From:水波流
少し前に『ヴィンランド・サガ』を11世紀の参考文献として読むかと書きましたが、無事に読み終わりました。
いまは余韻に浸りつつ、副読本としてつい先月発売された『ヴァイキングの日常生活』(原書房)で知識を補足しています。
ビジュアルから入って、文字で知識を更に深めるのは、脳内補足ができてとても良いですね。
昔から持っていたのですが、『バイキングとアングロサクソン』 (ニュートンムック 古代遺跡シリーズ)もビジュアルと文字のバランスに優れる良書です。
From:葉山海月
某所で見たQ&A
Q「メロスはなんで走らなければならなかったのでしょう」
A「タイトルがそうだから」
なんかここに、世界の果ての真理を見たのは、私だけ?
From:中山将平
11月1日(土)、僕個人として奈良女子大学内で開催のオールジャンル同人誌即売会「COMIC☆PARTY37」にサークル参加します。
ブース配置は【C-3とC-4】。個人で作っているイラストのシリーズ「カエルの勇者ケロナイツ」を扱います。
ケロナイツの本は現在作成中ですが、このイベントには間に合いません。
12月6日(土)と7日(日)頃に開催される大阪なんばでのイベントに合わせたいところです。
上記の事柄とは別に、11月3日(月・祝)、FT書房は札幌コンベンションセンターで開催の「北海道コミティア22」にサークル参加する予定です。
ブース配置は【I13】。ゲームブックや1人用TRPG「ローグライクハーフ」等の作品を扱います。
お近くの方はぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(水)=水波流
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■10/19(日)~10/24(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年10月19日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4652
Re:『城塞都市ドラッツェン』アランツァワールドガイド&都市サプリメント&新職業
・生物学者カメル・グラント教授の旅を通じて、アランツァの主要都市をご紹介するアランツァワールドガイド。今回は、これまで再配信の機会のなかった『城塞都市ドラッツェン』を、都市サプリメントおよび【錬金術師】のデータとともにお届けしました。
d66シナリオ『女王の肉』(杉本=ヨハネ著、紫隠ねこ監修)は、このドラッツェンを冒険の舞台としています。また、過去のドラッツェンやレラヴィリア等で使用された〈ゴーレムナイト〉が実際にどのようなものだったのかは、ゲームブック『ゴーレムナイトと巨人戦争』(山田賢治著)で描かれています。今回の記事で興味を持たれた方は、ぜひ両作品をプレイしてみてください!
[女王の肉]https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/niku
[ゴーレムナイトと巨人戦争]https://www.amazon.co.jp/dp/B00P4X25AQ
(く)
2025年10月20日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4653
もうひとつの「運」の話。
・先週(No.4646)のテーマを引き継いで、「運」と「ゲームの面白さ」についてお話をします。
電源系デッキ構築ゲーム「ハースストーン」がある時期から取り入れた、「ランダムな3枚のカードから、好きなカードを1枚選ぶ」というカード。
それは「運ゲー」だと遠ざけるプレイヤーがいた一方、時間とともに、単なる「当たりとはずれ」ではない戦略的な要素も豊富であることが浸透していきます。
この「運と実力のハイブリッド」には、まだまだゲームを面白くする余地があるとして、自作への応用に意気高らかな杉本氏であります。
(明)
*編集部註*
本記事の配信時に誤って推敲中の記事の二重配信がありました。後から配信された「No.4660」のものが正しい記事となります。訂正してお詫び申し上げます。
2025年10月21日(火)田林洋一 FT新聞 No.4654
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12
・東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、12回目の記事をお届けしました。
全13回予定の記事も、ついに今回でゲームブック解説は最終回。
前回に引き続き、第二回ゲームブック・コンテスト入選作である『エクセア』(宮原弥寿子)、『第七の魔法使い』(新井一博・堀蔵人)、またSAGB最後の作品となる『ギャランス・ハート』(宮原弥寿子)の紹介。
ゲームブックにおける「ゲーム面でのシステムや仕掛け」「ブック面での世界観や物語」の両面から、SAGBの末期の作品群について検討します。
またゲームブック回の締めとして、1992年にゲームブックブームの凋落とともに、SAGBというレーベルが辿った流れについても語ります。
なお予告にありました、番外編『ドラゴンウォーリアーズ』については配信まで少し時間を頂く見込みです。
(水)
2025年10月22日(水)ぜろ FT新聞 No.4655
第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第462回。
姉たちを救うためのミナの旅は、時計塔からゾンビ墓地、そしてテクア神の神殿へと進みます。
「前回」の旅との違いは、仲間の存在と、修理した魔法の時計の種類。そしてテクア神の反応も、どうやら「初対面」のときとは異なるようです。
お手元のメールボックスに第5回〜第7回のリプレイのデータがある方は、改めて今回と読み比べてみるのも楽しいかもしれません。
(く)
2025年10月23日(木)東洋夏 FT新聞 No.4656
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.8
・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、
東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第8回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロは、「写身の殺人者」を名乗る犯人を仕留めたものの……何かがおかしい、とシグナスにはしっくりきません。
真実を求めるシグナスが辿り着いたのは、彼にとっては信じがたいものでした。
皆さんには真犯人が予想出来たでしょうか? 答え合わせはどうぞ記事にて!
(天)
2025年10月24日(金)休刊日 FT新聞 No.4657
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(緒方直人さん)
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ、面白かったです。
甥っ子ちゃんかわいいですね。ほっこりしました。中身のクイズも「きのう」「しろ」で木の後ろとはなかなかトンチが効いてて面白かったです。たまにはこういうのも良いですね。
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
たまにはこういうのもほしいなって思ったから、自分で書きました。たまに金曜日が埋まっているとプチしあわせな気分になるなって思って、金曜日に入れてもらいました。
この作品、ルート分岐がたくさんあるので、何回でも遊べる楽しさもあります。このリプレイだけではとても遊びつくしたにはほど遠い。再販を機に、多くのお子さんたちが遊んでくれたら嬉しい作品です。
この作品、入手した頃から、甥ちゃんがプレイできる年齢まで成長したら読み聞かせてリプレイ書こうってずっと思っていたんですよ。それが何年越しに叶った形です。次は来年あたりになったら、甥ちゃんの弟がプレイできるくらいになりそうかな。
(忍者福島さん)
魔女の女の子を探すクイズ、一瞬機能しろ?と考えてしまい、何のことかわかりませんでした(笑)
やっぱりこういう本は、イラストと一緒に子供と読み進めるのがいいですね。
なお、ウチのこどもは鉄ちゃん息子とニチアサ娘に育ってしまったので、鉄道の本とプリキュアの本は熱心に読んでます(笑)
(お返事:ぜろ)
お便りありがとうございます。
機能しろ! さすがに幼児にはわかりませんね(笑)
エルメス「キノ!うしろ!!」
などと「キノの旅」ネタを飛ばしたら通用しますか?
鉄ちゃんにニチアサ、良いですね。ジャンルを極めがいがありそう。
うちはニンテンドーSwitchの魔力が強すぎて。図鑑系が好きみたいで、ゲームを進めるだけでなく、図鑑を埋めては眺めて楽しんでいます。ゲームの楽しみ方はそれぞれだなあと思う次第です。
(蒙太 辺土さん)
中山先生の"手がかり考"感想で〜す。
〈手がかり〉で最終イベント出現タイミングをコントロールする…!その発想はありませんでした。イェ、どの発想も無いのですけれど…(笑)
新作の『クトゥウルウ』では〈手がかり〉システムを正と負、両面の効果をもたらすものとしてとらえ直すアイディアに舌を巻かされ、そして再びの今回の記事。
元からしてそんな手があったとは…!
深すぎるぜ〈手がかり〉。そしてローグライクハーフ!
是非また、R.L.Hのシステム面などについてのお話お願いしまっす!
追伸: カエル人ステッカーやモンスターカード、並べて眺めて楽しませて頂いております。
『フログワルド』関連の発表の方も楽しみにお待ちしてますよ〜!
(お返事:中山将平)
ご感想をいただき、ありがとうございます!
RLHは「頒布開始から約2年の新しいスタイルのTRPG」であり、「遊び方」についてまだ広く知られてはいないゲームなのかもしれません。
せっかくご感想をいただきましたので、また次の記事も書いてみようと思います。
カエル人の本、作成を引き続き頑張ります!
(忍者福島さん)
運をランダム性として捉えるか、戦略の一部として捉えるかでゲームのやり方に影響があるみたいですね。
現実でも上手くいった時のAプラン、上手くいかなかった時のBプラン、はたまたどちらでもない選択のCプランまで考えて物事を選択してる事もありますし、運を戦略的に捉えるのは割とある事なのかもしれませんね。
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます☆
「現実のたとえ」が素晴らしいと思います。
おっしゃるとおりで、人生ほど重要な事柄になると、分岐ごとに対応を考えることで、運に振りまわされる要素を減らしていく人が増えますよね。
私が申し上げたかったのは、運を「不確実なものだから避ける」という姿勢よりも、「バリエーションを生む装置」として楽しむこと──遊ぶ側も、創る側も──ができれば、きっとよりいっそう奥深いゲームが生まれるという考えです。
ゲーム制作者として、自分が得た気づきと、それを活用した作品づくりへの姿勢を書いた記事でした。
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2025年10月24日金曜日
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2025年10月23日木曜日
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.8 FT新聞 No.4656
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ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイ vol.8
(東洋 夏)
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FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!
東洋 夏(とうよう なつ)と申します。
本日はサン・サレンが舞台のd33シナリオ『写身の殺人者』のリプレイ小説をお届けいたします。
製本版『雪剣の頂 勇者の轍』に収録された、サン・サレン四部作のひとつです。
ファンメイドのリプレイとなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。
この連載は隔週でお送りしており、本日は第八回にあたります。
冒険は最終イベントに突入しておりますが、今日が初めての方にもお楽しみいただけるよう、少しだけ主人公たちと前回までのあらすじをご紹介させていただきますね。
主人公を務めますのは、聖騎士見習いの少年シグナスと、元人間だと主張する不思議な〈おどる剣〉クロ。主人公ふたりをプレイヤーひとりが担当するスタイルでお送りします。
シグナスとクロは居合わせたサン・サレンの街で「悪夢殺人」とでも言うべき事件に遭遇します。これは自分の姿をした何者かに殺される夢を見て、その後、現実でも殺されてしまう。そんな気味の悪い事件なのですが、ついにシグナスもその悪夢を見てしまいました。
犯人を捕まえるべく捜査に乗り出したふたり。前回のリプレイでは、宮廷医アグピレオの薬局に呼ばれ、その工房で何と連続殺人事件の犯人〈写身の殺人者〉と対決! アグレッシブ過ぎるアグピレオ先生の援護もあり、鮮やかに犯人——薬局の下働きを仕留めます。
それで今日はエピローグ……。いえそれが実は、違うんです。
何が違うのかは、この先をどうぞお楽しみに。
なお、ここから先はシナリオのネタバレを前提に記述します。プレイするまで内緒にしておいてくれという方は一旦この新聞を閉じ、代わりにシナリオを開いてサン・サレンにお出かけいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは最終イベントの模様をご覧あれ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[エピローグ/だがエピローグでないもの]
「おっ、シグナス! 手柄だったそうじゃないか」
領主館に帰還するとすぐに、玄関ホールで待ち受けていた聖騎士の先輩ベルールガに見つかった。
アグピレオ薬局の下働きが巷を騒がせた写身の殺人者であったことは、既に伝わっている。シグナスは今にも倒れそうな顔をしていたアグピレオ先生を支えたくて、しばらく薬局に留まっていたのだ。
「サー・ノックスもご存じだからな。うんと褒めてもらえよ。ほらこっち」
力強い聖騎士の先輩はシグナスの腕を取ると、有無を言わさずホールに詰めかけた人々を掻き分けて奥へと進んでいく。押しのけられた誰も彼もが文句を言おうと振り返っては、こちらの顔と血まみれの装束を見て不平を引っ込めた。それが面はゆく、シグナスはサー・ベルールガがもっと速く歩いてはくれまいかと願うのである。
やがて導かれたのは謁見者控え室、今はナリクの聖騎士たちが領主警護用の臨時詰め所にしている部屋だった。部屋の中に入るなり、シグナスは緊張して一本の棒のようになってしまう。控え室には数人の騎士がぱらぱらと点在していたが、そのうちの一人は見間違えようもない、主人ノックス・オ・リエンスだったからだ。
サー・ノックス。歳の頃は二十代の半ばを過ぎたあたり。男性にしては細っこい長身からすらりと手足の伸びた立ち姿は剣を連想させる。彼についての噂は枚挙に暇がなく、信じがたいものではコーデリア王女様に命じられて暗殺をしているとか、単身で敵国ドラッツェンの城に忍び込んだとか、いやいや潜り込んだのはドラッツェンの女王の寝室だとか、それより恐ろしいのでは飛竜ドレイクを生きたまま八つ裂きにしたというのも……。眉唾物だが、シグナスはその内の幾つかは真実でもおかしくないと思っている。
窓際に立った主人は既にシグナスの存在に気づいており、三白眼がちな鋭い左目でシグナスを見ている。右目は今日も長い前髪の下に隠されたままだ。その横にもうひとり、サン・サレンの高官らしき人物が揉み手をしながら難しい顔をして立っている。
「サー・ノックス!」
ためらいを察してか、生来の人懐っこさによるものか、ベルールガは引き続きシグナスの腕をむんずと掴むと歩いていく。
「何、お前は怒られるような事なんぞ、たったのひとつもしてないさ!」
それは僕の失態をご存じないからです、と反論したかった。すべての選択が叱責の種になる気がする。牢から引き出された罪人のように主人ノックスの前に立つ頃には、シグナスはすっかり萎縮していた。
「戻ってきましたよ、可愛い従騎士くんが」
ベルールガがそう言っても主人の表情はぴくりとも動かない。怒っているのか、いないのか。あるいは何とも思われていないのか(こちらの方が確かそうだ)。ただぞんざいに手を振ってベルールガを追い払ってしまった。
シグナスはますますおどおどして、
「サー・ノックス、あの、シグナスと<おどる剣>のクロは只今、帰還いたしました。その……」
「怪我は」
「ふへっ」
予想外の質問に奇声が出てしまったシグナスを、主人ノックスはじろりと睨め付ける。てっきり開口一番に叱られるのだと思っていたのだ。
「無いです。打ち身と擦り傷くらいで」
「それは、有る、と言う」
「申し訳ございません……」
主人は軽く溜め息をついてから、傍らのサン・サレンの高官を見て言った。
「こちらで事情をまとめてから、ご報告を差し上げる」
「それは困る。今すぐにでも御領主様の前に出て全てを説明してもらわなくては」
勢いよく喋り出した高官がシグナスに歩み寄ろうとするのを、主人がさりげなく間に割って入って制する。
「まだ未熟ゆえ、お耳障りで要点の分からない証言をすることでしょう。指導をしてからお出しすべきだと存じます。それに」
と言った後に不意に声が低く、凄みを帯びて、
「これは僕の従騎士だ。貴方の権限は及ばない」
その後の沈黙には、「連れて行きたければ僕を殴り倒すがいい、貴方にやれるものならばだが」というニュアンスが含まれている。
高官は反論の言葉を探したが見当たらず、明日の朝には必ず御前に出てもらう、と言い捨てて、怒り狂った足取りで控え室を出て行った。
(かばってくださった!? いや違う、ロング・ナリクの立場を守るためだ。でも、それでも……)
シグナスは驚きに目を白黒させている。
「それで」
淡々とした声に顔を上げれば、やはり特に何とも思っていなさそうな主人がいた。
「解決か」
「いえ、サー・ノックス。あの、僕が考えるにあの薬局の下働きは……」
その先を続けるにはありったけの勇気を掻き集める必要があったが、何とかシグナスはやってのける。
「……犯人じゃないかもしれません」
「根拠は」
「あの、僕たちは被害者のご遺体を見せてもらいました。その時に、防御した傷跡が無いのがおかしいなって思ったんです。僕だけじゃなくてクロも確認してます。薬局の下働きは"俺の事を殺人鬼だと思い込む"んだって言ってたんですけど、それはつまり、被害者のひとが下働きこそ〈自分〉だと思い込んで、自分が〈殺人鬼〉のように錯覚して、自分で自分を傷つけちゃうという意味だと僕は受け取りました。理屈は合っているようでもあるんですけど、でも……」
シグナスが言葉を一旦止めて、何の反応もない主人をこわごわ見上げると、
「続けろ」
と一言だけ返ってきた。
「はい。ええと、今回の事件はまず悪夢を見て、それから実際の殺人という順番です。僕も悪夢を見て、それから襲われました。僕にそっくりな奴でした。でも、下働きが言う通りなら、死者が出るきっかけは、被害者が下働きを〈見て〉錯覚を起こすことですよね。でも、僕が襲われたときは周りに誰もいませんでした。これもクロが知っています。加えて言うなら、僕が僕のニセモノに襲われたきっかけは、自分の姿が映った水溜まりを覗いたからで、下働きに会ったからじゃないです。もうひとつ、僕は自分を襲うんじゃなくて、その、クロを襲ったみたいで……。なので、その、すっきりしないんです。下働きの考えている薬の効果と、僕に起こったことがちぐはぐで。何かまだあるんじゃないかと」
「ならば、どうする」
「真実を探したいです、サー・ノックス。でも手がかりが無くて」
悔しいですと本音を漏らしたシグナスを見る主人の表情が、ふと和らいだ気がした。恐らく目の錯覚であろうが。
「捜査の継続を許可する」
「はい! ありがとうございます、サー・ノックス!」
「ひとつ。お前の目の付け所は良かった。遺骸を調べるというのは」
主人がヒントを出してくれたのだと気付いて、シグナスは反り返る寸前まで背筋を正した。
「でしたら、ええと、教えていただきたいことがあるのですが……」
「言ってみろ」
「犯人だと名乗った下働きの死体は、何処に安置されているんでしょうか」
「この領主館の地下で、アグピレオ医師による検死が始まっている。見に行くのだな」
「はい」
サー・ノックスは自身のマントに留めてあったピンを抜くと、シグナスに手渡した。ただのピンではない。太陽と十字の紋章、すなわち聖騎士の身分を示す大切な品だ。それを託すと言うのである。
「立ち入りを拒むものがあれば、僕の名を出せ。分かったな」
「……! はい、ありがとうございます、サー・ノックス!」
■
「駄目だ、駄目だ! ここはアグピレオ先生以外は入れるなと言われている。ましてやお前のような子供など、駄目に決まって……」
槍を持った衛兵はシグナスが取り出したピンを見て、渋い顔をした。領主ラドス・フォン・ハルトは、悪夢連続殺人事件の調査においてナリクの聖騎士が求めるものはすべて与えよと命令している。衛兵はしばし悩んだが、結局道を開けた。シグナスは彼の気が変わらない内にと螺旋階段を駆け下りる。
地階には廊下に沿っていくつもの部屋が並んでいたが、目指す部屋はすぐに見つかった。半開きになった扉から明かりが漏れている。人の声も切れ切れに聞こえてきた。
「……ふふ……良い……顔……をして!」
シグナスは雷に打たれたように立ち止まる。その声には、聞き覚えがあった。もちろんこの部屋にいるべき人の声であるが、しかし──。
鞘からクロを引っ張り出し、シグナスは臨戦態勢を取りながら、足音を殺して部屋に近づいた。
「あは、はははははは!」
熱に浮かされたような、高らかな笑い声が響く。扉の陰に隠れて中を窺うと、アグピレオが台の上に載せられた下働きの死体を覗き込みながら、にやにやと笑っていた。
(そんな)
シグナスの背筋に悪寒が這い上る。
(そんなことって。僕は知ってる。あの顔、水たまりから出てきた僕のニセモノと同じ笑い方だ)
ではこれは、まさか宮廷医のニセモノなのだろうか? ニセモノがついに実体を持ったということ? 僕はその決定的な瞬間を見ている? ならば逃がしてはいけない。真実に繋がる大きな手がかりになるはずだから。
「クロ、捕まえよう」
「分かった」
ふたりは部屋に飛び込むなり、後ろ手に扉を締め切った。その音にアグピレオ──のニセモノと思しき存在が驚いたように顔を上げる。
「お前が写身の殺人者だな! 観念しろっ」
シグナスの言葉に、アグピレオの顔からすうっと表情が失われた。熱狂も、狼狽も。
「君は上手く騙せたと思ったんだけどね」
「──え」
「今夜の残業は長くなってしまうでしょう。報告書の手直しに、検死が二件。〈おどる剣〉は含まれないのが幸いかもしれませんね」
「──アグピレオ先生?」
「シグナス、こいつは本物だ! 周りを見ろ!」
クロの警告で、はっとして室内を見渡す。狭い部屋の中にあるのは台に横たわる死体だけだ。ニセモノに襲われているなら、アグピレオはふたりいるはずだろう。しかし今、アグピレオは、ひとりしかいない。宮廷医は悲しげに首を振った。
「──先生が、写身の殺人鬼……!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回のリプレイは以上となります。
シナリオのフレーバーテキスト的には「主人公は初めから怪しいと思っていた」ことになるのですが、これまでの経緯を考えるとこのピュアな十二歳は微塵も疑ってなかったと推測されるため、主人ノックス様に助け舟を出していただくことにしました。何せシナリオ中で獲得できる「手がかり」も、ご遺体に防御の傷が無いという一点しかありませんでしたからね……。
信じていた大人の真の姿を見てしまったシグナスくん。
恐らくいま物凄く傷ついているであろうシグナスくん。
この対決、一体どうなってしまうのでしょうか。
というところで、再来週の木曜日にヒリつく真の「最終イベント」をお届けします。
良きローグライクハーフを!
◇
(登場人物)
・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。殺人者の悪夢を見ておねしょした。
・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。
・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。
・ベルールガ…ノックスの同僚の聖騎士。優しい。
・サン・サレンの領主…殺人者の悪夢に苛まれている。
・アグピレオ…領主付きの医師。心が落ち着くハーブティーの売り上げが好調。
■作品情報
作品名:『写身の殺人者』
著者:ロア・スペイダー
イラスト:海底キメラ
監修:杉本=ヨハネ、紫隠ねこ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録
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ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイ vol.8
(東洋 夏)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!
東洋 夏(とうよう なつ)と申します。
本日はサン・サレンが舞台のd33シナリオ『写身の殺人者』のリプレイ小説をお届けいたします。
製本版『雪剣の頂 勇者の轍』に収録された、サン・サレン四部作のひとつです。
ファンメイドのリプレイとなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。
この連載は隔週でお送りしており、本日は第八回にあたります。
冒険は最終イベントに突入しておりますが、今日が初めての方にもお楽しみいただけるよう、少しだけ主人公たちと前回までのあらすじをご紹介させていただきますね。
主人公を務めますのは、聖騎士見習いの少年シグナスと、元人間だと主張する不思議な〈おどる剣〉クロ。主人公ふたりをプレイヤーひとりが担当するスタイルでお送りします。
シグナスとクロは居合わせたサン・サレンの街で「悪夢殺人」とでも言うべき事件に遭遇します。これは自分の姿をした何者かに殺される夢を見て、その後、現実でも殺されてしまう。そんな気味の悪い事件なのですが、ついにシグナスもその悪夢を見てしまいました。
犯人を捕まえるべく捜査に乗り出したふたり。前回のリプレイでは、宮廷医アグピレオの薬局に呼ばれ、その工房で何と連続殺人事件の犯人〈写身の殺人者〉と対決! アグレッシブ過ぎるアグピレオ先生の援護もあり、鮮やかに犯人——薬局の下働きを仕留めます。
それで今日はエピローグ……。いえそれが実は、違うんです。
何が違うのかは、この先をどうぞお楽しみに。
なお、ここから先はシナリオのネタバレを前提に記述します。プレイするまで内緒にしておいてくれという方は一旦この新聞を閉じ、代わりにシナリオを開いてサン・サレンにお出かけいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは最終イベントの模様をご覧あれ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[エピローグ/だがエピローグでないもの]
「おっ、シグナス! 手柄だったそうじゃないか」
領主館に帰還するとすぐに、玄関ホールで待ち受けていた聖騎士の先輩ベルールガに見つかった。
アグピレオ薬局の下働きが巷を騒がせた写身の殺人者であったことは、既に伝わっている。シグナスは今にも倒れそうな顔をしていたアグピレオ先生を支えたくて、しばらく薬局に留まっていたのだ。
「サー・ノックスもご存じだからな。うんと褒めてもらえよ。ほらこっち」
力強い聖騎士の先輩はシグナスの腕を取ると、有無を言わさずホールに詰めかけた人々を掻き分けて奥へと進んでいく。押しのけられた誰も彼もが文句を言おうと振り返っては、こちらの顔と血まみれの装束を見て不平を引っ込めた。それが面はゆく、シグナスはサー・ベルールガがもっと速く歩いてはくれまいかと願うのである。
やがて導かれたのは謁見者控え室、今はナリクの聖騎士たちが領主警護用の臨時詰め所にしている部屋だった。部屋の中に入るなり、シグナスは緊張して一本の棒のようになってしまう。控え室には数人の騎士がぱらぱらと点在していたが、そのうちの一人は見間違えようもない、主人ノックス・オ・リエンスだったからだ。
サー・ノックス。歳の頃は二十代の半ばを過ぎたあたり。男性にしては細っこい長身からすらりと手足の伸びた立ち姿は剣を連想させる。彼についての噂は枚挙に暇がなく、信じがたいものではコーデリア王女様に命じられて暗殺をしているとか、単身で敵国ドラッツェンの城に忍び込んだとか、いやいや潜り込んだのはドラッツェンの女王の寝室だとか、それより恐ろしいのでは飛竜ドレイクを生きたまま八つ裂きにしたというのも……。眉唾物だが、シグナスはその内の幾つかは真実でもおかしくないと思っている。
窓際に立った主人は既にシグナスの存在に気づいており、三白眼がちな鋭い左目でシグナスを見ている。右目は今日も長い前髪の下に隠されたままだ。その横にもうひとり、サン・サレンの高官らしき人物が揉み手をしながら難しい顔をして立っている。
「サー・ノックス!」
ためらいを察してか、生来の人懐っこさによるものか、ベルールガは引き続きシグナスの腕をむんずと掴むと歩いていく。
「何、お前は怒られるような事なんぞ、たったのひとつもしてないさ!」
それは僕の失態をご存じないからです、と反論したかった。すべての選択が叱責の種になる気がする。牢から引き出された罪人のように主人ノックスの前に立つ頃には、シグナスはすっかり萎縮していた。
「戻ってきましたよ、可愛い従騎士くんが」
ベルールガがそう言っても主人の表情はぴくりとも動かない。怒っているのか、いないのか。あるいは何とも思われていないのか(こちらの方が確かそうだ)。ただぞんざいに手を振ってベルールガを追い払ってしまった。
シグナスはますますおどおどして、
「サー・ノックス、あの、シグナスと<おどる剣>のクロは只今、帰還いたしました。その……」
「怪我は」
「ふへっ」
予想外の質問に奇声が出てしまったシグナスを、主人ノックスはじろりと睨め付ける。てっきり開口一番に叱られるのだと思っていたのだ。
「無いです。打ち身と擦り傷くらいで」
「それは、有る、と言う」
「申し訳ございません……」
主人は軽く溜め息をついてから、傍らのサン・サレンの高官を見て言った。
「こちらで事情をまとめてから、ご報告を差し上げる」
「それは困る。今すぐにでも御領主様の前に出て全てを説明してもらわなくては」
勢いよく喋り出した高官がシグナスに歩み寄ろうとするのを、主人がさりげなく間に割って入って制する。
「まだ未熟ゆえ、お耳障りで要点の分からない証言をすることでしょう。指導をしてからお出しすべきだと存じます。それに」
と言った後に不意に声が低く、凄みを帯びて、
「これは僕の従騎士だ。貴方の権限は及ばない」
その後の沈黙には、「連れて行きたければ僕を殴り倒すがいい、貴方にやれるものならばだが」というニュアンスが含まれている。
高官は反論の言葉を探したが見当たらず、明日の朝には必ず御前に出てもらう、と言い捨てて、怒り狂った足取りで控え室を出て行った。
(かばってくださった!? いや違う、ロング・ナリクの立場を守るためだ。でも、それでも……)
シグナスは驚きに目を白黒させている。
「それで」
淡々とした声に顔を上げれば、やはり特に何とも思っていなさそうな主人がいた。
「解決か」
「いえ、サー・ノックス。あの、僕が考えるにあの薬局の下働きは……」
その先を続けるにはありったけの勇気を掻き集める必要があったが、何とかシグナスはやってのける。
「……犯人じゃないかもしれません」
「根拠は」
「あの、僕たちは被害者のご遺体を見せてもらいました。その時に、防御した傷跡が無いのがおかしいなって思ったんです。僕だけじゃなくてクロも確認してます。薬局の下働きは"俺の事を殺人鬼だと思い込む"んだって言ってたんですけど、それはつまり、被害者のひとが下働きこそ〈自分〉だと思い込んで、自分が〈殺人鬼〉のように錯覚して、自分で自分を傷つけちゃうという意味だと僕は受け取りました。理屈は合っているようでもあるんですけど、でも……」
シグナスが言葉を一旦止めて、何の反応もない主人をこわごわ見上げると、
「続けろ」
と一言だけ返ってきた。
「はい。ええと、今回の事件はまず悪夢を見て、それから実際の殺人という順番です。僕も悪夢を見て、それから襲われました。僕にそっくりな奴でした。でも、下働きが言う通りなら、死者が出るきっかけは、被害者が下働きを〈見て〉錯覚を起こすことですよね。でも、僕が襲われたときは周りに誰もいませんでした。これもクロが知っています。加えて言うなら、僕が僕のニセモノに襲われたきっかけは、自分の姿が映った水溜まりを覗いたからで、下働きに会ったからじゃないです。もうひとつ、僕は自分を襲うんじゃなくて、その、クロを襲ったみたいで……。なので、その、すっきりしないんです。下働きの考えている薬の効果と、僕に起こったことがちぐはぐで。何かまだあるんじゃないかと」
「ならば、どうする」
「真実を探したいです、サー・ノックス。でも手がかりが無くて」
悔しいですと本音を漏らしたシグナスを見る主人の表情が、ふと和らいだ気がした。恐らく目の錯覚であろうが。
「捜査の継続を許可する」
「はい! ありがとうございます、サー・ノックス!」
「ひとつ。お前の目の付け所は良かった。遺骸を調べるというのは」
主人がヒントを出してくれたのだと気付いて、シグナスは反り返る寸前まで背筋を正した。
「でしたら、ええと、教えていただきたいことがあるのですが……」
「言ってみろ」
「犯人だと名乗った下働きの死体は、何処に安置されているんでしょうか」
「この領主館の地下で、アグピレオ医師による検死が始まっている。見に行くのだな」
「はい」
サー・ノックスは自身のマントに留めてあったピンを抜くと、シグナスに手渡した。ただのピンではない。太陽と十字の紋章、すなわち聖騎士の身分を示す大切な品だ。それを託すと言うのである。
「立ち入りを拒むものがあれば、僕の名を出せ。分かったな」
「……! はい、ありがとうございます、サー・ノックス!」
■
「駄目だ、駄目だ! ここはアグピレオ先生以外は入れるなと言われている。ましてやお前のような子供など、駄目に決まって……」
槍を持った衛兵はシグナスが取り出したピンを見て、渋い顔をした。領主ラドス・フォン・ハルトは、悪夢連続殺人事件の調査においてナリクの聖騎士が求めるものはすべて与えよと命令している。衛兵はしばし悩んだが、結局道を開けた。シグナスは彼の気が変わらない内にと螺旋階段を駆け下りる。
地階には廊下に沿っていくつもの部屋が並んでいたが、目指す部屋はすぐに見つかった。半開きになった扉から明かりが漏れている。人の声も切れ切れに聞こえてきた。
「……ふふ……良い……顔……をして!」
シグナスは雷に打たれたように立ち止まる。その声には、聞き覚えがあった。もちろんこの部屋にいるべき人の声であるが、しかし──。
鞘からクロを引っ張り出し、シグナスは臨戦態勢を取りながら、足音を殺して部屋に近づいた。
「あは、はははははは!」
熱に浮かされたような、高らかな笑い声が響く。扉の陰に隠れて中を窺うと、アグピレオが台の上に載せられた下働きの死体を覗き込みながら、にやにやと笑っていた。
(そんな)
シグナスの背筋に悪寒が這い上る。
(そんなことって。僕は知ってる。あの顔、水たまりから出てきた僕のニセモノと同じ笑い方だ)
ではこれは、まさか宮廷医のニセモノなのだろうか? ニセモノがついに実体を持ったということ? 僕はその決定的な瞬間を見ている? ならば逃がしてはいけない。真実に繋がる大きな手がかりになるはずだから。
「クロ、捕まえよう」
「分かった」
ふたりは部屋に飛び込むなり、後ろ手に扉を締め切った。その音にアグピレオ──のニセモノと思しき存在が驚いたように顔を上げる。
「お前が写身の殺人者だな! 観念しろっ」
シグナスの言葉に、アグピレオの顔からすうっと表情が失われた。熱狂も、狼狽も。
「君は上手く騙せたと思ったんだけどね」
「──え」
「今夜の残業は長くなってしまうでしょう。報告書の手直しに、検死が二件。〈おどる剣〉は含まれないのが幸いかもしれませんね」
「──アグピレオ先生?」
「シグナス、こいつは本物だ! 周りを見ろ!」
クロの警告で、はっとして室内を見渡す。狭い部屋の中にあるのは台に横たわる死体だけだ。ニセモノに襲われているなら、アグピレオはふたりいるはずだろう。しかし今、アグピレオは、ひとりしかいない。宮廷医は悲しげに首を振った。
「──先生が、写身の殺人鬼……!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回のリプレイは以上となります。
シナリオのフレーバーテキスト的には「主人公は初めから怪しいと思っていた」ことになるのですが、これまでの経緯を考えるとこのピュアな十二歳は微塵も疑ってなかったと推測されるため、主人ノックス様に助け舟を出していただくことにしました。何せシナリオ中で獲得できる「手がかり」も、ご遺体に防御の傷が無いという一点しかありませんでしたからね……。
信じていた大人の真の姿を見てしまったシグナスくん。
恐らくいま物凄く傷ついているであろうシグナスくん。
この対決、一体どうなってしまうのでしょうか。
というところで、再来週の木曜日にヒリつく真の「最終イベント」をお届けします。
良きローグライクハーフを!
◇
(登場人物)
・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。殺人者の悪夢を見ておねしょした。
・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。
・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。
・ベルールガ…ノックスの同僚の聖騎士。優しい。
・サン・サレンの領主…殺人者の悪夢に苛まれている。
・アグピレオ…領主付きの医師。心が落ち着くハーブティーの売り上げが好調。
■作品情報
作品名:『写身の殺人者』
著者:ロア・スペイダー
イラスト:海底キメラ
監修:杉本=ヨハネ、紫隠ねこ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録
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2025年10月22日水曜日
第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4655
第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加えたことで、また違った経験を積みながら、ミナの冒険は続きます。
今回は時計塔の攻略の続きからです。
【ミナ 体力点1/4 悪夢袋5/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
●アタック02-6 森の中の小さな出会い
2階は、からくりの研究室のようになっていた。
チャマイにあった時計塔の内部の部屋に、雰囲気が似ている。
フェルは嬉々として台の上の図面をのぞきこんでいる。
「なるほど。キミの時計はここで研究されてたんだな。キミがこの塔にやけに詳しい理由に納得がいったぜ」
たしかにその図面は、ボクの魔法の時計のものに見えた。
ボクはここがそんな場所だなんて知らなかったから、フェルの勘違いなんだけど、誤解させたままにしておくことにした。
ここに住んでいたノームたちがきっと、魔法の時計のもとになる研究をしていたに違いない。
また、この部屋にはまだ生きている装置もあった。
檻に閉じ込められた夢魔から、悪夢を抽出すると言うおぞましい装置だ。
たぶん、ボクの悪夢袋を作り出すための研究だ。
「夢魔は人に悪夢を見させてそれを食べる魔物だ。ま、助ける必要なんてねーよ」
フェルは軽く言い放つ。
ボクは夢魔から取り出された悪夢を、空になった悪夢袋に補充することを思いついた。
悪夢が蓄えられている容器に空の悪夢袋を近づけるだけで、悪夢袋は全部、いっぱいになった。
どういう仕組みかはわからないけれど、悪夢袋は周囲の悪夢を吸収する性質を持っているみたいだ。
その特徴は、夢魔の生態に近い。
悪夢袋の作り方について、非道な行為を連想してしまいそうになる。が、それ以上思考を進めるのはやめておいた。
悪夢袋は、ボクが姉たちを助けるために有用な道具なんだから、利用すればいい。
ボクたちは、3階へと上がる。
3階は、外から見える大時計の裏側だ。
ボクは、3階から外の景色を眺めてギョッとした。
ボクたちがこれから行く先に、墓地があり、そこにおぞましいゾンビたちが、大量に徘徊しているのが見えたからだ。
「ありゃまずいな。前に来た時よりだいぶ増えてるぞ」
フェルがつぶやく。
フェルが言うには、昔はゾンビはいなかった。
ローズ家の当主が吸血鬼になって以来、森の闇の力が強まったためか、ゾンビが出現を始めた。
それが徐々に数を増やしていき……。
「今じゃご覧のありさまってわけだ。あんな墓地じゃ、新しく入る死人はいない。出しきっちゃえばそれ以上増えないと思うけどな」
ボクには秘策があった。<刻々の狭間時計>の力を使えば、もしかしたら通り抜けられるかもしれない。
時を止める、とっておきの魔法だ。
けど、あの魔法ので動けるのは自分だけ。フェルのこと、どうしよう。
ボクもフェルも、有効な打開策を見いだせないまま、時計塔を降りた。
小道を歩く間も、この先に待つゾンビ墓地の脅威に、自然と無言になる。
やがて日が暮れてきた。
「くよくよしてもしゃーない。とりあえず今日はしっかり寝とこうか」
フェルが提案する。ボクも同意だ。
手ごろな空き地を見つけ、どこで寝るかを思案する。
この森の危険性を考えれば、やっぱり太い木の上がいいかな。
「あーー!」
その時、ボクと同様、寝床を探していたフェルの大声が聞こえた。
なにごと?
ボクは急いで声のした方へ急行する。
声が聞こえたのは木の上だ。ボクはその木を登った。
するとなんと、木の上は簡易の住居になっていた。
そしてボクは、2人のノームが再会を喜び合っている場面を見ることになった。
「キーウ、紹介するよ。オレの旅の連れ、ミナだ。闇エルフみたいに見えるが訳ありだ」
それからボクの方にキーウと呼ばれた初老のノームを紹介した。
「キーウはこの森の研究家だ。もちろんあの時計塔のことも調べてる。キミとは話が合うんじゃないか?」
ボクたちはキーウに一夜の宿泊を求め、キーウは時計の研究で詰まっているところの手伝いをすることを条件に、認めてくれた。
キーウとフェル、そしてボクは、時計についての談義を深め、話題は盛り上がり、夜は更けていった。
さすがに寝なければ。
そんなタイミングでキーウは、銀貨を持っていないかとボクに尋ねる。
ボクはこの問いかけに、既視感を覚えた。もちろん銀貨ならあるよ、と取り出そうとして、銀貨を持ち合わせていないことに気づいた。
あれ? ボク、銀貨持っていなかったっけ。
記憶をさかのぼる。たしか、ねこ人からニンニクを買って、おつりに銀貨を……。
違う。ボク、ねこ人とはそんなに親しくお話していなかったよね。フェルと過ごしてたから。
あれ? 銀貨を渡して、どうなるんだっけ。
ボク、森の中で銀のナイフが手に入るって思ってたよね。それって……ここで?
おかしいな。記憶が混乱しているみたいだ。
早く寝てしまおう。
●アタック02-7 ゾンビ墓場の突破口
「起きて、ミナ」
ニナ姉のささやき声に起こされた。
また、あの夢だ。あの日。母が殺され、姉妹がばらばらになった、あの日の夢。
幾度となく繰り返し見た、あの夢。
まって。これは本当に夢?
もしかしたら、時の魔法が不思議に作用して、ボクを過去に戻してしまったのかも。
ここでボクが何かを選び直したら、「やり直し」になって、未来が、ううん、過去が変わるのかも。
ボクはまだ幼い。どうしたらいいんだろう。
未来をつかみ取るためにできること。
ニナ姉と一緒に戦う? それだけはやめておこう。前より悲惨な結果が待っていることは明らかだ。
そうだ。ボクはベッドの下に隠れよう。そうしたら、ニナ姉はフリーになる。騒ぎを起こして、その隙にほかの姉たちに逃げてもらえば……。
ボクは、ベッドの下に潜り込んだ。
ベッド下、ベッドの背面に、黒いクモがこびりつくように、べったりと張り付いていた。
ボクは、その外見に見覚えがあった。時計塔で見た。
夢魔だ。
ボクは短剣を取り出し、夢魔に斬りつけた。
脚を切断する。夢魔は逃げ去った。その瞬間、ボクはがばっと跳ね起きた。
全身、汗でびっしょりだ。
知らぬ間に、夢魔の襲撃を受けていた。
夢魔は、人に悪夢を見させて、それを食べる。
悪夢の中には必ず夢魔自身が潜んでおり、夢の中で見つけて攻撃すれば、それは夢魔への直接的なダメージとなる。
ボクは悪夢の中で、夢魔を撃退することに成功したみたいだった。
枕元に、黒いクモの脚が1本、落ちていた。現実の夢魔も、しっかり傷ついているみたいだ。
ボクは改めて眠りについた。興奮してなかなか寝つけなかったけれど、それでもいつしか意識は途切れた。
朝。目覚める。
夢魔を撃退したこともあり、多少は休むことができた。体力点が1点、回復した。
みんなで食べ物を少しずつ出しあい、朝食を作って食べた。
旅立つ前に、キーウがボクに小さな贈り物をくれた。それは1枚の歯車だ。時計の修理に使える。
「楽しい一夜を過ごさせてくれたお礼だ。ありがとう」
キーウはこれから、時計塔を攻略に向かうという。
フェルが昨夜、時計塔への入り方と内部構造について、詳しく説明していた。
同時に、自分が持ち帰ろうとして、あきらめた仕掛けを、キーウに取られてしまうことを悔しがっていた。
さあ、ボクたちにはボクたちの旅がある。
小道を進めば、いよいよゾンビ墓地に到達する。
ものすごい腐敗臭があたりに漂っている。風がよどんでいる。
低い石塀に囲まれた墓地には、無数のゾンビが徘徊していた。
「あーあ、結局なんのアイディアもないまま来ちゃったよ」
フェルがぼやく。
「この数じゃ、さすがに無理だ。引き返すことを勧めるぜ。……っつっても、キミは間違いなく行くって言うんだろうな」
そうだよ。エナ姉とティナ姉を取り戻すためなら、どんな困難だって。
できるかどうか、わからないけど、ひとつだけ手段を考えついてる。
「魔法の時計の力か? それやってみて無駄だったら、あきらめるんだぞ」
ボクは、<刻々の狭間時計>を取り出した。
この時計は、砂時計を思わせるデザインをしている。
とはいえ、ちゃんと針はついている。
この時計を使えば、集中している間だけ、時を止めることができる。
しかしそれには、悪夢袋を3個も消費する、大技だ。
<刻々の狭間時計>のボタンを押す。
時計の針が動き出した。同時に世界が止まる。
この中で動けるのは、ボクだけだ。
ボクは墓地の入口の門を開ける。そうして、止まっているフェルを背中に背負った。
小柄なノームの割には重い。きっと道中で気になった道具などを、背負い袋にため込んでいるに違いない。
全速力で駆け抜けたかったが、フェルを背負っていては、そうはいかない。
止まっているゾンビたちの間をぬって、ゆっくりと歩を進めてゆく。ゆっくり、ゆっくりと。
集中力が、いつまで続くか。時間が、無限に感じられた。
ボクは、どうにかゾンビ墓地を抜けた。
疲れてクラクラする。もう、限界だ。
フェルを降ろすと同時に、時計の針が止まる。
時が、動き出した。
フェルは、立っていたはずの自分がしゃがんでいる姿勢になっていることに気づいたようだった。
ボクはフェルの隣で両膝と両手をついて、荒い息を吐いている。
「ここは……墓地を、抜けてる?」
ようやくフェルは、現在位置に気がついた。同時にここが、まだ安全圏内ではないことも。
「おいキミ、大丈夫かよ。……ゾンビどもに気づかれて追われたらおしまいだ。走れるか?」
今度はフェルが、ボクの手を取って走り出した。ボクは呼吸が整わないままに、よろめくように走った。
やがてゾンビどもから十分に距離が取れたと思われるところで、ボクたちは大の字になって仰向けに寝転んだ。
もう、しばらく動きたくない。
「知らない間にゾンビの墓を通り抜けたの、キミの時計の魔法か? ものすごいな」
「あれは、とっておき。何度もは、使えない」
呼吸を整えながら、ボクは答えた。
悪夢袋がみっつ、しぼんでいた。
この先、いよいよローズ家の館なのだから、なるべく温存しないと。
●アタック02-8 テクア神との邂逅と夢の時計
やがて建物が見えてきた。
そこはまだ、ローズ家の館ではなかった。
入口の上部に、からくり神テクアの像が飾られている石造りの建物。
テクア神の神殿だろう。
ボクとフェルは、吸い寄せられるようにその建物に入っていった。
なんだろう。この建物では、なにかものすごく重大なことが起きる予感がする。
からくり神テクアは、ノームが信仰する神である。
むしろ、ノームの生きざまそのものが、テクアの思想を体現していると言ってもいい。
内部の壁に彫られたレリーフは、からくりの歴史をたどるものだ。
フェルはそのレリーフに感嘆の声を漏らしていた。
「この神殿がいつ頃建てられたものなのか、正確なところはわかっていない」
フェルが、案内人だったことを思い出したように説明を始めた。
「少なくともローズ家の現当主の代ではないし、あの時計塔が建造されるよりもずっと前からあったものといわれてる。ここに来ると、神性っていうか、本当に神がそこにいるような、荘厳さを感じるんだよ」
ボクたちは神殿の奥に歩みを進める。最奥に、からくり神テクアの神像が見えた。
「なにか、いるな」
フェルが気配に気づいた。
ボクたちの背後に出現したのは、吸血獣だ。
「太陽光が苦手だからって、ここをねぐらにすんじゃねえよ」
フェルはすぐに臨戦態勢を取る。ボクは前みたく不覚を取らないため<速撃の戦時計>を動かした。
動かそうとした。
その瞬間、時が凍りついた。フェルの動きが、完全に固まっている。吸血獣もそうだ。
それは<刻々の狭間時計>で時を止めている感覚に似ていた。
違うのは、動かなくなっているのはボクの方ということ、身体は動かないのに意識はあることだ。
そして、神殿の最奥にあった神像が、動き出した。チリチリとした駆動音がする。
内部にある精巧な歯車が複雑に組み合わさり、動いているのが見える。
「また来たか……」
また? どういうこと?
ボクはここに来るのは初めてのはず。
けど、たしかにボクは、これと同じような場面に出会ったことが、ある。
それよりも、今ボクに話しかけている存在が、からくり神テクアそのものであろうことに、ボクは戦慄した。
「なるほど。記憶の継承は不完全というわけか。あるいは記憶のような内的要因までは考慮しきれぬためか」
テクア神は、ボクにはわからないことを言い、勝手に納得している。
「いずれにせよ、我はお前に力を貸そう。これはすでに定まっているからくりなるが故に」
ボクの時計たちに、テクア神の力が宿る。
「より精密に時を刻む力を与えた。使いこなすが良い」
テクア神の神像は、静かな駆動音とともに、神殿最奥へと戻っていった。
神像の動きが止まると、ボクの身体は動くようになった。同時にフェルの固定も解除されたようだ。
吸血獣も動けるようになったようだが、動けるようになるとたちまち逃げ去ってしまった。
フェルが拍子抜けしている。フェルはどうやら、時の狭間の出来事は体験していないようだ。
あれは、ボクとテクア神だけの出来事だったのだろう。
フェルとボクは、神殿の最奥で神像に対して祈りを捧げた。
構造と論理の塊であるテクア神に祈るというのも変な感じがしたが、そこはフェルの動きにならった。
そうしてボクたちは、テクア神の神殿をあとにした。
旅を続け、日暮れ前にとうとうローズ家の館のあたりにたどりついた。
「どんなに急いでいたって、さすがに夜に吸血鬼の館に突入する、なんて言わないよな」
さすがにそれはそうだ。
ボクとフェルは、交代で眠ることにした。
最初はフェルの番、そして交代して、ボクが眠る。
また、悪夢を見た。
今度は、ボクが魔法の時計を手に入れる場面の夢だ。
魔法学校でモータス教授たちのたくらみを聞き、時計塔のカギを手に入れ、先んじて時計塔へと入り込む。
大まかな流れは同じだったけれど、細部は異なっていた。
ボクは留学先のチャマイの魔法学園の落第が確定していて、あまりの申し訳なさから、自ら命を絶つことを考え、死に場所を探していた。
時計塔では、ボクが魔法の時計を手にする前に、モータス教授が来てしまい、ボクは隠れて教授の様子を見ていることしかできなかった。
それらのことから、ボクはこれが夢であることと、誰かに見させられている悪夢であることを、確信した。
誰か? おそらく、脚を切り落としたあの夢魔に違いない。ボクをつけ狙っていたんだ。
夢の中ではモータス教授が時計を前に、闇神オスクリード様に祈りを捧げていた。
モータス教授の肌が黒くなっていき、彼が魔法の時計の力を手に入れたことがわかった。
それだけではない。夢のモータス教授は、<枝分かれの未来時計>に働きかけ、より完璧なものに仕上げていたのだ。
ボクの夢の中なのに、ボクの知らない知識が出てくる。
それは不思議なことだったけれど、ボクはその光景を胸に刻み込んだ。
もし夢の出来事を覚えていたら、自身の時計にも同じことを施してみよう。
魔法の時計を確保したモータス教授は、ボクが隠れている方に歩いてきた。
このままでは見つかってしまう。
ボクは、時計塔のカギを遠くに投げて、モータス教授の気をそらした。
後ろを振り返るモータス教授。その時、ボクは見てしまった。モータス教授の背中、マントのところに、黒い大グモがへばりついているのを。
その夢魔は、脚が一本欠けていた。やはり昨晩の夢魔だ。こんなところに隠れていたとは。
ボクは隠れ場所から飛び出すと、すかさず夢魔を攻撃した。
無防備な夢魔は、一撃で切り捨てられた。
ボクは夢魔の断末魔の声とともに、目を覚ました。
枕もとに、夢魔の亡骸があった。ボクは夢魔に打ち勝ったんだ。
夢魔のためこんでいた悪夢を吸い込み、悪夢袋もふたつ、膨らんでいた。
目覚めの時間にはまだ早い。
ボクはもう一度、寝直した。気持ちは昂っていたけれど、ボクはいつしか眠りについていた。
次回、ついにローズ家へ。姉たちの生存は?
【ミナ 体力点1→2/4 悪夢袋5→7→4→6/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0→1枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。5日前を最後に日記は途切れている。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加えたことで、また違った経験を積みながら、ミナの冒険は続きます。
今回は時計塔の攻略の続きからです。
【ミナ 体力点1/4 悪夢袋5/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
●アタック02-6 森の中の小さな出会い
2階は、からくりの研究室のようになっていた。
チャマイにあった時計塔の内部の部屋に、雰囲気が似ている。
フェルは嬉々として台の上の図面をのぞきこんでいる。
「なるほど。キミの時計はここで研究されてたんだな。キミがこの塔にやけに詳しい理由に納得がいったぜ」
たしかにその図面は、ボクの魔法の時計のものに見えた。
ボクはここがそんな場所だなんて知らなかったから、フェルの勘違いなんだけど、誤解させたままにしておくことにした。
ここに住んでいたノームたちがきっと、魔法の時計のもとになる研究をしていたに違いない。
また、この部屋にはまだ生きている装置もあった。
檻に閉じ込められた夢魔から、悪夢を抽出すると言うおぞましい装置だ。
たぶん、ボクの悪夢袋を作り出すための研究だ。
「夢魔は人に悪夢を見させてそれを食べる魔物だ。ま、助ける必要なんてねーよ」
フェルは軽く言い放つ。
ボクは夢魔から取り出された悪夢を、空になった悪夢袋に補充することを思いついた。
悪夢が蓄えられている容器に空の悪夢袋を近づけるだけで、悪夢袋は全部、いっぱいになった。
どういう仕組みかはわからないけれど、悪夢袋は周囲の悪夢を吸収する性質を持っているみたいだ。
その特徴は、夢魔の生態に近い。
悪夢袋の作り方について、非道な行為を連想してしまいそうになる。が、それ以上思考を進めるのはやめておいた。
悪夢袋は、ボクが姉たちを助けるために有用な道具なんだから、利用すればいい。
ボクたちは、3階へと上がる。
3階は、外から見える大時計の裏側だ。
ボクは、3階から外の景色を眺めてギョッとした。
ボクたちがこれから行く先に、墓地があり、そこにおぞましいゾンビたちが、大量に徘徊しているのが見えたからだ。
「ありゃまずいな。前に来た時よりだいぶ増えてるぞ」
フェルがつぶやく。
フェルが言うには、昔はゾンビはいなかった。
ローズ家の当主が吸血鬼になって以来、森の闇の力が強まったためか、ゾンビが出現を始めた。
それが徐々に数を増やしていき……。
「今じゃご覧のありさまってわけだ。あんな墓地じゃ、新しく入る死人はいない。出しきっちゃえばそれ以上増えないと思うけどな」
ボクには秘策があった。<刻々の狭間時計>の力を使えば、もしかしたら通り抜けられるかもしれない。
時を止める、とっておきの魔法だ。
けど、あの魔法ので動けるのは自分だけ。フェルのこと、どうしよう。
ボクもフェルも、有効な打開策を見いだせないまま、時計塔を降りた。
小道を歩く間も、この先に待つゾンビ墓地の脅威に、自然と無言になる。
やがて日が暮れてきた。
「くよくよしてもしゃーない。とりあえず今日はしっかり寝とこうか」
フェルが提案する。ボクも同意だ。
手ごろな空き地を見つけ、どこで寝るかを思案する。
この森の危険性を考えれば、やっぱり太い木の上がいいかな。
「あーー!」
その時、ボクと同様、寝床を探していたフェルの大声が聞こえた。
なにごと?
ボクは急いで声のした方へ急行する。
声が聞こえたのは木の上だ。ボクはその木を登った。
するとなんと、木の上は簡易の住居になっていた。
そしてボクは、2人のノームが再会を喜び合っている場面を見ることになった。
「キーウ、紹介するよ。オレの旅の連れ、ミナだ。闇エルフみたいに見えるが訳ありだ」
それからボクの方にキーウと呼ばれた初老のノームを紹介した。
「キーウはこの森の研究家だ。もちろんあの時計塔のことも調べてる。キミとは話が合うんじゃないか?」
ボクたちはキーウに一夜の宿泊を求め、キーウは時計の研究で詰まっているところの手伝いをすることを条件に、認めてくれた。
キーウとフェル、そしてボクは、時計についての談義を深め、話題は盛り上がり、夜は更けていった。
さすがに寝なければ。
そんなタイミングでキーウは、銀貨を持っていないかとボクに尋ねる。
ボクはこの問いかけに、既視感を覚えた。もちろん銀貨ならあるよ、と取り出そうとして、銀貨を持ち合わせていないことに気づいた。
あれ? ボク、銀貨持っていなかったっけ。
記憶をさかのぼる。たしか、ねこ人からニンニクを買って、おつりに銀貨を……。
違う。ボク、ねこ人とはそんなに親しくお話していなかったよね。フェルと過ごしてたから。
あれ? 銀貨を渡して、どうなるんだっけ。
ボク、森の中で銀のナイフが手に入るって思ってたよね。それって……ここで?
おかしいな。記憶が混乱しているみたいだ。
早く寝てしまおう。
●アタック02-7 ゾンビ墓場の突破口
「起きて、ミナ」
ニナ姉のささやき声に起こされた。
また、あの夢だ。あの日。母が殺され、姉妹がばらばらになった、あの日の夢。
幾度となく繰り返し見た、あの夢。
まって。これは本当に夢?
もしかしたら、時の魔法が不思議に作用して、ボクを過去に戻してしまったのかも。
ここでボクが何かを選び直したら、「やり直し」になって、未来が、ううん、過去が変わるのかも。
ボクはまだ幼い。どうしたらいいんだろう。
未来をつかみ取るためにできること。
ニナ姉と一緒に戦う? それだけはやめておこう。前より悲惨な結果が待っていることは明らかだ。
そうだ。ボクはベッドの下に隠れよう。そうしたら、ニナ姉はフリーになる。騒ぎを起こして、その隙にほかの姉たちに逃げてもらえば……。
ボクは、ベッドの下に潜り込んだ。
ベッド下、ベッドの背面に、黒いクモがこびりつくように、べったりと張り付いていた。
ボクは、その外見に見覚えがあった。時計塔で見た。
夢魔だ。
ボクは短剣を取り出し、夢魔に斬りつけた。
脚を切断する。夢魔は逃げ去った。その瞬間、ボクはがばっと跳ね起きた。
全身、汗でびっしょりだ。
知らぬ間に、夢魔の襲撃を受けていた。
夢魔は、人に悪夢を見させて、それを食べる。
悪夢の中には必ず夢魔自身が潜んでおり、夢の中で見つけて攻撃すれば、それは夢魔への直接的なダメージとなる。
ボクは悪夢の中で、夢魔を撃退することに成功したみたいだった。
枕元に、黒いクモの脚が1本、落ちていた。現実の夢魔も、しっかり傷ついているみたいだ。
ボクは改めて眠りについた。興奮してなかなか寝つけなかったけれど、それでもいつしか意識は途切れた。
朝。目覚める。
夢魔を撃退したこともあり、多少は休むことができた。体力点が1点、回復した。
みんなで食べ物を少しずつ出しあい、朝食を作って食べた。
旅立つ前に、キーウがボクに小さな贈り物をくれた。それは1枚の歯車だ。時計の修理に使える。
「楽しい一夜を過ごさせてくれたお礼だ。ありがとう」
キーウはこれから、時計塔を攻略に向かうという。
フェルが昨夜、時計塔への入り方と内部構造について、詳しく説明していた。
同時に、自分が持ち帰ろうとして、あきらめた仕掛けを、キーウに取られてしまうことを悔しがっていた。
さあ、ボクたちにはボクたちの旅がある。
小道を進めば、いよいよゾンビ墓地に到達する。
ものすごい腐敗臭があたりに漂っている。風がよどんでいる。
低い石塀に囲まれた墓地には、無数のゾンビが徘徊していた。
「あーあ、結局なんのアイディアもないまま来ちゃったよ」
フェルがぼやく。
「この数じゃ、さすがに無理だ。引き返すことを勧めるぜ。……っつっても、キミは間違いなく行くって言うんだろうな」
そうだよ。エナ姉とティナ姉を取り戻すためなら、どんな困難だって。
できるかどうか、わからないけど、ひとつだけ手段を考えついてる。
「魔法の時計の力か? それやってみて無駄だったら、あきらめるんだぞ」
ボクは、<刻々の狭間時計>を取り出した。
この時計は、砂時計を思わせるデザインをしている。
とはいえ、ちゃんと針はついている。
この時計を使えば、集中している間だけ、時を止めることができる。
しかしそれには、悪夢袋を3個も消費する、大技だ。
<刻々の狭間時計>のボタンを押す。
時計の針が動き出した。同時に世界が止まる。
この中で動けるのは、ボクだけだ。
ボクは墓地の入口の門を開ける。そうして、止まっているフェルを背中に背負った。
小柄なノームの割には重い。きっと道中で気になった道具などを、背負い袋にため込んでいるに違いない。
全速力で駆け抜けたかったが、フェルを背負っていては、そうはいかない。
止まっているゾンビたちの間をぬって、ゆっくりと歩を進めてゆく。ゆっくり、ゆっくりと。
集中力が、いつまで続くか。時間が、無限に感じられた。
ボクは、どうにかゾンビ墓地を抜けた。
疲れてクラクラする。もう、限界だ。
フェルを降ろすと同時に、時計の針が止まる。
時が、動き出した。
フェルは、立っていたはずの自分がしゃがんでいる姿勢になっていることに気づいたようだった。
ボクはフェルの隣で両膝と両手をついて、荒い息を吐いている。
「ここは……墓地を、抜けてる?」
ようやくフェルは、現在位置に気がついた。同時にここが、まだ安全圏内ではないことも。
「おいキミ、大丈夫かよ。……ゾンビどもに気づかれて追われたらおしまいだ。走れるか?」
今度はフェルが、ボクの手を取って走り出した。ボクは呼吸が整わないままに、よろめくように走った。
やがてゾンビどもから十分に距離が取れたと思われるところで、ボクたちは大の字になって仰向けに寝転んだ。
もう、しばらく動きたくない。
「知らない間にゾンビの墓を通り抜けたの、キミの時計の魔法か? ものすごいな」
「あれは、とっておき。何度もは、使えない」
呼吸を整えながら、ボクは答えた。
悪夢袋がみっつ、しぼんでいた。
この先、いよいよローズ家の館なのだから、なるべく温存しないと。
●アタック02-8 テクア神との邂逅と夢の時計
やがて建物が見えてきた。
そこはまだ、ローズ家の館ではなかった。
入口の上部に、からくり神テクアの像が飾られている石造りの建物。
テクア神の神殿だろう。
ボクとフェルは、吸い寄せられるようにその建物に入っていった。
なんだろう。この建物では、なにかものすごく重大なことが起きる予感がする。
からくり神テクアは、ノームが信仰する神である。
むしろ、ノームの生きざまそのものが、テクアの思想を体現していると言ってもいい。
内部の壁に彫られたレリーフは、からくりの歴史をたどるものだ。
フェルはそのレリーフに感嘆の声を漏らしていた。
「この神殿がいつ頃建てられたものなのか、正確なところはわかっていない」
フェルが、案内人だったことを思い出したように説明を始めた。
「少なくともローズ家の現当主の代ではないし、あの時計塔が建造されるよりもずっと前からあったものといわれてる。ここに来ると、神性っていうか、本当に神がそこにいるような、荘厳さを感じるんだよ」
ボクたちは神殿の奥に歩みを進める。最奥に、からくり神テクアの神像が見えた。
「なにか、いるな」
フェルが気配に気づいた。
ボクたちの背後に出現したのは、吸血獣だ。
「太陽光が苦手だからって、ここをねぐらにすんじゃねえよ」
フェルはすぐに臨戦態勢を取る。ボクは前みたく不覚を取らないため<速撃の戦時計>を動かした。
動かそうとした。
その瞬間、時が凍りついた。フェルの動きが、完全に固まっている。吸血獣もそうだ。
それは<刻々の狭間時計>で時を止めている感覚に似ていた。
違うのは、動かなくなっているのはボクの方ということ、身体は動かないのに意識はあることだ。
そして、神殿の最奥にあった神像が、動き出した。チリチリとした駆動音がする。
内部にある精巧な歯車が複雑に組み合わさり、動いているのが見える。
「また来たか……」
また? どういうこと?
ボクはここに来るのは初めてのはず。
けど、たしかにボクは、これと同じような場面に出会ったことが、ある。
それよりも、今ボクに話しかけている存在が、からくり神テクアそのものであろうことに、ボクは戦慄した。
「なるほど。記憶の継承は不完全というわけか。あるいは記憶のような内的要因までは考慮しきれぬためか」
テクア神は、ボクにはわからないことを言い、勝手に納得している。
「いずれにせよ、我はお前に力を貸そう。これはすでに定まっているからくりなるが故に」
ボクの時計たちに、テクア神の力が宿る。
「より精密に時を刻む力を与えた。使いこなすが良い」
テクア神の神像は、静かな駆動音とともに、神殿最奥へと戻っていった。
神像の動きが止まると、ボクの身体は動くようになった。同時にフェルの固定も解除されたようだ。
吸血獣も動けるようになったようだが、動けるようになるとたちまち逃げ去ってしまった。
フェルが拍子抜けしている。フェルはどうやら、時の狭間の出来事は体験していないようだ。
あれは、ボクとテクア神だけの出来事だったのだろう。
フェルとボクは、神殿の最奥で神像に対して祈りを捧げた。
構造と論理の塊であるテクア神に祈るというのも変な感じがしたが、そこはフェルの動きにならった。
そうしてボクたちは、テクア神の神殿をあとにした。
旅を続け、日暮れ前にとうとうローズ家の館のあたりにたどりついた。
「どんなに急いでいたって、さすがに夜に吸血鬼の館に突入する、なんて言わないよな」
さすがにそれはそうだ。
ボクとフェルは、交代で眠ることにした。
最初はフェルの番、そして交代して、ボクが眠る。
また、悪夢を見た。
今度は、ボクが魔法の時計を手に入れる場面の夢だ。
魔法学校でモータス教授たちのたくらみを聞き、時計塔のカギを手に入れ、先んじて時計塔へと入り込む。
大まかな流れは同じだったけれど、細部は異なっていた。
ボクは留学先のチャマイの魔法学園の落第が確定していて、あまりの申し訳なさから、自ら命を絶つことを考え、死に場所を探していた。
時計塔では、ボクが魔法の時計を手にする前に、モータス教授が来てしまい、ボクは隠れて教授の様子を見ていることしかできなかった。
それらのことから、ボクはこれが夢であることと、誰かに見させられている悪夢であることを、確信した。
誰か? おそらく、脚を切り落としたあの夢魔に違いない。ボクをつけ狙っていたんだ。
夢の中ではモータス教授が時計を前に、闇神オスクリード様に祈りを捧げていた。
モータス教授の肌が黒くなっていき、彼が魔法の時計の力を手に入れたことがわかった。
それだけではない。夢のモータス教授は、<枝分かれの未来時計>に働きかけ、より完璧なものに仕上げていたのだ。
ボクの夢の中なのに、ボクの知らない知識が出てくる。
それは不思議なことだったけれど、ボクはその光景を胸に刻み込んだ。
もし夢の出来事を覚えていたら、自身の時計にも同じことを施してみよう。
魔法の時計を確保したモータス教授は、ボクが隠れている方に歩いてきた。
このままでは見つかってしまう。
ボクは、時計塔のカギを遠くに投げて、モータス教授の気をそらした。
後ろを振り返るモータス教授。その時、ボクは見てしまった。モータス教授の背中、マントのところに、黒い大グモがへばりついているのを。
その夢魔は、脚が一本欠けていた。やはり昨晩の夢魔だ。こんなところに隠れていたとは。
ボクは隠れ場所から飛び出すと、すかさず夢魔を攻撃した。
無防備な夢魔は、一撃で切り捨てられた。
ボクは夢魔の断末魔の声とともに、目を覚ました。
枕もとに、夢魔の亡骸があった。ボクは夢魔に打ち勝ったんだ。
夢魔のためこんでいた悪夢を吸い込み、悪夢袋もふたつ、膨らんでいた。
目覚めの時間にはまだ早い。
ボクはもう一度、寝直した。気持ちは昂っていたけれど、ボクはいつしか眠りについていた。
次回、ついにローズ家へ。姉たちの生存は?
【ミナ 体力点1→2/4 悪夢袋5→7→4→6/7】<不死化傷>
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<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
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エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。5日前を最後に日記は途切れている。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
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2025年10月21日火曜日
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12 FT新聞 No.4654
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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12
(田林洋一)
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FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。
全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、12回目の記事をお届けいたします。今回は東京創元社が主催した第二回ゲームブック・コンテスト入選作を中心に紹介します。
本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。「私はそうは思わない」という感想がございましたら、ぜひともお寄せいただければ嬉しく思います。
なお、本連載はSAGBとして東京創元社版のみを検討・分析する記事とさせて頂いておりますので、後に別会社から出版された復刻版・改訂版などについては取り上げていないことを予めお断りいたします。
毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
12. ゲームブックの臨界点と斜陽 -第二回創元ゲームブック・コンテスト入選作品群
主な言及作品:『エクセア』(1989)『第七の魔法使い』(1992)
『ギャランス・ハート』(1992)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
日本国内でのゲームブック人気は、東京創元社が第二回ゲームブック・コンテストを開いた1988年から1989年辺りから凋落の一途を辿り始める。第一回のゲームブック・コンテストの応募作品総数は百十九、第二回になるとほぼ半減の六十二、そして第三回のコンテストではなんと三十未満という、もはやコンテストとして成立しない数にまで激減した。
そんな中でも、SAGBはシリーズとしてコンテスト入選作をいくつか発表しており、第二回コンテストから出版に結びついた作品は二つある。まずは佳作に入選した宮原弥寿子著『エクセア』を見よう。
祖国であるエクセアは、ファンデム王国の襲撃により壊滅の危機に陥っていた。その刹那、エクセアは王子であるあなた一人を残して、何もかも消え去ってしまった。祖国エクセアはどこに? そんな折、ファンデムでの王位継承権を巡って、「聖なる森を探索して宝玉を持ち帰ったものに、王女を妻とする資格を与える」とのお触れが出された。ファンデムがエクセアの脅威でなくなれば、エクセアが復活するのではないかと夢見て、あなたはこの冒険に参加することになる。
冒頭で人を惹きつけるプロローグに数々の難解な謎解き、そして巧みな文章力という点で『エクセア』はかなり良くできたゲームブックである。まずはルール面だが、武器や防具によって与えるダメージ(と受けるダメージ)が異なっており、リアルな戦闘が楽しめる。「ドルアーガの塔」やファイティング・ファンタジー・シリーズのように、固定ダメージ(二ポイント)というわけではないのだ。また、画期的なのが重さの概念で、鎖かたびらや両手剣などの強力な防具や武器は、効果が高い一方で重さが半端なく、しかも重さが一定値を越えると技術点が下がるというルールまで盛り込んである。逆に、アイテムをほとんど持っていないと敏捷性が高まるという点を考慮して、技術点が上がる仕組みになっている。リアリティを再現するという点からすると、かなり凝ったシステムと言えるだろう。
考えてみれば、特にSAGBのゲームブックで重さの概念を取り入れたものは数少なかった。僅かに林友彦の「ウルフヘッドの冒険」シリーズで荷物の限界値を決めているが、食料一袋も錠剤一粒も同じ重さと換算され、単にアイテムの個数で制限を定めていた。この方式は、リアリティについては無視することで、プレイヤーに余計な負荷をかけないというゲーム的に優れた利点を持つ。
SAGBのレーベルから出ているTRPGの「ドラゴン・ウォーリアーズ」も、「ウルフヘッドの冒険」と同じく「プレイヤーに余計な負荷をかけない重量計算システム(アイテムは種類に関係なく一つと数える)」を採用している。一方で、同じTRPGでも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「トンネルズ&トロールズ(以下、T&T)」は、『エクセア』と同じく重量点という概念を取り入れて「拾得物の管理」をプレイヤーに行わせている。
確かに、行く先々で見つけることができるアイテムなどを重さや体積に関係なく総取りできるシステムには疑問を感じるプレイヤーもいることだろう。例えばファイティング・ファンタジー・シリーズの一部や「ドルアーガの塔」では、最初に食料が十袋も与えられるが、これだけ重いものを持っていたら敏捷性に支障をきたすのではと考えるのはごく自然なことだ。
コンピューターゲームのRPGも含めて、どちらかというとアイテムの重さやかさばり方という点は等閑視されることが多かった。重量制限を設けてしまうと、ゲームとしては煩雑すぎるし、クリアに必須のアイテムまで捨てなければならない事態が生じるからである(例外は「ドラゴンクエスト」などだろう)。この点を踏まえつつも、『エクセア』などでは、プレイヤーに負担をかけないように数値で重さを管理することでリアリティを出すことに成功している。
習得したアイテムや武器について、従来のゲームブックやコンピューターゲーム「ファイナルファンタジー」などに代表される「重量も個数も問わない」方式は抽象的でありながらもゲームとしてのシンプルさを追求している。一方で、『エクセア』や「T&T」は「個数も含めて重量を計算する」という現実の物理法則をルールに落とし込んでいる点で対照的である。その中道を行くのが、「ドラゴンクエスト」や「ドラゴン・ウォーリアーズ」などの「個数は問うが重量は無関係」システムだろう。
また、『エクセア』ではスタート時に原体力点、技術点、魔術点を自由に振り分けられるルールを採用しているが、先の重さの管理と合わせて、自由にプレイヤーキャラクターを創造できるというのも強みだろう。軽戦士を目指すのならば技術点に数値を多く振り分け、軽い革の鎧とナイフで戦うという戦法が取れるし、体力が自慢の重戦士を目指すのならば、原体力点などに重点を置いて、重い武器を装備するという戦略が立てられる(技術点は低くなってしまうが)。
因みに、林友彦の「ウルフヘッド」シリーズも武器と防具に重量が設定されていたが、こちらは「装備重量の合計がパワー値を上回ると、攻撃の命中率や回避にペナルティを受ける」という能力値の不利なマイナス面にのみルールが適用されていて、「荷物が軽い時は動作が機敏になる」という点はルールに反映されていなかった。
今までの(SAGBだけではない)ゲームブックはこの辺りがあまり自由が効かず、サイコロの目によって勝手に「どのタイプの戦士か」が決定されてしまうことが多い。例えば、「ドルアーガの塔」において防御重視タイプのギルガメスを作りたいと思っても、最初のサイコロの目で防御ポイントの数値が壊滅的に悪ければ、否応なしに攻撃型の主人公を作らねばならない(戦力ポイントの数値も悪かったら目も当てられないが)。例外は「ワルキューレの冒険」だが、場面や状況によっては魔法が使用できないことがあり、結果的に「魔法使いタイプの主人公」というイメージで冒険するにはそぐわないように思われる。
それでも「ワルキューレの冒険」の魔法にも利点があり、最初に決める能力値や戦闘やサイコロの目が悪くても確実にダメージを与えられる「火の玉の術」や、減っていた体力ポイントを回復する「薬の術」は、ある意味で低能力値に対する救済措置的な側面を持っていた。「魔法で低い能力値を補う」という戦略は、ファイティング・ファンタジー・シリーズや初期のSAGBの戦闘では不可能とは言わないまでも困難であり、この魔法は戦略の幅を広げる「戦闘オプション」という性質を持つ。後述するが、『エクセア』も(限定的ではあるが)白兵戦に自信がなければ魔法戦を選択することができるという「救済措置」が用意されているように思われる。
最初の能力値を決定する際のサイコロの目によって、難易度が劇的に変化するのは賛否両論があるだろう。「サイコロによるランダムな不公平」はない作品で言えば、例えば『眠れる竜ラヴァンス』は、最初の技量ポイントが十点と固定されていて、出立時の「運」は関係なく、作り手側も難易度も調整しやすい。また、「ワルキューレの冒険」では各巻のプロローグで能力値が改めて調整され、作成時の出目が低かった場合の救済策と難易度を揃える役目を果たしていた。
TRPGでも初期にはキャラクターメイキングでランダム性を導入することが多かったが、時代が下るにつれて「自分のイメージしたキャラクターで遊びたい」という志向を持つプレイヤーの要請に応えるように「ポイント振り分け制」を導入するようになっていく。例えば「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(AFF)」も1989年の第1版では能力値はサイコロによるランダム決定に委ねられていたが、2011年の第2版(AFF2e)ではポイント振り分け制に移行している。
『エクセア』は武器や初期設定だけでなく、魔法の使用や戦闘の立ち回り方といった点でも比較的自由度が高く、だいたいにおいて魔法戦か剣を交えての白兵戦かが選択できるようになっている(これは特に序盤の「聖なる森」の探索で顕著である)。惜しむらくは、一回魔法戦を選択すると、後は敵を倒すまで魔法を使い続けなければならない(つまり、白兵戦に移行できない)場面が多いことだろう。また、終盤では魔法を使う機会が激減するのも残念なところである。
この作品は大雑把に言って序盤と終盤に分かれている。まずは双方向移動の「聖なる森」での探索、次にファンデムの王族となり、密かに侵攻準備を進めてきた西の大国ジェナンとの戦闘に挑んでからは単方向移動にシフトする。前半の「聖なる森」で出会う数々の挑戦者(NPC)は非常に魅力的で、個々の背景までもきちんと描写されているのは好感が持てる。
例えば主人公のライバルたる傭兵ダーナ・ストゥティは、妹の結婚資金の調達のために「聖なる森」の戦闘コンテストに参加しているのだが、主人公は彼に資金援助を申し出るという選択をすることもできるし、問答無用とばかりに戦って殺してしまうこともできる。すると、後半の冒険でダーナの妹と遭遇した時の物語が(当然という気はするが)劇的に変わるのだ。あとがきで作者の宮原弥寿子が述べているように「倒す敵にも、親があって、恋人があって、赤い血が流れているような」NPCが満載である。こうした特徴的なNPCの存在によって、特に序盤は双方向移動でありながら物語に深みを出すことに成功している。
前半の冒険でどのような行動を取ったかによって後半の展開が変わってくるのだが、ここでもプレイヤーは多くの洗練されたキャラクターと出会うことになり、ストーリー的にも盛り上がる。特に、後に行動を共にすることになる魔法使いパーシーと戦士コーラル、そして彼らの(そして主人公の)妻となる三人の王女との絡みなどは小説的にも読ませる魅力を備えている。
例えば主人公を含めたこの三人が対ジェナン戦の軍議に参加していると、側近や参謀たちが主人公たちを小馬鹿にしたような態度を取ってくる。ここでうまく選択肢を選ぶと、王族の三女である剣士レイラが助け舟を出してくれ、事態が鎮静化し好転していくのだ。その他に、魔法に秀でた次女のリュウラが、鳥たちの力を借りて故郷エクセアの情報をもたらしてくれたり、予言を教えてくれりと、物語を進展させるのに不可欠なピースの役割を果たしている。
惜しい点は、終盤になると観念論的な選択肢やエピソードが頻出し、お定まりの展開になることだろうか。描写力という点では優れたものを持ちながら、ストーリー自体の平凡さ、悪く言えば陳腐さが目立ってしまい、いまいち物語の世界に没頭できないのだ。例えば、ラスボスであり戦士コーラルの兄であるユージスとの戦闘では、主人公は否応なしに圧倒的な不利に追い込まれるのだが、その時に主人公が手にする魔剣・鸞凰飛翔剣(らんおうひしょうけん)を用いて状況を打開するシーンがある。ここで「剣に愛を込める」という選択肢を選ばないとゲームオーバーになるのだが、極悪人(とみなされている敵)が愛の力で改心するという物語構成はやはりありきたりで、王道過ぎるという気がしなくもない。
この傾向は特に最後の戦闘からクライマックスで見られ、優等生的な選択肢とストーリーによって、ラストが大団円に持ち込まれる。エンディングで改心したユージスに、登場人物が「予言は成就した」「一生の宝となる仲間がいる」などという台詞を呟くのも、「ハッピーエンドの物語」であることを殊更に印象づけているように見える。『ドラゴンバスター』や「ドルアーガの塔」なども(結果だけを見れば)ある意味では凡庸な大団円であり、ゲームブックではそうした王道なものが多いが、この二作にはそれを補って余りある「描写の妙」があった。ところが『エクセア』は、あまりにも模範的すぎる文章に終始してしまっているように思われるのだ。
ゲーム的な謎解きは非常に凝ったものが多く、しかも独りよがりなパズルではなくかなり論理的に作られているのは素晴らしいのだが、さすがに難易度が高いものが多い。あまりの難易度の高さゆえに、編集部が最後にヒントを与えているくらいである。例えば、クリアに必須のクイズでは十進法と八進法の区別の知識が必要となり、これは小学生のプレイヤーが解答するのは難しいだろう。
また、プレイヤーは道中で女神アリアドネと遭遇するのだが、彼女は「ラドゥサとラドゥサを足すとアリアドネになる。その時一番小さいサリアはいくつか? ただし、ラドゥサ、アリアドネ、サリアはそれぞれ四桁、五桁、三桁の数字で、同じ文字には同じ数字が一つずつ入る」という、大人でも紙とペン、それに柔軟な発想が必要となる謎解きをしかけてくる(因みに、答えを間違えると原体力点が一点減るというペナルティがある)。
このクイズも正解に辿り着くのは非常に困難である。しかし、こうした難解な謎解きを差し引いて考えても、ゲームとしての完成度は高い。これでクライマックスのストーリーにもっと惹きつける力があれば、歴代のゲームブックの中でも高い評価を獲得できただろう。
このように、『エクセア』は総合的に見て及第点のゲームブックだが、同じく第二回ゲームブック・コンテスト佳作の新井一博・堀蔵人著『第七の魔法使い』はどうだろうか。
プレイヤーは都市国家ヴィアドの最後の王位後継者。あなたの出生直後に暗黒の力を操る魔道女王ダウマヌスがヴィアドに攻め入り、占領される。あなたは魔法使いソージュの力を借りてその場を脱出し、ダウマヌス打倒のために力を蓄えていた。やがてあなたは練達の魔法使い《七賢人》の一人となって、女剣士トーナとともにダウマヌスを倒す旅に出る。
本作は第一部と第二部に構成が分かれ、第一部は言わばイントロ、第二部が本題の魔法使いとしての活躍を描いている。第一部では敵の巣窟ヴィアドに入るまでの冒険譚を描いているのだが、主人公シリスティアは魔法が使えず、主に白兵戦で戦闘を処理する。方式は『ネバーランドのリンゴ』に似て、サイコロを振って七以上が出れば命中(若干の変動あり)という極めてシンプルなものである。一方、美しいトーナとともに敵の本拠地に入る第二部では、サイコロを使った戦闘は一切存在せず、主に選択肢の中に現れるいくつかの候補の中から魔法を使用して闘うことになる。
特に第二部のストーリーは雰囲気が抜群で、最終ボスと主人公との関係や、後に主人公の妃となる美しき女剣士トーナや放浪絵師イッキックらとの絡みなどは秀逸の出来である。例えば、第一部で出会うトーナとは初対面こそぎこちないものの、第二部では心強いパートナーとして共に多くの戦いを経験する。そのうちにトーナと主人公は愛し合うことになるのだが、押しつけがましくない愛情物語が冒険の最中でも見ることができ、自然に感情移入できる物語展開は刮目に値する。
また、それぞれの魔法の効果も高く、読者の想像の上を行く影響力とあわせて、白熱した魔法戦を体験できるだろう。具体的には、エネルギーの源である「陽の魔法」「月の魔法」「炎の魔法」「水の魔法」「循環の魔法」「大地の魔法」「暗黒の魔法」の七種類の魔法体系が設定されており、それぞれ複数の魔法が下位分類されているのだが、その一つ一つが個性的である。例えば「陽の魔法」はその名の通り太陽のエネルギーを使う魔法体系だが、ヴィザジンと呼ばれる「使うと大陸の半分が消失する」強力な魔法もあれば、ラストで重要な役割を果たす蘇生の呪文「アシス」もこれに含まれるなど、天才魔術師が使用するのにふさわしい魔法が用意されている。
こうした魔法体系は、ゲーム作家である堀蔵人の影響が色濃く反映されているように思われる。『第七の魔法使い』は、新井一博がコンテストに応募した『ウォーロック・サーガ』を堀蔵人の力を借りて改作したものであり、堀蔵人は1987年に日本で二番目に発売された国産ファンタジーTRPG「フォーリナー」の世界設定や、RPG設定資料集『魔法王国シムルグント』の執筆を手がけている。
「フォーリナー」では、キャラクターは「水、大洋、大気、太陽、火、火山、大地、月、平衡」という九種類のアライメント(元素)のいずれか一つを持つという設定になっており、『第七の魔法使い』の魔法体系に通じるものがある。堀蔵人はロード・ダンセイニやトールキンのような架空の世界を緻密に創造することを得意とするゲームデザイナーであり、そうした世界設定の妙が『第七の魔法使い』の作品背景を補強したのかもしれない。
個人的には、第一部の戦闘システムはうまく機能しているが、肝心の第二部の魔法戦は成功しているとは思えない。使える魔法の選択肢が制限されているために、精鋭の魔術師という割にはいまいち活躍がぱっとしないのだ。例えば『パンタクル』では、パンタクルが使える箇所では十五種類の魔法全てが選択できて、それも威力の高いものから意外な効果を発揮するものもあり、「魔法」という神秘性と「天才魔法使いメスロン」という役割を思い切り演じることができた。選択肢で魔法を選ぶ形式の「ソーサリー」シリーズも、使える魔法は常に五種類と選択の幅が豊富だった。だが、『第七の魔法使い』では、多くて四つ、普通は三つ程度の選択肢しかなく、とても「魔法を使いこなす」という感覚に浸れないのである。
また、魔法の威力に応じて消費する体力値が異なるのだが、その体力の減りが尋常ではない。となると、戦闘が一回終了するごとに体力回復の呪文(主にシリスとカナルと呼ばれる体力回復魔法)を頻繁に唱えなくてはならず、プレイヤーは手間がかかるだろう(「シリス」は月の魔法で、常に体力値を十五回復する力を持ち、「カナル」は陽の魔法で、サイコロを一個振って一以外が出ると体力値を三十回復することができる。カナルは威力が強い分、常に魔法が成功するとは限らないという欠点を持つ)。もっとも、この仕様によって「どちらかというとひ弱な魔法使い」(思ったよりも魔法を頻繁に使えない)というお約束のプレイを楽しむことができるようになっている。
この「魔法の選択の少なさ」という点は、ジャクソンの『バルサスの要塞』の主要な欠点として安田均が論じているとおりだが(『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』p. 49)、同様のことは『第七の魔法使い』にも言える。更に加えて、クリアするために体力の温存をするメリットを考えると、「そもそも魔法を唱えるか否か」の選択によって、より「魔法の選択肢」が減る。例えば「T&T」のマトリックス表(結果早見表)のようなものを使用するか、項目数を増やして(なんなら第一部を削って)もっと「縦横無尽に使える魔法使い」の自由さと迫力を前面に押し出した方が良かったのではないか。
「七賢人」として覚醒する様子を描くのも大事だし、それもクライマックスを盛り上げるのに十分な役目を果たしているが、『第七の魔法使い』の肝はあくまでも魔人たちとの壮絶な魔術戦のはずだ。いわゆる「売り」を大事にしないで、その結果焦点が定まらない作品になってしまうのは、ゲームブックだけでなく全てのゲームや小説などの娯楽がたやすく嵌まってしまう陥穽である。
ストーリー的には、ダウマヌスの配下である火・水・風・土の邪怪との決戦で手に汗握るスリルを楽しめ、また、常に付き従う女剣士トーナとの結びつきや父親との邂逅など、ドラマ的にも白熱する局面は多い。その一方で、『エクセア』と同じ弱点を抱えており、最後の女魔法使いダウマヌスとの戦いでは教科書的かつありきたりな展開になってしまう。実はラスボスであるダウマヌスはトーナの母親なのだが、トーナは母親とともに死の道を選ぶ。それに対して主人公が蘇生の呪文「アシス」をかけるかどうかという問いは(筋にはあまり影響はないが)模範解答としては「かける」一択だろう。こうした、いわゆるライトノベル的な展開を熱望する読者にとっては胸が熱くなるシーンだが、意地悪な見方をすれば、「優等生的な選択や筋立てが前提とされていて、実質的な選択肢になっていない」という評価もありうるのではないか。
第二回ゲームブック・コンテストにおいて「応募作品は平凡にまとまったものが多い」(「アドベンチャラーズ・イン」13号)と評されたのは、こうした規定路線的なストーリー展開が多いためではないだろうか。こうした「王道の物語」が好みな人には良いが、特にコンテストで入選を果たすには、それなりの新奇性が要求される。型にはまった作品が多いというのは、それだけ今まで作られてきたSAGB作品の質が高かったことの証でもあろうが(特に「ソーサリー」や「ドルアーガの塔」の影響が大きかったのだろう)、コンテストの評でも「立派な出来の「ソーサリー」のコピー作品は要らない」と評者が投げ込みペーパーの「アドベンチャラーズ・イン」スペシャル1998年版で発言しているとおり、もっと突き抜けた個性を見せても良かったのではないか。その象徴的な作品が、『エクセア』と『第七の魔法使い』という気がしないでもない。
ところで、『エクセア』のエンディングを見る限り、どうも続編が作れなさそうだと感じる読者は多いだろう。結果的にSAGBの最後の作品となった同じ作者である宮原弥寿子の『ギャランス・ハート』は、『エクセア』の続編とは言わないまでも、はるか後世の物語という体裁を取っており、世界観は共通しているが、『エクセア』とは直接の繋がりは希薄な作品である。
主人公は女傭兵のアリス・カエン。ある日、僧侶のキーアの護衛というおいしい仕事にありついて有頂天になっていたが、キーアの行く先は、生きて戻ったものがいないという妖魔界だった……。
いつもながら、宮原弥寿子は人を惹きつけるオープニングを作って、問答無用でプレイヤーを物語世界に巻き込む手腕に優れている(これは社会思想社から出た『フォボス内乱』というSFゲームブックにも表れている)。作者が『エクセア』で見せた個性的なキャラクターの描写は『ギャランス・ハート』でも健在である。主人公の女傭兵アリス・カエンの俗的ではあるが魅力的な特性に加え、司祭キーアの堅物さや一緒に旅をすることになる妖魔のヴァレリアに戦士フレディの調子の良さなど、NPCを際立たせる技術は卓越している。こうした様々な背景や特性を持つキャラクターが物語全般に効果的に配置されており、ストーリーを魅惑的にすることに成功していると言えるだろう。
だが、こと『ギャランス・ハート』については、宮原弥寿子が得意とする圧倒的な描写力は影を潜め、ゲーム的な側面が色濃く前面に押し出されていて、逆に言えば物語性は大幅に犠牲にされている。複雑で、最初は知られていなかったキーアが旅立つ事情、純朴なキーアに徐々に感情を許していく主人公など、ストーリー的に優れたものを持ちながらも、文学的な書き込みが希薄なために、どうしても表面的な印象は拭えない。
本作は、戦闘などにおける処理や能力値の増減という点ではむしろ割り切った考え方をしていて、アルファベットの略で能力値を表したり、能力値の変化や戦闘の勝利などにもあまり凝った言い回しを用いていない。例えば戦闘が起こる場面でも余計な描写は一切ない。ただ敵のデータ(TP(技術点)、HP(生命力)、AP(武器)、PP(防具)の四つ)が機械的かつアルファベットと数字だけの簡素な形で提示され、プレイヤーはサイコロを振って戦闘を行うだけなのだ。戦闘システムは『ネバーランドのリンゴ』と極めて近く、敵の分のサイコロを振る必要はない。自分の分のサイコロだけを振って、それに自分の技術点(TP)を加えた値が敵の技術点(TP)以上ならば攻撃は成功するという、プレイヤーの負担にならない方法を採用している。
戦闘ルールに見られるように、『ギャランス・ハート』はテクニカルかつコンピューターゲーム的な能力値の表示(とその処理)に重点を置いており、その影響もあってか相対的にストーリー性と場面描写にはあまり注意を払っておらず、結果として凡庸な作品にとどまっている。宮原弥寿子のストーリーテリングを生かすための「文学性」や何らかの凝った描写が、この作品ではごく一部のパラグラフ(特にキーアが生贄になるアナザー・エンディングの文章は秀逸である)を除くとあまり現れず、せっかくのストーリーの良さを生かしきれていないのである。『エクセア』は物語的に定番の展開を迎えたが、『ギャランス・ハート』もどうしても場面ごとの盛り上がりがなく単調で、突き抜けた個性が出せていない。ゲームブックはゲームであると同時にブックで「読ませる」ものでなければならないということが、この作品では一部欠けているのである。
もちろん、肝心な場面では主人公(アリス・カエン)の気持ちなどが書かれているのだが、それ以外の冒険の途上で、ただ向かってくるだけの敵や無味乾燥な数値を出されてしまうと、それだけで作業をしている気になってしまう。せっかくのSAGB最後の作品だというのに、この出来ではあまりに幕引きとしては悲しい。特にゲーム的には、共に旅する仲間ができたり、キーアに感情値と呼ばれる特殊な属性があったりと、発展的な広がりを予感させる装置が用意されていながら、それが十分に活用されていない。『エクセア』や『フォボス内乱』で見せた卓越した筆さばきは影を潜め、『ギャランス・ハート』はあくまで数式や能力値の増減を機械的に設置し、余計な文章を極力省いた節が見受けられるが、それが優れたゲームブックを作る要件には足りないことは明らかだ。
つまり、『ギャランス・ハート』は、ストーリーの軸(あらすじ)は魅力的だが、ゲーム的なデータを重視したために物語としての書き込み不足が目立っている、という特徴を持っているように見受けられるのである。
既に述べたように、『ギャランス・ハート』以降、SAGBのレーベルとしてのゲームブックは出版されていない。これは、SAGBの質が下がったということにも一因があろうが、むしろゲームブックというジャンル自体の全般的な人気の低下と、読者層(購買層)の縮小などが主な要因だろう。また、いくつかの出版社が低レベルでほとんど作品としての体をなしていないゲームブックを量産したためとか、ちょうど同時期に飛躍的進歩を遂げたコンピューターゲームの進化に押されたという理由も少なからずあるだろう。
前者の、ゲームブックの「粗製濫造」という意見は昔から唱えられているが、額面通りには受け取れない面もある。例えばファミコンのカセットゲームでは「粗製濫造」とも言える駄作も多く登場したが、それ以上に傑作を多く生み出したために廃れることはなかった。ファミコンという媒体はスーパーファミコンの登場と共にその地位を明け渡したが、それはスーパーファミコンがファミコンの性能面での上位互換であったためであって、ファミコンソフトが陳腐だったためではない。それと同様に、仮にゲームブックに「粗製濫造」の側面があったとしても、それを凌駕する傑作が数多く生まれ続けていれば生き残る道はあったようにも思われる。
また、後者については、コンピューターゲームが爆発的に改良されていくにつれて、受動的に(人間が手間暇のかかる作業で数値をいじったり、戦闘の際にサイコロを振る手間などがない)一人で楽しめるゲーム媒体が増えたことが大きい。ゲームブックよりも(ゲーム面での処理という意味で)上位の遊び道具である媒体が、ゲーム専用機も含めて世の中に溢れ出たのは、日本のゲーム界では衝撃の出来事だった。どちらかというと低年齢層向けの双葉文庫から出た「ファミコン冒険ゲームブック」は、ファミコンを持っていなくても安価でファミコンの疑似体験ができるという利点があったが、実際にファミコンが人口に広く膾炙してしまえば、代替品は必要ないと考えるのはごく自然なことだろう。
つまり、読書のようにこちらの「やる気」や「積極性」が必要で、かつ数値的処理も一人で行うソリティア的ゲームブックよりも、ファミコンをはじめとする一人用ゲームの方が、少なくとも大衆には受け入れられたというわけだ(しかし、筆者はコンピューターゲームにない魅力がゲームブックにあると今でも思っている)。そして、『ギャランス・ハート』は、悲観的な見方になるが、SAGBだけでなく、ゲームブックブームの終焉を告げる弔砲の役割を果たしたと言えるのではないだろうか。
※本連載におけるSAGBの「ゲームブック」の解説としては最終回になります。次回は番外編(補筆)として、SAGBのTRPGである「ドラゴン・ウォーリアーズ」を取り上げます。
◆書誌情報
『エクセア』
宮原弥寿子(著)
東京創元社(1989/10/13)絶版
『第七の魔法使い』
新井一博・堀蔵人(著)
東京創元社(1992/6/26)絶版
『ギャランス・ハート』
宮原弥寿子(著)
東京創元社(1992/8/28)絶版
■参考文献
『ダンジョンズ&ドラゴンズ セット1:ベーシックルールセット』
Gary Gygax and David Arneson
株式会社新和(1985/6)
『トンネルズ&トロールズ ファンタジーRPGルールブック』
K・S・アンドレ(著)安田均(監修)
社会思想社(1987/12/30)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(上)
S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
社会思想社(1990/12/30)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(下)
S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
社会思想社(1991/2/28)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー 第2版』
グレアム・ボトリー、マーク・ガスコイン&ピート・タムリン(著)安田均他(訳)
株式会社書苑新社(2018/4/30)
新紀元社(2023/2/4)(改訂版)
『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』
安田均(著)
社会思想社(1990/8/1)絶版
『フォボス内乱』
宮原弥寿子(著)
社会思想社(1991/7/30)絶版
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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12
(田林洋一)
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FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。
全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、12回目の記事をお届けいたします。今回は東京創元社が主催した第二回ゲームブック・コンテスト入選作を中心に紹介します。
本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。「私はそうは思わない」という感想がございましたら、ぜひともお寄せいただければ嬉しく思います。
なお、本連載はSAGBとして東京創元社版のみを検討・分析する記事とさせて頂いておりますので、後に別会社から出版された復刻版・改訂版などについては取り上げていないことを予めお断りいたします。
毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0
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12. ゲームブックの臨界点と斜陽 -第二回創元ゲームブック・コンテスト入選作品群
主な言及作品:『エクセア』(1989)『第七の魔法使い』(1992)
『ギャランス・ハート』(1992)
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日本国内でのゲームブック人気は、東京創元社が第二回ゲームブック・コンテストを開いた1988年から1989年辺りから凋落の一途を辿り始める。第一回のゲームブック・コンテストの応募作品総数は百十九、第二回になるとほぼ半減の六十二、そして第三回のコンテストではなんと三十未満という、もはやコンテストとして成立しない数にまで激減した。
そんな中でも、SAGBはシリーズとしてコンテスト入選作をいくつか発表しており、第二回コンテストから出版に結びついた作品は二つある。まずは佳作に入選した宮原弥寿子著『エクセア』を見よう。
祖国であるエクセアは、ファンデム王国の襲撃により壊滅の危機に陥っていた。その刹那、エクセアは王子であるあなた一人を残して、何もかも消え去ってしまった。祖国エクセアはどこに? そんな折、ファンデムでの王位継承権を巡って、「聖なる森を探索して宝玉を持ち帰ったものに、王女を妻とする資格を与える」とのお触れが出された。ファンデムがエクセアの脅威でなくなれば、エクセアが復活するのではないかと夢見て、あなたはこの冒険に参加することになる。
冒頭で人を惹きつけるプロローグに数々の難解な謎解き、そして巧みな文章力という点で『エクセア』はかなり良くできたゲームブックである。まずはルール面だが、武器や防具によって与えるダメージ(と受けるダメージ)が異なっており、リアルな戦闘が楽しめる。「ドルアーガの塔」やファイティング・ファンタジー・シリーズのように、固定ダメージ(二ポイント)というわけではないのだ。また、画期的なのが重さの概念で、鎖かたびらや両手剣などの強力な防具や武器は、効果が高い一方で重さが半端なく、しかも重さが一定値を越えると技術点が下がるというルールまで盛り込んである。逆に、アイテムをほとんど持っていないと敏捷性が高まるという点を考慮して、技術点が上がる仕組みになっている。リアリティを再現するという点からすると、かなり凝ったシステムと言えるだろう。
考えてみれば、特にSAGBのゲームブックで重さの概念を取り入れたものは数少なかった。僅かに林友彦の「ウルフヘッドの冒険」シリーズで荷物の限界値を決めているが、食料一袋も錠剤一粒も同じ重さと換算され、単にアイテムの個数で制限を定めていた。この方式は、リアリティについては無視することで、プレイヤーに余計な負荷をかけないというゲーム的に優れた利点を持つ。
SAGBのレーベルから出ているTRPGの「ドラゴン・ウォーリアーズ」も、「ウルフヘッドの冒険」と同じく「プレイヤーに余計な負荷をかけない重量計算システム(アイテムは種類に関係なく一つと数える)」を採用している。一方で、同じTRPGでも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「トンネルズ&トロールズ(以下、T&T)」は、『エクセア』と同じく重量点という概念を取り入れて「拾得物の管理」をプレイヤーに行わせている。
確かに、行く先々で見つけることができるアイテムなどを重さや体積に関係なく総取りできるシステムには疑問を感じるプレイヤーもいることだろう。例えばファイティング・ファンタジー・シリーズの一部や「ドルアーガの塔」では、最初に食料が十袋も与えられるが、これだけ重いものを持っていたら敏捷性に支障をきたすのではと考えるのはごく自然なことだ。
コンピューターゲームのRPGも含めて、どちらかというとアイテムの重さやかさばり方という点は等閑視されることが多かった。重量制限を設けてしまうと、ゲームとしては煩雑すぎるし、クリアに必須のアイテムまで捨てなければならない事態が生じるからである(例外は「ドラゴンクエスト」などだろう)。この点を踏まえつつも、『エクセア』などでは、プレイヤーに負担をかけないように数値で重さを管理することでリアリティを出すことに成功している。
習得したアイテムや武器について、従来のゲームブックやコンピューターゲーム「ファイナルファンタジー」などに代表される「重量も個数も問わない」方式は抽象的でありながらもゲームとしてのシンプルさを追求している。一方で、『エクセア』や「T&T」は「個数も含めて重量を計算する」という現実の物理法則をルールに落とし込んでいる点で対照的である。その中道を行くのが、「ドラゴンクエスト」や「ドラゴン・ウォーリアーズ」などの「個数は問うが重量は無関係」システムだろう。
また、『エクセア』ではスタート時に原体力点、技術点、魔術点を自由に振り分けられるルールを採用しているが、先の重さの管理と合わせて、自由にプレイヤーキャラクターを創造できるというのも強みだろう。軽戦士を目指すのならば技術点に数値を多く振り分け、軽い革の鎧とナイフで戦うという戦法が取れるし、体力が自慢の重戦士を目指すのならば、原体力点などに重点を置いて、重い武器を装備するという戦略が立てられる(技術点は低くなってしまうが)。
因みに、林友彦の「ウルフヘッド」シリーズも武器と防具に重量が設定されていたが、こちらは「装備重量の合計がパワー値を上回ると、攻撃の命中率や回避にペナルティを受ける」という能力値の不利なマイナス面にのみルールが適用されていて、「荷物が軽い時は動作が機敏になる」という点はルールに反映されていなかった。
今までの(SAGBだけではない)ゲームブックはこの辺りがあまり自由が効かず、サイコロの目によって勝手に「どのタイプの戦士か」が決定されてしまうことが多い。例えば、「ドルアーガの塔」において防御重視タイプのギルガメスを作りたいと思っても、最初のサイコロの目で防御ポイントの数値が壊滅的に悪ければ、否応なしに攻撃型の主人公を作らねばならない(戦力ポイントの数値も悪かったら目も当てられないが)。例外は「ワルキューレの冒険」だが、場面や状況によっては魔法が使用できないことがあり、結果的に「魔法使いタイプの主人公」というイメージで冒険するにはそぐわないように思われる。
それでも「ワルキューレの冒険」の魔法にも利点があり、最初に決める能力値や戦闘やサイコロの目が悪くても確実にダメージを与えられる「火の玉の術」や、減っていた体力ポイントを回復する「薬の術」は、ある意味で低能力値に対する救済措置的な側面を持っていた。「魔法で低い能力値を補う」という戦略は、ファイティング・ファンタジー・シリーズや初期のSAGBの戦闘では不可能とは言わないまでも困難であり、この魔法は戦略の幅を広げる「戦闘オプション」という性質を持つ。後述するが、『エクセア』も(限定的ではあるが)白兵戦に自信がなければ魔法戦を選択することができるという「救済措置」が用意されているように思われる。
最初の能力値を決定する際のサイコロの目によって、難易度が劇的に変化するのは賛否両論があるだろう。「サイコロによるランダムな不公平」はない作品で言えば、例えば『眠れる竜ラヴァンス』は、最初の技量ポイントが十点と固定されていて、出立時の「運」は関係なく、作り手側も難易度も調整しやすい。また、「ワルキューレの冒険」では各巻のプロローグで能力値が改めて調整され、作成時の出目が低かった場合の救済策と難易度を揃える役目を果たしていた。
TRPGでも初期にはキャラクターメイキングでランダム性を導入することが多かったが、時代が下るにつれて「自分のイメージしたキャラクターで遊びたい」という志向を持つプレイヤーの要請に応えるように「ポイント振り分け制」を導入するようになっていく。例えば「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(AFF)」も1989年の第1版では能力値はサイコロによるランダム決定に委ねられていたが、2011年の第2版(AFF2e)ではポイント振り分け制に移行している。
『エクセア』は武器や初期設定だけでなく、魔法の使用や戦闘の立ち回り方といった点でも比較的自由度が高く、だいたいにおいて魔法戦か剣を交えての白兵戦かが選択できるようになっている(これは特に序盤の「聖なる森」の探索で顕著である)。惜しむらくは、一回魔法戦を選択すると、後は敵を倒すまで魔法を使い続けなければならない(つまり、白兵戦に移行できない)場面が多いことだろう。また、終盤では魔法を使う機会が激減するのも残念なところである。
この作品は大雑把に言って序盤と終盤に分かれている。まずは双方向移動の「聖なる森」での探索、次にファンデムの王族となり、密かに侵攻準備を進めてきた西の大国ジェナンとの戦闘に挑んでからは単方向移動にシフトする。前半の「聖なる森」で出会う数々の挑戦者(NPC)は非常に魅力的で、個々の背景までもきちんと描写されているのは好感が持てる。
例えば主人公のライバルたる傭兵ダーナ・ストゥティは、妹の結婚資金の調達のために「聖なる森」の戦闘コンテストに参加しているのだが、主人公は彼に資金援助を申し出るという選択をすることもできるし、問答無用とばかりに戦って殺してしまうこともできる。すると、後半の冒険でダーナの妹と遭遇した時の物語が(当然という気はするが)劇的に変わるのだ。あとがきで作者の宮原弥寿子が述べているように「倒す敵にも、親があって、恋人があって、赤い血が流れているような」NPCが満載である。こうした特徴的なNPCの存在によって、特に序盤は双方向移動でありながら物語に深みを出すことに成功している。
前半の冒険でどのような行動を取ったかによって後半の展開が変わってくるのだが、ここでもプレイヤーは多くの洗練されたキャラクターと出会うことになり、ストーリー的にも盛り上がる。特に、後に行動を共にすることになる魔法使いパーシーと戦士コーラル、そして彼らの(そして主人公の)妻となる三人の王女との絡みなどは小説的にも読ませる魅力を備えている。
例えば主人公を含めたこの三人が対ジェナン戦の軍議に参加していると、側近や参謀たちが主人公たちを小馬鹿にしたような態度を取ってくる。ここでうまく選択肢を選ぶと、王族の三女である剣士レイラが助け舟を出してくれ、事態が鎮静化し好転していくのだ。その他に、魔法に秀でた次女のリュウラが、鳥たちの力を借りて故郷エクセアの情報をもたらしてくれたり、予言を教えてくれりと、物語を進展させるのに不可欠なピースの役割を果たしている。
惜しい点は、終盤になると観念論的な選択肢やエピソードが頻出し、お定まりの展開になることだろうか。描写力という点では優れたものを持ちながら、ストーリー自体の平凡さ、悪く言えば陳腐さが目立ってしまい、いまいち物語の世界に没頭できないのだ。例えば、ラスボスであり戦士コーラルの兄であるユージスとの戦闘では、主人公は否応なしに圧倒的な不利に追い込まれるのだが、その時に主人公が手にする魔剣・鸞凰飛翔剣(らんおうひしょうけん)を用いて状況を打開するシーンがある。ここで「剣に愛を込める」という選択肢を選ばないとゲームオーバーになるのだが、極悪人(とみなされている敵)が愛の力で改心するという物語構成はやはりありきたりで、王道過ぎるという気がしなくもない。
この傾向は特に最後の戦闘からクライマックスで見られ、優等生的な選択肢とストーリーによって、ラストが大団円に持ち込まれる。エンディングで改心したユージスに、登場人物が「予言は成就した」「一生の宝となる仲間がいる」などという台詞を呟くのも、「ハッピーエンドの物語」であることを殊更に印象づけているように見える。『ドラゴンバスター』や「ドルアーガの塔」なども(結果だけを見れば)ある意味では凡庸な大団円であり、ゲームブックではそうした王道なものが多いが、この二作にはそれを補って余りある「描写の妙」があった。ところが『エクセア』は、あまりにも模範的すぎる文章に終始してしまっているように思われるのだ。
ゲーム的な謎解きは非常に凝ったものが多く、しかも独りよがりなパズルではなくかなり論理的に作られているのは素晴らしいのだが、さすがに難易度が高いものが多い。あまりの難易度の高さゆえに、編集部が最後にヒントを与えているくらいである。例えば、クリアに必須のクイズでは十進法と八進法の区別の知識が必要となり、これは小学生のプレイヤーが解答するのは難しいだろう。
また、プレイヤーは道中で女神アリアドネと遭遇するのだが、彼女は「ラドゥサとラドゥサを足すとアリアドネになる。その時一番小さいサリアはいくつか? ただし、ラドゥサ、アリアドネ、サリアはそれぞれ四桁、五桁、三桁の数字で、同じ文字には同じ数字が一つずつ入る」という、大人でも紙とペン、それに柔軟な発想が必要となる謎解きをしかけてくる(因みに、答えを間違えると原体力点が一点減るというペナルティがある)。
このクイズも正解に辿り着くのは非常に困難である。しかし、こうした難解な謎解きを差し引いて考えても、ゲームとしての完成度は高い。これでクライマックスのストーリーにもっと惹きつける力があれば、歴代のゲームブックの中でも高い評価を獲得できただろう。
このように、『エクセア』は総合的に見て及第点のゲームブックだが、同じく第二回ゲームブック・コンテスト佳作の新井一博・堀蔵人著『第七の魔法使い』はどうだろうか。
プレイヤーは都市国家ヴィアドの最後の王位後継者。あなたの出生直後に暗黒の力を操る魔道女王ダウマヌスがヴィアドに攻め入り、占領される。あなたは魔法使いソージュの力を借りてその場を脱出し、ダウマヌス打倒のために力を蓄えていた。やがてあなたは練達の魔法使い《七賢人》の一人となって、女剣士トーナとともにダウマヌスを倒す旅に出る。
本作は第一部と第二部に構成が分かれ、第一部は言わばイントロ、第二部が本題の魔法使いとしての活躍を描いている。第一部では敵の巣窟ヴィアドに入るまでの冒険譚を描いているのだが、主人公シリスティアは魔法が使えず、主に白兵戦で戦闘を処理する。方式は『ネバーランドのリンゴ』に似て、サイコロを振って七以上が出れば命中(若干の変動あり)という極めてシンプルなものである。一方、美しいトーナとともに敵の本拠地に入る第二部では、サイコロを使った戦闘は一切存在せず、主に選択肢の中に現れるいくつかの候補の中から魔法を使用して闘うことになる。
特に第二部のストーリーは雰囲気が抜群で、最終ボスと主人公との関係や、後に主人公の妃となる美しき女剣士トーナや放浪絵師イッキックらとの絡みなどは秀逸の出来である。例えば、第一部で出会うトーナとは初対面こそぎこちないものの、第二部では心強いパートナーとして共に多くの戦いを経験する。そのうちにトーナと主人公は愛し合うことになるのだが、押しつけがましくない愛情物語が冒険の最中でも見ることができ、自然に感情移入できる物語展開は刮目に値する。
また、それぞれの魔法の効果も高く、読者の想像の上を行く影響力とあわせて、白熱した魔法戦を体験できるだろう。具体的には、エネルギーの源である「陽の魔法」「月の魔法」「炎の魔法」「水の魔法」「循環の魔法」「大地の魔法」「暗黒の魔法」の七種類の魔法体系が設定されており、それぞれ複数の魔法が下位分類されているのだが、その一つ一つが個性的である。例えば「陽の魔法」はその名の通り太陽のエネルギーを使う魔法体系だが、ヴィザジンと呼ばれる「使うと大陸の半分が消失する」強力な魔法もあれば、ラストで重要な役割を果たす蘇生の呪文「アシス」もこれに含まれるなど、天才魔術師が使用するのにふさわしい魔法が用意されている。
こうした魔法体系は、ゲーム作家である堀蔵人の影響が色濃く反映されているように思われる。『第七の魔法使い』は、新井一博がコンテストに応募した『ウォーロック・サーガ』を堀蔵人の力を借りて改作したものであり、堀蔵人は1987年に日本で二番目に発売された国産ファンタジーTRPG「フォーリナー」の世界設定や、RPG設定資料集『魔法王国シムルグント』の執筆を手がけている。
「フォーリナー」では、キャラクターは「水、大洋、大気、太陽、火、火山、大地、月、平衡」という九種類のアライメント(元素)のいずれか一つを持つという設定になっており、『第七の魔法使い』の魔法体系に通じるものがある。堀蔵人はロード・ダンセイニやトールキンのような架空の世界を緻密に創造することを得意とするゲームデザイナーであり、そうした世界設定の妙が『第七の魔法使い』の作品背景を補強したのかもしれない。
個人的には、第一部の戦闘システムはうまく機能しているが、肝心の第二部の魔法戦は成功しているとは思えない。使える魔法の選択肢が制限されているために、精鋭の魔術師という割にはいまいち活躍がぱっとしないのだ。例えば『パンタクル』では、パンタクルが使える箇所では十五種類の魔法全てが選択できて、それも威力の高いものから意外な効果を発揮するものもあり、「魔法」という神秘性と「天才魔法使いメスロン」という役割を思い切り演じることができた。選択肢で魔法を選ぶ形式の「ソーサリー」シリーズも、使える魔法は常に五種類と選択の幅が豊富だった。だが、『第七の魔法使い』では、多くて四つ、普通は三つ程度の選択肢しかなく、とても「魔法を使いこなす」という感覚に浸れないのである。
また、魔法の威力に応じて消費する体力値が異なるのだが、その体力の減りが尋常ではない。となると、戦闘が一回終了するごとに体力回復の呪文(主にシリスとカナルと呼ばれる体力回復魔法)を頻繁に唱えなくてはならず、プレイヤーは手間がかかるだろう(「シリス」は月の魔法で、常に体力値を十五回復する力を持ち、「カナル」は陽の魔法で、サイコロを一個振って一以外が出ると体力値を三十回復することができる。カナルは威力が強い分、常に魔法が成功するとは限らないという欠点を持つ)。もっとも、この仕様によって「どちらかというとひ弱な魔法使い」(思ったよりも魔法を頻繁に使えない)というお約束のプレイを楽しむことができるようになっている。
この「魔法の選択の少なさ」という点は、ジャクソンの『バルサスの要塞』の主要な欠点として安田均が論じているとおりだが(『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』p. 49)、同様のことは『第七の魔法使い』にも言える。更に加えて、クリアするために体力の温存をするメリットを考えると、「そもそも魔法を唱えるか否か」の選択によって、より「魔法の選択肢」が減る。例えば「T&T」のマトリックス表(結果早見表)のようなものを使用するか、項目数を増やして(なんなら第一部を削って)もっと「縦横無尽に使える魔法使い」の自由さと迫力を前面に押し出した方が良かったのではないか。
「七賢人」として覚醒する様子を描くのも大事だし、それもクライマックスを盛り上げるのに十分な役目を果たしているが、『第七の魔法使い』の肝はあくまでも魔人たちとの壮絶な魔術戦のはずだ。いわゆる「売り」を大事にしないで、その結果焦点が定まらない作品になってしまうのは、ゲームブックだけでなく全てのゲームや小説などの娯楽がたやすく嵌まってしまう陥穽である。
ストーリー的には、ダウマヌスの配下である火・水・風・土の邪怪との決戦で手に汗握るスリルを楽しめ、また、常に付き従う女剣士トーナとの結びつきや父親との邂逅など、ドラマ的にも白熱する局面は多い。その一方で、『エクセア』と同じ弱点を抱えており、最後の女魔法使いダウマヌスとの戦いでは教科書的かつありきたりな展開になってしまう。実はラスボスであるダウマヌスはトーナの母親なのだが、トーナは母親とともに死の道を選ぶ。それに対して主人公が蘇生の呪文「アシス」をかけるかどうかという問いは(筋にはあまり影響はないが)模範解答としては「かける」一択だろう。こうした、いわゆるライトノベル的な展開を熱望する読者にとっては胸が熱くなるシーンだが、意地悪な見方をすれば、「優等生的な選択や筋立てが前提とされていて、実質的な選択肢になっていない」という評価もありうるのではないか。
第二回ゲームブック・コンテストにおいて「応募作品は平凡にまとまったものが多い」(「アドベンチャラーズ・イン」13号)と評されたのは、こうした規定路線的なストーリー展開が多いためではないだろうか。こうした「王道の物語」が好みな人には良いが、特にコンテストで入選を果たすには、それなりの新奇性が要求される。型にはまった作品が多いというのは、それだけ今まで作られてきたSAGB作品の質が高かったことの証でもあろうが(特に「ソーサリー」や「ドルアーガの塔」の影響が大きかったのだろう)、コンテストの評でも「立派な出来の「ソーサリー」のコピー作品は要らない」と評者が投げ込みペーパーの「アドベンチャラーズ・イン」スペシャル1998年版で発言しているとおり、もっと突き抜けた個性を見せても良かったのではないか。その象徴的な作品が、『エクセア』と『第七の魔法使い』という気がしないでもない。
ところで、『エクセア』のエンディングを見る限り、どうも続編が作れなさそうだと感じる読者は多いだろう。結果的にSAGBの最後の作品となった同じ作者である宮原弥寿子の『ギャランス・ハート』は、『エクセア』の続編とは言わないまでも、はるか後世の物語という体裁を取っており、世界観は共通しているが、『エクセア』とは直接の繋がりは希薄な作品である。
主人公は女傭兵のアリス・カエン。ある日、僧侶のキーアの護衛というおいしい仕事にありついて有頂天になっていたが、キーアの行く先は、生きて戻ったものがいないという妖魔界だった……。
いつもながら、宮原弥寿子は人を惹きつけるオープニングを作って、問答無用でプレイヤーを物語世界に巻き込む手腕に優れている(これは社会思想社から出た『フォボス内乱』というSFゲームブックにも表れている)。作者が『エクセア』で見せた個性的なキャラクターの描写は『ギャランス・ハート』でも健在である。主人公の女傭兵アリス・カエンの俗的ではあるが魅力的な特性に加え、司祭キーアの堅物さや一緒に旅をすることになる妖魔のヴァレリアに戦士フレディの調子の良さなど、NPCを際立たせる技術は卓越している。こうした様々な背景や特性を持つキャラクターが物語全般に効果的に配置されており、ストーリーを魅惑的にすることに成功していると言えるだろう。
だが、こと『ギャランス・ハート』については、宮原弥寿子が得意とする圧倒的な描写力は影を潜め、ゲーム的な側面が色濃く前面に押し出されていて、逆に言えば物語性は大幅に犠牲にされている。複雑で、最初は知られていなかったキーアが旅立つ事情、純朴なキーアに徐々に感情を許していく主人公など、ストーリー的に優れたものを持ちながらも、文学的な書き込みが希薄なために、どうしても表面的な印象は拭えない。
本作は、戦闘などにおける処理や能力値の増減という点ではむしろ割り切った考え方をしていて、アルファベットの略で能力値を表したり、能力値の変化や戦闘の勝利などにもあまり凝った言い回しを用いていない。例えば戦闘が起こる場面でも余計な描写は一切ない。ただ敵のデータ(TP(技術点)、HP(生命力)、AP(武器)、PP(防具)の四つ)が機械的かつアルファベットと数字だけの簡素な形で提示され、プレイヤーはサイコロを振って戦闘を行うだけなのだ。戦闘システムは『ネバーランドのリンゴ』と極めて近く、敵の分のサイコロを振る必要はない。自分の分のサイコロだけを振って、それに自分の技術点(TP)を加えた値が敵の技術点(TP)以上ならば攻撃は成功するという、プレイヤーの負担にならない方法を採用している。
戦闘ルールに見られるように、『ギャランス・ハート』はテクニカルかつコンピューターゲーム的な能力値の表示(とその処理)に重点を置いており、その影響もあってか相対的にストーリー性と場面描写にはあまり注意を払っておらず、結果として凡庸な作品にとどまっている。宮原弥寿子のストーリーテリングを生かすための「文学性」や何らかの凝った描写が、この作品ではごく一部のパラグラフ(特にキーアが生贄になるアナザー・エンディングの文章は秀逸である)を除くとあまり現れず、せっかくのストーリーの良さを生かしきれていないのである。『エクセア』は物語的に定番の展開を迎えたが、『ギャランス・ハート』もどうしても場面ごとの盛り上がりがなく単調で、突き抜けた個性が出せていない。ゲームブックはゲームであると同時にブックで「読ませる」ものでなければならないということが、この作品では一部欠けているのである。
もちろん、肝心な場面では主人公(アリス・カエン)の気持ちなどが書かれているのだが、それ以外の冒険の途上で、ただ向かってくるだけの敵や無味乾燥な数値を出されてしまうと、それだけで作業をしている気になってしまう。せっかくのSAGB最後の作品だというのに、この出来ではあまりに幕引きとしては悲しい。特にゲーム的には、共に旅する仲間ができたり、キーアに感情値と呼ばれる特殊な属性があったりと、発展的な広がりを予感させる装置が用意されていながら、それが十分に活用されていない。『エクセア』や『フォボス内乱』で見せた卓越した筆さばきは影を潜め、『ギャランス・ハート』はあくまで数式や能力値の増減を機械的に設置し、余計な文章を極力省いた節が見受けられるが、それが優れたゲームブックを作る要件には足りないことは明らかだ。
つまり、『ギャランス・ハート』は、ストーリーの軸(あらすじ)は魅力的だが、ゲーム的なデータを重視したために物語としての書き込み不足が目立っている、という特徴を持っているように見受けられるのである。
既に述べたように、『ギャランス・ハート』以降、SAGBのレーベルとしてのゲームブックは出版されていない。これは、SAGBの質が下がったということにも一因があろうが、むしろゲームブックというジャンル自体の全般的な人気の低下と、読者層(購買層)の縮小などが主な要因だろう。また、いくつかの出版社が低レベルでほとんど作品としての体をなしていないゲームブックを量産したためとか、ちょうど同時期に飛躍的進歩を遂げたコンピューターゲームの進化に押されたという理由も少なからずあるだろう。
前者の、ゲームブックの「粗製濫造」という意見は昔から唱えられているが、額面通りには受け取れない面もある。例えばファミコンのカセットゲームでは「粗製濫造」とも言える駄作も多く登場したが、それ以上に傑作を多く生み出したために廃れることはなかった。ファミコンという媒体はスーパーファミコンの登場と共にその地位を明け渡したが、それはスーパーファミコンがファミコンの性能面での上位互換であったためであって、ファミコンソフトが陳腐だったためではない。それと同様に、仮にゲームブックに「粗製濫造」の側面があったとしても、それを凌駕する傑作が数多く生まれ続けていれば生き残る道はあったようにも思われる。
また、後者については、コンピューターゲームが爆発的に改良されていくにつれて、受動的に(人間が手間暇のかかる作業で数値をいじったり、戦闘の際にサイコロを振る手間などがない)一人で楽しめるゲーム媒体が増えたことが大きい。ゲームブックよりも(ゲーム面での処理という意味で)上位の遊び道具である媒体が、ゲーム専用機も含めて世の中に溢れ出たのは、日本のゲーム界では衝撃の出来事だった。どちらかというと低年齢層向けの双葉文庫から出た「ファミコン冒険ゲームブック」は、ファミコンを持っていなくても安価でファミコンの疑似体験ができるという利点があったが、実際にファミコンが人口に広く膾炙してしまえば、代替品は必要ないと考えるのはごく自然なことだろう。
つまり、読書のようにこちらの「やる気」や「積極性」が必要で、かつ数値的処理も一人で行うソリティア的ゲームブックよりも、ファミコンをはじめとする一人用ゲームの方が、少なくとも大衆には受け入れられたというわけだ(しかし、筆者はコンピューターゲームにない魅力がゲームブックにあると今でも思っている)。そして、『ギャランス・ハート』は、悲観的な見方になるが、SAGBだけでなく、ゲームブックブームの終焉を告げる弔砲の役割を果たしたと言えるのではないだろうか。
※本連載におけるSAGBの「ゲームブック」の解説としては最終回になります。次回は番外編(補筆)として、SAGBのTRPGである「ドラゴン・ウォーリアーズ」を取り上げます。
◆書誌情報
『エクセア』
宮原弥寿子(著)
東京創元社(1989/10/13)絶版
『第七の魔法使い』
新井一博・堀蔵人(著)
東京創元社(1992/6/26)絶版
『ギャランス・ハート』
宮原弥寿子(著)
東京創元社(1992/8/28)絶版
■参考文献
『ダンジョンズ&ドラゴンズ セット1:ベーシックルールセット』
Gary Gygax and David Arneson
株式会社新和(1985/6)
『トンネルズ&トロールズ ファンタジーRPGルールブック』
K・S・アンドレ(著)安田均(監修)
社会思想社(1987/12/30)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(上)
S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
社会思想社(1990/12/30)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(下)
S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
社会思想社(1991/2/28)絶版
『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー 第2版』
グレアム・ボトリー、マーク・ガスコイン&ピート・タムリン(著)安田均他(訳)
株式会社書苑新社(2018/4/30)
新紀元社(2023/2/4)(改訂版)
『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』
安田均(著)
社会思想社(1990/8/1)絶版
『フォボス内乱』
宮原弥寿子(著)
社会思想社(1991/7/30)絶版
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2025年10月20日月曜日
もうひとつの「運」の話。 FT新聞 No.4653
おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です☆
入稿準備に追われています!
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」のサプリメント、モンスターで遊ぶ「ヒーローズオブダークネス」の入稿に、取り組んでおります☆
さて、今日は前回に引き続きまして、今日は運についてもうひとつ、ご紹介したいお話があります。
それは、「運」と「ゲームの面白さ」についてです。
私がかつて大いにハマった電源系デッキ構築ゲーム「ハースストーン」のお話をします。
◆ランダムなカードがコスト安「ハースストーン」。
今回ご紹介するのは、私が昔ハマっていた、大好きなデッキ構築系のカードゲームです。
それは、「ハースストーン」という、海外産の電源系ゲーム。
このゲームではある時期から、「ランダムな3枚のカードから、好きなカードを1枚選ぶ」というカードが登場するようになりました。
この系列のカード、出た当初は「運ゲー(運で決まってしまうゲーム)」の集大成だと言われ、使わない人も一定数いました。
しかし、ゲーム環境が続くにつれて、そうではないことが明らかになっていきました。
◆どこがメリットか?
このシステムは本当によくできたものだと明らかになったのは、ランダムカードを使う有名配信者たちによってでした。
まず、彼らは「ランダムカード」を使う前から、その候補になるカードの種類をすべて把握していました。
たとえば「ゴブリンカード3枚がランダムに出現する。そのうちの1枚を手札に加える」というカードを使ったなら、「ゴブリンカードは全部で11種類。そのうちここで役に立つ『当たり』カードは『ゴブリンの突撃兵』と『ゴブリンの斥候』の2種類! さらに、残るカードのうち4種類は次のラウンドに役立ちます。だから、引いたほうがいい」などと解説しながら、ゲームを進行したのです。
それまで、プレイヤーたち、特に日本のプレイヤーたちは「戦略」を至上とし、「運」を「ゲームをつまらなくするもの」としか受け取っていないきらい(傾向)がありました。その価値間に基づいて、「ランダムカード」に拒絶感を示したわけです。
しかし、配信者たちは「ランダムカード」を駆使して戦うことの素晴らしさを、具体的に示してみせてくれたのです。
「ここでAというカードが出た場合にはそのカードを使って、次にこうします。ただし、Bというカードが出た場合にはそちらを取って、こうします」
単なる「当たりと外れ」ではなくて、カードの種類ごとに細かく枝分かれした戦略を立てる。その上で、「ランダムカード」を使うかどうかを決める。そこにあったのは、「運ゲー」とは正反対の姿勢と成果でした。
◆「選択肢」への習熟。
この戦い方を観ながら私は、「これ、自分のゲーム制作に応用できるな」と感じました。
ランダムなできごとが発生して、それに対してストーリーの展開が大いに変化するゲーム。
「運と実力のハイブリッド」です。
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」には〈できごと〉というランダムな表があります。
これは、ある別のゲームから着想を得たものですが、アイディアを素晴らしいと判断できた材料のひとつが、この「ハースストーン」の「ランダムカード」でした。
ランダムはゲームをつまらなくする、という考え方は確かにあります。
しかし、私はランダムを「ゲームをより面白くする」使い方がキチンと存在すると、主張したいと感じました。
大仰な言い方になりますが、日本にはまだまだランダムの魅力が浸透していないと思います。
私は、ランダムによって複雑に枝分かれするゲームシステムと、そのシステムが織りなす物語性を「ローグライクハーフ」で表現したい。
あるいは、ゲームブックにこのシステムを還元することで、その進化した形態をお見せすることもできるのではないか、などと考えてもいます。
今回はこれにて。
それではまた!!
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入稿準備に追われています!
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」のサプリメント、モンスターで遊ぶ「ヒーローズオブダークネス」の入稿に、取り組んでおります☆
さて、今日は前回に引き続きまして、今日は運についてもうひとつ、ご紹介したいお話があります。
それは、「運」と「ゲームの面白さ」についてです。
私がかつて大いにハマった電源系デッキ構築ゲーム「ハースストーン」のお話をします。
◆ランダムなカードがコスト安「ハースストーン」。
今回ご紹介するのは、私が昔ハマっていた、大好きなデッキ構築系のカードゲームです。
それは、「ハースストーン」という、海外産の電源系ゲーム。
このゲームではある時期から、「ランダムな3枚のカードから、好きなカードを1枚選ぶ」というカードが登場するようになりました。
この系列のカード、出た当初は「運ゲー(運で決まってしまうゲーム)」の集大成だと言われ、使わない人も一定数いました。
しかし、ゲーム環境が続くにつれて、そうではないことが明らかになっていきました。
◆どこがメリットか?
このシステムは本当によくできたものだと明らかになったのは、ランダムカードを使う有名配信者たちによってでした。
まず、彼らは「ランダムカード」を使う前から、その候補になるカードの種類をすべて把握していました。
たとえば「ゴブリンカード3枚がランダムに出現する。そのうちの1枚を手札に加える」というカードを使ったなら、「ゴブリンカードは全部で11種類。そのうちここで役に立つ『当たり』カードは『ゴブリンの突撃兵』と『ゴブリンの斥候』の2種類! さらに、残るカードのうち4種類は次のラウンドに役立ちます。だから、引いたほうがいい」などと解説しながら、ゲームを進行したのです。
それまで、プレイヤーたち、特に日本のプレイヤーたちは「戦略」を至上とし、「運」を「ゲームをつまらなくするもの」としか受け取っていないきらい(傾向)がありました。その価値間に基づいて、「ランダムカード」に拒絶感を示したわけです。
しかし、配信者たちは「ランダムカード」を駆使して戦うことの素晴らしさを、具体的に示してみせてくれたのです。
「ここでAというカードが出た場合にはそのカードを使って、次にこうします。ただし、Bというカードが出た場合にはそちらを取って、こうします」
単なる「当たりと外れ」ではなくて、カードの種類ごとに細かく枝分かれした戦略を立てる。その上で、「ランダムカード」を使うかどうかを決める。そこにあったのは、「運ゲー」とは正反対の姿勢と成果でした。
◆「選択肢」への習熟。
この戦い方を観ながら私は、「これ、自分のゲーム制作に応用できるな」と感じました。
ランダムなできごとが発生して、それに対してストーリーの展開が大いに変化するゲーム。
「運と実力のハイブリッド」です。
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」には〈できごと〉というランダムな表があります。
これは、ある別のゲームから着想を得たものですが、アイディアを素晴らしいと判断できた材料のひとつが、この「ハースストーン」の「ランダムカード」でした。
ランダムはゲームをつまらなくする、という考え方は確かにあります。
しかし、私はランダムを「ゲームをより面白くする」使い方がキチンと存在すると、主張したいと感じました。
大仰な言い方になりますが、日本にはまだまだランダムの魅力が浸透していないと思います。
私は、ランダムによって複雑に枝分かれするゲームシステムと、そのシステムが織りなす物語性を「ローグライクハーフ」で表現したい。
あるいは、ゲームブックにこのシステムを還元することで、その進化した形態をお見せすることもできるのではないか、などと考えてもいます。
今回はこれにて。
それではまた!!
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2025年10月19日日曜日
Re:『城塞都市ドラッツェン』アランツァワールドガイド&都市サプリメント&新職業 FT新聞 No.4652
おはようございます、編集長の水波流です。
今日はこれまで再配信の機会のなかったローグライクハーフの各種データから、
『城塞都市ドラッツェン』を再配信いたします。
初出はなんと2023年12月。もう2年近く前になるのですねー。
・アランツァワールドガイド Vol.9(2023/12/19、12/26)
・都市サプリメント(2023/12/29)
・新職業【錬金術師】(2024/1/2)
大陸中央部にある軍事色の濃い街ドラッツェン。
龍を意味する古い言葉に端を発するこの国は、山岳部に位置する多種族国家です。
「アランツァワールドガイド」Vol.9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
ラクダ人であるカメル教授が城塞都市ドラッツェンにたどり着いたのは、春先のことだった。
カメル・グラント教授はいま、大陸を旅してまわっている。
高地にあるこの街は寒く、朝夕には濃い霧が出る。
三方を河に囲まれたこの都市は堅牢だが、たどってきた道のりは決して平坦なものではなかった。
龍人たちが創設した街を人間が奪ったという、血塗られたはじまり。
巨大クリーチャーとの戦い。
ゴーレムナイトの導入。
錬金術師の台頭。
ウォー・ドレイク戦役。
この街を彩る要素の多くには、戦が絡んでいる。
◆検問と戦争。
カメルは旅の仲間であるアレス・マイモローとともに、この街へと入る。
衛兵たちはいぶかしむような表情を投げつけた。
神聖都市ロング・ナリクからの越境である。
ふたつの都市の間では数十年もの間、戦争が続いている。
スパイの入国を、疑ったのだ。
アレスは懐から書状を出して、ハラリと見せる。
彼の妻である賢者ティーボグが書き記した、通行許可証である。
衛兵たちは書状とアレスたちを交互に見ると、結局、街への入境を許可してくれた。
「要するに、そういうことなんだよ」
衛兵たちから十分に離れてから、アレスが言う。
「戦争は長く続きすぎた。今でも兵士たちどうしの戦いはあるが、民間の交易は行われている。研究者だって、こうして通れるってわけさ」
慎重なカメルは首を振って、彼の意見を否定する。
「運がよかっただけ、かもしれない。あるいは、偉大なる七賢者の書いた書状を持たない者は、そんな風に通れるとは限らないだろう」
「そうだな。だが、少なくとも今日は通れたな。とりあえずは、そのことを喜ぼう」
カメルはうなずいて、街に視線を向ける。
◆高地の街。
河に囲まれた小高い丘。
城壁で囲まれた街に向けて、いくつかの石橋がかかっている。
それぞれの橋には城門があって、有事のさいには閉じられる。
堅牢な街である。
城門の高さは5メートルほどあって、「人間以外」の市民がいることを窺わせる。
空には小さなドレイクが飛んでいて、その姿や鳴き声が、薄くかかった霧の向こうからときおり聞こえる。
◆龍人たちと銅龍セドラク。
街の中央にある広場にたどり着く。
噴水の真ん中には、精悍な戦士が龍を足の下に敷いて、旗を掲げた銅像が建っている。
人間が龍人を征服したことを示す、モニュメントである。
ドラッツェンという名前が示すとおり、この街はもともと龍人たちのものだった。
龍人は強力な種族だったが、繁殖力において人間に劣っていた。
長い戦を続けた末に、龍人は街を捨てて南へと消え、ドラッツェンは人間の都市となった。
かつて龍人は、セドラクという名前の龍とともに、この街に住んでいたという。
古い文献によれば、セドラクは街の守り神として崇められていた。
だが、人間と龍人の戦を経て、龍がどうなったかについては諸説ある。
傷ついて死んだとも、龍人とともに去ったとも、人間が街を奪取したさいに裏切って人間側についたとも言われている。
ただひとつ確かなことは、金龍が今も街にとどまる水上都市聖フランチェスコ市とは違い、この街にはもう龍がいないということだ。
◆街の【少数種族】たち。
ドラッツェンの街は高地の山奥にあるが、歩いている種族は多種多様だ。
といってもエルフやドワーフが特別に多いわけでも、ゴブリンやオークのような【悪の種族】に溢れているわけでもない。
豚の顔をした人間型種族……〈豚人〉。
4本の脚と4本の腕を持つ、クモに似た少数種族〈アラネア〉。
人間の2倍近い身長をもつ〈半巨人〉。
毛むくじゃらの狼や猫に似た〈獣人〉。
たくさんの少数種族が、人間などの【善の種族】に混じって歩いている。
「侵略の歴史さ。里を焼かれた種族が、街で暮らすようになった」
好奇心から視線を向けていたカメルに、アレスがそう告げる。
「そうだな……。戦いは世の常だが、彼らは幸せなのだろうか?」
そう言って目を伏せるカメルの長いまつ毛を見ながら、アレスは何も答えなかった。
カメルは疑問を投げかけたわけではない……「幸せには見えない」と、反語的に言っているのだ。
故郷を追われ、家族や友人を殺された末に、街に取り込まれて生きる少数種族たち。
その身を案じているのだろう。
◆大量の難民と「テホ」。
高低差のある道を歩く。
高いところに立つと、城壁の向こうに流れる川が見える。
ゆったりと流れる赤錆川は、その名前のとおり雨季には川が赤色に濁る。
かつてこの川を上ってきた、難民たちがいたという。
この川を上った難民たちは〈ノーム〉たちだった。
彼らはドラッツェンの北西部に集落を作り、先住者である〈獣人〉たちや、後に住み着く〈半巨人〉たちとともに暮らした。
その地域は「テホ」と呼ばれた。
テホの民はドラッツェンとは一定の距離を置きながらも、その一部は城塞都市に流れ込んで市民となった。
ドラッツェンには〈半巨人〉の騎士や〈獣人〉の医師、〈ノーム〉の錬金術師などが居住し、一定の地位を獲得している。
◆レラヴィリアの民。
宿についた2人は、テーブルにつく。
宿に入った瞬間から、においが気にかかる。
糞尿のような……。
においの根源を目で追うと、そこには〈豚人〉が座っている。
どうも、彼か彼女か分からないが、においはそこから漂ってきているらしい。
他の宿を探すべきか、カメルは迷う。
だが、山中にあるドラッツェンの日暮れは早い。
もう日が暮れているのだ……くさいからといって、今さら宿を変えるリスクを取りたくはない。
店員が〈豚人〉に、食事を持っていく。
〈豚人〉は2人の前で、その頭を外す。
衝撃とともに、2人は〈豚人〉の「中身」を見る。
中には色白で金髪の、美しい青年が入っていたのだ。
カメルとアレスが〈豚人〉だと思っていたのは〈人間〉だったのだ。
好奇心に抗うことができず、カメルは青年に近づき、尋ねる。
「そのかぶりものは? 何のためなのか、訊いてもいいかな?」
青年は屈託のない笑顔をカメルに見せて、答える。
「狩りです。我ら『レラヴィリアの民』は、〈丸々獣〉という生きものを仕留めるためにこの格好をするのです」
いささか早口になりながら、青年は答える。
カメルはうなずく……このにおいも、狩りのためについてしまうものなのだろう。
「レラヴィリア」とは「自由」を意味する言葉で、ドラッツェンにかつてあった王国の名前だ。
王国はすでに滅んだが、レラヴィリアの民は今もドラッツェンの周辺や都市内で、こうして暮らしているという。
◆ウォー・ドレイク戦役。
カメルとアレスは食事を終えると、うっすらと暗くなりつつある外を歩く。
ギャギャギャという鳴き声が、遠くから聞こえる。
霧の晴れた空には幼いドレイクが、叫び声を放ちながら飛んでいる。
調教師が「放牧」をしているのだ。
かつてウォー・ドレイク騎兵は、ドラッツェンの象徴そのものだった。
凶暴なドレイクが空を埋め尽くし、さまざまな【少数種族】たちを制圧した。
神聖都市ロング・ナリクを代表する騎士、飛翔槍士たる鳥人たちに死をもたらした。
しかし、ドラッツェンの経済力は、その強大な軍事力を支えられるほどに強靭ではなかった。
いちどの遠征を終えると牛一頭(1日に1頭といううわさもある!)を必要とするウォー・ドレイクの維持費用はドラッツェンの財政に大きな打撃を与え……大幅な縮小が行われた。
◆ゴーレムナイトの導入。
ウォー・ドレイクを城塞都市ドラッツェンが「手なづける」以前には、〈ノーム〉たち【からくり術師】が研究開発した〈ゴーレムナイト〉が、この街の主流だった時期もあった、という。
巨大なゴーレムの中心に乗り込んで、操縦することで巨人やドレイクたち【巨大生物】と戦う。
ときには〈ゴーレムナイト〉どうしで戦うこともあったという……だが、これも歴史とともに衰退していく。
古い時代のゴーレムの頭のなかには、今は稀少となった金属オリハルコンが使われていた。
これが枯渇したために〈ゴーレムナイト〉の生産ができなくなってしまった。
それでも、アランツァの世界にはこの巨大なゴーレムによる戦いの痕跡や記録がいくつか残されている。
◆半巨人たち。
城を遠くから眺めようと、アレスが提案する。
カメルは同意して、連れ立って歩く。
城の門には板金鎧に身を包んだ、大柄の騎士が立っている。
門の左右に立つ騎士の、右の人物だけがやけに大きい。
〈半巨人〉が、銀色に輝く鎧に身を包み、門を守っているのだ。
そのたたずまいは堂々としていて、誇らしげですらある。
アレスは興奮して、その様子をスケッチしはじめる。
生物学者であるカメルは感動して、〈巨人〉の歴史に思いを馳せる。
〈巨人〉という種族はもともと、人間だったと言われている。
魔力だまり(ノード)の放射に当てられると、クリーチャーは自分自身の欲望に応じた姿へと変容する。
このことを皮肉まじりに「願いを叶える」と表現する学者もいるが……〈巨人〉はなんらかの理由で「もっと大きくなりたい」と思った、数人の人間たちからはじまったという説がある。
もっとも、この説は北方の蛮族都市フーウェイなどでは真っ向から否定されていて、〈巨人〉たちはより原始的な、かつての「汚れていなかった」頃の人間の姿だと彼らは主張する。
学者たちの意見がどうであれ、〈半巨人〉は〈巨人〉の子孫である。
代を重ねるごとに肉体的に小さくなっていったが、その理由は明らかではない。
〈巨人〉の食性はバラバラで、人を食うものもいる。
しかし、身長3メートルていどの〈半巨人〉になると、この性質を受け継いでいる者はいない……人間と同じものを食べる。
◆武器と防具、そして錬金術師。
三方を河川に囲まれたこの街の「最後の一方」は、スォードヘイルの切り立った山々に面している。
この山地には有用な鉱物がよく採れる……城塞都市ドラッツェンの「産業」といえば、鉱物なのだ。
かつてはゴーレム製作に欠かせないオリハルコンが採掘されたが、今はこの資源は枯渇してしまった。
現在は武器や防具に用いる「アダマンタイト」と「カーグ鋼」をもとに、優秀な武具を製作する。
これらの武具は彼らの軍事力になるだけでなく、輸出によって経済面からもこの街を支えている。
街外れにある採掘場では、〈ドワーフ〉たちがつるはしを振るっている。
それを眺めながら、カメルは教え子の1人の話を思い出す。
錬金術師のマグスは両親とともに、この街を亡命したドラッツェン人なのだ。
わずか9歳の頃から、非常におとなびた性格の生徒であった。
面接の席で彼は、聖フランチェスコ市への亡命理由を尋ねられた。
「先生方はきっと、ドラッツェンの錬金術師たちが、どんな仕事をやらされていたかご存じないでしょう。私の両親は錬金術師だから、実際にあの街でどんな業が行われていたか、知っています」
続きを待つ面接官の教師たちを前に、長い沈黙が訪れる。
その末に彼は、こう答えた。
「戦が近づくと、兵站(へいたん)の備蓄を行いますよね。そのなかにはコビット爆弾のような、火薬を用いるものがあります。でも、ドラッツェンでは火薬の材料のひとつ、硝石が不足気味なんです」
マグスはひと呼吸置いて、言った。
「ところで、人体の成分をご存じですか。水35リットル、炭素20kg、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100gです。だから……ドラッツェンの軍部は平民たちのところにやってきて、最近亡くなった人間の遺体を『徴収』します。死んだ人々の肉体をかき集めて、硝石を手に入れるために……。」
そして、その硝石を抽出するのは錬金術師の仕事、というわけだ。
「そのこと{圏点:小さい黒丸}だけ{/圏点}に耐えられなかったわけじゃない。あの街はそういうところなんです。たくさんの【少数種族】と、合理的な思想。魔力を蓄えたクリーチャーが、生きたままつながれている地下があるというウワサもある。もっとむごたらしいものだって……。」
吐き捨てるように、マグスは言った。
「そういうことが重なって、両親はあの街を捨てました。俺だって、あの街で育つよりも、人の心がある魔法使いになりたい」
少しうつろなマグスの瞳。
彼を見つめるカメルの瞳には、涙が浮かんでいた。
◆まとめ。
カメルとアレスは城門から出て、この街をあとにする。
この街がアランツァの他のどんな都市よりも堅牢で、強大な軍事力を蓄えていることは疑いようがない。
北から攻め込む【巨大生物】の脅威に耐えるために、彼らは「するべきこと」を選んできた。
生き延びるために彼らがしてきたことは隠されていて、街を歩くだけでは分からない。
だが、たとえ明るみになったとて、誰がそれを「ひどい」と言えるのか。
恐るべき〈巨人〉たちにドラッツェンが敗北したら、次は他の街だ。
この街が食い止めているからこそ、アランツァの都市は危うい均衡のなかで存在できているに過ぎない。
カメルはドラッツェンの支配者たちが住む城を見やる。
今の領主である姫将軍ジャルベッタが住む、灰色の城を。
振り返って眺めても、街は答えない。
2人はドラッツェンの前を流れる赤錆川に浮かぶ、一隻の船に乗る。
城塞都市ドラッツェンを去り、チャマイの街を目指すのだ。
そこにたどり着いたなら、カメルの旅はふたたび1人に戻る。
アレスの最終目的地は、からくり都市チャマイである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
↓「城塞都市ドラッツェン」by Huargo
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/CarneReina19B.jpg
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
都市サプリメント:「城塞都市ドラッツェン」
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Dratzen.txt
新職業【錬金術師】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_Alchemist.txt
呪文の力に頼ることなく、物質と生命の創造を専門とした職業に就いた者を【錬金術師】と呼びます。
幸運点を基準とする主人公で、怪物の生産を可能とします。
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カメル・グラント教授はいま、大陸を旅してまわっている。
高地にあるこの街は寒く、朝夕には濃い霧が出る。
三方を河に囲まれたこの都市は堅牢だが、たどってきた道のりは決して平坦なものではなかった。
龍人たちが創設した街を人間が奪ったという、血塗られたはじまり。
巨大クリーチャーとの戦い。
ゴーレムナイトの導入。
錬金術師の台頭。
ウォー・ドレイク戦役。
この街を彩る要素の多くには、戦が絡んでいる。
◆検問と戦争。
カメルは旅の仲間であるアレス・マイモローとともに、この街へと入る。
衛兵たちはいぶかしむような表情を投げつけた。
神聖都市ロング・ナリクからの越境である。
ふたつの都市の間では数十年もの間、戦争が続いている。
スパイの入国を、疑ったのだ。
アレスは懐から書状を出して、ハラリと見せる。
彼の妻である賢者ティーボグが書き記した、通行許可証である。
衛兵たちは書状とアレスたちを交互に見ると、結局、街への入境を許可してくれた。
「要するに、そういうことなんだよ」
衛兵たちから十分に離れてから、アレスが言う。
「戦争は長く続きすぎた。今でも兵士たちどうしの戦いはあるが、民間の交易は行われている。研究者だって、こうして通れるってわけさ」
慎重なカメルは首を振って、彼の意見を否定する。
「運がよかっただけ、かもしれない。あるいは、偉大なる七賢者の書いた書状を持たない者は、そんな風に通れるとは限らないだろう」
「そうだな。だが、少なくとも今日は通れたな。とりあえずは、そのことを喜ぼう」
カメルはうなずいて、街に視線を向ける。
◆高地の街。
河に囲まれた小高い丘。
城壁で囲まれた街に向けて、いくつかの石橋がかかっている。
それぞれの橋には城門があって、有事のさいには閉じられる。
堅牢な街である。
城門の高さは5メートルほどあって、「人間以外」の市民がいることを窺わせる。
空には小さなドレイクが飛んでいて、その姿や鳴き声が、薄くかかった霧の向こうからときおり聞こえる。
◆龍人たちと銅龍セドラク。
街の中央にある広場にたどり着く。
噴水の真ん中には、精悍な戦士が龍を足の下に敷いて、旗を掲げた銅像が建っている。
人間が龍人を征服したことを示す、モニュメントである。
ドラッツェンという名前が示すとおり、この街はもともと龍人たちのものだった。
龍人は強力な種族だったが、繁殖力において人間に劣っていた。
長い戦を続けた末に、龍人は街を捨てて南へと消え、ドラッツェンは人間の都市となった。
かつて龍人は、セドラクという名前の龍とともに、この街に住んでいたという。
古い文献によれば、セドラクは街の守り神として崇められていた。
だが、人間と龍人の戦を経て、龍がどうなったかについては諸説ある。
傷ついて死んだとも、龍人とともに去ったとも、人間が街を奪取したさいに裏切って人間側についたとも言われている。
ただひとつ確かなことは、金龍が今も街にとどまる水上都市聖フランチェスコ市とは違い、この街にはもう龍がいないということだ。
◆街の【少数種族】たち。
ドラッツェンの街は高地の山奥にあるが、歩いている種族は多種多様だ。
といってもエルフやドワーフが特別に多いわけでも、ゴブリンやオークのような【悪の種族】に溢れているわけでもない。
豚の顔をした人間型種族……〈豚人〉。
4本の脚と4本の腕を持つ、クモに似た少数種族〈アラネア〉。
人間の2倍近い身長をもつ〈半巨人〉。
毛むくじゃらの狼や猫に似た〈獣人〉。
たくさんの少数種族が、人間などの【善の種族】に混じって歩いている。
「侵略の歴史さ。里を焼かれた種族が、街で暮らすようになった」
好奇心から視線を向けていたカメルに、アレスがそう告げる。
「そうだな……。戦いは世の常だが、彼らは幸せなのだろうか?」
そう言って目を伏せるカメルの長いまつ毛を見ながら、アレスは何も答えなかった。
カメルは疑問を投げかけたわけではない……「幸せには見えない」と、反語的に言っているのだ。
故郷を追われ、家族や友人を殺された末に、街に取り込まれて生きる少数種族たち。
その身を案じているのだろう。
◆大量の難民と「テホ」。
高低差のある道を歩く。
高いところに立つと、城壁の向こうに流れる川が見える。
ゆったりと流れる赤錆川は、その名前のとおり雨季には川が赤色に濁る。
かつてこの川を上ってきた、難民たちがいたという。
この川を上った難民たちは〈ノーム〉たちだった。
彼らはドラッツェンの北西部に集落を作り、先住者である〈獣人〉たちや、後に住み着く〈半巨人〉たちとともに暮らした。
その地域は「テホ」と呼ばれた。
テホの民はドラッツェンとは一定の距離を置きながらも、その一部は城塞都市に流れ込んで市民となった。
ドラッツェンには〈半巨人〉の騎士や〈獣人〉の医師、〈ノーム〉の錬金術師などが居住し、一定の地位を獲得している。
◆レラヴィリアの民。
宿についた2人は、テーブルにつく。
宿に入った瞬間から、においが気にかかる。
糞尿のような……。
においの根源を目で追うと、そこには〈豚人〉が座っている。
どうも、彼か彼女か分からないが、においはそこから漂ってきているらしい。
他の宿を探すべきか、カメルは迷う。
だが、山中にあるドラッツェンの日暮れは早い。
もう日が暮れているのだ……くさいからといって、今さら宿を変えるリスクを取りたくはない。
店員が〈豚人〉に、食事を持っていく。
〈豚人〉は2人の前で、その頭を外す。
衝撃とともに、2人は〈豚人〉の「中身」を見る。
中には色白で金髪の、美しい青年が入っていたのだ。
カメルとアレスが〈豚人〉だと思っていたのは〈人間〉だったのだ。
好奇心に抗うことができず、カメルは青年に近づき、尋ねる。
「そのかぶりものは? 何のためなのか、訊いてもいいかな?」
青年は屈託のない笑顔をカメルに見せて、答える。
「狩りです。我ら『レラヴィリアの民』は、〈丸々獣〉という生きものを仕留めるためにこの格好をするのです」
いささか早口になりながら、青年は答える。
カメルはうなずく……このにおいも、狩りのためについてしまうものなのだろう。
「レラヴィリア」とは「自由」を意味する言葉で、ドラッツェンにかつてあった王国の名前だ。
王国はすでに滅んだが、レラヴィリアの民は今もドラッツェンの周辺や都市内で、こうして暮らしているという。
◆ウォー・ドレイク戦役。
カメルとアレスは食事を終えると、うっすらと暗くなりつつある外を歩く。
ギャギャギャという鳴き声が、遠くから聞こえる。
霧の晴れた空には幼いドレイクが、叫び声を放ちながら飛んでいる。
調教師が「放牧」をしているのだ。
かつてウォー・ドレイク騎兵は、ドラッツェンの象徴そのものだった。
凶暴なドレイクが空を埋め尽くし、さまざまな【少数種族】たちを制圧した。
神聖都市ロング・ナリクを代表する騎士、飛翔槍士たる鳥人たちに死をもたらした。
しかし、ドラッツェンの経済力は、その強大な軍事力を支えられるほどに強靭ではなかった。
いちどの遠征を終えると牛一頭(1日に1頭といううわさもある!)を必要とするウォー・ドレイクの維持費用はドラッツェンの財政に大きな打撃を与え……大幅な縮小が行われた。
◆ゴーレムナイトの導入。
ウォー・ドレイクを城塞都市ドラッツェンが「手なづける」以前には、〈ノーム〉たち【からくり術師】が研究開発した〈ゴーレムナイト〉が、この街の主流だった時期もあった、という。
巨大なゴーレムの中心に乗り込んで、操縦することで巨人やドレイクたち【巨大生物】と戦う。
ときには〈ゴーレムナイト〉どうしで戦うこともあったという……だが、これも歴史とともに衰退していく。
古い時代のゴーレムの頭のなかには、今は稀少となった金属オリハルコンが使われていた。
これが枯渇したために〈ゴーレムナイト〉の生産ができなくなってしまった。
それでも、アランツァの世界にはこの巨大なゴーレムによる戦いの痕跡や記録がいくつか残されている。
◆半巨人たち。
城を遠くから眺めようと、アレスが提案する。
カメルは同意して、連れ立って歩く。
城の門には板金鎧に身を包んだ、大柄の騎士が立っている。
門の左右に立つ騎士の、右の人物だけがやけに大きい。
〈半巨人〉が、銀色に輝く鎧に身を包み、門を守っているのだ。
そのたたずまいは堂々としていて、誇らしげですらある。
アレスは興奮して、その様子をスケッチしはじめる。
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〈巨人〉という種族はもともと、人間だったと言われている。
魔力だまり(ノード)の放射に当てられると、クリーチャーは自分自身の欲望に応じた姿へと変容する。
このことを皮肉まじりに「願いを叶える」と表現する学者もいるが……〈巨人〉はなんらかの理由で「もっと大きくなりたい」と思った、数人の人間たちからはじまったという説がある。
もっとも、この説は北方の蛮族都市フーウェイなどでは真っ向から否定されていて、〈巨人〉たちはより原始的な、かつての「汚れていなかった」頃の人間の姿だと彼らは主張する。
学者たちの意見がどうであれ、〈半巨人〉は〈巨人〉の子孫である。
代を重ねるごとに肉体的に小さくなっていったが、その理由は明らかではない。
〈巨人〉の食性はバラバラで、人を食うものもいる。
しかし、身長3メートルていどの〈半巨人〉になると、この性質を受け継いでいる者はいない……人間と同じものを食べる。
◆武器と防具、そして錬金術師。
三方を河川に囲まれたこの街の「最後の一方」は、スォードヘイルの切り立った山々に面している。
この山地には有用な鉱物がよく採れる……城塞都市ドラッツェンの「産業」といえば、鉱物なのだ。
かつてはゴーレム製作に欠かせないオリハルコンが採掘されたが、今はこの資源は枯渇してしまった。
現在は武器や防具に用いる「アダマンタイト」と「カーグ鋼」をもとに、優秀な武具を製作する。
これらの武具は彼らの軍事力になるだけでなく、輸出によって経済面からもこの街を支えている。
街外れにある採掘場では、〈ドワーフ〉たちがつるはしを振るっている。
それを眺めながら、カメルは教え子の1人の話を思い出す。
錬金術師のマグスは両親とともに、この街を亡命したドラッツェン人なのだ。
わずか9歳の頃から、非常におとなびた性格の生徒であった。
面接の席で彼は、聖フランチェスコ市への亡命理由を尋ねられた。
「先生方はきっと、ドラッツェンの錬金術師たちが、どんな仕事をやらされていたかご存じないでしょう。私の両親は錬金術師だから、実際にあの街でどんな業が行われていたか、知っています」
続きを待つ面接官の教師たちを前に、長い沈黙が訪れる。
その末に彼は、こう答えた。
「戦が近づくと、兵站(へいたん)の備蓄を行いますよね。そのなかにはコビット爆弾のような、火薬を用いるものがあります。でも、ドラッツェンでは火薬の材料のひとつ、硝石が不足気味なんです」
マグスはひと呼吸置いて、言った。
「ところで、人体の成分をご存じですか。水35リットル、炭素20kg、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100gです。だから……ドラッツェンの軍部は平民たちのところにやってきて、最近亡くなった人間の遺体を『徴収』します。死んだ人々の肉体をかき集めて、硝石を手に入れるために……。」
そして、その硝石を抽出するのは錬金術師の仕事、というわけだ。
「そのこと{圏点:小さい黒丸}だけ{/圏点}に耐えられなかったわけじゃない。あの街はそういうところなんです。たくさんの【少数種族】と、合理的な思想。魔力を蓄えたクリーチャーが、生きたままつながれている地下があるというウワサもある。もっとむごたらしいものだって……。」
吐き捨てるように、マグスは言った。
「そういうことが重なって、両親はあの街を捨てました。俺だって、あの街で育つよりも、人の心がある魔法使いになりたい」
少しうつろなマグスの瞳。
彼を見つめるカメルの瞳には、涙が浮かんでいた。
◆まとめ。
カメルとアレスは城門から出て、この街をあとにする。
この街がアランツァの他のどんな都市よりも堅牢で、強大な軍事力を蓄えていることは疑いようがない。
北から攻め込む【巨大生物】の脅威に耐えるために、彼らは「するべきこと」を選んできた。
生き延びるために彼らがしてきたことは隠されていて、街を歩くだけでは分からない。
だが、たとえ明るみになったとて、誰がそれを「ひどい」と言えるのか。
恐るべき〈巨人〉たちにドラッツェンが敗北したら、次は他の街だ。
この街が食い止めているからこそ、アランツァの都市は危うい均衡のなかで存在できているに過ぎない。
カメルはドラッツェンの支配者たちが住む城を見やる。
今の領主である姫将軍ジャルベッタが住む、灰色の城を。
振り返って眺めても、街は答えない。
2人はドラッツェンの前を流れる赤錆川に浮かぶ、一隻の船に乗る。
城塞都市ドラッツェンを去り、チャマイの街を目指すのだ。
そこにたどり着いたなら、カメルの旅はふたたび1人に戻る。
アレスの最終目的地は、からくり都市チャマイである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
↓「城塞都市ドラッツェン」by Huargo
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/CarneReina19B.jpg
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
都市サプリメント:「城塞都市ドラッツェン」
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Dratzen.txt
新職業【錬金術師】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_Alchemist.txt
呪文の力に頼ることなく、物質と生命の創造を専門とした職業に就いた者を【錬金術師】と呼びます。
幸運点を基準とする主人公で、怪物の生産を可能とします。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
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ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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2025年10月18日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第662号 FT新聞 No.4651
From:水波流
「テセウスの船」という話がある。船の部品を1つずつ交換していき全ての部品が置きかわった時、それは元のテセウスの船なのか?という思考実験だ。
ところで私の愛用するAirPodsProは、中古で購入したら保証が残っていたので、せっかくだからとすぐにAppleでバッテリー交換をしてもらった。すると両耳イヤホンとケース、全て消耗しているので無償で新品と交換しますよと言ってくれ、店舗奥から新しい1式が。
ん?では私が購入したものは物体ではなく概念だったのか。
というテセウスのAirPodsProの話。
From:葉山海月
「寿司の中のヴィラン捨てといて」
見たら「びらん」でしたー!
さらに間違えて「ばらん」を「びらん」と信じ切ってましたー!
From:中山将平
僕ら、明日10月19日(日)「京都パルスプラザ」で開催の「関西コミティア74」にサークル参加します。
ブース配置は【G67】です。
11月にはまた色々イベントに出展する予定がありますが、10月はなんとこのイベント1つだけしか参加予定がありません。
1人用TRPG「ローグライクハーフ」や「ゲームブック」、「モンスター!モンスター!TRPG」等々を持ち、僕中山が現地にてお待ちしております!!
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
(葉)=葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■10/12(日)~10/17(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年10月12日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4645
アランツァクリーチャー事典 Vol.21
・アランツァ世界に生息するクリーチャーたちのデータや背景をご紹介する「アランツァクリーチャー事典」。これから3回にわたり、【家畜、騎乗生物】の情報をお届けします。
今回登場するクリーチャーたちの多くは、敵としてのステータスだけでなく、「従者」としての能力値や特殊技能も持っています。強力だけど維持費もかかる〈ウォー・ドレイク〉と〈エレファス〉、地形によっては大活躍しそうな〈大亀龍〉と〈大グモ〉など、特色ある【騎乗生物】を従えて冒険したり、そんなシナリオを作成したりするのも楽しそうですね!
(く)
2025年10月13日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4646
運ってなんだい?
・田林洋一氏の連載「SAGBがよくわかる本」の記事のなかに、運についての言及がありました(No.4640)。
確率論者でありながら、同時に運も信じているという杉本氏は、「運ってなんだろう?」という問いかけに対しひとつの答えを持っているそうです。
それは「ここ一番」の大勝負、おそらくは人生で最も大事な、たった1回の勝負に勝てるかどうかということ。
誰だって勝つことも負けることもありますが、通常時の勝ち負けと、特別な機会の勝ち負けとでは、意味づけの濃淡が変わります。
勝っても負けても、意味が乗ることは面白いから、人はゲームに挑むのかもしれませんね。
(明)
2025年10月14日(火)中山将平 FT新聞 No.4647
ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!
・イラストレーター中山将平氏による、とっておきのローグライクハーフ情報、好評につき第3弾!
今回のテーマは、「手がかり」、「2人プレイの時の従者」、「敵の逃走」……の3点。
ローグライクハーフにある、「手がかり」という謎の存在。
多くの場合は「d66を振る時に消費して使用し、十の位が1に固定される」というもの。
そんな「手がかり」の使い方の『手がかり』他、2つのテーマも必見です。
ローグライクハーフをはじめたての方も、中級レベルの方も参考にしつつ、よきローグライクハーフ・ライフの助けとしていただければと思います。
好評なら第4弾もあるとのこと!是非ご感想をお寄せください!
(天)
2025年10月15日(水)ぜろ FT新聞 No.4648
第9回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第460回です。
奴隷商人に売られた姉たちを救うため、「2回目」の旅をはじめた主人公ミナ。「1回目」の旅との違いは、一緒に旅をする仲間がいることです。
森の入口での野営、闇エルフの隠れ里での情報収集、そして時計塔の探索…。どれもミナが「前回」の旅でも経験したはずの場面ですが、仲間の存在は「今回」の旅の展開にどんな影響を与えるのでしょうか?
(く)
2025年10月16日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4649
明け方の時
・この春からブエノスアイレスに移住されている岡和田氏から、詩が届きました。
地球の裏側との時差は丁度マイナス12時間。つまり、この「明け方の時」が皆さんの元に届いたとき、岡和田氏は「夜」を過ごされているわけです。
私はこの詩を受け取ったとき、霧煙るケルトの森の夜のような、不穏で幻想的な雰囲気を感じたのでした。
(水)
2025年10月17日(金)ぜろ FT新聞 No.4650
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第461回……
ではあるのですが、今回のリプレイのプレイヤーは、ぜろ氏の甥ちゃん氏!
プレイ時点ではもうすぐ小学生の甥ちゃん氏は、本を読むこと自体はあまり好きではないタイプ。
けれど、ぜろ氏が取り出したるは、子供向けゲームブック『ぼうけん! おばけのもり』!
可愛いイラスト満載で、甥ちゃん氏も興味津々!
さてさて、甥ちゃん氏の分身「りすのりっくん」は、「おばけのもり」にある「おうごんのどんぐり」を手に入れられるかな?
子どもにもゲームブックに興味を持ってもらいたい…そんな親御さんの参考になるかもしれません!
(天)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ドロシー!さん)
・月曜の記事「ひとつ、いやふたつ……!!」について
「ウルトラン」「魔矢を継ぐ者」「悪魔召喚シリーズ」「剣豪推参」と、完結が待ち遠しいゲームブックのひとつである「ガルアーダの塔」が、(厳密には続編ではありませんが)復活するのに狂喜しました。
「ガルアーダ」の魅力のひとつは仲間との人間関係から生まれるドラマでもあり、それがどう活かされるのか、いまから楽しみです。
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
私も書きかけの作品の中はどれも完結させたいと思っています……時々未完作品のことを思い出しては、いい終わらせ方の糸口はないか考えています。
その流れの中で「昆虫都市」と「ガルアーダの塔」のローグライクハーフ版を出すことを思いつきました。
「昆虫都市」はゲームブック版も出したいので、続きを出す見込みが立っていない「ガルアーダの塔」のゲームブック版とは、また事情が異なりますけども。
ちなみに、挙げていただいた未完の作品の中で最も完結の可能性が高いのは「魔矢を継ぐ者」です☆
(蒙太辺土さん)
『ガルアーダの塔』文字通りの"大"復活!
飛翔騎士の観測者「どういうことだ…塔が"伸びている"!」
経済という非情な蜘蛛の巣に絡め取られ命脈を絶たれたかに思われた『ガルアーダ』。
しかし時を経て今、大復讐戦(勝確!)の大号令が放たれた!というテンションで月曜の記事を読みましたっ。狂喜&乱舞でございます!いや〜楽しみ過ぎる。
そして最新作『死霊沼の聖母』!
まだ2つしかタイルめくれてないですがこの時点で既に楽しい!そして濃ゆい!休みの日に集中没頭して再"潜入"する所存です。ローグライクハーフ者として、ファンタジー者として、がっぷり四つに組まねば、という気合いが自ずと沸き上がる作品だと感じています!
冒険達成のあかつきには改めて感想を送らせて頂けますれば…!
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
にょきにょき伸びるガルアーダの塔を想像して、笑ってしまいました☆
8人の友情物語を今度こそ描けると思うと、私自身ワクワクが止まりません!
『死霊沼の聖母』は今回も、紫隠ねこさんのお力なしにはたどり着けなかったなと感じています☆
不自然に明るい世界に、ゲーム的な面白さと不穏さなどを足してくださいました……おかげでシナリオの深みがずいぶん増したと感じております。
ローグライクハーフ版の『ガルアーダの塔』も、お楽しみに……!!
(忍者福島さん)
からくりは機械と思いましたが、構造はシステムと考えると、機械はシステムを実現するための道具と考えると、構造が正解により近い気がしますね。
と、社会の歯車の一員として働いている自分が思ったのでした(笑)
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
私も「機械」と「構造」の二択に絞り込みましたが、その後は論理的に考えるというよりは、「ヨハネさん的にはこれだろう」という発想で選んだのでした(笑)
テクア神が「そういうからくりだ」と言っていたのがまさに答えそのものになっていて、ここには「機械」というニュアンスが存在せず「そういう仕組み」という文脈なのですね。だからまさしく「からくり」は「構造」というわけです。機械という意味は含まれるかもしれないけれど、その中のごく一部、ということなのでしょう。だから「本質」ではない。
改めて考えてみましたが、奥の深い問いでした。
なお、実は導入の頃のミナは、魔法の時計入手の流れに「運命」を感じていますが、そこはスルーでお願いします(笑)
(蒙太辺土さん)
『狂える魔女のゴルジュ』リプレイ。震えながら毎週読んでいます。
今回は本当にしんどいシーンがありましたね…!
読み物としてはリプレイという形式ですが、読み味はほとんど小説。没入して読んでしまう。
それゆえにツラい!今後もぜろ先生の描くミナの物語を覚悟して見守っていきたいと思います!
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。私自身、かなり入れ込んで書いております。歳のせいか涙腺もだいぶゆるくなっておりますので、書きながら涙し、読み返しては涙しと、いつも大変なことになっています。ここまでの回の中ではこの第8回がいちばん「来る」回でした。ほかには導入1回、2回のアレンジでミナの細やかな機転(鍵の入れ替えとか)を入れたくだりとか、第5回の闇エルフの隠れ里の緊張感も気に入っております。
ここからは、仲間との旅路になります。この先も、第8回をもしのぐ展開と感動を約束します。これからも、ミナを応援してください。
(蒙太辺土さん)
『写身の殺人者』リプレイ感想です。
「悪夢殺人」…!これキラーワード(殺人だけに)ですね〜
こういうセンスのいい惹句を見るとテンションが一段上がります!
聖騎士見習いのシグナス君に同行するメンターが魔剣(しかも人格核搭載のゴーレム?)という発想!ゴハン30杯いけますコレ。
クロ殿のライフパスめっちゃ気になります。色々反省したりもして老成し過ぎてない感じも、人間(?)の機微がうかがえて好きです。
あ、あと「アグレッシブ・アグピレオ」こちらスピンオフありますか?(笑)
(お返事:東洋夏)
感想&お褒めのお言葉をありがとうございます!
直接感想を届けていただく機会は貴重ですので、大変励みになります。
クロ先輩の属する〈おどる剣〉というのは余白の大変多い種族で、そこが魅力的だと思っています。発声するのか、それ以前にコミュニケーション手段は何なのか、そもそも自由意志があるのか……。
アランツァの世界観を損ねない程度の伴奏として、ゴーレムであるはずなのに自分の存在意義が分からず、人間くさくて、ぺらぺら喋る、そんか妙な一振がいても面白いかなと想像を逞しくして書きました。剣に導かれる少年も、ファンタジーの王道ですからね! 気に入っていただけて嬉しいです。
クロ先輩の過去についてはまだプレイヤーも知らないことが多く、これから冒険を重ね、出目を読み取って構築していきます。その時どんな真実が現れるのか、引き続き楽しみにしていただけましたら幸いです。
アグレッシブ先生につきましては……詳しくはまだ申し上げられませんが、最後の最後までお付き合いいただけましたらと。今はそれだけ意味深に記させていただきます。
それでは、改めまして、ありがとうございました!
(忍者福島さん)
ミナが未来を思い出すなんて、ぜろさんが悪夢袋を使って時を戻したのかしら?
それとも、ぜろさんがテクア神そのものだったりして。
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
そうですね。ゲームブックのプレイヤーは全員、キャラクターを何度もスタート地点に戻させるデウスエクスマキナ神なのです。
ミナに限らず、他のゲームブックのキャラクターたちもすべて、ゲームオーバーになるたびに辿って来た行程を忘れ、繰り返し時を刻んでいます。その中で、時間を操ることができるミナだけが、この超常的な介入のことに漠然と気づいている。きっと、そういうことなのでしょう。
そんな解釈のもと、プレイヤーの力を作中の神の力に差し替えて表現しているのです。
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「テセウスの船」という話がある。船の部品を1つずつ交換していき全ての部品が置きかわった時、それは元のテセウスの船なのか?という思考実験だ。
ところで私の愛用するAirPodsProは、中古で購入したら保証が残っていたので、せっかくだからとすぐにAppleでバッテリー交換をしてもらった。すると両耳イヤホンとケース、全て消耗しているので無償で新品と交換しますよと言ってくれ、店舗奥から新しい1式が。
ん?では私が購入したものは物体ではなく概念だったのか。
というテセウスのAirPodsProの話。
From:葉山海月
「寿司の中のヴィラン捨てといて」
見たら「びらん」でしたー!
さらに間違えて「ばらん」を「びらん」と信じ切ってましたー!
From:中山将平
僕ら、明日10月19日(日)「京都パルスプラザ」で開催の「関西コミティア74」にサークル参加します。
ブース配置は【G67】です。
11月にはまた色々イベントに出展する予定がありますが、10月はなんとこのイベント1つだけしか参加予定がありません。
1人用TRPG「ローグライクハーフ」や「ゲームブック」、「モンスター!モンスター!TRPG」等々を持ち、僕中山が現地にてお待ちしております!!
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
(葉)=葉山海月
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■10/12(日)~10/17(金)の記事一覧
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2025年10月12日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4645
アランツァクリーチャー事典 Vol.21
・アランツァ世界に生息するクリーチャーたちのデータや背景をご紹介する「アランツァクリーチャー事典」。これから3回にわたり、【家畜、騎乗生物】の情報をお届けします。
今回登場するクリーチャーたちの多くは、敵としてのステータスだけでなく、「従者」としての能力値や特殊技能も持っています。強力だけど維持費もかかる〈ウォー・ドレイク〉と〈エレファス〉、地形によっては大活躍しそうな〈大亀龍〉と〈大グモ〉など、特色ある【騎乗生物】を従えて冒険したり、そんなシナリオを作成したりするのも楽しそうですね!
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2025年10月13日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4646
運ってなんだい?
・田林洋一氏の連載「SAGBがよくわかる本」の記事のなかに、運についての言及がありました(No.4640)。
確率論者でありながら、同時に運も信じているという杉本氏は、「運ってなんだろう?」という問いかけに対しひとつの答えを持っているそうです。
それは「ここ一番」の大勝負、おそらくは人生で最も大事な、たった1回の勝負に勝てるかどうかということ。
誰だって勝つことも負けることもありますが、通常時の勝ち負けと、特別な機会の勝ち負けとでは、意味づけの濃淡が変わります。
勝っても負けても、意味が乗ることは面白いから、人はゲームに挑むのかもしれませんね。
(明)
2025年10月14日(火)中山将平 FT新聞 No.4647
ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!
・イラストレーター中山将平氏による、とっておきのローグライクハーフ情報、好評につき第3弾!
今回のテーマは、「手がかり」、「2人プレイの時の従者」、「敵の逃走」……の3点。
ローグライクハーフにある、「手がかり」という謎の存在。
多くの場合は「d66を振る時に消費して使用し、十の位が1に固定される」というもの。
そんな「手がかり」の使い方の『手がかり』他、2つのテーマも必見です。
ローグライクハーフをはじめたての方も、中級レベルの方も参考にしつつ、よきローグライクハーフ・ライフの助けとしていただければと思います。
好評なら第4弾もあるとのこと!是非ご感想をお寄せください!
(天)
2025年10月15日(水)ぜろ FT新聞 No.4648
第9回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第460回です。
奴隷商人に売られた姉たちを救うため、「2回目」の旅をはじめた主人公ミナ。「1回目」の旅との違いは、一緒に旅をする仲間がいることです。
森の入口での野営、闇エルフの隠れ里での情報収集、そして時計塔の探索…。どれもミナが「前回」の旅でも経験したはずの場面ですが、仲間の存在は「今回」の旅の展開にどんな影響を与えるのでしょうか?
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2025年10月16日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4649
明け方の時
・この春からブエノスアイレスに移住されている岡和田氏から、詩が届きました。
地球の裏側との時差は丁度マイナス12時間。つまり、この「明け方の時」が皆さんの元に届いたとき、岡和田氏は「夜」を過ごされているわけです。
私はこの詩を受け取ったとき、霧煙るケルトの森の夜のような、不穏で幻想的な雰囲気を感じたのでした。
(水)
2025年10月17日(金)ぜろ FT新聞 No.4650
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第461回……
ではあるのですが、今回のリプレイのプレイヤーは、ぜろ氏の甥ちゃん氏!
プレイ時点ではもうすぐ小学生の甥ちゃん氏は、本を読むこと自体はあまり好きではないタイプ。
けれど、ぜろ氏が取り出したるは、子供向けゲームブック『ぼうけん! おばけのもり』!
可愛いイラスト満載で、甥ちゃん氏も興味津々!
さてさて、甥ちゃん氏の分身「りすのりっくん」は、「おばけのもり」にある「おうごんのどんぐり」を手に入れられるかな?
子どもにもゲームブックに興味を持ってもらいたい…そんな親御さんの参考になるかもしれません!
(天)
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
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(ドロシー!さん)
・月曜の記事「ひとつ、いやふたつ……!!」について
「ウルトラン」「魔矢を継ぐ者」「悪魔召喚シリーズ」「剣豪推参」と、完結が待ち遠しいゲームブックのひとつである「ガルアーダの塔」が、(厳密には続編ではありませんが)復活するのに狂喜しました。
「ガルアーダ」の魅力のひとつは仲間との人間関係から生まれるドラマでもあり、それがどう活かされるのか、いまから楽しみです。
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
私も書きかけの作品の中はどれも完結させたいと思っています……時々未完作品のことを思い出しては、いい終わらせ方の糸口はないか考えています。
その流れの中で「昆虫都市」と「ガルアーダの塔」のローグライクハーフ版を出すことを思いつきました。
「昆虫都市」はゲームブック版も出したいので、続きを出す見込みが立っていない「ガルアーダの塔」のゲームブック版とは、また事情が異なりますけども。
ちなみに、挙げていただいた未完の作品の中で最も完結の可能性が高いのは「魔矢を継ぐ者」です☆
(蒙太辺土さん)
『ガルアーダの塔』文字通りの"大"復活!
飛翔騎士の観測者「どういうことだ…塔が"伸びている"!」
経済という非情な蜘蛛の巣に絡め取られ命脈を絶たれたかに思われた『ガルアーダ』。
しかし時を経て今、大復讐戦(勝確!)の大号令が放たれた!というテンションで月曜の記事を読みましたっ。狂喜&乱舞でございます!いや〜楽しみ過ぎる。
そして最新作『死霊沼の聖母』!
まだ2つしかタイルめくれてないですがこの時点で既に楽しい!そして濃ゆい!休みの日に集中没頭して再"潜入"する所存です。ローグライクハーフ者として、ファンタジー者として、がっぷり四つに組まねば、という気合いが自ずと沸き上がる作品だと感じています!
冒険達成のあかつきには改めて感想を送らせて頂けますれば…!
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
にょきにょき伸びるガルアーダの塔を想像して、笑ってしまいました☆
8人の友情物語を今度こそ描けると思うと、私自身ワクワクが止まりません!
『死霊沼の聖母』は今回も、紫隠ねこさんのお力なしにはたどり着けなかったなと感じています☆
不自然に明るい世界に、ゲーム的な面白さと不穏さなどを足してくださいました……おかげでシナリオの深みがずいぶん増したと感じております。
ローグライクハーフ版の『ガルアーダの塔』も、お楽しみに……!!
(忍者福島さん)
からくりは機械と思いましたが、構造はシステムと考えると、機械はシステムを実現するための道具と考えると、構造が正解により近い気がしますね。
と、社会の歯車の一員として働いている自分が思ったのでした(笑)
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
私も「機械」と「構造」の二択に絞り込みましたが、その後は論理的に考えるというよりは、「ヨハネさん的にはこれだろう」という発想で選んだのでした(笑)
テクア神が「そういうからくりだ」と言っていたのがまさに答えそのものになっていて、ここには「機械」というニュアンスが存在せず「そういう仕組み」という文脈なのですね。だからまさしく「からくり」は「構造」というわけです。機械という意味は含まれるかもしれないけれど、その中のごく一部、ということなのでしょう。だから「本質」ではない。
改めて考えてみましたが、奥の深い問いでした。
なお、実は導入の頃のミナは、魔法の時計入手の流れに「運命」を感じていますが、そこはスルーでお願いします(笑)
(蒙太辺土さん)
『狂える魔女のゴルジュ』リプレイ。震えながら毎週読んでいます。
今回は本当にしんどいシーンがありましたね…!
読み物としてはリプレイという形式ですが、読み味はほとんど小説。没入して読んでしまう。
それゆえにツラい!今後もぜろ先生の描くミナの物語を覚悟して見守っていきたいと思います!
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。私自身、かなり入れ込んで書いております。歳のせいか涙腺もだいぶゆるくなっておりますので、書きながら涙し、読み返しては涙しと、いつも大変なことになっています。ここまでの回の中ではこの第8回がいちばん「来る」回でした。ほかには導入1回、2回のアレンジでミナの細やかな機転(鍵の入れ替えとか)を入れたくだりとか、第5回の闇エルフの隠れ里の緊張感も気に入っております。
ここからは、仲間との旅路になります。この先も、第8回をもしのぐ展開と感動を約束します。これからも、ミナを応援してください。
(蒙太辺土さん)
『写身の殺人者』リプレイ感想です。
「悪夢殺人」…!これキラーワード(殺人だけに)ですね〜
こういうセンスのいい惹句を見るとテンションが一段上がります!
聖騎士見習いのシグナス君に同行するメンターが魔剣(しかも人格核搭載のゴーレム?)という発想!ゴハン30杯いけますコレ。
クロ殿のライフパスめっちゃ気になります。色々反省したりもして老成し過ぎてない感じも、人間(?)の機微がうかがえて好きです。
あ、あと「アグレッシブ・アグピレオ」こちらスピンオフありますか?(笑)
(お返事:東洋夏)
感想&お褒めのお言葉をありがとうございます!
直接感想を届けていただく機会は貴重ですので、大変励みになります。
クロ先輩の属する〈おどる剣〉というのは余白の大変多い種族で、そこが魅力的だと思っています。発声するのか、それ以前にコミュニケーション手段は何なのか、そもそも自由意志があるのか……。
アランツァの世界観を損ねない程度の伴奏として、ゴーレムであるはずなのに自分の存在意義が分からず、人間くさくて、ぺらぺら喋る、そんか妙な一振がいても面白いかなと想像を逞しくして書きました。剣に導かれる少年も、ファンタジーの王道ですからね! 気に入っていただけて嬉しいです。
クロ先輩の過去についてはまだプレイヤーも知らないことが多く、これから冒険を重ね、出目を読み取って構築していきます。その時どんな真実が現れるのか、引き続き楽しみにしていただけましたら幸いです。
アグレッシブ先生につきましては……詳しくはまだ申し上げられませんが、最後の最後までお付き合いいただけましたらと。今はそれだけ意味深に記させていただきます。
それでは、改めまして、ありがとうございました!
(忍者福島さん)
ミナが未来を思い出すなんて、ぜろさんが悪夢袋を使って時を戻したのかしら?
それとも、ぜろさんがテクア神そのものだったりして。
(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
そうですね。ゲームブックのプレイヤーは全員、キャラクターを何度もスタート地点に戻させるデウスエクスマキナ神なのです。
ミナに限らず、他のゲームブックのキャラクターたちもすべて、ゲームオーバーになるたびに辿って来た行程を忘れ、繰り返し時を刻んでいます。その中で、時間を操ることができるミナだけが、この超常的な介入のことに漠然と気づいている。きっと、そういうことなのでしょう。
そんな解釈のもと、プレイヤーの力を作中の神の力に差し替えて表現しているのです。
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2025年10月17日金曜日
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4650
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ
※ここからさきはゲームブック【ぼうけん!おばけのもり】のネタバレがあります。きをつけてね。
●さくひんしょうかい
***
りすの りっくんが
「おうごんの どんぐり」を さがしに
「おばけの もり」へ でかけたよ
さあ きみも
りっくんと いっしょに
ぼうけんしよう!
***
(うらびょうしにあるあらすじより)
さあ、こんかいのさくひんは、いままでのものとはまったくちがいます。
タイトルは「ぼうけん! おばけのもり」
さくしゃは、水本(みずもと)シズオさん。
5さいからはじめられるゲームブックです。
イラストがたっぷりはいっています。
しゅじんこうは、りすのりっくん。
よむひとは、りっくんになって、「おばけのもり」へ、「おうごんのどんぐり」をさがしにいきます。
「おばけのもり」にはいろんなおばけがいて、いろんなクイズをだしてきます。
それをこたえてさきにすすんで、さいごに「おうごんのどんぐり」をてにいれられるかな?
もりのなかには、わかれみちもいっぱい。
だから、よむたびにちがうみちで、ちがうおばけとであうこともあるよ。
こんかいは、しょうがっこうにあがるまえのおいっこに、よみきかせてやってみたので、そのようすをリプレイにしてみました。
よろしくね。
●(おとなのかたへ)
今回は、子ども向けのゲームブックを、読み聞かせてプレイした様子をリプレイにしてみました。
うちの甥っ子は、どちらかというとあまり読むことが好きではないタイプ。
それでも、読みきかせると興味を持って取り組むことができました。
そんな様子を、リプレイにしてみました。
ずっとひらがなで書くと、逆に読みにくいので、ここからはいつもの漢字混じりのリプレイとさせていただきます。
●アタック01-1 りっくん、おばけのもりへ
その日は、甥っ子の家族と一緒に食事に行くことにしました。
場所は行きつけの、そばとうどんと丼が楽しめるお店です。
そこでふと、この本を手に取ります。
長い待ち時間に、この本があれば、甥ちゃんも退屈しないかも。
時期は10月。甥ちゃんは来年小学生。
ひらがなは読めますが、読むこと自体はあまり好きではないタイプ。
それよりも、わが家のプラモデルを取り出して遊ぶことが大好きです。
私がせっせと作ったプラモをかたっぱしから壊していく破壊王。
もちろん、壊そうと思って壊しているわけではなくて、遊んでいたら壊れてしまうのです。
まだ加減もわかりませんし、プラモデルは脆いものなので。
飾ってあるプラモデルは、子どもの目から見たら素敵なおもちゃにしか見えませんからね。
私は、手に取って好きに遊ぶことも、その結果壊れてしまうことも容認しています。
さて、そんな甥ちゃん一家と一緒に昼食へ。
食事が提供される前の待ち時間に、この本を取り出します。
さっそく甥ちゃん、興味津々。
「やってみる」と言い出しました。
この作品、ルールも何もありません。
とにかく順番に読み進め、指示に沿った番号に行くだけ。
絵を見せながら読み聞かせ、甥ちゃんに選んでもらいます。
***
ぼくの なまえは りっくん
きょうは 「おうごんの どんぐり」を
さがすため 「おばけの もり」に
やってきたんだ。
この ほんを よんでいる みんな
ぼくに ちからを かしてね!
***
さあ、進みましょう。
次の場所はわかれ道。
「ばけねこ」のイラストの道と、「ひとつめこぞう」のイラストの道があります。
今のところ、ヒントは何もありません。
好きに選べばいいのかな。
甥ちゃんは「ひとつめこぞう」の道を選びました。
進むと「ひとつめこぞう」があらわれて、クイズを出してきました。
ある虫のイラストが描かれていて、その下に「カ□キリ」と書いてあります。
「□にはいるもじはなに?」
これは甥ちゃんにも簡単。さっと答えて正解しました。
ひとつめこぞうの道案内で森の中を進み、別れたあたりで雨が降ってきます。
・走る
・小屋で雨宿りをする
甥ちゃん、雨宿りを選びます。
小屋に入ると、そこにはぬらりひょんが!
ぬらりひょんといえば、日本妖怪の総大将ともいわれる妖怪ですね。
ぬらりひょんは、雨についてのクイズを出してきました。
「雨が静かに降る様子を表した言葉はどちらかな?」
・しとしと
・ざあざあ
さて、こういう語い力は、甥ちゃん、どのくらい鍛えられているかな?
甥ちゃん、擬音で表すことの意味が、あまり理解できていないみたい。一度聞き返してきました。
「雨がざあざあ降るのと、雨がしとしと降るのは、どっちが静かかな?」
ヒント混じりに聞いてみると、甥ちゃん、正解しました。
ぬらりひょんは、「雨が止んだらこの穴を探しなさい」と、イラストつきでほら穴を教えてくれました。穴の横には花が咲いています。
先へと進みます。
すぐ次が、穴でした。
イラストつきで、大きいほら穴と、小さいほら穴があります。
どっちに入ろうか?
すると甥ちゃん、大きい方、と即答です。
じゃあ、大きい方でいいんだね、と言いながら、さっきのぬらりひょんのページのイラストをそっと見せると……。
「小さい方だ」と訂正しました。そう。小さい方の穴のそばに、花が咲いていたのです。
じゃあ、小さい方の穴に入っていきましょう。
●アタック01-2 甥ちゃんと魔女の女の子
穴に入ると、次の場面へ。
そこには、穴があみだくじのようになっていました。
3つの入口のうち1つを選んで、あみだくじをたどって3つのゴールのどこかに向かいます。
3つの入口は好きに選んでいいみたいですし、ノーヒントなので、当たり外れがあるわけではない、ただの分かれ道のようです。
さて、あみだくじの進み方を説明。
甥ちゃんに選んでもらいます。
すると甥ちゃん、入口を選ぶと、そのままずどんと直進!
「まがりみちがあったら必ず曲がるって書いてあるよ」
甥ちゃんにアドバイス。
すると甥ちゃん、1回だけ曲がると、そのままずどんと直進!
うん。……ま、いっか。
甥ちゃんが選んだルートを進みます。
すると、川が流れていました。
これじゃ、渡れません。
困っていると、女の子の声が聞こえてきました。
「川を渡りたいならクイズに答えてね」
ここのクイズは、ちょっと複雑でした。
出されたクイズは2問。
その2問のこたえを繋げると、女の子の場所がわかる、というものです。
選択肢は
・木を調べる
・大きな岩を調べる
この2択です。
さて、肝心の2問のクイズというのは。
1 きょうのつぎのひは「あした」。では、きょうのまえのひは?
2 あかになにをまぜるとピンクになる?
甥ちゃん、2番の方は即答で答えられました。
でも、1問目のほうがわかりません。
完全に詰まってしまいました。
「あさって」や「おととい」をヒントに出してみましたが、ますます混乱してしまったみたい。
でも、わからないでは先に進めないし、選べない。
なので、一文字目から「き」「の」…と、ゆっくり言っていったところ、ようやくわかったみたいです。
でも、答えがわかっても、次がまたわかりません。
1と2の答えを繋げて、女の子の場所を探すのです。
どっちを調べればいいか、わかりますよね?
甥ちゃんはわからなくて、また困っています。
今の答えを繋げて言ってごらん? そう促しましたが、自分で言ってもピンとこないみたい。
私がゆっくり言ってみて、それでもわからないみたい。
なので、単に答えを繋げて言うだけでなく、抑揚をつけて言うことで、ようやくわかりました。
甥ちゃん、木の方を調べます。
木の後ろに隠れていたのは、魔女の女の子。
「かわいい!」
イラストを見て、甥ちゃん超反応。
甥ちゃんは、かわいい女の子が大好きなのです。
この時の前の夏祭りでも、巫女姿の小学生のお姉さんに、「かわいい」を連発して、逆にかわいがられていました。
巫女さん萌えとか、将来有望すぎます。私の目から見ても本当にかわいかったので、気持ちはわかりますが。
巫女さん……じゃなかった、魔女の女の子は、甥ちゃん……じゃなかった、りっくんをほうきに乗せて、一緒に飛んで川を渡ってくれました。
●アタック01-3 おうごんのどんぐり
魔女の女の子に乗せてもらって、川を渡ります。
川を渡ったところで、地上からふしぎな歌が聞こえてきました。
♪あるかな さかな
魔女さんと別れて地上に降りるか、飛び続けるかを選びます。
甥ちゃんは、飛び続ける方を選びました。
そうだよね、甥ちゃん、魔女さんお気に入りだもんね。
魔女の女の子と一緒に空を飛んでいると、同じく空を飛ぶ、いったんもめんに出会います。
いったんもめんとは、布がひらひら舞っている妖怪です。
いったんもめんはクイズを出してきました。
「たいようをえいごでいうと?」
答えは、
・サン
・ヨン
のどちらかです。
英語はどうかな。わかるかな。
わからないならパパちゃんに聞いてもいいよ?
甥ちゃん、いったんパパちゃんに聞きかけましたが、何か思いついたのか、自分で答えます。
はい、正解!
よく知っていたね。
魔女の女の子と、いったんもめんとは、ここでお別れです。
おうごんのどんぐりのことを聞いたら、教えてくれました。
「おになら、なにかしっているはずだ」
「おにさんはあっちにすんでいるよ」
教えてもらった道を歩いていくと、おにに会いました。
おには、やっぱり、クイズを出してきます。
「この文字を並べて言葉を作ってみな!」
「う」「ゆ」「き」
これは甥ちゃん、自分で考えて、すぐに答えがわかりました。
よくできました。
おにから、おうごんのどんぐりに行くためのアドバイス。
「分かれ道では、左、右、交互に行こう」
さあ、おうごんのどんぐりまで、もうすぐ!
森の迷路です。
スタートから、迷路をたどって進みます。
出口は2つ。どちらかが正解で、どちらかが間違いの道です。
ヒントは、おにさんが出した「分かれ道では、左、右、交互に行こう」です。
さあ、甥ちゃん、やってみ……。
甥ちゃん、迷路を辿ることなく、一方の出口に決めちゃいました。
そういえば、そうでした。甥ちゃん、前から「めいろあそび」のたぐいには、あんまり興味を示さなかったんよね。
そっちで、いいのね?
「うん」
じゃあ、そのまま進みますか。
ちなみに、迷路を目で追って、そっちが正解なのは確認済みです。
迷路を抜けると、3人のこだまに出会いました。
それから、イラストで4本の木が描かれています。
こだまたちは、いっせいにヒントを言います。
スリーヒントクイズですね。3つのヒントから正解の木を当てるやつ。
「動物のいる木だよ」
「果物のない木だよ」
「葉っぱがたくさんある木だよ」
ヒントを言ったら、甥ちゃん、即答で当たりの木を指さしました!
よくできました。やったね。
その木から、光かがやくどんぐりが、ゆっくりと落ちてきます。
これが、おうごんのどんぐり!
やったね!
ついにおうごんのどんぐりをみつけたぞ!
もりのおばけたちもよろこんでくれたよ。
よくがんばったね。おめでとう!
おしまい。
●感想
イラストが児童向けでかわいい!
全部のパラグラフにイラストがついてて、わかりやすい!
すごくいい作品ですよこれ。なんで普通に市販していないのか不思議に思うくらいの出来です。素晴らしい!
甥ちゃん、楽しんでくれたみたいでよかったぁ。
5歳からできるよってことだったけれど、このくらいの年の子だと、その子ごとの知識や経験の差が出やすいですね。
答えられるものと答えられないものとにはっきりわかれる感じはありました。
このくらいの年の子に共通して言えるのに、わからなかったり間違えちゃったりすると、とたんにおもしろくなくなってしまうってのがあるのかも。
甥ちゃんもそんな感じなので、ヒントを出しながら正解に導いてあげる方が楽しめるかな。
だからけっきょく、間違えた先のパラグラフを見ることは、そんなにないのかもしれません。
正しくプレイするというよりも、これを読みきかせる大人の思惑としては、ゲームブックって楽しいって思ってもらう方が目的になりますからね。
クイズの中で知らないことが出てきたときに、ここで答えを知って、知識を得るというのもありますよね。
甥ちゃんは、あんまり本に興味は示さない子だったのですが、このあと、この本を貸してほしいというので、貸しました。
その後どのくらい読んだのかはわかりませんが、そこそこページを開いたあとはあったので、読んだのかな。
その後、いっこうに返ってくる気配がなかったので、このリプレイを書くために返してもらいました。
なので、実際に甥ちゃんがこれをプレイしたのは、実はだいぶ前なのでした。
ああ、そういえばドラえもんの映画のDVD、まだ返してもらってないなぁ。
ここ2年くらい、自分が見るより先に貸してたから、まだ見てないんですよね。
今は甥ちゃんは小学生。週末のたびに遊びに来ては、ニンテンドーswitchで遊んでいきます。
マリオが好きで、スーパーマリオ2本とピーチ姫のやつと、ルイージマンション2をクリアしてますね。
他にもゼルダの伝説の最新作とか、ルイージマンション3、カービィなどなど、いろいろ途中までやり散らかしているようです。今はピクミンにハマり中。
なんてうらやましい環境なんだ。
おかげで、積みっぱなしのうちのゲームソフト、一部は無駄になってはいないです。
まあ、うちの積みはそんなものじゃないけどね。
その気になったら、甥ちゃんが一生かけてもやりきれないほどのゲームソフトと本とプラモが積んであるからね。
私の部屋は「宝の山」らしいので、たぶん甥ちゃんの成長にともなって、興味を引くものがどんどん増えていくんだろうなぁ。
なお、プラモの破壊王は、この甥ちゃんの弟に無事?引き継がれました。
そんなわけで、今回のリプレイは、おしまい!
ところで、「ぼうけん! おばけのもり」は、長らく品切れ状態が続いていました。
このリプレイ掲載の許可を取るために、作者の水本シズオ様に連絡を取ってみたところ、11月に再販の予定があるそうですよ。
このリプレイを読んで気になった方は、ぜひ注文して手に取っていただけたら幸いです。
それではまた、次は別のリプレイでお会いしましょう。
■登場人物
ぜろ 本の持ち主。甥ちゃんに読み聞かせをする。
甥ちゃん このリプレイのプレイヤー。りすのりっくんとして冒険に出発!
りっくん りすのりっくん。「おうごんのどんぐり」をさがして「おばけのもり」にきた。
魔女の女の子 ほうきで空を飛んで川を渡らせてくれた。甥ちゃんのお気に入り。
巫女のお姉さん 地元のお祭りで巫女装束をしていた小学生くらいの女の子。
■作品情報
作品名:ぼうけん! おばけのもり
作:水本シズオ
絵:福良ベッケ
発行:ゲームブック温故屋
購入はこちら
https://onkoya.booth.pm/items/2138997
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●さくひんしょうかい
***
りすの りっくんが
「おうごんの どんぐり」を さがしに
「おばけの もり」へ でかけたよ
さあ きみも
りっくんと いっしょに
ぼうけんしよう!
***
(うらびょうしにあるあらすじより)
さあ、こんかいのさくひんは、いままでのものとはまったくちがいます。
タイトルは「ぼうけん! おばけのもり」
さくしゃは、水本(みずもと)シズオさん。
5さいからはじめられるゲームブックです。
イラストがたっぷりはいっています。
しゅじんこうは、りすのりっくん。
よむひとは、りっくんになって、「おばけのもり」へ、「おうごんのどんぐり」をさがしにいきます。
「おばけのもり」にはいろんなおばけがいて、いろんなクイズをだしてきます。
それをこたえてさきにすすんで、さいごに「おうごんのどんぐり」をてにいれられるかな?
もりのなかには、わかれみちもいっぱい。
だから、よむたびにちがうみちで、ちがうおばけとであうこともあるよ。
こんかいは、しょうがっこうにあがるまえのおいっこに、よみきかせてやってみたので、そのようすをリプレイにしてみました。
よろしくね。
●(おとなのかたへ)
今回は、子ども向けのゲームブックを、読み聞かせてプレイした様子をリプレイにしてみました。
うちの甥っ子は、どちらかというとあまり読むことが好きではないタイプ。
それでも、読みきかせると興味を持って取り組むことができました。
そんな様子を、リプレイにしてみました。
ずっとひらがなで書くと、逆に読みにくいので、ここからはいつもの漢字混じりのリプレイとさせていただきます。
●アタック01-1 りっくん、おばけのもりへ
その日は、甥っ子の家族と一緒に食事に行くことにしました。
場所は行きつけの、そばとうどんと丼が楽しめるお店です。
そこでふと、この本を手に取ります。
長い待ち時間に、この本があれば、甥ちゃんも退屈しないかも。
時期は10月。甥ちゃんは来年小学生。
ひらがなは読めますが、読むこと自体はあまり好きではないタイプ。
それよりも、わが家のプラモデルを取り出して遊ぶことが大好きです。
私がせっせと作ったプラモをかたっぱしから壊していく破壊王。
もちろん、壊そうと思って壊しているわけではなくて、遊んでいたら壊れてしまうのです。
まだ加減もわかりませんし、プラモデルは脆いものなので。
飾ってあるプラモデルは、子どもの目から見たら素敵なおもちゃにしか見えませんからね。
私は、手に取って好きに遊ぶことも、その結果壊れてしまうことも容認しています。
さて、そんな甥ちゃん一家と一緒に昼食へ。
食事が提供される前の待ち時間に、この本を取り出します。
さっそく甥ちゃん、興味津々。
「やってみる」と言い出しました。
この作品、ルールも何もありません。
とにかく順番に読み進め、指示に沿った番号に行くだけ。
絵を見せながら読み聞かせ、甥ちゃんに選んでもらいます。
***
ぼくの なまえは りっくん
きょうは 「おうごんの どんぐり」を
さがすため 「おばけの もり」に
やってきたんだ。
この ほんを よんでいる みんな
ぼくに ちからを かしてね!
***
さあ、進みましょう。
次の場所はわかれ道。
「ばけねこ」のイラストの道と、「ひとつめこぞう」のイラストの道があります。
今のところ、ヒントは何もありません。
好きに選べばいいのかな。
甥ちゃんは「ひとつめこぞう」の道を選びました。
進むと「ひとつめこぞう」があらわれて、クイズを出してきました。
ある虫のイラストが描かれていて、その下に「カ□キリ」と書いてあります。
「□にはいるもじはなに?」
これは甥ちゃんにも簡単。さっと答えて正解しました。
ひとつめこぞうの道案内で森の中を進み、別れたあたりで雨が降ってきます。
・走る
・小屋で雨宿りをする
甥ちゃん、雨宿りを選びます。
小屋に入ると、そこにはぬらりひょんが!
ぬらりひょんといえば、日本妖怪の総大将ともいわれる妖怪ですね。
ぬらりひょんは、雨についてのクイズを出してきました。
「雨が静かに降る様子を表した言葉はどちらかな?」
・しとしと
・ざあざあ
さて、こういう語い力は、甥ちゃん、どのくらい鍛えられているかな?
甥ちゃん、擬音で表すことの意味が、あまり理解できていないみたい。一度聞き返してきました。
「雨がざあざあ降るのと、雨がしとしと降るのは、どっちが静かかな?」
ヒント混じりに聞いてみると、甥ちゃん、正解しました。
ぬらりひょんは、「雨が止んだらこの穴を探しなさい」と、イラストつきでほら穴を教えてくれました。穴の横には花が咲いています。
先へと進みます。
すぐ次が、穴でした。
イラストつきで、大きいほら穴と、小さいほら穴があります。
どっちに入ろうか?
すると甥ちゃん、大きい方、と即答です。
じゃあ、大きい方でいいんだね、と言いながら、さっきのぬらりひょんのページのイラストをそっと見せると……。
「小さい方だ」と訂正しました。そう。小さい方の穴のそばに、花が咲いていたのです。
じゃあ、小さい方の穴に入っていきましょう。
●アタック01-2 甥ちゃんと魔女の女の子
穴に入ると、次の場面へ。
そこには、穴があみだくじのようになっていました。
3つの入口のうち1つを選んで、あみだくじをたどって3つのゴールのどこかに向かいます。
3つの入口は好きに選んでいいみたいですし、ノーヒントなので、当たり外れがあるわけではない、ただの分かれ道のようです。
さて、あみだくじの進み方を説明。
甥ちゃんに選んでもらいます。
すると甥ちゃん、入口を選ぶと、そのままずどんと直進!
「まがりみちがあったら必ず曲がるって書いてあるよ」
甥ちゃんにアドバイス。
すると甥ちゃん、1回だけ曲がると、そのままずどんと直進!
うん。……ま、いっか。
甥ちゃんが選んだルートを進みます。
すると、川が流れていました。
これじゃ、渡れません。
困っていると、女の子の声が聞こえてきました。
「川を渡りたいならクイズに答えてね」
ここのクイズは、ちょっと複雑でした。
出されたクイズは2問。
その2問のこたえを繋げると、女の子の場所がわかる、というものです。
選択肢は
・木を調べる
・大きな岩を調べる
この2択です。
さて、肝心の2問のクイズというのは。
1 きょうのつぎのひは「あした」。では、きょうのまえのひは?
2 あかになにをまぜるとピンクになる?
甥ちゃん、2番の方は即答で答えられました。
でも、1問目のほうがわかりません。
完全に詰まってしまいました。
「あさって」や「おととい」をヒントに出してみましたが、ますます混乱してしまったみたい。
でも、わからないでは先に進めないし、選べない。
なので、一文字目から「き」「の」…と、ゆっくり言っていったところ、ようやくわかったみたいです。
でも、答えがわかっても、次がまたわかりません。
1と2の答えを繋げて、女の子の場所を探すのです。
どっちを調べればいいか、わかりますよね?
甥ちゃんはわからなくて、また困っています。
今の答えを繋げて言ってごらん? そう促しましたが、自分で言ってもピンとこないみたい。
私がゆっくり言ってみて、それでもわからないみたい。
なので、単に答えを繋げて言うだけでなく、抑揚をつけて言うことで、ようやくわかりました。
甥ちゃん、木の方を調べます。
木の後ろに隠れていたのは、魔女の女の子。
「かわいい!」
イラストを見て、甥ちゃん超反応。
甥ちゃんは、かわいい女の子が大好きなのです。
この時の前の夏祭りでも、巫女姿の小学生のお姉さんに、「かわいい」を連発して、逆にかわいがられていました。
巫女さん萌えとか、将来有望すぎます。私の目から見ても本当にかわいかったので、気持ちはわかりますが。
巫女さん……じゃなかった、魔女の女の子は、甥ちゃん……じゃなかった、りっくんをほうきに乗せて、一緒に飛んで川を渡ってくれました。
●アタック01-3 おうごんのどんぐり
魔女の女の子に乗せてもらって、川を渡ります。
川を渡ったところで、地上からふしぎな歌が聞こえてきました。
♪あるかな さかな
魔女さんと別れて地上に降りるか、飛び続けるかを選びます。
甥ちゃんは、飛び続ける方を選びました。
そうだよね、甥ちゃん、魔女さんお気に入りだもんね。
魔女の女の子と一緒に空を飛んでいると、同じく空を飛ぶ、いったんもめんに出会います。
いったんもめんとは、布がひらひら舞っている妖怪です。
いったんもめんはクイズを出してきました。
「たいようをえいごでいうと?」
答えは、
・サン
・ヨン
のどちらかです。
英語はどうかな。わかるかな。
わからないならパパちゃんに聞いてもいいよ?
甥ちゃん、いったんパパちゃんに聞きかけましたが、何か思いついたのか、自分で答えます。
はい、正解!
よく知っていたね。
魔女の女の子と、いったんもめんとは、ここでお別れです。
おうごんのどんぐりのことを聞いたら、教えてくれました。
「おになら、なにかしっているはずだ」
「おにさんはあっちにすんでいるよ」
教えてもらった道を歩いていくと、おにに会いました。
おには、やっぱり、クイズを出してきます。
「この文字を並べて言葉を作ってみな!」
「う」「ゆ」「き」
これは甥ちゃん、自分で考えて、すぐに答えがわかりました。
よくできました。
おにから、おうごんのどんぐりに行くためのアドバイス。
「分かれ道では、左、右、交互に行こう」
さあ、おうごんのどんぐりまで、もうすぐ!
森の迷路です。
スタートから、迷路をたどって進みます。
出口は2つ。どちらかが正解で、どちらかが間違いの道です。
ヒントは、おにさんが出した「分かれ道では、左、右、交互に行こう」です。
さあ、甥ちゃん、やってみ……。
甥ちゃん、迷路を辿ることなく、一方の出口に決めちゃいました。
そういえば、そうでした。甥ちゃん、前から「めいろあそび」のたぐいには、あんまり興味を示さなかったんよね。
そっちで、いいのね?
「うん」
じゃあ、そのまま進みますか。
ちなみに、迷路を目で追って、そっちが正解なのは確認済みです。
迷路を抜けると、3人のこだまに出会いました。
それから、イラストで4本の木が描かれています。
こだまたちは、いっせいにヒントを言います。
スリーヒントクイズですね。3つのヒントから正解の木を当てるやつ。
「動物のいる木だよ」
「果物のない木だよ」
「葉っぱがたくさんある木だよ」
ヒントを言ったら、甥ちゃん、即答で当たりの木を指さしました!
よくできました。やったね。
その木から、光かがやくどんぐりが、ゆっくりと落ちてきます。
これが、おうごんのどんぐり!
やったね!
ついにおうごんのどんぐりをみつけたぞ!
もりのおばけたちもよろこんでくれたよ。
よくがんばったね。おめでとう!
おしまい。
●感想
イラストが児童向けでかわいい!
全部のパラグラフにイラストがついてて、わかりやすい!
すごくいい作品ですよこれ。なんで普通に市販していないのか不思議に思うくらいの出来です。素晴らしい!
甥ちゃん、楽しんでくれたみたいでよかったぁ。
5歳からできるよってことだったけれど、このくらいの年の子だと、その子ごとの知識や経験の差が出やすいですね。
答えられるものと答えられないものとにはっきりわかれる感じはありました。
このくらいの年の子に共通して言えるのに、わからなかったり間違えちゃったりすると、とたんにおもしろくなくなってしまうってのがあるのかも。
甥ちゃんもそんな感じなので、ヒントを出しながら正解に導いてあげる方が楽しめるかな。
だからけっきょく、間違えた先のパラグラフを見ることは、そんなにないのかもしれません。
正しくプレイするというよりも、これを読みきかせる大人の思惑としては、ゲームブックって楽しいって思ってもらう方が目的になりますからね。
クイズの中で知らないことが出てきたときに、ここで答えを知って、知識を得るというのもありますよね。
甥ちゃんは、あんまり本に興味は示さない子だったのですが、このあと、この本を貸してほしいというので、貸しました。
その後どのくらい読んだのかはわかりませんが、そこそこページを開いたあとはあったので、読んだのかな。
その後、いっこうに返ってくる気配がなかったので、このリプレイを書くために返してもらいました。
なので、実際に甥ちゃんがこれをプレイしたのは、実はだいぶ前なのでした。
ああ、そういえばドラえもんの映画のDVD、まだ返してもらってないなぁ。
ここ2年くらい、自分が見るより先に貸してたから、まだ見てないんですよね。
今は甥ちゃんは小学生。週末のたびに遊びに来ては、ニンテンドーswitchで遊んでいきます。
マリオが好きで、スーパーマリオ2本とピーチ姫のやつと、ルイージマンション2をクリアしてますね。
他にもゼルダの伝説の最新作とか、ルイージマンション3、カービィなどなど、いろいろ途中までやり散らかしているようです。今はピクミンにハマり中。
なんてうらやましい環境なんだ。
おかげで、積みっぱなしのうちのゲームソフト、一部は無駄になってはいないです。
まあ、うちの積みはそんなものじゃないけどね。
その気になったら、甥ちゃんが一生かけてもやりきれないほどのゲームソフトと本とプラモが積んであるからね。
私の部屋は「宝の山」らしいので、たぶん甥ちゃんの成長にともなって、興味を引くものがどんどん増えていくんだろうなぁ。
なお、プラモの破壊王は、この甥ちゃんの弟に無事?引き継がれました。
そんなわけで、今回のリプレイは、おしまい!
ところで、「ぼうけん! おばけのもり」は、長らく品切れ状態が続いていました。
このリプレイ掲載の許可を取るために、作者の水本シズオ様に連絡を取ってみたところ、11月に再販の予定があるそうですよ。
このリプレイを読んで気になった方は、ぜひ注文して手に取っていただけたら幸いです。
それではまた、次は別のリプレイでお会いしましょう。
■登場人物
ぜろ 本の持ち主。甥ちゃんに読み聞かせをする。
甥ちゃん このリプレイのプレイヤー。りすのりっくんとして冒険に出発!
りっくん りすのりっくん。「おうごんのどんぐり」をさがして「おばけのもり」にきた。
魔女の女の子 ほうきで空を飛んで川を渡らせてくれた。甥ちゃんのお気に入り。
巫女のお姉さん 地元のお祭りで巫女装束をしていた小学生くらいの女の子。
■作品情報
作品名:ぼうけん! おばけのもり
作:水本シズオ
絵:福良ベッケ
発行:ゲームブック温故屋
購入はこちら
https://onkoya.booth.pm/items/2138997
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2025年10月16日木曜日
明け方の時 FT新聞 No.4649
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
明け方の時
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
わたくしは
しろいもの憧(あくが)れてゐるんですよ、
——そのように、確かにあなたは言つたのだ。
りる りる ろろ ろろ
かすかにも
さしこめたる陽のしろきひかりは、
——それをあび、浮ぶも沈むも花のかほりと。
さら さら ぜれ ぜれ
けむれるは
思ひのたけを綴るはだざわりなく、
——にほへども、形もなきまま虚しきこわね。
よる よる すず すず
たびすれば
あへぐこえの香(か)おしつけるやみじ、
——かざしもで、雪をとめのなみだはかれて。
ぴる ぴる しら しら
みじろぐも
みどりごの乳みずみずしくなびき、
——めくれるは、ボオドレエルの詩篇が一つ。
たゆ たゆ りり りり
(天から あそびに いらして またもや
かえること なしに とどまり しばれる)
初出:『日本現代詩選2024』
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
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わたくしは
しろいもの憧(あくが)れてゐるんですよ、
——そのように、確かにあなたは言つたのだ。
りる りる ろろ ろろ
かすかにも
さしこめたる陽のしろきひかりは、
——それをあび、浮ぶも沈むも花のかほりと。
さら さら ぜれ ぜれ
けむれるは
思ひのたけを綴るはだざわりなく、
——にほへども、形もなきまま虚しきこわね。
よる よる すず すず
たびすれば
あへぐこえの香(か)おしつけるやみじ、
——かざしもで、雪をとめのなみだはかれて。
ぴる ぴる しら しら
みじろぐも
みどりごの乳みずみずしくなびき、
——めくれるは、ボオドレエルの詩篇が一つ。
たゆ たゆ りり りり
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かえること なしに とどまり しばれる)
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2025年10月15日水曜日
第9回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4648
第9回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加え、いよいよ森へと踏み込みます。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6/7】
金貨 3枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック02-3 フェルとの旅路
旅の供、フェルが言うには、危険な森での宿泊を少しでも減らすため、森の入口で一泊するのが賢い選択だそうだ。
森の入口の空き地には、先客がいた。
黒ねこ人だ。ボクは初めて見る種族だ。
フェルとボクは、おしゃべりをしながら野営の準備を始める。
ねこ人は、特にこちらに話しかけてくることはない。
ボクたちも、最初にあいさつを交わした以外は、特に交流を持つこともしない。
でも、不思議だ。なぜか気になる。
初めて会う種族のはずなのに、初めて会う気がしない。
あのもふもふに包まれたら、気持ちよさそう。
そんなことを思いながら、眠りについた。
朝起きると、ねこ人はもう、いなくなっていた。
なぜだか、少しさびしい気持ちになった。
いよいよ森へと踏み込む。
「還らずの森」は黒々とした木々が生い茂る不気味な森だ。
森の小道はでこぼこしているが、比較的広い。
「ウワサの割にはちゃんとした道があるって思ったろ。ここはかつて、ローズ家との馬車の往来もある道だったのさ」
フェルが説明してくれる。
「放置されてはいるが、日の光が当たらないせいで下草も生えないからな。雨のせいでボコボコになっちゃいるが、道の体は残してるってわけだ」
つまり、この道に沿って進めば、ローズ家の館へ行けるということか。
「道沿いは比較的安全だ。人が通らないから待ち伏せする魔物もない。けど、縄張りを巡回中の魔物に出くわしたら戦いは避けられない」
フェルは、森で特に注意しなければならない魔物について教えてくれた。
「館の当主が吸血鬼になってから、この森には吸血獣が増えた。巨大な吸血コウモリみたいなバケモンだ。魔物っていっても、吸血鬼みたいに不死。手ごわい相手だ。けど、それは同時に吸血鬼と同じ弱点があるってことでもある」
その時、茂みがガサガサと音を立てた。
その気配に、フェルが反応する。
「やれやれ。噂をすればなんとやら、だ。できれば会いたくなかったんだがな」
茂みの影からこちらの様子を伺っている魔物。おそらくたった今フェルが言っていた吸血獣だろう。
「吸血鬼対策は何かあるか? ないなら、全力で戦うしかない。ヤツを明るいところに引きずり出すんだ」
フェルが石弓を射る。茂みから、手負いの吸血獣が飛び出した。
それはまっすぐボクに向かってきて、ボクは押し倒された。鋭い痛みが走る。
でも、ボクも負けてばかりはいられない。剣で応戦した。
吸血獣に太陽光を当てて倒す頃には、ボクもフェルも完全に息が切れていた。
傷だらけだ。体力点を2点だけでなく、「不死化傷」まで負ってしまった。
傷は青白く変色し、出血もしていない。麻痺したように痛みを感じないのが、逆に不気味だ。
「吸血鬼に噛まれた時に出る症状だな」
ボクの傷を診ながらフェルが言う。
「こんくらいなら大丈夫だろう。けど、あんまり重なると、自分自身が不死のバケモンになっちまうから気をつけな」
<時もどしの回復時計>なら傷を負う前に戻せるから、不死化傷そのものを消してしまえるかもしれない。
けどボクはまだその時計を修理していない。
半日は歩いただろうか。
道は分岐へ差し掛かった。左の道はローズ家に向かう小道で、途中に時計塔がある。
右手の道は少し狭いが、道の踏み固められ具合から、こちらの方が往来が多い印象だ。
「右へは行かない方がいい」
「どうして?」
「そっちには、闇エルフの隠れ里があるんだよ。最近はあんまり隠れちゃいないけどな」
普段はこの分岐、雑木でカモフラージュされていて、道が続いているとは見えないようになっているらしい。
それが取り払われているのは、最近外縁の村に来た闇エルフの集団が通ったせいかもしれない。
「キミさあ、メッチャ行ってみたいって顔してるぞ。闇エルフじゃないんだろ。それともホントは闇エルフなん?」
違うよ。けど、もしかしたら姉たちを連れた闇エルフの一団が立ち寄ってる可能性があるし。
手がかりがあるかもって思うんだ。ボクの予感がそう言ってる。
「闇エルフの怖さを知らないから言えるんだ。森の外のあの村なんて搾取されすぎて、逆らう気力ごと根こそぎ奪われてるんだぜ」
それを聞いても、ボクの気持ちは揺るがなかった。
「やめとけ。部外者が隠れ里に行ったら、絶対に死ぬからだ。オレもそっちに行くのは避け続けてんだよ」
ボクがそれでも行くと主張すると、フェルは言った。
「だったら、オレの道案内はここまでだ。たしかにキミなら、闇エルフのフリをして潜り込めるかもしれない。それでも帰れるかわからないヤツを、待っちゃいられないんだよ」
仕方がない。ボクは、フェルと別れて歩き出した。
「バッ、やめとけって。待てよ。待てってば。……オレは止めたからな! ったく。こんな後味悪いんなら、案内役引き受けるんじゃなかったぜ」
後ろの方で、フェルの制止とぼやきが聞こえていた。
●アタック02-4 隠れ里にひそむ危機
ボクは、姉たちの手がかりがあると信じ、その道を進む。
闇エルフの隠れ里は、樹上に黒塗りの家々が建てられている。黒い色は、板に特殊な処理がほどこされているのか。
明らかにエルフの様式とは違う建てられ方をしていた。文化的背景が違う。
ボクは同族の旅人を装い、村へと入れてもらった。
けれども、すれ違う闇エルフたちの態度はよそよそしい。
わかってる。よそ者に冷たいのは、エルフも同じだ。
部屋に通され、紅茶を出されたが、いくら待っても誰も来ない。
ボクは意を決して、外に出てみた。もちろん紅茶には手をつけていない。
村の中心へ。
そこにある大きな家の住人の闇エルフに声をかけると、その人こそ村の長ネフェルロックだった。
すべてを見透かすような鋭い瞳に観察されながら、それでもボクは長の家へと招かれ、話を聞くことができた。
甘く重い独特の匂いがたちこめる部屋で、ボクは長にいくつか質問をした。
ボクの予想どおり、姉たちを連れた闇エルフの一団は、この村を経由していた。
それどころか、長自らがローズ家まで同行したことが明らかになった。
どうやらローズ家と闇エルフたちは、協調関係にあるようだった。
長は、ローズ家の秘密の拷問部屋の美しさについて、とくとくと語った。
それはまるで、買われていった姉たちのたどる運命を暗示するようだった。
ボクは聞いていて気分が悪くなった。
ボクが身体に変調をきたしたのは、その時だ。
部屋には最初から、闇エルフ以外の者には毒になるお香が焚かれていた。
長には最初から、ボクが同族じゃないってバレていた。
ボクの持つ魔法の時計に目をつけていて、それで泳がせていたんだ。
フェルの心配は当たっていた。
闇エルフは、部外者を決して生きて帰すようなことはしない。
ぼんやりと意識を失っていくボクは、すんでのところで<枝分かれの未来時計>を動かし、難を逃れることができた。
本当に危ないところだった。時計の力がなければ、ボクは間違いなく、ここで命を落としていただろう。
その後も魔法の時計で選択をやり直しながら、必要な手がかりを手に入れたボクは、村に入る前まで、時間を遡った。
そうして、フェルと別れた分岐へと戻った。
なんと、フェルはまだそこに待っていた。
ボクの姿を見ると、満面で喜びの表情を作った。
「やあ、よかった! 隠れ里に行くの、思いとどまってくれたんだな!」
ん? 話が合わない。
あ。そっか。
すぐに思い当たった。
ボクがここで別れてから、そんなに時間が経っていないんだ。
まさかボクが、闇エルフの隠れ里でものすごい危険な冒険をして、時間を巻き戻して戻ってきた、なんて思うわけないもんね。
ボクが下げている悪夢袋が、ひとつ追加でしぼんでいるのには気づいていないようだ。
それじゃあ、話を合わせておこうかな。
「心配かけて、ごめん」
「いいさ。戻ってくれたんだからな。姉ちゃん助ける前にキミが死んじゃ意味ないだろ」
フェルが小道をくいっと指す。
「それじゃあ、行こうぜ。途中に時計塔がある。そっちになら寄ってってもいいからさ」
「うん。行ってみたい」
「そう言うと思った」
ボクはまた、フェルとともに歩き出した。
●アタック02-5 時計塔のゴーレム
時計塔への入口は、使われなくなって久しいようで、そこに至る道には刺々しい植物が邪魔をしていた。
「こっちの方が安全だ」
フェルは近くのけもの道を案内し、ボクらは難なく時計塔にたどり着いた。
「どうだいこの時計塔。我らノームのからくりの技術の粋さ!」
フェルが自慢げに言う。彼もこの時計塔を、ボクに見せたかったに違いない。
時計塔は古びており、ツタが絡まっていたが、最上階3階にある時計は今も正確に時を刻んでいた。
ボクはそのまま時計塔の入口に近づく。
「お。入るつもりかい。でも感心しないな。強引な手段で入ろうとするとワナが作動するのがお約束ってもんだ」
もしかして、フェルがカギを持っているとか?
「残念。持ってないんだなこれが」
ボクは入り口をスルーして、裏へと回った。闇エルフの隠れ里で聞いていた、隠された裏口の情報。
そのとおり、目立たないところに小さな、ノームサイズの入口を発見した。
「え。なんでこんな隠し入口知ってんの。オレも知らなかったのに」
それには答えずに、入口をガチャガチャやっているうちに、簡単に扉は開いた。
くぐるようにして、中に入る。
「そっか。そんなに精巧で不思議なノームの時計を持ってるんだもんな。知っててもおかしくないか」
フェルは勝手に納得して、ボクの後について扉をくぐる。
時計塔の中は吹き抜けになっている。
入口側の扉の上部にはなにかの仕掛けがついており、フェルの警告通り、ワナが設置されているのは明らかだった。
1階はホールのほかに、上へと続く階段と、奥への部屋がある。
奥の部屋へと続くアーチのところに、シンプルな構造のゴーレムが立っていた。
・奥の部屋を見たい
・2階に登る
もちろん、奥の部屋を確認してみたい。
「気をつけろ。たぶん動くぞ、あいつ」
うん。ボクもそう思う。
近づくと案の定、ゴーレムは動き出した。機械音とともに畳まれた足を伸ばし、立ち上がる。
「命令を与えるキーワードがあればなんとかなるんだけど、さすがに知らないよな?」
ボクはうなずく。
「じゃ、壊すしかないか」
フェルが石弓を構えた。その時、ゴーレムの頭部がぐりん、と回転し、顔が現れた。
巨大な宝石めいた単眼が輝く顔だ。その単眼は輝きを増し、力を蓄えているように見えた。
なにか、危険なものがくる。直感した。
赤い光の筋が、ゴーレムの単眼から発射された。狙いは、ボク。
避けられない!
その時、フェルの石弓から射出された矢が、ゴーレムの顔の斜め下部分にヒットした。
その衝撃で、ゴーレムの狙いがやや上方に逸れた。
それでも完全に狙いを外しきることはできず、ボクは肩口に衝撃を感じて吹き飛ばされた。
体力点に1点のダメージを負い、ボクはのろのろと立ち上がる。
肩口が焼けるように熱いが、骨は折れていないようだ。
「はは。やった。やったぞ」
フェルはガッツポーズ。見るとゴーレムは、仰向けに倒れていた。
「一度発射したら反動で倒れて起き上がれないなんて、欠陥品だな」
フェルはゴーレムを分解にかかっている。かなり器用だ。
「また動き出されちゃかなわないからな。おっと。これ、キミの時計の修理に使えるんじゃないか?」
フェルは1枚の小さな歯車を取り出した。たしかに、ボクの時計の規格にぴったり合いそうだ。
ボクはフェルがゴーレムを分解している間に、時計の修理をすることにした。
修理するのは<速撃の戦時計>だ。ボクの弱点を補ってくれるこの時計は、いち早く修理したいと思っていた。
ボクが時計の修理を終える頃、フェルもちょうど分解作業を終えたみたいだった。
「さて、じゃ、奥の部屋を見てみようか」
フェルの方が興味津々だ。やはりからくりには、ノームの心を動かす何かがあるらしい。
奥の部屋は、作業部屋のようになっていた。部品や羊皮紙が散らばっている。そしてなんと、チャマイの魔法学校と7人の賢者のジオラマがある。
・机の上の部品から役立つものを集める
・羊皮紙を見たい
・この場を去る
フェルが羊皮紙を手に取って、うんうんとうなっていた。
何かの設計図のようだ。何ができるんだろう。気になるから、持って行くことにした。
とはいえ、作る機会があるとは思えないけれど。
机の上の部品をかきわけ、何かめぼしいものがないか探してみる。
フェルはちょいちょい興味を引くものをみつけたらしく、自らの荷物袋に放り込んでいた。
今は、かさばりそうな部品の前で、重さと欲しさのせめぎ合いで迷っている。
ボクは、小さなシャーレに入れられた、2枚の歯車を見つけた。時計の修理に使えそう。
フェルが悩んでいる間に、ここで時計を修理しておくことにした。
次に修理するのは、<時もどしの回復時計>だ。
ボクはさっきのゴーレムの光線みたいな攻撃で傷ついてるし、吸血獣との戦いで「不死化傷」も負っている。
回復ができる時計の力が必要なのは明らかだった。
<時もどしの回復時計>の修理を終えても、フェルはまだ悩んでいるようだった。
ボクは、そろそろ行こうと声をかけた。
フェルは結局、その部品をあきらめたようだ。
後ろ髪を引かれるように立ち上がると、ボクと一緒に2階へと上がった。
次回、時計塔の攻略の次は、ゾンビ墓地へと。
【ミナ 体力点4→2→1/4 悪夢袋6→5/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0→1→0→2→0枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。5日前を最後に日記は途切れている。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加え、いよいよ森へと踏み込みます。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6/7】
金貨 3枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック02-3 フェルとの旅路
旅の供、フェルが言うには、危険な森での宿泊を少しでも減らすため、森の入口で一泊するのが賢い選択だそうだ。
森の入口の空き地には、先客がいた。
黒ねこ人だ。ボクは初めて見る種族だ。
フェルとボクは、おしゃべりをしながら野営の準備を始める。
ねこ人は、特にこちらに話しかけてくることはない。
ボクたちも、最初にあいさつを交わした以外は、特に交流を持つこともしない。
でも、不思議だ。なぜか気になる。
初めて会う種族のはずなのに、初めて会う気がしない。
あのもふもふに包まれたら、気持ちよさそう。
そんなことを思いながら、眠りについた。
朝起きると、ねこ人はもう、いなくなっていた。
なぜだか、少しさびしい気持ちになった。
いよいよ森へと踏み込む。
「還らずの森」は黒々とした木々が生い茂る不気味な森だ。
森の小道はでこぼこしているが、比較的広い。
「ウワサの割にはちゃんとした道があるって思ったろ。ここはかつて、ローズ家との馬車の往来もある道だったのさ」
フェルが説明してくれる。
「放置されてはいるが、日の光が当たらないせいで下草も生えないからな。雨のせいでボコボコになっちゃいるが、道の体は残してるってわけだ」
つまり、この道に沿って進めば、ローズ家の館へ行けるということか。
「道沿いは比較的安全だ。人が通らないから待ち伏せする魔物もない。けど、縄張りを巡回中の魔物に出くわしたら戦いは避けられない」
フェルは、森で特に注意しなければならない魔物について教えてくれた。
「館の当主が吸血鬼になってから、この森には吸血獣が増えた。巨大な吸血コウモリみたいなバケモンだ。魔物っていっても、吸血鬼みたいに不死。手ごわい相手だ。けど、それは同時に吸血鬼と同じ弱点があるってことでもある」
その時、茂みがガサガサと音を立てた。
その気配に、フェルが反応する。
「やれやれ。噂をすればなんとやら、だ。できれば会いたくなかったんだがな」
茂みの影からこちらの様子を伺っている魔物。おそらくたった今フェルが言っていた吸血獣だろう。
「吸血鬼対策は何かあるか? ないなら、全力で戦うしかない。ヤツを明るいところに引きずり出すんだ」
フェルが石弓を射る。茂みから、手負いの吸血獣が飛び出した。
それはまっすぐボクに向かってきて、ボクは押し倒された。鋭い痛みが走る。
でも、ボクも負けてばかりはいられない。剣で応戦した。
吸血獣に太陽光を当てて倒す頃には、ボクもフェルも完全に息が切れていた。
傷だらけだ。体力点を2点だけでなく、「不死化傷」まで負ってしまった。
傷は青白く変色し、出血もしていない。麻痺したように痛みを感じないのが、逆に不気味だ。
「吸血鬼に噛まれた時に出る症状だな」
ボクの傷を診ながらフェルが言う。
「こんくらいなら大丈夫だろう。けど、あんまり重なると、自分自身が不死のバケモンになっちまうから気をつけな」
<時もどしの回復時計>なら傷を負う前に戻せるから、不死化傷そのものを消してしまえるかもしれない。
けどボクはまだその時計を修理していない。
半日は歩いただろうか。
道は分岐へ差し掛かった。左の道はローズ家に向かう小道で、途中に時計塔がある。
右手の道は少し狭いが、道の踏み固められ具合から、こちらの方が往来が多い印象だ。
「右へは行かない方がいい」
「どうして?」
「そっちには、闇エルフの隠れ里があるんだよ。最近はあんまり隠れちゃいないけどな」
普段はこの分岐、雑木でカモフラージュされていて、道が続いているとは見えないようになっているらしい。
それが取り払われているのは、最近外縁の村に来た闇エルフの集団が通ったせいかもしれない。
「キミさあ、メッチャ行ってみたいって顔してるぞ。闇エルフじゃないんだろ。それともホントは闇エルフなん?」
違うよ。けど、もしかしたら姉たちを連れた闇エルフの一団が立ち寄ってる可能性があるし。
手がかりがあるかもって思うんだ。ボクの予感がそう言ってる。
「闇エルフの怖さを知らないから言えるんだ。森の外のあの村なんて搾取されすぎて、逆らう気力ごと根こそぎ奪われてるんだぜ」
それを聞いても、ボクの気持ちは揺るがなかった。
「やめとけ。部外者が隠れ里に行ったら、絶対に死ぬからだ。オレもそっちに行くのは避け続けてんだよ」
ボクがそれでも行くと主張すると、フェルは言った。
「だったら、オレの道案内はここまでだ。たしかにキミなら、闇エルフのフリをして潜り込めるかもしれない。それでも帰れるかわからないヤツを、待っちゃいられないんだよ」
仕方がない。ボクは、フェルと別れて歩き出した。
「バッ、やめとけって。待てよ。待てってば。……オレは止めたからな! ったく。こんな後味悪いんなら、案内役引き受けるんじゃなかったぜ」
後ろの方で、フェルの制止とぼやきが聞こえていた。
●アタック02-4 隠れ里にひそむ危機
ボクは、姉たちの手がかりがあると信じ、その道を進む。
闇エルフの隠れ里は、樹上に黒塗りの家々が建てられている。黒い色は、板に特殊な処理がほどこされているのか。
明らかにエルフの様式とは違う建てられ方をしていた。文化的背景が違う。
ボクは同族の旅人を装い、村へと入れてもらった。
けれども、すれ違う闇エルフたちの態度はよそよそしい。
わかってる。よそ者に冷たいのは、エルフも同じだ。
部屋に通され、紅茶を出されたが、いくら待っても誰も来ない。
ボクは意を決して、外に出てみた。もちろん紅茶には手をつけていない。
村の中心へ。
そこにある大きな家の住人の闇エルフに声をかけると、その人こそ村の長ネフェルロックだった。
すべてを見透かすような鋭い瞳に観察されながら、それでもボクは長の家へと招かれ、話を聞くことができた。
甘く重い独特の匂いがたちこめる部屋で、ボクは長にいくつか質問をした。
ボクの予想どおり、姉たちを連れた闇エルフの一団は、この村を経由していた。
それどころか、長自らがローズ家まで同行したことが明らかになった。
どうやらローズ家と闇エルフたちは、協調関係にあるようだった。
長は、ローズ家の秘密の拷問部屋の美しさについて、とくとくと語った。
それはまるで、買われていった姉たちのたどる運命を暗示するようだった。
ボクは聞いていて気分が悪くなった。
ボクが身体に変調をきたしたのは、その時だ。
部屋には最初から、闇エルフ以外の者には毒になるお香が焚かれていた。
長には最初から、ボクが同族じゃないってバレていた。
ボクの持つ魔法の時計に目をつけていて、それで泳がせていたんだ。
フェルの心配は当たっていた。
闇エルフは、部外者を決して生きて帰すようなことはしない。
ぼんやりと意識を失っていくボクは、すんでのところで<枝分かれの未来時計>を動かし、難を逃れることができた。
本当に危ないところだった。時計の力がなければ、ボクは間違いなく、ここで命を落としていただろう。
その後も魔法の時計で選択をやり直しながら、必要な手がかりを手に入れたボクは、村に入る前まで、時間を遡った。
そうして、フェルと別れた分岐へと戻った。
なんと、フェルはまだそこに待っていた。
ボクの姿を見ると、満面で喜びの表情を作った。
「やあ、よかった! 隠れ里に行くの、思いとどまってくれたんだな!」
ん? 話が合わない。
あ。そっか。
すぐに思い当たった。
ボクがここで別れてから、そんなに時間が経っていないんだ。
まさかボクが、闇エルフの隠れ里でものすごい危険な冒険をして、時間を巻き戻して戻ってきた、なんて思うわけないもんね。
ボクが下げている悪夢袋が、ひとつ追加でしぼんでいるのには気づいていないようだ。
それじゃあ、話を合わせておこうかな。
「心配かけて、ごめん」
「いいさ。戻ってくれたんだからな。姉ちゃん助ける前にキミが死んじゃ意味ないだろ」
フェルが小道をくいっと指す。
「それじゃあ、行こうぜ。途中に時計塔がある。そっちになら寄ってってもいいからさ」
「うん。行ってみたい」
「そう言うと思った」
ボクはまた、フェルとともに歩き出した。
●アタック02-5 時計塔のゴーレム
時計塔への入口は、使われなくなって久しいようで、そこに至る道には刺々しい植物が邪魔をしていた。
「こっちの方が安全だ」
フェルは近くのけもの道を案内し、ボクらは難なく時計塔にたどり着いた。
「どうだいこの時計塔。我らノームのからくりの技術の粋さ!」
フェルが自慢げに言う。彼もこの時計塔を、ボクに見せたかったに違いない。
時計塔は古びており、ツタが絡まっていたが、最上階3階にある時計は今も正確に時を刻んでいた。
ボクはそのまま時計塔の入口に近づく。
「お。入るつもりかい。でも感心しないな。強引な手段で入ろうとするとワナが作動するのがお約束ってもんだ」
もしかして、フェルがカギを持っているとか?
「残念。持ってないんだなこれが」
ボクは入り口をスルーして、裏へと回った。闇エルフの隠れ里で聞いていた、隠された裏口の情報。
そのとおり、目立たないところに小さな、ノームサイズの入口を発見した。
「え。なんでこんな隠し入口知ってんの。オレも知らなかったのに」
それには答えずに、入口をガチャガチャやっているうちに、簡単に扉は開いた。
くぐるようにして、中に入る。
「そっか。そんなに精巧で不思議なノームの時計を持ってるんだもんな。知っててもおかしくないか」
フェルは勝手に納得して、ボクの後について扉をくぐる。
時計塔の中は吹き抜けになっている。
入口側の扉の上部にはなにかの仕掛けがついており、フェルの警告通り、ワナが設置されているのは明らかだった。
1階はホールのほかに、上へと続く階段と、奥への部屋がある。
奥の部屋へと続くアーチのところに、シンプルな構造のゴーレムが立っていた。
・奥の部屋を見たい
・2階に登る
もちろん、奥の部屋を確認してみたい。
「気をつけろ。たぶん動くぞ、あいつ」
うん。ボクもそう思う。
近づくと案の定、ゴーレムは動き出した。機械音とともに畳まれた足を伸ばし、立ち上がる。
「命令を与えるキーワードがあればなんとかなるんだけど、さすがに知らないよな?」
ボクはうなずく。
「じゃ、壊すしかないか」
フェルが石弓を構えた。その時、ゴーレムの頭部がぐりん、と回転し、顔が現れた。
巨大な宝石めいた単眼が輝く顔だ。その単眼は輝きを増し、力を蓄えているように見えた。
なにか、危険なものがくる。直感した。
赤い光の筋が、ゴーレムの単眼から発射された。狙いは、ボク。
避けられない!
その時、フェルの石弓から射出された矢が、ゴーレムの顔の斜め下部分にヒットした。
その衝撃で、ゴーレムの狙いがやや上方に逸れた。
それでも完全に狙いを外しきることはできず、ボクは肩口に衝撃を感じて吹き飛ばされた。
体力点に1点のダメージを負い、ボクはのろのろと立ち上がる。
肩口が焼けるように熱いが、骨は折れていないようだ。
「はは。やった。やったぞ」
フェルはガッツポーズ。見るとゴーレムは、仰向けに倒れていた。
「一度発射したら反動で倒れて起き上がれないなんて、欠陥品だな」
フェルはゴーレムを分解にかかっている。かなり器用だ。
「また動き出されちゃかなわないからな。おっと。これ、キミの時計の修理に使えるんじゃないか?」
フェルは1枚の小さな歯車を取り出した。たしかに、ボクの時計の規格にぴったり合いそうだ。
ボクはフェルがゴーレムを分解している間に、時計の修理をすることにした。
修理するのは<速撃の戦時計>だ。ボクの弱点を補ってくれるこの時計は、いち早く修理したいと思っていた。
ボクが時計の修理を終える頃、フェルもちょうど分解作業を終えたみたいだった。
「さて、じゃ、奥の部屋を見てみようか」
フェルの方が興味津々だ。やはりからくりには、ノームの心を動かす何かがあるらしい。
奥の部屋は、作業部屋のようになっていた。部品や羊皮紙が散らばっている。そしてなんと、チャマイの魔法学校と7人の賢者のジオラマがある。
・机の上の部品から役立つものを集める
・羊皮紙を見たい
・この場を去る
フェルが羊皮紙を手に取って、うんうんとうなっていた。
何かの設計図のようだ。何ができるんだろう。気になるから、持って行くことにした。
とはいえ、作る機会があるとは思えないけれど。
机の上の部品をかきわけ、何かめぼしいものがないか探してみる。
フェルはちょいちょい興味を引くものをみつけたらしく、自らの荷物袋に放り込んでいた。
今は、かさばりそうな部品の前で、重さと欲しさのせめぎ合いで迷っている。
ボクは、小さなシャーレに入れられた、2枚の歯車を見つけた。時計の修理に使えそう。
フェルが悩んでいる間に、ここで時計を修理しておくことにした。
次に修理するのは、<時もどしの回復時計>だ。
ボクはさっきのゴーレムの光線みたいな攻撃で傷ついてるし、吸血獣との戦いで「不死化傷」も負っている。
回復ができる時計の力が必要なのは明らかだった。
<時もどしの回復時計>の修理を終えても、フェルはまだ悩んでいるようだった。
ボクは、そろそろ行こうと声をかけた。
フェルは結局、その部品をあきらめたようだ。
後ろ髪を引かれるように立ち上がると、ボクと一緒に2階へと上がった。
次回、時計塔の攻略の次は、ゾンビ墓地へと。
【ミナ 体力点4→2→1/4 悪夢袋6→5/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0→1→0→2→0枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。5日前を最後に日記は途切れている。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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2025年10月14日火曜日
「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!」 FT新聞 No.4647
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!」
(中山将平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
おはようございます!
カエル人の「汎用異種族設定」本を用意している途中のイラストレーター中山将平です。
12月6日(土)・7日(日)に大阪なんばで参加予定のイベントに間に合わせられたら最高だと感じていますが、作業量的にちょっと難しいかもしれません。
さて、今回はまたローグライクハーフについて感じていることを書いてみるつもりです。
題して「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!」。
いよいよ3回目になってしまいました。
回を重ねるごとにタイトルの「!」の数を増やそうと思っていたら、どんどん文字数が伸びてしまって見た目が悪くなることに気づきました。
先にお伝えしておきますが、今日お話したいことは次の3点です。
・「手がかり」に書かれていること
・2人プレイの時の従者
・敵の逃走は「半分以下になった場合」なのか、「半分を下回った場合」なのか
これらを、一つずつ見ていきたいと思います。
ローグライクハーフにご興味の方が、読んで楽しく役立つ記事にできたら幸いです。
それでは、具体的に見ていきましょう。
◆ 「手がかり」に書かれていること
RLHにおいて、「手がかり」という謎の存在が設定されがちであることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
これは基本的に「装備品」欄を消費しない持ち物で、その効果はシナリオごとに違う仕様となっています。
そうはいっても、使い方で多く設定されているものはあり、それは「d66を振る時に消費して使用し、十の位が1に固定される」というもの。
この「十の位が1に固定される」という点、どう考えられるでしょう!?
いえ、というのも、考えてみるとこれってもしかして多くのシナリオで「最終イベント」を発生させられるアイテムなんじゃないかと考えられないでしょうか。
僕自身は、そのことについて書かれた注釈などは見たことがないですが、逆にそれができないという記述も見たことがありません。
つまり、できると解釈しています。
書かれていることを繋ぎ合わせると、可能だと思えるからです。
それゆえ、僕は「手がかり」のことを、「シナリオの長さを選ぶことができる」仕組みだと考えています。
この活用法を使われた場合、冒険の攻略が楽になる場合も多いと思いますので、使われていない方に届けばと書いてみました。
◆ 2人プレイの時の従者
次にお話することは、主人公2人プレイ時の従者の話題です。
というのも、2人プレイ時にも従者を雇うことができるというルールって、ご存知でしょうか。
もしかすると、ローグライクハーフwiki等で、従者点が「1人プレイ専用の値」と説明されているのを見かけられ、「2人プレイでは従者は連れられない」と思われている方もいらっしゃるのでは。
そんな風に思いましたので、ここに特別書いてみることにしました。
よくよく読んでいきますと、ローグライクハーフwikiでもしっかりと「従者」の欄に説明されているのです。
2人プレイ時には最大従者点を7点減らすだけであると。
つまり、経験点による成長で従者点を伸ばせば、従者を連れていくことは2人プレイ時にも可能になるのです。
経験点2点を消費して従者点を伸ばすことが果たして本当に強いのかは、正直微妙だと感じています。
それよりも他の能力に数値を割り振った方が良い状況って、容易に想像できるのではないでしょうか。
しかし、個人的には2人プレイ時の魔術点または幸運点主人公ではこの選択肢が有効になってくる気がしています。
これらの主人公はおそらく副能力点を高め、技量点は多くて1点という場合が多いのではないでしょうか。
技量点を0にする代わりに従者として有料の剣士を2人連れ歩く場合を想定していただきたい。
どちらも経験点4点で実現できます。
攻撃力は剣士2人の方が、防御力は技量点1の方が勝っていると感じられるのではないでしょうか。
ローグライクハーフにおいては、「攻撃は最大の防御」という言葉は実際通用すると思います。
そのような条件がそろった場合には、ぜひ選択肢に入れてみていただけましたら。
(ロールプレイ的には、自身の戦闘力は低いものの、カリスマがあったり指導力があったりするタイプなのかなと感じています。)
◆ 敵の逃走は「半分以下になった場合」なのか、「半分を下回った場合」なのか
最後に、前回の補足的な内容に触れておこうと思っています。
前に記事を書いたとき、「数や生命点が半分以下になった時、敵は逃走する」というようなことを書いていました。
これについて、「半分を下回った場合」であると思っていた……というご意見を目にしたので、特別はっきりさせておこうと思っています。
正直、これはこのゲームにとって重要な部分だと思いますので。
僕もこれをヨハネさんに聞き、回答を得ました。
結論的には、「半分以下になった場合」が正解で、「半分を下回った場合」は誤りとのことです。
もしこれまで「半分を下回った場合」を採用されていた方がいらっしゃいましたら、次の機会にはぜひ「半分以下になった場合」の方のルール採用を試していただけましたら。
実際、キャラを強化するということの前に、ルール上できることや有利になることを活用することが強いと感じられるやもしれません。
僕だけかもしれませんが、これにより、ある意味で「ゲームデザインの意図」に近づいていくことも楽しいものだと感じております。
◆ 好評だった場合また書きます
さて、では今回もそろそろこれくらいで。
反響があれば、また続きを書くかもしれません。
それでは、よきローグライクハーフ・ライフを。
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12月6日(土)・7日(日)に大阪なんばで参加予定のイベントに間に合わせられたら最高だと感じていますが、作業量的にちょっと難しいかもしれません。
さて、今回はまたローグライクハーフについて感じていることを書いてみるつもりです。
題して「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!」。
いよいよ3回目になってしまいました。
回を重ねるごとにタイトルの「!」の数を増やそうと思っていたら、どんどん文字数が伸びてしまって見た目が悪くなることに気づきました。
先にお伝えしておきますが、今日お話したいことは次の3点です。
・「手がかり」に書かれていること
・2人プレイの時の従者
・敵の逃走は「半分以下になった場合」なのか、「半分を下回った場合」なのか
これらを、一つずつ見ていきたいと思います。
ローグライクハーフにご興味の方が、読んで楽しく役立つ記事にできたら幸いです。
それでは、具体的に見ていきましょう。
◆ 「手がかり」に書かれていること
RLHにおいて、「手がかり」という謎の存在が設定されがちであることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
これは基本的に「装備品」欄を消費しない持ち物で、その効果はシナリオごとに違う仕様となっています。
そうはいっても、使い方で多く設定されているものはあり、それは「d66を振る時に消費して使用し、十の位が1に固定される」というもの。
この「十の位が1に固定される」という点、どう考えられるでしょう!?
いえ、というのも、考えてみるとこれってもしかして多くのシナリオで「最終イベント」を発生させられるアイテムなんじゃないかと考えられないでしょうか。
僕自身は、そのことについて書かれた注釈などは見たことがないですが、逆にそれができないという記述も見たことがありません。
つまり、できると解釈しています。
書かれていることを繋ぎ合わせると、可能だと思えるからです。
それゆえ、僕は「手がかり」のことを、「シナリオの長さを選ぶことができる」仕組みだと考えています。
この活用法を使われた場合、冒険の攻略が楽になる場合も多いと思いますので、使われていない方に届けばと書いてみました。
◆ 2人プレイの時の従者
次にお話することは、主人公2人プレイ時の従者の話題です。
というのも、2人プレイ時にも従者を雇うことができるというルールって、ご存知でしょうか。
もしかすると、ローグライクハーフwiki等で、従者点が「1人プレイ専用の値」と説明されているのを見かけられ、「2人プレイでは従者は連れられない」と思われている方もいらっしゃるのでは。
そんな風に思いましたので、ここに特別書いてみることにしました。
よくよく読んでいきますと、ローグライクハーフwikiでもしっかりと「従者」の欄に説明されているのです。
2人プレイ時には最大従者点を7点減らすだけであると。
つまり、経験点による成長で従者点を伸ばせば、従者を連れていくことは2人プレイ時にも可能になるのです。
経験点2点を消費して従者点を伸ばすことが果たして本当に強いのかは、正直微妙だと感じています。
それよりも他の能力に数値を割り振った方が良い状況って、容易に想像できるのではないでしょうか。
しかし、個人的には2人プレイ時の魔術点または幸運点主人公ではこの選択肢が有効になってくる気がしています。
これらの主人公はおそらく副能力点を高め、技量点は多くて1点という場合が多いのではないでしょうか。
技量点を0にする代わりに従者として有料の剣士を2人連れ歩く場合を想定していただきたい。
どちらも経験点4点で実現できます。
攻撃力は剣士2人の方が、防御力は技量点1の方が勝っていると感じられるのではないでしょうか。
ローグライクハーフにおいては、「攻撃は最大の防御」という言葉は実際通用すると思います。
そのような条件がそろった場合には、ぜひ選択肢に入れてみていただけましたら。
(ロールプレイ的には、自身の戦闘力は低いものの、カリスマがあったり指導力があったりするタイプなのかなと感じています。)
◆ 敵の逃走は「半分以下になった場合」なのか、「半分を下回った場合」なのか
最後に、前回の補足的な内容に触れておこうと思っています。
前に記事を書いたとき、「数や生命点が半分以下になった時、敵は逃走する」というようなことを書いていました。
これについて、「半分を下回った場合」であると思っていた……というご意見を目にしたので、特別はっきりさせておこうと思っています。
正直、これはこのゲームにとって重要な部分だと思いますので。
僕もこれをヨハネさんに聞き、回答を得ました。
結論的には、「半分以下になった場合」が正解で、「半分を下回った場合」は誤りとのことです。
もしこれまで「半分を下回った場合」を採用されていた方がいらっしゃいましたら、次の機会にはぜひ「半分以下になった場合」の方のルール採用を試していただけましたら。
実際、キャラを強化するということの前に、ルール上できることや有利になることを活用することが強いと感じられるやもしれません。
僕だけかもしれませんが、これにより、ある意味で「ゲームデザインの意図」に近づいていくことも楽しいものだと感じております。
◆ 好評だった場合また書きます
さて、では今回もそろそろこれくらいで。
反響があれば、また続きを書くかもしれません。
それでは、よきローグライクハーフ・ライフを。
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2025年10月13日月曜日
運ってなんだい? FT新聞 No.4646
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
田林さんの「SAGBがよくわかる本」のお手伝いをしていたところ、記事のなかに運についての言及がありました。
運ってなんだろう? という問いかけに対して、私はひとつの回答、自分なりの答えを持っています。
それについて書きたいと感じたので、今日の記事にさせていただきました!
◆話の経緯。
ファイティング・ファンタジーのシリーズには「運だめし」という項目があります。
同シリーズの作品には「運点」という能力値が存在して、これはサイコロ1個に6を足して決定されます。
「運だめし」とはサイコロ2個を振って、この運点以下を出すことができれば「吉」、できなければ「凶」というものです。
「SAGBがよくわかる本」ではこの「運だめし」を、「運と実力のハイブリッド」と表現します。
(以下、引用)
「運だめし」は行うたびに運点が一点ずつ下がるため、使いどころを見極めることが「実力」の部分に相当する。運点が低ければ使いどころをシビアに見定め、高ければ安全を優先して使うというように、運点の高低によって、戦術が変化する点も魅力である。冒険中に強制的に行う箇所はあるが、戦闘における「運だめしをするか否か」の選択は、まさしく読者の力量が問われるところだろう。
(以上)
さて、この文章で「実力」として指している部分のことは、よく分かります。
では、「運」と称される部分は、なんなのでしょう?
◆確率論者です。
話の前に、前提となる自己紹介を挟ませてください。
私は、いわゆる確率論を揺るぎなく信じる人間です。
気合を入れようが入れまいがサイコロの目が出る確率は同じだと思っていますし、サイコロを1万回振った平均値が飛び抜けて高いことなど、この世にわずかな確率でしか存在しないと考えています。
しかし、同時に私は運も信じています。
どういうことなのか?
説明してまいります。
◆確率論と運の両立、とは。
昔、どこかで読んだ記事の話をさせてください。
ラスベガスにあるカジノに、ある夫婦がやってきました。
その夫婦は長年かけて貯め込んだ全財産(家が買えるぐらいの金額)をチップに変えて、1回だけの大勝負をしたのだそうです。
赤と黒のどちらかを選ぶ。
2分の1よりも少しだけ低い勝率。
勝てば、チップは2倍。
で、夫婦は見事に一発勝負に勝って、大金を手にしたというお話です。
そんな大金を賭けることなんてできるのかという疑問はあるので、もしかしたら作り話かもしれません。
しかし、今はそれはあまり重要ではなくてですね。
私が思う「運がいい」は、こういうときに勝てることを指している、というお話です。
◆その夫婦も、負けることはあったはず。
たとえば、いま手もとにサイコロがあって、それを転がしたとしましょう。
奇数が出たら勝ち、偶数が出たら負けだとします。
奇数が出るとなんとなく嬉しい気持ちになって、偶数が出るとちょっぴり悔しいかもしれません。
何も感じないかもしれません。
何も賭けていなければ、そのレベルです。
奇数が出た瞬間に「私はついてる!」と叫んで、大はしゃぎするということはまず、ないでしょう。
◆確率は同じ、意味が乗るかどうか。
先に挙げた夫婦も、半々の勝率の勝負に、常に勝ってきたわけではないはずです。
勝つことも負けることもあったでしょう。
しかし、「ここ一番」の勝負、おそらくは人生で最も大事な、たった1回の勝負に勝利した。
その勝利は、その後の人生に大きな影響を与えるほどのものだったに違いありません。
「運がいい」というのは、このように「大きな場面で、自分にとっていいことが起きる」ことを指すのではないか、と私は考えています。
「運が悪い」も同様で、たとえば、大学受験の当日に家の車が故障するのは、別の日に同じことが起きるのとはわけが違います。
確率は同じでも、意味づけに濃淡はあるというお話なのかと、私は考えてきました。
今回はこれにて。
それではまた!
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田林さんの「SAGBがよくわかる本」のお手伝いをしていたところ、記事のなかに運についての言及がありました。
運ってなんだろう? という問いかけに対して、私はひとつの回答、自分なりの答えを持っています。
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◆話の経緯。
ファイティング・ファンタジーのシリーズには「運だめし」という項目があります。
同シリーズの作品には「運点」という能力値が存在して、これはサイコロ1個に6を足して決定されます。
「運だめし」とはサイコロ2個を振って、この運点以下を出すことができれば「吉」、できなければ「凶」というものです。
「SAGBがよくわかる本」ではこの「運だめし」を、「運と実力のハイブリッド」と表現します。
(以下、引用)
「運だめし」は行うたびに運点が一点ずつ下がるため、使いどころを見極めることが「実力」の部分に相当する。運点が低ければ使いどころをシビアに見定め、高ければ安全を優先して使うというように、運点の高低によって、戦術が変化する点も魅力である。冒険中に強制的に行う箇所はあるが、戦闘における「運だめしをするか否か」の選択は、まさしく読者の力量が問われるところだろう。
(以上)
さて、この文章で「実力」として指している部分のことは、よく分かります。
では、「運」と称される部分は、なんなのでしょう?
◆確率論者です。
話の前に、前提となる自己紹介を挟ませてください。
私は、いわゆる確率論を揺るぎなく信じる人間です。
気合を入れようが入れまいがサイコロの目が出る確率は同じだと思っていますし、サイコロを1万回振った平均値が飛び抜けて高いことなど、この世にわずかな確率でしか存在しないと考えています。
しかし、同時に私は運も信じています。
どういうことなのか?
説明してまいります。
◆確率論と運の両立、とは。
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たとえば、いま手もとにサイコロがあって、それを転がしたとしましょう。
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その勝利は、その後の人生に大きな影響を与えるほどのものだったに違いありません。
「運がいい」というのは、このように「大きな場面で、自分にとっていいことが起きる」ことを指すのではないか、と私は考えています。
「運が悪い」も同様で、たとえば、大学受験の当日に家の車が故障するのは、別の日に同じことが起きるのとはわけが違います。
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2025年10月12日日曜日
アランツァクリーチャー事典 Vol.21 FT新聞 No.4645
おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。
本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
杉本=ヨハネから預かりました、アランツァクリーチャー事典の第21回です。
今回のジャンルは『家畜、騎乗生物』!
かなりのボリュームがあるため、3回に渡って掲載します。
今回は前編。犬をはじめ、大蜘蛛や象まで!
どうぞお楽しみ下さいませ。
アランツァクリーチャー事典『家畜、騎乗生物』
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/AranciaMonsterEncyclopedia_vol.21.txt
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今回のジャンルは『家畜、騎乗生物』!
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今回は前編。犬をはじめ、大蜘蛛や象まで!
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2025年10月11日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第661号 FT新聞 No.4644
From:水波流
うちの娘は小説どころか漫画もあんまり読まないのですが、アニメで日常系(戦ったり、怖い事件が起きたりしない)ばかり見ている事に気づき、ちびまる子ちゃんを勧めてみたところ、気に入った様子。
さてここからどう進むルートがあるかなー。
From:葉山海月
マジメに生きてはバカを見る。まじめにやらなきゃバカになる。
From:明日槇悠
「Kindle Unlimited3ヶ月無料キャンペーン」のお誘いには毎度葛藤します。
大量のゲームブックその他が読み放題の対象になっているため、普通ならば得でしかないのですが、悲しいかな貧乏人の性、なるべく対象の本を読まないと損だという強迫観念に縛られ、すこぶる精神衛生に悪いのです。
積んだ本の消化は後回しになり、できるだけ大量の情報を摂取しようとして対象の書籍も読み飛ばしが多くなってしまいます。
とはいえ、その勢いのおかげで読破できた本というのも少なからずあるわけで……皆さんなら、どちらの選択肢を選んだでしょうか?
From:中山将平
僕ら10月19日(日)「関西コミティア74」にサークル参加します。
ブース配置は【G67】。開催地は「京都パルスプラザ」。
1人用TRPG「ローグライクハーフ」や「ゲームブック」、「モンスター!モンスター!TRPG」等々を持ち、僕中山が現地にてお待ちしております!!
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(水)=水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■10/5(日)~10/10(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年10月5日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4638
『死霊沼の聖母』ローグライクハーフd66シナリオ
・死霊都市フアナ・ニクロを舞台とする新作シナリオを、新職業【呪術師】のデータとともにお届けしました。
『堕落都市の迷宮』や『昆虫都市』に並ぶ、「対応レベル16〜24(推奨レベル19以上)」の中級レベル向けシナリオとなっています(中級ルールについては、既刊『ドラゴンレディハーフ』もしくは「ローグライクハーフwiki」をご参照ください)。別のシナリオで経験を積んだ主人公でチャレンジするのもよいですし、最大19点の経験点を振り分けて、このシナリオのための新たな主人公をつくりあげることも可能です。
既存の職業で従者たちや相棒と力を合わせて戦うか、それとも【呪術師】として【悪の種族】や【アンデッド】の従者たちを十二分に「活用」するか。あなたのプレイスタイルに応じた冒険を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください!
(く)
2025年10月6日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4639
ひとつ、いやふたつ……!!
・『死霊沼の聖母』がついに配信され、これで、アランツァのメイン大陸ラドリドでご紹介していない都市は、あとひとつとなりました!
それは……「盗賊都市ネグラレーナ」! かなりタフなシナリオのアイディアもすでにあり、それはおいおい明らかになることでしょう。
「杉本さん、実は、まだ都市紹介をちゃんとしていない街が、1個だけありますよね……?」そうおっしゃるあなたは、相当なFT書房通!
最初のシナリオである「黄昏の騎士」の舞台、「聖フランチェスコ」という街こそが、実は「最後の拠点」なのです。
これからサイズの大きい、にぎやかな作品になるであろう「ガルアーダの塔for RLH」に着手される杉本氏にエールを!
(明)
2025年10月7日(火)田林洋一 FT新聞 No.4640
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.11
・田林洋一氏による、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
80年代後半に東京創元社が行ったゲームブック・コンテストは応募者の多くが十代という盛況ぶりで、オリジナリティ溢れる入選作がSAGBとして刊行されました。
今回はこのコンテストの関連作である、『紅蓮の騎士』、『ベルゼブルの竜』、『暗黒の聖地』、『夜の馬』を主に取り上げます。
『紅蓮の騎士』が佳作入選を果たした勝因であろう「時の迷路」や、『ベルゼブルの竜』の「運だめし」は、読者自身の参加意識に訴える優れたシステムでした。
両作ともに『暗黒の聖地』、『夜の馬』という続編へとつながりますが、それぞれを比較することで、点が線でつながる新しい視点が紐解かれます。
(明)
2025年10月8日(水)ぜろ FT新聞 No.4641
第8回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第459回です。
奴隷商人に売られた姉たちを救うため、目的地である吸血鬼の館へとたどり着いた主人公ミナ。しかし館の中には人の気配がなく、残された未探索の場所は、地下のワイン蔵と拷問部屋のみ。そこで残酷な現実を突きつけられたミナは、震える手で魔法の時計を取り出しますが…。
衝撃の展開を経て、物語の舞台は、読者が以前見たあの場所へと戻ります。
(く)
2025年10月9日(木)東洋夏 FT新聞 No.4642
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.7
・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、
東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第7回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロの捜査は、なかなかに難航しておりましたが、とうとう最終イベントを迎えます。
二人の前に立ちはだかるのは、やはり「写身の殺人者」!
シグナスの見た悪夢は、正夢になってしまうのでしょうか……!?
そして、これにて閉幕、と思いきや……?
思わぬ展開が続きます。是非記事にてお確かめください!
(天)
2025年10月10日(金)休刊日 FT新聞 No.4643
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はグループSNE発足前にメンバーの皆さんが書かれた作品でアナザーエンドに皆さんのお遊びが感じられる作品でした。『暗黒教団の陰謀 輝くトラペゾヘドロン』は表記されていませんでしたが、イラストが現在では海外にもファンの多い漫画家、イラストレーターの山田章博さん(『ロードス島戦記 ファリスの聖女』(漫画)、『十二国記』(イラスト)、『ラーゼフォン』(キャラクターデザイン))でした。こういうビックネームの若き日の仕事が見られるのもGBファンの楽しみです。
(お返事:田林洋一)
毎回お便りをくださり、本当にありがとうございます! ゲームブック版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、映画にインスパイアされた方々が「こうした場合にはどうなるのだろう」という想像力を膨らませて書き上げた作品のような気がします。チャレンジングであると同時に遊び心もありました。『暗黒教団の陰謀』はイラストも含めて陰惨かつ海外調の世界観が魅力でしたね。しかし、山田章博さんのイラストだったとは! それは凄いです!(笑)
(シュウ友生さん)
膠着状態とブレイクスルー、楽しく拝見しました。
私の論考を更に発展していただいて、大変嬉しく思います。
私がT&Tに感じる「システムに捉われてないで、もっと自由に想像を遊ばせようぜ!」という熱い叫びを、見事に文章化していただいて感激しました。
そして確かに、膠着状態と同じくらい問題ともいえる「モンスター!モンスター!」における強烈なキャラ格差も、自由な想像性こそが解決するものであると感じます。
ありがとうございました。
(お返事:岡和田晃)
僭越とも言える拙稿に対し、あたたかなコメントを本当にありがとうございました。さほど大きく外してはいなかったようで、何よりです。こちらこそ、我が意を得たりという思いで、ご高論には多大なる刺激、と申しますか「エウレカ感」を得たものでした。
シュウ友生さんが、バーサーク戦闘や毒、あるいは『モンスター!モンスター!TRPG』の「創造性=想像性」をどう受け止めておいでか、さらなる関心がありますので、ぜひ再応答となる論考をしたためていければ幸いです。
(ププププーさん)
いつも楽しく拝見しております。
スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本で"ベルゼブルの竜"解説楽しみにしておりました。
解説中で田林先生があえて難を…と「必要アイテムの多さ」を挙げておられました。
私はこの作品最短プレイに挑戦してましたけれど、その際入手アイテムが7つでクリアに至りました。通常プレイですと15個とかになるので、確かにアイテムが多くなる印象でしたけれど最短プレイで改めて驚いた部分でした。
その辺り作品の遊び方の多様性は長所と感じましたね。
次回以降の解説も楽しみにさせていただきます。
(お返事:田林洋一)
毎回の拙記事にお付き合いくださり、本当に感謝いたします。なんと、『ベルゼブルの竜』は最短プレイでは必要アイテムは7つだけなのですね! 私は全く気付かず、むしろたくさん増えてくるアイテムを眺めては楽しむという「収集癖」のようなプレイを楽しんでおりました。逆に、「どれだけたくさんのアイテムを手に入れられるか?」というプレイも楽しいかもしれませんね。一見必要なアイテムが多そうでありながら、実は少なくてもクリアできる、というのは確かに「ゲームブックの多様性」ですね。温かいお言葉、どうもありがとうございます!
(ポール・ブリッツさん)
「ベルゼブルの竜」には、SAGBだけでなく、ゲームブックというジャンル自体が衰退した理由が如実に現れているのではないか。
「ゲーム」としての面白さを追求したが故の精密な戦闘システムと本の分厚さに触れた読者の少なからぬ層が「読む前からあきらめてしまった」のではないか、と、今も自分の本棚で積読状態の「ベルゼブルの竜」やほかのSAGBを見ると思ってしまうのだが。
(お返事:田林洋一)
ゲームブックの衰退の原因がその分厚さにあるのではないかというご指摘、鋭い視点を提供していただきありがとうございます。実はこの点は安田均が『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』でも触れているのですが、「ゲームブックのパズル面」と「ストーリー面」の両方を融合させようとした結果、ボリューム過多になり、「最近のゲームブックに分厚いのはこれが理由である」と分析されていました。そう考えますと、厚い(そして熱い)ゲームブックが多いSAGBが廃れていくのも、残念ですが首肯できますね。その意味で、本国では長続きしている「ファイティング・ファンタジー・シリーズ」は薄いものが多く、それが長寿の原因かもしれません。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブック衰退期にデビューしなければ…という方たちですね。伊藤氏は真っ直ぐ直球勝負の印象が強いですね。逆に茂木氏はゲームそのものより彼女の想像した「魔界物語」のワールドを紹介するのが前に出ているような気がします。私は実はコンテストでは佳作に留まった宮原弥寿子さんの方が両氏よりも好みでして、いずれ『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』での紹介期待しています!
(お返事:田林洋一)
ジャラルさん、毎回のお便り、ありがとうございます。ゲームブックコンテストがもっと早く始まり、ブーム絶頂期であれば、彼らの続編が期待できたかもしれませんね。伊藤武雄はゲームブックを一から手作りし、茂木裕子は「魔界物語」から想像力を膨らませたという感覚は、私も持っておりました。宮原弥寿子の作品も本連載で扱う予定ですので、楽しみにお待ちくださいませ!
(蒙太辺土さん)
『ベルゼブルの竜』等この辺りに刊行されたゲームブックの書名を見ると、『機竜魔の紋章』(確かこんなタイトル)がいつ出るのかと、毎日書店のゲームブックコーナー(当時はそんなものがありました…)をチェックしていたことを思い出して少し寂しい気分になります。なにか迷子になったような、なんとも知れん感じ…(笑)
ゲームブックブームが凋落していく様は、肌感として世界が虚無に呑まれてゆくにも等しい絶望感…ってそれはちょっと言い過ぎかもですけど、ひとつの思い出ではあります。
(お返事:田林洋一)
お便り、どうもありがとうございます! 書店にゲームブックコーナー、確かにありましたね!(私も昭和生まれの人間ですので、肌で覚えております)『機竜魔の紋章』は「近刊」の案内だけ出て、ずっと先延ばしにされた挙句に結局出版されなかった幻のゲームブックですね。私は子供時代、東京創元社に電話して「『機竜魔の紋章』が出るのはいつですか?」と訊いた記憶があります(笑)。ゲームブックの衰退は確かに残念でしたが、最近はFT書房も含めて、復刊とは言わないまでも少しだけ「ブームの盛り返し」が来ているような気もいたします。
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
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うちの娘は小説どころか漫画もあんまり読まないのですが、アニメで日常系(戦ったり、怖い事件が起きたりしない)ばかり見ている事に気づき、ちびまる子ちゃんを勧めてみたところ、気に入った様子。
さてここからどう進むルートがあるかなー。
From:葉山海月
マジメに生きてはバカを見る。まじめにやらなきゃバカになる。
From:明日槇悠
「Kindle Unlimited3ヶ月無料キャンペーン」のお誘いには毎度葛藤します。
大量のゲームブックその他が読み放題の対象になっているため、普通ならば得でしかないのですが、悲しいかな貧乏人の性、なるべく対象の本を読まないと損だという強迫観念に縛られ、すこぶる精神衛生に悪いのです。
積んだ本の消化は後回しになり、できるだけ大量の情報を摂取しようとして対象の書籍も読み飛ばしが多くなってしまいます。
とはいえ、その勢いのおかげで読破できた本というのも少なからずあるわけで……皆さんなら、どちらの選択肢を選んだでしょうか?
From:中山将平
僕ら10月19日(日)「関西コミティア74」にサークル参加します。
ブース配置は【G67】。開催地は「京都パルスプラザ」。
1人用TRPG「ローグライクハーフ」や「ゲームブック」、「モンスター!モンスター!TRPG」等々を持ち、僕中山が現地にてお待ちしております!!
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(水)=水波流
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■10/5(日)~10/10(金)の記事一覧
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2025年10月5日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4638
『死霊沼の聖母』ローグライクハーフd66シナリオ
・死霊都市フアナ・ニクロを舞台とする新作シナリオを、新職業【呪術師】のデータとともにお届けしました。
『堕落都市の迷宮』や『昆虫都市』に並ぶ、「対応レベル16〜24(推奨レベル19以上)」の中級レベル向けシナリオとなっています(中級ルールについては、既刊『ドラゴンレディハーフ』もしくは「ローグライクハーフwiki」をご参照ください)。別のシナリオで経験を積んだ主人公でチャレンジするのもよいですし、最大19点の経験点を振り分けて、このシナリオのための新たな主人公をつくりあげることも可能です。
既存の職業で従者たちや相棒と力を合わせて戦うか、それとも【呪術師】として【悪の種族】や【アンデッド】の従者たちを十二分に「活用」するか。あなたのプレイスタイルに応じた冒険を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください!
(く)
2025年10月6日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4639
ひとつ、いやふたつ……!!
・『死霊沼の聖母』がついに配信され、これで、アランツァのメイン大陸ラドリドでご紹介していない都市は、あとひとつとなりました!
それは……「盗賊都市ネグラレーナ」! かなりタフなシナリオのアイディアもすでにあり、それはおいおい明らかになることでしょう。
「杉本さん、実は、まだ都市紹介をちゃんとしていない街が、1個だけありますよね……?」そうおっしゃるあなたは、相当なFT書房通!
最初のシナリオである「黄昏の騎士」の舞台、「聖フランチェスコ」という街こそが、実は「最後の拠点」なのです。
これからサイズの大きい、にぎやかな作品になるであろう「ガルアーダの塔for RLH」に着手される杉本氏にエールを!
(明)
2025年10月7日(火)田林洋一 FT新聞 No.4640
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.11
・田林洋一氏による、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
80年代後半に東京創元社が行ったゲームブック・コンテストは応募者の多くが十代という盛況ぶりで、オリジナリティ溢れる入選作がSAGBとして刊行されました。
今回はこのコンテストの関連作である、『紅蓮の騎士』、『ベルゼブルの竜』、『暗黒の聖地』、『夜の馬』を主に取り上げます。
『紅蓮の騎士』が佳作入選を果たした勝因であろう「時の迷路」や、『ベルゼブルの竜』の「運だめし」は、読者自身の参加意識に訴える優れたシステムでした。
両作ともに『暗黒の聖地』、『夜の馬』という続編へとつながりますが、それぞれを比較することで、点が線でつながる新しい視点が紐解かれます。
(明)
2025年10月8日(水)ぜろ FT新聞 No.4641
第8回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第459回です。
奴隷商人に売られた姉たちを救うため、目的地である吸血鬼の館へとたどり着いた主人公ミナ。しかし館の中には人の気配がなく、残された未探索の場所は、地下のワイン蔵と拷問部屋のみ。そこで残酷な現実を突きつけられたミナは、震える手で魔法の時計を取り出しますが…。
衝撃の展開を経て、物語の舞台は、読者が以前見たあの場所へと戻ります。
(く)
2025年10月9日(木)東洋夏 FT新聞 No.4642
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.7
・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、
東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第7回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロの捜査は、なかなかに難航しておりましたが、とうとう最終イベントを迎えます。
二人の前に立ちはだかるのは、やはり「写身の殺人者」!
シグナスの見た悪夢は、正夢になってしまうのでしょうか……!?
そして、これにて閉幕、と思いきや……?
思わぬ展開が続きます。是非記事にてお確かめください!
(天)
2025年10月10日(金)休刊日 FT新聞 No.4643
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
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■今週の読者様の声のご紹介
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はグループSNE発足前にメンバーの皆さんが書かれた作品でアナザーエンドに皆さんのお遊びが感じられる作品でした。『暗黒教団の陰謀 輝くトラペゾヘドロン』は表記されていませんでしたが、イラストが現在では海外にもファンの多い漫画家、イラストレーターの山田章博さん(『ロードス島戦記 ファリスの聖女』(漫画)、『十二国記』(イラスト)、『ラーゼフォン』(キャラクターデザイン))でした。こういうビックネームの若き日の仕事が見られるのもGBファンの楽しみです。
(お返事:田林洋一)
毎回お便りをくださり、本当にありがとうございます! ゲームブック版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、映画にインスパイアされた方々が「こうした場合にはどうなるのだろう」という想像力を膨らませて書き上げた作品のような気がします。チャレンジングであると同時に遊び心もありました。『暗黒教団の陰謀』はイラストも含めて陰惨かつ海外調の世界観が魅力でしたね。しかし、山田章博さんのイラストだったとは! それは凄いです!(笑)
(シュウ友生さん)
膠着状態とブレイクスルー、楽しく拝見しました。
私の論考を更に発展していただいて、大変嬉しく思います。
私がT&Tに感じる「システムに捉われてないで、もっと自由に想像を遊ばせようぜ!」という熱い叫びを、見事に文章化していただいて感激しました。
そして確かに、膠着状態と同じくらい問題ともいえる「モンスター!モンスター!」における強烈なキャラ格差も、自由な想像性こそが解決するものであると感じます。
ありがとうございました。
(お返事:岡和田晃)
僭越とも言える拙稿に対し、あたたかなコメントを本当にありがとうございました。さほど大きく外してはいなかったようで、何よりです。こちらこそ、我が意を得たりという思いで、ご高論には多大なる刺激、と申しますか「エウレカ感」を得たものでした。
シュウ友生さんが、バーサーク戦闘や毒、あるいは『モンスター!モンスター!TRPG』の「創造性=想像性」をどう受け止めておいでか、さらなる関心がありますので、ぜひ再応答となる論考をしたためていければ幸いです。
(ププププーさん)
いつも楽しく拝見しております。
スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本で"ベルゼブルの竜"解説楽しみにしておりました。
解説中で田林先生があえて難を…と「必要アイテムの多さ」を挙げておられました。
私はこの作品最短プレイに挑戦してましたけれど、その際入手アイテムが7つでクリアに至りました。通常プレイですと15個とかになるので、確かにアイテムが多くなる印象でしたけれど最短プレイで改めて驚いた部分でした。
その辺り作品の遊び方の多様性は長所と感じましたね。
次回以降の解説も楽しみにさせていただきます。
(お返事:田林洋一)
毎回の拙記事にお付き合いくださり、本当に感謝いたします。なんと、『ベルゼブルの竜』は最短プレイでは必要アイテムは7つだけなのですね! 私は全く気付かず、むしろたくさん増えてくるアイテムを眺めては楽しむという「収集癖」のようなプレイを楽しんでおりました。逆に、「どれだけたくさんのアイテムを手に入れられるか?」というプレイも楽しいかもしれませんね。一見必要なアイテムが多そうでありながら、実は少なくてもクリアできる、というのは確かに「ゲームブックの多様性」ですね。温かいお言葉、どうもありがとうございます!
(ポール・ブリッツさん)
「ベルゼブルの竜」には、SAGBだけでなく、ゲームブックというジャンル自体が衰退した理由が如実に現れているのではないか。
「ゲーム」としての面白さを追求したが故の精密な戦闘システムと本の分厚さに触れた読者の少なからぬ層が「読む前からあきらめてしまった」のではないか、と、今も自分の本棚で積読状態の「ベルゼブルの竜」やほかのSAGBを見ると思ってしまうのだが。
(お返事:田林洋一)
ゲームブックの衰退の原因がその分厚さにあるのではないかというご指摘、鋭い視点を提供していただきありがとうございます。実はこの点は安田均が『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』でも触れているのですが、「ゲームブックのパズル面」と「ストーリー面」の両方を融合させようとした結果、ボリューム過多になり、「最近のゲームブックに分厚いのはこれが理由である」と分析されていました。そう考えますと、厚い(そして熱い)ゲームブックが多いSAGBが廃れていくのも、残念ですが首肯できますね。その意味で、本国では長続きしている「ファイティング・ファンタジー・シリーズ」は薄いものが多く、それが長寿の原因かもしれません。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブック衰退期にデビューしなければ…という方たちですね。伊藤氏は真っ直ぐ直球勝負の印象が強いですね。逆に茂木氏はゲームそのものより彼女の想像した「魔界物語」のワールドを紹介するのが前に出ているような気がします。私は実はコンテストでは佳作に留まった宮原弥寿子さんの方が両氏よりも好みでして、いずれ『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』での紹介期待しています!
(お返事:田林洋一)
ジャラルさん、毎回のお便り、ありがとうございます。ゲームブックコンテストがもっと早く始まり、ブーム絶頂期であれば、彼らの続編が期待できたかもしれませんね。伊藤武雄はゲームブックを一から手作りし、茂木裕子は「魔界物語」から想像力を膨らませたという感覚は、私も持っておりました。宮原弥寿子の作品も本連載で扱う予定ですので、楽しみにお待ちくださいませ!
(蒙太辺土さん)
『ベルゼブルの竜』等この辺りに刊行されたゲームブックの書名を見ると、『機竜魔の紋章』(確かこんなタイトル)がいつ出るのかと、毎日書店のゲームブックコーナー(当時はそんなものがありました…)をチェックしていたことを思い出して少し寂しい気分になります。なにか迷子になったような、なんとも知れん感じ…(笑)
ゲームブックブームが凋落していく様は、肌感として世界が虚無に呑まれてゆくにも等しい絶望感…ってそれはちょっと言い過ぎかもですけど、ひとつの思い出ではあります。
(お返事:田林洋一)
お便り、どうもありがとうございます! 書店にゲームブックコーナー、確かにありましたね!(私も昭和生まれの人間ですので、肌で覚えております)『機竜魔の紋章』は「近刊」の案内だけ出て、ずっと先延ばしにされた挙句に結局出版されなかった幻のゲームブックですね。私は子供時代、東京創元社に電話して「『機竜魔の紋章』が出るのはいつですか?」と訊いた記憶があります(笑)。ゲームブックの衰退は確かに残念でしたが、最近はFT書房も含めて、復刊とは言わないまでも少しだけ「ブームの盛り返し」が来ているような気もいたします。
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