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2026年1月18日日曜日

Re:アランツァワールドガイド Vol.1 「水上都市聖フランチェスコ FT新聞 No.4743

おはようございます。
FT新聞編集長の水波です。

2月以降の日曜枠で配信予定の、杉本=ヨハネによるローグライクハーフ版「ガルアーダの塔」
水上都市・聖フランチェスコが舞台です。
それに伴って、以前配信しましたアランツァワールドガイドを再配信いたします。
(少しだけ改訂箇所もあり)

ぜひ冒険の舞台を想像して、楽しみにお待ちください!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

子どもたちが走りまわり、キャッキャと笑い合っている。
水路に落ちないように注意する母親の大声が聞こえる。
子ぼんのうなグラント教授はその声を聞きながら、長いまつ毛の奥にある優しい視線を親子に送る。
見知らぬラクダ人から送られる暖かい気持ちに子どもたちが気づくはずもなく、また走り出しては楽しげに笑う。

カメル・グラントはここ、水上都市聖フランチェスコ市にあるオレニアックス剣術学校で、生物学を教えている。
少数種族のラクダ人で、上唇が左右に割れているためみっつの唇をもつ。
下唇、右上唇、左上唇。
背中には盛り上がったコブがわずかに残り、体毛は濃い茶色だが本物のラクダのように濃くはない。
辛抱づよく、子どもたちが好きで、知的探究心に満ちた心の持ち主だ。
かつて世界を旅してきた彼は、いままた旅に出ようとしている。


◆「アランツァワールドガイド」へようこそ!
おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です。

「FT書房のゲームブック世界を、紹介してほしい」

17年間、何度このご要望をいただいてきたか分かりません。
若い頃はこう答えていました。

「ゲームブックをやってもらったら、分かるよ」

と。
しかしこれは、なんと尖った答えなのでしょう。
ゲームブックはすべてのルートを通って遊ぶわけではありません。
この娯楽過多な時代に、自分の作品を隅から隅まで読んでもらうことを前提にしているとは……前のめりすぎて物事が見えていなかったなと思います。

今はさすがに考えが変わりました。
歳を重ね、もう少し物事が見えるようになってきた今。
読者の方がFT書房のゲームブックを通じて、「もっと世界を知りたい」と思ってくださることが増えた今。
「ローグライクハーフ」が配信されて、「アランツァTRPG」の刊行を未来に控えている今。
背景世界を読み、知っていただくのにふさわしいタイミングが来たのだと思います。

この作品は過去に配信された記事「オレニアックス生物学」で教師を務めたカメル・グラント教授が主人公です。
諸都市を旅する彼からの視点と地の文章のふたつを通じて、アランツァをご紹介してまいります。
記念すべき第1回の記事は「水上都市聖フランチェスコ」です。
さっそく、まいりましょう。


◆旅立ち。
水上都市の冬はアランツァのなかでは恵まれているほうだ。
大陸西方にある砂漠の地で生まれ育ったグラント教授は、そう思っていた。

貧しい一家に生まれた彼は高齢の両親を看取った後に、弟とともに故郷を出た。
諸都市を旅した後に、聖フランチェスコで職を見つけてオレニアックス剣術学校の講師となった。
オレニアックス剣術学校はもともと剣術を教える学校であったが、少数精鋭のエリート育成クラスが今はある。
世界を見てきた貴重な存在として、彼はそこで「生物学」を教えてきた。
モンスターを中心にした授業である。

今年、彼は生物学の授業を休講にして旅に出る。
職を辞するわけではない。
その学問の性質上、フィールドワークが欠かせないのだ。
モンスターを中心に扱う授業では、世界はいちど見てまわれば十分と考える向きもある。
しかし、実際にはそうではない。
彼が教えるのはモンスターの性質だけではない……冒険者として未知の危険に対抗する手段や、現地の人間たちがどのように対応しているかの知識なども、同時に身につけられるように教える必要があるのだ。
冬が終わる前に、カメルは出立しようと思っていた。


◆出立。
聖フランチェスコ市の気候は一年を通じて安定している。
冬は曇りの日が多いものの、雪が降ることはほとんどない。
街は高い城壁でぐるりと囲まれていて、モンスターに突破されたことはない。
街のなかには水路が巡らされていて、ゴンドラで移動ができる。

穀物スコップ大通りを歩く。
笑い合う人々の声を聞きながら、カメルは奇妙な気持ちになる。
考えてみれば、ここはこの世界のなかでも異質な空間だ。
アランツァにはたくさんの水路がある、なんなら陸路よりも盛んに使われているぐらいだ。
だが、その水路が街じゅうに張り巡らされている街はそう多くない。


◆街の中央にあるみっつの広場。
聖フランチェスコの中央には、みっつの広場が連なっている。
西から「道化師広場」「藍玉広場」「天使広場」だ。
「道化師広場」では一年中テントが張られていて、サーカスを見ることができる。
この街ではサーカスが盛んだ……悪名高いウォー・ジェスター(※)は、かつて聖フランチェスコの宮廷道化師だったという。
「藍玉広場」は天気のいい日には夕方になると、美しい藍色に染まることでその名がついた。
「天使の広場」はもよおしものが開催されるときに使われる場所で、「天使の花嫁」と呼ばれる祭日のイベントからその名が来ている(※※)。


◆オレニアックス聖池。
「この池はね、聖フランチェスコ市を流れる水が、最初に領内に流れ込む場所なんだよ。かつてここを支配していた黄金の龍を、天使ハナエルが手をかざして従えさせて、それで池の水を使えるようになった。それが、聖フランチェスコ市のはじまりの物語なんだ」
  ──ハナ・ヴィトリッチの言葉 『水上都市の祭日』 340パラグラフより

この街でもっとも目を引く存在は、巨大な黄金の龍だろう。
像ではない、本物の龍だ。
といってもほとんど眠っていて、起きているところを見たことのない住民もいるほどだ。
黄金龍は名前をオレニアックスといって、賢く、そして容赦のない龍である。
この街と龍がもっと若かった頃、数多くの外敵と戦い、街を守ってきてくれた。
この龍は人を食わず、黄金を食料とする。
龍にしては性格が温和で、恐怖ではなく契約によって街との関係性を樹立したのだ。
だが、今は食料の黄金も食べず、聖なる池の前でほとんどの時間を眠っている。


◆罪人(つみびと)の輪。
手続きを済ませて、カメルは街の外に出る。
街の外壁には鉄の輪がぶら下がっている。
「罪人の輪」だ。

 聖フランチェスコはその名のとおり非常に宗教的な都市で、罪を犯した者も悔い改める姿勢があれば、街の中に入れてもらうことができた。だが街の門は日中しか開いておらず、夜の間に逃げ込んできた罪人たちは、追っ手の前に命を落とした。
 その状況を嘆いた聖フランチェスコは、王に頼み街の南側にいくつもの鉄の輪を設けた。「この輪にぶら下がる者は、ぶら下がっている間は罪を問われない。」種族、人種、民族を問わず、聖フランチェスコと王はそう定めたという。
   ──『闇の森を抜けて』 82パラグラフより

信仰心を持たないカメルには、その輪が奇妙なものに見えた。
この輪の効力を守るため、フランチェスコの王は街の外に住む他種族に対しても「この輪にぶら下がるものに危害を加えた場合、聖フランチェスコへの宣戦布告となる」と知らせてきたという。
この輪はアジール(統治領域の及ばない「無縁所」)とみなされているが、実際にはそうではない。
聖フランチェスコの力によって、守られているのだ。

カメルは街を一瞥すると、前を向いた。
そこから先は、振り返らなかった。


◆補足1:「闇の森」。
聖フランチェスコは公平にみて、アランツァでもっとも恵まれた土地のひとつと言えます。
北にはポートス川を挟んで砂漠地帯があり、南には闇の森が広がっています。
西は海に面していて、東に抜ける主街道だけが他の都市につながっています。
気候に恵まれながら、他種族の侵略も受けづらい地理的優位を有しているのです。

聖フランチェスコの南側には、「闇の森」と呼ばれる森林地帯が広がっています。
正式名称は黒森。
大陸東部にある「還らずの森」と同じく、黒っぽい幹と葉をもつ木(黒木=ブラックツリー)がこの名称の由来です。

森のなかにはゴブリン、犬人、ホブゴブリンなどが生息します。
犬人とホブゴブリンは非友好的ではあるものの、聖フランチェスコとは中立の立場をとっています。
信頼できるとみなされれば、交易も可能でしょう。

ゴブリンは「ゴロゾフ」の名前で知られる一族が幅を効かせています。
他の地域よりも小柄で素早く、数が多いため厄介です。
彼らは一般的なゴブリンよりも繁殖力が高いため、森のあちこちで見かけるでしょう。
とはいえ、1匹1匹の強さは大したことがありません。


◆補足2:水路、ポートス川、アリクララ湖。
ここは街のなかだけでなく、近隣地域も水に恵まれています。
聖フランチェスコに面した西側の海から、海路を使ってサラザール地方に移動することができます。
また、ポートス川をさかのぼっていくことで、商業都市ナゴールへの主街道を使うよりも早く、安全に移動して、かえる沼の南端、桜森の北端にあるベルトラン村まで移動することができます。

これらの水路に大きな危険はありませんが、ポートス川の北にあるアリクララ湖に行った場合には話は別です。
この湖には肉食の巨大イカが生息しています。
イカの大きさはさまざまで、大きくなるほどその数は減っていきます。
ごくまれに、とてつもなく大きく成長することがあり、そうした場合にはクラーケンと呼ばれます。
クラーケンは危険な巨大生物ですが、アリクララ湖畔に住むイルフムの町の住民ですら、遭遇することなく一生を終えることの方が多いでしょう。


◆補足3(加筆):芸術の都。
聖フランチェスコは芸術の都です。
音楽の都として有名なのは自治都市トーンですが、聖フランチェスコは美術、工芸、建築で有名です。
ガラス細工や仮面などの工芸品も有名ですし、多くの有名画家を抱えるパトロンとして「ヴィトリッチ家」が知られています。
建築に関しては歴史あるチャマイに次いで、繊細かつ美しい大聖堂や噴水広場が観光名所として存在します。


◆まとめ。
カメルの旅がはじまりました。
このラクダ人はこれから「商業都市ナゴール」へと向かいますが、次にご紹介するのはナゴールではありません。
「ローグライクハーフ」の2ndシナリオ『混沌迷宮の試練』の配信に合わせて、時系列を飛ばして「混沌都市ゴーブ」をご紹介いたします。


それではまた!


アランツァ世界地図↓
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png


この地域に関連するゲームブック作品……『水上都市の祭日』『闇の森を抜けて』『ガルアーダの塔』
この地域に関連する「ローグライクハーフ」シナリオ……『黄昏の騎士』


※……ウォー・ジェスターはアランツァ世界に存在する熟練の傭兵。道化師のような仮面を着用する。超人的な身体能力をもち、板金鎧を着けたまま跳躍することもある。
※※……詳しくは「天使の花嫁」の祭日を描いた作品『水上都市の祭日』を参照。

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