、目の前の王蜜の繭を見せられて、じわじわと現実を理解したらしい。 「おお……おお……! そんなまさか、信じられない!!」 これ以上ないほどに全身で喜びを表現していた。 「伝説の食材をこの手にできるなんて。討伐隊が行く前に、君たちが依頼を達成していたとは。ありがとう。ありがとう!」 クックロッドさんはそう言って、王蜜の繭に抱きついたのだった。 **** 蜂竜の女王を討伐したことを報告すれば、多額の報酬が約束されているという。 けれども僕たちは、やめておくことにした。 蜂竜の巣が消えたことで「我こそは蜂竜を討伐した」という者たちが後を絶たないらしい。 そんな中で僕たちが討伐報告に行っても、きっと信じてもらえないだろうし、証明する方法もない。 そんな僕たちを見かねてか、ヴァンダービルドさんは商会から、王蜜の買い取り料金のほかに報酬として多額の金品を用意してくれた。 僕は、そんなにはもらえないと辞退しようとしたけれど、断らせてもらえなかった。 聞くところによると蜂竜の王蜜は、コーネリアス商会主催の晩さん会で使用されたらしい。 もちろん料理を取り仕切ったのはクックロッドさん。メインディッシュの「ドラゴンステーキのロイヤルソースがけ」に王蜜が使用されていて、大評判だったとのこと。 晩さん会に参加していたコニーさんが教えてくれた。 「それでね、タイガくん、フォルくん、ニャルちゃん」 コニーさんが別室に僕たちを案内する。 そこにはクックロッドさんが待ち受けていて、テーブルの上と下とに、豪華なごちそうが並べられていた。 忙しいはずのヴァンダービルドさんまでおり、僕たちの入室を待ちわびていたようだ。 「せっかくの王蜜、採ってきた皆さんにも味わっていただきたくて、用意させていただきました」 「本当は君たちを晩さん会に招待したかったのだがね」 「ね、ね、すごいでしょう。晩さん会の料理を再現してもらったのよ」 これは……すごい。 フォルネは絶句している。 ニャルラは瞳に星くずを散らし、全身で喜びを表現している。 「ど、ど、ど……どらごんすてーきっ!!」 「さあどうぞ、召し上がれ」 ニャルラは床の料理に突進していき、さっそくメインのドラゴンステーキにかぶりついていた。 僕はテーブルにつく。フォルネは少年の姿に【変化】し、僕の隣に着席した。 蜂竜の巣の一件からフォルネは、僕の前で人間の姿になることに、それほど嫌がる様子を見せなくなった。 とはいえ、積極的に人間の姿をすることはない。 僕たちはクックロッドさんの料理を、心ゆくまで堪能したのだった。 ●幕間 次の旅へ カラメールには、すっかり長期に滞在してしまった。 その間にコーネリアス商会の伝手で、僕の探し人についての情報を集めてもらったけれど、有力な手掛かりは得られないままだった。 そろそろ、旅立ちのときだ。 けど僕には、このところずっと考えていたことがあった。 旅や冒険には危険はつきものだ。ときにはそれが命がけになることもある。 それはわかっている。 それでも、今回の冒険はリスクがあまりにも高すぎた。 僕自身、川に引きずり込まれたときには本当に危ないところだった。 それに蜂竜の女王とも戦わなければならない状況になってしまった。 勝てたのは偶然が重なった結果だ。まともに戦って勝てる相手じゃない。 僕だけならともかく、フォルネとニャルラが僕の前で死んでしまうなんてこと、考えたくない。 そんな考えを僕が話し始めたら、全部言い切る前にフォルネにたしなめられた。 「タイガさまがこの話をどこに運ぼうとしているかはわかりませんが、私たちを置いていくというのだけは絶対にありえませんからね」 「よくわかんないけどアタイも〜」 「そもそも、タイガさまの方こそ、自分の身を危険にさらしすぎなのです。私たちの前に自分の心配をしてほしいところですよ」 「それは、そのとおりなんだけれども」 僕自身、どうしたらいいのかわかって話し始めたわけじゃない。 フォルネとニャルラをここに置いていけば、コニーさんはきっとよくしてくれるに違いない。 けれども、僕はそれを望んでいるわけじゃない。 フォルネとニャルラがあまりに勝ち目のない相手に対しても果敢に向かっていくことに、言いようのない不安に駆られてしまったことはたしかだ。 僕は決めた。僕の旅の目的を、今、話しておこうと。聞いてくれるかな。 「タイガさまが探し人をしていることは知っていましたが……無理に話さなくてもいいんですよ」 「ううん。聞いておいてもらいたいんだ。僕にとってフォルネもニャルラも大切。だから、知っておいてもらいたくて」 そうして、僕は話し始めた。僕が旅に出るきっかけの出来事を。 **** そのとき、僕は兄のハルトと一緒に森で探検ごっこをして遊んでいた。 ハルトは、今の僕と同じくらいの年だったと思う。 ハルトはちょうどいい形の枝を見つけて剣に見立て、僕を引っ張って森の奥へと進んでいく。 森の奥といっても、子どもの遊び場。村のすぐそばの、森の入口あたりで奥に行った気分にひたっていただけだ。 ハルトが剣士、僕は魔法使いの役だ。 「大丈夫。どんな敵が来てもオレが守ってやるからな。タイガは安心して魔法を放て」 ハルトはそんな風に、自信満々に僕を導いてくれていた。 その生き物の気配には、僕とハルト、同時に気がついた。 それほどに、まがまがしい気配を放っていたからだ。 茂みからこっそり覗くと、それは巨大なヤギの姿をした魔獣だった。 頭頂から生える二本の長い漆黒の角は、まるで悪魔のよう。 僕は、足ががくがくと震えた。心が純粋な恐怖心に支配されていた。 「まずいな。あれ、村の方に向かってないか」 ハルトの声も震えている。 魔獣が森のこんな浅いところにいるのを見るのは初めてだ。 このあたりは比較的安全で、僕たちの格好の遊び場になっていたんだから。 村はもうすぐそこだ。 ハルトが言うように、ここに魔獣がいるのなら、きっと村が襲われる。 「早く、村のみんなに知らせないと」 でも、僕の足は動かなかった。完全にすくんでしまっていた。 「ハルト……。僕、動けない」 「オレも一緒に行くから、がんばれ」 「できない」 「じゃあ、オレが村に知らせに行ってくるから、ここで待ってろ」 「できない」 「大人の力が必要だ。きっと迎えに来るから」 「できない、できない、できない」 僕はただ、怖くて仕方なかった。ハルトはいつも、僕の多少のわがままは聞いてくれた。ハルトと離れたくなかった。 「……わかった。じゃあオレがあいつを、森の奥へ引きつける」 「……え?」 「アイツがいなくなれば、村までは安全だ。そうしたら、動けるだろ。タイガが村まで行って、大人に知らせるんだ」 「え? え?」 「頼んだぞ、タイガ」 ハルトは、僕の返事も聞かずにもう動き出していた。 僕から離れると、木の枝の剣でばしばしと幹を叩き、魔獣に居場所を知らせた。 大ヤギの魔獣は、のっそりと首を回す。 その視界の先には、剣木を構えた少年が、震えながら立っている。 「こっちだ。クソデカヤギ野郎」 ハルトが森の奥へ向かって駆けだすと、大ヤギはそれを追い、森の奥へと消えていった。 僕は、怖くて茂みにうずくまり、……そのまま、何もできなかった。 夕暮れ時になり、村の大人たちが僕を見つけてくれた。僕はただ、泣きじゃくっていた。 「村に、大ヤギの魔物が現れて大あばれしたんだ。犠牲も出た。たまたま村に来ていた冒険者が手傷を負わせ、なんとか追い払ったところだ」 「ハルトとタイガが森に行ったと聞いて、探しにきた。無事で良かった。ハルトはどうした。一緒じゃなかったのか?」 僕はそれを聞いて、また大泣きをした。感情がぐちゃぐちゃで、何をどう話したのか、よく覚えていない。 それでも、村の大人たちには伝わった。 「そうか。ハルトはお前を逃がすために、魔獣を引きつけたんだな」 そうじゃない。ハルトは僕に言ったんだ。 村に行って大人に知らせろって。 できなかったのは僕だ。だからハルトは戻ってこなかった。だから村は襲われた。 大人の付き添いで家に帰る。 父さんも母さんも暗く沈んでいた。きっともういきさつを聞いているんだろう。 でも二人とも、決して僕を責めなかった。それどころか、僕が無事に帰ったことを喜んでくれた。 それで僕は、余計に自分で自分を責めた。 次の朝、僕と両親、森に慣れた村人数人で、森の奥へと向かった。 ハルトの捜索のためだ。 そして見つけた。ハルトがあの時、使っていた剣木を。 それは崖下に落ちていた。血のような赤黒いものがこびりついていた。 ……見つかったのはそれだけで、結局、ハルトは見つからないまま捜索は打ち切られた。 僕は誓いを立てた。僕は、ハルトみたいになる。 ハルトが僕にしてくれたように、誰かが危ない目にあっているのなら、絶対に助ける。 もう、何もできない僕にはならない。 「頼んだぞ、タイガ」 ハルトの最後の言葉は、いつも僕の耳から離れない。 僕には確信があった。 ハルトは、きっと生きてる。だって、どんなに探しても遺体は見つからなかったから。 どうして村に帰ってこないのかはわからないけれど、きっと何か事情があるんだ。 あれから数年が経ち、僕は、あの時のハルトと同じくらいの年齢になった。 あるとき、森で妖狐のフォルネと知り合い、僕の時は動き出した。 フォルネは僕にはない、戦う力があった。僕はフォルネに、人探しの旅に出たいことを告げた。 フォルネは即答で、僕と一緒に行くと言ってくれた。 ハルトを探す。それが僕が旅をする理由。 会ってどうするかはまだ考えていないけれど、ハルトには謝りたい。 あのとき、僕が動けなかったことを。 **** 話が終わったとき、フォルネの表情が少しかげったのを、僕は見逃さなかった。 フォルネがなにを思ってしまったのか、わかる。 「生きてる可能性はほとんどない……って、思ったんでしょ」 「……お見通しですね」 「いいんだ。それが普通だと思うから。けど、それは旅をやめる理由にはならないよ」 村の大人たちにもさんざん言われた。だから僕は、旅の目的をあまり話さなくなった。 けど、僕はあきらめない。あきらめたら、そこで終わってしまう。探しつづける限り、可能性は残っている。 「……そんなことがあったから僕は、目の前で誰かが危険な目にあうのは見過ごせない。けど、フォルネにもニャルラにも危険な目にあってほしくないんだ。自分勝手なことを言っているのはわかっているけれど」 「言いたいことはわかりました。でもそれは聞けない相談ですね。なぜなら私は、タイガさまに救われたあの日から、タイガさまのために命を捧げると決めているからです」 「決めてるってそんな」 「なんと言われようと、私の考えは変えられませんよ。私の方こそ、タイガさまになにかあったら、残された私がどんな気持ちになるか、考えたことがおありですか」 「それは……」 わかってる、と言うのは、あまりにも軽い言葉のように感じられた。 「どっちもどっちだね〜」 ニャルラがそう言った。 それを聞いて、フォルネの表情が少しほころんだ。 「本当にそうですね。タイガさまにも私にも譲れないものがあるし、それは変えられない。今まで私たちは、勝手に互いの心情を推し量って不安がっていました。お互いの気持ちを話せただけでも違うんじゃないですか」 「そうだね。それは本当にそうだ。フォルネ、これからもよろしくね」 「はい。タイガさま」 「はいはい。アタイも〜。たいがと一緒にいたら、めずらしいもの食べれるし、おもしろいとこいっぱい行けるもんね」 ニャルラが絶妙なタイミングで場をなごませてくれたため、僕とフォルネは一緒にくすりと笑ったのだった。 「はると、みつかるといいねっ」 「私も願っています。タイガさまが、お兄さまとまた会える日を」 【蜂竜の森】ローグライクハーフリプレイ 完 【収支報告】 オオトカゲの宝石 金貨18枚 蜂竜の王蜜3 金貨30枚 褒賞金 金貨30枚 褒賞の宝石 金貨45枚 合計 123枚 手持ちの金貨5枚と合わせ、所持金は128枚 ■登場人物 タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。 フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。 ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。 コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。通称コニー。オウカンワシにさらわれたところをタイガたちに救われる。 ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。コニーの父親。 クックロッド コーネリアス商会の料理人。蜂竜の王蜜取得に情熱を燃やす。 キャティ 竜人の村の道具屋。初出はゲームブック「百竜の森」。 カトリーナ 竜人の村の女戦士。蜂竜討伐の遠征中。 ナイトさん ヘラクレスナイト。カブトムシ形態から人間形態に変形できる竜人の村への協力者。その動機はキャティへの一目ぼれ。 蜂竜の女王 巨大なクリーチャー。巣への侵入者に対し怒りで我を忘れ、赤熱化し暴走する。 ■作品情報 作品名:蜂竜の森「ローグライクハーフ」d33シナリオ 著者:ロア・スペイダー 監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編 https://booth.pm/ja/items/4671946 巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ(「蜂竜の森」収録) https://ftbooks.booth.pm/items/5361362 本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。 https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。