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2026年7月16日木曜日

ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.6 FT新聞 No.4922

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.6  (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!  本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。  ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。  冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロ。そして従者に「面白いこと」を愛するコビット族のヨンという布陣で進んでいきます。  前回vol.5では、騎士ゾンビとの戦いを繰り広げた三人。自分の頭をちぎって投げるというアグレッシブな攻撃に意表を突かれながらも、勝利を掴みました。  次の車両では何が待ち受けているのでしょうか。  なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。  ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。    前口上はこれでおしまい。  亡霊たちの晩餐会、謎のシスター、そしてシグナスたちに刃を向けた女騎士。予測不可能な波乱を運ぶ列車の旅へ、いざ出発と参りましょう。  ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨11枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料2食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:6 ・器用点:4 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし    ◇ [6号車]12:踊る骸骨と宝物 「シグ、あの剣どんは君の友達なんだよね?」  コビットらしく恐れ知らずのヨンが、連結部を軽やかに歩きながら言った。 「友達っていうか──」  風に負けないようにシグナスは叫び、途端に後悔する。冷たい風を思い切り吸い込んだせいで、くしゃみが出たのだ。足元には千尋の闇が広がっていると言うのに。  〈怨霊列車〉が何処かに降りる気配は無かった。夜の空を黙々と走り続ける。目的地は何処なのだろう。列車というものをシグナスは初めて知ったが、乗り物であるならば、辿り着きたい場所に向かうためのからくりであるはずだ。目的地さえ判明すれば、少しはこの冒険も楽になるかもしれない。  シグナスは注意深く足場を確かめながらも、素早く連結部を渡り切った。次の車両の扉を開けて中へ転がり込むと、嫌な予感に捉われる。  美しい音楽と、明るい光が内扉の向こうから漏れ出ていた。二両目の車両を思い出す。 「ねえ、シグ」  上目遣いにこちらを見るヨンも、同じ気持ちであるらしい。二両目の車両は華やかな晩餐会の場になっていたが、後に酷いまやかしであったと判明している。 「分かってます。今回はしくじりませんから」 「おもろしてくれても良いよ」 「良くないです」  シグナスは内扉を滑らせ、開いた。どっと音量の上がった調べは優雅な三拍子。床を踏む幾組もの男女の足が揃った音を立て、軽やかな合いの手を入れる。しかし熱気はない。生者が持つはずの熱気は。踊っているのは、貴族めいた豪華な衣装を着込んだ骸骨だ。楽団もまた骸骨。 「ご飯食べて踊ってる内に死んじゃったのか」 とヨンが言う。 「いいね!」 「いい──でしょうか」 「どうせ死ぬなら楽しく死ぬよ。それがコビット流。湿っぽいのは嫌いさ。おや?」  ヨンが忙しなく体を左右に振り、骸骨の踊り手を透かして何かを見ようと務めている。シグナスも真似してヨンの視線の先を窺うと、 「宝箱?」 「んっふっふ、盗ろうぜえ」 ヨンはにっかりと笑った。 「と、盗るぅ!?」 「騎士様には思いもよらぬことでございましようが、こちとらコビットよ。おもろがすべてよ。くっくっく」   (※ここで求められるのは【器用ロール】。目標値は4です。ここは副能力値に【器用】を持つクロにお願いしましょう。出目は2。ギリギリですが成功は成功です、ヨシ!)  ヨンが悪い笑いをし、シグナスがどぎまぎしていると、 「待て、無粋な奴らめ」  〈おどる剣〉のクロが、二人と踊る骸骨たちの間に浮かんで、ゆらりゆらりと揺れる。 「クロ?」 「盗みの秘策でもありやすかね、旦那。こちとらケチな泥棒でござーい」 「これは、スプリンガルだ。知らんだろう」  シグナスとヨンは顔を見合せる。 「知らんだろうな。サン・サレンのダンスだからな。まあ見ていろ」  〈おどる剣〉は総身で三拍子を刻むと、ふっと骸骨たちの踊りの輪に寄っていく。ワン・ツー・スリー。エット・トヴォ・トレ。  シグナスは驚いた。クロのリズムは骸骨たちの踊りと完全に調和している。あまりにも自然なので、最初からそこにいた事が正しいかのように、クロはするすると輪の内側に入っていった。骸骨たちも咎めない。 「ははーん。人間だった頃はさ、あいつ遊び人だったに違いない。シグよ、教えといてもらうんだぜ」 「踊り方を?」 「遊び方だよ、シグ! 世の中にゃ、何を見ても聞いても、おもろくない奴がいるって聞くよ。そういうのは心が曇ってんだね。自分で磨きゃあ、ぴっかりぴっかり光るのにな」 「ふうん」  遊び方。遊ぶこと。思えば、あまり知らないかもしれない。シグナスは輪の中で踊る剣を見ながら、ふうっと溜め息をついた。孤児院からここまで、自分だけの自由時間を持って遊ぶなんて、あんまり考えてもみなかったことである。 (……え?)  シグナスは目を擦った。翻る衣服の幕の向こう、踊りの輪の中に、骸骨ではない一組の男女が交じっているように見える。銀の髪を長く垂らした女性はお姫様だろうか。その手を取って情熱的に踊るのは頬にそばかすの散った青年騎士だ。ふたりは幸せそうに微笑みを交わしている。両思いに違いない。何でこんなところで踊っているのだろう。もしかしてこの列車の主だったりするのか。 (じゃあ、クロが危ない)  シグナスは慌ててコビットの肩を小突いて、 「ヨンさん──」 「何だい」 「あそこで踊ってるの……あれ? いや、ごめんなさい見間違いです」  瞬きの間に男女はいなくなっていた。  シグナスが呆然としていると、カチリと掛けがねの開く音が三拍子を乱す。 「うわわっ!」  一斉に骸骨たちが動きを止め、重力に従って潰れた。粉末になった踊り手たちを吸い込まぬよう、ヨンとシグナスは咄嗟に目口鼻を塞ぐ。    (※宝箱の中身を判定します。ここは修正なしの【宝物表】ですね。いざ……出目2。金貨3枚。ううううううん、もうちょっと欲しかったかな(強欲)。とはいえ金貨1枚を笑うものは金貨1枚に泣くのでしょう。有難く懐に入れていきます)   「ははは、これは愉快だ。見ろシグナス」 と、目口鼻のうち口と鼻の無いクロが笑っている。もうもうと立ち上った粉塵が収まるとシグナスとヨンは慎重に歩を進め、ゆらゆらと三拍子に揺れる〈おどる剣〉が開いた宝箱を覗き込んだ。 「オー・ラ・ラ! こんだけ?」  ヨンが口を尖らせる。無理もない。仰々しく飾られた宝箱の中に入っていたのは、金貨三枚ぽっちであった。骸骨たちは、自分たちがこの金貨のために踊らされていたと知ったら、憤慨するかもしれない。 「罠じゃなさそうだ。もらっていくぞ」  クロがベルベットの内張りにめり込んだ金貨をほじくり出し、ピンと跳ねあげた。それをシグナスが取ろうとしたところを、すかさずヨンが宙に躍り上がって掴まえる。 「おいおい、シグナス。聖騎士が反射神経で負けるというのは」 「言わないでクロ、お願いだから。あの、ヨンさんその金貨……」 「え、おーもろ!」 「何ですか? 金貨がおもろ?」 「見なよシグ。この美しいレイディのお顔をさ」  ヨンは金貨を突き出す。その表面を見て、シグナスにも意味が分かった。現在のサン・サレンの硬貨には領主ラドスの顔がついている。とすると、この金貨はラドスが領主になる前、シグナスが生まれるよりずっと前のものだ。〈怨霊列車〉の中に、何故そんなものがあるんだろう。シグナスは首を傾げた。 ◇  少し短めですが、今回のリプレイはここまでです。  〈怨霊列車〉の主は上流階級の方なのか、あるいは憧れがあるのか……。晩餐会といい、パーティーが沢山開かれているようですね。  クロ先輩に踊ってもらった「スプリンガル」はノルウェーの民族舞踊。サン・サレンには北欧の風合いが似合うかなと思い、採用してみました。いわゆる西洋の社交ダンスとはひと味違う男女の踊り。分かりやすく三拍子で表現したものの、本当は西洋音楽の「三拍子」という枠に当てははまらないのだとか、地方ごとに方言のようにスプリンガルにも癖が出るのだとか、なかなか奥の深い踊りのようです。よろしければ検索してみてください。    それでは、次の車両でお目にかかりましょう。  良きローグライクハーフを!   ◇    (登場人物)  ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。ヨンから悪いことに誘われて、まだ緊張している。  ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。ダンスは体が覚えていた。  ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。  ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。  ・グロリア…サン・サレンの女騎士。アンデッドの部下を引き連れ、様子がおかしい。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。