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2025年1月19日日曜日

ショートショートゲームブックvol.14『猫、受け継がれる命』 FT新聞 No.4379

 この作品は20禁です。
 20禁ということは、「大人である」という覚悟があるということです。
 世の中には、私を含めて、30や40過ぎてもオトナでない方も多いかとは思いますが、その方には絶対にお勧めできません。
 さて、あなたは20歳以上ですか
Yes→1
No→残念ですが、あなたの冒険はここで終わります。預金通帳などアダルトな本を読んではいかがでしょうか?

***********************************************************************

(Cat)
うちうちのことでつまづきあれば、蹴とばし用に自然が備えてくれた、ふんわりとし、けっしてこわれることのない自動人形。
(A・ビアス 『悪魔の辞典』より)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『ショートショートゲームブック』vol.14
猫、受け継がれる命 
     葉山海月

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

#1
 人はどうしていなくなってしまうのだろう。
 猫はどうして死んでしまうんだろう。

 三日前、俺のにゃんこが死んだ。
「俺の」というのは、語弊があるかもしれない。
 ゆきずりで、鼻水たらしてげろ吐いて倒れているところを、俺が拾っただけだ。
 その動機も、ただ幼稚園児のお題目で「かわいそうな命には、手を差し伸べねばならない」ただ、そういう理屈だった。

 回想を続けるなら→6か20
 現実にもどるなら→22
 トイレをすますなら→24


#2
 いよいよテンパった俺。
 俺は結局は孤独で、ぼっちで……

 さて、ここまで書いてまいりました。
 彼をさいなんでいる悩み。
 実は、それを解決するような出来事が起こっているかもしれません。
 実は、その出来事が起こったパラグラフに、次のジャンプ先。その数字を仕込んでまいりました。
 分かったらそこへジャンプ!

 思いつかなければ→25へ。


#3
 オーノー!
 俺はショックを受けた。
 アリエナイ方向に曲がった足。足から突き出す白い棒のようなもの!
 あれは! そ、想像したくない。
 だけど、想像したくないものであればあるほど、見てはいけないのであればあるほど、想像も視線も、せきを切ったように、そっちへ集まる。
 ここでは、書くことがはばかれるような……。
 いや、気が弱い俺には、とても書けないっ!
 ただ一つ、わかっていること。
 足が、節がっ! アリエナイ方向へ曲がっている。
 つまり。
「折れている」
 そして、折れている足を引きずる猫はっ!?
 俺らがクロやんではないか!?

 説明しておこう、クロやんというのは、野良である!
 片目なんか潰れ、一本もない歯からは、常によだれが垂れている。
 しかし、ひたすらジェントルで温厚な猫なのだっ!
 例えば、いつも女、子どもを優先して、餌の順番を譲る。
 例えば、ご近所周りを欠かさない。
 他の家の軒下で、慕われているところを見たこともある!
 温厚でおとなしく、猫にありがちな「俺が俺が」感がない、謙虚な猫!
 だから老若男女、人間、猫を超えて、とにかくモテた!
 常に彼の周りには、老猫から若い子まで、女の子が寄り添っていた。
 しかし、ついに最近ものが食えなくなり、一か月ほどいなくなっていた!
 彼のファンである俺。病んでいるときは即座に病院に行き、彼が来たら仕事もなによりも優先して餌を出していた俺。心配しないわけがない。
 で、久々に会うとこのざまだ!
 俺はすかさず、奴に近づいた!
 シャー! などという言葉は追っつかないくらい、竜が火を吐くほどの迫力の威嚇とともに、彼は暗闇に消えた。

 以上、一か月がたつ。
 しかも、温度はマイナスの氷点下!
 氷まで張って水道管が壊れるほどだ。

 猫は年をとると、化けて猫又になるという。
 しかし、化けて出てきてほしい! 食われてもいいから

 現実に戻るなら→15
 妄想にひたり続けるなら→20


#4
 何について考える?
 あれについて→7
 これについて→20


#5
 憂さ晴らしに見ているヲチ板。
 ネット上で低IQな言動、行動を発しているやつ。
 その言動などを、匿名掲示板のスレを使って、さらす。
 オチ対象は、憎くて仕方ない「ローカルタレント」を、殺人犯としてののしっていた。
 もちろん、証拠もクソもない。
 本人の妄想だ。
 しかし、俺が奴の行動を見ていたのは、ひそかにこんな憧れを持っていたからだ。

「っくしょー。言いたい放題、好き放題やりやがってよぉ!」

 俺にも殺したい奴ならいる。
 俺の二次創作を断ったMだ。
 最初はMの方ももろ手あげて賛成。
 しかも、俺と同じく「コミュ障」な香りがした。
「友達になれるかもしれない」
 俺は、奴に頻繁にコンタクトを取った。
 一日十回はメッセージを送った。
 全勢力かけて、二次創作を作った。
 繰り返すが、最初に許可を出していたのは、奴だ。
 しかし、前置きもなく、手のひらを返した。
「あんたはクライアントでも何でもない。僕の作品に、あんたの勝手で下品な世界観が入るのは許せない。僕は自分が描いたキャラ、線一本さえ、他人にいじられる、指示されるのは嫌なんだ」
 くわえて、奴は、ことあるごとに「豆腐メンタル」を主張し「それでも頑張ってるんですよ、ボクゥ」アピールを忘れない、漢の中の男だった。

 相変わらず、ヲチ対象は「裁判? おもしれぇな、やってみろよ! そん時は、死んだほうがましなくらいな目に会わせて殺してやるからな!」

 そういえば、まだ殺したい奴がいるんだった→23
 いや、いくらなんでもそこまで蒸し返すのは精神衛生上よくない……。→17


#6

逢坂の積のしみづにかげみえてつながぬねこのかへるけり
 詠み人知らず。(行方知れずのねこを呼び戻すおまじない)

That is The Life

 →3


#7
 50代近くになって、クリエーター志望、というのは、死亡にちかいフラグだ。
 当然、創作のために職についていない俺。
 しかも「ヒトとかかわらなくていいから楽そうだな」という、きわめてネガティブな理由で目指したのだ。
 当然、家族を養う金なんかないから、いまだ独身。
 加えて、家族もあっという間に減り、もはや天涯孤独。
 いつ死ぬかわからない。
まぁ、それは置いといて……

 コンビニでも行くか。外へ→8
 ネットへ逃避行する→5


#8
 外へ出る。
 何か、軒下でゴソゴソしている。
 見ますか?
 Yes→3
 コンビニへドライブへ行く→11


#9
 時はめぐって。
「ですから、今足を切断しないと、大変なことになります」
 老いた母は、ついに植物状態になる。
 パイプだけが生命につながっている証。
 声も出ず、生きていてもつらそうな母。
「だけど、その手術をしたって、体が耐えられるとは思えないんです」
 決断の時は迫っていた。
 →16


#10 
(ここへの番号が記されているパラグラフは#24
そこに、「たどたどしい演奏を10回練習。」とあります)
 今日もまた、スコップを握りしめて外へ出る。
 ただただっ広いだけで、草も生い茂り放題な庭。
 ただでさえもともと庭仕事苦手だというのに、中年になってしまった身にはきつい。
 ほとんど半日タイムロスになってしまう。
 その時間を当てて、何か就活でも、作品でも書いていたい!
 心とは裏腹に、天気は突き抜けるような晴天!
 めまいを感じる!
 切実な恨み節に対応するように……。

 バカヤロコノヤロクソガ!

 まるで北野武の映画ライクに、唐突で脈略もなく言葉のバイオレンスが!

 俺はスコップを握りしめた。
 血の中にたぎる怒りのマグマ。
 囚人じゃあるまいし、どうして俺が「野良猫に餌をやっている」だけで、びくついていなきゃならないんだ!

 狙うのは隣人の頸椎。
 鼻、顎。
 確かに俺は人がコワい。
 だから、喧嘩なんかやったことはない。

 しかし、だからこそ、ここは暴力の出る幕じゃないのか?

 いつしか怒りは、奴を死体にする喜びにあふれる。
 その一方で、頭の片隅は恐るべき冷静さで、奴の攻撃へのシュミレーションを考えている。

 奴の家の門に立ちはだかったとき!

「あのぉ」

 女の子の声がした。
 みると、裏庭でピアノを弾いていた、あの子じゃないか!?
 そして、手には手袋とスコップ。
 おなじみの対猫うんち用装備。

「いつも、一人でうんこ取り大変そうだから」
「だ。だけど」
 何の関係もないあなたがどうして?

「あの時、あなた一緒に歌ってくれたでしょ。
 あたしも、ずっと一人ぼっちで、ただピアノを弾くしかなかったから……。
 あの歌は、百人の、いえ百万人の拍手のようにうれしかった」

 そして、彼女は、一緒にうんこを取り始める。

 Fin


#11
 コンビニにて、車を止めました。
 煙草買うだけですんで、ドア開けっぱなしです。
 さっさと買って、車出した数分後。
 強烈な違和感を覚え、助手席を向くと!

 そこには、ランドセルとダッチワイフが!?

 どうして!? とか、いつのまにあった!?
 とか、考える間もなく!?

 なぜにこの組合せ!?

 そして、その答えを思いつく間もなく、後ろから罵声が!

 見ると、この車の持ち主であろう男が、必死の形相で追っかけてくるではないか!

 窃盗犯にはなりたくない!
 車を乗り捨てて、逃げる。

 ほとぼりが冷めたのを見計らい、駐車場に行く。
 自分の車がなくなっている。

 完


#12
 あれは自宅介護してる母がもっともつらい時期だったから覚えている、テレビ台の裏にひっかかっている紙片。
 手を突っ込んでも何してもとれない。
 さんざ苦労して、それを取った。
 それは、「スイッチ」とかかれたメモ。
 
 取りますか?
 yes→21
 No→4


#13
 目からうろこが落ちるようだ。
 あんなに心を騒がせた、いや、ジサツさえ考えた掲示板のカキコも、隣人の罵声も、もうこころはざわつかない。
 どこかで何かが壊れる音。
 どうせ、何か俺がかき集めたガラクタが壊れたのだろう。
 どうせ生涯孤独だから、猫のために一生かけてイイ。
 どこかでガラスの割れる音。
 部屋に猫は20匹以上!

 Fin

 
#14
 これは、生ごみだ!

 わかった!
 生きとし生けるものは、死んだらゴミになる。
 だから、生きていることは尊い!

 猫を廃棄する際に、かならず思う。
 動かなくなったこの猫。
 さっきまでは、かすかだが、生きる兆候を見せていたこの猫。
 彼らは、実は生きているのではないか?

 いや、よそう。
 本題は、どうして「みぃ」はここに葬られるのに、ほかの猫は、裏庭に放棄されるのだろうか?
 俺が、猫を火葬にする理由は、簡単だ。
 不潔じゃないから。
 そういう汚れ事は、心理的に不快感を与えるし、猫の死体は、何悪さするかわからない。病原菌の塊だから。

 献花にうずもれていくみぃを見る。
 やっぱり、眠っているようだ。
 だけど、俺には、何の感慨も浮かない。
「ぐすん! すいませんねぇ。花粉症でして」
 ええっ? 同情して泣いていたんではないんだスタッフ!
 ふと横を見ると、母が全身全霊を使って、みぃにお別れを言っていた。
 ああ、これだ。
 俺は思った。
 孤独な魂。この世でもう一つしかない、私の分身。
 それが確かに、横にいることを感じたかったのだ!

 そんなことを感じていると、向こうですさまじい悲鳴が上がった。
 出てきたのは、焼けただれた猫、猫、猫!
 俺は失禁しながら、奴らに食われる。

 おっしまい


#15
 泣いている暇はなかった。
 クロやんロスにくれている俺の前。やってきたのは生きるぬいぐるみのような子猫。
 クロたんと同じく、雨に濡れた日に、突然やってきた子猫!
 手のひらにすっぽり隠れるその命の鼓動。
 それに萌えた。

「この子は俺が育てる!
 誰の手にも渡さねぇ!」
 クロやんの悲劇を避けるため、今度は家飼いの覚悟!
 決して高くない去勢手術代を出し、エンゲル係数がただでさえ上がっているのにも関わらず、餌を買い与えていた。
 子猫である彼女はすくすくと育ち、大人になった。
 半年後、脳障害で全身マヒになった!
 あまりにも何も口にしないので、スポイトでミルクをやったのがマズかった。
 当然、嚥下障害を起こしている彼女は、当然の権利のごとく、咽せはじめた。
 激しく体を折って、げぼけへさせている!
 間違いなく「気管に入った」=「呼吸ができていない」!
 あまりにも慌てて、ゴーグル先生に助けを求めるため、その場を離れた。
 戻ってきた。
 ドアが開いていた。
 彼女の姿はない。
 彼女の代わりに、それこそ突然生えてわいたように、唐突に、見知らぬ男が立っていた。
「ボクの原作、受信して作品化してくれてありがとう!」
 焦点のあっていない、目と口で、彼は言った。

 結局、彼は「自分の妄想を商業作品を描く漫画家がキャッチして書く」という電波野郎にすぎなかった。
 初対面の野郎に住所を知られていた、というのもショッキングだったが、もっとショッキングなのは、彼女がいなくなっていたこと。
 マズいことに奴は、ドアを開けっぱなしていたのだ!
 マヒだから動けないだろうと、たかをくくっていたのがマズかった。
 そのスキに彼女は逃げ出したのだ。
 以上、一年が経つ。
 
 さらなる回顧に浸りますか?→20
 時を進めますか→9


#16
 母を殴っていた。
 確か、家族が一人減り。二人減り、最後の家族が俺になってから、母を殴り始めた。
 ちんぽが立つわけではない。
 あの時も、この時も、母を殴っていた。
 母は介護を要求した。
 母は、俺をこの家に閉じ込めた。
 母は、時間も、友達も、生きているスキルもすべて奪った。
 強烈な罪悪感の元、俺は母を殴り続けた。
 女とやるすべ。それを知らなかった。
 それは母のせいだ。
 ちんぽは立たなかった。

 迷いに迷ったが、頭だけがただ焼き付くように空転をする。
 眠れずに一週間、それを考えに考え抜いた末、母は「行方不明になった」
 もし、19から来ているんだったら、この話はここで終わる。
 違うのなら続きへ→18


#17
 そうこうしているうちに、家の前にたむろっていたにゃんこが、ひどい風邪にかかった。
 しかし、病院代もバカにならない。
 結局、前死んだ猫には、一万円もぼられたのだ。
 そして、俺の手元には、今週暮らせるかどうかのカネしかない。
 俺は、仕方なく、前のにゃんこが飲むはずだった、残された薬をやった。

 にゃんこは嘘のように回復。
 その時、気づいた。
「もし、あの時、前のにゃんこを医者につれていかなかったら、薬が無かったはず」
 つまり「命は続いていたのだ!」

 ところで、俺は、2人殺したい奴に心当たりがあるだろうか?
 Yes→2
 No→13


#18
 ええ、動けるはずはないんですけど。
 看護婦はそういった。
 だけど、失踪する前夜、ものすごい安らかな顔だったのは覚えています。

 その時、気づいた!
 猫がいなくなったのは「人間と猫は平等だったから!」
 飼おうとしていたのがおこがましい!
 一番ラストの時は、せめて自分の足で歩いて、好きな所へ行きたい!
「飼い主」だなんていうことがおこがましい!
 死ぬときは死ぬ。不幸も幸福もない!
 ただそれだけだったのだ。

 気づいたら、笑っていた。
「ほほほ! 好きにしていいのよ! この体!」
「疲れたでしょう。あたしの、か・ら・だ、ごちそうしてあげる」
 相変わらずローザは、ショタヒーローやパチモン魔法少女相手。
 今日も股間に猛攻を炸裂させている。
 そして、病気になったもの食わぬ猫に注射針をプスプス(獣医が)
 動かない無理やり口をこじ開けて授乳。
 猫虐待を繰り返している。
 介護とは、つまるところ「生かすための虐待」なのだ。
 それに気づいた母は「猫」になった!
 そして、猫と同じ「誇らしく最後を迎える」ことを決めたのだ!
 家を荒らす、奴らを生かすために。
 今日も獣医に連れて行った。その傍らで、十年以上生きる、俺の相棒が、あくび交じりに「にゃあ」と鳴いた。

 おしまい


#19
 ホントにここはド田舎だ。
 コンビニ行くにも、車を駆って、夜道を行かなきゃならない。
 しかも、24時終業ときてやがる。 

 コンビニへ行こうとすると、母と出っくわす。
「あんたさぁ。一日ゴロゴロしてるんだから、買い物へ行ってくれない!? いい歳こいて、何も役に立たないって、恥ずかしくないの!?」
 出た! くそババアの家事やれ攻撃!
 俺は、少なくともこいつのおかげて、貴重な創作時間を失っている。
 俺は
 ババアを殴る→16
 妄想にひたる→12
 無視して、ドライブへ行く→8


#20
「どうだい? 眠っているようだろ」
 まだ、一才を超えたかどうか。
 みぃ、大往生であった。

 うっそうと茂る、木漏れ日の中、母を連れた車は走る。
 運転手は俺。
 傍らにはみぃ。
 曲がりくねる、この山道の奥にある、ペット霊園『奥多摩は魔女』へ、みぃを葬りに行くのだ。

 ある日、猫を捨てていた。
 それは、前触れもくそもなく、突然手足が動かなくなる。
 ウイルス性のなんかだろう、と医者は言う。
 しかし、うちに来ている野良猫軍団の何割かは、必ずこうなる。
 老若男女問わず、なるものはなるそれ。
 一度発病してしまうと、医者でも手に負えない。
 機械的に、だらだら口から餌をこぼしまくるマヒ猫に餌を詰め、そして電池が切れると、裏庭に捨てる。
 それがうちの日課。

 しかし、なんだって、猫をこう丁寧に葬るのだろうか?
「猫! 捨ててきなさいよ!」
 母は、テンパると、必ずそう言った。
 絶対的に手がたりないのだ!
 祖母と障害を持つ妹を、まるでメイド、いや、奴隷みたいに使って30年。
 息子は無職をこじらせて、引きこもりになりました。
 そして、時は無常に経ち、奴隷たちは死に、加えて、母はこじらせて歩行困難に!
 その生活は、いや生命維持は、一気に俺にのしかかってきた!
 何せ風呂・掃除・洗濯含めて、寝るのが朝の六時!
 しかも、母は、無類の猫好きときている。
 いや、そのきっかけを作ったのは俺。
 ある日、あまりのぼっちに耐えかねた俺は、軒下に迷い込んできた猫に、つい手を出してしまった。
 しかし、それで母の猫好きに火が付いた!
 ものはついでと、来た猫来た猫、すべてに餌をやったのが、間違いのはじまり!
 惰性で飼っているとしか言いようがない!
 家事のかじ取りだけで、一杯いっぱいな俺たちに、猫なんざ見てる暇はなかった。
 しかし、どうしても観てしまう!

「このたびは、ぐすっ ご愁傷様でぐすっ、でした」
 霊園のスタッフは、目に涙をためていた。
 職業上、そりゃ遺族にご同情申し上げるのは道理だが、これはやりすぎじゃないか?
 俺は、ただうなずいて、彼女の手続きに従う。

 死んだままの猫。
 まるで、生きているようだ。
 実際、もう死後硬直が始まっているのに、鼻ぢょうちんを膨らませ始めたときは、心底ビビった。
 挙句の果てに、ション便がどぼどぼと。
 もちろん、筋肉が緩んで、中に入っていたガスや排泄物なんかが、まろびでたとはわかっているが……。

 早すぎる埋葬!

 おずおずと差し出される骨壺。
 そこには、みぃのあのしなやかな体も、温かい毛もなかった。
 モノ。
 しかも、我々が魚とか鳥とか食った後に、必ず出る……

 さて、その結論が知りたいですか? 
 知りたいなら→14へ
 それとも、何か悟りましたか?
 悟ったなら、→13へ


#21
 誰がこんなことを?
 書かれている字は、まったく知らないもの。
 俺はそもそもメモなんか取らない。
 その時、カチリと、何かスイッチの入る音がした。

 それ以来、俺の生活は変わっていない。
 忙しさはちっともかわらない。
 しかし、何かが変わっている気がするのだ。

 fin


#22
「ねぇ、見てほしいの……」
 女幹部、ローザは、胸にちらりと手をやった。
 ぽろりん! と音を立ててまろびでる二つの乳房!
 目が吸いつけられる。機動探偵ディクターの攻撃の手が止む。
「いいのよ。さわって……もんで……」
 ローザのしなやかな手が、乳を揉みしだく。
 しかし、次の瞬間!
 どぴゅあっ!
 乳房から出た粘液が、ディクターの視界を奪う!
「うぁああ、甘ぁ!」
 その隙を逃すローザではなかった!
 ディクターの股間に、必殺の金的が炸裂!
 悶え転げるディクター。
 しかし、ローザは怪しい微笑を浮かべ、言う。
「あーら。立っているの? このヘンタイ」
 ディクターの股間。いまだにダメージを引きずる、破れた装甲の中には、我慢汁が糸を引く。

 今の「作品」を見てもらえればわかる。
 俺は、エロライトノベル書きだ。
 しかも「リョナラー」と呼ばれる、流血やら激痛が伴う危害を加え、イチモツを立たせるジャンルだ。
 女とやるのは、レイプしか考えられない。
 自分でも、いつ犯罪者になるかわからないが、幼少のみぎり、某ヒーローが、敵の粘液泡をくらい「体がマヒする!」叫びつつ悶絶する。
 そのシーンに立ってしまって以来、仕方ない。
 こんな性癖なので、もういい年こいてるのに、まともな結婚も考えていない。
 ちなみに俺は一人っ子だ。
 しかし、俺はいつかはこの呪われた性癖を克服してやるっ!
 そして、そのための一歩が「クリエーター」になる事。
 メフィスト賞、横溝正史賞を皮切りに、わが国最高峰の賞「直木賞」「芥川賞」を取る。
 今まで、そんな「お天道様に照らされた」まともな人生は送っていなかった。
 というのは、俺は人が異様に怖い。
 信用できない。
 それがますますこの特殊性癖をこじらせ、さらに人と壁を作ってしまう悪循環の要塞となった。
 だけど、いつかは見てろ!
 俺の野望の前に「俺はまともな人生を取り戻すのだ」
 ところでさ、

 腹が減ったよ。ドライブがてらコンビニに行く→19
 ネットサーフィンでもするか→5
 もっと今の情況について考えよう→4


#23
 きっかけはある晴れた日だった。
 隣人……県庁なんかに勤めていて、車もベンツだ。しかし、コネで入社したとの噂も、後を絶たない。
 そいつが、恐ろしいほど柔和な笑顔で、俺を手招きした。
 俺は警戒した。
 こいつは、その裏で、自分の庭に来ている猫に「コノヤローバカヤロー死ね」「隣の基地外飼い主のところへ戻れ!」と公言してはばからないおっさんだ。
 しかも、確かに、この辺の猫が、空き家化していた納屋に忍び込み、糞尿の害を加えたこともある。
 こういうこともあるので、頭が上がらない。
 で、その時もおとなしくついて行ったのだが……。

 隣のおっさんに連れられて行った先。
 そこには。うんこがあった。
 隣人はまくし立てた。
 曰く、おまえのところの猫のせいで、ガレージの屋根が抜けた! 曰く、お前のところの猫のせいで、うんこを踏んでおろしたての靴を捨てざるを得なかった。
「そのことを金でうんぬんとは言わない!
 ただ、こっちも50台になるんだ!
 少しは考えてくれ!」
 いつのまにか手にした棒が、びしりと地面を打つ!

 それからの俺は、大車輪だった。
 市販の猫除けグッズはもちろん、市役所へ行って猫除け音波発生装置を借りてくる。
 毎日自主的にうんこを取りに行く。
 そう、「僕でできることならばなんでもしたい」
 それで忖度して欲しい!
 そんな思いで一か月ほど行っただろうか。
 ある日、彼は掃除中の俺を裏へ連れて行った。
「あんたのとこの猫がかわら落とした。こんど業者呼ぶから、なんか考えてくれる?」
 俺はその場で、10万ほど払った。

 俺の「正義」がぐらぐら揺れた!
「小さな命を助ける」ことは「間違いない正義」じゃないのか?
 それは、俺の魂の芯。
 一方で、猛烈に怒りがわいてきた。
「こいつは公務員だ。ということは、県内で『野良猫をむやみやたら増やさないために、避妊・去勢して再び放し、えさを与える』いわゆる保護猫活動を推進しているのを知って、このような暴挙に及んでいるんだろうか?
 あるいは、「おろしたての靴」を糞踏んで捨てた、ということだが、普通は洗って使う。
 もしくは「捨ててもいい安物」の靴だったのではないのだろうか?

 後から、屋根の事を友達に打ち明けた。
「早まったことをしたなぁ。もう金戻ってこないぜ」
 俺は慌てて聞く。
「んー? たかが猫が上がったぐらいで屋根瓦が落ちるわけないだろ。老朽化が進んでたところへ、ほら、その日の前に地震があったろ。それのせいで落ちたのかもしれんね」
 俺の中で確信が一つ、怒りの炎となって燃え上がった。
 こいつは、公務員の皮をかぶったヤクザだ。
 決して自分から「金よこせ」とは言わず「考えてくれる?」という形で「強要」している。
 これは一種の「脅迫」ではないのか?
 怒り狂った俺は、アイスピックにスタンガン。はてはこの年まで全然縁がなかったボクシングジム通いまで始めた。
 奴を殺害するために。

 →17


#24
 アンモニア臭漂う便所。
 毎週掃除していた前が、嘘のようだ。
 何せ家も庭も手に余る。
 そして、にゃんこ排泄物猛攻もその手を休めることはない。
 しかも、次々と家族が亡くなっていくにつれ、生き残った「俺」が家事の重みを担うしかない。

 どうしてこんなことになった?
 俺は、何も悪いことしていない。
 ただ「クリエーター」になりたかっただけだ。

 ささくれだった心を、そっとなでるような感覚。

 これは。ピアノ?

 はじめは、雨だれのようなその音の粒。
 それが、いつの間にか寄り集まって「メロディ」となり……。

 窓の外。本当に目と鼻の先に、裏庭に住む家族たちがいる。
 旋律はそこから流れてくる。

 自転車乗りたてのように、ひどくあぶっかしい演奏は、やがて安定していき。

 たどたどしい演奏を10回練習。そして、一曲分無事に引き終わったときに、俺もつい、一緒に歌っていた。

 引きおわった彼女と目が合う!
 彼女は、天敵に見つけられた小動物のように、そそくさと視界から引っ込む。

 どうも、彼女は「引きこもり」というやつらしいが、それもうなずける反応だった。

 しかし、人のことをとやかく言えまい。
 俺の現在置かれた立場は……

 →7


#25
 目からうろこが落ちた俺は、確信的に全く関係ない行きずりの方を惨殺。
 みんなすべて俺を苦しめた奴が悪いんだぁ! と一貫して主張。
 当然、死刑は免れない。
 命が連鎖するなら、死も連鎖してもおかしくない。

 Fin


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