━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.9 (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ FT新聞をお読みの皆様、こんにちは! 本日の担当は東洋 夏(とうよう なつ)。 ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』のリプレイ小説をお届けいたします。 冒険の舞台は、夜を駆け、人をさらうという謎の〈怨霊列車〉。調査を依頼された十二歳の見習い聖騎士シグナスと、その相棒〈おどる剣〉のクロ。そして従者に「面白いこと」を愛するコビット族のヨンという布陣で進んでいきます。 前回vol.8では、ついに〈怨霊列車〉の主ダゲン・ラ・バーゲズと対峙。躯(むくろ)を「役者」と称して蒐集する最悪のコレクターであるバーゲズは、シグナスたちに女騎士グロリアをけしかけます。従者アルゴットを手にかけた因縁の相手であるグロリアは、どうやらバーゲズに操られているようなのですが……。 さて、女騎士グロリアとの対決は如何なる次第となりますでしょうか? なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。 ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。 前口上はこれでおしまい。 いざ出発と参りましょう! ◇ 〈シグナス(レベル8、聖騎士)〉 ・技量点:0 ・生命点:7 ・筋力点:4 ・従者点:9 ・技能:【高潔な魂】【全力攻撃】【癒しの光】 ・持ち物:見習いの片手剣(片手武器、斬撃)、丸盾、板金鎧(防御ロールに+1)、金貨14枚、スノーレパードアイ(金貨30枚相当の宝石)、騎士グロリアの指輪(金貨12枚の価値)、ランタン、食料1食分 〈クロ(レベル11、おどる剣、炎属性)〉 ・技量点:1 ・生命点:6 ・器用点:3 ・従者点:7 ・技能:【装備化】【凶器乱舞】【精密攻撃】【鋼の意志】 ・持ち物:なし ◇ [先頭車両]最終イベント (承前) 「行きます!」 シグナスは覚悟を決めて前に飛び出した。グロリアの動きは速いが、稚拙に感じられる。もしかしたら彼女の意識と、何か男の魔力のようなものが、せめぎ合っているのかもしれない。ならば攻め立てるのは今だ。全身全霊で斬り込む。 (※〈騎士グロリア〉はレベル4、生命点4、攻撃数2。反応表は「死ぬまで戦う」。手がかりを消費すれば彼女が意識を取り戻して戦闘終了するのですが、残念ながら未獲得。戦うしかありません。バーゲズとの戦闘もありそうですから、ここはクロの【凶器乱舞】を控え、1ラウンドから戦闘開始します。1ラウンド、シグナス【全力攻撃】を選んで成功。クロ、ヨンの攻撃は失敗。防御はシグナスとクロで対応して、成功) 「やあっ!」 グロリアと真っ向から撃ち合っては勝算が薄いと見、シグナスは相手の剣をかわして懐に潜り込み、脇の下に切先を突き立てた。 「おお、いいぞ!」 玉座の男が興奮のままに肘掛けを叩いて喚く。シグナスはそちらを努めて見ないようにする。 痛みを感じているのか、いないのか。グロリアの動きはぎこちないままで、剣の軌道も読みやすかった。日頃の鍛錬が身になってきたのかもしれない。数ヶ月前、悪夢連続殺人事件の渦中にあったころの自分なら、何も分からずに斬られていただろう。主人ノックスが個人的につけてくれた鬼のような剣術特訓にも、ちゃんと意味があったのだ。 (※畳みかけましょう! 2ラウンドはシグナスとクロの攻撃が成功。防御は均等に振り分ける原則からシグナスとヨンです。シグナス成功、そしてヨン……大失敗。ああ……) シグナスはグロリアの手首を狙って突き入れる。綺麗に入った刺突の衝撃でグロリアの手から剣がすっぽ抜けた。床を転がっていく剣を、目端のきくヨンが素早く捕まえてグロリアから遠ざける。 グロリアの注意が剣に向いた機を捉えて、ここぞとばかりにクロが急襲。グロリアの背後から体当たりする。その一撃は脆くなっていた甲冑ごと刺し貫いた。 しかしグロリアはなおも平然と動く。背中にクロを突き刺したまま、剣を抱えたヨンに向かって進む。 「捕まらないよ、おもろじゃないんでね!」 ヨンは軽やかに飛び退いた。そのはずだった。掴み掛かったグロリアのリーチの外へ、確実に距離を置いたはずだった。グロリアが人体の構造の限界を超えなければ。 ばきり、という破裂音が響くと同時に、シグナスは信じがたい光景を目の当たりにする。グロリアの腕が凄まじい速さで〈伸びた〉のだ。 「ヨンさん逃げて!」 シグナスは警告を叫ぶしかできない。クロはグロリアの背中で身を捩るが、何かに押さえつけられて抜けない。ヨンはグロリアの左手に捕まって躯の壁に押し付けられ、右手で剣を取り返され、そして首に真一文字の鮮やかな赤い線が開かれた。 「ヨンさん!」 一拍遅れて傷から血が吹き出す。あれほど雄弁だったコビットの口からは、何の言葉も転がり出しては来ない。ねえ、ヨンさん、その冗談こそおもろじゃないよ……。 シグナスは嵐の只中に立っているようだった。轟々と耳鳴りがし、視界はびしょ濡れで何も見えず、手足は我が物ではない力に引っ張られてふらついている。何かを叫んでいるような気もしたが、分からない。 その世界を破ったのは拍手の音。玉座から身を乗り出したバーゲズが、感無量の顔で喝采を送っていた。 「どうかね、シグナス。炎を操る剣、起き上がる骸骨の家臣、記憶喪失風味、それから今のが最新のギミック、伸びる腕だ! おおそして忘れてはならぬスパイス、失われる友人! 波乱にはバリエーションのあった方が面白いだろう。観客は飽き性だからな、仕掛けも常に驚きを持たせねばならぬ。お前の躯には何を仕掛けようかシグナス。何をしたらお前の主人は喜ぶかね? ん?」 「だ……」 「もう少し大きな声で発言したまえ」 「黙れっ!」 「おっほほぅ、これは良い。怒ったか。正義の為に怒っている。合格と言いたいところだが」 玉座の男が指を動かすと、グロリアがシグナスに向かってきた。その腕はまたも伸び始め、先ほどとは違う角度に曲がりながら、剣の切先がシグナスの心臓を狙っている。 「さあどうする、切り抜けてみせよ!」 (※3ラウンド。シグナス、【全力攻撃】を選んで成功! グロリアの生命点が0になりました) この時、シグナスの精神は怒りと混乱が極まって真っ白な状態だった。何もない。だからこそ、迷わず動けたのだろう。ここはナリクのリエンス屋敷の裏庭で、主人ノックスが傍にいる気がした。 『相手よりも得物が短ければ、懐に飛び込むことだ。迷うな。速さで勝れば良い』 シグナスは腕を無視する。死中にあって働いた勘だった。玉座の男がグロリアを操っているなら、騎士としてのグロリアの運動能力は削がれているはずだと。びゅんと音を立てて耳の横を剣が通り過ぎる。シグナスはグロリアの胸に深々と剣を突き立てた。 「そこまで!」 玉座の主の一声で、グロリアの体から力が抜ける。女騎士は糸を切られた操り人形のようにばたりと床に倒れ、ぴくりとも動かなくなった。その背中からようやく解放されたクロが這々の体で抜け出して、シグナスに寄り添う。 「素晴らしい友情だ。私はゴーレムをコレクションに加えるのは初めてだが、上手く処理してみせよう。揃いで運用する」 「バーゲズ卿、僕はあなたを許しません」 高笑いが玉座の間を満たした。壁に押し込まれた躯たちが、どちらに同意を示しているものか、かたかたと細かく震える。 「おおシグナスよ。前座として楽しませてもらった故、今の無礼は許す。だが我が手中に収むるのは既定の事実であることを忘れるな」 「決まってない」 「オリジナリティを出そうとする。良い。これは独創的に違いない。健気な従騎士とゴーレム。その魂を握られて我が身を差し出す聖騎士は、猟犬の異名を持つ冷酷非情と思われた悪魔殺し。万雷の拍手で迎えられることであろう! 決めたぞシグナス。お前たち主従を揃えたら、列車はナリクへ飛ぶ。聖騎士団だ。合戦をさせよう。王女をさらい、飛竜の炎で焼き尽くされる様を演じる我が聖騎士団!」 シグナスは玉座の主に剣を突き付けた。 「卿、あなたと何も話す必要がないことは分かりました。絶対に、許さない!」 「そう急くな。お前のポテンシャルを全て引き出してやらねばならん。どれ」 玉座の主が指を鳴らすと、突然グロリアの躯が爆発する。 (※最終イベント第2ラウンドのゴングが鳴ります。シグナスくん、負けるんじゃないぞ! 〈怨霊公爵ダゲン・ラ・バーゲズ〉はレベル5、生命点4、攻撃数3。0ラウンドに非情にもグロリアの躯を爆発させることで攻撃を加えてきます。この攻撃は奇襲かと思いますので、先に処理しましょう。対象は1d3名。ここは1名と出ましたので、シグナスで対応します。【生命ロール】(目標値5)に対し、出目2でセーフ) 「うっ……!?」 シグナスは直撃をかろうじて避けたが、突然の炎に目が眩んだ。 「はははははは、仕掛は多い方が良い!」 (※引き続き0ラウンド、クロ【凶器乱舞】成功。1ラウンドの攻撃はシグナスが【全力攻撃】を成功させます。防御はシグナス2回、クロ1回で割り振ります。この防御でシグナスくんが大失敗(ファンブル)しますが、車掌さんのパッチン♪パワーによって成功に転換します。そしてクロもひっそり防御失敗) 剣を手にした玉座の主が、炎の幕の向こうから飛び出してくる。あわやというところで、クロが鋭く宙を舞って、剣を振り上げた玉座の主の腕をすっぱりと斬り落とした。ごとりと床に落ちたその腕は、白骨である。 「そうだ、お前のポテンシャルも引き出してやらねばならんのであったな!」 「真っ平御免だ」 「拒否権が無いという事実が飲み込めんとみえる。これだから平民は」 シグナスが飛びかかる。その一撃は、見事に玉座の主のもう一方の腕を斬り落とした。白骨が、がらがらと音を立てて床に散らばる。ダゲン・ラ・バーゲズもとっくに生者では無くなっているのだ。 「これ以上、戦う必要はありません。あなたは武器が持てないんですから。降参を!」 「うむ良い良い。その展開も鑑賞者を楽しませる。斬り込んでみよ」 「なにを……っ!?」 「挑発に乗るなシグナス!」 「勇気はどうした、聖騎士シグナス」 玉座の主の無防備な胴体を目掛けて突進しようとしたシグナスは、耳元で「緊急信号!」と叫ぶ声に不意を撃たれて、たたらを踏む。その靴先を掠めて白骨の爪が振り下ろされ、激しく床を削った。白骨で抉られた床は瞬間的に氷結する。足を止めなければ、今ごろ引き裂かれた体ごと氷漬けになっていたはずだ。 その一方、シグナスのすぐ横を飛んでいたクロは別の白骨の手に追いかけられている。それぞれに剣を持った二本の手。正確無比な剣撃は達人のそれで、しかもグロリアのそれのように伸縮自在な骨の腕ときた。自分よりも格上の〈おどる剣〉に追い立てられるのと等しい話で、瞬く間にクロは防戦一方に追い込まれ、数合の斬り合いの後ついに撃墜された。床に叩きつけられたクロは、屈辱に悶える。鎌首をもたげた二本の腕が、剣の切先を絡ませて嘲笑っていた。 「おお、どうやって避けた?」 玉座の主はシグナスに興味津々である。しげしげとその顔を覗き込み、 「あやつか! 車掌の分際で余計なことをしよってからに。まあ良い、続きだ。この幕は長いほど楽しめるであろう」 ◇ 今回のリプレイはここまでです。 ヨンさんとのお別れの時が来てしまいました。 厳しさもまたローグライクハーフの醍醐味とはいえ、短いながら印象的な人物であったがために別れの寂しさもひとしお。 元凶たるバーゲズに完膚なきまでに勝利して、はなむけとしたいところです。 ねえヨンさん、シグと剣どんのこと、もう少しだけ見守っていてくださいね。 それでは、また最終車両にてお目にかかりましょう。 良きローグライクハーフを! ◇ (登場人物) ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉で、元人間だと主張。 ・ヨン…身長1メートルほどの陽気な種族「コビット」の兵士。面白さがすべて。グロリアとの最後の対決にて落命。 ・アルゴット…土を掘り、金属を加工する技術に優れた種族「ドワーフ」の兵士。グロリアの火球により落命。 ・グロリア…サン・サレンの女騎士。バーゲズの命令でシグナスに襲い掛かるが……。 ・ダゲン・ラ・バーゲズ…〈怨霊列車〉の主。役者と称して躯(むくろ)を蒐集する、最悪の手合い。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。