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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(4)
(明日槇 悠)
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世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第4回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、領主レーモンの次女、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
一方のセシルはコルバの追究を躱し、赤色の多く混じった布を織りながら、人間のよしなしごとに囚われているようではベルトランもまだまだだと達観していた。
完徳者同士の策謀と意地とがモンセギュール砦に交差する……。
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
●本編
■Act2.過酷なる冬(後編)
——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。
C「てことで、シーンを移って、Act.2の二回目。新カード、この中から一つを選んでもらってという……」
D「あ、俺ですか? うーん……じゃあこれで。【雪の積もった山の斜面を照らし出す月光】。じゃあコルバを動かしていいですか。3の質問……【あなたが一番後悔していることは何か?】」
Dコルバ「私はなんであの時……セシル様と一緒になれなかったんだろう。私たちは実は愛しあっていたというのに。でも今は……セシル様は……私の娘、エスクラルモンドと、なにやら懇ろ。許せない。娘を殺してやる」
D「ということを思っています。この怨みを燃やしているという状況ですね」
C「エスクラルモンドはそうとは知らず……」
D「知らないですね」
A「手番が俺に移るのか。【息詰まるような煙で涙が出てしまう】」
Aベルトラン「いやぁ〜、巡礼料理なんて作るもんじゃないね、ガニエル君(一同笑)。けほっ、けほっ。やはり、召使い……誰かに作ってもらうことに慣れてるんでね。私、ペルフェッチだから。あー……ところでガニエル君、今日はわざわざ、私自ら料理を作って、君に話したいことがあったんだよ」
Cガルニエ「なんでしょうか」
Aベルトラン「どうやら聞いた話によると、セシルはフィリッパのことをよく思っていないようだね」
Cガルニエ「どうやら、そのようですね……。私はよく知りませんが……」
Aベルトラン「つまり、君のお気に入りの……エスクラ……んあー……エスちゃん、エスちゃんが……(一同笑)。もう名前がややこしいんだよ、君たち! 君のお気に入りのエスちゃんのためにも……そうだね、フィリッパ姉さんと自分は仲良くないということをアピールしなきゃいけない」
Cガルニエ「ああ、確かにそうですね」
Aベルトラン「つまり、フィリッパがセシルにもっと嫌われるようにすればいい。そこでエスクラルモンドに、フィリッパが……アミエルに性的ないたずらをしたという……噂があるっていうのを言ってもらえんかね(笑)」
Cガルニエ「そ、それは……私の口からは、ど、どうにも言いづらいもの……」
Aベルトラン「そうだな! それはやめよう。フィリッパが教皇軍と内通しているとエスクラルモンドに言ってもらえんかね。これならまだ言いやすいだろう?」
Cガルニエ「な、なるほど……」
Aベルトラン「フィリッパが、『ガルニエとか付き合うのダッサー、あんなキモいやつ!』ってエスクラルモンドに言ってたって、私聞いた! フフッ、うん。君がエスクラルモンドと仲良くなれないのはフィリッパのせいもでかい。フィリッパさえいなくなればエスクラルモンドと仲良くなれる確率は高いよ、ガルニエ君」
Cガルニエ「確かに」
Aベルトラン「じゃあガルニエ君、エスクラルモンドにそう言ってくれるね」
Cガルニエ「分かりました。し、しかしエスクラルモンドが私の言うことを信じてくれるかどうかは少し、自信のないところです」
Aベルトラン「ガルニエ君! ……信じさせるんだよ……。ガルニエ君ならできるよ。君、未来の指揮官だろう?」
Cガルニエ「わ、分かりました……!」
A「え? ちなみにエスクラルモンドって誰担当でしたっけ」
C「はい」
A「で、ガルニエは?(一同笑) 大きな問題が出た! おっけおっけおっけおっけ。ガルニエは明日の朝エスクラルモンドに会うと言って、そのまま帰路についた。そして」
Aベルトラン「コルバ君! コルバ君! きみ、娘と会話する? よく」
Dコルバ「最近は……あまり」
Aベルトラン「あー。え、君の娘のエスちゃんから、フィリッパの話、聞いた?(笑)」
Dコルバ「いや、特には」
Aベルトラン「ガッ……えええ……(笑)。ガルニエぇ……。あ〜、そう。ああ〜。あ〜……いや〜、なんか……でも、あるらしいよ。セシルは、君の娘のフィリッパが、教皇軍と内通してるんじゃないかって疑ってるらしいよ」
Dコルバ「あっ、そうなんですか!」
Aベルトラン「これは大変なことだよ? 君の娘が疑われてて、もう一人の君の娘がおかしくされてるんだよ。君、セシル嫌いだよな!?」
Dコルバ「え。う、う〜ん……」
Aベルトラン「な!」
Dコルバ「いや、ん〜……。すみません、ちょっとお腹が痛いので……(一同笑)お手洗いに……」
Aベルトラン「ああ。申し訳ないけど、うんこしたら、またセシルのとこへ行ってもらえんかね」
Dコルバ「はぁ……」
A「コルバは、うんこから帰ってきた後、セシルのところへ行きました」
Dコルバ「訪ねました。コルバでございます」
B「セシルは今、いないわよ。お母さん」
D「お」
B「セシルの部屋から出てきたのは、フィリッパでした」
A「えええ!? 想定外(笑)」
Dコルバ「あら。な、なんであなたが、セシル様の館に?」
Bフィリッパ「妹に言われたの。セシルが会いたがってるって」
Dコルバ「あ、あらそう」
Bフィリッパ「だから久々に来てやったら、あのババア、つまんねえ眠たい話しやがって。私はすごく、疲れたわ」
Dコルバ「なんてこと言うの!(バシッ)セシル様に、なんてそんな失礼なことを。あなた、悔い改めなさい」
Bフィリッパ「失礼なのはどっちの方かしら」
Dコルバ「うるさいわよ!」
Bフィリッパ「ペルフェッチャになったセシルさんとお母さんがとても仲良くしていたのは、知っているわ」
Dコルバ「……だから何だって言うのよ……」
Bフィリッパ「あなたは家族じゃなくて、セシルさんのことばかり。そんなだから、うちが今、滅茶苦茶になっているんじゃない。口を開けば、セシル、セシル……(一同笑)」
Dコルバ「そんなものは私の勝手でしょ? 何しようと私の勝手でしょ! もう子育ては終わったわ!」
Bフィリッパ「あんたのせいで……私のお腹の中にいる、子供の父親は誰か分かる?」
Dコルバ「知らないわ、そんなの……」
Bフィリッパ「レーモンよ」
D「ええええ?(笑) ヤッバ……近親相姦じゃん」
A「それ、あれじゃん! 俺がやろうと思ってやらなかったやつじゃん(笑)」
Dコルバ「ああ、そう。よかったじゃない。子供ができて……」
Bフィリッパ「何が面白いんだか。でも、これでロジェの気持ちを、私に向かせられるなら……」
Dコルバ「まあ、いいわ。セシル様がいないなら、帰るわ」
D「帰りました」
A「ベルトランは寝る前に言いました」
Aベルトラン「いや〜、でも……私いらんことして、レーモン君に申し訳ないなぁ。レーモン君の家庭……私、滅茶苦茶にしちゃったかもしれんなぁ。申し訳ないなぁ〜!(一同笑)あ〜、よし! じゃあベルトランは酒のんで寝よう!」
A「ベルトランは寝た」
B「ちなみに、この父親の件は質問に書いてて」
A「そうだよね」
B「【あなたのお腹のなかにいる子どもの父親は誰か?】そんな重い質問が……」
A「てか、探偵役の意図してないところで異様なドロドロが始まってるけど。これ、マジ……カタリ派に聞かれたら殺されること言ってるでしょ」
C「姦淫だらけ……」
A「だって……怪しげなババアと権力欲にまみれたジジイと近親相姦の一家と娼婦だろ? 暫定変態だろ(笑)」
D「ガルニエ発狂しちゃいますね。エスちゃんが死んだら。今んとこ、コルバは殺す気満々ですから。実の娘を。もう、セシルにしか興味ないから」
A「っていうか、レーモン一家は厄ネタ過ぎるやろ。領主だぞ、コイツ! 言っとくけど、この城塞コイツにかかってるぞ!(一同笑)」
D「終わりだべ……」
A「てか、この一家がけっこう信仰と砦の集合みたいなところあるから」
D「アミエルの動きに注目してますね。剣の腕を磨いている真面目な少年です」
A「武器作ってるからね。でも噂によると性的いたずらをされているらしいぞ」
B「これってレーモンからですよね。【鉄錆のような血の味】。レーモンは、自分の持っている刀を久々に研ぎながら、その味を思い出していました」
A「あ、そうだ。これ一個疑問があったんだけどさ、ベルナールさ、異端審問で死刑になったって書いてあるじゃん。これ、生きてんだよね?」
C「猶予期間じゃないですか?」
D「執行されてない」
A「OK、OK。出せるわ、じゃあ」
B「レーモンは、モンセギュールをカタリ派の根城としたことを後悔していました。カタリ派のペルフェッチ、ペルフェッチャを訪れてから、彼の生活は大きく変わり、妻のコルバがセシルに傾倒し、家庭は崩壊し、そしてレーモンはフィリッパに頼まれて、ロジェを誘惑するために子供を作ってほしいと言われ、それに応じることになってしまったのです。彼等が来たことによって、その信徒はモンセギュールに訪れ、そして城塞自体は発展したのですが、それに伴う大きな代償は、彼の人生に大きく影を落としていました。レーモンはかつて、城塞の外で狩りをしていて、そのときに滑落し、左足を怪我し、それからは表に出ていなかったのですが、十字軍が辺りを包囲する状況が半年間続いている中、ついに自分の持っていた、ほとんどお飾りだった刀を持ち出し、そして再び自衛のために体を鍛えはじめました。それは彼の家庭が崩壊している中で唯一の救いとなっていました。彼が日課の素振りをしていると、そこに木で作った刀を持ったアミエルが訪れました。……ちょっと誰かアミエルをやってもらっていいですか」
A「これ変わっていいんだっけ」
C「まあまあ。実質いいことには。仕方ない場合は」
A「あ、はい。じゃあやる? アミエル。好きでしょ、アミエル」
D「やります」
Bレーモン「おお、アミエル君じゃないか。おじちゃんが剣を教えてやろうか?」
Dアミエル「ほんとぉ!? ありがとう!」
Bレーモン「ええでー」
B「レーモンは、家庭環境のヤバさから目を逸らすために、近所にいる子供に剣を教えることで自尊心を満たしています。そこに訪れたのがベルナールでした」
Cベルナール「あー……アルセンドはいないのか、ここには……」
Bレーモン「アルセンドは見てないね」
Cベルナール「ここにいるのはアミエルと、領主のレーモン様か」
Bレーモン「うん。アミエルはかなり筋がいいね。私が見てきた中でも、かなり腕が立つ少年だ。大人になった時のことが、楽しみだよ」
Cベルナール「ああ……私は死刑になるというのに(一同笑)。これがこの城塞の未来になるといいのだが」
Bレーモン「とはいえ十字軍が去れば、君の身柄もしばらくは安泰だろう。大変な立場だとは思うが、頑張りたまえ。……ところで、あのロジェという男はどうかね」
Cベルナール「はあ……。ロジェは、妻のフィリッパと寝ている様子がありません(一同笑)。私はアルセンドと寝ているから知っているのです!」
Bレーモン「フィリッパとは私の娘のことで合っているね?」
Cベルナール「そうです。あなたの娘のフィリッパを娶っていながら、あの指揮官は情婦にうつつを抜かしております」
Bレーモン「しかし彼の思いも子供がいれば変わるだろう。フィリッパは、彼の子を妊娠しているのだ」
Cベルナール「ほう……そうだったのですか。いつの間に。そんな様子はなかったというのに」
Bレーモン「彼等も仲のいい男女、何があるか分からないからね」
Cベルナール「確かにそうですな」
Bレーモン「彼に指揮を任していれば、十字軍の攻勢は留まるところを知らない」
Cベルナール「はあ……あの楽観的な男に務まるのかというのは、部下の私の口から言うのもどうかと思うのですが……その考えを改めます」
Bレーモン「彼は色情狂ではあるが、やる時はやる男だと信じている。君も周囲から彼のことを支えてやってほしい」
Cベルナール「分かりました。もうすぐ火刑に処される身ですが、それまで頑張っていきたいと思います」
Bレーモン「もし彼に信用ならないところがあれば、私の元に来て、報告をお願いするよ」
Cベルナール「分かりましたっ……」
B「レーモンはベルトランのスパイ内通者の嫌疑を聞くために、ロジェの周辺に半年間、色々当たっているが、しかし彼の決定的な証拠は出てきていない。そのことに対しても少しフラストレーションを溜めているようだった。というところで、私の手番はこんなものですが」
◯Act3.運命の決戦(前篇) に続く……
●登場人物/3つの質問
フィリッパ……コルバと領主レーモンの娘。エスクラルモンドの姉。父のいとこのピエール・ロジェと結婚している。
1. あなたのお腹のなかにいる子どもの父親は誰か?
2. どうしてあなたは、母のコルバと口を利かないのか?
3. あなたがいちばん恐れていることは何か?
ベルナール・ド・サン・マルタン……ピエール・ロジェに仕える騎士の一人。留守の間に異端審問で、死刑を宣告された成人男性。
1. どうして他の誰もあなたの馬に乗れないのか?
2. なぜ、異端審問はあなたがいない間に行われたのか?
3. あなたがアルセンドと寝るとき、誰のことを頭に思い浮かべるのか?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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