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2024年4月11日木曜日

『この先のゲームブック、あの頃のゲームブック』第2回 FT新聞 No.4096

■この先のゲームブック、あの頃のゲームブック 第2回■

おはようございます。紫隠ねこです。
今日は「ローグライクハーフ」d66シナリオ『ドラゴンレディハーフ』の元となるゲームブック、『竜の血を継ぐ者』についてお話します。


◆『ドラゴンバスター』について
『ドラゴンバスター』は、1987年に東京創元社が刊行した「スーパーアドベンチャーゲーム」シリーズの作品です。著者は古川尚美さん。
このゲームブックは、ナムコ(現バンダイナムコ)のアクションゲーム『ドラゴンバスター』を原作としていました。
主人公はローレンス王国の剣士クロービス。剣術の修行に励む彼は、ある日、幼馴染でもあるセリア王女がドラゴンにさらわれたこと、そのときにセリアを守ろうとした親衛隊の隊長である父セリアズが命を落としたことを知らされます。
国王からドラゴン退治を命じられたクロービスは、父の仇を討つため、そして愛するセリアを救うために、冒険の旅に出発します……。
ゲームブック版の『ドラゴンバスター』は、一度訪れた場所に、再び立ち寄ることが可能な「双方向移動型」の構造になっており、各ダンジョンを攻略していくコンピュータRPG寄りの作品となっていました。

敵との戦闘はわずか1ラウンドで解決。お互いの攻撃力を比べて、クロービスの方が上回っていれば戦闘に勝利。逆に敵の方が上回っていれば、クロービスはダメージを受けた後、その場から逃走します。
「えー、たった1ラウンドしか戦わないの?」と思うかも知れませんが、クロービスを強くするためには、何度も戦闘を行う必要があるので、進行のテンポの良さを重視したのだと思われます。
ただし、ボス戦ではお互いの体力を削りあう激戦となるため、無用な怪我をしないに越したことはありません。
戦いの果てに迎えるエンディングは、少し寂しさを覚える展開なのですが、それは決して悲観的なものではなく、一つの大きな目的を成し遂げたクロービスが、新たな道へと進んでいくことを予感させる結末となっています。


◆『竜の血を継ぐ者』について
『竜の血を継ぐ者』は、2004年に創土社の「アドベンチャーゲームノベル」シリーズの新作として刊行されました。
元々は『ドラゴンバスター』を復刻する予定だったのですが、当時は版権元であるナムコ(現バンダイナムコ)からキャラクター使用の許可が下りず、原作ゲームに関連する固有名詞を使わないという形で、作者名義も中河竜都となり、リメイクの実現に至ったそうです。
冒険の舞台となるのは、三女神によって守られたローレンシア王国。邪悪なドラゴンにさらわれた王子を救出するのが使命です。シナリオプロットを箇条書きにすると、それほど変化は感じられません。

しかし『竜の血を継ぐ者』は、キャラクターやモンスターの名称を変更するだけではなく、大胆なアレンジが加えられています。
主人公がクロービスから女剣士レイラに変更され、本文も従来のファンタジーゲームブックでは定番だった二人称から、レイラの目線で語られるようになります。
また、新規のイベントが追加されたことで『ドラゴンバスター』よりも遊びやすい難易度に調整されています。同じようで、まったく違う作品。それが『竜の血を継ぐ者』という作品でした。


◆レイラの物語
『竜の血を継ぐ者』の主人公であるレイラ・ヴィークの物語は、夜間の逃走劇から始まります。
両親の顔を知らないレイラが育った孤児院は、表向きは「孤児院」を装っている奴隷市場。
一人で生き抜くための技術と知識を学ばされるのは「商品」としての価値を高めるためであり、教育の成果があがらないようであれば、食事を抜かれ、暴力も振るわれる。何かしらの秀でた能力を持たなければ、生きてはいけない。身寄りのない子供たちが暮らすには、あまりにも過酷な環境でした。
そのような生活に耐えられなくなったレイラは、恋人のエリックとともに孤児院からの脱走を試みますが、背後から迫る追っ手を引き離すことはできません。
このままでは二人とも捕まってしまう。そう判断したエリックは、自分が愛用していた剣をお守り代わりとしてレイラに渡すと、彼女を逃がすために囮役を引き受けます。
その後、エリックが無事に逃げ切れたのかは分かりません。悪夢のようだった孤児院も、不法な施設だったため、正確な場所はつかめずじまい。しかし、レイラは追跡を振り切り、生き延びることができました。
その事件から二年が過ぎ、現在のレイラは冒険者としての人生を歩んでいます。大陸の各地を冒険し、剣士として戦いの経験を積むことで、あの頃から自分が強くなったことに彼女は喜びを感じています。
冒険生活にも慣れ、束の間の休息をとるためにローレンシア王国を訪れたレイラ。そこでは、王国の王子イアンがドラゴンに誘拐されたという話で持ちきりになっていました。
レイラが驚いたことに、イアン王子の顔はエリックの生き写しのようでした。これに運命的なものを感じた彼女は、王子を救出するための冒険に出発します……。

『竜の血を継ぐ者』の冒険は、基本的に『ドラゴンバスター』のものをベースにしています。
魔物を倒して戦闘経験を積んでいき、王国を守護する三女神の助力を得て、最終的にドラゴンたちの本拠地である大洞窟に乗り込むのですが、終盤の展開が旧作とは大きく異なります。

ドラゴンとの戦いに身を投じる中で、レイラは自分の出生の秘密を知り、そしてそれまでの行動によって、物語のエンディングが分岐する構成になっているのです。
ローレンシア王国のためにイアン王子を救出するのか、それとも行方知らずとなったエリックの面影を追い求めるのか。
その選択次第で、冒険全体を通したレイラの運命が変化していきます。ゲームブックのリメイク作品としても、これは珍しい要素だと思います。
オリジナルの内容に忠実な『ドラゴンバスター』の復刻は叶いませんでしたが、どのような困難も乗り越えていくレイラのように、中河先生は新しい物語を生み出したのです。


◆『ドラゴンレディハーフ』について
2023年夏には『ローグライクハーフ』の公式d66シナリオとして、FT書房と『竜の血を継ぐ者』のコラボ企画になる『ドラゴンレディハーフ』の制作が開始されました。
原作のエンディングは複数用意されているのですが、本作では「イアン王子を救出して王国に凱旋する」という結末を元に、それから数年後のローレンシアを舞台としています。

制作にあたって、最初に決めていたのは「主人公がレイラと共闘することはない」ということでした。過酷な冒険を経たことで、レイラは自らの宿命に決着をつけているからです。
ローレンシア王国での冒険が終わり、新しい道を進み始めたレイラは、本作ではFT書房のファンタジーゲームブックの舞台となるアランツァ(ラドリド大陸)を旅しているという設定になっています。
これはコラボ作品としてのゲスト出演という枠にとらわれず、他の人たちが考えた作品世界とアランツァをつなぐという大切な意味を込めています。

残念ながら『竜の血を継ぐ者』は絶版となっているのですが、人と龍が対峙する世界観に魅力を感じていた杉本さんと私は、レイラが冒険の中で出会った人々や魔物たちを作品に登場させることで、中河先生が手がけたローレンシア王国の風を伝えようと思いました。
ゲーム面においても、アクションゲームの『ドラゴンバスター』のように、各冒険の最後に龍と対決するというコンセプトで制作され、原作となる『竜の血を継ぐ者』を知らなくても冒険を楽しめる作りにしています。
一昔前のファンタジーRPGでは、龍を退治するということは、冒険者にとって最大の挑戦でした。手強い冒険になりますが、その挑戦的な冒険を、上手く形にできたのではないかと思っています。

また、本作のイラストについては、プロの漫画家である成田芋虫さんにお願いして頂きました。
恐るべき龍に立ち向かう冒険者、主人公の前に立ちふさがるクリーチャーたち、冒険の中で手に入れる珍しいアイテム。
古き良きファンタジー作品を思い起こさせるイラストによって、本作には新たな生命力が与えられたと思います。
成田先生、そしてローレンシア王国の世界観をお貸しいただいた中河先生には、この場を借りて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

昭和の『ドラゴンバスター』、平成の『竜の血を継ぐ者』、そして令和の『ドラゴンレディハーフ』……。
時代とともに形を変えていきながらも、その源となるものは受け継いでいく。
作品を手に取ってくれた方、また今回の記事を読んで『ドラゴンレディハーフ』に興味を持ってくれた方へ、ローレンシア王国という新しい風を感じて頂ければ幸いです。


≪書籍情報≫
●『ドラゴンバスター』(文庫) 1987/12/7(絶版)
出版:東京創元社
著者:古川尚美
装画/挿絵:寺田克也


●『竜の血を継ぐ者』(四六判) 2004/3/31(絶版)
出版:創土社
著者:中河竜都
挿絵:高橋政輝
装画:目黒詔子


●『ドラゴンレディハーフ』ローグライクハーフd66シナリオ(B5版) 2023/12/9  \1,980
出版:FT書房
著者:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
監修:中河竜都
装画/挿絵:成田芋虫
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/dragon


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