第5回【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。
ぜろです。
「最期の日に彼女は」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探します。
しかしレナは遺体で発見されます。さらにレナの遺体は忽然と姿を消してしまいます。
レナの遺した動画には、人間社会に溶け込んでいる生物『スケトレス』の存在が語られていたのでした。
ハナは決意します。姉レナの研究室を訪れ、その死の真相を探ろうと。
●アタック01-12 スケトレスとモールス信号
レナの携帯電話に残された、ほかの動画も確認していく。
ほとんどの動画は、日常が切り取られている。
姉妹で遊びに行ったときのもの、かわいい動物を映したもの。
レナが携帯を操作しているため、映っているのはほとんどが私だ。
けれどもそこには、日常を楽しむレナの声があった。そのひとつひとつに、つい手が止まる。
その中で、明らかに異質な動画が、ひとつだけあった。
暗い、無機質な部屋。
特徴のない50代の男。
小首をかしげながら、携帯電話を覗き込んでいる。
まるで、携帯電話というものを、初めて知ったかのようだ。
私は確信した。
こいつ……人間じゃ……ない。
演技とか病気なんてものじゃない。もっとおそろしいものだ。
——人間社会に溶け込んで、自分の主人のために、世界を破滅に導こうとする『スケトレス』……。
これが、スケトレス……。
その男は、声のような、音のようなものを発した。
短い「コッ」という文節と、長めの「グー」という文節だ。
画面の端に、本が映った。「よくわかるモールス信号」
モールス信号?
「グーグーグーグー、コッグーコッグー、コッグーグーグーコッ」
この文節を覚えておけば、次に聞いた際にパラグラフジャンプができるという。
モールス信号なら、実際に意味がある言葉だろうか。
ちょっと検索してみた。
しかし、該当する文節は見つからない。なんで?
不思議に思いながら読み進める。そうしたら、あった。
私がさっき見ていたのは、アルファベットを示す欧文モールス符号。
その下の方に、和文モールス符号を発見した。
あてはめていくと、こうなる。
「コ」「ロ」「セ」……。
「殺せ」。
誰かに命じているのか、命じられているのか、わからないが、そう言っている。
これで、わかったことが増えた。
少なくとも、日本語を理解できる知能がある。
なぜかはわからないが、発音はうまくできない可能性がある。
そして、モールス信号を学習するなり「殺せ」なんて発言してしまう物騒な思考をしている。
レナの携帯電話を握りしめる。
よくはわからないが、存在するんだ。「スケトレス」っていう得体のしれないものが。
レナの遺言は、実行したい。レナの研究所に行こう。
●アタック01-13 ヤマト感染研究所
・堂々と正面から乗り込む
・姉の社員証を使って侵入する
・姉の恋人に連絡する
ヤマト感染研究所を訪れるための選択肢が並んでいる。
普通に考えれば、正面から堂々と行けば良い。
亡くなった姉の私物を受け取りに来た、と言えば、何の問題もない。
しかし気になるのは御国とかいうあの上司。レナは「ストーカー」と言っていた。実際、感じの良い印象は持たなかった。
できれば、顔を合わせたくない。
双子だから、変に気に入られてしまう可能性だって考えられる。
会社組織なのだから、ちょっと調べればここの住所だってわかってしまうだろう。
むしろ、すでに突き止めているに違いない。レナはだから、あの日帰らなかったのだ。
姉の社員証を使って侵入するのは、あまり良い手には思えない。
私から連絡して、姉の死を告げてしまっているからだ。
姉の社員証をすでに失効させていれば、通した時点でエラーが出てアウトだろう。
姉の恋人に連絡、か。
正直、あの新名という人のことは、よくわからない。
でも、私は、連絡しても良いような気がした。
レナの人間観察力が信じられるかはわからない。けど、レナが選んだ人なのだ。
きっと、レナのことを思い、行動してくれる。
それに、「スケトレス」なんて大きな秘密、私ひとりで隠していることはできない。
誰かと共有しないではいられない。
また、私というよりプレイヤーの方の事情によっても、私にはこの人物を巻き込みたい理由があった。
それは……主人公は私ハナだけれど、この新名という人物こそが、プレイヤーの私と立ち位置を同じくする人物だからだ。私の分身と言ってもいい。
この説明では事情はわからないだろうけれど、それはまた、感想のときにでも語らせてもらおう。
新名に連絡し、事情を話した。
新名は、快諾した。
「行きましょう。私も、不審な点があるのなら明らかにしたい」
そう。それが恋人としての正しい態度だ。私でも、きっとそうする。
新名は話した。彼は医療機器メーカーの営業。姉との出会いは、研究所の食堂で同じテーブルについたのがきっかけ。
つまり彼は、ヤマト感染研究所には何度も出入りしている。不自然さはない。
社員証が有効ではない可能性も考え、関連会社の人間が使う裏口を案内してくれるという。
そこまで考えてくれるとは。
新名と待ち合わせ。
なるほど、ビシッとしたスーツを着たバリバリの営業マンって感じだ。
レナが、私以外の人に心を開くなんて、聞いたことがなかった。
それだけでも、大したものだ。
裏口から、何食わぬ顔で入ることができた。
食堂を抜け、廊下を歩く。
新名が足を止めた。
「この先は研究棟。ここからは一緒に行けない」
「十分です。ありがとう」
私は新名と別れた。ここから先は、私ひとりでどうにかしなければならない。
心の中で新名さんに感謝する。レナが好きになったのも、うなずけると思った。
先へと進む。
私は一応、レナの社員証は首からかけている。
レナの死をまだ知らない社員がいれば、ごまかせるだろう。
案内図で、西宮レナの研究室の場所を確認。
誰にも見とがめられることなく、研究室の前についた。
●アタック01-14 武器とワクチン
研究室の入口は、6桁のパスナンバーを入力するようになっていた。
私の中に、ある記憶がよみがえる。
ツイーター(エクウス)をチェックしていたときのことだ。
<携帯のほうは
彼氏の名前に
してやった
妹ラブすぎて
かわいそうだからナ>
携帯じゃないほう。
それはつまり、この研究室のパスナンバーを指していたのだ。
携帯のほうが彼氏の名前ということは、研究室は、私の名前なのだろう。
そして今ごろになって気がついた。
彼氏の名前、新名弥四郎。これにも数字が隠れていることに。
新名弥四郎。2-1-7-8-4-6。合計すると28。
携帯のロック、私は指紋認証から入った。このナンバーでもロックを外せるのでは?
本筋から離れて、ちょっと見に行ってみた。
携帯のロックは解除された。
なるほど。謎を解く方法は、1つではなかったみたいだ。
ここでさらに気がついた。
ストーカー上司御国獅子丸も、3-9-2-4-4-0と、数字に変換できることに。
だからって、なにを試すつもりもないけれど。
さあ、目の前の研究室のパスナンバーを入れよう。
西宮ハナ。2-4-3-8-8-7。合計のパラグラフに、跳ぶ。
ロックが解除され、私はレナの研究室に入ることができた。
ここにはなにがあるのか。
動画のレナは言っていた。
「あいつから身を守るワクチンと、武器が入っているから」と。
ワクチンと、武器。
研究室の中は、マスクやら消毒用アルコールなどが並ぶ、いかにもな場所だ。
部屋の隅にある荷物。これかな。
私は荷物の紐を解き、開封した。
中に入っていたのは、フラスコが数本と小さな箱、USBメモリだ。
まずはUSBの中身を確認しよう。
部屋にあるパソコンを起動。USBを差し込む。
ヤマト感染研究所で研究を行っている、ある生物についての資料だ。
スケトレス。
人間の骨に寄生した後、数日かけてまるまる骨格と入れ替わってしまう。
人間社会に溶け込んで生き続けている。
旧世界の神を信仰する知的生命体で、人間を憎んでいる。
骨格を意味するラテン語から「スケトレス」と命名。
憎んでいる人間に寄生し、乗っ取った後は憎んでいる人間社会に溶け込んで生活しなければならないのか。
スケトレスとして生きていくのもストレスがたまりそうだ。ストレススケトレス。
フラスコには「王水」と書かれている。
人間を骨まで溶かす、強力な薬品だ。
つまり、これが「武器」か。
なら、残る小箱はワクチンということになるが。
小箱の中には注射器と、透明な薬品のアンプルが入っていた。
・注射を自分に行う
・今はしたくない
私はレナを信じる。だから、今このタイミングで注射しておこう。
私は「王水」のフラスコを手に、研究室を出た。
角を曲がったところで、背の高い不気味な男にはち合わせた。
異様な雰囲気に逃げようとする。しかし腕をつかまれ、ネイルガンのようなものを押しつけられ、その中身を射出された。痛みが走る。
いきなりやられた! これはスケトレスの卵を寄生させにきたに違いない。
ワクチン(と思われるもの)の注射は、あのタイミング以外ありえなかった。
が、抵抗はできなかった。そのまま頭を殴りつけられ、私は気を失った。
次回、身体を乗っ取られた姉の姿をしたスケトレスが現れる
■登場人物
西宮ハナ 主人公。双子の妹。無職。
西宮レナ 主人公の双子の姉。ヤマト感染研究所勤務。遺体で発見され、その遺体が警察署から消えた。
新名弥四郎 西宮レナの交際相手。
御国獅子丸 西宮レナの上司。ストーカー気質。その正体は……。
■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「最期の日に彼女は」
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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