第17回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
神の戯れによる時の繰り返しに気づき、一度は絶望しますが、それでもあきらめずに旅を続けます。
そしてついに、吸血鬼マルティンを倒し、双子の姉エナとティナを助け出すことができたのでした。
今回は、この冒険の結末を描きます。また、その後に感想もお届けします。
【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-15 静かな湖畔にて
ボクとエナ姉は、湖のほとりで横並びになって、あお向けに寝そべっている。
全力を出し切った後の疲れと、水から上がった体の重さで、しばらく動けそうになかった。
ずぶ濡れで冷え切った体を、雲ひとつない空から、太陽が温めてくれる。
「まぶしい……」
エナ姉が、腕を光の方向にかざしながら、かみしめるように言う。
「太陽の光を浴びられる日がまた来るなんて、思いもしなかった……」
エナ姉の透き通った瞳から、涙が一筋、見えた。
エナ姉は、やがてボクに向けて語りかけた。
「ありがとうねミナ。私がすべてを取り戻したのは、ミナのおかげよ」
「ずっと探してたんだ。姉さんたちの行方を。ボクだけじゃなく、ニナ姉も。ずっと、ずっと探してたんだ」
「うん。うん」
「やっと見つけた。やっと会えた」
「うん」
「会いたかった……」
「私も。また会えるなんて、本当に夢のよう」
エナ姉は、やわらかな笑みをボクにくれた。
奴隷として売られて、10年以上も、ずっとずっと辛い体験を重ねてきたに違いない。
それでも、こんな表情ができるんだ。ボクに変わらない笑顔を向けてくれるんだ。
ボクはこの旅で、自分が辛くてしんどい目にたくさんあってきたって思ってた。
けど、エナ姉の笑みはそれだけで、それが全部吹き飛んでしまうだけの力があった。
なんだか、自分がすごくちっぽけなことにとらわれていたように思えた。
オスクリード神に観察されてるからって、なんだ。
別に普段から、オスクリード神がボクに語りかけてくるなんてことはない。
単に、ボクが時の魔法を使うときに、ただ力を貸してくれるだけの存在だ。
それで、死んでも時間をさかのぼってやり直させてくれるんだ。だったらボクは、神の思惑だって、利用するだけだ。
そうはいっても、オスクリード神のボクへの興味がいつまで続くかわからない。
だからボクは、死なないようにしないと。
死ぬときの苦しみはもう二度と味わいたくないし、なにより、せっかく助けたエナ姉とティナ姉が、またピンチに逆戻りしてしまうのもきつい。
次に時が巻き戻ったら、記憶が継承されているかもわからない。
神の観察を知りながら、こんな風に考えてしまえるなんて。ボクはもう、狂ってるのかもしれないな。
でも、決して命を粗末にしない。どれだけ罪を重ねようと、精一杯、生き延びて、姉たちを救い出してみせる。
あと3人。マナ姉も、ドナ姉も、ノナ姉も。
ボクは、ひとつの時計をなでた。
<沙羅双樹の予知時計>。
この旅で新しく得た魔法だ。
重要な選択の先を知り、何度でも選び直すことができる魔法。
悪夢袋が尽きてしまったために、今回は使う機会がなかった。
けれど、この時計はこの先、ボクの生存率を上げてくれるだろう確信があった。
たよりにしてるよ。
<沙羅双樹の予知時計>の針が、わずかにふるえたように見えた。まるで、ボクが使う機会を待ちわびているように。
「ティナ姉も助けたよ。今は、外縁の村の仲間のところにいるはず。少し休んだら、会いに行こう」
「ティナも無事なのね。よかった」
ティナ姉を迎えに行ったら、一度、ニナ姉のところに帰ろう。
そうしたら、ほかの姉たちを探す旅に出よう。
もしかしたら、姉たちが全員が、エナ姉と同じ貴族に買われていたのかもしれない。
だとしたら、エナ姉に聞けば、次の身請け先のヒントが見つかるかもしれない。
それに、ニナ姉も何かつかんでいるかもしれない。
「かもしれない」ばかりだけれど、希望はある。
エナ姉とティナ姉を助け出したことで、ボクは停滞していた時間が、動き出したように感じていた。
「ところでミナ、気になることがあるの。聞いていいかどうかわからないけれど」
「なに?」
「ずいぶん真っ黒になったみたいだけど、どうしたの? 日焼け?」
とぼけた質問。エナ姉、昔とぜんぜん変わってない。
ボクはくすりと笑って、「そうだよ」と答えた。
●アタック03-16 再会
それからボクたちは、湖畔でぐったりしているところを漁師に見つけられ、湖畔の村に案内してもらった。
湖畔の村で一晩休んでわずかばかりの体力を回復し、還らずの森の外縁の村を目指し、歩みを進めている。
昨晩は悪夢を見なかったみたいだ。悪夢袋が空のままなのが、わずかに不安ではある。
数日をかけて、ボクたちはようやく還らずの森へと近づいた。
その間にボクは、今までに経験してきたことを、エナ姉に話して聞かせた。
エナ姉も、ボクの知らないこれまでの生活のことを聞かせてくれた。
ようやく外縁の村に近づいてきたところでボクたちは、反対側から来たノームの男に声をかけられた。
「ありゃ。闇エルフと普通のエルフが連れ立って歩いているなんて、初めて見るな」
たしかに、珍しい光景だろう。
エナ姉がボクのことを、「妹なのよ。日焼けしたみたい」と紹介する。
「いやいや。日焼けじゃないだろってのはオレでもわかるぜ」
エナ姉は、それでもボクが正真正銘の妹だと、言い切った。
「騙されてるとか脅されてるとかじゃなければいいんだけどよ。この先の村に入るときにゃ気をつけな。森の闇エルフどもに搾取されすぎて、闇エルフを憎んでる。エルフの姉ちゃんと一緒なら大丈夫かもしれないが、な」
そんな会話を交わした後、ノームの男はすれ違って去っていく。
ボクは去り際のノームに声をかけた。
「心配してくれてありがとう、フェル」
「あれ? オレ、名前言ったっけ。ま、いっか。じゃあな」
ノームの姿が見えなくなった後、エナ姉が怪訝な表情で尋ねた。
「さっきのノーム、お知り合い?」
うん。知ってるといえば知ってるし、初対面といえば初対面。
煙に巻くような答え方をして、ボクはフェルのことを思い起こしていた。
あいまいだけど、「フェルと一緒に旅をした」ことだけは覚えていた。
フェルに助けてもらったことを、ボクだけが知っている。
ボクは心の中で、フェルにもういちど、感謝の気持ちを告げた。
外縁の村に着いた。
村人たちの視線は気になるけれど、積極的に何かをしかけてくることはない。
ボクがエルフのエナ姉と一緒に歩いているからだろうか。
前にこの村に来たときの騒ぎを知っている人もいるかもしれない。
ボクたちは、まっすぐボラミーの家に向かった。
庭先にいたビバイアがボクたちに気がつくと、慌てて中に駆け込む。
やがてボラミーとティナ姉が飛び出してきた。
「ミナ、無事だったか! あまりに遅いから心配したぞ」
「ミナ、おかえり。エナも……よかった」
「ぜんぶミナのおかげ。ミナがいなければ命はなかった」
「それは、ここにいるみんながそう」
エナ姉、ティナ姉とボクは再会を喜び合う。
その光景を、ボラミーとビバイアがまぶしそうに見つめている。
ボクはそこにいるみんなに、とびきりの笑顔で告げた。
「ただいま!」
【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ 完
【ミナ 体力点2/4 悪夢袋0/7】
金貨 7枚
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■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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2025年12月10日水曜日
2025年12月9日火曜日
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3) FT新聞 No.4703
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
(明日槇 悠)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第3回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
そんな中、領主レーモンの次女、エスクラルモンドは夜ごと城塞から南方を見つめ、天から降り注いだ火が神の軍となって向かってくる場面を幻視していた。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
お手のものの権謀術数を巡らせつつあった……。
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
●本編
■Act2.過酷なる冬(前編)
——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。
Aベルトラン「じゃあベルトラン、説明しちゃうけど、
(背景シート・信仰)【カタリ派の人たちは、自分たちをカタリ派と呼んでいるわけではない。集団とみなす必要のある場合には、単に自分たちを帰依者《アミクス・ド・ディウ》と呼ぶ。カタリ派の信仰はキリスト教の正統に逆らうものだ。というのも、彼らは旧約聖書で描かれる神、世界の創造主とはサタンであると信じているのだ。】
つまりヤハウェ=サタン、らしい。
【あらゆる人間には聖なる魂が内在しているものの、肉体という物質に囚われてしまっている。】グノーシスみてーだな。【人々が食事をするとき、性的な交わりを持つとき、血や体液に触れるとき、物質世界の悪に穢れに犯されるとみなすのである。(以下略)】
これがカタリ派だ。そしてその中で一番優れた、戒律を守っているエリートがベルトランだ」
C「シーンカード、【乾いた汗のすえた臭い】。エスクラルモンドは、人目を避けるようにセシルのいる小屋に向かいます。そこでエスクラルモンドはセシルの教理を聞きます。
Cエスクラルモンド「セシルさん、夜になるとまた南方にあの神の軍隊が見えるのです。あれは一体なにを指し示すのでしょうか。あれはなにか、フィリッパが、よからぬことを企てていることと関係があるのでしょうか」
手を合わせていると、カーテンの向こうからセシルは煙管をくゆらせて、乾いた汗のすえた臭いが漂ってきます」
A「セシル……俺が演ってもいいんだけど、俺がやらないほうがいいかもしれない。セシルを疑ってるベルトランと疑われてるセシルをやっちゃうことになるから、俺次第で話の内容を決めてしまうことができる」
B「分散してったほうが。じゃあセシル、やります」
Aセシル「私だよ! セシルだよ!(一同笑)」
Bセシル「あんたは誰だったかねえ」
Cエスクラルモンド「私です。エスクラルモンドです」
Bセシル「ああ、あの。最近は、どうだい」
Cエスクラルモンド「南方からやってくる神の軍隊はますますこのモンセギュール城塞に近づいてきております。その神の軍勢の放つ火の勢いで、私のかんばせからも汗が流れ落ちてきます」
Bセシル「そう心配することは、ないよ。肉体は、魂を縛る器。ただ信仰を続けなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。でも、姉のフィリッパはその信仰を守っているかどうか、どうも疑わしいところがあるのです」
Bセシル「それを判断するのは、人間のする仕事ではない。ただあの子は……信仰に篤いとはいえない。だからこそ今、受難がふりかかっているのでしょう。彼女の夫、ピエール・ロジェが、ベルトランからどのように言われているか、知っていますか?」
Cエスクラルモンド「どのように言われているのですか?」
Bセシル「彼は妻帯者でありながら、娼婦や、複数の女性と関係を持とうとしている」
Cエスクラルモンド「ハッ……!(息を呑む)」
Bセシル「それは敬虔な信仰とはいえません。おそらく十字軍の軍勢が彼に油断をもたらしているのは、それを主が見ているからでしょう。すべては神の差配のもとに動いているのです。あなたが心配する必要はありません」
Cエスクラルモンド「わかりました。しかし、そのような状況であれば、私はあの二人、ピエール・ロジェとフィリッパの夫妻のことをよく観察しておかねばならないと思っております」
Bセシル「では、今度フィリッパを私のもとに連れてきなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。是非連れてきます!」
C「と言ってエスクラルモンドは、セシルの館を後にし、自分の家に帰る」
A「【夜闇を駆ける馬の足音】がレーモン邸に(笑)(シーンカードを出してナレーション権奪取)
Aベルトラン「コルバさん。コルバ君。いま、エスクラルモンドがセシルの元から帰ってくるのを見かけたから、入れ替わりで君が、セシル邸に行ってはくれんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「はははは。そしてエスクラルモンドがなんの話をしたか、それをすぐ探ってくれはせんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「君、ニンジャか!(笑) じゃあ君、ちょっと今から行ってくれんかね」
Dコルバ「御意」
A「そしてコルバはセシル邸に行きました」
D「マンションに行きました。普通に入っちゃっていいんですよね、表から」
A「いいよ。マンションじゃないと思うけど(笑)。ふつうにエスクラルモンドが行ったのと同じように洗礼とか、『私もぉー、ペルフィッチャなりたいですー!』みたいな。そういうノリで、まあ既婚者だから厳しいとおもうけど、なんか相談事とかのフリで行きなさい。『レーモンが冷たくてー!』みたいな」
D「はい。ピンポーンと押しました」
Dコルバ「すみませーん」
Bセシル「あら、珍しいわね。コルバ」
Dコルバ「あのー少しいろいろ、生活のこととかでご相談があって、ぜひお話させていただければとおもいまして。お時間、よろしいでしょうか」
Bセシル「ええ。構いません」
Dコルバ「では失礼します。ところで、なにやらエスクラルモンドとお話されていたと聞いたのですが、どういったお話をされていたのでしょうか」
Bセシル「ええ、細かな内容はお伝えできませんが……彼女の生活の悩みについての相談を受けていました」
Dコルバ「そうですか……。私は彼女の母親なので、その内容というのを保護者として聞かねばならないのです」
Bセシル「うーん。難しいですが……ここで聞いたことは、他言無用です」
Dコルバ「はい。……御意」
Bセシル「では。……コルバ(CORBA)の名前の文字を入れ替えると、コブラ(COBRA)になるから、彼女は本当に教義に則したことをできているのかと、まあしょうもない相談に乗っていましてね。あと名前が長すぎて、エスクラルモンドと書くとき、本当に大変だという話を聞いていました」
Dコルバ「あの子がそんなことを……」
Bセシル「本当にしょうもない話なので、私も相談に乗りながらもちょっと困ってはいたんですけれど、あの子は心が弱いところがあるので、母親であるあなたも相談に乗ってあげてください」
Dコルバ「わかりました……ありがとうございます」
A「コルバは一部始終をベルトランに話した。
Aベルトラン「コルバ君、あのババアは薬をやってるよ!(一同笑)純粋に考えて、はぐらかされた可能性が高い。(膝を叩きながら)君の娘が、変になっていっているのに、あの女は、それを誤魔化して、君のことまで、侮蔑したんだよ。コルバ君! 今度、日を改めてセシルのところに行って、こう言いなさい。『相談があります。すみません、懺悔します。私は、教皇軍と内通しています』それで、あのババアに揺さぶりをかけなさい」
Dコルバ「はっ!!(一同笑)」
Aベルトラン「ロジェの後釜を君にしようかな(笑)」
Dコルバ「従順なしもべなので」
Aベルトラン「うーん。じゃあ君に。僕、ちと行くところあるから、行くわ」
Dコルバ「はっ」
Aベルトラン「おいガニエル! ガニエルゥー! ガニエル……ガニエル君」
Cガルニエ「ガルニエです……!(一同笑)」
Aベルトラン「すまない。すまない。えーっとガニエル……あっ、ガルニエか! すまない」
Cガルニエ「なんでしょうか!」
Aベルトラン「ちなみに君、エスメラ…………エスクラルモンドからなんか聞いてない?」
Cガルニエ「あー、私は遠くから見つめているだけです! エスクラルモンドのことは……」
Aベルトラン「あー……んあー……だからお前……だからお前、キモいって言われんじゃない! いや、ごめん(笑)。今のは冗談だよ。今のは冗談だよ、ガニエル。君、勇気を持って話しかけて、エスクラルモンドと早く世帯を持って、そんぐらい仲良くなって、セシルのことをもっと深く聞いてほしいんだがね」
Cガルニエ「そ、そうですか……」
Aベルトラン「そして……フィリッパのことをエスクラルモンドに話すときに……そうだな、セシルがフィリッパのことをよく思っていないみたいなので、ここらへんをガニエルが……あ、ガルニエ君!(一同笑)君、もうガニエルに改姓したらどうかな」
Cガルニエ「これは、親からもらった大事な名前です」
Aベルトラン「ガルニエ君。深慮遠謀を思いついたんだが、ちょっと考えをまとめるので、ガルニエ君、また後日呼び出すよ。ガルニエ君」
Cガルニエ「分かりました……」
Aベルトラン「早く仲良くなれ。エスクラルモンドと。とっとと」
B「ちょっと使ってみていいですか? (シーンカードを出してナレーション権奪取)【山の端をかすめる雲】を眺めながら、コルバが去った後、セシルは思いました。自らの質問、【あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?】セシルが織る布には、人間の血のような赤色が。何度縫っても、同じように赤い布を織ってしまう」
A「クレイジーサイコババアじゃん(笑)」
D「なるほどね」
B「セシルは、このままだと十字軍に囲まれたモンセギュールは危ういことになると感じています。しかし政府のよしなしごと、人間界の出来事は、肉体を持った人間がなすものであって、ペルフェッチャである彼女にとっては、もはやどうでもいいことなのです。彼女は今、死の淵にあり、すべての出来事はサタン——主の思し召しのままに動くであろうと、すべてを達観しています。そしてベルトランに対しても、人間の出来事に囚われているようではまだまだだと、ちょっと強キャラババア感を出して、血の色の布を織っていました」
◯Act2.過酷なる冬(後編) に続く……
●登場人物/3つの質問
セシル・デ・モンセヴェール……完徳者《ペルフェッチャ》。信徒たちの指導者的な立場にある年配の女性。
1. ファイユを見ると、あなたは誰のことを思い出すのか?
2. あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?
3. 自分が死の淵にあると信じなかったなら、あなたは果たして救慰礼《コンソラメンテ》を受けて完徳者《ペルフェッチャ》になったろうか?
コルバ……レーモン・ド・ペレーユと結婚している中年女。フィリッパとエスクラルモンドの母親。
1. あなたは何人の子どもを埋葬してきたか?
2. フィリッパを見ると、あなたは誰のことを思い出すか?
3. あなたがいちばん後悔していることは何か?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(3)
(明日槇 悠)
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世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第3回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……
1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。砦で暮らす人々は事態をまだ楽観視していた……。
そんな中、領主レーモンの次女、エスクラルモンドは夜ごと城塞から南方を見つめ、天から降り注いだ火が神の軍となって向かってくる場面を幻視していた。
信者たちの精神的指導者であるベルトランは、エスクラルモンドが心酔しているもう一人の精神的指導者、セシルを怪しみ、レーモンの妻コルバに調査を依頼。
お手のものの権謀術数を巡らせつつあった……。
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Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
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プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
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●本編
■Act2.過酷なる冬(前編)
——当初予期していたよりも状況は悲惨である。十字軍は冬を越す覚悟を決めた。戦局は決め手を欠いたまま、1244年1月まで続く。
Aベルトラン「じゃあベルトラン、説明しちゃうけど、
(背景シート・信仰)【カタリ派の人たちは、自分たちをカタリ派と呼んでいるわけではない。集団とみなす必要のある場合には、単に自分たちを帰依者《アミクス・ド・ディウ》と呼ぶ。カタリ派の信仰はキリスト教の正統に逆らうものだ。というのも、彼らは旧約聖書で描かれる神、世界の創造主とはサタンであると信じているのだ。】
つまりヤハウェ=サタン、らしい。
【あらゆる人間には聖なる魂が内在しているものの、肉体という物質に囚われてしまっている。】グノーシスみてーだな。【人々が食事をするとき、性的な交わりを持つとき、血や体液に触れるとき、物質世界の悪に穢れに犯されるとみなすのである。(以下略)】
これがカタリ派だ。そしてその中で一番優れた、戒律を守っているエリートがベルトランだ」
C「シーンカード、【乾いた汗のすえた臭い】。エスクラルモンドは、人目を避けるようにセシルのいる小屋に向かいます。そこでエスクラルモンドはセシルの教理を聞きます。
Cエスクラルモンド「セシルさん、夜になるとまた南方にあの神の軍隊が見えるのです。あれは一体なにを指し示すのでしょうか。あれはなにか、フィリッパが、よからぬことを企てていることと関係があるのでしょうか」
手を合わせていると、カーテンの向こうからセシルは煙管をくゆらせて、乾いた汗のすえた臭いが漂ってきます」
A「セシル……俺が演ってもいいんだけど、俺がやらないほうがいいかもしれない。セシルを疑ってるベルトランと疑われてるセシルをやっちゃうことになるから、俺次第で話の内容を決めてしまうことができる」
B「分散してったほうが。じゃあセシル、やります」
Aセシル「私だよ! セシルだよ!(一同笑)」
Bセシル「あんたは誰だったかねえ」
Cエスクラルモンド「私です。エスクラルモンドです」
Bセシル「ああ、あの。最近は、どうだい」
Cエスクラルモンド「南方からやってくる神の軍隊はますますこのモンセギュール城塞に近づいてきております。その神の軍勢の放つ火の勢いで、私のかんばせからも汗が流れ落ちてきます」
Bセシル「そう心配することは、ないよ。肉体は、魂を縛る器。ただ信仰を続けなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。でも、姉のフィリッパはその信仰を守っているかどうか、どうも疑わしいところがあるのです」
Bセシル「それを判断するのは、人間のする仕事ではない。ただあの子は……信仰に篤いとはいえない。だからこそ今、受難がふりかかっているのでしょう。彼女の夫、ピエール・ロジェが、ベルトランからどのように言われているか、知っていますか?」
Cエスクラルモンド「どのように言われているのですか?」
Bセシル「彼は妻帯者でありながら、娼婦や、複数の女性と関係を持とうとしている」
Cエスクラルモンド「ハッ……!(息を呑む)」
Bセシル「それは敬虔な信仰とはいえません。おそらく十字軍の軍勢が彼に油断をもたらしているのは、それを主が見ているからでしょう。すべては神の差配のもとに動いているのです。あなたが心配する必要はありません」
Cエスクラルモンド「わかりました。しかし、そのような状況であれば、私はあの二人、ピエール・ロジェとフィリッパの夫妻のことをよく観察しておかねばならないと思っております」
Bセシル「では、今度フィリッパを私のもとに連れてきなさい」
Cエスクラルモンド「わかりました。是非連れてきます!」
C「と言ってエスクラルモンドは、セシルの館を後にし、自分の家に帰る」
A「【夜闇を駆ける馬の足音】がレーモン邸に(笑)(シーンカードを出してナレーション権奪取)
Aベルトラン「コルバさん。コルバ君。いま、エスクラルモンドがセシルの元から帰ってくるのを見かけたから、入れ替わりで君が、セシル邸に行ってはくれんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「はははは。そしてエスクラルモンドがなんの話をしたか、それをすぐ探ってくれはせんかね」
Dコルバ「御意」
Aベルトラン「君、ニンジャか!(笑) じゃあ君、ちょっと今から行ってくれんかね」
Dコルバ「御意」
A「そしてコルバはセシル邸に行きました」
D「マンションに行きました。普通に入っちゃっていいんですよね、表から」
A「いいよ。マンションじゃないと思うけど(笑)。ふつうにエスクラルモンドが行ったのと同じように洗礼とか、『私もぉー、ペルフィッチャなりたいですー!』みたいな。そういうノリで、まあ既婚者だから厳しいとおもうけど、なんか相談事とかのフリで行きなさい。『レーモンが冷たくてー!』みたいな」
D「はい。ピンポーンと押しました」
Dコルバ「すみませーん」
Bセシル「あら、珍しいわね。コルバ」
Dコルバ「あのー少しいろいろ、生活のこととかでご相談があって、ぜひお話させていただければとおもいまして。お時間、よろしいでしょうか」
Bセシル「ええ。構いません」
Dコルバ「では失礼します。ところで、なにやらエスクラルモンドとお話されていたと聞いたのですが、どういったお話をされていたのでしょうか」
Bセシル「ええ、細かな内容はお伝えできませんが……彼女の生活の悩みについての相談を受けていました」
Dコルバ「そうですか……。私は彼女の母親なので、その内容というのを保護者として聞かねばならないのです」
Bセシル「うーん。難しいですが……ここで聞いたことは、他言無用です」
Dコルバ「はい。……御意」
Bセシル「では。……コルバ(CORBA)の名前の文字を入れ替えると、コブラ(COBRA)になるから、彼女は本当に教義に則したことをできているのかと、まあしょうもない相談に乗っていましてね。あと名前が長すぎて、エスクラルモンドと書くとき、本当に大変だという話を聞いていました」
Dコルバ「あの子がそんなことを……」
Bセシル「本当にしょうもない話なので、私も相談に乗りながらもちょっと困ってはいたんですけれど、あの子は心が弱いところがあるので、母親であるあなたも相談に乗ってあげてください」
Dコルバ「わかりました……ありがとうございます」
A「コルバは一部始終をベルトランに話した。
Aベルトラン「コルバ君、あのババアは薬をやってるよ!(一同笑)純粋に考えて、はぐらかされた可能性が高い。(膝を叩きながら)君の娘が、変になっていっているのに、あの女は、それを誤魔化して、君のことまで、侮蔑したんだよ。コルバ君! 今度、日を改めてセシルのところに行って、こう言いなさい。『相談があります。すみません、懺悔します。私は、教皇軍と内通しています』それで、あのババアに揺さぶりをかけなさい」
Dコルバ「はっ!!(一同笑)」
Aベルトラン「ロジェの後釜を君にしようかな(笑)」
Dコルバ「従順なしもべなので」
Aベルトラン「うーん。じゃあ君に。僕、ちと行くところあるから、行くわ」
Dコルバ「はっ」
Aベルトラン「おいガニエル! ガニエルゥー! ガニエル……ガニエル君」
Cガルニエ「ガルニエです……!(一同笑)」
Aベルトラン「すまない。すまない。えーっとガニエル……あっ、ガルニエか! すまない」
Cガルニエ「なんでしょうか!」
Aベルトラン「ちなみに君、エスメラ…………エスクラルモンドからなんか聞いてない?」
Cガルニエ「あー、私は遠くから見つめているだけです! エスクラルモンドのことは……」
Aベルトラン「あー……んあー……だからお前……だからお前、キモいって言われんじゃない! いや、ごめん(笑)。今のは冗談だよ。今のは冗談だよ、ガニエル。君、勇気を持って話しかけて、エスクラルモンドと早く世帯を持って、そんぐらい仲良くなって、セシルのことをもっと深く聞いてほしいんだがね」
Cガルニエ「そ、そうですか……」
Aベルトラン「そして……フィリッパのことをエスクラルモンドに話すときに……そうだな、セシルがフィリッパのことをよく思っていないみたいなので、ここらへんをガニエルが……あ、ガルニエ君!(一同笑)君、もうガニエルに改姓したらどうかな」
Cガルニエ「これは、親からもらった大事な名前です」
Aベルトラン「ガルニエ君。深慮遠謀を思いついたんだが、ちょっと考えをまとめるので、ガルニエ君、また後日呼び出すよ。ガルニエ君」
Cガルニエ「分かりました……」
Aベルトラン「早く仲良くなれ。エスクラルモンドと。とっとと」
B「ちょっと使ってみていいですか? (シーンカードを出してナレーション権奪取)【山の端をかすめる雲】を眺めながら、コルバが去った後、セシルは思いました。自らの質問、【あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?】セシルが織る布には、人間の血のような赤色が。何度縫っても、同じように赤い布を織ってしまう」
A「クレイジーサイコババアじゃん(笑)」
D「なるほどね」
B「セシルは、このままだと十字軍に囲まれたモンセギュールは危ういことになると感じています。しかし政府のよしなしごと、人間界の出来事は、肉体を持った人間がなすものであって、ペルフェッチャである彼女にとっては、もはやどうでもいいことなのです。彼女は今、死の淵にあり、すべての出来事はサタン——主の思し召しのままに動くであろうと、すべてを達観しています。そしてベルトランに対しても、人間の出来事に囚われているようではまだまだだと、ちょっと強キャラババア感を出して、血の色の布を織っていました」
◯Act2.過酷なる冬(後編) に続く……
●登場人物/3つの質問
セシル・デ・モンセヴェール……完徳者《ペルフェッチャ》。信徒たちの指導者的な立場にある年配の女性。
1. ファイユを見ると、あなたは誰のことを思い出すのか?
2. あなたが織る布に、もっとも多く混じる色は何色か?
3. 自分が死の淵にあると信じなかったなら、あなたは果たして救慰礼《コンソラメンテ》を受けて完徳者《ペルフェッチャ》になったろうか?
コルバ……レーモン・ド・ペレーユと結婚している中年女。フィリッパとエスクラルモンドの母親。
1. あなたは何人の子どもを埋葬してきたか?
2. フィリッパを見ると、あなたは誰のことを思い出すか?
3. あなたがいちばん後悔していることは何か?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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2025年12月8日月曜日
新しい記事群のお知らせ! FT新聞 No.4702
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
──創作は生きものであり、生きものは常に少しずつその姿を変える。
いま創った言葉です。
なんとなく、ありそうな感じがしませんか。
FT新聞も、さまざまな局面で変化しながら続いています☆
◆創ったら、遊んでほしい。よね?
先日、名古屋で開催されたFTコンベンションで、ビックリしました。
FT書房が展開する「30分で遊ぶ1人用TRPG」の関連作品が、公式非公式を合わせると92作品にもなる、というのです。
その時から2ヶ月近くが経過した今では、100作品に届いているかもしれません。
……これはどうも、楽しいことが起こっているぞ?
私はすぐに、そう思いました。
それだけの作品が登場しているということは、作る以上にたくさんの人が遊んでいるはずです。
そして、そこに集まる熱量が、小さなものであるはずがない!
いったい、どんな作品が集まっているんだろう?
そこまで来たときに、私は思いました。
「作品が増えてるぶん、探すのが大変だぞ……?」
どんな作品があるのか、簡単な要約をまず読みたいナァ〜☆
そこで私は、FT新聞の編集部員である天狗ろむさんに連絡をしました。
Discordで作品制作のサーバ管理人をしていらっしゃるため、私以上に、ローグライクハーフの個人制作作品と、その作者の方々に近い位置にいらっしゃると、感じたからです。
◆新しい情報を!
そういうわけで、現在、「ローグライクハーフのサプリメント」を紹介する記事の準備が、進められております!
これを機にラインナップを確認させていただきましたが……すごい熱量ですよ、これらは。
共通世界アランツァに関しては、「よく研究されている……!」とうなるものばかりでしたし、オリジナルの世界観であれば、意欲的な作品性にいやがおうにも情熱が伝わってきます。
これは、紹介したい……!
はじめは、これらの記事を私が紹介していくことを考えていたのですが、今はまあまあ多忙です。
新作を書きながら、編集もやっています……もちろん、社長としての業務も。
だから、ここは、作者ご自身に書いていただいて、その魅力を存分に語っていただくのが吉、と考えました☆
そういうわけで、編集部員である天狗ろむさんを通じて、自己紹介をご希望の作者さんに、声をかけさせていただいている、というわけです。
読者の皆さまにおかれましては、今しばらくお待ちください……!
◆先行でチェックするならこちら!
紹介には及ばない、片っぱしから遊んでやるぜ!
そんなあなたには、私たちが運営する「ローグライクハーフwiki」のページアドレスのひとつを、置いておきます。
個人制作作品の一覧と、そのアドレスが置いてあります!
https://x.gd/FjYnY
◆余談。
いま、田林洋一氏によるFT新聞上の連載記事「SAGBがよくわかる本」の監修作業を行っております。
もっと面白くなるポテンシャルのある文章だと感じて、主張内容の伝わりやすさや分かりやすさなど、読みやすさと納得感に重点を置いて、文章を精査しています。
ただ、文章を磨いてはいますが、こちらの連載記事が書籍化するかどうかは、決まっていません。
応援の声がありましたら、おたよりに届けていただけると、ありがたいです☆
それではまた!
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──創作は生きものであり、生きものは常に少しずつその姿を変える。
いま創った言葉です。
なんとなく、ありそうな感じがしませんか。
FT新聞も、さまざまな局面で変化しながら続いています☆
◆創ったら、遊んでほしい。よね?
先日、名古屋で開催されたFTコンベンションで、ビックリしました。
FT書房が展開する「30分で遊ぶ1人用TRPG」の関連作品が、公式非公式を合わせると92作品にもなる、というのです。
その時から2ヶ月近くが経過した今では、100作品に届いているかもしれません。
……これはどうも、楽しいことが起こっているぞ?
私はすぐに、そう思いました。
それだけの作品が登場しているということは、作る以上にたくさんの人が遊んでいるはずです。
そして、そこに集まる熱量が、小さなものであるはずがない!
いったい、どんな作品が集まっているんだろう?
そこまで来たときに、私は思いました。
「作品が増えてるぶん、探すのが大変だぞ……?」
どんな作品があるのか、簡単な要約をまず読みたいナァ〜☆
そこで私は、FT新聞の編集部員である天狗ろむさんに連絡をしました。
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これは、紹介したい……!
はじめは、これらの記事を私が紹介していくことを考えていたのですが、今はまあまあ多忙です。
新作を書きながら、編集もやっています……もちろん、社長としての業務も。
だから、ここは、作者ご自身に書いていただいて、その魅力を存分に語っていただくのが吉、と考えました☆
そういうわけで、編集部員である天狗ろむさんを通じて、自己紹介をご希望の作者さんに、声をかけさせていただいている、というわけです。
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◆余談。
いま、田林洋一氏によるFT新聞上の連載記事「SAGBがよくわかる本」の監修作業を行っております。
もっと面白くなるポテンシャルのある文章だと感じて、主張内容の伝わりやすさや分かりやすさなど、読みやすさと納得感に重点を置いて、文章を精査しています。
ただ、文章を磨いてはいますが、こちらの連載記事が書籍化するかどうかは、決まっていません。
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2025年12月7日日曜日
『ベテルギウスの残光』ローグライクハーフd66シナリオ FT新聞 No.4701
おはようございます、FT新聞編集長の水波流です。
第1日曜日は、ローグライクハーフのシナリオ配信日!
本日お送りするのは、作:紫隠ねこ、原案:ロア=スペイダーというコンビによる新作d66シナリオ。
以前の告知で『龍脈温泉(仮)』という名前でお伝えしていたシナリオの完成版です!
++++++++++++++++++
おはようございます。紫隠ねこです。
今回は、ローグライクハーフの新作d66シナリオ『ベテルギウスの残光』をお送りいたします。
冒険の舞台は、ラドリド大陸の南西部に位置する町モフージャ。もふもふの毛に覆われた生物〈もふもふ獣〉と楽器の音色にあふれる町です。
この町で作られた公衆浴場〈ベテルギウス〉は、新しい観光名所になることを期待されていましたが、拡張工事中に【アンデッド】と呼ばれる不死のクリーチャーが出現。
同時に原因不明の地震が発生したことで、建設中だった別館は深刻なダメージを受け、多くの人が施設内に取り残された状態になっています。
モフージャの商業組合の依頼を受けた主人公は、この事態を解決するために、崩れかけたベテルギウスを探索します……。
今回の冒険では、事件の真相を突き止めるではなく、取り残された人たちを救助するという要素もあります。
ダンジョンを探索するのは、ローグライクハーフでは珍しくはありませんが、ガタガタの状態になった〈ベテルギウス〉そのものがトラップとなっています。
至る所がガレキだらけの施設内では、探索を進めるのも一筋縄ではいきません。自分の足元や、周りの状態には要注意!
たとえ戦闘が起きなかったとしても、思わぬ油断からパーティが危険に晒されることもあるでしょう。
いったい何が原因で、温泉施設の地下からアンデッドがわきだしてきたのか?
身動きのとれなくなった人たちを助けながら、主人公は事件の謎を追っていくことになります。その真相にたどり着けるかどうかは、主人公の活躍次第……。
動物たちと触れ合うだけではない、アランツァ世界の一部として描いたモフージャの冒険を楽しんで頂ければ幸いです。
ローグライクハーフd66シナリオ『ベテルギウスの残光』
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_Betelgeuse_Afterglow.txt
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今回は、ローグライクハーフの新作d66シナリオ『ベテルギウスの残光』をお送りいたします。
冒険の舞台は、ラドリド大陸の南西部に位置する町モフージャ。もふもふの毛に覆われた生物〈もふもふ獣〉と楽器の音色にあふれる町です。
この町で作られた公衆浴場〈ベテルギウス〉は、新しい観光名所になることを期待されていましたが、拡張工事中に【アンデッド】と呼ばれる不死のクリーチャーが出現。
同時に原因不明の地震が発生したことで、建設中だった別館は深刻なダメージを受け、多くの人が施設内に取り残された状態になっています。
モフージャの商業組合の依頼を受けた主人公は、この事態を解決するために、崩れかけたベテルギウスを探索します……。
今回の冒険では、事件の真相を突き止めるではなく、取り残された人たちを救助するという要素もあります。
ダンジョンを探索するのは、ローグライクハーフでは珍しくはありませんが、ガタガタの状態になった〈ベテルギウス〉そのものがトラップとなっています。
至る所がガレキだらけの施設内では、探索を進めるのも一筋縄ではいきません。自分の足元や、周りの状態には要注意!
たとえ戦闘が起きなかったとしても、思わぬ油断からパーティが危険に晒されることもあるでしょう。
いったい何が原因で、温泉施設の地下からアンデッドがわきだしてきたのか?
身動きのとれなくなった人たちを助けながら、主人公は事件の謎を追っていくことになります。その真相にたどり着けるかどうかは、主人公の活躍次第……。
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2025年12月6日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第669号 FT新聞 No.4700
From:水波流
先週は、日本を訪れたゲームデザイナー、スティーブ・クロンプトンを囲む会に参加。
多くの日本人ファンとともに、トンネルズ&トロールズやモンスター!モンスター!の話を語り合った。
「The 7 Samurai !」と彼に言わしめた我ら日本の狂信的ファンは、移動する地下鉄の中でも完全版ルールブックを広げ、アフリカ投げナイフについて話をしていた。
彼は偉大なるケン・セント・アンドレからの手紙を我々に持ってきてくれた。
「私は小学生の頃にT&Tに出会い、その後中学生でストームブリンガーに熱中した。どちらもケンがデザインしたTRPGだと後から知った。彼に育てられたようなものだ」と彼に伝えたところ、
後にケンからFBで「Thanks, son!」とコメントが届いたのは嬉しかったなぁ。
ありがとうスティーブ!
From:葉山海月
今、ゲームブック書いてるんですが、パラグラフナンバー一つ重複ミスしただけで地獄を見ております!
From:天狗ろむ
早いものでもう12月!光陰矢の如しを噛み締めつつ、大事に過ごしていきたいものです。
寒さが日に日に増してきましたので、皆様どうぞ温かくしてお過ごし下さいね。
From:中山将平
僕今日と明日、大阪なんばOCAT1階正面広場で開催の「蛙びとの集い」という「かえる作家による手づくり市」に、個人として出店しています。
扱うのはフロッグファンタジー作品「カエルの勇者ケロナイツ」。本はまだですが、新作はできました。ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(葉)=葉山海月
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■11/30(日)~12/5(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年11月30日(日)ロア・スペイダー FT新聞 No.4694
Re:ローグライクハーフ・町オプション【モフージャの町】&新職業【吟遊詩人】
・12月の新シナリオの舞台となる【モフージャの町】の「町オプション」と、その地で活躍する職業【吟遊詩人】のデータを再配信しました。
この、もふもふと楽器の音色があふれる素敵な町のルーツは、FT新聞で昨年行われた企画『みんなで作ろう! 融合冒険譚!』です。読者投稿から選ばれた3つのキーワード「龍脈」「もふもふ」「竪琴」を題材として、d33シナリオ『もふもふ龍に竪琴の調べは響くか』(2024/10/06配信、No.4274)とその舞台としてのモフージャの町が、ロア・スペイダー氏によって生み出されました。
モフージャがお久しぶりの方も、初めましての方も、もふもふとした装備品や従者たちのデータを眺めながら、新シナリオの配信を楽しみにお待ちください!
(く)
2025年12月1日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4695
☆新刊告知☆「ローグライクハーフ」サプリメント最新作!
・先週の金曜日、大阪港を訪れたスティーブ・クロンプトンをFT書房のメンバー4人を含む11人のファンが迎え、最高に楽しい1日となりました! そのレポートは、後日配信予定です。
話は変わりますが、キリスト教徒だからなのか、はじめはクトゥルフに関わる作品づくりが苦手だったという杉本氏。
ある知り合いの漫画家さんに相談したところ、「クトゥルフはもはや巨大ジャンル。好きに書いていい」とアドバイスを貰い、これをきっかけに克服できたそうです。
それで今年は入稿したばかりの『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』の他にもう1冊、冒涜的なプレゼントがあるんです……!
中山将平著、「ローグライクハーフ」の最新サプリメント『クトゥウルウの聖なる邪神殿』が、この冬、あなたの正気をむしばみに参ります!
冬のコミックマーケットでは1日目、12月30日に「火曜日 東ソ01ab FT書房」として出展します! 楽しみにしていただけましたら、さいわいです☆
(明)
2025年12月2日(火)かなでひびき FT新聞 No.4696
これはゲームブックなのですか!? vol.126
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する作品は、『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會:著 筑摩書房)
「左うちわ」に、「転ばぬ先の杖」ってホントにあったら欲しくありません?
かのクラフト・エヴィング商會が、その想像力を持って、そのような「慣用句的」商品を全力で商品化!? すべく当たりました。
アイディアのびっくり箱のような商品の数々は、きっとあなたのイマジネーションを刺激してやまないはず!
まさに大人の「遊び心」満載な逸品! どうぞお試しあれ!
(葉)
2025年12月3日(水)ぜろ FT新聞 No.4697
第16回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・精緻な原作を深く豊かな解釈で描き直す、ぜろ氏のリプレイ第468回です。
〈跳兎の懐中時計〉の魔法で時を遡ったミナは、大切な仲間であるボラミーの弟・ビバイアの命を繋ぎ、自らの姉・ティナを救い出すことにも成功しました。あとは吸血鬼の館から脱出し、再びゴルジュへと辿り着き、吸血鬼化されてしまったもうひとりの姉・エナを元に戻さなければなりません。
エナが腕の中で崩れていく、あの絶望的な未来を変えるため、残された最後の悪夢袋とともに、ミナはゴルジュへの道を急ぎます。
(く)
2025年12月4日(木) 齊藤飛鳥 FT新聞 No.4698
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.37『汝、獣となれ人となれ』 その1
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』に続いて、冒険家乙女のクワニャウマとその相棒のエルフの少女イェシカの新たな冒険が始まります!
今回の依頼人は、〈蛮族都市フーウェイ〉の先に広がる〈太古の森〉に隠れ住む賢人、黒檀のメメコレオウス。
話を聞いた銀狼のまじない師ヴィドが言うには、夜の間に来い、と。
言いつけ通りに向かった先で、クワニャウマたちを待っていたのは……。
新たなもふもふ仲間も増えつつの導入篇、お見逃しなきよう!
(天)
2025年12月5日(金)休刊日 FT新聞 No.4699
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あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(忍者福島さん)
僕も、ヨグ・ソトースというはヨーグルトっす!って語感に似てるなあと思ってました。
名前だけ見ると美味そうな感じがしますね(笑)
(お返事:葉山海月)
ありがとうございます。
そうなんですよ。一度聞いたら耳にこびりついちゃって!
なんか「ヨグ・ソトース」と聞くと、口の中に甘酸っぱい感じがしてなりません(笑)
(ジャラル アフサラールさん)
NHKで間もなく最終回が放送される『雲霧仁左衛門ファイナル』でキーアイテムになっている名刀「数珠丸恒次」、刀剣乱舞のファンならご存じのこの名刀は日蓮聖人が登山中に杖代わりにすると不思議と転ばなかったという逸話があり、そのことから商売に「ころばない」という事で豪商達が縁起物として入手したがる設定で、それを盗賊である雲霧仁左衛門が狙い…という話で、この「縁起物」設定はドラマオリジナルだと思いますが(数珠丸恒次は江戸時代に行方不明になっている)『ないもの、あります』に入っていても不思議ではないです。
(お返事:かなでひびき)
おたよりありがとうございます。
なるほどねー。リアルでそんなエピソードがあるとは!
ここら辺の「現実は小説より奇なり」というか「現実に虚構が混じりこむ」感じがいたします。
かなで、そういうエピソード大好きです。
勉強になりましたぁ!
(ぜろさん)
飛鳥さんのリプレイ、お待ちしてました。
待ちくたびれて、「シニカル探偵安土真」を6巻まで読了し、続刊読みたさから「へなちょこ探偵24じ」に手をのばし、安土くんと同じ舞台で地図までついてることに狂喜乱舞し、2作品の登場人物が語られていないところでニアミスしているだろうことに心ときめかせていました。
私は私で、前に感想で触れさせていただいた、闇エルフ中心のゲームブックリプレイを掲載させていただきました。未プレイ作品だと読めていないかもしれませんが。
さて、今回のリプレイですが、鉄板主人公のクワニャウマさん、間隙の冒険も経て、猟犬チャウチャウまで加わり、かなりお強くなっているのでしょうね。それにしても猟犬の名前が独特です。一匹解説好きそうなお方がいますが、それっぽい描写は今後出てくるのでしょうか。私だったらどう名づけるかと思った瞬間に思い浮かんだのは「ミザール」「イワザール」「キカザール」で、犬なのに猿か!とセルフツッコミを入れてしまいました。この先の展開も含め、楽しみにしております。
(お返事:齊藤飛鳥)
拙リプレイをお待ちして下さっていたばかりか、拙作をお読み下さり、なおかつ感想も下さって、まことにありがとうございますm(_ _)m♪
ぜろさんのリプレイ作品は、未プレイ作品でしたので、ネタバレを踏まないよう、一話だけを拝読しました。主人公をボクっ娘エルフにアレンジされているとの一文で、主人公があらかじめ設定されているゲームブックのリプレイの書き方の勉強になりました^^
前回の『名付けられるべきではないもの』で、たくさん苦戦したので、クワニャウマの技量点と魔術点を中心に上げて、今回の冒険に挑みました。
ぜろさんが考えられた名前を見て、「そう言えば、雷電は三猿を連れていたような……」と、またも男塾脳になりました^^b
『汝、獣となれ人となれ』リプレイも、一筋縄ではいかない展開になりましたので、引き続きお楽しみいただければ幸いです。
(忍者福島さん)
イェシカが3匹の猟犬に、雷電・飛燕・月光と名付けたとは、なんでもいろいろ知ってたり針を飛びしてきそうな名前ですなあ(笑)
あとクワニャウマは見切り品とか名付けたりしない分、まだ少しはネーミングセンスあるのかと(思ったけど、やっぱ無い気がする・笑)
(お返事:齊藤飛鳥)
御感想下さり、嬉しいです。ありがとうございますm(_ _)m
中には、生来目が見えなさそうな名前のワンコもおります(笑)
クワニャウマなりの愛情表現が発露したネーミングセンス……なわけないですね(笑)
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先週は、日本を訪れたゲームデザイナー、スティーブ・クロンプトンを囲む会に参加。
多くの日本人ファンとともに、トンネルズ&トロールズやモンスター!モンスター!の話を語り合った。
「The 7 Samurai !」と彼に言わしめた我ら日本の狂信的ファンは、移動する地下鉄の中でも完全版ルールブックを広げ、アフリカ投げナイフについて話をしていた。
彼は偉大なるケン・セント・アンドレからの手紙を我々に持ってきてくれた。
「私は小学生の頃にT&Tに出会い、その後中学生でストームブリンガーに熱中した。どちらもケンがデザインしたTRPGだと後から知った。彼に育てられたようなものだ」と彼に伝えたところ、
後にケンからFBで「Thanks, son!」とコメントが届いたのは嬉しかったなぁ。
ありがとうスティーブ!
From:葉山海月
今、ゲームブック書いてるんですが、パラグラフナンバー一つ重複ミスしただけで地獄を見ております!
From:天狗ろむ
早いものでもう12月!光陰矢の如しを噛み締めつつ、大事に過ごしていきたいものです。
寒さが日に日に増してきましたので、皆様どうぞ温かくしてお過ごし下さいね。
From:中山将平
僕今日と明日、大阪なんばOCAT1階正面広場で開催の「蛙びとの集い」という「かえる作家による手づくり市」に、個人として出店しています。
扱うのはフロッグファンタジー作品「カエルの勇者ケロナイツ」。本はまだですが、新作はできました。ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(葉)=葉山海月
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
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■11/30(日)~12/5(金)の記事一覧
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2025年11月30日(日)ロア・スペイダー FT新聞 No.4694
Re:ローグライクハーフ・町オプション【モフージャの町】&新職業【吟遊詩人】
・12月の新シナリオの舞台となる【モフージャの町】の「町オプション」と、その地で活躍する職業【吟遊詩人】のデータを再配信しました。
この、もふもふと楽器の音色があふれる素敵な町のルーツは、FT新聞で昨年行われた企画『みんなで作ろう! 融合冒険譚!』です。読者投稿から選ばれた3つのキーワード「龍脈」「もふもふ」「竪琴」を題材として、d33シナリオ『もふもふ龍に竪琴の調べは響くか』(2024/10/06配信、No.4274)とその舞台としてのモフージャの町が、ロア・スペイダー氏によって生み出されました。
モフージャがお久しぶりの方も、初めましての方も、もふもふとした装備品や従者たちのデータを眺めながら、新シナリオの配信を楽しみにお待ちください!
(く)
2025年12月1日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4695
☆新刊告知☆「ローグライクハーフ」サプリメント最新作!
・先週の金曜日、大阪港を訪れたスティーブ・クロンプトンをFT書房のメンバー4人を含む11人のファンが迎え、最高に楽しい1日となりました! そのレポートは、後日配信予定です。
話は変わりますが、キリスト教徒だからなのか、はじめはクトゥルフに関わる作品づくりが苦手だったという杉本氏。
ある知り合いの漫画家さんに相談したところ、「クトゥルフはもはや巨大ジャンル。好きに書いていい」とアドバイスを貰い、これをきっかけに克服できたそうです。
それで今年は入稿したばかりの『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』の他にもう1冊、冒涜的なプレゼントがあるんです……!
中山将平著、「ローグライクハーフ」の最新サプリメント『クトゥウルウの聖なる邪神殿』が、この冬、あなたの正気をむしばみに参ります!
冬のコミックマーケットでは1日目、12月30日に「火曜日 東ソ01ab FT書房」として出展します! 楽しみにしていただけましたら、さいわいです☆
(明)
2025年12月2日(火)かなでひびき FT新聞 No.4696
これはゲームブックなのですか!? vol.126
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する作品は、『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會:著 筑摩書房)
「左うちわ」に、「転ばぬ先の杖」ってホントにあったら欲しくありません?
かのクラフト・エヴィング商會が、その想像力を持って、そのような「慣用句的」商品を全力で商品化!? すべく当たりました。
アイディアのびっくり箱のような商品の数々は、きっとあなたのイマジネーションを刺激してやまないはず!
まさに大人の「遊び心」満載な逸品! どうぞお試しあれ!
(葉)
2025年12月3日(水)ぜろ FT新聞 No.4697
第16回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・精緻な原作を深く豊かな解釈で描き直す、ぜろ氏のリプレイ第468回です。
〈跳兎の懐中時計〉の魔法で時を遡ったミナは、大切な仲間であるボラミーの弟・ビバイアの命を繋ぎ、自らの姉・ティナを救い出すことにも成功しました。あとは吸血鬼の館から脱出し、再びゴルジュへと辿り着き、吸血鬼化されてしまったもうひとりの姉・エナを元に戻さなければなりません。
エナが腕の中で崩れていく、あの絶望的な未来を変えるため、残された最後の悪夢袋とともに、ミナはゴルジュへの道を急ぎます。
(く)
2025年12月4日(木) 齊藤飛鳥 FT新聞 No.4698
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.37『汝、獣となれ人となれ』 その1
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
『常闇の伴侶』『名付けられるべきではないもの』に続いて、冒険家乙女のクワニャウマとその相棒のエルフの少女イェシカの新たな冒険が始まります!
今回の依頼人は、〈蛮族都市フーウェイ〉の先に広がる〈太古の森〉に隠れ住む賢人、黒檀のメメコレオウス。
話を聞いた銀狼のまじない師ヴィドが言うには、夜の間に来い、と。
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ありがとうございます。
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(お返事:かなでひびき)
おたよりありがとうございます。
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(ぜろさん)
飛鳥さんのリプレイ、お待ちしてました。
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さて、今回のリプレイですが、鉄板主人公のクワニャウマさん、間隙の冒険も経て、猟犬チャウチャウまで加わり、かなりお強くなっているのでしょうね。それにしても猟犬の名前が独特です。一匹解説好きそうなお方がいますが、それっぽい描写は今後出てくるのでしょうか。私だったらどう名づけるかと思った瞬間に思い浮かんだのは「ミザール」「イワザール」「キカザール」で、犬なのに猿か!とセルフツッコミを入れてしまいました。この先の展開も含め、楽しみにしております。
(お返事:齊藤飛鳥)
拙リプレイをお待ちして下さっていたばかりか、拙作をお読み下さり、なおかつ感想も下さって、まことにありがとうございますm(_ _)m♪
ぜろさんのリプレイ作品は、未プレイ作品でしたので、ネタバレを踏まないよう、一話だけを拝読しました。主人公をボクっ娘エルフにアレンジされているとの一文で、主人公があらかじめ設定されているゲームブックのリプレイの書き方の勉強になりました^^
前回の『名付けられるべきではないもの』で、たくさん苦戦したので、クワニャウマの技量点と魔術点を中心に上げて、今回の冒険に挑みました。
ぜろさんが考えられた名前を見て、「そう言えば、雷電は三猿を連れていたような……」と、またも男塾脳になりました^^b
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イェシカが3匹の猟犬に、雷電・飛燕・月光と名付けたとは、なんでもいろいろ知ってたり針を飛びしてきそうな名前ですなあ(笑)
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御感想下さり、嬉しいです。ありがとうございますm(_ _)m
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クワニャウマなりの愛情表現が発露したネーミングセンス……なわけないですね(笑)
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2025年12月4日木曜日
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.37『汝、獣となれ人となれ』その1 FT新聞 No.4698
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.37
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
今回は、『汝、獣となれ人となれ』リプレイの導入篇です!
『常闇の伴侶』で初めてローグライクハーフをプレイして以来、ゲームブックにして一人用TRPGでもあるこのゲームにすっかりハマってしまいました。
そこで、来たるべき新たな冒険に向け、自分の冒険者であるクワニャウマの経験点を上げておこうと、ルールに一緒にあった『黄昏の騎士』と、運よくFT新聞様を見た日に出会った『幽霊屋敷の果実酒』を冒険しました。
同時に、前回『名付けられるべきではないもの』で苦戦したので、次回はそうならないよう、ルールを読み直したり、FT新聞様に掲載されていたローグライクハーフの遊び方を読んで勉強したりしました。
このおかげで、クワニャウマの従者点にだいぶ余裕があることに気づけました。
そこへ、うまい具合にFT新聞様にフーウェイの都市オプションなるものが掲載されておりましたので、そちらで初めて冒険開始前に猟犬(戦う従者)を購入しました。
従者に猟犬を選んだのは、「ワンコなら台詞や個性を考えなくてもいいから」という、かなりしょうもない理由でしたが、その分、犬種は自分の好み全開に設定しました。
選んだ動機は不純でしたが、今回の冒険で猟犬達を従者に選んだのは大当たりで、とても助けられました。どのように助けられたのかはまた別の機会に譲るとして、まずは『汝、獣となれ人となれ』について語らせていただきます。
『常闇の伴侶』でマイノリティと宗教問題、『名付けられるべきではないもの』で尊厳死とアイデンティティと、骨太なテーマを扱ってきた〈太古の森〉の冒険ですが、今回は前二作のテーマすべてを網羅してきております。まさに、重量級で鉄骨クラスの骨太っぷりです。それでも重苦しい物語にならないのは、今回の仲間キャラであるクリスティのおかげでしょう。
陽気な関西弁コビット娘で、この物語における光を一身に背負っていると言っても過言ではない名キャラクターの彼女は、ともすれば重厚なテーマの物語を明るく軽やかに彩ってくれます^^
そして、今回旅の仲間がクリスティのおかげで、女の子達とワンコと小鳥という、私の冒険の中で過去最高にかわいいパーティー編成となりました。
きっと、今回はほのぼのとした冒険になるんだろうな☆
……そう思っていた冒険開始直後の自分が、懐かしいです。
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その1
齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
0:プロローグ
わたしの名は、クワニャウマ。
趣味は節約、特技は損得勘定。漆黒の髪とイエベ肌に金褐色の瞳が特徴の、強欲冒険家乙女だ。そのせいか、模範的な魔術師なのに、よく盗賊に間違えられる。
髪はまた切って三つ編みの二つ結びに戻し、いくつかの冒険を経て革鎧と斧を買って装備している。
旅の相棒は、エルフの少女・イェシカ。魔犬獣の毛皮の犬耳付きローブを装備していて、かわいさに磨きがかかっているランタン持ちだ。強欲で損得勘定命の邪悪なわたしに無償で心を開いてくれているし、受け入れてもくれている生ける奇跡だ。ようするに、わたしの宝だ。
ところで、わたしが今もこうしてイェシカと充実した冒険家生活を送れているのは、あるエルフの青年のおかげでもある。
その名は、ファラサール。
自分の命をぶん投げ、無料でわたしの命を救ってくれた彼への恩返しのため、その勇敢な人生を一人でも多くの人間に知ってもらおうと、吟遊詩人を雇って彼を讃える歌を作ってもらうための資金集めが、目下の冒険の目標だ。
そこで、〈太古の森〉の冒険を終えた後、初秋には自治都市トーンへ行って幽霊屋敷へ果実酒の原材料を取りに行く冒険を、晩冬には聖フランチェスコ市へ行って黄昏の騎士退治と、がんばって荒稼ぎをしてきた。
でも、吟遊詩人に歌を作ってもらう料金には、まだまだ届かない。
それに最近、ちょっとイェシカの元気がない。トーンで友達になったミッチという少女と別れたせいかも。
でも、あそこではミッチの祖母を2回も瀕死にしかけたから、正直戻りづらい。
そこで、イェシカの顔なじみがいる蛮族都市フーウェイへ顔を出すことにした。
フーウェイには、何度か来たことがある。
市場のある通りを歩いていると、イェシカが急に立ち止まった。
「どうしたの、イェシカ。何かいいものを見つけたの?」
見れば、イェシカは新しくできた犬舎の前に立ち止まり、食い入るように柵の向こうで思い思いに動き回っている猟犬達を見ていた。
イェシカは耳こそ聞こえないけど、目はいい。
今もきれいな瞳をキラキラと輝かせ、猟犬達を見つめるその横顔は、いくら大金を積んでも見られそうにないほど天使だった。
「最近荒稼ぎして従者を雇う余裕があるから、次の冒険に備えてここの猟犬達を買っていこうか。どの子がいいか、イェシカが選んでくれる?」
猟犬の値段は、一頭につき金貨7枚。
現在の所持金は、金貨153枚。余裕よゆー。
「……で、イェシカが3頭も猟犬を選んだから、いきなり大所帯になったのか」
日暮れ前の蛮族都市の広場で骰子賭博の胴元をしていた、顔なじみの銀狼のまじない師ヴィドが、笑いをこらえながらわたし達を見る。
カリウキ氏族の集落まで行く手間が省けたのでいいけど、意外な副業を持っているものだ。
「チャウチャウっていうの? 異国の珍しい犬種ですごくかわいいんで、イェシカがすっかりメロメロになっちゃってね。名前も付けたんだよね、イェシカ」
わたしが話しかけると、イェシカは慣れた手つきで首から下げていた石板にチョークで言葉を書いていく。
読唇術を習得していて、わたしたちの言語を理解できるイェシカだけど、話せるのは古代語のみ。それだと、下手したら彼女の真の素性がばれる危険があるので、外では用心のため、石板とチョークによる筆談でコミュニケーションを取るようにしてもらっている。
〈向かって左から、雷電。飛燕。月光〉
「……本当にイェシカがつけた名前なのか?」
ヴィドが疑うように私を見る。
「もちろんよ、ヴィド。わたしなら、特売、割引、半額って名付けるわ」
「それもそうか」
「イェシカはその点、おしゃれなネーミングセンスよ。この前の冒険で手に入れたウォー・ドールには、ニコライ・ボルコフって名前をつけていたからね」
「起動した暁には、スクリュードライバーを繰り出しそうなネーミングだな……」
ヴィドは、若干遠い目をしてから、ふと何か思い出したように急に真顔になった。
「そういや、〈太古の森〉に隠れ住む名高い賢人にして闇の魔獣の黒檀のメメコレオウスが、どういう訳だかお前さんをご指名だとよ」
「は? なに? 黒檀のメメコレオウスって誰?」
「ちょっと待ってろ。今、骰子賭博を開く時刻になったから」
そう言ってヴィドは焚火の傍らで獣骨の賽を振る。たちまち歓声が上がり、今日も一仕事を終えた〈男〉たちが賭博の客として集まり、彼の出目に一喜一憂し始める。
「黒檀のメメコレオウスは、お前さんがイェシカと出会った冒険をしていた時から、目をつけていたんだとよ」
骰子を振りながら、ヴィドが言う。
「何それ? イェシカ狙いだったら、灰にしなきゃ……」
「そうドン引くなよ。偉大な賢人なんだから」
「本当?」
うさんくさい賢人に、わたしが警戒していると、イェシカがわたしの背中をツンツンとつつき、石板を見せてきた。
石板には、こう書かれていた。
〈こくたんのメメコレオウス様は、おなやみ相談にのってくれる賢人。会えるのは、とても幸運。声をかけてもらうのは、もっと幸運〉
「〈太古の森〉育ちのイェシカが言うなら、間違いないわね。それで、どんな人なの?」
「俺よりイェシカを信用するのかよ……別にいいがな。話は戻るが、黒檀のメメコレオウスは、醜い老人の顔に獅子の身体と蝙蝠の翼、尾には猛毒の針を持つ魔獣だ」
「賢人なのか魔獣なのかはっきりせいと思ったけど、その両方の外見だから、あの説明だったってわけね」
「とにかく、行って来いよ。俺は御呼びじゃないようだしな」
用事はそれまでと言った風情で、骰子賭博に集中し始めたヴィドにため息をつくと、わたしたちは輪をそっと離れた。
偉大な賢人が、強欲を美徳とする偉大な俗物であるわたしに何の用があるというのだろう?
あわよくば、一攫千金なもうけ話につながればよいのだが。
「ああ、1つ忘れてた」
背中から声が掛けられる。振り返るとヴィドは不可解な表情でわたしをじっと見つめている。
「奴さん、"必ず夜の間に来い"とさ」
金もうけで最も大事なことは、約束を守ること。
よって、遅刻なんてもってのほか。
わたしは、イェシカと一緒に深夜の〈太古の森〉を苦労して横断し、なんとか夜明け前にヴィドから教わった洞窟の前に辿り着いた。
「ようやくのお出ましかね」
冥府の闇から語りかけてくるようなぞっとする声が響き渡る。
やがてのそりと姿を現したのは、醜い老人の顔に獅子の身体と蝙蝠の翼、尾には猛毒の針を持つ魔獣の姿だ。
間違いない。彼こそが、賢人にして闇の魔獣の黒檀のメメコレオウスだ。
「初めまして。あなたのご指名を受けたクワニャウマよ。ヴィドからの伝言、しっかり受け取ったわ」
「ならば、話が早い」
闇の賢人は鷹揚に頷き奥の闇に呼び掛けた。
「こやつの口から直接語らせる方が良かろう」
おずおずと踏み出してきたのはコビットの女だ。
「ウチはクリスティ。冒険家や」
「遺跡荒らしとも言うがな」
「余計なお世話や」
漫才のようなトークをできるとは、闇の賢人はお高くとまった人柄ではないようだ。
含み笑いをする魔獣を睨み終えた後、クリスティはわたしへ話しかけてくる。
「〈太古の森〉には、旧い神々を祀る遺跡が沢山あるのはアンタも知ってるやろ」
「ヴィンドランダ遺跡群……だよね? この地に蛮族が住まい、フーウェイの街を開くよりもはるか昔からこの森にあるといわれる遺跡でしょ? 知っているわ。その区域では、今でも手つかずの財宝が見つかる事があって、冒険家の間ではよく名前が知られているからね」
強欲なわたしが今の今まで手を出していないのは、案内人なしの遺跡発掘には危険が多いのと、案内人を雇う料金が高額だからだ。
得るもの少なく出費がかさむ見込みが高い冒険ほど、わたしの美学に反するものはない。
「そのうちの1つを探索中に、呪いにやられたんよ」
「呪い……?」
あきらかに、やばい予感しかしない。
クリスティは少し俯くと陰りを帯びた表情で語り始めた。
要約すると、彼女は相棒と遺跡を冒険中、獣神セリオンを祀る古ぼけた祠に隠された隧道を発見。その先にあった気味の悪い獣の神像の口に手を突っこんだら、呪いにかかってしまったという。
さらには、相棒とはぐれるは、怪物と遭遇してしまうは、さんざんな目に遭い、必死に助けを求めて無我夢中に逃げ回るうちにメメコレオウスと出会ったそうだ。
なんて過酷な話だ。
でも、クリスティのジェスチャを交えた軽妙な語り口が面白くて、悲壮感がまったく感じられん。
そこまで話した時、丁度、朝の光が洞窟に差し込む。
クリスティは呻き声を上げると、その場に崩れ落ちた。慌てて駆け寄ったわたしの前で、彼女の姿はみるみると変化してゆく。
小さなミソサザイが、悲しそうな目で君を見つめていた。
「……なるほど、これが呪いという訳ね」
イェシカが驚いて、猟犬たちにくっついてプルプルと震えている。今まで驚いたらわたしにくっついてくれたのに、ちょっぴり寂しいが、これも彼女が成長した証と思おう。
わたしがしみじみしていると、メメコレオウスがわたしへ話しかけてきた。
「その遺跡へ赴き、旧き神の神像を調べてきてほしいのだ。そのついでにこやつの連れとやらも探してやればよかろう」
「どうして、あんたがそんな依頼をするの? クリスティの話によると初対面ぽいよね?」
闇の賢人はふんと鼻を鳴らして呟いた。
「ヴィンドランダに眠る旧き神の信仰には以前から興味があったのだ。だが儂自らがわざわざ出向くほどの事でもない。諸君らのような射倖心に溢れる輩には丁度良い稼ぎになろう」
「メメコレオウス様、愛してます」
「間に合っておる。まったく、戯言を言っておらんで早く旅立ってやらんか」
見れば、いつの間にかわたしの肩に留まったミソサザイが、後押しするかのようにか細い声でさえずる。
「そうだった。一刻も早く宝を見つけて、あんたとその相棒と遺跡の宝を山分けしないとね。わたしが8で、あんたと相棒が1ずつでいいよね?」
ミソサザイが、器用に羽を「なんでやねん!」と言いたげに動いた。器用だな。
わたしたちは、夜明けの洞窟を後にし、朝靄にけぶる遺跡探索へ向かった。
(続く)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
2025年現在、『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を6巻まで刊行中。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。2025年5月16日刊行の「小説すばる」6月号(集英社)に、読切『白拍子微妙 鎌倉にて曲水の宴に立ち会うこと』が掲載。同年8月1日に『女人太平記』(PHP研究所)が刊行。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.37
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
今回は、『汝、獣となれ人となれ』リプレイの導入篇です!
『常闇の伴侶』で初めてローグライクハーフをプレイして以来、ゲームブックにして一人用TRPGでもあるこのゲームにすっかりハマってしまいました。
そこで、来たるべき新たな冒険に向け、自分の冒険者であるクワニャウマの経験点を上げておこうと、ルールに一緒にあった『黄昏の騎士』と、運よくFT新聞様を見た日に出会った『幽霊屋敷の果実酒』を冒険しました。
同時に、前回『名付けられるべきではないもの』で苦戦したので、次回はそうならないよう、ルールを読み直したり、FT新聞様に掲載されていたローグライクハーフの遊び方を読んで勉強したりしました。
このおかげで、クワニャウマの従者点にだいぶ余裕があることに気づけました。
そこへ、うまい具合にFT新聞様にフーウェイの都市オプションなるものが掲載されておりましたので、そちらで初めて冒険開始前に猟犬(戦う従者)を購入しました。
従者に猟犬を選んだのは、「ワンコなら台詞や個性を考えなくてもいいから」という、かなりしょうもない理由でしたが、その分、犬種は自分の好み全開に設定しました。
選んだ動機は不純でしたが、今回の冒険で猟犬達を従者に選んだのは大当たりで、とても助けられました。どのように助けられたのかはまた別の機会に譲るとして、まずは『汝、獣となれ人となれ』について語らせていただきます。
『常闇の伴侶』でマイノリティと宗教問題、『名付けられるべきではないもの』で尊厳死とアイデンティティと、骨太なテーマを扱ってきた〈太古の森〉の冒険ですが、今回は前二作のテーマすべてを網羅してきております。まさに、重量級で鉄骨クラスの骨太っぷりです。それでも重苦しい物語にならないのは、今回の仲間キャラであるクリスティのおかげでしょう。
陽気な関西弁コビット娘で、この物語における光を一身に背負っていると言っても過言ではない名キャラクターの彼女は、ともすれば重厚なテーマの物語を明るく軽やかに彩ってくれます^^
そして、今回旅の仲間がクリスティのおかげで、女の子達とワンコと小鳥という、私の冒険の中で過去最高にかわいいパーティー編成となりました。
きっと、今回はほのぼのとした冒険になるんだろうな☆
……そう思っていた冒険開始直後の自分が、懐かしいです。
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『汝、獣となれ人となれ』リプレイ
その1
齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
0:プロローグ
わたしの名は、クワニャウマ。
趣味は節約、特技は損得勘定。漆黒の髪とイエベ肌に金褐色の瞳が特徴の、強欲冒険家乙女だ。そのせいか、模範的な魔術師なのに、よく盗賊に間違えられる。
髪はまた切って三つ編みの二つ結びに戻し、いくつかの冒険を経て革鎧と斧を買って装備している。
旅の相棒は、エルフの少女・イェシカ。魔犬獣の毛皮の犬耳付きローブを装備していて、かわいさに磨きがかかっているランタン持ちだ。強欲で損得勘定命の邪悪なわたしに無償で心を開いてくれているし、受け入れてもくれている生ける奇跡だ。ようするに、わたしの宝だ。
ところで、わたしが今もこうしてイェシカと充実した冒険家生活を送れているのは、あるエルフの青年のおかげでもある。
その名は、ファラサール。
自分の命をぶん投げ、無料でわたしの命を救ってくれた彼への恩返しのため、その勇敢な人生を一人でも多くの人間に知ってもらおうと、吟遊詩人を雇って彼を讃える歌を作ってもらうための資金集めが、目下の冒険の目標だ。
そこで、〈太古の森〉の冒険を終えた後、初秋には自治都市トーンへ行って幽霊屋敷へ果実酒の原材料を取りに行く冒険を、晩冬には聖フランチェスコ市へ行って黄昏の騎士退治と、がんばって荒稼ぎをしてきた。
でも、吟遊詩人に歌を作ってもらう料金には、まだまだ届かない。
それに最近、ちょっとイェシカの元気がない。トーンで友達になったミッチという少女と別れたせいかも。
でも、あそこではミッチの祖母を2回も瀕死にしかけたから、正直戻りづらい。
そこで、イェシカの顔なじみがいる蛮族都市フーウェイへ顔を出すことにした。
フーウェイには、何度か来たことがある。
市場のある通りを歩いていると、イェシカが急に立ち止まった。
「どうしたの、イェシカ。何かいいものを見つけたの?」
見れば、イェシカは新しくできた犬舎の前に立ち止まり、食い入るように柵の向こうで思い思いに動き回っている猟犬達を見ていた。
イェシカは耳こそ聞こえないけど、目はいい。
今もきれいな瞳をキラキラと輝かせ、猟犬達を見つめるその横顔は、いくら大金を積んでも見られそうにないほど天使だった。
「最近荒稼ぎして従者を雇う余裕があるから、次の冒険に備えてここの猟犬達を買っていこうか。どの子がいいか、イェシカが選んでくれる?」
猟犬の値段は、一頭につき金貨7枚。
現在の所持金は、金貨153枚。余裕よゆー。
「……で、イェシカが3頭も猟犬を選んだから、いきなり大所帯になったのか」
日暮れ前の蛮族都市の広場で骰子賭博の胴元をしていた、顔なじみの銀狼のまじない師ヴィドが、笑いをこらえながらわたし達を見る。
カリウキ氏族の集落まで行く手間が省けたのでいいけど、意外な副業を持っているものだ。
「チャウチャウっていうの? 異国の珍しい犬種ですごくかわいいんで、イェシカがすっかりメロメロになっちゃってね。名前も付けたんだよね、イェシカ」
わたしが話しかけると、イェシカは慣れた手つきで首から下げていた石板にチョークで言葉を書いていく。
読唇術を習得していて、わたしたちの言語を理解できるイェシカだけど、話せるのは古代語のみ。それだと、下手したら彼女の真の素性がばれる危険があるので、外では用心のため、石板とチョークによる筆談でコミュニケーションを取るようにしてもらっている。
〈向かって左から、雷電。飛燕。月光〉
「……本当にイェシカがつけた名前なのか?」
ヴィドが疑うように私を見る。
「もちろんよ、ヴィド。わたしなら、特売、割引、半額って名付けるわ」
「それもそうか」
「イェシカはその点、おしゃれなネーミングセンスよ。この前の冒険で手に入れたウォー・ドールには、ニコライ・ボルコフって名前をつけていたからね」
「起動した暁には、スクリュードライバーを繰り出しそうなネーミングだな……」
ヴィドは、若干遠い目をしてから、ふと何か思い出したように急に真顔になった。
「そういや、〈太古の森〉に隠れ住む名高い賢人にして闇の魔獣の黒檀のメメコレオウスが、どういう訳だかお前さんをご指名だとよ」
「は? なに? 黒檀のメメコレオウスって誰?」
「ちょっと待ってろ。今、骰子賭博を開く時刻になったから」
そう言ってヴィドは焚火の傍らで獣骨の賽を振る。たちまち歓声が上がり、今日も一仕事を終えた〈男〉たちが賭博の客として集まり、彼の出目に一喜一憂し始める。
「黒檀のメメコレオウスは、お前さんがイェシカと出会った冒険をしていた時から、目をつけていたんだとよ」
骰子を振りながら、ヴィドが言う。
「何それ? イェシカ狙いだったら、灰にしなきゃ……」
「そうドン引くなよ。偉大な賢人なんだから」
「本当?」
うさんくさい賢人に、わたしが警戒していると、イェシカがわたしの背中をツンツンとつつき、石板を見せてきた。
石板には、こう書かれていた。
〈こくたんのメメコレオウス様は、おなやみ相談にのってくれる賢人。会えるのは、とても幸運。声をかけてもらうのは、もっと幸運〉
「〈太古の森〉育ちのイェシカが言うなら、間違いないわね。それで、どんな人なの?」
「俺よりイェシカを信用するのかよ……別にいいがな。話は戻るが、黒檀のメメコレオウスは、醜い老人の顔に獅子の身体と蝙蝠の翼、尾には猛毒の針を持つ魔獣だ」
「賢人なのか魔獣なのかはっきりせいと思ったけど、その両方の外見だから、あの説明だったってわけね」
「とにかく、行って来いよ。俺は御呼びじゃないようだしな」
用事はそれまでと言った風情で、骰子賭博に集中し始めたヴィドにため息をつくと、わたしたちは輪をそっと離れた。
偉大な賢人が、強欲を美徳とする偉大な俗物であるわたしに何の用があるというのだろう?
あわよくば、一攫千金なもうけ話につながればよいのだが。
「ああ、1つ忘れてた」
背中から声が掛けられる。振り返るとヴィドは不可解な表情でわたしをじっと見つめている。
「奴さん、"必ず夜の間に来い"とさ」
金もうけで最も大事なことは、約束を守ること。
よって、遅刻なんてもってのほか。
わたしは、イェシカと一緒に深夜の〈太古の森〉を苦労して横断し、なんとか夜明け前にヴィドから教わった洞窟の前に辿り着いた。
「ようやくのお出ましかね」
冥府の闇から語りかけてくるようなぞっとする声が響き渡る。
やがてのそりと姿を現したのは、醜い老人の顔に獅子の身体と蝙蝠の翼、尾には猛毒の針を持つ魔獣の姿だ。
間違いない。彼こそが、賢人にして闇の魔獣の黒檀のメメコレオウスだ。
「初めまして。あなたのご指名を受けたクワニャウマよ。ヴィドからの伝言、しっかり受け取ったわ」
「ならば、話が早い」
闇の賢人は鷹揚に頷き奥の闇に呼び掛けた。
「こやつの口から直接語らせる方が良かろう」
おずおずと踏み出してきたのはコビットの女だ。
「ウチはクリスティ。冒険家や」
「遺跡荒らしとも言うがな」
「余計なお世話や」
漫才のようなトークをできるとは、闇の賢人はお高くとまった人柄ではないようだ。
含み笑いをする魔獣を睨み終えた後、クリスティはわたしへ話しかけてくる。
「〈太古の森〉には、旧い神々を祀る遺跡が沢山あるのはアンタも知ってるやろ」
「ヴィンドランダ遺跡群……だよね? この地に蛮族が住まい、フーウェイの街を開くよりもはるか昔からこの森にあるといわれる遺跡でしょ? 知っているわ。その区域では、今でも手つかずの財宝が見つかる事があって、冒険家の間ではよく名前が知られているからね」
強欲なわたしが今の今まで手を出していないのは、案内人なしの遺跡発掘には危険が多いのと、案内人を雇う料金が高額だからだ。
得るもの少なく出費がかさむ見込みが高い冒険ほど、わたしの美学に反するものはない。
「そのうちの1つを探索中に、呪いにやられたんよ」
「呪い……?」
あきらかに、やばい予感しかしない。
クリスティは少し俯くと陰りを帯びた表情で語り始めた。
要約すると、彼女は相棒と遺跡を冒険中、獣神セリオンを祀る古ぼけた祠に隠された隧道を発見。その先にあった気味の悪い獣の神像の口に手を突っこんだら、呪いにかかってしまったという。
さらには、相棒とはぐれるは、怪物と遭遇してしまうは、さんざんな目に遭い、必死に助けを求めて無我夢中に逃げ回るうちにメメコレオウスと出会ったそうだ。
なんて過酷な話だ。
でも、クリスティのジェスチャを交えた軽妙な語り口が面白くて、悲壮感がまったく感じられん。
そこまで話した時、丁度、朝の光が洞窟に差し込む。
クリスティは呻き声を上げると、その場に崩れ落ちた。慌てて駆け寄ったわたしの前で、彼女の姿はみるみると変化してゆく。
小さなミソサザイが、悲しそうな目で君を見つめていた。
「……なるほど、これが呪いという訳ね」
イェシカが驚いて、猟犬たちにくっついてプルプルと震えている。今まで驚いたらわたしにくっついてくれたのに、ちょっぴり寂しいが、これも彼女が成長した証と思おう。
わたしがしみじみしていると、メメコレオウスがわたしへ話しかけてきた。
「その遺跡へ赴き、旧き神の神像を調べてきてほしいのだ。そのついでにこやつの連れとやらも探してやればよかろう」
「どうして、あんたがそんな依頼をするの? クリスティの話によると初対面ぽいよね?」
闇の賢人はふんと鼻を鳴らして呟いた。
「ヴィンドランダに眠る旧き神の信仰には以前から興味があったのだ。だが儂自らがわざわざ出向くほどの事でもない。諸君らのような射倖心に溢れる輩には丁度良い稼ぎになろう」
「メメコレオウス様、愛してます」
「間に合っておる。まったく、戯言を言っておらんで早く旅立ってやらんか」
見れば、いつの間にかわたしの肩に留まったミソサザイが、後押しするかのようにか細い声でさえずる。
「そうだった。一刻も早く宝を見つけて、あんたとその相棒と遺跡の宝を山分けしないとね。わたしが8で、あんたと相棒が1ずつでいいよね?」
ミソサザイが、器用に羽を「なんでやねん!」と言いたげに動いた。器用だな。
わたしたちは、夜明けの洞窟を後にし、朝靄にけぶる遺跡探索へ向かった。
(続く)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。最近は、そこにローグライクハーフが加わった。
2025年現在、『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を6巻まで刊行中。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。2025年5月16日刊行の「小説すばる」6月号(集英社)に、読切『白拍子微妙 鎌倉にて曲水の宴に立ち会うこと』が掲載。同年8月1日に『女人太平記』(PHP研究所)が刊行。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『汝、獣となれ人となれ』
著 水波流
2025年9月7日FT新聞配信
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2025年12月3日水曜日
第16回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4697
第16回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
闇神の戯れによる時の繰り返しに気づき一度は絶望しますが、ボラミーという随伴者を得て、脆く壊れそうな心を奮い立たせます。
ボラミーとの関係を深めながら旅は続き、いよいよ目的のローズ家の館へ。
ボラミーの弟ビバイアの救出。そしてティナ姉との再会。<跳兎の懐中時計>が大活躍です。
そして今回は、マルティンとの対決、そしてエナ姉を救うためミナがゴルジュへ向かうパート。
いよいよクライマックスです。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋2/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-12 マルティン・ローズとこどもたち
<跳兎の懐中時計>で時を遡り、亡くなる前のビバイアに聖水を与えて命を繋いだ。
そしてまた<跳兎の懐中時計>で時を遡り、拷問部屋に囚われていた、命を落とす前のティナ姉を救出した。
今、ボクは現在に戻り、地下のワイン蔵で、階段を降りてきた甲高い靴音の主、ローズ家の当主たる吸血鬼マルティン・ローズと対峙したところだ。
青白い顔をした背の高い男が、ボクの前に立っている。唇の端に見える鋭い牙が、その男が吸血鬼だと主張している。
「侵入者が闇エルフとはな。ネフェルロックの手の者とは思えぬが」
「そんな奴関係ない。ボクは姉さんを取り戻しに来たんだ」
それを聞くと、吸血鬼はボクをあざ笑った。
「そうか。貴様はエルフだった者か。姉を救うため闇落ちするとは哀れなものよ」
「だからなんだ。エナ姉を返してもらう」
「それは無理だ。なぜなら貴様はここで死ぬからだ」
マルティン・ローズはその太い腕でボクを殴りつけてくる。
ダメージを負いながらも、すかさず<速撃の戦時計>を起動したボクは、吸血鬼の脇を抜けて階段をかけ上がった。
これで悪夢袋はあとひとつになってしまった。できればエナ姉を助けるために温存したかった。けど、一瞬の判断の遅れが死を招くタイミングだった。
マルティンは激しい足音を立てながら追ってくる。ボクはそのまま1階の廊下を走る。
ビバイアの部屋のドアが開いて、ボラミーが飛び出してきた。
「ミナ! 急にいなくなって……おまえはマルティン!」
ボラミーは父を名前で呼んだ。
「まさか……ボラミーか?」
「吸血鬼の父親を持った覚えはない!」
ボラミーは容赦なくマルティンに剣を振るった。
その剣は吸血鬼の胸元を傷つけ、赤黒い血が飛び散った。
「悪い子だ。……罰が必要なようだな」
マルティンの傷はもう治り始めている。吸血鬼の脅威の再生力を目の当たりにした。
ボクたちは吸血鬼の弱点を持っていない。どうしたら勝てるのか。
ボクはボラミーに目くばせすると、ビバイアの部屋に飛び込んだ。
廊下より少し広くなった空間で、ボクは剣を振るう。
それはマルティンの腕を浅く傷つけるが、すぐに回復されてしまう。
<速撃の戦時計>で素早くなっているボクは、マルティンの攻撃を避け続ける。
戦いは、こう着状態に陥った。しかしそれは長くは続かない。
すぐに、すごい勢いで回転していた<速撃の戦時計>の針がその動きを止めた。
不意にボクの動きが重く、遅くなる。時間切れだ。
マルティンはボクの胸ぐらをつかみ上げ、首を締め上げた。苦しい……!
そのとき、ボクの合図を受けて部屋の奥へと動いていたボラミーが、部屋の戸板を剣で派手に壊した。
激しい音とともに戸板が砕け、薄暗かった部屋に光が差し込む。太陽の光だ。マルティンは、その光をもろに浴びてしまった。
「光を……たわけ……!」
腕の力がゆるみ、ボクは解放された。床に膝をつき、ぜいぜいと息を吐くボクの隣で、吸血鬼は塵と化してゆく。
ベッドの陰に隠れていたビバイアも姿を見せた。複雑そうな視線で父、マルティンの最期を見つめる。
「父は、手段はどうあれ、私の病気を治そうとしていた。それに、私の意向を汲んで吸血鬼にしようとはしなかった……」
「そうか。マルティンは、ビバイアにとっての父であろうとしていたのだな」
吸血鬼になったとはいえ、ビバイアにとっては何年もともに過ごした肉親には違いなかった。
愛された記憶がなく、早くに父を見限って家を出た姉ボラミーとは根本的なところが違うのだろう。
不死であるはずのマルティンの命は、今まさに尽きようとしていた。
「父さん……」
しかしマルティンは、ビバイアを一瞥することもなく、ボクの方をにらみつけていた。
「闇エルフの女よ。貴様の姉は『ゴルジュ』にいる。貴様はそこで絶望を知ることになる」
マルティンは呪詛の言葉を言い残し、完全に崩れ去った。
『ゴルジュ』という単語とともに、脳裏に崖から飛び降りるエナ姉の姿がフラッシュバックした。
あの場所が……ゴルジュ……。
「最後の最後にビバイアの方を見ようともしないとはな」
ビバイアの頭をそっと抱き寄せながら、ボラミーはつぶやいた。
「あの男は妻……つまり、私たちの母を亡くして変わってしまった。不死を求める研究に没頭するようになったんだ。最初は、母を蘇らせようとしていたんだと思う。しかしいつしか死を恐れるあまり、自身の不死を求めるようになっていった。弱い男だったのさ……」
その言葉とは裏腹に、ボラミーの複雑な表情からは、一抹の寂しさが感じられた。
●アタック03-13 狂える魔女のゴルジュ
「もう大丈夫だよ。出ておいで」
ビバイアが声をかけると、カーテンの陰から一人の女性が出てきた。
「ミナ! 無事だったのね」
それは、ティナ姉だった。
「父のところから逃げてきたというから、ここでかくまっていたんだ。ミナの名前を出したからピンときた。君のお姉さんでしょう?」
「ミナ、私の目の前から突然消えてしまったけれど、10日後に会いに来るって、約束してくれたものね」
ボクはティナ姉と再会を喜びあった。
「ところでミナ、こんなことを言ったら変に思うかもしれないが。私はまた、ミナに助けられたんじゃないかと思っていることがある」
ボラミーがそんなことを言い出した。
「ビバイアが言うには、しばらく前にミナが現れて、私が用意した聖水を与えてくれたというんだ。ビバイアが見せてくれた聖水の瓶は、たしかに私が持っていたものだ。そして今の私は、持っていたはずの聖水を持っていない。ミナの持つ不思議な魔法の力で、過去のビバイアに聖水を与えて病気を癒してくれたのではないかと思ってね」
「私のところにも10日前にミナが現れて、拘束を解いてくれたんです」
「……宝物は大切にしないとね」
ボクはあいまいな笑みで返しておいた。
いくらなかったことになったとはいえ、ビバイアが死んでいたなんて話、ボラミーには聞かせたくない。
それよりも、ボクはエナ姉を助けるため、ゴルジュへ行きたい。
するとビバイアが、ゴルジュについて教えてくれた。
森の中の渓谷。陽の当たらない場所。父マルティンがよく行っていた。
ただ、わざわざそちらに連れて行った理由がわからないという。
ゴルジュでエナ姉を助けられなかった未来を鮮明に覚えているボクには、その理由に思い当たるところがあった。
マルティンは、ビバイアの治療のために効果があると信じ、エルフの血を欲していた。
エルフの血と、吸血鬼化したエルフの血。しかしエナ姉を館で吸血鬼にしてしまうと、強烈な吸血衝動に負けて、ビバイアが血を吸われてしまうかもしれない。
それでマルティンは、エナ姉をゴルジュに連れて行ったんだ。そこで吸血鬼にするために。
ボラミーは、ボクに同行を申し出た。けれどボクは断った。
それより、ティナ姉を守ってほしいとお願いした。
その結果、ボラミーはビバイアとティナ姉を連れて外縁の村へと向かうことになった。
「ミナのお姉さんのことは任せておいて。ミナも必ず戻って、私の家へ来るんだよ」
「うん。約束する」
ボクはボラミーと約束を交わした。
「ミナ……気をつけて」
「ティナ姉は待ってて。きっと、エナ姉も連れて戻るから」
ボクは急ぎゴルジュへ向かう。
最後の死のいまわしい記憶は、鮮明に覚えている。
あのとき、エナ姉がゴルジュで川べりに立っていたのは、絶望し、まさにこれから身を投げるところだったと思う。
ボクの到着が少しでも遅かったなら、顔を合わせることもできなかったかもしれない。
だから、急がなければ。
到着が少しでも遅れたら、間に合わないかもしれない。
悪夢袋はあとひとつ。ひとつしかない。
けれど、記憶にあるボクには、魔法はひとつも残っていなかった。
ひとつあれば、できることもある。
それを信じて進むだけだ。
ボクは夜通し歩き続けた。ゴルジュに到着したのは夜明け前だ。
岩肌が削り取られてできたその渓谷は深くえぐれており、異様な空気を漂わせている。
それはまるで、森にできた裂け目だ。底からは川が流れている音がする。この川が、長い年月をかけ、岩肌を浸食し続けたのだ。
渓谷の底は、太陽光がほとんど射し込まない。
吸血鬼が屋内ではなく、外で活動するにはもってこいの場所だ。
ボクは谷底へと至る狭い道を見つけると、慎重に谷底まで降りていく。
川音が激しい。聞き覚えのある激流の音だ。
谷底には広めの空間が広がっている。さらに一段下には、川がしぶきを上げてごうごうと流れている。
ボクはエナ姉を探した。記憶にある、立っていたあの場所にいるのか、それともまだ、付近のどこかにいるのか。
お願い。間に合っていてくれ。
エナ姉は、ボクの記憶にあるとおりの場所に、ボクに背を向け立っていた。
視線の先は、激流に向いている。
急がないと。
近づいてから声をかけた方が、飛び降りる前に止められる可能性は高い。
けど、近づく前に飛び降りられたら、おしまいだ。
ボクはエナ姉に駆け寄りながら、声の限りに呼びかけた。
「エナ姉! 助けに来たよ!!」
エナ姉は、ボクの声に気がつき、振り向いた。
その瞳は深紅に染まっており、口の端からは、鋭い牙がのぞいていた。
「ミナ?!」
「エナ姉! 待ってて。今そこに行く」
エナ姉はすぐに驚愕から立ち直り、ボクにそっと笑みを向けた。
「助けに来てくれたのね。ありがとう。でも、いいの。私は吸血鬼になってしまった。もう、一緒には生きられない」
「きっと、なんとかする。だから、待っていて!」
エナ姉は、ゆっくりとかぶりを振った。
「ありがとう。あなたが来てくれたことが、私の宝物。それだけで十分」
ボクは駆け寄りながら、力の限り叫んだ。
「誓ったんだ。どれだけ罪を重ねても、愛を裏切らないって。だから……!」
エナ姉は答えた。
「愛を裏切らない。私がどんな運命をたどろうとも」
そしてエナ姉は、自ら激流に身を投げた。
●アタック03-14 最後の魔法
間に合わなかった。止められなかった!
吸血鬼は、知性を保ったまま不死性を得るのと引き換えに、多くの弱点を抱えている。
流れる水を渡れない。これも弱点のひとつだ。
清らかな水によって、洗い清められてしまうためだといわれている。
ボクの腕の中で崩れていくエナ姉。その記憶が鮮明に浮かび上がる。
あきらめない!
ボクはエナ姉を追って川へと飛び込む。
激流の中、必死にエナ姉に近づく。エナ姉の身体は、もう崩れ始めている。
間に合え!
ボクは、エナ姉のもとまで、どうにか泳ぎ切った。
ボクの手が、エナ姉に触れる。エナ姉の意識は、まだあった。
「ミナ……。こんなところまで来るなんて……ばかな子……」
エナ姉は、愛おしそうにそう言った。
ボクはかまわず、激流に飲まれそうになりながら、魔法の時計を取り出した。
ボクが出したのは、<時もどしの回復時計>だ。柔らかな緑色の時計。
悪夢袋は最後のひとつ。これが今使える最後の魔法になる。
時計を動かすと、針がゆるやかに逆回りに動き始める。
秒針がちりん、ちりんと風鈴のような心地よい音色を奏でる。不思議なことに、川の流れの轟音の中にあっても、その音色は心に響いた。
ボクはその盤面を、エナ姉の方に向ける。
この時計は、明け方にのみ働く特殊な時計だ。まさに、今の時間がそれにあたる。
そして、身体に受けた悪い効果を、すべて回復するのだ。
エナ姉の身体がほのかに緑色に光る。崩れていく身体がもとの形を取り戻していく。
それだけではない。
深紅に染まっていた瞳の色が、鋭く尖った牙が、もとのエルフの姿を取り戻してゆく。
<時もどしの回復時計>は、エナ姉の身体を「もとどおりにした」。
それは、吸血鬼化をも無効にする、絶大な効果だった。
エナ姉は、崩れない身体に、柔らかな回復に、なにが起きたかわからないという顔をしている。
だから、ボクははっきりと宣言した。
「エナ姉はもう吸血鬼じゃない」
激流の中、流れに身を任せながら、ボクとエナ姉はかたく抱擁した。
次はどうやって、この流れから抜け出すか、知恵を絞らなければ。
両側は崖。せめて手がかりや、つかめそうな枝でもあればいいけれど、深い渓谷のためか、そんな都合の良い植生はない。
冷たい水は、容赦なくボクたちの体温を奪ってゆく。
悪夢袋は使い切った。魔法にはもう、頼れない。
そんな時、エナ姉がなにかに気がついた。
「あれは……スノウシャーク」
それは助けではない。新たな危機だった。
普段は豪雪地帯の雪の中にひそみ、雪の中を水中を泳ぐように移動することからその名がついた。
外見も、サメに似ている。
雪解けの時期には、雪解け水に乗って川に出ることもある。
何匹かの群れで行動する。
それらの基礎知識は、今のボクには思い出す余裕もない。
知ったとしても対処のしようもない。
エナ姉はまだ動ける状態ではなく、ボクに身体を預けている。
スノウシャークは今にもボクらに襲いかかろうとしている。
攻撃をかわす。どうやって?
左右に避ける? 流れに身を任せる? それとも……。
「潜るよ」
ボクはエナ姉に言うと、一気に川底へと潜った。
今までボクたちがいたところを、スノウシャークの魚影が通り過ぎていく。
息の続く限り潜り続ける。川底の流れは水面とは違う。
変な流れや渦に呑まれれば、水面に上がることさえできなくなってしまう危険な賭けだ。
特に水底の深さが違う場所などでは、水流が深みで滞留している場合がある。
川遊びでの水難事故は、こうした予備知識なしに深みに潜った場合などに起きがちだ。
ギリギリまで息を止め、一気に水面まで上がった。
水の流れはボクたちに味方してくれたみたいで、特に抵抗なく水面に上がることができた。
しかし、今度は流れがゆるやかになってきた。
これでは、スノウシャークたちの格好の的になってしまう。
いよいよなす術がなくなった。水の流れの中では、できることなどたかが知れている。
ところが、スノウシャークたちはその身をひるがえし、すうっと去っていくではないか。
理由はわからないけれど、ボクたちは助かったらしい。
スノウシャークたちが引き返した理由は、後で知った。
湖口には漁師たちが捕獲用の網を設置している時期があり、警戒心が強いスノウシャークは湖までは入り込まないのだそうだ。
そう。ここは、川が湖に繋がる湖口だった。
ボクたちはいつの間にか、川の終点まで流されていたんだ。
もう、ゴルジュのような断崖はない。ボクたちは湖の岸辺にどうにか泳ぎつき、その身を横たえた。
体が重い。
エナ姉もボクも、すぐには動けそうにないほどに、疲れ切っていた。
けれど、それでも、ボクの心は喜びに満ちあふれていた。
エナ姉を、救うことができたのだから。
次回、この物語は幕を閉じる。しかし姉たちを探す旅は終わらない。
【ミナ 体力点4→2/4 悪夢袋2→0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
闇神の戯れによる時の繰り返しに気づき一度は絶望しますが、ボラミーという随伴者を得て、脆く壊れそうな心を奮い立たせます。
ボラミーとの関係を深めながら旅は続き、いよいよ目的のローズ家の館へ。
ボラミーの弟ビバイアの救出。そしてティナ姉との再会。<跳兎の懐中時計>が大活躍です。
そして今回は、マルティンとの対決、そしてエナ姉を救うためミナがゴルジュへ向かうパート。
いよいよクライマックスです。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋2/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-12 マルティン・ローズとこどもたち
<跳兎の懐中時計>で時を遡り、亡くなる前のビバイアに聖水を与えて命を繋いだ。
そしてまた<跳兎の懐中時計>で時を遡り、拷問部屋に囚われていた、命を落とす前のティナ姉を救出した。
今、ボクは現在に戻り、地下のワイン蔵で、階段を降りてきた甲高い靴音の主、ローズ家の当主たる吸血鬼マルティン・ローズと対峙したところだ。
青白い顔をした背の高い男が、ボクの前に立っている。唇の端に見える鋭い牙が、その男が吸血鬼だと主張している。
「侵入者が闇エルフとはな。ネフェルロックの手の者とは思えぬが」
「そんな奴関係ない。ボクは姉さんを取り戻しに来たんだ」
それを聞くと、吸血鬼はボクをあざ笑った。
「そうか。貴様はエルフだった者か。姉を救うため闇落ちするとは哀れなものよ」
「だからなんだ。エナ姉を返してもらう」
「それは無理だ。なぜなら貴様はここで死ぬからだ」
マルティン・ローズはその太い腕でボクを殴りつけてくる。
ダメージを負いながらも、すかさず<速撃の戦時計>を起動したボクは、吸血鬼の脇を抜けて階段をかけ上がった。
これで悪夢袋はあとひとつになってしまった。できればエナ姉を助けるために温存したかった。けど、一瞬の判断の遅れが死を招くタイミングだった。
マルティンは激しい足音を立てながら追ってくる。ボクはそのまま1階の廊下を走る。
ビバイアの部屋のドアが開いて、ボラミーが飛び出してきた。
「ミナ! 急にいなくなって……おまえはマルティン!」
ボラミーは父を名前で呼んだ。
「まさか……ボラミーか?」
「吸血鬼の父親を持った覚えはない!」
ボラミーは容赦なくマルティンに剣を振るった。
その剣は吸血鬼の胸元を傷つけ、赤黒い血が飛び散った。
「悪い子だ。……罰が必要なようだな」
マルティンの傷はもう治り始めている。吸血鬼の脅威の再生力を目の当たりにした。
ボクたちは吸血鬼の弱点を持っていない。どうしたら勝てるのか。
ボクはボラミーに目くばせすると、ビバイアの部屋に飛び込んだ。
廊下より少し広くなった空間で、ボクは剣を振るう。
それはマルティンの腕を浅く傷つけるが、すぐに回復されてしまう。
<速撃の戦時計>で素早くなっているボクは、マルティンの攻撃を避け続ける。
戦いは、こう着状態に陥った。しかしそれは長くは続かない。
すぐに、すごい勢いで回転していた<速撃の戦時計>の針がその動きを止めた。
不意にボクの動きが重く、遅くなる。時間切れだ。
マルティンはボクの胸ぐらをつかみ上げ、首を締め上げた。苦しい……!
そのとき、ボクの合図を受けて部屋の奥へと動いていたボラミーが、部屋の戸板を剣で派手に壊した。
激しい音とともに戸板が砕け、薄暗かった部屋に光が差し込む。太陽の光だ。マルティンは、その光をもろに浴びてしまった。
「光を……たわけ……!」
腕の力がゆるみ、ボクは解放された。床に膝をつき、ぜいぜいと息を吐くボクの隣で、吸血鬼は塵と化してゆく。
ベッドの陰に隠れていたビバイアも姿を見せた。複雑そうな視線で父、マルティンの最期を見つめる。
「父は、手段はどうあれ、私の病気を治そうとしていた。それに、私の意向を汲んで吸血鬼にしようとはしなかった……」
「そうか。マルティンは、ビバイアにとっての父であろうとしていたのだな」
吸血鬼になったとはいえ、ビバイアにとっては何年もともに過ごした肉親には違いなかった。
愛された記憶がなく、早くに父を見限って家を出た姉ボラミーとは根本的なところが違うのだろう。
不死であるはずのマルティンの命は、今まさに尽きようとしていた。
「父さん……」
しかしマルティンは、ビバイアを一瞥することもなく、ボクの方をにらみつけていた。
「闇エルフの女よ。貴様の姉は『ゴルジュ』にいる。貴様はそこで絶望を知ることになる」
マルティンは呪詛の言葉を言い残し、完全に崩れ去った。
『ゴルジュ』という単語とともに、脳裏に崖から飛び降りるエナ姉の姿がフラッシュバックした。
あの場所が……ゴルジュ……。
「最後の最後にビバイアの方を見ようともしないとはな」
ビバイアの頭をそっと抱き寄せながら、ボラミーはつぶやいた。
「あの男は妻……つまり、私たちの母を亡くして変わってしまった。不死を求める研究に没頭するようになったんだ。最初は、母を蘇らせようとしていたんだと思う。しかしいつしか死を恐れるあまり、自身の不死を求めるようになっていった。弱い男だったのさ……」
その言葉とは裏腹に、ボラミーの複雑な表情からは、一抹の寂しさが感じられた。
●アタック03-13 狂える魔女のゴルジュ
「もう大丈夫だよ。出ておいで」
ビバイアが声をかけると、カーテンの陰から一人の女性が出てきた。
「ミナ! 無事だったのね」
それは、ティナ姉だった。
「父のところから逃げてきたというから、ここでかくまっていたんだ。ミナの名前を出したからピンときた。君のお姉さんでしょう?」
「ミナ、私の目の前から突然消えてしまったけれど、10日後に会いに来るって、約束してくれたものね」
ボクはティナ姉と再会を喜びあった。
「ところでミナ、こんなことを言ったら変に思うかもしれないが。私はまた、ミナに助けられたんじゃないかと思っていることがある」
ボラミーがそんなことを言い出した。
「ビバイアが言うには、しばらく前にミナが現れて、私が用意した聖水を与えてくれたというんだ。ビバイアが見せてくれた聖水の瓶は、たしかに私が持っていたものだ。そして今の私は、持っていたはずの聖水を持っていない。ミナの持つ不思議な魔法の力で、過去のビバイアに聖水を与えて病気を癒してくれたのではないかと思ってね」
「私のところにも10日前にミナが現れて、拘束を解いてくれたんです」
「……宝物は大切にしないとね」
ボクはあいまいな笑みで返しておいた。
いくらなかったことになったとはいえ、ビバイアが死んでいたなんて話、ボラミーには聞かせたくない。
それよりも、ボクはエナ姉を助けるため、ゴルジュへ行きたい。
するとビバイアが、ゴルジュについて教えてくれた。
森の中の渓谷。陽の当たらない場所。父マルティンがよく行っていた。
ただ、わざわざそちらに連れて行った理由がわからないという。
ゴルジュでエナ姉を助けられなかった未来を鮮明に覚えているボクには、その理由に思い当たるところがあった。
マルティンは、ビバイアの治療のために効果があると信じ、エルフの血を欲していた。
エルフの血と、吸血鬼化したエルフの血。しかしエナ姉を館で吸血鬼にしてしまうと、強烈な吸血衝動に負けて、ビバイアが血を吸われてしまうかもしれない。
それでマルティンは、エナ姉をゴルジュに連れて行ったんだ。そこで吸血鬼にするために。
ボラミーは、ボクに同行を申し出た。けれどボクは断った。
それより、ティナ姉を守ってほしいとお願いした。
その結果、ボラミーはビバイアとティナ姉を連れて外縁の村へと向かうことになった。
「ミナのお姉さんのことは任せておいて。ミナも必ず戻って、私の家へ来るんだよ」
「うん。約束する」
ボクはボラミーと約束を交わした。
「ミナ……気をつけて」
「ティナ姉は待ってて。きっと、エナ姉も連れて戻るから」
ボクは急ぎゴルジュへ向かう。
最後の死のいまわしい記憶は、鮮明に覚えている。
あのとき、エナ姉がゴルジュで川べりに立っていたのは、絶望し、まさにこれから身を投げるところだったと思う。
ボクの到着が少しでも遅かったなら、顔を合わせることもできなかったかもしれない。
だから、急がなければ。
到着が少しでも遅れたら、間に合わないかもしれない。
悪夢袋はあとひとつ。ひとつしかない。
けれど、記憶にあるボクには、魔法はひとつも残っていなかった。
ひとつあれば、できることもある。
それを信じて進むだけだ。
ボクは夜通し歩き続けた。ゴルジュに到着したのは夜明け前だ。
岩肌が削り取られてできたその渓谷は深くえぐれており、異様な空気を漂わせている。
それはまるで、森にできた裂け目だ。底からは川が流れている音がする。この川が、長い年月をかけ、岩肌を浸食し続けたのだ。
渓谷の底は、太陽光がほとんど射し込まない。
吸血鬼が屋内ではなく、外で活動するにはもってこいの場所だ。
ボクは谷底へと至る狭い道を見つけると、慎重に谷底まで降りていく。
川音が激しい。聞き覚えのある激流の音だ。
谷底には広めの空間が広がっている。さらに一段下には、川がしぶきを上げてごうごうと流れている。
ボクはエナ姉を探した。記憶にある、立っていたあの場所にいるのか、それともまだ、付近のどこかにいるのか。
お願い。間に合っていてくれ。
エナ姉は、ボクの記憶にあるとおりの場所に、ボクに背を向け立っていた。
視線の先は、激流に向いている。
急がないと。
近づいてから声をかけた方が、飛び降りる前に止められる可能性は高い。
けど、近づく前に飛び降りられたら、おしまいだ。
ボクはエナ姉に駆け寄りながら、声の限りに呼びかけた。
「エナ姉! 助けに来たよ!!」
エナ姉は、ボクの声に気がつき、振り向いた。
その瞳は深紅に染まっており、口の端からは、鋭い牙がのぞいていた。
「ミナ?!」
「エナ姉! 待ってて。今そこに行く」
エナ姉はすぐに驚愕から立ち直り、ボクにそっと笑みを向けた。
「助けに来てくれたのね。ありがとう。でも、いいの。私は吸血鬼になってしまった。もう、一緒には生きられない」
「きっと、なんとかする。だから、待っていて!」
エナ姉は、ゆっくりとかぶりを振った。
「ありがとう。あなたが来てくれたことが、私の宝物。それだけで十分」
ボクは駆け寄りながら、力の限り叫んだ。
「誓ったんだ。どれだけ罪を重ねても、愛を裏切らないって。だから……!」
エナ姉は答えた。
「愛を裏切らない。私がどんな運命をたどろうとも」
そしてエナ姉は、自ら激流に身を投げた。
●アタック03-14 最後の魔法
間に合わなかった。止められなかった!
吸血鬼は、知性を保ったまま不死性を得るのと引き換えに、多くの弱点を抱えている。
流れる水を渡れない。これも弱点のひとつだ。
清らかな水によって、洗い清められてしまうためだといわれている。
ボクの腕の中で崩れていくエナ姉。その記憶が鮮明に浮かび上がる。
あきらめない!
ボクはエナ姉を追って川へと飛び込む。
激流の中、必死にエナ姉に近づく。エナ姉の身体は、もう崩れ始めている。
間に合え!
ボクは、エナ姉のもとまで、どうにか泳ぎ切った。
ボクの手が、エナ姉に触れる。エナ姉の意識は、まだあった。
「ミナ……。こんなところまで来るなんて……ばかな子……」
エナ姉は、愛おしそうにそう言った。
ボクはかまわず、激流に飲まれそうになりながら、魔法の時計を取り出した。
ボクが出したのは、<時もどしの回復時計>だ。柔らかな緑色の時計。
悪夢袋は最後のひとつ。これが今使える最後の魔法になる。
時計を動かすと、針がゆるやかに逆回りに動き始める。
秒針がちりん、ちりんと風鈴のような心地よい音色を奏でる。不思議なことに、川の流れの轟音の中にあっても、その音色は心に響いた。
ボクはその盤面を、エナ姉の方に向ける。
この時計は、明け方にのみ働く特殊な時計だ。まさに、今の時間がそれにあたる。
そして、身体に受けた悪い効果を、すべて回復するのだ。
エナ姉の身体がほのかに緑色に光る。崩れていく身体がもとの形を取り戻していく。
それだけではない。
深紅に染まっていた瞳の色が、鋭く尖った牙が、もとのエルフの姿を取り戻してゆく。
<時もどしの回復時計>は、エナ姉の身体を「もとどおりにした」。
それは、吸血鬼化をも無効にする、絶大な効果だった。
エナ姉は、崩れない身体に、柔らかな回復に、なにが起きたかわからないという顔をしている。
だから、ボクははっきりと宣言した。
「エナ姉はもう吸血鬼じゃない」
激流の中、流れに身を任せながら、ボクとエナ姉はかたく抱擁した。
次はどうやって、この流れから抜け出すか、知恵を絞らなければ。
両側は崖。せめて手がかりや、つかめそうな枝でもあればいいけれど、深い渓谷のためか、そんな都合の良い植生はない。
冷たい水は、容赦なくボクたちの体温を奪ってゆく。
悪夢袋は使い切った。魔法にはもう、頼れない。
そんな時、エナ姉がなにかに気がついた。
「あれは……スノウシャーク」
それは助けではない。新たな危機だった。
普段は豪雪地帯の雪の中にひそみ、雪の中を水中を泳ぐように移動することからその名がついた。
外見も、サメに似ている。
雪解けの時期には、雪解け水に乗って川に出ることもある。
何匹かの群れで行動する。
それらの基礎知識は、今のボクには思い出す余裕もない。
知ったとしても対処のしようもない。
エナ姉はまだ動ける状態ではなく、ボクに身体を預けている。
スノウシャークは今にもボクらに襲いかかろうとしている。
攻撃をかわす。どうやって?
左右に避ける? 流れに身を任せる? それとも……。
「潜るよ」
ボクはエナ姉に言うと、一気に川底へと潜った。
今までボクたちがいたところを、スノウシャークの魚影が通り過ぎていく。
息の続く限り潜り続ける。川底の流れは水面とは違う。
変な流れや渦に呑まれれば、水面に上がることさえできなくなってしまう危険な賭けだ。
特に水底の深さが違う場所などでは、水流が深みで滞留している場合がある。
川遊びでの水難事故は、こうした予備知識なしに深みに潜った場合などに起きがちだ。
ギリギリまで息を止め、一気に水面まで上がった。
水の流れはボクたちに味方してくれたみたいで、特に抵抗なく水面に上がることができた。
しかし、今度は流れがゆるやかになってきた。
これでは、スノウシャークたちの格好の的になってしまう。
いよいよなす術がなくなった。水の流れの中では、できることなどたかが知れている。
ところが、スノウシャークたちはその身をひるがえし、すうっと去っていくではないか。
理由はわからないけれど、ボクたちは助かったらしい。
スノウシャークたちが引き返した理由は、後で知った。
湖口には漁師たちが捕獲用の網を設置している時期があり、警戒心が強いスノウシャークは湖までは入り込まないのだそうだ。
そう。ここは、川が湖に繋がる湖口だった。
ボクたちはいつの間にか、川の終点まで流されていたんだ。
もう、ゴルジュのような断崖はない。ボクたちは湖の岸辺にどうにか泳ぎつき、その身を横たえた。
体が重い。
エナ姉もボクも、すぐには動けそうにないほどに、疲れ切っていた。
けれど、それでも、ボクの心は喜びに満ちあふれていた。
エナ姉を、救うことができたのだから。
次回、この物語は幕を閉じる。しかし姉たちを探す旅は終わらない。
【ミナ 体力点4→2/4 悪夢袋2→0/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/4897513
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
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2025年12月2日火曜日
これはゲームブックなのですか!? vol.126 FT新聞 No.4696
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.126
かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
ドラえもんの道具じゃございませんが、「左うちわ」に、「転ばぬ先の杖」ってホントにあったら欲しくありません?
だけど、いざ実現すると、なかなか解決すべき課題が出てくるようで……。
というわけで、今回紹介する本は『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會:著 筑摩書房)だよ!
この本には、慣用句を実際の「商品」として扱っているカタログ。
「堪忍袋の緒」「自分を上げる棚」のように、「お?これってお役立ちかな?」と思うものから、「一筋縄」「冥途の土産」など「なんじゃそれは?」と首をかしげたくなるものまで26アイテムがずらりそろってる!
で、それが実際に使われるとなると、どういったメリットがあるのか、それで引き起こされるデメリットは何なのか、ユーモアたっぷりに紹介している。
例えば、「転ばぬ先の杖」は、一生手放すことができなくなる。
なぜなら、逆に言えば、それを手放すことは転倒につながるから。
「捕らぬ狸のジャンパー」は、はだかの王様の服ライクに、そもそも「存在しない」ものを商品として売っている。
だって、ジャンパーの材料である「狸」は、まだ捕まっていないから!
まさに、この本のタイトル通り「ないものを売る」っていうコンセプト。
ついでに、料金はフリーってことなので、そもそも「売り物かどうか?」もわからない。
「鬼に金棒」の金棒に付属する鬼は、どうもただの鬼の面をつけた普通のおっさんにしか見えない。
そして、商品についてのガセトリビア。
例えば「目からうろこが落ちる」のうろこ。
本書によると、実際に生成されるんだけども、無限に再生されるわけではないし、落ちたうろこは、二度と再生されないそうよ。
だから本書でも、こう書いてあるわ。
『「目から鱗が落ちる」ような何事かを見知ることは、その代償として、あなたの中から、このように貴重ではかないものが「はらり」と落ちることでもあるのです。』
(本文より)
そう。この本の中には、こんな含蓄のある言葉がたくさん含まれているわ。
例えば、「地獄耳」の効用。
自分にとっていいことも悪いことも聞こえてくるけど、それをこんな風にまとめている。
『もちろん、そこには「愛」もあれば「憎」もあり、耐えられないほどの辛い評価が聞こえてくることもしばしばあります。
それに、しっかりと耳を傾けること。
すなわち、すべてを聞き入れること。
これを称して「地獄耳」というのであります。』
(本文より)
劇作家の別役実先生の、フェイクソースを巧みに仕込んだエッセイ、あるいは現代語版、「悪魔の辞典」の慣用句バージョンみたいな逸品!
中には「どさくさ」「一筋縄」みたいな「これどんなふうに実現するんだ?」とか、「腹時計」のように「もう持っているよ」ってものもあるけど、それがどう料理されているのかは、本編読んでのお楽しみ。
ネタとして読んでも面白い。
そもそも、こんな風に「慣用句を実際に出してみたら?」と考えるのも、一つの頭の体操=ゲームブックだと思うの。
創作の中で、奇天烈なアイテムを出そうとアイディアを練っている方にもおすすめ!
まさに、アイディアの玉手箱!
見逃せば人生後悔することウケアイ!
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ないもの、あります』
著 クラフト・エヴィング商會
出版社:筑摩書房
単行本 2001/12/1 絶版
文庫 2009/2/10 900円+税
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『これはゲームブックなのですか!?』vol.126
かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
ドラえもんの道具じゃございませんが、「左うちわ」に、「転ばぬ先の杖」ってホントにあったら欲しくありません?
だけど、いざ実現すると、なかなか解決すべき課題が出てくるようで……。
というわけで、今回紹介する本は『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會:著 筑摩書房)だよ!
この本には、慣用句を実際の「商品」として扱っているカタログ。
「堪忍袋の緒」「自分を上げる棚」のように、「お?これってお役立ちかな?」と思うものから、「一筋縄」「冥途の土産」など「なんじゃそれは?」と首をかしげたくなるものまで26アイテムがずらりそろってる!
で、それが実際に使われるとなると、どういったメリットがあるのか、それで引き起こされるデメリットは何なのか、ユーモアたっぷりに紹介している。
例えば、「転ばぬ先の杖」は、一生手放すことができなくなる。
なぜなら、逆に言えば、それを手放すことは転倒につながるから。
「捕らぬ狸のジャンパー」は、はだかの王様の服ライクに、そもそも「存在しない」ものを商品として売っている。
だって、ジャンパーの材料である「狸」は、まだ捕まっていないから!
まさに、この本のタイトル通り「ないものを売る」っていうコンセプト。
ついでに、料金はフリーってことなので、そもそも「売り物かどうか?」もわからない。
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例えば「目からうろこが落ちる」のうろこ。
本書によると、実際に生成されるんだけども、無限に再生されるわけではないし、落ちたうろこは、二度と再生されないそうよ。
だから本書でも、こう書いてあるわ。
『「目から鱗が落ちる」ような何事かを見知ることは、その代償として、あなたの中から、このように貴重ではかないものが「はらり」と落ちることでもあるのです。』
(本文より)
そう。この本の中には、こんな含蓄のある言葉がたくさん含まれているわ。
例えば、「地獄耳」の効用。
自分にとっていいことも悪いことも聞こえてくるけど、それをこんな風にまとめている。
『もちろん、そこには「愛」もあれば「憎」もあり、耐えられないほどの辛い評価が聞こえてくることもしばしばあります。
それに、しっかりと耳を傾けること。
すなわち、すべてを聞き入れること。
これを称して「地獄耳」というのであります。』
(本文より)
劇作家の別役実先生の、フェイクソースを巧みに仕込んだエッセイ、あるいは現代語版、「悪魔の辞典」の慣用句バージョンみたいな逸品!
中には「どさくさ」「一筋縄」みたいな「これどんなふうに実現するんだ?」とか、「腹時計」のように「もう持っているよ」ってものもあるけど、それがどう料理されているのかは、本編読んでのお楽しみ。
ネタとして読んでも面白い。
そもそも、こんな風に「慣用句を実際に出してみたら?」と考えるのも、一つの頭の体操=ゲームブックだと思うの。
創作の中で、奇天烈なアイテムを出そうとアイディアを練っている方にもおすすめ!
まさに、アイディアの玉手箱!
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∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『ないもの、あります』
著 クラフト・エヴィング商會
出版社:筑摩書房
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2025年12月1日月曜日
☆新刊告知☆「ローグライクハーフ」サプリメント最新作! FT新聞 No.4695
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
先週の金曜日、「モンスター!モンスター!TRPG」のデザイナーであるケン・セント・アンドレの相棒であるスティーブ・クロンプトンが大阪港を訪れました。
FT書房のメンバー4人を含む11人のファンがこれを迎え、最高に楽しい1日となりました!
ただいま、その様子を文章にしたレポートを作成中です……できあがり次第、このFT新聞の月曜記事で配信してまいります!
さて、今日は冬のコミックマーケットの、もうひとつの新刊告知です☆
◆クトゥルフの話。
突然ですがクトゥルフ、お好きですか。
キリスト教徒だからなのか、私ははじめ、クトゥルフ関連の作品がどうも苦手でした。
より正確に言うなら、クトゥルフに関わる作品づくりが、得意ではなかったのです。
宗教という枠で捉えるとき、宗教学や神学を真剣に学んできた身として、うっすらとした嫌悪感があったんです。
でも、あるとき、ある知り合いの漫画家さんと話す機会がありまして。
その際に「クトゥルフって、何を書いたらいいのか分からない」と相談したんですよ。
そしたら、「クトゥルフはもはや巨大ジャンル。好きに書いていい」という、アドバイスをくれたんです!
それ以降、私はクトゥルフで書きたいように書けるようになり、冒涜的な文章を書く独特の楽しさ(※)に一時期ハマって、苦手意識はすっかりなくなりました☆
今日はそんなクトゥルフと関係あるような話です。
※……「冒涜的な」はクトゥルフ作品でよく使われる表現です。
◆冬コミに、もう1冊!
『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』を、ついさっき入稿しました。
これで、2025年の冬のコミックマーケットで「モンスター!モンスター!TRPG」の作品を無事に出すことができます。
でもね、今年はもう1冊、冒涜的なプレゼントがあるんです……!
中山将平著、「30分で遊ぶ1人用TPRG ローグライクハーフ」の最新サプリメント『クトゥウルウの聖なる邪神殿」が、この冬、あなたの正気をむしばみに参ります!
◆とても、クトゥルフだね……!
『クトゥウルウの聖なる邪神殿』はですね、舞台は共通世界であるアランツァにありながら、同時にとてもクトゥルフであるという、絶妙な立ち位置の作品なんです。
中山将平はクトゥルフにとても詳しくて、作品の中身もたいそうクトゥルフです☆
登場するキャラクターが持つ不穏さや不気味さ。
〈友好的なクリーチャー〉ですら、どこかおかしな雰囲気に冒されている。
クトゥルフの最も重要なファクターである「真実に迫るほど、損なわれていくものがある」という部分を、シンプルながらとても工夫されたルールで表現。
そんな風にクトゥルフ的でありながら、魚人的な種族である【末裔】が出てきたり、自治都市トーンに関連する「4匹の猫」が出てきたりと、ちゃんと共通世界アランツァでもある。
ファンタジーを楽しみながら、ホラー(クトゥルフ)も楽しめる作品です。
なにより、遊びやすい。
◆「末裔村 イシュ・ムス」について……★
今回のサプリメントにも、d66シナリオだけでなく、サプリメントがついています。
今回の都市サプリメントは「末裔村 イシュ・ムス」。
これはアランツァの正式な地域名称ですが、都市ではありません。
そのため、「村サプリメント」というあだ名がついています。
魚人的な種族である【末裔】が暮らす村のひとつイシュ・ムスで入手可能な装備品などを、サプリメントとしてお届けします☆
さらに、この村についての情報を「アランツァワールドガイド」として、私杉本が「末裔村 イシュ・ムス」について書き下ろしました。
これはFT新聞では未配信のものです……いざ本を出すとなったときに「やっぱり書いておきたい」と思ったものですから。
◆【新種族】として進化した【末裔】を!
このシナリオには【新職業】の代わりに【新種族】がついています。
その【種族】とはなんと……【末裔】!!
あまりにも順当すぎるチョイスです……もともと【末裔】という名称は、暗い海の底に棲まう旧き存在の子孫であることを、示しているのですから。
【末裔】の存在そのものが、クトゥルフ的なわけです。
この【末裔】、実はこの秋の新刊である『ヒーローズオブダークネス』にも、プレイアブルな【種族】として先に登場しています。
同じものを載せたのか、なんて心配が、よぎりましたでしょうか。
そんな心配はご無用です……本作品に掲載された【末裔】は、なんと4種のバリエーションに分かれています!
「ベースとなる魚に対応して、仕様が異なっている」のです。
具体的には【標準種】【ウツボ種】【ガー種】【カサゴ種】の4種類!
こちらは、紫隠ねこさんが中心となって、杉本と2人でバリアントを作成いたしました!
◆1日目の出展です!
冬のコミックマーケットでは1日目、12月30日に「火曜日 東ソ01ab FT書房」として出展します!
今回は2スペースをお借りしております……本の種類が増えすぎて、1スペースではもう限界なのです!
先週ご紹介した「モンスター!モンスター!TRPG」の最新サプリメント『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』とともに、その姿をお見せすることができますでしょう☆
楽しみです。
そして、楽しみにしていただけましたら、さいわいです☆
それではまた!
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さて、今日は冬のコミックマーケットの、もうひとつの新刊告知です☆
◆クトゥルフの話。
突然ですがクトゥルフ、お好きですか。
キリスト教徒だからなのか、私ははじめ、クトゥルフ関連の作品がどうも苦手でした。
より正確に言うなら、クトゥルフに関わる作品づくりが、得意ではなかったのです。
宗教という枠で捉えるとき、宗教学や神学を真剣に学んできた身として、うっすらとした嫌悪感があったんです。
でも、あるとき、ある知り合いの漫画家さんと話す機会がありまして。
その際に「クトゥルフって、何を書いたらいいのか分からない」と相談したんですよ。
そしたら、「クトゥルフはもはや巨大ジャンル。好きに書いていい」という、アドバイスをくれたんです!
それ以降、私はクトゥルフで書きたいように書けるようになり、冒涜的な文章を書く独特の楽しさ(※)に一時期ハマって、苦手意識はすっかりなくなりました☆
今日はそんなクトゥルフと関係あるような話です。
※……「冒涜的な」はクトゥルフ作品でよく使われる表現です。
◆冬コミに、もう1冊!
『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』を、ついさっき入稿しました。
これで、2025年の冬のコミックマーケットで「モンスター!モンスター!TRPG」の作品を無事に出すことができます。
でもね、今年はもう1冊、冒涜的なプレゼントがあるんです……!
中山将平著、「30分で遊ぶ1人用TPRG ローグライクハーフ」の最新サプリメント『クトゥウルウの聖なる邪神殿」が、この冬、あなたの正気をむしばみに参ります!
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『クトゥウルウの聖なる邪神殿』はですね、舞台は共通世界であるアランツァにありながら、同時にとてもクトゥルフであるという、絶妙な立ち位置の作品なんです。
中山将平はクトゥルフにとても詳しくて、作品の中身もたいそうクトゥルフです☆
登場するキャラクターが持つ不穏さや不気味さ。
〈友好的なクリーチャー〉ですら、どこかおかしな雰囲気に冒されている。
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そんな風にクトゥルフ的でありながら、魚人的な種族である【末裔】が出てきたり、自治都市トーンに関連する「4匹の猫」が出てきたりと、ちゃんと共通世界アランツァでもある。
ファンタジーを楽しみながら、ホラー(クトゥルフ)も楽しめる作品です。
なにより、遊びやすい。
◆「末裔村 イシュ・ムス」について……★
今回のサプリメントにも、d66シナリオだけでなく、サプリメントがついています。
今回の都市サプリメントは「末裔村 イシュ・ムス」。
これはアランツァの正式な地域名称ですが、都市ではありません。
そのため、「村サプリメント」というあだ名がついています。
魚人的な種族である【末裔】が暮らす村のひとつイシュ・ムスで入手可能な装備品などを、サプリメントとしてお届けします☆
さらに、この村についての情報を「アランツァワールドガイド」として、私杉本が「末裔村 イシュ・ムス」について書き下ろしました。
これはFT新聞では未配信のものです……いざ本を出すとなったときに「やっぱり書いておきたい」と思ったものですから。
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その【種族】とはなんと……【末裔】!!
あまりにも順当すぎるチョイスです……もともと【末裔】という名称は、暗い海の底に棲まう旧き存在の子孫であることを、示しているのですから。
【末裔】の存在そのものが、クトゥルフ的なわけです。
この【末裔】、実はこの秋の新刊である『ヒーローズオブダークネス』にも、プレイアブルな【種族】として先に登場しています。
同じものを載せたのか、なんて心配が、よぎりましたでしょうか。
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具体的には【標準種】【ウツボ種】【ガー種】【カサゴ種】の4種類!
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冬のコミックマーケットでは1日目、12月30日に「火曜日 東ソ01ab FT書房」として出展します!
今回は2スペースをお借りしております……本の種類が増えすぎて、1スペースではもう限界なのです!
先週ご紹介した「モンスター!モンスター!TRPG」の最新サプリメント『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』とともに、その姿をお見せすることができますでしょう☆
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2025年11月30日日曜日
Re:ローグライクハーフ・町オプション【モフージャの町】&新職業【吟遊詩人】 FT新聞 No.4694
おはようございます、編集長の水波流です。
来月第一日曜に配信予定のローグライクハーフシナリオは、ロア・スペイダーによるd66『龍脈温泉(仮)』
その舞台となる町サプリメントと新職業を再配信いたします。
舞台はラドリド大陸の南西部、ポートス地方。その中心部に位置する「闇の森」を避けるように作られたモフージャの町です。
この町はもふもふと楽器の音色があふれる町。都市というには規模は小さいですが、そこには確かに歴史や人々の営みがあります。
また、このモフージャは【吟遊詩人】という職業に縁が深い町となります。このため、楽器や楽譜など【吟遊詩人】専用のアイテムが買えるようになってます。
【吟遊詩人】を極めようとしてる方はぜひ訪れることを検討してみてください!
↓町オプション【モフージャの町】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Mofuja.txt
◆吟遊詩人
アランツァの各地を渡り歩き、歌や演奏の技術、世界の伝承知識を身につけた職業のことを【吟遊詩人】と呼びます。
副能力値は幸運点。
習得できる特殊技能は魔法の力を持つ音楽「奏楽」です。
↓新職業【吟遊詩人】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_Bard.txt
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その舞台となる町サプリメントと新職業を再配信いたします。
舞台はラドリド大陸の南西部、ポートス地方。その中心部に位置する「闇の森」を避けるように作られたモフージャの町です。
この町はもふもふと楽器の音色があふれる町。都市というには規模は小さいですが、そこには確かに歴史や人々の営みがあります。
また、このモフージャは【吟遊詩人】という職業に縁が深い町となります。このため、楽器や楽譜など【吟遊詩人】専用のアイテムが買えるようになってます。
【吟遊詩人】を極めようとしてる方はぜひ訪れることを検討してみてください!
↓町オプション【モフージャの町】
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◆吟遊詩人
アランツァの各地を渡り歩き、歌や演奏の技術、世界の伝承知識を身につけた職業のことを【吟遊詩人】と呼びます。
副能力値は幸運点。
習得できる特殊技能は魔法の力を持つ音楽「奏楽」です。
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2025年11月29日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第668号 FT新聞 No.4693
From:水波流
執筆の生命線であるATOK。
プレミアムの機能が全く不要なので月額330円のベーシック契約していたが、ついに廃止……。
強制的にプレミアム契約になるのかー。AI文章生成支援などの新機能より月額料金2倍になるのが厳しい。
しかし各種辞典データと連想変換辞書の機能は、他の日本語IMEには無いので代えがたい。
From:葉山海月
『ヨグ・ソトースの飛沫』を『ヨーグルトソースの秘密』と言い張って譲らない32歳
From:明日槇悠
隣町のお寺へ怪談を聞きにうかがいました。
出演された怪談師の語る怪談よりも、お上人のしごき体験談のほうが圧倒的にこわい!
この時期、お像にかぶせられる綿帽子の紅白はおめでたいからではなく血の滲んだ色なのです……と、これは怪談ではなくためになるお話(雑学)。
From:中山将平
僕ら今日11月29日(土)と明日30日(日)、「トレジャーズオブファンタジア6」というイベントにサークル参加しています。
開催地はJR大阪環状線新今宮駅近くの「YORO BASE」。
ブース配置は【B14】です。
個人的にも大好きなイベントなので、遊びにお越しいただけましたら幸いです。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(葉)=葉山海月
(天)=天狗ろむ
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■11/23(日)~11/28(金)の記事一覧
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2025年11月23日(日)かなでひびき FT新聞 No.4687
読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第11回(出題編)
・かなでひびき氏による企画。かなで氏が集めた奇妙で結末がない物語の断片。この前半部に、読者の皆様がオチに当たるストーリーを考えるという企画です。
今回のお話は、
「たぐいまれな美貌を持ったエルフ。エルフ・ザ・ピンチ!
おにゃのこに囲まれながら税関を通過しようとすると、いいかがりに近いバカ高い通行税を請求されてしまう!
突っぱねようとしても、『それなら女の子たちを置いてけ』
この欲の皮が突っ張った税関に。はたしてピンチは」……
今回の出題編はここまで!
皆様の名解答! お待ちしております!
(葉)
2025年11月24日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4688
☆冬コミ新刊の話☆
・先日開催された秋のゲームマーケットでは、1人用TRPGローグライクハーフの最新サプリメント『ヒーローズオブダークネス』を引っ提げて参加して参りました。おかげさまで好評で、通販も近い内に開始予定です。
次は冬のコミックマーケット!「モンスター!モンスター!TRPG」の最重要サプリメント『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』の刊行を目指し、ハイピッチで作業を進めています。
杉本氏が『ズィムララのモンスターラリー』を読んだとき、「こんなモンスターがプレイ可能なのか」という驚きがあったそうです。
そんな驚きと多様性と魅力に溢れ、プレイヤーとしても、シナリオ作者としても、創作のタネとなるインスピレーションを刺激してくれる「魔法の本」、楽しみにお待ちください!
(天)
2025年11月25日(火)中山将平 FT新聞 No.4689
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第48回
・『カエルの勇者ケロナイツ』の作者である中山氏が、新サークル「ギルド黄金の蛙」を立ち上げられました!
カエル人の創作を通じて新たなファンタジー世界を構築する氏にとって、避けては通れない今回のテーマは「吸血鬼」。
自作にも吸血鬼を描きたいと夢みてきた中山氏、いざその段になって大いに悩んだのは、「吸血鬼がいかなる存在かの設定が作品ごとに違いすぎる」という問題でした。
「求められる吸血鬼像」自体が多様なのだとしか思えないカオティックな状況から、氏は「吸血鬼を特別にしているものは、吸血という行為ではないか」と考えます。
どんな吸血鬼も血を吸うのであれば、その行為の意味——捕食なのか、契約なのか、愛情なのか、はたまた——によって存在のあり方を定めうるのではないか。
ファンタジー世界フログワルドにも存在するという吸血鬼に果敢に挑む、「ギルド黄金の蛙」への熱血応援をよろしくお願いします!
(明)
2025年11月26日(水)ぜろ FT新聞 No.4690
第15回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・精緻な原作を深く豊かな解釈で描き直す、ぜろ氏のリプレイ第467回です。
このリプレイで3度目となる吸血鬼の館のシーン。今回の仲間のボラミーは、館を目前にして、自らがその館と深い因縁をもつことをミナに打ち明けます。
ボラミーは、ミナとは別に、館に来るべき理由を持っていました。では、闇神が戯れに時を巻き戻さなければ、ミナと戦ったボラミーや、ミナと出会わなかったボラミーは、いつかひとりでこの館へと辿り着いていたのでしょうか。そして、間に合わなかったという後悔を、いつまでも抱え続けることになったのでしょうか…?
そんな「もしも」の可能性も想像させながら、物語はクライマックスに向けて加速していきます。
(く)
2025年11月27日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4691
「奇妙な仕事を斜めから見る」
・岡和田晃氏による、奇妙な味のするオリジナル小説をお届けします。
元OL、元デリヘル嬢でキーツ研究に没頭する世莉愛(ぜりあ)の今度の勤め先は、レポート代行業を行う「学術出版・オフィスGOKAK」。
そこで受けた新たな依頼は、「夢魔と幻獣、時間と"猟犬"の関係について論じよ」……明らかに世莉愛が大学時代からお世話になっている教授のクラスへのレポート代筆でした。
かつて博論の草稿を読んだその教授は、世莉愛を特別研究書庫に案内しますが、そこで手に取った水晶から、世莉愛は時間を斜めから見てしまうことに……!?
向学心によるサクセスストーリーが逃亡劇に変転した末に、彼女が見たものとは? ご自身の目でお確かめください!
※秘密結社「白金の落日」の痕跡を追うにあたっては、パラグラフジャンプに擬せし注記を参照せよ。
(明)
2025年11月28日(金)休刊日 FT新聞 No.4692
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
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■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
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また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
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この時期、お像にかぶせられる綿帽子の紅白はおめでたいからではなく血の滲んだ色なのです……と、これは怪談ではなくためになるお話(雑学)。
From:中山将平
僕ら今日11月29日(土)と明日30日(日)、「トレジャーズオブファンタジア6」というイベントにサークル参加しています。
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ブース配置は【B14】です。
個人的にも大好きなイベントなので、遊びにお越しいただけましたら幸いです。
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(葉)=葉山海月
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(明)=明日槇悠
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2025年11月23日(日)かなでひびき FT新聞 No.4687
読者参加企画『みんなのリドルストーリー』第11回(出題編)
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2025年11月25日(火)中山将平 FT新聞 No.4689
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第48回
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2025年11月28日金曜日
休刊日のお知らせ FT新聞 No.4692
おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。
毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
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2025年11月27日木曜日
「奇妙な仕事を斜めから見る」 FT新聞 No.4691
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オリジナル小説「奇妙な仕事を斜めから見る」
岡和田晃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
彼方、彼方へ! 私はきみの世界(もと)へと翔んでゆきたい。——キーツ
時間を斜めから見てしまったあの日から、できるだけ弧を描くように歩くことにしている(注1)。
急ぎすぎると変な奴だと思われてしまうこともあるみたいだけど、適度にペースを落としていけば、見咎められる危険性はぐっと減る。本当は軽いサンダルやヒールの高めの靴を履いときたいところ。でもそれじゃあ、この地味目のスーツに合わないから、仕方なく、上下のスーツとセットで買ったローファーを履いて出勤している。
——時間というのは劫初の瞬間を憧れてやまない神の回想から生まれた。そう書かれた研究書(注2)を、こないだ読んだばかりだ。ならばさしずめ私は、無理にでも世の中を、斜に構えて見られるようにしたいと思っているんだろうな……。そう、世莉愛(ぜりあ)は独りごちた(注3)。
ここは、東京と神奈川の境目から、少し都内寄りのところにある高級住宅街。圧倒的大多数の人らは、一生涯額に汗して働いても、このあたりにマイホームを買うのは夢のまた夢。通行人は驚くほど少なく、なのに、最新型の監視カメラがそこかしこに設けられ、警備車両が行き来している。野宿者が徹底して排除された「住みやすい」街だ(注4)。
その一角に、いまの職場は存在する。見た目こそ普通の一軒家と変わらないものの、実はここ、ユニークなデザイナーズ物件として、知る人が知る家屋なのだ。周囲の建物からは浮いているが、さりとて場違い感はなく、むしろ辺りを従え、君臨し、監視すらしているかのような重圧を放っている。
前に偶然、北海道の廃校を探訪する動画サイトを見たことがある。追いかけ亭雪国(注5)とかいうフザけた名前の配信者のチャンネルだ。彼はホラー系ライターを名乗ってはいるものの、ウケそうなことなら何でもやるノリの軽さと節操の無さがウリらしく、投げ銭頼みであちこちの心霊スポットを行脚して回っているらしい。そのなかに、円形をした小学校の廃墟があった。北海道には戦後のベビーブーム期、あちこちに円形校舎が建てられたのだと蘊蓄(うんちく)を披露していた。あそこまで大きくはないけれど、印象としては近いものがある(注6)。
表札には、大きく「学術出版・オフィスGOKAK(注7)」と掲げられている。それを見るたびに、世莉愛は内心、誰か突っ込みを入れないのだろうかとハラハラする。わざわざ「学術出版」と名乗ってはいるが、実態は大きくかけ離れているからだ。やっているのは、レポート代行業なのである。
面接の模様はこうだった。
「レポート代行って、イメージがよくないですよね。大学をレジャーランドと勘違いして遊び呆けている学生が、最後に泣きつく先だと思われがちです。ですが、イマドキまるごと論文を書いてもらいたい人は、むしろChat GPTなんかに頼んで手軽に仕上げちゃいますから。生成AI使用に特化した安手の業者もいます。もちろん、安かろう悪かろうで、いかにもコンピュータに書かせたものだとバレてしまう可能性が高いわけなんですがね……」
アメリカ生まれだという代表のハンフリー・リトルウィット(注8)は、オーバーに手を合わせて「ご愁傷さまです」とでも言いたげなポーズを取る。
「だから私たちの場合、メインの案件は、レポート代行というよりむしろ研究サポートというほうが近いんですよ。日本の法律には触れませんし、親御さんやら教員の方々にも、感謝されることが多いくらいなんです」
最初に日本の大学に留学した際すぐに問題に気づいたと、まったく訛りのない流暢な日本語で説明を続ける。
「いちばん多いのは、指導教官に疎まれ論文指導を受けられていないから書くことがわからない、フルでバイトを入れなければ学費が払えないから授業に出られなかった、なんてケースですね」
「それって、本来は教師やゼミの上級生が適切にケアしていれば済んだはずの案件ですよね。あるいは、もっと効率のよいバイトをするか」
率直な疑問を世莉愛は挟んだ。
「まさしく。適切なサポートがなされていれば、わざわざ私どもに頼る必要などない方ばかりです。それに、私たちが提供するのは、あくまでも完成一歩手前の原稿で、最終的な仕上げはご当人にやっていただくわけですから、メインは"お手伝い"なんですよね」
自信ありげにハンフリーが言う。実際のところ、オフィスGOKAKに所属しているライターの多くはポスドクか非常勤講師、あるいは院生で、本当に研究サポートという感覚で仕事に取り組んでいるという。いまは学術論文の多くはフルデジタル化されているうえ、ビジネス用のチャットツールが浸透しているので、ちょっと研究センスに長けたものであれば、調査から納品までの間隔は意外なほどに短くて済む。期間も余裕を見て構成されており、これなら本業の研究にも支障は出ないはず……。
世莉愛は一も二もなく、ライター登録を頼むことにした。少しでも「研究」に近い仕事をしていたかったし、ここで働いていれば自分の身は安全だ(注9)。そう直観したからというのも否めない。
大学院(注10)に入る前、世莉愛はOLを三年やってきた。何事をするにも、まずは三年の間、社会人経験を積むのが大事だと言われてきたからだが、経済的な余裕も持ちたかった。母親がシングルマザーだったので、奨学金を頼んでもなお、学費と生活費を足したら足が出てしまう。そこで仕方なく、十代からデリヘルの仕事を始めた(注11)。キツイ肉体労働ではあったけど、報酬に比べたら拘束時間は短い。デリで呼ばれているときの自分は死んでいる、そう思うようにしていたが、そこそこ人気はあったようで、どうにかこうにか、学生ローンの世話にならずに大学を卒業することができた。周りには家庭教師をしていると説明していたが、賢しらぶって他人に教えるのはどうも苦手。だからOLになってからも、貯金を作るために週一くらいのペースで「仕事」を続けてはいたのだけど、職場で妙な噂を流され始めて嫌気がさし、ここらが潮時と進学を決意した。
もともと大学では英文科にいた。文学に興味があったというよりは、母親の苦労を見てきたので英語ができれば食いっぱぐれはないだろう、という程度の動機で選んだ場所である。サークルにも悪友との遊びにも参加せず、教員に指定された本を真面目に図書館で読むようにし、忘れないよう細かいメモを取るようにしてきたので、いつの間にか基本的な知識は出来ていた。
あるとき、待機室でジョン・キーツの詩集を読んでいたところ、ヤンキー上がりの人妻なのが売りの嬢が、わざわざパーテーション越しにこちらを覗き込んできて、「これみよがしにそーゆーの読んでるのって、あたしたちへのあてつけ? 自分はあんたらとは違うんだぞ、って、お高く止まってるんじゃねーぞコラ」と絡まれ、チューハイの空き缶を投げつけられた。曖昧に笑ってその場はごまかしたが、むしろ、それをきっかけとして、この詩人にもう少し付き合ってもいいかな、と思ったものである。
会社を自己都合で辞めてすぐ、大学時代の指導教官である長鐘岷(ながかねみん)教授(注12)に連絡をとり、院に進みたいと話した。彼女は世莉愛のことをよく憶えており、卒論の出来が図抜けてよかったから就職したのはもったいないと思っていた、と言ってくれた。推薦書を書くのはやぶさかではないが、それには研究計画が必要だと言われたので、咄嗟に思い浮かんだジョン・キーツの"小夜啼鳥(ナイチンゲール)に寄せる頌歌(Ode to a nightingale)"で詠われる小夜啼鳥と「彼方」の関係について修士論文を書きたい、と話し、詩の一節を諳(そら)んじてみたところ(注13)、「キーツとは、いまどき珍しいね。でも、ケアの概念にも関係あるし、動物表象の研究は最近の流行りを押さえている。なかなかバランス感覚がいいと思うよ」と褒められ、とんとん拍子に話は進んだ。
ティーチング・アシスタント(TA)をやりながら、修士時代は図書館と研究室にこもって、論文の執筆に集中した。幸い、関連文献の大半はオンラインで読める。関連文献の翻訳を自分で作り、それをもとに論文を書くので研究の効率は悪かったが、「M(注14)とは思えないほど綿密だ」と長鐘教授からは褒められ、決して悪い気はしなかった。ただ、貯金は急速に減っていった。ふたたびデリに戻ることも考えたところ、苦境を見越したのか、長鐘教授が日本学術振興会の特別研究員の口に応募してはどうか、と言ってきた。月三十万ばかりの報酬が出るという。幸い面接はパスしたが、期間は三年きり……。
心配の種は尽きず、おまけに研究メインの生活に入ってから不思議な夢を見るようになった。一度や二度ではなく、ほぼ毎週、ひどいときは二、三日に一度ペースだから尋常ではない。中身は決まっており、自分が男になって、黒い面紗(ヴェール)をかけた女と、肉叢(ししむら)をぶつけ合うほど激しく交わる夢だった。顔の方はよく思い出せないが、背が高く豊満な体つきをしていたのは間違いない。事が終わると、長距離走を走り終えたあとのようにぐったりとした気分になる。精を抜き取られ、自分という器が空っぽになってしまったようで(注15)、布団までびっしょりと濡れてしまう。
皮肉なものを感じた。自分が男になって、知らない女とセックスする夢を見続けるなんて! そういえば、よく指名してくる客に、小中(こなか)と名乗る青白い顔をした痩せっぽちの男がいたのを思い出した(注16)。彼は生まれつきの不能らしく、世莉愛の裸を見ても勃起した試しがない。互いに生まれたままの姿にて、あれこれ四方山話で時間を潰すのが常で、客としては対応が楽だった。最後に世莉愛を買ったとき、いちど翻訳しているという原稿の一部を読み聞かされたことがある。「なんて本なの?」と聞いたら、小中は軽く笑い、「本じゃないんだ。これは呪詛板という古代ギリシアに伝わる石版を、僕が翻刻したものでね。エウリュディケーのような冥界から戻ってきた存在の顔を見ても、それが冥界に引き戻されないよう、呪縛を込めるためのものなんだ」と言った。深く考えなかったけれども、どういう意味だったのか、問い質しておけばよかった。というのも夢のなかで、どうも世莉愛は自分が小中になったような気がしてならなかったからだ。
OLも夜職も「卒業」し、研究に没頭しているときは束の間、悪夢を忘れられた。それどころか調べれば調べるほど、自分が十九世紀の詩人になったように思え、別の夢を見た気持ちになった。それだけなら"研究者あるある"なのだけども、有名な"ギリシア壺に寄せる頌歌(Ode on a Grecian Urn)"で詠われるような古典古代への憧れは増すばかり。ロマン派の詩人が理想化した時代と現実の歴史は違うと頭では理解しているのだが、詩人の憧憬を共有することで、時空を飛び越えていけるような気持ちになったからである。そこから一線を超えるまで、さほど長い時間はかからなかった。
いち早く気づいたのは、長鐘教授だった。定期的に行われていた博士論文のための個別面談で、新章の草稿を読んだ彼女は面持ちを変え、「きみは時間をめぐる秘教(エソテリズム)に興味があるんだね? それなら、うちの大学の特別研究書庫を使うといいよ。推薦状を書いておくから、司書にそれを見せれば入れるはずだよ」と言ってきた。
そんな書庫があるとは、聞いたこともなかった。閉架書庫の一角から、螺旋階段をひたすら降りていくのである。これがとても長く、体感時間では三十分以上降りたようだが、さらに下ったかもしれない。その先のごく狭い一室に、その特別研究書庫は位置していた。なかからは据えたような変な臭いがし、人の皮で装丁された、古代ギリシア語、ラテン語、アラビア語の書物が散在していた。あるのは本だけではなくて、妙に刀身がねじくれた剣やら、ピカピカ輝く黄金の盃やら、濃緑色の水晶やらが転がっていた。興味本位で世莉愛は水晶を手にし……。
——何か大いなる存在によって自分の意識がわしづかみにされ、あたかも粘土のごとくぐちゃぐちゃに捏(こ)ねられたかのようだった。いびつに変形させられたまま渦巻く奔流となり、ロケットを逆噴射させるような調子で、どこかありえない場所に精神が押し込められるのを感じた。それから、緑色の光が輝き、認識の一歩先を投網のように覆った。
何かが奥の奥まで進み、世莉愛を深々と突き刺した——その痛みと重ね合わされるかのように、緑青…薄紫…赤紫…青紫…深紅——黄赤…赤黄…黄…緑黄…黄緑…緑——チラチラと煌めく色とりどりの円がひたすらに循環し、色彩の輪が幾重にも連なる。転輪のなかに大いなる存在が、ぼんやりと浮かび上がってくる。迫ってきた。速かった。ものすごい勢いで、"猟犬"は、世莉愛の侵入を見咎めたのだ。
それからだ。世莉愛が時間を斜めに見、弧を描くように歩き始めたのは。不用意に角に近けば、あいつが数十億年前の昔から追いつき、姿を現してしまうことだろう。
問題なくオフィスGOKAKから採用の連絡が来た。リモート勤務ではなく、出勤して働くことを選んだ。その方が、業務に関しての細かいニュアンスが伝わると思ったからである。「研究サポート」の仕事は向いていたようだ。というのも教員の求めるレベルと、勉強をしない学生たちの間に横たわる断絶の質が、すぐに掴めたからである。論文の完成度を高めすぎないように注意しながら、九割がた完成させたレポートと資料を送るように心がけた。ハンフリー代表は、すぐに世莉愛の適性を見抜いた。
「なかなかやりますね。CiNiiでヒットしない論文以外も、ちゃんと参考文献に入れている。これなら、まず剽窃や代筆を疑われずに済むでしょう」
「いや、これはクライアントからもらった資料のなかで言及されていたものなんですよ」
「謙遜が上手いですね。たとえそうでも、それを使って論に仕上げることなど、なかなか出来ないものです。あなたはこの仕事、向いていると思います」
実際、仕事は次から次へと振られたが、世莉愛にはルーチンでこなすことができ、やればやるほど、仕事の能率を上げられることもわかってきた。オフィスにいる時間は、少しずつ長くなってきた。好きで残業をしているわけではないが、できるだけ外にいる時間を減らしたいのも、確かだったのである。
新しい生活にも慣れたと感じたある日、気になる依頼が舞い込んできた。クライアントは事情があってメールでの相談しかできないという話だったが、「夢魔と幻獣、時間と"猟犬"の関係について論じよ」という題目からして、長鐘教授のクラス、しかも大学院ゼミへのレポート代筆を頼まれたというのは、すぐにわかった。
さすがにリスクが大きすぎる、違うライターに振ってほしいとハンフリー代表に頼んだが、「そういうこともけっこうあります。むしろ、傾向がわかって好都合じゃないですか。先輩として指導してあげるべきでしょう。この手のケースって、問題になりづらいんですよ。教員の側が"自分が教えたことがちゃんと伝わっている"と手応えを抱いてくれるものですから」と、わかったような返しをしてくる。
博士論文を仕上げる時間を、別の仕事に注ぎ込んでいるとバレたら大目玉だな……と思ったが、あいつに出くわしてから、そもそも世莉愛は、長鐘教授と顔を合わせた記憶がないのに気づいた。住所も電話番号もメールアドレスも変えてしまったし、そもそも、博士論文を仕上げるという名目で休学したが、その実、あいつから逃れる手立てを探していたのではなかったか。
幸い、代表の言った通りで、教授からのお咎めはなかった。それどころかクライアントは味をしめたようで、修論の代行すら頼んできた。しかも、題目を見て戦慄した。「"小夜啼鳥に寄せる頌歌"で詠われる小夜啼鳥と「彼方」の関係について」とあるではないか。
教授は私が代行をしていることに、まず間違いなく気づいている。さすがに自分の修論を、まるまる提出する気にはなれず、自分が修論で書けなかった論点を積極的に盛り込んだ「新作」を、提供することになったわけである。次の依頼は、案の定、予想通りのものだった。「"ギリシア壺に寄せる頌歌"と時間について」。そう、教授は依頼人のフリをして、私に博士論文の続きを書かせようとしているのだ。
そして私は代行のつもりで、自分の原稿を書いていただけだったのである。自分の意思のつもりでいて、知らず、退路を絶たれていた——自らの尻尾を齧る蛇ウロボロスのように! そういえば世莉愛はここ数日、自分がオフィスから出ていなかったことに気づいた。見回したが、代表の姿はどこにもない。あたかも宙吊りになり、時空の狭間、いや深奥にふたたび迷い込んでしまったかのようで……そのまま、世界が濃緑色に包まれた。
【注記】これはゲームブック専門出版社の日刊メールマガジンに掲載される小説という体裁をとっているが、どうも、我々が追っている秘密結社「白金の落日」についての情報が盛り込まれているらしい。そこで、知りうる情報を注記という形で示すことにした(ファイル作成者記す)。
(注1)視点人物は、おそらく本能的に"猟犬"を避けようとしているのだろう。
(注2)アウグスティヌスの『告白』と思われるが、グノーシス主義やカタリ派の基本思想にもつながる。
(注3)この名前はハワード・フィリップス・ラヴクラフト(HPL)に小説の添削を依頼していた顧客、ゼリア(ズィーリア)・ビショップを思わせる。
(注4)彼らは、いったい何を警戒しているのか? 野宿者の排除は許されないが、排除されているのは野宿者だけななのか?
(注5)このライターは実在する。「ナイトランド・クォータリー・タイムス」Issue25の「レンタルおぞましい人」や、Vol.36の花田一三六「【ザ・ハウス・オブ・ナイトメア】悪夢の家を探索してみる【絶叫配信?】」参照。何かを知っているかもしれないから、コンタクト候補に要追加。
(注6)つまり"猟犬"から逃れるための設計だろう。
(注7)「合格」に引っ掛けたネーミングに見せかけているが、この綴りはインドの神智学者V・K・ゴーカク博士のファミリーネームを彷彿させる。神智学ネットワークの寓喩か?
(注8)HPLが用いた多数の筆名のひとつと一致。これは偶然か?
(注9)この特異な外観の建物が、"猟犬"から身を守るためのシェルターになっているということだろう。
(注10)この大学院がどこなのか、故意に語り落とされているようだが、察しはつく。新興宗教団体の肝要りで作られたとの報道もあるが、正しくない。あそこは、「白金の落日」がバックにいるところだ。教員にも息がかかっていると見て、まず間違いない。
(注11)女子大生が十代で身体を売るのは珍しくなく、今日日(きょうび)社会問題にもなっているのは我々も承知しているが、「白金の落日」の「修行」の一環という可能性はないか?
(注12)この教授の名前から、HPL周辺の最年長作家で"ティンダロスの猟犬"をめぐる秘密を小説の形で綴ったフランク・ベルナップ・ロングを連想するのは、深読みのしすぎか?
(注13)諳んじて見せたのは、詩の一節というよりは呪文なのではないか? キーツというのも本当だろうか。
(注14)MとはMaster、つまり「修士課程」のことを指すが、ひょっとすると「白金の日没」の「導師」の略称という意味でのMasterということも考えられるのではないか?
(注15)魔術の痕跡と思われる。HPLが「魔女の家の夢」で書いたとおりだ。あるいは、「戸口にあらわれたもの」か? 後半のあからさまな魔術や魔導書、アーティファクトの描写についての注記は略す。
(注16)大正時代に似た作家がいたらしい。「ナイトランド・クォータリー」Vol.36の岡和田晃「青い花」参照。
※本作は「ナイトランド・クォータリー・タイムス」Issue21に掲載された「彼方の転輪、白金の落日」を、加筆修正のうえ改題したものである。
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オリジナル小説「奇妙な仕事を斜めから見る」
岡和田晃
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彼方、彼方へ! 私はきみの世界(もと)へと翔んでゆきたい。——キーツ
時間を斜めから見てしまったあの日から、できるだけ弧を描くように歩くことにしている(注1)。
急ぎすぎると変な奴だと思われてしまうこともあるみたいだけど、適度にペースを落としていけば、見咎められる危険性はぐっと減る。本当は軽いサンダルやヒールの高めの靴を履いときたいところ。でもそれじゃあ、この地味目のスーツに合わないから、仕方なく、上下のスーツとセットで買ったローファーを履いて出勤している。
——時間というのは劫初の瞬間を憧れてやまない神の回想から生まれた。そう書かれた研究書(注2)を、こないだ読んだばかりだ。ならばさしずめ私は、無理にでも世の中を、斜に構えて見られるようにしたいと思っているんだろうな……。そう、世莉愛(ぜりあ)は独りごちた(注3)。
ここは、東京と神奈川の境目から、少し都内寄りのところにある高級住宅街。圧倒的大多数の人らは、一生涯額に汗して働いても、このあたりにマイホームを買うのは夢のまた夢。通行人は驚くほど少なく、なのに、最新型の監視カメラがそこかしこに設けられ、警備車両が行き来している。野宿者が徹底して排除された「住みやすい」街だ(注4)。
その一角に、いまの職場は存在する。見た目こそ普通の一軒家と変わらないものの、実はここ、ユニークなデザイナーズ物件として、知る人が知る家屋なのだ。周囲の建物からは浮いているが、さりとて場違い感はなく、むしろ辺りを従え、君臨し、監視すらしているかのような重圧を放っている。
前に偶然、北海道の廃校を探訪する動画サイトを見たことがある。追いかけ亭雪国(注5)とかいうフザけた名前の配信者のチャンネルだ。彼はホラー系ライターを名乗ってはいるものの、ウケそうなことなら何でもやるノリの軽さと節操の無さがウリらしく、投げ銭頼みであちこちの心霊スポットを行脚して回っているらしい。そのなかに、円形をした小学校の廃墟があった。北海道には戦後のベビーブーム期、あちこちに円形校舎が建てられたのだと蘊蓄(うんちく)を披露していた。あそこまで大きくはないけれど、印象としては近いものがある(注6)。
表札には、大きく「学術出版・オフィスGOKAK(注7)」と掲げられている。それを見るたびに、世莉愛は内心、誰か突っ込みを入れないのだろうかとハラハラする。わざわざ「学術出版」と名乗ってはいるが、実態は大きくかけ離れているからだ。やっているのは、レポート代行業なのである。
面接の模様はこうだった。
「レポート代行って、イメージがよくないですよね。大学をレジャーランドと勘違いして遊び呆けている学生が、最後に泣きつく先だと思われがちです。ですが、イマドキまるごと論文を書いてもらいたい人は、むしろChat GPTなんかに頼んで手軽に仕上げちゃいますから。生成AI使用に特化した安手の業者もいます。もちろん、安かろう悪かろうで、いかにもコンピュータに書かせたものだとバレてしまう可能性が高いわけなんですがね……」
アメリカ生まれだという代表のハンフリー・リトルウィット(注8)は、オーバーに手を合わせて「ご愁傷さまです」とでも言いたげなポーズを取る。
「だから私たちの場合、メインの案件は、レポート代行というよりむしろ研究サポートというほうが近いんですよ。日本の法律には触れませんし、親御さんやら教員の方々にも、感謝されることが多いくらいなんです」
最初に日本の大学に留学した際すぐに問題に気づいたと、まったく訛りのない流暢な日本語で説明を続ける。
「いちばん多いのは、指導教官に疎まれ論文指導を受けられていないから書くことがわからない、フルでバイトを入れなければ学費が払えないから授業に出られなかった、なんてケースですね」
「それって、本来は教師やゼミの上級生が適切にケアしていれば済んだはずの案件ですよね。あるいは、もっと効率のよいバイトをするか」
率直な疑問を世莉愛は挟んだ。
「まさしく。適切なサポートがなされていれば、わざわざ私どもに頼る必要などない方ばかりです。それに、私たちが提供するのは、あくまでも完成一歩手前の原稿で、最終的な仕上げはご当人にやっていただくわけですから、メインは"お手伝い"なんですよね」
自信ありげにハンフリーが言う。実際のところ、オフィスGOKAKに所属しているライターの多くはポスドクか非常勤講師、あるいは院生で、本当に研究サポートという感覚で仕事に取り組んでいるという。いまは学術論文の多くはフルデジタル化されているうえ、ビジネス用のチャットツールが浸透しているので、ちょっと研究センスに長けたものであれば、調査から納品までの間隔は意外なほどに短くて済む。期間も余裕を見て構成されており、これなら本業の研究にも支障は出ないはず……。
世莉愛は一も二もなく、ライター登録を頼むことにした。少しでも「研究」に近い仕事をしていたかったし、ここで働いていれば自分の身は安全だ(注9)。そう直観したからというのも否めない。
大学院(注10)に入る前、世莉愛はOLを三年やってきた。何事をするにも、まずは三年の間、社会人経験を積むのが大事だと言われてきたからだが、経済的な余裕も持ちたかった。母親がシングルマザーだったので、奨学金を頼んでもなお、学費と生活費を足したら足が出てしまう。そこで仕方なく、十代からデリヘルの仕事を始めた(注11)。キツイ肉体労働ではあったけど、報酬に比べたら拘束時間は短い。デリで呼ばれているときの自分は死んでいる、そう思うようにしていたが、そこそこ人気はあったようで、どうにかこうにか、学生ローンの世話にならずに大学を卒業することができた。周りには家庭教師をしていると説明していたが、賢しらぶって他人に教えるのはどうも苦手。だからOLになってからも、貯金を作るために週一くらいのペースで「仕事」を続けてはいたのだけど、職場で妙な噂を流され始めて嫌気がさし、ここらが潮時と進学を決意した。
もともと大学では英文科にいた。文学に興味があったというよりは、母親の苦労を見てきたので英語ができれば食いっぱぐれはないだろう、という程度の動機で選んだ場所である。サークルにも悪友との遊びにも参加せず、教員に指定された本を真面目に図書館で読むようにし、忘れないよう細かいメモを取るようにしてきたので、いつの間にか基本的な知識は出来ていた。
あるとき、待機室でジョン・キーツの詩集を読んでいたところ、ヤンキー上がりの人妻なのが売りの嬢が、わざわざパーテーション越しにこちらを覗き込んできて、「これみよがしにそーゆーの読んでるのって、あたしたちへのあてつけ? 自分はあんたらとは違うんだぞ、って、お高く止まってるんじゃねーぞコラ」と絡まれ、チューハイの空き缶を投げつけられた。曖昧に笑ってその場はごまかしたが、むしろ、それをきっかけとして、この詩人にもう少し付き合ってもいいかな、と思ったものである。
会社を自己都合で辞めてすぐ、大学時代の指導教官である長鐘岷(ながかねみん)教授(注12)に連絡をとり、院に進みたいと話した。彼女は世莉愛のことをよく憶えており、卒論の出来が図抜けてよかったから就職したのはもったいないと思っていた、と言ってくれた。推薦書を書くのはやぶさかではないが、それには研究計画が必要だと言われたので、咄嗟に思い浮かんだジョン・キーツの"小夜啼鳥(ナイチンゲール)に寄せる頌歌(Ode to a nightingale)"で詠われる小夜啼鳥と「彼方」の関係について修士論文を書きたい、と話し、詩の一節を諳(そら)んじてみたところ(注13)、「キーツとは、いまどき珍しいね。でも、ケアの概念にも関係あるし、動物表象の研究は最近の流行りを押さえている。なかなかバランス感覚がいいと思うよ」と褒められ、とんとん拍子に話は進んだ。
ティーチング・アシスタント(TA)をやりながら、修士時代は図書館と研究室にこもって、論文の執筆に集中した。幸い、関連文献の大半はオンラインで読める。関連文献の翻訳を自分で作り、それをもとに論文を書くので研究の効率は悪かったが、「M(注14)とは思えないほど綿密だ」と長鐘教授からは褒められ、決して悪い気はしなかった。ただ、貯金は急速に減っていった。ふたたびデリに戻ることも考えたところ、苦境を見越したのか、長鐘教授が日本学術振興会の特別研究員の口に応募してはどうか、と言ってきた。月三十万ばかりの報酬が出るという。幸い面接はパスしたが、期間は三年きり……。
心配の種は尽きず、おまけに研究メインの生活に入ってから不思議な夢を見るようになった。一度や二度ではなく、ほぼ毎週、ひどいときは二、三日に一度ペースだから尋常ではない。中身は決まっており、自分が男になって、黒い面紗(ヴェール)をかけた女と、肉叢(ししむら)をぶつけ合うほど激しく交わる夢だった。顔の方はよく思い出せないが、背が高く豊満な体つきをしていたのは間違いない。事が終わると、長距離走を走り終えたあとのようにぐったりとした気分になる。精を抜き取られ、自分という器が空っぽになってしまったようで(注15)、布団までびっしょりと濡れてしまう。
皮肉なものを感じた。自分が男になって、知らない女とセックスする夢を見続けるなんて! そういえば、よく指名してくる客に、小中(こなか)と名乗る青白い顔をした痩せっぽちの男がいたのを思い出した(注16)。彼は生まれつきの不能らしく、世莉愛の裸を見ても勃起した試しがない。互いに生まれたままの姿にて、あれこれ四方山話で時間を潰すのが常で、客としては対応が楽だった。最後に世莉愛を買ったとき、いちど翻訳しているという原稿の一部を読み聞かされたことがある。「なんて本なの?」と聞いたら、小中は軽く笑い、「本じゃないんだ。これは呪詛板という古代ギリシアに伝わる石版を、僕が翻刻したものでね。エウリュディケーのような冥界から戻ってきた存在の顔を見ても、それが冥界に引き戻されないよう、呪縛を込めるためのものなんだ」と言った。深く考えなかったけれども、どういう意味だったのか、問い質しておけばよかった。というのも夢のなかで、どうも世莉愛は自分が小中になったような気がしてならなかったからだ。
OLも夜職も「卒業」し、研究に没頭しているときは束の間、悪夢を忘れられた。それどころか調べれば調べるほど、自分が十九世紀の詩人になったように思え、別の夢を見た気持ちになった。それだけなら"研究者あるある"なのだけども、有名な"ギリシア壺に寄せる頌歌(Ode on a Grecian Urn)"で詠われるような古典古代への憧れは増すばかり。ロマン派の詩人が理想化した時代と現実の歴史は違うと頭では理解しているのだが、詩人の憧憬を共有することで、時空を飛び越えていけるような気持ちになったからである。そこから一線を超えるまで、さほど長い時間はかからなかった。
いち早く気づいたのは、長鐘教授だった。定期的に行われていた博士論文のための個別面談で、新章の草稿を読んだ彼女は面持ちを変え、「きみは時間をめぐる秘教(エソテリズム)に興味があるんだね? それなら、うちの大学の特別研究書庫を使うといいよ。推薦状を書いておくから、司書にそれを見せれば入れるはずだよ」と言ってきた。
そんな書庫があるとは、聞いたこともなかった。閉架書庫の一角から、螺旋階段をひたすら降りていくのである。これがとても長く、体感時間では三十分以上降りたようだが、さらに下ったかもしれない。その先のごく狭い一室に、その特別研究書庫は位置していた。なかからは据えたような変な臭いがし、人の皮で装丁された、古代ギリシア語、ラテン語、アラビア語の書物が散在していた。あるのは本だけではなくて、妙に刀身がねじくれた剣やら、ピカピカ輝く黄金の盃やら、濃緑色の水晶やらが転がっていた。興味本位で世莉愛は水晶を手にし……。
——何か大いなる存在によって自分の意識がわしづかみにされ、あたかも粘土のごとくぐちゃぐちゃに捏(こ)ねられたかのようだった。いびつに変形させられたまま渦巻く奔流となり、ロケットを逆噴射させるような調子で、どこかありえない場所に精神が押し込められるのを感じた。それから、緑色の光が輝き、認識の一歩先を投網のように覆った。
何かが奥の奥まで進み、世莉愛を深々と突き刺した——その痛みと重ね合わされるかのように、緑青…薄紫…赤紫…青紫…深紅——黄赤…赤黄…黄…緑黄…黄緑…緑——チラチラと煌めく色とりどりの円がひたすらに循環し、色彩の輪が幾重にも連なる。転輪のなかに大いなる存在が、ぼんやりと浮かび上がってくる。迫ってきた。速かった。ものすごい勢いで、"猟犬"は、世莉愛の侵入を見咎めたのだ。
それからだ。世莉愛が時間を斜めに見、弧を描くように歩き始めたのは。不用意に角に近けば、あいつが数十億年前の昔から追いつき、姿を現してしまうことだろう。
問題なくオフィスGOKAKから採用の連絡が来た。リモート勤務ではなく、出勤して働くことを選んだ。その方が、業務に関しての細かいニュアンスが伝わると思ったからである。「研究サポート」の仕事は向いていたようだ。というのも教員の求めるレベルと、勉強をしない学生たちの間に横たわる断絶の質が、すぐに掴めたからである。論文の完成度を高めすぎないように注意しながら、九割がた完成させたレポートと資料を送るように心がけた。ハンフリー代表は、すぐに世莉愛の適性を見抜いた。
「なかなかやりますね。CiNiiでヒットしない論文以外も、ちゃんと参考文献に入れている。これなら、まず剽窃や代筆を疑われずに済むでしょう」
「いや、これはクライアントからもらった資料のなかで言及されていたものなんですよ」
「謙遜が上手いですね。たとえそうでも、それを使って論に仕上げることなど、なかなか出来ないものです。あなたはこの仕事、向いていると思います」
実際、仕事は次から次へと振られたが、世莉愛にはルーチンでこなすことができ、やればやるほど、仕事の能率を上げられることもわかってきた。オフィスにいる時間は、少しずつ長くなってきた。好きで残業をしているわけではないが、できるだけ外にいる時間を減らしたいのも、確かだったのである。
新しい生活にも慣れたと感じたある日、気になる依頼が舞い込んできた。クライアントは事情があってメールでの相談しかできないという話だったが、「夢魔と幻獣、時間と"猟犬"の関係について論じよ」という題目からして、長鐘教授のクラス、しかも大学院ゼミへのレポート代筆を頼まれたというのは、すぐにわかった。
さすがにリスクが大きすぎる、違うライターに振ってほしいとハンフリー代表に頼んだが、「そういうこともけっこうあります。むしろ、傾向がわかって好都合じゃないですか。先輩として指導してあげるべきでしょう。この手のケースって、問題になりづらいんですよ。教員の側が"自分が教えたことがちゃんと伝わっている"と手応えを抱いてくれるものですから」と、わかったような返しをしてくる。
博士論文を仕上げる時間を、別の仕事に注ぎ込んでいるとバレたら大目玉だな……と思ったが、あいつに出くわしてから、そもそも世莉愛は、長鐘教授と顔を合わせた記憶がないのに気づいた。住所も電話番号もメールアドレスも変えてしまったし、そもそも、博士論文を仕上げるという名目で休学したが、その実、あいつから逃れる手立てを探していたのではなかったか。
幸い、代表の言った通りで、教授からのお咎めはなかった。それどころかクライアントは味をしめたようで、修論の代行すら頼んできた。しかも、題目を見て戦慄した。「"小夜啼鳥に寄せる頌歌"で詠われる小夜啼鳥と「彼方」の関係について」とあるではないか。
教授は私が代行をしていることに、まず間違いなく気づいている。さすがに自分の修論を、まるまる提出する気にはなれず、自分が修論で書けなかった論点を積極的に盛り込んだ「新作」を、提供することになったわけである。次の依頼は、案の定、予想通りのものだった。「"ギリシア壺に寄せる頌歌"と時間について」。そう、教授は依頼人のフリをして、私に博士論文の続きを書かせようとしているのだ。
そして私は代行のつもりで、自分の原稿を書いていただけだったのである。自分の意思のつもりでいて、知らず、退路を絶たれていた——自らの尻尾を齧る蛇ウロボロスのように! そういえば世莉愛はここ数日、自分がオフィスから出ていなかったことに気づいた。見回したが、代表の姿はどこにもない。あたかも宙吊りになり、時空の狭間、いや深奥にふたたび迷い込んでしまったかのようで……そのまま、世界が濃緑色に包まれた。
【注記】これはゲームブック専門出版社の日刊メールマガジンに掲載される小説という体裁をとっているが、どうも、我々が追っている秘密結社「白金の落日」についての情報が盛り込まれているらしい。そこで、知りうる情報を注記という形で示すことにした(ファイル作成者記す)。
(注1)視点人物は、おそらく本能的に"猟犬"を避けようとしているのだろう。
(注2)アウグスティヌスの『告白』と思われるが、グノーシス主義やカタリ派の基本思想にもつながる。
(注3)この名前はハワード・フィリップス・ラヴクラフト(HPL)に小説の添削を依頼していた顧客、ゼリア(ズィーリア)・ビショップを思わせる。
(注4)彼らは、いったい何を警戒しているのか? 野宿者の排除は許されないが、排除されているのは野宿者だけななのか?
(注5)このライターは実在する。「ナイトランド・クォータリー・タイムス」Issue25の「レンタルおぞましい人」や、Vol.36の花田一三六「【ザ・ハウス・オブ・ナイトメア】悪夢の家を探索してみる【絶叫配信?】」参照。何かを知っているかもしれないから、コンタクト候補に要追加。
(注6)つまり"猟犬"から逃れるための設計だろう。
(注7)「合格」に引っ掛けたネーミングに見せかけているが、この綴りはインドの神智学者V・K・ゴーカク博士のファミリーネームを彷彿させる。神智学ネットワークの寓喩か?
(注8)HPLが用いた多数の筆名のひとつと一致。これは偶然か?
(注9)この特異な外観の建物が、"猟犬"から身を守るためのシェルターになっているということだろう。
(注10)この大学院がどこなのか、故意に語り落とされているようだが、察しはつく。新興宗教団体の肝要りで作られたとの報道もあるが、正しくない。あそこは、「白金の落日」がバックにいるところだ。教員にも息がかかっていると見て、まず間違いない。
(注11)女子大生が十代で身体を売るのは珍しくなく、今日日(きょうび)社会問題にもなっているのは我々も承知しているが、「白金の落日」の「修行」の一環という可能性はないか?
(注12)この教授の名前から、HPL周辺の最年長作家で"ティンダロスの猟犬"をめぐる秘密を小説の形で綴ったフランク・ベルナップ・ロングを連想するのは、深読みのしすぎか?
(注13)諳んじて見せたのは、詩の一節というよりは呪文なのではないか? キーツというのも本当だろうか。
(注14)MとはMaster、つまり「修士課程」のことを指すが、ひょっとすると「白金の日没」の「導師」の略称という意味でのMasterということも考えられるのではないか?
(注15)魔術の痕跡と思われる。HPLが「魔女の家の夢」で書いたとおりだ。あるいは、「戸口にあらわれたもの」か? 後半のあからさまな魔術や魔導書、アーティファクトの描写についての注記は略す。
(注16)大正時代に似た作家がいたらしい。「ナイトランド・クォータリー」Vol.36の岡和田晃「青い花」参照。
※本作は「ナイトランド・クォータリー・タイムス」Issue21に掲載された「彼方の転輪、白金の落日」を、加筆修正のうえ改題したものである。
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2025年11月26日水曜日
第15回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4690
第15回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
闇神の戯れによる時の巻き戻しに気づき一度は絶望しますが、ボラミーという随伴者を得て、脆く壊れそうな心を奮い立たせます。
ボラミーとの関係を深めながら旅は続き、いよいよ目的のローズ家の館へ。
そのときボラミーが語り始めたこととは……。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-9 ボラミーの告白
「ミナに、話しておくことがある」
そう切り出したボラミーだが、その次の言葉がなかなか出てこなかった。
言いにくいことを、言葉を選びながら伝えようとしていることがわかった。
「私は幼い頃、あの館で暮らしていたんだ。ビバイアという弟と一緒に」
ボクは黙って、ボラミーの話の続きを待つ。
「ミナのお姉さんたちを買い取ったローズ家のあるじ、マルティン・ローズは、私の父親なんだ」
それは、ボクに伝えるには、あまりにも話しづらいことだっただろう。
それでも、話してくれた。ボクは話の内容の衝撃よりも、ボラミーがそう決意してくれたことの方がうれしかった。
「父は私が幼い頃、自分の意思で吸血鬼になった。私は、様子がすっかり変わってしまった父に恐怖を抱いて、家を出たんだ。まだ10歳になるかという年だった」
ボラミーがボクと一緒に旅をしてくれたのは、ボクのことが心配だっただけじゃなかった。
きっと、父親がボクの姉たちにしたことに、責任を感じていたんだ。
「もちろん、贖罪の気持ちはあった。けれど、それだけじゃない。信じてほしいとは言わないけれど」
そんなこと、言われるまでもない。
事情はどうあれ、ボラミーがいなければ、ボクはここに来られるだけの心の強さを持てなかった。
ボラミーの存在に、どれほど助けられたことか。
もしボラミーがボクを、吸血鬼である父親に差し出すために連れて来た、と言ったとしても、ボクは受け入れるかもしれない。
もちろん、そんなことは決してない。ボクの中でボラミーの存在は、それほどに大きくなっていた。
「あのとき、私が家を出たとき、弟を連れ出せなかったことが、ずっと心に引っかかっていた」
でも、それは仕方がないことだと思う。10歳の子どもが、さらに小さい子どもを連れて家を出るなんて。
「そうじゃない! ……弟を連れ出したら、追われるだろうと思った。父はビバイアを溺愛していたから。それで私は、ビバイアをあの館に置き去りにした。すべて私の利己的な計算だ」
ボラミーの言葉には、悔悟の念が強く感じられた。
「好きだったんだね、弟のこと」
「ああ、自分で言うのもなんだけど、仲の良い姉弟だったと思うよ」
ボクには、ニナ姉がいた。ニナ姉を頼って生きてきた。
その頃からたったひとりで生きてきたボラミーは、どんなに過酷な人生を歩んできたんだろう。
生きるために、必死に力と技を磨いたに違いない。
「あるとき、館に残した弟が病気になったと聞いた。父が治癒の手段を求めていると。それで私は、薬を探した。そうして、やっと手に入れたんだ。ロング・ナリクの大僧正が清めた、万病に効くという貴重な聖水だ」
ボラミーは、首にかけた木製の小瓶を握りしめた。ボラミーが前に言っていた「私の宝物」だ。
「私はこの薬を使って、弟の、ビバイアの病気を治してやりたい。そのためにあの館に行きたいんだ」
ボラミーの告白は終わった。
ボクはボラミーの腰に手を回し、その胸に顔をうずめた。
そして顔を上げると、ボラミーにそっと微笑んだ。
「どうして私に笑顔を向けるんだい? 私は、ミナに嘘をついてここまで連れてきたのに」
「ボクたち、似てるなって思って」
「似ている? 私とミナが?」
「うん。昔の取り返しのつかない出来事で、ずっと後悔してること。今、きょうだいを助けようとしていること」
「そうか。……そうかもしれないな」
「ボクはボラミーに感謝してる。ボラミーがいなかったら、ボクはここまで来られなかった。ボラミーに違う目的があるなんて関係ないよ」
「私も、ミナの不思議な魔法にはずいぶん助けられた。ミナがいなければ、ここまで来られなかった」
短い旅を通じて、ボクたちはもう、かけがえのない存在になっていたんだ。
「行こう、館へ。ボクたちのきょうだいを助けるために」
●アタック03-10 ボラミーの宝物
ボクが館に入る方法を思案していると、ボラミーは正面から堂々と入ればいいと、こともなげに言った。
「吸血鬼である父は白昼はすぐには起き出せないはずだ。それに、私は自分の家に帰るんだ。何の遠慮もいらないさ」
館の外観は、ボラミーが出て行った頃より、いっそう無気味なたたずまいになっているという。
それでもボラミーはためらうことなく玄関のノッカーを叩く。
反応ないのかな、と思うほどの間があって、ようやく中から人の動く気配がした。
やがて扉が重々しく開く。出てきたのは、背の曲がった中年の男性だ。おそらく使用人だろう。
「こんなへんぴなところにお客さんとは珍しい。どうなされましたかな?」
「見ない顔だな。新しい使用人か?」
ボラミーが問いかける。
「何をおっしゃいますやら。もう何年もここで働いておりますが」
「そうか。失礼した。私の不在が長すぎたのだな」
そうしてボラミーは告げた。
「私はボラミー・ローズ。弟のビバイアに会うために帰ってきた。取り次いでもらいたい」
「ビバイア様に……」
使用人は目を伏せた。
「ビバイア様は……亡くなられました」
「えっ」と短く反応し、ボラミーは絶句した。ボクも発する言葉がない。
「案内しましょう。こちらです」
使用人は館の外をぐるりと回る。ボクとボラミーは無言でついていく。
裏庭の隅に、盛り土があった。
「ビバイア様が亡くなられたのはほんの数日前でございました。あの、死者の跋扈する墓所へ埋葬するわけにもいかず、こちらへ」
盛り土の上部を払うとまだ新しい石板が顔をのぞかせた。
「ビバイア・ローズ 享年16」と刻まれている。
ボラミーは肩を震わせ、その場にかがみこんだ。
「ビバイア……ああ、ビバイア。もっと、もっと早くに来ていれば……」
ボラミーの言葉は、悔やんでも悔やみきれない思いを吐露したものだった。
「ビバイアの病を治す薬を、やっと見つけたというのに、間に合わなかった……」
「ボラミー……」
「……! こんなもの!!」
ボラミーは木製の瓶を首から外すと、思い切り地面に叩きつけようとし……握りしめたその手を震わせながら、止めた。
そうして、それをそっと墓前に置いた。
「私はビバイアに謝りたかった。彼を置いて、ひとりで家を出てしまったことを。しかしその機会は永遠に失われてしまった……!」
ボラミーの言葉は、誰に向けられたものでもない。
「私は治癒薬を用意し謝罪をすることで、贖罪になると思おうとしていた。できなくなってわかった。私が犯した許しがたい罪を。ビバイアを置いて行くべきではなかった」
ボクには、かける言葉が見つからない。
背の曲がった使用人がボラミーに声をかけた。
「お部屋をごらんになりますか?」
「あ……ああ。頼む」
ボラミーは涙声で返答する。使用人の案内でボラミーが館に戻っていくのを、ボクは見送った。
ボクはある決意をすると、ビバイアの墓前に置いてある木製の聖水の小瓶を拾い上げ、ボラミーの後を追った。
館に入り、1階にあるビバイアの部屋へと向かう。
案内がなくても、ボクの頭の中にある未来の思い出が、だいたいの場所を把握している。
ボラミーはその部屋にいた。使用人の姿は見えない。
ボラミーはしゃがんで、日記帳を読みふけっていた。ビバイアが書き残した日記だ。
そこには、元気だった頃のビバイアのことが、ビバイアの言葉で書かれている。
特に、姉がいなくなった時のショックと、病気になった時の嘆きが印象に強く残る。
最後のページには、ビバイアであろう少年が、姉と一緒に笑顔で手を繋いでいるイラストがあった。
幼い頃のビバイアが描いたものだろうか。
ボラミーの頬から涙がこぼれ落ち、姉弟のイラストを濡らした。
「ボラミー」
ボクはボラミーに声をかけた。
「『宝物』は、簡単に手放しちゃダメ」
「ミナ……。ありがとう。でももう……いらないんだ」
「違うよ。この聖水があるから、ビバイアを助けられる」
ボクはボラミーの木製の瓶を手に、言った。
「ミナ、何を言ってるんだ。ビバイアはもう……」
「ボラミーがこの聖水を手に入れてきたから。聖水がここにあるから、助けられるんだ。ボクの魔法の力で」
ボクはボラミーに伝えた。
「ボクの魔法は時を操る。これからビバイアが亡くなる前に戻って、聖水を飲ませてくる。ビバイアが生き延びたら、今起きている出来事は全部、悪夢になって消えるから」
<跳兎の懐中時計>を取り出し、動かす。
<跳兎の懐中時計>は、悪夢袋を2つ使う。残りの悪夢袋の数を考えると、エナ姉とティナ姉を助ける時に使える魔法の回数に不安はある。
けど、今使わなくて、いつ使うんだ。
ボクはボラミーがここまでやってきたことを、無駄にさせたくない。
懐中時計は、オルゴールが跳ねるような軽快な針音を響かせ始めた。ボクは跳んだ。過去へと。ビバイアがまだ生きている時へと。
●アタック03-11 ふたつの再会
薄暗い部屋だ。
苦しげなうめき声が聞こえる。
<跳兎の懐中時計>は、場所までは移動できない。
だからここは、ビバイアの部屋だ。
ベッドに横たわり、死の時をただ待つばかりのようなやせ細った若者が、ビバイアなのだろう。
その目からはすでに生気が失われており、口からはよだれが垂れている。
ボクはベッドのそばに寄った。
「あなた……は?」
ビバイアは怪訝な声を出す。その声には恐怖が混じっている。
突然現れた正体不明のボクに、警戒心を抱いている。
「ボクはミナ。君のお姉さんに頼まれて、これを届けに来たんだ」
ボクはビバイアの警戒心を解きたくて、やさしい口調で伝えた。
木製の瓶を取り出す。
「これはボラミーが君の病を癒すために手に入れた、万病に効く聖水。ボラミーはまだ来られないから、ボクが先に届けに来たんだ」
「ボラミー……姉さんが?」
「うん。君のこと、とっても心配してたよ」
「そうか……。ああ、姉さん、会いたいよ……」
ビバイアはボクから木製の瓶を受け取ろうとして、うまく受け取れずに落としてしまった。
「ミナ。すまないけど、その聖水を私に飲ませてくれないか?」
「……いいの?」
「ああ。私にはどのみち先はない。だからミナの言うことを信じてみる」
ボクはビバイアに口を開けてもらい、瓶の中の液体を、口元に少しずつ流していく。
「こぼさないで。飲み込んで」
ごくり、とビバイアの喉が鳴った。こくこくと、少しずつ飲んでいく。
聖水の効果はてきめんだった。
さっきまでの苦しそうな表情はおだやかになっていく。眠気も出てきたようだ。
「じゃあ、ビバイア。ボクは行くから。ボラミーは必ず君に会いに来るから、待っていて」
ビバイアはすぐに安らかな寝息を立て始めた。
ボクがほっと気を抜いたところで、魔法の効果が切れた。
一瞬で現在に戻ってくる。
現在のビバイアの部屋。
そこは、ボラミーとビバイアの再会の瞬間だった。
場面転換が急すぎて、事態を把握するのに数秒かかった。
ボラミーが手に入れてきた聖水の効果は本物だった。ビバイアは助かったんだ。
「姉さん、ボラミー姉さん、会いたかった……!」
「私もだビバイア。お前を置いて家を出たことを後悔しない日はなかった。すまない。すまない……」
ボクが<跳兎の懐中時計>で過去を変えて、ビバイアが死んだことを「なかったことにした」。
だから今、再会を喜んでいるボラミーは、ビバイアが死んで悲しみと絶望に打ちのめされていたことを覚えていない。ボクが何をしたのかも知らない。
でも、それでいい。
ボクは、再会を喜びあうふたりからそっと離れると、ひとりで部屋を出た。
ひとりになったボクが向かったのは、館の地下だ。
ボラミーはビバイアとの再会を果たした。今度はボクが、姉を助ける番だ。
地下のワイン蔵。そこにティナ姉がいる。そのことをボクはもう「知っている」。
すでに何度も経験してきた、未来の出来事だから。
たしかめるように、ワイン樽のコックをひねる。
そこから流れ出るものは、ワインではなく血だった。
それだけで、十分だった。中身はもう、見たくなかった。
この中に、このワイン樽の中に、血を抜かれた、ティナ姉の無惨な遺体が入っている。
ボラミーとビバイアの父、吸血鬼マルティン・ローズ。彼の仕業だ。
マルティンはビバイアの治療のため、エルフの生き血を欲していた。そのため、ティナ姉を拷問にかけ、血を流させ、殺した。
ボクは、脳裏に焼き付いたティナ姉のむごたらしい姿を振り払うと、もう一度<跳兎の懐中時計>を取り出した。
ボクは諦めない。今度は、ティナ姉が生きている頃まで戻り、姉を救うんだ。
<跳兎の懐中時計>が再び時を刻み始める。ボクは過去へと跳躍する。
行き先は、10日前。闇エルフたちがエナ姉とティナ姉をここに売り払った後、そしてビバイアが本来亡くなっていただろう日の間だ。
悪夢袋は残り4つ。ここで<跳兎の懐中時計>を使えば、残りは2つ。それでも、ここが使いどきだ。
10日前のワイン蔵は、ほとんど変わらない風景だった。
ただ、血のワイン樽はまだ置かれていなかった。
ということは、ティナ姉はまだ生きている。
どこにいるのか、それもわかっている。
ボクは、闇エルフの隠れ里の長ネフェルロックから聞き出した地下の拷問部屋を探し、隠し扉を開いた。
ティナ姉が、そこにいた。縛られて、猿ぐつわをかまされ、でもまだ、生きていた。血は抜かれていない。
時間はあまりない。ボクは自分が未来に戻ってしまう前に、できることをしなければならない。
急いで、ティナ姉の拘束を解いた。
「……ミナ? どうしてこんなところに?」
ティナ姉は、肌の色が変わっていても、10年以上会っていなくても、すぐにボクだとわかってくれた。
「ようやく見つけた。ティナ姉を、助けにきたよ」
「まさかミナ、あなたが来てくれるなんて思わなかった」
ボクはティナ姉をきつく抱きしめ、お互いの存在を確かめ合った。
たくさん話したいことがある。あれからのこと。ニナ姉と一緒に姉たちを探してきたこと。
けれど、時間がない。ボクがここにいられるのはあとわずかだ。
ボクが現在に戻ったら、ティナ姉はここに取り残されてしまう。
ティナ姉が生き残れるために、ボクにできること。
ボクは荷物の中から、ありったけの非常食を置いた。
「よく聞いて。館の中も、外の森も危険だ。どこかに隠れて10日間やり過ごして。10日後に必ず会いに来るから」
「ミナ、あなたはどうするの?」
「ボクは一緒に行けない。特別な魔法の力でここにいるんだ。だから……」
ティナ姉はうなずいた。そしてボクに言った。
「エナは、森のゴルジュに連れて行かれた。『血をきれいにする』とあの吸血鬼が言っていた」
「ありがとう。ティナ姉。もしどうしても追い詰められたら、この館の1階に住むビバイアを訪ねて。ボクの名前を出せば、もしかしたらかくまってくれるかも」
確証はない。今の時点で病からどれほど回復しているかもわからない。彼はボクの名前をおぼえているだろうか。
そこで景色が変わった。無人の拷問室だ。
現在に戻ったんだ。
ティナ姉は逃げのびただろうか。
ワイン蔵に戻ると、血入りのワイン樽は置かれていなかった。
よかった。ティナ姉は無事に逃げられているみたいだ。
そこに、コツコツと甲高い靴音を立てながら何者かが階段を降りてくる。
ボラミーの靴音ではない。それが誰のものなのか、ボクは理解していた。
ローズ家のあるじ。吸血鬼マルティン・ローズ。
ボクはうす暗いワイン蔵で、彼との対峙の時を迎えた。
次回、マルティンとの決着。そして舞台はゴルジュへ。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6→4→2/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
闇神の戯れによる時の巻き戻しに気づき一度は絶望しますが、ボラミーという随伴者を得て、脆く壊れそうな心を奮い立たせます。
ボラミーとの関係を深めながら旅は続き、いよいよ目的のローズ家の館へ。
そのときボラミーが語り始めたこととは……。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
●アタック03-9 ボラミーの告白
「ミナに、話しておくことがある」
そう切り出したボラミーだが、その次の言葉がなかなか出てこなかった。
言いにくいことを、言葉を選びながら伝えようとしていることがわかった。
「私は幼い頃、あの館で暮らしていたんだ。ビバイアという弟と一緒に」
ボクは黙って、ボラミーの話の続きを待つ。
「ミナのお姉さんたちを買い取ったローズ家のあるじ、マルティン・ローズは、私の父親なんだ」
それは、ボクに伝えるには、あまりにも話しづらいことだっただろう。
それでも、話してくれた。ボクは話の内容の衝撃よりも、ボラミーがそう決意してくれたことの方がうれしかった。
「父は私が幼い頃、自分の意思で吸血鬼になった。私は、様子がすっかり変わってしまった父に恐怖を抱いて、家を出たんだ。まだ10歳になるかという年だった」
ボラミーがボクと一緒に旅をしてくれたのは、ボクのことが心配だっただけじゃなかった。
きっと、父親がボクの姉たちにしたことに、責任を感じていたんだ。
「もちろん、贖罪の気持ちはあった。けれど、それだけじゃない。信じてほしいとは言わないけれど」
そんなこと、言われるまでもない。
事情はどうあれ、ボラミーがいなければ、ボクはここに来られるだけの心の強さを持てなかった。
ボラミーの存在に、どれほど助けられたことか。
もしボラミーがボクを、吸血鬼である父親に差し出すために連れて来た、と言ったとしても、ボクは受け入れるかもしれない。
もちろん、そんなことは決してない。ボクの中でボラミーの存在は、それほどに大きくなっていた。
「あのとき、私が家を出たとき、弟を連れ出せなかったことが、ずっと心に引っかかっていた」
でも、それは仕方がないことだと思う。10歳の子どもが、さらに小さい子どもを連れて家を出るなんて。
「そうじゃない! ……弟を連れ出したら、追われるだろうと思った。父はビバイアを溺愛していたから。それで私は、ビバイアをあの館に置き去りにした。すべて私の利己的な計算だ」
ボラミーの言葉には、悔悟の念が強く感じられた。
「好きだったんだね、弟のこと」
「ああ、自分で言うのもなんだけど、仲の良い姉弟だったと思うよ」
ボクには、ニナ姉がいた。ニナ姉を頼って生きてきた。
その頃からたったひとりで生きてきたボラミーは、どんなに過酷な人生を歩んできたんだろう。
生きるために、必死に力と技を磨いたに違いない。
「あるとき、館に残した弟が病気になったと聞いた。父が治癒の手段を求めていると。それで私は、薬を探した。そうして、やっと手に入れたんだ。ロング・ナリクの大僧正が清めた、万病に効くという貴重な聖水だ」
ボラミーは、首にかけた木製の小瓶を握りしめた。ボラミーが前に言っていた「私の宝物」だ。
「私はこの薬を使って、弟の、ビバイアの病気を治してやりたい。そのためにあの館に行きたいんだ」
ボラミーの告白は終わった。
ボクはボラミーの腰に手を回し、その胸に顔をうずめた。
そして顔を上げると、ボラミーにそっと微笑んだ。
「どうして私に笑顔を向けるんだい? 私は、ミナに嘘をついてここまで連れてきたのに」
「ボクたち、似てるなって思って」
「似ている? 私とミナが?」
「うん。昔の取り返しのつかない出来事で、ずっと後悔してること。今、きょうだいを助けようとしていること」
「そうか。……そうかもしれないな」
「ボクはボラミーに感謝してる。ボラミーがいなかったら、ボクはここまで来られなかった。ボラミーに違う目的があるなんて関係ないよ」
「私も、ミナの不思議な魔法にはずいぶん助けられた。ミナがいなければ、ここまで来られなかった」
短い旅を通じて、ボクたちはもう、かけがえのない存在になっていたんだ。
「行こう、館へ。ボクたちのきょうだいを助けるために」
●アタック03-10 ボラミーの宝物
ボクが館に入る方法を思案していると、ボラミーは正面から堂々と入ればいいと、こともなげに言った。
「吸血鬼である父は白昼はすぐには起き出せないはずだ。それに、私は自分の家に帰るんだ。何の遠慮もいらないさ」
館の外観は、ボラミーが出て行った頃より、いっそう無気味なたたずまいになっているという。
それでもボラミーはためらうことなく玄関のノッカーを叩く。
反応ないのかな、と思うほどの間があって、ようやく中から人の動く気配がした。
やがて扉が重々しく開く。出てきたのは、背の曲がった中年の男性だ。おそらく使用人だろう。
「こんなへんぴなところにお客さんとは珍しい。どうなされましたかな?」
「見ない顔だな。新しい使用人か?」
ボラミーが問いかける。
「何をおっしゃいますやら。もう何年もここで働いておりますが」
「そうか。失礼した。私の不在が長すぎたのだな」
そうしてボラミーは告げた。
「私はボラミー・ローズ。弟のビバイアに会うために帰ってきた。取り次いでもらいたい」
「ビバイア様に……」
使用人は目を伏せた。
「ビバイア様は……亡くなられました」
「えっ」と短く反応し、ボラミーは絶句した。ボクも発する言葉がない。
「案内しましょう。こちらです」
使用人は館の外をぐるりと回る。ボクとボラミーは無言でついていく。
裏庭の隅に、盛り土があった。
「ビバイア様が亡くなられたのはほんの数日前でございました。あの、死者の跋扈する墓所へ埋葬するわけにもいかず、こちらへ」
盛り土の上部を払うとまだ新しい石板が顔をのぞかせた。
「ビバイア・ローズ 享年16」と刻まれている。
ボラミーは肩を震わせ、その場にかがみこんだ。
「ビバイア……ああ、ビバイア。もっと、もっと早くに来ていれば……」
ボラミーの言葉は、悔やんでも悔やみきれない思いを吐露したものだった。
「ビバイアの病を治す薬を、やっと見つけたというのに、間に合わなかった……」
「ボラミー……」
「……! こんなもの!!」
ボラミーは木製の瓶を首から外すと、思い切り地面に叩きつけようとし……握りしめたその手を震わせながら、止めた。
そうして、それをそっと墓前に置いた。
「私はビバイアに謝りたかった。彼を置いて、ひとりで家を出てしまったことを。しかしその機会は永遠に失われてしまった……!」
ボラミーの言葉は、誰に向けられたものでもない。
「私は治癒薬を用意し謝罪をすることで、贖罪になると思おうとしていた。できなくなってわかった。私が犯した許しがたい罪を。ビバイアを置いて行くべきではなかった」
ボクには、かける言葉が見つからない。
背の曲がった使用人がボラミーに声をかけた。
「お部屋をごらんになりますか?」
「あ……ああ。頼む」
ボラミーは涙声で返答する。使用人の案内でボラミーが館に戻っていくのを、ボクは見送った。
ボクはある決意をすると、ビバイアの墓前に置いてある木製の聖水の小瓶を拾い上げ、ボラミーの後を追った。
館に入り、1階にあるビバイアの部屋へと向かう。
案内がなくても、ボクの頭の中にある未来の思い出が、だいたいの場所を把握している。
ボラミーはその部屋にいた。使用人の姿は見えない。
ボラミーはしゃがんで、日記帳を読みふけっていた。ビバイアが書き残した日記だ。
そこには、元気だった頃のビバイアのことが、ビバイアの言葉で書かれている。
特に、姉がいなくなった時のショックと、病気になった時の嘆きが印象に強く残る。
最後のページには、ビバイアであろう少年が、姉と一緒に笑顔で手を繋いでいるイラストがあった。
幼い頃のビバイアが描いたものだろうか。
ボラミーの頬から涙がこぼれ落ち、姉弟のイラストを濡らした。
「ボラミー」
ボクはボラミーに声をかけた。
「『宝物』は、簡単に手放しちゃダメ」
「ミナ……。ありがとう。でももう……いらないんだ」
「違うよ。この聖水があるから、ビバイアを助けられる」
ボクはボラミーの木製の瓶を手に、言った。
「ミナ、何を言ってるんだ。ビバイアはもう……」
「ボラミーがこの聖水を手に入れてきたから。聖水がここにあるから、助けられるんだ。ボクの魔法の力で」
ボクはボラミーに伝えた。
「ボクの魔法は時を操る。これからビバイアが亡くなる前に戻って、聖水を飲ませてくる。ビバイアが生き延びたら、今起きている出来事は全部、悪夢になって消えるから」
<跳兎の懐中時計>を取り出し、動かす。
<跳兎の懐中時計>は、悪夢袋を2つ使う。残りの悪夢袋の数を考えると、エナ姉とティナ姉を助ける時に使える魔法の回数に不安はある。
けど、今使わなくて、いつ使うんだ。
ボクはボラミーがここまでやってきたことを、無駄にさせたくない。
懐中時計は、オルゴールが跳ねるような軽快な針音を響かせ始めた。ボクは跳んだ。過去へと。ビバイアがまだ生きている時へと。
●アタック03-11 ふたつの再会
薄暗い部屋だ。
苦しげなうめき声が聞こえる。
<跳兎の懐中時計>は、場所までは移動できない。
だからここは、ビバイアの部屋だ。
ベッドに横たわり、死の時をただ待つばかりのようなやせ細った若者が、ビバイアなのだろう。
その目からはすでに生気が失われており、口からはよだれが垂れている。
ボクはベッドのそばに寄った。
「あなた……は?」
ビバイアは怪訝な声を出す。その声には恐怖が混じっている。
突然現れた正体不明のボクに、警戒心を抱いている。
「ボクはミナ。君のお姉さんに頼まれて、これを届けに来たんだ」
ボクはビバイアの警戒心を解きたくて、やさしい口調で伝えた。
木製の瓶を取り出す。
「これはボラミーが君の病を癒すために手に入れた、万病に効く聖水。ボラミーはまだ来られないから、ボクが先に届けに来たんだ」
「ボラミー……姉さんが?」
「うん。君のこと、とっても心配してたよ」
「そうか……。ああ、姉さん、会いたいよ……」
ビバイアはボクから木製の瓶を受け取ろうとして、うまく受け取れずに落としてしまった。
「ミナ。すまないけど、その聖水を私に飲ませてくれないか?」
「……いいの?」
「ああ。私にはどのみち先はない。だからミナの言うことを信じてみる」
ボクはビバイアに口を開けてもらい、瓶の中の液体を、口元に少しずつ流していく。
「こぼさないで。飲み込んで」
ごくり、とビバイアの喉が鳴った。こくこくと、少しずつ飲んでいく。
聖水の効果はてきめんだった。
さっきまでの苦しそうな表情はおだやかになっていく。眠気も出てきたようだ。
「じゃあ、ビバイア。ボクは行くから。ボラミーは必ず君に会いに来るから、待っていて」
ビバイアはすぐに安らかな寝息を立て始めた。
ボクがほっと気を抜いたところで、魔法の効果が切れた。
一瞬で現在に戻ってくる。
現在のビバイアの部屋。
そこは、ボラミーとビバイアの再会の瞬間だった。
場面転換が急すぎて、事態を把握するのに数秒かかった。
ボラミーが手に入れてきた聖水の効果は本物だった。ビバイアは助かったんだ。
「姉さん、ボラミー姉さん、会いたかった……!」
「私もだビバイア。お前を置いて家を出たことを後悔しない日はなかった。すまない。すまない……」
ボクが<跳兎の懐中時計>で過去を変えて、ビバイアが死んだことを「なかったことにした」。
だから今、再会を喜んでいるボラミーは、ビバイアが死んで悲しみと絶望に打ちのめされていたことを覚えていない。ボクが何をしたのかも知らない。
でも、それでいい。
ボクは、再会を喜びあうふたりからそっと離れると、ひとりで部屋を出た。
ひとりになったボクが向かったのは、館の地下だ。
ボラミーはビバイアとの再会を果たした。今度はボクが、姉を助ける番だ。
地下のワイン蔵。そこにティナ姉がいる。そのことをボクはもう「知っている」。
すでに何度も経験してきた、未来の出来事だから。
たしかめるように、ワイン樽のコックをひねる。
そこから流れ出るものは、ワインではなく血だった。
それだけで、十分だった。中身はもう、見たくなかった。
この中に、このワイン樽の中に、血を抜かれた、ティナ姉の無惨な遺体が入っている。
ボラミーとビバイアの父、吸血鬼マルティン・ローズ。彼の仕業だ。
マルティンはビバイアの治療のため、エルフの生き血を欲していた。そのため、ティナ姉を拷問にかけ、血を流させ、殺した。
ボクは、脳裏に焼き付いたティナ姉のむごたらしい姿を振り払うと、もう一度<跳兎の懐中時計>を取り出した。
ボクは諦めない。今度は、ティナ姉が生きている頃まで戻り、姉を救うんだ。
<跳兎の懐中時計>が再び時を刻み始める。ボクは過去へと跳躍する。
行き先は、10日前。闇エルフたちがエナ姉とティナ姉をここに売り払った後、そしてビバイアが本来亡くなっていただろう日の間だ。
悪夢袋は残り4つ。ここで<跳兎の懐中時計>を使えば、残りは2つ。それでも、ここが使いどきだ。
10日前のワイン蔵は、ほとんど変わらない風景だった。
ただ、血のワイン樽はまだ置かれていなかった。
ということは、ティナ姉はまだ生きている。
どこにいるのか、それもわかっている。
ボクは、闇エルフの隠れ里の長ネフェルロックから聞き出した地下の拷問部屋を探し、隠し扉を開いた。
ティナ姉が、そこにいた。縛られて、猿ぐつわをかまされ、でもまだ、生きていた。血は抜かれていない。
時間はあまりない。ボクは自分が未来に戻ってしまう前に、できることをしなければならない。
急いで、ティナ姉の拘束を解いた。
「……ミナ? どうしてこんなところに?」
ティナ姉は、肌の色が変わっていても、10年以上会っていなくても、すぐにボクだとわかってくれた。
「ようやく見つけた。ティナ姉を、助けにきたよ」
「まさかミナ、あなたが来てくれるなんて思わなかった」
ボクはティナ姉をきつく抱きしめ、お互いの存在を確かめ合った。
たくさん話したいことがある。あれからのこと。ニナ姉と一緒に姉たちを探してきたこと。
けれど、時間がない。ボクがここにいられるのはあとわずかだ。
ボクが現在に戻ったら、ティナ姉はここに取り残されてしまう。
ティナ姉が生き残れるために、ボクにできること。
ボクは荷物の中から、ありったけの非常食を置いた。
「よく聞いて。館の中も、外の森も危険だ。どこかに隠れて10日間やり過ごして。10日後に必ず会いに来るから」
「ミナ、あなたはどうするの?」
「ボクは一緒に行けない。特別な魔法の力でここにいるんだ。だから……」
ティナ姉はうなずいた。そしてボクに言った。
「エナは、森のゴルジュに連れて行かれた。『血をきれいにする』とあの吸血鬼が言っていた」
「ありがとう。ティナ姉。もしどうしても追い詰められたら、この館の1階に住むビバイアを訪ねて。ボクの名前を出せば、もしかしたらかくまってくれるかも」
確証はない。今の時点で病からどれほど回復しているかもわからない。彼はボクの名前をおぼえているだろうか。
そこで景色が変わった。無人の拷問室だ。
現在に戻ったんだ。
ティナ姉は逃げのびただろうか。
ワイン蔵に戻ると、血入りのワイン樽は置かれていなかった。
よかった。ティナ姉は無事に逃げられているみたいだ。
そこに、コツコツと甲高い靴音を立てながら何者かが階段を降りてくる。
ボラミーの靴音ではない。それが誰のものなのか、ボクは理解していた。
ローズ家のあるじ。吸血鬼マルティン・ローズ。
ボクはうす暗いワイン蔵で、彼との対峙の時を迎えた。
次回、マルティンとの決着。そして舞台はゴルジュへ。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋6→4→2/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<沙羅双樹の予知時計>いつでも選択肢の先の未来を予知できる。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。ミナとともに森へと赴く。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
マイトレーヤ 時計塔を守るゴーレム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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2025年11月25日火曜日
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第48回 FT新聞 No.4689
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第48回
「吸血鬼」
(中山将平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
おはようございます。
久しぶりに「カエル人が教えてくれたファンタジー創作」の記事を書こうかなという気持ちになった、イラストレーターの中山将平です。
実は来年の1月より僕個人として「ギルド黄金の蛙」という新サークルを立ち上げることになりました。
これは今後、各種即売会にてカエル人の書籍やグッズを扱うサークルです。
つまり、これまで「イラストレーター中山将平」や「カエルの勇者ケロナイツ」をサークル名としていた活動に、より気に入った名前を付けることにした、というご報告です!!
名前を付けたことで、参加即売会を増やし、ちょっとしっかり活動しようと計画しています。
ちなみに、前回12月のイベントに間に合わせたいとお伝えしていた書籍は結局時間が足らず、1月11日(日)の「スーパーコミックシティ関西31」にて刊行となりました。
FT書房の活動もおよそこれまで通り参加する予定でして、不思議なことに関西のイベントの多くでは「FT書房」と「ギルド黄金の蛙」が両方出展する状況となりそうです。
引き続き何卒応援をいただけますと幸いです。
さて、「ギルド黄金の蛙」のお話はこれくらいにしておきまして、今日の話題は「吸血鬼」。
この話題、「いやいや、もはやカエル人関係なくない!?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、僕自身はというと、そうは感じていません。
カエル人の創作を通じて新たなファンタジー世界を構築する過程で、「吸血鬼」の設定は避けては通れないものなのだと気づかされました。
そこで今回は、この経験を通じてどのような学びがあったのか、ご紹介したいと思います。
ファンタジーを楽しまれている方にとって、有意義な記事にできれば幸いです。
早速具体的に見ていきましょう。
◆ 結論
今日お伝えしたいことは次の2点です。
・吸血鬼がどんな存在なのかは作品ごとにかなり違い、そのどれかだけが求められているわけではないと感じる。
・吸血鬼を特別にしているものは、吸血という行為ではないかと感じる。
ええ、いつも通り、結論から書きました。
それぞれどういう意味か、深堀りしてまいります。
◆ 「吸血鬼がどんな存在なのかは作品ごとにかなり違い、そのどれかだけが求められているわけではないと感じる」件について
まずは先述の結論のうち、前者についてお話ししましょう。
僕は「呪われた血族の牙城」というローグライクハーフのシナリオを書いてしまうほど、吸血鬼が好きです。
そのため、自分でファンタジー世界を作る際にも必ず「吸血鬼」を描きたいと願っていました。
しかし、「いざ描くぞ」という状況になって大いに悩むことになったのです。
それは、どのように表現するか、選択肢が多すぎると感じたからでした。
知れば知るほど、描かれるファンタジー作品によって、吸血鬼の性質や描かれ方が大きく違うように思えてきたのです。
僕の大好きなあるファンタジー世界では、吸血鬼は独自の種族であり、正確にはアンデッド(一度死んで甦った存在)ではありませんでした。
彼らはネクロマンサー(死霊術師)であり、アンデッドを使役する存在だったのです。
別の作品では、吸血鬼は強大なアンデッドであり、通常の武器では傷つけられない存在として描かれていました。
更にある作品では、吸血鬼は階層社会を形成する凶暴な一族で、吸血によって手下を増やしつつ、自種族の繁栄を目的に行動する種族とされていました。
ほかにも、「呪いによって吸血が必要となったものの精神性は人間的なため苦悩する怪物」や「人間社会にまぎれてはいるが、実際は人間を食物と見なしている捕食者」等などの設定を見たことがあります。
いわゆる西洋ファンタジー的な世界観での吸血鬼だけでも豊かなバリエーションがあるのではないでしょうか。
これに他の地域の吸血鬼を合わせると、もはや状況は混沌(カオティック……もしくはケイオス)という他ない気がします。
しかも、これだけ多くの描かれ方をしているということは、作品ごとに「求められる吸血鬼像」自体が多様なのだと思えてなりません。
実際、吸血鬼に様々な氏族を作り、その種類ごとに性質(吸血鬼像)を変えている作品もありました。
この状況を見て、僕は「書かなければならない吸血鬼像(お約束の吸血鬼モデル)」というものはものは存在しないのではないかと考えています。
耽美を感じさせる吸血鬼も、ほとんど血に飢えた獣同然である小汚い吸血鬼も、葛藤に苦悩する吸血鬼も、サディスティックで他者に痛みを与えることに愉悦を感じる吸血鬼も、どれもあり得る形態なのではないでしょうか。
◆ 「吸血鬼を特別にしているものは、吸血という行為ではないかと感じる」件について
続いて、先述の結論のうち後者についてお話ししましょう。
もはやどのような描かれ方も許容されるように思えた吸血鬼というものを、自分の創作においてどんな存在と定めるのか、というお話でもあります。
様々な吸血鬼像を知ったうえで、どれを選択するか悩むことになりますが、僕の中では2つ思考の柱となったものがありました。
一つは、吸血鬼が吸血鬼であるのは、吸血するからだという考え。
どんな吸血鬼も血を吸うことはさすがに前提だと感じました。
で、あれば、その血を吸う行為の意味によって吸血鬼を定めうると感じたのです。
吸血は捕食なのか、奴隷契約なのか、歪んだ愛情表現なのか、呪いなのか、それとも他の何かなのか。
もう一つは、自分の作品のテーマとの整合性。
僕が作るカエル人の世界フログワルドでは、吸血鬼は血を吸う様々な種族の総称であり、その中には吸血コウモリ人などがいる設定となりました。
これは、フログワルドを「人間種族(ヒューマン・ドワーフ・エルフなど)を特別な存在として描かない世界観にしたい」というテーマ性から作った設定です。
◆ まとめ
今日は吸血鬼について考えたことをつらつらと書いてみました。
以前ドラゴンについて書いたときも楽しかったので、もし反響をいただけるようでしたら、このようなファンタジー要素についての話も描いてみようかなと考えています。
それでは、今日はそろそろこのあたりで。
よきファンタジー・ライフを。
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カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第48回
「吸血鬼」
(中山将平)
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おはようございます。
久しぶりに「カエル人が教えてくれたファンタジー創作」の記事を書こうかなという気持ちになった、イラストレーターの中山将平です。
実は来年の1月より僕個人として「ギルド黄金の蛙」という新サークルを立ち上げることになりました。
これは今後、各種即売会にてカエル人の書籍やグッズを扱うサークルです。
つまり、これまで「イラストレーター中山将平」や「カエルの勇者ケロナイツ」をサークル名としていた活動に、より気に入った名前を付けることにした、というご報告です!!
名前を付けたことで、参加即売会を増やし、ちょっとしっかり活動しようと計画しています。
ちなみに、前回12月のイベントに間に合わせたいとお伝えしていた書籍は結局時間が足らず、1月11日(日)の「スーパーコミックシティ関西31」にて刊行となりました。
FT書房の活動もおよそこれまで通り参加する予定でして、不思議なことに関西のイベントの多くでは「FT書房」と「ギルド黄金の蛙」が両方出展する状況となりそうです。
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さて、「ギルド黄金の蛙」のお話はこれくらいにしておきまして、今日の話題は「吸血鬼」。
この話題、「いやいや、もはやカエル人関係なくない!?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、僕自身はというと、そうは感じていません。
カエル人の創作を通じて新たなファンタジー世界を構築する過程で、「吸血鬼」の設定は避けては通れないものなのだと気づかされました。
そこで今回は、この経験を通じてどのような学びがあったのか、ご紹介したいと思います。
ファンタジーを楽しまれている方にとって、有意義な記事にできれば幸いです。
早速具体的に見ていきましょう。
◆ 結論
今日お伝えしたいことは次の2点です。
・吸血鬼がどんな存在なのかは作品ごとにかなり違い、そのどれかだけが求められているわけではないと感じる。
・吸血鬼を特別にしているものは、吸血という行為ではないかと感じる。
ええ、いつも通り、結論から書きました。
それぞれどういう意味か、深堀りしてまいります。
◆ 「吸血鬼がどんな存在なのかは作品ごとにかなり違い、そのどれかだけが求められているわけではないと感じる」件について
まずは先述の結論のうち、前者についてお話ししましょう。
僕は「呪われた血族の牙城」というローグライクハーフのシナリオを書いてしまうほど、吸血鬼が好きです。
そのため、自分でファンタジー世界を作る際にも必ず「吸血鬼」を描きたいと願っていました。
しかし、「いざ描くぞ」という状況になって大いに悩むことになったのです。
それは、どのように表現するか、選択肢が多すぎると感じたからでした。
知れば知るほど、描かれるファンタジー作品によって、吸血鬼の性質や描かれ方が大きく違うように思えてきたのです。
僕の大好きなあるファンタジー世界では、吸血鬼は独自の種族であり、正確にはアンデッド(一度死んで甦った存在)ではありませんでした。
彼らはネクロマンサー(死霊術師)であり、アンデッドを使役する存在だったのです。
別の作品では、吸血鬼は強大なアンデッドであり、通常の武器では傷つけられない存在として描かれていました。
更にある作品では、吸血鬼は階層社会を形成する凶暴な一族で、吸血によって手下を増やしつつ、自種族の繁栄を目的に行動する種族とされていました。
ほかにも、「呪いによって吸血が必要となったものの精神性は人間的なため苦悩する怪物」や「人間社会にまぎれてはいるが、実際は人間を食物と見なしている捕食者」等などの設定を見たことがあります。
いわゆる西洋ファンタジー的な世界観での吸血鬼だけでも豊かなバリエーションがあるのではないでしょうか。
これに他の地域の吸血鬼を合わせると、もはや状況は混沌(カオティック……もしくはケイオス)という他ない気がします。
しかも、これだけ多くの描かれ方をしているということは、作品ごとに「求められる吸血鬼像」自体が多様なのだと思えてなりません。
実際、吸血鬼に様々な氏族を作り、その種類ごとに性質(吸血鬼像)を変えている作品もありました。
この状況を見て、僕は「書かなければならない吸血鬼像(お約束の吸血鬼モデル)」というものはものは存在しないのではないかと考えています。
耽美を感じさせる吸血鬼も、ほとんど血に飢えた獣同然である小汚い吸血鬼も、葛藤に苦悩する吸血鬼も、サディスティックで他者に痛みを与えることに愉悦を感じる吸血鬼も、どれもあり得る形態なのではないでしょうか。
◆ 「吸血鬼を特別にしているものは、吸血という行為ではないかと感じる」件について
続いて、先述の結論のうち後者についてお話ししましょう。
もはやどのような描かれ方も許容されるように思えた吸血鬼というものを、自分の創作においてどんな存在と定めるのか、というお話でもあります。
様々な吸血鬼像を知ったうえで、どれを選択するか悩むことになりますが、僕の中では2つ思考の柱となったものがありました。
一つは、吸血鬼が吸血鬼であるのは、吸血するからだという考え。
どんな吸血鬼も血を吸うことはさすがに前提だと感じました。
で、あれば、その血を吸う行為の意味によって吸血鬼を定めうると感じたのです。
吸血は捕食なのか、奴隷契約なのか、歪んだ愛情表現なのか、呪いなのか、それとも他の何かなのか。
もう一つは、自分の作品のテーマとの整合性。
僕が作るカエル人の世界フログワルドでは、吸血鬼は血を吸う様々な種族の総称であり、その中には吸血コウモリ人などがいる設定となりました。
これは、フログワルドを「人間種族(ヒューマン・ドワーフ・エルフなど)を特別な存在として描かない世界観にしたい」というテーマ性から作った設定です。
◆ まとめ
今日は吸血鬼について考えたことをつらつらと書いてみました。
以前ドラゴンについて書いたときも楽しかったので、もし反響をいただけるようでしたら、このようなファンタジー要素についての話も描いてみようかなと考えています。
それでは、今日はそろそろこのあたりで。
よきファンタジー・ライフを。
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2025年11月24日月曜日
☆冬コミ新刊の話☆ FT新聞 No.4688
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
冬が近づいてきましたね。
私は寒いのが苦手なのですが、慣れようとするのは早々にあきらめました。
その代わりに、冬の装備を軽くすることに意識を全集中するようにしました。
軽くて暖かい登山向きのダウンと、毎日最大4枚のカイロを使うことで、冬を暖かく、以前よりもずっと健康に、過ごすことができています。
◆秋のゲームマーケット!
昨日と一昨日、FT書房は秋のゲームマーケットに参加してまいりました!
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(RLH)」の最新サプリメントである『ヒーローズオブダークネス』を引っ提げて……!!
おかげさまで好評です……通販も近いうちに開始しますね!
↓ご予約はこちらから!
https://ftbooks.booth.pm/items/7572242
◆『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』!!
さて、秋が終われば冬。
秋のゲームマーケットを終えたら、次は冬のコミックマーケット!
今回は「モンスター!モンスター!TRPG」の最重要サプリメントとして『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』を刊行できるよう、現在チームにハイピッチで取り組んでいただけております☆
多種多様なモンスターに彩られる、ズィムララの世界。
どこかで見たようなモンスターではない、個性あるさまざまな種族たち。
その発想力に頭を刺激されると同時に、オリジナルデザイナーであるケン・セント・アンドレの監修によってもたらされた統一性があります。
これらの種族を活用することで、どんなセッションになるんだろう──そんな期待感に満ちあふれています。
強力な種族もいれば、弱いながらに生き延びる力に長けた種族もいる。
遊び方は自由、広がりを持つ1冊です。
◆どんな種族がいるの?
最初に『ズィムララのモンスターラリー』を読んだとき、私は闇のユニコーン(アンチコーン)や地獄の悪魔(アーチデーモン)などが普通にプレイヤーキャラクターとしてプレイ可能であることに、まず驚きました。
球体状で坂道などを転がる動物(ディロウ)のような、シナリオに登場させると面白そうなモンスターもいつつ。
南米の都市伝説上のUMA(未確認の神秘的な生物)由来のモスマンがいるかと思えば、同じく南米の神話からケツァールが存在するなどの自由奔放な多様性を発揮しています。
それでいながら、ズィムララ固有のモンスターや神もちゃんと掲載されていて、さまざまな遊び方に対応している、魅力にあふれた1冊です。
プレイヤーとして、自分が使うキャラクターを増やしてくれる。
それがゲームマスターとして、シナリオに使うモンスターにもなる。
それだけにとどまらず、創作のタネとなるインスピレーションを刺激してくれる「魔法の本」です。
◆まとめ。
余談ですが、この本には、他のTRPGで遊ぶための解説がついています。
よく似たシステムを持つTRPGへのコンバートが、行いやすくなっています☆
そういう意味でも、広がりを持つ1冊に仕上がっていると思いました★
それではまた!
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冬が近づいてきましたね。
私は寒いのが苦手なのですが、慣れようとするのは早々にあきらめました。
その代わりに、冬の装備を軽くすることに意識を全集中するようにしました。
軽くて暖かい登山向きのダウンと、毎日最大4枚のカイロを使うことで、冬を暖かく、以前よりもずっと健康に、過ごすことができています。
◆秋のゲームマーケット!
昨日と一昨日、FT書房は秋のゲームマーケットに参加してまいりました!
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おかげさまで好評です……通販も近いうちに開始しますね!
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◆『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』!!
さて、秋が終われば冬。
秋のゲームマーケットを終えたら、次は冬のコミックマーケット!
今回は「モンスター!モンスター!TRPG」の最重要サプリメントとして『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』を刊行できるよう、現在チームにハイピッチで取り組んでいただけております☆
多種多様なモンスターに彩られる、ズィムララの世界。
どこかで見たようなモンスターではない、個性あるさまざまな種族たち。
その発想力に頭を刺激されると同時に、オリジナルデザイナーであるケン・セント・アンドレの監修によってもたらされた統一性があります。
これらの種族を活用することで、どんなセッションになるんだろう──そんな期待感に満ちあふれています。
強力な種族もいれば、弱いながらに生き延びる力に長けた種族もいる。
遊び方は自由、広がりを持つ1冊です。
◆どんな種族がいるの?
最初に『ズィムララのモンスターラリー』を読んだとき、私は闇のユニコーン(アンチコーン)や地獄の悪魔(アーチデーモン)などが普通にプレイヤーキャラクターとしてプレイ可能であることに、まず驚きました。
球体状で坂道などを転がる動物(ディロウ)のような、シナリオに登場させると面白そうなモンスターもいつつ。
南米の都市伝説上のUMA(未確認の神秘的な生物)由来のモスマンがいるかと思えば、同じく南米の神話からケツァールが存在するなどの自由奔放な多様性を発揮しています。
それでいながら、ズィムララ固有のモンスターや神もちゃんと掲載されていて、さまざまな遊び方に対応している、魅力にあふれた1冊です。
プレイヤーとして、自分が使うキャラクターを増やしてくれる。
それがゲームマスターとして、シナリオに使うモンスターにもなる。
それだけにとどまらず、創作のタネとなるインスピレーションを刺激してくれる「魔法の本」です。
◆まとめ。
余談ですが、この本には、他のTRPGで遊ぶための解説がついています。
よく似たシステムを持つTRPGへのコンバートが、行いやすくなっています☆
そういう意味でも、広がりを持つ1冊に仕上がっていると思いました★
それではまた!
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