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2026年2月15日日曜日

ローグライクハーフシナリオソムリエ その1『十物語』 FT新聞 No.4771

◇◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ローグライクハーフのシナリオソムリエ(自称)の本日のおススメ その1『十物語』
天狗ろむ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇◆

 おはようございます!
「1人用TRPGローグライクハーフ」の楽しさに魅せられ、ローグライクハーフのシナリオソムリエ(※)を目指す編集部員、天狗(あまく)ろむです。
(※ワイン専門の給仕人ソムリエのように、皆様のローグライクハーフのシナリオ選びの際の手助けが出来る人になりたいな、くらいの意味です)

 さて、貴方はご存知でしょうか。
 ローグライクハーフは、リプレイのみならずシナリオの個人制作についても、利用規約に従ってさえいれば作品発表も販売もOK、利用料などのロイヤリティも発生せず、公式としてもシナリオ制作を推奨していることを……!(※個人の場合)

 利用規約を簡単に申し上げますと、作品のどこか(書籍であれば表紙など)に「ローグライクハーフ」作品であることを示す「RLHロゴ」を載せること、必要事項をまとめた画像あるいはテキストデータを載せること、基本ルールの配布先を記載すること、この3つのが必須です。
「アランツァクリーチャー事典×シナリオ作成ガイド」などのサプリメントや他の方の作ったシナリオから、d66データ(サイコロを振ってめくる時の〈できごと〉のデータ)を利用することも可能です。勿論これはパーツ取りを目的としての事で、1作品から半分を超えるデータを持ち込むのはNGです。誰かのデータを活用したときは参考文献として巻末等に情報を記載することも忘れてはなりません。主に気を付けるポイントはこれくらいなので、ローグライクハーフのルール自体と同じく、軽め&緩めの利用規約になっています。
 シナリオ制作(そしてリプレイ)に関する利用規約は以下のURLに詳細が記載されていますので、シナリオ制作にご興味のある方はご一読ください。
https://ftbooks.xyz/ftwiki/index.php?%E8%A3%BD%E4%BD%9C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84

 そして! こちらは、そんな「個人制作シナリオ」の周知を目的とした、ローグライクハーフのシナリオの紹介記事です。
 実は……個人制作(ファンメイド)のシナリオ、2026年2月時点で、何と70作近くあるんです(ちなみに公式シナリオは2026年2月時点で37作です)。そのどれもが、公式シナリオにも負けず劣らずの面白い冒険に繋がっています。ローグライクハーフの楽しさは、公式シナリオは勿論、公式シナリオだけじゃない! それを貴方にも知っていただき、そして宜しければ遊んでいただけると幸いです。
 更に、もし興味が出たら、上記の利用規約を守っていただきつつ、貴方オリジナルのシナリオを書いてみませんか? ローグライクハーフはシナリオもとても書きやすいのです! ……おっと、私の悪い癖、話が逸れました。
 記念すべき第1弾となる今回は、シナリオ制作数最多を誇る、寝子さんより頂きました。ありがとうございます!
 まずはご本人から紹介して頂きましょう!

◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

皆さま、こんにちは。寝る子と書いて寝子(ねこ)と申します。
YouTubeでローグライクハーフのプレイ配信をしたり、noteでリプレイを書いたり、TALTOにシナリオを投稿したり、BOOTHでシナリオ本を販売したりしています。

今回紹介する作品は『十物語』です。
公式シナリオ『あやかし』の舞台でもあるキョウで知り合った若者たちと、百物語ならぬ十物語をすることになった主人公。
最後のロウソクの火が消える時、何かが起こります……。
従者を連れて行けないので、主人公2人でのプレイを推奨します。

・ジャンル:微ホラー
・形式:d33
・世界:共通世界(アランツァ)
・難易度:普通(主人公が1人だと難しい)
・プレイ時間:10-15分
・適正レベル:10-15
・対象年齢:10歳以上
・シナリオの公開場所
無料版
https://talto.cc/projects/zdF4zkiW9fxwGg4n61quy
冊子版・有料
https://lennon257.booth.pm/items/7212622

このシナリオは、月さん主催の非公式一斉投稿企画「ローグライクハーフの夏」に合わせて作りました。
ジャンルは「微ホラー」ですが、そこまで怖くはないと思います。私が怖い話が苦手なので(笑)
主人公の生命点が0点以下になっても、【死亡】ではなく気絶扱いなので、安心してプレイしてください!
有料の冊子版にはイラストとココフォリアの部屋データ(と、他に2つのシナリオ)がついていますが、まずは無料版からどうぞ。
よろしくお願いします!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇

 ご紹介ありがとうございました!
 天狗ろむから念の為に補足させて頂きますと、月さん主催の非公式一斉投稿企画「ローグライクハーフの夏」とは、2025年8月にローグライクハーフファンによって開催された企画です。ローグライクハーフに関連した、シナリオ、リプレイその他を開催期間中にSNSなどに皆で投稿して盛り上がろう! という主旨の企画でした。こちらの『十物語』はその企画の参加作品の一つになります。
(この企画にご興味のある方は、X(旧:Twitter)で『#RLHの夏』をタグ検索して頂くと、盛り上がり具合をご覧いただけます!)

 そして、『百物語』とは、日本古来からある怪談会のスタイルの一つ。どうやら色んなやり方があるようでとても興味深いですね。
 基本的には、百本の蝋燭を立てて、怪談を一つ話し終える度に蝋燭を吹き消していきます。ただし、怪談は九十九話で止めないといけません。何故なら百話目を話してしまうと、本物の怪異に襲われてしまうから……だそうです。怪談会のスタイル自体に、ホラー要素が含まれているのが、怖いながら面白いものですね。実際やってみた方はおりますでしょうか?
 しかし、複数人で集まってだとしても、九十九話も怪談を語るのは、なかなか難儀な事のように思えます。やり終えた時の達成感が凄そうです。

 さて、そんな『百物語』をベースに作られたのが、寝子さん作のシナリオ『十物語』。数が十分の一になったからといって、楽しさが減るなんてことは一切ありません。出て来るクリーチャーたちは【妖怪】が多いですから、公式シナリオ『あやかし』がお好きな方、妖怪がお好きな方は特に楽しめるかと思います。私は出目23の、ことわざ由来のできごとが特に好きです。
 特筆すべきは、「手がかり」と【タグ】の使い方。この冒険を切り抜ける為にとても重要なので、「手がかり」は是非ゲットしておきましょう! 中間イベントを迎えた時、きっとプレイヤーである貴方は違和感を覚える筈です……けれど、貴方のキャラクターは果たしてそれに気づけるでしょうか?
 そして【タグ】……これは、ローグライクハーフのクリーチャーに付与されている分類用のデータで、たとえば〈エルフ〉なら、【善の種族】【人間型】、〈吸血鬼〉なら【アンデッド】……などがあります。この【タグ】自体が、実はボスの正体のヒントになっています。貴方には真相が分かるでしょうか?
 そんな謎解きめいた要素もあって、ほんの少しだけ背筋がヒンヤリできる寝子さん作『十物語』、夏でなくても遊んでみて下さいね。
 プレイしてみた感想は、FT新聞の感想フォームからでも、作者さん自身に直接でも、どうぞお気軽にお寄せください!

 それでは、今回はここまで。次回のシナリオ紹介記事にて、お会いしましょう。
 貴方に良き冒険のあらんことを!
 天狗ろむでした!


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2026年2月14日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第679号 FT新聞 No.4770

From:水波流
沖縄に集中講義の講師として来ています。
朝8:30から夜17:30まで毎日7.5時間はかなりハード。
那覇の古本屋に行きたいのですが、授業が終わるともう閉店時間だったりして数軒しか行けていません……。
しかし私くらいの古本ジャンキーになると、旅先に本は1冊(しかもなるべく薄いもの)しか持参せず、荷物には購入した本のための空きスペースを確保してあります。

From:葉山海月
先週からずっと故障しっぱなしのモデム。
修理のために、人が入ったとたん、雑多なものがドカッと土砂崩れ!
先週の挨拶で水波編集長が「気を抜くと部屋の入口に買った本を帰ってきて積んだだけの山がすぐ出来てしまう。」とおっしゃっていましたが、その通りですと実感!

From:中山将平
今月は、FT書房として参加する予定のイベントに、すでに全て参加してしまいました。
僕たちの作品にご興味の方は、ぜひ以下のURLよりBOOTH通販をご覧いただけましたら。
https://ftbooks.booth.pm/items
上記とは別に、僕が個人的に作成しているカエルファンタジーな作品にご興味の方は、以下のBOOTH通販(「ギルド黄金の蛙」)も、ぜひご覧いただけましたら。
https://guildauricfrog.booth.pm/


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(天)=天狗ろむ
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(葉)=葉山海月
(水)=水波流

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■2/8(日)~2/13(金)の記事一覧
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2026年2月8日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4764

アランツァクリーチャー事典 Vol.25
・今週の日曜日はアランツァクリーチャー事典の第25回をお届けしました。
今回のジャンルは『兵器、建造物』!
「石弓型トラップ」や「戦車」や「船」など、生き物ではない変わり種です。
これらが出て来るシナリオとなると、砦や要塞攻略、攻城戦あるいは防衛戦みたいなお話でしょうか? 一味違ったシナリオが作れそうですね。是非お役立てください!
(天)


2026年2月9日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4765

雑多なこと
・大阪の郊外では雪が少し積もりました。外の世界の音と色が減って、非日常が広がっていくさまを、暖かい家のなかから静かに眺める時間が無性に好きです。
中河竜都先生のゲームブック『竜の血を継ぐ者』を「ローグライクハーフ」化したシナリオ『ドラゴンレディハーフ』の電子版を刊行いたしました!
執筆活動に、イベントに出たり、身体をちゃんと動かしたり、やることは多いですが、冬が終わるまでは、アクティブになりすぎないように気をつけながら。
「モンスター!モンスター!TRPG」の楽しみ方についての悩みについて、最近は「何を書いたっていいんだな」、と答えが見つかりつつあります☆
ずっと『ズィムララのモンスターラリー』を読みながら、「この世界と自分が触れ合っている」そんな感覚が芽生えつつある杉本氏です。
(明)


2026年2月10日(火)くろやなぎ FT新聞 No.4766

ゲームブックにおける死と物語 第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語
・編集部員くろやなぎが不定期で(月1回程度)お届けするこのシリーズでは、1回1作品をご紹介しながら、ゲームブックにおける「死」と「物語」のあり方について、ゲームシステムやパラグラフ構造などの要素も踏まえながら考察しています。
今回ご紹介するのは、ゲームブック作家ちゃな氏による100パラグラフの作品『豊穣の迷宮』。複数の「主人公候補」たちの行動や思惑が交錯するこの作品では、しばしば読者に対して「あなたは誰だろうか?」という問いが投げかけられます。この問いから生まれる分岐、そしてその先にある主人公たちの死は、それぞれの読者から見た物語の姿にどのような影響を与えるのでしょうか?
記事を読んで(あるいは、読む前に)興味を持たれた方は、ぜひいちど実際にプレイしてみていただければと思います。
(く)


2026年2月11日(水)ぜろ FT新聞 No.4767

第5回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第478回。「荷物持ち」の少年タイガが〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第5回です。
今回は、2回目の【中間イベントB】から【最終イベント】まで。【最終イベント】では、このリプレイ初の〈弱いクリーチャー〉との戦いになります。
【狩りの本能】のスキルを持つ〈魔猫〉は、もともと〈弱いクリーチャー〉との相性抜群。そこにサイコロの出目が加わると…?
〈魔猫〉ニャルラの電光石火の大活躍を、どうぞお見逃しなく!
(く)


2026年2月12日(木) 葉山海月 FT新聞 No.4768

『Monkey business』-クワニャウマの新しいアジト-
・1月29日のFT新聞 No.4754にて終了した、齊藤飛鳥先生の小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』
それを受けて、何やら葉山メが画策したようです。
本編の番外編。
先生自ら送る「本編」とはまた一味違う短編。
つつしんでお届けします。
あなたの「クワニャウマ」の冒険譚に、新しいページが加わりましたら幸いです!
(葉)


2026年2月13日(金)休刊日 FT新聞 No.4769

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)


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■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ちゃなさん)
「豊穣の迷宮」作者のちゃなです。
いつもお世話になっております。
2026年2月9日(火)配信の記事「ゲームブックにおける死と物語 第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語 FT新聞 No.4766」大変興味深く拝読いたしました。
くろやなぎさんの分析と考察はときに作者よりも深く鋭く、ちゃなも意識していなかった作品の味を引き出していただき、とても感激しました。
ゲームブックはもちろん、あらゆる創作物は作者の手を離れてから読者によって新たな命を吹き込まれるものだと思っています。
不思議な話ですが、本記事を拝読することでちゃな自身が「豊穣の迷宮」の魅力を再発見し、本作がますます好きになりました。
あらためて本当に有り難うございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

(お返事:くろやなぎ)
ちゃなさん、記事をお読みいただきありがとうございます!
作品が面白かったのはもちろんですが、制作ブログについても、作品そのものと同じくらい楽しく読ませていただきました。
迷宮探索や複数主人公といったふんわりしたコンセプトを、「主人公」という単独パラメータで管理されたシステムのもとで、マルチプロットの群像劇的な物語として具体化していく過程がほんとうに見事で、いったんフローチャートが完成した後でもキャラクターの設定が変わり続けていくのが、物語がどんどん「生きたもの」になっていく感じがして素敵でした。
私の記事も、原稿を書いている途中で作品を読み直し、ブログも読み直し、それからまた自分の原稿を読み直し…という繰り返しの中で、予定とは結構違う展開になっていったのですが、そのおかげで当初よりももう少し深く、作品の中に入り込めたような気がしています。作者のちゃなさんにもお楽しみいただけたのでしたら何よりです。
あらためて、素晴らしい作品をありがとうございました。まだプレイできていない作品もいくつかありますので、1作1作、じっくりと楽しませていただきます!


(ジャラル アフサラールさん)
主人公が複数人のゲームブックだとファイティングファンタジーの「ザゴールの伝説」がありますね。アマリリア王国に魔界転生(笑)してデーモンになった"火吹き山の魔法使い"ザゴールを倒す為に戦士・バーバリアン・ドワーフ・魔術師の1人になって挑戦するのですが、プレイヤーキャラクターが手にする最強武器が名前変えただけの似た武器とか選択肢があまりないとかツッコミ所の多い作品でした。ちゃなさんが作られた作品ですので『豊穣の迷宮』はそんな事は無いと思いますが、まずは購入して挑戦してみます。

(お返事:くろやなぎ)
お便りありがとうございます。
『ザゴールの伝説』(読者の皆さんへの注釈:〈ファイティング・ファンタジー・コレクション〉でのタイトルは『火吹山の魔法使いの伝説』で、原題は"Legend of Zagor"です)における「複数の主人公候補」については、「キャラクターごとに長所と短所があり、得意な場面・苦手な場面が存在する」という点では『豊穣の迷宮』に似ていますが、「誰を主人公にしても、物語の大筋には影響しない」「主人公として選んだ以外のキャラクターは、ゲームの中には登場しない」といった点では、たしかに『豊穣の迷宮』とは大きく異なりますね。
私としては、『ザゴールの伝説』のシステムは、主に攻略ルートや戦術のバリエーションを生み出すという点で、〈ソーサリー!〉シリーズにおける「初級ゲーム(戦士)」と「上級ゲーム(魔法使い)」や、FT書房作品でいえば『盗賊剣士』における「武闘」「幸運」「演技」「知略」の4つの「型(素質)」に近く、そのようなコンセプトを「異なる名前や背景を持つ、それぞれ固有のキャラクター」という形で表現したものだと捉えています。
『ザゴールの伝説』は双方向型の長編作品ですが、途中でゲームオーバーになっても、クリアした後でも、また新鮮な気持ちで遊び直せるように…という作者の工夫や配慮が随所に感じられて、個人的には大好きな作品です(万人向けではないかもしれませんが…)。


(緒方直人さん)
『Monkey business』-クワニャウマの新しいアジト- FT新聞 No.4768 、面白かったです。
すてきなドールハウスができましたね、緑いっぱいでお昼寝したらリラックスできそう。
二人の冒険以外の平穏な日常が覗き見られた感じで、読んでて楽しかったです。ラストのさわやかなシーンもほっこりして良かったー。

(お返事:葉山海月)
ありがとうございます。
その通り!「リラックス」するためのスペッシャルルームというコンセプトを念頭に置いていたので、それがダイレクトに伝わってうれしいです。
そうなんですよねー。だから「冒険」という緊張する時間ではなく、「平穏な日常」を特に意識してつくりました。
もったいないほどのお言葉、ありがとうございます!


(恵那ケミカルさん)
『Monkey business』
-クワニャウマの新しいアジト- 
 葉山海月さまの投稿について
とても素敵な投稿でした!
昔、テレビゲームでも、入れ込んだキャラクターや物語はその後や日常を妄想していましたが、TRPGやソロアドはイマジネーションの届く限り、どんな事も考えたり描写したりできます。
葉山海月さんのご投稿は、魅力的そして個性的な、齊藤飛鳥先生のクワニャウマの新しい一面を、優しい一面を想像できる作品でした。
TRPGやソロアドベンチャーはキャラクターもロストしやすい面もありますが、その死線を掻い潜って育てたPCはまさに自分の分身です。
そんな彼女、彼が日常はどんなことをしているのか。また、どんな思いで冒険に向き合っているのか。こうした素晴らしい創作で、より親近感や、新たな個性が垣間見えて大変楽しく拝見しました。
フィギュアや小物などの立体物なので、なおさらイメージもし易かったです!
そして水波流先生の創造したイェシカちゃんが登場しているのも、またニクイ演出でした。
ファンサイドからのこうした二次創作的投稿も、そしてPC愛も、どんどん拡がって、たくさんの方の作品を拝見してみたいなぁと思いました。
そして葉山海月さんの次回作も期待しております!素敵な創作をありがとうございました。


(お返事:葉山海月)
わざわざありがとうございます!
こんなありがたいお褒めの言葉をいただくとは! 恐縮です!
ですよねー。おっしゃる通り、「文字」メインな媒体だから、逆に、こういう創作ができやすい! それこそが強みだと思います。
クワニャウマ氏、そしてイェシカちゃんについては、齊藤先生だけでなく、水波先生が作り上げたキャラなので、うまくその雰囲気を再現できているか心配だったのですが、杞憂だったようです。
本当に、あんなラストにもって行けたのは、発想力の貧困な私にとっても奇跡みたいなものでした!
きっとお二方の情熱が、何か私の心の奥に眠るインスピレーションを呼び起こした、としか言えません!、
「死線を掻い潜って育てたPCはまさに自分の分身です」まったくお言葉通り!
文字どおり、「手塩にかけて育てた」から、ロストすれば実際に肉体に痛みが走るくらいですよねー。
それでは、これからも、『ローグライクハーフリプレイ』、どうぞよろしくお願いいたします。

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2026年2月13日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4769

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2026年2月12日木曜日

『Monkey business』-クワニャウマの新しいアジト- FT新聞 No.4768

小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』完結おめでとうございます!
その熱気に触れまして、番外編書いてみましたー!
すべての『汝、獣となれ人となれ』ファンに!
そして、齊藤飛鳥先生ファンに捧げます。
楽しんでいただければ幸いです!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『Monkey business』
-クワニャウマの新しいアジト- 

 葉山海月
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

 稀代の冒険家、(あるいは詐欺師とも口の悪い奴は言う)クワニャウマ氏。
 この度、〈太古の森〉のヴィンドランダ遺跡群へ冒険、通称『汝、獣となれ人となれ』事件を解決に導き、その報酬で念願のアジトを手に入れたということで、FT書房の編集員である私が呼ばれた。
「本当は誰にも見せたくないけど」
 クワニャウマ氏はそう言った。
「じゃあ。なぜ私なんかを?」
「あんた一番人畜無害……というか、ここのアジトの位置さえも忘れちゃううっかりさん系だから。秘密を守るにはちょうどいいの」

 一歩入る。
 部屋の中に咲き乱れる花。壁はツタでおおわれている。いたるところに植物が生い茂っている。

(p1) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p1.jpg

 それが「廃墟」のようなイメージを保っているのは、「持ち主が丹精込めて手入れしているから」。
「クワニャウマさんが!? これを!?」
 がさつなイメージに合わない。
「まあね。ある意味命に等しい財産だし」

「で、暇なときはこのデッキチェアで寝てるの。というか、デッキチェアで緑に囲まれてリフレッシュするのが目的。名付けて『緑の王座』」

(p2) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p2.jpg

「冒険でくたくたになったとき。汗やほこりなんかはこうして流す!」
 クワニャウマ氏は、何か床のステップを操作。
 すると、デッキチェアがひっくり返り、出てきたのは風呂桶!
「なんとなればそこのハーブを取って入れてもオケ。少なくとも、相棒にも知らせてない『秘密の天国』よ。ここがあるから、あたしは明日冒険に出られる。そう言っても過言じゃないけど」、
 床下でデッキチェアが散乱する音が聞こえたのだけど、気のせいだろう。

(p3) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p3.jpg


 まるでガラクタのように無造作に置かれているのは、これまでの「収穫」つまり、宝箱、何かの剣。

(p4) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p4.jpg
(p5) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p5.jpg

「これって曰く付きみたいですねー」
「うん。『選ばれたモノしか抜けない』なんてふざけたこと言うから、台座ごと奪ってきたよ」

(p6) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p6.jpg

 そして、目につくのは……
「カメラ!」

(p7) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p7.jpg

 古めかしいが、オーバーテクノロジーなカメラ。
「なんでこんなものがここに!?」
「いいところを指摘してくれました!
 実は、チャマイで開発された最新技術の末。活動写真って知ってる!? ひそかにそれをはやらせるプロジェクトがあるの。
 まだまだ産声を上げたばかりなんで、海のものとも山のものともとれないけど、これは、活動写真を撮るカメラ。
 これからあたしの冒険譚を取って、アランツァ全土に感動の嵐を巻き起こすの。シリーズタイトルは『クワニャウマ。その愛と真実。そして』
 ゆくゆくは、『クワニャウマ記念館』が建てられる予定よ」
 目を輝かせて、一気にまくしたてるクワニャウマ氏。
 そこには、少女、そして少年の心を持った大人がいた。

 このアジトの弱点は、トイレは別室だということ。(そりゃそうだ)
 二人して用をたして帰ってくる。
 全財産盗まれていた!
「ああっ! あんまりにも気持ちいいんで、屋根もつけずにふきっさらしにしたのは、セキュリティ対策の大きな穴!」

(p8) https://ftbooks.xyz/ftnews/article/p8.jpg

「仕方ないわね。もう一度買うか」
 クワニャウマさん! 今何と!?

「例えばね、この花は、香りだけで完全にその人の心に真のリラックスを与える。
 ある宗教でも、瞑想の時にこれを使う。
 百年に一度しか咲かない。ってんで、金貨1万枚出して買う人もいる。
 この部屋に来たら、魂さえリフレッシュするのは、その効果のタマモノ。
 この花もしかり。この花はある山脈にしか咲かない。しかも人食いモンスターがうようよしているところに咲く花で、食材としても、コレクションとしてもすさまじい額を誇るの。生えてるつただって、一口食べれば死者さえ生き返るシロモノ。通称『翠竜の鱗』まだほかにもヤバいものがあるけど、聞きたい?」
 なるほど、無料で手に入る安全カミソリを使って剣を作る、など、涙ぐましい努力の末に、この財産を買ったんですね!
「目の前に無造作に堂々と置かれているものほど、賊は注意を払わないもの。おかげで目くらましの雑魚アイテムに手を出す奴らが多いこと多いこと」
「なるほど。最高のセキュリティかつ、宝物庫なんですね」
「あのカメル教授にも『このコレクションを一般公開しないことは人類の損失だ』とさえ言われた。けど、あたしのものはあたしのもの。名前も書いたしね。あたしが誰にも言わないわけ、わかってくれて?」

 その時、ドアが開いて、そよ風とともに一人の少女が入ってきた。
 イェシカだ。
 彼女は、ここの花にもう一つ付け加えるように、花のような笑顔をはじけさせる。
 そして、石板にこう書く。
「新しい花。咲いた?」
 クワニャウマ氏は、笑ってこう答える。
「うん。この間、100年に一回しか咲かない『極楽花』が咲いたところ」
 イェシカは早速、その前に座る。
 そして、便箋を取り出し、スケッチを始めた。
 つたないながらも、いきいきとしている絵。

「人はあたしのことを『度を過ぎたケチ』と言ってるのを知っている。
 あたし自身『金は命より重い』と思っている」
 そして、イェシカを眩しそうに見つめる。
「だけどね。それは、世の中に、命より重いモノを賭けるだけの価値がないことをよく知ってるだけ。
 そして、この笑顔には、いくらかけたっていい。それだけの価値はある。そう思わない?」
 一心に筆を走らせるものと、それを見守るもの。
 書き終えたスケッチに「天国のクリスティさんへ」と書かれるのを見届ける。
 イェシカは、デスクから何かの種を取り、そしてスケッチに置く。
 一心不乱に、丁寧に、折りたたんだそれは、何か「羽のついた種子」にも見える紙飛行機になる。
 立ち上がるイェシカ。
 春から夏へ変わる香りがする風が、流れ込む。
 彼女は、それめがけて、天にも届かんばかりにそれを放り投げる。
 紙の羽が、あおられながら天空の点となって、見えなくなるまで見届ける。
 
 私は、「どうして彼女が全財産を使ってここを建てた」か分かった。
 

EOF


∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

あとがき。

ありがとうございます。
今回は「二人」の先生の前、ということで、力を入れて作ってみました。
私のつたない筆、そしてつたない工作の腕に、ありがたくも深く感銘していただいた 齊藤飛鳥先生。
そして、発表の場を与えていただいた水波流編集長。
ほんと、わたしなんかでいいのかな? という感じです。
今年の幸運、ここで使い果たしたかも!?(笑)
お二人に深い感謝を。
(葉山海月)


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2026年2月11日水曜日

第5回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4767

第5回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ

※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。


ぜろです。
ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」への挑戦。妖狐と魔猫、二匹のお供を連れたタイガの冒険です。
目の前でコーネリアス商会の令嬢コンスタンサがオウカンワシにさらわれるのを目撃したタイガたち。
助けるために巨大樹の中腹にてオウカンワシと対決しますが、そこに令嬢はいませんでした。
さらなる高度を目指し、タイガたちの冒険は続きます。


【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。

【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9/10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。

【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2ロープ
3古代の彫像(金貨25枚相当)


●アタック02-6 ニャルラと壁登り

僕たちは、巨大樹リベンジの真っ最中だ。
最初に登ったときは、中腹にあるオウカンワシの巣までたどりついたけれど、そこにはコーネリアス商会のお姉さんはいなかった。
それ以上上に行くには準備が足りないと思った僕たちは、一旦巨大
樹を降りた。
そして、ロープなど必要物品を買い足して今、再挑戦している。
もう、前の高度はとっくにクリアして、さらに高いところまで登っている。

空飛ぶ鮫に襲われたり、鈍器猿が復讐してきたり、いろいろあったよ。

そうして今、僕たちの前には、幹の壁が立ちふさがっていた。


【中間イベントB そそり立つ壁】

道は完全に行き止まり、でこぼこした樹皮につかまりながら、幹の壁を登るしかない。
この高さで、幹にへばりついて登るのは、それだけでかなりリスキーだ。
加えて、高高度特有の風も強い。横から殴りつけるように、下からなで上げるように、気まぐれに風向きを変えている。

「かんたんかんた〜ん」

ニャルラは少ない足場を跳ねるようにして、軽やかに駆け上がって行き……途中でふわっと身体が持ち上がり、ころころと転がり落ちてきた。
そして僕の前にぺたん、と止まり、四肢を伸ばして「ぷぎゅー」となった。

昨日も見たなあ、この光景。

「まったく。学習しない猫ですね」

フォルネは、ロープの端を口にくわえると、慎重かつ器用に登ってゆく。
ロープが風で左右にゆらぎ、かなり難しそうだ。
それでも、しばしの格闘の後、壁の上の広いところにたどり着いたようだった。
フォルネの姿が見えなくなる。多分、ロープをどこかに結わえようというのだろう。

「ぐるぐるする〜」

ニャルラが復帰した。その目の前で、ロープが風に揺られている。
右に左に、ゆらめくロープに合わせてニャルラの瞳が左右に揺れる。それに合わせて、ニャルラのからだがむずむずしてきた。
やがてたまらなくなったのか、ロープに思い切り飛びついた。

「あ! まって! まだ!」

上からフォルネの声とともに、ロープが降ってきた。
すぐに幹の壁の上から、銀髪の少年が顔だけをのぞかせた。

「もう! まだ縛ってないのに引っ張ったりするから」
「にゃはは。ごめんちゃい」
「しょうがないですね。そのロープはニャルラが持って上がって」
「うぇ〜?」
「当然でしょう。タイガさまが上がるのに必要なんだから」

なんだかんだ言いながらも、ニャルラはロープの端をくわえると、今度は慎重に上がってゆく。
風はあいかわらず強いが、先の失敗から学んで幹にしっかりと爪を立て、まったく動じなかった。
やがて、ニャルラも壁の上に到達した。

「やった! できたよ〜。アタイえらい?」
「ありがとう。さっきは『学習しない』なんて言ってごめん」

そんな声が降ってきて、僕は少しだけうれしい気分になった。
待つことしばし。やがて崖の上に、二匹の顔が並んで覗いた。
フォルネも狐の顔に戻っている。

「タイガさま、準備できました」
「のぼれるよ〜」
「フォルネ、ニャルラ、ありがとう」

おかげで僕は、危なげなく壁をのぼりきることができた。
フォルネとニャルラはこうやっていつも僕を支えてくれる。本当に頼りになる相棒たちだ。

幹壁の上は、またちゃんとした道が続いていた。
道は途切れているようでいて、ここにも、また誰かの営みがある。

ここまで登ってきて、僕は思うことがあった。
この巨大樹は、ひとつの世界だ。

いろんな生き物がここの環境の中で生きている。
猿たちのような群れの社会も、巨大樹の中で完結している。
そして、ここが樹の上ということを忘れてしまうほどの、様々な植生の植物。
ここの「地面」は巨大樹そのもの。これ以上生命力に満ちあふれた、肥沃な土地はない。
みんな、みずみずしい巨大樹の恩恵を受け、ここで生活している。

人間たちが外から来るのは、この巨大樹の恩恵にあずかるためだ。
かつてここで暮らした者の遺構や財宝が見つかることがある。
僕たちの前に現れた鈍器猿が、いくつもの樽を持っているのは、あの猿しか知らない遺構がどこかにあるに違いない。
そうして外から来る者たちは昇降機を作り、階段を整備し、長い年月で少しずつ手を加え利便性を向上させてきた。

「世界樹」という言葉が浮かんだ。
世界樹というと、この世界そのものを支え、世界に恩恵を与えるという伝説の巨大樹だ。
それとは少し違うけれど、ひとつの巨大な樹木の中で、ひとつの社会が形成されている。
この樹そのものがひとつの世界。
意味は少し違うけれど、これも「世界樹」と呼べる存在なのではないか。
そんなふうに思った。

[プレイログ]
登はんの目標値は3(高度3のため) ロープがあると判定に+1
ニャルラ サイコロの出目1 ファンブルで失敗。生命点9→8
フォルネ サイコロの出目5 成功
ニャルラの再挑戦 サイコロの出目6 クリティカルで成功
タイガは従者のため、判定の必要なく成功
※フォルネとニャルラにとってはロープは邪魔なものでしかありませんが、ルールにのっとって処理しています。タイガは判定なしで成功扱いです。そのため実際の判定と演出はだいぶ異なります。


●アタック02-7 フォルネと既視感

【16 草避けのお守り→15 落下防止の護符】

壁を登りきった場所は、思いがけず開けた空間だった。平地の面積が多い。
ロープは頑丈な枝にがっちり結ばれている。
僕は次に来た人のために、ロープはそのまま残していくことにした。
ロープはもう1本予備があるから大丈夫だ。

「それでも、先にここに来た人はいるみたいです。こんなものが落ちてました」

フォルネが持ってきたそれは、ペンダント状になったアクセサリーだった。
紛れもなく人の手によるものだ。
ただ、その意匠は少し奇抜だった。
乾かした植物の根っこのようなものがぶら下げられている。
それも、ただの根っこではない。植物なのに、目とか口とかがついているように見えた。
干からびた植物系の魔物の根っこ?
何かのお守りだろうか。

一応、荷物に入れておこう。帰ってから鑑定してもいいし、売ってもいい。

「アタイ先のほうみてくる〜」

ニャルラはさっさと先行してしまった。
ところでさっきから、フォルネの様子がおかしい。
周囲をぐるりと見回しては、記憶を掘り起こすように眉を寄せている。

「フォルネ、どうかした?」
「ええ……この場所、すこし見覚えがある気がして……」

記憶と照合させているらしい。

「たしか、こっちに……」

フォルネは広場の端の方に進むと、そこから幹の壁の下の方を覗き込んだ。

「あった。やっぱり」

そうしてフォルネは、怖がることなく幹の壁を降りていった。
僕はおそるおそる覗き込む。少し下に、人ひとりがかろうじて立てる足場があり、フォルネはそこへ向かって降りていく。
それはいいんだけど、下を見るたびに、枝と枝の間にのぞく、はるかに小さい地上の景色が見えてしまい、ドキドキしてしまう。
フォルネ、よく平気で降りられるな。

フォルネは足場まで到達すると、何かをくわえて戻ってきた。
それは古びた皮袋だった。

「フォルネ、これって……」
「前に来た人の落とし物でしょうね」

開けてみると、入っているのは……なにやら魔術的な文字で紋様が描かれているもの。護符?

「落下防止……」
「読めるの!?」
「一応、魔術は少したしなんでいるので。これを持っていると、落下した時のダメージを完全に無効化できるようです」

完全に無効化!?
それって、すごくない?
つまり、これ持ってここから飛び降りたら、ノーダメージで地上に降りられるってこと!?

「やめといた方がいいです。誰も限界を試したことないと思うので」

それはそうか。
限界を試した者がいたとしても、もうこの世にいないのだろう、きっと。

でも、落下防止の護符だったら、なんであんなところに?

「不思議です。一度しか使えないものなのに、使われずにあんな場所にあるなんて」
「おとしちゃったんじゃないの〜?」

戻って来たニャルラが不意に口を挟んできた。
たしかに、それが一番無難な考え方だよね。

何かに追われて、荷物と別々に落っこちちゃったとかじゃなければいいな。
僕は嫌な想像を振り払った。

「ところでフォルネはどうしてここを? 見覚えって」
「途中に建物があったの覚えてます? 望遠鏡があったところ」
「おぼえてる〜! とおくが見えておもしろかった〜」
「ニャルラには聞いてないですけど、まあいいでしょう。そこで行き先を確認した時に目にしていたんです」
「なるほど、それで」
「下から見上げてたので、こんなものが落ちてるとまでは見えなかったですけど、特徴的な地形だったので」
「こんないいものを手に入れられるなんて、フォルネの観察眼のおかげだね」
「フォルネすご〜い」

フォルネはそっぽを向いた。耳がぴくぴくしているから、照れ隠しだとわかる。

「これは、タイガさまが持っていてください」
「え、でも」
「私たちはちょっとくらい高いところから飛び降りても平気なので」
「そうそうへっちゃら〜」
「さっき高いところから転がり落ちたばっかりのニャルラが言うと説得力あるね」
「も〜、たいがひど〜い」
「あはは、ごめんごめん」

僕は皮袋から落下防止の護符だけ取り出すと、自分の荷物入れにしまった。
さあ、それじゃあ出発しようか。

すると、ニャルラが急に興奮して話し出した。

「そうだった! あのね、この先にね……!」

[プレイログ]
隠された何かの発見(目標値4:器用ロール)
16 フォルネ サイコロの出目6 成功 →草避けのお守り発見
ここで「手がかり」(観測所で入手)使用
15 フォルネ サイコロの出目2 +技量点2 成功 →落下防止の護符発見


●アタック02-8 タイガと虫・虫・虫

【最終イベント】

「オウカンワシがいたの! でも、なんだか様子がヘンなのよ。アタイを見ても、じっとしてるの」

ニャルラがオウカンワシに遭遇したという地点まで進む。

太い枝の上で、オウカンワシはじっとこちらを見つめていた。
襲いかかってくる様子はない。
まるで、僕たちが来るのを待ちわびていたみたい。そんな不思議な考えが頭をよぎった。
まさか、そんなことって、ある?

オウカンワシは、中腹で対決したものよりもさらに巨大で、圧倒的な雄大さが感じられた。
僕と目が合うと、その翼を大きく広げた。ライオンや熊のような巨大な猛獣も、その大きな翼で包み込んでしまえるほどだ。

オウカンワシは飛び立つと、もうひとつ上の枝に舞い降りた。
そしてまた、じっと僕たちを見つめるのだ。

「こっちに来い、って言ってるみたいに見えませんか?」

うん。そう見える。

「いってみるの〜」

ニャルラはためらうことなく上の枝へと先行する。
僕たちも後を追った。

幹のまわりをぐるりと回り、上の枝に到達する。
オウカンワシは、僕たちの到着を待ちわびていたかのようだ。
その目線は一点を見つめている。
僕たちはその視線の先を追った。

幹に、ぽっかりと黒ずんだ穴があき、周囲が不気味に枯れ果てていた。
穴は子ども、ちょうど僕が入れるくらいのサイズ。オウカンワシには大きすぎて入れなさそう。

『この巨大樹は、枯死しかけている』

この樹を研究していた闇エルフの妖術師の言葉が思い出された。
その、枯れた穴の上方に視線を向けると、オウカンワシの巣が見えた。

オウカンワシは、身じろぎひとつしない。
まるで、僕たちの答えを待っているかのよう。

「あの枯れているところを、見てほしいんでしょうね」

僕も、そう思った。
オウカンワシとは言葉は交わせないけれど、不思議と何を言っているのか、通じる気がした。

「あの枯れているところをなんとかして、巣を守りたい。そのために、僕たちの力を借りたい」

そういうことかな?

「じゃ、みてみましょ」

ニャルラはためらわずに枯れた穴に近づく。僕たちもすぐに追う。
中は空洞になっているみたい。僕たちは順番に潜り込んだ。

中はまっくらだ。そして僕たちはランタンを持っていない。
準備不足だと思うでしょ。でも、今回は違うんだな。

ニャルラの瞳が闇の中に輝いている。まるで満月のように周囲を優しく照らす。
ニャルラはこの【満月のような瞳】で、暗闇の中でも昼間と同じようにものを見ることができる。
そして、それだけではない。その優しい明るさの恩恵は、僕とフォルネにももたらされるんだ。

入口に比べて、中は広めの空間になっていた。
慎重に歩を進める。フォルネとニャルラが左右を警戒している。

「なにかの気配を感じます……」
「響いて、どっちにいるのかよくわかんない〜。ヘンなニオイもする〜」

やがて空洞は行き止まりになった。
突き当りの壁に手をつき、触り心地をたしかめる。
これは……ただ枯れたというより、何かに食い荒らされたような?

突然、ガサガサと這いずるような不快な音と、ギチギチと鋭い顎がきしむような甲高い響きが闇にこだました。
僕の太もものあたりを、何かがもぞもぞと這い進む感覚に、体中がぞぞっとなる。

振り返る。
上からにゅるりと、節くれ立った長い胴体の巨大な虫の頭部が垂れ下がり、僕の眼前でぴたりと止まった。
あまりの恐怖に、呼吸がひゅっとなって、一瞬止まる。

胴体にはたくさんの脚。僕と同じくらいの大きさの、ムカデみたいな虫。
それが僕の目の前に天井から頭を降ろし、顎をカチカチと鳴らした。

それだけじゃない。右にも、左にも。
僕は完全に、この虫たちに囲まれてしまっていた。

僕は確信した。
この虫たちが、幹を食い荒らし、ここの枯れた空洞を作っているのだと。

【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う

虫たちの向こうに、フォルネとニャルラの光る瞳が見える。
僕が完全に囲まれてしまっている状況に、戸惑っているのか、焦っているのか。

「タイガさま……!」
「いまっ、たすけるからっ!」

それは一瞬の出来事だった。
ニャルラは雷光のごときすばやさで、僕を囲む虫たちを次々と蹴散らしていった。
内壁を蹴り、反動で跳び、爪撃を浴びせ、かみ砕く。
五匹の虫が一瞬で倒され、その場でびちびちとうごめき、ぐるんと丸まる。

そして僕の眼前で、ぬうっと大顎をむき出しにして迫る最後の一匹に、フォルネが飛びつき、胴体をぐねりとねじ曲げ、地面にたたきつけた。

あっけないほどの一瞬で、戦いは終わった。

僕はほっと胸をなでおろし……そのままずるずると、地面に崩れてしまったのだった。


[プレイログ]
【幹食らい レベル4 出現数6】※死ぬまで戦う
1ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 一匹目倒す
 追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 二匹目倒す
 追加攻撃 サイコロの出目6 クリティカル 三匹目倒す
 追加攻撃 サイコロの出目5 命中 四匹目倒す
 【狩りの本能】発動。弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。サイコロの出目5 命中 五匹目倒す。(器用点7→6)
フォルネの攻撃 サイコロの出目5 命中 六匹目倒す


【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。
2草避けのお守り

【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:9→8/10 器用点:7→6/7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。

【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料2
金貨15
1ロープ
2古代の彫像(金貨25枚相当)
3落下防止の護符
ロープ →消費

次回、オウカンワシの思惑と、巨大樹の異変


■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
ドトール 闇エルフの妖術師。闇エルフの繁栄のため、巨大樹を調査している。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。


■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362


本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg


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2026年2月10日火曜日

ゲームブックにおける死と物語 第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語 FT新聞 No.4766

みなさん、こんにちは。編集部員のくろやなぎです。本日は、『ゲームブックにおける死と物語』の第4回をお届けします。

今回ご紹介する『豊穣の迷宮』(著:ちゃな、2020年、Kindle Direct Publishingによる個人出版)は、「豊穣神アバーティッサ」が封印された地下迷宮を探索する、全部でちょうど100のパラグラフから成る比較的コンパクトなゲームブックです。
ゲームとしてのルールはとてもシンプルで、いわゆるパラグラフジャンプ(特定の条件下で発動する、本文に指示されていないパラグラフへの転移)を除くと、各パラグラフの文章を読み、選択肢を選ぶだけで物語は進んでいき、冒険記録紙やサイコロは使用しません。ただし、複数の、それも2人や3人ではなく多数の「主人公候補」となる登場人物が用意されており、読者が誰を主人公として「担当する」かによって物語が大きく変化する、といった点では、特殊な仕掛けをもつゲームブックだとも言えるでしょう。
1回のプレイが10分以内で終わることも珍しくはありませんので、Kindle書籍の閲覧環境のある方は、ぜひいちどお気軽に(よろしければ、記事本体を読まれる前に)プレイしてみていただければと思います。

なお、作者のちゃな氏のブログでは、この作品の制作過程がリアルタイムで実況されていました。より正確に言えば、この作品は「ゲームブック制作をブログで実況中継する」という企画のもとで、ゼロから作り上げられたものなのです。そのブログもあわせて読まれると、作品についてもっと深く知ることができるでしょう(当然ながら、ブログには作品の詳細がしっかりと記述されていますので、ある程度は実際にプレイされた後で読む方がよいかもしれません)。

作品とちゃな氏のブログへは、下記のリンクからどうぞ。
『豊穣の迷宮』(Amazonの商品ページへ)https://www.amazon.co.jp/dp/B08FCL3KMF
『ちゃなのゲームブック』(2020/07/11の記事「ゲームブック制作を実況中継(1)」へ)https://chanagame.hateblo.jp/entry/2020/07/11/195800

以下の記事の中では、『豊穣の迷宮』の物語の設定や内容、ゲームとしての構造等について具体的に言及していますので、未読の方はご注意ください。

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ゲームブックにおける死と物語
第4回:『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語

 (くろやなぎ)
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■『豊穣の迷宮』の基本構造

それではまず、『豊穣の迷宮』の物語の基本設定と、ゲームブックとしての基本的な構造について確認しておきましょう。

『豊穣の迷宮』のプロローグは、「アバート教団」の教祖からのメッセージという形をとっており、そのメッセージの相手は「敬虔なるアバート教団の勇者達」となっています。
そこで提示される使命は、地下迷宮の深くに封じられた「豊穣神アバーティッサ」を復活させ、世界を飢餓から救うこと。教祖によれば、これまで迷宮に挑んだ信徒たちで生還できた者はおらず、しかも「帝国」からの弾圧によって教団は崩壊寸前。今回選ばれた7人に、最後のチャンスが託されたとのことです。

こうして、主人公候補である登場人物たちは、全員がひとつのチームとなって「豊穣神の復活」という使命を果たすべく迷宮に挑むわけですが、この表向きの使命とは別に、登場人物の多くは個人的な目的を抱えています。
たとえば、迷宮の中で財宝を手に入れ、それを換金して、貴族の側室となっている恋人を身請けすること。
あるいは、迷宮のコントロール機構を解き明かし、「豊穣神」というよりも「魔神」としてのアバーティッサのエナジーを掌握して、教団にも帝国にも干渉されない拠点を手に入れ、自立すること。
極端なところでは、教団と敵対する「帝国」側のエージェントもチームに紛れ込んでおり、その人物の目的は、迷宮の中で他の登場人物たちを「一網打尽に」することです。そしてまた、教祖の側でも「帝国のエージェントが紛れ込んだらしい」という情報をつかんでおり、登場人物のひとりは、そのエージェントが誰なのかを突き止めて「始末する」という密命を受けています。

このように多彩な背景や関係性を背負った登場人物たちの中から、読者は1人を主人公(あなた)として選択することになりますが、その選択にあたって、上記のような情報が最初から開示されているわけではありません。
パラグラフ1で、迷宮へ向かう一行の様子が描写された後、読者は、そこに登場した7人の中から1人を選んで担当するよう求められます。そして、読者が選んだ人物に割り当てられたパラグラフへ進むと、その人物(主人公となる「あなた」)が迷宮へ入ることになった経緯や事情が初めて明らかにされる、という流れになっています。
そのため、少なくとも初回のプレイでは、たまたま帝国のエージェントを(そうとは知らずに)主人公として選ばない限りは、読者は一行にそんな人物が紛れ込んでいるとは知らずに、迷宮の探索をはじめることになります。また、エージェントを「始末する」という密命を受けた主人公を選んだ場合も、一行の誰がエージェントなのかはわからない状態から、目的を果たすべく行動を開始することになります。
つまり、最初に誰を主人公として選ぶかによって、物語の見え方は大きく変わってくることになるのです。

背景の説明が終わると、選んだ主人公が誰であっても、「あなた」たちは迷宮の最初の分かれ道のパラグラフに辿り着きます。そこで一行は隊を分けて別々の道へ進むことになり、あなたの選択(率先していずれかの道へ進むか、あるいは周りの仲間に相談するか、それとも…)から、物語は本格的に動き出します。
地の文では、主人公は常に「あなた」という二人称のもとで描写され、そのときの「あなた」が誰であっても、同じパラグラフで同じ行動を選択すれば、同じように物語は進んでいきます。ただし、パラグラフの最後では、しばしばあなたは「さて、あなたは誰だろうか?」と地の文から問いかけられます。そこで、あなたが誰なのか、あるいは誰「ではない」かを答えることによっても、物語は分岐します。
すなわち、『豊穣の迷宮』においては、あなたが「誰なのか」(読者が主人公「を」選択した結果)と、あなたが「どうするか」(読者の分身としての主人公「が」選択した結果)、という2種類の問いが使い分けられているのです。

「あなたがどうするか」という問いは、ゲームブックではごくありふれたものですが、「あなたが誰なのか」という問いは、複数の主人公候補がいる『豊穣の迷宮』ならではのものだと言えるでしょう。以下では、この問いの意味について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

■『豊穣の迷宮』における物語の分岐

『豊穣の迷宮』における「さて、あなたは誰だろうか?」という問いが生み出す物語の分岐は、大きく2種類に分けることができるように思います。
ひとつは、主人公の「能力」による分岐。そしてもうひとつは、主人公の「物語上の立ち位置」による分岐です。

『豊穣の迷宮』の主人公たちは、「技術点」「体力点」のような能力値や、「特殊技能:△△」のような明示的なステータスをもっているわけではありません。しかし、それぞれの主人公には、迷宮の中のどのような危険に対処できるか、という設定が与えられています。
作者のちゃな氏のブログでは、主人公ごとに「戦闘NG、罠NG、魔法OK」のようなパターンが記載されており、これをもう少し詳しく言語化すると、たとえば「敵との肉弾戦は苦手で、物理的な罠も解除できないが、魔法による罠や仕掛けなら対応できる」といった感じになるでしょう。こうした主人公ごとの能力は、読者に明示こそされていないものの、物語上の設定と自然に結びついているため、推測することはさほど難しくありません。

『豊穣の迷宮』の「まえがき」には、「本編には各主人公につき一つずつエンディングがあり、他に隠しエンディングと無数のバッドエンドがあります」と書かれていますが、ここでいう「無数のバッドエンド」のいくつかは、「罠や敵の種類」と「主人公の能力」とのミスマッチの結果として辿り着くように作られています。
たとえば魔法の罠の部屋に入り込んでしまったとき、もしあなたが「魔法OK」の設定を付与された主人公であれば、その罠を見破って解除し、先へ進むことができるでしょう。しかし、あなたが「魔法NG」の主人公であれば、そこであなたは命を落とすことになります。
物理的な罠や、肉体的な戦闘が必要な敵についても同様に、あなたの能力がその状況に対応しているかどうかで、あなたの運命は決まります。

一方、外見上は同じく「あなたは誰だろうか?」という問いの形をとっていても、あなたの「能力」とは別の次元で分岐が発生する場合があります。
たとえば、迷宮の宝部屋やコントロールセンターを発見したとき、財貨の獲得や迷宮の掌握を目的とする主人公と、それ以外の主人公とでは、当然ながら反応は違うものになるでしょう。あるいは迷宮の奥深くで、ついに豊穣神アバーティッサの玄室にたどりついたとき、教団の敬虔な信徒と、帝国のエージェントとでは、そこで成すべきことは全く異なるはずです。
そこでの分岐の鍵となるのは、あなたの「能力」ではなく、まさにあなたが「誰」なのか、ということそのものであり、あなたの選んだ主人公の、物語上の立ち位置に他なりません。

さらに、この「能力」による分岐と「物語上の立ち位置」による分岐は、ひとつのパラグラフの、ひとつの問いの中に同居していることがあります。
たとえば宝部屋に入ったとき、あなたが財宝に特段の興味がなければ、自らの目的を優先させて、迷宮の探索を続けようとするでしょう。しかし、宝部屋に仕掛けられた罠を見抜き、あなたが無事に探索を再開できるかどうかは、あなたの能力(「罠OK」か「罠NG」か)にかかっています。
あなたが宝を抱えて迷宮から離脱するか、宝に構わず迷宮の奥へと進むか、あるいは宝部屋の中で命を落とすか。作品によっては、フラグの有無と能力値とで二重の判定を行うようなこうした状況について、『豊穣の迷宮』は、ひとつの汎用的な「あなたは誰だろうか?」というシンプルな問いを通じて、物語の分岐を生み出しているのです。
(もちろん、状況によっては、あなたがその場で「どうするか」という問いも物語を分岐させていきます。)

■『豊穣の迷宮』における主人公たちの死と物語

こうした「能力」と「物語上の立ち位置」に基づく2種類の分岐のあり方に対応するような形で、『豊穣の迷宮』における「死」にも、大きく分けて2つの種類があるように思います。

ひとつは、先ほども述べたような、あなたの能力不足による死。
つまり、「戦闘」「罠」「魔法」のいずれかの能力を欠いているために、その能力を必要とする場面を切り抜けられず、死んでしまうパターンです。
このような死の場面は、しばしば複数の主人公が到達しうる汎用的なパラグラフになっており、あなたの物語上の役割にかかわらず、あなたがどのような能力を持たないために死に至るのか、ということが伝わる描写となっています。

もちろん、その「能力のなさ」自体がその主人公の特徴のひとつなので、それもまた、その主人公らしい死だとは言えるでしょう。それでも、こうした死は物語としては唐突になりがちであり、ひとつの物語が終わったというよりは、物語が中断された、あるいはゲームの途中でゲームオーバーになった、という印象を読者に残すもののように思います。
このような死を迎えた場合、つぎにその死を回避するための方策は、「同じ場面に、対処できそうな別の主人公でトライする」か、「同じ主人公で、その主人公が対処できそうな別のルートを探す」、のいずれかになるでしょう。どちらにしても、それは「迷宮の探索ルート」と「主人公の能力」とをうまく組み合わせるパズルを解くような試行であり、そこでの死は、作品の物語的な側面よりは、ゲーム的な側面をより強く感じさせるものだと言えるかもしれません。

一方、あなたの能力にかかわらず、あなたの物語上の立ち位置に応じて訪れる死の場面も存在します。それは、あなたが「あなたとして」そこにいたことによる死であり、いわば物語上の意味を伴う死です。
このような死として印象的なもののひとつは、迷宮の最奥、豊穣神アバーティッサの玄室に、他のメンバーと一緒にたどり着いたときのことでしょう。そこであなたには、お馴染みの「さて、あなたは誰だろうか?」という問いとともに3つの選択肢が示されるのですが、どの選択肢を選んでも(つまり、あなたが誰であっても)、つぎのパラグラフであなたは死んでしまいます。
能力による分岐の場合は、その結果は「あなたに能力がなければ死に、能力があれば生き延びて先へ進める」というものでしたが、ここでの分岐は、「あなたが誰に、何のために、どのようにして殺されるか」という、物語のひとつの結末のあり方を左右するものとして存在しているのです。

ここでの3通りの死の場面は、『豊穣の迷宮』の物語にとって、単に「死のバリエーションを豊富にする」という以上の重要な意味を持っています。
この作品は、フローチャートの図形的なイメージとしては、横幅は比較的広く、奥行きは(場所にもよりますが)比較的短い構造になっています。そのため、読者がいくつかの分岐でピンポイントにここに至る選択をすれば、初回のプレイでこの場面に遭遇することも十分考えられますし、逆に、何度もゲームオーバーになったり、何人かの主人公のエンディングを見た後で、ようやくこの場面に出会うこともありえます。さらに、「まえがき」で予告された「隠しエンディング」に到達するためには、この「死の三択」のパラグラフを最低2回は訪れる必要があるため、最初にここで死んでから、他のルートを踏破した上でここに戻ってくる場合もあるでしょう。
ここでの主人公たちの死の場面は、物語にとっては一種の「種明かし」のような側面も持っているのですが、プレイを繰り返す中でのどのタイミングで、どの「あなた」として、何をどこまで知った上で経験するかによって、読者が受ける印象は大きく変わってくるように思います。すでに関連する情報を持っている読者にとっては、「やはり」という答え合わせのような意味を持つでしょうし、逆に、初回や2回目のプレイでここに辿り着いた読者の場合は、その後のプレイは「そこで起きたできごとの意味を知る」という、倒叙的な趣向を帯びたものになるかもしれません。

このような死は、迷宮の構造とあなたの能力とのミスマッチに由来する死や、特定の場面での選択を誤ったことによる死とはまた別の形で、『豊穣の迷宮』の物語に対する洞察を深め、あるいは洞察の起点となるもののように思います。
読者ごとに違う視点や順序のもとで、迷宮内で起こるさまざまなできごとを経験しながら、主人公たちの意図と因果の絡み合いの全貌を知ること。それは、主人公としての「あなた」に与えられた使命や目的とは異なる、読者としての「あなた」に与えられたひとつの目的、あるいはひとつの楽しみであると言えるでしょう。

■おわりに

『豊穣の迷宮』の「あとがき」には、作品について「一回のプレイ時間はごく短いものですが、繰り返し挑戦していただくことで、物語の全容が明かされる仕掛けになっています。気に入った主人公、好みの物語が見つかったなら何よりです。」と書かれていますが、ここで2回出てくる「物語」という言葉には、それぞれ別の意味が与えられているように思います。
「物語の全容が明かされる」というときの「物語」は、『豊穣の迷宮』というゲームブック全体を構成する、100パラグラフすべてが織り成す集合的な物語を指すものとして解釈できます。これに対して、「気に入った主人公、好みの物語」というときの「物語」は、ひとりの「あなた」が迷宮に入ってからひとつの終わりを迎えるまでの、ひとつの物語を指すものとして受け取れます。
ここには、ゲームブックにおける「物語」の複数のあり方が表れており、そのどちらをどのように楽しみ味わうかは、個々の読者に委ねられていると言ってよいでしょう。

主人公がひとりだけである多くのゲームブックにも、もちろん同じように、こうした複数の「物語」のあり方を見て取ることができるはずです。
それでも、『豊穣の迷宮』における複数の主人公たちの存在と、「あなたが誰なのか」という問い、そしてそこから生まれる物語の分岐と死のあり方は、ゲームブックという形式のもとで書かれた物語の多層性とその魅力を、より鮮明に教えてくれるもののように思います。

【書誌情報】
ちゃな『豊穣の迷宮』(Kindle Direct Publishingによる個人出版、2020年)
ちゃな『ちゃなのゲームブック』 (ブログ)https://chanagame.hateblo.jp/


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2026年2月9日月曜日

雑多なこと FT新聞 No.4765

おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
寒いですね。
私が住む大阪の郊外では雪が降り、少し積もりました。
外の世界の音と色が減って、非日常が広がっていく。
そのさまを、暖かい家のなかから静かに眺める時間が無性に好きです。


◆『ドラゴンレディハーフ』の電子書籍が登場!
「ローグライクハーフ」関連の電子書籍化を進めておきたく思い、『ドラゴンレディハーフ』の電子版を刊行いたしました!
ファミコンゲームの名作「ドラゴンバスター」をリメイクしたゲームブック『竜の血を継ぐ者』を、作者である中河竜都先生の許可をいただいて書き起こした「ローグライクハーフ」のシナリオです☆
都市サプリメントとして「ローレンシア王国」、そして「中級ルール」も付属しています。

https://ftbooks.booth.pm/items/5138980


◆やることは多い!
「ローグライクハーフ」版の「ガルアーダの塔」を書きつつ、アランツァに関する資料をまとめたり、文章として起こしたりしています。
イベントに出たり、身体をちゃんと動かして健康を守ったりもして、アクティブに活動しているつもりです☆
冬が終わるまでは、アクティブになりすぎないように気をつけながらやっていきます。
去年よりもだいぶ調子がいいので、救われております☆


◆悩みに対する答え。
「モンスター!モンスター!TRPG」の楽しみ方について、最近は答えが見つかりつつあります☆
色々な方のシナリオやソロアドベンチャーに目を通すなかで、どの方も創作を楽しんでいらっしゃることを感じました。
アメリカン・ヒーローが登場する作品。
小さなゴブリンが主役を張るソロアドベンチャー。
自由闊達といいますか、思い思いの作品に目を通すなか、ふと気づいたのです。
何を書いたっていいんだな、と。

私はずっと、「巨大なモンスターが暴れる世界」を描かなければならないと考え、それが自分向きでないことに悩んできました。
私が書きたい世界から、かけ離れているように感じたからです。
しかし、考えてみたら、私は合わせるのが得意なわけではなく、望むままに世界を表現してきたのです。
他のTRPGに関しても、常にマイペースに作品を創作してきました。
私が書きたいのは、秩序と無秩序の境目にある世界です。
言うなれば地下迷宮、森、山林といったウィルダネス(荒れ野)での冒険です。
そうして書いたものは、他のTRPGの冒険に似ているかもしれません。
多くの人に好まれるものではなく、作品として世に出すことすらないかもしれません。
でも、それだったら書けるし、書いてみようという思いは芽生えました。

最近、ずっと『ズィムララのモンスターラリー』を読んでいます。
最初に読んだときは英語の電子書籍、次は日本語のテキストファイルでした。
完成したこの本を紙の書籍として読んで、しみじみと「いい本だなぁ」と感じます。
いま、ようやく、この世界と自分が触れ合っているなぁ。
そんな感覚が芽生えつつあります。
プロデューサーのポジションだというのに、出遅れて申し訳ないです。
今はとにかく、作品を読み込んでいこう。
そんな風に思っています☆

それではまた!!



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2026年2月8日日曜日

アランツァクリーチャー事典 Vol.25 FT新聞 No.4764

おはようございます。
FT新聞編集長の水波流です。

本日は日曜日。ローグライクハーフ関連記事をお送りいたします。
杉本=ヨハネから預かりました、アランツァクリーチャー事典の第25回です。

今回のジャンルは『兵器、建造物』!
戦車や船など、生き物ではない、ちょっと変わり種になります。
どうぞお楽しみ下さいませ。

アランツァクリーチャー事典『兵器、建造物』
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2026年2月7日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第678号 FT新聞 No.4763

From:水波流
本を読む速度より、本を買う速度の方が数倍(いや数十倍?)速いので、気を抜くと部屋の入口に買った本を帰ってきて積んだだけの山がすぐ出来てしまう。
山を崩して、読みたい順に並べ替えたり、布団の横の「次に読みたい山」と入れ替えたりするが、それは読書とも整理とも言わない……。
とは言っても、資料用以外は100円均一(最近は少なくなった)とか、高くても500円くらいまでの古本しか基本買わないので、出費の方はお酒を飲みに行く人とかよりは少ないと思うのですが。

From:葉山海月
夢うつつで考えた。
人類とじるんい
これは駄洒落なのか?
それとも何かの深淵なのか!?

From:天狗ろむ
2月と言えば……バレンタインでしょうか?
どちらかというと辛党なのであまりチョコを食べないのですが、チョコ売り場を見るのは好きです。包装やモチーフが魔術書のような雰囲気のもの、惑星イメージのチョコなど、形や色も様々で、趣向を凝らした可愛いものや綺麗なものが沢山。見てるだけでも何だかワクワクします。美味しく食べられる魔法の宝物、なのかもしれませんね。

From:中山将平
今月は、FT書房として参加する予定のイベントに、すでに全て参加してしまいました。
僕たちの作品にご興味の方は、ぜひ以下のURLよりBOOTH通販をご覧いただけましたら。
https://ftbooks.booth.pm/items
上記とは別に、僕個人としてカエルファンタジーな作品を出品している以下のBOOTH通販(「ギルド黄金の蛙」)も、ぜひご覧いただけましたら。
https://guildauricfrog.booth.pm/


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
(く)=くろやなぎ
(水)=水波流

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■2/1(日)~2/6(金)の記事一覧
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2026年2月1日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4757

『ガルアーダの塔』1-30階 ローグライクハーフd66シナリオ
・杉本=ヨハネ氏によるローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』d66シナリオ、舞台となる「水上都市聖フランチェスコ」都市サプリメント、「中級ルール」改訂版をお届けしました。
ゲームブックでの冒険が、ローグライクハーフ版となって新登場! 悪魔ガルアーダに占拠された「制天の塔」も60階から90階へと拡張を遂げており、今回は30階まで登ることができます。
過酷な塔内の冒険のため、1回の冒険が終わった後に完全回復が出来ないなど、いくつか特殊ルールがありますのでご注意ください。なおかつ中級(経験レベル16)以上推奨ですので、既に冒険をいくつか重ねた主人公で挑むもヨシ、先週配信された「道化師」などで16レベルから初期作成して挑むもヨシ……今回の記事で同時配信した中級ルールもよく読んで頂きつつ、ガルアーダの待ち受ける塔へ向かいましょう!
剣神エスパダと盾神エスクード、二人の神様があなたに微笑んでくれますように。
(天)


2026年2月2日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4758

☆休載代わりの雑談☆ FT新聞
比類なきタフネスさでFT書房をぐいぐい引っ張るヨハネ氏。
しかし、あまりの激務ぶりに、お願いです! 今は休ませてください!
とか言っている間に、またも「モンスター!モンスター!TRPG」の国産作品が爆誕しました!
松田洋平(ふろふき大根)さんによるソロアドベンチャー『沼をめぐる冒険』です!!
また中山将平氏が立ち上げた「ギルド黄金の蛙」に「かえる人」の汎用設定資料集が追加されました!
その辺をご紹介いたします!
(葉)


2026年2月3日(火)明日槇悠 FT新聞 No.4759

『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(6)
・TPRG初心者4名が友人宅で気軽に遊んだ、GM不要のナラティブ・スタイルRPG『モンセギュール1244』のリプレイ、第6回をお届けしました。
モンセギュール城塞の防衛指揮官ピエール・ロジェは、お気楽な言動と戦況の劣勢により、誰からも嫌われ、命を狙われる存在になってしまっています。
前回に引き続き、八面六臂の暗躍を見せるベルトラン。ロジェ暗殺をガルニエに吹き込んでいましたが、レーモンがロジェの弾劾裁判を企てており、
ついては救慰礼《コンソラメンテ》を授けてほしがっていると知るや、その場では完徳者《ペルフェッチ》にすることを約束しますが、
その裏でアミエル少年に近づき、彼の拵えた小刀でレーモンを亡き者にするよう誘惑します。ベルトランの真意やいかに?
殺意の錯綜する閉鎖空間で葛藤するアミエルは、いかなる決断を下すのか? いよいよ正念場です。
(明)


2026年2月4日(水)ぜろ FT新聞 No.4760

第4回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第477回。「荷物持ち」の少年タイガが〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第4回です。
今回は、60番台のできごとが2回も発生。シナリオによっては高確率で戦闘になる出目ですが、【巨大樹の迷宮】の《反応表》は、【中立】や【ワイロ】の幅が比較的広めに取られているのが特徴です。果たしてタイガたちが出会った〈強いクリーチャー〉たちの反応はどうなるでしょうか?
【中間イベント】で再登場する鈍器猿の新たな装備と、戦利品にもご注目ください!
(く)


2026年2月5日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4761

「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する?
・岡和田氏による『モンスター!モンスター!TRPG』のプレイエイド記事。
『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』の付属シナリオ「ドウォンの秘密神殿の冒険」は、一定のセッティングを元に、ゲームマスターが独自にそれらをアレンジしてプレイすることが想定されている「半構築済みシナリオ」です。現在流行りの地の文やセリフが事細かに書かれているタイプのシナリオとは、ひと味違う遊び方が求められます。
でも、そんなのどうやったらプレイできるのさ!? そんな皆様に今回、様々なアプローチをご紹介。
「別の世界から転移してくる異世界往復ファンタジー」や「捕まった仲間の救出」あるいは「襲撃してくる強敵」などなど。
勿論、昔ながらに「おーい磯野、ダンジョン行こうぜ」と理由などあって無きが如くでも遊ぶことはできますが、ぜひここは一ひねりを加えて、参加プレイヤーと一緒に楽しんでみては如何でしょうか。
(水)


2026年2月6日(金)休刊日 FT新聞 No.4762

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)


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■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(忍者福島さん)
鈍器猿、今度は亀の甲羅を持って登場するとは!
今度はカートに乗って登場したりして?
あとは、ロープを伝って渡って行くシーンで、スペランカーを思い出してしまいました(笑)

(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。ああ、スペランカーとか、非常に近しい世代の香りがします。わずかな段差で死んじゃう探検家さんですね。脳内でBGM再生余裕です。そして今止まらなくなっています。
ノコノコと現れた鈍器猿、ノコノコが二重の意味になっていることを読み取っていただけたら幸いです。ここまで来れば予想はつくと思いますが、鈍器猿さんは3回目の冒険でも再々登場します。その時には一体どんな形態をとってくるのか? 対するフォルネとニャルラは? お楽しみにです。


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2026年2月6日金曜日

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2026年2月5日木曜日

「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する? FT新聞 No.4761

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「ドウォンの秘密神殿の冒険」をどう料理する?

 岡和田晃
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 発売中の『ケン・セント・アンドレによるズィムララのモンスターラリー【ワールド編】』には、付属シナリオ「ドウォンの秘密神殿の冒険」が収められています。これは、日本版のボーナスとして付属した翻訳シナリオ「女神キット=ラーの幽閉されしピラミッド」とは異なり、原著からそのまま付いていたもの。それこそ『トンネルズ&トロールズ』第5版のルールブックに付属していた多人数用「トロールストーンの洞窟」のごとくに、まず最初にプレイされることが想定されたシナリオなのかもしれません(もっとも、最近、T&T第5版日本語版のルールブックを改めて読んだケンは、日本語版に付いているのは、多人数用アドベンチャーではなく、ソロアドベンチャーの「バッファロー・キャッスル」だと勘違いしていましたが)。
 既刊に準えれば、「ドウォンの秘密神殿の冒険」は、『T&Tビギナーズバンドル 魔術師の島』に収められている「カリスの墳墓」に近いところがあります。つまり、一定のセッティングが与えられており、あとはゲームマスターが独自にそれらをアレンジしてプレイすることが想定されているわけです。
 この手のシナリオを、私は敬意を込めて「半構築済みシナリオ」と呼ぶようにしています。シナリオソースほど簡素ではないが、そのまま、おんぶに抱っこできてしまうほどには、悪い意味で懇切丁寧にはなっていない。同じタイプのシナリオはD&Dなんかにもありました。クラシックD&DのB2モジュール「国境の城塞」やB3「アリクの瞳」がこのタイプの冒険です。「国境の城塞」はD&D第4版のエンカウンターズ、第5版(いわゆる2024年版)のボックス・セットでリメイクされ、「アリクの瞳」も「ドラゴンマガジン」3号で日本オリジナルの続編が作られていましたから、「半構築済みシナリオ」はユーザーの創造性を掻き立てるところがあるようです。

 他方、ネット時代、地の文やセリフが事細かに書かれているタイプのシナリオ——「FT新聞」では、No.4145に掲載された「ファンタジーRPG汎用"逆転の発想"シナリオfeaturing 『モンスター!モンスター!TRPG』『新・裏伝説』」(https://analoggamestudies.seesaa.net/article/503784256.html)のようなタイプの冒険——とは真逆のアプローチ。至れり尽くせりに全てが設定されている『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオに慣れ親しんでいる方にとっては、驚きを隠せないかもしれません。
 何はともあれ、見切り発車で構わないので、ひとまずプレイしてみることが手っ取り早いのでありますが、そこにいたるまでが大変、という方もあるでしょう。子ども時代ならばともかく、大人になったら、貴重な余暇を割いてゲームに突き合わせるのですから、余計に心理的ハードルが上がる、というものでしょう。

 それでは、どうやったら「ドウォンの秘密神殿の冒険」を上手にプレイすることができるのでしょうか? ルールブックにもいくつかの導入案は明記されていますが、もっともわかりやすいのは、シナリオソースのA(【ワールド編】、p.66)を採用することです。
 大神殿の修繕を手伝うか、侵入してくるバット・トロールと戦うか、という2つの案が提示されていますが、大神殿の修繕の方を選んでも、どのみちバット・トロールと戦う方向へ誘導すれば問題ないでしょう。
 ただ、いきなり転移門(ポータル)を通ってズィムララへやって来たと言っても、あまりにも唐突すぎて現実感がありません。一つの妙案としては、現代ものの別のシナリオと連結させることです。ある怪異が、転移門の向こう側からやってきた、その正体はバット・トロールで、PCたちは調査に来たということにすればいいのです。
 この方法の問題点は、基本的なシナリオ構造が異世界往復ファンタジーのようになってしまうこと。『ナルニア国ものがたり』が典型ですが、ズィムララから、いつかは現実世界へ戻らねばならなくなるのです。そうやって往復していくのも、海外のヒーローコミックでよくあるクロスオーバーものの雰囲気が出るので一興ではありますが——実際、「クチュールー・エンジェルズ」のように、『モンスター!モンスター!TRPG』はコミックとのクロスオーバーを積極的に行っているタイトルでもあります——カラーが異なる複数の世界を継続的に運用していくのは、なかなかどうして大変です。
 英語では、現実世界からズィムララへの旅路そのものをテーマにした『Trail to Zimrala』が存在します。これは北米先住民のヒロイン、エリカ・アメリカが登場する画期的なシナリオなのですが。あいにく、まだ日本語版は出ていませんので、お待ちいただくとしまして……。
 オススメなのは、『猫の女神の冒険』から、しっかり繋げていく方法です。

 この「繋げ方」には、コツがあります。
 「半構築済みシナリオ」の問題点は、とにかく、シナリオの押し引きが弱いこと。コンピュータRPGで言う「オープンフィールド」の先駆とも言うべきスタイルなのですから、プレイヤーの自由度こそを重視すべきで、自由に動き回ることができることが魅力なのですが、プレイヤーに一人でも、「何をやればいいのかわからない」という人がいれば、これは成り立たなくなってしまいます。
 そこで、強力な動機づけが必要になります。そこで、押し引きを強化することが、「半構築済みシナリオ」を完成させるうえで有用なのです。
 もっともわかりやすいのは、「死んだ仲間や、それに近い状態になった仲間を救う」というもの。それこそ、『ロードス島戦記リプレイI』の頃からの伝統です。オリジナル・ルール『ロードス島戦記コンパニオン』準拠の作品として、連載時のD&Dリプレイから収録し直された本作では、最初の冒険のゴブリン退治で主人公のひとり騎士パーンが死んでしまい、高位の司祭ニースに復活させてもらったはいいものの、代償として「7年前から行方不明になっている娘のレイリアを探してください」というクエストを受け入れる羽目になります。
 この点、『猫の女神の冒険』のGMアドベンチャーはソロアドベンチャーの多人数用シナリオ化なので、いちど自分でソロをプレイしておけば、多人数での運用についてイメージが持ちやすいですし、杓子定規に全滅させたりせずに、生かさず殺さずでストーリーを進めていくコツについても、身につけることができるでしょう。
 ただし……。【以下、ネタバレ注意】
 『猫の女神の冒険』に関して言えば、もっともストーリーの深奥に踏み込んだ結末部で、プレイヤー・キャラクターは猫の女神セクメトの計略に引っ掛かり、クリスタル・スカル(水晶髑髏)に閉じ込められてしまうことになります。ソロアドベンチャーでは、これで冒険は終わることになりますが、多人数用アドベンチャーでは、あくまでも閉じ込められるのはプレイヤーの1人、とすればいい。
 それで困るなら、途中で助けるラットリングのスクウィー=スクウィーが閉じ込められることにしてもいいし、誤って閉じ込められるのがテン=メアだということにすれば、セクメトは何に変えても、救出の方法を探ることでしょう。
 
 もちろん、「ドウォンの秘密神殿の冒険」には、そこまで強力な魔法のアイテムが設定されているわけではありません。そこで、私ならば部屋J、部屋K。部屋Oのそれぞれに、解呪のために用いられる特別なアンクの欠片を配置しておき、それらを揃えれば、クリスタル・スカルに閉じ込められた者を救済することができるようにすると思います。
 よりズィムララらしくというか、ケンのゲームらしくするのであれば、ドウォンの大神官ヴォラスカーに事情を話し、ドウォン魔法で解決するというのもオツかもしれません。ドウォン魔法については、【ワールド編】のp.30〜32に詳述されていますが、それ以外にも、雲ヶ谷正運さんによる「深淵なるドウォン魔法」(http://kumogaya.com/archives/28617129.html)という名コラムがあります。ここに出てくる「反魔法と解呪の神ヤー・クバライ」の加護を祈る、というわけです。

 さて、「ドウォンの秘密神殿の冒険」には、ボスらしいボスが設定されてはいません。バット・トロールや洞窟イカ、そしてヴォラスカーの設定は紹介されているものの、ボスらしいボスという感じはありませんよね。ダンジョンにボスがいなければらならない、という考え方そのものがステレオタイプではあり、かえってリアリティの演出にもつながるものですが、押し引きの強化という意味では、ボスもいてよいかと。
 手っ取り早くするなら、ここでもシナリオソースのお世話になりましょう。シナリオソースのD(【ワールド編】、p.66)には、アークデーモン(アーチデーモンとも)のマルゴデラウスの麾下にあるデーモン10体が、神殿に攻撃を仕掛けてくるというアイデアが書かれています。
 【モンスター編】のp.119によれば、アーチデーモンのモンスター・レートは300。作りたてのパーティで、MR300のボスは、正攻法では、なかなか倒せません。200くらいならば、なんとかなりますが……。ゆえに、それこそヴォラスカーや(場合によってはバット・トロールたちと協力してでも)アーチデーモンに立ち向かう意味が生まれてきます。
 ただ、MR300の敵1体では、数の暴力でたちまち蹂躙されてしまいます。ですから、マルゴデラウス以外のデーモンを設定してもいいでしょう。ここで便利なのが、【ワールド編】p.30の表。5のビースト=デヴィルは、原書の『Monsterary of Zimrala』の初期のバージョンのみに登場してくるクリーチャーで、日本語版でもいまのところ紹介がないので、自由に設定いただければと思います。アーチデーモンやデモドラゴンも強力すぎるので除外するとして、あとはゾム・レイス3体、ヘルハウンド2体、スナウター3体、シペ2体くらいの構成にして、ドウォンやバット・トロールたちとぶつけさせるのも面白いのではないでしょうか。単にぶつけさせるだけでは、デーモン軍団の圧勝となるのは目に見えていますから、地の利を活かした戦略を立てねばなりません。
 ——「半構築済みシナリオ」は使い倒すためのもの。あなただけの「ドウォンの秘密神殿の冒険」をデザインしてください!


■書誌情報
モンスター!モンスター!TRPGサプリメント
『ズィムララのモンスターラリー ワールド編』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
書籍版:3,850円/電子書籍版:3,500円
https://ftbooks.booth.pm/items/7041688

モンスター!モンスター!TRPGサプリメント
『ズィムララのモンスターラリー モンスター編』
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
書籍版:4,950円/電子書籍版:4,500円
https://ftbooks.booth.pm/items/7733432


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2026年2月4日水曜日

第4回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4760

第4回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ

※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。


ぜろです。
ローグライクハーフ「巨大樹の迷宮」への挑戦。妖狐と魔猫、二匹のお供を連れたタイガの冒険です。
目の前でコーネリアス商会の令嬢コンスタンサがオウカンワシにさらわれるのを目撃したタイガたち。
助けるために巨大樹の中腹にてオウカンワシと対決しますが、そこに令嬢はいませんでした。
さらなる高度を目指し、タイガたちの冒険は続きます。


【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。

【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:10 器用点:7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。

【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4
金貨25
1ロープ
2ロープ


●アタック02-2 タイガと空飛ぶ鮫

【62 飛鮫(とびざめ)】

観測所でこの先のルートをある程度把握した僕たちは、巨大樹登りを再開した。
このあたりは、基本的には幹をぐるりと周回しながら登る階段状の道になっている。
苔むして滑りやすいところもあり、足元に細心の注意を払う必要があった。

風景は天候にも恵まれ、相変わらず息を呑むほどの絶景というほかない。
足の下には密林の広がりが見え、遠景はかすんでいる。

僕たちはまた、だいぶ高度を稼ぐことができた。

「タイガさま、あれを」

フォルネが頭で促すように上空を示す。
そこには、不思議な光景があった。

「さかな〜?」

たしかにそれは、魚のように見えた。
上空を魚影のようなシルエットがいくつも、優雅に旋回している。

まるで水の底から水面を見上げているようだ。
綺麗な光景だ、と思った。

そのうちひとつの魚影がくるりと回転したかと思うと、群れから離れて移動を始める。
こちらに近づいている?
距離感がつかめていなかったが、かなり大きいようだ。

「あれは、鮫。海に棲む肉食の凶暴な生物」
「ここ、海じゃないよ〜? アタイ、海知らない」
「私も空を泳ぐ鮫なんて見たことない。飛鮫とでも呼べばいいのかな」

フォルネは船でこの大陸に渡ってきたという。だから海を知っている。鮫についての知識も、その時に得たのだろうと思う。
僕やニャルラは、まだ海を見たことがない。

その間にも、飛鮫は徐々にそのサイズ感を増してゆく。
ここまでくれば、ターゲットとしてロックオンされていることは僕にもわかった。

「危ない!」

飛鮫は、身体が全部口になってしまったような、信じられないくらい巨大な牙だらけの口を開けると、突っ込んでくる。
僕たちは左右に跳んでかわす。

飛鮫は、僕たちのいた地面にあたる、巨大樹の幹を削り取る勢いで通り過ぎていった。
危なかった。あの場で伏せるだけだったら、今ごろ飛鮫の口の中だ。

飛鮫はだいぶ行った先で縦に旋回すると、またこちらに向かって、斜め上方から突撃してきた。
フォルネとニャルラが左右から臨戦態勢を取る。

僕は真ん中に陣取った。

「た、タイガさま?!」

僕は、突撃してくる飛鮫の牙だらけの大口めがけて、両手に持てるだけの食料を思い切り投げ込んだ。
そしてゴロゴロと転がって身をかわす。

飛鮫は僕のいた場所をすごい勢いで通過すると……今度は旋回することなく、そのまま空を泳ぎ去っていった。
口の中に味が広がったことで、少しは満足したに違いない。

「タイガさま、危ない真似は……!」
「はは。ごめんごめん」
「うぅ〜。アタイの丸々獣のおにく〜〜」

ふう。なんとか戦わずに追い払うことができたみたい。
また目をつけられないうちに、早くこの場を離れよう。

[プレイログ]
【飛鮫 レベル5 生命点3 攻撃回数1】
 反応 →ワイロ(食料2食分)
 食料2食分を消費して通過


●アタック02-3 ニャルラと鈍器猿リターンズ

【中間イベントA 帰ってきた鈍器猿】

坂道の上から、樽がゴロゴロと転がってきた。
その樽は、途中で出っ張った岩に乗り上げ方向を変えると道を外れ、はるか下へと落ちていった。
下に誰もいないといいけど。

坂の上には見覚えのあるムキムキしたシルエットが、僕たちを待ちかまえていた。
ゴリラのように巨大な、筋肉質な猿。少し跳ねた頭頂の毛髪が特徴的だ。

「あ。どんき〜こんぐ〜」
「鈍器猿ですね」

ニャルラとフォルネが同時に発した声が混ざった。
「でもでも、なんでこんなとこに?」
「ずっと猿たちを見かけていません。ここは縄張りではないはず」

鈍器猿は、右手に亀の甲羅を盾代わりに持ち、左手で次の樽を抱え上げていた。
鈍器猿と、亀の甲羅。よくわからないけれど、あまり指摘してはいけない組み合わせのような気がした。
もしかしたら僕たちとの戦いでボスの座を追われて、追い出されてしまったのかも。

「なるほど。はぐれ猿になって今、私たちへの復讐をくわだてていると。それでノコノコと私たちの前に現れたんですね」
「なにそれ。さかうらみ〜。簡単にやられちゃったアイツが弱いだけなのに〜」

【鈍器猿 レベル4 生命点5 攻撃回数1】※亀の甲羅の盾により攻撃に-1のペナルティ。

「今度もまた、ぱぱっとやっつけちゃうよっ」

ニャルラは僕たちに先行して、坂の上の猿に突進してゆく。
鈍器猿の怒りの矛先は、鼻っ柱にかみついたニャルラに向いているようだ。
怒りの雄叫びを上げると、左手の樽を勢いよくぶん投げた。
樽は幾度もバウンドしながら激しく転がり、ニャルラに迫る。

このままではニャルラにぶつかる、というタイミングで、ニャルラは素早い反射で跳び避けた。
しかし、まさにそのタイミングで岩の出っ張りに引っかかって跳ねた樽は、ニャルラが避けた方角へと軌道を変えた。
樽の予想外の軌道変更に、まともにぶつかってしまい、吹っ飛ぶニャルラ。そのまま幹の道の端、つまり外側へ、その姿が消えた。

「ニャルラっ!」

フォルネの体毛が総毛立ち、白銀の輝きを放つ。
フォルネの身体は光の筋のようになって、まだ次の準備が整わない鈍器猿へと突貫した。
スピードが乗った体当たりは、がっしりと構えた亀の甲羅すら跳ねのけて、鈍器猿の胴体にずどんと突き刺さる。
鈍器猿の身体が大きくよろめいた。

「アタイはここだよっ」

声が降ってきた。
ニャルラは細い枝に、尻尾を巻きつけてぶら下がっていた。
良かった。落ちてはいなかったんだ。

「やったな〜」

ニャルラは尻尾でぶら下がったまま、ぐるんぐるんと回転すると、勢いよく鈍器猿へと飛び出した。
鈍器猿は、亀の甲羅で防ぐ暇もない。ニャルラの鋭い攻撃が、猿の頬に三本の爪痕を残す。
たまらず、ばちんと叩き落そうとする鈍器猿。ニャルラが素早く地面に降り立ったため、自分で自分の顔面を殴りつける形になった。
ニャルラは続けざまに、亀の甲羅の盾を蹴っての二段ジャンプ。亀の甲羅は「ポコッ」という変な音を立てて転がる。
ニャルラはその勢いのまま鈍器猿の顔面に取りつくと、鼻の頭に思い切りかみついた。

「ギャブン!」

闘技場での戦いの古傷をえぐられ、たまらず声を上げる鈍器猿。
ニャルラは華麗に着地する。

鈍器猿は、ニャルラを激しい憎悪のこもった瞳でにらみつけると、亀の甲羅を放置したまま逃げ去っていった。

「……あれは、また来ますね」
「ふん。来たら、またアタイがギタギタにして、どっちが上かわからせてやる〜」
「ニャルラ、あなた今、かなり危なかったのわかってる!?」
「びっくりした〜」
「僕もびっくりした。無事でよかったよ」
「ニャルラつよ〜い。ほめてほめて〜」

僕は鈍器猿が落としていった亀の甲羅を拾い上げた。
さっきニャルラが蹴った時、甲羅とは思えない変な音がしてたんだよ。
コンコンと叩くと、空洞になっていそうなところがあった。
よく見ると、亀裂のようなものが走っている。外向きに力をこめると、ぱかっと開いた。
中には、1体の小さな彫像が入っていた。

「なにこれ、おじさん? へんなの〜」

その彫像は、立ち姿のずんぐりとした体型の男性に見えた。
つばつきの帽子をかぶり、大きな鼻と大きな目、口ひげが特徴的。
オーバーオールに長袖のシャツといったいでたちだ。
片手に持った大きなキノコを高々と掲げるポーズを決めている。

この巨大樹のどこにあったのかはわからないが、文化的価値か芸術的価値があるかもしれない。

「あの猿がどこから持ちだしたか知りませんが、武器としてしか考えてなかったんでしょうね」
「これは戦利品としてもらっておこうか」

僕はその彫像をしまうと、一休みの後、登山のような木登りを再開した。

[プレイログ]
【鈍器猿 レベル4 生命点5 攻撃回数1】※亀の甲羅の盾により攻撃に-1のペナルティ。
・0ラウンド
鈍器猿の樽投げ、ニャルラへ。
ニャルラ サイコロの出目1 回避失敗
→スキル【素早い反射】使用し防御ロールを振り直し。サイコロの出目2 失敗。
ニャルラの生命点10→9 器用点7→6
・1ラウンド
フォルネの攻撃 サイコロの出目3+技量点2-ペナルティ1=4 命中 鈍器猿の生命点5→4
ニャルラの攻撃 サイコロの出目5+技量点1-ペナルティ1=5 命中 鈍器猿の生命点4→3
鈍器猿の攻撃 ニャルラへ。ニャルラはサイコロの出目4+技量点1で回避。
・2ラウンド
ニャルラの攻撃 サイコロの出目4+技量点1-ペナルティ1=4 命中。鈍器猿の生命点3→2
生命点が半分以下になったので、鈍器猿は逃亡。
宝物判定 サイコロの出目6+高度3=9 古代の彫像(金貨25枚相当)


●アタック02-4 フォルネとロープほどき

【36 ロープアクション】

そこからしばらくは、幹をぐるりと回る坂道を、幹を周回するように歩いた。
まるで崖沿いの道を歩いているようだった。

やがてその道が、不意に途切れた。行き止まりだ。
けれど、その向こうには道が再び続いているのも見えている。

ちょうど上の方の枝から、ツタが何本もロープのように垂れている。

「あ、これ、いけるかもっ」

ニャルラが飛び出した。
ツタに尻尾を器用に絡め、次から次へとツタを渡っていく。
あっという間に向こう側に降り立った。

「ねっ。ほらっ。かんたんだよっ」

どう見ても簡単じゃないよ。だいたい僕、尻尾ないし。
フォルネは下をよく観察して言う。

「少し下に茂みが密集しています。間違って落ちても、問題ないでしょう」

僕ものぞいてみた。たしかに茂みがクッションのようになっているけど、その周囲に広がる直下の光景に目がくらんで、とても大丈夫とは思えなかった。

そうしてフォルネも、ツタのロープを巧みに繰りながら、向こう側に降り立った。
こういう動きは二匹とも得意中の得意だ。
さあ、僕はどうしようかな。

「タイガさま、ロープを投げてください」

そうだった。こんな時のために、今回はロープを買ってきてたんだった。
僕はロープの端を向こう側に投げる。フォルネはそれを口にくわえ、木の枝の回りにぐるぐると巻きつけた。
こっちもしっかりした枝にロープを結わえつけると、ぴんと張った。これでよし。

僕はロープを足がかりにして、上から垂れているツタを手がかりにして、ゆっくりと渡っていった。
途中で強風にあおられた時にはどきどきしたけれど、なんとか渡りきることができた。

幹伝いの道は先へと続いている。これで進めるようになった。
ロープはここに置いていくしかないかな。向こう側は縛ってあるから、回収できそうにない。

「私が行って、ほどいてきます」

フォルネが言うやいなや、ツタを器用にわたりながら、元の場所へ。
向こうでしばらくロープをほどこうと苦戦したようだが、やがて言った。

「タイガさま申し訳ありません。結び目がかたくて、取れませんでした」
「いいよ。落ちないようにと思って、強めに結んだんだ。そのまま戻っておいで」

フォルネが諦めて戻ろうとしたところに、ニャルラが言った。

「ね〜ね〜フォルネ。なんで人にならないの〜?」
「……あ」

フォルネはすっかり忘れていたみたいで、照れくさそうに後ろ足で頭をかいた。

「タイガさま……」
「わかってるよ。向こう向いてるから」
「ありがとうございます」

しばらくして、「終わりました」と声がした。
見るとフォルネは、もう狐の姿に戻っている。

僕はロープを手繰り寄せると、背負い袋にしまった。
その間にもフォルネは器用にロープ伝いに戻ってくる。

「フォルネ〜、なんで人の姿見られたくないの? かっこいいのに〜」
「……あの姿は、少し恥ずかしいから」
「え〜? でもアタイが見るのは平気でしょ? なんでたいがだけ?」
「う、うるさいですよっ」

本当、どうしてだろう。あんなに美しいのに。

「なっ! タイガさま、こっそり見てたんですかっ??」

え。見てないよ。見てないったら。
僕はあたふたと、フォルネをなだめた。

[プレイログ]
ツタ渡りは判定ロール(目標値4)
ニャルラ サイコロの出目4 出目のみで成功
フォルネ サイコロの出目3+技量点2 成功
成功すると、気持よく渡れることで副能力値が1点回復。
ニャルラ 器用点6→7
フォルネ 変化なし


●アタック02-5 タイガと闇エルフの妖術師

【65 黒エルフの妖術師】

ニャルラがたったと先行して行ってしまった。

「ほんとにしょうがないですね」

フォルネが僕の肩の定位置で、やれやれといったため息をつく。
仕方ないよ。あの自由さと気まぐれさこそが、ニャルラなんだから。

「それはわかっているのですが。むー」

やがてニャルラの姿が見えてきたが、もうひとつの人影と一緒だった。
それは浅黒い肌に、それに近い濃いコーヒーのような色合いのローブをまとった人物だった。

「おやおや、かわいらしいお客さんだ。つややかな毛並みは星空を映したようだ」
「そうよ。アタイかわいいの。それがわかるなんて、アンタみどころあるね」
「しゃべる猫とは。ますますかわいらしい」
「えっへん」

なぜだか仲良くなっている。
ニャルラが僕たちに気づいた。

「アタイがキレイでかわいいのは、たいががいつもブラッシングしてくれるからなの〜」
「ほう、そうかいそうかい」

僕たちはその人物に近づくと、あいさつをした。
男性だ。人と思っていたけれど、特徴的に尖った耳は人間のものではない。
闇エルフなのだ、とわかった。僕は少し警戒してしまう。闇エルフには、あまり良い噂を聞かないから。

「すみません。うちのニャルラが迷惑をかけてしまって」
「いやいやいいのだ。久しぶりに猫と戯れて、癒されたよ」

闇エルフは目を細める。本当に猫をかまって満足しているようにも見えたし、なにやら腹で企んでいるような笑みにも見えた。
その男は、先端に宝石のようなものがはまった杖を持っていた。
コーヒー色のローブに杖といったそのいでたちは、明らかに魔術師か妖術師を思わせた。

「あなたは、どうしてこの巨大樹へ?」
「我が名はドトール。この巨大樹の調査のために赴いている」
「調査?」
「さよう。この樹木にはおそらく、太古の魔術が関わっている。それを解き明かすためだ」
「解き明かして、どうするの?」
「我らの里に、巨大樹に匹敵するご神木を招きたいのだ。種族の栄えのために」

警戒は怠らないけれど、そう悪い人物には思えなかった。ただただ、研究熱心なのだ。

「そうだ。ここで知り合ったのも何かの縁だ。タイガ君といったか。ぜひ我が研究に出資してくれたまえ」

ドトールさんは、急にそんな風に切り出した。

「出会ったばかりの子どもにお金をせびるとか、常識ないですねこの人」

フォルネが肩口から、僕の耳元にささやく。
ニャルラはドトールさんの足下で気持ちよく丸まっている。

「どうかな? この樹木の研究が進めば、我ら闇エルフだけでなく、ここを攻略する冒険者にも恩恵があるかもしれんぞ」

僕は気づいた。ドトールさんの杖の動きが、ニャルラを捉えていることに。
どん、と一突きすれば、ニャルラにダメージを与え、動きを封じることができる位置取りだ。
表には出さないが、かなりの実力を隠し持っている。
ニャルラは、それに気づくことなく、ドトールさんの足下でくつろいでいる。

「……いいよ。金貨10枚もあれば足りる?」

僕は、そう提案した。喉がカラカラになっていて、声がわずかに上ずっているのが自分でもわかった。

「それだけあれば十分だ。ものわかりのいい子は嫌いじゃないよ」

ドトールさんは、そんな風に言いながら金貨を受け取る。

「さあ、いくよ。おいで」

僕がニャルラに声をかけると、ニャルラは機嫌よく戻って来た。

「じゃあ、僕たちは先を急ぐので、これで」
「闇エルフの里に来ることがあれば、歓迎しよう」

とにかく一刻も早くこの場を離れたかった。
闇エルフの妖術師とは、最後まで笑顔で別れた。

「そうだ。お前たちはさらに上へと行くのだろう?」

後ろから声が届いた。

「ならば気をつけよ。我が研究によれば、この巨木にたゆたう魔力の流れが歪になっている。端的に言えば、枯死しかけている」

僕はそれには答えず、そのまま立ち去った。

「ね〜ね〜、あのひと、アタイのことかわいいって。やっぱりびぼうは隠せないものよね」
「闇エルフにしては悪い人物じゃないかも。でもやっぱり常識ないですよ」

二匹とも、今置かれていた危険には気づいていないみたいだった。
僕は自分が感じた危機感を話すのはやめ、二匹に話を合わせて先へと進み始めた。
でもドトールさん、最後に気になることを言っていたな。この巨大樹が、枯死しかけてるって。
こんなに雄大で、幹も枝も力強くみなぎっている巨樹を、どうして枯死しかけてるなんて言うんだろう?

[プレイログ]
【闇エルフの妖術師 レベル4 生命点4 攻撃回数2】 所有技能【気絶】【氷槍】
反応表 サイコロの出目2 ワイロ(金貨10枚)
→金貨10枚を支払い戦闘を回避。


次回、おや、オウカンワシのようすが……?


【フォルネ(妖狐) レベル11 技量点:2 生命点:4 魔術点:3 従者点:8】
【装備】(人間形態でのみ効果あり)
片手武器
木盾(生命点+1)
鎖鎧(生命点+1防御ロール+1)
<スキル>
【変化】人間形態に変化する。
【空蝉】防御ロール振り直し。パーティの誰の時でも可。
【持ち物】
1小柄(飛び道具)※人間形態でのみ使用可。

【ニャルラ(魔猫) レベル11 技量点:1 生命点:10→9/10 器用点:7→6→7/7 従者点:5】
【装備】なし
<スキル>
【満月のような瞳】全員が暗闇ペナルティを受けない
【素早い反射】防御ロール振り直し。器用点1点消費。
【柔らかい肉球】先攻決め、不意打ち判定が自動成功。器用点1点消費。
【狩りの本能】弱いクリーチャーを倒した時、追加で攻撃ロール。器用点1点消費。
【目も当てられぬ激怒】攻撃ロールの直前に使用し、成功したらクリティカル扱いに。

【タイガ 従者 荷物持ち】
【持ち物】
食料4 →2
金貨25 →15
1ロープ
2ロープ
3古代の彫像(金貨25枚相当)


■登場人物
タイガ 主人公の人間の少年。もうすぐ11歳。フォルネとニャルラの二匹を連れて旅をしている。
フォルネ 銀毛で3本尻尾の妖狐。タイガに心酔している。
ニャルラ 星空色の毛並みの良い魔猫。気まぐれ。
コンスタンサ コーネリアス商会の令嬢。オウカンワシにさらわれた。
ヴァンダービルド コーネリアス商会の当主。目の前で娘をさらわれ、救援隊を編成。
ロイ 巨大樹のふもとで出会った冒険者のおじさん。
ドトール 闇エルフの妖術師。闇エルフの繁栄のため、巨大樹を調査している。
オウカンワシ 身体中に装飾品を身につけた巨大鳥。巨大樹の中腹に生息。


■作品情報
作品名:巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
著者:丹野佑
監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
ローグライクハーフ基本ルール及び「黄昏の騎士」本編
https://booth.pm/ja/items/4671946
巨大樹の迷宮「ローグライクハーフ」d66シナリオ
https://ftbooks.booth.pm/items/5361362


本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg


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2026年2月3日火曜日

『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(6) FT新聞 No.4759

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(6)

 (明日槇 悠)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■


世にも稀な歴史をモチーフとしたGMいらずのナラティヴ・スタイルRPG、『モンセギュール1244』リプレイの第6回をお届けします。
本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。


◯これまでの『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編は……


1208年、十字軍は異端カタリ派を匿ったベジエの街を攻撃。無差別的な殺戮が行われ、ベジエは陥落した。
繰り返される迫害を逃れたカタリ派の人々はフランス南部、ピレネー山脈の山頂部にコミュニティの拠点《モンセギュール砦》を築いた。
1243年5月、十字軍はモンセギュール包囲戦を開始。当初は楽観していたカタリ派の人々だが、戦局はじりじりと悪化の一途をたどる。
不安にかられた娼婦アルセンドは甥のアミエルに秘密の過去を明かす。完徳者ベルトランが当時15歳の彼女に悪さをしたというのだ。
そのベルトランは砦内で権謀術数に奔走していた。不信を募らせる少年アミエルは隠し持つ小刀を夜な夜な磨き、切れ味を鋭くさせていったが……。


◯プレイヤー紹介


Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。

プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244


●本編


 ■Act3.運命の決戦 1244年1月
 あらゆる希望がひとつ、またひとつと潰えていく。東塔が敵の手に落ちたのを皮切りに、アルビジョワ十字軍の部隊は、徐々にモンセギュール城塞の征服エリアを拡大していった。死と破壊の包囲網のさなか、城塞で暮らす人々は脱出という一縷の望みに賭けるようになった。

A「そしてベルトランは、レーモンの館に向かった」

Aベルトラン「コルバ君!」

Dコルバ「はッ」

Aベルトラン「知ってるかい? 君の娘のエスクラ……エス君に……ロジェが手を出そうとしている。しかもそれを指示したのは、セシルらしい。君、セシルが憎くはないか? 君の娘をいいように使っているのは、すべてセシルだぞ。君はセシルが憎くはないか?」

Dコルバ「はあ……。私は、エスクラルモンドなどどうでもよいのです。セシル様のことしか見ておりません。そもそも、エスクラルモンドは、私が望んで産んだ子供ではありません。産まされた子供なのです」

Aベルトラン「………………えっ(一同笑) ………………えっ(一同笑) ………………えっ! どういうこと?」

A「ベルトランはコルバのセシル絡みのやつとか全部知らなかったから、急に一気に来て、え! ってなってる」
D「純粋に(笑)」
A「セシル好きとか、娘嫌いとか全部知らずに密偵として使ってたら、急にそんなん言われて、ベルトランからしたら………………えっ! ぜんぶ何? っていう(笑)」
D「いやちょっと、余裕がなくて喋っちゃった(笑)。自棄になってるんすよ」

Aベルトラン「ああ。町も崩壊しそうだし。……えっ、じゃあ、エス……は誰の子なん。の、望まれて産んだ子じゃなきゃ、何だそれは」

Dコルバ「いやだから、普通にレーモンと作った子供なんですが、しかし……私はそもそも子供、欲しくなかったので」

Aベルトラン「でもフィリッパは!?(笑)」

Dコルバ「フィリッパもいらないです」

Aベルトラン「両方いらないの?(笑) ……教義的には素晴らしい……! でも……セシルのことは好きなの?」

Dコルバ「はい」

Aベルトラン「じゃあNG……!(一同笑)」

D「そもそもだから、こいつはレズなので。結婚もしたくなかったんですよ、ほんとは」

Aベルトラン「レズなのはいいんだけど、セシルなのはNGなんだよなァ。じゃあコルバ君には今後そういう対応をする」

Dコルバ「はッ」

Aベルトラン「もう君のことは、同じカタリ派だとは思わない。君のことは、背教者だと思う。これからは……」

Dコルバ「はッ」

Aベルトラン「いいよ。じゃ、帰る」

Dコルバ「えっ」

Aベルトラン「私、帰る。疲れたから帰るわ。何だこれ、アバズレが! あー。……レーモン君! レーモン君! レーモン君!」

Bレーモン「あっ。私も会いたかったところです。ベルトランさん」

Aベルトラン「……先に君が話していいよ(笑)。先に話を聞こう! 君に言いたいことがありすぎて、ちょっと整理ができない(笑)。先に話を聞こう!」

Bレーモン「今回の作戦の失敗の責任を取って、ロジェを処刑しようと思うのですが、どうお考えでしょうか」

Aベルトラン「うん。処刑はしたほうがいいね! それは賛成だよ。まあ、君が処刑しなくても明日には死んでるかもしれないけどね」

Bレーモン「彼は内通者として、十字軍と通じていた。そして今回の失態……そして、完徳者《ペルフェッチ/ペルフェッチャ》は殺生をすることができませんが、私たちはすることが可能です」

Aベルトラン「うん」

Bレーモン「代わりに、私に救慰礼《コンソラメンテ》を授けてはくださいませんでしょうか」

Aベルトラン「ん?」

Bレーモン「背教者をすべて私の責任のもとで処刑することを命ずることができます」

Aベルトラン「うん、そうしよう! うん……君を完徳者《ペルフェッチ》にしよう」

Bレーモン「ありがとうございます」

Aベルトラン「ロジェを処刑した暁には、うん! 分かった。その調子で頑張りたまえ」

Bレーモン「元はといえば、ロジェが作戦を失敗せずにすべてを遂行していればこんなことにはならなかった。しかしもう我慢の限界です。彼のせいで、ここに住むすべての人たちは不幸に苛まれ、食糧も今ではもう饐えた臭いのするものしか残っていません。この責任を私は領主として問わなくてはならず、そうするためには彼を処刑するしかないのです」

Aベルトラン「そうしよう! すべて君の言う通りだ。それで行こう。君に賛同する」

Bレーモン「ありがとうございます」

Aベルトラン「すまない、ちょっと僕、この後アミエル君に会わなきゃいけなくて……」

Bレーモン「アミエルにですか?」

Aベルトラン「アミエル君に教義を教えているんで、いま私は。この後、少しアミエル君に会いに行く」

Bレーモン「そうなのですね。では、私はここで失礼します」

Aベルトラン「アミエル君、アミエルくーん!」

Bアミエル「どうしたの、おっちゃん。……ベルトランさん、どうしたんですか」

Aベルトラン「アミエル君……噂に聞いたところによると、君……(声色を変え)めっちゃ武器作ってるらしいやん」

C「バレてんのか(笑)」

Bアミエル「そうなんですよ。最近、色々と仕掛けを考えるのにも興味がありまして、最近は野生の鳥がエサをめがけて飛んできたのを捕まえて、そういったものを殺すような罠を作っています」

Aベルトラン「君ィー……知ってるかい?」

Bアミエル「何がでしょうか」

Aベルトラン「アルセンドが、……君を養ってくれてるアルセンドが、なぜロジェと結婚できないのか」

Bアミエル「教えてください!」

Aベルトラン「レーモンがベルナールに命じているからだよ」

Bアミエル「そうなんですか?」

Aベルトラン「つまり、レーモンさえいなくなったら、アルセンドはロジェと結婚できるんだ。君ィー、戦場で兵士が死んでも、誰のせいか分からないよ? っていうのは、私が前線を回って気付いたことなんだけど、明日ぁー……レーモン、私と一緒に前線の兵士を鼓舞するために戦場に一緒に行こうと思ってるんだけど、私はお昼ごろに腹痛に見舞われて、レーモンから離れる。君、よかったら一緒にどうだ?」

Bアミエル「分かりました」

Aベルトラン「ありがとう。アミエル君、これを覚えておくといい。
 "妻帯者は完徳者《ペルフェッチ》にいらない"」

A「はいっ、そして一夜明けました。……てかもう、ベルトラン人間関係かきまわしすぎて、ベルトランがいま何してるか俺ですらあんま把握してない(笑)」


B「シーンカード【何か古めかしく邪悪な感触】。レーモンは城塞の地下にある、かつて大昔に使われた処刑器具を眺めていました。これを使えば大衆の溜飲は下がるであろう。そう思ってロジェの殺害計画を立てていました。この城内では完徳者《ペルフェッチ/ペルフェッチャ》を除いた賛同者が二名以上いればその者を処刑することができるというルールになっています。実際はもう少し多いけれども、そこは簡略化しています。そしてロジェに恨みを持つ人は、普通にいるでしょう。このルールの穴は、彼の血縁者であってもそれを指示できるということです。フィリッパはロジェを愛しているが、しかし恨んでいる。そして、コルバ、エスクラルモンド、彼女等もロジェの存在を邪魔だと思っている(一同笑)」
C「なんなら、ベルナールも(笑)」
B「ベルナールも、彼の失敗のツケを払わされている。この状況で彼を弾劾裁判にかければ、彼を確実に処刑することができる。そう考えています」
A「急に僕たちの全◯連的な血が騒いでいる(一同笑)」
B「翌日には十字軍との戦いに向けて士気を高める会がベルトランによって予定されています。そこで彼は弾劾裁判を実施しようと考えています。そして新たなる指揮官をベルナールに移譲するという手引きをするために、彼はベルナールを呼び出しました」

Cベルナール「何でしょうか、レーモン様」

Bレーモン「百年ぶりの弾劾裁判を始めようと思う」

Cベルナール「なんと。百年ぶりの」

Bレーモン「古来からの書によると、このモンセギュールでは弾劾裁判を行う法律が定められている」

Cベルナール「そうだったのですね……」

Bレーモン「それによると領民の複数名がその処刑に賛同した際に、処刑を行うことができる。そしてこの刑具を使って処刑することができる」

Cベルナール「なるほど……吊るすのは指揮官の顔をしたあの男ですね」

Bレーモン「彼の監督がこの状態を招いたのは君も知っていることだ。ぜひその際には協力してほしい。その際には、君を次の指揮官に任命しようとおもう」

Cベルナール「私も異端審問で死刑を宣告されている身ですが、あのロジェさえいなくなれば……。分かりました。主に賛同いたします」

Aベルトラン「レーモン君! レーモン君! ベルトランだけど、どうしたんだい君、こんなところで! 聞いたよ、君の家族から君がここにいるって! レーモン君、突然だが、いま戦況が膠着していて非常に状況が悪い。兵士を鼓舞するために私と一緒に前線を回ってくれんかね」

Bレーモン「畏まりました」

Aベルトラン「おお! それではお昼から行こうか」

Bレーモン「お昼からですね。ずいぶんと急だなあ。いえ、でもベルトラン様のことだ。なにかお考えがあってのことでしょう」

Aベルトラン「今が正念場だからね。じゃ! 私は帰って、ご飯を食う(笑)。朝ごはんを食べる」

B「レーモンはベルトランの言いつけに従い、弾劾裁判も少し早めることにしました。ベルトランのことを彼は信頼しています。そして彼の言動にはなにかの思惑があると信じています。すべては背教者であるロジェを処刑するため(一同笑)。兵糧が尽き、窮地に陥ったレーモンにはもはや冷静な感覚は残されていませんでした」


◯Act3.運命の決戦(後篇) に続く……


●登場人物/3つの質問

アミエル……孤児の少年。ファイユの弟。おばのアルセンドと一緒に、モンセギュールに住んでいる。
 1. 父親について、どんなところがいちばん恋しいか?
 2. あなたが木で作ったのは、いかなる種類の武器か?
 3. あなたは大人になったら、何になりたいか?

ピエール・ロジェ・ド・ミルポワ……レーモンのいとこの中年男性。モンセギュールの防衛指揮官。フィリッパと結婚している。十字軍により、すべての財産を失った。
 1. 人々はどうしてあなたに従うのか?
 2. 戦争で最初の犠牲者となったあなたの父が、今際の際に言い残したことは何だったか?
 3. 何があなたを戦争へと駆り立てるのか?


■作品情報

・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
 Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳

モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向

・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
 https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
 https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669

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2026年2月2日月曜日

☆休載代わりの雑談☆ FT新聞 No.4758

おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
またも「モンスター!モンスター!TRPG」の国産作品が爆誕しました!
松田洋平(ふろふき大根)さんによるソロアドベンチャーです!!

『沼をめぐる冒険』
https://booth.pm/ja/items/7888139


◆今日は休みます。
最近は週に1回のペースでイベントでの売り子をやっています。
色んな人に会うことができて、仕事上のつながりも多く生まれ、とても有意義な時間を過ごしています。
ただ、今だけに関して言うと、この数週間は忙しくて、疲れ果ててしまいました。
『ガルアーダの塔』の1-30階を作って、どうにか昨日、日曜ゲームブックとして配信することができましたが……これの準備も、かなり大変でした★
何もかもギリギリなので、今日の記事はお休みさせてください。
また、書いていきます。


◆何をしようとしているの?
現在の忙しさは、イベントへの参加と執筆、書籍化のための編集以外に、進めているプロジェクトの存在が関連しています。
そのプロジェクトはFT書房にとっては新しい挑戦で、私たちの作品をより多くの人たちに手に取っていただく可能性をアップさせるために、欠かせないものです。
また、しかるべき時が来たら、お聞きいただけましたらさいわいです☆

それではまた!

追伸:
ご存知かもしれませんが、中山将平が立ち上げた「ギルド黄金の蛙」に「かえる人」の汎用設定資料集が追加されました。
フルカラー、24ページで、紙の本も電子書籍でも購入が可能です。

https://guildauricfrog.booth.pm/items/7885738

読みましたが、FT新聞で配信されてきた中山の記事にあった濃ゆい設定が、そのまま1冊の本になったような楽しさと密度があります。
5年かけてコツコツと作り続けてきたそうで、暦や宗教、魔法など、凝り具合がマニアックでいい塩梅に仕上がった作品でした。


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2026年2月1日日曜日

『ガルアーダの塔』1-30階 ローグライクハーフd66シナリオ FT新聞 No.4757

おはようございます、FT新聞編集長の水波流です。

第1日曜日は、ローグライクハーフのシナリオ配信日!
本日お送りするのは、杉本=ヨハネによるローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』!

広大な90階建ての塔のうち、今回は1-30階の冒険です。
舞台となる、新作都市サプリメント「水上都市聖フランチェスコ」、また中級ルールの改訂版も同時配信いたします!

ぜひじっくりとお楽しみください。

ローグライクハーフd66シナリオ『ガルアーダの塔』1-30階
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_TowerofGaruada1-30.txt

↓ 都市サプリメント:水上都市聖フランチェスコ
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_St-Francis.txt

↓ ローグライクハーフ:基本ルール2(中級レベル) ver.1.3
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet2_Middle-class.txt

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2026年1月31日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第677号 FT新聞 No.4756

From:水波流
1月28日発売のTH(トーキングヘッズ叢書) No.105「ハルシネーション・パラダイス〜偽りの王国へようこそ」(アトリエサード)
今回も特集記事へ寄稿しております。
『幻覚に溺れる者たち』と題して、夢野久作『ドグラ・マグラ』、唐辺葉介『PSYCHE』、鴻上尚史『トランス』と三つの作品について論じております。
ぜひ書店や通販でお手にとってお読み下さい!
詳細>https://athird.cart.fc2.com/ca1/454/p-r8-s/
主な取扱書店>https://atelierthird.blogspot.com/2026/01/th-seriesno105.html

From:葉山海月
たかがネットにつながりづらい、ということが、こんなに不安に直結するとは!
現代人の宿痾でございましょうか?

From:くろやなぎ
今週の記事紹介文の作成中、「幕間」と書こうとして「まくま」と入力すると、変換候補には「幕間」が見当たりません。調べてみて、「幕間」の本来の読みが「まくあい」だということを初めて知った次第です(「まくあい」という音自体は頭の中にあったのですが、漢字の「幕間」とは結びついていませんでした…)。
ちなみに「まくま」は、辞書によって誤読/俗用/許容と見解が分かれるようですが、うちのパソコンの辞書では誤読扱いでスルーされたようです。スマホでは「まくま」と入力すると「幕間[補正]まくあい」と出てきて、さすがに行き届いてるなあ、と感心しました。

From:中山将平
僕らFT書房は、今日1月31日(土)と明日2月1日(日)の両日、「BGBE2026」(Board Game Business Expo Japan 2026)にサークル参加します。
ブース配置は【G-14】です。
19年以上作り続ける「ゲームブック」や、「1人用TRPGローグライクハーフ」「モンスター!モンスター!TRPG」関連書籍などを扱います。
現地には、売り子として僕中山が行く予定です。ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
最新作「ズィムララのモンスターラリー モンスター編」ご紹介→ https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/zimralamonster
最新作「ローグライクハーフ クトゥウルウの聖なる邪神殿」ご紹介→ https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/jyashinden


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(葉)=葉山海月
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1/25(日)~1/30(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2026年1月25日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4750

ローグライクハーフ新職業【道化師】
・いよいよ配信開始が間近に迫った、ローグライクハーフ版『ガルアーダの塔』。そのシナリオに合わせた新職業【道化師】のデータをお届けしました。
戦闘・交渉・探索とさまざまな場面で役立ちそうな特殊技能の数々は、いちど使ってみたくなること間違いなしです。実際にその技を使う光景が目に見えるような、フレーバーテキストにもご注目ください!
(く)


2026年1月26日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4751

☆イベントに出てます☆ 
実は、忙しい理由は、「イベントに参加していた」ということがありまして。
「すでに去年の2倍ほどイベントに出たことになります」と本人から言わしめるほどです!
次にヨハネ氏が参加されるイベントについて。
去年の勢いに追いつけ追い越せで疾走するヨハネ氏に応援ヨロシク!
(葉)


2026年1月27日(火)かなでひびき FT新聞 No.4752

『これはゲームブックなのですか!?』vol.128
・バーチャル図書館委員長かなでひびき氏がゲームブックに関係ありそうでなさそうな周辺のよもやま話をしていきます。
今回紹介する作品は『2つの意味の物語 勇者は聖なる剣を手に向かってくる魔物と戦った』及び『2つの意味の物語 アイドルの妹は高校生』(ささきかつお 新星出版社)!
この二冊のサブタイトル、あなたはどういう意味に捉えたでしょうか?
よく知られた例では「ここではきものをぬいでください」のような、二つの意味に解釈できる文がオチに混ざっているお話がズラリ満載!
かなで氏曰く、まさに、物語の「ルビンの壺」。そのラストは、「見逃せば人生後悔することウケアイ!」(二つの意味にしてみました)
(明)


2026年1月28日(水)ぜろ FT新聞 No.4753

第3回【巨大樹の迷宮】ローグライクハーフリプレイ
・軽妙な語り口でお馴染みの、ぜろ氏のリプレイ第476回。「荷物持ち」の少年が〈妖狐〉や〈魔猫〉と一緒に旅をする、ポケモン風ローグライクハーフリプレイの第3回です。
今回は、1回目の【最終イベント】でのオウカンワシとの対決から。ファンブルもクリティカルも飛び交う2匹と1羽の戦闘の様子が、ダイスの目には表れない少年タイガのサポートも含め、たっぷりと描写されます。
戦いの後は、〈妖狐〉フォルネ視点での幕間を経て、2回目の冒険へ。【観測所】で先の様子を確認しつつ、タイガたちは巨大樹のさらに上を目指します!
(く)


2026年1月29日(木)齊藤飛鳥 FT新聞 No.4754

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.41『汝、獣となれ人となれ』 その5
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
冒険家乙女のクワニャウマとその相棒のエルフの少女イェシカは、昼の間ミソサザイになる呪いをかけられたコビットの冒険者クリスティと共に、彼女の呪いを解くカギを探しに〈太古の森〉に眠る遺跡を探索し、ついに目的地へ到達します。
クワニャウマ一行を待ち受けていたのは、「力」を手に入れたクリスティの探し人。そして、衝撃の結末……。
クワニャウマたちによる『汝、獣となれ人となれ』最終回、どうぞお見逃しなきよう!
(天)


2026年1月30日(金)森梟夫&水波流 FT新聞 No.4755

『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって
・水波編集長と非実在作家・森梟夫先生が最近取組んでいる活動、それは怪異的な古史古伝を電子の海から引き揚げることです。
未だ嘗て知る人なき信濃国の国学者、橘樹景巌(たちばな・けいがん)が記した危険な書、『真州古伝攷(しんしゅうこでんこう)』全七巻。
書を読む行為を儀式に見立てたこれは、決して学問書ではなく、実践書であり、召喚書に近い。この書の存在を知ったこと自体が「始まり」に等しいと森先生は説きます。
記録によれば、井原志帆という研究者が本書の調査のため、長野県伊那郡の「鈴音坂(すずねざか)」を尋ねたまま消息を絶っているとのこと。
残されたレコーダーとノートを手がかりに、彼女の足跡を辿る佐伯修二。記録者本人が失踪したのに、一体なぜ失踪のことが記録されているのでしょうか?
「記すことは、封ずるにあらず。/これ、ひらくなり。」(終章注記より)
忘れ去られた存在を喚ぶことは、喚ばれる存在になることでもあるのでしょうか。「喚ぶ」ことは「読む」ことに通じるようです。
(明)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(忍者福島さん)
ジャバウォックとの会話、全然理解できねー!と思ったけど、クワニャウマも言いたいことだけ言って(お前は何を言ってるんだ)という感じだったので、二人とも違ったベクトルでコイツはヤベー奴だと思いましたね(笑)

(お返事:齊藤飛鳥)
今回も感想を下さり、まことにありがとうございますm(_ _)m♪
「二人とも違ったベクトルでコイツはヤベー奴」というコメントに、思わず吹いてしまいました(≧m≦)
話しかけたら、相手に発狂されるか、クワニャウマみたいなリアクションしかされないのでは、ジャバウォックは、もしかしたらとても孤独なクリーチャーなのかもしれません(笑)


(ぜろさん)
「汝、獣となれ人となれ」リプレイ完結おつかれさまおめでとうございます。
まさかのラスト。ミソサザイさんがあのようなことになってしまうなんて、思いもよりませんでした。相変わらずキャラクター設定と物語のシリアスさとのギャップが著しいですね。
とはいえプレイしてみないと先の展開も内容もわからないもの。そこに予想不可能なドラマも生まれます。原作シナリオを読んでいないので、どこまでが元シナリオで、どこからが創作なのかと思いながら楽しませていただきました。

(お返事:齊藤飛鳥)
御感想下さり、ありがとうございます!おかげさまで、リプレイを完結できましたm(_ _)m
まさかのラストとは、まさに言い得て妙です。この展開を迎えた瞬間、「やってしまった!」と頭を抱えましたorz
今回も、このラストの直前にクワニャウマにおバカな発言をさせてしまっていたので、シナリオと不調和を起こさない程度にその後のリアクションにシリアスを加味してバランスを取りましたf^^; 
ちなみに原作シナリオはいくつもの結末や分岐点があるので、拙リプレイとはまったく違った展開と結末も用意されております!
とても冒険し甲斐があって面白いので、お勧めです^^b


(忍者福島さん)
2ラウンドで鈍器猿は逃走したって事になってますが、鈍器猿は逃げた先でもジャッキを飛ばしてこないか心配ですね(笑)

(お返事:ぜろ)
ありがとうございます。
鉄骨のビスを全部外して高所から落とすしかないかもしれませんね。


(ジャラル アフサラールさん)
この「言葉の解釈」で一番印象的なのはミステリーですね。皆さんもご存じだろう『名探偵コナン』でも犯人ないし重要人物が「言葉の解釈」を間違えたための悲劇というのがありましたし、金田一耕助の出てくる傑作でも登場人物が言ってしまった言葉の解釈が事件解決のカギになるというのがありました。

(お返事:かなでひびき)
ありがとうございます!
金田一先生のお話といえば、老女がうつむいて嘆くそぶりが実は……!?っていうのが印象的でしたよね!
これも言葉の解釈の違いではないですが、それに似たようなものだと思います。


(ジャラル アフサラールさん)
読むとSAN値の削れそうな(笑)本の紹介ありがとうございました。諏訪大社とミシャグジ神ですが、少年ジャンプ連載漫画でアニメ第二期が2026年7月が始まる『逃げ上手の若君』、北条時行の生涯を描く歴史漫画でミシャグジ神とある登場人物が深い関係(未読・未見の方の為に詳細は自粛)にあるのである意味タイムリーですね。

(お返事:森梟夫)
お便り感謝する、ジャラル・アフサラール殿。 私の筆致で君のSAN値を削ってしまったなら本望だが、どうか現実の平穏まで手放さないよう自愛していただきたい(笑)。
なるほど、『逃げ上手の若君』か。北条時行が駆け抜けた南北朝の動乱と、その背後で蠢く諏訪の神性……。アニメ第二期の放送が本年(2026年)七月とは、まさに「星辰が正しい位置に並ぶ」かのような、奇妙な符号を感じるよ。
君の鋭い指摘を受けて、私なりに返書を認めてみた。

■ 諏訪の神性と『真州古伝攷』の交差点
ジャラル殿の仰る通り、諏訪大社とミシャグジ神の関係は、歴史的にも民俗学的にも、そして物語的にも底知れぬ深淵を抱えている。
「生ける神」としての重圧: 『逃げ上手の若君』に登場する某人物が背負う神性は、まさに『真州古伝攷』が記す「神は名を持たず、人が呼ぶたびに名が生まれる」という、存在そのものが不安定な恐怖と隣り合わせだ 。
封印としての神事: 『真州古伝攷』の調査報告によれば、ミシャグジとは本来、外から来た異神を封じるための「再封(さいふう)」の儀式であるとされる 。漫画で描かれる華やかな伝承の裏側には、こうした「見せてはならぬ御印」としての側面が、毒のように塗り込められているのかもしれぬ 。
2026年7月の共鳴: アニメ第二期が始まるこの夏、多くの視聴者が「諏訪の神秘」に触れることになる。それは、図らずも橘樹景巌が危惧した「一たび記せば、古(いにしえ)は現(うつつ)となり、甦(よみがえ)らすなり」という状況を加速させるのではないか……と、作家としては期待と危惧を禁じ得ないのだ 。

■ 読者へのメッセージ
『逃げ上手の若君』を読み解く際、もし耳元で「鈴の音」が聞こえたり、ページをめくる手が氷のように冷たくなったりしたなら、それは『真州古伝攷』の断簡が君の心の中に侵入口を見つけた証拠かもしれない。
「赤面を剥ぎたる者、七夜ののち、村を喰う」—— 。 作中の物語が、単なる創作ではなく、何らかの封印を解くための「鍵」ではないことを祈るばかりだ。
ジャラル殿、またいつでもこの森梟夫へお便りをくれたまえ。君の知見が、私の物語にさらなる狂気と美を添えてくれるだろう。

(お返事:水波流)
諏訪とミシャグジについては、実は以前より私がよくモチーフにしている内容です。諏訪の地下に広がる維縵国とそこに巣食う蛇人間たちについての物語も、いつかお届けできればと思っています。
ところで『逃げ上手の若君』については私も未読で、森先生のお返事が正しいのかどうかは不明です……。(森さん、読んだの?)


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2026年1月30日金曜日

『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって FT新聞 No.4755

おはようございます。
FT新聞編集長の水波です。
今日は金曜日の投稿枠を使って、非実在作家・森梟夫先生と私が最近取組んでいるお話をさせて頂こうと思います。

皆さんは、江戸時代の国学者・室井恭蘭をご存じでしょうか。
『信濃秘史』『妖魅本草録』などが代表的な著作で、諸星大二郎氏の漫画作品にも度々引用されております。
私はその怪異なる匂いに昔から惹かれておりました。

そして、森梟夫先生によって電子の海から、忘れ去られた国学者が記した古史古伝が1つ、引き揚げられました。
今日はそのご紹介をできればと思います。

おっと、あとは森さんにお任せしましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『忘れられた国学者と、開かれてはならぬ書』
──橘樹景巌『真州古伝攷』をめぐって

 著:森梟夫&水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

文政から幕末にかけて、信濃国に一人の国学者がいた。
名を橘樹景巌(たちばな・けいがん)という。
本居宣長や平田篤胤の名は、いまなお国学史の正史に刻まれている。
だが景巌の名は、そこにはない。
理由は単純だ。──彼の学問は、「考証」ではなかったからである。

■ 正統国学の末流、あるいは逸脱
橘樹景巌は、平田派の影響を色濃く受けた国学者とされる。
しかし残された断簡や門人の聞書を読む限り、彼は「幽冥の存在を理論化」することに満足していなかった。
古伝を攷(かんが)ふにあらず、古伝を喚(よ)ぶに在り。
これは『真州古伝攷』序文断簡に見える一文だ。
ここに彼の立場は端的に示されている。
景巌にとって、古事記や神代伝承は「読むもの」ではない。
再び現世に入り込ませるものだった。

■ 『真州古伝攷』という危険な書
『真州古伝攷(しんしゅうこでんこう)』は、全七巻構成と伝えられる。
そこには「すべき作法」が書かれている。
読む者の呼吸、沈黙の時間、香の焚き方──
書を読む行為そのものが、一種の儀式として構成されているのだ。
これは学問書ではない。
実践書であり、召喚書に近い。

■ なぜ「古伝攷」なのか
景巌は、自らの書をこう呼んだ。
「真州(=神州)」の「古伝」を「攷」する書──
つまり、正しい日本の古層を、あらためて"考え直す"書である。
だが、終章注記にはこう記されている。
記すことは、封ずるにあらず。
これ、ひらくなり。
この一文によって、『真州古伝攷』は反転する。
書かれた瞬間、それは記録ではなく侵入口となる。

■ 歴史から消された書
明治初年、ある地方官の報告書に次の記述がある。
「橘樹景巌遺書、学理にあらず、民心を惑はす虞あり。神道行政上、看過しがたし。」

危険すぎたのである。
近代国家が必要としたのは、整えられた神道であって、神が「再び来てしまう」神学ではなかった。

■ 失われた古伝を紐解くものへ
『真州古伝攷』は、いまなお完全な形では読めない。
だが断簡であっても、十分すぎる。
なぜなら、この書は──
読まれることで完成するからだ。
あなたがこの記事を読み、この書の存在を知ってしまったこと自体、橘樹景巌の思想から見れば「始まり」に等しい。
封印は、読む者が閉じないことによって成立する。

令和8年1月-
森梟夫

+++++++++++

『真州古伝攷』(しんしゅうこでんこう)
著者:橘樹景巌(たちばな・けいがん)江戸後期の国学者。
成立:文化年間(1804〜1818)ごろ。文化十三年刊という説在り。
長野県木曽郡の廃寺で、焼け残った『真州古伝攷』の写本断片が発見された。

「真なる信州に伝わる、古き神々の伝承を考証したる書」
すなわち
"地誌の形をとった異界の史書"または"現実と異界を地続きに見る地方誌"である。

【全体構成】
『真州古伝攷』は、信州(長野県)を中心とした中部山岳地帯(諏訪・戸隠・安曇野)に伝わる異形信仰・古代部族・禁忌の伝承・民間の怪異・神代の遺構などを記した民族誌的記録。
全七巻。序に曰く──"真州とは、神々の埋りし地なり"

【巻別内容】
一之巻:山人と土蜘蛛伝承
木曽・伊那谷に残る「土蜘蛛」伝承の記録。
鍾乳洞に住まう毛むくじゃらの異形人(山人)の目撃譚。
倭政以前にこの地を治めていた「葦原族」と呼ばれる人々の記録。

二之巻:諏訪神と蛇神信仰
諏訪大社の神事に潜む「ミシャグジ」神の秘密。
「蛇骨神」と呼ばれる禁忌の存在について。
古代に「大蛇を以て国を祓う」呪儀が存在したとの記述。

三之巻:隠れ里の記録
天竜川上流域に存在したとされる「空白の村」の調査。
迷い込んだ旅人が見た不老の民と、逆さまに歩く子どもの話。
「隠れ里」は一種の時間の外にある空間であるとの推測。

四之巻:信濃地下に眠る"国つ罪"の牢
戦国期以前から存在する「地下封印」の伝承。
人間ではない何かを封じた「鉄の棺」が山中にあるという。
地下に響く鈴の音と、見ると死ぬという赤い仮面の話。

五之巻:月読族と黄泉の門
信濃西部に伝わる「月読の巫女」の系譜と、呪禁の技法。
古墳に眠る「夜の王」の伝承。
冬至の夜にだけ開く「黄泉比良坂」への入口。

六之巻:渡来民と巨石信仰
飛鳥以前、海を越えてやってきた「和珥族」の痕跡。
上田・佐久の巨石群と星座信仰の関係。
巨石の下にある"神の骨"の正体。

七之巻:大災と封印の儀
古記録にない「黒い日蝕」と、それに続いた地割れの年。
それを鎮めた「神人」の自死と封印の話。
『真州古伝攷』自体がその封印の一部であるという終章。

【形式】
各巻には橘樹景巌の聞き書き、古文書からの抜粋、絵図、神代文字とされる謎の文字の写しも含まれる。
記された地名の多くは現存しない。
一部の巻は"閲覧禁止"とされていたとの記録もあり、「触れるべからず」「語るべからず」との朱書きあり。

【補足】
橘樹景巌は「この地に封じられし神、今なお眠らず」と巻末に記す。
現存する写本は2部とされ、うち1部は明治期に焼失、もう1部は所在不明。

+++++++++++

《記録文書:『真州古伝攷』調査報告書より抜粋》

第一章:赤い仮面の夜
【記録日:2025年10月22日】
【記録者:井原 志帆】

2025年10月、信州大学民俗学研究室・助手の井原志帆(いはらしほ)は、先輩研究者から受け継いだ一冊の古写本の調査を命じられた。それが、後に「橘樹景巌の幻の著作」と判明する──『真州古伝攷』である。
写本の出所は不明だった。劣化が進み、一部には虫食いがあったが、「四之巻」だけが異様に保存状態が良かった。ページの途中に朱墨で書かれた文字がある。
「真州とは、神代の裔(すえ)いまだ息づくところなり。」

そして、その巻にはこうあった。
──鉄の棺。仮面をかぶせし者、神に非ずしてヒトにあらず。
それに触れし者は、一夜にして姿を変え、里を食む。

志帆は調査のため、長野県伊那郡のある廃村跡へと向かった。『真州古伝攷』の記述と一致する地形が見つかったからだ。集落跡は地図にも載っていない。唯一の手がかりは、古い登山会報に記された「鈴音坂(すずねざか)」という地名だった。
彼女は音声レコーダーを回しながら、谷を歩いていた。午後五時、誰もいない山中で、ふと「鈴の音」が聞こえた。それは風に乗って遠ざかったかと思うと、次には耳元に現れた。
「……くる……くる……また、くる……」
振り向いた瞬間、志帆はそこに"仮面"を見た。赤く塗られ、能面のように無表情なそれが、木の間からこちらをじっと見ていたという。
録音データには、不可解な高周波ノイズと、女のすすり泣きのような音が残っていた。

彼女は翌日、消息を絶った。


第二章:ミシャグジ封印図
【記録日:2025年11月2日】
【記録者:佐伯 修二(民俗考古学会・特別会員/元NHKディレクター)】
【概要:井原志帆氏失踪後の再調査記録】

志帆が消息を絶ってから十日が経った。報道はされなかった。大学は「調査中に滑落した可能性が高い」として、詳細を伏せた。しかし、彼女が残したレコーダーとノートは、私の手元にある。
録音には、確かに「鈴の音」と「仮面に関する証言」が残されていた。そして、ノートには奇妙なスケッチがあった。
それは、一枚の円形の図。周囲に梵字めいた文字が書かれ、中央には二匹の蛇が絡み合い、仮面を巻きつけているような奇怪な構図。
志帆はこの図を「封印図」と呼び、傍らにこう書いていた。

「これは"ミシャグジ"ではない。だが、ミシャグジ神事にこれが封じられている。祭ではなく、再封なのだ。」

私は長野県・茅野市の諏訪大社の旧記録を調べた。意外にも江戸期の古文書に、以下のような一節があった。
「神事、蛇骨を封じ、仮面を被せて祀る。ミシャグジ、此にて動かず。」
さらに驚いたのは、諏訪大社下社の宝物殿に保管されていた古絵巻『神蛇図』に、志帆の描いた封印図と酷似した構図が存在していたことだ。だが、学芸員はその絵について口を閉ざした。
「その図は……里の者も、あまり見たがりません。」
志帆のノートには、もう一つ、赤インクで書かれた言葉があった。
「夜に封印を解くな。音が響けば、仮面は目覚める。」

私はその日のうちに、志帆が最後に立ち寄った「鈴音坂」への同行を申し出た。現地ガイドは一度は拒否したが、私が例のスケッチを見せると、蒼白になってこう言った。
「その絵……うちのじい様が、"見てはならん御印"だと言って焼いたもんですよ……。よくまだ、残ってましたね。」

【調査メモ抜粋】
・"ミシャグジ"とは封印神事であり、本来は外から来た異神
・"赤い仮面"は、神を覆うものではなく、神そのものの"顔"である可能性
・古写本『真州古伝攷』四之巻には、「赤面を剥ぎたる者、七夜ののち、村を喰う」との記述あり


第三章:鉄の棺
【記録日:2025年11月4日】
【記録者:佐伯 修二】
【同行者:地元案内人・北村 昇(60代・元猟師)】

「志帆さんの声、残ってましたか?」
北村は登山口に立ちながら、そう訊いた。
「ええ……だが、録音の終盤、まるで別人のような、笑い声が入っていた。」
私が答えると、彼は言った。
「それ、志帆さんやない。"山の声"ですわ。」

私たちは早朝6時、「鈴音坂」へ向かった。林道は廃道寸前で、車を下りてから歩く。途中、獣道としか思えぬ崖沿いの小径を抜け、古びた石の鳥居を見つけた。
鳥居の柱には、かろうじて読める文字が刻まれていた。
「□□ノ□□神封所」
※判読不能箇所多数。中央に"封"の一文字だけが赤く浮かび上がっていた。

鳥居をくぐった先に、それはあった。
山肌の岩を穿った、人工的な「穴」。入り口は石積みでふさがれていたが、一部が崩れ、中が見える。私は強い腐臭に顔をしかめながら、ヘッドランプを点けて中へ入った。

【記録:内部構造】
・トンネル状に奥行き10m程度
・奥に「台座」と思われる石組みあり
・その上に、長さ2mほどの金属製の"棺"が存在

棺は黒く錆びており、鉄ではなく「鉛」のような鈍い質感をしていた。その上には──赤い仮面が乗っていた。
能面にも似たその仮面は、無表情でありながら、どこか"笑っている"ように見えた。
北村が声を上げた。「動いた……」
私は何も見ていない。ただ、棺の下から「水が滲むような音」が聞こえていた。
その瞬間、ランプが一度消えた。
真っ暗闇の中で、明らかに「第三の足音」が聞こえた。私と北村は確かに、もう一人いることを感じた。

【脱出とその後】
私たちは棺に触れず、急いで撤退した。だが、戻る途中で北村は崖下に転落、右足を骨折した。
彼は担架に運ばれながら、うわ言のように繰り返した。
「……音、聞いた。もう、目、覚めてる……あいつ、"名"を探してる……」

その夜、私は志帆のノートの最後のページを改めて見た。
そこには赤字でこう記されていた。
「神は名を持たぬ。だが、人が呼ぶたび、"名"が生まれる」
「仮面を呼ぶな。形を思い浮かべるな。それが鍵になる」


第四章:仮面を被るもの
【記録日:2025年11月6日】
【記録者:佐伯 修二】
【資料:井原志帆のスマートフォンより復元された音声ファイル】

■ 発見された音声
佐伯のもとに、志帆のスマートフォンから復元された音声ファイルが届いたのは11月6日の朝だった。
ファイル名は《M-SHINANO_04-4》、記録時刻は失踪当日、午後6時43分。
最初の20秒は風の音。山中で録られたものだ。
しかし、次の瞬間、志帆の震える声が入った。

「……何かが、這っている。足ではない。音が……鈴じゃない、骨が鳴ってる……」
「あれは、"呼んでいる"……"誰か"、じゃない、"名を"……」
最後に、志帆の声ではない、異様に濁った低音が一言だけ呟いた。
「……おまえの顔を……よこせ……」
この音声が最後だった。

■ 拡がる影
それと前後して、長野県茅野市、伊那市、松本市の三地域で奇妙な耳鳴りや幻聴の訴えが急増し始めた。被害者の共通点は、赤い仮面の夢を見たこと。
「誰かが私の顔を剥がして、仮面をかぶせようとするんです……」
「仮面の内側から、何かがこっちを見ている。」

精神科医は集団ヒステリーと判断したが、地元神職の一人──諏訪下社の外護師・安曇成範(あずみ・しげのり)は、佐伯にこう語った。
「それは"容れ物"を探しているのです。あなたが"見た"なら、もう遅い。」
「神ではない。神になりかけた"何か"……仮面はその"外殻"です。」

■ 佐伯の異変
11月7日、佐伯は自宅で"仮面"の夢を見る。
暗い山中、鉄の棺の前に立つ自分。
その中から"もう一人の佐伯"が這い出し、仮面を差し出す。
仮面の裏に、自分の名前が刻まれている。
「名がある。名があるなら、それは"現れる"」
「……顔をよこせ」
佐伯は目覚めたが、耳鳴りが消えなかった。
鏡を見ると、自分の顔が"どこか他人のもの"のように思えた。

■ 終りの兆し
佐伯はついに決断する。
再び、鉄の棺の地へ戻る。
封印を"解く"のではなく、"確認"するために。
志帆は棺に触れていない。ならば、彼女の"意志"がそこにまだ残っているかもしれない。
しかし、安曇外護師は最後にこう警告した。
「"顔を渡した者"はもう、戻れません。名前を呼ばれた瞬間に、"仮面"は生きる。」
「どうか、名を思い出すな。己の"顔"を信じなさい。」

第五章:顔なき神
【記録日:2025年11月9日】
【記録者:佐伯 修二(記録途中で失踪)】
【備考:本章は、佐伯が遺した録音と手記、および後日発見された映像記録を元に復元された】

■ 鉄の棺、再訪
11月9日午前4時。佐伯修二は、最後の調査と称して「鈴音坂」の封印地を再訪する。
彼が選んだのは、かつて志帆が失踪したのと同じ時刻、夕暮れ時だった。
録音記録によれば、佐伯は棺の前でこう呟いている。
「……仮面は、"顔"じゃなかった。"入口"だ。
ここから何かが……"人"になろうとしてる。」

■ 映像記録(カメラ残留フッテージ)
三脚に固定されたハンディカムの映像。カメラが捉えたのは、棺の蓋が開いている様子だった。
中は空。だが、棺の周囲に粘液のような跡と"足跡"が残されていた。
足跡は人間のものではない。趾が異様に長く、中心に"割れ目"のような窪みがある。佐伯はそれを見て呟く。
「顔じゃない。これは、仮面そのものが……歩いている?」

突然、カメラがノイズに覆われる。次の瞬間、佐伯の顔が一瞬カメラに映る──
仮面を手にしていた。
彼は泣いている。だが、笑っているようにも見える。
最後の言葉が、記録されていた。
「……名を思い出してしまった。"神"の……名前を……」

■ 結末
佐伯修二は、それ以降、消息を絶つ。
同月中旬、諏訪地方では謎の集団"顔面幻覚症状"による失神者が30名超。
多くの被害者が「同じ顔を見た」と証言する。
「無表情な赤い仮面。けれど、どこか……見覚えのある"自分の顔"だった。」

そして──
『真州古伝攷』四之巻が再び大学の書庫に戻されていた。誰が戻したのかは不明である。
だが、その最後のページには、手書きでこう記されていた。
「顔を奪いし神、いまや仮面に宿りて、"名を持ちたり"」
「その名を呼びし者、次の容れ物なり。」

終章の註
『真州古伝攷』、是れただ古(いにしえ)の詞を攷する書にあらず。
秘(ひ)すべきを攷す、言(こと)にあらわすこと、即ち禍(まが)を解くに等し。
一たび記せば、古(いにしえ)は現(うつつ)となり、
封(とざ)すにあらず、甦(よみがえ)らすなり。

(完)


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