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子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(2)
岡和田晃
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そもそも、なぜ『甲竜戦記ヴィルガストRPG』を選んだのでしょうか?
第一の理由は、私(岡和田)が『ヴィルガスト』直撃世代だったにもかかわらず、まだプレイしたことのないシステムだったからです。純然たる好奇心でルールブックを入手してみたかったのでした。
第二の理由は、明らかに低年齢層(小学校高学年〜中学生くらい)を意識した体裁で、子どもと遊ぶのに適しているのではないかと思ったため。そのことが親たる私の背中を押してくれたのです。
それまで子ども向けの『ラビットホール・ドロップス』や『ラビットホール・ドロップスG』、システムがシンプルな『ファイティング・ファンタジー』や『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第二版』というRPGは子どもと遊んできました。どれも1回遊んで終わりではなく、複数回プレイしてきたものでして、今後もプレイする予定はあります(それは今後触れられればと)。
しかし、いざ『ヴィルガストRPG』のルールブックを買ってみて、改めて思ったのです。
「これ、プレイする前に、どの程度まで原作を押えればよいのだろう?」と。
私個人について言えば、だいぶ忘れている部分も多いとはいえ、リアルタイムで触れてきた強み、強烈なインプレッションがアドバンテージになります。一方、予備知識がまったくない子どもの場合には……?
原作付きのRPGの多くは、ユーザーの間口を広げるため、「原作を知らなくても遊べるが、知っていたほうがいっそう楽しめる(知っていたほうが望ましい)」というスタンスをとっています。ゲームマスターはむろんのこと、プレイヤーもそう。そもそも、原作に関心がなければ、原作付きのRPGを手に取らないものの、個々の読者の知識には濃淡がある、という現実を反映しているのでしょう。
同じケイブンシャの『恐竜戦隊ジュウレンジャーRPG大百科』(1992年)は、行為判定はじゃんけんを使うシンプルなシステムで、登場人物や敵役の設定が細かに解説され、原作のTV番組を見ていなかった私でも、35話までのストーリーが紹介されているので、内容は理解できました。ただし、『恐竜戦隊ジュウレンジャーRPG大百科』は、基本的にはジュウレンジャーのメンバーの誰かを演じ、シナリオは原作をなぞったものにすることが推奨されています。
同時期に出ていた『フォーチュン・クエスト・コンパニオン』(角川書店、1991年)はオリジナルなシナリオですが、そもそも著者のジェローム・ブリリアントIII世というのが原作小説に登場するゲーム好きなマンチキン・ドラゴン。独りよがりのゲームはつまらないと、原作で盗賊のトラップに喝破され、その反省から初心者でも楽しめるカードRPGを考案したという触れ込みでした。なので、わかりやすさを重視し、演じるのは基本的にカード化されているキャラクターとなります(後のバージョンでは、オリジナルのキャラクターも作成できるようになりますが)。
対して『甲竜戦記ヴィルガストRPG』は、特に原作をなぞったり、原作のキャラクターを演じたりするのではなく、原作キャラクターがNPCとして登場したりするわけではありません。原作付きのRPGとはいっても、『ストームブリンガー』のように原作のキャラクターが超強力なNPCとして出張ってくるわけでもないのです(モンスターや装備については、原作に準拠していますが)。
まがりなりにも私はRPGで食べてきた身。特にゲームマスターをつとめる場合は、自分の紡ぎ出す物語が公式ストーリーとの間に大きな齟齬を生んでしまわないために、可能な限り関連資料を押さえるようにしてきました。そこで、ひとまずコミック版の第1巻を買い直しました。当時、「デラックスボンボン」で読んだことがあったので懐かしさを感じ、すみだひろゆき氏の画力に改めて唸らされました。
娘にも渡して読んでもらいましたが、喜んで読み耽っていたものの、もともと「漫画に夢中!」という感じの子でもないためか、読み終えてもルールブックのように二度、三度と読み返すことはなく……。RPGの根本衝動に、「自分が触れた漫画みたいなお話を、ゲームで体験してみたい!」というものがあるとよく言われますが、今回のケースでは該当しなかったのですね。
どちらかといえば『ゴブリンスレイヤーTRPG』のように、原作はゲームの大枠を提供するのみで、あとはユーザー主体でファンタジー世界の冒険を作っていく。それが不思議と、原作のスタイルに近づいていく……というスタンスに近いものでした。こうしたスタンスが具体的にどのようなものかを説明するのは紙幅がかかってしまいますので、ご興味のある方は、以前私が4Gamer.comに書いた『ゴブリンスレイヤーTRPG』の先行リプレイをご覧ください。
思い返せば『ヴィルガスト』じたい、ガシャポンのなかにキャラクター1体か、モンスターとアイテムのセットが入っているというもので、それを自分なりに組み合わせて遊ぶというものになっていました。『ヴィルガストRPG』もそうしたスタイルを踏襲しているんですよね。
重要なデータはHPしかありません。これは当時のおまけシール(『ドキドキ学園』のギガロン、カードダスのHP等)を踏襲したものとなっています。一方で、装備はバラエティに富んでおり、モンスターのカタログはとても充実しています。
このあたりの「基本はシンプルだが、バリエーション豊かで、組み立てブロックのように遊べる」ところが、子どもにとって『ヴィルガストRPG』が魅力あるものに映った理由ではないかと分析しています。
■書誌情報
ケイブンシャの大百科別冊
『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
出版社:勁文社
1992年5月15日・絶版
原作者・蝸牛くも氏のGMでお届けする「ゴブリンスレイヤーTRPG」先行リプレイ。マフィア梶田ら,歴戦の冒険者達がダンジョンに挑む(4Gamer編集部:touge ライター:岡和田 晃 カメラマン:佐々木秀二)、「4Gamer.net」(2018年12月)
https://www.4gamer.net/games/436/G043667/20181224002/
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