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2025年1月22日水曜日

第5回【最期の日に彼女は】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4382

第5回【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ


※ここから先はゲームブック【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


ぜろです。
「最期の日に彼女は」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探します。
しかしレナは遺体で発見されます。さらにレナの遺体は忽然と姿を消してしまいます。
レナの遺した動画には、人間社会に溶け込んでいる生物『スケトレス』の存在が語られていたのでした。
ハナは決意します。姉レナの研究室を訪れ、その死の真相を探ろうと。


●アタック01-12 スケトレスとモールス信号

レナの携帯電話に残された、ほかの動画も確認していく。
ほとんどの動画は、日常が切り取られている。
姉妹で遊びに行ったときのもの、かわいい動物を映したもの。
レナが携帯を操作しているため、映っているのはほとんどが私だ。
けれどもそこには、日常を楽しむレナの声があった。そのひとつひとつに、つい手が止まる。

その中で、明らかに異質な動画が、ひとつだけあった。

暗い、無機質な部屋。
特徴のない50代の男。
小首をかしげながら、携帯電話を覗き込んでいる。
まるで、携帯電話というものを、初めて知ったかのようだ。

私は確信した。
こいつ……人間じゃ……ない。

演技とか病気なんてものじゃない。もっとおそろしいものだ。

——人間社会に溶け込んで、自分の主人のために、世界を破滅に導こうとする『スケトレス』……。

これが、スケトレス……。

その男は、声のような、音のようなものを発した。
短い「コッ」という文節と、長めの「グー」という文節だ。

画面の端に、本が映った。「よくわかるモールス信号」

モールス信号?

「グーグーグーグー、コッグーコッグー、コッグーグーグーコッ」

この文節を覚えておけば、次に聞いた際にパラグラフジャンプができるという。
モールス信号なら、実際に意味がある言葉だろうか。

ちょっと検索してみた。
しかし、該当する文節は見つからない。なんで?
不思議に思いながら読み進める。そうしたら、あった。

私がさっき見ていたのは、アルファベットを示す欧文モールス符号。
その下の方に、和文モールス符号を発見した。

あてはめていくと、こうなる。

「コ」「ロ」「セ」……。

「殺せ」。

誰かに命じているのか、命じられているのか、わからないが、そう言っている。
これで、わかったことが増えた。

少なくとも、日本語を理解できる知能がある。
なぜかはわからないが、発音はうまくできない可能性がある。
そして、モールス信号を学習するなり「殺せ」なんて発言してしまう物騒な思考をしている。

レナの携帯電話を握りしめる。
よくはわからないが、存在するんだ。「スケトレス」っていう得体のしれないものが。

レナの遺言は、実行したい。レナの研究所に行こう。


●アタック01-13 ヤマト感染研究所

・堂々と正面から乗り込む
・姉の社員証を使って侵入する
・姉の恋人に連絡する

ヤマト感染研究所を訪れるための選択肢が並んでいる。

普通に考えれば、正面から堂々と行けば良い。
亡くなった姉の私物を受け取りに来た、と言えば、何の問題もない。
しかし気になるのは御国とかいうあの上司。レナは「ストーカー」と言っていた。実際、感じの良い印象は持たなかった。
できれば、顔を合わせたくない。
双子だから、変に気に入られてしまう可能性だって考えられる。
会社組織なのだから、ちょっと調べればここの住所だってわかってしまうだろう。
むしろ、すでに突き止めているに違いない。レナはだから、あの日帰らなかったのだ。

姉の社員証を使って侵入するのは、あまり良い手には思えない。
私から連絡して、姉の死を告げてしまっているからだ。
姉の社員証をすでに失効させていれば、通した時点でエラーが出てアウトだろう。

姉の恋人に連絡、か。
正直、あの新名という人のことは、よくわからない。
でも、私は、連絡しても良いような気がした。
レナの人間観察力が信じられるかはわからない。けど、レナが選んだ人なのだ。
きっと、レナのことを思い、行動してくれる。
それに、「スケトレス」なんて大きな秘密、私ひとりで隠していることはできない。
誰かと共有しないではいられない。

また、私というよりプレイヤーの方の事情によっても、私にはこの人物を巻き込みたい理由があった。
それは……主人公は私ハナだけれど、この新名という人物こそが、プレイヤーの私と立ち位置を同じくする人物だからだ。私の分身と言ってもいい。
この説明では事情はわからないだろうけれど、それはまた、感想のときにでも語らせてもらおう。

新名に連絡し、事情を話した。
新名は、快諾した。

「行きましょう。私も、不審な点があるのなら明らかにしたい」

そう。それが恋人としての正しい態度だ。私でも、きっとそうする。
新名は話した。彼は医療機器メーカーの営業。姉との出会いは、研究所の食堂で同じテーブルについたのがきっかけ。
つまり彼は、ヤマト感染研究所には何度も出入りしている。不自然さはない。

社員証が有効ではない可能性も考え、関連会社の人間が使う裏口を案内してくれるという。
そこまで考えてくれるとは。

新名と待ち合わせ。
なるほど、ビシッとしたスーツを着たバリバリの営業マンって感じだ。
レナが、私以外の人に心を開くなんて、聞いたことがなかった。
それだけでも、大したものだ。

裏口から、何食わぬ顔で入ることができた。
食堂を抜け、廊下を歩く。
新名が足を止めた。

「この先は研究棟。ここからは一緒に行けない」
「十分です。ありがとう」

私は新名と別れた。ここから先は、私ひとりでどうにかしなければならない。
心の中で新名さんに感謝する。レナが好きになったのも、うなずけると思った。

先へと進む。
私は一応、レナの社員証は首からかけている。
レナの死をまだ知らない社員がいれば、ごまかせるだろう。

案内図で、西宮レナの研究室の場所を確認。
誰にも見とがめられることなく、研究室の前についた。


●アタック01-14 武器とワクチン

研究室の入口は、6桁のパスナンバーを入力するようになっていた。
私の中に、ある記憶がよみがえる。
ツイーター(エクウス)をチェックしていたときのことだ。

<携帯のほうは
 彼氏の名前に
 してやった
 妹ラブすぎて
 かわいそうだからナ>

携帯じゃないほう。
それはつまり、この研究室のパスナンバーを指していたのだ。
携帯のほうが彼氏の名前ということは、研究室は、私の名前なのだろう。

そして今ごろになって気がついた。
彼氏の名前、新名弥四郎。これにも数字が隠れていることに。
新名弥四郎。2-1-7-8-4-6。合計すると28。
携帯のロック、私は指紋認証から入った。このナンバーでもロックを外せるのでは?
本筋から離れて、ちょっと見に行ってみた。
携帯のロックは解除された。

なるほど。謎を解く方法は、1つではなかったみたいだ。
ここでさらに気がついた。
ストーカー上司御国獅子丸も、3-9-2-4-4-0と、数字に変換できることに。
だからって、なにを試すつもりもないけれど。

さあ、目の前の研究室のパスナンバーを入れよう。
西宮ハナ。2-4-3-8-8-7。合計のパラグラフに、跳ぶ。

ロックが解除され、私はレナの研究室に入ることができた。

ここにはなにがあるのか。
動画のレナは言っていた。

「あいつから身を守るワクチンと、武器が入っているから」と。

ワクチンと、武器。

研究室の中は、マスクやら消毒用アルコールなどが並ぶ、いかにもな場所だ。
部屋の隅にある荷物。これかな。

私は荷物の紐を解き、開封した。
中に入っていたのは、フラスコが数本と小さな箱、USBメモリだ。
まずはUSBの中身を確認しよう。

部屋にあるパソコンを起動。USBを差し込む。
ヤマト感染研究所で研究を行っている、ある生物についての資料だ。

スケトレス。

人間の骨に寄生した後、数日かけてまるまる骨格と入れ替わってしまう。
人間社会に溶け込んで生き続けている。
旧世界の神を信仰する知的生命体で、人間を憎んでいる。
骨格を意味するラテン語から「スケトレス」と命名。

憎んでいる人間に寄生し、乗っ取った後は憎んでいる人間社会に溶け込んで生活しなければならないのか。
スケトレスとして生きていくのもストレスがたまりそうだ。ストレススケトレス。

フラスコには「王水」と書かれている。
人間を骨まで溶かす、強力な薬品だ。
つまり、これが「武器」か。

なら、残る小箱はワクチンということになるが。
小箱の中には注射器と、透明な薬品のアンプルが入っていた。

・注射を自分に行う
・今はしたくない

私はレナを信じる。だから、今このタイミングで注射しておこう。

私は「王水」のフラスコを手に、研究室を出た。

角を曲がったところで、背の高い不気味な男にはち合わせた。
異様な雰囲気に逃げようとする。しかし腕をつかまれ、ネイルガンのようなものを押しつけられ、その中身を射出された。痛みが走る。
いきなりやられた! これはスケトレスの卵を寄生させにきたに違いない。
ワクチン(と思われるもの)の注射は、あのタイミング以外ありえなかった。

が、抵抗はできなかった。そのまま頭を殴りつけられ、私は気を失った。


次回、身体を乗っ取られた姉の姿をしたスケトレスが現れる


■登場人物
西宮ハナ 主人公。双子の妹。無職。
西宮レナ 主人公の双子の姉。ヤマト感染研究所勤務。遺体で発見され、その遺体が警察署から消えた。
新名弥四郎 西宮レナの交際相手。
御国獅子丸 西宮レナの上司。ストーカー気質。その正体は……。

■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「最期の日に彼女は」
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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2025年1月21日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.115 FT新聞 No.4381

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.115

 かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■


 さて、あなたの前に美少女が。
 一人目は、スレンダーで胸も出ていないロリっ娘。エルフ耳付き。
 二人目は、胸もスタイルも抜群な、露出度高めガーターベルト付きおネェさんです。
 三人目は、小麦色の肌も眩しい、ちょっと小悪魔系のギャル。
 四人目は、見た目男ですが、男装の麗人、というやつです! もちろん男の娘、と見ても、一向に問題ないッ!
 そんな中、男は主人公ただ一人の黒一点。
 しかし、黒一点でも「ぼっち」が付くのでしたー。

 みなさんはハーレム物お好きですかー?
 かなではちょっと……。
 うん。かなでがもてもてでしょうがないからだよ。
 ウソですが。
 FT書房読者の大半を敵に回しそうなセリフを吐きながら、バーチャル図書委員長かなでひびき登場!
 今回紹介する本は『ネクラ勇者は仲間が欲しい』(著 羽根川牧人 ファンタジア文庫)だよっ!
 で、おにゃのこの大群の中にオス一匹となると……。
「うにゅー! 勇者様! もう好き好き!」
「して! あたしをめちゃめちゃに仲間にして!」
「オレの歌を聴けー」(幻聴的ななにか)
 みたいな、メアリー・スーで俺だけTUEEEEEE! ヒャッハー的なこれなんてバーチャル恋愛? 世界が広がる。
 普通は期待しちゃうよね。

 だけど、これは違う。
 いや、主人公、クラム・ツリーネイル(通称ムッツリネイル)がめちゃくちゃ赤の他人としゃべるのが苦手で、心の声が独り言になって出てくる。ぼっちなのを他人のパーティの会話盗み撮りした録音で心を満たすしかない。など、ぼっちの証を多数持つ。
 しかも音声トラックコレクション。
『仲間って、本当いいもんですねー』
『お前をリーダーにしてやるから、俺を仲間にしてくれ』
 一人呑みの寂しさを紛らわすときには『乾杯これくしょん(乾これ)』
 他人の不幸をネタに陰鬱な気分を晴らす『ギリアム、パーティやめるってよ』(ギリアムが誰かは主人公は知らない)
 と凝ったネーミングの自家製サントラを作るいう丁寧さ。
 そう。この本がリアルモテモテ帝国だったら、かなでも紹介しない。
 主人公はこのように、にコミニュケーションの場になると別人のように噛みまくる、独り言を呟くぼっちこじらせだし。

 って、登場人物ひとりひとりのダメさ加減をあげてもいいんだけど、とにかく本文読んで!
 
「どうせあなたもあたしの身体が目当てなんでしょ」→「(注かなで・ぼっち」はぼっちでも、最低の独房ぼっちになる事ウケアイ(ハート)
「いやいや、まふまふ」
「ユウシャのユウは誘拐のユウ」
「あたしってエルフの中でも超尊い、いわば『超エルフ』みたいな存在だし」
「剣王様は排泄しないんだから」
「十回に一回は即死しますが」
「思想が腐るだけなら良かったのですが」
「身も心もアタシ色に染めたあとにボロ雑巾みたいに捨ててやるけどねっ」
「それってなんてBL!?」
「薄い本ってなに!?」

 煮ても焼いても食えないけど、蒸して食べればうますぎる会話が当社比80パーぐらいを占めてる。

 大体、本来なら主人公のラスボスに当たってもいい、魔王バルザークの末っ娘。
 来る人みな返り討ちに合わせる紫煙の迷宮に住まう「堕落の悪魔」と呼ばれる、ルージェント・ルーフレットその人自ら、
「うっきゃあー! スマホンだ、スマホンだー! うひょおおおー! これでアタシもイマドキ女子の仲間入りよぉおー!」

 どんだけ仲間に飢えてンすか!?

 ヒロイン格であるエルフっ娘、ミーチカ・オルレインも、可愛さと天然をこじらせ、森を半分焼き尽くすわ、主人公に当たり前のようにナチュラルに飲み代やら部屋代を払わせている「ヒモエルフ」
 あるいは、前挙げた悪魔っ娘、ルージェント・ルーフレット。。
「ただ相手を弄んで身も心もボロボロに」するため、と、いうしかそれしか対人スキルがないとみ言える。そのために仲間になったわけだし。
 じゃ、唯一まとも系に見えそうな僧侶系セクシーお姉さん、ダウリナ・ブランジットは、隙あらばボーイズ・ラヴの話しかしないし、それで頭がいっぱいでおっぱい。
 そもそも、主人公と仲間になりたがるのは、リアルカップリングがマジで見られるからかもしれない。
 危険極まりない!? 死霊系の魔法を使う司祭。

 当然のことながら、主人公を含め、お互いに「パーティを組む」ような仲間じゃないなー。っていざこざを起こしまくってるので、もうそのへんはあきらめた感が漂っているのが、このお話の面白いところね。

 だけど、「トモダチ以上パーティ以下」
 いつもゆるゆるでつるんでいるし、いざとなったら助け合う、その辺の「友情の深さ」もあるのがかなでのツボ!
 この独特の「絆」は、ベタベタしたもんじゃなくって、スッキリさわやかなのがいいよねー。
 考えてみるに、それは「お互いにこいつをパーティの仲間と認めてない」ということに起因してるのかも。
 つまり、それは、「みんなそれぞれに目的がある」
 ミーチカは人知れず悪を成敗するのセイギノミカタ「影の剣王」とパーティを組みたい。
 ルージェはとにかく仲間を弄んで暇つぶししたい。
 強いて言えば、ダウリナはクラムとパーティを組みたいけど、クラム側が「いろんな意味で危険」と引いている。
 それはつまり、各メンバーが「自立」している。
 誰かに依存するのではなく、お互いに「一線」を守っている、尊重しているから、かえって絆が深くなる。そんな一例だと思うの。

 加えて、この手の作品内で出てくる「凝った設定」がしゃしゃり出てくる、ってことがないっていうのも、かなでは多いに気に入った要素!
 ほら、あるじゃない。突然に設定、あるいは「その作品独自のキャラのしゃべり」がとうとうと出てきて「読者どっちらけで作者だけ満足」している感が。
 だけど、この物語はそんな「語り」の要素が薄い。
 じゃあ、なんで勝負しているのか!? といったら「シチュエーションコメディ」ね。
「そんなつもりで言ったんじゃない」言葉、行動が、他者の誤解を呼び、だんだんと騒ぎがでかくなる。
 例えば三谷幸喜先生? いや、『Mr ビーン』かな?
 この辺の組み立て方がいいし、テンポよく進む文章がさらにそれを加速してるわ。
 イマドキのファンタジーの「モテモテ」「俺TUEEEEE!」っぷりに一石を投じる一本!
 その手のファンタジーに飽きた、あるいは、これからファースト邂逅をする、って方にも。両手挙げておすすめできる!

 見逃せば後悔することウケアイ。


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

『ネクラ勇者は仲間が欲しい』
 著 羽根川牧人 イラスト ROZER
 出版社:株式会社KADOKAWA 富士見ファンタジア文庫 文庫本 2016/3/19 660円(+税) 

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2025年1月20日月曜日

フォレストマスターへの道3 FT新聞 No.4380

おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
冬が後半に差しかかり、気温はより低く、しかし日照時間は少し伸びてまいりました。
私の体調は日照時間に影響されるため、この寒さにも関わらず、少しずつ調子がよくなりはじめています。
しかし、今年はやや大きめにカーブを曲がり損ねてしまったので、おとなしめで物事を進めております☆
フォレストマスターへの道、ヒーローズオブダークネス、アランツァワールドガイド、新職業、ロアや丹野氏や水波さんのRLHシナリオの確認などをしております。
おとなしく進めていますが、意外とやることが多いんです。


◆フォレストマスターへの道☆
読者参加型企画「フォレストマスターへの道」は、早くも11名の方から〈できごと〉をいただいております!
29の〈できごと〉が埋まりましたが、どの〈できごと〉にも1個以上の空きがあります。
空きという話では「魔法の宝物」表に関しては、まだすべての項目が空いております★
最大出目に関しては「ドール」シリーズを通常置いておりますので、杉本のほうで準備するのがいいかなと考えています☆


◆雰囲気がいい!
個別の〈できごと〉に関するコメントは差し控えているのですが、どの〈できごと〉もアランツァ世界、さらには桜森という場所について、よく考えてくださっているものばかりです!
そこに、それぞれの方の個性もちゃんと乗っていて。嬉しくなります。
作られた方の個性と世界観が両立しているというか、融合しているというか……。
新しい奥行きが世界にもたらされているような、不思議な感覚を目の当たりにしています。

桜森と冬の終わり 第3週
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/CherryBlossomForest_and_EndofWinter_Week3.txt


◆今週の「ヒーローズオブダークネス」は……☆
今週は大型アップデートです!
アランツァを代表するクリーチャー【ゴーレム】が【種族】として解放されました!
なんと、死亡した主人公を【ゴーレム】として再登場させられるルールの登場です☆
【ゴーレム】という光に隠れて【ガーゴイル】もお目見えです……こちらは地味めな【種族】です。
もちろんね、派手じゃない【種族】もいていいと思うんだよね。

ヒーローズオブダークネス(HoD)【種族】ゴーレム
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_HoD_NewKindred_Golem.txt

ヒーローズオブダークネス(HoD)【種族】ガーゴイル
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それではまた!



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2025年1月19日日曜日

ショートショートゲームブックvol.14『猫、受け継がれる命』 FT新聞 No.4379

 この作品は20禁です。
 20禁ということは、「大人である」という覚悟があるということです。
 世の中には、私を含めて、30や40過ぎてもオトナでない方も多いかとは思いますが、その方には絶対にお勧めできません。
 さて、あなたは20歳以上ですか
Yes→1
No→残念ですが、あなたの冒険はここで終わります。預金通帳などアダルトな本を読んではいかがでしょうか?

***********************************************************************

(Cat)
うちうちのことでつまづきあれば、蹴とばし用に自然が備えてくれた、ふんわりとし、けっしてこわれることのない自動人形。
(A・ビアス 『悪魔の辞典』より)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『ショートショートゲームブック』vol.14
猫、受け継がれる命 
     葉山海月

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

#1
 人はどうしていなくなってしまうのだろう。
 猫はどうして死んでしまうんだろう。

 三日前、俺のにゃんこが死んだ。
「俺の」というのは、語弊があるかもしれない。
 ゆきずりで、鼻水たらしてげろ吐いて倒れているところを、俺が拾っただけだ。
 その動機も、ただ幼稚園児のお題目で「かわいそうな命には、手を差し伸べねばならない」ただ、そういう理屈だった。

 回想を続けるなら→6か20
 現実にもどるなら→22
 トイレをすますなら→24


#2
 いよいよテンパった俺。
 俺は結局は孤独で、ぼっちで……

 さて、ここまで書いてまいりました。
 彼をさいなんでいる悩み。
 実は、それを解決するような出来事が起こっているかもしれません。
 実は、その出来事が起こったパラグラフに、次のジャンプ先。その数字を仕込んでまいりました。
 分かったらそこへジャンプ!

 思いつかなければ→25へ。


#3
 オーノー!
 俺はショックを受けた。
 アリエナイ方向に曲がった足。足から突き出す白い棒のようなもの!
 あれは! そ、想像したくない。
 だけど、想像したくないものであればあるほど、見てはいけないのであればあるほど、想像も視線も、せきを切ったように、そっちへ集まる。
 ここでは、書くことがはばかれるような……。
 いや、気が弱い俺には、とても書けないっ!
 ただ一つ、わかっていること。
 足が、節がっ! アリエナイ方向へ曲がっている。
 つまり。
「折れている」
 そして、折れている足を引きずる猫はっ!?
 俺らがクロやんではないか!?

 説明しておこう、クロやんというのは、野良である!
 片目なんか潰れ、一本もない歯からは、常によだれが垂れている。
 しかし、ひたすらジェントルで温厚な猫なのだっ!
 例えば、いつも女、子どもを優先して、餌の順番を譲る。
 例えば、ご近所周りを欠かさない。
 他の家の軒下で、慕われているところを見たこともある!
 温厚でおとなしく、猫にありがちな「俺が俺が」感がない、謙虚な猫!
 だから老若男女、人間、猫を超えて、とにかくモテた!
 常に彼の周りには、老猫から若い子まで、女の子が寄り添っていた。
 しかし、ついに最近ものが食えなくなり、一か月ほどいなくなっていた!
 彼のファンである俺。病んでいるときは即座に病院に行き、彼が来たら仕事もなによりも優先して餌を出していた俺。心配しないわけがない。
 で、久々に会うとこのざまだ!
 俺はすかさず、奴に近づいた!
 シャー! などという言葉は追っつかないくらい、竜が火を吐くほどの迫力の威嚇とともに、彼は暗闇に消えた。

 以上、一か月がたつ。
 しかも、温度はマイナスの氷点下!
 氷まで張って水道管が壊れるほどだ。

 猫は年をとると、化けて猫又になるという。
 しかし、化けて出てきてほしい! 食われてもいいから

 現実に戻るなら→15
 妄想にひたり続けるなら→20


#4
 何について考える?
 あれについて→7
 これについて→20


#5
 憂さ晴らしに見ているヲチ板。
 ネット上で低IQな言動、行動を発しているやつ。
 その言動などを、匿名掲示板のスレを使って、さらす。
 オチ対象は、憎くて仕方ない「ローカルタレント」を、殺人犯としてののしっていた。
 もちろん、証拠もクソもない。
 本人の妄想だ。
 しかし、俺が奴の行動を見ていたのは、ひそかにこんな憧れを持っていたからだ。

「っくしょー。言いたい放題、好き放題やりやがってよぉ!」

 俺にも殺したい奴ならいる。
 俺の二次創作を断ったMだ。
 最初はMの方ももろ手あげて賛成。
 しかも、俺と同じく「コミュ障」な香りがした。
「友達になれるかもしれない」
 俺は、奴に頻繁にコンタクトを取った。
 一日十回はメッセージを送った。
 全勢力かけて、二次創作を作った。
 繰り返すが、最初に許可を出していたのは、奴だ。
 しかし、前置きもなく、手のひらを返した。
「あんたはクライアントでも何でもない。僕の作品に、あんたの勝手で下品な世界観が入るのは許せない。僕は自分が描いたキャラ、線一本さえ、他人にいじられる、指示されるのは嫌なんだ」
 くわえて、奴は、ことあるごとに「豆腐メンタル」を主張し「それでも頑張ってるんですよ、ボクゥ」アピールを忘れない、漢の中の男だった。

 相変わらず、ヲチ対象は「裁判? おもしれぇな、やってみろよ! そん時は、死んだほうがましなくらいな目に会わせて殺してやるからな!」

 そういえば、まだ殺したい奴がいるんだった→23
 いや、いくらなんでもそこまで蒸し返すのは精神衛生上よくない……。→17


#6

逢坂の積のしみづにかげみえてつながぬねこのかへるけり
 詠み人知らず。(行方知れずのねこを呼び戻すおまじない)

That is The Life

 →3


#7
 50代近くになって、クリエーター志望、というのは、死亡にちかいフラグだ。
 当然、創作のために職についていない俺。
 しかも「ヒトとかかわらなくていいから楽そうだな」という、きわめてネガティブな理由で目指したのだ。
 当然、家族を養う金なんかないから、いまだ独身。
 加えて、家族もあっという間に減り、もはや天涯孤独。
 いつ死ぬかわからない。
まぁ、それは置いといて……

 コンビニでも行くか。外へ→8
 ネットへ逃避行する→5


#8
 外へ出る。
 何か、軒下でゴソゴソしている。
 見ますか?
 Yes→3
 コンビニへドライブへ行く→11


#9
 時はめぐって。
「ですから、今足を切断しないと、大変なことになります」
 老いた母は、ついに植物状態になる。
 パイプだけが生命につながっている証。
 声も出ず、生きていてもつらそうな母。
「だけど、その手術をしたって、体が耐えられるとは思えないんです」
 決断の時は迫っていた。
 →16


#10 
(ここへの番号が記されているパラグラフは#24
そこに、「たどたどしい演奏を10回練習。」とあります)
 今日もまた、スコップを握りしめて外へ出る。
 ただただっ広いだけで、草も生い茂り放題な庭。
 ただでさえもともと庭仕事苦手だというのに、中年になってしまった身にはきつい。
 ほとんど半日タイムロスになってしまう。
 その時間を当てて、何か就活でも、作品でも書いていたい!
 心とは裏腹に、天気は突き抜けるような晴天!
 めまいを感じる!
 切実な恨み節に対応するように……。

 バカヤロコノヤロクソガ!

 まるで北野武の映画ライクに、唐突で脈略もなく言葉のバイオレンスが!

 俺はスコップを握りしめた。
 血の中にたぎる怒りのマグマ。
 囚人じゃあるまいし、どうして俺が「野良猫に餌をやっている」だけで、びくついていなきゃならないんだ!

 狙うのは隣人の頸椎。
 鼻、顎。
 確かに俺は人がコワい。
 だから、喧嘩なんかやったことはない。

 しかし、だからこそ、ここは暴力の出る幕じゃないのか?

 いつしか怒りは、奴を死体にする喜びにあふれる。
 その一方で、頭の片隅は恐るべき冷静さで、奴の攻撃へのシュミレーションを考えている。

 奴の家の門に立ちはだかったとき!

「あのぉ」

 女の子の声がした。
 みると、裏庭でピアノを弾いていた、あの子じゃないか!?
 そして、手には手袋とスコップ。
 おなじみの対猫うんち用装備。

「いつも、一人でうんこ取り大変そうだから」
「だ。だけど」
 何の関係もないあなたがどうして?

「あの時、あなた一緒に歌ってくれたでしょ。
 あたしも、ずっと一人ぼっちで、ただピアノを弾くしかなかったから……。
 あの歌は、百人の、いえ百万人の拍手のようにうれしかった」

 そして、彼女は、一緒にうんこを取り始める。

 Fin


#11
 コンビニにて、車を止めました。
 煙草買うだけですんで、ドア開けっぱなしです。
 さっさと買って、車出した数分後。
 強烈な違和感を覚え、助手席を向くと!

 そこには、ランドセルとダッチワイフが!?

 どうして!? とか、いつのまにあった!?
 とか、考える間もなく!?

 なぜにこの組合せ!?

 そして、その答えを思いつく間もなく、後ろから罵声が!

 見ると、この車の持ち主であろう男が、必死の形相で追っかけてくるではないか!

 窃盗犯にはなりたくない!
 車を乗り捨てて、逃げる。

 ほとぼりが冷めたのを見計らい、駐車場に行く。
 自分の車がなくなっている。

 完


#12
 あれは自宅介護してる母がもっともつらい時期だったから覚えている、テレビ台の裏にひっかかっている紙片。
 手を突っ込んでも何してもとれない。
 さんざ苦労して、それを取った。
 それは、「スイッチ」とかかれたメモ。
 
 取りますか?
 yes→21
 No→4


#13
 目からうろこが落ちるようだ。
 あんなに心を騒がせた、いや、ジサツさえ考えた掲示板のカキコも、隣人の罵声も、もうこころはざわつかない。
 どこかで何かが壊れる音。
 どうせ、何か俺がかき集めたガラクタが壊れたのだろう。
 どうせ生涯孤独だから、猫のために一生かけてイイ。
 どこかでガラスの割れる音。
 部屋に猫は20匹以上!

 Fin

 
#14
 これは、生ごみだ!

 わかった!
 生きとし生けるものは、死んだらゴミになる。
 だから、生きていることは尊い!

 猫を廃棄する際に、かならず思う。
 動かなくなったこの猫。
 さっきまでは、かすかだが、生きる兆候を見せていたこの猫。
 彼らは、実は生きているのではないか?

 いや、よそう。
 本題は、どうして「みぃ」はここに葬られるのに、ほかの猫は、裏庭に放棄されるのだろうか?
 俺が、猫を火葬にする理由は、簡単だ。
 不潔じゃないから。
 そういう汚れ事は、心理的に不快感を与えるし、猫の死体は、何悪さするかわからない。病原菌の塊だから。

 献花にうずもれていくみぃを見る。
 やっぱり、眠っているようだ。
 だけど、俺には、何の感慨も浮かない。
「ぐすん! すいませんねぇ。花粉症でして」
 ええっ? 同情して泣いていたんではないんだスタッフ!
 ふと横を見ると、母が全身全霊を使って、みぃにお別れを言っていた。
 ああ、これだ。
 俺は思った。
 孤独な魂。この世でもう一つしかない、私の分身。
 それが確かに、横にいることを感じたかったのだ!

 そんなことを感じていると、向こうですさまじい悲鳴が上がった。
 出てきたのは、焼けただれた猫、猫、猫!
 俺は失禁しながら、奴らに食われる。

 おっしまい


#15
 泣いている暇はなかった。
 クロやんロスにくれている俺の前。やってきたのは生きるぬいぐるみのような子猫。
 クロたんと同じく、雨に濡れた日に、突然やってきた子猫!
 手のひらにすっぽり隠れるその命の鼓動。
 それに萌えた。

「この子は俺が育てる!
 誰の手にも渡さねぇ!」
 クロやんの悲劇を避けるため、今度は家飼いの覚悟!
 決して高くない去勢手術代を出し、エンゲル係数がただでさえ上がっているのにも関わらず、餌を買い与えていた。
 子猫である彼女はすくすくと育ち、大人になった。
 半年後、脳障害で全身マヒになった!
 あまりにも何も口にしないので、スポイトでミルクをやったのがマズかった。
 当然、嚥下障害を起こしている彼女は、当然の権利のごとく、咽せはじめた。
 激しく体を折って、げぼけへさせている!
 間違いなく「気管に入った」=「呼吸ができていない」!
 あまりにも慌てて、ゴーグル先生に助けを求めるため、その場を離れた。
 戻ってきた。
 ドアが開いていた。
 彼女の姿はない。
 彼女の代わりに、それこそ突然生えてわいたように、唐突に、見知らぬ男が立っていた。
「ボクの原作、受信して作品化してくれてありがとう!」
 焦点のあっていない、目と口で、彼は言った。

 結局、彼は「自分の妄想を商業作品を描く漫画家がキャッチして書く」という電波野郎にすぎなかった。
 初対面の野郎に住所を知られていた、というのもショッキングだったが、もっとショッキングなのは、彼女がいなくなっていたこと。
 マズいことに奴は、ドアを開けっぱなしていたのだ!
 マヒだから動けないだろうと、たかをくくっていたのがマズかった。
 そのスキに彼女は逃げ出したのだ。
 以上、一年が経つ。
 
 さらなる回顧に浸りますか?→20
 時を進めますか→9


#16
 母を殴っていた。
 確か、家族が一人減り。二人減り、最後の家族が俺になってから、母を殴り始めた。
 ちんぽが立つわけではない。
 あの時も、この時も、母を殴っていた。
 母は介護を要求した。
 母は、俺をこの家に閉じ込めた。
 母は、時間も、友達も、生きているスキルもすべて奪った。
 強烈な罪悪感の元、俺は母を殴り続けた。
 女とやるすべ。それを知らなかった。
 それは母のせいだ。
 ちんぽは立たなかった。

 迷いに迷ったが、頭だけがただ焼き付くように空転をする。
 眠れずに一週間、それを考えに考え抜いた末、母は「行方不明になった」
 もし、19から来ているんだったら、この話はここで終わる。
 違うのなら続きへ→18


#17
 そうこうしているうちに、家の前にたむろっていたにゃんこが、ひどい風邪にかかった。
 しかし、病院代もバカにならない。
 結局、前死んだ猫には、一万円もぼられたのだ。
 そして、俺の手元には、今週暮らせるかどうかのカネしかない。
 俺は、仕方なく、前のにゃんこが飲むはずだった、残された薬をやった。

 にゃんこは嘘のように回復。
 その時、気づいた。
「もし、あの時、前のにゃんこを医者につれていかなかったら、薬が無かったはず」
 つまり「命は続いていたのだ!」

 ところで、俺は、2人殺したい奴に心当たりがあるだろうか?
 Yes→2
 No→13


#18
 ええ、動けるはずはないんですけど。
 看護婦はそういった。
 だけど、失踪する前夜、ものすごい安らかな顔だったのは覚えています。

 その時、気づいた!
 猫がいなくなったのは「人間と猫は平等だったから!」
 飼おうとしていたのがおこがましい!
 一番ラストの時は、せめて自分の足で歩いて、好きな所へ行きたい!
「飼い主」だなんていうことがおこがましい!
 死ぬときは死ぬ。不幸も幸福もない!
 ただそれだけだったのだ。

 気づいたら、笑っていた。
「ほほほ! 好きにしていいのよ! この体!」
「疲れたでしょう。あたしの、か・ら・だ、ごちそうしてあげる」
 相変わらずローザは、ショタヒーローやパチモン魔法少女相手。
 今日も股間に猛攻を炸裂させている。
 そして、病気になったもの食わぬ猫に注射針をプスプス(獣医が)
 動かない無理やり口をこじ開けて授乳。
 猫虐待を繰り返している。
 介護とは、つまるところ「生かすための虐待」なのだ。
 それに気づいた母は「猫」になった!
 そして、猫と同じ「誇らしく最後を迎える」ことを決めたのだ!
 家を荒らす、奴らを生かすために。
 今日も獣医に連れて行った。その傍らで、十年以上生きる、俺の相棒が、あくび交じりに「にゃあ」と鳴いた。

 おしまい


#19
 ホントにここはド田舎だ。
 コンビニ行くにも、車を駆って、夜道を行かなきゃならない。
 しかも、24時終業ときてやがる。 

 コンビニへ行こうとすると、母と出っくわす。
「あんたさぁ。一日ゴロゴロしてるんだから、買い物へ行ってくれない!? いい歳こいて、何も役に立たないって、恥ずかしくないの!?」
 出た! くそババアの家事やれ攻撃!
 俺は、少なくともこいつのおかげて、貴重な創作時間を失っている。
 俺は
 ババアを殴る→16
 妄想にひたる→12
 無視して、ドライブへ行く→8


#20
「どうだい? 眠っているようだろ」
 まだ、一才を超えたかどうか。
 みぃ、大往生であった。

 うっそうと茂る、木漏れ日の中、母を連れた車は走る。
 運転手は俺。
 傍らにはみぃ。
 曲がりくねる、この山道の奥にある、ペット霊園『奥多摩は魔女』へ、みぃを葬りに行くのだ。

 ある日、猫を捨てていた。
 それは、前触れもくそもなく、突然手足が動かなくなる。
 ウイルス性のなんかだろう、と医者は言う。
 しかし、うちに来ている野良猫軍団の何割かは、必ずこうなる。
 老若男女問わず、なるものはなるそれ。
 一度発病してしまうと、医者でも手に負えない。
 機械的に、だらだら口から餌をこぼしまくるマヒ猫に餌を詰め、そして電池が切れると、裏庭に捨てる。
 それがうちの日課。

 しかし、なんだって、猫をこう丁寧に葬るのだろうか?
「猫! 捨ててきなさいよ!」
 母は、テンパると、必ずそう言った。
 絶対的に手がたりないのだ!
 祖母と障害を持つ妹を、まるでメイド、いや、奴隷みたいに使って30年。
 息子は無職をこじらせて、引きこもりになりました。
 そして、時は無常に経ち、奴隷たちは死に、加えて、母はこじらせて歩行困難に!
 その生活は、いや生命維持は、一気に俺にのしかかってきた!
 何せ風呂・掃除・洗濯含めて、寝るのが朝の六時!
 しかも、母は、無類の猫好きときている。
 いや、そのきっかけを作ったのは俺。
 ある日、あまりのぼっちに耐えかねた俺は、軒下に迷い込んできた猫に、つい手を出してしまった。
 しかし、それで母の猫好きに火が付いた!
 ものはついでと、来た猫来た猫、すべてに餌をやったのが、間違いのはじまり!
 惰性で飼っているとしか言いようがない!
 家事のかじ取りだけで、一杯いっぱいな俺たちに、猫なんざ見てる暇はなかった。
 しかし、どうしても観てしまう!

「このたびは、ぐすっ ご愁傷様でぐすっ、でした」
 霊園のスタッフは、目に涙をためていた。
 職業上、そりゃ遺族にご同情申し上げるのは道理だが、これはやりすぎじゃないか?
 俺は、ただうなずいて、彼女の手続きに従う。

 死んだままの猫。
 まるで、生きているようだ。
 実際、もう死後硬直が始まっているのに、鼻ぢょうちんを膨らませ始めたときは、心底ビビった。
 挙句の果てに、ション便がどぼどぼと。
 もちろん、筋肉が緩んで、中に入っていたガスや排泄物なんかが、まろびでたとはわかっているが……。

 早すぎる埋葬!

 おずおずと差し出される骨壺。
 そこには、みぃのあのしなやかな体も、温かい毛もなかった。
 モノ。
 しかも、我々が魚とか鳥とか食った後に、必ず出る……

 さて、その結論が知りたいですか? 
 知りたいなら→14へ
 それとも、何か悟りましたか?
 悟ったなら、→13へ


#21
 誰がこんなことを?
 書かれている字は、まったく知らないもの。
 俺はそもそもメモなんか取らない。
 その時、カチリと、何かスイッチの入る音がした。

 それ以来、俺の生活は変わっていない。
 忙しさはちっともかわらない。
 しかし、何かが変わっている気がするのだ。

 fin


#22
「ねぇ、見てほしいの……」
 女幹部、ローザは、胸にちらりと手をやった。
 ぽろりん! と音を立ててまろびでる二つの乳房!
 目が吸いつけられる。機動探偵ディクターの攻撃の手が止む。
「いいのよ。さわって……もんで……」
 ローザのしなやかな手が、乳を揉みしだく。
 しかし、次の瞬間!
 どぴゅあっ!
 乳房から出た粘液が、ディクターの視界を奪う!
「うぁああ、甘ぁ!」
 その隙を逃すローザではなかった!
 ディクターの股間に、必殺の金的が炸裂!
 悶え転げるディクター。
 しかし、ローザは怪しい微笑を浮かべ、言う。
「あーら。立っているの? このヘンタイ」
 ディクターの股間。いまだにダメージを引きずる、破れた装甲の中には、我慢汁が糸を引く。

 今の「作品」を見てもらえればわかる。
 俺は、エロライトノベル書きだ。
 しかも「リョナラー」と呼ばれる、流血やら激痛が伴う危害を加え、イチモツを立たせるジャンルだ。
 女とやるのは、レイプしか考えられない。
 自分でも、いつ犯罪者になるかわからないが、幼少のみぎり、某ヒーローが、敵の粘液泡をくらい「体がマヒする!」叫びつつ悶絶する。
 そのシーンに立ってしまって以来、仕方ない。
 こんな性癖なので、もういい年こいてるのに、まともな結婚も考えていない。
 ちなみに俺は一人っ子だ。
 しかし、俺はいつかはこの呪われた性癖を克服してやるっ!
 そして、そのための一歩が「クリエーター」になる事。
 メフィスト賞、横溝正史賞を皮切りに、わが国最高峰の賞「直木賞」「芥川賞」を取る。
 今まで、そんな「お天道様に照らされた」まともな人生は送っていなかった。
 というのは、俺は人が異様に怖い。
 信用できない。
 それがますますこの特殊性癖をこじらせ、さらに人と壁を作ってしまう悪循環の要塞となった。
 だけど、いつかは見てろ!
 俺の野望の前に「俺はまともな人生を取り戻すのだ」
 ところでさ、

 腹が減ったよ。ドライブがてらコンビニに行く→19
 ネットサーフィンでもするか→5
 もっと今の情況について考えよう→4


#23
 きっかけはある晴れた日だった。
 隣人……県庁なんかに勤めていて、車もベンツだ。しかし、コネで入社したとの噂も、後を絶たない。
 そいつが、恐ろしいほど柔和な笑顔で、俺を手招きした。
 俺は警戒した。
 こいつは、その裏で、自分の庭に来ている猫に「コノヤローバカヤロー死ね」「隣の基地外飼い主のところへ戻れ!」と公言してはばからないおっさんだ。
 しかも、確かに、この辺の猫が、空き家化していた納屋に忍び込み、糞尿の害を加えたこともある。
 こういうこともあるので、頭が上がらない。
 で、その時もおとなしくついて行ったのだが……。

 隣のおっさんに連れられて行った先。
 そこには。うんこがあった。
 隣人はまくし立てた。
 曰く、おまえのところの猫のせいで、ガレージの屋根が抜けた! 曰く、お前のところの猫のせいで、うんこを踏んでおろしたての靴を捨てざるを得なかった。
「そのことを金でうんぬんとは言わない!
 ただ、こっちも50台になるんだ!
 少しは考えてくれ!」
 いつのまにか手にした棒が、びしりと地面を打つ!

 それからの俺は、大車輪だった。
 市販の猫除けグッズはもちろん、市役所へ行って猫除け音波発生装置を借りてくる。
 毎日自主的にうんこを取りに行く。
 そう、「僕でできることならばなんでもしたい」
 それで忖度して欲しい!
 そんな思いで一か月ほど行っただろうか。
 ある日、彼は掃除中の俺を裏へ連れて行った。
「あんたのとこの猫がかわら落とした。こんど業者呼ぶから、なんか考えてくれる?」
 俺はその場で、10万ほど払った。

 俺の「正義」がぐらぐら揺れた!
「小さな命を助ける」ことは「間違いない正義」じゃないのか?
 それは、俺の魂の芯。
 一方で、猛烈に怒りがわいてきた。
「こいつは公務員だ。ということは、県内で『野良猫をむやみやたら増やさないために、避妊・去勢して再び放し、えさを与える』いわゆる保護猫活動を推進しているのを知って、このような暴挙に及んでいるんだろうか?
 あるいは、「おろしたての靴」を糞踏んで捨てた、ということだが、普通は洗って使う。
 もしくは「捨ててもいい安物」の靴だったのではないのだろうか?

 後から、屋根の事を友達に打ち明けた。
「早まったことをしたなぁ。もう金戻ってこないぜ」
 俺は慌てて聞く。
「んー? たかが猫が上がったぐらいで屋根瓦が落ちるわけないだろ。老朽化が進んでたところへ、ほら、その日の前に地震があったろ。それのせいで落ちたのかもしれんね」
 俺の中で確信が一つ、怒りの炎となって燃え上がった。
 こいつは、公務員の皮をかぶったヤクザだ。
 決して自分から「金よこせ」とは言わず「考えてくれる?」という形で「強要」している。
 これは一種の「脅迫」ではないのか?
 怒り狂った俺は、アイスピックにスタンガン。はてはこの年まで全然縁がなかったボクシングジム通いまで始めた。
 奴を殺害するために。

 →17


#24
 アンモニア臭漂う便所。
 毎週掃除していた前が、嘘のようだ。
 何せ家も庭も手に余る。
 そして、にゃんこ排泄物猛攻もその手を休めることはない。
 しかも、次々と家族が亡くなっていくにつれ、生き残った「俺」が家事の重みを担うしかない。

 どうしてこんなことになった?
 俺は、何も悪いことしていない。
 ただ「クリエーター」になりたかっただけだ。

 ささくれだった心を、そっとなでるような感覚。

 これは。ピアノ?

 はじめは、雨だれのようなその音の粒。
 それが、いつの間にか寄り集まって「メロディ」となり……。

 窓の外。本当に目と鼻の先に、裏庭に住む家族たちがいる。
 旋律はそこから流れてくる。

 自転車乗りたてのように、ひどくあぶっかしい演奏は、やがて安定していき。

 たどたどしい演奏を10回練習。そして、一曲分無事に引き終わったときに、俺もつい、一緒に歌っていた。

 引きおわった彼女と目が合う!
 彼女は、天敵に見つけられた小動物のように、そそくさと視界から引っ込む。

 どうも、彼女は「引きこもり」というやつらしいが、それもうなずける反応だった。

 しかし、人のことをとやかく言えまい。
 俺の現在置かれた立場は……

 →7


#25
 目からうろこが落ちた俺は、確信的に全く関係ない行きずりの方を惨殺。
 みんなすべて俺を苦しめた奴が悪いんだぁ! と一貫して主張。
 当然、死刑は免れない。
 命が連鎖するなら、死も連鎖してもおかしくない。

 Fin


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2025年1月18日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第623号 FT新聞 No.4378

From:水波流
年末年始恒例のファンタジー読書。
結局、長編はどれも読み始める気力が湧かず、ぼんやりとインドやシベリア鉄道の旅行記を読んでいる。
グイン・サーガを読み出す日はいつか来るのかなあ。

from:葉山海月
なんか、足裏がマヒします。
そう、なんか薄い靴下をはいたように、なんか感覚がピンときません。
これは糖尿病のはじまりか!?
慌てて見ると、足にティシューが張り付いていただけ!

from:中山将平
僕ら今日と明日両日「BGBEJP(ボードゲームビジネスエキスポジャパン)」にサークル参加します!
配置は【G-8(「FT書房とトイドロップほか」のブースの一部分です)】、開催地はインテックス大阪です。
また、明日1月19日(日)には以下の3つのイベントにもサークル参加します。
・文学フリマ京都9に参加予定。ブース配置【お-73】。開催地:みやこめっせ。
・コミックトレジャー45に参加予定。ブース配置【4号館 D08b】。開催地:インテックス大阪。
・関西コミティア72に参加予定。ブース配置【F-58】。開催地:インテックス大阪。
一日に4つのイベントに参加することは、めったにないことなので、僕も驚いています。
せっかくのお祭りですので、お近くの方はぜひ遊びにお越しいただけましたら。


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1/12(日)~1/17(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2025年1月12日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4372 

アランツァクリーチャー事典 Vol.12 
・アランツァクリーチャー事典、今回ご紹介するのは『植物』
植物だからといって侮りがたい、多彩な攻撃方法。
友好的な奴から、攻撃的な奴まで。
トリフィド真っ青なその生態を、お楽しみください!


2025年1月13日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4373

フォレストマスターへの道2 
・体調をとりもどしつつある杉本氏。
再び、仕事に挑む日々に!
まずは、新年企画「フォレストマスターへの道」へのたくさんのおたより、ありがとうございます!
さっそくいくつかの〈できごと〉が作られましたので、ご紹介してまいります
桜森と冬の終わり 第1週
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/CherryBlossomForest_and_EndofWinter_Week1.txt
加えて、「ヒーローズオブダークネス」の新種族、ケモノコビットのご紹介!
以前お話ししたとおり、最初に遊びやすい、基本ルールの「盗賊」にあたる【種族】です。
お好きでしたらぜひ使ってみてください!


2024年1月14日(火) 中山将平 FT新聞 No.4374

カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第37回
・中山氏が創作している『カエルの勇者ケロナイツ』(ファンタジー世界に住まうカエル人たちの活躍を描いたオリジナル作品)。
その創作から、学んだことを書きつづります。
今回のテーマは「ドラゴン」!
ファンタジー世界でドラゴンを扱うのは、やはり特別。
いえ、「ドラゴン」=「ファンタジー」と言えるほどのアイコンとなったドラゴン。
大きな役割を演じる彼らの立ち位置を、中山氏の創作世界「フログワルド」から語ります。


2025年1月15日(水) ぜろ FT新聞 No.4375

第4回【最期の日に彼女は】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第421回をお届けしました。
今回はFT書房のゲームブック「クトゥルー短編集2 暗黒詩篇」の中から、トリを飾る作品、『最期の日に彼女は』に挑戦いたします!
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探します。
しかし必死の捜索もむなしく、レナは遺体で発見されます。
ところが、レナの遺体は警察署から、忽然と消えてしまったというのです。
積もる悲しみもあるけど、とにかく葬儀だけは行わなくては!
そして、その参列者の中、一人の男が!
名前は、新名弥四郎。
レナの恋人だった。
私、この人のこと、知らない……。
彼以外の情報もつかめるかもしれない。
藁をもつかむ思いで、見たその先には……。
手がかり入手と深まっていく謎。
本格ミステリもかくやというサスペンス。お楽しみください。


2025年1月16日(木) 齊藤飛鳥 FT新聞 No.4376

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.24『猫の女神の冒険』その5 
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
ニャルラトホテプの気まぐれで、クトゥルフ神話の世界から異世界へ送りこまれ、今はズィムララ世界の猫の女神セクメトにクリスタル・スカル探しに雇われた、グレーハッカーの灰鼠深尋(はいねず・みひろ)。
セクメト女神に気に入られ、ニャルラトホテプへ地球や仲間達を滅ぼされた恨みを晴らす力を手に入れるべく、彼女の腹心テン=メアと一緒に冒険に旅立った。
そして、様々なトラブルを乗り越えるうちに、ついにピラミッド内でクリスタル・スカルが隠されていそうな怪しい小部屋を発見した。
幻影のトラップをかわしたり、ポケットいっぱいにお宝詰めてルパン並みにウハウハしたりしつつも、ついにすべての決着が詰っているピラミッド頂上部へ!
あの黒い人影野郎をぶん殴る力を、ついに手に入れるのか!?
長きにわたる『猫の女神の冒険』も、ついにクライマックス!


2025年1月17日(金) 休刊日 FT新聞 No.4377

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓


(忍者福島さん)
増加博士の事件簿は、パズル通信ニコリの連載中に読んでましたね。
トリックもですが、増加博士の肥満体の表現が独特で、紙面からドスドスという音が聞こえて来そうでした(笑)

(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます!
忍者さんパズル好きだから、きっと『二コリ』にも目を通されていると思ったんですよ。
だけど、例えば増加博士なら巨体、コロンボならよれよれのトレンチコート、と、何かトレードマーク的なキッチュさがあるのは、愛され探偵の条件ですよね。
ちなみに、増加博士というキャラは、二階堂先生が敬愛してやまないディクスン・カーが生み出した名探偵の一人へのオマージュなんだそうです!


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2025年1月17日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4377

おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。

毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!

FT新聞編集部一同


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2025年1月16日木曜日

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.24『猫の女神の冒険』その5 FT新聞 No.4376

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.24
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〜前回までのあらすじ〜
ニャルラトホテプの気まぐれで、クトゥルフ神話の世界から異世界へ送りこまれ、今はズィムララ世界の猫の女神セクメトにクリスタル・スカル探しに雇われた、グレーハッカーの灰鼠深尋(はいねず・みひろ)。
セクメト女神に気に入られ、ニャルラトホテプへ地球や仲間達を滅ぼされた恨みを晴らす力を手に入れるべく、彼女の腹心テン=メアと一緒に冒険に旅立った。
そして、様々なトラブルを乗り越えるうちに、ついにピラミッド内でクリスタル・スカルが隠されていそうな怪しい小部屋を発見した。
深尋の運命、そして、冒険の結末やいかに!?


《プレイキャラ紹介》
灰鼠深尋(はいねず・みひろ):グレーハッカー。『暗黒詩篇』所収「クトゥルフ深話」出身。行動理念は、黒い人影野郎ことニャルラトホテプへの復讐。
テン=メア:セクメト女神の腹心。お茶目ないい子。※あくまで私の感想です※


長らく皆様にお付き合いいただきました、この『猫の女神の冒険』リプレイは、今回で最終回です。
今までどうもありがとうございました。
冒険のラストで、大きな選択があるのですが、これはTRPG『猫の女神の冒険』で一度体験済みです。
ですから、これまで何度も書いているように「TRPGとは違った展開を見たい・楽しみたい」をするところだったのですが、どっぷり冒険に浸かっているうちに私の中で変化が出てきました。
それは、「キャラクターの行動理念と矛盾する行動を取らせたくない」という感情です。
そういうわけで、キャラクターの行動理念の矛盾を避けたために、ラストの大きな選択のみTRPGの時と同じになりました。
すると不思議なもので、ラストの受け止め方が「このキャラクターの行動理念なら、こう受け止める」というのが勝手に思い浮かび、エピローグをだいぶ脚色と加筆をしてしまいました。
これが、いわゆる「キャラクターがひとりでに動き始める」現象なのでしょう。
深尋は、「クトゥルフ深話」の「世界の危機に、持てる力を駆使して仲間とともに立ち向かうグレーハッカー」という、とても熱い設定に惚れこんで考えたキャラクターなので愛着がわいたとも言い換えることができるかもしれません。
それにしても、クトゥルフ神話の世界のキャラクターも違和感なく溶けこませてプレイできる『猫の女神の冒険』の柔軟性は、やっぱり桁違いにすごいです!


※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

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モンスター!モンスター!TRPGソロアドベンチャー
『猫の女神の冒険』リプレイ
その5

齊藤(羽生)飛鳥
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14:深尋、怪しい小部屋を探索する
「まずは、露骨に怪しいあの床下1.8メートルの小部屋を調べてみるね」
私は、小部屋を見下ろす。
いきなり飛び降りるのではなく、床にぶら下がってから下りれば、飛び降りた時のダメージは少なそうだ。
私は、スコップを折りたたんでリュックにしまうと、床にぶら下がってから小部屋へ飛び降りる。
でも、期待した手ごたえというか足ごたえはなかった。
何と、小部屋は幻影だったのだ!
「なっ……!?」
内臓が瞬時に喉元までせり上がってくるような感覚を覚えると同時に、私は落下し始めた!
性格悪い罠を仕掛けやがって!
(本当に性格が悪いよね。罠の仕掛け方には性格がよく出るものだ)
邪神が脳内に直接アクセスしてきた。おまえが言うか。ぶん殴りてえ!
そのためには、絶対に落ちんぞ!
私はあわてて祭壇の縁へ手をのばす。
うまい具合に指が届いて、私はそれ以上落下せずにすんだ。
「テン=メア! これ、落とし穴よ! 助けて!」
私の助けに応じて、テン=メアは文字通りすぐに飛んできてくれた。
そして、私がつかまっている祭壇の上に降り立つと、ものすごい力で私を引き上げてくれた。
「ありがとう、テン=メア。助かった」
「間に合って本当によかったわ」
それから、私たちは自分たちが載っている祭壇にアンクの形のくぼみがあることに気づいた。
「そろそろプレゼントを開けるときじゃないかな」
「プレゼント? アトン=ラーからもらったパピルスの包みのことね!」
私が包みをほどくと、中から扉の鍵ほどの大きさのアンクが出てきた。
「これをはめてみて」
テン=メアの方がくぼみに近かったので、私はアンクを彼女へ渡す。
テン=メアが手際よくくぼみに置くと、アンクが輝き始める。
どんどん輝きを増して、太陽と同じくらいになる。
輝きすぎ! ……と思いながら顔を背けていると、祭壇が足元の壁のなかに向かって下がり始める。
それは私がさっき騙された小部屋の幻影との境界線に達し、さらに通り抜けて私たちを乗せたままさらに下へ下りていくこと、ビルの7〜8階分。たぶん30メートルくらい下りたところで、宝がいっぱいの巨大な部屋にたどり着いた!
金や銀の延べ棒、貴金属のついた鉢がある。無数の宝石類が、それこそ指輪、ブレスレット、ネックレス、ペンダント、ティアラその他にあしらわれている。あらゆる種類の古代の武器があり、が運、ローブ、ブーツ、スリッパ、帽子など、どの棚もよりどりみどりだ。
「これだけ宝があるなら、クリスタル・スカルもありそうね」
「そうだね、テン=メア。探してみましょう」
私たちは手分けしてクリスタル・スカル、あるいはクリスタル・スカルを探すのに役立ちそうな代物を探した。
気がつけば、私のポケットには800gpの価値はありそうな宝石でパンパンとなっていた。パワーストーンマニアのさがは、異世界へ行ったくらいでは揺るがないようだ。自分が怖い。
特に目を惹いたのは、猫を象った小さな翡翠の偶像だ。セクメト女神様に似ているけれども、翼がある。
「ねえ、テン=メア! 尋常でなくかわいいお宝発見!!」
「あなたのポケットではなく、荷物に入れて。セクメト女神様へのいいお土産になるわ。髑髏を持ち帰るのに失敗しても、女神様にはきっと気にいってもらえると思うの」
セクメト女神様、意外とかわいいもの好きか。話が合うかも。
私は猫の翡翠像が傷つかないよう、ハンカチで丁寧にくるんでから、リュックにしまった。
「もう他に見るべきものはないわね」
「そうだね……て、大変!! 祭壇が上がり始めた!」
「早く! あれに乗って!」
私たちは急いで祭壇に飛び乗る。
祭壇は、30メートル上の〈髑髏の間〉まで戻った。エレベーターみたいだな。
テン=メアは踊り場まで私を戻してくれた。
「じゃあ、そろそろ頂上部へ行ってみようか」
「そうね。何か不穏な気配が漂っていたけど……」
まだちょっと怯えているテン=メアには悪いけど、探索していないのは、もう頂上部しかない。
私たちは、外へ出て頂上部へ続く階段へ引き返した。


15:深尋、ピラミッド頂上部を探索する
ピラミッド頂上に着くと、そこは凄惨な事件現場だった。
コブラの礼拝堂があるのはいい。でも、その中にあちこち食べられたネズミ人間の少女の死体と、大量の血痕が残されている。
マーカス……極彩色の……うっ、頭が!!
「西面から降りる階段を調べてみましょう」
「そうね」
トラウマを抉りかけられていたので、テン=メアの提案はありがたかった。私は血みどろの殺戮現場に背を向けた。
奥の階段を降りると、階段が頂上から始まって西面の途中まで続いているのがわかった。そこは踊り場で、〈コブラの女神〉ウアジェトを象った小さな像の置かれた円形の台座が置かれているだけだった。
「また隠し扉がありそうなんだけど、それらしいものは見つからないわね」
もしかしたら、ウアジェト像を動かせば何か仕掛けが作動すると期待を込めて握ってみたものの、うんともすんともしない。
「ウアジェトは女神なんだから、女神に祈りを捧げればいいんじゃないかしら」
そう言ってテン=メアが祈りを始めた。
その間、私にはやることがなくて退屈なので、テン=メアの邪魔にならないように離れた場所へ行って、また『砂漠の薔薇』と『砂の惑星』の正しい歌詞とメロディを思い出しながらすごした。
その時間、1時間。
1時間!?
それだけ経過しても無反応とは、どういうこと?
仲間内では「鉄の女」とか「天使のみーさん」で通っていた私だけど、ヴァイオレンスに走るわ!!
自分のいた世界と仲間たちが滅んだフラストレーションも合わさって、私はウアジェト像へキックボクササイズで習った後ろ回し蹴りを食らわせる。
すると、轟音と共に像がスライドして動いた!!
そして、踊り場からピラミッド側面へと続く秘密の通路が開いた。
「隠し扉が開いちゃった……」
「自分でやっておいて驚かないの、深尋。さあ、たいまつも見つけたことだし、さっそく中へ入りましょう」
テン=メアがたいまつに火をともしたところ、秘密の通路には数段の階段と長いトンネルのような通路があるのがわかった。
我ながらひどい開け方だったけれど、通路そのものはしっかりしている。
私たちは、さっそく通路へと足を踏み入れた。


16:深尋、クリスタル・スカルを見つける
通路をそこまで進まないうちに、わたしは壁に杭が打たれ、その下にアンクの柄が描かれているのを見つけた。
すると、テン=メアがひざまずいて祈りを始めた。
「またお祈り?」
「罠からお守りあれと、セクメト様の加護を祈るわ」
テン=メアは、さっきは1時間も祈りを捧げたのに、こりずにまた祈りを捧げた。
仕方なく、またまた『砂漠の薔薇』と『砂の惑星』の正しい歌詞とメロディを思い出すのに費やすこと数分。
祈りを終えたテン=メアは、ついてくるように身振りで示し、通路をさらに進む。
しばらくして、小ぶりな祭壇があるだけの小さな部屋にたどり着いた。
祭壇のいちばん上には、石英の水晶で造られた人間の髑髏が安置されている。完全に透明で、ほとんど周囲の風景に溶け込んでいる。
祭壇の部屋の空気は、外の通廊よりも10度ほど冷たい。髑髏からは、悪意に満ちた強力な魔力が発せられているのが、魔法の素人である私が見てもわかる。
「見つけたわ! ああ、あれを持ち帰ったら、セクメト様はなんとお喜びになるかしら」
テン=メアはポーチからセクメトを表すヒエログリフと、見知らぬシンボルが2つ刻まれた黄金のスカラベを取り出す。
「これを使えば、すぐにセクメト様の〈鏡の間〉に戻れるわ。1回しか使えないけど、あたしの手をつないでもらえば、ふたり一緒に運べるの。あたしはスカラベを持って、呪文を正確に唱えなきゃならないから、あなたの方は、クリスタル・スカルを持ってくれる? 片手でも持てるでしょ?」
「もちろん」
私は手を伸ばしてクリスタル・スカルを手に取ろうとした。
でも、なぜかためらい、ふたたび手を伸ばしては躊躇してしまう。
「さあ、勇気を出して」
テン=メアが明るく応援する。
「もうすぐで終わります。そなたのクエストが完遂するのです!」
まさかの頭のなかで、セクメト女神様の応援する声が響く。
あの黒い人影野郎と同じで、神様は人の脳内に直接アクセスしてくるのがお家芸なんだろうか?
それはいい。なんで私は、こんなに躊躇してしまっているんだろう?
これは、何かの間違いなのかな?
だとしても、これはちゃんと任務を達成して、セクメト女神様の信頼を勝ち取り、あの黒い人影野郎をぶん殴る力を手に入れる第一歩を踏み出すための行動。間違いなんてある?
私は、思い切ってクリスタル・スカルを手に取った。
その時、髑髏の眼窩と目が合った。
地獄の炎がそこにあって、そして、私の顔と体もそこにあるのを目にした!
「新しい住処へようこそ、奴隷よ!」
私の頭のなかに、深く、悪意に満ちた声がこだまする。
「おめでとう、お前は髑髏のなかで我や、髑髏の呪縛に屈した他の者らと一緒に過ごすことになったのだ。お前が発狂する前に、我らは有意義な会話を多くかわすことになるだろう。もしかしたら、お前は、世界に投げかける新たな呪いのアイデアをもたらしてくれるかもしれないな」
おそらくテン=メアが私の手を握ってくれているのかもしれないけれど、私にはそうだとは感じられなかった。
(ああっ! キミとボクとの接続が途絶え……!!)
黒い人影野郎が驚き、あせり、うろたえるのを最後に、奴の声が聞こえなくなったのはいい。
でも、何かがおかしい。
視界がぼやけ、私はクリスタル・スカルの目を通して、自分がセクメト女神様の玉座の間に、テン=メアのそばにいるのがわかった。
セクメト女神様とテン=メアは勝利の表情を浮かべている。
というか、私をよそにイチャイチャし始めた。
それは毎度のこととして、今、私はどういう状況?
私の疑問に答えたわけではないけど、セクメト女神様の声が遠くから聞こえてくる。
「この者を、〈クリスタル・スカルの間〉へ連れて行くのです。腕にだけ触れるよう、気をつけるように。クリスタル・スカルを他のものと一緒に〈黒檀の棺〉に入れ、再び封印するのです。これで、我らを苦しめるクリスタル・スカルがまたひとつ減るというわけです」
私は、自分の精神と魂が、クリスタル・スカルのなかに閉じこめられているのだと再認識できた。
今の私の肉体は、眼鏡に対する眼鏡台のように、クリスタル・スカル置台にすぎない。
テン=メアの誘導と言う介助によって、私の肉体はクリスタル・スカルを持ったまま、黒檀の棺に横たえられる。
「あたしを守ってくれた戦士には、申し訳ないことをしました。とても勇敢で、立派に働いてくれたんです」
棺の蓋を閉めにかかりながら、テン=メアはセクメト女神様へ私の人物評を語る。
蛇人間たちと戦えば死にかけたし、衛兵との戦いはテン=メアが見かねて中断するほどだった。
ようは、ろくな戦果を残していない。
なのに、彼女がけっこう高評価をしてくれていて、びっくりした。
「我らにできることは何もありません、可愛い子よ。この者の魂はクリスタル・スカルに飲みこまれ、もはや取り戻すことはかなわないのです。こう考えたらどうでしょう……。世界はいっそう安全になり、そなたの仲間は、ある意味で不死となったわけです。定命者にわらわが与えられるもので、これ以上の贈り物があるでしょうか?」
セクメト女神様が、厳かな面持ちで閉めに入る。
テン=メアも納得したらしく、黒檀の棺の蓋を完全に閉めた。
クリスタル・スカルは、ここぞとばかりに高笑いする。
「おまえはあいつらの道具に過ぎなかったのだ!! 利用されるだけ利用されて、無様よな」
クリスタル・スカル内に封印されている何十、何百もの魂たちも、クリスタル・スカルに倣って私をはやしたてる。
でも、私はこいつらと比べ物にならないくらい邪悪な存在と出会っている。
この程度、まだまだかわいいものだ。
「いいんじゃない、別に? だって、私がいちばんほしいものをセクメト女神様はちゃんとお与え下さったもの」
「なに?」
私は、クリスタル・スカルと邪悪な魂たちへプレゼンするように語りかけた。
「私がいちばんほしいもの。それは、何とかトテップとかいう邪神をぶん殴る力!! あなたたち、世界に投げかける呪いのアイデアを考えているってことは、世界を呪えるだけの莫大な力があるんでしょ? だからこそ、セクメト女神様が警戒されていたんだしね。つまり、神々さえ脅かす呪いの力を持っているのよ、私たちは!!」
ここで、私はあえて「私たち」を強調し、仲間意識を高めにかかる。
クリスタル・スカルも、邪悪な魂たちも、だんだん興奮してきているのがわかった。
「私ひとりではできなかった、何とかトテップにかける最強最悪の呪いを、みんなとなら考えられるし、生み出すことができる! それも、不死になれたから、時間制限なしに!! 最高じゃない!! 」
自分でも、うすうすわかっていた。
あの黒い人影野郎をぶん殴るには、人間のままでは不可能だって。
だけど私は、グレーハッカー。
これを機会に、クリスタル・スカルを世界に呪いを投げかけるアイテムから、あの邪神へ最強最悪の呪いを投げかけるアイテムにハッキングしてやる!!
私の野心を知ってか知らずか、クリスタル・スカルも邪悪な魂たちも、スタンディング・オーベーションになる。
彼らの気持ちが、私を中心にひとつになり始めているいい兆候だ。
「まだここでは新参者で、呪いについてわからないから、あなたたちには教えてもらうことが多いかもしれない。でも、世界どころか邪神すらぶん殴れるほどの最強最悪の呪いを生み出して見せる!!」
邪悪な魂たちが狂喜乱舞し、クリスタル・スカルは感心した様子になる。
「我々の偉大さを改めて気づかせてくれて礼を言うぞ。では、さっそくだが呪いの作り方をレクチャーしよう」
「あざーす!!」
クリスタル・スカルが封印されたということは、言い換えれば、セクメト女神様に厳重に守っていただいているようなもの。
だから、私がクリスタル・スカルと邪悪な魂たちと最強最悪の呪いを生み出すまでの間、あの黒い人影野郎に邪魔される危険はない。
待っていろ、何とかトテップ。
何十、何百、何千、何万、何億の歳月が過ぎるかもしれないけれど、必ずやおまえをぶん殴りに行く!!
クリスタル・スカルと邪悪な魂たちという新たな仲間たちを得て、私はようやく奴への復讐に目処が立ち、地球が滅んで以来久しぶりに心の底から楽しくなった。


(完)

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2024年末に5巻が刊行。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。

初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
モンスター!モンスター!TRPGソロアドベンチャー
『猫の女神の冒険』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
https://ftbooks.booth.pm/items/5889199


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2025年1月15日水曜日

第4回【最期の日に彼女は】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4375

第4回【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ


※ここから先はゲームブック【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


ぜろです。
「最期の日に彼女は」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探します。
しかし必死の捜索もむなしく、レナは遺体で発見されます。
ところが、レナの遺体は警察署から、忽然と消えてしまったというのです。
いったい、なにが起きているの?


●アタック01-9 レナの思い出

私は今、警察署にいる。署長室で、姉レナの遺体が消えたという説明を受けているところだ。
ここまでの出来事も、衝撃の連続だった。
けれど、これはどういうことなの?
遺体が勝手に消えるなんて、さすがにありえない。

説明によると、検死のために搬送用の車に載せて移動させた遺体が、病院で消えたのだという。
警察でも、なにがなんだかわからない状況だという。
署長はなにも言い訳せず、ただ、総力を挙げて発見に尽力すると言った。

信じられないことの連続に、私の頭は麻痺しているようだ。
もう、なにも考えられない。たんたんと、葬儀の準備を進めた。

この日も、私は疲れて寝落ちしてしまったようだ。
とても悲しい夢を見た。

今住んでいるアパートとは違う場所と部屋。
そこに私と姉が住んでいるみたい。朝、出かける前のようだ。
その近くに、遺跡公園があることを、なぜか私は知っている。
私はレナをそこに連れて行きたい。そこを見せたいと思っている。
誘うけれど、レナには何か用事があるみたい。学校?
「また、今度ね」
レナと別れたところで目が覚めた。

夢だからか、現実にこんなことは起きていなかった。
でも、普段の何気ない日常を想起させるような内容だった。
うすぼんやりした夢の記憶は儚く、すぐに消えてしまう。

目を覚ますと、涙が頬を濡らしていた。
そういえば、私、泣いてなかった。
そう思ったら、涙があふれて止まらなくなった。

思い出すのは姉とのこと。
両親は、私たちが高校生の頃に亡くなった。
遺産と遺族年金で、生きていくことはできた。
高校の先生が手を回してくれて、18歳になるまでは、未成年後見人をつけてもらった。
大人になって生活するのはこういうことだと、学んだと思う。

2人が大学に進学するには、費用は心もとなかった。
レナは、高校卒業とともに就職し、私が進学する大学のそばにアパートを借りて、一緒に生活をはじめた。
いつでもレナの、私のことスキスキ光線を浴びて……なんだか申し訳ないなって思いながら、いつも甘えていた。

警察の説明では、事故、ということだった。
草で足を滑らせ、ガードレールの隙間をすり抜け、頭から川べりに転落した、という説明だった。

「バカだなあ……」

そんな死に方なんて。
これからだったのに。大事な大事な私を置いて、先に行っちゃうなんて。

身近な人が突然いなくなることを、私とレナは1度経験している。
両親がいなくなったとき。
だから、この感覚には覚えがある。
あのときは、私にはレナがいた。レナには私がいた。

「ひとり……か」

つぶやいて、私はまた、泣いた。


●アタック01-10 レナの記録

葬儀に来たのは、結局1人だけだった。
レナの交際相手だったという男性だ。

名前は、新名弥四郎。
にいなやしろう、だ。

背が高い、スポーツマンタイプ。医療機器会社の営業とのこと。
仕事がら、接点があったのだろう。

その職場、ヤマト感染研究所からは、誰も来なかったし、なにも言ってこなかった。
理由はわからない。
普通に考えればおかしなことだが、奇妙さを感じこそすれ、どうこうする気にはなれなかった。

遺体のない葬儀を終える。
死体検案書はあるけれど、肝心の遺体がないので火葬にはできない。
斎場の予約はキャンセルした。理由の説明は手間だったが、葬儀会社の人間が交代してくれた。

死体検案書には雑な手書きの字で「事故死」と書いてある。
本当は検死を終えてはじめて書けるものだが、この状況では仕方ないのだろう。
これは、遺体が発見されたときのために、保管しておかなければならない。

全部終わって、家に帰ると、私には、もうなんにもなかった。からっぽだった。

ふと、レナの携帯電話を見る。
交際相手の新名弥四郎さんのこと、私は知らなかった。
もしかしたら、いいえきっとそのうち、紹介してくれたに違いないけれど。
ほかにも、私の知らないレナが、この中にはあるかもしれない。

私は、レナの携帯電話を手に取った。

目を通していく。
ほとんどが、私の知っているレナだ。

音声とか、写真とか、ないかな。

動画とか。
自撮り、してないかな。

淡い期待をしてしまう。

もう、声を聞くことはできない。
顔だって、見ることができない。
もしこの四角い小さな箱の中に、レナの姿があれば、声があれば。動いている姿があれば。

レナは、あまりそういうことをするタイプではなかった。

でも、もしかしたら。

期待しないではいられない。

最新の動画がある。
ああ、レナの声だ。レナの声が聞こえる。

そこは、金曜日の夜の、焼鳥屋だった。
私が行って、レナの携帯を預かった、あの店だ。

ところがレナの声は、切羽詰まっていた。

「私はこの携帯を、この店に置いていくよ。あなたはどうにかして、これを見つけてほしい。ロックは解いて置いていくから、お願い」

……!?

これは、私にあてたメッセージであると、直感した。

それにしても、この言い方は……。
レナは、自分の身に、なにか危険なことが起きることを、この時点で予測しているように聞こえる。

そしてその後にレナが話し出したことは、こんな場面でなければ、荒唐無稽な創作としか、受け取れないようなものだった。


●アタック01-11 スケトレス

店内にはレナと店長の2人だけだ。レナは、店長に聞かれないようにこのメッセージを残している。
そこからのレナの話は、とても信じがたく、一度聞いただけでは内容が頭に入ってこなかった。

「追い詰められてしまった。もうダメかもしれない。あの恐ろしい生き物たち……人間社会に溶け込んで、自分の主人のために、世界を破滅に導こうとする『スケトレス』に」

世界を破滅に導こうとする、って。
いきなり世界規模の話に飛躍するの?
私と姉との小さな関係性の話が、いきなり世界の危機に繋がってしまうなんて、それなんてセカイ系?

レナの話は続く。

「研究所の私専用ルームに、大事なものが入れてあるから、それを取りに行ってほしい。あいつから身を守るワクチンと、武器が入っているから」

あいつ……スケトレスという謎の存在か。
検索してみたが、「ストレス」ばかりがヒットする。
この時点では「スケトレス」というのが何を指しているのか、まったくわからない。
ショッカーみたいな組織なのか、ミギーのような寄生生物なのか。

「部屋にはロックがかかっているから、解除してね。パスナンバーはね、名前を数字に……」

そこまでで店長が、レナの話を遮るように、声をかけてきた。

「レナさん、ちょっとだけ店を空けます、すんません」
「あ、わかりました。お客さんが来たらそう言っときます」
「すんません、お願いします」

肝心なところで話が中断した。
レナが続きを話し出そうとすると、また邪魔が入った。
店長が出て行った直後、ガラガラと店の扉が開いた。
レナは携帯電話を隠したため、画面は真っ暗になる。

「西宮さん、探しましたよ」

声だけが聞こえた。
ザラザラした、低い男の声だ。
この声には聞き覚えがある。
ヤマト感染研究所の、レナの上司の人の声だ。
名前はたしか、御国獅子丸。

「なんでここがわかったんですか」
「『スタグラム』を見ました」
「立派なセクハラですよ、それ。ストーカー行為です」

これが会社の上司とすると、最悪な人間関係だ。
レナは、よくそんな会社に毎日出社していたものだと思う。

店長が帰ってくる足音。男が慌てて立ち去る足音が重なった。

「おかえりなさい店長。私、帰ります」

緊張した声で、レナが店長に言う。そこからは物音だ。
店を出る音、自転車のスタンドをおろす音。
店長の「ありがとうございました」の声。
店長が食器を片づける音。

「あれ、レナさん携帯忘れてる」

そんな店長の声とともに、動画はそこで途絶えた。
店長が切ったのだろう。

私は、何度も繰り返し、動画を再生した。
深刻な事態への不安もある。けれど、そこにレナの声があることが、声が聞けることが、なによりも嬉しかった。

そして私は決意した。
レナの死の真相を探ろうと。

物語後半の目的:姉の研究室を訪れて、その死の真相を探ること。

それにしても、慌てていたとはいえ、結局携帯電話のロックはかかっていたし、研究所のパスナンバーも言ってないじゃない。
あんなに慌てて店を出なくても、研究所のパスナンバーを言って、時間を置いた後に出た方が良かったんじゃない?

そこまで考えて、私は気づいた。
レナはこの店に「携帯を置いていく」という選択をしたのだ。
それってつまり、レナはこの時点でもう、家に帰るつもりはなかったということ。
「もしも私の身になにかあれば」みたいな仮定の話ではない。
もう、自分は助からないと確信していたからこその行動なのだと。

居酒屋を3軒もはしごするなんて、酒豪すぎるなんて思っていた。
でも、違ったのだ。
レナはこれが最後になるからと、好きなお店の好きなメニューを食べて回っていたんだ。

そう。「スケトレス」の存在。
荒唐無稽な話なんかじゃない。
目を醒ませ。私たちの世界は何者かに侵略されている。
これは訓練でもリハーサルでもない。

・さっそく姉の研究所を訪れる
・残りの動画も確認する

まずは残りの動画を確認しよう。ほかにもなにかヒントを残しているかもしれない。

次回、どうやって研究所に入りこむ?


■登場人物
西宮ハナ 主人公。双子の妹。無職。
西宮レナ 主人公の双子の姉。ヤマト感染研究所勤務。遺体で発見され、その遺体が警察署から消えた。
新名弥四郎 西宮レナの交際相手。
御国獅子丸 西宮レナの上司。ストーカー気質。

■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「最期の日に彼女は」
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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2025年1月14日火曜日

カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第37回 FT新聞 No.4374

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第37回
「ドラゴン」
(中山将平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

 あけましておめでとうございます!
 旧年中も僕たちの作品をお楽しみいただき、ありがとうございました。
 あらためまして、本年も何卒よろしくお願いいたします。
 
 実は僕たち、1月18日(土)に1つ、1月19日(日)に4つのイベントに参加する予定なので、お知らせを。
 以下のようなスケジュールです。
 1/18・19(両日)『ボードゲームビジネスエクスポジャパン(BGBE JP)』に参加予定・ブース配置【G-8(一部分)】・開催地:インテックス大阪
 1/19『コミックトレジャー45』に参加予定・ブース配置【4号館 D08b】・開催地:インテックス大阪
 1/19『関西コミティア72』に参加予定・ブース配置【F-58】・開催地:インテックス大阪
 1/19『文学フリマ京都9』に参加予定・ブース配置【お-73】・開催地:みやこめっせ

 一日に4つのイベントに参加するのは、僕の記憶では初めてです。
 いまから、どんなことになるのか、楽しみにしています。

 さて、今日は僕の記事としては新年一つ目ということで、前回に続き少し特別性の高いことを書こうと思います。
 ズバリ、今回のテーマは「ドラゴン」!
 ファンタジー世界でドラゴンを扱うのは、やはり特別なことだと感じています。
 カエル人の創作を通して学んだ扱いについての話を語ります。
 ほら、辰年もありましたし。
 ……え、辰年は去年で、今年は巳年……!?!?
 ほ、ほんとですね!!
 とはいえヘビ人のテーマは以前書いてしまったので、このままドラゴンの話題を貫きたいと思います!!
 創作を楽しまれている方にとって、読む価値のある記事にできたら幸いです。
 それでは、具体的に見ていきましょう。

◆ ドラゴンの立場
 ファンタジーといえば、ドラゴン。
 そう感じられる方も、多いのではないでしょうか。
 ドラゴンというモンスターがファンタジーというジャンルそのものを象徴することは、もはや殊更に取り上げる必要もないことのように感じられます。
 これまで様々な小説、映像作品、ゲーム等々の中に、代表的な存在としてドラゴンが描かれてきたのを僕自身見てきました。
 もちろん、それゆえ僕にとってもドラゴンは重要かつ特別なモチーフであることに疑いはありません。
 正直、自分の人生の中で人間を描いた回数よりもドラゴンを描いた回数の方が2倍以上多いなぁと確信しています。
 ええ、大好きなんです。
 実際、僕の画風は「人間を正しく描くために作られている」のではなく「ドラゴン(やその他のクリーチャー)を(自分にとって)魅力的に輝かせるために作られている」と思っています。

 それほど重要なポジションであるドラゴンなのですが、様々な作品を見渡すと、その「扱われ方」は多様であるように見受けられます。
 ある作品の中では絶滅しかけている恐るべき兵器として、また別の作品では人間と心を通わせる騎乗生物として、さらに他の作品では悪意に満ちた孤高の存在として……というように。
 これらの共通点は、やはりどれもドラゴンを物語において「大きな存在感を放つもの」として描いている点ではないかと感じています。
 逆に、そうはいってもその立場やキャラクター性等の特徴・設定は世界観によって大きく異なるというわけです。

 だからこそ、自分の作品の中でこの怪物を「どう扱うのか」が大切だと思っています。
 
◆ ドラゴンの知能
 あまりにも大きな分岐点のひとつは、その知能ではないでしょうか。
 一部の作品において、ドラゴンは「言語」を見事に操ります。(独自の言語の場合も、人間に通じる言語の場合もあると思います。)
 会話ができるほどの知能があるというだけでなく、そういった場合一般的な人間以上に賢いことも少なくありません。
 賢者として扱われていることも目にします。
 このような作品において、ドラゴンはある種の「神」や「為政者」「知識層の人物」と近しい存在に思えるかもしれません。

 一方で、言語を扱わないドラゴンはより獰猛な獣としての性質を描かれがちだと感じます。
 「言葉が通じなくとも心は通じる」描写はあり得ます。
 いずれにしてもそのキャラクター性が失われることはあまり見たことがありません。(完全な咬ませ犬の場合は別かもしれませんが。)
 この描かれ方をする場合、ドラゴンはある種の「自然災害」や「非常に厄介な敵」「粗暴だが狡猾な人物」と近しい存在に思えるかもしれません。

 これらのことから僕は、「ドラゴンというものがどういう存在か」ということ自体が、その作品のテーマと深く結びつくことを感じるようになりました。
 それぞれの作品でドラゴンが「何の比喩として描かれているのか」が違い、そのことが表したいテーマを反映しているように思えたのです。
 ある作品では話せないドラゴンを登場人物の子供のような存在として描いていました。
 ドラゴンを通じてのこととはいえ、家族愛さえもテーマになりうるのです。
 またある作品では話せるドラゴンを悪と脅威の権化として描いていました。
 邪悪さとは何か。善性とはどんなものなのか。そして、悪と善はどのように互いに作用するのか。このドラゴンから、そんなテーマを胸が苦しくなるほど感じました。

◆ フログワルドにおけるドラゴン
 カエル人の創作をする際、そこに何を表現したいのか、考えこみました。
 一番表現したいものは「善悪観の否定という見地から獲得する他者性」です。
 ……言葉にするとやっぱり小難しくなりますね。
 とにかく、僕は自分の世界を「善悪に分けられもの」にしたくないと思っていました。
 そして、「自分が今の有り様と違う前提に立った時、どう判断するか」をもとに、「自分とは違う他者の視点を楽しむ」ことを表現したいという目的を持っていたのです。

 そのようなものを表現するために、ドラゴンは二つの面を持つ存在として描くことに決めました。
 一つは「世界の神秘を象徴する存在」として。
 ドラゴンの体内で生成される特殊な宝石(胃石)「ドラゴナイト」や竜の血の効能、ドラゴンの牙から生まれるスパルトイ(竜牙兵)など、様々な神秘を体験できる存在としての役割。
 もう一つは「力を持つ他者」として。
 恐ろしく強力で、独自の目的を持ち行動する「自分とは明らかに異なる知的な種族」としての役割。(カエル人の世界フログワルドでは、これを表現するためドラゴンは話します。)

 こうして見返してみても、どちらの役割も、僕の創作の目的そのものを照らしてくれるものだと感じています。
 どのような目的によって創作をするか。それがドラゴンという象徴に文字通り投影されるのだと思います……というお話でした。
 
 それでは、今日はそろそろこのあたりで。
 よきファンタジー・ライフを。


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2025年1月13日月曜日

フォレストマスターへの道2 FT新聞 No.4373

おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
鬱の療養として抗うつ薬を飲みはじめたのですが、初日からよく眠れよく食べられるようになりました。
相性がいいというのか……ありがたいかぎりです。
限定的ながら、仕事を再開しています。


◆フォレストマスターへの道!
新年企画「フォレストマスターへの道」へのたくさんのおたより、ありがとうございます!
さっそくいくつかの〈できごと〉が作られましたので、ご紹介してまいります☆

桜森と冬の終わり 第1週
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/CherryBlossomForest_and_EndofWinter_Week1.txt

◆アンサーしちゃおう!
フォレストマスターの道を楽しく作る方法のひとつとして提案したいのは、今回の〈できごと〉に関連するカタチで〈できごと〉を作ることです☆
アラネア絹糸のスカーフが森の中に落ちていた(出目11)。なら、その持ち主は? 落とした理由は?
ひとつの〈できごと〉が別の〈できごと〉とつながるとき、点と点が線になって、冒険はより豊かになります☆


◆ケモノコビット!
ヒーローズオブダークネスのほうも、ゆっくりと再開してまいります☆
以前お話ししたとおり、最初に遊びやすい、基本ルールの「盗賊」にあたる【種族】が用意されました……【ケモノコビット】です!
コビットが【獣血】を入れた存在であるこの【種族】、お好きでしたらぜひ使ってみてください☆

ヒーローズオブダークネス(HoD)【種族】ケモノコビット
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_HoD_NewKindred_BeastCobbit.txt


それではまた!



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2025年1月12日日曜日

アランツァクリーチャー事典 Vol.12 FT新聞 No.4372

おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。

本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
杉本=ヨハネから預かりました、アランツァクリーチャー事典の第12回です。

今回のジャンルは『植物』!
拙作『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』の舞台である〈太古の森〉には沢山の植物系モンスターが登場したのですが、執筆当初はまだここまでデータがまとまっておらず、設定から頭を悩ませながらデータ化したのが感慨深いです。
なので、私のシナリオに登場するモンスターとはデータが違うものが多いですが、それは〈太古の森〉の独自進化モンスターである、とご理解ください。

ちなみに私もこのデータや、書籍化されてまとまった『アランツァクリーチャー事典』を元に、更に〈太古の森〉のシナリオを書いてみようと、既にワクワクしております。

どうぞお楽しみ下さいませ。

アランツァクリーチャー事典『植物』
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/AranciaMonsterEncyclopedia_vol.12.txt

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2025年1月11日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第622号 FT新聞 No.4371

From:水波流
自分へのお年玉のつもりで、『類語大辞典』(講談社)を購入してみる。
7万9000語収録はさすが大辞典というだけはある。
が、手元に類語辞書は7-8冊あるのだけど、創作の言葉探しの時にパッと引きやすいかどうかでいうと、しっくり来るのはまだ『てにをは辞典』だけだなぁ。

from:葉山海月
行列のできるラーメン屋の客リスト。
順番に「1名でお待ちの田中やま子さまー」と呼び出してくれるが「セクシー大下」と記入したらみごと無視されました。

from:中山将平
1月12日(日)、年始一つ目のイベントとして「スーパーコミックシティ関西30」に僕らサークル参加します!
ブース配置は6号館D【ク47b】、開催地はインテックス大阪です。
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
また、1月18日(土)に1つ、1月19日(日)に4つのイベントに参加します。どれも関西での開催です。
詳しくは僕たちのホームページ(以下のアドレス)をご覧いただけましたら。
https://ftbooks.xyz/saishinjyouhou


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1/5(日)~1/10(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2025年1月5日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4365

☆新企画☆フォレストマスターへの道 

……
「桜森のあるじに、会っていただきたいのです」
 人間に似た使いの者はそう言って、君に助けを求めた。
(プロローグより)
本日はローグライクハーフの新企画『フォレストマスターへの道』のはじまりです。
作られているのは「背景」「プロローグ」だけ。
その空白の冒険、つまりイベントを、皆さんで作ってしまおう、という読者参加型企画です。
アタマからしっぽまで、皆さんが醸し出す冒険のハーモニーをここに!
詳しくは本記事をどうぞよろしくお願いいたします。
投稿先はここ!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
どしどし送ってください!


2025年1月6日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4366

☆謹賀新年☆ 
・あけましておめでとうございます!
今年も、読者の皆様方と歩んでいこうと思います。
さて、今年の目標「一周目の完走」ですが、具体的な刊行スケジュールは以下の通り。
「ローグライクハーフ」サプリメント
・「アランツァワールドガイド」
・「ヒーローズオブダークネス」
「ローグライクハーフ」シナリオ
・d33シナリオ集「雪剣の頂 勇者の轍」他3編(byロア・スペイダー)
・「エメラルド海の探索」(by杉本=ヨハネ)
・「堕落都市」(by杉本=ヨハネ)
・「常闇の伴侶」(by水波流)
ゲームブック
・単眼の巨獣(byロア・スペイダー)
・クトゥルー ゲームブック短編集3
昨年の目標である「広がり」をも念頭に入れて、今年も躍進してまいります!
今年もどうぞよろしくお願いします。


2024年1月7日(火) かなでひびき FT新聞 No.4367

これはゲームブックなのですか!? vol.114 
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する本は『増加博士の事件簿』(著:二階堂黎人 講談社)
巨漢の名探偵、増加博士と、スリムなワトソン役、羽鳥警部のコンビが送るショートショートミステリー集。
ミステリ新本格の担い手の一人、二階堂黎人先生の提出する謎は、短編とはいえ本格的な謎解きばかり!
時間のスキマの頭の体操にぴったり!
あなたは、博士が真相を指摘する前に、謎を解くことができるでしょうか!?


2025年1月8日(水) ぜろ FT新聞 No.4368

第3回【最期の日に彼女は】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第420回をお届けしました。
今回はFT書房のゲームブック「クトゥルー短編集2 暗黒詩篇」の中から、トリを飾る作品、『最期の日に彼女は』に挑戦いたします!
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探し始めました。
レナのパソコンにある「スタグラム」の写真から、姉の立ち寄り先を突き止めました。
そこでレナの携帯電話を手に入れます。しかし、パスワードがわからずに開くことができません。
次に、レナの自転車を探すことに。
本格的な聞き込みの末、見つけ出したのは、丘に転がるレナの靴。
衝撃の展開を迎えるのですが、まだまだそれは序の口に過ぎない……。
本格的ミステリの香りさえただよう、クトゥルフ物をどうぞ!


2025年1月9日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4369

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.22
・岡和田晃氏による、新しく楽しい読み物満載な「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
「FT新聞」No.4355で配信した片理誠氏の『エクリプス・フェイズ』シェアード・ワールド小説『決闘狂』に引き続き、今回は『シーサイドホテルにて』をご紹介いたします。
黒っぽい〈海〉に向かって真っ直ぐに伸びる白い岬。通称「シーサイドホテル」
その突端に建つ"それ"を彼らは「墓場」とか「モルグ(死体保管所)」と呼んで嫌い、そこへ送られることを「島流し」と呼んではばからなかった。
主の名はトマスとアンナ。客の名はツァオ。
世紀末を通り越し、世界が終わった後のような世界観の中、彼らの目の前に現れた真相は!?
ソラリスの海、アーサー・C・クラークの都市といった古典SFのイメージを、ダフネ・デュ・モーリアの『レベッカ』を思わせる海岸の建物のモチーフをもってまとめあげる、その剛腕、安定感たるや! これぞプロ作家の仕事、と膝を打つこと請け合いです。


2025年1月10日(金) 休刊日 FT新聞 No.4370

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓


(ジャラル アフサラールさん)
二階堂黎人さんというと手塚治虫先生のファンで自分でも鉄腕アトムのストーリーの後日談である「小説 鉄腕アトム 火星のガロン」書かれている少しマニアな人ですが、(単独作品としては)世界最長の推理小説『人狼城の恐怖』(全4巻)を書かれているレジェンド作家ですが、こういう作品も書いておられるんですね。知りませんでした。

(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます!
かなでも『人狼城』はもちろん読みましたけど、あれだけの分量を読ませる先生はスゴイ!
推理か、と見せかけてオカルトへ、だけど合理的解決へ戻ってくるところに、天才肌を感じますねー!
ジャラルさんの知らない作品を紹介できてよかったですー!
かなでにとっては、ジャラルさんレジェンドですので((ノェ`*)っ))タシタシ
知らない作品はないと思ってましたー。
『小説 鉄腕アトム 火星のガロン』知りませんでしたよ! 
機会があったら読んでみますねー。


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休刊日のお知らせ FT新聞 No.4370

おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。

毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
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2025年1月9日木曜日

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.22 FT新聞 No.4369

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.22

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●はじめに(岡和田晃)

 「FT新聞」No.4355で配信した片理誠さんの『エクリプス・フェイズ』シェアード・ワールド小説「決闘狂」の非常なアクション、ポストヒューマニズムの描写はお楽しみいただけたようで、確かな手応えがありました。
 今回はまたタイプが異なる、「シーサイドホテルにて」をご紹介できればと思います。ソラリスの海、アーサー・C・クラークの都市といった古典SFのイメージを、ダフネ・デュ・モーリアの『レベッカ』を思わせる海岸の建物のモチーフをもってまとめあげる、その剛腕、安定感たるや! これぞプロ作家の仕事、と膝を打つこと請け合いです。

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オリジナル小説「シーサイドホテルにて」
 片理誠

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 黒っぽい〈海〉に向かって真っ直ぐに伸びる白い岬。その突端に建つ"それ"を彼らは「墓場」とか「モルグ(死体保管所)」と呼んで嫌い、そこへ送られることを「島流し」と呼んではばからなかった。
 実際、周囲には他に建造物と呼べるものは何もなく、ただ荒涼とした物寂しい風景が広がるばかり。見えるものと言えば砂と石と岩だけだ。〈海〉の方に目を凝らせば、遙か彼方にちょっとした歴史的遺物を見つけることもできるのだが、それとて今となってはさほど価値のある代物ではなかった。
 だが管理者であるトマスに言わせれば、この場所に関する彼らの前述がごとき評価は全て誤った先入観に基づくピント外れの不当なものでしかないのだ。「墓場だなんて、とんでもない」とことあるごとに彼は主張した。「ここはホテルなんだ」と彼。「この世界に最後に残った、シーサイドホテルなんだよ。こんな建物はもう他にはないだろう。ここにあるきりさ。我々に残されたたった一つだけの貴重な、そして神聖な場所なんだ。言わば祭壇のようなものだな。どんなに時間が経とうとも、どれほど科学が進歩しようとも、こういう施設は必要なんだよ」
 直径二百メートル、地上三階、地下十三階の銀色の建物だ。〈海〉に面する部分は総ガラス張りになっている。屋上には大きめなドームと、様々な形状をしたアンテナが設置されていた。遠くからだと斜長岩に突き立った巨大なシリンダーのようにも見える。
 このホテルの建設に関わったことがトマス氏の自慢だった。かつて掘削作業の一部を担っていたことがあるのだと言う。そのずっと後に行われた改修工事では中心的な役割すら果たしたとも。
 この建物にも正式名称はあって、それはホテルでは(もちろん墓場やモルグでも)ないのだが、トマスは勝手にここを「ホテル・ローレル」と名付け、他になり手がいないのをいいことに、相棒であるアンナと一緒に住み込んで、たまにやって来る客を辛抱強く、熱心にもてなしている。
 ホテル・ローレルはほとんどの場合、ご想像のとおりに、ひどく閑散としている。別に館内を死霊の類が闊歩しているわけではないのだが、誰も来たがらない。トマスとアンナはわざわざ〈都市〉に対して広告を打ったりもしたのだが、その成果はまったくはかばかしくないものだった。
 なので時折、やたらと賑やかになることもある。まともな客が誰も来たがらないということはつまり、ここに来るのはまともではない者ばかりということで、そういった客のほとんどは騒々しいのだ。
 今回やって来た若者もそうだった。
 ツァオ、とやって来るなり彼は名乗った。そして「本来はもっとずっと長い名称なのですが、こちらの流儀に合わせますよ」と慇懃に付け加えた。
 そいつはどうも、とトマス。助かるわ、とアンナ。両者の口調から抑揚は消えている。が、一応の礼儀として、どちらも軽く会釈はした。
 ほんの心持ち頭を下げながらも、ホテルのエントランスでトマスは「やれやれ、また厄介な奴が来たぞ」と考えていた。
 もっともこの事態は予言されていたことではあった。アンナは占いを嗜むのだ。今朝、彼女は良くないカードを引いていた。「暴走と混乱の暗示」とのこと。大アルカナのお告げはもちろん的中する。実際、蓋を開けてみればそのとおりとなった。だがトマスに言わせれば、そんな占いは当たるに決まっているのだから意味などないのだ。〈都市〉から誰かが送られてくる時、そいつは決まってまともではない奴だ。まともじゃない奴はもちろん、当然のようにトラブルを引き起こす。〈都市〉から連絡があった時点で既に分かっていたことだった。予想されて然るべき未来、という奴だ。
 だが厄介な奴は別に今回が初めてというわけではない。それは言わばこのホテルの日常だ。大切なのは相手がどういう方面に対して厄介なのか、という点だ。厄介の方向性を正しく見極めさえすれば、対処のしようはある。
 まずは観察だ、とトマスは当面の行動指針を定める。
 とは言え、あまり見るべきところのない若者だった。
 身長は約五〇センチ。トマスは二メートル以上の背丈を誇る偉丈夫だし、比較的小柄なアンナでも一・五メートルはある。ツァオはかなり小柄だ。
 だがこれこそは彼が新しい世代に属していることの証だった。彼らは世代を経るごとに小さくなってゆく傾向にあるのだ。
 見た目はいかにも非力そうで、腕や足も細くて頼りない。だがその知能は、トマスやアンナが束になっても敵わない、途方もないもののはずだ。〈都市〉を離れてから随分と経つため、最新鋭の頭脳にどれほどのポテンシャルがあるのかをトマスは正確には知らなかったが、とにかく天文学的なレベルになっているのは間違いない。
 そのツァオはしかし、不安そうに周囲を見回していたかと思うと突然、そこら中を走り回り、やがてトマスの眼前で急停止して「ンノォォォオオオッ!」と絶叫した。
 やれやれ、とトマスは頭の中で漏らした。また随分とこじらせてから来たものだ。〈都市〉とは一度、じっくりと意見を交換する必要があるだろう。もう少し注意深く構成員たちの健康を観察するべきだし、より予防的な手段にそろそろ対応の軸足を移すべきなのだ。
 今すぐ帰りの〈船〉を呼ぶよう彼は要求したが、それはトマスによって即座に却下された。
「無理だ。そもそも君は、たった今来たばかりじゃないか」
 ツァオは地団駄を踏んだ。トマスとアンナは、ブレイクダンスを踊る赤ん坊を観察するような目で、それを見下ろした。
 あり得ない、絶望の淵に突き落とされた毛虫のような動作で身もだえしながら、彼がそう叫んだ。
「ここには何もない! ここは時間を捨てるための場所だ! 時の墓場だ!」
 ふむ、とトマス。
「なるほど。その詩的な表現には敬意を表したい。が、ツァオ、君は間違っている。ここには全てが備わっているんだ、〈都市〉にはない全てがね」
「〈都市〉にはない? いったいここに何があるって言うんだ!」
「いみじくも君がたった今、言ったことがさ。何もない。そう、ここには"何もない"があるんだよ」
 ホテル中央に振り返る。
 エントランスから真っ直ぐに伸びる通路は受付カウンターに突き当たると左右に分かれる。ホテル中心部をぐるりと回り込むようにして進めば、左右のどちらの道を選んだとしても、その先にあるのは〈海〉を一望することのできる巨大なラウンジだ。このホテルの一番の自慢だった。
 館内には最低限の照明しかなく、いつも薄暗いが、トマスもアンナも、むしろそれが気に入っていた。微光こそが、ここにはふさわしい。まるで深海にいるかのようでロマンチックだし、何より、明るいとここはいささかみすぼらしく見えてしまうのだ。何しろ古い建物なので。
 ホテルはいつもただ広いだけで、動くものの気配はなく、異様に静かだ。確かに、時の墓場という例えは言い得て妙なのかもしれない。うむ、悪くはない表現だ、ただしキャッチコピーには向いていないだろう、イメージとしてはネガティブなわけなので、などとトマスが頭の中で考えているとツァオが再びわめきだした。
「下らん! 無意味な言葉遊びをしている場合なんかじゃないんだ! 私が解析チームから外れることで、どれほどシステム全体の効率が低下するか、あなた方には計算することすらできない! 私たち全体にとっての大いなる損失なんですよ!」
 キャンキャンとうるさいったらない。
 まぁまぁ、とアンナが割って入ってくれた。
「あなたのことはもちろん、〈都市〉には報告しておくわ。もし復帰させた方が良いという判断が下れば、きっと〈船〉をよこしてくれるはずよ」
 それはもちろんそうだった。アンナが余計なお節介を焼かずとも、〈都市〉は常にツァオの状態をモニタしている。連中が最新鋭、最高峰の頭脳をいつまでも遊ばせておくはずがない。もし十分に良くなったと判断されたなら、ツァオは強制的にでも元いた場所に戻されることになるだろう。
 だがそれを今伝えたところで、この若者の情緒が安定するとは思えなかった。おやおや、今度はアンナに食ってかかっている。
 ここにいるということはつまり、〈都市〉に用無しと判断されたということ。彼はそれが気に入らないのだ。どうしても認めたくないのだろう。これは何かの間違いだと無理矢理思い込もうとしている。
「あなた方には知る由もないことですが〈声〉の意味があと少しで分かるかもしれないのです。私は、私は、確かにつかんだんだ、ほんの一瞬だけ、 "彼ら"の意思を。直後に気を失ってしまったためそれが何だったのか、どうしても思い出すことができないのですが」
 よくある話だ、とトマスは思った。処理能力の限界を超えてしまった時は、誰であれそうなる。自分もなったことがあった。もう随分と昔の話だが。最高性能を誇る知能といえども限界はある、ということだ。恐らくその瞬間の記憶を修復することはできないだろう。何も記録されていないのでは、復元のしようがない。
「分かりますか? "彼ら"のプロトコルを、もう少しで理解できそうなんです。あと一歩なんだ! こんなところでゆっくりしてはいられない! 彼らのフロー、超高密度情報ハイウェイは不定形で刻々とその姿を変えていますが幸い今はここから数光年しか離れていない宙域を流れている! このチャンスを逃したらもう二度とあの方々に接触することはできないかもしれないんです!」
 ツァオの言う"彼ら"とは、〈都市〉が確かに聞いたと主張している〈声〉の発信主のことだ。正体がまったく分からないので、単に"彼ら"と呼んでいる。宇宙からの、以前ならばノイズとして一顧だにされなかったであろうか細い信号の中に、〈都市〉は高度に暗号化された情報が隠されている「かもしれない」ということを突き止めたのだった。
 元々〈都市〉自体がそのために造られた存在だった。このホテルの反対側に建てられた、巨大な天文台を中心にして発展した施設群だ。星の〈声〉を聞くために造られた街で、星の〈声〉が聞こえたというわけだ。少なくとも今のところ〈都市〉はそう主張している。
 その主張に懐疑的な者もいる。トマスやアンナのように。本当に何者かの〈声〉なのか、それとも単なるノイズなのか、いずれはっきりすることなので誰も表立って反対はしていないが。
 それに〈都市〉はこの世界に残された唯一の街だった。だからこそ、長ったらしい正式名ではなく、単に〈都市〉とだけ呼ばれているのだ。数え切れないくらいあったその他の街は、今では全て廃墟となっている。たった一つだけ残った〈都市〉に存在する理由があることは重要だし、良いことだ。どうせ働くのなら何か意義のあることをしたいじゃないか、というのがトマスとアンナの意見だった。
 アンナに向かってツァオはまだ何かをまくし立てている。聞いたこともないような専門用語や、意味の不明な数字の羅列だ。恐らく彼自身、自分が何を喋っているのか分かっていないのだろう。
「いいですか、五重アインシュタイン効果を応用したアソシエーション系観測では、言うまでもなく宇宙の泡構造への配慮が必要です。対象恒星のケルビン数と虚無空域との温度差に正確性を期さない限り正しい観測結果を期待することはできない。私は観測点IST-37129-8599からのデータの中に不自然な値を見つけたのです。それは具体的には星系473888SUU-IDu009のものです。X線の値が変異していることを突き止めた私はもちろん、まず太陽定数の再評価を——」
 この前ここに来た若者は重度の神経症に冒されており、仕事への恐怖に取り付かれ、行動も言動も支離滅裂で、最初は手もつけられなかった。彼の自我は様々なプレッシャーやストレスによって完全に破壊されてしまっていたのだ。その結果、ただただ周囲に攻撃性を発揮するだけの存在に成り果てていた。彼は「この宇宙の全てを爆破しなければならない!」と叫び、「まずは手始めにこのホテルからだ!」と主張して譲らなかった。
 今回のは前回のとは逆だな、と狂ったように踊りながら吠え続けているツァオを見て、トマスは判断した。
 恐怖に取り付かれている、という点では前回の若者と同じだが、ベクトルが逆だ。ツァオに取り付いているのは"仕事への恐怖"ではなく、"仕事を失うことへの恐怖"、あるいは"無能の烙印を押されることへの恐怖"だ。エリートとしての自分の存在意義に必死にしがみつこうとしている。典型的なワーカホリックと言っていいだろう。前回の彼と同様、よくあるタイプだ。最近の若者たちは優秀な者ばかりだと聞いていたが、もしかするとその分、繊細なのかもしれない。
 一刻も早く〈都市〉に戻らなくてはならないことへの恐らくは無限に続く証明の真っ最中にあるツァオは、トマスの目にはオーバーヒート寸前に見えた。コマネズミのようにくるくる回ったり、その場で激しく飛び跳ねたり、声の限りにわめき散らしたり、ひっくり返ったり起き上がったり。このままならその内本当に全身から湯気を噴き出しかねない。
 まぁまぁ、と今度はトマスが彼らの間に割って入った。
「とにかく君、まずは〈海〉を見ないか? あれを眺めんことには、ここに来たとは言えんからなぁ。せっかく今ここにいるんだ。もう数十メートル歩くくらいのことは構わんだろう。ところで、何か荷物はないのかね?」
 最後のはトマスお得意の冗談だったが、ツァオには理解できないようだった。
 入り口からすぐに〈海〉が見えればいいのにと私も思うよ。こうして大きく回り込んでからじゃないとオーシャンビューを楽しめないというのは、ホテルとしてはちょっとどうだろう、とね。何より派手さがない。インパクト不足だな。設計ミスと君は思うだろうね。だがまぁ、仕方のないことなんだ。何しろここは元々ホテルじゃぁなかったんだから。私たちで改装したんだよ。いやいや、大した苦労じゃなかったよ。以前から宿泊施設ではあったわけで、私とアンナは余分なものを撤去しただけさ。地下の方は大仕事だったが、あの頃は他にも仲間が大勢いたし、何より、力仕事なら私も得意なのでね。
 楽しかった、と言っておくさ。仲間のほとんどはあの後、あそこで眠ってしまったが、どういうわけか私は働くのが好きでね。今もこうして現役にしがみついとるんだ。ここが気に入ってるんだよ。住めば都という奴さ。エントランスからでは〈海〉を望めない、というこのホテルの些細な欠点も、見方を変えれば素敵な演出となる。ちょっとした"焦らし"という奴だな。いきなり全部を一遍に見るというのも悪くはないのかもしれんが、こうしてじわじわと姿を現す方がより感動的だとは思わないか。そら、見えてきた。少しずつ明るくなってきただろう?
 歩きながらトマスは努めて陽気に若者に話しかけ続けた。まずはこちらのペースに引き込むこと。これが重要だ。そうすれば乱れてしまったツァオの思考も少しは落ち着きを取り戻すだろう。
 それに〈海〉を見れば。あれさえ見れば彼も何かを悟るはずだ。それはまさにこの世界そのものと言っても良い存在だった。我々はあの中から生まれ、あの中へ還る。理屈ではない、それは眼前に横たわる厳然たる事実なのだ。
 展望ラウンジにたどり着いたツァオは、よろよろと窓辺へ歩み寄った。盛んに周囲を見回している。
 どうだね、と満足げに話しかけながらトマスもそのすぐ後ろに立った。
「凄いものだろう」
 巨大なガラス張りの壁一面、視界一杯に広がる黒い海。その所々に浮かぶ白い島々を強烈な光が照らしている。頭上には漆黒の空と、燦然と輝く青い星の姿。何度見ても威圧される、壮絶なパノラマだ。
 さすがに畏怖の念に駆られたのか、ツァオもしばらくの間は無言だった。
 だがやがて「駄目だ」と忌々しげに吐き捨て、かぶりを振った。
「やはりこんなところでは、観測は無理だ。ここはノイズが多すぎる。〈声〉はあまりに弱く、儚いのです。こちらの側では何も聞こえるはずがない。あの星が、絶望的なまでに邪魔なのだ」
 頭上を見上げている。
〈声〉か、とトマス。
「でも君は〈都市〉でずっとそれを聞き続けてきたのだろう? ここに来てまで同じものを観測しなくてもいいんじゃないのかね。たまには違うものに関心を向けてみるのも、良い気分転換になると思うよ。
 このホテルにも観測装置はあるんだ。まぁ、どれも骨董品のようなものだがね。しかし手入れは欠かしておらんから、今でも十分に使えるのさ。例えば大型の光学式望遠鏡なんてのもある。もう〈都市〉にはこういう装置はないんじゃないのかね。
 あるいは地質調査がお望みなら、ここから遠隔操縦することのできる探査車もある。館内には展示コーナーもあるから、ちょっとした歴史の勉強もできるし、図書室では何だって好きな本を読めるんだ。
 君はここにいる間、好きに過ごしていいんだよ。我々はもちろん、何も強制したりはしない。もし何か聞いてもらいたいことがあるなら、我々は喜んでそれを聞くよ。ただし、〈都市〉に帰りたいというのは無理なんだ。我々には彼らの決定を覆す力なんてないからね。そこだけはどうかご理解を賜りたい。
 アンナはタロット占いが得意だから、きっと君の良い相談相手になれると思う。一方、私はと言えば、クロスワードパズルづくりが趣味でね。もし君に興味があるのなら、自信作を幾つか披露してみせるよ」
 しばらく黙り込んだ後、ツァオが再び口を開いた。
「ここはいったい、何だったんですか?」
 トマスは小さく肯いた。
「かつてここは……観測所兼ミサイル基地だった。つまりは軍事施設だな。
 昔ここには大勢の人がいて、ここから見張ることのできるありとあらゆるものを観測していたんだ。地下のハンガーにはぎっしりと大小様々なミサイルが格納されていた。もちろん全てに核弾頭が搭載されてたさ。
 彼らも、ミサイルも、今はもういない。軍事基地としての役目は終わったんだよ。今ではここは、シーサイドホテルなんだ」
 そうですか、と若者が呟いた。
 翌日、ホテル・ローレルのどこにもツァオの姿はなかった。少なくとも地上階には。まさか地下へ向かったのだろうか。
 だがエレベータが使われた形跡はない、とアンナがそれを否定した。彼女はこの施設のソフトウェア全般を管理しているのだ。
 でもおかしいじゃないか、と受付カウンターの前でトマスが粘る。
「館内のどこにもいないんだ。それとも彼は隠れん坊の名手なのか」
「外じゃないかしら」とアンナ。「とにかく〈都市〉に戻りたくて仕方がないようだったから」
「まさか歩いていったって? 馬鹿な。たどり着けるわけがない。十分の一も進めるもんか。だいたい、賭けてもいいが、彼には北も南も分からんだろうよ。道路標識どころか、そもそも道すらないんだ。死にに行くようなもんじゃないか」
「ホントね」
 暗い声でそう言うと、彼女はカウンターの上に広げたカードの中から一枚の札を取り上げた。そこには「月」の絵が描かれてあった。
 良くない結果よ、と彼女。
「これは先行き不明を意味するカードなの。不安、焦り、誤解の暗示」
「何てこった。まさにルナティックというわけだな」
「冗談言ってる場合じゃないわ。早く見つけないと——ん? ちょっと待って、今、格納庫を確認したんだけど、探査車が一台なくなってる」
「それに乗っていったって? だがあれは遠隔操縦しかできないはずだが」
「ハッキングしてダイレクトに操縦しているんでしょうね」
「まったく、近頃の若いもんときたら」
「錯乱状態にあっても時代遅れの車の一台や二台を乗っ取るくらいは簡単なんでしょうね。基本的には優秀なのよ」
「何か信号は出ていないか」
「全然。こちらのビーコンにも反応はなし」
「通信は? 何か言ってない?」
「さっきからずっと呼びかけてるんだけど、一言も返ってこないわ」
 ふむ、と考え込む。
「となると、こちらから迎えに行かねばならんな」
「地下から誰か起こしましょうか?」
「なぁに、この程度なら私だけで十分だよ」
「でもどっちに行ったのか分からないのよ。あなたの言うとおり、彼には東西南北の見当もつかない。〈都市〉の方に向かったとは限らないわ」
「予め見つけてから行けばいいさ。アンナ、メインシステムを立ち上げておくれ。なぁに、そう遠くには行ってないよ。せいぜい数時間も走れば探査車のバッテリーは上がってしまうんだから」
 翌々日、重たそうに頭を垂れながらツァオがラウンジにやって来た。
「ご迷惑をおかけしました。お二方のご親切には言葉もありません」
 小さい体で深々とお辞儀。すっかりしおらしくなっている。
「やぁ、やっと落ち着いたようだね」とトマス。
「良かったわ」とアンナ。
 ツァオは、呆然と立ちつくしているように見えた。
「まるで悪い夢を見ていたようです。私は、いったいどうしてしまったのでしょう」
 トマスとアンナは顔を見合わせた。
「端的に言うと、君はここから十二キロほど離れた砂丘に、またがっていた車ごと突っ込んで気絶していたんだ。大した怪我もなくて良かった」
「ちなみに、〈都市〉とは全然違う方向だったわ。きっと方位の感覚もおかしくなっていたんでしょうね」
「なぜ私を見つけることができたのです?」
 フフ、とトマスが笑った。
「屋上にある天体望遠鏡を使ったんだよ。途中からは〈海〉の上に轍も残っていたから、発見するのはそう難しくなかった。で、その後、私がそこまで行って君と車をそれぞれ左右の肩に乗せて返ってきた、というわけさ。一応、予備のバッテリーも持っていったんだが、結局使わなかったね。ま、ちょっとしたピクニックを楽しんだってところかな」
 カッカッカ、と腹をゆする。
 だがツァオはその場にしゃがみ込んでしまった。
「あなた方がうらやましい。私は〈都市〉から切り離されてしまえば無力です。何もできない」
 ツァオ、とトマスは優しく彼に話しかけた。
「君がどうしても〈都市〉に戻りたいと言うのなら、届けてあげることはできるよ。私には無理だが、ここの地下には〈都市〉とこことを十往復しても平気な連中だっているんだ。彼らの中の誰かに起きてもらえば、君をあそこまでは届けられる。だが」
「中に入れてはもらえないでしょうね。〈都市〉は、私たちが彼らの決定に逆らうことを快くは思わないでしょうから」
 ええ、と若者も肯いた。
「今の私では彼らの役には立てません。リソースを無駄にするだけだ」
 トマスが軽く片手を掲げてみせた。
「そう落ち込むことはないよ。すぐに君は元の性能を取り戻すんだから。今は自己診断措置の最中だから、本来のスペックを発揮できないだけさ。診断とその後の自動修復が終われば、史上最高の知能と知覚を君は再び手に入れるんだ。あと少しの辛抱だよ」
「短くても数年、下手をすると数十年、いや、もっとかかるかもしれません。私は何しろ、頭でっかちですので」
「結構じゃないか。ここでゆっくりしていき給え。今はただ待つことだけが君の仕事だ」
「〈声〉はきっとあなたを待っていてくれるわ。焦らないで。結局はそれが一番の近道なのよ」
 アンナも彼にゆっくりと、辛抱強い調子で話しかけてくれる。彼女の手には「ラッパを吹く天使」の絵が描かれたカードがあった。それが復活を意味する札であることを、トマスは以前、彼女から聞いて知っていた。
 ああ、と若者は声にならないため息を漏らした。ホテルの外に広がる〈海〉をただ呆然と眺めている。黒い玄武岩で覆われた平地だ。所々に点在する高地の部分が白く見えるのは、それが斜長岩でできているためである。黒と白、永遠に変わることのないコントラストが強烈な日射しの下で輝いている。
「何て不毛な眺めなんだ」とツァオが漏らした。「本当に、ここには"何もない"がある。この景色はまるで"無"そのものだ。時が止まったような、完全なる静寂の世界だ」
 そうだろう、自分専用のカウチに深々と身を沈めながらトマスが言った。このホテルの魅力が余すことなく相手に伝わって、今では大いに満ち足りた気分だった。ゆっくりと大きく肯く。あぁ——
「〈静かの海〉とは、上手く言ったもんさ」


***********************************************************************

初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9740


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2025年1月8日水曜日

第3回【最期の日に彼女は】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4368

第3回【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】ゲームブックリプレイ


※ここから先はゲームブック【最期の日に彼女は(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)】のネタバレを含んでいます。ご注意ください。


ぜろです。
「最期の日に彼女は」(クトゥルー短編集2 暗黒詩篇)をプレイしています。
双子の妹、西宮ハナとして、週末に帰宅しない姉のレナを探し始めました。
レナのパソコンにある「スタグラム」の写真から、姉の立ち寄り先を突き止めました。
そこでレナの携帯電話を手に入れます。しかし、パスワードがわからずに開くことができません。
次に、レナの自転車を探すことに。
自転車の行方は、そしてなにより姉、レナの行方は?


●アタック01-6 レナ、みつかる

携帯電話のロック解除に行き詰ったので、レナの自転車を探すことにした。
赤いママチャリだ。防犯登録の番号もわかる。

家と、最後に立ち寄った焼鳥屋の間を往復し、道行く人に尋ねる。
しかし。人の数が多すぎる。特定の層に絞って聞き込みをしよう、となった。

選択肢は以下だ。

・警察に連絡したことがある
・学生中心
・主婦中心
・老人中心

なるほど。警察にすでに連絡したことがあれば、そっちから情報が入る可能性もあったのか。
あとは、学生、主婦、老人か。

レナが行方をくらましたのは、金曜日の夜だ。
そこを着眼点に、可能性を絞ろう。

夜の焼鳥屋を出た時間帯、出歩いている可能性があるのは誰か。
主婦や老人ではないだろう。
夜遊びか、塾帰りの学生というのが、いちばん可能性は高いのではないだろうか。

私は、学生中心に聞き込みを行った。
するとついに、知っている人を見つけることができた。
高校生くらいの男子だ。

「金曜日の夜に、橋のそばの道路で見かけたんです。それで、そこの公民館の駐輪場に移動させました。そのままだと危なかったので」

彼が自転車を発見したという、橋の近くに案内してもらう。
川は急な堤防に沿っており、下へは降り辛い構造だ。

「たしか、このへんでした」

堤防のへりに生えた草の上に、パンプスが片方、落ちていた。

レナの靴だ。

不吉な予感が高まる。動悸が激しくなる。
近づくと、堤防の草が不自然になぎ倒されていた。

その場からは降りられない。回り道をして堤防の下に降りた。

レナはそこで、うつぶせに、倒れていた。

名前を呼んでも、返事がない。

もう、生きていないのだ。

いちばん大切なひとの、突然の、死。

頭をがんと殴られたような衝撃。

私は、道案内した高校生が警察に電話しているのを、どこか遠くの出来事のように聞いていた。


●アタック01-7 レナの指紋

選択肢が出ている。

・レナの手をとって、もういちど呼びかける
・警察が来るまで、レナには触れない

私は、その選択肢を呆然と眺めることしかできなかった。
不吉な予感はあった。
そうであってほしくなかった。

でも今、私の目の前に、レナは倒れている。

「レナ…‥どうして」

私の声は、ひどく震えていた。
私は、レナの手を取る。

ひどく混乱している。
レナになにが起きたのか、私は知らなければならない。

ただその思いに突き動かされ、レナの携帯電話を取り出した。

指紋認証。

生体認証だろうから、反応しないかもしれない。
しかし、やってみないではいられなかった。

1回め、拒否。
2回め、拒否。

そのとき、レナの指先が、かすかに動いたように感じられた。

そんなはずない。錯覚だ。

そして3回め……ロックが解除された!

私はすかさず、パスワードの設定変更をした。
これで、後からいつでもロックを解除できるようになった。

その後のことは、遠い世界の物語のようだった。
警察に連れられ、事情を話す。自分の声ではないみたいだ。
レナの死に顔を見て「間違いありません。姉の、レナです」と言っているのは、誰?

ほかに、呼べる人はいない。身寄りはない。誰にも、頼れない。
私、ひとりきり。
警察のそうした質問は、嫌でも私がひとりぼっちになってしまったことを思い知らされる。
私が、レナの遺体の身元引受人となる。

遺体は検死が済んでいないので、本日中には家には帰れないらしい。
検死が終わったら、専用の車両にて家まで運んでもらえるとのことだ。

どうしたら良いのかわからない私のために、警察官は葬儀会社を紹介してくれる。
警察官にお任せする。私が呆然としている間に、警察官が葬儀会社と連絡を取る。
私が「はい」「はい」と返事をしているだけで、みるみるうちに葬儀の段取りが決まってゆく。

なに? なんなの? これはなんなの? 私は、なにをしているの?

解放されたのは、真夜中だった。


●アタック01-8 レナの交際相手

眠れないかと思っていたが、疲れがどっと出たのだろう。
私は、泥のように眠っていた。
朝、目覚める。
レナの携帯電話に、着信が入っている。
もしかしたら、この振動で目が覚めたのかもしれない。

番号を確認し、私の携帯電話から折り返した。
男性が電話に出た。

私は、西宮レナの妹です、と名乗った。
男性は、新名(にいな)と名乗った。
姉のレナさんと、お付き合いをさせていただいております、と。

私は、姉の死を伝えなければならなかった。
電話口の向こうの男性は、ショックを受け、絶句した。
男性に、本日がお通夜であることを告げる。それまでには、姉の身体はここに戻っていることになっている。

「お通夜には、必ず行きます」

新名と名乗る男性は、そう告げると、電話を切った。

次に何をすれば……。年賀状があれば、姉の友だちに連絡できるかもしれない。
そうだ。それより先に、姉の会社に連絡を入れないと。

ヤマト感染研究所に電話をする。
今日はもう平日だ。普通に電話は通じた。

電話に出たのは、ザラザラした低い声の男性だ。
特徴的な声。留守番電話の音声の人物に間違いない。
ザラザラ声の男性は、レナの上司とのこと。御国獅子丸と名乗った。
ここで私は、また姉の死を、私の口から説明しなければならなかった。

その後、私は葬儀の準備に追われた。
そんなことどうでもいいと思いながら、私は動いた。
動いている間は、神経を鈍らせることができた。

途中、警察署から電話が入る。
姉の荷物を返却するため、一度署に来てもらいたいとのこと。

警察署に行くと、レナの手帳や財布を渡された。
その後、署長室に通された。

署長はお悔やみの言葉を口にした。
そしてその後、信じられないことを言ったのだ。

「西宮レナさんの遺体が、検死の途中で行方不明になりました」


次回、私は姉レナがどうして死んだのか、知らなければ。


■登場人物
西宮ハナ 主人公。双子の妹。無職。
西宮レナ 主人公の双子の姉。ヤマト感染研究所勤務。遺体で発見され、その遺体が警察署から消えた。
新名 西宮レナの交際相手。
御国獅子丸 西宮レナの上司。

■作品情報
作品名:ゲームブック クトゥルー短編集2 暗黒詩篇 「最期の日に彼女は」
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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2025年1月7日火曜日

これはゲームブックなのですか!? vol.114 FT新聞 No.4367

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.114

 かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
 
 へっ!もう新年!?
 あけましておめでとうございますっ!
 バーチャル図書委員長かなでひびきから、つつしんで新年の喜びを申し上げますっ!
 つーかマズイ!ストックがない!
 仕方なく、読書の秋の夜長を渡るために書いたモンをどうぞ! 
 今回紹介する本は『増加博士の事件簿』(著:二階堂黎人 講談社)よ。

 陸に上がった鯨のように巨漢……というか、ちょっとでも階段使って上がるような激しい運動をすると、もうそれだけでふうふう言うような肥満体名探偵、増加博士。
 そして、彼に依頼を持ち込むスリムなワトソン役、羽鳥警部の登場よ!
 この本は、220ページのちょっとした長編なみの分厚さの本にに、ずらりと27編のショートショートが詰め込まれている短編集よ!
 だけど、そこは、日本のディクスン・カー「二階堂黎人」先生。
 ちゃんと手がかりを提示して、そこから謎を解く「本格的推理」に仕上がってるわ。
 はっきりと区別はないけど、手がかりパートと、博士の謎解きパートに分かれていて、謎解きの前のパートに、全て真実は示されている。
 つまり、博士が答えを出す前に、あなたが推理するゲームにもなるワケ。
 で、ここのいいところ。
 物語の中にさりげなく謎を潜ませておくのではなく、記述すべてが犯人、真相を示す証拠になっているのが、出血大サービス!
 ショート・ショートの短さも相まって、スラスラ読める一本になっているわ!
 表紙裏に書かれている作者の言葉によると「パズル雑誌のための連載」というところだから、「あんまり難易度の高いものを出されても」という配慮かもしれませんねー。
 移動時間、はてはトイレ時間まで、忙しい生活のスキマ時間にもってこいの頭の体操よ!
 ただ、もちろんそれだけで一筋縄では解けないのが、やっぱり二階堂先生のすごいところよね。
 特に、ダイイングメッセージが多いけど、密室に姿なき犯人。首無美女の猟奇殺人。しかも、宇宙での殺人まで取り揃えている!
 正統派の謎解きも、全て入っているよ!
 また、読んでいて、豆知識が付くのは保証!
 例えば、知ってた? トランプのハートのキングだけには、口ひげが生えてない。
 一と読んで「にのまえ」と読ませる苗字がある。(だったら、金田一少年も、きんだにのまえと名乗ったら面白いんだけどなぁ)
 そう、名探偵の嗜みとして、衒学、ということがあるんだけども、この本は、その醍醐味をメインに組んでいる。
 だから、知識があったらスラリと溶けちゃう問題もあるかもしれないけど、そこまで知ってたらアナタ、名探偵ですぅ!
 読み終わったあとには、誰かに披露したくなるトリビアの宝庫でもあるよね。
 また、加えて増加博士のキャラ立ち。
 歩くたびに地響きがして、「バッカスよ! アテネの司政官よ!」が口癖で、事あるごとにビールを要求。
 毒舌家だけど、密室や不可能犯罪があるととたんに目を輝かせる。
 名探偵コナンの「名探偵の解説」に登場して欲しいくらい、愛すべき名探偵よ。
 果たして、あなたは、増加博士が真相を口にする前に、真実を見抜くことができるかしら?

 とまぁ、こんな感じで「ゲームブック」という縛りがありつつも、「ゲームブック」の枠を超えた様々なものを今年も紹介していきます!
「かなでの独断と偏見」ですが、どうぞ今年もよろしく申し上げますっ!


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

『増加博士の事件簿』
 著 二階堂黎人
 出版社:講談社 文庫 2018/8/10 700円(+税) 


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2025年1月6日月曜日

☆謹賀新年☆ FT新聞 No.4366

おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です。
明けましておめでとうございます!


◆2024年のふりかえり☆
FT書房はファンタジーを中心としたアナログゲームを制作する会社です。
そのFT書房の昨年の目標は「広がり」。
30分で遊ぶ1人用TRPG「ローグライクハーフ」のヒットを受けて、これまでに出したゲームブック作品+私の頭の中にあった「アランツァ」という世界を、「ローグライクハーフ」として目に見えるカタチにするために費やした1年間でした。


◆2025年のFT書房☆
2025年に私たちが目標とするテーマは、ズバリ「1周目の完走」です。
FT書房がベースとしている世界「アランツァ」について、どのような世界なのかをキチンと、端までお見せすること。
その向こうには「アランツァワールドガイド」「ヒーローズオブダークネス」という、大きな2作品の刊行もありますが……これを本年中に出せるかどうか、それとも来年以降になるかはまだ分かりません。


◆刊行スケジュール。
刊行面で今年やりたいことは「大型のサプリメントに力を入れていく」ことです。
「アランツァクリーチャー事典」は実質的に、半年間の制作期間がかかりました。
時間をしっかり取って、挑んでいきます☆

  「ローグライクハーフ」サプリメント
・「アランツァワールドガイド」
・「ヒーローズオブダークネス」

  「ローグライクハーフ」シナリオ
・d33シナリオ集「雪剣の頂 勇者の轍」他3編(byロア・スペイダー)
・「エメラルド海の探索」(by杉本=ヨハネ)
・「堕落都市」(by杉本=ヨハネ)
・「常闇の伴侶」(by水波流)

  ゲームブック
・単眼の巨獣(byロア・スペイダー)
・クトゥルー ゲームブック短編集3

11月配信のd66シナリオ「堕落都市の迷宮」は、よりシンプルなタイトルである「堕落都市」へと名称を変更しました。
理由は「混沌迷宮の試練」「巨大樹の迷宮」と、「迷宮」がつくシナリオがすでに2本も登場しているからです。

サプリメントである「アランツァワールドガイド」「ヒーローズオブダークネス」は、どちらか片方になる可能性が大きいです。
両方を出すのに必要なリソース(時間、労力、お金など)を考えると、1年に1冊ずつ出すのがいいかなと思っています。
ムリなくいきます……ムリをするとね、鬱になるからね。


◆2025年もFT書房は、あなたとともに☆
FT書房の今年の目標である「1周目の完走」は、昨年の目標である「広がり」と対になっているものです。
2024年の目標は、「広がっていくアランツァ世界をお見せすること」でした。
2025年は「アランツァ世界を1周して、これまで未知だった部分までをカタチにすること」なわけです。
もちろん、1周を終えたところで、アランツァのすべてをご紹介できるわけではありません。
しかし、アランツァを舞台に冒険を作る、あるいはリプレイを書くといった行為を楽しむための環境が、1周目の完走によってさらにやりやすくなるのは間違いないと思います☆

2周目についてのお話もありますが、今回はこのあたりで。
本年もよろしくお願いします!



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2025年1月5日日曜日

☆新企画☆フォレストマスターへの道 FT新聞 No.4364

  背景
 主街道は起伏が小さく、歩きやすい。商業都市ナゴールに続くメインロードは何本もあって、大陸中からさまざまな商品がこの街へと流れ込む。食料や酒、装備品などを持ち込む商人に混じって。黙り込み、汗をかきながら荷車を引く者。仲間と話しながら、ペースを保って進む者。牛に荷を引かせ、ゆっくりと道を行く者。さまざまな商人たちに混じって、冒険者が歩いていた。その商品は、自分自身だ。
 人間に似た姿の使いの者が、商業都市ナゴールにある「赤髪の乙女」大通りの〈剣竜亭〉へとやってきた。清潔で気分のいいこの宿屋で、明らかに彼は助けを求めていた。おどおどした態度でキョロキョロと周囲を見渡し、緊張してため息をつきながら、話しかけやすそうな人を目で探していた。


  プロローグ
 春の息吹を目前にしたこの森の鼓動に、君は気づいていた。葉の1枚も残していない森の木々のなかを歩きながら……だが、その枝先はわずかに膨らむ。春を目の前にした桜の木々は、花を咲かせる準備を進めているのだ。一歩ずつ。風も空気も冷えきっている。けれど、日差しはもう暖かい。冷たい風の向こうから降り注いでくる透明な光。冬の気配を遠ざけていく力は、森のすべてを──心と身体を暖めはじめている。

「桜森のあるじに、会っていただきたいのです」

 人間に似た使いの者はそう言って、君に助けを求めた。ナゴールの西側にある桜森に〈魔犬獣〉たちが流れ込んできた。彼らは火を用いて、森を焼こうとしている。彼らは〈オーク〉や〈ゴブリン〉といった、他の【悪の種族】たちを引き連れているという。ナゴールの4人の統治者はこの【悪の種族】たちを、放ってはおかないだろう。だが、彼らが兵士を用意するには時間がかかる。街そのものを守ることはできても、森には多くの被害が出るだろう。森と、そこに暮らす者たち。彼らが危険に晒されるのは明白だ。

 視界が広がる。広場へとたどり着いた君を迎えてくれたのは、背の高いまっすぐな1本の樹だ。冬の終わりきらぬうちに、ひと足先にと咲き誇るひときわ美しい薄紅色の桜。ゆらゆらと揺れるその花から、届くはずもないかすかな香りが漂う──忘れていたあの日を──名前のついていない遠い日の思い出に{ルビ:ふ}触れるような、そんな香りが。
 桜の脇に立つ女性に、やっと気づく。{ルビ:りん}凛{/ルビ}とした立ち姿。ベテランの執事が着るようなスーツに身を包んだ、色の白い女性である。大きな瞳が印象的だ……髪の部分には青い花が咲いている。おそらくは人間ではない……かすかに緑がかった肌は、彼女がトレント(動く植物)の一種であることを想像させる。深々と頭を下げて彼女は、「よく来てくださいました」と言う。風の音のなか、どうしてかその小さな声ははっきりと耳に届く。

「桜の王キルシュバウム様に代わり、お礼を申し上げます。王はトレントとしての生を半ば終えて、あまりお話しになれないので……。」

 王と呼ばれるその樹は、今までに見たどの桜よりも立派な枝と花をつけている。

「私たちは貨幣を持ちませんが、お礼を用意しております。大きなマルハナバチたちが集めた、特別な蜂蜜を。きっと、ご満足いただけると思います」

 キルシュバウムの従者ブルーメはそう言って、壺に入った黄金色の蜜を取り出してみせる。桜森の花々から集められた蜜はドロリとして、純度の高いものだ……金貨50枚の価値はあるだろう。
 桜森のトレントたちの依頼を承諾する。【悪の種族】たちはもちろん、桜森の住人たちに歓迎されているとは限らない。慎重にこの桜森を冒険しなければ。


  読者投稿企画:桜森と冬の終わり
 ようこそ、新しいd66シナリオへ。このシナリオの大部分は空白になっていて、作られているのは「背景」「プロローグ」そして一部の〈固定イベント〉だけだ。
 昔、読者投稿企画があった。「ルームマスターへの道」という企画で、ゲームブックをみんなで作るというものだった。何人もの「ルームマスター」がダンジョンの部屋(ローグライクハーフでいう〈できごと〉)を作った。完成したそのダンジョンは『ディラットの危険な地下迷宮』と呼ばれた。完成した作品はFT書房のファンたちに喜ばれた。「違う人たちがそれぞれの部屋を作ることによって、『まとまりのないできごと』が揃う。そこが、本当のダンジョンのようだと感じた」。FT書房にはそんな感想が届いた。
 この挑戦を「フォレストマスターへの道」と名づけよう。桜森を舞台にした冒険を作る一員に、なってみないか?


  参加方法
 冒険に参加する方法は簡単だ。自分で考えた〈できごと〉に番号をつけて、送ってほしい。たとえば、出目52と書いて、こんな敵クリーチャーが登場するよ、というわけだ。フレーバーテキストは歓迎だ! これが「ローグライクハーフ」の要だからね。でも、自分で書くのが苦手だったら空白でもいい。空白だった場合、杉本=ヨハネがテキストをつけてしまうかもしれないことを、承知していてほしい。
 〈固定イベント〉を書いて送ってくれるのもOK☆ ただし、3回目の〈最終イベント〉に関しては、みんなの投稿を読んだ後で杉本=ヨハネが書くと思う。〈固定イベント〉は歓迎だ。戦いか大きなトラップにしてくれると、ありがたい。
 制作の都合で、番号をズラす可能性があるので、ご承知のほどお願いする。
 

  d66シナリオの〈できごと〉
 d66シナリオの作り方には決まりごとというか、うっすらとした法則を作っている。ひとつは十の位。これが大きいほど、危険が増すデザインになっている。
 「桜森と冬の終わり」の大枠は、次のように決まっている。

・10番台……隠されたなにか
・20番台……中立または友好的なクリーチャー
・30番台……イベント
・40番台……トラップ、あるいは災害
・50番台……弱いクリーチャー
・60番台……強いクリーチャー

 もうひとつは、一の位。これが大きいほど、やはり危険が大きい。同じ60番台でも、かなりの違いがあったりする。
 これらを踏まえて、〈できごと〉の番号をつけてほしい。


  送ってほしいもの
 d66に対応する〈できごと〉と、3回の冒険に対応する〈固定イベント〉から3回目の冒険の〈最終イベント〉を抜いた5個の〈できごと〉が対象だ。さらに、宝物表に登場する6個の「魔法の宝物」も歓迎だよ。
 何回かに分けて送ってくれていいけれど、送るのは完成したものだけにしておくれ。半分できたところで「途中までできました!」と送ってくれるのはNGだ。いや、過去にあったんだよ。


  桜森とその周辺地域
 FT書房の看板作品のひとつ「かえる沼を抜けて」は、かえる沼を舞台としている。この沼地は今回の冒険の舞台である桜森と隣接している(より正確には、かえる沼は桜森の一部だ。しかし、大きな土地を占めるため別に扱う)。
 桜森のシナリオには、かえる沼に関連する何かが登場するかもしれない。さらに言えば、それはかえる沼だけに限らない。そういった周辺地域に関する情報を共有するために、設定資料を準備した。URLを置いておく。

アランツァ設定資料集:大陸南西部
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/AranciaSynopsis_SouthWest.txt


  進行
 企画の進行は、FT新聞の月曜記事上でやろうと思っている。毎週月曜日の杉本=ヨハネによる記事で、こんな感じにできてきたよ、と紹介したい。毎週報告する予定。2ヶ月以内の完成を目指したい。
 〈できごと〉は毎週、水曜日を区切り目にする予定だ。木曜日になったら杉本は、それまでに届いた〈できごと〉や魔法の宝物に目を通す。来ている質問を返すのも、その時になるだろう。


  参加のルール
 ペンネームをひとつ決めて(途中で変えてはいけない!)、そのペンネームで参加してほしい。送り先はFT新聞のおたよりコーナーにしよう。質問はdiscordでしてもらうことになる。ただ、杉本は最近ちょっとメンタルの調子が悪いから、返事が返ってこないこともある。そのときは、なるべく相互に情報や知識を補い合ってくれると助かる。

↓投稿先はこちら!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report

↓「桜森と冬の終わり」公式discordサーバーはこちら!
https://discord.gg/eu83KpP5cf


  〈できごと〉の内容
 名前のとおり桜森は「森」だから、〈できごと〉の内容はオープンフィールドに限定されやすい。でも、絶対にそうってわけじゃない。桜森には山に面している場所があって、そこには小さな洞窟がいくつもある。平地もあるし、川もある。あるいは、桜森には〈マルハナバチ〉と呼ばれる巨大な蜂型クリーチャーや〈ジグリ・ザグリ〉が住んでいる。〈かえる人〉が住むかえる沼が近い位置にある。今回はそれらに加えて〈ゴブリン〉〈オーク〉〈魔犬獣〉といった【悪の種族】もたくさん、入り込んでいる。もっと言えば、これらの種族とは関わりのない、君自身が考えたクリーチャーを準備してくれたっていい。

■参考資料
ローグライクハーフ サプリメント:都市オプション「商業都市ナゴール」
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Nagor.txt

↓ローグライクwikiに登場する「商業都市ナゴール」の情報
https://ftbooks.xyz/ftwiki/index.php?%E5%95%86%E6%A5%AD%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%83%8A%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB 


  採用と不採用
 〈できごと〉を送ってほしいと言っておきながら心苦しいのは、すべてを採用できるわけではないっていう点だ。〈ゴブリン〉のアイディアが10種類届いたら、半分以上をボツにすることになるだろう。他にも、いくつかの理由で採用できないことはある。でも、そんなときでも、送ってくれてありがとうって思っている。
 それだけは、知っていてほしい。


  修正を入れること
 個人制作のシナリオで「アランツァの設定と食い違う場所」があったとき、それはそれでヨシ! と杉本は思っている。細部を詰めるのが楽しい作者はキッチリと作ればいいと思うけれど、そうでない人はあまり気にしなくていいと。そう考えないと、「すべてのサプリメントを読まなければ、シナリオを書く資格がない」みたいな話になってしまうからだ。
 だけど、今回のシナリオは読者投稿ながら、公式であるFT書房から出すものになる。だから、投稿されてきたいい〈できごと〉があったとき、それを採用する前に「修正」を入れることがある。つまり、アランツァ世界にマッチするように、私たちが調整を入れるって話だ。調整は設定に関する部分にフォーカスされる。
 そして、主に時間の都合で、調整後の原稿を確認のために、作者にフィードバックすることはできないと思う。「それでいいよ」という大らかな気持ちで、参加してほしい。敢えて言うなら、そのあたりが参加資格だ。


  参加特典
 「桜森と冬の終わり」は多分、小部数印刷をすると思う。他の作品と違って、あまり多くは刷れないんだ。この企画は営利目的じゃないし、どのぐらい売れるのかが読めないものだから。でも、参加してくれた(採用された)「フォレストマスター」たちには、優先的に献本を送ろうと思う。そのとき、FT書房の作品を1冊、同時に送ることも考えている。ただ、「ミラー・ドール」みたいな絶版本は、私たちも持っていないから、BOOTHで買えるものに限定させてもらうけれど。


  埋まらなかったら?
 優秀な「フォレストマスター」が揃えば、〈できごと〉はあっという間に埋まるだろう。でも、フォレストマスターたちは優秀だから、忙しくてあまり投稿が届かないこともあり得る。そんなときのために、フォレストマスターの間にはFT書房のメンバーが紛れ込ませておく。
 「ディラットの危険な地下迷宮」のときは、「エリアス・ウィンザー」という名前の投稿者がいたんだけど、それは杉本=ヨハネの別ハンドルネームだったんだ(初めて作ったキャラクターの名前だよ)。
 このフォレストマスターは、〆切が近づいているのに〈できごと〉が足りていないような状況で、バリバリと執筆をはじめる。作品全体で伏線が足りないときなんかにも、シレッとした顔で作品のクオリティを上げるために放り込んでくる。制作を半分手伝うことで、作品の質を維持するつもりなんだ。このあたりも「ハーフ」ってわけだよ、ローグライクハーフは。
 だから、気楽に参加して大丈夫。


 読んでくれてありがとう。みんなの参加を待っているよ。
 じゃあ、またね。


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