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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.9
(田林洋一)
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FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。
全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、9回目の記事をお届けいたします。今回は超上級者向けのシリーズ「ユニコーン・ゲームブック」を主に扱います。
本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。「私はそうは思わない」という感想がございましたら、ぜひともお寄せいただければ嬉しく思います。
毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0
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9.超上級者の冒険とマッピングの極致 -ユニコーン・ゲームブック
主な言及作品:『魔王の地下要塞』(1987)『ファイアーロードの砦』(1987)
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これまでの回で述べたゲーム性とストーリー性の相克に反旗を翻し、ゲームブックにはゲーム性ありきとの信念で作成されたと思われるゲームブックが、ポール・ヴァーノンによる「ユニコーン・ゲームブック」の第一巻『魔王の地下要塞』と第二巻『ファイアーロードの砦』である(第一巻と第二巻は物語的には一応繋がっているが、ほとんど独立している)。本シリーズは(スティーブ・ジャクソンの『魔術師タンタロンの12の難題』ほどではないにせよ)ストーリーや物語以上にきめ細かい探索と自由な行動や戦闘を楽しむことを目的に執筆されたように感じられる。
『魔王の地下要塞』では、誘拐されたエスガロン伯爵令嬢アロウェン姫を七日以内に救出することを使命とする。そして『ファイアーロードの砦』では、隊商から略奪を働く魔法使いファイアーロードを倒すことが目的となるが、このシリーズの売りは、その自由度とマッピングの方法にある。
まず一番の肝になっているマッピングだが、『魔王の地下要塞』も『ファイアーロードの砦』も、海外産のゲームブックには珍しく双方向移動になっている。それは各巻につきパラグラフ五〇〇、計一〇〇〇の全てに行き渡っていて、ルール説明の冒頭ではわざわざ「何度でも同じ場所を訪れることができる」「途中で死んでしまったら、それまでに描いたマップを破棄してよい。このゲームブックでは、ゴールに達するのに様々な道があるので、前回の足跡を辿る必要はない」とまで記載されている。
本シリーズで前面に押し出されたマッピングの必要性は、パラグラフの記載に特に顕著に表れている。いくつかのパラグラフでは、屋外ではヘックス(六角形)の升目(『魔王の地下要塞』のみに出現)、地下では方眼紙用の地図が記載されていて、それをそのまま紙に写せば、広大なマップが描ける仕組みになっている。
特にマップを図式で表すという仕掛けは、後にデイヴ・モーリスらが発表した「ブラッド・ソード」シリーズにも影響を与えている。「ブラッド・ソード」シリーズでは、戦闘シーンのみブロック状のマス目が描かれた地図が掲載されており、多人数プレイと合わさってボードゲーム的な、かなり戦略的かつリアルな戦闘を体験することができる。その先駆けともなった「マップ図式」を取り入れた「ユニコーン・ゲームブック」は、その独創性という点でもかなり突出しており、この点でも本シリーズは新規の試みに挑戦していることが伺える。
この仕様は、単方向移動が全盛だったイギリス本国のゲームブック事情を勘案すると、もっと評価されてよい。「ユニコーン・ゲームブック」の原書が出版された時期(1986年)は、日本では古川尚美が執筆した『ゼビウス』(1985年12月)とも重なり、双方向移動の作品が登場し始めた時でもある(その意味で、古川尚美の着眼点は非常に鋭いものがある)。しかし、本シリーズが翻訳出版された1987年時点では、既に日本で「ドルアーガの塔」三部作など優れた双方向移動のゲームブックが数多く制作されたこともあって、「ユニコーン・ゲームブック」の画期的な試みは軽視されていたように思われる。
これまでのゲームブックを見ても、「ユニコーン・ゲームブック」のようにここまで詳細にマッピングをサポートしている作品は珍しい。例えば『火吹山の魔法使い』では距離感がなかなかつかめずに描いていくマップがずれることが多々あった。「ドルアーガの塔」三部作や『スーパー・ブラックオニキス』、そして『パンタクル』などでは、地形が区画分けされているので正確な地図が描けるが、その代わりに方向や距離の説明書きを吟味しなければならなかった。「ユニコーン・ゲームブック」では地図を描く必要のあるパラグラフに来るたびに図式的に表示されるため、面倒だと思うプレイヤーは紙にすかして地図をなぞり描きすればよく、また視覚に直接訴えるため大きさなども一目瞭然である。
これは、TRPG『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』がセクションごとに一枚のイラストを提示して物語を盛り上げたのと同じ効果を上げている。こちらはストーリー性やその場の雰囲気という点を重視してイラストを使用しているのに対し、「ユニコーン・ゲームブック」はあくまでもゲーム性に重きを置き、正確な地図を描けるようにすることで、冒険の臨場感の追求を目的としている。『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』がどちらかというと物語指向であるのに対し、ユニコーン・ゲームブックはまず面白いゲームを作ってから文章を繋げることで、素晴らしいゲームブックを作ろうと考えていた節がある。
この傾向は戦闘ルールでもより顕著になる。本シリーズでは体力ポイントという概念がなく、戦力ポイントと敏捷ポイントの二つに分けられているのだが、戦闘で傷を負って戦力ポイント(ないしは敏捷ポイント)が減っていくと、それだけ敵への命中率と敵からの攻撃の回避率が下がっていくのだ(具体的には、ボーナスポイントが減っていく形になっている)。
第5回の「デュマレスト・ゲームブック」の項でも述べたが、戦闘のリアリティを考えるならば、確かに死に瀕している主人公(ないしは敵)が元気いっぱいで攻撃(回避)できるのはおかしな話で、どうしても剣の切れ(や体の切れ)が鈍ってくる。このシリーズではそのリアリティさを難易度が高いルールで再現しようと試みており、ゲーム的には素晴らしい効果を上げているが、逆にストーリーへの没入感や物語を楽しむという側面に貢献しているかどうかは疑問だ。戦闘の過程でいちいち攻撃(防御)ボーナスポイントを訂正しなければいけないため、どうしても行動を中断させて新たな数値を元に算定する必要があり、プレイヤーの負担が大きくなるからである。そのため、複雑なゲーム的処理によってストーリー面の集中力を切らせてしまう危険も同時に孕むことになる。
次に、このシリーズの「売り」である自由度という点だが、双方向移動を全ての項目で最大限に取り入れたことによって移動はかなり自由であり、どこをどのように通っていっても最終的にクリアできるようになっている。但し、このゲーム的な自由に労力を払い過ぎて、ストーリー性や物語の整合性がかなり犠牲になっているのは否めない。
例えば、「一度倒した敵が再度出現しないようにするためにどうするか」というフラグ管理の問題について、「ドルアーガの塔」の『魔界の滅亡』では鐘の所持の有無、『ネバーランドのリンゴ』では「キーNo.」、『スーパー・ブラックオニキス』ではチェックリストと、今までのSAGBでは何らかの仕掛け(ルール)を用意していた。ところが、「ユニコーン・ゲームブック」では、「倒した敵は次に来た時には出現しないので、その敵の記述は無視する」と、文章を無視して進むように提言しているのだ。これは効率化という側面から見れば利点にもなりうるが、描写力を含めた物語性や冒険の雰囲気を損ねる結果をもたらしているように思える。
また、本シリーズでは十の魔法を自由自在に操れるというシステムを搭載しており、これが「ユニコーン・ゲームブック」のアピールポイントともなっている。魔法は「攻撃型」「防御型」「その他」の三つに大別されているのだが、特に「防御型」と「その他」でオリジナリティの高い魔法が目立つ。例えば「フットステップ」の呪文は「自分のいる場所から遠ざかっていく、ちょうど足音ぐらいの大きさの音を作り出す」という、ゲームでは非常に稀な、だが効果的で面白い効果を持っており(これは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」などの「ベントリロキズム(幻聴)」に相当する)、独創性という点では随一だ。また、鍵のかかったドアを開ける「セサミ」という魔法は、明らかに「開けゴマ」のオマージュであり、ネーミングという点でも面白さを醸し出すことに成功している。
本シリーズでは、魔法を使用する際には「どの魔法を唱えるか決めた上で○○に進む」という記述があり、『パンタクル』のような「いつでも自由に魔法を使いこなせる」というシステムを採用している。だが、魔法の使用によってパラグラフ数を費やすのを避けたせいだろうか、飛んだ先の○○番地では、単に魔法が効果を発揮したかどうかの説明文があるだけで、その場限りの描写に偏っているうらみがある。つまり、魔法の効果というストーリー性においても記述力がやや弱く、印象に残らないイメージがある。
例えば攻撃型の呪文「パワーボルト」で敵を殲滅したとしても、「普通通りに効力を発揮する」とだけしか書かれておらず、状況説明は一切ない。「ワルキューレの冒険」シリーズや『ドラゴンバスター』のように、その場その場で適切な描写(例えば「パワーボルトで、敵の一人が黒焦げになってその場に倒れ伏した」のような叙述)はなく、その効果の程を実感するようなストーリーや魔法の威力、そして結果などの状況を頭の中で補正するしかないのだ。
本作はゲーム性に重きを置いているので、魔法をはじめとするゲームとしての処理は明確な方がプレイヤーに伝わりやすいのは事実である。だが、文章を主軸としたゲームブックとして見れば、小説的な要素がやや欠けており、状況描写を楽しみたい人にとっては残念な点だろう。特に魔法については、十の魔法を自由自在に使いこなせるという長所があるのだから、なおさら描写には気を配るべきではなかっただろうか。総じて、十の魔法自体の魅力である肝心の神秘性や衝撃性(唱えた時の効果を実感できる体験)も減殺する結果になっているというのが妥当な評価だろう。
これは戦闘や魔法だけでなく、前述したように他のイベントについても「○○についての記述は無視すること」という指示が多い。例えばある部屋に入ったらそこに娘がいるというシチュエーションで、話しかけた結果娘が部屋を出てしまったら「娘に関する記述は無視すること」という指令が下るのだ。これはゲーム性という点では一理あるかもしれないが、ストーリー性や物語性という点では、かなり雰囲気を壊してしまっている。ストーリーに浸りたいと思っているプレイヤーは、言わばゲーム的に冗長的な描写を読まされることになる。(もっとも、訳者のマジカル・ゲーマーは、『魔王の地下要塞』のあとがきで、『ネバーランドのリンゴ』や「ドルアーガの塔」と比較して、この簡潔なフラグ管理を肯定的に捉えている)。
このため、どうしてもイベントが単発的で繋がりがなく、深みがいまいち足りないものになりがちだ。例えばほとんどのイベントは「ゴブリンやオークが襲ってきた」というもので、同じようなイベントが頻発するために飽きが来やすい。『ウォーロック』十六号で、このシリーズは「シナリオが類型化していて没個性的」という評価が下されたが、それもむべなるかなだろう。
本シリーズは、ちょうどリビングストンの単著『運命の森』が、森の道筋を複雑にすることでパズル性を際立たせた一方、イベントの繋がりやストーリー性を犠牲にしたという安田均の考察と似た陥穽にはまってはいないだろうか(『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』p. 56-60)。確かに、ここまでゲーム的に凝ったシステムを取り入れて双方向で移動の自由を利かせたならば、それに比例してストーリー性が犠牲になるのは避けがたく、そのためにイベントがその場限りの単発的な、そしてありきたりなものになってしまうのは仕方のないことだろう。もっとも、本作が一人で遊べるRPG、つまりコンピューターRPGのブック版とでも言うべきものを意識していたとしたら、当時のコンピューターRPGは発展途上であり、単純かつ機械的に倒した敵が何度も登場して向かってくるという戦闘やイベントも多かったため、そうした状況はそこまで悪い点とはみなされなかった可能性もある。
これは、キャラクターが無色透明の「君」であるところにも理由の一端がある。ほとんどの国産ゲームブックは主人公キャラクターが際立っていたため、作者は作家的な手法、即ち物語世界を重視する傾向にあり、その結果その世界に最初から没頭することができる。ところが、ファイティング・ファンタジー・シリーズやゴールデン・ドラゴン・シリーズ、そしてこのユニコーン・ゲームブックは、主人公に個性を持たせるというやり方を採用していないため、いきおい起こるイベントも「君」に直接絡んでこない。逆に言えば、ベルトコンベアーのようにただ決まったストーリーを辿るのではなく、自らが切り開き開拓していった冒険譚を存分に堪能できる仕組みを、このシリーズは採用しているということだ。
ある意味で、本シリーズはストーリーやけれんみのあるキャラクター創造などを抑えて、限りなくオープンフィールド的な解放感や高揚感を追求しているのだろう。好きな装備をして、好きな道を選び、好きな戦法が取れるという自由度は、当時の「ウィザードリィ」のようなコンピューターRPGなどにもよく見られた特徴で、それだけ戦略や攻略にこちらの意向が反映されるという、リアリティの極致を体現できる形になっている。
この選択が優れた作品を作る上で吉と出るか凶と出るかはやはり読者の好みだろうが、こと「ゲームブック」という媒体にのみ絞って考えるならば、読者を選んでしまう可能性は否定できないだろう。例えば、T&Tのソロアドベンチャー『カザンの闘技場』には、ひたすらキャラクターを強化して戦いに挑むという「ルーティン」や「定型」があり、1980年代にはそうしたボードゲーム的・コンピューター的な遊び方もそれなりに受容され、一定のファン層もいたことはいた。
だが、四十年が経過した現在の我々の視点から見ると、「ゲームブック」というジャンルにおいて、そうしたゲーム性のみを突き抜けさせる手法は、どうしても得られるところは少ないように思われる。1987年当時のコンピューターではそうも行かなかったろうが、もしどうしてもゲーム性をストーリー性に優先したいのならば、コンピューターに機械的な処理を任せた方が現代では絶対にうまくいく。ゲームブックは「ゲーム」だけでなく「ブック」の側面もあるわけで、優雅で情緒的なストーリーを味わうことができる「本」や「活字」の側面も、もう少し大事にしてほしかった気もする。
つまり、このゲームブックは「ブック」を楽しむのではなく、「ゲーム」に重点を置いた、完成度という点ではどちらかというと娯楽指向の性質を持っているということである。これは恐らく、作者のポール・ヴァーノンが背景世界の作成を得意とするデザイナーだったことも影響しているのだろう。ポール・ヴァーノンは緻密なデータで世界を表現する「ウォーハンマーRPG」のスタッフとして関わっており、こうした「ゲーム的システム」の洗練さは、彼にとっては自家薬籠中のものだったに違いない。
それを表すかのように、各巻のストーリーはどちらかというとオーソドックスである。この傾向は特に第一巻『魔王の地下要塞』で顕著である。プレイヤーは放浪の騎士に扮し、たまたま目撃した誘拐事件を解決すべく動き出すというオープニングから始まる。先述したように、プレイヤーは七日以内に誘拐されたエスガロン伯爵令嬢アロウェンを救出するという冒険に従事することになるが、王から命令が下るのでもなければ、誰かに強制されて探索行に参加するわけでもない。富と名声を求めて自発的に艱難辛苦に挑むことになるのだ。だが、それ以外に複雑な裏事情や背景設定のようなものは描かれない。『ネバーランドのリンゴ』など見られたような童話的な謎解きやパズルもマッピング以外は皆無であり、ある意味では硬派なリアルさを追求するゲーム構成を貫いている。本来の冒険に、あのような謎解きが頻出することはまずないからだ。
第二巻『ファイアーロードの砦』は、『魔王の地下要塞』に比べてストーリー性にも注力しているように見える。前巻で見事任務を達成して宴会で喜び浮かれる主人公が、貴族たちから「街道を行く隊商に略奪を働くファイアーロードを倒してほしい」と依頼される。貴族の気まぐれに反抗できない主人公は、ファイアーロードの砦に侵入するために隊商に紛れ、わざと捕まって潜入するという過酷な任務に就く羽目になる。これは、貧乏かつ放浪の身の故に限られた予算(金貨十枚)で装備を整えてスタートしなければならなかった前作の『魔王の地下要塞』よりもよほど刺激的な状況だろう。
また、囚われの身からいかに脱出するかというスリリングな展開(イベント)も用意されていて、それに呼応するように憎々しげなファイアーロードやオークどもが跳梁跋扈し、いかに危険と隣り合わせの任務かが骨身に染みて楽しめる仕様になっている。特に、闘技場での戦いやファイアーロードとの絡み、そして最後に見せる意外な展開(『魔王の地下要塞』は姫を助けてハッピーエンドという定型であった)など、物語に深みを持たせることにある程度成功している。
更に言えば、『ファイアーロードの砦』では逃亡時の場面までもがしっかりと書き分けられていて、いかにもエスピオナージ風の潜入ミッションという冒険を楽しむことができる。追っ手を撒くまでは通常ののんびりとした捜索ができず、緊張感が高まること間違いなしだろう。
NPCが積極的に主人公に絡むことは少ないが、『魔王の地下要塞』では陰険な性格のロデリック卿の他、ゴブリンの族長に敵意を燃やすゴブリンの護衛ナレク(なんと、主人公に族長の殺害を依頼してくる)や戦斧を探し回るドウォーフのロゴ、『ファイアーロードの砦』では憎々しいファラクや炎の悪魔グロガラックとの心理的駆け引きなどが、特筆すべき登場人物やイベントとして挙げられるだろう。これらの接触の仕方はどちらかというと軽めのものが多く(後者は物語としては重要な鍵を握るのだが)、主人公側にどっぷりとはまり込むような大きなイベントは少ない。
「ユニコーン・ゲームブック」は、それらのイベントを情緒的に楽しむストーリー志向というよりは、森と迷路を右往左往して手がかりを見つけて解決するというゲーム性に主眼が置かれた「宝探しゲーム」という雰囲気を持っている。このような点を鑑みると、本シリーズはオープンワールドのRPGを具現化した形になっており、イベントとマップを提供して自由闊達に冒険を楽しむというのが『魔王の地下要塞』や『ファイアーロードの砦』の「正しい」読み方なのだろう。
このオープンワールドの探索の魅力は、1990年代後半にデイヴ・モーリスが"Fabled Lands"シリーズを発表したことでも証明されている。"Fabled Lands"は一冊の本だけでなく各シリーズごとに地域をまたいで移動することができるというシステムを搭載しており、探索の自由度を極限まで突き詰めている。
因みに、「ユニコーン・ゲームブック」は三部作を予定されていたようだ。第三巻は"Marauders at Redmarsh"(赤い沼地の略奪者)という仮題が付されて予告こそあったものの、本国ではついに発刊されなかったそうである。貴族の気まぐれに付き合わされた主人公が、第三巻でどのような形で更なる冒険に送り込まれることになるのか、甚だ気になるところだ。
作者のポール・ヴァーノンはTPRGのシナリオ執筆などを本業にしているところからも、背景世界のデザインには定評のある作家であったが、こと「ユニコーン・ゲームブック」には世界観の作り込みなどの点では効果的な雰囲気が提供できていないのが惜しい点である。その意味で、同じイギリス発祥の「ゴールデン・ドラゴン・ファンタジィ」シリーズなどは背景世界が極めて陰惨な雰囲気を醸し出していて、物語性を色濃く反映していることが伺えよう。また、国産のゲームブックと比較しても、例えば『パンタクル』などの鈴木直人の作品や『ネバーランドのリンゴ』などの妖精が活躍する牧歌的な世界の魅力には届いていないように思われる。
ついでに言えば、主人公が無色透明という特徴を有するゲームブックでも、その代替手段として魅力的なNPCやイベントの意外性といった読者を惹きつける要素を豊穣に取り入れて、イベントそのものの魅力を押し上げたり、あるいはその場所の夢幻的・異界的な雰囲気を作ったりすることで、物語の深みを演出することは可能だ。リビングストンの『死のワナの地下迷宮』などはその成功例の一つであるが、ことユニコーン・ゲームブックについて言うと、鮮烈なキャラクターがあまり出てこず、冒険を終えた後に記憶に残るような印象的なNPCは少ない。例外としては、『魔王の地下要塞』では宿敵の魔法使いザンダバー、『ファイアーロードの砦』ではファイアーロードの「おもちゃ」の番人たる中盤の敵ファイアースネーク(頭が人間、体が蛇という造形がおぞましい)が挙げられる。
また、同じファイティング・ファンタジー・シリーズでは、リビングストンの『盗賊都市』では、カギ職人やヘビの女王、アズール卿などのNPCが多数登場して物語に花を添えていたが、ユニコーン・ゲームブックではイベントと言えば「敵に見つかった」や「敵の捕虜になった」といったパターン化されたレベルで、更にプレイヤーを惹きつけるようなNPCを出現させようというのは難しい。ストーリーテリングにもっと力を入れていれば、かなりの傑作になったのではないかと思うと、非常にもったいなく感じられる。
ユニコーン・ゲームブックはゲーム的な面で特に優れており、計算しつくされた戦闘システムにマッピングの楽しさなどは、ファイティング・ファンタジー・シリーズよりも上である。だが、あまりにリアリティを追求し過ぎたために、ゲームブック自体の難易度が高く、「ちょっと気軽に手を触れる」という作品にはなっていない。本格的な冒険者の要請に応えた、まさに超上級者用のゲームブックなのである。しかしながら、イベントの好悪はともかく、愚直なまでに徹底してオープンフィールドを駆け回りアイテム収集や成長を楽しむという「やりこみゲーム」という側面を有していると言えなくもなく、それが一定の支持者を獲得する要因になったのだろう。
皮肉なことに、ユニコーン・ゲームブックはストーリーよりもゲーム性を追及して重みを置いたために、結局ゲームブックとしては厳しい評価を受けることになった。その一方で、高度なシステムによって戦闘や魔法のリアリティを再現することに成功し、高い成果も挙げている。このシリーズの登場によって、ゲームブックでゲームとブックのバランスをどう取るかという問題が、改めて浮上するのである。
◆書誌情報
『魔王の地下要塞』
ポール・ヴァーノン(著) マジカル・ゲーマー(訳)
東京創元社(1987/4/3)絶版
『ファイアーロードの砦』
ポール・ヴァーノン(著) マジカル・ゲーマー(訳)
東京創元社(1987/6/10)絶版
■参考文献
『魔術師タンタロンの12の難題』
スティーブ・ジャクソン(著) 柿沼瑛子(訳)
社会思想社(1987/2/28)絶版
「ブラッド・ソード」シリーズ
『シナリオ♯1 勝利の紋章を奪え!』
デイブ・モーリス&オリバー・ジョンソン(著)大出健(訳)
富士見文庫(1988/3/30)絶版
『シナリオ#2 魔術王をたおせ!』
デイブ・モーリス&オリバー・ジョンソン(著)大出健(訳)
富士見文庫(1988/7/20)絶版
『シナリオ#3 悪魔の爪を折れ!』
デイブ・モーリス&オリバー・ジョンソン(著)大出健(訳)
富士見文庫(1989/2/28)絶版
『シナリオ#4 死者の国から還れ!』
デイブ・モーリス&オリバー・ジョンソン(著)大出健(訳)
富士見文庫(1989/9/20)絶版
スティーブ・ジャクソン&イアン・リビングストン(著) 浅羽莢子(訳)
『火吹山の魔法使い』
社会思想社(1984/12/30)絶版
扶桑社(2005/3/26)絶版
SBクリエイティブ(再生産版) 安田均(訳)(2024/3/28)
『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』
スティーブ・ジャクソン(著) 本田成二(訳)
東京創元社(1985/12/13)絶版
『運命の森』
イアン・リビングストン(著) 松坂健(訳)
社会思想社(1985/7/25)絶版
SBクリエイティブ 安田均(訳)(2023/7/14)
『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』
安田均(著)
社会思想社(1990/8/30)絶版
『死のワナの地下迷宮』
イアン・リビングストン(著) 喜多元子(訳)
社会思想社(1985/11/20)絶版
SBクリエイティブ こあらだまり(訳)(2022/7/16)
Demian's Gamebook Web Page
https://gamebooks.org/Series/155/Show
『盗賊都市』
イアン・リビングストン(著) 喜多元子(訳)
社会思想社(1985/10/20)絶版
SBクリエイティブ(再生産版) こあらだまり(訳)(2024/3/28)
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2025年9月9日火曜日
2025年9月8日月曜日
ゆるやかに考えている新作の話 FT新聞 No.4611
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
久しぶりに夏風邪にかかってしまいました。
大人しく過ごしております、この記事が出る頃には治っているでしょう☆
クーラーが寒いときには、遠慮なく言ったほうがいいですね。
◆創作のリズム。
杉本自身の創作のリズムについて、今日はお話をしていきます☆
いまFT書房では「ゲームブック」「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(RLH)」「モンスター!モンスター!TRPG」の3つの柱を中心に、作品を展開しています。
このうち「モンスター!モンスター!TRPG」は海外からの翻訳作品で、「ゲームブック」とRLHがFT書房のオリジナル作品なわけです。
◆新しいものを、作りはじめています。
いま、私はゲームブックとして「昆虫都市」を、RLHのシナリオとして「死霊沼の聖母」を執筆しています。
「昆虫都市」はかたつむりのペースですが、「死霊沼の聖母」のほうは、まずまずのペースで制作が進んでいます。
それらに加えて、私はいつも「新しい何か」の制作を続けています。
簡単なご紹介ですが、私はこれまで、FT書房でいくつか「新しい何か」を作ってきました。
最初に作ったのは、おそらく業界初であったボードゲームの攻略書籍です。「アグリコラ」を攻略するための「アグリペディア」や、「カタンの開拓者」を攻略する「カタンの攻略者」など……。
これは好評で、商業誌でボードゲームの攻略記事を何回か書くことにもなりました。
次に当たった「新しいもの」は、クトゥルフ系のゲームブックです。
オリジナルの短編集を2冊、原作をもとにした作品を2冊、刊行しました。
ホラーゲームとゲームブックは相性がいいものでして(突然死の恐怖)、すごい勢いで完売したのを覚えています。
それから、グループSNE社で「TtTマガジン」や「ウォーロック・マガジン」の編集長をしつつ、同社からの刊行物に「トンネルズ&トロールズ」や「ソード・ワールド」のソロ・アドベンチャーを書くという時期を、何年間か送りました。
編集長を卒業してから取り組んだのが、新しいTRPGの制作です☆
2023年にRLHを配信してはや2年。
過去最大のヒット作となり、展開が続いています。
◆展開の「軸」。
作品をつくるとき、頭のなかでいつも、買い手の心情を想像します。
私は、大手のTRPG業界が「版上げ」を行うことを、「必要なんだろうけど、ちょっとイヤだな」と感じています。
第3版から第4版へとルールが変更になるとき、これまでに遊んだもの(シナリオやサプリメント)がリセットされてしまう。
もしかしたら、舞台となる世界なども変更となって、新しい世界について新しく学び直す必要が生まれてしまう。
そうすることで「新たなファンと古参のファンの知識差を埋める」「企業が存続していくために必要な資金を得る」といった、プラスの面があるのは理解しています。私もつくる側ですからね。
だけど、そのことで、遊んでいたひとつのルールと世界が「閉じてしまう」ことに、寂寥感といいますか、一種の寂しさを感じてしまうのです。
前置きが長くなってしまったのですが、私が「アランツァ」という共通世界を、ゲームブックとTRPG(RLH)で使っているのは、そういう理由です☆
◆作るとしたら?
いま、私にあるのはふたつのアイディアです☆
ひとつは、ファンタジーゲームブックという枠組みから足を伸ばしてクトゥルフ系ゲームブックを作ったときのような、「延長線上」で考えるアイディア。
具体的には、「現代怪奇×RLH」です!
もうひとつは、「90分で遊ぶ多人数用TRPG ローグライクハーフ(仮)(RLH90)」です。
これまで、プレイヤー数が最大2人だったRLHを、3人以上でも遊べるように拡張するというアイディアです☆
ゲームマスターが必要かどうかは決めていませんが、プレイヤーは最大でも3人か4人のゲームにできたら、と考えております。
◆実は、2年前から。
どちらのアイディアも、実はRLHがヒットした時から考えていたものです。
ここ最近は、後者のアイディアに関して、創作意欲が湧いてきています。
というのは、TwitterやYouTubeなどで、RLHを通じて交流して、仲良くなっておられる方々を目の当たりにしてきたからです☆
1人から4人で遊べるようなRLHを生み出すというのは、ひとつ、面白い試みなのではないかと考えております。
◆もし、そうするなら☆
もしRLH90を作るなら、世界観はアランツァのままで(あるいは、読者のオリジナル世界でも遊べるようなルールで)いこうと考えております☆
また、RLHのベースとなるルールは維持したままにすることで、新しいルールを覚える負荷を最小限にとどめられるように、デザインしていこうと思っています。
実は、軽い目鼻はすでについています。
RLH90はそれ自体がRLHのサプリメントでありつつ、RLH90が多人数用TRPGの基本ルールになるように、デザインする予定です。
すでに取り組んではおりますが、1年以上は必ずかかります。
RLHを作る際にも、ボツになったTRPGのルールが5個ほどありました。
RLH制作に至るまでには、2年間の長いトンネルがあったのです。
そういうわけですので、気長に、しかし楽しみにしていただけましたらさいわいです!
それではまた!
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大人しく過ごしております、この記事が出る頃には治っているでしょう☆
クーラーが寒いときには、遠慮なく言ったほうがいいですね。
◆創作のリズム。
杉本自身の創作のリズムについて、今日はお話をしていきます☆
いまFT書房では「ゲームブック」「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(RLH)」「モンスター!モンスター!TRPG」の3つの柱を中心に、作品を展開しています。
このうち「モンスター!モンスター!TRPG」は海外からの翻訳作品で、「ゲームブック」とRLHがFT書房のオリジナル作品なわけです。
◆新しいものを、作りはじめています。
いま、私はゲームブックとして「昆虫都市」を、RLHのシナリオとして「死霊沼の聖母」を執筆しています。
「昆虫都市」はかたつむりのペースですが、「死霊沼の聖母」のほうは、まずまずのペースで制作が進んでいます。
それらに加えて、私はいつも「新しい何か」の制作を続けています。
簡単なご紹介ですが、私はこれまで、FT書房でいくつか「新しい何か」を作ってきました。
最初に作ったのは、おそらく業界初であったボードゲームの攻略書籍です。「アグリコラ」を攻略するための「アグリペディア」や、「カタンの開拓者」を攻略する「カタンの攻略者」など……。
これは好評で、商業誌でボードゲームの攻略記事を何回か書くことにもなりました。
次に当たった「新しいもの」は、クトゥルフ系のゲームブックです。
オリジナルの短編集を2冊、原作をもとにした作品を2冊、刊行しました。
ホラーゲームとゲームブックは相性がいいものでして(突然死の恐怖)、すごい勢いで完売したのを覚えています。
それから、グループSNE社で「TtTマガジン」や「ウォーロック・マガジン」の編集長をしつつ、同社からの刊行物に「トンネルズ&トロールズ」や「ソード・ワールド」のソロ・アドベンチャーを書くという時期を、何年間か送りました。
編集長を卒業してから取り組んだのが、新しいTRPGの制作です☆
2023年にRLHを配信してはや2年。
過去最大のヒット作となり、展開が続いています。
◆展開の「軸」。
作品をつくるとき、頭のなかでいつも、買い手の心情を想像します。
私は、大手のTRPG業界が「版上げ」を行うことを、「必要なんだろうけど、ちょっとイヤだな」と感じています。
第3版から第4版へとルールが変更になるとき、これまでに遊んだもの(シナリオやサプリメント)がリセットされてしまう。
もしかしたら、舞台となる世界なども変更となって、新しい世界について新しく学び直す必要が生まれてしまう。
そうすることで「新たなファンと古参のファンの知識差を埋める」「企業が存続していくために必要な資金を得る」といった、プラスの面があるのは理解しています。私もつくる側ですからね。
だけど、そのことで、遊んでいたひとつのルールと世界が「閉じてしまう」ことに、寂寥感といいますか、一種の寂しさを感じてしまうのです。
前置きが長くなってしまったのですが、私が「アランツァ」という共通世界を、ゲームブックとTRPG(RLH)で使っているのは、そういう理由です☆
◆作るとしたら?
いま、私にあるのはふたつのアイディアです☆
ひとつは、ファンタジーゲームブックという枠組みから足を伸ばしてクトゥルフ系ゲームブックを作ったときのような、「延長線上」で考えるアイディア。
具体的には、「現代怪奇×RLH」です!
もうひとつは、「90分で遊ぶ多人数用TRPG ローグライクハーフ(仮)(RLH90)」です。
これまで、プレイヤー数が最大2人だったRLHを、3人以上でも遊べるように拡張するというアイディアです☆
ゲームマスターが必要かどうかは決めていませんが、プレイヤーは最大でも3人か4人のゲームにできたら、と考えております。
◆実は、2年前から。
どちらのアイディアも、実はRLHがヒットした時から考えていたものです。
ここ最近は、後者のアイディアに関して、創作意欲が湧いてきています。
というのは、TwitterやYouTubeなどで、RLHを通じて交流して、仲良くなっておられる方々を目の当たりにしてきたからです☆
1人から4人で遊べるようなRLHを生み出すというのは、ひとつ、面白い試みなのではないかと考えております。
◆もし、そうするなら☆
もしRLH90を作るなら、世界観はアランツァのままで(あるいは、読者のオリジナル世界でも遊べるようなルールで)いこうと考えております☆
また、RLHのベースとなるルールは維持したままにすることで、新しいルールを覚える負荷を最小限にとどめられるように、デザインしていこうと思っています。
実は、軽い目鼻はすでについています。
RLH90はそれ自体がRLHのサプリメントでありつつ、RLH90が多人数用TRPGの基本ルールになるように、デザインする予定です。
すでに取り組んではおりますが、1年以上は必ずかかります。
RLHを作る際にも、ボツになったTRPGのルールが5個ほどありました。
RLH制作に至るまでには、2年間の長いトンネルがあったのです。
そういうわけですので、気長に、しかし楽しみにしていただけましたらさいわいです!
それではまた!
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2025年9月7日日曜日
ローグライクハーフd33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』 FT新聞 No.4610
おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。
本日はローグライクハーフの新作d33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』を配信いたします。
蛮族都市フーウェイを舞台とした、d66『常闇の伴侶』、d33『名付けられるべきではないもの』に続く3つ目のシナリオとなります。
この春から夏にかけて、構想を進めるためによく朝から自宅の裏山を越えて伏見稲荷大社の山頂付近を逍遙していました。
森と山と信仰が根深く息づいている場所で過ごしたことはこのシナリオの雰囲気にも大きく影響しました。
フーウェイの〈太古の森〉には、いにしえから受け継がれた旧き神の信仰が、自然と同化しながら眠っている。
木漏れ日の闇に潜み脈々と受け継がれる何者かの息づかいを感じて頂ければと思っております。
短い冒険ですが、私のシナリオの特徴でもある物語の分岐も登場します。
どの結末になろうとも、読者であるあなたの物語になれれば幸いです。
またぜひ感想もお聞かせ頂ければ嬉しいです。
それでは、良き冒険を!
ローグライクハーフ d33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BeThouBeast_BeThouMortal.txt
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蛮族都市フーウェイを舞台とした、d66『常闇の伴侶』、d33『名付けられるべきではないもの』に続く3つ目のシナリオとなります。
この春から夏にかけて、構想を進めるためによく朝から自宅の裏山を越えて伏見稲荷大社の山頂付近を逍遙していました。
森と山と信仰が根深く息づいている場所で過ごしたことはこのシナリオの雰囲気にも大きく影響しました。
フーウェイの〈太古の森〉には、いにしえから受け継がれた旧き神の信仰が、自然と同化しながら眠っている。
木漏れ日の闇に潜み脈々と受け継がれる何者かの息づかいを感じて頂ければと思っております。
短い冒険ですが、私のシナリオの特徴でもある物語の分岐も登場します。
どの結末になろうとも、読者であるあなたの物語になれれば幸いです。
またぜひ感想もお聞かせ頂ければ嬉しいです。
それでは、良き冒険を!
ローグライクハーフ d33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』
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2025年9月6日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第656号 FT新聞 No.4609
From:水波流
9月2日は私が男爵に叙任されている、シーランド公国の独立記念日でした。
1967年9月2日、元イギリス陸軍少佐で海賊放送の運営者だったパディ・ロイ・ベーツ殿下がイギリス南東部サフォーク沖の海上要塞を占拠し独立宣言をおこなって、はや58年。
私、水波男爵もはるか極東の地から、遠きPrincipality of Sealand に想いを馳せたのでありますッ!
公国に栄光あれ。
From:葉山海月
夜の人気のない喫煙ボックスにて。
なんか、ライターが放置プレイ!
きっと、ガスが切れたんだろう、と思い、手に取ってみると着火!
ラッキー! と思っていたら、底がひび割れていたらしくプシューとガスが!
煙草とライターをボックス内に投げ捨てて、飛び出ると背後からボックスごと揺れる音!
捨てられているものは、捨てられてるだけの理由があると痛感!
From:くろやなぎ
日曜日に配信されたフーウェイの都市サプリメント、私のお気に入りは〈猟犬〉です。
【不意打ち】の阻止も【攻撃ロール】の修正効果も、判定ロールや回数制限なしで常時発動というのがうれしいポイント。
作りたての主人公でも購入可能なお手頃価格なので、フーウェイでの冒険前に従者点と金貨が少し余ったときは、いちど連れて行ってみてください!
From:中山将平
僕ら明日9月7日(日)インテックス大阪で開催の「こみっくトレジャー46」にサークル参加します。
ブース配置は【4号館C57a】です。
僕も現地に行きますので、ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(水)=水波流
(葉)=葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■8/31(日)~9/5(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年8月31日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4603
Re:「ローグライクハーフ」都市サプリメント:蛮族都市フーウェイ&新職業【獣使い】
・次回配信の新シナリオ『汝、獣となれ人となれ』の舞台となる蛮族都市フーウェイの都市サプリメントと、新職業【獣使い】のデータを再配信しました。
獣の力を引き出し、自らにも獣の力を宿す【獣使い】の特殊技能。味方にすれば頼もしく、敵に回すと恐ろしい従者たち。そして野性味あふれる装備品の数々。
これらは戦闘や探索時の判定で役立つだけでなく、あなたの冒険を彩るフレーバーとしても機能することでしょう。どうぞ十二分に活用して、よきローグライクハーフライフを!
(く)
2025年9月1日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4604
☆新作のご案内☆
・FT書房は「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」のd33シナリオを、電子版で刊行しております。
新しく、第3作品目となる『我ら海底探検隊 海の幸を添えて』(byロア・スペイダー)を刊行いたしました!
また、シナリオのみが収録されていた初期のサプリメント『あやかし』ですが、
今回の電子版には、都市サプリメントとして「東国都市キョウ」のデータを、【新職業】として【影法師】を追加した、完全版を準備いたしました!
新作d66シナリオとして、死霊都市フアナ・ニクロを拠点、舞台とした初の作品「死霊沼の聖母」も執筆中です! お楽しみに★
(明)
2025年9月2日(火)かなでひびき FT新聞 No.4605
これはゲームブックなのですか!? vol.124
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する作品は、『怪奇推理ミステリー事件ファイル』(矢島 誠 ほか著 永岡書店)
もともと、推理ものとホラーものって、相性がいいですよね? この本は、そんな不気味テイスト満載な短編小説のアンソロジー。
氏が特におすすめするのは、推理といってもお気楽に取り組める難易度の点。おまけに解決編は袋とじときている!
夏の終わりに、皆さんも戦慄のホラー・トリックに挑戦してみては?
(明)
2025年9月3日(水)ぜろ FT新聞 No.4606
第3回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第454回。
いよいよ本編がはじまり、主人公ミナは「還らずの森」付近の小さな村へ。そしていくつかの選択の場面が訪れます。
垣間見た未来の中では、ミナとともに旅していたはずの剣士ボラミー。果たして彼女は、実際にミナの仲間になってくれるのでしょうか?
戦うか、逃げるか、話し合うか。ミナの冒険は、早くも重大な分岐点を迎えます!
(く)
2025年9月4日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4607
『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.27
・ひさびさとなる、ウォーハンマーRPGの紹介記事です。
つい先日、発売となった新サプリメント『血と茨』。「魔女と似非魔術師のための24の新たな呪文」と銘打たれ、魔法諸学府に参加せず、非合法で呪文を習得・行使する者らにスポットを当てた内容となっています。
まさに土着の迷信と形容したくなる魔法の数々に、NPCも3人、6本+αシナリオソースも用意されている充実の内容!
余談ですが、私(水波)もウォーハンマーRPGを断続的に遊んでいるのですが、そのキャラがなんと魔女から転職した似非魔術師!
まさに私のキャラのために出たようなサプリメントです。ああ、これがもっと早くにあれば……。(基本ルールでは俗魔術の数が少なく、難易度も高いのです)
(水)
2025年9月5日(金)休刊日 FT新聞 No.4608
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
矢島 誠さんと言う名で聞いた事あるな〜とおもったら若桜木 虔氏と一緒に『新本陣殺人事件』を書いた人ですね…この作品は内容よりもその文春ミステリーベストテン入りした経緯とかの方が面白い(笑)作品でした。まあ若桜木 虔氏と離れてからは鉄道ミステリや本書のような本を書かれているようです。
(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます。
そんな逸話があったんですねー。
現実は小説より奇なり、ですねー。
ところで、かなでには若桜木 虔先生の方が聞き覚えがあります。
何やら多彩な方だとは思いましたが、かなでにとっては謎多き方です(笑)
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1967年9月2日、元イギリス陸軍少佐で海賊放送の運営者だったパディ・ロイ・ベーツ殿下がイギリス南東部サフォーク沖の海上要塞を占拠し独立宣言をおこなって、はや58年。
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捨てられているものは、捨てられてるだけの理由があると痛感!
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From:中山将平
僕ら明日9月7日(日)インテックス大阪で開催の「こみっくトレジャー46」にサークル参加します。
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2025年8月31日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4603
Re:「ローグライクハーフ」都市サプリメント:蛮族都市フーウェイ&新職業【獣使い】
・次回配信の新シナリオ『汝、獣となれ人となれ』の舞台となる蛮族都市フーウェイの都市サプリメントと、新職業【獣使い】のデータを再配信しました。
獣の力を引き出し、自らにも獣の力を宿す【獣使い】の特殊技能。味方にすれば頼もしく、敵に回すと恐ろしい従者たち。そして野性味あふれる装備品の数々。
これらは戦闘や探索時の判定で役立つだけでなく、あなたの冒険を彩るフレーバーとしても機能することでしょう。どうぞ十二分に活用して、よきローグライクハーフライフを!
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2025年9月1日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4604
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今回の電子版には、都市サプリメントとして「東国都市キョウ」のデータを、【新職業】として【影法師】を追加した、完全版を準備いたしました!
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今回紹介する作品は、『怪奇推理ミステリー事件ファイル』(矢島 誠 ほか著 永岡書店)
もともと、推理ものとホラーものって、相性がいいですよね? この本は、そんな不気味テイスト満載な短編小説のアンソロジー。
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ありがとうございます。
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2025年9月4日木曜日
2025年9月3日水曜日
第3回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4606
第3回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
旅の供は、禁断の、時を操る魔法の時計。
闇神オスクリードに見初められ、闇色の肌になってなお、目的を見失わない。
そんなミナの旅が、今、はじまります。
リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
●アタック01-6 堕落都市の闇エルフたち
チャマイから北に移動しながら、ボクは魔法の研究を続けた。
時の魔法には、悪夢を消費する。悪夢は、悪夢袋に貯めておくことができる。
原理はよくわからないけれど、悪夢をエネルギーとして貯蔵できる袋を、ボクは持っている。
悪夢には困らなかった。
小さい頃にトレントに押しつぶされた家。ならず者たちに襲撃された記憶。還らぬ父。無惨に殺された母。
自分が師事していた教授から禁断の秘術をかすめ取り、闇の神様を信仰し、そして今、あてもなくさまよっているこの落ち着かない状況。
あんまり覚えていないけれど、悪夢袋がすぐに貯まるから、きっと悪夢を見ているんだろう。
悪夢袋のそばで寝ると、朝には袋はいっぱいになっている。
悪夢に困らないおかげで、実際に魔法を使いながら、効果を確かめることができた。
ボクが今、拠点にしているのは「堕落都市」ネルド。
魔法学園で数年を過ごした、からくり都市チャマイの北方にある都市だ。
チャマイからは数日程度の距離だけど、交流は少ない。
ネルドには闇エルフが多い。肌が闇色になったボクが身を隠すには、もってこいの場所だった。
今のところは、闇エルフとして生活できている。ボクが本当は闇エルフではない、ただのエルフということを疑われたことは、一度もない。
モータス教授は、10年の研究の成果を横取りされて、恨んでいるだろうか。
でも、ボクが盗んだとは知られていないはずだ。この魔法の時計を見られでもしない限り、教授にはどうしようもないだろう。
ボクは、魔法の時計の使い方を少しずつ試しながら路銀を稼いでいた。
魔法の時計の力はチート級で、こっそり使うことで、かなり楽に生活費を稼ぐことができた。
ネルドでの生活が安定してきた頃、ボクは次にどうするか、迷っていた。
そろそろ一度、ニナ姉のところに戻るべきじゃないだろうか。
ニナ姉に、今のボクの姿を見られるのは、すごく抵抗がある。
けど、あれから何年も経つ。もしかしたら、姉たちの情報をつかんでいるかもしれない。
路銀は十分に稼げた。なんならすぐにでも旅立てる。
ボクは、ニナ姉のもとへ向かう決意を固めた。
そうして、その日の晩に、ボクの予定をひっくり返す出来事が起きた。
宿の食堂で食事をしている時、闇エルフの一団の自慢話が耳に飛び込んできたのだ。
それは、複数のエルフの女を、依頼主の元に届けた、という話だった。
ボクは、その一団に混ざって話を聞くことにした。
こういう時は、若い女性ってだけで、たいていの男連中は疑いもせずに受け入れてくれる。
とある都市で、エルフ奴隷を抱えていた貴族が破産した。
貴族は財産整理のためにそのエルフたちを手放し、エルフ女たちは奴隷商人の手に渡った。
この闇エルフの一団は、奴隷商人の護衛としていくつかの地方を巡っていった。
そしてエルフ奴隷たちは、買い手がつくたびに順番に手放されていったという。
初めて耳にした、姉たちかもしれないエルフの行方だった。
最後のふたりは双子のエルフで、ここネルド付近の森で買われていった。
そこは「還らずの森」と呼ばれている。買われた先は、ローズ家と呼ばれる吸血鬼の館。
彼らの話す特徴は、聞けば聞くほど姉たちとしか思えなかった。
間違いない。エナ姉とティナ姉だ。
これまでずっとわからなかった消息の手がかりを、はじめてつかんだ。
しかも、その場所は近い。
ボクは、このめぐり合わせは偶然とは思えなかった。
なんらかの運命の歯車が回り始めている。
ボクがもう1日早くネルドを出ていたら、この話は永遠にボクのところに来なかったのだから。
ボクは、手放されたほかのエルフ奴隷たちの行き先についても、順番に確認していった。
双子のエルフがエナ姉とティナ姉なら、他のエルフもきっと姉たちだ。
こうやって、エナ姉とティナ姉を助けた後の行き先も、だいたい目星をつけた。
ニナ姉のところに戻っている暇なんてない。エナ姉とティナ姉を取り戻しに行くのは、今しかない。
奴隷として買い戻すお金はない。多少強引な手段を用いても、救い出すんだ。
次の日、ボクはネルドを出発した。
目的地は当然、吸血鬼の館があるという「還らずの森」だ。
家が襲撃された時の、守られるだけだったボクは、もういない。
今度は、ボクが助けるんだ。姉たちを。
●アタック01-7 外縁の村にて
それから数日かけて、「還らずの森」の周辺まで到達した。
ボクはすぐに森へは入らず、その外周をたどっている。
急いでいても、焦ってはいけない。それは、ボクの決して長くない人生経験の中で得た、数少ない教訓のひとつだ。
魔法の時計を手に入れる時は焦りのあまり、自分の身を危険にさらしすぎた。
この森についての生の情報を得たい。
そのためには、森の近くで生活している者から話を聞けるのが一番良い。
そもそも、闇エルフたちが言っていた「ローズ家という吸血鬼の館」というフレーズも気になる。
ローズ家というのは、吸血鬼の貴族なのだろうか。
貴族といったら、国王から爵位を与えられた特権階級だろう。
爵位を吸血鬼が持っているというシチュエーションがまず、よくわからない。
「吸血鬼ハンターD」では、吸血鬼そのものを「貴族」と呼ぶ。
すべての吸血鬼ネタの祖ともいえるドラキュラは、伯爵だ。
おそらく、吸血鬼が貴族というイメージの元は、そこからきているのだろうけど。
そんなプレイヤーの考察は、ここでは無意味だ。
そうして森の外縁を回り、1回の野営を挟んで、やがてボクは、森の近くの小さな村を見つけた。
この村ならきっと、森の恩恵を受けながら暮らしているはず。
森に関する生の情報が、手に入るに違いない。
ボクはその村に向かう。
ふと思った。村に入る前に、魔法の時計を使ってみるという手もある。
使うとしたら、<うたかたの齢時計>だ。
これを使うと、自分の年齢を変えられる。正体を隠したいときなどに役に立つ。
が、ボクは使うのをやめておいた。
時の魔法は無限に使えるわけではない。悪夢を消費するのだ。
今、年齢を変えて正体を隠す必要性を、ボクは感じていない。
それが理由だ。
そんなふうに思っていたのだけれど、村に行ったら石投げられた。
な、なんでぇ!?
しかも、1個目の石を皮切りに、そこにいる村人が、次々に石を投げてくる!
・自力で石を避ける
・<速撃の戦時計>か<刻々の狭間時計>を使う
これまでに人生の選択はあまたあれど、これが、このゲームブックの初選択肢だ。
さあ、どうしよう。
自力で避けるのと、魔法で避けるのが並んでいるのなら、自力回避ではダメージを負ってしまう可能性が高いのではないか。
であれば、魔法を使うのが最適解ということになる。
<速撃の戦時計>は、針がひとつのストップウォッチみたいな時計。
ボクは、<速撃の戦時計>のボタンをカチッと押した。
出口のないはずの闇色の悪夢袋がひとつ、ぽしゅっとしぼむ。同時に<速撃の戦時計>の針が、ぐるぐるとすごい勢いで回り出した。
ボクの身体に力がみなぎる。軽快なビートを刻みながら、すべての石を避けてゆく。
スピードスターとなったボクには、決して誰も石を当てることはできない。
ところが、あれれ?
村人の投げる石の勢いが強くなってきたよ?
もしかして、ムキになってる? ボクの動き、挑発してるって思われちゃってる?
・このまま村を逃げ出す
・村人の1人を人質に取る
・石を避けながら、村人と話し合う
そこに出たのはこんな選択肢。
そうだよ。ボクは石を投げられに来たんじゃない。
お話しようよ、おはなし。
ねっ。ねっ?
右に左に、石を避けつつ必死に説得。
手を広げて、害意のないことをアピール。
飛んでくる石にも無抵抗の意思を示しつつ石を避ける。
どんどんヒートアップする村人たち。もう意味わかんない。そろそろ疲れてこない?
「やめろ!」
その時、女性の鋭い声が、村人たちを制した。
投石が止む。そこに村人を割って、金髪の女性が進み出た。
●アタック01-8 ボラミーとの決闘
女性は、冒険者風のいでたちをしていた。
力強く、そして美しい。
「卑怯なふるまいはよせ。たとえ相手が闇エルフであっても」
そうか。ボクの肌は闇エルフに見えるから。
村人たちは、闇エルフを恐れていたのか。
ボクは、自分の肌の色が変わってから、闇エルフが多いネルドで生活していた。
だから、闇エルフが外ではいかに忌み嫌われているかということを、このとき初めて知ったんだ。
ボクは、助けてくれたその女性に感謝の言葉を告げようとした。
しかし、次の女性の言葉に凍りついた。
「慈悲のある死を遂げさせるべきだ。村人の代表として、私が戦う」
ボクを助けようとしてくれたんじゃなかった!
「我々の縄張りに入ったのだ。逃げるなよ」
女性は銀色に輝く剣を、すらりと抜き放った。
「我が名はボラミー。決闘の作法だ。そちらも名乗るが良い」
あ! ボラミー。
ボラミーという名前を聞いた瞬間に、ボクは未来の記憶をおぼろげに「思い出した」。
未来を思い出すっていうのは変に聞こえるかもしれない。けど、この感覚はそうとしか言いようがない。
未来でボクは、ボラミーと一緒に旅をしていた。そんな気がする。
けど、この状況。いったいどうすれば。
そこに選択肢があらわれる。
・自分は闇エルフではないと主張する
・剣でボラミーと戦う。
・<速撃の戦時計>を使う
・逃げる
ボクは闇エルフではない。普通のエルフだ。
と、ボクは思っている。けど、ボクはホントに闇エルフじゃないの?
闇の神様の力を得られたってことは、その時点で闇エルフになっちゃったんじゃないかって思うんだけど。
そのへんは選択肢の中のボクと、考察しているボクとの考え方の違いかな。
だから、闇エルフじゃないって主張するのは、アリだ。聞く耳を持ってくれそうにないけれど。
戦うしか、ないのかな。
強さを示せば、仲間になってくれるかな。
ボラミーは、きっと強いだろう。
普通に戦っても、勝ち目はないだろう。
<速撃の戦時計>の針は、すでにその動きを止めている。あのまま投石が続かなくてよかった。
なら、もう一度<速撃の戦時計>に頼らせてもらおう。
「どうした。名乗れと言っている。それとも闇エルフは、名乗る名すら持ち合わせていないと?」
「ボ、ボクはミナ。戦うつもりはないけど……」
「それはそちらの都合だ。覚悟するが良い」
ボラミーの突進。迅い!
<速撃の戦時計>を発動する。
闇色の悪夢袋がまたひとつしぼみ、戦時計がすごい勢いで時を刻み始める。
その瞬間、ボクは風を裂くように動いた。
あっさり空を切った剣に、ボラミーの目が驚愕に見開かれる。
村人たちのどよめきが聞こえる。ボラミーの初撃を避けたのは、それほどすごいことらしい。
けれど、そこまでだった。
「ふ。はは……やるじゃないか。本気の出し甲斐があるというものだ」
ボラミーの次の剣撃が繰り出される。応戦する剣で必死に受け止めたけれど、それだけで全身の骨がばらばらになりそうな衝撃だ。
こんなの、二度も三度も受けられるものじゃない。
ボクは、回避に専念するしかなくなった。<速撃>でいかに素早く動こうとも、これで精いっぱい。
たちまち、防戦一方に追い込まれてしまった。素早さだけで、対人での戦いの経験のなさが完全に露呈した形だ。
明確な技量の差は覆せなかった。
かくなるうえは……逃げる!
ボクは、<速撃の戦時計>がまだ動いているうちに、逃げに転じた。
実際のところ、情報を得られないのなら、これ以上村に留まる理由はないんだよ。
こんな一方的に押しつけられた決闘に、命をかける必要はない。そこに固執するプライドもない。
「な。卑怯な闇エルフが……!」
声が後ろから降ってくるが、まったく心を動かされなかった。
ボクは、村から離れ、完全に逃げ切ったと確信が持てるまで、走り続けた。
やがて戦時計がその時を止める。身体ががくんと重くなった。呼吸を整えながら、ゆっくりと歩く。
あのボラミーという女剣士がボクの仲間になる未来は、たしかに、かすかに垣間見えていた。
でも彼女は、ほかの村人同様、闇エルフに憎しみを抱いているみたいだ。いったいどうすれば、彼女を味方に引き入れることができるのだろう。
皆目見当がつかなかった。
とうとうボクは、森の入口までやってきた。
全力疾走と徒歩を続けてきたボクは、正直かなり疲れている。
森のことも吸血鬼の館のことも、何も情報を拾えないままここまで来てしまった。
そのまま森に足を踏み入れる前に、せめて小休止を入れたい気分だ。
森の入口の空き地で、少し休憩しよう。
だが、そこには先客がいた。
旅人装束に身を包んだ人物が、腰を下ろし焚火をしながら、串に刺した肉や野菜を焼いていた。
その顔は、普通の人間ではなかった。
ねこだ。
それも、黒ねこだ。
ねこ人? ボクは初めて見る種族だった。
次回、ねこ人に対し、ボクはどういう態度で接したらいいのだろう。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7→5/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。闇エルフ絶対殺すウーマン。
ねこ人 黒ねこ人。宅急便かな?
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
旅の供は、禁断の、時を操る魔法の時計。
闇神オスクリードに見初められ、闇色の肌になってなお、目的を見失わない。
そんなミナの旅が、今、はじまります。
リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7/7】
金貨 7枚
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<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
●アタック01-6 堕落都市の闇エルフたち
チャマイから北に移動しながら、ボクは魔法の研究を続けた。
時の魔法には、悪夢を消費する。悪夢は、悪夢袋に貯めておくことができる。
原理はよくわからないけれど、悪夢をエネルギーとして貯蔵できる袋を、ボクは持っている。
悪夢には困らなかった。
小さい頃にトレントに押しつぶされた家。ならず者たちに襲撃された記憶。還らぬ父。無惨に殺された母。
自分が師事していた教授から禁断の秘術をかすめ取り、闇の神様を信仰し、そして今、あてもなくさまよっているこの落ち着かない状況。
あんまり覚えていないけれど、悪夢袋がすぐに貯まるから、きっと悪夢を見ているんだろう。
悪夢袋のそばで寝ると、朝には袋はいっぱいになっている。
悪夢に困らないおかげで、実際に魔法を使いながら、効果を確かめることができた。
ボクが今、拠点にしているのは「堕落都市」ネルド。
魔法学園で数年を過ごした、からくり都市チャマイの北方にある都市だ。
チャマイからは数日程度の距離だけど、交流は少ない。
ネルドには闇エルフが多い。肌が闇色になったボクが身を隠すには、もってこいの場所だった。
今のところは、闇エルフとして生活できている。ボクが本当は闇エルフではない、ただのエルフということを疑われたことは、一度もない。
モータス教授は、10年の研究の成果を横取りされて、恨んでいるだろうか。
でも、ボクが盗んだとは知られていないはずだ。この魔法の時計を見られでもしない限り、教授にはどうしようもないだろう。
ボクは、魔法の時計の使い方を少しずつ試しながら路銀を稼いでいた。
魔法の時計の力はチート級で、こっそり使うことで、かなり楽に生活費を稼ぐことができた。
ネルドでの生活が安定してきた頃、ボクは次にどうするか、迷っていた。
そろそろ一度、ニナ姉のところに戻るべきじゃないだろうか。
ニナ姉に、今のボクの姿を見られるのは、すごく抵抗がある。
けど、あれから何年も経つ。もしかしたら、姉たちの情報をつかんでいるかもしれない。
路銀は十分に稼げた。なんならすぐにでも旅立てる。
ボクは、ニナ姉のもとへ向かう決意を固めた。
そうして、その日の晩に、ボクの予定をひっくり返す出来事が起きた。
宿の食堂で食事をしている時、闇エルフの一団の自慢話が耳に飛び込んできたのだ。
それは、複数のエルフの女を、依頼主の元に届けた、という話だった。
ボクは、その一団に混ざって話を聞くことにした。
こういう時は、若い女性ってだけで、たいていの男連中は疑いもせずに受け入れてくれる。
とある都市で、エルフ奴隷を抱えていた貴族が破産した。
貴族は財産整理のためにそのエルフたちを手放し、エルフ女たちは奴隷商人の手に渡った。
この闇エルフの一団は、奴隷商人の護衛としていくつかの地方を巡っていった。
そしてエルフ奴隷たちは、買い手がつくたびに順番に手放されていったという。
初めて耳にした、姉たちかもしれないエルフの行方だった。
最後のふたりは双子のエルフで、ここネルド付近の森で買われていった。
そこは「還らずの森」と呼ばれている。買われた先は、ローズ家と呼ばれる吸血鬼の館。
彼らの話す特徴は、聞けば聞くほど姉たちとしか思えなかった。
間違いない。エナ姉とティナ姉だ。
これまでずっとわからなかった消息の手がかりを、はじめてつかんだ。
しかも、その場所は近い。
ボクは、このめぐり合わせは偶然とは思えなかった。
なんらかの運命の歯車が回り始めている。
ボクがもう1日早くネルドを出ていたら、この話は永遠にボクのところに来なかったのだから。
ボクは、手放されたほかのエルフ奴隷たちの行き先についても、順番に確認していった。
双子のエルフがエナ姉とティナ姉なら、他のエルフもきっと姉たちだ。
こうやって、エナ姉とティナ姉を助けた後の行き先も、だいたい目星をつけた。
ニナ姉のところに戻っている暇なんてない。エナ姉とティナ姉を取り戻しに行くのは、今しかない。
奴隷として買い戻すお金はない。多少強引な手段を用いても、救い出すんだ。
次の日、ボクはネルドを出発した。
目的地は当然、吸血鬼の館があるという「還らずの森」だ。
家が襲撃された時の、守られるだけだったボクは、もういない。
今度は、ボクが助けるんだ。姉たちを。
●アタック01-7 外縁の村にて
それから数日かけて、「還らずの森」の周辺まで到達した。
ボクはすぐに森へは入らず、その外周をたどっている。
急いでいても、焦ってはいけない。それは、ボクの決して長くない人生経験の中で得た、数少ない教訓のひとつだ。
魔法の時計を手に入れる時は焦りのあまり、自分の身を危険にさらしすぎた。
この森についての生の情報を得たい。
そのためには、森の近くで生活している者から話を聞けるのが一番良い。
そもそも、闇エルフたちが言っていた「ローズ家という吸血鬼の館」というフレーズも気になる。
ローズ家というのは、吸血鬼の貴族なのだろうか。
貴族といったら、国王から爵位を与えられた特権階級だろう。
爵位を吸血鬼が持っているというシチュエーションがまず、よくわからない。
「吸血鬼ハンターD」では、吸血鬼そのものを「貴族」と呼ぶ。
すべての吸血鬼ネタの祖ともいえるドラキュラは、伯爵だ。
おそらく、吸血鬼が貴族というイメージの元は、そこからきているのだろうけど。
そんなプレイヤーの考察は、ここでは無意味だ。
そうして森の外縁を回り、1回の野営を挟んで、やがてボクは、森の近くの小さな村を見つけた。
この村ならきっと、森の恩恵を受けながら暮らしているはず。
森に関する生の情報が、手に入るに違いない。
ボクはその村に向かう。
ふと思った。村に入る前に、魔法の時計を使ってみるという手もある。
使うとしたら、<うたかたの齢時計>だ。
これを使うと、自分の年齢を変えられる。正体を隠したいときなどに役に立つ。
が、ボクは使うのをやめておいた。
時の魔法は無限に使えるわけではない。悪夢を消費するのだ。
今、年齢を変えて正体を隠す必要性を、ボクは感じていない。
それが理由だ。
そんなふうに思っていたのだけれど、村に行ったら石投げられた。
な、なんでぇ!?
しかも、1個目の石を皮切りに、そこにいる村人が、次々に石を投げてくる!
・自力で石を避ける
・<速撃の戦時計>か<刻々の狭間時計>を使う
これまでに人生の選択はあまたあれど、これが、このゲームブックの初選択肢だ。
さあ、どうしよう。
自力で避けるのと、魔法で避けるのが並んでいるのなら、自力回避ではダメージを負ってしまう可能性が高いのではないか。
であれば、魔法を使うのが最適解ということになる。
<速撃の戦時計>は、針がひとつのストップウォッチみたいな時計。
ボクは、<速撃の戦時計>のボタンをカチッと押した。
出口のないはずの闇色の悪夢袋がひとつ、ぽしゅっとしぼむ。同時に<速撃の戦時計>の針が、ぐるぐるとすごい勢いで回り出した。
ボクの身体に力がみなぎる。軽快なビートを刻みながら、すべての石を避けてゆく。
スピードスターとなったボクには、決して誰も石を当てることはできない。
ところが、あれれ?
村人の投げる石の勢いが強くなってきたよ?
もしかして、ムキになってる? ボクの動き、挑発してるって思われちゃってる?
・このまま村を逃げ出す
・村人の1人を人質に取る
・石を避けながら、村人と話し合う
そこに出たのはこんな選択肢。
そうだよ。ボクは石を投げられに来たんじゃない。
お話しようよ、おはなし。
ねっ。ねっ?
右に左に、石を避けつつ必死に説得。
手を広げて、害意のないことをアピール。
飛んでくる石にも無抵抗の意思を示しつつ石を避ける。
どんどんヒートアップする村人たち。もう意味わかんない。そろそろ疲れてこない?
「やめろ!」
その時、女性の鋭い声が、村人たちを制した。
投石が止む。そこに村人を割って、金髪の女性が進み出た。
●アタック01-8 ボラミーとの決闘
女性は、冒険者風のいでたちをしていた。
力強く、そして美しい。
「卑怯なふるまいはよせ。たとえ相手が闇エルフであっても」
そうか。ボクの肌は闇エルフに見えるから。
村人たちは、闇エルフを恐れていたのか。
ボクは、自分の肌の色が変わってから、闇エルフが多いネルドで生活していた。
だから、闇エルフが外ではいかに忌み嫌われているかということを、このとき初めて知ったんだ。
ボクは、助けてくれたその女性に感謝の言葉を告げようとした。
しかし、次の女性の言葉に凍りついた。
「慈悲のある死を遂げさせるべきだ。村人の代表として、私が戦う」
ボクを助けようとしてくれたんじゃなかった!
「我々の縄張りに入ったのだ。逃げるなよ」
女性は銀色に輝く剣を、すらりと抜き放った。
「我が名はボラミー。決闘の作法だ。そちらも名乗るが良い」
あ! ボラミー。
ボラミーという名前を聞いた瞬間に、ボクは未来の記憶をおぼろげに「思い出した」。
未来を思い出すっていうのは変に聞こえるかもしれない。けど、この感覚はそうとしか言いようがない。
未来でボクは、ボラミーと一緒に旅をしていた。そんな気がする。
けど、この状況。いったいどうすれば。
そこに選択肢があらわれる。
・自分は闇エルフではないと主張する
・剣でボラミーと戦う。
・<速撃の戦時計>を使う
・逃げる
ボクは闇エルフではない。普通のエルフだ。
と、ボクは思っている。けど、ボクはホントに闇エルフじゃないの?
闇の神様の力を得られたってことは、その時点で闇エルフになっちゃったんじゃないかって思うんだけど。
そのへんは選択肢の中のボクと、考察しているボクとの考え方の違いかな。
だから、闇エルフじゃないって主張するのは、アリだ。聞く耳を持ってくれそうにないけれど。
戦うしか、ないのかな。
強さを示せば、仲間になってくれるかな。
ボラミーは、きっと強いだろう。
普通に戦っても、勝ち目はないだろう。
<速撃の戦時計>の針は、すでにその動きを止めている。あのまま投石が続かなくてよかった。
なら、もう一度<速撃の戦時計>に頼らせてもらおう。
「どうした。名乗れと言っている。それとも闇エルフは、名乗る名すら持ち合わせていないと?」
「ボ、ボクはミナ。戦うつもりはないけど……」
「それはそちらの都合だ。覚悟するが良い」
ボラミーの突進。迅い!
<速撃の戦時計>を発動する。
闇色の悪夢袋がまたひとつしぼみ、戦時計がすごい勢いで時を刻み始める。
その瞬間、ボクは風を裂くように動いた。
あっさり空を切った剣に、ボラミーの目が驚愕に見開かれる。
村人たちのどよめきが聞こえる。ボラミーの初撃を避けたのは、それほどすごいことらしい。
けれど、そこまでだった。
「ふ。はは……やるじゃないか。本気の出し甲斐があるというものだ」
ボラミーの次の剣撃が繰り出される。応戦する剣で必死に受け止めたけれど、それだけで全身の骨がばらばらになりそうな衝撃だ。
こんなの、二度も三度も受けられるものじゃない。
ボクは、回避に専念するしかなくなった。<速撃>でいかに素早く動こうとも、これで精いっぱい。
たちまち、防戦一方に追い込まれてしまった。素早さだけで、対人での戦いの経験のなさが完全に露呈した形だ。
明確な技量の差は覆せなかった。
かくなるうえは……逃げる!
ボクは、<速撃の戦時計>がまだ動いているうちに、逃げに転じた。
実際のところ、情報を得られないのなら、これ以上村に留まる理由はないんだよ。
こんな一方的に押しつけられた決闘に、命をかける必要はない。そこに固執するプライドもない。
「な。卑怯な闇エルフが……!」
声が後ろから降ってくるが、まったく心を動かされなかった。
ボクは、村から離れ、完全に逃げ切ったと確信が持てるまで、走り続けた。
やがて戦時計がその時を止める。身体ががくんと重くなった。呼吸を整えながら、ゆっくりと歩く。
あのボラミーという女剣士がボクの仲間になる未来は、たしかに、かすかに垣間見えていた。
でも彼女は、ほかの村人同様、闇エルフに憎しみを抱いているみたいだ。いったいどうすれば、彼女を味方に引き入れることができるのだろう。
皆目見当がつかなかった。
とうとうボクは、森の入口までやってきた。
全力疾走と徒歩を続けてきたボクは、正直かなり疲れている。
森のことも吸血鬼の館のことも、何も情報を拾えないままここまで来てしまった。
そのまま森に足を踏み入れる前に、せめて小休止を入れたい気分だ。
森の入口の空き地で、少し休憩しよう。
だが、そこには先客がいた。
旅人装束に身を包んだ人物が、腰を下ろし焚火をしながら、串に刺した肉や野菜を焼いていた。
その顔は、普通の人間ではなかった。
ねこだ。
それも、黒ねこだ。
ねこ人? ボクは初めて見る種族だった。
次回、ねこ人に対し、ボクはどういう態度で接したらいいのだろう。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7→5/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。闇エルフ絶対殺すウーマン。
ねこ人 黒ねこ人。宅急便かな?
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
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2025年9月2日火曜日
これはゲームブックなのですか!? vol.124 FT新聞 No.4605
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『これはゲームブックなのですか!?』vol.124
かなでひびき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
このゲンコを見ている、って言うことは、きっと、かなではこの世の人ではなくって……じゃないっちゅーの!
季節はきっと夏でしょう。
夏といえば、怖い話。
というわけで、今回ご紹介する本は、
『怪奇推理ミステリー事件ファイル』(矢島 誠 ほか著 永岡書店)よ。
もともと、推理ものとホラーものって、相性がいいと思わないですかぁ?
例えば、密室の中で男が青龍刀で惨殺されていた!
これって、「おはぐろそんのたたりジャー」って、続けてポルターガイストでも起こせばホラーになるし、「いや、ちょっと待ってください!」って少年探偵の一つでも出てくればミステリになる。
大いなる先人、ディクスン・カーは、ミステリの中にホラー要素を取り入れたのが、「これぞ、カー!」と言わしめる独特の雰囲気を出しているし、まだ記憶に新しいかしら?
他にもコンピュータゲームから始まって、アニメ化までされたスマッシュヒット作『ひぐらしの泣く頃に』には、かなで衝撃を受けました!
でねでね。
この本も、そんな要素に満ちている。
亡くなった夫の声にそそのかされて、その妻がとった行動とは!?
丑の刻参りが、とんでもない方向でアリバイになってしまった!?
ストーカーの狂気が向かう完全犯罪!
地獄絵屋敷で起こる奇怪な事件。
「幽霊を見よう!」と集まった女の子達に起こる奇天烈としか表現できない怪事!
などなど、ざっとあげてみても、短編ホラーとしてもイケルんじゃない? ってテイスト満載な小説のアンソロジー!
実際に、ホラーな不可思議な謎を残して終わる事件もあるし。
おまけに、解決編が袋とじときている!
袋とじって、コスト的にも結構手間がかかる冒険だ、って話聞いたことあるけど、「それをやっても採算が取れるくらい売れる」=「おもしろい」って証拠。
特に、この本をおすすめしたいのは難易度の点から。
これみよがしに出てくるヒントは、おそらく解決に十二分につながるはず。
たとえば「犯人と思われる田辺よしお(仮)
Aという描写では、棚の一番てっぺんにも触れれなかったのに、Bの描写では、明らかに179cmもある衝立から目撃している。よってこの犯罪は一人二役によってアリバイが成立する」などというガチであなたの観察力が試される謎ではないから、気楽に取り組んで欲しいな。
かえって推理小説マニアの方が、えらく深読みして考えすぎで引っかかるかも。
実際、かなでもそうでした(。・ω<)ゞてへぺろ!
だけど、そんな方は、自分の考えたトリック、そして本書の事件を参考にして謎解きストーリーを作ってみてはいかがでしょうか?
熱い夜の怪談話としても、スキマ時間に解く推理ゲームとしても、一粒で二度おいしい!
これを逃す手はありませんって!
次回はモアベターだったらなぁ、と願いつつ。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『怪奇推理ミステリー』
著 矢島 誠 ほか
出版社:永岡書店 2000/7/10
文庫・絶版
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かなでひびき
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このゲンコを見ている、って言うことは、きっと、かなではこの世の人ではなくって……じゃないっちゅーの!
季節はきっと夏でしょう。
夏といえば、怖い話。
というわけで、今回ご紹介する本は、
『怪奇推理ミステリー事件ファイル』(矢島 誠 ほか著 永岡書店)よ。
もともと、推理ものとホラーものって、相性がいいと思わないですかぁ?
例えば、密室の中で男が青龍刀で惨殺されていた!
これって、「おはぐろそんのたたりジャー」って、続けてポルターガイストでも起こせばホラーになるし、「いや、ちょっと待ってください!」って少年探偵の一つでも出てくればミステリになる。
大いなる先人、ディクスン・カーは、ミステリの中にホラー要素を取り入れたのが、「これぞ、カー!」と言わしめる独特の雰囲気を出しているし、まだ記憶に新しいかしら?
他にもコンピュータゲームから始まって、アニメ化までされたスマッシュヒット作『ひぐらしの泣く頃に』には、かなで衝撃を受けました!
でねでね。
この本も、そんな要素に満ちている。
亡くなった夫の声にそそのかされて、その妻がとった行動とは!?
丑の刻参りが、とんでもない方向でアリバイになってしまった!?
ストーカーの狂気が向かう完全犯罪!
地獄絵屋敷で起こる奇怪な事件。
「幽霊を見よう!」と集まった女の子達に起こる奇天烈としか表現できない怪事!
などなど、ざっとあげてみても、短編ホラーとしてもイケルんじゃない? ってテイスト満載な小説のアンソロジー!
実際に、ホラーな不可思議な謎を残して終わる事件もあるし。
おまけに、解決編が袋とじときている!
袋とじって、コスト的にも結構手間がかかる冒険だ、って話聞いたことあるけど、「それをやっても採算が取れるくらい売れる」=「おもしろい」って証拠。
特に、この本をおすすめしたいのは難易度の点から。
これみよがしに出てくるヒントは、おそらく解決に十二分につながるはず。
たとえば「犯人と思われる田辺よしお(仮)
Aという描写では、棚の一番てっぺんにも触れれなかったのに、Bの描写では、明らかに179cmもある衝立から目撃している。よってこの犯罪は一人二役によってアリバイが成立する」などというガチであなたの観察力が試される謎ではないから、気楽に取り組んで欲しいな。
かえって推理小説マニアの方が、えらく深読みして考えすぎで引っかかるかも。
実際、かなでもそうでした(。・ω<)ゞてへぺろ!
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熱い夜の怪談話としても、スキマ時間に解く推理ゲームとしても、一粒で二度おいしい!
これを逃す手はありませんって!
次回はモアベターだったらなぁ、と願いつつ。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
『怪奇推理ミステリー』
著 矢島 誠 ほか
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2025年9月1日月曜日
☆新作のご案内☆ FT新聞 No.4604
おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
8月末の平日に、沢登りに行ってきました。
前日に大量の雨が降ったためか水量が多く、滝の勢いがすごかったです。
その滝を正面から浴びながら登ろうとするとき、生きている充実感が全身を駆けめぐりました。
その数秒後に勢いに負けて、滝壺まで吹っ飛び落ちたのも、いい経験でした☆
◆電子版の刊行が順調です!
いつぞやのFT新聞にも書きましたが、「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」のd33シナリオを、電子版で刊行しております。
先日、第3作品目を刊行いたしました!
・戦場の風 by丹野佑
・怪盗は雪夜に舞う byロア・スペイダー
・我ら海底探検隊 海の幸を添えて byロア・スペイダー
◆完全版「あやかし」が好評!
初期の頃に出したふたつのサプリメント『混沌迷宮の試練』と『あやかし』は、シナリオのみが収録されています。
『混沌迷宮の試練』には、表題のd66シナリオ。
『あやかし』には、d66シナリオ「あやかし」と、d33シナリオ「秋雨の狐」。
そこで、今回の電子版には、都市サプリメントとして「東国都市キョウ」のデータを、【新職業】として【影法師】を追加した、完全版バージョンを準備いたしました!
これがさっそく好評でして、ありがとうございます☆
ご要望をいただけるようならば、『混沌迷宮の試練』のほうの完全版も、視野に入れていく所存です。
◆近況報告☆
これらの電子版は、編集である緋色朱音が中心になって進めてくれているものです☆
私自身はというと、それらの監修を(紫隠ねこさんとともに)やりつつ、「ローグライクハーフ」の新作d66シナリオを執筆中です!
表題は「死霊沼の聖母」★
死霊都市フアナ・ニクロを拠点、舞台とした、初の作品です☆
楽しみにしていただけましたら、さいわいです。
それではまた!
↓「ローグライクハーフ」d33シナリオはこちらから!
https://ftbooks.booth.pm/items/7261223
↓電子版(完全版)「あやかし」はこちらから!
https://ftbooks.booth.pm/items/5085877
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その数秒後に勢いに負けて、滝壺まで吹っ飛び落ちたのも、いい経験でした☆
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『あやかし』には、d66シナリオ「あやかし」と、d33シナリオ「秋雨の狐」。
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これがさっそく好評でして、ありがとうございます☆
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2025年8月31日日曜日
Re:「ローグライクハーフ」都市サプリメント:蛮族都市フーウェイ&新職業【獣使い】 FT新聞 No.4603
おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。
9月第1日曜は、私が執筆したローグライクハーフd33シナリオを配信いたします。
蛮族都市フーウェイを舞台とした、d66『常闇の伴侶』、d33『名付けられるべきではないもの』に続く3つ目のシナリオです。
『汝、獣となれ人となれ』
フーウェイの〈太古の森〉に在るのは、樹人や闇エルフといった脅威だけではない。いにしえから受け継がれた旧き神の信仰が、自然と同化しながら眠っている。
木漏れ日の闇に潜み脈々と受け継がれる何者かの息づかいを感じて頂ければと思っております。
本日は都市サプリメントと新職業【獣使い】を再配信いたします。
シナリオを遊ぶ前後に、装備品や従者を購入するなどぜひご活用下さい。
↓都市サプリメント:蛮族都市フーウェイ
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Fuway.txt
↓新職業【獣使い】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_BeastTamer.txt
それでは来週日曜を、どうぞお楽しみに!
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
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FT新聞編集長の水波流です。
9月第1日曜は、私が執筆したローグライクハーフd33シナリオを配信いたします。
蛮族都市フーウェイを舞台とした、d66『常闇の伴侶』、d33『名付けられるべきではないもの』に続く3つ目のシナリオです。
『汝、獣となれ人となれ』
フーウェイの〈太古の森〉に在るのは、樹人や闇エルフといった脅威だけではない。いにしえから受け継がれた旧き神の信仰が、自然と同化しながら眠っている。
木漏れ日の闇に潜み脈々と受け継がれる何者かの息づかいを感じて頂ければと思っております。
本日は都市サプリメントと新職業【獣使い】を再配信いたします。
シナリオを遊ぶ前後に、装備品や従者を購入するなどぜひご活用下さい。
↓都市サプリメント:蛮族都市フーウェイ
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↓新職業【獣使い】
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それでは来週日曜を、どうぞお楽しみに!
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2025年8月30日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第655号 FT新聞 No.4602
From:水波流
クトゥルフ神話の創始者H.P.ラヴクラフト御大は135年前、1890年8月20日に生誕されました。
ちなみに私のクトゥルフ初体験は、PC-98のクトゥルフ西部劇RPG『ティラムバラム』なので、邪神信仰がアステカ神話と融合しているふしはある。
あ、いや『暗黒教団の陰謀(大瀧啓裕)』の方が先か……?
いずれにせよ、30年以上前の当時はクトゥルフ神話の情報を得るのはとても難しく、本を読んでいて関連を発見すると「おお、これもクトゥルフ……!?」と嬉しくなったものです。(栗本薫『魔境遊撃隊』とか)
From:葉山海月
スーパーの喫煙ボックス。
まろび出た吸い殻に、
口紅のような血の跡べったり。
From:中山将平
僕ら2025年9月7日(日)インテックス大阪で開催の「こみっくトレジャー46」に出店します!!
ブース配置は【4号館C57a】。
18年作り続ける「ゲームブック」や1人用TRPG『ローグライクハーフ』、「モンスター!モンスター!TRPG関連書籍」などを扱います。
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(葉)=葉山海月
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■8/24(日)~8/29(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年8月24日(日)DON-CHANG FT新聞 No.4596
『モンスター!モンスター!の怪物たち』vol.5
・8月10日(日)のTGFF2025にて、ついに『ズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』が発売となりました!
それを受けて、イラストレーターDON-CHANG氏がズィムララのモンスターをイラストで紹介するこの企画。
今回は「ズィムララ」での冒険で、プレイヤーたちと敵対することが多そうなデーモン(悪魔)の眷属から「ヴァクカヴューゴ」をピックアップしました。
一見、水牛にサイを加えたモンスターに見えますが、その実力はいかに!?
本編での活躍もどうぞご期待ください!
(葉)
2025年8月25日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4597
アランツァ世界の滅んだ街
・ローグライクハーフやFT書房作品のディープなファンの皆さん、お待たせしました!
アランツァ世界のマニアックな情報として、「第1期」の時代に存在した国や都市をご紹介します。
多くの作品の舞台となっている「第2期」の時代には、すでに滅び、あるいはすっかり様相を変えてしまったこれらの国や都市。
その過去の姿を知ることで、より深く作品を楽しむとともに、新たなシナリオや設定を生み出すきっかけにしていただければと思います。
(く)
2025年8月26日(火)田林洋一 FT新聞 No.4598
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.8
・田林洋一氏による、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
今回は、ファミコンソフトを原作とする「ワルキューレの冒険」シリーズを、ゲーム性とストーリー性のバランスという観点から取り上げます。
『迷宮のドラゴン』の成長システムと魔法、果ては『時の鍵の伝説』のパーティコントロールと、巻を追うごとにゲームシステムの発展が図られた本シリーズ。
それはストーリーの上で主人公とプレイヤーの距離をどこまで近づけるかという問題とも無縁ではありません。
プレイヤーの好きに動かせる主人公は無色透明であったほうがいい反面、主人公がプレイヤーの意志に構わず行動する場合はキャラクターが際立っていた方がいい。
この二律背反にどう折り合いをつけて中道を目指すか?
今もって難しい課題に切り込みを入れるヒントが見つかるかもしれません。
(明)
2025年8月27日(水)ぜろ FT新聞 No.4599
第2回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第453回。
今回の内容は、プロローグの続きとルール説明、そしてキャラクターシート(冒険記録紙)の確認です。
すっきりわかりやすいデザインで、大事な情報がぎゅっと詰め込まれたキャラクターシート。
冒険の仲間、装備品、そしてもうひとつの魔法の時計…。
その1ページの中に、これから起こりうる未来を垣間見ながら、主人公ミナの冒険の準備が進んでいきます。
(く)
2025年8月28日(木)東洋夏 FT新聞 No.4600
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.4
・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、
東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第4回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロによる捜査が続きます。
中間イベントを迎え、少年シグナスはとうとう『写身の殺人者』と遭遇!
しかし、何故か頼れるクロも見当たらず、シグナス1人で立ち向かう事になり……!
悪夢が正夢にならぬよう、どうぞ応援してあげて下さい!
(天)
2025年8月29日(金)休刊日 FT新聞 No.4601
・休刊日のお知らせ
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(緒方直人さん)
『死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について』面白かったです。死(ゲームオーバー)をどのように扱うかが作家によってこんなにも違うとは驚きの視点でした。特に死が物語からの非常口であるという点、確かに激ムズゲームブックに苦労してると「もう嫌だ!終わりにしてくれ!殺してくれー!」とか発狂しちゃう時、ありますもんね。ある意味、なんて優しい「死」もあるのだろうと感心しちゃいました。
(お返事:くろやなぎ)
ご感想ありがとうございます! 死(ゲームオーバー)のパラグラフの位置づけや描写は、その作品のストーリーや雰囲気はもちろん、ゲーム上のシステムからも影響や制約を受けますので(たとえば「ミツユビオニトカゲ」的なシステムがある場合は、ひとまず特定のパラグラフに行く必要がある等)、作家さんや作品の特徴が総合的に反映されやすいのかもしれません。『送り雛』は、ある意味では「巻き込まれ型」の物語で、さらに読者に対しても主体的な解釈を要求する作品なので、主人公目線でも読者目線でも「もう何も考えずに眠りたい…」的な気持ちが発生するのもよくわかる気がしていて、非常口的な幕引きが用意されていることに納得感がありますね。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブックの「死」で有名な<14に行け>のハービー・ブレナンの『ドラキュラ城の血闘』では、ドラキュラ伯爵を倒す為にヘルシング教授と一緒に「きみ」は戦っているうちに噛まれすぎると自分が吸血鬼になってしまいドラキュラの僕としてヘルシング教授と戦う「ドラキュラ篇」が始まるという2部構成になっていて、これも「死」の別パターンなのかと思います。
(お返事:くろやなぎ)
『ドラキュラ城の血闘』のご紹介ありがとうございます。死や敗北が物語の「終わり」ではなく転機となり、ゲーム上の仕掛けとしても機能しているケースですね。二見書房版・創土社版ともに入手困難なのが残念ですが、二見書房版は国立国会図書館でデジタル化作業中のようですので、将来デジタルコレクションで読めることを楽しみにしています!
(ププププーさん)
FT新聞いつも楽しみにしております。
8月26日のスーパーアドベンチャーがよく判る本記事につきまして、意見が異なる箇所がありましたので感想として送らせていただきます。
vol4とvol8において、ゴールデン・ドラゴン・シリーズの主人公像を没個性的な「無色透明な君」として語られています。個人的に意見が異なる部分でした。
このシリーズの総論としては、無色透明な主人公という部分は理解できますが各作品ではその辺りかなり違うと考えます。
ドラゴンの目(ウルリックイベントで侮蔑・恐怖、物語の最初と最後で任務が容易いと語る軽口?余裕を見せる)、炎の神殿(油断した敵に唾を吐きかけようとして自重、物語らぬ像に略奪しないと語り掛ける誇り高さと敬意を表す心)等明確に強い個性を持たされております。
失われた魂の城でもそれより個性としては薄いかもしれませんが攻略自体には善性を試されており、それに応える主人公像を想定されていると思います。
このシリーズ全ての作品が「無色透明の君」とは言えないと考えます。名前を自由に付けられるにしても、「無色透明」と総論で語るのはやや粗い表現であるように思われました。
私SNSでゲームブック感想を報告するのが趣味ですので、そうしようかと考えましたがこの方法で感想として伝えさせていただきます。
田林先生の記事につきましては、「ベルゼブルの竜」主人公も無色透明として判別されておりました。私はこれには完全同意でして、自分の趣味範囲でSNS報告しようと考えておりました。今後の記事でどのように取り扱われるのか楽しみにしております。
(お返事:田林洋一)
いつも拙記事をご愛読くださり、どうもありがとうございます。そして、新たな気づきを投げかけてくださって感謝しております! 確かに、「名前がない」からといって「主人公キャラクターに個性がない」というのは違うかもしれません。『ドラゴンの目』のウルリックイベントはそれだけで恐怖ですが、キャラクターの個性が色濃く出た瞬間でもありましたね。また、『炎の神殿』は序盤にミンキーというサルと仲良くなるなど、優しさと誇り強さが見られました。もちろん無色透明の君だからと言って、感情が全くないわけではないですから、そこは新しい視点として開拓できる可能性があるように思いました。例えば『ドラゴンの目』では無敵の海の魔王ナックラヴィ—や悪辣なマンティス卿など、とにかく主人公以外のキャラクターが際立っていますが、それに付随して「あなた」にも感情が書き分けられていたと感じています。ご指摘、ありがとうございます!
(ジャラル アフサラールさん)
このシリーズは第二作の「ピラミッドの謎」で魅力ポイントが一定数以下だと「あなたにお手伝いしていただくわけにはいかないわ。正義の心がなさすぎるもの。」とワルキューレに同行を断られるというバットエンド?になりますね。まあ最初からやり直す手もありますが…。
(お返事:田林洋一)
いつもお便り、どうもありがとうございます! 『ピラミッドの謎』のあのエンディングは衝撃的でしたね。魅力ポイントが単なる数値的な飾りでなく、しっかりと動いていた強烈なシーンだと思います。あまり重視されないと思われがちな魅力イベント(戦闘で役に立たない、など)が決定的な役割を果たしますので、「悪人プレイ」を満喫していたプレイヤーはびっくりしたことでしょう。その辺りのポイントの軽重というか、バランスもしっかり取れていましたね。しかしあそこまで言われたら、プレイヤーは心を入れ替えて『迷宮のドラゴン』からやり直すしかないかもしれません(笑)。
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クトゥルフ神話の創始者H.P.ラヴクラフト御大は135年前、1890年8月20日に生誕されました。
ちなみに私のクトゥルフ初体験は、PC-98のクトゥルフ西部劇RPG『ティラムバラム』なので、邪神信仰がアステカ神話と融合しているふしはある。
あ、いや『暗黒教団の陰謀(大瀧啓裕)』の方が先か……?
いずれにせよ、30年以上前の当時はクトゥルフ神話の情報を得るのはとても難しく、本を読んでいて関連を発見すると「おお、これもクトゥルフ……!?」と嬉しくなったものです。(栗本薫『魔境遊撃隊』とか)
From:葉山海月
スーパーの喫煙ボックス。
まろび出た吸い殻に、
口紅のような血の跡べったり。
From:中山将平
僕ら2025年9月7日(日)インテックス大阪で開催の「こみっくトレジャー46」に出店します!!
ブース配置は【4号館C57a】。
18年作り続ける「ゲームブック」や1人用TRPG『ローグライクハーフ』、「モンスター!モンスター!TRPG関連書籍」などを扱います。
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(葉)=葉山海月
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
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■8/24(日)~8/29(金)の記事一覧
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2025年8月24日(日)DON-CHANG FT新聞 No.4596
『モンスター!モンスター!の怪物たち』vol.5
・8月10日(日)のTGFF2025にて、ついに『ズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』が発売となりました!
それを受けて、イラストレーターDON-CHANG氏がズィムララのモンスターをイラストで紹介するこの企画。
今回は「ズィムララ」での冒険で、プレイヤーたちと敵対することが多そうなデーモン(悪魔)の眷属から「ヴァクカヴューゴ」をピックアップしました。
一見、水牛にサイを加えたモンスターに見えますが、その実力はいかに!?
本編での活躍もどうぞご期待ください!
(葉)
2025年8月25日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4597
アランツァ世界の滅んだ街
・ローグライクハーフやFT書房作品のディープなファンの皆さん、お待たせしました!
アランツァ世界のマニアックな情報として、「第1期」の時代に存在した国や都市をご紹介します。
多くの作品の舞台となっている「第2期」の時代には、すでに滅び、あるいはすっかり様相を変えてしまったこれらの国や都市。
その過去の姿を知ることで、より深く作品を楽しむとともに、新たなシナリオや設定を生み出すきっかけにしていただければと思います。
(く)
2025年8月26日(火)田林洋一 FT新聞 No.4598
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.8
・田林洋一氏による、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
今回は、ファミコンソフトを原作とする「ワルキューレの冒険」シリーズを、ゲーム性とストーリー性のバランスという観点から取り上げます。
『迷宮のドラゴン』の成長システムと魔法、果ては『時の鍵の伝説』のパーティコントロールと、巻を追うごとにゲームシステムの発展が図られた本シリーズ。
それはストーリーの上で主人公とプレイヤーの距離をどこまで近づけるかという問題とも無縁ではありません。
プレイヤーの好きに動かせる主人公は無色透明であったほうがいい反面、主人公がプレイヤーの意志に構わず行動する場合はキャラクターが際立っていた方がいい。
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2025年8月27日(水)ぜろ FT新聞 No.4599
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2025年8月28日(木)東洋夏 FT新聞 No.4600
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.4
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東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第4回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロによる捜査が続きます。
中間イベントを迎え、少年シグナスはとうとう『写身の殺人者』と遭遇!
しかし、何故か頼れるクロも見当たらず、シグナス1人で立ち向かう事になり……!
悪夢が正夢にならぬよう、どうぞ応援してあげて下さい!
(天)
2025年8月29日(金)休刊日 FT新聞 No.4601
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(緒方直人さん)
『死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について』面白かったです。死(ゲームオーバー)をどのように扱うかが作家によってこんなにも違うとは驚きの視点でした。特に死が物語からの非常口であるという点、確かに激ムズゲームブックに苦労してると「もう嫌だ!終わりにしてくれ!殺してくれー!」とか発狂しちゃう時、ありますもんね。ある意味、なんて優しい「死」もあるのだろうと感心しちゃいました。
(お返事:くろやなぎ)
ご感想ありがとうございます! 死(ゲームオーバー)のパラグラフの位置づけや描写は、その作品のストーリーや雰囲気はもちろん、ゲーム上のシステムからも影響や制約を受けますので(たとえば「ミツユビオニトカゲ」的なシステムがある場合は、ひとまず特定のパラグラフに行く必要がある等)、作家さんや作品の特徴が総合的に反映されやすいのかもしれません。『送り雛』は、ある意味では「巻き込まれ型」の物語で、さらに読者に対しても主体的な解釈を要求する作品なので、主人公目線でも読者目線でも「もう何も考えずに眠りたい…」的な気持ちが発生するのもよくわかる気がしていて、非常口的な幕引きが用意されていることに納得感がありますね。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブックの「死」で有名な<14に行け>のハービー・ブレナンの『ドラキュラ城の血闘』では、ドラキュラ伯爵を倒す為にヘルシング教授と一緒に「きみ」は戦っているうちに噛まれすぎると自分が吸血鬼になってしまいドラキュラの僕としてヘルシング教授と戦う「ドラキュラ篇」が始まるという2部構成になっていて、これも「死」の別パターンなのかと思います。
(お返事:くろやなぎ)
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(ププププーさん)
FT新聞いつも楽しみにしております。
8月26日のスーパーアドベンチャーがよく判る本記事につきまして、意見が異なる箇所がありましたので感想として送らせていただきます。
vol4とvol8において、ゴールデン・ドラゴン・シリーズの主人公像を没個性的な「無色透明な君」として語られています。個人的に意見が異なる部分でした。
このシリーズの総論としては、無色透明な主人公という部分は理解できますが各作品ではその辺りかなり違うと考えます。
ドラゴンの目(ウルリックイベントで侮蔑・恐怖、物語の最初と最後で任務が容易いと語る軽口?余裕を見せる)、炎の神殿(油断した敵に唾を吐きかけようとして自重、物語らぬ像に略奪しないと語り掛ける誇り高さと敬意を表す心)等明確に強い個性を持たされております。
失われた魂の城でもそれより個性としては薄いかもしれませんが攻略自体には善性を試されており、それに応える主人公像を想定されていると思います。
このシリーズ全ての作品が「無色透明の君」とは言えないと考えます。名前を自由に付けられるにしても、「無色透明」と総論で語るのはやや粗い表現であるように思われました。
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田林先生の記事につきましては、「ベルゼブルの竜」主人公も無色透明として判別されておりました。私はこれには完全同意でして、自分の趣味範囲でSNS報告しようと考えておりました。今後の記事でどのように取り扱われるのか楽しみにしております。
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いつも拙記事をご愛読くださり、どうもありがとうございます。そして、新たな気づきを投げかけてくださって感謝しております! 確かに、「名前がない」からといって「主人公キャラクターに個性がない」というのは違うかもしれません。『ドラゴンの目』のウルリックイベントはそれだけで恐怖ですが、キャラクターの個性が色濃く出た瞬間でもありましたね。また、『炎の神殿』は序盤にミンキーというサルと仲良くなるなど、優しさと誇り強さが見られました。もちろん無色透明の君だからと言って、感情が全くないわけではないですから、そこは新しい視点として開拓できる可能性があるように思いました。例えば『ドラゴンの目』では無敵の海の魔王ナックラヴィ—や悪辣なマンティス卿など、とにかく主人公以外のキャラクターが際立っていますが、それに付随して「あなた」にも感情が書き分けられていたと感じています。ご指摘、ありがとうございます!
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このシリーズは第二作の「ピラミッドの謎」で魅力ポイントが一定数以下だと「あなたにお手伝いしていただくわけにはいかないわ。正義の心がなさすぎるもの。」とワルキューレに同行を断られるというバットエンド?になりますね。まあ最初からやり直す手もありますが…。
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いつもお便り、どうもありがとうございます! 『ピラミッドの謎』のあのエンディングは衝撃的でしたね。魅力ポイントが単なる数値的な飾りでなく、しっかりと動いていた強烈なシーンだと思います。あまり重視されないと思われがちな魅力イベント(戦闘で役に立たない、など)が決定的な役割を果たしますので、「悪人プレイ」を満喫していたプレイヤーはびっくりしたことでしょう。その辺りのポイントの軽重というか、バランスもしっかり取れていましたね。しかしあそこまで言われたら、プレイヤーは心を入れ替えて『迷宮のドラゴン』からやり直すしかないかもしれません(笑)。
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2025年8月29日金曜日
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2025年8月28日木曜日
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.4 FT新聞 No.4600
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ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイ vol.4
(東洋 夏)
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FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!
東洋 夏(とうよう なつ)と申します。
本日はサン・サレンが舞台のd33シナリオ『写身の殺人者』のリプレイ小説をお届けいたします。
製本版『雪剣の頂 勇者の轍』に収録された、サン・サレン四部作のひとつです。
ファンメイドのリプレイとなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。
この連載は隔週でお送りしており、本日は第四回にあたります。
今日が初めての方にもお楽しみいただけるよう、まずは少しだけ主人公たちと前回までのあらすじをご紹介させていただきますね。
主人公を務めますのは、十二歳の聖騎士見習いシグナスと、元人間だと主張する不思議な〈おどる剣〉クロ。主人公ふたりをプレイヤーひとりが担当するスタイルでお送りします。
シグナスとクロは居合わせたサン・サレンの街で「悪夢殺人」とでも言うべき事件に遭遇します。これは自分の姿をした何者かに殺される夢を見て、その後、現実でも殺されてしまう。そんな気味の悪い事件なのですが、ついにシグナスもその悪夢を見てしまいました。
このままでは自分の身にも危険が及ぶということで捜査に乗り出したふたりでしたが、前回のリプレイでは、我こそは巷を騒がす殺人犯だという三人組に襲われた挙句、市場では金貨をすられるという災難に見舞われます。
ダイス目からはシグナスくんの人間に剣を向けることをためらう優しい性格が明らかになり、プレイヤーはこの厳しい世界で彼が騎士として生きて行けるのか、不安で胸がいっぱいになってきました。
そんなところから今回の冒険は始まります。
悪夢は待ってくれません。追い付かれる前に解決に到れるか、いざダイスに問うてみましょう!
なお、ここから先はシナリオのネタバレを前提に記述します。プレイするまで内緒にしておいてくれという方は一旦この新聞を閉じ、代わりにシナリオを開いてサン・サレンにお出かけいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは捜査の記録をご覧あれ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[探索記録4]中間イベント:路地裏の襲撃
市場から一本離れた路地裏は、人通りもなく静かである。シグナスはスリに刃物で底を切られた財布から金貨を取り出し、ローブをまさぐって、少しはまともそうな場所にしまい直す。
「踏んだり蹴ったりだよ」
と口を尖らせたシグナスに、
「動いた証拠だ」
クロは言った。
「領主館から出て、主人の手を借りず歩いているのだから」
「慰めてくれてるの?」
「さあな」
次は何処へ行くべきだろうか。市場は確かに人が沢山いたが、落ち着いて話が出来るような所ではなかった。最初に事件が起こった家とか、そういう所から探すのが良いのかもしれない。シグナスは自分の頬をぱちんと叩いて、気合いを入れた。
「調査続行だ!」
(※さて、このイベントでは「出目21」を通過しているかを問われます。ゲームブックっぽくて面白いですね。FT書房様の作品ならではという感じがします。出目21は薬局です。そう、いの一番に出たアグピレオ先生の薬局です。その場合は、こうシナリオに書かれています。「君は真っ暗な空間で、自分そっくりの殺人者と一対一で戦う」と。シグナスくん、これは危険な気配がしますよ!)
雪が溶けて、所々に水溜まりが出来ている。うっかり足を突っ込まないよう下を向いて歩く。そこだけ見れば確かに春らしい青空と、サン・サレンの尖った屋根の民家、それから自分の顔。異国にいるのだ、という実感が急に湧いてきて、じっと眺めてしまった。
すると、奇妙なことにシグナスは気づく。水溜まりの中の自分が、勝手に動いているような気がするのだ。不審に思い、試しに右腕を上げてみると、水溜まりの中の自分は不気味な形に唇を吊り上げて、にやりと笑い返すではないか。
「えっ、何!?」
身をすくませたシグナスに向かって、水溜まりの中からもう一人のシグナスが勢いよく飛び出し、組み付くと、さらに抵抗を許さない速さでこちらの顔に手を伸ばした。
「やめろ!」
顔を抉られてはたまらない。必死に振りほどいて目を開けると、そこは路地裏ではなかった。路地裏ではないどころか、恐らく何処でもなかった。のっぺりとした薄暗闇が前後左右に広がっている。クロもいない。邪悪なまじないに囚われてしまったのだろうか。
微かに金属が触れ合う音がして振り返ると、そこに自分が立っていた。にやにや笑いは水溜まりに映った時と同じである。自分はこんな嫌らしい顔をしているのだろうか。違う。絶対に違う。これほど邪悪な顔はしていないはずだ。そうですよね。そう言ってください、どうか此処に来て、サー・ノックス! そして善神セルウェー様、お救いください! 自分のニセモノに襲われてるんです!
必死に念じたが奇跡は起こらなかった。闇は闇のままで、もう一人の自分は気持ち悪い笑いを顔に張りつけたまま、抜き身の剣を持ってぶらぶらと近づいてきた。
(落ち着け、落ち着くんだ、僕)
自分の姿をした殺人者に襲われる。これはまさしく、悪夢の後に訪れるという状況だ。
(じゃあさ、もしこいつが犯人なら……)
ここで懲らしめたら解決するんじゃなかろうか。サー・ノックスにも感心していただけるはず!
シグナスは意を決して剣を抜いた。
「い、いくぞ殺人犯! 覚悟しろっ」
(※戦う相手は〈写身の襲撃者〉。レベル4、生命点3、攻撃数1。反応表は常に【死ぬまで戦う】です。一対一ですから、今回はクロの援護は得られません。技量点0のシグナスにはレベル4は立派な強敵。踏ん張りどころですよ、シグナスくん。さて大切な初撃、1ラウンドの攻撃は……出目1、ファンブル(大失敗)! これはまずい。大変まずいです。防御ロールの方もあえなく失敗してしまいました。どう見ても弱気になっています)
突きつけた切っ先が震えている。正直なところ、実戦らしい実戦は初めてなのだ。酔っ払いに立ち向かった時とは違うってところを見せるんだぞ、と自分に言い聞かせて駆け出してみる。サー・ノックス曰く、何事も機先を制するのが第一だという。ニセモノの自分が反応するより早く、まずは斬りつけることだ。
「ええい!」
しかしシグナスの渾身の一撃は、呆気なくかわされる。にやにや笑ったままニセモノはひょいと体を捻っただけで避けてみせ、そこから素早くシグナスの肩を剣で突いた。
「ひっ……」
飛び退いたシグナスは思わず自分の肩を触り、指先に赤い血が付いたのを見てぞっとする。まやかしではなく、本当に怪我をしているのだ。
(※2ラウンド目。ここで流れを引き寄せたいので、技能【全力攻撃】を使います。筋力点を使って攻撃ロールの判定を行うことが出来るという技ですね。単純な技能ではありますが、技能点0、筋力点3のシグナスにとっては大きな加点です。ここで攻撃成功、さらに防御を出目6で成功させました。別に防御でクリティカル(大成功)が出てもボーナスはないのですが、気分的にこう、完璧に見切ったぞという盛り上がりを得ることが出来ますね。1ラウンド目とはガラッと出目が変わりましたので、シグナスくんの闘争心にようやく火が付いたということでしょうか)
これは現実。まじないの類だとしても、戦って敗れれば死が待つのみ。
そう飲み込んだシグナスの体内が、燃え上がるように、かあっと熱くなった。今まで遠慮がちだった戦士としての資質が、さあ解き放てと叫んでいるのを感じる。深呼吸をすると、体の隅々まで心地好い緊張感が伝播した。
「我こそは、サー・ノックスの一番弟子シグナス。お前の悪行もここまでだ!」
鋭い踏み込みと共に走った刃が、ニセモノの腕をすっぱりと斬り裂く。狼狽したニセモノの放った剣撃は蝸牛の如く遅く感じられ、シグナスはそれを易々と弾き返した。
(見えてる)
世界の中で自分だけが速くなったような。加速しているような。そんな不思議な高揚感が沸き起こる。
(※3ラウンド目。何しろ筋力点が3しかないので、通常の攻撃に賭けます。何と今回は攻撃防御ともすんなり成功しました。いいぞいいぞ。調子に乗って4ラウンド目も引き続き振りますと、ここでシグナスくん頑張りました、連続成功で勝利となります!)
二撃目も極めて正確だ。にやにや笑いを引っ込めたニセモノの肩にシグナスは剣を突き刺し、素早く引っ込めた。ニセモノの反撃は届かない。
シグナスの心はますます澄み渡っている。今なら無敵だと思えるほどに。三撃目は、ついに致命傷を与えた。ニセモノの首をざっくりと斬ったのである。その不気味な手応えでシグナスは我に返った。
(僕は何を喜んでるんだろう。人間に斬りつけることが楽しいだなんて)
ニセモノがゆっくりと倒れ込むと同時に、闇が晴れる。正常な世界に戻ってきたのだ。しかし視界がおかしい。どうやら今、シグナスは仰向けになって空を見ているらしかった。
「どういうこと」
「お前が暴れたからだ」
その言葉に驚いて体を起こそうとすると、肩口がひどく痛む。刺されたのだから当然だ。
「クロ! 無事だったんだね」
「オレの目玉を潰そうとした奴の言葉とは思えんな」
「え?」
「水溜まりを見ていたら突然わめきだして、オレに斬りかかって、目玉を突こうとしたんだぞ」
「そんな事するはずないじゃん! それにクロも見てたでしょ、水溜まりの中から僕にそっくりなのが出てきたところ!」
「……いいや?」
「嘘つかないでよ。僕は、僕のニセモノと戦ってたんだから! 突然真っ暗になってさ、クロなんてそこにいなかったよ!」
「……」
〈おどる剣〉は首を傾げる代わりに、空中で斜め四十五度に傾いた。
シグナスは混乱する。クロは嘘を言わないと思う。でも僕が経験した、あの戦いは嘘じゃなかったはずだ。どういう事なんだ、と。
その時、シグナスは漂う香りに気づいた。こんな路地裏には似合わない香り。アグピレオ先生の薬局で飲ませてもらったハーブティーの香りがするのだ。路地裏には似つかわしくない気もするが、悪夢がはびこり出してから売れ行き好調だという話なので、路地に面した家で誰かが淹れているのかもしれない。先生の穏やかな顔を思い出すと、少しだけ気分が落ち着いたようだった。
(※戦闘に勝利した後、ランダムに従者を選び目標値4の【幸運ロール】を実施します。失敗すると、主人公はいきなり武器を振りかざして従者に襲い掛かり、その従者の命を奪ってしまうとのこと。今回は従者がいないため、シグナスがクロに対して判定をすることにしますが、判定は……失敗。主人公ふたりプレイの場合の記述がございませんので、ここは「クロが生命点に1ダメージを受けた」という処理にさせていただきます)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回のリプレイは以上となります。
ついに殺人犯が再び襲ってきました!
タイトルの『写身の殺人者』に繋がるイベント名ということで、実はここでも「手がかり」を入手するチャンスがあったのですが、戦闘後の【幸運ロール】失敗により空振りになってしまいました。なかなか上手くいきませんね。しかしその上手くいかない感が、レベル7であるシグナスくんの半人前っぷりをリアルに表している気もしています。
個人的な話ですが、私はこのリプレイを書いている時にちょうど仕事で行き詰っており、シグナスくんの悪戦苦闘が他人事ではなく思われて、砕けた心をそのまま貼り付けるようにして文章を書いていました。
読者の皆様も空回りする自分や部下を見るような気持ちでやきもきされているかもしれませんが、努力する者が報われますよう、引き続き応援していただければ嬉しいです。
それではまた、再来週の木曜日にお目にかかりましょう。
良きローグライクハーフを!
◇
(登場人物)
・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。殺人者の悪夢を見ておねしょした。
・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。
・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。
・ベルールガ…ノックスの同僚の聖騎士。優しい。
・サン・サレンの領主…殺人者の悪夢に苛まれている。
・アグピレオ…領主付きの医師。心が落ち着くハーブティーの売り上げが好調。
■作品情報
作品名:『写身の殺人者』
著者:ロア・スペイダー
イラスト:海底キメラ
監修:杉本=ヨハネ、紫隠ねこ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録
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ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイ vol.4
(東洋 夏)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!
東洋 夏(とうよう なつ)と申します。
本日はサン・サレンが舞台のd33シナリオ『写身の殺人者』のリプレイ小説をお届けいたします。
製本版『雪剣の頂 勇者の轍』に収録された、サン・サレン四部作のひとつです。
ファンメイドのリプレイとなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。
この連載は隔週でお送りしており、本日は第四回にあたります。
今日が初めての方にもお楽しみいただけるよう、まずは少しだけ主人公たちと前回までのあらすじをご紹介させていただきますね。
主人公を務めますのは、十二歳の聖騎士見習いシグナスと、元人間だと主張する不思議な〈おどる剣〉クロ。主人公ふたりをプレイヤーひとりが担当するスタイルでお送りします。
シグナスとクロは居合わせたサン・サレンの街で「悪夢殺人」とでも言うべき事件に遭遇します。これは自分の姿をした何者かに殺される夢を見て、その後、現実でも殺されてしまう。そんな気味の悪い事件なのですが、ついにシグナスもその悪夢を見てしまいました。
このままでは自分の身にも危険が及ぶということで捜査に乗り出したふたりでしたが、前回のリプレイでは、我こそは巷を騒がす殺人犯だという三人組に襲われた挙句、市場では金貨をすられるという災難に見舞われます。
ダイス目からはシグナスくんの人間に剣を向けることをためらう優しい性格が明らかになり、プレイヤーはこの厳しい世界で彼が騎士として生きて行けるのか、不安で胸がいっぱいになってきました。
そんなところから今回の冒険は始まります。
悪夢は待ってくれません。追い付かれる前に解決に到れるか、いざダイスに問うてみましょう!
なお、ここから先はシナリオのネタバレを前提に記述します。プレイするまで内緒にしておいてくれという方は一旦この新聞を閉じ、代わりにシナリオを開いてサン・サレンにお出かけいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは捜査の記録をご覧あれ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[探索記録4]中間イベント:路地裏の襲撃
市場から一本離れた路地裏は、人通りもなく静かである。シグナスはスリに刃物で底を切られた財布から金貨を取り出し、ローブをまさぐって、少しはまともそうな場所にしまい直す。
「踏んだり蹴ったりだよ」
と口を尖らせたシグナスに、
「動いた証拠だ」
クロは言った。
「領主館から出て、主人の手を借りず歩いているのだから」
「慰めてくれてるの?」
「さあな」
次は何処へ行くべきだろうか。市場は確かに人が沢山いたが、落ち着いて話が出来るような所ではなかった。最初に事件が起こった家とか、そういう所から探すのが良いのかもしれない。シグナスは自分の頬をぱちんと叩いて、気合いを入れた。
「調査続行だ!」
(※さて、このイベントでは「出目21」を通過しているかを問われます。ゲームブックっぽくて面白いですね。FT書房様の作品ならではという感じがします。出目21は薬局です。そう、いの一番に出たアグピレオ先生の薬局です。その場合は、こうシナリオに書かれています。「君は真っ暗な空間で、自分そっくりの殺人者と一対一で戦う」と。シグナスくん、これは危険な気配がしますよ!)
雪が溶けて、所々に水溜まりが出来ている。うっかり足を突っ込まないよう下を向いて歩く。そこだけ見れば確かに春らしい青空と、サン・サレンの尖った屋根の民家、それから自分の顔。異国にいるのだ、という実感が急に湧いてきて、じっと眺めてしまった。
すると、奇妙なことにシグナスは気づく。水溜まりの中の自分が、勝手に動いているような気がするのだ。不審に思い、試しに右腕を上げてみると、水溜まりの中の自分は不気味な形に唇を吊り上げて、にやりと笑い返すではないか。
「えっ、何!?」
身をすくませたシグナスに向かって、水溜まりの中からもう一人のシグナスが勢いよく飛び出し、組み付くと、さらに抵抗を許さない速さでこちらの顔に手を伸ばした。
「やめろ!」
顔を抉られてはたまらない。必死に振りほどいて目を開けると、そこは路地裏ではなかった。路地裏ではないどころか、恐らく何処でもなかった。のっぺりとした薄暗闇が前後左右に広がっている。クロもいない。邪悪なまじないに囚われてしまったのだろうか。
微かに金属が触れ合う音がして振り返ると、そこに自分が立っていた。にやにや笑いは水溜まりに映った時と同じである。自分はこんな嫌らしい顔をしているのだろうか。違う。絶対に違う。これほど邪悪な顔はしていないはずだ。そうですよね。そう言ってください、どうか此処に来て、サー・ノックス! そして善神セルウェー様、お救いください! 自分のニセモノに襲われてるんです!
必死に念じたが奇跡は起こらなかった。闇は闇のままで、もう一人の自分は気持ち悪い笑いを顔に張りつけたまま、抜き身の剣を持ってぶらぶらと近づいてきた。
(落ち着け、落ち着くんだ、僕)
自分の姿をした殺人者に襲われる。これはまさしく、悪夢の後に訪れるという状況だ。
(じゃあさ、もしこいつが犯人なら……)
ここで懲らしめたら解決するんじゃなかろうか。サー・ノックスにも感心していただけるはず!
シグナスは意を決して剣を抜いた。
「い、いくぞ殺人犯! 覚悟しろっ」
(※戦う相手は〈写身の襲撃者〉。レベル4、生命点3、攻撃数1。反応表は常に【死ぬまで戦う】です。一対一ですから、今回はクロの援護は得られません。技量点0のシグナスにはレベル4は立派な強敵。踏ん張りどころですよ、シグナスくん。さて大切な初撃、1ラウンドの攻撃は……出目1、ファンブル(大失敗)! これはまずい。大変まずいです。防御ロールの方もあえなく失敗してしまいました。どう見ても弱気になっています)
突きつけた切っ先が震えている。正直なところ、実戦らしい実戦は初めてなのだ。酔っ払いに立ち向かった時とは違うってところを見せるんだぞ、と自分に言い聞かせて駆け出してみる。サー・ノックス曰く、何事も機先を制するのが第一だという。ニセモノの自分が反応するより早く、まずは斬りつけることだ。
「ええい!」
しかしシグナスの渾身の一撃は、呆気なくかわされる。にやにや笑ったままニセモノはひょいと体を捻っただけで避けてみせ、そこから素早くシグナスの肩を剣で突いた。
「ひっ……」
飛び退いたシグナスは思わず自分の肩を触り、指先に赤い血が付いたのを見てぞっとする。まやかしではなく、本当に怪我をしているのだ。
(※2ラウンド目。ここで流れを引き寄せたいので、技能【全力攻撃】を使います。筋力点を使って攻撃ロールの判定を行うことが出来るという技ですね。単純な技能ではありますが、技能点0、筋力点3のシグナスにとっては大きな加点です。ここで攻撃成功、さらに防御を出目6で成功させました。別に防御でクリティカル(大成功)が出てもボーナスはないのですが、気分的にこう、完璧に見切ったぞという盛り上がりを得ることが出来ますね。1ラウンド目とはガラッと出目が変わりましたので、シグナスくんの闘争心にようやく火が付いたということでしょうか)
これは現実。まじないの類だとしても、戦って敗れれば死が待つのみ。
そう飲み込んだシグナスの体内が、燃え上がるように、かあっと熱くなった。今まで遠慮がちだった戦士としての資質が、さあ解き放てと叫んでいるのを感じる。深呼吸をすると、体の隅々まで心地好い緊張感が伝播した。
「我こそは、サー・ノックスの一番弟子シグナス。お前の悪行もここまでだ!」
鋭い踏み込みと共に走った刃が、ニセモノの腕をすっぱりと斬り裂く。狼狽したニセモノの放った剣撃は蝸牛の如く遅く感じられ、シグナスはそれを易々と弾き返した。
(見えてる)
世界の中で自分だけが速くなったような。加速しているような。そんな不思議な高揚感が沸き起こる。
(※3ラウンド目。何しろ筋力点が3しかないので、通常の攻撃に賭けます。何と今回は攻撃防御ともすんなり成功しました。いいぞいいぞ。調子に乗って4ラウンド目も引き続き振りますと、ここでシグナスくん頑張りました、連続成功で勝利となります!)
二撃目も極めて正確だ。にやにや笑いを引っ込めたニセモノの肩にシグナスは剣を突き刺し、素早く引っ込めた。ニセモノの反撃は届かない。
シグナスの心はますます澄み渡っている。今なら無敵だと思えるほどに。三撃目は、ついに致命傷を与えた。ニセモノの首をざっくりと斬ったのである。その不気味な手応えでシグナスは我に返った。
(僕は何を喜んでるんだろう。人間に斬りつけることが楽しいだなんて)
ニセモノがゆっくりと倒れ込むと同時に、闇が晴れる。正常な世界に戻ってきたのだ。しかし視界がおかしい。どうやら今、シグナスは仰向けになって空を見ているらしかった。
「どういうこと」
「お前が暴れたからだ」
その言葉に驚いて体を起こそうとすると、肩口がひどく痛む。刺されたのだから当然だ。
「クロ! 無事だったんだね」
「オレの目玉を潰そうとした奴の言葉とは思えんな」
「え?」
「水溜まりを見ていたら突然わめきだして、オレに斬りかかって、目玉を突こうとしたんだぞ」
「そんな事するはずないじゃん! それにクロも見てたでしょ、水溜まりの中から僕にそっくりなのが出てきたところ!」
「……いいや?」
「嘘つかないでよ。僕は、僕のニセモノと戦ってたんだから! 突然真っ暗になってさ、クロなんてそこにいなかったよ!」
「……」
〈おどる剣〉は首を傾げる代わりに、空中で斜め四十五度に傾いた。
シグナスは混乱する。クロは嘘を言わないと思う。でも僕が経験した、あの戦いは嘘じゃなかったはずだ。どういう事なんだ、と。
その時、シグナスは漂う香りに気づいた。こんな路地裏には似合わない香り。アグピレオ先生の薬局で飲ませてもらったハーブティーの香りがするのだ。路地裏には似つかわしくない気もするが、悪夢がはびこり出してから売れ行き好調だという話なので、路地に面した家で誰かが淹れているのかもしれない。先生の穏やかな顔を思い出すと、少しだけ気分が落ち着いたようだった。
(※戦闘に勝利した後、ランダムに従者を選び目標値4の【幸運ロール】を実施します。失敗すると、主人公はいきなり武器を振りかざして従者に襲い掛かり、その従者の命を奪ってしまうとのこと。今回は従者がいないため、シグナスがクロに対して判定をすることにしますが、判定は……失敗。主人公ふたりプレイの場合の記述がございませんので、ここは「クロが生命点に1ダメージを受けた」という処理にさせていただきます)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回のリプレイは以上となります。
ついに殺人犯が再び襲ってきました!
タイトルの『写身の殺人者』に繋がるイベント名ということで、実はここでも「手がかり」を入手するチャンスがあったのですが、戦闘後の【幸運ロール】失敗により空振りになってしまいました。なかなか上手くいきませんね。しかしその上手くいかない感が、レベル7であるシグナスくんの半人前っぷりをリアルに表している気もしています。
個人的な話ですが、私はこのリプレイを書いている時にちょうど仕事で行き詰っており、シグナスくんの悪戦苦闘が他人事ではなく思われて、砕けた心をそのまま貼り付けるようにして文章を書いていました。
読者の皆様も空回りする自分や部下を見るような気持ちでやきもきされているかもしれませんが、努力する者が報われますよう、引き続き応援していただければ嬉しいです。
それではまた、再来週の木曜日にお目にかかりましょう。
良きローグライクハーフを!
◇
(登場人物)
・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。殺人者の悪夢を見ておねしょした。
・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。
・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。
・ベルールガ…ノックスの同僚の聖騎士。優しい。
・サン・サレンの領主…殺人者の悪夢に苛まれている。
・アグピレオ…領主付きの医師。心が落ち着くハーブティーの売り上げが好調。
■作品情報
作品名:『写身の殺人者』
著者:ロア・スペイダー
イラスト:海底キメラ
監修:杉本=ヨハネ、紫隠ねこ
発行所・発行元:FT書房
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https://booth.pm/ja/items/6820046
『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
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2025年8月27日水曜日
第2回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4599
第2回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
はじまりました「狂える魔女のゴルジュ」リプレイ。
前回は、長い導入。主人公ミナ・ガーデンハートが家族と散り散りになったいきさつが語られました。
盗賊都市ネグラレーナへと生活の拠点を移したニナとミナ。ニナは盗賊ギルドへ、ミナは魔法学園へ。
ミナがからくり都市チャマイへの留学を決めたことで、2人の生活の場は離れます。
しかし、魔法の成果が上がらないミナはあるとき、魔道具を求めて学園へ忍び込みます。
そこで偶然、自身が師事する教授が禁断の研究を行っており、まさにその研究成果を秘密裏に持ち出そうとする現場を目撃するのでした。
そしてミナは、その「研究成果」を、こっそり横取りしようと画策するのでした。
●アタック01-4 闇の加護
モータス教授たちの密談の盗み聞きによれば、「魔法の時計」は時計塔にあるという。
ボクは時計塔に先回りすることにした。
教授たちが秘密の話を続けている隙に、先んじて校長室に忍び込んで、時計塔の鍵を盗み出した。
ついでに、キーケースの中の各部屋の鍵を、いくつか入れ替えておいた。
時計塔の鍵のスロットには、明らかに時計塔のものではないとわかる、器具庫の鍵をセットしておいた。
これで、しばらくは時間を稼げるはず。
ボクは校舎を出、時計塔へ。入口の鍵はばっちり合った。がちゃりと鍵を開け、時計塔の内部階段を上る。
入るのは初めてだ。モータス教授の言っていた魔法の時計は、どこにあるのだろう。
巧妙に隠されていたら、見つけられないかもしれない。ここはボクの運に賭けるしかない。
巨大な歯車が回る空間の中に、それはあった。
研究施設みたいになってる。大理石の台座に、小さな時計たちが並んでいる。
こんなに堂々と置いてあって、見つからないものなのか。
もしかしたら、年に1回程度のメンテナンスの時くらいしか、時計塔に入る人はいないのかもしれない。
そうだよね。入る人がほとんどいないから、隠し場所にはもってこいだったわけで。
台座に並べられている時計は、全部で7個。
ボクは魅入られたように、時計のひとつに手を伸ばした。
時計に触れた瞬間、心に声が響いた。
「汝……力を欲する者か……」
問いかけだ。昏くいびつで、ぞっとするほどに荘厳な声。
ボクは理解した。この時計の力を使いこなせるようになるためには、この声の主に応じなければならないと。
この時計の形を模した魔道具には、モータス教授が言っていたとおり、本当に、禁断の力が宿っていると。
ボクに、迷いはなかった。
姉たちを助ける力を手に入れるためには、なんだってやる。
師匠を出し抜いて研究成果を横取りだってする。謎の声の主の力も借りる。禁断の魔道具を使いこなしてみせる。
どんなに罪を重ねても、愛を裏切らない。
そう、誓ったから。
ボクは、声の主の提案を、受け入れた。
「ボク、ミナ・ガーデンハートは、この導きに感謝し、闇神オスクリード様の御名を永遠に讃えることを、ここに誓います」
こうしてボクは、闇神オスクリードの信徒となった。
その瞬間、ざわざわ、とした奇妙な感覚が体中を駆け巡る。
「あ……あっ……」
意識はそのままに、身体そのものが、別のものに置きかわっていくような、不思議な感覚。
でもそれは、恐怖を感じるものではなく、むしろ心地良いもので……。その心地よさが、逆に不安をかきたてた。
闇の神様に、祝福されているということ?
その感覚は、やがておさまった。
じっと手を見る。
肌の色が、変わっていた。闇色に近い、暗い色調に。闇の神の加護を受けた証だ。
ボクは自分自身が、取り返しのつかない状態になったことを悟った。
……でも、後悔はない。
自分で選んだことだから。
これで力が得られたのなら。これがその代償というのなら。
さあ、モータス教授たちがここに来る前に、退散しよう。
ボクは、急いで6個の腕時計をベルトにつけ、残る1個の懐中時計を首からかけた。
他にあった補助的な器具も持てるだけ持つと、急ぎ足で螺旋階段を下る。
入口に近づいたところで、外からざわついた気配を感じた。
教授たちが来たに違いない。
戸口にがちゃりと手がかけられる音がした。
「鍵がかかっていません。やはり、何者かが入り込んでいるようです」
「なんということだ。とにかく早く。侵入者を排除し、アレを確保せねば」
左右を見回す。隠れられる場所はない。
ボクは戸口の影の壁際に、気配を殺して立つほかなかった。
時計塔の扉が開く。モータス教授とその連れの小男が、急ぎ足で階段を駆け上がっていった。
教授たちがあわてふためいていたこと、そして闇色の肌が、ボクを闇に溶け込ませてくれたこと。2つの幸運が重なって、ボクは見つからずに済んだ。
このまま時計塔の鍵を閉めてしまえば、モータス教授たちは逃げ場を失い、逮捕されるかもしれない。
そんなよこしまな考えが一瞬だけよぎったが、すぐに振り払った。
教授はボクに、素晴らしい研究成果を与えてくれたんだ。感謝しかない。
不正がなんだっていうんだ。ボクが今している罪、そして闇の神様に魅入られたことを思えば、なんてことはない。
ボクは時計塔の鍵をそっと置くと、開いたままの入口から外に出た。
そしてボクは、夜の闇に紛れた。
●アタック01-5 時の魔法使い
ボクは、早々にチャマイを立ち去ることにした。
数少ない友だちに、別れも告げずに去ることになるが仕方がない。最初からそのつもりだったし。
ボクは最初から、学園の魔道具を盗み出して消えるつもりだった。
だから、学園の宿舎には二度と戻らないつもりで出た。逃走の準備は万端だ。
最初の計画では、安宿に泊まりつつ、ほとぼりが冷めるのを待って逃走するつもりだった。
けれどそこは、計画の変更を余儀なくされた。
肌の色が変わったボクが知り合いに会ってしまうリスクを思えば、早急に動いた方がいい。
今回の事態が発覚するには、もう少し時間がかかるだろう。
しかも、最初に矛先が向くのはモータス教授たちだ。
いつ動くのか。今でしょ。
ボクは、闇夜に紛れて朝を待った。
開門を待ち、朝の喧騒に紛れて、正門から堂々と外に出た。
もしかしたら、モータス教授たちが門のそばで、時計を盗んだ者がいないか観察しているかもしれない。
けれど、誰がやったかはわからないはず。実物さえ隠しておけば、見つかることはないはずだ。
それに、あちらもおたずねものになるのだ。いくら時計を取り戻したくても、そんな余裕はないと思う。
ボクは、何の問題もなくチャマイから外に出ることができた。
チャマイから北に向けて旅をしながら、盗み出した魔道具の研究を、少しずつ進めた。
オスクリード様は信仰告白の際に、ボクに「魔法の時計」の知識を与えてくれていた。それがボクの望みだったから。
だから魔法学園で落ちこぼれかけていたボクなんかでも、時の時計の構造を理解することができた。
モータス教授の10年分の成果を、実物だけでなく知識面からも得てしまうなんて、とんだチート能力だ。
野営をしながら、焚火の前に時計を並べる。
ボクが持ち出した7つの魔法の時計が、炎のゆらめきを映し、神秘的な光沢を放っている。
時計は全部、止まっている。魔法を使うときだけ時を刻む、不思議な時計だ。
その1つ1つに対応した、時の魔法がある。
つまりボクは、時を操る7つの力を持っていることになる。
モータス教授のメモによれば、7つの時計には名称がある。
・枝分かれの未来時計
・速撃の戦時計
・時もどしの回復時計
・うたかたの齢時計
・跳兎の懐中時計
・夢渡りの覚醒時計
・刻々の狭間時計
7つの力を持ってるって言ったけど、実は今すぐに7つの力全部が使えるわけじゃない。
モータス教授は、「ほぼ完成している」と言っていた。
3つの時計は完成していて、すぐに使うことができる。
残る時計は歯車が不足していて、歯車を見つけ、修理することで使えるようになる。
そして、ボクはあの時計塔から、時計だけでなく歯車も3枚持ってきた。
その歯車を使ってどの時計を修理するかで、どの魔法を最初から使えるか、選ぶことができるってこと。
モータス教授の研究メモからわかった7つの時魔法について、ここで簡単に説明しておくよ。
きっと覚えきれないと思うから、だいたいでいい。また使う時になったら説明するから。
まずは、最初から使える3つの魔法から。
【枝分かれの未来時計】
この魔法を使うと、パラグラフの番号に「↑」マークがついている範囲を自由に行き来できる。
「指セーブ」をルール化したみたいなものだ。
【うたかたの齢時計】
10年単位で年齢を変えられる魔法。変身じゃなくて、実際に若くもなれば老いもする。
けっこう集中力が必要で、集中が切れたら元に戻ってしまう。
【跳兎の懐中時計】
数年から十数年くらい昔に時間をさかのぼれる魔法。自分だけ過去の世界に行ける。
これも集中力が切れると元の時代に戻る。
あと、跳兎の懐中時計は表紙や裏表紙にイラストが載ってるやつ。兎のデザインがかわいすぎて神。
次に、修理が必要な魔法の時計が4つ。
【速撃の戦時計】
スピードがマッハに。2倍速の魔法。歯車1枚で修理できる。
【時もどしの回復時計】
身体の時間を戻すことで、身体に受けた悪い影響をすべて取り去り回復する。歯車2枚で修理できる。
【夢渡りの覚醒時計】
仲間を悪夢から守る。悪夢を吸い取り、悪夢袋に入れる。歯車1枚で修理できる。
【刻々の狭間時計】
時を止めるザ・ワールド。消耗も大きい。歯車3枚で修理できる。
時の魔法は使う時に「悪夢」を消費する。悪夢って言われてもピンとこないと思うけど。
だからボクは、悪夢を蓄えるための「悪夢袋」を持ってる。時計と一緒に置いてあったものだ。
悪夢袋は闇色の小さな袋。不思議なことに、出し入れする口はない。小さな風船みたい。
7袋あって、今は悪夢をたくわえてふくらんでいる。
入っているのは、ボクの悪夢だ。覚えてないけど、けっこう悪夢を見ているみたい。
悪夢を持ち歩くってヘンな話だけど、夢の持つエネルギー?みたいなのを蓄えるらしい。
ボクの悪夢だけでなく、ほかの誰かの悪夢を蓄えることもできる。
悪い夢を持ち歩いている、と思うと気味が悪いけど、ボクにはこれが必要なんだ。
ボクが研究しながら理解してきた時の魔法は、こんなとこかな。
●インターミッション ルール説明
ここからようやく、ルール説明のパートが始まる。
いつもはここは、プレイヤーの人が説明的にやるところだけど、ここまでボク主体でやってきたから、ここもそのままいこう。
ボクのステイタスを示す、専用のキャラクターシートがある。
すっきりまとまってる。とってもわかりやすい。視認性がいいのは大事。
ルールとか説明とかあんまり読まなくても、キャラクターシートを見れば、ある程度推測できてしまうくらい。
んー。自分で自分のキャラシー説明するなんて、なんだか変な気分。
ボクの体力点は4点。ハートの形でチェックできるようになってる。0点になるとゲームオーバー。
次に、使える悪夢袋の数が、袋の形でチェックできるようになってる。
金貨は7枚、歯車は3枚持ってる。
その横に「不死化傷」という意味深なフレーズがあるけど、説明にはない。
吸血鬼が登場する作品なので、吸血鬼に傷つけられた場合とかにチェックが入るのかもしれない。
それから、持ってる時計の名前がずらり、並んでる。
修理に必要な歯車の数も見てわかるようになってる。
そして実は、8か所目のところに、カッコ書きで(〜時計)という欄が作られている。
つまり、冒険中に8個目の時の魔法が手に入る可能性があるってこと。
モータス教授にしか作れない超レア技術のはずなのに、いったいなにがあれば8個目の魔法を手にできるのだろう。
興味は尽きないね。
その下には、装備品の欄が。
5つの装備品がすでに名前つきで並んでおり、入手したらチェックするようになっている。
5つの装備品とは、「銀のナイフ」「ニンニク」「聖水」「羊皮紙」「吸血鬼ごろし」。
ほとんどが吸血鬼対策のアイテムだ。
最初から入手できるアイテムの名前がわかっているというのも親切設計だ。
これだけでも、いろいろ予想する材料になる。
さらに、仲間の欄がある。
仲間の欄には、3人のキャラクターの名前があり、チェックを入れられるようになっている。
「ボラミー」「フェル」「マイトレーヤ」の3人だ。
マイトレーヤのところにはさらに「待機」という項目にチェックを入れられるようになっている。
そして、ルール上は何も言及がないけれど、いちばん下にメモ欄があり、小さく「精密」という項目にチェックを入れられるようになっている。
これは非常に気になる。こういうところに、クリアのために必須ななにかが隠れている気がしてならない。
ルールの確認はこんなところかな。
これはボクからしたら、時の魔法の力で、未来に起きるかもしれないことを、ほんの少しだけ垣間見た気分だ。
そうだ。このキャラクターシートは、ボクが未来の可能性を感じ取った記録、ってことにしよう。
こうすることで、何か変わるのかって?
実はすごい変化がある。
これまでキャラクターシートは、プレイヤーのものだった。
でもボクの力なら、キャラクターシートに書かれていることは、未来の記憶として、ボクも知っていることにできる。
未来の記憶と言っても確定じゃない。起こるかもしれない未来の可能性だ。
たとえば、「ボラミー」という人物が登場したのなら、ボクは、その人物が仲間になるかもしれない未来があることを知っている、ということになるんだよ。
これって、すごいことだ。これだけで、このリプレイの記述そのものが変わってくるって思わない?
未来の記憶を引き出すのは、過去の記憶を思い出すのとまったく同じ感覚だ。
ただ、夢を見ているみたいにおぼろげで、はっきりしない。未来を思い出すって、すごく不思議。
じゃあ、ルールも確認できたところで、歯車3枚を使って、時計を修理しよう。
歯車は、一度はめると、ボクの技術ではもう外すことはできない。だから、修理する時計は慎重に選ばなければいけない。
まずは、その素早さで戦いや逃走に役立ちそうな、【速撃の戦時計】。体術に自信のないボクの弱点を補う時計だ。
そして回復は大事ということで、【時もどしの回復時計】にしよう。
【速撃】の修理に歯車1個、【時もどし】の修理に歯車2個を使うから、これで使い切りだ。
これで準備は整った。次回からは、ステイタスが決まったボクの冒険本番がはじまる。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/4897513
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
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【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
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【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
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編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ
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※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。
ぜろです。
はじまりました「狂える魔女のゴルジュ」リプレイ。
前回は、長い導入。主人公ミナ・ガーデンハートが家族と散り散りになったいきさつが語られました。
盗賊都市ネグラレーナへと生活の拠点を移したニナとミナ。ニナは盗賊ギルドへ、ミナは魔法学園へ。
ミナがからくり都市チャマイへの留学を決めたことで、2人の生活の場は離れます。
しかし、魔法の成果が上がらないミナはあるとき、魔道具を求めて学園へ忍び込みます。
そこで偶然、自身が師事する教授が禁断の研究を行っており、まさにその研究成果を秘密裏に持ち出そうとする現場を目撃するのでした。
そしてミナは、その「研究成果」を、こっそり横取りしようと画策するのでした。
●アタック01-4 闇の加護
モータス教授たちの密談の盗み聞きによれば、「魔法の時計」は時計塔にあるという。
ボクは時計塔に先回りすることにした。
教授たちが秘密の話を続けている隙に、先んじて校長室に忍び込んで、時計塔の鍵を盗み出した。
ついでに、キーケースの中の各部屋の鍵を、いくつか入れ替えておいた。
時計塔の鍵のスロットには、明らかに時計塔のものではないとわかる、器具庫の鍵をセットしておいた。
これで、しばらくは時間を稼げるはず。
ボクは校舎を出、時計塔へ。入口の鍵はばっちり合った。がちゃりと鍵を開け、時計塔の内部階段を上る。
入るのは初めてだ。モータス教授の言っていた魔法の時計は、どこにあるのだろう。
巧妙に隠されていたら、見つけられないかもしれない。ここはボクの運に賭けるしかない。
巨大な歯車が回る空間の中に、それはあった。
研究施設みたいになってる。大理石の台座に、小さな時計たちが並んでいる。
こんなに堂々と置いてあって、見つからないものなのか。
もしかしたら、年に1回程度のメンテナンスの時くらいしか、時計塔に入る人はいないのかもしれない。
そうだよね。入る人がほとんどいないから、隠し場所にはもってこいだったわけで。
台座に並べられている時計は、全部で7個。
ボクは魅入られたように、時計のひとつに手を伸ばした。
時計に触れた瞬間、心に声が響いた。
「汝……力を欲する者か……」
問いかけだ。昏くいびつで、ぞっとするほどに荘厳な声。
ボクは理解した。この時計の力を使いこなせるようになるためには、この声の主に応じなければならないと。
この時計の形を模した魔道具には、モータス教授が言っていたとおり、本当に、禁断の力が宿っていると。
ボクに、迷いはなかった。
姉たちを助ける力を手に入れるためには、なんだってやる。
師匠を出し抜いて研究成果を横取りだってする。謎の声の主の力も借りる。禁断の魔道具を使いこなしてみせる。
どんなに罪を重ねても、愛を裏切らない。
そう、誓ったから。
ボクは、声の主の提案を、受け入れた。
「ボク、ミナ・ガーデンハートは、この導きに感謝し、闇神オスクリード様の御名を永遠に讃えることを、ここに誓います」
こうしてボクは、闇神オスクリードの信徒となった。
その瞬間、ざわざわ、とした奇妙な感覚が体中を駆け巡る。
「あ……あっ……」
意識はそのままに、身体そのものが、別のものに置きかわっていくような、不思議な感覚。
でもそれは、恐怖を感じるものではなく、むしろ心地良いもので……。その心地よさが、逆に不安をかきたてた。
闇の神様に、祝福されているということ?
その感覚は、やがておさまった。
じっと手を見る。
肌の色が、変わっていた。闇色に近い、暗い色調に。闇の神の加護を受けた証だ。
ボクは自分自身が、取り返しのつかない状態になったことを悟った。
……でも、後悔はない。
自分で選んだことだから。
これで力が得られたのなら。これがその代償というのなら。
さあ、モータス教授たちがここに来る前に、退散しよう。
ボクは、急いで6個の腕時計をベルトにつけ、残る1個の懐中時計を首からかけた。
他にあった補助的な器具も持てるだけ持つと、急ぎ足で螺旋階段を下る。
入口に近づいたところで、外からざわついた気配を感じた。
教授たちが来たに違いない。
戸口にがちゃりと手がかけられる音がした。
「鍵がかかっていません。やはり、何者かが入り込んでいるようです」
「なんということだ。とにかく早く。侵入者を排除し、アレを確保せねば」
左右を見回す。隠れられる場所はない。
ボクは戸口の影の壁際に、気配を殺して立つほかなかった。
時計塔の扉が開く。モータス教授とその連れの小男が、急ぎ足で階段を駆け上がっていった。
教授たちがあわてふためいていたこと、そして闇色の肌が、ボクを闇に溶け込ませてくれたこと。2つの幸運が重なって、ボクは見つからずに済んだ。
このまま時計塔の鍵を閉めてしまえば、モータス教授たちは逃げ場を失い、逮捕されるかもしれない。
そんなよこしまな考えが一瞬だけよぎったが、すぐに振り払った。
教授はボクに、素晴らしい研究成果を与えてくれたんだ。感謝しかない。
不正がなんだっていうんだ。ボクが今している罪、そして闇の神様に魅入られたことを思えば、なんてことはない。
ボクは時計塔の鍵をそっと置くと、開いたままの入口から外に出た。
そしてボクは、夜の闇に紛れた。
●アタック01-5 時の魔法使い
ボクは、早々にチャマイを立ち去ることにした。
数少ない友だちに、別れも告げずに去ることになるが仕方がない。最初からそのつもりだったし。
ボクは最初から、学園の魔道具を盗み出して消えるつもりだった。
だから、学園の宿舎には二度と戻らないつもりで出た。逃走の準備は万端だ。
最初の計画では、安宿に泊まりつつ、ほとぼりが冷めるのを待って逃走するつもりだった。
けれどそこは、計画の変更を余儀なくされた。
肌の色が変わったボクが知り合いに会ってしまうリスクを思えば、早急に動いた方がいい。
今回の事態が発覚するには、もう少し時間がかかるだろう。
しかも、最初に矛先が向くのはモータス教授たちだ。
いつ動くのか。今でしょ。
ボクは、闇夜に紛れて朝を待った。
開門を待ち、朝の喧騒に紛れて、正門から堂々と外に出た。
もしかしたら、モータス教授たちが門のそばで、時計を盗んだ者がいないか観察しているかもしれない。
けれど、誰がやったかはわからないはず。実物さえ隠しておけば、見つかることはないはずだ。
それに、あちらもおたずねものになるのだ。いくら時計を取り戻したくても、そんな余裕はないと思う。
ボクは、何の問題もなくチャマイから外に出ることができた。
チャマイから北に向けて旅をしながら、盗み出した魔道具の研究を、少しずつ進めた。
オスクリード様は信仰告白の際に、ボクに「魔法の時計」の知識を与えてくれていた。それがボクの望みだったから。
だから魔法学園で落ちこぼれかけていたボクなんかでも、時の時計の構造を理解することができた。
モータス教授の10年分の成果を、実物だけでなく知識面からも得てしまうなんて、とんだチート能力だ。
野営をしながら、焚火の前に時計を並べる。
ボクが持ち出した7つの魔法の時計が、炎のゆらめきを映し、神秘的な光沢を放っている。
時計は全部、止まっている。魔法を使うときだけ時を刻む、不思議な時計だ。
その1つ1つに対応した、時の魔法がある。
つまりボクは、時を操る7つの力を持っていることになる。
モータス教授のメモによれば、7つの時計には名称がある。
・枝分かれの未来時計
・速撃の戦時計
・時もどしの回復時計
・うたかたの齢時計
・跳兎の懐中時計
・夢渡りの覚醒時計
・刻々の狭間時計
7つの力を持ってるって言ったけど、実は今すぐに7つの力全部が使えるわけじゃない。
モータス教授は、「ほぼ完成している」と言っていた。
3つの時計は完成していて、すぐに使うことができる。
残る時計は歯車が不足していて、歯車を見つけ、修理することで使えるようになる。
そして、ボクはあの時計塔から、時計だけでなく歯車も3枚持ってきた。
その歯車を使ってどの時計を修理するかで、どの魔法を最初から使えるか、選ぶことができるってこと。
モータス教授の研究メモからわかった7つの時魔法について、ここで簡単に説明しておくよ。
きっと覚えきれないと思うから、だいたいでいい。また使う時になったら説明するから。
まずは、最初から使える3つの魔法から。
【枝分かれの未来時計】
この魔法を使うと、パラグラフの番号に「↑」マークがついている範囲を自由に行き来できる。
「指セーブ」をルール化したみたいなものだ。
【うたかたの齢時計】
10年単位で年齢を変えられる魔法。変身じゃなくて、実際に若くもなれば老いもする。
けっこう集中力が必要で、集中が切れたら元に戻ってしまう。
【跳兎の懐中時計】
数年から十数年くらい昔に時間をさかのぼれる魔法。自分だけ過去の世界に行ける。
これも集中力が切れると元の時代に戻る。
あと、跳兎の懐中時計は表紙や裏表紙にイラストが載ってるやつ。兎のデザインがかわいすぎて神。
次に、修理が必要な魔法の時計が4つ。
【速撃の戦時計】
スピードがマッハに。2倍速の魔法。歯車1枚で修理できる。
【時もどしの回復時計】
身体の時間を戻すことで、身体に受けた悪い影響をすべて取り去り回復する。歯車2枚で修理できる。
【夢渡りの覚醒時計】
仲間を悪夢から守る。悪夢を吸い取り、悪夢袋に入れる。歯車1枚で修理できる。
【刻々の狭間時計】
時を止めるザ・ワールド。消耗も大きい。歯車3枚で修理できる。
時の魔法は使う時に「悪夢」を消費する。悪夢って言われてもピンとこないと思うけど。
だからボクは、悪夢を蓄えるための「悪夢袋」を持ってる。時計と一緒に置いてあったものだ。
悪夢袋は闇色の小さな袋。不思議なことに、出し入れする口はない。小さな風船みたい。
7袋あって、今は悪夢をたくわえてふくらんでいる。
入っているのは、ボクの悪夢だ。覚えてないけど、けっこう悪夢を見ているみたい。
悪夢を持ち歩くってヘンな話だけど、夢の持つエネルギー?みたいなのを蓄えるらしい。
ボクの悪夢だけでなく、ほかの誰かの悪夢を蓄えることもできる。
悪い夢を持ち歩いている、と思うと気味が悪いけど、ボクにはこれが必要なんだ。
ボクが研究しながら理解してきた時の魔法は、こんなとこかな。
●インターミッション ルール説明
ここからようやく、ルール説明のパートが始まる。
いつもはここは、プレイヤーの人が説明的にやるところだけど、ここまでボク主体でやってきたから、ここもそのままいこう。
ボクのステイタスを示す、専用のキャラクターシートがある。
すっきりまとまってる。とってもわかりやすい。視認性がいいのは大事。
ルールとか説明とかあんまり読まなくても、キャラクターシートを見れば、ある程度推測できてしまうくらい。
んー。自分で自分のキャラシー説明するなんて、なんだか変な気分。
ボクの体力点は4点。ハートの形でチェックできるようになってる。0点になるとゲームオーバー。
次に、使える悪夢袋の数が、袋の形でチェックできるようになってる。
金貨は7枚、歯車は3枚持ってる。
その横に「不死化傷」という意味深なフレーズがあるけど、説明にはない。
吸血鬼が登場する作品なので、吸血鬼に傷つけられた場合とかにチェックが入るのかもしれない。
それから、持ってる時計の名前がずらり、並んでる。
修理に必要な歯車の数も見てわかるようになってる。
そして実は、8か所目のところに、カッコ書きで(〜時計)という欄が作られている。
つまり、冒険中に8個目の時の魔法が手に入る可能性があるってこと。
モータス教授にしか作れない超レア技術のはずなのに、いったいなにがあれば8個目の魔法を手にできるのだろう。
興味は尽きないね。
その下には、装備品の欄が。
5つの装備品がすでに名前つきで並んでおり、入手したらチェックするようになっている。
5つの装備品とは、「銀のナイフ」「ニンニク」「聖水」「羊皮紙」「吸血鬼ごろし」。
ほとんどが吸血鬼対策のアイテムだ。
最初から入手できるアイテムの名前がわかっているというのも親切設計だ。
これだけでも、いろいろ予想する材料になる。
さらに、仲間の欄がある。
仲間の欄には、3人のキャラクターの名前があり、チェックを入れられるようになっている。
「ボラミー」「フェル」「マイトレーヤ」の3人だ。
マイトレーヤのところにはさらに「待機」という項目にチェックを入れられるようになっている。
そして、ルール上は何も言及がないけれど、いちばん下にメモ欄があり、小さく「精密」という項目にチェックを入れられるようになっている。
これは非常に気になる。こういうところに、クリアのために必須ななにかが隠れている気がしてならない。
ルールの確認はこんなところかな。
これはボクからしたら、時の魔法の力で、未来に起きるかもしれないことを、ほんの少しだけ垣間見た気分だ。
そうだ。このキャラクターシートは、ボクが未来の可能性を感じ取った記録、ってことにしよう。
こうすることで、何か変わるのかって?
実はすごい変化がある。
これまでキャラクターシートは、プレイヤーのものだった。
でもボクの力なら、キャラクターシートに書かれていることは、未来の記憶として、ボクも知っていることにできる。
未来の記憶と言っても確定じゃない。起こるかもしれない未来の可能性だ。
たとえば、「ボラミー」という人物が登場したのなら、ボクは、その人物が仲間になるかもしれない未来があることを知っている、ということになるんだよ。
これって、すごいことだ。これだけで、このリプレイの記述そのものが変わってくるって思わない?
未来の記憶を引き出すのは、過去の記憶を思い出すのとまったく同じ感覚だ。
ただ、夢を見ているみたいにおぼろげで、はっきりしない。未来を思い出すって、すごく不思議。
じゃあ、ルールも確認できたところで、歯車3枚を使って、時計を修理しよう。
歯車は、一度はめると、ボクの技術ではもう外すことはできない。だから、修理する時計は慎重に選ばなければいけない。
まずは、その素早さで戦いや逃走に役立ちそうな、【速撃の戦時計】。体術に自信のないボクの弱点を補う時計だ。
そして回復は大事ということで、【時もどしの回復時計】にしよう。
【速撃】の修理に歯車1個、【時もどし】の修理に歯車2個を使うから、これで使い切りだ。
これで準備は整った。次回からは、ステイタスが決まったボクの冒険本番がはじまる。
【ミナ 体力点4/4 悪夢袋7/7】
金貨 7枚
歯車 0枚
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<速撃の戦時計>超スピードで限界突破。
<時もどしの回復時計>時間を戻してダメージをなかったことに。
■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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2025年8月26日火曜日
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.8 FT新聞 No.4598
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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.8
(田林洋一)
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FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。
全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、8回目の記事を配信いたします。今回は大作との呼び声高い「ワルキューレの冒険」シリーズを中心に扱います。
本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。特に今回は一部で厳しい評価をしておりますが、作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。私自身はSAGBの全ての作品に思い入れがあります。批評に対して別の考え方がございましたら、ぜひとも感想やご意見をお寄せいただければ嬉しく思います。
毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0
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8.ゲーム性とストーリー性の相克 -「ワルキューレの冒険」
主な言及作品:『迷宮のドラゴン』(1988)『ピラミッドの謎』(1989)
『時の鍵の伝説』(1989)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「ワルキューレの冒険」は、『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』、『ドラゴンバスター』などの系列を組むナムコのファミコンソフトを原作としたゲームブックシリーズであるが、今までのナムコシリーズとは大きく異なる特徴がある。原作と同様にマーベルランドを支配する悪の化身ゾウナを倒すことに変わりはないが、プレイヤーはワルキューレに扮するのではなく、ワルキューレの冒険を手助けしようと一念発起して旅立つ若者になるのだ。この設定は、ナムコシリーズが原作ゲームの「ヒーロー」となって活躍することがほとんどであるのに比べて、ストーリー的に極めて斬新かつ野心的な挑戦である。
読者であるプレイヤーは言わば「無色透明の君」を操作することになるわけで、この辺りは海外産の「ゴールデン・ドラゴン・シリーズ」において、自由に名前を決める欄が冒険記録用紙に設けられているのと同様に、「ワルキューレの冒険」シリーズのアドベンチャーシートにも「名前」欄が用意されている。
まず、本作のゲーム的な特徴を概観しよう。ゲーム性かストーリー性かを巡る議論はゲームブックには常について回るが、「ワルキューレの冒険」は、おそらくその両方を射程に収めつつ、融合させようと腐心したのだろう。第一巻『迷宮のドラゴン』は単方向移動、第二巻『ピラミッドの謎』では前半は単方向移動、後半のピラミッドでは双方向移動、そして最終巻の『時の鍵の伝説』では最初こそ単方向移動だがメインは双方向移動と、ゲーム的に際立つ双方向移動と、ストーリーを引き立たせる効果を持つ単方向移動をそれぞれの巻ごとに取り入れている。
フラグ管理も独自のシステムを採用しているが、『ネバーランドのリンゴ』や『パンタクル』のように割り切って記号管理システムを導入していない一方で、パラグラフ番号の上や段落の途中に描かれている空欄のボックスにXでチェックを入れたり、「体の部位に傷跡があるか否か」でイベントの成否を決めたりといった、できるだけ自然な、ある意味ではストーリーを破壊しないような工夫を凝らしている。
もっとも、作者の本田成二は巻を進めるごとにゲーム性を重視しようと考えたようである。『迷宮のドラゴン』でのゲーム性と言えば、まず間違いなく主人公の成長システムと魔法だが、それに加えて『時の鍵の伝説』ではパーティ・コントロールという斬新なアイデアを取り入れている。それに合わせるように「パーティ記号」という欄がアドベンチャーシートに追加されたが、これは『迷宮のドラゴン』と『ピラミッドの謎』にはなかったシステムである。以下、「パーティ・コントロール」も含めた本作のゲームシステムについて検討したい。
主人公の成長システムだが、経験値を十溜めるごとに技量ポイントなら一ポイント、原知力ポイント(魔法を唱える際に消費する、マジックポイントのようなもの)なら四ポイント加算することができる。「ドルアーガの塔」では、経験値を十溜めるごとに戦力ポイントを一ポイント上げることができたが、防御力ポイントには手をつけられなかった(上昇させたいと思ったプレイヤーも多いだろう)。よっていきおい「攻撃型のギル」が誕生することになるのだが、「ワルキューレの冒険」シリーズでは、『ピラミッドの謎』の「あとがき」にもあるように、主人公が技量ポイントが高い戦士タイプか、知力ポイントが高い魔法使いか、あるいは中道に育てていくかを選べるシステムになっている。
主人公は初期状態では魔法を一切覚えておらず、また、魔法を使うには特定のアイテムが(ワルキューレを除いて)必ず必要になるのだが、魔法を習得するのにさして手間取ることはないだろう。魔法使いタイプに成長させたくとも魔法を覚えていない、あるいはアイテムがなくて魔法が唱えられない、という苦境には陥ることはまずない。例えば、体力を五ポイント増やす効果を持つ「薬の術」を使うためには「白い玉」を持っていなければならないのだが、何と(非常に高価ではあるが)白い玉は町のアイテムショップで普通に販売されているのだ。
その他の魔法を唱える際に必要なアイテムも、いくつかのイベントをこなせば自然と入手できるものが多く、「ソーサリー」シリーズのように「必要な品がないため魔法がかからない」という事態はほぼ起こらない。更に、第二巻と第三巻の冒頭では既にいくつかの魔法とアイテムを習得したことになっており、前の巻を未プレイの読者にとっても入りやすい、親切な設計になっている。
魔法の多くは原作のファミコンゲーム「ワルキューレの冒険」をおおよそ踏襲しており、例えば敵全体に大ダメージを与えることができる「稲妻の術」や、敵の動きを一時的に停止させることができる「星笛の術」など、特に戦闘の場面で絶大な効果を持つものが多い。戦闘シーンではほとんど全ての魔法を操ることができるというのも、ゲーム的な自由度という点で特筆に値する。
ただ、魔法の力は極めて限定的で、巻を進めていくにつれて全く使用しない魔法も出てくるだろう。例えば「火の玉の術」は、知力ポイントを一消費する代わりに相手の体力を二ポイント削ることができるのだが、敵が強くなる後半戦では全く役に立たない。ちょうどファミコンゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズなどで、初期の攻撃魔法の一つであるギラが、終盤になるとまったく無用の長物になるのと似ている。
また、魔法を唱えるごとにパラグラフ・ジャンプを行う必要があるのだが、これも中盤以降は完全な作業になりがちだ。元々パラグラフ・ジャンプには威力の高い魔法や謎解き、重大な手がかりやヒントなどの「特別感」があるはずだが、「ワルキューレの冒険」では戦闘シーンであればいつでも多彩な魔法を使える反面、些細な魔法でもいちいちパラグラフ・ジャンプをせねばならず、手間がかかる。本作の魔法は「項目番号に〇〇を足した項目へ進む」という形式をとっているため、魔法を唱えるたびに(単純ではあるが)飛び番地を計算をしなければならないというジレンマを抱えているからだ。中盤以降はほとんどの魔法を習得しているはずなので、かえってこの手間はプレイヤーを煩雑にさせるだけだろう。もっとも、作者としては「覚えていない魔法は使えない」というゲーム性を大事にしたかったのかもしれない。
こうしたゲーム性は、魔法の神秘性を保つ上で(特別感を演出できるという点でも)有効に機能する場合もあり、実際に「ワルキューレの冒険」では魔法を使用すると常に何らかの描写がされていることから、物語性という点にも作者が十分に配慮していることが伺える。だがその一方で、あまりにも魔法がテクニカルすぎるものになり、中盤では完全に作業となってしまい、快適さやストーリー性が減じる結果となってしまったのではないだろうか。
そして第三巻『時の鍵の伝説』だけにお目見えする「パーティ・コントロール」だが、これはマーベルランドという世界(探索地域)において、プレイヤーがプレイしているのが主人公とワルキューレのペアか、仲間となるサブキャラクター・ニスペンとアテナのペアか、主人公も含めた四人のグループか、で出現する敵や起こるイベントが異なるというものだ。平面的な探索地域を立体的にするという点で、このシステムは例を見ない見事なものである。双方向移動の欠点は、一度行った場所に再び来ても目新しさがなく、ただパラグラフを素通りするだけに終始しやすいということが挙げられるが、パーティ・コントロールではこの点がかなり解消されている。つまり、同じ街にいても三通りのイベントが体験できるというわけだ。
この仕組みはファイティング・ファンタジー・シリーズの第二十八巻『恐怖の幻影』などでも、夢と現実を融合させることで同じ場所でも立体感を出すことに成功しているが、「ワルキューレの冒険」ではゲーム的には成功しているものの、ストーリー的には実際のゲームブックのプレイとしては難しい面もあったように思われる。例えばずっと主人公とワルキューレのパーティを動かしていて、いざニスペンとアテナのペアに変更した場合、後者のパーティの現状がどうだったのかを失念する危険性を孕んでいるのだ。つまり、「主人公とワルキューレ」と「ニスペンとアテナ」そして「四人のペア」のストーリー展開が、言わば読みかけの小説をいったん中断して、別の小説の途中から読むような気分になってしまう可能性がなくもないということである。
さて、このシリーズの大きな特徴の一つに、前述したように主人公は元々ワルキューレに憧れて出奔する名もなき若者という設定になっていることが挙げられる。それを表すように、全巻を通して主人公の若者が「名前」で呼ばれるシーンはただの一度もない。ところが作者の本田成二は、本シリーズにおいて主人公(とその一行)を、『スーパー・ブラックオニキス』のようにキャラクターに特徴を持たせて色分けをするか、それともファイティング・ファンタジー・シリーズのように一貫して背景化(できるだけ目立たせない)ようにするかを迷っているような節が見受けられる。
例えば出発の冒頭で、主人公は友人ヤッシムの家に行くか、武器屋に行くかの二択を迫られるのだが、「無色透明の君」である若者に、個人名が付された「友人ヤッシムがいる」ことがここで初めて判明する。そして、その友人の家に訪問する選択をすると、読者であるプレイヤーが意図してはいないかもしれないことを滔々と直接話法で(つまりカギ括弧つきで)語り出す。つまり、直接話法と相性が良い「キャラクターが決まっている特化した主人公」と、間接話法が馴染む「君が主人公」という二つの特性を同時に採用しているのだ。
「無色透明の君」が直接話法を用いてゲームを進行させるのには賛否両論があるだろうが、プレイヤーの想定がそのまま生きたボイス(直接話法)で語られれば、読者はまさに主人公と一体になる感覚を味わえるだろう。極端な話、主人公は現実世界ではどうあがいても「ギルガメス」や「メスロン」にはなれないわけで、実際には完全武装の金色の鎧をまとうこともなければ、パンタクルで魔法が使えるわけでもない。ところが、「ワルキューレの冒険」では、主人公の属性が極めて「一般人」に近い。例えば旅立ちを決意する冒頭で、母親が「部屋へ行って、ゲームでもして遊んでいなさい」と主人公を諭す場面があるが、ここまで現実志向に徹底していれば、ゲームとしてのフィクションに、現実の「君」を投影することは容易い。
付言すると、プレイヤーは何と冒頭で殺人を犯す犯罪者になることもできるという「極悪人プレイ」を堪能できるのだが(これは英雄たる「ポール・ジョーンズ」や「クロービス」にはできない悪辣な選択だろう)、こうした現実に即した自由さという点でも、読者の意向と物語の「君」が合致すれば、まさに「君は主人公」の気分を堪能できる仕組みになっている。
もっとも、冒険の間中ずっと続くこの傾向は、同時に諸刃の剣にもなりうることは指摘しておく必要がある。本作には一緒に行動を共にすることになる盗賊のサンディや、道中で知り合う巨漢のニスペン、魔法に秀でて時にクリティカルヒットを出す美しい女剣士アテナなどの魅力的なキャラクターが満載なのだが、主人公は彼らとも基本的に直接話法で数多くの会話を交わす。となると、時として(あるいは必然的に)「実際のプレイヤーが想像しなかった会話」をする現象が見られることもある。
例えば第二巻『ピラミッドの謎』の闘技場でチャンピオン戦に挑むというイベントがあるのだが、勝利すると主人公が勝手に賞金のうちの一部を司会者に渡してしまうのだ(もっとも、ストーリー的には大いに意味のある行為なのだが)。つまり、主人公キャラクターを自由自在に動かしたいというゲーム性(これは「無色透明の君」が適任である)と、物語の展開的に主人公が取るべき言動を自動的に取るというストーリー性(これはキャラクターが際立っている方がよい)が両立し、時にせめぎ合うことになる。「無色透明の君」が、読者自身も知らない特性や性格を持っていて、そのとおりに動かさざるを得ないという、良く言えば二つの長所を先取り、悪く言えば首尾一貫しない作りになっている。
キャラクターの魅力という点にもう少し言及すると、第一巻『迷宮のドラゴン』の「あとがき」で、作者が「つぎのゲームブックに登場するキャラクター」を募集しており、実際に第二巻『ピラミッドの謎』では、ワルキューレと冒険を共にしたいと馳せ参じる「全国の読者が創案したキャラクター」が我も我もと登場する。彼らは半分機械人間であったり、ごつい剣士だったり、豪放磊落な闘士だったりするが、名前だけの登場のキャラクターもいれば、主人公側にどっぷりとはまり込んで同行するキャラクターもいて、その豊かなバラエティに飽きることがない。言わばプレイヤーの孤軍奮闘ではなく、随所に「他の無名のキャラクター」がしっかりと動いているという、オープンワールドのような実感を得ることができる。
また、一癖も二癖もある少年ジェリーとの絡みがあったり、第三巻のクライマックスではゾンビと化した「一般からの参加者」たるスミシー(「元公務員でゲームマニア」という設定が泣かせる)と、無敵の剣士クラウドが襲い掛かってきたりと、この作品では、やはりキャラクターの個性を大事にしていることがひしひしと感じられる。特に第一巻で主人公と密接に絡む血気盛んな盗賊サンディは、第三巻のフィナーレで思わぬ形で主人公パーティと再会するなど、ドラマチックな展開も期待できる。
第三巻『時の鍵の伝説』では、主人公パーティはワルキューレと合流して一緒に旅をすることになるのだが、道中で再会したニスペンとアテナ、そして主人公を含めた四人パーティで冒険を進めていくことになる。既に論じたように、どちらかと言うと強い個性のない主人公(これは、主人公が「無名の若者」であるからには当然なのだが)に対し、サブも含めた仲間、特にパーティの一員として具体的な数値が与えられているワルキューレ、ニスペン、アテナ、サンディらのキャラクターが個性的で絞り込まれているところが、本作の白眉だろう。
例えば、ニスペンやサンディとは第一巻で冒険を共にしているが、イベントの合間で離れ離れになってしまう。ところが、別の巻で彼らと感動的な状況で再会でき、更には自由自在に彼らを動かす(しかも成長させる)ことができるのである。つまり、「キャラクター特化のゲームブック」の魅力を存分に生かしつつ、「無色透明の主人公」の特徴を保持しているのが「ワルキューレの冒険」の特筆すべき点だということだ。鈴木直人の『スーパー・ブラックオニキス』も四人のキャラクターを動かすシステムをとっているが、あちらは主人公キャラクター(あなた)が強い個性を持っていて、それに負けないようにそれ以外の三人も個性的だったのと比較すると、「ワルキューレの冒険」シリーズは「主人公よりも他のキャラクターやパーティの個性を最大限に引き出す」という特徴を有していると言える。
そして、主人公の「君」と、これらのサブキャラクターとの軽妙洒脱で自由闊達な会話もまた、この作品の完成度を高めている特徴の一つだろう。システム面では魔法の効果や種類などに反映されているように、ファミコンの原作のコンピュータRPGを意識した要素が多いように見受けられるが(おそらく作者がゲームのファンを視野に入れていたこともあるだろう)、ストーリー面や文章構成という点では主人公や他のキャラクターの掛け合いが多く、当時ファミコン冒険ゲームブックを多数発刊していた双葉社のゲームブックの雰囲気も漂わせている。その意味で、比較的低年齢層のプレイヤーにも無理なく入り込める敷居の低さが、この作品にはあると思われる。
もっとも、主人公を没個性的にして感情移入をしやすくする(ゲーム性の特化)と同時に、直接話法に見られる「キャラクターの立ち位置」(ストーリー性の特化)を確立させるという手法は、時としてキャラクターがプレイヤーを置き去りにしてしまう危うさも内包する。これは、本田成二がゲーム性を重視するかストーリー性を重視するかで、その両立を目指したことに起因しよう。
例えば、鈴木直人の作品は主人公のキャラクターが際立って魅力的かつ特徴的で、こちらが何もしないのに勝手な言動を取ることがよくある。だが、プレイヤーは言わば「分身」として別のキャラクターを動かすと考えているため、あまり違和感はない。『ティーンズ・パンタクル』の主人公大島いずみは(「あなた」や「君」と表記されず)「あたし」と自らを呼ぶが、男性プレイヤーでもすんなりと感情移入できるのは、実際のプレイヤーと冒険の主人公の切り分けがすっきりしているからだろう。
一方、「無色透明の君」で有名なファイティング・ファンタジー・シリーズや、SAGBのゴールデン・ドラゴン・シリーズは、没個性的なプレイヤーキャラクターを動かすために、現実の読者と主人公が一体化する。実際、「ソーサリー」シリーズやファイティング・ファンタジー・シリーズは、主人公である「あなた」が直接話法で描かれる場面がほとんどない。これは、読者自身が性別や属性なども含めて完全にゲームブック内の「あなた」と同化するため、その言い回しや発言の様態などを完全に読者に委ねているからだ。この意味で、「ソーサリー」などは読者とゲームブック内の「あなた」が一心同体となっている。その代わり、主人公の生きた台詞や生の会話のトーンを味わうといった楽しみはこちらには存在しない。
どちらのシステム(主人公の扱い)を選ぶにしても一長一短があり、究極的には作者や読者の好みに委ねられるのだが、「ワルキューレの冒険」シリーズでは言わば中道を貫いているために「曖昧」という印象がどうしても感じ取れてしまう。SAGBの書籍にたまに折り込まれている「アドベンチャラーズ・イン」という冊子(数ページの小冊子であり、読者投稿や新刊案内などを目的とする同人誌的な新聞)があるのだが、そこである読者の第一巻の『迷宮のドラゴン』の評価が百点満点中二十点だった(同誌12号)のは、その辺りの感覚を反映しているのではないだろうか(この評価を巡って同誌で色々な意見が出たが、最終的に「ゲームブックに点数をつけるな」という別の読者の投稿(同誌13号)で終わっている)。
逆に言えば、「ワルキューレの冒険」は、突き出たキャラクター作品の特徴である直接話法(これは、SAGBをはじめとする日本人作家に多い)に、間接話法に象徴的に見られる「無色透明の君」(ファイティング・ファンタジー・シリーズをはじめとした海外産ゲームブックに多い)を融合させた試みを行ったとも言えるだろう。その意味で、「ワルキューレの冒険」は両者の「いいとこ取り」を狙った作品であり、その効果は十分に発揮されていると思われる。
色々と批判を挙げ連ねたが、それは「ワルキューレの冒険」が最後まで、ストーリー性とゲーム性の両立を目指し、そして完全には整合性を取り切れなかったことに原因の一端があるのだろう。ゲーム性という点では「ワルキューレの冒険」にも優れた特徴があり、例えば先に言及した「主人公を思い通りに成長させる仕組み」は独自の試みではないだろうか。
また、『ピラミッドの謎』の後半のピラミッドの冒険では、前半にクレバーにヒントを得ておかないと解くのにかなりてこずる仕様になっている。ピラミッドにはゴーストフェニックスと呼ばれる恐ろしい怪物が宝物の守護者として登場するのだが、この難敵はこちら側の経験値を奪う「エクスペリエンス・ドレイン」の魔法を毎ターン使ってくるので、まともに戦ってもまず勝ち目はない(仮に勝ったとしても、パーティの戦力が壊滅的に低下する)。しかし、事前にあるアイテムを装備しておけば、この強敵も比較的楽に退治できるのだ。前半の旅で賢く立ち回って情報収集をしておけば、いざこのモンスターと戦う段になっても焦らなくて済む。本作も「ドルアーガの塔」三部作と同じで、うまく手がかりを活用すれば危機を最低限に回避できるようになっている。
ここでも「気ままな(バーサタイルな)」選択肢やノーヒントのデッドエンドなどはなく、事前に手がかりを提供するという寛容さ(このフェアな計らいは日本人作家の特徴と言っていい)が見受けられる。また、第三巻で本格的に操作することになるワルキューレはさすがに「神の子」らしく特殊能力を持っていたり、盗賊のサンディが自身の重大な秘密をカミングアウトする印象的なシーンがあったりと、雰囲気を最大限にまで盛り上げる描写力も兼ね備えている。
どうしてもフラグ処理の関係上、双方向移動を採用しているゲームブックは容量が分厚くなりがちだが、「ワルキューレの冒険」もなかなかのボリュームである。逆に言えば、これはゲームとしての「ゲームブック」の中にも文学性、物語性を重視して描写をおろそかにしないという作者の意欲を表してもいよう。こうした「ゲーム」「パズル」といった側面と、「ストーリー」「物語」「(魔法の)神秘性」といった側面は、往々にして対立し合う関係にあり、第7回でも詳述したが、その相克を解決するのは容易ではないことが伺える。このバランスを保つという難解な試みを目標とし、そして一定の成果を収めた「ワルキューレの冒険」は、その是非はともかく、非常にチャレンジングなシリーズと言えるだろう。
◆書誌情報
ワルキューレの冒険 第一巻『迷宮のドラゴン』
本田成二・木越郁子(著)
東京創元社(1988/3/30)絶版
ワルキューレの冒険 第二巻『ピラミッドの謎』
本田成二(著)
東京創元社(1989/4/28)絶版
ワルキューレの冒険 第三巻『時の鍵の伝説』
本田成二(著)
東京創元社(1989/10/31)絶版
■参考文献
『恐怖の幻影』
ロビン・ウォーターフィールド(著)安田均・深田宏(訳)
社会思想社(1989/4/30)絶版
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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.8
(田林洋一)
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FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。
全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、8回目の記事を配信いたします。今回は大作との呼び声高い「ワルキューレの冒険」シリーズを中心に扱います。
本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。特に今回は一部で厳しい評価をしておりますが、作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。私自身はSAGBの全ての作品に思い入れがあります。批評に対して別の考え方がございましたら、ぜひとも感想やご意見をお寄せいただければ嬉しく思います。
毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0
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8.ゲーム性とストーリー性の相克 -「ワルキューレの冒険」
主な言及作品:『迷宮のドラゴン』(1988)『ピラミッドの謎』(1989)
『時の鍵の伝説』(1989)
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「ワルキューレの冒険」は、『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』、『ドラゴンバスター』などの系列を組むナムコのファミコンソフトを原作としたゲームブックシリーズであるが、今までのナムコシリーズとは大きく異なる特徴がある。原作と同様にマーベルランドを支配する悪の化身ゾウナを倒すことに変わりはないが、プレイヤーはワルキューレに扮するのではなく、ワルキューレの冒険を手助けしようと一念発起して旅立つ若者になるのだ。この設定は、ナムコシリーズが原作ゲームの「ヒーロー」となって活躍することがほとんどであるのに比べて、ストーリー的に極めて斬新かつ野心的な挑戦である。
読者であるプレイヤーは言わば「無色透明の君」を操作することになるわけで、この辺りは海外産の「ゴールデン・ドラゴン・シリーズ」において、自由に名前を決める欄が冒険記録用紙に設けられているのと同様に、「ワルキューレの冒険」シリーズのアドベンチャーシートにも「名前」欄が用意されている。
まず、本作のゲーム的な特徴を概観しよう。ゲーム性かストーリー性かを巡る議論はゲームブックには常について回るが、「ワルキューレの冒険」は、おそらくその両方を射程に収めつつ、融合させようと腐心したのだろう。第一巻『迷宮のドラゴン』は単方向移動、第二巻『ピラミッドの謎』では前半は単方向移動、後半のピラミッドでは双方向移動、そして最終巻の『時の鍵の伝説』では最初こそ単方向移動だがメインは双方向移動と、ゲーム的に際立つ双方向移動と、ストーリーを引き立たせる効果を持つ単方向移動をそれぞれの巻ごとに取り入れている。
フラグ管理も独自のシステムを採用しているが、『ネバーランドのリンゴ』や『パンタクル』のように割り切って記号管理システムを導入していない一方で、パラグラフ番号の上や段落の途中に描かれている空欄のボックスにXでチェックを入れたり、「体の部位に傷跡があるか否か」でイベントの成否を決めたりといった、できるだけ自然な、ある意味ではストーリーを破壊しないような工夫を凝らしている。
もっとも、作者の本田成二は巻を進めるごとにゲーム性を重視しようと考えたようである。『迷宮のドラゴン』でのゲーム性と言えば、まず間違いなく主人公の成長システムと魔法だが、それに加えて『時の鍵の伝説』ではパーティ・コントロールという斬新なアイデアを取り入れている。それに合わせるように「パーティ記号」という欄がアドベンチャーシートに追加されたが、これは『迷宮のドラゴン』と『ピラミッドの謎』にはなかったシステムである。以下、「パーティ・コントロール」も含めた本作のゲームシステムについて検討したい。
主人公の成長システムだが、経験値を十溜めるごとに技量ポイントなら一ポイント、原知力ポイント(魔法を唱える際に消費する、マジックポイントのようなもの)なら四ポイント加算することができる。「ドルアーガの塔」では、経験値を十溜めるごとに戦力ポイントを一ポイント上げることができたが、防御力ポイントには手をつけられなかった(上昇させたいと思ったプレイヤーも多いだろう)。よっていきおい「攻撃型のギル」が誕生することになるのだが、「ワルキューレの冒険」シリーズでは、『ピラミッドの謎』の「あとがき」にもあるように、主人公が技量ポイントが高い戦士タイプか、知力ポイントが高い魔法使いか、あるいは中道に育てていくかを選べるシステムになっている。
主人公は初期状態では魔法を一切覚えておらず、また、魔法を使うには特定のアイテムが(ワルキューレを除いて)必ず必要になるのだが、魔法を習得するのにさして手間取ることはないだろう。魔法使いタイプに成長させたくとも魔法を覚えていない、あるいはアイテムがなくて魔法が唱えられない、という苦境には陥ることはまずない。例えば、体力を五ポイント増やす効果を持つ「薬の術」を使うためには「白い玉」を持っていなければならないのだが、何と(非常に高価ではあるが)白い玉は町のアイテムショップで普通に販売されているのだ。
その他の魔法を唱える際に必要なアイテムも、いくつかのイベントをこなせば自然と入手できるものが多く、「ソーサリー」シリーズのように「必要な品がないため魔法がかからない」という事態はほぼ起こらない。更に、第二巻と第三巻の冒頭では既にいくつかの魔法とアイテムを習得したことになっており、前の巻を未プレイの読者にとっても入りやすい、親切な設計になっている。
魔法の多くは原作のファミコンゲーム「ワルキューレの冒険」をおおよそ踏襲しており、例えば敵全体に大ダメージを与えることができる「稲妻の術」や、敵の動きを一時的に停止させることができる「星笛の術」など、特に戦闘の場面で絶大な効果を持つものが多い。戦闘シーンではほとんど全ての魔法を操ることができるというのも、ゲーム的な自由度という点で特筆に値する。
ただ、魔法の力は極めて限定的で、巻を進めていくにつれて全く使用しない魔法も出てくるだろう。例えば「火の玉の術」は、知力ポイントを一消費する代わりに相手の体力を二ポイント削ることができるのだが、敵が強くなる後半戦では全く役に立たない。ちょうどファミコンゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズなどで、初期の攻撃魔法の一つであるギラが、終盤になるとまったく無用の長物になるのと似ている。
また、魔法を唱えるごとにパラグラフ・ジャンプを行う必要があるのだが、これも中盤以降は完全な作業になりがちだ。元々パラグラフ・ジャンプには威力の高い魔法や謎解き、重大な手がかりやヒントなどの「特別感」があるはずだが、「ワルキューレの冒険」では戦闘シーンであればいつでも多彩な魔法を使える反面、些細な魔法でもいちいちパラグラフ・ジャンプをせねばならず、手間がかかる。本作の魔法は「項目番号に〇〇を足した項目へ進む」という形式をとっているため、魔法を唱えるたびに(単純ではあるが)飛び番地を計算をしなければならないというジレンマを抱えているからだ。中盤以降はほとんどの魔法を習得しているはずなので、かえってこの手間はプレイヤーを煩雑にさせるだけだろう。もっとも、作者としては「覚えていない魔法は使えない」というゲーム性を大事にしたかったのかもしれない。
こうしたゲーム性は、魔法の神秘性を保つ上で(特別感を演出できるという点でも)有効に機能する場合もあり、実際に「ワルキューレの冒険」では魔法を使用すると常に何らかの描写がされていることから、物語性という点にも作者が十分に配慮していることが伺える。だがその一方で、あまりにも魔法がテクニカルすぎるものになり、中盤では完全に作業となってしまい、快適さやストーリー性が減じる結果となってしまったのではないだろうか。
そして第三巻『時の鍵の伝説』だけにお目見えする「パーティ・コントロール」だが、これはマーベルランドという世界(探索地域)において、プレイヤーがプレイしているのが主人公とワルキューレのペアか、仲間となるサブキャラクター・ニスペンとアテナのペアか、主人公も含めた四人のグループか、で出現する敵や起こるイベントが異なるというものだ。平面的な探索地域を立体的にするという点で、このシステムは例を見ない見事なものである。双方向移動の欠点は、一度行った場所に再び来ても目新しさがなく、ただパラグラフを素通りするだけに終始しやすいということが挙げられるが、パーティ・コントロールではこの点がかなり解消されている。つまり、同じ街にいても三通りのイベントが体験できるというわけだ。
この仕組みはファイティング・ファンタジー・シリーズの第二十八巻『恐怖の幻影』などでも、夢と現実を融合させることで同じ場所でも立体感を出すことに成功しているが、「ワルキューレの冒険」ではゲーム的には成功しているものの、ストーリー的には実際のゲームブックのプレイとしては難しい面もあったように思われる。例えばずっと主人公とワルキューレのパーティを動かしていて、いざニスペンとアテナのペアに変更した場合、後者のパーティの現状がどうだったのかを失念する危険性を孕んでいるのだ。つまり、「主人公とワルキューレ」と「ニスペンとアテナ」そして「四人のペア」のストーリー展開が、言わば読みかけの小説をいったん中断して、別の小説の途中から読むような気分になってしまう可能性がなくもないということである。
さて、このシリーズの大きな特徴の一つに、前述したように主人公は元々ワルキューレに憧れて出奔する名もなき若者という設定になっていることが挙げられる。それを表すように、全巻を通して主人公の若者が「名前」で呼ばれるシーンはただの一度もない。ところが作者の本田成二は、本シリーズにおいて主人公(とその一行)を、『スーパー・ブラックオニキス』のようにキャラクターに特徴を持たせて色分けをするか、それともファイティング・ファンタジー・シリーズのように一貫して背景化(できるだけ目立たせない)ようにするかを迷っているような節が見受けられる。
例えば出発の冒頭で、主人公は友人ヤッシムの家に行くか、武器屋に行くかの二択を迫られるのだが、「無色透明の君」である若者に、個人名が付された「友人ヤッシムがいる」ことがここで初めて判明する。そして、その友人の家に訪問する選択をすると、読者であるプレイヤーが意図してはいないかもしれないことを滔々と直接話法で(つまりカギ括弧つきで)語り出す。つまり、直接話法と相性が良い「キャラクターが決まっている特化した主人公」と、間接話法が馴染む「君が主人公」という二つの特性を同時に採用しているのだ。
「無色透明の君」が直接話法を用いてゲームを進行させるのには賛否両論があるだろうが、プレイヤーの想定がそのまま生きたボイス(直接話法)で語られれば、読者はまさに主人公と一体になる感覚を味わえるだろう。極端な話、主人公は現実世界ではどうあがいても「ギルガメス」や「メスロン」にはなれないわけで、実際には完全武装の金色の鎧をまとうこともなければ、パンタクルで魔法が使えるわけでもない。ところが、「ワルキューレの冒険」では、主人公の属性が極めて「一般人」に近い。例えば旅立ちを決意する冒頭で、母親が「部屋へ行って、ゲームでもして遊んでいなさい」と主人公を諭す場面があるが、ここまで現実志向に徹底していれば、ゲームとしてのフィクションに、現実の「君」を投影することは容易い。
付言すると、プレイヤーは何と冒頭で殺人を犯す犯罪者になることもできるという「極悪人プレイ」を堪能できるのだが(これは英雄たる「ポール・ジョーンズ」や「クロービス」にはできない悪辣な選択だろう)、こうした現実に即した自由さという点でも、読者の意向と物語の「君」が合致すれば、まさに「君は主人公」の気分を堪能できる仕組みになっている。
もっとも、冒険の間中ずっと続くこの傾向は、同時に諸刃の剣にもなりうることは指摘しておく必要がある。本作には一緒に行動を共にすることになる盗賊のサンディや、道中で知り合う巨漢のニスペン、魔法に秀でて時にクリティカルヒットを出す美しい女剣士アテナなどの魅力的なキャラクターが満載なのだが、主人公は彼らとも基本的に直接話法で数多くの会話を交わす。となると、時として(あるいは必然的に)「実際のプレイヤーが想像しなかった会話」をする現象が見られることもある。
例えば第二巻『ピラミッドの謎』の闘技場でチャンピオン戦に挑むというイベントがあるのだが、勝利すると主人公が勝手に賞金のうちの一部を司会者に渡してしまうのだ(もっとも、ストーリー的には大いに意味のある行為なのだが)。つまり、主人公キャラクターを自由自在に動かしたいというゲーム性(これは「無色透明の君」が適任である)と、物語の展開的に主人公が取るべき言動を自動的に取るというストーリー性(これはキャラクターが際立っている方がよい)が両立し、時にせめぎ合うことになる。「無色透明の君」が、読者自身も知らない特性や性格を持っていて、そのとおりに動かさざるを得ないという、良く言えば二つの長所を先取り、悪く言えば首尾一貫しない作りになっている。
キャラクターの魅力という点にもう少し言及すると、第一巻『迷宮のドラゴン』の「あとがき」で、作者が「つぎのゲームブックに登場するキャラクター」を募集しており、実際に第二巻『ピラミッドの謎』では、ワルキューレと冒険を共にしたいと馳せ参じる「全国の読者が創案したキャラクター」が我も我もと登場する。彼らは半分機械人間であったり、ごつい剣士だったり、豪放磊落な闘士だったりするが、名前だけの登場のキャラクターもいれば、主人公側にどっぷりとはまり込んで同行するキャラクターもいて、その豊かなバラエティに飽きることがない。言わばプレイヤーの孤軍奮闘ではなく、随所に「他の無名のキャラクター」がしっかりと動いているという、オープンワールドのような実感を得ることができる。
また、一癖も二癖もある少年ジェリーとの絡みがあったり、第三巻のクライマックスではゾンビと化した「一般からの参加者」たるスミシー(「元公務員でゲームマニア」という設定が泣かせる)と、無敵の剣士クラウドが襲い掛かってきたりと、この作品では、やはりキャラクターの個性を大事にしていることがひしひしと感じられる。特に第一巻で主人公と密接に絡む血気盛んな盗賊サンディは、第三巻のフィナーレで思わぬ形で主人公パーティと再会するなど、ドラマチックな展開も期待できる。
第三巻『時の鍵の伝説』では、主人公パーティはワルキューレと合流して一緒に旅をすることになるのだが、道中で再会したニスペンとアテナ、そして主人公を含めた四人パーティで冒険を進めていくことになる。既に論じたように、どちらかと言うと強い個性のない主人公(これは、主人公が「無名の若者」であるからには当然なのだが)に対し、サブも含めた仲間、特にパーティの一員として具体的な数値が与えられているワルキューレ、ニスペン、アテナ、サンディらのキャラクターが個性的で絞り込まれているところが、本作の白眉だろう。
例えば、ニスペンやサンディとは第一巻で冒険を共にしているが、イベントの合間で離れ離れになってしまう。ところが、別の巻で彼らと感動的な状況で再会でき、更には自由自在に彼らを動かす(しかも成長させる)ことができるのである。つまり、「キャラクター特化のゲームブック」の魅力を存分に生かしつつ、「無色透明の主人公」の特徴を保持しているのが「ワルキューレの冒険」の特筆すべき点だということだ。鈴木直人の『スーパー・ブラックオニキス』も四人のキャラクターを動かすシステムをとっているが、あちらは主人公キャラクター(あなた)が強い個性を持っていて、それに負けないようにそれ以外の三人も個性的だったのと比較すると、「ワルキューレの冒険」シリーズは「主人公よりも他のキャラクターやパーティの個性を最大限に引き出す」という特徴を有していると言える。
そして、主人公の「君」と、これらのサブキャラクターとの軽妙洒脱で自由闊達な会話もまた、この作品の完成度を高めている特徴の一つだろう。システム面では魔法の効果や種類などに反映されているように、ファミコンの原作のコンピュータRPGを意識した要素が多いように見受けられるが(おそらく作者がゲームのファンを視野に入れていたこともあるだろう)、ストーリー面や文章構成という点では主人公や他のキャラクターの掛け合いが多く、当時ファミコン冒険ゲームブックを多数発刊していた双葉社のゲームブックの雰囲気も漂わせている。その意味で、比較的低年齢層のプレイヤーにも無理なく入り込める敷居の低さが、この作品にはあると思われる。
もっとも、主人公を没個性的にして感情移入をしやすくする(ゲーム性の特化)と同時に、直接話法に見られる「キャラクターの立ち位置」(ストーリー性の特化)を確立させるという手法は、時としてキャラクターがプレイヤーを置き去りにしてしまう危うさも内包する。これは、本田成二がゲーム性を重視するかストーリー性を重視するかで、その両立を目指したことに起因しよう。
例えば、鈴木直人の作品は主人公のキャラクターが際立って魅力的かつ特徴的で、こちらが何もしないのに勝手な言動を取ることがよくある。だが、プレイヤーは言わば「分身」として別のキャラクターを動かすと考えているため、あまり違和感はない。『ティーンズ・パンタクル』の主人公大島いずみは(「あなた」や「君」と表記されず)「あたし」と自らを呼ぶが、男性プレイヤーでもすんなりと感情移入できるのは、実際のプレイヤーと冒険の主人公の切り分けがすっきりしているからだろう。
一方、「無色透明の君」で有名なファイティング・ファンタジー・シリーズや、SAGBのゴールデン・ドラゴン・シリーズは、没個性的なプレイヤーキャラクターを動かすために、現実の読者と主人公が一体化する。実際、「ソーサリー」シリーズやファイティング・ファンタジー・シリーズは、主人公である「あなた」が直接話法で描かれる場面がほとんどない。これは、読者自身が性別や属性なども含めて完全にゲームブック内の「あなた」と同化するため、その言い回しや発言の様態などを完全に読者に委ねているからだ。この意味で、「ソーサリー」などは読者とゲームブック内の「あなた」が一心同体となっている。その代わり、主人公の生きた台詞や生の会話のトーンを味わうといった楽しみはこちらには存在しない。
どちらのシステム(主人公の扱い)を選ぶにしても一長一短があり、究極的には作者や読者の好みに委ねられるのだが、「ワルキューレの冒険」シリーズでは言わば中道を貫いているために「曖昧」という印象がどうしても感じ取れてしまう。SAGBの書籍にたまに折り込まれている「アドベンチャラーズ・イン」という冊子(数ページの小冊子であり、読者投稿や新刊案内などを目的とする同人誌的な新聞)があるのだが、そこである読者の第一巻の『迷宮のドラゴン』の評価が百点満点中二十点だった(同誌12号)のは、その辺りの感覚を反映しているのではないだろうか(この評価を巡って同誌で色々な意見が出たが、最終的に「ゲームブックに点数をつけるな」という別の読者の投稿(同誌13号)で終わっている)。
逆に言えば、「ワルキューレの冒険」は、突き出たキャラクター作品の特徴である直接話法(これは、SAGBをはじめとする日本人作家に多い)に、間接話法に象徴的に見られる「無色透明の君」(ファイティング・ファンタジー・シリーズをはじめとした海外産ゲームブックに多い)を融合させた試みを行ったとも言えるだろう。その意味で、「ワルキューレの冒険」は両者の「いいとこ取り」を狙った作品であり、その効果は十分に発揮されていると思われる。
色々と批判を挙げ連ねたが、それは「ワルキューレの冒険」が最後まで、ストーリー性とゲーム性の両立を目指し、そして完全には整合性を取り切れなかったことに原因の一端があるのだろう。ゲーム性という点では「ワルキューレの冒険」にも優れた特徴があり、例えば先に言及した「主人公を思い通りに成長させる仕組み」は独自の試みではないだろうか。
また、『ピラミッドの謎』の後半のピラミッドの冒険では、前半にクレバーにヒントを得ておかないと解くのにかなりてこずる仕様になっている。ピラミッドにはゴーストフェニックスと呼ばれる恐ろしい怪物が宝物の守護者として登場するのだが、この難敵はこちら側の経験値を奪う「エクスペリエンス・ドレイン」の魔法を毎ターン使ってくるので、まともに戦ってもまず勝ち目はない(仮に勝ったとしても、パーティの戦力が壊滅的に低下する)。しかし、事前にあるアイテムを装備しておけば、この強敵も比較的楽に退治できるのだ。前半の旅で賢く立ち回って情報収集をしておけば、いざこのモンスターと戦う段になっても焦らなくて済む。本作も「ドルアーガの塔」三部作と同じで、うまく手がかりを活用すれば危機を最低限に回避できるようになっている。
ここでも「気ままな(バーサタイルな)」選択肢やノーヒントのデッドエンドなどはなく、事前に手がかりを提供するという寛容さ(このフェアな計らいは日本人作家の特徴と言っていい)が見受けられる。また、第三巻で本格的に操作することになるワルキューレはさすがに「神の子」らしく特殊能力を持っていたり、盗賊のサンディが自身の重大な秘密をカミングアウトする印象的なシーンがあったりと、雰囲気を最大限にまで盛り上げる描写力も兼ね備えている。
どうしてもフラグ処理の関係上、双方向移動を採用しているゲームブックは容量が分厚くなりがちだが、「ワルキューレの冒険」もなかなかのボリュームである。逆に言えば、これはゲームとしての「ゲームブック」の中にも文学性、物語性を重視して描写をおろそかにしないという作者の意欲を表してもいよう。こうした「ゲーム」「パズル」といった側面と、「ストーリー」「物語」「(魔法の)神秘性」といった側面は、往々にして対立し合う関係にあり、第7回でも詳述したが、その相克を解決するのは容易ではないことが伺える。このバランスを保つという難解な試みを目標とし、そして一定の成果を収めた「ワルキューレの冒険」は、その是非はともかく、非常にチャレンジングなシリーズと言えるだろう。
◆書誌情報
ワルキューレの冒険 第一巻『迷宮のドラゴン』
本田成二・木越郁子(著)
東京創元社(1988/3/30)絶版
ワルキューレの冒険 第二巻『ピラミッドの謎』
本田成二(著)
東京創元社(1989/4/28)絶版
ワルキューレの冒険 第三巻『時の鍵の伝説』
本田成二(著)
東京創元社(1989/10/31)絶版
■参考文献
『恐怖の幻影』
ロビン・ウォーターフィールド(著)安田均・深田宏(訳)
社会思想社(1989/4/30)絶版
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2025年8月25日月曜日
アランツァ世界の滅んだ街 FT新聞 No.4597
おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です☆
今日は先週火曜日の中山将平による「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」の記事を受けて、FT書房が展開する世界観「アランツァ」について、書いていきたくなりました。
中山は「ローグライクハーフ」を最近はじめた人のために、追加ルールを中心にした記事を書いてくれましたので、私は逆に「ローグライクハーフ」にハマりまくってくれているあなたのために、アランツァ世界のマニアックな記事を書きます☆
◆4つの「かつてあった土地」。
さて、今回はアランツァ世界の「滅んだ、あるいは大きな変化があった街」について、書いていきます。
アランツァ世界の冒険は大きく分けて第1期、第2期、第3期という時代分けがあり、第2期が冒険の時代としてメインを張っています。
その中で、第1期にはちゃんとあったけれど、第2期には滅んだ、あるいはその様子が大きく様変わりした都市や国をご紹介してまいります☆
◆レラヴィリア王国☆
ドラッツェンの南西部に存在したこの王国は、雰囲気でいえば中世前期から古代終期のような、木材を主とした家屋や城塞を造る、ラドリド大陸のなかではやや遅れた文明を持つ王国でした。
人々の名前には「矢羽根(やばね)」「鹿脚(しかあし)」といった、道具や自然に関連する名称が用いられていました。
王国の繁栄を願う陽気で素朴な人々は、城塞都市ドラッツェンにより征服されて、現在ではドラッツェンの領内に存在する少数民族となり、集落を形成しています。
◆ハングー帝国☆
ハングー帝国は人間とドワーフが建立した、ラドリド大陸南西部の国です。
国そのものは地上に存在しましたが、この国の家屋の多くは地下に建設されるという、独特の風習がありました。
この国を征服した後に生まれたのが冒険都市カラメールです。
そのため、カラメールの地下には今でもハングー帝国の遺跡があり、冒険の舞台となることがしばしばあります。
なお、大陸南西部には紙に記録する文化が深く根づいていないため、この国の滅亡については多くが分かっていません。
残された貴重ないくつかの資料は、強力な魔女である「ターニャ」という人物が、このハングー帝国の衰退と滅亡に深く関わっていることを示しています。
このターニャという魔女は非常に強力な存在で、時の英雄は彼女をバラバラに埋葬することで、その力を分散したと言われています。
アランツァにはこの「ターニャの○○」と呼ばれる魔法の装備品が存在します。
その多くはチャーム(小物)であり、1個かそれ以上の装備品欄を占める代わりに、強い魔法の力をキャラクターにもたらすと言われています。
◆魔法都市ジョルク☆
冒険のメイン舞台となるラドリド大陸──いや、アランツァ世界の中でも、最も魔法文化が発展した都市が、かつてありました。
その都市は「魔法都市ジョルク」と呼ばれ、都市と同じ名前の魔法使いサルバドール・ジョルクによって統治されていました。
さて、このジョルクの北東にあたる土地に、シァアレと呼ばれる街があります。ここには【悪の種族】であるトカゲ人が住み、【善の種族】が住む街を破壊しようと、常に悪意を蓄えています。
シァアレに住むトカゲ人たちの人口は今(第2期)よりもずっと多かったため、その攻撃は熾烈なものでした。
対抗して防備をガチガチに固めたからくり都市チャマイとは違い、統治者であるジョルクがとった対策は、非常にスケールの大きいものでした。
都市浮遊です。
ノード(魔力だまり)から巨大な魔力石を切り出した魔法使いジョルクは、魔力石を浮遊石という魔法の装備品へと変えることに成功。
魔法都市は天空都市と名前を変えて、今もアランツァ世界の上空をゆっくりと移動、数年に1回ほどの頻度で聖フランチェスコ市などいくつかの都市と交易を行いながら、都市機能と生活力を維持しています。
ジョルクが聖フランチェスコを訪れるとき、聖フランチェスコ市には珍しい魔法の装備品が多くもたらされます。
街は活気づき、祭りが起こります。
◆墜落都市ホラドリウス☆
ジョルクには隣接する都市があり、両者はあわせて双子都市などと呼ばれていました。
もうひとつの魔法都市ホラドリウスは、ジョルクと同じように、少し遅れて天空都市となりました。しかし、10年ほど浮遊した末に浮遊石に不具合が生じ、ラドリド大陸よりも北部にある海氷地域に墜落しました。
以来、この街は「墜落都市」ホラドリウスと呼ばれています。
ホラドリウスは極北に存在するため、その魔法の力の多くが、その土地でも無事に生き延びるために費やされています。
都市機能は初期と比べると大きく衰退しました。
しかし、本来は人の住むことができない土地です……この地を訪れる冒険者には大きな助けとなるでしょう。
今回はこのあたりで。
それではまた!
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中山は「ローグライクハーフ」を最近はじめた人のために、追加ルールを中心にした記事を書いてくれましたので、私は逆に「ローグライクハーフ」にハマりまくってくれているあなたのために、アランツァ世界のマニアックな記事を書きます☆
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さて、今回はアランツァ世界の「滅んだ、あるいは大きな変化があった街」について、書いていきます。
アランツァ世界の冒険は大きく分けて第1期、第2期、第3期という時代分けがあり、第2期が冒険の時代としてメインを張っています。
その中で、第1期にはちゃんとあったけれど、第2期には滅んだ、あるいはその様子が大きく様変わりした都市や国をご紹介してまいります☆
◆レラヴィリア王国☆
ドラッツェンの南西部に存在したこの王国は、雰囲気でいえば中世前期から古代終期のような、木材を主とした家屋や城塞を造る、ラドリド大陸のなかではやや遅れた文明を持つ王国でした。
人々の名前には「矢羽根(やばね)」「鹿脚(しかあし)」といった、道具や自然に関連する名称が用いられていました。
王国の繁栄を願う陽気で素朴な人々は、城塞都市ドラッツェンにより征服されて、現在ではドラッツェンの領内に存在する少数民族となり、集落を形成しています。
◆ハングー帝国☆
ハングー帝国は人間とドワーフが建立した、ラドリド大陸南西部の国です。
国そのものは地上に存在しましたが、この国の家屋の多くは地下に建設されるという、独特の風習がありました。
この国を征服した後に生まれたのが冒険都市カラメールです。
そのため、カラメールの地下には今でもハングー帝国の遺跡があり、冒険の舞台となることがしばしばあります。
なお、大陸南西部には紙に記録する文化が深く根づいていないため、この国の滅亡については多くが分かっていません。
残された貴重ないくつかの資料は、強力な魔女である「ターニャ」という人物が、このハングー帝国の衰退と滅亡に深く関わっていることを示しています。
このターニャという魔女は非常に強力な存在で、時の英雄は彼女をバラバラに埋葬することで、その力を分散したと言われています。
アランツァにはこの「ターニャの○○」と呼ばれる魔法の装備品が存在します。
その多くはチャーム(小物)であり、1個かそれ以上の装備品欄を占める代わりに、強い魔法の力をキャラクターにもたらすと言われています。
◆魔法都市ジョルク☆
冒険のメイン舞台となるラドリド大陸──いや、アランツァ世界の中でも、最も魔法文化が発展した都市が、かつてありました。
その都市は「魔法都市ジョルク」と呼ばれ、都市と同じ名前の魔法使いサルバドール・ジョルクによって統治されていました。
さて、このジョルクの北東にあたる土地に、シァアレと呼ばれる街があります。ここには【悪の種族】であるトカゲ人が住み、【善の種族】が住む街を破壊しようと、常に悪意を蓄えています。
シァアレに住むトカゲ人たちの人口は今(第2期)よりもずっと多かったため、その攻撃は熾烈なものでした。
対抗して防備をガチガチに固めたからくり都市チャマイとは違い、統治者であるジョルクがとった対策は、非常にスケールの大きいものでした。
都市浮遊です。
ノード(魔力だまり)から巨大な魔力石を切り出した魔法使いジョルクは、魔力石を浮遊石という魔法の装備品へと変えることに成功。
魔法都市は天空都市と名前を変えて、今もアランツァ世界の上空をゆっくりと移動、数年に1回ほどの頻度で聖フランチェスコ市などいくつかの都市と交易を行いながら、都市機能と生活力を維持しています。
ジョルクが聖フランチェスコを訪れるとき、聖フランチェスコ市には珍しい魔法の装備品が多くもたらされます。
街は活気づき、祭りが起こります。
◆墜落都市ホラドリウス☆
ジョルクには隣接する都市があり、両者はあわせて双子都市などと呼ばれていました。
もうひとつの魔法都市ホラドリウスは、ジョルクと同じように、少し遅れて天空都市となりました。しかし、10年ほど浮遊した末に浮遊石に不具合が生じ、ラドリド大陸よりも北部にある海氷地域に墜落しました。
以来、この街は「墜落都市」ホラドリウスと呼ばれています。
ホラドリウスは極北に存在するため、その魔法の力の多くが、その土地でも無事に生き延びるために費やされています。
都市機能は初期と比べると大きく衰退しました。
しかし、本来は人の住むことができない土地です……この地を訪れる冒険者には大きな助けとなるでしょう。
今回はこのあたりで。
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2025年8月24日日曜日
『モンスター!モンスター!の怪物たち』vol.5 FT新聞 No.4596
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『モンスター!モンスター!の怪物たち』vol.5
DON-CHANG
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イラストレーターのDON-CHANGです。
8月10日(日)のTGFF2025にて、ついに『ズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』が発売となりました!
この「ズィムララ」世界には、ベテランの冒険者でも初めて見るであろうモンスターが数多く生息しています。
これらのモンスターについては、今後発売が予定されている『ズィムララのモンスターラリー【モンスター編】』にて、詳しく紹介されることでしょう。
多くの冒険者にとって初めて見聞きする、ズィムララのモンスターをイラストで紹介するこの企画。
今回は「ズィムララ」での冒険で、プレイヤーたちと敵対することが多そうなデーモン(悪魔)の眷属から「ヴァクカヴューゴ」をピックアップしました。
イラストを描くにあたっては、『ズィムララのモンスターラリー』を参照し、できるだけ記述に忠実に描くよう心掛けましたが、自家翻訳のため誤りなど含まれるかも知れない点、あらかじめご承知おきください。
このイラストは、セッション(オンライン含む)などで使用する分には、自由に加工・印刷などして使用していただいて構いません。
■ヴァクカヴューゴ(Vakkavuego)
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MM_Vakkavuego.jpg
ざっと特徴を見ると、以下のとおり。
・デーモンが地獄から連れてきた「水牛」で、荷役・食用・乳、そして戦闘にも使役される。
・体は真紅色で、その皮は防御点8の装甲になる。
・頭は牛に似ているが、口は巨大で、鋭い牙が並んでいる。
・幅が広く曲がった角を持つ。
・筋肉質で力強い体を持つ。
イラストは主に「水牛」をイメージしましたが、装甲になる体の皮などから「犀」のイメージも盛り込みました。(余談ですが、昔の中国では犀は水牛の仲間とされていたらしいです)。
『ズィムララ〜』収録のイラストでは、背中にトゲ(?)が生えているのですが、本文に特に記載がないので無視しました。また、脚も犬に近い感じで描かれていますが、こちらも本文に記載がないので無視して「水牛」風の蹄としました。
尻尾についての記載はなかったので、デーモンたちのように先端がハート型の尻尾としてみました。
ところで「ヴァクカヴューゴ(Vakkavuego)」とは、どういう由来の命名なんでしょうかね。
なんとなく「ウォーターバッファロー(Water buffalo)」のモジりのようにも思えるのですが…。
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『モンスター!モンスター!の怪物たち』vol.5
DON-CHANG
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イラストレーターのDON-CHANGです。
8月10日(日)のTGFF2025にて、ついに『ズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』が発売となりました!
この「ズィムララ」世界には、ベテランの冒険者でも初めて見るであろうモンスターが数多く生息しています。
これらのモンスターについては、今後発売が予定されている『ズィムララのモンスターラリー【モンスター編】』にて、詳しく紹介されることでしょう。
多くの冒険者にとって初めて見聞きする、ズィムララのモンスターをイラストで紹介するこの企画。
今回は「ズィムララ」での冒険で、プレイヤーたちと敵対することが多そうなデーモン(悪魔)の眷属から「ヴァクカヴューゴ」をピックアップしました。
イラストを描くにあたっては、『ズィムララのモンスターラリー』を参照し、できるだけ記述に忠実に描くよう心掛けましたが、自家翻訳のため誤りなど含まれるかも知れない点、あらかじめご承知おきください。
このイラストは、セッション(オンライン含む)などで使用する分には、自由に加工・印刷などして使用していただいて構いません。
■ヴァクカヴューゴ(Vakkavuego)
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ざっと特徴を見ると、以下のとおり。
・デーモンが地獄から連れてきた「水牛」で、荷役・食用・乳、そして戦闘にも使役される。
・体は真紅色で、その皮は防御点8の装甲になる。
・頭は牛に似ているが、口は巨大で、鋭い牙が並んでいる。
・幅が広く曲がった角を持つ。
・筋肉質で力強い体を持つ。
イラストは主に「水牛」をイメージしましたが、装甲になる体の皮などから「犀」のイメージも盛り込みました。(余談ですが、昔の中国では犀は水牛の仲間とされていたらしいです)。
『ズィムララ〜』収録のイラストでは、背中にトゲ(?)が生えているのですが、本文に特に記載がないので無視しました。また、脚も犬に近い感じで描かれていますが、こちらも本文に記載がないので無視して「水牛」風の蹄としました。
尻尾についての記載はなかったので、デーモンたちのように先端がハート型の尻尾としてみました。
ところで「ヴァクカヴューゴ(Vakkavuego)」とは、どういう由来の命名なんでしょうかね。
なんとなく「ウォーターバッファロー(Water buffalo)」のモジりのようにも思えるのですが…。
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2025年8月23日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第654号 FT新聞 No.4595
From:水波流
中山氏と先日行ったクトゥルフ会で、「日常に潜む怪異は、結論もオチもなくただ存在するから怖い」という話になりました。
その時に出たのが、作家・小野不由美さんの諸作品です。(私は『屍鬼』がマイベストに上がるほど好きなのです)
『鬼談百景』『残穢』がまさにそうした作品ですが、私は実話ものよりやはり物語の様相を呈して書かれた作品が好みです。
日常に潜む怪異を淡々と描いた物語『営繕かるかや怪異譚』シリーズ、これもお薦めです。
最近ようやく『その参』を読みました。6月に発売した『その肆』も楽しみです。
(こんな話ばかりしているクトゥルフ会、前にもお話していたようにオンラインで近々やろうかな……)
From:葉山海月
代引きがいくら待っても来ないよ!
と思っていたら
住所書き忘れていただけでしたー!
それでもまだ来ないと思っていたら
お盆休みでしたー!
From:くろやなぎ
ときどき、創刊当初(2013年)やそれに近い時期のFT新聞の記事を読んでみることがあります。いまのFT新聞とはまた違った雰囲気で、いろいろと刺激を受け、昨日(22日)の記事内でも当時の記事からの引用をさせていただきました。
「ローグライクハーフ」や「モンスター!モンスター!TRPG」などを通じてFT書房やFT新聞を知ったという読者の方も、もしご興味がありましたら、Kindleでバックナンバー(1年単位でまとまっています)をちらりとのぞいてみていただければと思います。月ごとのもくじで各記事のタイトルがわかるので、特に気になる記事だけをピンポイントで追っていくこともできますよ!
From:中山将平
僕ら明日8月24日(日)「札幌コンベンションセンター 大ホール」で開催の『文学フリマ札幌10』にサークル参加します。
北海道にお住いの皆さま、大変お待たせいたしました!
FT書房の夏の最新刊等々をイベントにて手に取っていただける絶好の機会がやってまいります。
ブース配置は【C-8】。ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(葉)=葉山海月
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
(明)=明日槇悠
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■8/17(日)~8/22(金)の記事一覧
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2025年8月17日(日)葉山海月 FT新聞 No.4589
Ψ『The Outfoxies外伝 withカードチェイサー☆かぼすちゃん カードブッチャーましろさん』 日曜ゲームブック
・お久しぶりの日曜ゲームブックに、お待たせしました! 彼女が帰ってきました!
便利屋ましろが送る、奇天烈な探偵奇譚『The Outfoxies外伝』の登場です。
ましろが出会った事件、それは他殺か自殺か区別つけがたい事件。
それを追っているうちに、とんでもない黒幕を引くましろ。
最悪最強な敵を前に、彼女がとった行動とは!?
緒方直人氏が作り出した『カードチェイサー☆かぼすちゃん』のヒロイン。魔法少女の夏乃瀬かぼすとがっちりコラボな本作!
ダブルヒロインの活躍、お楽しみください。
(葉)
2025年8月18日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4590
・編集でしたら緋色まで!
FT新聞を支える柱、編集の緋色朱音氏。
この度は彼女のフリーランス化を祝して、これまでの経歴、スキルをまとめつつ、彼女を猛プッシュする記事を書かせていただきます!
「〆切を破ったことは一度もなく、「誰か」に編集の仕事をお願いするなら、彼女以上の相手はいない」と、FT書房リーダー杉本氏の太鼓判付き!
たとえば同人誌の「編集」の部分でつまずいているあなた。
たとえば「ゲームブック」や「ローグライクハーフ」「モンスター!モンスター!TRPG」の本を作りたいと思っているあなた!
彼女の力を借りてみる、というのはいかがですか?
どうぞご一考よろしくお願いいたします!
(葉)
2025年8月19日(火)中山将平 FT新聞 No.4591
『クトゥウルウの聖なる邪神殿』残響 「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います!」
・イラストレーター中山将平氏による、とっておきのローグライクハーフ情報をお届けしました。
今回のテーマは、「魔法の宝物・武器・鎧」「故郷」「第0ラウンド」の3点。どれも基本ルールまたは「ローグライクハーフwiki」に掲載されている要素ですが、特に初心者の方にとっては、有効な活用法やメリットがわかりにくいかもしれません。
そこで、中山氏のお勧めする装備品や戦術などを、皆さんそれぞれの攻略法や楽しみ方に取り入れて、よきローグライクハーフ・ライフの助けとしていただければと思います。
好評なら第2弾もあるとのことですので、ぜひご感想をお寄せください!
(く)
2025年8月20日(水)ぜろ FT新聞 No.4592
第1回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第452回。
今週からは、先日電子書籍化されたばかりの、杉本=ヨハネ氏によるゲームブック『狂える魔女のゴルジュ』のリプレイをお届けします。
まずは作品紹介と背景の描写から、ということで、本編開始後のネタバレ的な展開はまだありません。
今後プレイする予定の方も、すでにプレイ済みの方もご一緒に、ぜろ氏と主人公・ミナの語りをご堪能ください!
(く)
2025年8月21日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4593
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』4
・娘さんと一緒に過ごす時間が飛躍的に伸びた岡和田氏。
それを受けて(?) 今回紹介するものは、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』。前回に引き続き、その顛末をつづります。
『ヴィルガストRPG』を遊ぶ際に、ルールブックの通りに解釈をしようとすると整合性や処理に戸惑う場面が出てきました。小さいお子様がプレイヤーで親御さんがゲームマスター。そんなときにどうする事が求められるのでしょうか。
私(水波)も8歳の娘とボードゲームを遊ぶようになり、同じような場面に直面した事があります。うちでは最初はルールを一部カットしてわかりやすくしてとにかく1回遊ぶ、そして2回目から少しずつルールを増やしていく、という形にすると、面白がって覚えていってくれることが多いです。
やはり岡和田さんの書かれているように、子供と遊ぶ上では「とにかくゲームを遊んでもらう事」「できれば次も遊びたいと思ってもらう事」が最優先になるなと思いました。
しかしこれ「子供」を「初心者」に置き換えても、実は大事なポイントは同じ気がしますね。
(水)
2025年8月22日(金)くろやなぎ FT新聞 No.4594
死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について
・金曜日の投稿枠では、編集部員のくろやなぎ氏によるゲームブックにおける主人公の「死」の考察をお届けしました。
先週の記事『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』へのアンサーでもあります。
スティーブ・ジャクソン『Sorcery!』、思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』、清水龍之介『断頭台の迷宮』……。
年代も趣向も異なる三つの作品を比較し、「物語の断絶」という側面からゲームブックの普遍性を探ります。
皆さんには強く思い出に残っているゲームブックでの死の体験はございますか?
有限な命を噛み締めながら、新たなパラグラフに飛び込みましょう。金曜のこの枠では皆さんからの寄稿もお待ちしています。
(明)
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■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(緒方直人さん)
『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』面白かったです。展覧会と送り雛はブック性の最高峰でしたね。そのまま小説としても面白いけどゲームブック形式で没入して読み進める事により際立って心に残る名作になったと思います。読書全般も大きな意味で言語理解・解釈ゲームであるという論も多分に頷けました。読んで咀嚼し、他人と意見交換して一生を懸けて付き合い続けていく、それもまたゲームですね。
(お返事:明日槇悠)
ありがとうございます! おっしゃる通りですね。数こそ多くはないですが、ブック的にゲーム性の解釈を拡張させた意欲作は今なお新作が世に出ていることでしょう。そうしたゲームブックの情報を紹介しあえる場のひとつとしてFT新聞があればいいなと思います。私もまだゲームブックに詳しくないので、そうした作品をお便りや寄稿といった形で皆様から教えていただけたら幸いです!
(ジャラル アフサラールさん)
パンタクルシリーズのヘビメタ(この言葉も死語になりつつありますね(笑))魔術師メスロンはまだ日本では杖とローブのオーソドックス魔術師がスタンダートな時代で、漫画の『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』のダーク・シュナイダーと並んで異色の魔術師でした。 『パンタクル2』のラストで続編を匂わせながら放置状態も『BASTARD!! 』と似ていますね(笑)。
(お返事:田林洋一)
毎回のお便り、どうもありがとうございます! メスロンがヘビメタという設定は意外でありながらも、うまく情景に溶け込んでいて、鈴木直人氏のキャラクターメイキングの上手さが光った人物だと思います(何しろスピンオフの続編が出るくらいですから!)。私は『BASTARD!!』は寡聞にして未見なのですが、ぜひ『パンタクル3』は出してほしいですね。
(緒方直人さん)
Ψ『The Outfoxies外伝 withカードチェイサー☆かぼすちゃん カードブッチャーましろさん』とても面白かったです。久々の本格ゲームブックを堪能いたしました。トランプ迷路にもいろんなクリアルートが仕込まれてて凝ってましたね。かなり悩みましたがアレコレ唸って何とかクリアまで漕ぎ着けました。かぼすちゃんにもましろさんと並ぶ勇敢なる活躍の場をいただきありがとうございます。最後のキメ台詞とかカッコよかったですよ。また使っていただけると嬉しいです。
(お返事:葉山海月)
ありがとうございます。
実はおっしゃる通り、トランプ迷路をはじめ、気合を入れなおした部分がちらほらあります。
よりいっそうのあそびごたえ、リアリティを入れたつもりです。
実は、これも編集長の水波さん。そして新入部員のみなさんの厳しい厳しい(笑)ご鞭撻があったからです。
この場を借りて、編集サイドの皆さんに、感謝いたします。
そして、かぼすちゃんを作り出した緒方さんにも、そして、この物語に触れていただいたすべての方にも、感謝を!
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中山氏と先日行ったクトゥルフ会で、「日常に潜む怪異は、結論もオチもなくただ存在するから怖い」という話になりました。
その時に出たのが、作家・小野不由美さんの諸作品です。(私は『屍鬼』がマイベストに上がるほど好きなのです)
『鬼談百景』『残穢』がまさにそうした作品ですが、私は実話ものよりやはり物語の様相を呈して書かれた作品が好みです。
日常に潜む怪異を淡々と描いた物語『営繕かるかや怪異譚』シリーズ、これもお薦めです。
最近ようやく『その参』を読みました。6月に発売した『その肆』も楽しみです。
(こんな話ばかりしているクトゥルフ会、前にもお話していたようにオンラインで近々やろうかな……)
From:葉山海月
代引きがいくら待っても来ないよ!
と思っていたら
住所書き忘れていただけでしたー!
それでもまだ来ないと思っていたら
お盆休みでしたー!
From:くろやなぎ
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僕ら明日8月24日(日)「札幌コンベンションセンター 大ホール」で開催の『文学フリマ札幌10』にサークル参加します。
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FT書房の夏の最新刊等々をイベントにて手に取っていただける絶好の機会がやってまいります。
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紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(葉)=葉山海月
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流
(明)=明日槇悠
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■8/17(日)~8/22(金)の記事一覧
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2025年8月17日(日)葉山海月 FT新聞 No.4589
Ψ『The Outfoxies外伝 withカードチェイサー☆かぼすちゃん カードブッチャーましろさん』 日曜ゲームブック
・お久しぶりの日曜ゲームブックに、お待たせしました! 彼女が帰ってきました!
便利屋ましろが送る、奇天烈な探偵奇譚『The Outfoxies外伝』の登場です。
ましろが出会った事件、それは他殺か自殺か区別つけがたい事件。
それを追っているうちに、とんでもない黒幕を引くましろ。
最悪最強な敵を前に、彼女がとった行動とは!?
緒方直人氏が作り出した『カードチェイサー☆かぼすちゃん』のヒロイン。魔法少女の夏乃瀬かぼすとがっちりコラボな本作!
ダブルヒロインの活躍、お楽しみください。
(葉)
2025年8月18日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4590
・編集でしたら緋色まで!
FT新聞を支える柱、編集の緋色朱音氏。
この度は彼女のフリーランス化を祝して、これまでの経歴、スキルをまとめつつ、彼女を猛プッシュする記事を書かせていただきます!
「〆切を破ったことは一度もなく、「誰か」に編集の仕事をお願いするなら、彼女以上の相手はいない」と、FT書房リーダー杉本氏の太鼓判付き!
たとえば同人誌の「編集」の部分でつまずいているあなた。
たとえば「ゲームブック」や「ローグライクハーフ」「モンスター!モンスター!TRPG」の本を作りたいと思っているあなた!
彼女の力を借りてみる、というのはいかがですか?
どうぞご一考よろしくお願いいたします!
(葉)
2025年8月19日(火)中山将平 FT新聞 No.4591
『クトゥウルウの聖なる邪神殿』残響 「ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います!」
・イラストレーター中山将平氏による、とっておきのローグライクハーフ情報をお届けしました。
今回のテーマは、「魔法の宝物・武器・鎧」「故郷」「第0ラウンド」の3点。どれも基本ルールまたは「ローグライクハーフwiki」に掲載されている要素ですが、特に初心者の方にとっては、有効な活用法やメリットがわかりにくいかもしれません。
そこで、中山氏のお勧めする装備品や戦術などを、皆さんそれぞれの攻略法や楽しみ方に取り入れて、よきローグライクハーフ・ライフの助けとしていただければと思います。
好評なら第2弾もあるとのことですので、ぜひご感想をお寄せください!
(く)
2025年8月20日(水)ぜろ FT新聞 No.4592
第1回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第452回。
今週からは、先日電子書籍化されたばかりの、杉本=ヨハネ氏によるゲームブック『狂える魔女のゴルジュ』のリプレイをお届けします。
まずは作品紹介と背景の描写から、ということで、本編開始後のネタバレ的な展開はまだありません。
今後プレイする予定の方も、すでにプレイ済みの方もご一緒に、ぜろ氏と主人公・ミナの語りをご堪能ください!
(く)
2025年8月21日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4593
子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』4
・娘さんと一緒に過ごす時間が飛躍的に伸びた岡和田氏。
それを受けて(?) 今回紹介するものは、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』。前回に引き続き、その顛末をつづります。
『ヴィルガストRPG』を遊ぶ際に、ルールブックの通りに解釈をしようとすると整合性や処理に戸惑う場面が出てきました。小さいお子様がプレイヤーで親御さんがゲームマスター。そんなときにどうする事が求められるのでしょうか。
私(水波)も8歳の娘とボードゲームを遊ぶようになり、同じような場面に直面した事があります。うちでは最初はルールを一部カットしてわかりやすくしてとにかく1回遊ぶ、そして2回目から少しずつルールを増やしていく、という形にすると、面白がって覚えていってくれることが多いです。
やはり岡和田さんの書かれているように、子供と遊ぶ上では「とにかくゲームを遊んでもらう事」「できれば次も遊びたいと思ってもらう事」が最優先になるなと思いました。
しかしこれ「子供」を「初心者」に置き換えても、実は大事なポイントは同じ気がしますね。
(水)
2025年8月22日(金)くろやなぎ FT新聞 No.4594
死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について
・金曜日の投稿枠では、編集部員のくろやなぎ氏によるゲームブックにおける主人公の「死」の考察をお届けしました。
先週の記事『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』へのアンサーでもあります。
スティーブ・ジャクソン『Sorcery!』、思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』、清水龍之介『断頭台の迷宮』……。
年代も趣向も異なる三つの作品を比較し、「物語の断絶」という側面からゲームブックの普遍性を探ります。
皆さんには強く思い出に残っているゲームブックでの死の体験はございますか?
有限な命を噛み締めながら、新たなパラグラフに飛び込みましょう。金曜のこの枠では皆さんからの寄稿もお待ちしています。
(明)
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■今週の読者様の声のご紹介
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ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(緒方直人さん)
『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』面白かったです。展覧会と送り雛はブック性の最高峰でしたね。そのまま小説としても面白いけどゲームブック形式で没入して読み進める事により際立って心に残る名作になったと思います。読書全般も大きな意味で言語理解・解釈ゲームであるという論も多分に頷けました。読んで咀嚼し、他人と意見交換して一生を懸けて付き合い続けていく、それもまたゲームですね。
(お返事:明日槇悠)
ありがとうございます! おっしゃる通りですね。数こそ多くはないですが、ブック的にゲーム性の解釈を拡張させた意欲作は今なお新作が世に出ていることでしょう。そうしたゲームブックの情報を紹介しあえる場のひとつとしてFT新聞があればいいなと思います。私もまだゲームブックに詳しくないので、そうした作品をお便りや寄稿といった形で皆様から教えていただけたら幸いです!
(ジャラル アフサラールさん)
パンタクルシリーズのヘビメタ(この言葉も死語になりつつありますね(笑))魔術師メスロンはまだ日本では杖とローブのオーソドックス魔術師がスタンダートな時代で、漫画の『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』のダーク・シュナイダーと並んで異色の魔術師でした。 『パンタクル2』のラストで続編を匂わせながら放置状態も『BASTARD!! 』と似ていますね(笑)。
(お返事:田林洋一)
毎回のお便り、どうもありがとうございます! メスロンがヘビメタという設定は意外でありながらも、うまく情景に溶け込んでいて、鈴木直人氏のキャラクターメイキングの上手さが光った人物だと思います(何しろスピンオフの続編が出るくらいですから!)。私は『BASTARD!!』は寡聞にして未見なのですが、ぜひ『パンタクル3』は出してほしいですね。
(緒方直人さん)
Ψ『The Outfoxies外伝 withカードチェイサー☆かぼすちゃん カードブッチャーましろさん』とても面白かったです。久々の本格ゲームブックを堪能いたしました。トランプ迷路にもいろんなクリアルートが仕込まれてて凝ってましたね。かなり悩みましたがアレコレ唸って何とかクリアまで漕ぎ着けました。かぼすちゃんにもましろさんと並ぶ勇敢なる活躍の場をいただきありがとうございます。最後のキメ台詞とかカッコよかったですよ。また使っていただけると嬉しいです。
(お返事:葉山海月)
ありがとうございます。
実はおっしゃる通り、トランプ迷路をはじめ、気合を入れなおした部分がちらほらあります。
よりいっそうのあそびごたえ、リアリティを入れたつもりです。
実は、これも編集長の水波さん。そして新入部員のみなさんの厳しい厳しい(笑)ご鞭撻があったからです。
この場を借りて、編集サイドの皆さんに、感謝いたします。
そして、かぼすちゃんを作り出した緒方さんにも、そして、この物語に触れていただいたすべての方にも、感謝を!
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未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
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*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
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2025年8月22日金曜日
死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について FT新聞 No.4594
みなさん、こんにちは。FT新聞新入編集部員の、くろやなぎと申します。
先日のFT新聞(FT新聞 No.4587、2025/08/15)に、明日槇悠氏の『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』が掲載されたところですが、そこからの連想というか、私なりの応答というか、そんな感じの記事を書かせていただきました。物騒なタイトルですみません。
ゲームブックにおける「シ」といえば、やっぱ「死」だよね、という言葉遊びのような思いつきがきっかけでしたが、意外と深いところで「ゲームブックと文学性」という明日槇氏のテーマにつながっているような気もしています。
お時間がありましたら、しばしお付き合いいただき、ご感想などいただければ幸いです。
なお、この記事の中では、以下のゲームブックの全体的な構造や具体的な場面(主人公の「死」を含む)について言及しています。
・スティーブ・ジャクソン『シャムタンティ丘陵』(こあらだまり訳、SBクリエイティブ、2024年)※『ファイティング・ファンタジー・コレクション40周年記念〜スティーブ・ジャクソン編〜「サラモニスの秘密」』所収
・思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』(幻想迷宮書店、2020年)※Kindle版
・清水龍之介『断頭台の迷宮』(FT書房、2014年)※Kindle版
いずれかを未読の方で、「余計な知識を入れずにまっさらな状態で作品を楽しみたい」という場合は、当該作品を読了したのち、気が向きましたら、改めてこの記事をお読みいただければと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について
(くろやなぎ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
■ゲームブックにおける「物語」と「殺意」
まずは、初期のFT新聞に掲載された、ひとつの記事の引用から始めさせてください。
FT書房のゲームブック作家である清水龍之介氏は、ゲームブックにおける「死」について、以下のように語っています。
僕が最初に感じたゲームブックの「物語」としての違和感は、「死ぬの!?」ということでした。
(中略)
殺そう、殺そうとしてくる。できるだけ殺したい。なるはやで殺っといて、みたいな。玄関開けたら二分であの世。
「本を閉じること」とか書いてある。えっ、みたいな。あっ、これ死んだんだ、みたいな。
しばらくぼーっとしますよね。死んだかー、的な。
本から「殺意」感じたの、初めてだなあ。みつを。みたいな。
[清水龍之介『ギロチン系男子@ファンタジーこぼれ話』、FT新聞2013年版pp.147-8より]
ここで、清水氏が「物語」にわざわざ鍵カッコを付けていることにご注目ください。
清水氏のいう「違和感」は、「ゲーム」の終わりとしてのゲームオーバーに対するものというより、「物語」の突然の断絶に向けられたものであるように思います。
本を読み、その物語を追っていたはずが、途中でいきなり、読んでいた物語そのものから「殺意」を向けられ、「きみ」は死んで、「本を閉じること」と言われる。
この衝撃は、特に、選択肢の先にダイレクトに存在する「死」において、ことさら大きなものになるかもしれません。
つまり、戦闘で体力点が0になったとかのプロセスを挟まずに、そのパラグラフに飛んだらいきなり訪れる「死」。
「戦闘に勝ったら先に進めていたけど、負けてゲームオーバーになった」とかではなく、物語が本当にそこで途切れていて、完全に袋小路になっている「死」。
物語に入り込んでいた読者ほど、「しばらくぼーっと」するしかないような「死」。
そのような、ゲームブックにおける、ある種の「死」に対する読者の経験、肌感覚のようなものを、清水氏の文章はうまく掬い取っているように思います。
ひとつの例を挙げてみましょう。
旅に出た翌日。丘を下る曲がりくねった道を進むなか、きみはそろそろ保存食を食べておこうと、足を止めます。
開けた場所を見つけて、保存食を取り出し、パンをひとくち齧りました。
そして、木々のあいだから飛んできた、毒の塗られた吹き矢で死にます。おしまい。
…いやいや、待って待って、ちょっと待って、と言いたくなりませんか?
いま述べた「死」の場面は、ゲームブックの金字塔、〈ソーサリー〉シリーズの第1巻(SBクリエイティブ版での書名は『シャムタンティ丘陵』)における、ある一連の選択の結果を要約したものです。全4巻にわたるはずの、長い長い冒険が始まったばかりのときに起こりうるできごとです。清水氏のいう「なるはやで殺っといて」、という言葉のニュアンスがわかる気がするスピード感です(もっとも、この記事の後半で取り上げる『断頭台の迷宮』での、「最初のパラグラフで寝返りを打ったら次のパラグラフで死ぬ」というレベルのスピード感に比べると、随分とゆっくりだと言えるかもしれませんが)。
そもそも保存食を食べるという行為は、先々の冒険で体力が減ったりなくなったりしないための行為なわけで、まだまだ旅が続くことが大前提なんですよね。
で、食べようとした結果、死ぬ。しかも、食事という行為とは本質的に何の関係もない、いきなり飛んできた吹き矢の毒で。
ひとによっては、指をはさんでおいた直前のパラグラフにあわてて戻るかもしれません。そして、何食わぬ顔で、別のパラグラフを選び直して旅を続けるかもしれません。
それでも、「あ、死んだ」という衝撃や、本来はそこで物語が終わっていたという認識は、ひとつの経験として、ゲームブックの「殺意」とともに読者の中に刻み込まれるでしょう。
(さらに言えば、そもそも「きみ」は、直前のパラグラフに戻ってやり直すというだけでは、もはやどうしようない状況に陥っているかもしれないのですが…)
ここで強調しておきたいのは、このような「殺意」に満ちたゲームブックが、その結果として豊饒な「物語」を内包する作品になりうる、ということです。
危険に満ちた冒険の旅を表現するために、ひとりの主人公に経験させることができるのは、通常の物語なら「死にそうなぎりぎりの危険」あたりまでかもしれません。
しかしゲームブックなら、主人公を、しかも読者の分身である「きみ」を、本気の殺意で、ほんとうに殺してしまうことが許されるのです。
決して「殺せばよい」というものではありませんが、その場面が効果的に描かれるならば、その物語世界がどのように危険なのか、良くも悪くもどのような可能性に満ちたものなのかということに対する、殺された「きみ」である読者の理解や思い入れは深まることでしょう。
ゲームブックにおける「殺意」は、その「物語」がゲームブックという形式で展開されることに対して、ひとつの有力な意味を与えうるものなのです。
■『送り雛は瑠璃色の』における「殺意」のあり方
さて、先日の明日槇氏の記事では、文学性を志向したと思われる作品のひとつとして、思緒雄二氏のゲームブック『送り雛は瑠璃色の』(以下、『送り雛』と略します)が取り上げられていました。
ここで、『送り雛』における「殺意」のあり方について考えてみたいと思います。
『送り雛』の物語世界は、亡霊が実在し、呪術が実際に効果を発揮する世界であり、主人公の「瞬/シュン」である「君」は、ある因縁の当事者としてさまざまな経験をすることになります。
その経験には、「死」と隣り合わせの危機的な状況も含まれることでしょう。
しかし『送り雛』の読者には、その物語の中で、先ほど『シャムタンティ丘陵』の例で述べたような突然の死、物語が袋小路で断ち切られるような死を経験する機会はありません。
いやいや、『送り雛』にもゲームオーバーはある、読者全員が物語の「おしまい」にたどり着けるわけではないだろう、と言われるとその通りなのですが、少しばかり詳しく話させてください。
君は、物語の開始時に一定の「霊力点」を持っていて、それは「霊視」や「霊査」の能力(いわゆる「お告げ」のようなもの)を行使して情報を得たり、霊的な攻撃を受けたりするたびに減っていきます。
『送り雛』の物語を読み進めていくと、読者は特定のパラグラフの中に、何度も「霊力が0点以下なら、ただちに〜」という指示を目にします。そして、その指示に従ってパラグラフを飛んでいけば、そこにあるのは「君」の「死」、もっと強い表現をすれば「滅び」です(1度だけ救済措置を受けられる場合もありますが)。特に物語の終盤になると、霊力を強制的に減らされる機会は増え、君の死の危険も増していきます。
それでも、一撃ですべての霊力を持っていかれるような出来事は、『送り雛』の中では起こりません。君の死は、あくまでいくつもの場面の積み重ねの中で、段階的に霊力が減らされていった結果として起こります。
また、『送り雛』には「戦闘のルール」がありませんが、このことも、君の「死ににくさ」に影響しています。もし、君と敵との霊力を削りあうような戦闘のルールがあれば、いくら霊力が多く残っていても、1回の遭遇で霊力をすべて失い、死に至ることがあるかもしれません。
霊力の枯渇以外にも、『送り雛』にはもうひとつ、ゲームオーバーのパターンが存在します。これは、ある種の選択肢を選ぶことでたどりつく結末で、形式上は、突然の死(正確には「死」ではないですが、ある意味では死に準ずるような、絶対的な喪失が起こります)のように見えるかもしれません。
ただ、それらの選択肢には、すべて「全力での現実逃避」とでも言うべき明確な共通点があります。それまでの物語の流れを踏まえると、読者の目には、その選択肢は明らかに「浮いた」ものとして映るでしょう。そのため、物語の中核に積極的に進んでいこうとする読者が、それらの選択肢を選ぶ可能性は低いと言えます。
むしろ、それらの「死」へ繋がる選択肢は、この物語世界に疲れた「君」や読者に用意された、袋小路ではなく「非常口」のように、私には思えるのです。
『送り雛』では、読者が主体的に物語の中へ入り込み、物語の中核に迫ろうとする限り、「君」が袋小路のパラグラフで突然の死を迎えることはありません。ありうるのは、袋小路ではなく、道半ばでの(霊力の枯渇による、道の先が見えていた状態での)死か、物語世界から「降りる」ことを選んだ結果としての死(に準ずる結末)、この二通りの死だけです。これらの死を避ければ、読者は必ず、物語を読み続ける限り、「君」の選んだ「おしまい」の先へたどり着くはずです(なお、物語の中で1箇所だけ、霊力点が「0点」とは別の数値で分岐するパラグラフが存在します。これについては、霊力の不足によって物語世界から「降ろされる」、という特殊なケースとして位置付けられるかもしれません)。
『送り雛』の物語世界には、呪いや死の気配が渦巻いています。しかし、『送り雛』のゲームとしてのルールは、君の「死」への道を用意する一方で、突発的な「死」という経験からは、君を、あるいは読者を、守ろうとするかのように組み上げられているようにも感じられます。
たしかに、『送り雛』の終盤の展開は、ある種の「殺意」に満ちているとは言えるかもしれません。君が致命的に誤った行動を取ろうとすると、「強制霊査」が発動して、君の行動をキャンセルする代わりに、霊力が5点減らされます(なお、霊力点の初期値は50点です)。また、場合によっては、ひとつのパラグラフで8点、10点というレベルで霊力が減らされることもありえます。
ただ、たとえ霊力が0点になり、君が死を迎えるとしても、それは定められた手続きを踏んで、ひとつの(正確には、ほぼ同じ記述があるふたつの)パラグラフにたどり着いてからの話です。
これはあくまで比喩ですが、君は個別の川底に沈められるのではなく、必ず同じ海へ流れ着くのです。
『シャムタンティ丘陵』の殺意が、「きみ」の死をその場に打ち捨て、パラグラフの中に留めるような殺意であるのに対し、『送り雛』の殺意は、「君」の死を丁寧に回収し、然るべき場所へと送り届けていきます。
では、このような面倒見のよい殺意のあり方は、『送り雛』の物語にとって、どのような意味を持っているのでしょうか?
そのことを考える前に、ある意味では『送り雛』と対照的な構造を持つゲームブックにおける、「殺意」と「物語」のあり方を見てみたいと思います。
■『断頭台の迷宮』における「殺意」と「物語」
清水龍之介氏の『断頭台の迷宮』(以下、『断頭台』と略します)は、迷宮内で記憶を失った状態で目覚めた「あなた」が、迷宮からの脱出を試みるゲームブックです。
その迷宮の中では「ギロチンハンズ」と呼ばれる怪物が徘徊しており、あなたはおそらく何度か、そのギロチンの刃にかかって、あるいは他の致命的な罠にかかって、命を落とすことになるでしょう。
全部で100パラグラフ、というコンパクトなゲームブックながら、FT新聞に掲載されたぜろ氏のリプレイ(初回:FT新聞2013年版pp.1324-30、最終回:FT新聞2014年版pp.86-9、全20回)では、主人公は10回ほど死亡し、そのうち戦闘の敗北という形での死亡は2回のみ。あとはすべて、何らかの罠やギロチンによる即死となっています。
最初に引用した記事の中で、清水氏はギロチンについて以下のように語っています。
それでも、僕はあえてギロチンを使う。
ギロチンの性急さ、無慈悲さは、ゲームブックの終止符によく似合う……と感じているからです。
(中略)
その妥協なき死への徹底は、ゲームブックのリアリズムに通じます。
(中略)
そう、僕にとってギロチンは、単なる処刑法ではなく「死のシンボル」。リアルの象徴だった、というわけですね。
[清水龍之介『ギロチン系男子@ファンタジーこぼれ話』、FT新聞2013年版p.146,pp.148-9より]
『断頭台』の殺意は、清水氏が言うとおり、性急かつ無慈悲に「あなた」を襲います。『送り雛』の殺意のように、「君」の能力値が一定以下になるまで待ってくれませんし、然るべきパラグラフへ送り届けてもくれません。
あなたには、技量ポイント・体力ポイント・運勢ポイントと、『送り雛』の「君」よりも多彩な能力値が与えられています。「君」が持たなかったアイテムや金貨を持つ権利も与えられています。しかし、どれほど技量ポイントが高くても、最大の体力ポイントが残されていても、素晴らしい魔法のアイテムを持っていても、ギロチンの刃は、そんなことはいっさいお構いなしに、あなたの首を落とします。
ギロチンハンズは、「右手がギロチン」という、「なぜそんな怪物をわざわざつくるのか」とツッコミを入れたくなるような、シュールで幻想的な存在です。
左手はギロチンではないので、ギロチン「ハンド」なのではと言いたくもなりますが、ひとところに留まらず、気付くとあなたのそばにいて、何度でもその首を落としてくるギロチンの手は、まさに複数形で呼ぶのが相応しいとも言えるでしょう。
そんなありえない存在、ファンタジーの物語の中でしか出会わないような怪物は、しかし不思議なことに、清水氏が意図したとおり、確かにある種の「リアリズム」を体現しているのです。
『送り雛』の物語の中で減っていく霊力や、その結果による死は、読者の中でリアルなものとして感じられるためには、想像力による何らかの変換作業を必要とするでしょう。「霊力が0点になる」とは一体どのようなことなのか、その先のパラグラフでの描写は、つまり何がどうなったということなのか、それを正確に説明するのは不可能ですし、読者によってイメージするものはまちまちでしょう。
それに比べて、ギロチンの刃があなたの身体にもたらす帰結は、あまりに明白で、あいまいな解釈の余地はありません。ギロチンハンズという幻想的な怪物は、その右手のギロチンだけが、妙なリアリティを持ってあなたの身体を、そしてあなたの物語を切断します。
『断頭台』における性急で無慈悲な死、頻繁に訪れるゲームオーバーは、ある側面から見れば、「ゲーム」としての『断頭台』の中核にある仕掛けであり、手強いパズルとして読者を楽しませるでしょう。
それと同時に、ギロチンハンズの右手の刃は、『断頭台』の物語にとっても、欠くことのできない象徴的な要素であると言えます。
『断頭台』の殺意は、ファンタジーの物語の中に、ある種のリアリティを与えるための装置なのです。
■ゲームブックにおける「死」の意味
では、『断頭台』の物語は、そのギロチンが象徴するとおり、ひたすら恐ろしく猟奇的なのでしょうか?
実は、まったくそんなことはありません。
ギロチンハンズという名前の中で、残虐性と諧謔性が奇妙に同居しているように、『断頭台』の物語の中では、恐怖と笑い、神秘性と世俗性、リアルとシュール、無感動な死と心温まるロマンスが交差しています。そして、ギロチンの刃をかいくぐったあなたは、思いもよらない結末へとたどり着くことでしょう。
その中に垣間見える、人間と、「人間のような、しかし人間ではない存在」との関係性というテーマは、『断頭台』とは遠く離れた作品のようにも思える、『送り雛』のテーマとも重なり合っているのです。
『送り雛』のあとがきの中で、思緒氏は以下のように述べています。
ゲームブックという世界、物語の表し方に私が興味をもち続けているのは、そこに小説にも、漫画にも、映画にも、そしてコンピューターゲームにもない独特なものがあると感じているからです。あえて喩えるのなら一つの大まかなテーマ、世界観のもとにまとめられた散文詩集、短編集といった感じでしょうか。宮沢賢治研究の第一人者で詩人でもある天沢退二郎氏の『闇の中のオレンジ』という作品は、私のイメージするゲームブックの物語世界に、最も近いものの一つです。それは「結びつくと言うよりは、ふと行き過ぎ交差する小さな物語、赤ん坊のような産まれたばかりの意味たちの、大きく広がってとどまらない宇宙」、ゲームブックの構造的不自由が(その不自由ゆえ必然として)生み出す物語の世界です。
[思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』、幻想迷宮書店版pp.499-500より]
『送り雛』は、このような思想の中で生み出されたゲームブックであり、先日の記事で明日槇氏が述べたように、「詩的」「幻想的」「無限性」という特徴を備えているように見えます。
『送り雛』の殺意は、ギロチンの刃のような性急さや無慈悲さを持たず、読者がたどるループを少しでも長く、「おしまい」の先の無限の彼方まで引き延ばそうとします。そして、ついに「君」の霊力が尽きたときには、詩的で幻想的な、解釈の定まらない曖昧な光の中に「君」を連れていくでしょう。
『送り雛』の殺意のあり方は、その物語世界の文学的な性格を反映し、強化するような意味を持っているように思います。
一方、『断頭台』の物語世界は、散文的で、リアルで、断ち切られた有限な物語、あるいは物語とも言えないような、袋小路で終わるエピソードで溢れています。それを象徴しているのが、ギロチンハンズの右手に光る、殺意に満ちたギロチンの刃です。
しかしまた、断ち切られた物語を、何度も途中までたどり直し、物語の先へと少しずつ進んでいくにつれて、読者の中では、ギロチンハンズの右手が違った意味を帯びてくることでしょう。
いちど与えられた意味の再解釈、あるいは意味の「産まれ直し」と、断片化された物語たちの交差。『断頭台』の物語の中で読者が経験することは、ある意味では、思緒氏が述べたゲームブックの物語世界のあり方そのもののようにも思えます。
『断頭台』は、散文的であると同時に詩的であり、リアルであると同時に幻想的なゲームブックです。それらはひょっとすると、「文学的」かどうかにかかわらず、ゲームブックという形で生み出された物語が、多かれ少なかれ普遍的に備えている特性なのかもしれません。
では、無限性についてはどうでしょうか。『断頭台』の物語世界は、思緒氏が言うところの「大きく広がってとどまらない宇宙」、無限の意味の広がりを志向しているのでしょうか?
そうかもしれないし、そうではないかもしれません。それはある意味で、ゲームブックの物語を読み進め、読み直す、読者の営みに委ねられていると言えるでしょう。
ですが、『断頭台』の物語には、ひとつの大きな特徴があることも確かです。
FT新聞での『断頭台』のリプレイの中で、リプレイの執筆者ぜろ氏は、以下のように語っています。
しかし——
和気あいあいと3人で歩んでいくイリアンや作中の俺の分身ハルをよそに、プレイヤー俺の心にはわだかまりが残ります。
(中略)
失った2人の仲間のことを思い出す。
(中略)
生死をともにしてきたかけがえのない仲間たち。
その仲間の命を無慈悲に奪ったのが、あの男のギロチンの刃。
[ぜろ『リプレイ「断頭台の迷宮」@第17回』、FT新聞2013年版pp.2531-2より]
『断頭台』の物語が「和気あいあい」とした展開を見せる中、物語の中の「あなた」と読者(プレイヤー)のあいだには、どうやら何らかの分裂が生じているようです。
ぜろ氏の心に残る「わだかまり」。それは、「ギロチンの刃」から生まれたものに他なりません。
ギロチンの刃が生み出す散文的でリアルな死。それは、たとえ物語自身がそれを忘れたように振る舞うとしても、読者の心には刻み込まれて、簡単には離れてくれないかもしれません。それが「あなた」自身の死であっても、他のだれかの死であっても。
パラグラフのあいだを飛び、新たな意味を見つけ直す試行の奥底で、ギロチンが象徴する「死」は、それが起こったパラグラフの中に留まり続けます。
それは一方では、私たちの命や時間の有限性をあらわすものであり、ある種の枷としての意味を持つでしょう。
他方、それはまた、物語の印象を深め、断ち切られた物語を再演させ、新たな意味を生み出すための原動力にもなるでしょう。
あるいはそれは、物語世界の無限性に疲れた読者に対して、その世界から離れるための介錯のような役割を果たすこともあるかもしれません。
いずれにしても、ゲームブックにおける「死」は、それぞれの物語のあり方に応じた「殺意」とともに、
そのパラグラフに足を踏み入れる「きみ」や「君」や「あなた」たちから新たな意味を見出されるのを、物語の中で待っているのです。
■(参考)この記事で取り上げたゲームブックについて
Steve Jackson(スティーブ・ジャクソン)氏の"The Shamutanti Hills"は、原書が最初に刊行されたのが1983年で、日本では以下の3種類の翻訳が出版されています。
『魔法使いの丘』(安藤由紀子訳、東京創元社、1985年)
『シャムタンティの丘を越えて』(浅羽莢子訳、創土社、2003年)
『シャムタンティ丘陵』(こあらだまり訳、SBクリエイティブ、2024年)
上記のうち、東京創元社(創元推理文庫)の『魔法使いの丘』は絶版ですが、「国立国会図書館デジタルコレクション」の「個人向けデジタル化資料送信サービス」の対象になっています。
利用者登録にはいささか手間と時間がかかりますし、紙の本のスキャンデータなので便利なリンク機能もありませんが、日本国内に在住する18歳以上の方であればだれでも、ご自身のパソコンやタブレット等で閲覧することが可能です。
[国立国会図書館:個人向けデジタル化資料送信サービスについて]https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html
創土社の『シャムタンティの丘を越えて』は、通常の書店の店頭で見かける機会はほとんどないと思いますが、Amazonや大型書店のネットストア等で新品を購入できる可能性があります。
同じタイトルのTRPGシナリオ(国際通信社の〈d20ファイティングファンタジー〉シリーズ)もありますので、お間違えのないようご注意ください。
SBクリエイティブの『シャムタンティ丘陵』は、『ファイティング・ファンタジー・コレクション40周年記念〜スティーブ・ジャクソン編〜「サラモニスの秘密」』という、〈ソーサリー〉シリーズ全巻とジャクソン氏の新作がひとまとまりになったセットのうちの1冊という扱いでした。このセットは事前予約を前提とする完全受注生産品で、現時点では再販のアナウンスはありません。
思緒雄二氏の『送り雛は瑠璃色の』にも主に3つのバージョンが存在し、それぞれ社会思想社(1990年)、創土社(2003年)、幻想迷宮書店(2020年)から刊行されています。
このうち幻想迷宮書店版は、電子書籍としていつでも購入することが可能です(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)。
https://gensoumeikyuu.com/gb08/
清水龍之介氏の『断頭台の迷宮』は、FT書房の「100パラグラフゲームブック」シリーズの第1弾として、2010年に刊行された作品です。
2013年にはアプリ化(「iGameBook」シリーズ、現在は配信終了)、2014年には電子書籍化されたほか、
2020年に刊行された「100パラグラフゲームブック集」の第2巻にも収録されています。
電子書籍で楽しみたい方は、Kindle版をご購入いただき(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)、
紙媒体で他の作品もあわせて楽しみたい方は、「100パラグラフゲームブック集」の第2巻をお買い求めいただければと思います(在庫のあるうちに!)。
なお、『断頭台の迷宮』には1箇所パラグラフ番号の誤記があり、FT書房ホームページに正誤修正情報が掲載されています。これはKindle版、100パラグラフゲームブック集のいずれにも適用されますので、事前にご確認ください。
[Kindle版]https://www.amazon.co.jp/dp/B00P54ANLM
[100パラグラフゲームブック集(第2巻)]https://ftbooks.booth.pm/items/2483162
[正誤修正情報]https://ftbooks.xyz/seigoshusei/100para2seigo
また、FT新聞のバックナンバー(2013年〜2021年)については、電子書籍として1年単位での購入が可能です(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)。
記事内での引用箇所を読んで興味を持たれた方は、こちらもぜひご覧ください。
[2013年(初年)のバックナンバー]https://www.amazon.co.jp/dp/B0B354RFVS
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先日のFT新聞(FT新聞 No.4587、2025/08/15)に、明日槇悠氏の『シはパラグラフを飛ぶ——ゲームブックと文学性』が掲載されたところですが、そこからの連想というか、私なりの応答というか、そんな感じの記事を書かせていただきました。物騒なタイトルですみません。
ゲームブックにおける「シ」といえば、やっぱ「死」だよね、という言葉遊びのような思いつきがきっかけでしたが、意外と深いところで「ゲームブックと文学性」という明日槇氏のテーマにつながっているような気もしています。
お時間がありましたら、しばしお付き合いいただき、ご感想などいただければ幸いです。
なお、この記事の中では、以下のゲームブックの全体的な構造や具体的な場面(主人公の「死」を含む)について言及しています。
・スティーブ・ジャクソン『シャムタンティ丘陵』(こあらだまり訳、SBクリエイティブ、2024年)※『ファイティング・ファンタジー・コレクション40周年記念〜スティーブ・ジャクソン編〜「サラモニスの秘密」』所収
・思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』(幻想迷宮書店、2020年)※Kindle版
・清水龍之介『断頭台の迷宮』(FT書房、2014年)※Kindle版
いずれかを未読の方で、「余計な知識を入れずにまっさらな状態で作品を楽しみたい」という場合は、当該作品を読了したのち、気が向きましたら、改めてこの記事をお読みいただければと思います。
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死はパラグラフに留まる——ゲームブックにおける「殺意」と死の意味について
(くろやなぎ)
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■ゲームブックにおける「物語」と「殺意」
まずは、初期のFT新聞に掲載された、ひとつの記事の引用から始めさせてください。
FT書房のゲームブック作家である清水龍之介氏は、ゲームブックにおける「死」について、以下のように語っています。
僕が最初に感じたゲームブックの「物語」としての違和感は、「死ぬの!?」ということでした。
(中略)
殺そう、殺そうとしてくる。できるだけ殺したい。なるはやで殺っといて、みたいな。玄関開けたら二分であの世。
「本を閉じること」とか書いてある。えっ、みたいな。あっ、これ死んだんだ、みたいな。
しばらくぼーっとしますよね。死んだかー、的な。
本から「殺意」感じたの、初めてだなあ。みつを。みたいな。
[清水龍之介『ギロチン系男子@ファンタジーこぼれ話』、FT新聞2013年版pp.147-8より]
ここで、清水氏が「物語」にわざわざ鍵カッコを付けていることにご注目ください。
清水氏のいう「違和感」は、「ゲーム」の終わりとしてのゲームオーバーに対するものというより、「物語」の突然の断絶に向けられたものであるように思います。
本を読み、その物語を追っていたはずが、途中でいきなり、読んでいた物語そのものから「殺意」を向けられ、「きみ」は死んで、「本を閉じること」と言われる。
この衝撃は、特に、選択肢の先にダイレクトに存在する「死」において、ことさら大きなものになるかもしれません。
つまり、戦闘で体力点が0になったとかのプロセスを挟まずに、そのパラグラフに飛んだらいきなり訪れる「死」。
「戦闘に勝ったら先に進めていたけど、負けてゲームオーバーになった」とかではなく、物語が本当にそこで途切れていて、完全に袋小路になっている「死」。
物語に入り込んでいた読者ほど、「しばらくぼーっと」するしかないような「死」。
そのような、ゲームブックにおける、ある種の「死」に対する読者の経験、肌感覚のようなものを、清水氏の文章はうまく掬い取っているように思います。
ひとつの例を挙げてみましょう。
旅に出た翌日。丘を下る曲がりくねった道を進むなか、きみはそろそろ保存食を食べておこうと、足を止めます。
開けた場所を見つけて、保存食を取り出し、パンをひとくち齧りました。
そして、木々のあいだから飛んできた、毒の塗られた吹き矢で死にます。おしまい。
…いやいや、待って待って、ちょっと待って、と言いたくなりませんか?
いま述べた「死」の場面は、ゲームブックの金字塔、〈ソーサリー〉シリーズの第1巻(SBクリエイティブ版での書名は『シャムタンティ丘陵』)における、ある一連の選択の結果を要約したものです。全4巻にわたるはずの、長い長い冒険が始まったばかりのときに起こりうるできごとです。清水氏のいう「なるはやで殺っといて」、という言葉のニュアンスがわかる気がするスピード感です(もっとも、この記事の後半で取り上げる『断頭台の迷宮』での、「最初のパラグラフで寝返りを打ったら次のパラグラフで死ぬ」というレベルのスピード感に比べると、随分とゆっくりだと言えるかもしれませんが)。
そもそも保存食を食べるという行為は、先々の冒険で体力が減ったりなくなったりしないための行為なわけで、まだまだ旅が続くことが大前提なんですよね。
で、食べようとした結果、死ぬ。しかも、食事という行為とは本質的に何の関係もない、いきなり飛んできた吹き矢の毒で。
ひとによっては、指をはさんでおいた直前のパラグラフにあわてて戻るかもしれません。そして、何食わぬ顔で、別のパラグラフを選び直して旅を続けるかもしれません。
それでも、「あ、死んだ」という衝撃や、本来はそこで物語が終わっていたという認識は、ひとつの経験として、ゲームブックの「殺意」とともに読者の中に刻み込まれるでしょう。
(さらに言えば、そもそも「きみ」は、直前のパラグラフに戻ってやり直すというだけでは、もはやどうしようない状況に陥っているかもしれないのですが…)
ここで強調しておきたいのは、このような「殺意」に満ちたゲームブックが、その結果として豊饒な「物語」を内包する作品になりうる、ということです。
危険に満ちた冒険の旅を表現するために、ひとりの主人公に経験させることができるのは、通常の物語なら「死にそうなぎりぎりの危険」あたりまでかもしれません。
しかしゲームブックなら、主人公を、しかも読者の分身である「きみ」を、本気の殺意で、ほんとうに殺してしまうことが許されるのです。
決して「殺せばよい」というものではありませんが、その場面が効果的に描かれるならば、その物語世界がどのように危険なのか、良くも悪くもどのような可能性に満ちたものなのかということに対する、殺された「きみ」である読者の理解や思い入れは深まることでしょう。
ゲームブックにおける「殺意」は、その「物語」がゲームブックという形式で展開されることに対して、ひとつの有力な意味を与えうるものなのです。
■『送り雛は瑠璃色の』における「殺意」のあり方
さて、先日の明日槇氏の記事では、文学性を志向したと思われる作品のひとつとして、思緒雄二氏のゲームブック『送り雛は瑠璃色の』(以下、『送り雛』と略します)が取り上げられていました。
ここで、『送り雛』における「殺意」のあり方について考えてみたいと思います。
『送り雛』の物語世界は、亡霊が実在し、呪術が実際に効果を発揮する世界であり、主人公の「瞬/シュン」である「君」は、ある因縁の当事者としてさまざまな経験をすることになります。
その経験には、「死」と隣り合わせの危機的な状況も含まれることでしょう。
しかし『送り雛』の読者には、その物語の中で、先ほど『シャムタンティ丘陵』の例で述べたような突然の死、物語が袋小路で断ち切られるような死を経験する機会はありません。
いやいや、『送り雛』にもゲームオーバーはある、読者全員が物語の「おしまい」にたどり着けるわけではないだろう、と言われるとその通りなのですが、少しばかり詳しく話させてください。
君は、物語の開始時に一定の「霊力点」を持っていて、それは「霊視」や「霊査」の能力(いわゆる「お告げ」のようなもの)を行使して情報を得たり、霊的な攻撃を受けたりするたびに減っていきます。
『送り雛』の物語を読み進めていくと、読者は特定のパラグラフの中に、何度も「霊力が0点以下なら、ただちに〜」という指示を目にします。そして、その指示に従ってパラグラフを飛んでいけば、そこにあるのは「君」の「死」、もっと強い表現をすれば「滅び」です(1度だけ救済措置を受けられる場合もありますが)。特に物語の終盤になると、霊力を強制的に減らされる機会は増え、君の死の危険も増していきます。
それでも、一撃ですべての霊力を持っていかれるような出来事は、『送り雛』の中では起こりません。君の死は、あくまでいくつもの場面の積み重ねの中で、段階的に霊力が減らされていった結果として起こります。
また、『送り雛』には「戦闘のルール」がありませんが、このことも、君の「死ににくさ」に影響しています。もし、君と敵との霊力を削りあうような戦闘のルールがあれば、いくら霊力が多く残っていても、1回の遭遇で霊力をすべて失い、死に至ることがあるかもしれません。
霊力の枯渇以外にも、『送り雛』にはもうひとつ、ゲームオーバーのパターンが存在します。これは、ある種の選択肢を選ぶことでたどりつく結末で、形式上は、突然の死(正確には「死」ではないですが、ある意味では死に準ずるような、絶対的な喪失が起こります)のように見えるかもしれません。
ただ、それらの選択肢には、すべて「全力での現実逃避」とでも言うべき明確な共通点があります。それまでの物語の流れを踏まえると、読者の目には、その選択肢は明らかに「浮いた」ものとして映るでしょう。そのため、物語の中核に積極的に進んでいこうとする読者が、それらの選択肢を選ぶ可能性は低いと言えます。
むしろ、それらの「死」へ繋がる選択肢は、この物語世界に疲れた「君」や読者に用意された、袋小路ではなく「非常口」のように、私には思えるのです。
『送り雛』では、読者が主体的に物語の中へ入り込み、物語の中核に迫ろうとする限り、「君」が袋小路のパラグラフで突然の死を迎えることはありません。ありうるのは、袋小路ではなく、道半ばでの(霊力の枯渇による、道の先が見えていた状態での)死か、物語世界から「降りる」ことを選んだ結果としての死(に準ずる結末)、この二通りの死だけです。これらの死を避ければ、読者は必ず、物語を読み続ける限り、「君」の選んだ「おしまい」の先へたどり着くはずです(なお、物語の中で1箇所だけ、霊力点が「0点」とは別の数値で分岐するパラグラフが存在します。これについては、霊力の不足によって物語世界から「降ろされる」、という特殊なケースとして位置付けられるかもしれません)。
『送り雛』の物語世界には、呪いや死の気配が渦巻いています。しかし、『送り雛』のゲームとしてのルールは、君の「死」への道を用意する一方で、突発的な「死」という経験からは、君を、あるいは読者を、守ろうとするかのように組み上げられているようにも感じられます。
たしかに、『送り雛』の終盤の展開は、ある種の「殺意」に満ちているとは言えるかもしれません。君が致命的に誤った行動を取ろうとすると、「強制霊査」が発動して、君の行動をキャンセルする代わりに、霊力が5点減らされます(なお、霊力点の初期値は50点です)。また、場合によっては、ひとつのパラグラフで8点、10点というレベルで霊力が減らされることもありえます。
ただ、たとえ霊力が0点になり、君が死を迎えるとしても、それは定められた手続きを踏んで、ひとつの(正確には、ほぼ同じ記述があるふたつの)パラグラフにたどり着いてからの話です。
これはあくまで比喩ですが、君は個別の川底に沈められるのではなく、必ず同じ海へ流れ着くのです。
『シャムタンティ丘陵』の殺意が、「きみ」の死をその場に打ち捨て、パラグラフの中に留めるような殺意であるのに対し、『送り雛』の殺意は、「君」の死を丁寧に回収し、然るべき場所へと送り届けていきます。
では、このような面倒見のよい殺意のあり方は、『送り雛』の物語にとって、どのような意味を持っているのでしょうか?
そのことを考える前に、ある意味では『送り雛』と対照的な構造を持つゲームブックにおける、「殺意」と「物語」のあり方を見てみたいと思います。
■『断頭台の迷宮』における「殺意」と「物語」
清水龍之介氏の『断頭台の迷宮』(以下、『断頭台』と略します)は、迷宮内で記憶を失った状態で目覚めた「あなた」が、迷宮からの脱出を試みるゲームブックです。
その迷宮の中では「ギロチンハンズ」と呼ばれる怪物が徘徊しており、あなたはおそらく何度か、そのギロチンの刃にかかって、あるいは他の致命的な罠にかかって、命を落とすことになるでしょう。
全部で100パラグラフ、というコンパクトなゲームブックながら、FT新聞に掲載されたぜろ氏のリプレイ(初回:FT新聞2013年版pp.1324-30、最終回:FT新聞2014年版pp.86-9、全20回)では、主人公は10回ほど死亡し、そのうち戦闘の敗北という形での死亡は2回のみ。あとはすべて、何らかの罠やギロチンによる即死となっています。
最初に引用した記事の中で、清水氏はギロチンについて以下のように語っています。
それでも、僕はあえてギロチンを使う。
ギロチンの性急さ、無慈悲さは、ゲームブックの終止符によく似合う……と感じているからです。
(中略)
その妥協なき死への徹底は、ゲームブックのリアリズムに通じます。
(中略)
そう、僕にとってギロチンは、単なる処刑法ではなく「死のシンボル」。リアルの象徴だった、というわけですね。
[清水龍之介『ギロチン系男子@ファンタジーこぼれ話』、FT新聞2013年版p.146,pp.148-9より]
『断頭台』の殺意は、清水氏が言うとおり、性急かつ無慈悲に「あなた」を襲います。『送り雛』の殺意のように、「君」の能力値が一定以下になるまで待ってくれませんし、然るべきパラグラフへ送り届けてもくれません。
あなたには、技量ポイント・体力ポイント・運勢ポイントと、『送り雛』の「君」よりも多彩な能力値が与えられています。「君」が持たなかったアイテムや金貨を持つ権利も与えられています。しかし、どれほど技量ポイントが高くても、最大の体力ポイントが残されていても、素晴らしい魔法のアイテムを持っていても、ギロチンの刃は、そんなことはいっさいお構いなしに、あなたの首を落とします。
ギロチンハンズは、「右手がギロチン」という、「なぜそんな怪物をわざわざつくるのか」とツッコミを入れたくなるような、シュールで幻想的な存在です。
左手はギロチンではないので、ギロチン「ハンド」なのではと言いたくもなりますが、ひとところに留まらず、気付くとあなたのそばにいて、何度でもその首を落としてくるギロチンの手は、まさに複数形で呼ぶのが相応しいとも言えるでしょう。
そんなありえない存在、ファンタジーの物語の中でしか出会わないような怪物は、しかし不思議なことに、清水氏が意図したとおり、確かにある種の「リアリズム」を体現しているのです。
『送り雛』の物語の中で減っていく霊力や、その結果による死は、読者の中でリアルなものとして感じられるためには、想像力による何らかの変換作業を必要とするでしょう。「霊力が0点になる」とは一体どのようなことなのか、その先のパラグラフでの描写は、つまり何がどうなったということなのか、それを正確に説明するのは不可能ですし、読者によってイメージするものはまちまちでしょう。
それに比べて、ギロチンの刃があなたの身体にもたらす帰結は、あまりに明白で、あいまいな解釈の余地はありません。ギロチンハンズという幻想的な怪物は、その右手のギロチンだけが、妙なリアリティを持ってあなたの身体を、そしてあなたの物語を切断します。
『断頭台』における性急で無慈悲な死、頻繁に訪れるゲームオーバーは、ある側面から見れば、「ゲーム」としての『断頭台』の中核にある仕掛けであり、手強いパズルとして読者を楽しませるでしょう。
それと同時に、ギロチンハンズの右手の刃は、『断頭台』の物語にとっても、欠くことのできない象徴的な要素であると言えます。
『断頭台』の殺意は、ファンタジーの物語の中に、ある種のリアリティを与えるための装置なのです。
■ゲームブックにおける「死」の意味
では、『断頭台』の物語は、そのギロチンが象徴するとおり、ひたすら恐ろしく猟奇的なのでしょうか?
実は、まったくそんなことはありません。
ギロチンハンズという名前の中で、残虐性と諧謔性が奇妙に同居しているように、『断頭台』の物語の中では、恐怖と笑い、神秘性と世俗性、リアルとシュール、無感動な死と心温まるロマンスが交差しています。そして、ギロチンの刃をかいくぐったあなたは、思いもよらない結末へとたどり着くことでしょう。
その中に垣間見える、人間と、「人間のような、しかし人間ではない存在」との関係性というテーマは、『断頭台』とは遠く離れた作品のようにも思える、『送り雛』のテーマとも重なり合っているのです。
『送り雛』のあとがきの中で、思緒氏は以下のように述べています。
ゲームブックという世界、物語の表し方に私が興味をもち続けているのは、そこに小説にも、漫画にも、映画にも、そしてコンピューターゲームにもない独特なものがあると感じているからです。あえて喩えるのなら一つの大まかなテーマ、世界観のもとにまとめられた散文詩集、短編集といった感じでしょうか。宮沢賢治研究の第一人者で詩人でもある天沢退二郎氏の『闇の中のオレンジ』という作品は、私のイメージするゲームブックの物語世界に、最も近いものの一つです。それは「結びつくと言うよりは、ふと行き過ぎ交差する小さな物語、赤ん坊のような産まれたばかりの意味たちの、大きく広がってとどまらない宇宙」、ゲームブックの構造的不自由が(その不自由ゆえ必然として)生み出す物語の世界です。
[思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』、幻想迷宮書店版pp.499-500より]
『送り雛』は、このような思想の中で生み出されたゲームブックであり、先日の記事で明日槇氏が述べたように、「詩的」「幻想的」「無限性」という特徴を備えているように見えます。
『送り雛』の殺意は、ギロチンの刃のような性急さや無慈悲さを持たず、読者がたどるループを少しでも長く、「おしまい」の先の無限の彼方まで引き延ばそうとします。そして、ついに「君」の霊力が尽きたときには、詩的で幻想的な、解釈の定まらない曖昧な光の中に「君」を連れていくでしょう。
『送り雛』の殺意のあり方は、その物語世界の文学的な性格を反映し、強化するような意味を持っているように思います。
一方、『断頭台』の物語世界は、散文的で、リアルで、断ち切られた有限な物語、あるいは物語とも言えないような、袋小路で終わるエピソードで溢れています。それを象徴しているのが、ギロチンハンズの右手に光る、殺意に満ちたギロチンの刃です。
しかしまた、断ち切られた物語を、何度も途中までたどり直し、物語の先へと少しずつ進んでいくにつれて、読者の中では、ギロチンハンズの右手が違った意味を帯びてくることでしょう。
いちど与えられた意味の再解釈、あるいは意味の「産まれ直し」と、断片化された物語たちの交差。『断頭台』の物語の中で読者が経験することは、ある意味では、思緒氏が述べたゲームブックの物語世界のあり方そのもののようにも思えます。
『断頭台』は、散文的であると同時に詩的であり、リアルであると同時に幻想的なゲームブックです。それらはひょっとすると、「文学的」かどうかにかかわらず、ゲームブックという形で生み出された物語が、多かれ少なかれ普遍的に備えている特性なのかもしれません。
では、無限性についてはどうでしょうか。『断頭台』の物語世界は、思緒氏が言うところの「大きく広がってとどまらない宇宙」、無限の意味の広がりを志向しているのでしょうか?
そうかもしれないし、そうではないかもしれません。それはある意味で、ゲームブックの物語を読み進め、読み直す、読者の営みに委ねられていると言えるでしょう。
ですが、『断頭台』の物語には、ひとつの大きな特徴があることも確かです。
FT新聞での『断頭台』のリプレイの中で、リプレイの執筆者ぜろ氏は、以下のように語っています。
しかし——
和気あいあいと3人で歩んでいくイリアンや作中の俺の分身ハルをよそに、プレイヤー俺の心にはわだかまりが残ります。
(中略)
失った2人の仲間のことを思い出す。
(中略)
生死をともにしてきたかけがえのない仲間たち。
その仲間の命を無慈悲に奪ったのが、あの男のギロチンの刃。
[ぜろ『リプレイ「断頭台の迷宮」@第17回』、FT新聞2013年版pp.2531-2より]
『断頭台』の物語が「和気あいあい」とした展開を見せる中、物語の中の「あなた」と読者(プレイヤー)のあいだには、どうやら何らかの分裂が生じているようです。
ぜろ氏の心に残る「わだかまり」。それは、「ギロチンの刃」から生まれたものに他なりません。
ギロチンの刃が生み出す散文的でリアルな死。それは、たとえ物語自身がそれを忘れたように振る舞うとしても、読者の心には刻み込まれて、簡単には離れてくれないかもしれません。それが「あなた」自身の死であっても、他のだれかの死であっても。
パラグラフのあいだを飛び、新たな意味を見つけ直す試行の奥底で、ギロチンが象徴する「死」は、それが起こったパラグラフの中に留まり続けます。
それは一方では、私たちの命や時間の有限性をあらわすものであり、ある種の枷としての意味を持つでしょう。
他方、それはまた、物語の印象を深め、断ち切られた物語を再演させ、新たな意味を生み出すための原動力にもなるでしょう。
あるいはそれは、物語世界の無限性に疲れた読者に対して、その世界から離れるための介錯のような役割を果たすこともあるかもしれません。
いずれにしても、ゲームブックにおける「死」は、それぞれの物語のあり方に応じた「殺意」とともに、
そのパラグラフに足を踏み入れる「きみ」や「君」や「あなた」たちから新たな意味を見出されるのを、物語の中で待っているのです。
■(参考)この記事で取り上げたゲームブックについて
Steve Jackson(スティーブ・ジャクソン)氏の"The Shamutanti Hills"は、原書が最初に刊行されたのが1983年で、日本では以下の3種類の翻訳が出版されています。
『魔法使いの丘』(安藤由紀子訳、東京創元社、1985年)
『シャムタンティの丘を越えて』(浅羽莢子訳、創土社、2003年)
『シャムタンティ丘陵』(こあらだまり訳、SBクリエイティブ、2024年)
上記のうち、東京創元社(創元推理文庫)の『魔法使いの丘』は絶版ですが、「国立国会図書館デジタルコレクション」の「個人向けデジタル化資料送信サービス」の対象になっています。
利用者登録にはいささか手間と時間がかかりますし、紙の本のスキャンデータなので便利なリンク機能もありませんが、日本国内に在住する18歳以上の方であればだれでも、ご自身のパソコンやタブレット等で閲覧することが可能です。
[国立国会図書館:個人向けデジタル化資料送信サービスについて]https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html
創土社の『シャムタンティの丘を越えて』は、通常の書店の店頭で見かける機会はほとんどないと思いますが、Amazonや大型書店のネットストア等で新品を購入できる可能性があります。
同じタイトルのTRPGシナリオ(国際通信社の〈d20ファイティングファンタジー〉シリーズ)もありますので、お間違えのないようご注意ください。
SBクリエイティブの『シャムタンティ丘陵』は、『ファイティング・ファンタジー・コレクション40周年記念〜スティーブ・ジャクソン編〜「サラモニスの秘密」』という、〈ソーサリー〉シリーズ全巻とジャクソン氏の新作がひとまとまりになったセットのうちの1冊という扱いでした。このセットは事前予約を前提とする完全受注生産品で、現時点では再販のアナウンスはありません。
思緒雄二氏の『送り雛は瑠璃色の』にも主に3つのバージョンが存在し、それぞれ社会思想社(1990年)、創土社(2003年)、幻想迷宮書店(2020年)から刊行されています。
このうち幻想迷宮書店版は、電子書籍としていつでも購入することが可能です(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)。
https://gensoumeikyuu.com/gb08/
清水龍之介氏の『断頭台の迷宮』は、FT書房の「100パラグラフゲームブック」シリーズの第1弾として、2010年に刊行された作品です。
2013年にはアプリ化(「iGameBook」シリーズ、現在は配信終了)、2014年には電子書籍化されたほか、
2020年に刊行された「100パラグラフゲームブック集」の第2巻にも収録されています。
電子書籍で楽しみたい方は、Kindle版をご購入いただき(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)、
紙媒体で他の作品もあわせて楽しみたい方は、「100パラグラフゲームブック集」の第2巻をお買い求めいただければと思います(在庫のあるうちに!)。
なお、『断頭台の迷宮』には1箇所パラグラフ番号の誤記があり、FT書房ホームページに正誤修正情報が掲載されています。これはKindle版、100パラグラフゲームブック集のいずれにも適用されますので、事前にご確認ください。
[Kindle版]https://www.amazon.co.jp/dp/B00P54ANLM
[100パラグラフゲームブック集(第2巻)]https://ftbooks.booth.pm/items/2483162
[正誤修正情報]https://ftbooks.xyz/seigoshusei/100para2seigo
また、FT新聞のバックナンバー(2013年〜2021年)については、電子書籍として1年単位での購入が可能です(Kindle Unlimitedの対象にもなっています)。
記事内での引用箇所を読んで興味を持たれた方は、こちらもぜひご覧ください。
[2013年(初年)のバックナンバー]https://www.amazon.co.jp/dp/B0B354RFVS
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