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2025年1月21日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.115 FT新聞 No.4381

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『これはゲームブックなのですか!?』vol.115

 かなでひびき
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 さて、あなたの前に美少女が。
 一人目は、スレンダーで胸も出ていないロリっ娘。エルフ耳付き。
 二人目は、胸もスタイルも抜群な、露出度高めガーターベルト付きおネェさんです。
 三人目は、小麦色の肌も眩しい、ちょっと小悪魔系のギャル。
 四人目は、見た目男ですが、男装の麗人、というやつです! もちろん男の娘、と見ても、一向に問題ないッ!
 そんな中、男は主人公ただ一人の黒一点。
 しかし、黒一点でも「ぼっち」が付くのでしたー。

 みなさんはハーレム物お好きですかー?
 かなではちょっと……。
 うん。かなでがもてもてでしょうがないからだよ。
 ウソですが。
 FT書房読者の大半を敵に回しそうなセリフを吐きながら、バーチャル図書委員長かなでひびき登場!
 今回紹介する本は『ネクラ勇者は仲間が欲しい』(著 羽根川牧人 ファンタジア文庫)だよっ!
 で、おにゃのこの大群の中にオス一匹となると……。
「うにゅー! 勇者様! もう好き好き!」
「して! あたしをめちゃめちゃに仲間にして!」
「オレの歌を聴けー」(幻聴的ななにか)
 みたいな、メアリー・スーで俺だけTUEEEEEE! ヒャッハー的なこれなんてバーチャル恋愛? 世界が広がる。
 普通は期待しちゃうよね。

 だけど、これは違う。
 いや、主人公、クラム・ツリーネイル(通称ムッツリネイル)がめちゃくちゃ赤の他人としゃべるのが苦手で、心の声が独り言になって出てくる。ぼっちなのを他人のパーティの会話盗み撮りした録音で心を満たすしかない。など、ぼっちの証を多数持つ。
 しかも音声トラックコレクション。
『仲間って、本当いいもんですねー』
『お前をリーダーにしてやるから、俺を仲間にしてくれ』
 一人呑みの寂しさを紛らわすときには『乾杯これくしょん(乾これ)』
 他人の不幸をネタに陰鬱な気分を晴らす『ギリアム、パーティやめるってよ』(ギリアムが誰かは主人公は知らない)
 と凝ったネーミングの自家製サントラを作るいう丁寧さ。
 そう。この本がリアルモテモテ帝国だったら、かなでも紹介しない。
 主人公はこのように、にコミニュケーションの場になると別人のように噛みまくる、独り言を呟くぼっちこじらせだし。

 って、登場人物ひとりひとりのダメさ加減をあげてもいいんだけど、とにかく本文読んで!
 
「どうせあなたもあたしの身体が目当てなんでしょ」→「(注かなで・ぼっち」はぼっちでも、最低の独房ぼっちになる事ウケアイ(ハート)
「いやいや、まふまふ」
「ユウシャのユウは誘拐のユウ」
「あたしってエルフの中でも超尊い、いわば『超エルフ』みたいな存在だし」
「剣王様は排泄しないんだから」
「十回に一回は即死しますが」
「思想が腐るだけなら良かったのですが」
「身も心もアタシ色に染めたあとにボロ雑巾みたいに捨ててやるけどねっ」
「それってなんてBL!?」
「薄い本ってなに!?」

 煮ても焼いても食えないけど、蒸して食べればうますぎる会話が当社比80パーぐらいを占めてる。

 大体、本来なら主人公のラスボスに当たってもいい、魔王バルザークの末っ娘。
 来る人みな返り討ちに合わせる紫煙の迷宮に住まう「堕落の悪魔」と呼ばれる、ルージェント・ルーフレットその人自ら、
「うっきゃあー! スマホンだ、スマホンだー! うひょおおおー! これでアタシもイマドキ女子の仲間入りよぉおー!」

 どんだけ仲間に飢えてンすか!?

 ヒロイン格であるエルフっ娘、ミーチカ・オルレインも、可愛さと天然をこじらせ、森を半分焼き尽くすわ、主人公に当たり前のようにナチュラルに飲み代やら部屋代を払わせている「ヒモエルフ」
 あるいは、前挙げた悪魔っ娘、ルージェント・ルーフレット。。
「ただ相手を弄んで身も心もボロボロに」するため、と、いうしかそれしか対人スキルがないとみ言える。そのために仲間になったわけだし。
 じゃ、唯一まとも系に見えそうな僧侶系セクシーお姉さん、ダウリナ・ブランジットは、隙あらばボーイズ・ラヴの話しかしないし、それで頭がいっぱいでおっぱい。
 そもそも、主人公と仲間になりたがるのは、リアルカップリングがマジで見られるからかもしれない。
 危険極まりない!? 死霊系の魔法を使う司祭。

 当然のことながら、主人公を含め、お互いに「パーティを組む」ような仲間じゃないなー。っていざこざを起こしまくってるので、もうそのへんはあきらめた感が漂っているのが、このお話の面白いところね。

 だけど、「トモダチ以上パーティ以下」
 いつもゆるゆるでつるんでいるし、いざとなったら助け合う、その辺の「友情の深さ」もあるのがかなでのツボ!
 この独特の「絆」は、ベタベタしたもんじゃなくって、スッキリさわやかなのがいいよねー。
 考えてみるに、それは「お互いにこいつをパーティの仲間と認めてない」ということに起因してるのかも。
 つまり、それは、「みんなそれぞれに目的がある」
 ミーチカは人知れず悪を成敗するのセイギノミカタ「影の剣王」とパーティを組みたい。
 ルージェはとにかく仲間を弄んで暇つぶししたい。
 強いて言えば、ダウリナはクラムとパーティを組みたいけど、クラム側が「いろんな意味で危険」と引いている。
 それはつまり、各メンバーが「自立」している。
 誰かに依存するのではなく、お互いに「一線」を守っている、尊重しているから、かえって絆が深くなる。そんな一例だと思うの。

 加えて、この手の作品内で出てくる「凝った設定」がしゃしゃり出てくる、ってことがないっていうのも、かなでは多いに気に入った要素!
 ほら、あるじゃない。突然に設定、あるいは「その作品独自のキャラのしゃべり」がとうとうと出てきて「読者どっちらけで作者だけ満足」している感が。
 だけど、この物語はそんな「語り」の要素が薄い。
 じゃあ、なんで勝負しているのか!? といったら「シチュエーションコメディ」ね。
「そんなつもりで言ったんじゃない」言葉、行動が、他者の誤解を呼び、だんだんと騒ぎがでかくなる。
 例えば三谷幸喜先生? いや、『Mr ビーン』かな?
 この辺の組み立て方がいいし、テンポよく進む文章がさらにそれを加速してるわ。
 イマドキのファンタジーの「モテモテ」「俺TUEEEEE!」っぷりに一石を投じる一本!
 その手のファンタジーに飽きた、あるいは、これからファースト邂逅をする、って方にも。両手挙げておすすめできる!

 見逃せば後悔することウケアイ。


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『ネクラ勇者は仲間が欲しい』
 著 羽根川牧人 イラスト ROZER
 出版社:株式会社KADOKAWA 富士見ファンタジア文庫 文庫本 2016/3/19 660円(+税) 

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