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2026年4月23日木曜日

ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイvol.1 FT新聞 No.4838

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ローグライクハーフ『怨霊列車は夜笛を鳴らす』リプレイ vol.1  (東洋 夏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■    FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!  東洋 夏(とうよう なつ)と申します。  光栄にも木曜日の枠を再び頂戴し、ローグライクハーフのリプレイ小説を連載させていただくこととなりました。  いちファンの拙い作ではございますが、最後まで楽しんでいただけましたら幸いです。  前回の連載ではサン・サレンを舞台にした『写身の殺人者』を取り上げ、ロング・ナリクの従騎士(見習いの騎士)シグナスと相棒の〈おどる剣〉クロによる初めての冒険をお届けしました。  今回もシグナス&クロを主役に、同じくサン・サレンを舞台にした『怨霊列車は夜笛を鳴らす』を遊んでみます。  ここから読んでいただいても、全く問題はございません。  ただ、「どんな奴が主役なのかもう少し詳しく知っておきたいぜ、舌に合うか分からんからね!」という不安なお気持ちはもっともですので、簡単に登場人物の紹介を記しておきましょう。主要メンバーはたったの三人、正確には二人と一振りを覚えていただけましたら、ばっちりです。  ○シグナス……ロング・ナリクの聖騎士見習い。十二歳の人間。孤児であったが、素質を見出されノックスの弟子になる。素直で優しい性格で、交渉事は苦手。前回の連載では、サン・サレンを悩ます悪夢連続殺人を解決するべく奮闘した。    ○クロ……ゴーレムの一種、自律型兵器〈おどる剣〉。赤子のシグナスと共に孤児院に預けられた。元は人間で、いずこかの女王に仕える騎士であったという不完全な記憶を持つ。    ○ノックス……ロング・ナリクの聖騎士。シグナスの師。二十代後半の人間。無口で無表情であり、囁かれる暗い噂の数々も相まって味方からも恐れられている。  さて、いかがでしょうか。お口に合いそうでしょうか。   「少年と導きの剣」というファンタジーの王道をイメージしつつ、ローグライクハーフならではのランダム性によって各々の立ち位置や味付けはどんどん変化していきます。  各イベントをどうやって味付けするのか。その自由度もご堪能いただければ幸いです。  ふたりのステータスは後にご覧いただくとして、まず今回はプロローグをお届けします。  なお、リプレイの性質上シナリオの根幹に触れます。  ネタバレとなりますので、避けたい方はそっと閉じていただけましたら幸いです。    前口上はこれでおしまい。  さあ、冒険の始まりです!    ◇   [プロローグ/従騎士、ふたたび冒険へ]  光のどけき春の日、神聖都市ロング・ナリクにて──。    「やめ!」  従騎士たちの溜め息が王宮の練兵場を満たす。 「おお、実にたるんでいる! その調子で聖騎士になれると思っているのか? 素振り百回追加!」  今度は一斉に抗議の悲鳴が上がった。 「千回にするぞ、ひよっこども!」  本日は、コーデリア王女殿下の信頼も厚い近衛騎士隊長トリスタン直々の指導である。月に一度のサー・トリスタンの特別授業は厳しいことで有名だ。楽しみにしているかと問われれば、従騎士シグナスは首を小さく横に振るだろう(大きく振る勇気は無い)。  そよ風に乗って、仲間たちが百を数え上げる声が切れ切れに入ってくる。 (ほんとなら、その場にいるはずだったのだけど) と従騎士シグナスは思い、緊張でこわばった足をもぞもぞと動かした。 (でも、どちらが大変かって話なら、僕の方じゃないかな。だって)  机を挟んで目の前にはシグナスをこの場に呼び出した張本人、シグナスの主人である聖騎士ノックスが、いつもどおり何を考えているかさっぱり分からない顔で座っている。形の良い長い足をきっちりと床に着けた姿勢は、いつ如何なる瞬間にも動き出せるようにするためだ。シグナスは、主人が足を組んだ姿を見たことがない。隣国ドラッツェンが放った暗殺者から常に追われている、という噂を連想して、本当だったらどうしようと不安になる。それもこれも、ドラッツェンの恐ろしい女王ジャルベッタをたった独りで襲撃して、隣国の逆鱗に触れたからなのだ、という与太話も。 「読め」  前振りなく主人が突き出した書状を、シグナスは恐る恐る両手で受け取った。指ざわりの良い上質な紙である。それだけで怖い。悪いことをした覚えはないけれど……。 「ええと」  読もうとして、さて困った。ひと単語目が分からない。基本的な読み書きは孤児院で教わってきた。主人ノックスに仕えながら更に学んでもいる。しかし大人たちが会議でこねくりまわすような難しい単語を出されると、たちまち分からなくなってしまう。 「ええと、しょ、う、へい……じょう?」  ちらりと目線だけ動かして窺うと、主人の三白眼に鋭く見返された。 「招聘状」  主人の声が鞭のようにシグナスを打つ。その声には何の感情も宿っていない。  これは試験なのかもしれない、とシグナスは恐れを抱いた。  読めなかったら失望されるのではないか。ともすると役たたずとして孤児院に送り返されるのではないか。それは嫌だった。十二歳のシグナスにとっては、主人ノックスに仕えることが全てなのである。  幸いにも次の単語は分かった。 「私、サン・サレン領主のラドス・フォン・ハルトは、ナリクの従騎士シグナスを──。僕ですか?」 「最後まで」 「すみません。えと、しゅ、種々の、問題を解決すべくサン・サレンにしょう、へい、したく考える次第である。当領内に発生した、おん、りょう、れ……?」  穴が開くほど書状を見詰めたが、その先は未知の単語の羅列であった。シグナスは落ち込んだが、騎士らしく潔く降参することに決め、その旨を主人に告げる。 「サー・ノックス、この先は読めません。申し訳ございません」  黒手袋に包まれた長い指がついと伸びてきて、シグナスの手から書状を取り上げた。主人の顔に浮かんでいるのは失望でも怒りでもない。何もない。無関心。それがシグナスをますます緊張させた。  そのため、 「〈怨霊列車〉」 という単語が主人の口から転がりでた時、 「ふえ」 などと気の抜けた相槌を打ってしまったのである。シグナスは慌てて両手で口を塞いだが、書状を読み返し始めた主人がその子供っぽい動作を見ていないようだったのは、まあ不幸中の幸いであろうか。  「怨霊」はともかく「列車」の意味が取れない。シグナスがやきもきしていると、主人は不意に顔を上げて言った。 「出かける。目的地はサン・サレン。防寒具を持ち、半刻の後に正門から馬で出る。用意しろ」 「うわっ、は、はいっ! では失礼します!」  主人ノックスはいつも唐突である。シグナスは立ち上がって敬礼し、あたふたと部屋の扉を開けつつも、早くも旅立ちの準備のために何をすべきかで頭をいっぱいにしていた。書状が読めなかった失点は、準備を万端に整える手際で挽回しなくてはならないのだから。 ◇ 「おお、若きナリクの勇者よ。此度も私を助けてはくれまいか」  謁見の場に現れた領主ラドス・フォン・ハルトの顔を見て、失礼ながら、数ヶ月前よりますますお痩せになられたなとシグナスは思う。 「我がサン・サレンの手勢で解決出来ぬとは腹立たしくも情けないのだが、しかし、外からの目で見た方が、はっきりと分かる物事もある。そうであろう? しかもその助力がかのナリクの聖騎士であれば、化け物の正体も軽々と見破れるものと期待しておる」  そう、化け物が出たのだ。夜空から舞い降りて人をさらう。〈怨霊列車〉と名付けられたその化け物は、四角い箱が連なったような姿をしているらしい。その姿は、乗り物といえばグリフォンや馬車くらいしか知らないシグナスが想像できる範疇を超えていた。納得するには、実物を見るしかないのだろう。  住民をさらわれるサン・サレンも、手をこまねいたわけではない。だが調査のため〈怨霊列車〉に送り込んだ兵士は、誰も帰ってきていないという。このままでは〈怨霊列車〉は住民を誘拐し続け、領主の威信は地に落ちる。そこで領主ハルトは打開策を外部に求めた。 「見よ、これが〈怨霊列車〉からの招待状じゃ」  領主の言葉を受けて、侍従が紙片をシグナスの元に持ってくる。血まみれの指先を押し付けた痕跡のような、赤褐色の斑点が付いていた。触りたくなかったが、場の空気を読む限り、手に取らなくてはいけないらしい。  シグナスが嫌々つまんでみると、その表面に血文字のようなものが浮かび上がる。 〈ご予約ありがとうございます。発車時間のお間違いにはご注意ください。予約代表者:シグナス様〉  目を白黒させて文字を見つめていると、上から素早く黒手袋が招待状を引ったくった。 「サー・ノックス! それ危険かも……」 「ハルト卿、無意味な演出はお控え頂きたい」  そのあまりにも平板な言いように、シグナスは珍しく主人の怒りを察知する。主人ノックスが感情を出すところを、シグナスは片手で足るほどしか見たことがない。 「何の仕込みもしておらん、サー・ノックス。今の無礼は親心から出たものだとして、一旦は流しておこう」  サン・サレンの領主は疲れきった様子で目頭を揉んだ。黒々とした隠しようのない隈が、心痛の程を表している。 「〈怨霊列車〉からの招待状は一通のみ。一名しか受け付けぬという意味だろう。初めての事態……」 「あのっ、分かりました、行きます!」  食い気味にシグナスは応えていた。冒険心が燃えていたのは確かだし、従の字が付くとはいえ騎士としての役割を果たしたい気持ちもある。  しかし正直に言えば、横に立っている主人が怒りを募らせてご領主様の首をすぱんと斬り飛ばすのではないか、あるいは意気地無しの従騎士を解雇通告するのではないかと、気が気では無かったのだ。進むも退くも怖い。ならば前に行った方がましかなと思っただけである。 「僕、あの違った、わたくしめが行きます、ハルト卿」  横に立った主人ノックスから冷ややかな視線が注がれているのに気づき、シグナスは縮こまった。    ◇  星が満天に輝いている。  北の空を駆ける王狼座が爛々と一等星の目を光らせシグナスを睥睨する。  化け物を待ち受ける夜としては、あまりにも美しい。  空気は冷たく、息をする度に肺に突き刺さるようで、ナリクであればまだ冬に分類される気温だろう。  招待状に記された郊外の廃教会までは、トナカイに揺られて行った。主人ノックスは常のごとく押し黙り、何を考えているのかは分からない。  ポウーッ、と甲高い音が夜空に響き渡った。シグナスが慌てて仰ぎ見ると、本当に件の〈怨霊列車〉が空を駆けて近づいて来ようとしている。  先頭は龍の骸骨だ。その頭頂には煙突が屹立し、そこから鮮やかに蛍光する緑色の、この世ならざる炎を噴き出している。骸骨の後ろには延々と車輪付きの箱が連なり、巨大な蛇のようにうねっていた。近づいてくるその箱──車両と呼ばれている箱の躯体は骨で出来ている。  シグナスは孤児院で聞いたおとぎ話をいくつも思い出していた。城を絞め潰した蛇の神や、巨人の戦士と格闘する大蛇の話。蛇退治の話が役に立てばよいけれど……。  けたたましい音を立てて〈怨霊列車〉は降下体勢に入り、間もなく廃城の前に長々とその身を横たえて着陸した。 〈廃城前、廃城前駅に到着いたしました。ご乗車のお客様がいらっしゃいます。発車まで今しばらくお待ちください〉  最後尾の箱の扉が、ひとりでに横滑りして開かれる。ここから乗り込めというのだ。間近に見る〈怨霊列車〉の迫力にシグナスは圧倒される。この驚異の乗り物に比べたら、馬車など赤子の玩具だ。  シグナスはトナカイの背から降りる。地面に足をつけると緊張に襲われ、にわかに息苦しくなった。異教の化け物に怖気付いては聖騎士失格である。しかし、本音を言えば恐ろしい。  足の震えを誤魔化して歩き出そうとしたシグナスを置いて、怖いもの知らずの主人ノックスはさっさと列車に向かって進んで行く。切符は主人が持っていた。 「サー・ノックス、待ってください!」 必死に足を動かすシグナスを待たず、主人はもう列車の開口部に辿り着いている。乗り込もうとした開口部に足をかけた途端、 〈ご乗車になれません。切符をお持ちでない方は、ご乗車になれません。下がってお客様をお通しください……〉 主人は列車と睨み合った。シグナスが追いつく。 「やってみます」  主人は切符をシグナスに手渡した。  意を決して主人を追い越し列車に乗り込むと、今度は何も言われない。内装は骨ではなく、木張りのようだ。化け物の内臓を見ているはずなのだが、暖かみのある高級な木材からは何らかの安心感を覚えてしまう。乗り口は狭く仕切られており、客車側に別の扉が付いている。 「サー・ノックス、一緒に」  主人を振り返ろうとしたシグナスの目と鼻の先で、あっという間に扉が閉じられた。ガタンと車体が揺れ、列車が傾く。 「サー・ノックス!」 扉を叩いてみたが無駄だった。 「止まって! まだ乗客がいる!」 感情の無い声で列車が応える。 〈何かありましたら、お手数ですが先頭の客車までお越しください〉  シグナスは斜めになった床に踏ん張ってしばし呼吸を整え、意を決して腰の剣帯に指を走らせた。鞘から剣を抜く。二本。その内の片方はシグナスの指に世話されるまでもなく独りでに宙に滑り出た。 「やっと俺の出番というわけだ、シグナス。窮地に陥ってから呼ぶなよ」 「サー・ノックスを怖がってるのはそっちじゃん」  宙を舞う剣の柄に、一つ目が開いた。〈おどる剣〉のクロ。従騎士シグナスの頼れる相棒である。クロは一つ目をすがめ、 「俺は正当な保護者の前で沈黙を守っているだけだ。それより何よりお前、また厄介事に首を突っ込んだな」 「僕が望んだわけじゃ──」  その時、客車側の扉から、何かを叩きつけるような暴力的な音が連続して響く。シグナスと〈おどる剣〉のクロは顔を見合わせた。 ◇    今回のリプレイは、ここまでです。  たっぷりアレンジを利かせて書かせていただきました。  走り出した怨霊列車。果たしてシグナス&クロは無事に脱出できるのでしょうか!?  次回からはいよいよ〈できごと〉を振っていきます。  自分も乗り込みたいぞと思われた方は、是非FT書房様のBOOTHをチェックしてみてくださいませ。    それではまた次週お目にかかりましょう。  良きローグライクハーフを!   ◇    (登場人物)  ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。今回は良いところを見せたい。  ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。  ・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。  ・ラドス・フォン・ハルト……サン・サレンの領主。領地で事件が起こりまくるのは、何らかの引き寄せ体質なのだろうか。 ■作品情報 作品名:『怨霊列車は夜笛を鳴らす』 著者:ロア・スペイダー イラスト:海底キメラ 監修:杉本=ヨハネ 発行所・発行元:FT書房 購入はこちら https://booth.pm/ja/items/6820046 『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● ■今日の新聞に対するお便りはコチラ! ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m ↓ https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report 【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。 https://ftnews-archive.blogspot.com/ 【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。 https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84 ■FT新聞をお友達にご紹介ください! https://ftbooks.xyz/ftshinbun ---------------------------------------------------------------- メールマガジン【FT新聞】 編集: 水波流、葉山海月、中山将平、明日槇悠、天狗ろむ、くろやなぎ 発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房) ホームページ: https://ftbooks.xyz/ メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください) ---------------------------------------------------------------- メルマガ解除はこちら https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2026ft0409news@blogger.com ※飛び先でワンクリックで解除されます。