━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 連載第1回 岡和田晃 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ▼はじめに 本作は、かつて日本語版公式サイトに掲載されていた、マジカルパンクな世界・エベロンを舞台とした『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ「竜の予言に選ばれし者たち」の続編です。 以前ホビージャパンが運営していたD&D日本語版公式サイトに第1話(2010年)および第2話(2011年)が掲載された後、著者(岡和田)の不調により中断を余儀なくされていました。当時の読者や関係諸氏へは、深くお詫び申し上げます。その後、第3話「リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ」を書き上げていたのですが、時期を逸しており、ホビージャパン社への持ち込みがかないませんでした。 D&D第4版は2014年に日本語版の契約が終了し、2017年からはホビージャパン社が第5版の日本語版を展開していましたが、2022年からはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社に権利が移っています。 D&D第4版は日本語版の関連製品が月刊ペースで出るなど特にラインナップが充実していたシステムですが、今日では往々にして過小評価されているように見えなくもありません。その面白さを再認識していただく一助として、またD&D第4版のリプレイじたいは世に読めるものも限られていることから、資料的価値にも鑑み、第3話を分割掲載していきたいと思います。あたたかくお迎えいただけましたら幸いです。 ▼編集部より こちらのリプレイは、汎用的なTRPGセッションの指南書としても、非常に有益な内容です。 参加者は初心者の女子大生、留学中の海外ゲーマー、アナログゲーム研究家、ゲームデザイナー、翻訳家・イラストレーターと多様な方々で、特に初心者のプレイングを見ることは、システムに関わらずTRPGのセッションの参考になるはずです。 ぜひTRPGの入門記事としてもお役立てください。使用されている各種ルールブック日本語版はすべて絶版ですが、古書市場で入手が可能ですし、いまだファンも多いシステムです。 当時のサイトは閉鎖されていますが、第1話・第2話の掲載分はウェブアーカイブで閲覧可能です。D&D第4版や舞台の世界観そのものの解説にもなっておりますので、未読の方は以下よりご覧ください。 https://web.archive.org/web/20110520091921/http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/web_replay_eb/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ▼『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜 連載第1回:バジリスクの卵 【DM・プレイヤー紹介】(※プロフィールは、リプレイを収録した2011年時点のもの) DM:ダンジョンマスター (岡和田晃)今回のセッションの語り部にして、司会・進行・判定役を一手に司る役回り。シナリオも、各種サプリメントを読み込み、オリジナルな自信作を仕上げた。 ネディア:ヒューマンのレンジャー (PL中山葵)18歳の女子大生。大学に入る前は地元で弟や友人たちと文庫本で発売されている国産RPGを中心に遊んでいたが、ルールブックを眺めたり、リプレイを読んだりすることの方が多かった。D&Dは初心者。 ジュス:ティーフリングのウィザード (PLノダソル)韓国人ゲーマー。現在、日本の大学へ留学中。流暢な日本語を駆使して、RPGのセッションに参加することができる。D&Dは初心者だが、プレイングは大胆不敵。 ベック:ウォーフォージドのファイター (PL高橋志行)アナログゲーム研究家で、多数の論考を発表している。筆者が担当した『ウォーハンマーRPG』第2版リプレイに、プレイヤーとして参加してもらった。D&D第4版は初心者。 ヘルメス:ヒューマンのアーティフィサー (PLカナイセイジ)サークル「カナイ製作所」を主宰するアナログゲームデザイナー。ボードゲームやカードゲームのキレのいいデザインにより海外からも注目を集めているが、もともとアツいTRPGファンでもある。 クシュタリ:カラシュターのパラディン (PL見田航介)D&D第4版や『ウォーハンマーRPG』や各種ボードゲームなどの翻訳家として活躍するのみならず、『GAME LINK』や『Role&Roll』といったTRPG系の定期刊行物や国産RPGのイラストワークも手掛けている。 ●クエストの確認 DM(ダンジョン・マスター)岡和田(以下、DM):第1回・第2回の冒険を経て、君たちは無事、トレイルブレイザーズを救い出し、地下竜教団が執り行っていた邪悪な儀式を阻止することができました。“竜の予言書”の洞窟を異形どもから浄化し、主要クエストを達成することができたのです。 一同:やったー! DM:また、各人の副次クエスト達成状況を少し確認しましょうか。(メモを見ながら)ネディアの副次クエスト「ヘタレなランバートを奮起させる」、そしてジュスの副次クエスト「“爆裂竜”モニクを倒す」は無事、達成されました。 中山(以下、ネディア):わーい。 ノダソル(以下、ジュス):ざっとこんなもんよ! カナイ(以下、ヘルメス):しかし、俺の副次クエスト「女性たちが廃人にされた手がかりをつかむ」(第1話参照)については、まだ手がかりがないな……。 高橋(以下、ベック):トレイルブレイザーズの救出を優先したのですから、やむをえないでしょう。情報収集に時間をかけすぎたら、トレイルブレイザーズの面々を助けられなかった可能性もありました。自分は「印章指輪をテリクの街に届ける」というクエストを与えられていますが、それについては、この後で成し遂げるつもりです。 会話型RPGのシナリオは、プレイヤーの展開や創意工夫によって幾重もの広がりや分岐を見せるのが常だ。一本道のシナリオが用意されていることもあるが、プレイヤーが変われば、まったく別の冒険のように見えることも、しばしばである。 見田(以下、クシュタリ):死霊術士の情報は得たかったがな。急ぎの用がないのであれば、邪悪なものどもが、再度、ピートランドの村を襲うようなことがないよう警戒態勢を敷くのがベストだと思うぞ。それに協力しつつ、情報収集を行うというのはいかがかな。 DM:面白いので、それ採用させてもらいます。 ネディア:クエストのコンプリートは難しいものですね。 ●後宮の秘密 DM:それでは、もう少しお付き合いを……(語り部口調で)。 君たちはしばらく時間をかけ、トレイルブレイザーズたちや、開拓に出た村人、立ち寄る行商人、さらにはコボルドの戦司祭である“ゲラ”という名前のコボルドや、その子どもたちから、あれやこれやと情報を集めてきました。すると、1つの大きな事実が浮かび上がってきたのです。 まず、村の少女の一人、かつてはカルナスの首都コースで働いていた女の子。彼女がしばらく前に、身体を壊して村へ戻ってきたことがわかりました。彼女がコースで見聞きした情報をあれこれ繋ぎ合せるうちに、(ヘルメスのもとへ送られてきた)かつての美貌をうかがわせる患者たちは、カルナス国王カイウスIII世の後宮で働いていた者たちと判明したのです。コースの隣にあるアターの街にいた女性も、その大半はコースの後宮で国王の側仕えをしていた人たちでした。 ヘルメス:患者たちはその話をしていたのかな? DM:いいえ。きつく口止めをされていたのか、それとも何か魔法的な制約を課せられていたのかは不明です。ヘルメスが看た患者にしても、なんとか言葉の断片を辿っていくうちに、あたりをつけられた程度ですね。 ヘルメス:カルナスの後宮を取り仕切っているのは、どういう人物なんだろう? DM:ビューティ。ヒューマンではなく、流線型をしたフォルムを誇る妖艶なウォーフォージドですね。後宮は、彼女の管轄下にあります。また、彼女はカルナスの貴族、ハルデン・ド=オリエン卿の側近とも言われています。 ヘルメス:なかなか厄介だが、つながってきたな。 ネディア:オリエン氏族に関係しているのですね。そのハルデン卿が、どのような人物かわかりますか。わたしの父の知り合いだったりします? DM:じゃあ、ネディアは〈事情通〉でロールをして下さい。 ネディア:(ころころ)15です。 DM:はい、お察しの通り知り合いです(笑)ただハルデン卿は、ネディアの父ゾグルドとあまり仲がよくありません。政治的なライバル、と言ってしまってよいかも。ネディアの父が、事あるごとに新たな“ライトニング・レイル”の路線を切り開き、少しでも販路を広げられるようにすべきだと主張しているのに対し、ハルデン卿は保守的で、現状の路線を維持しながら利権を最大化せよと主張しています。 ベック:改革派と守旧派。まっこうから対立していますね。政敵同士かあ。 ネディア:あああ、ちょっとやっかいですね……。 ●バジリスクの卵 DM:一方、ベックは、トレイルブレイザーズが落ち着くのを待ってから、印章指輪をテリクの街まで届けに向かいました。道中、ちょこざいなオークの山賊などと出くわしたものの、君のような英雄の敵ではありません。『武勇の書』のコラムを参考に考えると、D&Dの第4版では、たとえ1レベルのファイターであっても、素養のある200人に1人出るか出ないかの逸材なのですよ。 ヘルメス:きっと相手は雑魚だったんだろうな(笑) ベック:ひどい(笑)クリーヴ/薙ぎ払いが唸りを上げたに違いありませんね。 DM:まあ、そんな感じかな(笑)ちょこざいなと撃退しつつ、テリクの街へ到着します。すると、目指す先のフィッツギボン商会は、ブラックマーケットの一角で、すぐに見つかりましたよ。 D&D第4版はパーティで戦闘することを前提としてバランスが組まれているため、分散したパーティが個々のシーンで戦闘をすると、往々にしてバランスが崩れてしまう。ただし、個人行動をしている際にまったく敵と鉢合わせしないのも不自然ではあるので、適度、演出を混ぜていくというのもひとつの方法だ。時間に余裕があるDMは、パーティ単位ではなく、戦闘における個々のPCの性能もチェックしておくとよいだろう。 ベック:ブラックマーケットですか! ずいぶん活気がある市なのだなあと思っておきます(笑) DM:商会に案内されて、印章指輪を届けると、事務方の手続きに促されます。そして待たされた挙句に、最低限の手間賃を渡されて、晴れて君はお役御免、放逐されるということになりました。無愛想、取り付くしまもありゃしません。 ベック:おやおや、主人の忌わの際に立ち会った者を前にして、ずいぶんと{邪険/じゃけん}な対応ですね。 DM:ウォーフォージドはヒューマノイドではなく「モノ」であるという思い込みが、いまだ拭えていないのかもしれません。カルナスは保守的な土地柄ですし……。あるいは、取り次いでくれたのが商会を取り仕切っているフィッツギボン氏当人ではなく代理の番頭だったからかもしれません。 DM/番頭:「君の主人が亡くなってしまわれたのは残念だが、こういう時代だ、仕方あるまい。印象指輪が残っているのが、不幸中の幸いといったところだ……」 ベック:言葉もなく、立ち尽くしています。 クシュタリ:ひょっとして、ベックが殺したと疑われてはいたりします? DM:その可能性は低そう。番頭さん曰く、あくまでウォーフォージドはモノなのだから、主人に危害を加えてはならないとプログラミングされているだろうと考えているのです。ひょっとすると、その他、主人の命令には背かない、自己防衛機構を働かせるうえでも上記2点を優先するという「ウォーフォージドの三原則」が刷り込まれていると思っているのかもしれません。 ベック:うわー。(有名なSF作家)アイザック・アシモフの「ロボット三原則」で片付けられてしまうとは(笑) 念のために言っておけば、「ウォーフォージド三原則」というのものが、オフィシャル設定に存在するわけではない。 ただウォーフォージドがいかなる動力で動き、どのようなシステムがプログラミングされているのかは、ユーザーの創造性に委ねられている部分が多いので、ルール上、特に問題が起きるようなものでなければ、自由に発想してしまっても面白いだろう。ハードディスクで動いているウォーフォージド、からくり仕掛けのウォーフォージドなど……。 演出に凝ったり、設定の隙間を自分なりに埋めていくのも、大事な楽しみ方の一つなのだ。 ベック:……いまだウォーフォージドは、まともな知的種族とみなされていないのですねぇ。 クシュタリ:まあ、気を落とすでない。 ベック:そうだ、バジリスクの卵(第1話参照)についてお聞きしないと。「ところで番頭さん、バジリスクの卵というものは、どうなったのか教えていただけませんか?」 DM/番頭:「ああ、そのことか。久しぶりの上物だっていうから、さる“高貴なお方”が、高値で買ってくださったよ」 ベック:「その“高貴なお方”のお名前は?」 DM:番頭はよほど嬉しかったのか、つい自慢げに「コースのハルデン・ド=オリエン卿というお方だ」と口を滑らせてしまうよ。 一同:つながった〜(どよめく)。 DM:いやいや、ベック以外はここにいないんですよ(笑)さすがにしゃべりすぎたと判断したのか、番頭はそれ以上教えてはくれませんね。 ベック:いったい、何に使うんでしょう? ヘルメス:儀式の触媒になると言っていたっけなあ。 ここで番頭が口を滑らせたのは、シティ・アドベンチャーであまり情報を出し惜しみしてしまうと、セッションが停滞する原因となるから。ベックが自然にロールプレイできていたので、ここは情報を与えることにした次第。 また、今回のようにパーティが分散した状態だと、再度合流するまでは、情報の共有ができないはずだ。しかし、(キャラクターではなく)プレイヤーは同じ場所で顔を合わせているわけだから、ついつい他人のシーンにツッコミを入れたくなってしまうのは人のサガだ。そこで今回DMは、セッションを円滑に進めるため、ほどほどのツッコミは容認するスタンスを取っている。マスタリングは柔軟性が大事なのだ。 ●成長、成長! DM:それ以上の手がかりは得られませんでしたが、ベックはとりあえずピートランドへ戻ってきましたよ。 ヘルメス:オレの副次クエストの手がかりは得られたと考えていいかな? DM:はい、OKです。 ヘルメス:よくやった、ベック! DM:それでは、経験点の計算に移りましょうか。 D&D第4版では、成長というのは最も楽しい瞬間の一つだ。それまでの苦労が報われ、成長し、さらにスケールの大きな冒険に乗り出すことができるようになるのだから。 『プレイヤーズ・ハンドブック』のP.27には、レベルアップの手順が記されている。レベルアップのためには、経験点が必要だ。経験点を獲得するには、主要クエストや副次クエストを達成したり、あるいは遭遇時にモンスターを撃退したり、パズルを解いたりすることで、キャラクターに成長するきっかけを与えてやることが大事だ。 今回のアドベンチャーでは、主要クエストの経験点が1250、PC(プレイヤー・キャラクター)各人の副次クエストが250。ちなみにレベル2になるために必要な経験点は1000である。 DMは各遭遇の経験点をそれぞれ割り出していく。撃退したモンスターの経験点や、うまく解除した罠や危険要因に設定された経験点を合計し、それらをパーティの人数で頭割りしていくのだ。結果、レベルが2になるまでの要件を、無事に満たしていたことがわかった(つまり、レベルアップに必要な経験点1000を超えていた)。 ネディア:やっとレベル2になれるのね!(感涙) ジュス:俺様の秘術も、さらなる冴えを見せるわけだな。 ヘルメス:レベル2になると、汎用パワーを1つ、特技を1つゲットできます。 ネディア:汎用パワーって? DM:汎用パワーとは、自分や味方を支援するためのパワーです。一見地味だけど意外に役立つパワーが、たくさん用意されていますよ。 ネディア:(ルールブックを見ながら)レベルの半分に基づく数値(攻撃基本値、防御値、イニシアチブ、技能判定、能力値判定)のすべてが1上がるんですね、嬉しい。 ジュス:ヒット・ポイントも、キャラクター・クラス毎に決められた数値に【耐久力】修正値をプラスしたぶんだけ上昇するようですね。これでウィザードでも生還できそうです(笑) DM:それでは、残りの時間で、各自相談しながらレベルアップ作業を行なってくださいね。間に合わなかったぶんは、次のセッションまでに、家でやってきてもらってもかまいませんよ〜。 一同:は〜い! こうして2レベルにアップしたパーティ。遭遇での生還率も格段にアップした。さらに強力になって、新たな冒険に乗り出すこととなったのだ。 その後も、数回のセッションを重ね、テリクの街周辺を冒険しながら、“竜(ドラゴン)の予言”をめぐる情報を探し続ける一行。 このように、キャンペーン・ゲーム(1回きりのセッションではなく、継続するセッションのこと)では、大河ドラマのような複雑で壮大な物語が紡ぎ出されていくことになるが、5レベルになった時点から、話を再開させるとしよう。 (続く) “『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版リプレイ 竜の予言に選ばれし者たち 〜リヴァイアサン計画、そして予言の洞窟へ〜” is unofficial Fan Content permitted under the Fan Content Policy.Not approved/endorsed by Wizards. 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