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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(1)
(明日槇 悠)
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◯はじめに
この度、訳者の岡和田晃氏及び版元であるニューゲームズオーダーの寛大な許可により、新たに『モンセギュール1244』のリプレイを連載させていただける運びとなりました。
『モンセギュール1244』とは、2009年に原著が発売され、2023年6月に日本語版が上陸したナラティヴ・スタイルRPGです。
その特徴は、TRPGには欠かせない存在であるゲーム・マスターが不要で、プレイヤー同士の協力によってナレーション権を交代しながらストーリーが織りなされること。
そして、カタリ派という中世ヨーロッパ最大とされたキリスト教異端派を題材にするということです。
プレイヤーは、この異端の信徒たちによるコミュニティで起きた戦時下の物語を紡いでいきます。
FT新聞では既に、2023年9月〜2024年10月にかけて、岡和田氏の筆になる中世主義研究会の面々によるリプレイを連載しております。(FT新聞 No.3893〜No.4271)
そのアーカイブは現在でも閲覧することができます。
(https://prologuewave.club/archives/category/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB1244)
『モンセギュール1244』についてより詳しく知りたい方は、上記リンクより「『モンセギュール1244』がやって来た、ヤァ! ヤァ! ヤァ!」(「FT新聞」No.3809)や「『モンセギュール1244』プレイガイド〜準備編〜」(「FT新聞」No.3865)も参照されるといいでしょう。
「〜中世主義研究会編」と題されたリプレイは、錚々たる研究者の方々が、確かな知識に裏打ちされたカタリ派のロールプレイを披露される点で画期的でした。
オンラインセッションの快適に行えるゲームであることも示されましたが、一方で、歴史科目に自信のない私を含め、ゲームにとっつきにくい印象を拭えなかった読者の方もおられるのでは。
今回お届けするのは、筆者の私を含めたTRPG初心者4人が、タイトル通り、『モンセギュール1244』を遊ぶために友達のお宅へ集合して、
ゲームといっしょに酒やツマミも展開しながら、プレイに参加しない住人も行き交う畳の上で対面セッションをおこなった2025年4月末の記録です。
このリプレイが高ハードルな印象を打ち砕き、ノリで進行可能な遊びやすいゲームであることの理解を促す一助になれば幸いです。
なお、本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。
◯大まかなゲームの流れについて
座組のうち、いちばん張りのある声のプレイヤーから手番をスタートさせます。(以降、時計回り。声の大きさ順という訳ではありません)
本作は、ナレーション権を持つ手番プレイヤーがゲームマスターかのように「シーン」を演出し、終了後、次の手番プレイヤーにナレーション権を回すことで進行していきます。
手番プレイヤーは、場札である3枚の「シーンカード」から1枚を選択し、その文面も参考に「シーン」を描写します。
「シーンカード」を読み上げた後、プレイヤーはこれを自分の手札として取っておくことができます。
自分の手番じゃない「シーン」の途中で、手札の「シーンカード」を出すことで、その場のナレーション権を奪取することができるのです。
いくつかの「シーン」をまとめて「アクト」という単位が構成されており、「アクト」は以下の流れとなっております。
「プロローグ:アヴィニョネの暗殺」「アクトI:包囲開始」「アクトII:過酷なる冬」「アクトIII:運命の決戦」「アクトIV:陥落」「エピローグ:棄教か、それとも殉教か」
なお、「シーン」終了時に手番プレイヤーは、人物や、アイテムや、イベントといった役割を兼ねた「ストーリーカード」を引くことができます。
ストーリーに変化や緩急をつけるための要素が記されているそのカードは、アクトII、アクトIII、アクトIVにのみ使用することができます。
そういうルールなのですが、このリプレイにおいて、プレイヤーたちは「ストーリーカード」の存在を失念しているため、このカードはほとんど活かされません。
これに限らず、当リプレイではルールを正確に守れていない点が見受けられますが、それでも破綻しない寛容なゲームシステムとしてご理解いただければと思います。
プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。
キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
(https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244)
◯プレイヤー紹介
Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。
●本編
A「(ルールブックを確認して)みんなは最後に生き残ったカタリ派っぽいわ。異端審問団と軍とに狩られてトゥールーズ伯の庇護がなくなった、最後の最後まで生き残ったクレイジー共。
プロローグ【アヴィニョネの暗殺】は、アヴィニョネっていう小さな町の領事代官(バイイ)のアルファノってやつが、教皇様の手下ですよ! って言いながらも実はカタリ派の敬虔な信者らしくて、それがフランス領にばれちゃって、異端審問官のギョーム・アルノーが『お前カタリ派かばってんだろ! やっちゃうよ?』ってアヴィニョネに来るっていうから、この代官が誰かを使って異端審問官のアルノーを殺せばいいんじゃね? ってところから始まる。
ピエール・ロジェがその暗殺者として異端審問官に襲いかかるとしてプレイするらしい。ベルナールはアルノーを殺すことによって復讐とかにのめり込むのか、異端審問官は事前に暗殺計画は把握してて回避するのか、殺されるのか。カタリ派の信者たちはアルノーなんて殺しちまえって思ってるのかがポイントらしい。で、このプロローグは俺がナレーション権を持つ。スタートプレイヤーなので。
■プロローグ アヴィニョネの暗殺 1242年5月
じゃあ、アヴィニョネから5km離れた地点で今、異端審問官のギョーム・アルノーが夜泊をしていると。キャンプから起きて朝、アヴィニョネに来るらしい。それまでにアルノーを殺さなきゃいけない。町の中で殺すと大騒ぎになるから。夜泊している時に、『盗賊でも出たんじゃない?』って体で殺さなくちゃいけないから、ピエール・ロジェ率いる兵士団がアルノーのキャンプを襲おうとしている。
(シーンカード)【雨が降り続いて生じた泥だらけの水溜り】を馬の蹄が水しぶきをあげる。今まさに、ロジェを先頭にした武装兵士団50人が異端審問官ギョーム・アルノーの夜泊テントを襲おうとしている。じゃあ、俺、ロジェ演りますわ」
C「ベルナールがその後ろについていく、と」
B「領主のレーモンはついていっていいんですかね?」
A「いいんじゃね?」
D「襲撃部隊にさすがに女性陣はついて行かないか……」
A「実はこっそりついて来てたとか」
D「別について行かなくてもいいですもんね。まあ静観してるかな」
A「じゃあ、『おらッしゃあァァァ!』とロジェが言って、ギョームは死にました。シーン終了っす。異端審問官の暗殺に成功した、というところでプロローグを終わらせる。
はいみんな、誰を演じるかを決めましょう。俺、ベルトランで。謎がおもろい。ちなみに主要キャラの質問3つには必ず答えを出さないといけないらしい」
B「自分はレーモンで」
C「なら、レーモンの娘のエスクラルモンドかな」
D「俺は娼婦のアルセンドにしますよ。ロジェと寝る人」
C「アルセンドなら、こっちはベルナールという手もある」
D「色んな奴と寝てるからな」
A「じゃあキーマンじゃん。異端審問官のギニョさんなんかナレ死しちゃったんだから」
C「その暗殺に同行してる間に異端審問で死刑宣告されてたベルナールにするかも」
A「可哀想に」
■Act1.包囲開始 1243年5月
——モンセギュールでの戦いが始まった。山頂からは敵勢がはっきりと見える。十字軍が山裾に集結しているのだ。
A「つまり暗殺の結果如何に関わらず、成功したけど結局アヴィニョネを追われてモンセギュールまで全員追い詰められたってことね」
B「自分が手番プレイヤーになると。シーンカード、【山の端をかすめる雲】。
異端審問官の殺害から一年、モンセギュールの領主レーモンは、城塞を包囲する十字軍の数を見ながら余裕を持った表情で戦局を見張り塔から見守っていました。
Bレーモン「どうやらこの感じだと、十字軍は撤退せざるをえないであろう」
とても楽観し、彼は、見張り番の役に就いている者に激励をし、自分の家へと戻っていきました」
C「娘なので、会話シーンを作るか。それは夜のことですかね」
B「そうですね」
C「レーモンの娘のエスクラルモンドは、夜になると南方を見つめています。こいつはピエール・ロジェの妻であり姉のフィリッパをなぜか妬んでいる。
エスクラルモンドは城塞から南方を見つめながら、領主のレーモンが通りかかったところで『お父様、あれはなに?』と声をかけます。幻覚なのか、天から火が降り注ぎ、それが神の軍の形をとって、こちらへ向かってくるのが見える。
Cエスクラルモンド「あれは私たちの味方なのでしょうか? だって私たちは正しい信仰を持っているのですもの」
と父に訴えます」
B「レーモンは娘の言うことに『そうだよ』と言いながらも、内心では娘が幻覚を見ていることに勘づいており、それは全く信仰教義とは関係ないことなので、きっと彼女は城塞の退屈な生活に飽きており、今の平和でない状況に対してストレスが溜まっているのだろうと思い、彼女に早く寝るように勧めました」
C「大人しく寝室に向かうことでしょう」
B「レーモンが部屋に戻ろうとしている際に、レーモンに話しかけてきた人物がいました。それは一年前に異端審問官を殺害したピエール・ロジェでした。彼は防衛指揮官を勤めているので、おそらく十字軍が次に攻撃を仕掛けてくるのは、翌朝、明るい時期だと思っていたので彼に戦局について伺いを立てました」
Bレーモン「十字軍の様子はどうなっている?」
Dピエール・ロジェ「ちょっといま不穏な状況ですね。若干、不穏な感じはしております」
B「不穏な感じとはどういうことを指しているのか、レーモンは心配になって聞きました」
Dピエール・ロジェ「風の知らせ、を感じてますね……やな予感がしているので。でもまあ、これ直感なんでそんなに真に受けなくても大丈夫です」
C「楽観的な指揮官……」
D「感覚派なんですよ、彼は」
A「【雨が降り続いて生じた泥だらけの水たまり】(シーンカードを出してナレーション権奪取)。レーモンがピエール・ロジェと会ってから一日後、ベルトランはレーモンと二人で会っていた。
Aベルトラン「なるほど。ピエール・ロジェはそんなことを言っていたか。あいつは錯乱している可能性がある。(一同笑)指揮官にしては話がグッダグダすぎる。レーモンはロジェをよく見ておいたほうがいい。
それにレーモン、前から話しているが……ベルナールは異端審問にかけられて死刑に決まった。でも異端審問官は暗殺したはずなのに、アヴィニョネの町に既に異端審問官がいた。ということは、異端審問官を秘密裏に引き入れた者がいる。もちろん私じゃない。私がレーモンに異端審問官を殺害しろという提案をしたから。殺して肉体を再生した方が魂を浄化できて我々の教義に合っているわけ。ということは、この城塞内に異端審問官、教皇側についている人間が絶対にいる。それを誰か、特定したいなァー。私は。特定したいなー。私。完徳者《ペルフェッチ》だから。そこらへんは色々……考えとくわ。ちなみにレーモン、誰だと思う?」
Bレーモン「自分としては、城塞の中には犯人はいないと考えている。というのもベルナールが異端審問官から死刑を宣告されたのは、異端審問官殺害の実行役だと目されていることが向こうに伝わっているからなのではないか。つまり、殺害したと思った異端審問官は実は影武者で、一年前の事件では本当は遂行しそこなっていたのではないか」
B「もちろんレーモンはベルトランには言わなかったけれど、内心ではこのモンセギュールに問題を持ち込んでほしくないと思ったから、保身のために確証はないけれどそう信じ込んでいるところもある」
Aベルトラン「レーモンレーモン! ワトソンくん! だが一つ問題があってェ、ベルナールが異端審問官暗殺で留守の間にベルナールの死刑が決まっているから、異端審問官を暗殺できたかどうかの結果如何に関わらずその時点でベルナールは異端審問官暗殺の罪で捕まっている。ということは、異端審問官が殺害される前から彼の罪は異端審問にかけられていたので、内通者がいないと、おかしいのだよ! レモンくん! だからわしは内通者がいる説を捨てられない。あと、ロジェがあやしいと思う。めっちゃロジェがあやしいと思う。一年経ってんのに、未だにベルナールは死刑にならない上にロジェの女と寝ているから、絶対ロジェ」
D「確かに」
Bレーモン「ベルトランの言うことを信じよう。彼には隠れて見張りをつけておく」
Aベルトラン「ウゥエ! チャンスあったら、死刑にしよ。あーはー、肉体をね、再生させたほうがいい。不浄な魂、浄化するために肉体を滅したほうがいい。あとベルナールだけじゃなく、子供に見張りをつけなさい。悪魔なので」
D「子供ってこれ?(アミエルとファイユ)」
A「そ。子供は正しい判断ができない悪魔で、こちらが正しい道に導いてやらないと人としての道を歩めない。人間ではないので」
D「それは言い過ぎじゃないですか?」
A「という教義なの!(笑) というキャラなの! 俺の意見じゃないの! ベルトランがそう言ってるの! そうしてその日は終わった。で、シーンを終える」
◯Act1.包囲開始(後編) に続く……
●登場人物/※3つの質問 (※「◯大まかなゲームの流れについて」後半部参照)
ベルトラン・マーティ……年配の男性。完徳者《ペルフェッチ》。カタリ派信者たちの精神的な指導者。出家する前は羊飼いだった。
1. あなたの言葉を信仰に裏打ちされた啓発的なものにしている要因は何か?
2. あなたが自分の信仰を疑うのはどんなときか?
3. ベジエの街が陥落したとき、あなたはどうやって生き延びたのか?
レーモン・ド・ペレーユ……モンセギュールの領主。この中年男が、現在の城塞を建てた。ピエール・ロジェのいとこでコルバの夫、フィリッパとエスクラルモンドの父。
1. あなたはモンセギュールをカタリ派の根城としたことを後悔しているか?
2. あなたの左脚は、なぜこわばっているのか?
3. あなたが愛し、もっとも大事にしているのは誰か?
■作品情報
・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳
モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向
・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669
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